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特許6991133身体測定値を有するオンライン記憶プロファイルに基づく個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】身体測定値を有するオンライン記憶プロファイルに基づく個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20220104BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/00 102C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018515488
(86)(22)【出願日】2016-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-11
(86)【国際出願番号】 IB2016055431
(87)【国際公開番号】W WO2017055953
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】62/233,476
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ペイ‐イン
(72)【発明者】
【氏名】ノエスター ジャープ
(72)【発明者】
【氏名】ジャジャディニングラット ヨハン パルトモ
(72)【発明者】
【氏名】キム セヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン レーンゴード マーレーン ヨハンナ ヤコバ
(72)【発明者】
【氏名】ルイ ウィング ラム
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0198308(US,A1)
【文献】特表2014-527865(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0170546(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0233129(US,A1)
【文献】特表2012-519456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/39
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置であって、前記ポータブル医療装置は、
前記対象者の識別情報を取得するためのユーザインターフェースと、
(i)少なくとも前記対象者の身体的寸法である物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ、及び(ii)前記ポータブル医療装置から所与の近接距離内に位置するスマートフォンのうちの少なくとも1つと通信する通信モジュールであって、更に、前記対象者の識別情報に応じて、前記リモートサーバ、又は前記スマートフォンのうちの少なくとも1つを介して、前記クラウドベースの電子健康記録を取り出すための前記通信モジュールと、
少なくとも前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じて、個人に合わせた治療を前記対象者に施すために前記ポータブル医療装置のユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するコントローラとを備える、
ポータブル医療装置。
【請求項2】
前記ユーザインターフェースは、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項3】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、除細動ショックを施すための前記対象者上の除細動電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項4】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、心肺蘇生(CPR)を施すためのCPR支援デバイス又は前記対象者の手の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項5】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、心電計(ECG)データを取得するための前記対象者上のECG電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項6】
前記ユーザインターフェースは、
拡張現実グラスを更に備え、前記拡張現実グラスは、前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを、(i)前記拡張現実グラスによって見た前記対象者の画像、及び(ii)前記対象者の前記物理的身体測定値の前記クラウドベースの電子健康記録に応じて、前記対象者への前記個人に合わせた治療の少なくとも一態様のための重畳ガイダンスとして提供する、
請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項7】
前記重畳ガイダンスは、(i)前記対象者の胸部における個人に合わせたCPR治療の場所の輪郭、(ii)前記対象者の胸部における個人に合わせた圧迫の深さ及び解放の実施を示す輪郭、及び(iii)前記対象者の胸部における個人に合わせた除細動電極の位置の輪郭のうちの少なくとも1つを備える、請求項6に記載のポータブル医療装置。
【請求項8】
前記重畳ガイダンスは、前記対象者の上半身におけるECG電極の個人に合わせた配置の輪郭を備える、請求項6に記載のポータブル医療装置。
【請求項9】
前記ユーザインターフェースは、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項6に記載のポータブル医療装置。
【請求項10】
前記ポータブル医療装置は、緊急用自動式体外式除細動器(AED)、緊急用CPRメトロノーム及び心電計(ECG)モニタからなる群から選択されるものを少なくとも1つ備える、請求項1に記載のポータブル医療装置。
【請求項11】
ユーザインターフェースと、通信モジュールと、コントローラとを備える、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置の作動方法であって、前記方法は、
前記ユーザインターフェースが、前記対象者の識別情報を取得するステップと、
前記通信モジュールが、(i)少なくとも前記対象者の身体的寸法である物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ、及び(ii)前記ポータブル医療装置から所与の近接距離内に位置するスマートフォンのうちの少なくとも1つと通信するステップであって、前記対象者の識別情報に応じて、前記リモートサーバ、又は前記スマートフォンのうちの少なくとも1つを介して、前記クラウドベースの電子健康記録を取り出すステップを更に含む、通信するステップと、
前記コントローラが、個人に合わせた治療を前記対象者に施すために前記ポータブル医療装置のユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップであって、前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、少なくとも前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じて生成される、
生成するステップと、
を有する、方法。
【請求項12】
前記ユーザインターフェースが取得するステップは、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つを介して取得するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、前記コントローラが、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、除細動ショックを施すための前記対象者上の除細動電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、前記コントローラが、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、心肺蘇生(CPR)を施すためのCPR支援デバイス又は前記対象者の手の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、前記コントローラが、前記クラウドベースの電子健康記録からの前記対象者の前記物理的身体測定値に応じた、心電計(ECG)データを取得するための前記対象者上のECG電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップ備える、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ユーザインターフェースは、拡張現実グラスを更に備え、前記方法は、
