(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ポリエステル系繊維材料用染色性向上剤及び分散染料組成物
(51)【国際特許分類】
D06P 1/16 20060101AFI20220127BHJP
D06P 3/54 20060101ALI20220127BHJP
C09B 67/46 20060101ALI20220127BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20220127BHJP
D06P 1/90 20060101ALI20220127BHJP
C09B 29/085 20060101ALN20220127BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
D06P1/16 B
D06P3/54 A
C09B67/46 B
D06M15/507
D06P1/90
C09B29/085 A
C09B29/085 Z
D06M101:32
(21)【出願番号】P 2017188474
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】末定 君之
(72)【発明者】
【氏名】細田 正昭
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-109381(JP,A)
【文献】特開2009-120646(JP,A)
【文献】特開2009-120969(JP,A)
【文献】特開2007-308813(JP,A)
【文献】特開昭53-065477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
C09B
D06M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分を10~40モル%含有する二塩基酸成分単位と、分子量48~900未満の二価アルコール由来の二価アルコール成分単位とからなるポリエステル共重合体であって、
重量平均分子量が3000~20000であり、かつ、該二塩基酸成分単位の分子内含有比率が50~75質量%であるポリエステル共重合体、を含んでなるポリエステル系繊維材料用染色性向上剤。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル系繊維材料用染色性向上剤と、分散染料とを含んでなる分散染料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系繊維材料用染色性向上剤及び該染色性向上剤と分散染料とを含む分散染料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維材料及びポリエステル繊維材料とその他の繊維材料との複合材料からなるポリエステル系繊維材料の染色には分散染料が使用されている。
【0003】
分散染料は、水に不溶又は難溶であるので、水中に安定に分散されるように、分散剤と併用して用いられる。このような分散剤としては、従来、リグニンスルホン酸のホルマリン縮合物やナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などが使用されている。しかし、これらの分散剤は、分散染料を常温の水中に安定に分散させる効果しか有しておらず、ポリエステル系繊維材料を染色する通常の100~140℃程度の高温条件下で、分散染料が染色浴中で凝集し、その結果、染色物に色ムラが生じるといった問題が生じることがあった。さらに、染料はそれぞれ染め足が異なるという特性を有するので、均染性を得るために染料の染着速度を制御することが必要となる。
【0004】
このような問題から、従来、ポリエステル系繊維材料を染色する場合には、高温での分散性を向上させるために、また染料の染着速度を制御する(すなわち緩染効果を得る)ために、分散均染剤を使用するのが必須である。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特開2009-120646号公報(特許文献1)には、スルホン酸塩基を有する二塩基酸を15~65モル%の量で含有する二塩基酸成分と分子量900~3500のポリエチレングルコールを含有する二価アルコール成分とを重縮合させて得られた、分子量が3000~30000であり、分子中にポリオキシエチレン鎖を10~40質量%の量で有するポリエステル共重合体を分散染料に併用して使用することが記載されている。
【0006】
また、最近のポリエステル繊維材料は、意匠性や機能性の追求から、極細繊維(マイクロファイバー)やポリウレタン繊維と混紡した複合素材の普及が進んでいる。これら繊維素材は、レギュラーポリエステル繊維に比べ、非結晶領域が多く、染着濃度向上や染色堅牢度維持のため、繊維内部への拡散速度が遅い高堅牢度型分散染料を多用している。このような高堅牢度型分散染料は、通常の分散染料に比べ分子量が大きく、低温から高温の広い範囲での凝集性が強く、分散均染剤を使用しても均染性が得られにくく、染色物の不良品発生を招いている。そして再加工にも手間が掛かり、コストアップに繋がっているのが現状である。
【0007】
