(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】充填接合材、保護シート付き充填接合材、積層体、光学デバイス及び光学デバイス用保護パネル
(51)【国際特許分類】
C09J 7/10 20180101AFI20220104BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220104BHJP
C09J 129/14 20060101ALI20220104BHJP
B32B 1/06 20060101ALI20220104BHJP
B32B 3/06 20060101ALI20220104BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220104BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220104BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09J7/10
C09J201/00
C09J129/14
B32B1/06
B32B3/06
B32B7/12
C03C27/12 R
G09F9/00 302
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2018522817
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2018001045
(87)【国際公開番号】W WO2018135495
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2017006216
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017098472
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017098473
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017099221
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 重一
(72)【発明者】
【氏名】岡林 賞純
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩造
(72)【発明者】
【氏名】和田 敦
(72)【発明者】
【氏名】中谷 博之
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513029(JP,A)
【文献】特開2009-227826(JP,A)
【文献】特開昭60-021834(JP,A)
【文献】特開平08-081242(JP,A)
【文献】特開2004-075501(JP,A)
【文献】特開2011-028239(JP,A)
【文献】特表2014-508959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
C03C 27/12
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏肉形状を有
し、
主曲率が1/5000mm
-1
以上である曲面を有することを特徴とする充填接合材。
【請求項2】
厚みの最大値(t1)が500μm以上であることを特徴とする請求項1記載の充填接合材。
【請求項3】
幅の最大値が50mm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の充填接合材。
【請求項4】
曲面の弦長が50mm以上であることを特徴とする請求項
1、2又は3記載の充填接合材。
【請求項5】
曲面のガウス曲率が正又は負であることを特徴とする請求項
1、2、3又は4記載の充填接合材。
【請求項6】
少なくとも1つの平面を有することを特徴とする請求項1、2、3、4
又は5記載の充填接合材。
【請求項7】
平面と、前記平面に対向する曲面とを有することを特徴とする請求項
6記載の充填接合材。
【請求項8】
光透過部を有し、前記光透過部において、可視光線透過率が80%以上かつヘイズが1%以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6
又は7記載の充填接合材。
【請求項9】
光透過部を有し、前記光透過部の平均残留位相差(Rave)が20nm/mm以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7
又は8記載の充填接合材。
【請求項10】
光透過部を有し、前記光透過部の位相差の面内標準偏差(s)が10以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8
又は9記載の充填接合材。
【請求項11】
ガラス転移温度(Tg)が10℃以上かつ60℃以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9
又は10記載の充填接合材。
【請求項12】
少なくとも表面にポリビニルアセタールを含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
又は11記載の充填接合材。
【請求項13】
少なくとも一部に遮光部を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
又は12記載の充填接合材。
【請求項14】
遮光部は、可視光線透過率が10%以下であることを特徴とする請求項
13記載の充填接合材。
【請求項15】
少なくとも一部に光散乱部を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
又は12記載の充填接合材。
【請求項16】
光散乱部は、ヘイズが10%以上であることを特徴とする請求項
15記載の充填接合材。
【請求項17】
遮光部又は光散乱部が、染料又は顔料を含有することを特徴とする請求項
13、14、15又は16記載の充填接合材。
【請求項18】
遮光部又は光散乱部が、充填接合材の周縁部に配置されていることを特徴とする請求項
13、14、15、16又は17記載の充填接合材。
【請求項19】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17
又は18記載の充填接合材と、前記充填接合材を覆う保護シートとを有することを特徴とする保護シート付き充填接合材。
【請求項20】
一対の被接合部材と、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17
又は18記載の充填接合材とを有し、前記一対の被接合部材間が前記充填接合材で充填されていることを特徴とする積層体。
【請求項21】
請求項
20記載の積層体を有し、
一対の被接合部材は、少なくとも一方が透明部材であり、
前記透明部材と充填接合材との屈折率差が0.03以下であることを特徴とする光学デバイス。
【請求項22】
第1パネルと、第2パネルと、偏肉形状を有する充填接合材とを有し、
少なくとも前記第1パネル又は前記第2パネルのいずれかが曲面を有し、
前記第1パネルと前記第2パネルとが、前記充填接合材により直接接合されている
ことを特徴とする光学デバイス用保護パネル。
【請求項23】
第1パネル又は第2パネルのうちの曲面を有するパネルと、充填接合材との屈折率差が0.1以下であることを特徴とする請求項
22記載の光学デバイス用保護パネル。
【請求項24】
少なくとも第1パネル又は第2パネルのいずれかがガラス板であることを特徴とする請求項
22又は23記載の光学デバイス用保護パネル。
【請求項25】
請求項
22、23又は24記載の光学デバイス用保護パネルを含むことを特徴とする光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができる充填接合材に関する。また、本発明は、該充填接合材を含む保護シート付き充填接合材、積層体、光学デバイス及び光学デバイス用保護パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイスにおいて部材を貼り合わせつつ、それら部材間を充填する透明粘着シート等が知られている。例えば、ディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールと、ガラス等からなる表面保護パネルとの間を充填するアクリル粘着剤が広く用いられている(例えば、特許文献1)。このようなデバイスにおいては、部材間の空隙を、部材との屈折率差が小さい透明粘着シート等で埋めることにより、光学的品質(透明性、輝度、コントラスト等)を改善し、視認性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の薄膜シート状のアクリル粘着剤は、貼合時に気泡の巻き込みが発生し、表面保護パネルとアクリル粘着剤との間に気泡が残存することがあり、視認性又は耐久性を低下させる恐れがあった。また、表面保護パネルの裏側にはマスキング等を目的として周縁部に印刷部が形成されている場合があり、このような印刷部により形成された段差、又は、電気的配線の段差の境界部に気泡が残存し、視認性又は耐久性を低下させる恐れがあった。
更に、近年は光学デバイスの多様化に伴って、意匠性を高めること等を目的に、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイスが登場しつつあり、曲面形状の表面を有する光学デバイス又は表示デバイスも提案されている。このようなデバイスにおいては、ディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールと、湾曲した表面保護パネルとを貼り合わせて構成することが考えられるが、従来の薄膜シート状のアクリル粘着剤では、空隙を埋めることができないため、直接これらを貼り合せることができない。また、製品設計によっては例えば1mm~数cmという空隙が想定されるが、このような厚膜のアクリル粘着剤は作製が困難である。
【0005】
更に、特にタッチパネルにおいては、タッチした箇所と、対応する表示内容とがずれてしまうと、デバイスの操作や動作に問題が生じる。このように、曲面形状の屈折率差のある界面が存在すると、従来の薄膜シート状のアクリル粘着剤では、平面形状の場合と同等の表示性能を満たすことは困難であった。
