(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】寄棟屋根の隅棟部の換気構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20220104BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20220104BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
E04D13/16 M
E04D3/40 D
E04D3/40 C
E04D1/30 601P
(21)【出願番号】P 2017193371
(22)【出願日】2017-10-03
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】397025107
【氏名又は名称】日本住環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】林 容
(72)【発明者】
【氏名】神 慶人
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛大
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-238047(JP,A)
【文献】特開2005-256370(JP,A)
【文献】特開2004-316270(JP,A)
【文献】特開2006-104767(JP,A)
【文献】特開2001-123608(JP,A)
【文献】特開2017-40105(JP,A)
【文献】特開2006-348525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16
E04D 3/40
E04D 1/30
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隅木の上面において野地板が前記隅木の幅以上にオフセットされ、前記隅木の上面の前記野地板間に隅木通気材が配置され、垂木間の空気が前記隅木通気材を通って排気可能であり、
前記隅木通気材は、プラスチック製プレートに、先端部を平坦にした円錐体を密に設けた通気プレートを2枚、前記円錐体の頂面同士を当接させて貼り合わせて成る原材を帯状に裁断し、幅方向一側面が斜面にカットされて逆台形状にされたものであることを特徴とする寄棟屋根の隅棟部の換気構造。
【請求項2】
前記隅木通気材は前記隅木の水下から水上にかけて設置され、前記隅木通気材を通り抜けた空気は、その水上の前記野地板間の空間を抜けて、棟通気部の通気路内に流入して大気に放出される、請求項1に記載の寄棟屋根の隅棟部の換気構造。
【請求項3】
前記隅木通気材の上側の屋根材の端面間が隔てられて開口され、その開口部を覆うように換気装置が配置され、前記隅木通気材を通り抜けた空気は、前記開口部から前記換気装置内に流入して大気に放出される、請求項1に記載の寄棟屋根の隅棟部の換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寄棟屋根の隅棟部の換気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棟の四方に流れる4つの斜面で形成される屋根である寄棟屋根は、近時、日照権等による法規制の関係から、一般住宅のみならず、アパート等にも採用されることが多くなってきている。この寄棟屋根の場合、切妻屋根に比べて棟換気部が短くなるため、その隅棟部においても換気を行うことが要請される。その他の隅棟部を有する屋根についても同様である。
【0003】
隅木と垂木の上端が同一仕上げ面になっている寄棟における隅棟部の一般的な収まり構造において、屋根断熱の場合は、各通気経路(垂木4,4間)が独立していて、通気の出口が塞がった状態の場合が多い(
図6参照)。また、平棟長さが短い場合は、棟部に十分な換気用開口を設けることができないため、隅棟部に躯体開口して換気材を設置する必要性が生ずる。しかし、その現場施工は容易ではなく、大変な作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-238047号公報
【文献】特開2017-40105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、寄棟屋根の場合、切妻屋根に比べて棟換気部が短くなるため、隅棟部においても換気を行う必要性が生ずるが、従来、隅棟部についての好適な換気構造は提供されていない。
【0006】
そこで本発明は、施工が容易で、隅棟部における良好な通気環境を実現し得る寄棟屋根の隅棟部の換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、隅木の上面において野地板が前記隅木の幅以上にオフセットされ、前記隅木の上面の前記野地板間に隅木通気材が配置され、垂木間の空気が前記隅木通気材を通って排気可能であり、
前記隅木通気材は、プラスチック製プレートに、先端部を平坦にした円錐体を密に設けた通気プレートを2枚、前記円錐体の頂面同士を当接させて貼り合わせて成る原材を帯状に裁断し、幅方向一側面が斜面にカットされて逆台形状にされたものであることを特徴とする寄棟屋根の隅棟部の換気構造である。
【0008】
一実施形態においては、前記隅木通気材は前記隅木の水下から水上にかけて設置され、前記隅木通気材を通り抜けた空気は、その水上の前記野地板間の空間を抜けて、棟通気部の通気路内に流入して大気に放出される。
【0009】
他の実施形態においては、前記隅木通気材の上側の屋根材の端面間が隔てられて開口され、その開口部を覆うように換気装置が配置され、前記隅木通気材を通り抜けた空気は、前記開口部から前記換気装置内に流入して大気に放出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造は上記構成であるため、施工容易で、屋根断熱及び天井断熱のいずれの場合においても、隅棟部における良好な通気環境を実現し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第1の実施形態の縦断面図である。
【
図2】本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第1の実施形態の横断面図である。
【
図3】本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造に用いられる隅木換気材の構成例を示す図である。
【
図4】本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第2の実施形態の縦断面図である。
【