前記拡張現実グラスが、前記リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを、(i)前記拡張現実グラスによって見た前記対象者の画像、及び(ii)前記対象者の前記物理的身体測定値の前記クラウドベースの電子健康記録に応じて、前記対象者への前記個人に合わせた治療の少なくとも一態様のための重畳ガイダンスとして提供するステップをさらに備える、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記重畳ガイダンスは、(i)前記対象者の胸部における個人に合わせたCPR治療の場所の輪郭、(ii)前記対象者の胸部における個人に合わせた圧迫の深さ及び解放の実施を示す輪郭、及び(iii)前記対象者の胸部における個人に合わせた除細動電極の位置の輪郭のうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重畳ガイダンスは、前記対象者の上半身におけるECG電極の個人に合わせた配置の輪郭をさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポータブル医療装置は、緊急用自動式体外式除細動器(AED)、緊急用CPRメトロノーム及び心電計(ECG)モニタからなる群から選択されるものを少なくとも1つ備える、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法を実行するプロセッサによって実行可能な命令のコンピュータプログラムによって具現化される、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本実施形態は、概して、ポータブル医療装置に関し、より詳細には、身体測定値を有するオンライン記憶プロファイルに基づく個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)及びヨーロッパ蘇生協議会(European Resuscitation Council)によって広められているように、心肺蘇生(CPR:Cardio-Pulmonary Resuscitation)の質は、突然の心臓停止(SCA:Sudden Cardiac Arrest)の場合に人の生命を救うために重要である。高質のCPRを提供するためには、救助者が、正しい深さ(すなわち、犠牲者の胸部の圧迫)及び正しい速度(すなわち、圧迫の頻度)で行う必要がある。ガイドラインは、2インチの深さを推奨している。圧迫は身体内で血液を移動させて、生命維持に不可欠な臓器が酸素供給されている状態を保つ。加えて、適切な深さは、心臓を胸骨と脊柱との間に実質的にとどめ、血液を効果的に絞り出す。適切な深さで行われないと、CPRは不適切なものになってしまう。
【0003】
[0003] 犠牲者の胸部に「適正な」深さの圧迫を施す際に救助者をガイドするいくつかのCPRメトロノームが知られている。しかしながら、これらのものの欠点は、犠牲者の身体測定値にかかわらず、圧迫について一定の深さを想定していることである。図1は、ZOLL(商標)PocketCPR(商標)として知られているCPRメトロノームデバイス10の画像図を図示する。CPRメトロノームデバイス10は、その前面に、デバイスとCPRを施している間の犠牲者の胸部におけるその配置とについてのイラストレーションを含む。図2は、Philips(商標)CPRメトロノームとして知られている別のCPRメトロノームデバイス12の画像図を図示する。図2のCPRメトロノームデバイス12は、その前面に、参照番号14で示されるデバイスと、CPRを施している際の、参照番号16で示される犠牲者の胸部におけるその配置とについてのイラストレーションを含む。図2のデバイス12は、CPRパラメータ、例えば圧迫のタイミング、を示すように構成されたディスプレイ18を更に含む。図3は、犠牲者の胸部26におけるユーザ24の手のおおよその配置の概略的な描写を含むCPRアプリケーション22を実行しているスマートフォン20のスクリーン表示ビューである。しかしながら、現在知られているCPRメトロノームは、痩せた人にも大柄な人にも同一の深さで圧迫を実施するように救助者をガイドしている。深さが浅すぎると効果がなく、深さが深すぎると、潜在的に、例えば、特には小児におけるCPR胸部圧迫の深さに関して、圧迫されている構造への損傷につながることがあるという点に問題がある。また、CPR中に肋骨骨折が起こることも知られており、これは他の合併症を引き起こす。
【0004】
[0004] 換言すれば、CPRを施す際の1つの問題は、深すぎる、又は浅すぎる胸部の圧迫の使用である。例えば、CPR中に犠牲者の胸部が圧迫され過ぎると、犠牲者の胸郭が骨折することがある。骨折した胸郭は、治癒するまでに6週間から12週間かかる。この期間の間、犠牲者は、呼吸するとき、笑うとき、咳をするとき、くしゃみをするとき及び/又は姿勢を変えるときに、激しい痛みを感じることがある。加えて、鋭く破断した肋骨が気胸症や肺の出血を引き起こすこともあり、息切れや激しい痛みにつながる。いくつかの重症例においては、骨折した胸郭は、肝臓、腎臓及び/又は脾臓に損傷を与えることさえある。
【0005】
[0005] CPRを施す際の別の問題は、胸部の不完全な解放である。圧迫の深さ、すなわち胸部を十分に深く圧迫することが重要である一方で、犠牲者の胸部への圧力を十分に解放することも重要である。ファーストレスポンダが彼の手を十分に持ち上げないと、犠牲者の胸部は圧迫されたままになり、心臓へのポンプ効果は減少する。
【0006】
[0006] 緊急看護のためのCPRに加えて、自動式体外式除細動器(AED:automatic external defibrillator)も知られている。AEDを使用して、蘇生は、厳密で、時間重視のプロトコルに従って実施されなければならない。典型的には、緊急時における最初の数分が極めて重要であり、誰かがAEDを持って到着するためには時間がかかるため、犠牲者の蘇生は、非公式の看護者(例えば、同僚、家族の一員、第三者)によって開始される。蘇生(すなわち、犠牲者の胸部へのポンプ動作であり、口対口式で代替される)を適正に機能させるために、非公式の看護者は、正しい深さ(すなわち、犠牲者の胸部の圧迫)及び正しい速度(すなわち、圧迫の頻度)で行う必要がある。
【0007】
[0007] 更に、AEDによる除細動及び緊急看護に関連して、心臓が細動されているときに、心臓の筋肉の同期した収縮を無秩序な電気信号が阻害することにも留意されたい。AEDデバイスは、電気ショックを施すことによって心臓の電気信号を再び同期させることを補助し得る。このショックを施すために、2つの粘着性電極パッドが、一定の場所及び向きにおいて犠牲者の身体に位置付けられる必要がある。特には、電極パッドは、心臓を電極パッドの間に位置させつつ身体の斜め方向に沿って置かれる必要がある。成人した患者への最適な配置は、以下のようなものである。第1のパッドは犠牲者の右上胸部に装着され、次いで第2のパッドは左下側部に装着される。専門の看護者にとってはこれは簡単かもしれないが、非公式の看護者にとってはこれは注意を要する作業である。一部のAEDは、非公式の看護者が電極パッド及びデバイスを適正に使用することを支援する段階を追った音声式インストラクション及び/又はイラストレーションを提供する。しかしながら、電極パッド自体に描かれたイラストレーションのみによってガイドされる非専門家にとっては、緊急看護を必要としている犠牲者の最適な場所にパッドを置くことは難しい。
【0008】
[0008] 従って、CPRを施すことに関して上に論じられた問題に加えて、AEDを使用する際の一つの問題は、犠牲者に電極パッドが不適切に配置されることである。最適な除細動のためには、2つの電極パッドが犠牲者の身体に適正に配置されなければならない。医療の専門家は、乳首、へそ、肋骨のラインなどの身体の特徴に対してどのようにパッドを配置するかを知っている。しかしながら、非専門家のファーストレスポンダはこの情報を知っておらず、緊急的な状況において、製品がこの複雑な医療情報を伝えることは困難である。というのは、各電極パッドに描かれていることが通常見受けられるような2D図を、犠牲者の身体と関連付けることは難しいからである。
【0009】
[0009] 図4を参照すると、参照番号32及び34によって示される、犠牲者の胸部36における電極のおおよその配置のための概略的な描写を具備した表示をその上に有した、参照番号28及び30によって示される2つのAED電極の例示的な図が示されている。換言すれば、図4は、パッドをどこに配置するべきかをファーストレスポンダに指示するための図を有する2つのAED電極パッドを示す。緊急的な状況において、この汎用的な絵を、すぐ横にいる犠牲者と関連付けることは難しい場合がある。
【0010】
