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  • 特許-接合材料及びそれを用いた接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】接合材料及びそれを用いた接合方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 1/00 20060101AFI20220104BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220104BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09J1/00
B22F7/04 A
C09J11/06
C09J5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018120998
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002213
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 正和
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高村 雅彦
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167436(JP,A)
【文献】特開2011-122177(JP,A)
【文献】特開昭54-99042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/00
B22F 7/00- 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩とヒドロキシ基数3~12のアルコールとを含有することを特徴とする接合材料。
【請求項2】
前記ヒドロキシカルボン酸の炭素数が2~4であることを特徴とする請求項1に記載の接合材料。
【請求項3】
金属部材の被接合面と非接合部材の被接合面との間に、請求項1又は2に記載の接合材料を用いて接合材料層を形成する工程と、
前記接合材料層を加熱して前記接合材料を焼結せしめて接合層を形成し、該接合層を介して前記金属部材と前記非接合部材とを接合せしめる工程と、
を含むことを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材料及びそれを用いた接合方法に関し、より詳しくは、銅化合物を含有する接合材料及びそれを用いた接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の多くは、金属部材からなる回路層の上に半導体素子が接合された構造となっている。半導体素子等の電子部品を回路層上に接合する際には、はんだ材を用いた方法が広く使用されているが、半導体素子自体の耐熱性が向上したことで、半導体装置が自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用されることが多くなり、接合材料に耐熱性が要求されている。しかしながら、はんだ材を使用して半導体素子等の電子部品と回路層とを接合した場合、これを高温環境下で使用すると、はんだの一部が溶融してしまい、半導体素子等の電子部品と回路層との接合信頼性が低下することが問題となっている。
【0003】
そこで、はんだ材の代替として、耐熱性・高い熱伝導率・導電性を有する、銀や銅等を用いて半導体素子等の電子部品を回路層に接合する技術が提案されている。例えば、特開2008-208442号公報(特許文献1)には、酸化銅等の金属化合物粒子とエチレングリコール等の還元剤とを含有する接合材料を用いた接合方法が記載されている。この接合方法では、接合層中の還元剤等の有機物を効率よく除去するために、被接合層の接合界面に酸化物層を形成しているが、この酸化物層を形成するために被接合部材を高温の水蒸気に曝したり、アルカリ溶液中に浸漬したりする必要があるため、半導体素子等の電子部品の損傷や劣化を引き起こすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-208442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、被接合部材に酸化物層を形成する必要がなく、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)でも高い接合強度が得られる接合材料及びそれを用いた接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩とヒドロキシ基数3~12のアルコールとを含有する接合材料を用いて接合することによって、被接合部材に酸化物層を形成する必要がなく、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)でも高い接合強度が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の接合材料は、炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩とヒドロキシ基数3~12のアルコールとを含有することを特徴とするものである。このような接合材料においては、前記ヒドロキシカルボン酸の炭素数が2~4であることが好ましい。
【0008】
本発明の接合方法は、金属部材の被接合面と非接合部材の被接合面との間に、請求項1又は2に記載の接合材料を用いて接合材料層を形成する工程と、前記接合材料層を加熱して前記接合材料を焼結せしめて接合層を形成し、該接合層を介して前記金属部材と前記非接合部材とを接合せしめる工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0009】