特許文献1に記載のポリエステル共重合体は、分散染料に併用した場合でも、染色浴に添加した場合であっても、通常の分散染料において緩染効果は良好であるものの、低温から高温の広い範囲での分散性に劣り、染着率が低いという問題がある。この問題は特に高堅牢度型分散染料において顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の問題点を解消することのできるポリエステル系繊維材料用染色性向上剤に関し、とりわけ、低温から高温までの染料の分散性に優れ、染色性の良好な(均染効果を得ながら染着率を低下させない、均染効果と染着効果に優れる)ポリエステル系繊維材料用染色性向上剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分を特定量含有する二塩基酸成分単位と、特定の二価アルコール成分単位とからなるポリエステル共重合体であって、分子量が3000~20000であり、かつ、該二塩基酸成分単位の分子内含有比率が50~75質量%であるポリエステル共重合体を含んでなるポリエステル系繊維材料用染色性向上剤を使用することにより、低温から高温までの染料の分散性に優れ、均染効果を得ながら染着率を低下させず、さらに均染効果と染着効果に優れることを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分を10~40モル%含有する二塩基酸成分単位と、分子量48~900未満の二価アルコール由来の二価アルコール成分単位とからなるポリエステル共重合体であって、分子量が3000~20000であり、かつ、該二塩基酸成分単位の分子内含有比率が50~75質量%であるポリエステル共重合体、を含んでなるポリエステル系繊維材料用染色性向上剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル系繊維材料用染色性向上剤は、特定の構造を有するポリマーであることから分散染料の分散性に優れ、染色工程において低温から高温まで分散不良を生じない。また、このポリエステル系繊維材料用染色性向上剤は、特にポリエスエテル繊維と適度な親和性を有するため、ポリエステル系繊維材料表面で染着速度を適切に制御し、均染効果を発揮しながら染着効果を発揮する。また、本発明のポリエステル系繊維材料用染色性向上剤は加工時の泡立ちが少なく加工適性に優れる。さらに、本発明のポリエステル系繊維材料用染色性向上剤と分散染料とを含有する分散染料組成物を提供することにより、上記本発明の効果をより発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0014】
本発明のポリエステル系繊維材料用染色性向上剤は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分を10~40モル%含有する二塩基酸成分単位と、分子量48~900未満の二価アルコール由来の二価アルコール成分単位とからなるポリエステル共重合体であって、分子量が3000~20000であり、かつ、該二塩基酸成分単位の分子内含有比率が50~75質量%であるポリエステル共重合体、を含んでなる。
【0015】
スルホン酸塩基を有する二塩基酸の好ましいものとしては、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸の金属塩及びそれらのジメチルエステル、ジエチルエステル、ジフェニルエステル等のエステル誘導体が挙げられる。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられるが、特にナトリム塩、カリウム塩が好ましい。
【0016】
共重合に使用される二塩基酸に含まれる、スルホン酸塩基を有する二塩基酸以外の二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、コハク酸等の脂肪族のカルボン酸が挙げられ、それらの酸無水物あるいはそれらと低級アルコールもしくはグリコール類とのエステル誘導体を使用することもできる。
スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分は、ポリエステル共重合体に含まれる全二塩基酸成分単位の5~50モル%、好ましくは10~40モル%を構成する。
【0017】
また、前記ポリエステル共重合体を合成するためのもう一方の原料は、分子量48~900未満の二価アルコールである。このような二価アルコールとしては、分子量200~900未満のポリエチレングリコール、エチレングリコール、炭素数3以上のアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック型界面活性剤、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の脂肪族又は芳香族のジオール化合物などの1種または2種以上を用いることができる。このような二価アルコールの中でも、染料分散性、染着率、均染性、加工適性、得られる分散染料組成物を粉体化しやすいといった観点から、分子量は48~600であることが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量200~600のポリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコールがより好ましい。
【0018】