[0010] 次に図5を参照すると、参照番号38及び40によって示される、スマートフォン上で動作する医療ID又は健康医療パスポートアプリケーションの2つのスクリーン表示ビューの例が示されている。医療ID又は健康医療パスポートアプリケーションは、ユーザについての医療情報をユーザのスマートフォン上に提供するユーザプロファイルの使用を含む(例えば、Apple(商標)Health)。スクリーン表示ビュー38に表されているように、医療情報は、緊急又は事故のときに重要となる、例えば、アレルギー及び医学的症状を含む。加えて、スマートフォン上の健康医療パスポートアプリケーションは、スマートフォンのロックを解除する必要なしにアクセス可能である。例示的なプロファイルが、スクリーン表示ビュー40に図示されており、これは、ユーザの氏名、生年月日、医学的症状、医療留意事項、アレルギー及びその反応、投薬、並びに緊急時連絡先を含み得る。しかしながら、医療ID又は健康医療パスポートアプリケーション、及びユーザの医療情報は、SCAイベントに合わせて調整されていたり、SCAイベント専用のものであったりするわけではない。加えて、ユーザのスマートフォンが、緊急時又は事故時にすぐに入手又はアクセスが可能ではない場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0011] 心臓停止中には一分一秒を争う。それ故、蘇生を開始するために必要となる時間を短縮することができ、それにより犠牲者の生存の可能性を向上させる、より進化したAEDを提供することが望ましい。加えて、当技術分野における問題点を克服するための、改良された方法及び装置も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012] 一態様によると、様々な身体測定値を有する対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置は、最適なCPRを施す際に、犠牲者の身体的測定値を使用したAEDの最善の使用を、ファーストレスポンダに有利にガイドする。圧迫の深さ及び解放についてのガイダンスを犠牲者の身体測定値に合わせて調整することによって、救助者は、犠牲者の胸郭を傷つける可能性を最小化しつつ、高品質なCPRを施すことができる。犠牲者の関連する胸部の寸法を知ることによって、救助者が、犠牲者の身体の厳密に正しい場所に電極パッドを装着する見込みは向上し、その可能性も大きくなる。
【0013】
[0013] 一実施形態によると、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置は、ユーザインターフェースと、通信モジュールと、コントローラとを備える。ユーザインターフェースは、対象者の識別情報を取得するために構成される。通信モジュールは、(i)少なくとも対象者の物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ、(ii)ポータブル医療装置から所与の近接距離内に位置するスマートフォン、のうちの少なくとも1つと通信するために構成される。通信モジュールは更に、対象者の識別情報に応じて、リモートサーバ、又はリモートサーバと通信するスマートフォン若しくはリモートサーバと以前に通信したスマートフォンのうちの少なくとも1つを介して、クラウドベースの電子健康記録を取り出すために構成される。コントローラは、少なくともクラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じて、個人に合わせた治療を対象者に施すためにポータブル医療装置から所与の近接距離内にいるユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するために構成される。リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、ユーザ対話式の、患者に専用のガイダンスを更に備える。
【0014】
[0014] 別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、除細動ショックを施すための対象者上の除細動電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える。更なる実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、CPRを施すための心肺蘇生(CPR)支援デバイス又は対象者の手の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える。更に別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、ECGデータを取得するための対象者上の心電計(ECG)電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを備える。リアルタイムの個人に合わせたガイダンスを介して特定された配置は、所与の実施態様及び/又は応用例に適した、対象者における各電極の位置及び向きのうちの少なくとも1つを含む空間的ガイダンスを含む。本明細書において論じられる個人のオンライン健康記録に身体寸法及び測定値をアップロードすることに加えて、アップロードは、個人に合わせたECGセンサの配置をアップロードすることを更に含み得る。例えば、初めて患者がECGを受けるとき、医療スタッフ又は医師は、各ECG電極の最適な配置を探す。患者のオンライン健康記録に個人に合わせて最適化された配置を記憶することで、その個人が将来ECGを受けるとき、特には緊急的な状況において、多くの時間を有利に節約できる。
【0015】
[0015] 一実施形態において、ユーザインターフェースは、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つを備える。ユーザインターフェースは更に、対象者の緊急治療の少なくとも一態様のために、リアルタイムの個人に合わせた又は患者に専用の治療ガイダンスの少なくとも一部を提供するように構成される。
【0016】
[0016] 別の実施形態において、ユーザインターフェースは、拡張現実グラスを更に備え、これは、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを、(i)拡張現実グラスによって見た対象者の画像、及び(ii)対象者の物理的身体測定値のクラウドベースの電子健康記録に応じて、対象者への個人に合わせた治療の少なくとも一態様のための重畳ガイダンスとして提供するように構成される。重畳ガイダンスは、(i)対象者の胸部における個人に合わせたCPR治療の場所の輪郭、(ii)対象者の胸部における個人に合わせた圧迫の深さ及び解放の実施を示す輪郭、及び(iii)対象者の胸部における個人に合わせた除細動電極の位置の輪郭のうちの少なくとも1つを備える。更に別の実施形態において、重畳ガイダンスは、対象者の上半身におけるECG電極の個人に合わせた配置の輪郭を備える。本明細書において論じられるように、リアルタイムの個人に合わせたガイダンスは、所与の緊急的な状況、実施態様及び/又は応用例に適した、対象者におけるCPRメトロノーム、1つ又は複数のAEDパッド電極、及び/又は救助者の手の位置及び向きを含み得る空間的ガイダンスを含む。実施形態は、例えば、対象者の上への重畳又は輪郭を使用して、仮想現実グラスを通して見たときに対象者の上に空間的なガイダンスを示すことを更に含む。
【0017】
[0017] 更に別の実施形態において、ポータブル医療装置は、緊急用自動式体外式除細動器(AED)、緊急用CPRメトロノーム及び心電計(ECG)モニタからなる群から選択されるものを少なくとも1つ備える。
【0018】
[0018] 一実施形態によると、ポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法は、ユーザインターフェースを介して、対象者の識別情報を取得するステップと、通信モジュールを介して、(i)少なくとも対象者の物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ、(ii)医療デバイスから所与の近接距離内に位置するスマートフォン、のうちの少なくとも1つと通信するステップであって、対象者の識別情報に応じて、リモートサーバ、又はリモートサーバと通信するスマートフォン若しくはリモートサーバと以前に通信したスマートフォンのうちの少なくとも1つを介して、クラウドベースの電子健康記録を取り出すステップを更に含む、通信するステップと、コントローラを介して、個人に合わせた治療を対象者に施すためにポータブル医療デバイスから所与の近接距離内にいるユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップであって、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、少なくともクラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じて生成される、生成するステップと、を有する。
【0019】
[0019] 別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、除細動ショックを施すための対象者上の除細動電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。更なる実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、CPRを施すための心肺蘇生(CPR)支援デバイス又は対象者の手の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。更に別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップは、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、ECGデータを取得するための対象者上の心電計(ECG)電極又はセンサの配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。