なお、本発明の接合材料を用いて接合することによって、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)でも高い接合強度が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の接合材料には、炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩とヒドロキシ基数3~12のアルコールとが含まれている。前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩は自己還元機構により低い温度で分解して金属銅を生成する。このとき、反応系内にヒドロキシ基数3~12のアルコールが存在すると、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩が分解する際の酸素の混入が阻止される。その結果、本発明の接合材料を大気中で焼成しても酸化銅の生成が抑制されるため、酸化銅が含まれていない接合層が形成される。また、前記ヒドロキシ基数3~12のアルコールは、前記ヒドロキシカルボン酸銅の分解温度において分解されて揮発するため、被接合部材に酸化物層を形成しなくても、十分に除去され、接合層に残存しにくい。このように、本発明の接合材料を用いて形成される接合層は、金属銅からなり、酸化銅や有機成分が含まれていないため、高い接合強度を有すると推察される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被接合部材に酸化物層を形成する必要がなく、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)でも高い接合強度で接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】接合強度測定において使用した試験片を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
〔接合材料〕
先ず、本発明の接合材料について説明する。本発明の接合材料は、炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩とヒドロキシ基数3~12のアルコールとを含有するものである。
【0014】
(ヒドロキシカルボン酸の銅塩)
本発明に用いられるヒドロキシカルボン酸の銅塩は炭素数1~6のヒドロキシカルボン酸の銅塩(以下、単に「ヒドロキシカルボン酸の銅塩」ともいう)である。ヒドロキシカルボン酸の炭素数が前記上限を超えると、自己還元機構によって生成する金属銅粒子の割合が小さくなるため、接合強度が低下する。本発明の接合材料においては、このヒドロキシカルボン酸の銅塩が加熱により分解して金属銅が生成することによって、高い接合強度を有する接合層を形成することができる。
【0015】
このようなヒドロキシカルボン酸の銅塩としては、例えば、炭酸水素銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:1);グリコール酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:2);ヒドロキシプロピオン酸銅(例えば、乳酸銅)、グリセリン酸銅(以上、ヒドロキシカルボン酸の炭素数:3);ヒドロキシ酪酸銅、メチル乳酸銅、ヒドロキシシクロプロパンカルボン酸銅、リンゴ酸銅、酒石酸銅(以上、ヒドロキシカルボン酸の炭素数:4);ヒドロキシ吉草酸銅、ヒドロキシイソ吉草酸、ジメチロールプロピオン酸銅、ヒドロキシピバル酸銅(以上、ヒドロキシカルボン酸の炭素数:5);ヒドロキシヘキサン酸銅、ジメチロール酪酸銅、グルコン酸銅(以上、ヒドロキシカルボン酸の炭素数:6)が挙げられる。このようなヒドロキシカルボン酸の銅塩は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、これらのヒドロキシカルボン酸の銅塩の中でも、自己還元反応における発熱が穏やかであり、均一な接合面を形成しやすく、金属銅粒子の割合が多くなるため、高い接合強度が得られるという観点から、炭素数2~4のヒドロキシカルボン酸の銅塩が好ましく、炭素数2~3のヒドロキシカルボン酸の銅塩がより好ましい。
【0017】
本発明の接合材料において、このようなヒドロキシカルボン酸の銅塩の含有量としては特に制限はないが、接合材料中にヒドロキシカルボン酸の銅塩が均一に分散しやすく、高い接合強度が得られるという観点から、接合材料全体に対して、5~80質量%が好ましく、10~65質量%がより好ましく、15~50質量%が更に好ましい。
【0018】
(アルコール)
本発明に用いられるアルコールはヒドロキシ基数3~12のアルコール(以下、単に「多価アルコール」ともいう)である。このようなヒドロキシ基数を有するアルコールは、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩の分解温度付近の熱重量減少温度(150~300℃)を有しており、焼成時(接合時)に分解して除去されるため、接合層に残存しにくい。一方、ヒドロキシ基が前記下限未満になると、焼成時(接合時)に非酸化雰囲気を形成できないため、接合強度が低下する。他方、ヒドロキシ基が前記上限を超えると、焼成後も有機成分として残存しやすいため、接合強度が低下する。本発明の接合材料においては、この多価アルコールが、ヒドロキシカルボン酸の銅塩が分解して生成する金属銅への酸素の混入を阻止するため、高い接合強度を有する接合層を形成することができる。
【0019】