【0006】
本発明は、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができる充填接合材を提供することを目的とする。また、本発明は、該充填接合材を含む保護シート付き充填接合材、積層体、光学デバイス及び光学デバイス用保護パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、偏肉形状を有する充填接合材である。以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、充填接合材を、偏肉形状、即ち、貼り合わせる部材間の空隙の形状に合わせた形状に成形することにより、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができることを見出した。このような充填接合材を用いることにより、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等であっても、平面の光学デバイスの場合と同様の表示性能及び機械的強度を満たすことができる。
なお、本明細書において、充填接合材とは、被着体との界面に接着剤又は粘着剤を介さずに、それ自身で被着体同士を貼り合せることが可能であり、かつ、被着体同士の空間(空隙)を充填することができる材料を指す。
【0009】
本発明の充填接合材は、偏肉形状を有する。
これにより、本発明の充填接合材は、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができる。本発明の充填接合材を用いることにより、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等であっても、平面の光学デバイスの場合と同様の表示性能及び機械的強度を満たすことができる。
【0010】
本明細書において、偏肉形状とは、矩形(直方体)以外の形状を指し、例えば、厚みが一様ではなく、厚みに偏りがある形状等が挙げられる。ただし、力を加えた際には変形して偏肉形状となる形状であっても、例えば一般的な薄膜や粘着シートのように、室温で静置した状態で厚みが一様な平板状である形状は含まない。
【0011】
本発明の充填接合材は、曲面を有することが好ましい。
上記曲面として、より具体的には例えば、凸型曲面及び凹型曲面が挙げられる。また、上記曲面は、充填接合材の表面の一部を構成してもよいし、全部を構成してもよい。なお、本発明の充填接合材は、表面に微細な構造を有していてもよいが、本発明でいう偏肉形状には、表面の微細な構造そのものは含まない。即ち、巨視的には平滑な平面を有する充填接合材が、微視的な形状(例えば、数nm~数10μmの表面粗さ)を有していても、これらの形状は偏肉形状には含めない。
【0012】
本発明の充填接合材は、主曲率が1/5000mm-1以上である曲面を有することがより好ましい。ここで、主曲率とは、法曲率の最大値を指す。なお、曲面の曲率は、曲率半径をRとして、1/Rで表せる。上記主曲率のより好ましい下限は1/2000mm-1、更に好ましい下限は1/1000mm-1である。
【0013】
上記曲面は、弧長が50mm以上であることが好ましい。ここで、曲面の弧長とは、対象とする曲面と、その主曲率(法曲率の最大値)を与える法平面との交差によって形成される曲線の長さである(法切断ともいう)。
上記曲面は、弦長が50mm以上であることが好ましい。ここで、曲面の弦長とは、上記法切断の端点間の距離である。
なお、
図17は、曲面の弧長及び弦長について説明する模式図である。
【0014】
上記曲面は、ガウス曲率が正又は負であることが好ましい。即ち、ガウス曲率が0(ゼロ)でないことが好ましい。なお、ガウス曲率とは、法曲率の最大値と法曲率の最小値との積である。このような曲面は、曲率が0(ゼロ)となる方向がない。このような曲面を有する充填接合材であれば、より複雑な曲面を構成できることから、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等に適用することが可能であり、平面の光学デバイスの場合と同様の表示性能及び機械的強度を満たしつつ、意匠性に優れた光学デバイスを提供することができる。
【0015】
本発明の充填接合材の形状として、具体的には例えば、角柱、円柱、半円柱等の柱体形状、角錐、円錐等の錐体形状、角錐台、円錐台等の錐台形状、球、半球、楕円体等の形状、及び、これらを組み合わせた形状が挙げられる。これらの形状は、一部に開口部や貫通孔を有していてもよい。貫通孔を有する形状として、例えば中空の円筒状形状が挙げられる。
【0016】
本発明の充填接合材の形状は、被接合部材(被着体)の形状に応じて適宜設計及び加工することができる。更には、本発明の充填接合材の形状は、加飾印刷部段差(表面保護パネルの裏側の印刷部の段差)や配線段差(タッチパネルに形成されている配線の段差)、タッチパネルモジュールやディスプレイモジュールの周縁部に設けられている筐体と、タッチパネル面やディスプレイ面との段差等にも追従するように適宜設計及び加工することができる。
また、いくつかの部分(ブロック)に分けて成形し、最終的に接合させることで偏肉形状を形成してもよい。各ブロックを接合させて偏肉形状を形成する方法は特に限定されないが、各ブロックに液状接合助剤を塗布するか又は含浸させた状態で熱及び圧力をかけて一定時間保持する方法が好ましい。このような方法によれば、ブロック間に気泡が残存するのを抑制することができ、大型又は複雑な偏肉形状であってもシームレスかつ容易に形成することができる。また、液状接合助剤の塗布方法や熱及び圧力の条件を調整することにより、各ブロックの仮止めを行うこともできる。
【0017】
上記液状接合助剤は、液状可塑剤を含有することが好ましい。上記液状接合助剤は特に限定されず、例えば、後述するようなポリビニルアセタールとともに用いられる可塑剤、アルコール(例えば、エタノール)、反応性希釈剤、水等が挙げられる。これらの液状接合助剤は、2種以上を混合して使用してもよい。上記液状接合助剤は、ポリビニルアセタール樹脂、光重合開始剤、接着助剤(例えば、シランカップリング剤)等を含有してもよい。
【0018】
本発明の充填接合材は、厚みの最大値(t1)の好ましい下限が300μmである。上記厚みの最大値(t1)が300μm以上であれば、従来の薄膜シート状の粘着剤では充填接合が困難な被着体であっても、空隙を充填して接合することができる。上記厚みの最大値(t1)のより好ましい下限は500μm、更に好ましい下限は1000μmである。
なお、充填接合材の厚みとは、充填接合材で貼り合わせる一対の被接合部材(被着体)の接合面に対して垂直な方向の長さをいう。表面形状が複雑な場合は、光学デバイスの光軸方向(発光又は受光する光が進む主方向)の長さを厚みとして、厚みの最大値(t1)を決定してもよい。
【0019】
本発明の充填接合材は、厚みの最大値(t1)と厚みの最小値(t2)との差の好ましい下限が100μmである。上記差が100μm以上であれば、比較的大きな曲面形状を充填することができる。上記差のより好ましい下限は300μmである。
【0020】
本発明の充填接合材は、幅の最大値の好ましい下限が50mmであり、より好ましい下限は100mmである。
なお、充填接合材の幅とは、充填接合材の厚みに垂直な方向の長さをいう。
【0021】
本発明の充填接合材は、少なくとも1つの平面を有することが好ましい。このように構成することで、被着体として、通常平面形状である従来のディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールを使用することができる。なかでも、本発明の充填接合材は、平面と、上記平面に対向する曲面(凸型であっても凹型であってもよい)とを有する形状であることが好ましい。このような形状は、凸型又は凹型のレンズ形状ということもできる。このような形状とすることで、充填接合材は、例えば、曲面形状を有する光学デバイスにおいて、通常平面形状であるディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールと、湾曲した表面保護パネルとを貼り合わせつつ、これら部材間を充填するために好適に用いることができ、意匠性と製造時のハンドリングとに優れたパネルを提供できる。
【0022】
本発明の充填接合材は、光透過部を有することが好ましい。上記光透過部を通して、被接合部材(被着体)に入射した光を充填接合材の外部に導いたり、外部からの入射光を取り込んだりすることができる。被接合部材(被着体)と充填接合材とは、上記光透過部で接合していることが好ましいが、上記光透過部以外の領域で接合していてもよい。即ち、本発明の充填接合材は、主接合面と、副接合面を有していてもよい。このように構成することで、光透過部以外でも被接合部材(被着体)と充填接合材とが接合できるため、被接合部材(被着体)が複雑な形状であっても、光学品質を損なうことなく部材間の充填及び接合をすることができる。主接合面と副接合面とは互いに連続していてもよく、連続していなくともよい。また、主接合面と副接合面とは、同一の平面又は同一の曲面上にあってもよい。本発明の充填接合材は、主接合面及び副接合面をそれぞれ複数有していてもよい。
【0023】
図1は、本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す図である。
図1(a)に示す本発明の充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凸型曲面とを有する形状(凸型のレンズ形状)である。
図1(b)に示すように、本発明の充填接合材1は、平面形状であるタッチパネルモジュール2と、湾曲した表面保護パネル3とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填することができる。タッチパネルモジュール2及び表面保護パネル3は一対の被接合部材(被着体)であり、この被接合部材間が充填接合材1で充填されることで、積層体が構成されている。
【0024】
図2は、本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す図である。
図2(a)に示す本発明の充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凹型曲面とを有する形状(凹型のレンズ形状)である。