本発明のポリエステル共重合体は分子量が3000~20000である。また、本発明のポリエステル共重合体は、スルホン酸塩基を有する二塩基酸成分とそれ以外の二塩基酸成分とを含む全二塩基酸成分単位の分子内含有比率が50~75質量%である。上記の分子量範囲および二塩基酸成分単位含有比率範囲に含まれる本発明のポリエステル共重合体は、重縮合反応が比較的容易であり、共重合生成物が極端に高粘度とならず、取り扱いが容易となり、その後の分散染料組成物の調製や取り扱いが容易となる。また、ポリエステル共重合体のポリエステル系繊維材料への残留が少なくなり、後工程への悪影響や各種堅牢度の低下を起こす可能性が少ない傾向となる。
【0019】
このようなポリエステル共重合体の製造方法には、特に制限はなく、エステル交換法、直接重合法などの従来から行われている方法を用いることができる。
【0020】
本発明の染色性向上剤には、染料汚れやカス汚れの問題を解決する観点から、上記ポリエステル共重合体に加えて、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物及び高級アルコールアルキレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含有することが好ましい。スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物は、モノスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、ジスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、トリスチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物等のポリスチレン化(2~10モル)フェノールアルキレンオキサイド付加物であってよい。なお、スチレンの付加モル数は、ポリエステル繊維への親和性を良好にするため1~5モルであることが好ましい。また、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物においては、ポリエステル繊維への親和性が良好であるためには、高級アルコールが炭素数8~18のものであることが好ましい。高級アルコールは飽和あるいは不飽和のいずれであってもよい。前記スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物及び高級アルコールアルキレンオキサイド付加物のいずれにおいても、付加形態がエチレンオキサイドの単独付加あるいはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム又はブロック付加であることが好ましい。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物である場合は、アルキレンオキサイド鎖全体に占めるエチレンオキサイド単位の割合が60~100質量%であるのが好適である。エチレンオキサイド単位の割合が60質量%未満の場合には、油剤の除去性に劣る傾向にある。そして、アルキレンオキサイドの付加モル数は、いずれも4~30モルであることが好ましく、4~20モルであることがより好ましい。付加モル数が4モル未満では油剤、糊剤、機能性付与剤の除去性に劣る傾向があり、一方30モルを超えるとアルキレンオキサイド付加物における疎水基の影響が小さくなり、ポリエステル繊維や油剤への親和性が低下する傾向がある。上記のようなアルキレンオキサイド付加物は、従来公知の方法により製造することができる。本発明においては、前記スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物及び高級アルコールアルキレンオキサイド付加物の合計質量が1であるのに対し、ポリエステル共重合体の質量が好ましくは0.5~10、より好ましくは1~10となるように混合し、染色性向上剤を得ることができる。このとき、溶媒として水もしくは水と低級アルコールとの混合溶媒を添加してもよい。
【0021】
ここで染料汚れの問題とは、染色前の精練が十分に行われなかったポリエステル系繊維材料が染色浴に投入されると、繊維材料に付着していた各種油剤、糊剤やワックス等が染色浴に溶出し、その結果染料の分散性が低下して凝集し、繊維製品に染料凝集物が付着することである。さらに、精練が十分に行われなかったポリエステル系繊維材料には、染色すると色ムラが生じるという均染性の問題もある。
またカス汚れの問題とは、染色浴と同浴で耐光向上剤や防炎剤等の機能性付与剤を処理した場合に、繊維材料に吸尽されなかった機能性付与剤が繊維表面に残留することで汚れが生じることである。
【0022】
本発明の染色性向上剤は、染料分散性、染着率、均染性、加工適性の観点から、染色浴中に0.01~10g/lの量で存在することが好ましく、さらに0.01~5g/lの量で存在することがより好ましい。
【0023】
本発明の分散染料組成物に含有される分散染料としては、従来公知の分散染料を制限なく用いることができ、例えば、ベンゼンアゾ系、複素環アゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系、キノリン系、ニトロ系、クマリン系、メチン系、アミノケトン系等の分散染料を挙げることができる。