前記多価アルコールは、式:R(OH)〔nは3~12の整数〕で表されるアルコールであり、炭素鎖Rは直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。直鎖状の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ブタントリオール(以上、ヒドロキシ基数:3);エリトリトール、トレイトール、ジグリセリン(以上、ヒドロキシ基数:4);アラビトール、キシリトール、リビトール、トリグリセリン(以上、ヒドロキシ基数:5);イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール(以上、ヒドロキシ基数:6);ボレミトール、ペルセイトール(以上、ヒドロキシ基数:7)が挙げられる。また、分岐状の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン(以上、ヒドロキシ基数:3);ペンタエリスリトール(ヒドロキシ基数:4);ジペンタエリトリトール(ヒドロキシ基数:6)が挙げられる。さらに、環状の多価アルコールとしては、例えば、シクロヘキサントリオール(ヒドロキシ基数:3);クエルシトール、グルコース、ガラクトース、フルクトース(以上、ヒドロキシ基数:5);イノシトール(ヒドロキシ基数:6)スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース(以上、ヒドロキシ基数:8);マルトトリオース(ヒドロキシ基数:11)が挙げられる。このような多価アルコールは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、これらの多価アルコールの中でも、効率的に非酸化雰囲気を形成することができ、高い接合強度が得られるという観点から、ヒドロキシ基数3~8のアルコールが好ましく、ヒドロキシ基数3~4のアルコールがより好ましい。さらに、焼成時(接合時)に分解除去されやすく、接合層に残存しにくいという観点から、前記多価アルコールの300℃までの加熱による熱重量減少率としては、70~100%が好ましく、85~100%がより好ましい。
【0021】
本発明の接合材料において、このような多価アルコールの含有量としては特に制限はないが、大気中の酸素の混入を防ぎ、効率的に非酸化雰囲気を形成することができるため、高い接合強度が得られるという観点から、接合材料全体に対して、1~95質量%が好ましく、10~75質量%がより好ましく、20~55質量%が更に好ましい。
【0022】
(溶媒)
本発明の接合材料をペースト状として使用する場合には、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩及び前記多価アルコールに溶媒を添加してもよい。このような溶媒としては、例えば、水、アルコール(グリコール含む)、ケトン、エーテル(グリコールエーテル含む)、エステル(環状エステルを含む)、極性脂環式炭化水素、アミド、スルホキシド等が挙げられる。
【0023】
水としては、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。アルコールとしては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1-オクタノール、テルピネオール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。ケトンとしては、イソホロン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。エーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステルとしては、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート等が挙げられる。極性脂環式炭化水素としては、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。アミドとしては、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、このような溶媒の中でも、焼成後に接合層に残存しにくいため、高い接合強度が得られるという観点から、沸点が350℃以下の溶媒が好ましく、沸点が300℃以下の溶媒がより好ましい。
【0025】
本発明の接合材料において、このような溶媒の含有量としては特に制限はないが、接合材料ペースト全体に対して、0~94質量%が好ましい。
【0026】
(分散剤)
本発明の接合材料においては、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩の分散性を向上させるために、分散剤を配合してもよい。このような分散剤としては、焼成時(接合時)に残留が少なく、接合材料の性能(接合強度)に影響を及ぼしにくいものが好ましく、例えば、300℃までの加熱による熱重量減少率が70~100%(より好ましくは85~100%)である、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、キレート剤が好ましい。
【0027】
アニオン界面活性剤としては、石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、ポリオキシプロピレンのアルキレンオキサイド付加物等のポリアルキレングリコール型ノニオン界面活性剤;グリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の多価アルコール型ノニオン界面活性剤が挙げられる。なお、前記高級アルコールは、通常、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の全炭素数が8~22の高級アルコールであり、アルキルフェノールは、通常、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の全炭素数が7~22のアルキルフェノールであり、脂肪酸は、通常、飽和又は不飽和の全炭素数が10~22の脂肪酸であり、多価アルコールは、通常、全炭素数が3~12の多価アルコールであり、高級アルキルアミンは、通常、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の全炭素数が8~22の高級アルキルアミンである。キレート剤としては、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。これらの分散剤は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の接合材料において、このような分散剤の含有量としては、接合材料の取扱性の観点から、接合材料全体に対して、0.01~40質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0029】