図2(b)に示すように、本発明の充填接合材1は、平面形状であるタッチパネルモジュール2と、湾曲した表面保護パネル3とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填することができる。タッチパネルモジュール2及び表面保護パネル3は一対の被接合部材(被着体)であり、この被接合部材間が充填接合材1で充填されることで、積層体が構成されている。
【0025】
図3は、本発明の充填接合材の例を模式的に示す斜視図である。
図3(a)に示す本発明の充填接合材1は角錐台(四角錐台)、
図3(b)に示す本発明の充填接合材1は半球(楕円体)、
図3(c)に示す本発明の充填接合材1は曲面同士が対向した形状である。
図3(c)において、対向するそれぞれの曲面の曲率は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0026】
図4は、本発明の充填接合材の一例を模式的に示す斜視図及び断面図である。
図4(a)(斜視図)及び(b)(断面図)に示す本発明の充填接合材1は、中空の円筒状形状であり、空洞4を有している。空洞4には、例えば、製品設計に合わせて光学デバイスを構成する部材等を挿入する(該部材等を、本発明の充填接合材により覆った構成とする)ことができる。
【0027】
図5は、本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、本発明の充填接合材1は、平面形状であるタッチパネルモジュール2と、湾曲した表面保護パネル3とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填することができる。更に、本発明の充填接合材1は、タッチパネルモジュール2の周縁部に設けられている筐体21の段差に追従するとともに、その内側の空隙を埋めることもできる。
【0028】
本発明の充填接合材の材料は特に限定されず、例えば、常温において固体状又はゲル状である等により常温で偏肉形状を保つことができるように調整されていればよい。本発明の充填接合材の材料として、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、光硬化性樹脂の硬化物、及び、これらの混合物等を用いることができる。なかでも、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酸変性オレフィン、(メタ)アクリル共重合体等が挙げられ、上記熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の充填接合材は、少なくとも表面にポリビニルアセタールを含有することが好ましい。
従来の薄膜シート状のアクリル粘着剤を用いた場合には、厚膜のものを偏肉形状に成形又は加工しようとしても成形又は加工が困難であるのに対して、ポリビニルアセタールを用いることにより、偏肉形状への成形又は加工が容易となり、かつ、被着体への接合が可能となる。ポリビニルアセタールを用いた場合には、段差追従性(発泡防止性)や飛散防止性(光学デバイス等が破損した場合に破片の飛散を防止する性能)にも優れた充填接合材とすることができる。また、従来の薄膜シート状のアクリル粘着剤のようないわゆる粘着剤を用いた場合とは異なり、被着体への汚染が少なく、充填接合材のリワークも可能となる。このため、被着体が高価なものである場合(例えば、被着体が湾曲した大型のガラスからなる表面保護パネルである場合や、タッチパネルモジュールやディスプレイモジュールが高価である場合)には特に、コスト面でも有利となる。本発明の充填接合材が少なくとも表面にポリビニルアセタールを含有することで、被着体と積層させた状態で熱及び圧力をかけて一定時間保持することで、被着体を強く接合させることができる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールは、可塑化ポリビニルアセタールであってもよいし、可塑剤を含まないポリビニルアセタールであってもよい。なかでも、可塑化ポリビニルアセタールであることが好ましい。本明細書中、可塑化ポリビニルアセタールとは、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含有する樹脂を意味する。
上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られたポリビニルアルコールを、触媒存在下でアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は特に限定されないが、一般に70~99.9モル%の範囲内にあり、鹸化度70~99.8モル%が好ましく、80~99.8モル%がより好ましい。
【0031】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は特に限定されないが、より優れた飛散防止性及びリワーク性を得る観点からは分子量の大きなポリビニルアセタールが好適であるため、平均重合度の高いポリビニルアルコールを用いることが好ましい。上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は100、好ましい上限は4000である。上記平均重合度が100以上であると、充填接合材のリワーク性を向上させることができる。また、機械的強度の観点からは、上記平均重合度が200以上であることが好ましい。上記平均重合度が200以上であると、上記ポリビニルアセタールの機械的強度及び飛散防止性の低下を防止することができる。上記平均重合度が4000以下であれば、上記ポリビニルアルコールをアセタール化する際に溶液粘度が異常に高くなることがなくアセタール化や充填接合材の成形を適切に行うことができる。上記平均重合度のより好ましい下限は600、より好ましい上限は3800であり、更に好ましい下限は800、更に好ましい上限は3600である。
また、上記平均重合度を2000以下とすることで、可塑剤の含有量の調整等により、残留応力を低減することができる。上記平均重合度のより好ましい上限は1800、更に好ましい上限は1500、特に好ましい上限は900である。
【0032】
上記ポリビニルアルコールを触媒存在下でアルデヒドによりアセタール化する際には、上記ポリビニルアルコールを含む溶液を用いてもよい。上記ポリビニルアルコールを含む溶液に用いられる溶媒として、例えば、水等が挙げられる。
【0033】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般的には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。
上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよい。上記炭素数が1~10のアルデヒドとして、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
即ち、上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール(上記アルデヒドがn-ブチルアルデヒドである場合、上記ポリビニルアセタールをポリビニルブチラールという)を含有することが好ましい。上記ポリビニルブチラールを用いることにより、充填接合材のガラスに対する接着力が適切に発現し、耐光性、耐候性等が向上する。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
【0034】
段差追従性及び発泡防止性に優れることから、上記ポリビニルアセタールは、分子間架橋が少ないことが好ましい。上記ポリビニルアセタールの分子間架橋が少なければ、上記ポリビニルアセタールの分子量、アセチル基量、アセタール化度等が同じであっても、より段差追従性及び発泡防止性に優れた充填接合材を得ることができる。更に上記ポリビニルアセタールの分子量が大きければ、より優れた飛散防止性及びリワーク性を得ることができる。
このような分子間架橋の少ないポリビニルアセタールを得る方法として、例えば、隣接するポリビニルアルコールの主鎖を架橋させないように、上記アルデヒドによるアセタール化反応の前又は途中で上記アルデヒドを過剰に投入しないようにする方法が好ましい。アセタール化に必要な量を超えて上記アルデヒドを投入すると、架橋の度合いが高くなる。
【0035】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率(水酸基量)の好ましい下限は16モル%、好ましい上限は45モル%である。上記水酸基量が16モル%以上であれば、充填接合材のガラスに対する接着力が向上する。上記水酸基量が45モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールの柔軟性が高くなって取扱い性が向上し、また、上記ポリビニルアセタールと上記可塑剤との相溶性が高くなり、充填接合材の段差追従性が向上する。上記水酸基量のより好ましい下限は18モル%、更に好ましい下限は20モル%、特に好ましい下限は22モル%であり、より好ましい上限は40モル%、更に好ましい上限は38モル%、更により好ましい上限は36モル%、特に好ましい上限は35モル%である。
なお、ポリビニルアセタールの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により求めることができる。
【0036】
上記ポリビニルアセタールのアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記アセチル基量が0.1モル%以上であれば、上記ポリビニルアセタールと上記可塑剤との相溶性が高くなり、充填接合材の段差追従性が向上する。上記アセチル基量が30モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールの耐湿性が向上する。また、上記アセチル基量が30モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールを製造する際の反応効率の低下を抑制することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.2モル%、更に好ましい下限は0.3モル%であり、より好ましい上限は24モル%、更に好ましい上限は20モル%、更により好ましい上限は19.5モル%、特に好ましい上限は15モル%である。
なお、ポリビニルアセタールのアセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0037】
上記ポリビニルアセタールのアセチル基量を上記範囲に調整する方法として、例えば、上記ポリビニルアルコールの鹸化度を調整する方法が挙げられる。即ち、上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は、上記ポリビニルアルコールの鹸化度に依存するものであり、鹸化度が低いポリビニルアルコールを用いれば上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は大きくなり、鹸化度が高いポリビニルアルコールを用いれば上記ポリビニルアセタールのアセチル基量は小さくなる。
【0038】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は50モル%、好ましい上限は85モル%である。上記アセタール化度が50モル%以上であれば、上記ポリビニルアセタールと上記可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が85モル%以下であれば、上記ポリビニルアセタールを製造するために必要な反応時間を短縮できる。上記アセタール化度のより好ましい下限は54モル%、更に好ましい下限は58モル%、特に好ましい下限は60モル%である。上記アセタール化度のより好ましい上限は82モル%、更に好ましい上限は79モル%、特に好ましい上限は77モル%である。
なお、ポリビニルアセタールのアセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル基量とビニルアルコール量(水酸基の含有率)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル基量とビニルアルコール量とを差し引くことにより算出されうる。
【0039】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度を調整する方法として、例えば、上記アルデヒドの添加量を調整する方法が挙げられる。上記アルデヒドの添加量を少なくすれば上記ポリビニルアセタールのアセタール化度は低くなり、上記アルデヒドの添加量を多くすれば上記ポリビニルアセタールのアセタール化度は高くなる。
【0040】
上記ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、より優れた飛散防止性及びリワーク性を得る観点から、10℃以上が好ましい。
【0041】
上記可塑剤は特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができ、単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。上記可塑剤として、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機酸エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機酸エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は、液状可塑剤であることが好ましい。
【0042】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸と、グリコールとの反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記一塩基性有機酸として、例えば、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等が挙げられる。上記グリコールとして、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとの反応によって得られたエステル化合物等が挙げられる。
【0043】
上記有機酸エステル可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。上記ジエステル可塑剤を用いることにより、充填接合材の成形性が向上する。
R1-CO-(-R3-O-)p-CO-R2 (1)
式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数5~10(好ましくは炭素数6~10)の有機基を表し、R3はエチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。
上記有機酸エステル可塑剤は、具体的には例えば、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート等が挙げられる。また、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0044】
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0045】
上記可塑剤のなかでも、ジヘキシルアジペート(DHA)、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(4GH)、テトラエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート(4G7)及びトリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート(3G7)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。更に、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール-ジ-n-ヘプタノエート(3G7)、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)がより好ましく、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートが更に好ましい。
【0046】
上記ポリビニルアセタールに対する上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は75重量部である。上記含有量が上記範囲であれば、充填接合材の飛散防止性と段差追従性とを両立しやすくなる。
上記含有量が5重量部未満であると、充填接合材の成形性が低下することがある。上記含有量が75重量部を超えると、充填接合材の透明性が低下したり、上記可塑剤がブリードアウトしたりすることがある。上記可塑剤のより好ましい下限は10重量部、更に好ましい下限は15重量部、特に好ましい下限は20重量部である。上記可塑剤のより好ましい上限は65重量部、更に好ましい上限は55重量部である。また、上記ポリビニルアセタールに対する上記可塑剤の含有量が多くなると、高温高湿環境下で気泡が発生してしまい、光学品質が劣化してしまうことがある。高温高湿環境下における光学品質の劣化を抑制するためには、上記ポリビニルアセタール100重量部に対する上記可塑剤の含有量は、50重量部以下であることが好ましい。この観点における上記可塑剤のより好ましい上限は40重量部であり、特に好ましい上限は30重量部である。
【0047】
なお、上記ポリビニルアセタールによって凝集力を発生させているため、上記可塑剤の含有量は少ないほうが好ましい。即ち、上記ポリビニルアセタールと上記可塑剤との相溶性を高めて、上記可塑剤の含有量を低下させることが好ましい。これにより、飛散防止性を向上させることができる。
上記ポリビニルアセタールと上記可塑剤との相溶性を高める方法として、例えば、上記ポリビニルアセタールのアセタール化度を大きくする方法、アセチル基量を高くする方法が好ましい。また、上記ポリビニルアセタールの水酸基のブロック性を落とす方法も好ましい。水酸基のブロック化を抑制する方法として、熟成温度を下げる方法が好ましい。
【0048】
本発明の充填接合材中、上記ポリビニルアセタールの含有量は50重量%以上であることが好ましい。上記含有量が50重量%以上であると、充填接合材の飛散防止性と段差追従性とを両立しやすくなる。上記含有量のより好ましい下限は60重量%、更に好ましい下限は70重量%、特に好ましい下限は80重量%、最も好ましい下限は90重量%である。
上記ポリビニルアセタールの含有量の上限は特に限定されず、100重量%であってもよい。
【0049】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合体は特に限定されないが、酢酸ビニル含有量が5~50重量%であるものが好ましい。
【0050】
上記酸変性オレフィンは特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0051】
上記(メタ)アクリル共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が23℃程度の常温よりも高いことが好ましい。上記ガラス転移温度(Tg)が23℃程度の常温よりも低いと、厚膜及び偏肉形状の成形が困難なことがある。なお、本明細書において、ガラス転移温度とは、動的粘弾性測定により測定される損失正接tanδが極大値を示す温度のことをいう。また、tanδは、後述の粘弾性測定装置にて測定した損失弾性率(G”)を貯蔵弾性率(G’)で除した値として算出できる(tanδ=G’/G”)。
【0052】
上記(メタ)アクリル共重合体は、20℃における貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が1.0×104Pa以上であれば、充填接合材が優れた凝集力を有し、加工性、取り扱い性、形状維持性等が良好となる。上記20℃における貯蔵弾性率のより好ましい下限は5.0×104Paである。
また、上記(メタ)アクリル共重合体は、20℃における貯蔵弾性率が1.0×106Pa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が1.0×106Pa以下であれば、貼り合わせに必要な充填接合材の初期粘着性(タック)が良好となる。上記20℃における貯蔵弾性率のより好ましい上限は5.0×105Paである。