【0024】
本発明の分散染料組成物は、前記分散染料とポリエステル系繊維材料用染色性向上剤を、水もしくは水と低級アルコールとの混合溶媒に分散させたのち、コロイドミルやサンドミルあるいはディスパーなどの分散器あるいは粉砕器を用いて、好ましくは平均粒径1μm以下となるように分散して調製することができる。このようにして分散して調整した分散液はスプレードライ法により乾燥させ、粉体状もしくは顆粒状にすることもできる。
【0025】
本発明の分散染料組成物においては、分散性と染色性とポリエステル共重合体の使用量に見合う効果といった観点から、分散染料とポリエステル共重合体との配合割合は質量比で1:3~8:1とするのが好ましく、1:3~3:1とするのがさらに好ましい。
【0026】
本発明の分散染料組成物においては、分散染料とポリエステル共重合体との配合割合が前述した如き質量比にあるのが好ましいが、かかる配合割合にあるこれらの成分の分散染料組成物中における濃度は、適宜選択することができ、分散染料組成物の輸送等のコストと取り扱いの容易さの観点から、前記ポリエステル共重合体の濃度が5~50質量%となるように調整することが好ましい。なお、分散染料組成物には、さらに、分散剤、分散均染剤、防腐剤等の従来公知の成分を添加することができる。
【0027】
本発明の分散染料組成物を用いて染色することができるポリエステル系繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びそれらの共重合物からなるポリエステル繊維材料や、これらのポリエステル繊維材料とその他の合成繊維材料や天然繊維材料、再生繊維材料との複合繊維材料が挙げられ、その形態としては糸、編み物、織物、不織布などが挙げられる。
【0028】
染色の方法としては、従来公知の方法を特に制限なく適用することができ、染色浴中に分散染料組成物を分散染料濃度が所要量となるように混合し、この染色浴を用いる液流染色、チーズ染色、ビーム染色、オーバーマイヤー染色、高圧噴射染色などの浸染法を挙げることができる。
【0029】
なお、本発明において、分子量は、重量平均分子量を意味し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、機器:HLC-8120(東ソー(株)製)、カラム:GF310HQ(Shodex社製)を用い、移動相に50%(v/v)アセトニトリル水を用いて、ポリスチレンスルホン酸ソーダを標準物質として測定したものである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0031】
(合成例1)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g、 分子量600のポリエチレングリコール24g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、150℃から230℃まで約3時間かけて昇温してエステル交換反応を行い、メタノールを系外に留出させた。次いで、チタン酸テトラブチル0.1gを加えて徐々に減圧していき、内圧を約10kPaとし、250℃で2時間反応させて、ポリエステル共重合体257gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約66.6質量%であり、分子量は11,600であった。
分子中の二塩基酸成分単位の含有量%=(OC-R-CO使用量(計算値)/得られたポリエステル共重合体量)×100
(Rは二塩基酸から2個のカルボキシル基を除いた残基)
【0032】
(合成例2)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g、分子量600のポリエチレングリコール2.4g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体235gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約72.7質量%であり、分子量は4,500であった。
【0033】
(合成例3)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g 、分子量600のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体245gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約69.8質量%であり、分子量は7,300であった。
【0034】
(合成例4)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル155.4g(0.8モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩59.2g(0.2モル)、エチレングリコール62g、分子量600のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体224gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約67.1質量%であり、分子量は6,900であった。
【0035】