(その他の添加剤)
本発明の接合材料においては、塗工性を向上させたり、接合を促進させたりするために、バインダー、フラックスを配合してもよい。これらのバインダー、フラックスは、接合強度の観点から、300℃までの加熱による熱重量減少率が70~100%(より好ましくは85~100%)のものが好ましい。また、接合を促進させたりするために、金属成分を添加してもよい。
【0030】
前記バインダーとしては、有機バインダー及び無機バインダーのいずれであってもよい。また、前記有機バインダーは粘度調整機能を有していてもよい。前記有機バインダーとしては、水溶化樹脂や水性樹脂等が挙げられる。具体的には、各種変性ポリエステル樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂)、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミド、変性セルロース類(例えば、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP))、ビニル系樹脂(例えば、酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース樹脂(例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース)、DAP樹脂(ジアリルフタレート樹脂)、ポリオレフィン樹脂、合成ゴムラテックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、パラフィン等が挙げられる。無機バインダーとしては、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等が挙げられる。これらのバインダーは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記フラックスとしては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、安息香酸、アビエチン酸等のモノカルボン酸;コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸;グリコール酸、乳酸、DL-グリセリン酸、DL-2-ヒドロキシ酪酸、DL-3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-n-オクタン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらのフラックスは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記金属成分は、その構成成分、粒子径等に特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができる。また、金属粒子には、製法上不可避の酸素、異種金属等の不純物を含有していてもよく、金属粒子の急激な酸化防止のために必要に応じて予め酸素、金属酸化物やメルカプトカルボン酸以外の有機化合物などが含まれていてもよい。
【0033】
前記金属成分としては、導電性の観点から、周期表VIII族(鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)及びIB族(銅、銀、金)の金属が好ましい。このような金属成分は、1種の金属であっても、2種以上の金属(例えば、合金、積層体)であってもよい。
【0034】
本発明の接合材料において、このような添加剤の含有量としては、接合材料の取扱性の観点から、接合材料全体に対して、0.01~40質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
【0035】
(製造方法)
本発明の接合材料は、例えば、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩と前記多価アルコールと、必要に応じて溶媒等とを、撹拌混合することによって製造することができる。このような撹拌混合に用いられる混合機としては特に制限はなく、例えば、ホモミキサー、アジテイター、ディスパー、プラネタリーミキサー、アジホモミキサー、ユニバーサルミキサー、アトライター、自転・公転方式混合機等の混合機を適宜選択して使用することができる。これらの混合機は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0036】
<接合方法>
次に、本発明の接合方法について説明する。本発明の接合方法は、金属部材の被接合面と被接合部材の被接合面との間に、前記本発明の接合材料を用いて接合材料層を形成する工程と、前記接合材料層を加熱して前記接合材料を焼結せしめて接合層を形成し、該接合層を介して前記金属部材と前記被接合部材とを接合せしめる工程と、を含む方法である。
【0037】
前記金属部材としては導電性を有する金属部材であれば特に制限はなく、例えば、半導体装置等の電子部品の電極や配線等の回路層が挙げられる。また、前記金属部材を構成する金属の種類としては特に制限はなく、金、銀、銅、ニッケル等が挙げられる。さらに、前記被接合部材としては電子部材であれば特に制限はなく、例えば、半導体素子等が挙げられる。
【0038】