【0020】
[0020] 一実施形態において、ユーザインターフェースを介して取得するステップは、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つを介して取得するステップを含む。
【0021】
[0021] 別の実施形態において、ユーザインターフェースは、拡張現実グラスを更に備え、方法は、拡張現実グラスを介して、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを、(i)拡張現実グラスによって見た対象者の画像、及び(ii)対象者の物理的身体測定値のクラウドベースの電子健康記録に応じて、対象者への個人に合わせた治療の少なくとも一態様のための重畳ガイダンスとして提供するステップを更に有する。重畳ガイダンスは、(i)対象者の胸部における個人に合わせたCPR治療の場所の輪郭、(ii)対象者の胸部における個人に合わせた圧迫の深さ及び解放の実施を示す輪郭、及び(iii)対象者の胸部における個人に合わせた除細動電極の位置の輪郭のうちの少なくとも1つを更に備える。更に別の実施形態において、重畳ガイダンスは、対象者の上半身におけるECG電極の個人に合わせた配置の輪郭を備える。
【0022】
[0022] 更なる実施形態において、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体は、本明細書において説明されるポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法を実行するプロセッサによって実行可能な命令のコンピュータプログラムによって具現化される。
【0023】
[0023] なおも更なる利点及び利益
は、以下の詳細な説明を読み、理解すれば、当業者に明らかになるであろう。
【0024】
[0024] 本発明の実施形態は、様々な構成要素及び構成要素の配置、並びに様々なステップ及びステップの配置の形態を取り得る。それ故、図面は、様々な実施形態を例示するためのものであり、実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。図面において、類似の参照番号は類似の要素を指す。加えて、図面は縮尺どおり描かれていない場合もあることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】[0025] 知られているCPRメトロノームデバイスの画像図である。
図2】[0026] 別の知られているCPRメトロノームデバイスの画像図である。
図3】[0027] 犠牲者の胸部におけるユーザの手のおおよその配置の概略的な描写を含むCPRアプリケーションを実行しているスマートフォンのスクリーン表示ビューである。
図4】[0028] 犠牲者の胸部における電極のおおよその配置のための概略的な描写を具備した表示をその上に有した2つのAED電極の例示的な図である。
図5】[0029] スマートフォン上で動作する医療ID又は健康追跡アプリケーションの2つのスクリーン表示ビューを示す図である。
図6】[0030] 本開示の実施形態による、ポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法のフロー図である。
図7】[0031] 本開示の実施形態による、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置のブロック図である。
図8】[0032] 本開示の実施形態による、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための、ユーザによって使用されているポータブル医療装置の画像図である。
図9】[0033] 本開示の実施形態による、AED電極の個人に合わせた配置の概略的ガイダンスを含んだ、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための、ユーザによって使用されているポータブル医療装置の別の画像図である。
図10】[0034] 本開示の実施形態による、CPRのためのユーザの手による個人に合わせた圧迫の概略的ガイダンスを含んだ、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための、ユーザによって使用されているポータブル医療装置の別の画像図である。
図11】[0035] 本開示の実施形態による、CPRのためのユーザの手の個人に合わせた配置の概略的ガイダンスを含んだ、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための、ユーザによって使用されているポータブル医療装置の別の画像図である。
図12】[0036] 本開示の別の実施形態による、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置のブロック図である。
図13】[0037] 本開示の実施形態による、対象者の身体への電極のおおよその配置のための概略的な描写を具備した表示をその上に有したポータブル医療装置のためのECG誘導ユニットインターフェースボックスの画像図であり、インターフェースボックスは、対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスの間の看護提供者による使用のための、電極又はセンサ(不図示)をその遠位端部に有するケーブル又は誘導線を更に有する、画像図である。
図14】[0038] 対象者の身体へのECG電極配置の例示的な図である。
図15】[0039] 本開示の別の実施形態による、ポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0040] 本開示の実施形態及びその様々な特徴及び有利な詳細は、図面において説明及び/又は示され、以下の説明において詳細が示される非限定的な実施例を参照してより完全に説明される。当業者が認識するであろうように、本明細書において明示的に述べられていなくても、図面において示される特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれていないこと、及び一つの実施形態における特徴は他の実施形態とともに用いられてよいことに留意されたい。よく知られている構成要素及び処理技法の説明は、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にすることがないように省略されることがある。本明細書において使用される実施例は、単に、本開示の実施形態が実践されるやり方の理解を促進し、更に当業者がこれを実践できるようにすることを意図されるものである。それ故、本明細書における実施例は、本開示の実施形態の範囲を限定するものと理解されるべきではなく、その範囲は添付の特許請求の範囲及び適用可能な法律によってのみ定められるものである。
【0027】
[0041] 本開示の実施形態は変動し得るものであり、本明細書において説明される特定の手法、プロトコル、デバイス、装置、材料、アプリケーションなどに限定されるものではないことが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的として使用されるものであり、特許請求される実施形態の範囲の限定であると意図されるものではないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形の「a」「an」及び「the」は、コンテキスト上そうでないことが明確に要求されない限り、複数の参照先を含むことが留意されなければならない。
【0028】
[0042] 別に定められない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示の実施形態が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同一の意味を持つ。好ましい方法、デバイス、及び材料が説明されるが、本明細書において説明されるものと類似の又は同等の任意の方法及び材料が、実施形態の実践又は検査において使用され得る。
【0029】
[0043] 本明細書において上に示されたように、一態様によると、様々な身体測定値を有する対象者のための、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置が開示される。ポータブル医療デバイスは、最適なCPRを施す際に、犠牲者の身体的測定値の使用を通じたAEDの最善の使用を、ファーストレスポンダ又は救助者に有利にガイドする。圧迫の深さ及び解放についてのガイダンスを犠牲者の身体測定値に合わせて調整することによって、救助者は、犠牲者の胸郭を傷つける可能性を最小化しつつ、高品質なCPRを施すことができる。犠牲者の関連する胸部の寸法を知ることによって、救助者が、犠牲者の身体の厳密に正しい場所に電極パッドを装着する見込みは向上し、その可能性も大きくなる。
【0030】