(合成例5)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル174.8g(0.9モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、エチレングリコール62g、分子量600のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体214 gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約65.5質量%であり、分子量は6,500であった。
【0036】
(合成例6)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g、分子量200のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体245gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約69.8質量%であり、分子量は6,800であった。
【0037】
(合成例7)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g、分子量400のポリプロピレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体245gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約69.8質量%であり、分子量は7,200であった。
【0038】
(合成例8)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル174.8g(0.9モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、ネオペンチルグリコール104g、分子量600のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体256gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約54.8質量%であり、分子量は6,000であった。
【0039】
(合成例9)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル174.8g(0.9モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩26.8g(0.1モル)、ジエチレングリコール106g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体246gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約57.0質量%であり、分子量は4,500であった。
【0040】
(合成例10)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、イソフタル酸49.8g(0.3モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、エチレングリコール62g、 分子量600のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体206gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約64.1質量%であり、分子量は6,700であった。
【0041】
(合成例11)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、アジピン酸43.8g(0.3モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩29.6g(0.1モル)、エチレングリコール62g、分子量1000のポリエチレングリコール12g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体200gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約63.0質量%であり、分子量は5,800であった。
【0042】
(比較合成例1)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル116.5g(0.6モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩 118.4g(0.4モル)、エチレングリコール62g、分子量600のポリエチレングリコール120g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体353gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約48.5質量%であり、分子量は19,500であった。
【0043】