このような本発明の接合方法において、金属部材の被接合面と被接合部材の被接合面との間に形成された接合材料層の配置状態としては、例えば、
(1)金属部材の被接合面と被接合部材の被接合面との間のみに接合材料層が配置されている状態、
(2)金属部材の被接合面と被接合部材の被接合面の両被接合面の外縁部のみに接合材料層が配置されている状態、
(3)金属部材の被接合面と被接合部材の被接合面との間及びの両被接合面の外縁部に接合材料層が配置されている状態、
等が挙げられる。
【0039】
本発明の接合方法において、前記接合材料層を形成する方法としては、例えば、金属部材(例えば、基板上の電極)及び/又は被接合部材(例えば、電子部品の接続部)の必要部分(前記接合材料層を形成する領域)に、インクジェット法により微細なノズルからペースト状の前記接合材料を噴出させて前記接合材料を塗布、付着、注入、コーティング又は充填等する方法;開口したメタルマスクやメッシュ状マスクを用いて前記接合材料を塗布、付着、注入、コーティング又は充填等する方法;ディスペンサを用いて前記接合材料を塗布、付着、注入、コーティング又は充填等する方法等が挙げられる。これらの方法は、接合する金属部材(例えば、基板上の電極)及び被接合部材(例えば、電子部品の接続部)の面積、形状等に応じて適宜選択する又は組み合わせることが可能である。
【0040】
本発明の接合方法における前記接合材料の配置量(前記接合材料層の大きさ等)は、接合する金属部材(例えば、基板上の電極)及び被接合部材(例えば、電子部品の接続部)の面積、接合強度等に応じて適宜設定することができ、特に制限されない。
【0041】
また、本発明の接合方法において、前記接合材料を焼結せしめる際の加熱温度(焼成温度)としては前記接合材料が溶融、焼結する温度であれば特に制限はないが、前記ヒドロキシカルボン酸の銅塩の分解温度である235℃以上400℃以下であることが好ましく、反応性の観点から、250℃以上400℃以下であることがより好ましく、250℃以上350℃以下であることが更に好ましい。前記加熱温度が前記上限を超えると、電子部品等の被接合部材が熱により損傷(例えば、溶融、変形等)を受けやすくなる傾向にある。
【0042】
さらに、本発明の接合方法において、前記接合材料を焼結せしめる際の圧力としては、前記金属部材と前記被接合部材とが接合される圧力であれば無加圧でもよいが、接合を促進させるという観点から、加圧してもよい。このような接合時の圧力としては、例えば、0~20MPaが好ましく、0~15MPaがより好ましく、電子部品等の被接合部材の損傷を抑制するという観点から、0~10MPaが更に好ましく、0~1MPaが特に好ましい。
【0043】
また、本発明の接合方法において、前記接合材料を焼結せしめる際の加熱時間(焼成時間)としては前記接合材料が十分に溶融、焼結する時間であれば特に制限はないが、1~120分間であることが好ましく、30~90分間であることがより好ましく、60~90分間であることが更に好ましい。
【0044】
さらに、本発明の接合方法において、接合材料層を形成したり、加熱したりする際の雰囲気としては特に制限はなく、例えば、空気雰囲気、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)雰囲気、又は還元雰囲気(例えば、水素ガス雰囲気)等のいずれの雰囲気でもよい。
【実施例
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したアルコール等の熱重量減少温度及び熱重量減少率は以下の方法により測定した。
【0046】
<熱重量分析>
熱重量分析装置(株式会社リガク製「TG-DTA8122」)を用いて、大気中、10℃/minの昇温速度でTG曲線を求め、得られたTG曲線における熱重量減少の外挿温度(熱重量減少開始前部分における接線と熱重量減少開始後の変極点における接線を取った際の2つの接線の交点)を熱重量減少温度とした。また、得られたTG曲線に基づいて、50℃及び300℃における質量を求め、下記式:
熱重量減少率(%)={1-(300℃での質量)/(50℃での質量)}×100
により熱重量減少率を求めた。
【0047】
(実施例1)
乳酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:3)37質量部とペンタエリスリトール(ヒドロキシ基数:4、熱重量減少温度:249℃、熱重量減少率:90%)33質量部とテルピネオール30質量部とを混合し、さらに、自転・公転方式混合機(株式会社シンキー製「SR-500」)を用いて2000rpmで3分間攪拌して接合材料ペーストを調製した。
【0048】
この接合材料ペースト25mgを銅板A(縦50mm、横10mm、厚み1.6mm)の表面にマスクを使用して縦10mm、横10mmの領域に塗布した。塗布後、マスクを除去し、60℃で30分間の予備乾燥を行なった。予備乾燥後の銅板Aのペースト膜の上に、銅板Aと同様にしてペースト膜を作製した銅板B(縦50mm、横10mm、厚み1.6mm)をペースト膜同士が接するように配置した後、空気雰囲気中、260℃の温度条件で、銅板Bの上部からクランプを用いて0.5MPaの圧力で90分間加圧しながら焼成して接合層(縦10mm、横10mm)を介して銅板Aと銅板Bを接合し、図1に示す接合強度測定用試験片を作製した。この試験片は3個作製した。なお、前記銅板A及び銅板Bは、予めアセトンを用いて脱脂処理をした後、蒸留水で洗浄したものを用いた。
【0049】
(実施例2)
乳酸銅の代わりにグリコール酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:2)37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0050】
(実施例3)
乳酸銅の代わりにリンゴ酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:4)37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0051】