【0053】
また、上記(メタ)アクリル共重合体は、80℃における貯蔵弾性率が5.0×104Pa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が5.0×104Pa以下であれば、貼り合わせ時に加熱された充填接合材が、所定の時間内(例えば、数秒から数分)に、被着体の段差に追従し、空隙が形成されないように流動できる。
【0054】
上記(メタ)アクリル共重合体の貯蔵弾性率は、上記(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの種類、分子量及び配合比、上記(メタ)アクリル共重合体の重合度、可塑剤の種類及び配合比等を適宜変更することによって調整することができる。
例えば、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。また、例えば、アルキル基の炭素数が2~26である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量、又は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの量を多くすると、貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。また、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基及びこれらの複数の組合せが連結した基を含む(メタ)アクリレートの量、又は、アルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレートの量を多くすると、貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。また、上記(メタ)アクリル共重合体の重合度を高くすると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。
【0055】
なお、(メタ)アクリル共重合体の貯蔵弾性率は、ARES-G2(TAINSTRUMENTS社製)、DVA-200(アイティー計測制御社製)等の動的粘弾性測定装置により、3℃/分の昇温速度で-50℃から100℃まで温度を上昇させる条件かつ周波数1Hz及びせん断歪1%の条件にて測定することができる。
【0056】
上記シリコーン樹脂としては、例えば、シロキサン結合からなる主鎖を有する重合体が挙げられる。このような重合体を得るために、例えば、硬化性、非硬化性、又は、半硬化させたB-ステージ状のポリオルガノシロキサン組成物を用いることができる。
【0057】
上記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物として、例えば、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノヒドロシロキサン及び白金系触媒(白金、ロジウム、パラジウム等の白金族元素の化合物)を含むものが挙げられる。上記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、更に、安定化剤、希釈剤、接着付与剤、無機質充填剤等を含んでいてもよい。
なお、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物におけるベースポリマーであり、白金系触媒の存在下で、ポリオルガノヒドロシロキサン中のヒドロシリル基との間で付加反応を起こし、架橋が形成される。上記成分を含むことで、硬化時の架橋による安定した3次元構造を確保し、硬化収縮を制御し、良好な光学特性を確保することができる。
【0058】
また、上記シリコーン樹脂の硬化機構としては、例えば、シラノール基同士の脱水縮合反応、シラノール基とケイ素原子結合水素原子との脱水素縮合反応、ケイ素原子結合アルコキシ基とシラノール基による脱アルコール縮合反応、ケイ素原子結合アセトキシ基とシラノール基による脱アセテート縮合反応等の縮合反応等も挙げられる。また、ケイ素原子結合アルケニル基とケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応等も挙げられる。また、アクリル基又はメタクリル基によるラジカル反応、有機過酸化物によるラジカル反応等のラジカル反応等も挙げられる。これらの反応によりシリコーン樹脂を得ることができる。例えば、熱硬化性のシリコーン樹脂を用いることができる。
【0059】
上記ウレタン樹脂は、通常、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分との反応物である。
上記ポリオール成分は特に限定されないが、オレフィン骨格を有するポリオール成分が好ましく、上記オレフィン骨格を有するポリオール成分として、例えば、1,2-ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオールや、ポリイソプレン系ポリオール、それらの二重結合を水素又はハロゲン等で飽和化したものが挙げられる。また、上記ポリオール成分は、上記ポリブタジエン系ポリオール等に、スチレン、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等のオレフィン化合物を共重合させたポリオールやその水添物であってもよい。上記ポリオール成分は、直鎖構造を有するものであってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。これらのポリオール成分は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記ポリオール成分の数平均分子量は特に限定されないが、300以上、5000以下が好ましい。上記数平均分子量が300未満であると、上記ポリオール成分と、上記ポリイソシアネート成分との反応が速すぎて、充填接合材の成形が困難になったり、柔軟性が低下して脆くなったりすることがある。上記数平均分子量が5000を超えると、上記ポリオール成分の粘度が高くなりすぎて、充填接合材の成形が困難になったり、充填接合材が結晶化して白濁したりすることがある。上記数平均分子量は500以上、3000以下がより好ましい。
【0061】
上記ポリイソシアネート成分は特に限定されないが、イソシアネート基を有する脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートと、エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物とを反応させて得られる変性ポリイソシアネートが好ましい。
上記脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートを用いることにより、着色が少なく高い透明性を有する充填接合材を得ることができる。また、上記エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物を反応させた変性体とすることによって、ポリイソシアネート成分は、親水性部分(エチレンオキシドユニット)の作用によって白化を抑制することができ、疎水性部分(その他のユニット)の作用によって低極性の可塑剤等との相溶性を発揮することができる。
【0062】
上記脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートとして、具体的には例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びそれらの変性体が挙げられる。上記エチレンオキシドユニットを有するエーテル化合物としては、例えば、アルコール、フェノール及び/又はアミンのエチレンオキシド付加物が挙げられる。なかでも、親水性を高める観点から、1分子当たり6個以上のエチレンオキシドユニットを有するものが好ましい。上記エチレンオキシドユニットの含有量は、上記ウレタン樹脂全体に対して1重量%以上、20重量%以下であることが好ましい。
【0063】
上記変性ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアネート基の数は、平均で2.0以上であることが好ましい。上記イソシアネート基の数が平均で2.0未満であると、架橋密度の低下により、上記ポリオール成分と、上記ポリイソシアネート成分との反応が不充分となることがある。
【0064】
上記ウレタン樹脂は、α比(ポリオール成分由来のOH基のモル数/ポリイソシアネート成分由来のNCO基のモル数)が1以上であることが好ましい。α比が1未満であると、上記ポリイソシアネート成分が上記ポリオール成分に対して過剰であるため、上記ウレタン樹脂が硬くなり、充填接合材の段差追従性及び接着力が低下することがある。α比は、1<α<2.0を満たすことがより好ましい。α比が2.0以上であると、上記ポリオール成分と、上記ポリイソシアネート成分との反応が不充分となることがある。
【0065】
本発明の充填接合材は、更に、反応性希釈剤と、光重合開始剤とを含有してもよい。
上記反応性希釈剤と、上記光重合開始剤とを用いることにより、充填接合材の貼り合わせの際に高い段差追従性(発泡防止性)を発揮させることができるとともに、光重合反応により架橋させることで、飛散防止性を向上させることもできる。被着体を貼り合わせた後に光を照射して上記反応性希釈剤を反応させれば、上記反応性希釈剤が残留したり、ブリードアウトしたりすることもない。
【0066】
本明細書において、反応性希釈剤とは、本発明の充填接合材の材料と相溶するとともに、光を照射することにより反応性希釈剤間で反応して架橋、硬化させることができる剤を意味する。本明細書において、反応性希釈剤は、上記可塑剤には含めない。
【0067】
上記反応性希釈剤としては、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリルモノマー及びそれらのオリゴマー等の反応性二重結合を有する反応性希釈剤や、グリシジルエーテル等のエポキシ系反応性希釈剤等が挙げられる。なかでも、本発明の充填接合材の材料との相溶性が高く、かつ、光重合開始剤と組み合わせることにより容易に架橋、硬化させることができることから、反応性二重結合を有する反応性希釈剤が好ましい。
【0068】
