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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017247282
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019112830
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】西岡 利明
(72)【発明者】
【氏名】船戸 博文
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆裕
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-225524(JP,A)
【文献】特開2005-016215(JP,A)
【文献】特開2010-095947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の吐水管本体と、
該吐水管本体の内部を通る通水用のインナーホースと、
前記インナーホースの上流端部に設けられた上流接続部と、
前記吐水管本体の基部内に設けられ、前記上流接続部を該吐水管本体の軸方向にスライド可能に保持する上流保持部とを具備し、
前記上流保持部によって前記上流接続部が保持される範囲で前記インナーホースを前記吐水管本体の先端側へ引き出し可能に構成してあり、
さらに、前記インナーホースの下流端部に設けられた下流接続部と、
前記吐水管本体の先端部内に設けられ、前記下流接続部が該吐水管本体の上流側へ移動することを阻止し下流側へ移動することを許容する受け座とを具備したことを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記吐水管本体の先端部に、前記下流接続部が該吐水管本体の下流側へ移動することを阻止する阻止部材が着脱自在に装着される請求項1に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シンクや洗面台等に設置される水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属製の吐水管を具備した水栓(例えば特許文献1参照)において、通水部分が金属製であると、供給される水質が悪化する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-177147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、中空で金属製の吐水管本体内に、有害物質等の浸出が少ないインナーホースを通し、このインナーホース内に水を流すことが考えられる。
【0005】
しかし、この場合、インナーホースが吐水管本体よりも短すぎるとその接続が困難となり、逆に長すぎるとインナーホースやこれに繋がる部材に意図しない応力が加わり続け、早期に不具合が生じる恐れがある。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、吐水管本体内にインナーホースを通す場合に組付け性及び構造安定性を高めることができる水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水栓は、中空の吐水管本体と、該吐水管本体の内部を通る通水用のインナーホースと、前記インナーホースの上流端部に設けられた上流接続部と、前記吐水管本体の基部内に設けられ、前記上流接続部を該吐水管本体の軸方向にスライド可能に保持する上流保持部とを具備し、前記上流保持部によって前記上流接続部が保持される範囲で前記インナーホースを前記吐水管本体の先端側へ引き出し可能に構成してあり、さらに上記水栓が、前記インナーホースの下流端部に設けられた下流接続部と、前記吐水管本体の先端部内に設けられ、前記下流接続部が該吐水管本体の上流側へ移動することを阻止し下流側へ移動することを許容する受け座とを具備したことを特徴とする。(請求項1)。
【0008】
【0009】
上記水栓において、前記吐水管本体の先端部に、前記下流接続部が該吐水管本体の下流側へ移動することを阻止する阻止部材が着脱自在に装着されていてもよい(請求項)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、吐水管本体内にインナーホースを通す場合に組付け性及び構造安定性を高めることができる水栓が得られる。
【0011】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の水栓では、上流保持部によって上流接続部が保持される範囲でインナーホースを吐水管本体の先端側へ引き出し可能に構成されており、インナーホースへの下流接続部の連結を吐水管本体の外側において行えるので、組付け性を高めることができ、しかも、上流接続部は吐水管本体の軸方向にスライド可能となっているので、インナーホースの若干の長短はこのスライド調整によって解消・吸収され、構造安定性が高まることにもなる。
【0012】
また、インナーホースに下流接続部を連結した後、この下流接続部を吐水管本体内へ挿入する際、必要以上に下流接続部が吐水管本体の上流側へと押し込まれてしまうことは、受け座によって確実に防止することができる。
【0013】