(実施例4)
乳酸銅の代わりに酒石酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:4)37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0052】
(実施例5)
ペンタエリスリトールの代わりにジグリセリン(ヒドロキシ基数:4、熱重量減少温度:257℃、熱重量減少率:98%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0053】
(実施例6)
ペンタエリスリトールの代わりにグリセリン(ヒドロキシ基数:3、熱重量減少温度:193℃、熱重量減少率:100%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0054】
(実施例7)
ペンタエリスリトールの代わりにトリメチロールプロパン(ヒドロキシ基数:3、熱重量減少温度:194℃、熱重量減少率:100%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0055】
(実施例8)
ペンタエリスリトールの代わりにキシリトール(ヒドロキシ基数:5、熱重量減少温度:269℃、熱重量減少率:63%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0056】
(実施例9)
ペンタエリスリトールの代わりにラクトース(ヒドロキシ基数:8、熱重量減少温度:226℃、熱重量減少率:48%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0057】
(実施例10)
乳酸銅の量を52質量部に、ペンタエリスリトールの量を18質量部に変更した以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0058】
(実施例11)
乳酸銅の量を35質量部に、ペンタエリスリトールの量を35質量部に変更した以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0059】
(実施例12)
乳酸銅の量を18質量部に、ペンタエリスリトールの量を52質量部に変更した以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0060】
(実施例13)
実施例1と同様にして調製した接合材料ペースト25mgを銅板A(縦50mm、横10mm、厚み1.6mm)の表面にマスクを使用して縦10mm、横10mmの領域に塗布した。塗布後、マスクを除去し、銅板Aのペースト膜の上に、銅板Aと同様にしてペースト膜を作製した銅板B(縦50mm、横10mm、厚み1.6mm)をペースト膜同士が接するように配置した後、空気雰囲気中、260℃の温度条件で圧力を印加せずに90分間焼成して銅板Aと銅板Bを接合し、接合強度測定用試験片を作製した。この試験片は3個作製した。なお、前記銅板A及び銅板Bは、予めアセトンを用いて脱脂処理をした後、蒸留水で洗浄したものを用いた。
【0061】
(実施例14)
接合時の印加圧力を1MPaに変更した以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0062】
(実施例15)
接合時の焼成温度を245℃に変更した以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0063】
(実施例16)
接合時の焼成温度を275℃に、焼成時間を60分間に変更した以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0064】
(実施例17)
接合時の焼成温度を290℃に、焼成時間を30分間に変更した以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0065】
(比較例1)
乳酸銅の代わりに2-ヒドロキシ-n-オクタン酸銅(ヒドロキシカルボン酸の炭素数:8)37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0066】
(比較例2)
乳酸銅の代わりに酢酸銅37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0067】
(比較例3)
乳酸銅の代わりにギ酸銅37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0068】
(比較例4)
乳酸銅の代わりにカプリル酸銅37質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0069】
(比較例5)
ペンタエリスリトールの代わりにテルピネオール(ヒドロキシ基数:1、熱重量減少温度:92℃、熱重量減少率:100%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0070】
(比較例6)
ペンタエリスリトールの代わりにデカノール(ヒドロキシ基数:1、熱重量減少温度:125℃、熱重量減少率:100%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0071】
(比較例7)
ペンタエリスリトールの代わりにジエチレングリコール(ヒドロキシ基数:2、熱重量減少温度:142℃、熱重量減少率:100%)33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0072】
(比較例8)
ペンタエリスリトールの代わりに酢酸33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0073】
(比較例9)
ペンタエリスリトールの代わりにギ酸33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0074】