(比較合成例2)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル77.7g(0.4モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩177.6(0.6モル)、エチレングリコール62g、分子量600のポリエチレングリコール24g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体277gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約69.0質量% であり、分子量は12,000であった。
【0044】
(比較合成例3)
反応容器に、テレフタル酸ジメチル155.4g(0.8モル)、5-スルホイソフタル酸ジメチル・ナトリウム塩59.2g(0.2モル)、エチレングリコール62g、分子量2000のポリエチレングリコール24g及び酢酸亜鉛0.1gを仕込んだ以外は合成例1と同様に反応させて、ポリエステル共重合体236gを得た。得られたポリエステル共重合体の二塩基酸成分単位の含有量は約63.7質量%であり、分子量は8,400であった。
【0045】
合成例及び比較合成例のポリエステル共重合体の合成結果を表1にまとめて示す。
【表1】
【0046】
実施例1~11及び比較例1~4
合成例1~11及び比較合成例1~3で得られたポリエステル共重合体をそのまま実施例1~11及び比較例1~3の染色性向上剤とした。また、双環助剤有限公司製の分散剤MF(ナフタレンスルホン酸塩系分散剤)を比較例4の染色性向上剤とした。
得られた染色性向上剤の評価を以下のようにして行った。結果を表2に示す。
【0047】
分散剤MF(ナフタレンスルホン酸塩系分散剤)30g、ベンゼンアゾ系の分散染料(C.I. Disperse Red 167)30g及び、水40gを混合し、撹拌した後、サンドミルで平均粒径1μm以下になるまで分散染料を微粒子化し、液状の分散染料組成物を得た。その後、170℃にてスプレードライ法により乾燥させ、粉体状の分散染料組成物1を得た。
【0048】
1.染料分散性
1-1.低温分散性(50℃)
300mLビーカーに、下記処方のように水、分散染料組成物1、染色性向上剤を入れ染料液を調整し、50℃で10分保持した。その後、5A濾紙(ADVANTEC製)にて染料液を濾過し、下記の基準によって評価した。その結果を表1に示す。
染料液処方
【表2】
1-2.高温分散性(130℃)
カラーペット(日本染色機械(株)製)のポットに下記染色浴処方のようにpH調整剤、分散染料組成物1、染色性向上剤と、合計が300mlとなるように水を入れ混合均一として、染色浴を調整した。布を入れずに、この染色浴を40℃より3℃/分で130℃に昇温し、同温度で30分保持した後、80℃に冷却し、5A濾紙(ADVANTEC製)にて染色浴を濾過し、下記の基準によって評価した。その結果を表1に示す。
染色浴処方
【表3】
【0049】
判定基準
A:染料凝集物は見られず、分散性が良好(濾紙に目詰まりなし)。濾過時間0~24秒以下。
B:染料凝集物がやや見られ、分散性がやや劣る(濾紙に目詰まり少しあり)。濾過時間25~50秒以下。
C:染料凝集物が多く残っており、分散性が劣る(濾紙に目詰まり多い)。濾過時間50秒超。
【0050】
2染色性
ミニカラー染色機(テクサム技研製)のポットに、水、下記染色浴処方のようにpH調整剤、分散染料組成物1、染色性向上剤を入れ混合均一として、染色浴を調整した。次いで、ポリエステルタフタ精練布帛(30d/目付50g/m
2)を、浴比=1:10(10g/100cc)になるように染色浴に投入し、この染色浴を40℃~80℃(昇温2℃/分)⇒80℃~130℃(昇温1℃/分) ⇒130℃x30分の温度条件で染色した。その後、80℃に降温しポットより取り出し、還元洗浄(80℃×15分、浴比=1:30)後、水洗脱水乾燥を行い、ポリエステル繊維染色布を得た。得られたポリエステル繊維染色布の染色性及び均染性について、下記の基準によって評価した。
染色処方
【表4】
還元洗浄処方
【表5】
判定基準
1)染着率:得られたポリエステル繊維染色物を分光測色計CM-3600d(コニカミノルタセンシング(株)製)により、400~700nmのK/S値を10nmごとに求め、その積分値により染着率を評価した。なお、積分値が大きいほど、染着率が高い。各染色布について求めたK/S値を、比較例4の染色布で得られたK/S値で割った百分率を算出し、各染色布の染着率とした。
2)均染性:得られたポリエステル繊維染色物上の染色斑有無を目視判定した。
染色斑:無○、有×
【0051】
3.加工適性試験
染色時の加工適性を比較するために、高温高圧液流染色機:HTA-5(江蘇靖江市華泰染整製)を用い、実施例1~11又は比較例1~4の染色性向上剤と分散染料組成物1を添加した下記条件の処理浴に、ポリエステルジャージニットを入れ、3℃/分の速度で昇温した。比較例4を標準とし、60~130℃までの発泡状態を評価した。
【0052】
染色処方
【表6】
判定基準
○:泡立ちが30cm未満であり、比較例4と同等レベル
△:泡立ちが30cm以上60cm未満であり、比較例4より泡立ち多い
×:泡立ちが60cm以上であり、比較例4より著しい泡立ち
の3段階評価し、泡立ちの少ないものを良と判断した。
【0053】
4.残留性試験
前記2染色性試験と同様の染色条件で染色したポリエステルサテン織物を120℃×1分間乾燥した後、180℃×30秒間加熱処理した。その後室温まで冷却した後、生地上に水滴を1滴滴下して、水滴が完全に生地表面から浸透するまでの時間を測定した。吸水性のないものほど染色性向上剤の残留が無いと判断する。