図5】本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第2の実施形態の施工状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1,2は、本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第1の実施形態の収まり例を示すもので、そこには、屋根断熱の場合が示されている。その換気構造は、隅木1の上面において野地板2,2が隅木1の幅以上にオフセットされ、隅木1の上面の野地板2,2間に隅木通気材3,3が配置され、垂木4,4間の空気が隅木通気材3,3を経て大気に放出可能にされる。垂木4,4間には、隅木1に突き当たるようにして、屋根断熱のための断熱材6,6が施工されている。また、野地板2,2及び隅木通気材3,3の上にルーフィング(図示してない)を介して屋根材7,7が配置され、その継ぎ目を被覆するように棟包8が設置される。
【0014】
隅木通気材3,3は、例えば、プラスチック製プレート、即ち、例えば厚さ0.1~0.3mm程のポリプロピレン等製の薄手のプレートに、エンボス加工等によって、先端部を平坦にした高さ5~10mm程の円錐体3aを密に設けた通気プレートを設け、その通気プレートを2枚、その円錐体3aの頂面同士を当接させて貼り合わせて成る原材を、帯状に裁断して形成される(
図3参照)。そして、幅方向一側面が斜面3bにカットされて逆台形状にされ、上面に両面テープ3cが、幅方向に延出するように張着される。
【0015】
かかる構成の隅木通気材3,3は、圧潰力に対してかなりの抵抗力を示す通気プレートを、その円錐体3a同士が向かい合うようにして貼り合わせて構成されるため、より一層強度を有するものとなる。また、その構成の場合、突合された円錐体3a間に、通気路となるのに十分な広さの菱形の間隙が確実に形成保持されるので、強度と通気性とを併せ有するものとなり、ここで用いる通気材として好適である。
【0016】
野地板2,2は、隅木1の上面において隅木1の幅以上にオフセットされ、そこに一対の隅木通気材3,3の配置スペースが生成される。一対の隅木通気材3,3はそれぞれ、隅木1の上面傾斜面に、その底面の端部を隅木1の上面傾斜面の端部に合わせて載置し、両面テープ3cを野地板2,2上に接着して固定する(
図1参照)。その状態において、斜面3bと野地板2,2の端面との間に通気空間5,5が生成され、垂木4,4間の空気は、この通気空間5,5から隅木通気材3,3内に流入する。
【0017】
この第1の実施形態の場合、通気空間5,5から隅木通気材3,3内に流入した空気は、隅木通気材3,3を幅方向に通流して隅木通気材3,3間の通気路9に抜け、そこを水上側に移動する(
図2参照)。そして、隅木通気材3,3を長さ方向に通り抜けた空気は、更に水上側の野地板2,2間のスリット10内を棟に向かって上昇し、棟部の野地板2,2間のスリット10a内に流入し、棟部換気装置を経て大気に放出される。棟部換気装置は特に限定されるものではなく、任意の構成のものを用いることができる。
【0018】
図4は、本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造の第2の実施形態の収まり例を示すものである。ここに図示された例は、天井断熱の場合のものである。この場合の換気構造は、隅木1の上面において野地板2,2が隅木1の幅以上にオフセットされ、隅木1の上面の野地板2,2間に隅木通気材3,3が配置され、垂木4,4間の空気が隅木通気材3,3を経て大気に放出可能にされる点は、第1の実施形態と同じである。
【0019】
この第2の実施形態の場合は、隅木通気材3,3の上側の屋根材7,7の端面間が大きく隔てられることによって開口部17が設けられ、その開口部17を覆うように換気装置11が配置される。図示した例における換気装置11は、山形に形成される、通例、金属製のカバー材12と、カバー材12内に配備される一対の通気部材14,14から成る。カバー材12の山形形状の角度は、本装置が設置される隅棟部の野地板2,2(屋根材7,7)のなす角度に対応するように、予め、あるいは、現場において設定される。
【0020】
通気部材14,14は、幅方向(図において左右方向)に通気する多数の通気路を有するもので、通例、幅方向に抜ける通気路を並設したプラスチック板を多数段積層し、熱線で溶断して所定幅にすると共に一体化する公知の方法により製造することができる(特許第2610342号公報等参照)。 カバー材12の両端は直角に折曲され、そこに桟木21が収まり、カバー材12の上から桟木21を通して屋根材7,7にくぎ留めされる。また、カバー材12の両傾斜面の中間部に、長さ方向に延びる通気開口13が形成される。通気開口13は一連のものであってもよいが、通例、
図5に示されるように、長尺の開口を適宜間隔置きに開設したものとされる。
【0021】
好ましくは、カバー材12裏面の中央部、即ち、通気部材14,14設置部の内側に、長さ方向に延びる結露防止材15が定着される。結露防止材15としては、通例、厚さ1~2mm程度の発泡ポリエチレンシート材が用いられる。また、好ましくは、換気装置11の空間部内に立ち上がる水切り22が、隅木通気材3,3と屋根材7,7の間に挟持されて配設される。
【0022】
隅棟の場合は水下側棟包24を取り付け、その後桟木21を屋根材7,7から野地板2,2にかけてくぎ留めした後、裏面に通気部材14,14と結露防止材15を固定した換気装置11を、開口部17を塞ぐように被装する。その際、カバー材12の両側の角部内に桟木21が収まるようにし、また、カバー材12の水下側端部が、水下側棟包24上に所定量(例えば75mm)オーバーラップするようにする。そして、最後に水上側棟包23が、その端部がカバー材12の水上側端部上に所定量(例えば75mm)、オーバーラップするように取り付けて施工完了となる(
図5参照)。
【0023】
この第2の実施形態の場合、天井断熱のための断熱材(図示してない)と野地板2,2との間に大きな空間が生成される。この空間内の空気は、上記第1の実施形態の場合と同様に、各垂木4,4間から、通気空間5,5を通って隅木通気材3,3内に流入して、開口部17に流出する。そして、開口部17内の空気は、通気部材14,14を経て通気開口13から大気に放出される。
【0024】
本発明に係る寄棟屋根の隅棟部の換気構造は上記構成であるため、施工容易で、隅棟部における良好な通気環境を実現し得るものであり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0025】
1 隅木
2 野地板
3 隅木通気材
4 垂木
5 通気空間
6 断熱材
7 屋根材
8 棟包
9 通気路
10,10a スリット
11 換気装置
13 通気開口
17 開口部