[0044] 緊急時に、犠牲者の身体を測定することに関し、1つ又は複数の問題が起こる。理想的には、緊急時に、乳首、へそ、肋骨のラインなどの特徴の認識に基づいて、重要な身体的寸法を視覚的に見分け得る何らかの種類の(例えば、ヘッド装着式ディスプレイにおけるカメラを使用した)視覚システムを有することが望ましい。しかしながら、犠牲者には男性も女性もおり、部分的に除去された衣服、身体部位のたるみ、及び体毛により際立った特徴が隠されている実際の場面の複雑性を考えると、堅牢な自動認識を得ることは難しい。
【0031】
[0045] 突然の心臓停止(SCA)の場合に、心肺蘇生(CPR)、すなわち犠牲者の胸部へのポンプ動作は、犠牲者の生命を救うために速やかに施される必要がある。除細動ショックは、自動式体外式除細動器(AED)が現場に到着したらすぐに施される必要がある。質の高いCPRを施すために重要なことは、(i)犠牲者の胸部の正しい場所(すなわち、胸骨)において押し下げること、及び(ii)犠牲者の胸部における適正な圧迫速度、深さ及び完全な解放を実施すること、である。質の高い除細動を施すために重要なことは、電極パッドの適正な位置決めである。押し下げること、適正な圧迫深さ及び解放を実施すること、及びAEDの電極パッドを位置決めすることの3つの動作は、それらが犠牲者の身体測定値に依存するという点で共通している。
【0032】
[0046] 一実施形態によると、ポータブル医療デバイス及び方法は、犠牲者の身体的測定値を含む個人用プロファイルのオンラインストレージへのアクセスを有利に使用する。緊急時において、このオンラインプロファイルは、ポータブル医療装置によってアクセスされる。ポータブル医療装置は、犠牲者に対して最適化されたCPRガイダンスをファーストレスポンダに提供するために1つ又は複数の異なるデバイス(例えば、ガイダンスを提供するCPRメトロノーム、CPRアプリケーション、拡張現実ヘッドセット)を含み得る。
【0033】
[0047] 別の実施形態において、ポータブル医療デバイスは、クラウドベースの健康記録、より詳細には、最適化された緊急看護のために重要である身体寸法を含む個人のオンライン健康記録を活用する。緊急事態においては、身体的及び物理的な寸法情報は、ファーストレスポンダ又は救助者が緊急治療を施しながら推察する必要がないように犠牲者に合わせて調整されたガイダンスを提供するために、ポータブル医療デバイスによって有利にダウンロードされ得る。
【0034】
[0048] 個人のオンライン健康記録又はクラウドベースの健康記録は、1つ又は複数種類の測定値、より詳細には、個人の身体的寸法の少なくともサブセットを含む。測定値及び/又は身体的寸法は、例えば、テープ測定を使用して又はより進化した方法を介して、例えば3D身体スキャナによって取得され得る。一実施形態によると、方法は、身体的測定値を固有の個人用オンラインプロファイルに記憶するステップを有する。方法は、緊急時に、彼/彼女のオンラインプロファイルから彼/彼女の身体測定値をダウンロードするために犠牲者を識別するステップを有する。方法は、緊急時に、例えばCPRメトロノーム、又はヘッド装着式拡張現実(AR)ディスプレイなどのポータブル医療デバイスからファーストレスポンダ又は救助者に提供されるガイダンスを、ダウンロードされた犠牲者の身体測定値に基づいて、能動的に調節するステップを更に有する。
【0035】
[0049] 次に図6を参照すると、本開示の実施形態による、ポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法50のフロー図が図示されている。方法は、53において図解でも示されるように、対象者の重要な身体寸法を測定、例えば胸囲を測定する第1のステップ52を有する。例えば、対象者の胸囲は97cm(すなわち38インチ)であり得る。第2のステップ54は、55において図解でも示されるように、対象者の測定された身体寸法を個人用プロファイルに入力するステップを含む。第3のステップ56は、57において図解でも示されるように、プロファイルをオンラインストレージ又はクラウドに記憶するステップを含む。第4のステップ58は、59において図解でも示されるように、犠牲者を識別し、ポータブル医療デバイス、例えばCPRメトロノームに身体寸法データをインポートするステップを含む。第5のステップ60において、61において図解でも示されるように、方法は、犠牲者のプロファイルからの情報に基づいて、圧迫の深さのガイダンスを提供するステップを有する。例えば、圧迫の深さのガイダンスは、5cm(すなわち、約2.0インチ)である。
【0036】
[0050] 第1の態様において、方法は、対象者の重要な身体寸法を測定するステップを有する。突然の心臓停止の虞のある心臓血管に疾患のある患者、しかしながら潜在的には全ての人は、彼ら/彼女らの身体的寸法を測定し、これらの寸法を個人用オンラインプロファイルに記憶する適切な許可を与え、緊急事態においては記憶された寸法を自動的にダウンロードすることを許容する必要がある。既に述べたように、身体的寸法は、単にテープ測定によって、又はより進化した方法を介して、例えば3D身体スキャナによって測定され得る。一実施形態において、物理的身体寸法は、開業医(GP:general practitioner)によって、ヘルスセンターにおいて、又は病院の検査室において測定及び/又は取得され得る。
【0037】
[0051] 本開示の実施形態によると、少なくとも(i)胸部の深さ、(ii)両目から胸骨までの距離、及び(iii)顔に対するAED電極の最適な相対的位置、を含む身体的寸法へのアクセスは、最適なCPR及び/又は他の緊急治療の提供において犠牲者に合わせて調整されたガイダンスを提供するためにポータブル医療デバイスによって有利に使用される。胸部の深さに関しては、これは胸骨の上部から脊柱の下部の寸法に対応するものであるが、犠牲者に合わせて調整されたガイダンスは、本明細書において更に論じられるようにファーストレスポンダ又は救助者に、ポータブル医療デバイスの適切な手段を介して、最適な胸部の圧迫の深さ(例えば、より痩せた人に対してはより少ない圧迫、より太った人に対してはより深い圧迫)を提供することを含む。加えて、両目から胸骨までの距離に関しては、犠牲者に合わせて調整されたガイダンスは、ファーストレスポンダ又は救助者に、ポータブル医療デバイスの適切な手段を介して、例えば、本明細書において更に論じられるように拡張現実重畳を通じて、最適なCPRのために彼又は彼女の手をどこに置くべきかを提供することを含む。顔は現在のところ最も容易にコンピュータ視覚システムが検知できる身体部位であり、従って、有用な基準ポイントとなる。更には、顔に対するAED電極の最適な相対的位置に関しては、すなわち2次元的であろうが又は3次元的であろうが、犠牲者に合わせて調整されたガイダンスは、ファーストレスポンダ又は救助者に、ポータブル医療デバイスの適切な手段を介して、例えば、本明細書において更に論じられるように拡張現実重畳を通じて、ファーストレスポンダ又は救助者に最適な除細動のために彼又は彼女が粘着性電極パッドをどこに配置すべきかの表示を提供することを含む。
【0038】
[0052] 第2の態様において、方法は、固有の個人用オンラインプロファイルに身体測定値を記憶するステップを有する。上述した身体的寸法は、好ましくは、患者及び看護提供者がアクセス可能なプロファイルに記憶される。このプロファイルは、(i)SCA緊急時のために特別にセットアップされたデータベース,(ii)患者のスマートフォン上の健康追跡アプリケーションにおけるプロファイル、及び(iii)個人の電子患者記録(EPR:Electronic Patient Record)のうちの少なくとも1つの一部である。本明細書において上に論じられたように、図5は、スマートフォン上で動作する医療ID又は健康医療パスポートアプリケーションの2つのスクリーン表示ビューの例を示す。スマートフォン上の健康医療パスポートアプリケーションは、スマートフォンのロックを解除する必要なしにアクセス可能である。一実施形態によると、このような健康医療パスポートアプリケーションは、SCAに関連した身体寸法も含む。
【0039】
[0053] 第3の態様において、方法は、緊急的な状況において犠牲者を識別するステップを有する。犠牲者の身体測定値をダウンロードするために、先ず犠牲者が識別される。本開示の一実施形態によると、方法及びポータブル医療デバイス装置は、顔認識を実行すること、及び犠牲者によって携行されるID情報を取得することのうちの1つ又は複数を介して犠牲者を識別するように構成されたスマートフォン、CPRメトロノーム、及びヘッド装着式デバイス(例えば、Google(商標)グラス、又は拡張現実(AR)グラス)のうちの少なくとも1つの使用を有利に組み込んでいる。顔認識に関連して、方法及びポータブル医療デバイスは、オンライデータベースを通じて、犠牲者の顔に一致する顔を持つ記録を検索するアプリケーションを含む。犠牲者によって携行されるID情報を取得することについては、方法及びポータブル医療デバイスは、ID番号、QRコード(登録商標)、又は近距離無線通信(NFC:near-field communication)チップのうちの1つ又は複数を活用する。犠牲者は、このような情報を、医療情報を有するタグ上に(例えば、ネックレス、ブレスレット)、彼又は彼女のスマートフォン上に(例えば、ファーストレスポンダがアクセスコードを必要としないように「アンロック」スクリーン上に)、インプラントとして、又は刺青として、携行することもできる。有利には、刺青は識別のための手段として機能するだけでなく、犠牲者の身体上の基準マーカー、例えば既知の原点ポイントとしても機能する。方法は、ファーストレスポンダが以下のこと、すなわち、入力/出力デバイスを介してポータブル医療デバイスにID番号を入力すること、カメラベースのデバイスを介してQRコード(登録商標)を撮影すること、及びNFCチップをスキャンすることのうちの1つ又は複数を行ったことに応じて、ポータブル医療デバイスを介して動作するステップを有する。