(比較例10)
ペンタエリスリトールの代わりに乳酸33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0075】
(比較例11)
ペンタエリスリトールの代わりに塩酸33質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0076】
(比較例12)
乳酸銅の量を55質量部に、テルピネオールの量を45質量部に変更し、ペンタエリスリトールを使用しなかった以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0077】
(比較例13)
乳酸銅の代わりに酸化銅37質量部を、ペンタエリスリトールの代わりにエチレングリコール33質量部を、テルピネオールの代わりにトルエン30質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0078】
(比較例14)
乳酸銅の代わりに酸化銅37質量部を、ペンタエリスリトールの代わりにアスコルビン酸33質量部を、テルピネオールの代わりにトルエン30質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0079】
(比較例15)
乳酸銅の代わりに酢酸銀37質量部を、ペンタエリスリトールの代わりにエチレングリコール33質量部を、テルピネオールの代わりにトルエン30質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0080】
(比較例16)
乳酸銅の代わりに酢酸銀37質量部を、ペンタエリスリトールの代わりにアスコルビン酸33質量部を、テルピネオールの代わりにトルエン30質量部を用いた以外は実施例1と同様にして接合材料ペーストを調製した。さらに、この接合材料ペーストを用いた以外は実施例1と同様にして銅板Aと銅板Bを接合して接合強度測定用試験片を作製した。
【0081】
<接合強度測定>
実施例及び比較例で得られた接合強度測定用試験片における接合強度を精密万能試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-IS」)を用いて測定した。すなわち、図1に示すように、接合強度測定用試験片の銅板Aと銅板Bにそれぞれ穴を開け、この穴にワイヤーを通してせん断速度1mm/minで引張試験を行い、破断時の最大荷重を測定した。この最大荷重を接合面積(縦10mm×横10mm)で除し、接合強度(せん断強度)を求めた。この測定を3個の試験片について行い、その平均値を求めた。得られた接合強度(平均値)を下記基準で評価した。その結果を表1~表5に示す。
A:4MPa以上。
B:1MPa以上4MPa未満。
C:1MPa未満。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
表1~表2に示したように、本発明の接合材料は、銅板同士を300℃以下の低温で高い接合強度で接合することが可能であることがわかった。表2に示したように、焼成温度が260~275℃の場合に接合強度は特に高くなることがわかった。
【0088】
また、表1に示したように、ヒドロキシカルボン酸銅として、乳酸銅又はグリコール酸銅を用いた場合(実施例1~2)には、リンゴ酸銅又は酒石酸銅を用いた場合(実施例3~4)に比べて接合強度が高くなることがわかった。さらに、アルコールとして、ペンタエリスリトール、ジグリセリン又はグリセリンを用いた場合(実施例5~7)には、キシリトール又はラクトースを用いた場合(実施例8~9)に比べて接合強度が高くなることがわかった。
【0089】
一方、表3~表4に示したように、ヒドロキシカルボン酸銅として、炭素数8のヒドロキシカルボン酸の銅塩(2-ヒドロキシ-n-オクタン酸銅)を用いた場合(比較例1)、ヒドロキシカルボン酸銅の代わりにヒドロキシ基を有しないカルボン酸の銅塩(酢酸銅、ギ酸銅、カプリル酸銅)を用いた場合(比較例2~4)、ヒドロキシ基数3~12のアルコールの代わりにヒドロキシ基1~2のアルコールを用いた場合(比較例5~7)、ヒドロキシ基数3~12のアルコールの代わりに酸を用いた場合(比較例8~11)、ヒドロキシ基数3~12のアルコールを用いなかった場合(比較例12)には、銅板同士を260℃で接合することが困難であった。
【0090】
また、ヒドロキシカルボン酸銅の代わりに酸化銅又は酢酸銀を用い、ヒドロキシ基数3~12のアルコールの代わりにエチレングリコール又はアスコルビン酸を用いた場合(比較例13~16)にも、銅板同士を260℃で接合することが困難であった。
【0091】
以上の結果から、本発明の接合材料を用いて接合することにより、被接合部材に酸化物層を形成する必要がなく、また、大気中、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)で焼結することができ、さらに、優れた接合強度を有する接合層を形成できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明によれば、被接合部材に酸化物層を形成する必要がなく、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)でも高い接合強度で接合することが可能となる。
【0093】
したがって、本発明の接合材料は、金属部材と被接合部材との接合に用いられる接合材料として有用である。特に、本発明の接合材料は、より低い接合温度(例えば、400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下)での接合が可能であることから、半導体装置等の電子部品の電極や配線等の回路層等の金属部材と、半導体素子等の電子部材の被接合部材とを接合する際に用いられる接合材料として有用である。
【符号の説明】
【0094】
1:接合強度測定用試験片、11:銅板A、12:銅板B、13:接合層、2:ワイヤー
図1