上記反応性希釈剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は50重量%である。上記含有量が0.5重量%未満であると、充填接合材が高い段差追従性(発泡防止性)を発揮できないことがある。上記含有量が50重量%を超えると、充填接合材の強靭性、曲げ剛性及びガラス等に対する接着力が低下して、飛散防止性が低下することがある。上記反応性希釈剤の含有量のより好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は30重量%であり、更に好ましい下限は2重量%、更に好ましい上限は20重量%であり、特に好ましい下限は4重量%、特に好ましい上限は10重量%である。
【0069】
上記反応性二重結合を有する反応性希釈剤としての(メタ)アクリルモノマーとしては、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリルモノマーを用いることができる。
上記単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシルプロピルフタレート等が挙げられる。
【0070】
上記2官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
上記3官能以上の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。
【0072】
上記反応性二重結合を有する反応性希釈剤としての(メタ)アクリルモノマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、本発明の充填接合材の材料(特に、ポリビニルアセタール)との相溶性に特に優れることから、単官能の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0073】
上記反応性二重結合を有する反応性希釈剤としての(メタ)アクリルオリゴマーとしては、上記(メタ)アクリルモノマーが複数個結合したものが挙げられる。なかでも、本発明の充填接合材の材料(特に、ポリビニルアセタール)との相溶性に特に優れることから、上記アクリルモノマーからなる(メタ)アクリルオリゴマーが好適である。
【0074】
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。
上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、初期ヘイズ値及び高温高湿試験後のヘイズ値が低く、高い透明性を有する充填接合材を得ることができる。また、上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートは、本発明の充填接合材の材料との相溶性に優れ、光反応性にも優れる。更に、上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、充填接合材中の二重結合量を少なくすることができ、硬化時の硬化収縮率を低下させることもできる。
【0075】
上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記単官能(メタ)アクリレートとして、具体的には例えば、エチレン基の数が2~23であるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、エチレン基の数が2~14であるフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記2官能(メタ)アクリレートとして、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチレン基の数が2~23であるジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2~14であるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。上記3官能以上の(メタ)アクリレートとして、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「EO」とはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。また、「PO」とはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものを示す。これらのグリコール骨格を有する(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の次のものが挙げられる。即ち、NKエステルAM-90G、AM-130G、M-90G、A-200、A-600、APG-400、APG-700、A-GLY-9E、A-TMPT-3EO、A-TMPT-9EO、A-TMPT-3PO、A-TMPT-6PO、ATM-35E等が挙げられる。
【0077】
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、リン酸エステル系(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。
上記リン酸エステル系(メタ)アクリレートを用いることにより、充填接合材の貯蔵弾性率を高く保ったまま、tanδ値を高くすることができ、特に耐衝撃性に優れる充填接合材を得ることができる。また、着色が少なく高い透明性を有する充填接合材を得ることができる。これは、上記(メタ)アクリルモノマーのなかでもリン酸エステル系(メタ)アクリレートは、本発明の充填接合材の材料(特に、ポリビニルアセタール)との相溶性に優れるためと考えられる。なお、上記リン酸エステル系(メタ)アクリレートと本発明の充填接合材の材料との相溶性が優れることにより、充填接合材の粘度を抑え、光反応性にも優れるという効果も得られる。
【0078】
上記リン酸エステル系(メタ)アクリレートとしては特に限定されないが、下記一般式(2)で表されるリン酸エステル系(メタ)アクリレートが好適である。これらのリン酸エステル系(メタ)アクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
【0080】
一般式(2)中、Z1は、A2-O-X2-、重合性二重結合を有しない置換基又は水素原子を表し、Z2はA3-O-X3-、重合性二重結合を有しない置換基又は水素原子を表す。A1、A2及びA3はアクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、X1、X2及びX3はアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、又はこれらの組み合わせを表す。
【0081】
上記リン酸エステル系(メタ)アクリレートのうち市販品としては、例えば、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル(サートマー社製のSR9050)、リン酸トリス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](サートマー社製のSR9051)リン酸トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル](サートマー社製のSR9053)等が挙げられる。また、日本化薬社製のKAYAMERシリーズや、ユニケミカル社製のPhosmerシリーズ等が挙げられる。
【0082】
本発明の充填接合材が上記グリコール骨格を有する(メタ)アクリレートや上記リン酸エステル系(メタ)アクリレートを含有する場合には、これら以外の他の反応性二重結合を有する反応性希釈剤が併用されてもよい。
【0083】
上記光重合開始剤としては、上記反応性希釈剤の種類にあわせて適宜選択すればよい。例えば、上記反応性希釈剤として単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリルモノマー及びそれらのオリゴマーを用いる場合には、ベンゾイン系化合物、アルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルスルフィン系化合物、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ系化合物等を用いることができる。こられの光重合開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記反応性希釈剤100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の配合量が0.01重量部未満であると、充分に上記反応性希釈剤を反応させることができなかったり、反応に長時間を要したりすることがある。上記光重合開始剤の配合量が5重量部を超えても、特に反応性は向上せず、かえって光重合開始剤のブリードアウト等の問題が生じることがある。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0085】
本発明の充填接合材は、上記光重合開始剤を除く全ての化合物中の二重結合量が2.9mmol/g以下であることが好ましい。これにより、硬化時の硬化収縮率を低下させることができ、硬化収縮による厚みムラ及び色ムラの発生を低減することができる。なお、このような厚みムラ及び色ムラ(特に、表示デバイスに接する側の色ムラ)の発生は、表示デバイスの表示性能の低下につながる。上記二重結合量のより好ましい上限は2.4mmol/g、更に好ましい上限は2.2mmol/gである。
上記二重結合量の下限は特に限定されないが、1.5mmol/g以上であることが好ましい。これにより、充填接合材の段差追従性及び飛散防止性を向上させることができる。上記二重結合量のより好ましい下限は1.7mmol/gであり、更に好ましい下限は2.0mmol/gである。
なお、本明細書において、上記二重結合量は、本発明の充填接合材に含まれる、上記光重合開始剤を除く全ての化合物について、各々の二重結合を有する化合物の添加量と分子量から算出することができる。また、上記二重結合量は、JIS K 0070に準ずる手法によりヨウ素価を求め、その値から二重結合量を算出する方法によっても算出することができる。更に、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)を用いて充填接合材の組成を分析し、上記二重結合を有する化合物の添加量と分子量から算出する方法によっても測定することができる。