請求項に係る発明の水栓では、吐水時に下流接続部が吐出口から飛び出すようなことがなく、インナーホースが吐水管本体内に安定した状態で収まることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る水栓の構成を一部を切断して概略的に示す正面図である。
図2】前記水栓の要部の構成を概略的に示す縦断面図である。
図3】(A)及び(B)は、前記水栓の上流部及び下流部の構成を概略的に示す縦断面図である。
図4】(A)は前記水栓の吐水管本体の縦断面図、(B)は同図(A)と平面視において直交する方向に切断したときの吐水管本体の基部の縦断面図、(C)は(A)のC-C線切断端面図、(D)は(B)のD部拡大図、(E)は(A)のE-E線切断端面図、(F)は(A)のF部拡大図、(G)は(B)のG部拡大図である。
図5】(A)は前記水栓のベースの正面図、(B)はベースの底面図、(C)はベースの縦断面図、(D)は(B)及び(C)のD-D線切断断面図、(E)は(A)のE-E線切断断面図、(F)は(A)のF-F線切断断面図である。
図6】(A)は前記水栓の上流接続部の構成を概略的に示す説明図、(B)は(A)のB部拡大図である。
図7】(A)は前記水栓のカバーの平面図、(B)は(A)のA-O-A線切断断面図、(C)は(B)のB部拡大図である。
図8】(A)~(C)は、前記水栓の連結バンドの構成を概略的に示す正面図、側面図及び背面図である。
図9】前記水栓の下流接続部の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1に示す水栓1は、給水配管P1及び給湯配管P2が接続され、吐出する湯水の温度調整及び流量調整が可能な湯水混合水栓である。すなわち、ハンドル2を向かって右方向に回動すると吐出口3から吐出される湯水の温度が上昇し、逆に左方向に回動すると下降する。また、図2に示すように、ハンドル2が実線の位置(上下に延びる位置)にあるときは止水され、これを傾けるほど吐出口3から吐出される湯水の流量が大きくなる。
【0017】
そして、本例の水栓1は、図1図3に示すように、中空の吐水管本体4(図4(A)~(G)も参照)と、吐水管本体4の内部を通る通水用のインナーホース5と、インナーホース5の上流端部に設けられた上流接続部6と、吐水管本体4の上下方向に延びる基部7内に設けられ、上流接続部6を吐水管本体4の軸方向にスライド可能に保持する上流保持部8と、インナーホース5の下流端部に設けられた下流接続部9と、吐水管本体4の先端部10内に設けられ、下流接続部9の吐水管本体4の上流側への移動を阻止し下流側への移動を許容する受け座11とを具備し、上流保持部8によって上流接続部6が保持される範囲でインナーホース5を吐水管本体4の先端側へ引き出し可能(図3(B)参照)に構成されている。
【0018】
なお、吐水管本体4は金属製の部材であり、インナーホース5は、有害物質等の浸出が無い乃至少ない合成樹脂(例えば塩化ビニル樹脂)によって形成された可撓管である。
【0019】
以下、水栓1の具体的な構造について説明する。
【0020】
吐水管本体4は、図4(A)に示すように、グースネック状(「し」の字を上下逆さにした形状)を呈し、図4(B)及び(D)に示すように、その基部7には、側方に向かって延び、その先端側が開口した筒状の収容部12が設けられ、この収容部12には、ハンドル2によって操作される弁構造を内蔵したカートリッジ13(図2参照)が収容される。
【0021】
この吐水管本体4の基部7内において収容部12に対応する位置には、図2に示すように、カートリッジ13を支持するとともに所定の流路を形成するためのベース14(図5(A)~(F)参照)が挿入配置される。
【0022】
図5(A)~(F)に示すベース14は、略円柱状を呈する部材であり、底部に給水配管P1、給湯配管P2が接続され、ベース14内において、給水配管Pに連通する給水路15、給湯配管P2に連通する給湯路16が、それぞれベース14前側のカートリッジ支持面17にまで繋がるように延びている。すなわち、給水路15、給湯路16を経た湯水は、カートリッジ支持面17からカートリッジ13内に至り、カートリッジ13内で適宜の割合で混合され、混合後の湯水は、カートリッジ支持面17からベース14内の連絡路18を経てベース14の上部に至る。
【0023】
ベース14の上部には、図5(C)及び(D)に示すように、上方に開口した筒状のケース部19が設けられていて、その中に上流接続部6(図6(A)及び(B)参照)が挿入される(図2図3(A)参照)。
【0024】
図6(A)及び(B)に示すように、上流接続部6は、略筒状の部材であり、その基端部6aがインナーホース5に連結され、その先端部6bは拡径し、その外周面には止水部材(Oリング)20(図3(A)参照)が装着され、ケース部19の内壁に密着するように構成されている。従って、連絡路18からの湯水は、上流接続部6内を経てインナーホース5へと送られるのであり、上流接続部6とケース部19の隙間から漏れることは止水部材20によって防止される。
【0025】
一方、図2及び図3(A)に示すように、ケース部19にはカバー21(図7(A)~(C)参照)が装着されるのであり、本例では、ケース部19の上部外周面に雄ねじが設けられ、これに螺合する雌ねじがカバー21に設けられている。そして、カバー21の中央には貫通孔21aが形成されていて、この貫通孔21aの内径は、上流接続部6の中央部6c(図6(A)参照)の外径よりも大きい。
【0026】