【0040】
[0054] 第4の態様において、方法は、ポータブル医療デバイスによって提供される犠牲者に合わせて調整されたガイダンスを調節するステップを有する。特には、方法は、オンラインプロファイルから取得された犠牲者の身体寸法に基づいて、犠牲者に合わせて調整されたガイダンスを調節するステップを有し、取得された身体寸法に応じて、ポータブル医療デバイスは、自身が緊急時に治療のために提供する犠牲者に合わせて調整されたガイダンスを調節する。本開示の実施形態によると、方法及びポータブル医療デバイスは、(i)加速度計ベースのCPRメトロノーム、(ii)加速度計を備えるとともにCPRアプリケーションを有するスマートフォン、及び(iii)ヘッド装着式拡張現実ヘッドセットのうちの1つ又は複数を含む。
【0041】
[0055] 次に図7を参照すると、本開示の実施形態による対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置70のブロック図が図示されている。ポータブル医療装置70は、ユーザインターフェース72と、通信モジュール74と、コントローラ76とを少なくとも備える。一実施形態において、ユーザインターフェース72は少なくとも、対象者の識別情報を取得するために構成される。ユーザインターフェース72は、本明細書において更に論じられるように、緊急時における所与の治療に関連した使用のために、少なくともコントローラ76に信号線88を介して動作可能に結合される任意の適切なユーザインターフェースを備え得る。例えば、ユーザインターフェース72は、所与のポータブル医療デバイスの実施態様及び/又は応用例の要件に従い必要に応じて決定された、入力/出力デバイス、触覚式出力デバイス、タッチスクリーン、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものを少なくとも1つを備え得る。
【0042】
[0056] 通信モジュール74は、(i)少なくとも対象者の物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ78(すなわち本明細書においてクラウドとも称されるもの)、(ii)ポータブル医療装置から所与の近接距離内に位置するスマートフォン80、のうちの少なくとも1つと通信するために構成される。通信モジュール74は更に、対象者の識別情報に応じて、リモートサーバ78、又はリモートサーバと通信するスマートフォン80のうちの少なくとも1つを介して、リモートサーバ78に記憶された(すなわちクラウドに記憶された)クラウドベースの電子健康記録を取り出すために構成される。
【0043】
[0057] ポータブル医療デバイス70の通信モジュール74とクラウド78との間の通信は参照番号82によって示される。ポータブル医療デバイス70の通信モジュール74とスマートフォン80との間の通信は参照番号84によって示される。最後に、スマートフォン80とクラウド78との間の通信は参照番号86によって示される。本明細書において論じられる様々なデバイスと構成要素との間の通信は、好ましくは、当技術分野において知られている適切な技術を使用して達成され、従って本明細書において更には論じられない。
【0044】
[0058] コントローラ76は、ユーザインターフェース72及び通信モジュール74に、参照番号88で示される適切な信号線を介して、動作可能に結合する。コントローラ76は、少なくともクラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じて、個人に合わせた治療を対象者に施すためにポータブル医療装置70から所与の近接距離内にいるユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するために構成される。一実施形態において、コントローラ76は、本明細書において論じられる様々な機能を実行するために、所与のポータブル医療デバイスの実施態様及び/又は応用例の要件に更に従い、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、集積回路、別個のアナログ又はデジタル回路構成要素、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ又は複数を備える。コントローラ76は、本明細書において論じられる様々なモジュールのうちの1つ又は複数を更に備え得る。コントローラ76に関する追加的な詳細は、図面を参照して、本明細書において後に提供される。
【0045】
[0059] なおも図7を参照すると、ポータブル医療装置70は、ON/OFFスイッチ90、ケース開放センサ92、音声スピーカ94、バッテリ96、エネルギー源98、メモリ100、ショックボタン102(例えば、AEDパッド電極を介してショックを施すことを開始するため)、及びGPSモジュール104のうちの1つ又は複数を更に備え得る。ON/OFFスイッチ90、ケース開放センサ92、音声スピーカ94、バッテリ96、エネルギー源98、メモリ100、ショックボタン102、及びGPSモジュール104のうちの1つ又は複数の各々は、少なくともコントローラ76に、例えば信号線88を介して、動作可能に結合される。ON/OFFスイッチ90は、ONとOFFとの間でポータブル医療装置70に電力供給するための任意の適切なスイッチを備える。ケース開放センサ92は、例えばポータブル医療装置のためのスタートアップシーケンスの開始の一部としてポータブル医療装置70のケース又は筐体が開放されたことを感知するための任意の適切なセンサを備える。音声スピーカ94は、所与の実施態様及び/又はポータブル医療デバイスの応用例のための任意の適切なスピーカを備え得る。
【0046】
[0060] 一実施形態において、バッテリ96は、所与のポータブル医療デバイスの実施態様及び/又は応用例のための任意の適切な電力源又は電力供給装置を備え得る。加えて、エネルギー源98は、所与のポータブル医療デバイスの実施態様及び/又は応用例のための任意の適切な電力源又は電力供給装置を備え得る。例えば、AEDデバイスを備えるポータブル医療デバイスのために、電力源98は、再充電可能な電力源を備え得る。電力源98は、ポータブル医療デバイス70の外部にある供給源を介した、又は非-再充電可能電力源からの電力供給装置も備え得る。更には、メモリ100は、少なくともコントローラ76に動作可能に結合された、少なくともそこに情報を記憶するための、更には、少なくともそこから後に情報を取り出すための、任意の適切なメモリデバイスを備え得る。
【0047】
[0061] グローバルポジショニングシステムモジュール104は、ポータブル緊急医療装置70のグローバル位置を判定するために構成された任意の適切なGPSモジュールを備える。コントローラ76は更に、ポータブル緊急医療装置70のグローバル位置及びスマートフォン80のグローバル位置に基づいて、スマートフォンがポータブル緊急医療装置から所与の近接距離内に位置することを判定するために構成される。
【0048】
[0062] ポータブル医療装置70は、ポータブル医療デバイス70がAEDデバイスとして使用される間に電気ショックを施すための、エネルギー源98に動作可能に結合された一対のAEDパッド電極106、108を更に備え得る。ポータブル医療装置70は、例えば緊急治療時にAED及び/又はCPRを実行する際にファーストレスポンダ又は救助者によって装着される一対の拡張現実グラス110を更に備え得る。拡張現実グラス110は、適切な通信リンク112(例えば、近距離無線通信(NFC)、Bluetooth(登録商標)、又は他の適切な近距離通信リンク)を介してポータブル医療装置70の通信モジュール74に動作可能に結合される。更になお、ポータブル医療装置70は、緊急治療時にCPRを実行する際にファーストレスポンダ又は救助者によって使用されるCPRメトロノーム114を備え得る。CPRメトロノームは、適切な通信リンク116(例えば、近距離無線通信(NFC)、Bluetooth(登録商標)、又は他の適切な近距離通信リンク)を介してポータブル医療装置70の通信モジュール74に動作可能に結合される。
【0049】