【0086】
本発明の充填接合材の硬化時(光を照射することにより上記反応性希釈剤を反応させた際)の硬化収縮率は特に限定されないが、2%以下が好ましい。上記硬化収縮率が2%以下であれば、表示デバイスの表示性能の低下につながるような硬化収縮による厚みムラ及び色ムラ(特に、表示デバイスに接する側の色ムラ)の発生を低減することができる。上記硬化収縮率は1%以下がより好ましい。
なお、本明細書において、上記硬化収縮率は、充填接合材の光照射前の密度(dl)及び光照射後の密度(df)を用いて算出することができる。充填接合材の光照射前後の密度は、JIS K7112に準拠して測定することができ、高精度電子比重計(アルファミラージュ社製、SD-200L)や、高精度乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製、アキュピックII 1340-1CC)を用いることができる。以下の計算式によって硬化収縮率を算出する。
硬化収縮率(%)=(df-dl)/df×100
【0087】
本発明の充填接合材は、更に、紫外線吸収剤を含有してもよい。
上記紫外線吸収剤を用いることにより、充填接合材の耐光性を向上させることができる。特に、上記反応性希釈剤が反応する波長の光(紫外線)は吸収せず、上記反応性希釈剤が反応する波長とは異なる波長の光(紫外線)を吸収する紫外線吸収剤を用いれば、上記反応性希釈剤の反応を阻害することもない。このような紫外線吸収剤として、例えば、マロン酸エステル系紫外線吸収剤やシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0088】
本発明の充填接合材は、必要に応じて、接着力調整剤、粘着付与樹脂、可塑剤、乳化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0089】
本発明の充填接合材は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が10℃以上であることで、運搬や使用の際に不必要な接着性を発現することがなく、取扱いに優れる。ガラス転移温度(Tg)の好ましい下限は15℃、より好ましい下限は20℃である。また、本発明の充填接合材は、ガラス転移温度(Tg)が60℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が60℃以下であることで、高温を必要とせず、比較的低温でも貼り合わせを行うことができ、被接合部材(被着体)への熱的損傷を抑えることもできる。ガラス転移温度(Tg)の好ましい上限は50℃、より好ましい上限は40℃である。
なお、ここでいうガラス転移温度とは、動的粘弾性測定により測定される損失正接tanδが極大値を示す温度のことをいう。また、tanδは、動的粘弾性測定装置により、3℃/分の昇温速度で-50℃から100℃まで温度を上昇させる条件かつ周波数1Hz及びせん断歪1%の条件にて測定した貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)から算出できる(tanδ=G’/G”)。
【0090】
本発明の充填接合材は、20℃における貯蔵弾性率が1×104Pa以上であることが好ましい。
上記20℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であることにより、常温での充填接合材の成形又は加工が容易となり、常温で偏肉形状を保つことができる。一方、加熱しながら圧着することより、加飾印刷部段差(表面保護パネルの裏側の印刷部の段差)や配線段差(タッチパネルに形成されている配線の段差)にも充分に追従することができる。更に、万一落下等の衝撃により光学デバイス等が破損した場合、ガラス等の破片の飛散を抑制する効果も期待できる。上記20℃における貯蔵弾性率は、2×105Pa以上がより好ましく、1×106Pa以上が更に好ましく、1×107Pa以上が更により好ましく、3×107Pa以上が特に好ましい。
上記20℃における貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、好ましい上限は1×1010Paである。上記20℃における貯蔵弾性率が1×1010Paを超えると、充填接合材が硬くなりすぎて、密着性又は取扱い性が低下することがある。上記20℃における貯蔵弾性率のより好ましい上限は1×109Paである。
【0091】
また、本発明の充填接合材は、80℃における貯蔵弾性率が1×106Pa以下であることが好ましい。上記80℃における貯蔵弾性率が1×106Paを超えると、貼り合わせ時に加熱したとしても充填接合材が変形応力に追従できず、段差に気泡が残存しやすくなることがある。上記80℃における貯蔵弾性率のより好ましい上限は9×105Pa、更に好ましい上限は7×105Pa、特に好ましい上限は5×105Paである。
上記80℃における貯蔵弾性率の下限は特に限定されないが、好ましい下限が1×103Paである。上記80℃における貯蔵弾性率が1×103Pa未満であると、充填接合材としての耐熱機械強度を保持できないことがある。上記80℃における貯蔵弾性率のより好ましい下限は1×104Pa、更に好ましい下限は5×104Pa、特に好ましい下限は1×105Paである。
また、本発明の充填接合材は、このような弾性率特性を有するため、貼り合わせ時に80℃付近に加熱すれば容易に層間を充填することができ、取扱い性にも優れる。加熱時に加圧すれば更に容易に層間を充填することができる。
【0092】
なお、充填接合材の貯蔵弾性率は、ARES-G2(TAINSTRUMENTS社製)、DVA-200(アイティー計測制御社製)等の動的粘弾性測定装置により、3℃/分の昇温速度で-50℃から100℃まで温度を上昇させる条件かつ周波数1Hz及びせん断歪1%の条件にて測定することができる。
【0093】
本発明の充填接合材の貯蔵弾性率を上記範囲に調整する方法としては、本発明の充填接合材に上述したような可塑化ポリビニルアセタールを用いたうえで、ポリビニルアルコールのアセタール化度、水酸基量、アセチル基量、平均重合度及び分子量を調整したり、可塑剤の含有量等を調整したりする方法が好ましい。
より具体的には例えば、可塑剤の含有量を多くするかポリビニルアセタールとの相溶性を高めると貯蔵弾性率は小さくなり、可塑剤の含有量を少なくするかポリビニルアセタールとの相溶性を低くすると貯蔵弾性率は大きくなる。また、ポリビニルアセタールの分子量を増大させることでも貯蔵弾性率は大きくなり、分子量を低下させると貯蔵弾性率は小さくなる。また、ガラス転移温度(Tg)を高くすると貯蔵弾性率は高くなり、Tgが20℃を下回ると貯蔵弾性率の低下が大きくなる。
【0094】
本発明の充填接合材は、上記光透過部の可視光線透過率が80%以上であることが好ましい。可視光線透過率が80%以上であれば、厚肉部分での透過率が低下して光学デバイスの表示内容の視認性が低下したり、光学デバイスの輝度が不足して暗く感じてしまったりすることを防ぐことができる。上記光透過部の可視光線透過率のより好ましい下限は85%であり、更に好ましい下限は90%である。
【0095】
本発明の充填接合材は、上記光透過部のヘイズが1%以下であることが好ましい。ヘイズが1%以下であれば、光学デバイスの表示内容がぼやける等の、視認性や鮮明性の低下を防ぐことができる。また、本発明の充填接合材は、上記光透過部において、可視光線透過率が80%以上かつヘイズが1%以下であることが好ましい。上記光透過部のヘイズのより好ましい上限は0.5%であり、更に好ましい上限は0.3%である。
【0096】
可視光線透過率及びヘイズは、それぞれJIS R 3106:1998、JIS K 7136:2000に準拠し、例えば日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4100等を用いて測定することができる。なお、ヘイズは、全光線透過率(Tt)及び拡散光透過率(Td)から算出することができる。具体的には、拡散光透過率(Td)を全光線透過率(Tt)で除した値をヘイズとして算出する(ヘイズ=Td/Tt)。
【0097】
本発明の充填接合材は、上記光透過部の23℃における屈折率が1.40以上かつ1.60以下であることが好ましい。
このようにすることで、特に被着体がガラスである場合、充填接合材と被着体との界面における屈折率差を小さくすることができるため、光学デバイスの光学品質を大きく損なうことがない。上記光透過部の23℃における屈折率のより好ましい範囲は1.45以上かつ1.55以下である。
【0098】
なお、上記屈折率の値は、測定波長589nm(ナトリウムD線)での値を指す。上記屈折率の測定は、JIS K 7142に準拠し、例えばアッベ屈折率計(例えばユニバーサルアッベ屈折率計ER-7MW、エルマ販売株式会社)を用いて求めることができる。
【0099】
上記屈折率は、充填接合材を構成する材料組成(重量部数)を変化させることで調整することができる。例えば、充填接合材の主原料としてポリビニルアセタールを用いる場合、可塑剤を添加する重量部数によって屈折率を調整することができる。
【0100】
本発明の充填接合材は、上記光透過部の平均残留位相差(Rave)が20nm/mm以下であることが好ましい。平均残留位相差が20nm/mm以下であれば、光学デバイスにおける光学品質の低下(具体的には輝点や黒点、色ムラ等の発生)を防ぐことができる。上記光透過部の平均残留位相差のより好ましい上限は10nm/mmであり、特に好ましい上限は5nm/mmである。
なお、残留位相差(R1)とは、充填接合材の特定の位置における位相差(R0)と、当該位置における厚み(D)との比(R1=R0/D)である。平均残留位相差(Rave)は、対象領域(光透過部)を光軸方向から平面視して100分割し、分割された各領域における残留位相差の平均値を算出することで求める。位相差(R0)は、フォトニックラティス社製PA-200等を用いて波長520nmの光で測定することができる。
【0101】
本発明の充填接合材は、上記光透過部の位相差の面内標準偏差(s)が10以下であることが好ましい。位相差の面内標準偏差が10以下であれば、光学デバイスにおける光学品質の低下(具体的には輝点や黒点、色ムラ等の発生)を防ぐことができる。上記光透過部の位相差の面内標準偏差のより好ましい上限は5であり、特に好ましい上限は3である。