すなわち、ケース部19及びカバー21は、上流接続部6を吐水管本体4の軸方向にスライド可能に保持する上流保持部8を構成している。
【0027】
また、上流接続部6の基端部6aとインナーホース5との連結は、例えば図8(A)~(C)に示す連結バンド22を用いて行われる。そして、インナーホース5の下流側には下流接続部9(図9参照)が連結されるのであり、この連結にも連結バンド22を用いることができる。
【0028】
図9に示すように、下流接続部9は、略筒状の部材であり、その基端部9aがインナーホース5に連結され、その先端部9bは拡径し、その外周面には止水部材(Oリング)20(図3(B)参照)が装着され、吐水管本体4の先端部10の内壁に密着するように構成されている。
【0029】
そして、図1及び図3(B)に示すように、吐水管本体4の先端部10内には、下流接続部9の先端部9bを支持する受け座11が設けられており、この受け座11は、先端部9bが吐水管本体4の上流側へ移動することを阻止する一方、下流接続部9が吐水管本体4の下流側へ移動することは許容する。
【0030】
但し、先端部9bが受け座11に支持されている(当接している)状態で、吐水管本体4の先端部10には泡沫器23(図1参照)が着脱自在に装着されるのであり、この泡沫器23が装着された状態では、下流接続部9を吐水管本体4の下流側へと移動させることは不可能となる。すなわち、泡沫器23は、下流接続部9が吐水管本体4の下流側へと移動することを阻止する阻止部材として機能する。
【0031】
以上のように構成された本例の水栓1において、吐水管本体4内にインナーホース5を設けるには、まず、インナーホース5の上流側に上流接続部6を連結し、この上流接続部6を上流保持部8に保持させる。続いて、図3(B)に示すように、吐水管本体4の下流側からインナーホース5の下流端を引き出し、下流接続部9をインナーホース5に連結した後、インナーホース5を吐水管本体4の内側に戻して受け座11によって下流接続部9の先端部9aが支持される状態とする。最後に、吐水管本体4の先端部10に泡沫器23を装着することにより、吐水時に下流接続部9が吐出口3から飛び出すようなことがなく、インナーホース5が吐水管本体4内に安定した状態で収まることになる。
【0032】
而して、本例の水栓1では、上流保持部8によって上流接続部6が保持される範囲(先端部6aがケース部19とカバー21とで構成される空間に収まる範囲)でインナーホース5を吐水管本体4の先端側へ引き出し可能(図3(B)参照)に構成されており、インナーホース5への下流接続部9の連結を吐水管本体4の外側において行えるので、組付け性を高めることができ、しかも、上流接続部6は吐水管本体4の軸方向にスライド可能となっているので、インナーホース5の若干の長短はこのスライド調整によって解消・吸収され、構造安定性が高まることにもなる。
【0033】
また、インナーホース5に下流接続部9を連結した後、この下流接続部9を吐水管本体4内へ挿入する際、必要以上に下流接続部9が吐水管本体4の上流側へと押し込まれてしまうことは、受け座11によって確実に防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0035】
上記実施形態の水栓10は湯水混合水栓であるが、本発明は、湯水混合水栓に限らず、例えば水のみを吐出する単水栓等にも適用可能である。
【0036】
上記実施形態の吐水管本体4はグースネック状をしているが、これに限らず、本発明は、ストレート管など他の形状の吐水管本体4にも適用可能である。
【0037】
上記実施形態では、泡沫器23によって下流接続部9が吐水管本体4の下流側へと移動することを阻止するようにしているが、これに限らず、例えばCリング等の他の阻止部材を先端部10(例えば先端部10の内側)に着脱自在に装着するようにして下流接続部9の下流側への移動を阻止するようにしてもよい。
【0038】
図1に示す水栓1は、吐水管本体4の首振り(鉛直軸回りの回動)は不可能であるが、首振り可能なものでもよく、この場合でも、インナーホース5の両端に連結される上流接続部6及び下流接続部9の各々の軸回りの回転は許容されるため、インナーホース5のねじれを回避可能である。
【0039】
上記実施形態では、ケース部19及びカバー21(すなわち吐水管本体4とは別の部材のみ)によって上流保持部8を構成しているが、これに限らず、例えば吐水管本体4の一部を上流保持部8の構成に利用するようにしてもよい。また、上記実施形態では、吐水管本体4(先端部10)自体に受け座11を設けているが、これに限らず、例えば吐水管本体4とは別に受け座11を構成する部材を設け、この部材を先端部10に取り付けるようにしてもよい。
【0040】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 水栓
2 ハンドル
3 吐出口
4 吐水管本体
5 インナーホース
6 上流接続部
6a 基端部
6b 先端部
7 基部
8 上流保持部
9 下流接続部
9a 基端部
9b 先端部
10 先端部
11 受け座
12 収容部
13 カートリッジ
14 ベース
15 給水路
16 給湯路
17 カートリッジ支持面
18 連絡路
19 ケース部
20 止水部材
21 カバー
21a 貫通孔
22 連結バンド
23 泡沫器
P1 給水配管
P2 給湯配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9