[0063] 次に図6及び図7を参照すると、一実施形態において、CPRメトロノーム114は、加速度計ベースのCPRメトロノームを備える。CPRメトロノームは、図6に示され、参照番号60及び61で示されるように、どの程度深く押すべきかについて胸部の深さを考慮に入れてファーストレスポンダをガイドするように構成される。特には、ポータブル医療デバイス70は、本明細書において論じられるように、犠牲者のクラウドベースの医療記録にアクセスし、前もって測られた胸部測定値を犠牲者のオンライン記録から取得又はダウンロードし、緊急治療時のファーストレスポンダ又は救助者へのリアルタイムの治療ガイダンスにおいて、ユーザインターフェース72を更に介して、例えばディスプレイ上の情報又は音声ガイダンスを通じて提供される犠牲者の胸部の深さが、CPRを施すためにCPRメトロノーム114が使用されるときに考慮されるようにする。別の実施形態において、CPRメトロノーム114は、加速度計を備えるとともにCPRアプリケーションを有するスマートフォンを備え得、これはディスプレイ上の情報又は音声ガイダンスを通じて、どの程度深く押すべきかについて胸部の深さを考慮に入れてファーストレスポンダをガイドする。上記においては加速度計ベースのメトロノームデバイスに言及しているが、そのようなデバイスは必ずしも常に加速度計ベースでなくてもよいことに留意されたい。基本的には、メトロノームデバイスは身体に対する深さを認識する。それ故、別の実施形態において、拡張現実グラスが、加速度計以外の他の手段によって、例えばコンピュータ視覚を使用して、CPRメトロノームの位置を定めるために使用され得る。
【0050】
[0064] 次に図7及び図8を参照すると、一実施形態において、拡張現実グラス110は、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセットを備え得る。ヘッド装着式拡張現実グラスは、犠牲者120の緊急処置又は治療の間に身体測定値を考慮に入れてファーストレスポンダ又は救助者118をガイドするように構成される。例えば、ポータブル医療デバイス70は、本明細書において論じられるように、犠牲者のクラウドベースの医療記録にアクセスし、前もって測られた胸部測定値を犠牲者のオンライン記録から取得、すなわちダウンロードし、緊急治療時のファーストレスポンダ又は救助者118へのリアルタイムの治療ガイダンスにおいて提供される犠牲者の胸部の深さが、CPRを施すためにヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110及びCPRメトロノーム114が使用されるときに考慮されるようにする。換言すれば、リアルタイムの治療ガイダンスは、胸部の深さを考慮に入れて、どの程度深く押すべきかについてファーストレスポンダをガイドする。
【0051】
[0065] 次に図7図8及び図9を参照すると、一実施形態において、ヘッド装着式拡張現実グラス110は、犠牲者の顔を検知し、更に、犠牲者の身体寸法を考慮に入れて、緊急治療、すなわちAEDのための犠牲者の胸部におけるAED電極パッド106及び108の各々を適用する最適な場所及び向きを救助者118に指し示すように構成される。例えば、ポータブル医療デバイス70は、本明細書において論じられるように、犠牲者のクラウドベースの医療記録にアクセスし、前もって測られた身体的測定値を犠牲者のオンライン記録から取得、すなわちダウンロードする。それ故、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110は、緊急治療時のファーストレスポンダ又は救助者118へのリアルタイムの治療ガイダンスにおいて提供される犠牲者の身体的測定値を考慮に入れたAEDを施すためのAEDパッド電極の配置をガイドするために使用される。この実施形態において、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110は、前もって測られた犠牲者の身体的測定値に基づいてファーストレスポンダが各AEDパッド電極を置くべき正確な場所及び向きを指し示す。換言すれば、ヘッド装着式拡張現実グラス110は、救助者がグラス110を通して見る破線の輪郭の仮想的重畳122及び124(図9)を通じて、ファーストレスポンダがAED電極108及び106をそれぞれ配置するべき犠牲者の胸部における正確な位置及び向きを示すように構成される。
【0052】
[0066] 次に図7図8及び図10を参照すると、一実施形態において、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110は、犠牲者の顔を検知し、両目-胸骨間の距離を考慮に入れて、緊急治療時にファーストレスポンダ118が、犠牲者120の胸部において、どこに彼又は彼女の手を置き、圧力をかけるべきかを示すように構成される。例えば、ポータブル医療デバイス70は、本明細書において論じられるように、犠牲者のクラウドベースの医療記録にアクセスし、前もって測られた両目から胸骨までの距離の測定値を犠牲者のオンライン記録から取得、すなわちダウンロードする。それ故、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110は、緊急治療時のファーストレスポンダ又は救助者118へのリアルタイムの治療ガイダンスにおいて提供される犠牲者の両目-胸骨間の距離を考慮に入れたCPRを施すためのユーザの手の配置をガイドするために使用される。この実施形態において、ヘッド装着式拡張現実ヘッドセット110は、前もって測られた両目から胸骨までの距離の測定値に基づいてファーストレスポンダが彼又は彼女の手を置くべき正確な位置を指し示す。換言すれば、ヘッド装着式拡張現実グラス110は、救助者がグラス110を通して見る仮想的重畳126(図10)を通じて、ファーストレスポンダが彼又は彼女の手を置くべき犠牲者の胸部における正確な位置を示すように構成される。
【0053】
[0067] 図7図8及び図11を参照すると、一実施形態において、ヘッド装着式拡張現実グラス110は、救助者がグラス110を通して見るアニメーション化された仮想的重畳128を通じて、緊急治療時、すなわちCPR中に救助者118が犠牲者の胸部をどの程度深く押すべきかを示すように構成される。加えて、重畳128における外側及び内側リングのうちの1つ又は複数が、メトロノームの形態を有し得、すなわち、それは手の最適な配置についてユーザをガイドするだけでなく、最適な圧迫のリズム/速度をアニメーションによって示す。圧迫のリズム/速度は、例えば、圧迫/分の所与の数を有する。これらの設定は、特定の犠牲者に最適なリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを含み、これは視覚的表示を調節するための基礎となる。加えて、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、CPRメトロノーム114又は除細動器によって出される可聴式及び/又は視覚的ユーザプロンプトに提供される。
【0054】
[0068] 更に別の実施形態において、CPRメトロノーム114は、救助者118が両目-「CPRデバイス」間の距離を、クラウドベースの電子健康記録に含まれる最適な両目-胸骨間の距離と比較することを可能にする物理的測定ツールも含んでよい。そのような比較は、図10に図示されている手の配置と同様に、ファーストレスポンダ又は救助者118が彼又は彼女の手を犠牲者の胸部のどこに置き、圧力をかけるべきかを示すために、リアルタイムの治療ガイダンスとともに使用され得る。
【0055】
[0069] 図12を参照すると、本開示の別の実施形態による対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのためのポータブル医療装置70のブロック図が図示されている。ポータブル医療装置70は、以下の相違点を除いては、図7に図示されているものと同様である。ポータブル医療装置は、AEDを実行するための構成要素を含まない。加えて、CPRメトロノーム114は、有線接続116を介してポータブル医療装置に動作可能に結合される。更には、リアルタイムの治療ガイダンスのための図12のポータブル医療装置70の動作は、CPR緊急治療に関連して本明細書において既に論じられたものと同様である。
【0056】
[0070] 次に図13を参照すると、本明細書において論じられる実施形態と同様に、対象者の身体への電極のおおよその配置のための概略的な描写132を具備した表示をその上に有した、ポータブル医療装置のためのECG誘導ユニットインターフェースボックス130の画像図が示されている。インターフェースボックス130は、ポータブル医療装置と動作可能に結合するための第1のケーブル134を含み、更には、参照番号136及び138によって全体的に示される、本開示の実施形態による対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための看護提供者による使用のための電極パッド(不図示)をその遠位端部に備えたケーブルを有する。インターフェースボックス130の概略的な描写132は、それ自体では、すなわち、本開示の実施形態に従って提供されるリアルタイムの治療ガイダンスがないと、対象者に電極を配置する看護提供者を混乱させるかもしれない。
【0057】
[0071] 図13のECG誘導ユニットインターフェースボックス130に関連して、及び図14を追加的に参照すると、全体として参照番号140で示される、対象者の身体におけるECG電極の配置の例示的な図が図示されている。リアルタイムの治療ガイダンスがなかったとするとECG電極の配置は間違いやすいものになることは容易に理解される。図14に示されるように、1つの電極142(電極LAとも称される)は、対象者の左腕の肩と肘との間に配置されるものであり、別の電極144(電極RAとも称される)は、対象者の右腕の肩と肘との間に配置されるものであり、参照番号146によってまとめて示される6つの電極(V1、V2、V3、V4、V5、及びV6)は、対象者の胸郭の周りに個別に配置されるものである。2つの更なる電極(RL及びLLとも称され、図示はされていない)は、対象者の大腿において、足首よりも上、胴よりも下に配置されるものである。