【0054】
【0055】
表2の結果のように、本発明の染色性向上剤は、低温及び高温時の染料分散性向上と安定した染着率と均染性を得ることが分かる。また、染色時の泡立ちが少なく、加工適性を備えていることが分かる。
【0056】
実施例12~22及び比較例5~8
合成例1~11及び比較合成例1~3で得られたポリエステル共重合体30g、ベンゼンアゾ系の分散染料(C.I. Disperse Red 167)30g及び、水40gを混合し、撹拌した後、サンドミルで平均粒径1μm以下になるまで分散染料を微粒子化し、液状の分散染料組成物を得た。その後、170℃にてスプレードライ法により乾燥させ、実施例12~22及び比較例5~7の分散染料組成物2を得た。
なお、比較例8は、ポリエステル共重合体30gに代えて、分散剤MF(ナフタレンスルホン酸塩系分散剤)30gを用いた。
比較例5と比較例7の分散染料組成物は軟固体状であった。それ以外の分散染料組成物は粉体状であった。
得られた分散染料組成物2の評価を以下のようにして行った。結果を表3にしめす。
【0057】
5.染料分散性
5-1.低温分散性(50℃)
300mLビーカーに、下記処方のように水、分散染料組成物2を入れ染料液を調整し、50℃で10分保持した。その後、5A濾紙(ADVANTEC製)にて染料液を濾過し、下記の基準によって評価した。その結果を表1に示す。
染料液処方
【表8】
【0058】
5-2.高温分散性(130℃)
カラーペット(日本染色機械(株)製)のポットに、下記染色処方のようにpH調整剤、分散染料組成物2と、合計が300mlとなるように水を入れ混合均一として、染色浴を調整した。布を入れずに、この染色浴を40℃より3℃/分で130℃に昇温し、同温度で30分保持した後、80℃に冷却し、5A濾紙(ADVANTEC製)にて染色浴を濾過し、下記の基準によって評価した。その結果を表1に示す。
染色浴処方
【表9】
【0059】
判定基準
A:染料凝集物は見られず、分散性が良好(濾紙に目詰まりなし)。濾過時間0~24秒以下。
B:染料凝集物がやや見られ、分散性がやや劣る(濾紙に目詰まり少しあり)。濾過時間25~50秒以下。
C:染料凝集物が多く残っており、分散性が劣る(濾紙に目詰まり多い)。濾過時間50秒超。
【0060】
6.染色性
ミニカラー染色機(テクサム技研製)のポットに、水、下記染色浴処方のようにpH調整剤、分散染料組成物2、分散均染剤を入れ混合均一として、染色浴を調整した。次いで、ポリエステルタフタ精練布帛(30d/目付50g/m2)を、浴比=1:10(10g/100cc)になるように染色浴に投入し、この染色浴を40℃~80℃(昇温2℃/分)⇒80℃~130℃(昇温1℃/分)⇒130℃x30分の温度条件で染色した。その後、80℃に降温しポットより取り出し、還元洗浄(80℃×15分、浴比=1:30)後、水洗脱水乾燥を行い、ポリエステル繊維染色布を得た。得られたポリエステル繊維染色布の染色性及び均染性について、下記の基準によって評価した。
染色処方
【表10】
還元洗浄処方
【表11】
【0061】
判定基準
1)染着率:得られたポリエステル繊維染色物を分光測色計CM-3600d(コニカミノルタセンシング(株)製)により、400~700nmのK/S値を10nmごとに求め、その積分値により染着率を評価した。なお、積分値が大きいほど、染着率が高い。各染色布について求めたK/S値を、比較例8の染色布で得られたK/S値で割った百分率を算出し、各染色布の染着率とした。
2)均染性: 得られたポリエステル繊維染色物上の染色斑有無を目視判定した。
染色斑: 無○、有×
【0062】
7.加工適性試験
染色時の加工適性を比較するために、高温高圧液流染色機: HTA-5(江蘇靖江市華泰染整製)を用い、実施例12~22又は比較例5~8の分散染料組成物2を添加した下記条件の処理浴に、ポリエステルジャージニットを入れ、3℃/分の速度で昇温した。比較例8を標準とし、60~130℃までの発泡状態をと対比評価した。
染色処方
【表12】
【0063】
判定基準
○: 比較例8と同等レベル
△: 比較例8より泡立ち多い
× : 比較例8とより著しい泡立ち
の3段階評価し、泡立ちの少ないものを良と判断した。
【0064】
8.残留性試験
前記6染色性試験と同様の染色条件で染色したポリエステルサテン織物を120℃×1分間乾燥した後、180℃×30秒間加熱処理した。その後室温まで冷却した後、生地上に水滴を1滴滴下して、水滴が完全に生地表面から浸透するまでの時間を測定した。吸水性のないものほど染色性向上剤の残留が無いと判断する。
【0065】
【0066】
表3の結果のように、本発明の分散染料組成物2は、スプレードライ法にて粉体化でき、低温及び高温時の染料分散性向上と安定した染着率と均染性を得ることが分かる。また、染色時の泡立ちが少なく、加工適性を備えていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の染色性向上剤によると、分散染料染色時の染料凝集物を抑制し、安定した染着率と均染性を発揮することから、加工欠点のない高品位の繊維製品が得られる。また、加工時の泡立ちも少ないため加工トラブルが軽減され、繊維製品の染色加工などを経済的に行うことができる。