【0058】
[0072] 本開示の実施形態は、ECGに関連する電極の誤配置及び電極の逆配置(reversal)の潜在的な問題を、有利に除去し、及び/又は著しく減少させる。電極の誤配置に関しては、本開示の実施形態によるリアルタイムの治療ガイダンスがない場合、50%にも及ぶ事例において、V1及びV2電極が上過ぎる場所に配置され、これは前壁心筋梗塞(MI:myocardial infarction)を擬態することがあり、T波反転(inversion)(すなわち、T波が心臓の心室の再分極(又は回復)を表す負のT波)を引き起こす。加えて、33%にも及ぶ事例において、前胸部の電極(V1からV6)が下方に又は側方に誤配置され、これは振幅を変化させることがあり、誤診につながる。電極の逆配置に関しては、本開示の実施形態によるリアルタイムの治療ガイダンスがない場合、以下のような事態が起こり得る:RA/LAの逆配置-誘導Iが反転(inverted)され、誘導IIとIIIとが逆になり、aVRとaVLとが逆になる;RA/LAの逆配置-誘導IIが孤立性の心停止(isolated asystole)を示し、aVF及びaVRが同一である;及び、LA/LLの逆配置-誘導IIIが反転され、aVLとaVFとが逆になる。ECG誘導は、2つの電気的平面にグループ分けされる。前方の誘導(誘導Iから誘導III、aVRからaVF)は、心臓を垂直平面から眺め、横方向の誘導(V1からV6)は心臓を水平平面から眺める。本明細書においてECGに関して使用されるとき、誘導は、身体を横切る特定の角度から心臓の電気的活動を眺めたものである。換言すれば、誘導は、一群の電極によってキャプチャされた画像である。
【0059】
[0073] 次に図15を参照すると、別の実施形態による、ポータブル医療デバイスを使用した対象者のためのリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスのための方法150のフロー図が図示されている。図15に図示される方法のいくつかの態様は、本明細書において図6を参照して論じられたものと同様のもの、及び/又はそれに追加されるものである。方法150は、ユーザインターフェースを介して、対象者の識別情報を取得するステップ152と、通信モジュールを介して、(i)少なくとも対象者の物理的身体測定値を備えるクラウドベースの電子健康記録を記憶しているリモートサーバ、(ii)医療デバイスから所与の近接距離内に位置するスマートフォン、のうちの少なくとも1つと通信するステップ154であって、対象者の識別情報に応じて、リモートサーバ、又はリモートサーバと通信するスマートフォン若しくはリモートサーバと以前に通信したスマートフォンのうちの少なくとも1つを介して、クラウドベースの電子健康記録を取り出すステップを更に含む、通信するステップ154と、コントローラを介して、個人に合わせた治療を対象者に施すためにポータブル医療デバイスから所与の近接距離内にいるユーザが従うべきリアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップ156であって、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスは、少なくともクラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じて、特定の対象者のために生成、修正及び/又は最適化される、生成するステップ156と、を有する。
【0060】
[0074] 別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップ156は、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、除細動ショックを施すための対象者上の除細動電極の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。更なる実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップ156は、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、CPRを施すための心肺蘇生(CPR)支援デバイス又は対象者の手の配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。更に別の実施形態において、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを生成するステップ156は、クラウドベースの電子健康記録からの対象者の物理的身体測定値に応じた、ECGデータを取得するための対象者上の心電計(ECG)電極又はセンサの配置の視覚的識別及び音声式識別のうちの少なくとも1つを生成するステップを含む。
【0061】
[0075] 一実施形態において、ユーザインターフェースを介して取得するステップ152は、タッチスクリーンディスプレイ、光学的ディスプレイ、マイクロフォン、キーパッド、キーボード、ポインティングデバイス、画像キャプチャデバイス、ビデオカメラ、音声出力デバイス、及び入力/出力デバイスのうちの少なくとも1つを介して取得するステップを含む。
【0062】
[0076] 別の実施形態において、ユーザインターフェースは、拡張現実グラスを更に備え、方法は、拡張現実グラスを介して、リアルタイムの個人に合わせた治療ガイダンスを、(i)拡張現実グラスによって見た対象者の画像、及び(ii)対象者の物理的身体測定値のクラウドベースの電子健康記録に応じて、対象者への個人に合わせた治療の少なくとも一態様のための重畳ガイダンスとして提供するステップ158を更に有する。重畳ガイダンスは、(i)対象者の胸部における個人に合わせたCPR治療の場所の輪郭、(ii)対象者の胸部における個人に合わせた圧迫の深さ及び解放の実施を示す輪郭、及び(iii)対象者の胸部における個人に合わせた除細動電極の位置の輪郭のうちの少なくとも1つを更に備える。更に別の実施形態において、重畳ガイダンスは、対象者の上半身におけるECG電極の個人に合わせた配置の輪郭を備える。
【0063】
[0077] 本開示の別の実施形態によると、ガイダンスを提供するポータブル医療デバイスは、犠牲者の身体的寸法に基づいて、その圧迫の深さのガイダンスの設定を能動的に調節し、身体的寸法は、オンラインの又はクラウドベースの個人用プロファイルを介して取得される。別の実施形態において、ポータブル医療デバイスは、オンライン個人用プロファイルを取得するためにインターネットに接続し、異なる身体測定値を有する個人によって異なる治療ガイダンスを提供する。
【0064】
[0078] 本開示の実施形態は、心肺蘇生(CPR)スマートフォンアプリケーション、緊急看護のための拡張現実システム、CPRメトロノーム、及び自動式体外式除細動器(AED)などに適用可能である。
【0065】
[0079] いくつかの例示的な実施形態のみが上記に詳細に説明されたが、本開示の実施形態の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを、当業者は容易に理解されよう。例えば、本開示の実施形態は、非-緊急的な用途、例えば、心電図(ECG)を取得するための心電計において有利に使用され得る。それ故、全てのそのような修正は、以下の特許請求の範囲によって規定される本開示の実施形態の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクション(means-plus-function)節は、列記された機能を実行するものとして本明細書において説明された構造をカバーすることを意図され、構造的均等物だけでなく均等な構造物もカバーすることを意図される。
【0066】
[0080] 加えて、1つ又は複数の請求項において括弧の中に置かれている任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「備える、有する、含む(comprising、及びconprises)」などの語は、任意の請求項又は明細書全体において記載されているもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。単数の要素への参照は、複数のそのような要素への参照を除外するものではなく、その逆も同様である。実施形態のうちの1つ又は複数が、いくつかの個別の要素を備えるハードウェアによって、及び/又は適切にプログラムされたコンピュータによって実現されてよい。いくつかの手段を列挙するデバイスの請求項において、これらの手段のうちのいくつかが、ハードウェアの1つの及び同一のアイテムによって具現化されてよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項に列記されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に利用され得ないことを示すものではない。
図1
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