なお、位相差の面内標準偏差(s)は、対象領域(光透過部)を光軸方向から平面視して5万点以上に分割し、分割された各領域における位相差(R0)の標準偏差を算出することで求める。
【0102】
平均残留位相差(Rave)や位相差の面内標準偏差(s)は、充填接合材の成型において成形温度や成形圧力を調整し、流動性を調整することで調整することができる。例えば、高温の方が樹脂の流動性が高まり、残留位相差や位相差の面内標準偏差を小さくすることができる。また、成型後の充填接合材を同一寸法の型内で加熱(アニール処理)し、加熱時間を調整することで、残留位相差や位相差の面内標準偏差を小さくすることができる。
【0103】
本発明の充填接合材を製造する方法は、偏肉形状を有する充填接合材を製造することができれば特に限定されず、例えば、射出成形等が挙げられる。また、シート状の充填接合材を作製した後、シートプレス成形を行う方法、厚膜のシート状の充填接合材を作製した後、レーザーやウォータージェットを用いて切り抜きする成形方法等も挙げられる。更に、配合原料の混合粉体又は該混合紛体をペレット化したものをプレス成形する方法、シート状の充填接合材を作製した後、延伸加工成形する方法、配合原料母材を直接押出成形する方法等も挙げられる。なかでも、射出成形、直接押出成形が好ましい。
また、上述したようにいくつかの部分(ブロック)に分けて成形し、最終的に接合させることで偏肉形状を形成してもよく、各ブロックを接合させて偏肉形状を形成する方法としては、各ブロックに液状接合助剤を塗布するか又は含浸させた状態で熱及び圧力をかけて一定時間保持する方法が好ましい。
【0104】
本発明の充填接合材の用途は特に限定されないが、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いられる。
上記光学デバイスとして、例えば、携帯情報端末(例えば、スマートフォン、タブレット)、LCD、EL、PDP等の画像表示パネルを用いた表示デバイス(例えば、電子ペーパー、PDA、TV、ゲーム機)、発光デバイス(例えば、照明等)、受光デバイス(例えば、太陽電池、イメージセンサ等)等が挙げられる。
【0105】
本発明の充填接合材により充填される部材間として、例えば、タッチパネルモジュールと表面保護パネルとの間、タッチパネルモジュールと偏光フィルムとの間、タッチパネルを構成する複数の透明導電フィルム間等が挙げられる。
上記タッチパネルモジュールは特に限定されず、例えば、ITO膜等の複数の層を有するタッチパネル等の表示デバイス等に通常使用されるものを用いることができる。上記タッチパネルモジュールの構成は特に限定されず、例えば、アウトセル型、インセル型、オンセル型、カバーガラス一体型、カバーシート一体型等が挙げられる。上記タッチパネルモジュールの方式も特に限定されず、例えば、抵抗膜式、静電容量式、光学式、超音波式等が挙げられる。
上記表面保護パネルは特に限定されず、例えば、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル板等の、光学デバイス又は表示デバイス等に通常使用されるものを用いることができる。
【0106】
本発明の充填接合材は、自己粘着性を持つ材料で構成した場合は、被着体と直接貼り合わせることができる。また、本発明の充填接合材は、常温では粘着性又は接着性を有しない場合であっても、ガラス転移点(Tg)以上に加熱することで接着性を発現し、被着体と貼り合わせることができる。例えば、加熱真空ラミネータやオートクレーブを用いて、加熱温度、圧力及び処理時間を適宜調整することで被着体と充填接合材とを貼り合わせることができる。
【0107】
本発明の充填接合材は、用途によって例えば黒色等に着色されていてもよいが、透明充填接合材であることが好ましい。透明充填接合材であることにより、光学デバイス等における高透明性が要求される用途にも充填接合材を好適に用いることができる。また、透明充填接合材は、無色透明であってもよいし、高透明かつ有色(有色透明)であってもよい。上記有色透明として、例えば、青色透明が挙げられる。
なお、本発明の充填接合材は、一部のみが着色されていてもよく、また、無色透明部及び着色部(有色透明部)の両方を有していてもよい。
【0108】
本発明の充填接合材が有色透明であることで、デバイスの意匠性を高めたり、充填接合材を透過する光の色調を調整したりすることができる。
本発明の充填接合材が有色透明である場合、可視光線透過率は特に限定されないが、85%以下であることが好ましい。上記可視光線透過率が85%以下であれば、着色性を視認可能としつつ、充填接合材を透過する光の色調を調整することができる。上記可視光線透過率は60%以下であることがより好ましい。上記可視光線透過率の下限は特に限定されないが、1%以上が好ましい。
【0109】
本発明の充填接合材は、少なくとも一部に遮光部又は光散乱部を有することが好ましい。
本発明の充填接合材が上記遮光部又は上記光散乱部を有することにより、上記遮光部又は上記光散乱部によってマスキングを行うことが可能となる。
従来、例えば、上記表面保護パネルの裏側には、マスキング等を目的として周縁部に印刷部が形成される場合があった。より具体的には、上記タッチパネルモジュールと上記表面保護パネルとを貼り合わせる場合に、上記タッチパネルモジュールの周縁部に設けられている筐体をマスキングするために、上記表面保護パネルの裏側に印刷部が形成される場合があった。しかしながら、上記表面保護パネルとして湾曲したガラス板を用いる場合、ガラス板を曲げるためには高温が必要なため、平板ガラスに加飾印刷を施してから曲げることはできず、一方、湾曲したガラス板に加飾印刷を施すことは非常に困難である。本発明の充填接合材が上記遮光部又は上記光散乱部を有することにより、上記表面保護パネルの裏側に印刷部を設けなくとも、本発明の充填接合材の上記遮光部又は上記光散乱部によってマスキングを行うことが可能となる。
【0110】
また、本発明の充填接合材が上記遮光部又は上記光散乱部を有することにより、意匠性を高めたり、光学デバイスにおける光漏れや反射光による視認性悪化を抑制したり、キズを目立たなくしたりすることもできる。
【0111】
上記遮光部は、可視光線透過率が10%以下であることが好ましい。上記可視光線透過率が10%以下であれば、上記遮光部によって光が適度に遮られ、マスキング等を行うことが容易となり、また、意匠性を高めたり、光学デバイスにおける光漏れや反射光による視認性悪化を抑制したり、キズを目立たなくしたりすることもできる。上記可視光線透過率は5%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。
上記遮光部の可視光線透過率の下限は特に限定されないが、0.01%以上が好ましい。
【0112】
上記光散乱部は、ヘイズが10%以上であることが好ましい。上記ヘイズが10%以上であれば、上記光散乱部によって光が適度に散乱され、マスキング等を行うことが容易となり、また、意匠性を高めたり、キズを目立たなくしたりすることができる。上記ヘイズは15%以上がより好ましい。
上記光散乱部のヘイズを上記範囲に調整する方法は特に限定されないが、具体的には例えば、充填接合材に炭酸カルシウム粒子等を配合し、可視光線を散乱させると、可視光線透過率は高いが、ヘイズが高くなり、マスキング効果が得られる。
【0113】
本発明の充填接合材は、上記遮光部又は上記光散乱部を有する場合、更に透明部を有することが好ましい。上記透明部は、無色透明部であってもよいし、着色部(有色透明部)であってもよい。
【0114】
なお、充填接合材の可視光線透過率は、JIS R 3106:1998に準拠して測定することができる。具体的には例えば、測定用サンプルとして充填接合材を200μm厚みにプレス成膜し、2枚の白色ガラス(S9112:松波硝子社製)の間に積層し、U4100(日立ハイテクノロジーズ社製)にて可視光線透過率を測定することができる。
また、充填接合材のヘイズは、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠して測定することができる。具体的には例えば、測定用サンプルとして充填接合材を200μm厚みにプレス成膜し、2枚の白色ガラス(S9112:松波硝子社製)の間に積層し、NDH4000(日本電色工業社製)にてヘイズを測定することができる。
【0115】
上記遮光部及び上記光散乱部は、紫外線透過率を調整することで、紫外線が透過するように調整されていることが好ましい。紫外線を透過させることができれば、上記遮光部及び上記光散乱部のマスキング性を高めつつ、充填接合材を光硬化させる際にも、光硬化を妨げることがない。
【0116】
上記遮光部及び上記光散乱部は、本発明の充填接合材の少なくとも一部に配置されていればよく、その配置部位は特に限定されない。なかでも、上記遮光部及び上記光散乱部は、本発明の充填接合材の周縁部に配置されていることが好ましい。上記遮光部又は上記光散乱部が本発明の充填接合材の周縁部に配置されていることにより、例えば、上記タッチパネルモジュールと上記表面保護パネルとを貼り合わせる場合に、上記表面保護パネルの裏側に印刷部を設けなくとも、上記タッチパネルモジュールの周縁部に設けられている筐体をマスキングすることが可能となる。上記遮光部は、本発明の充填接合材の端面に配置されていてもよい。
上記遮光部及び上記光散乱部は、本発明の充填接合材の中央部に配置されていてもよい。上記遮光部又は上記光散乱部が本発明の充填接合材の中央部に配置されていることにより、例えば、上記遮光部又は上記光散乱部を表示画面の「区切り」として使用することができる。
【0117】
上記遮光部及び上記光散乱部は、上記ポリビニルアセタールを含有する場合、ポリビニルアルコールの平均重合度がその他の部分と異なっていてもよく、また、上記遮光部又は上記光散乱部の架橋度がその他の部分と異なっていてもよい。特に、上記遮光部又は上記光散乱部を充填接合材の周縁部に配置する場合、上記遮光部又は上記光散乱部におけるポリビニルアルコールの平均重合度又は架橋度がその他の部分よりも高いことで、デバイスの耐熱性を高めることができる。
【0118】
上記着色部、上記遮光部及び上記光散乱部は、それぞれ、単調な色味を有していてもよいが、グラデーションのある色味を有していてもよいし、ドット柄等の模様を有していてもよい。上記着色部、上記遮光部又は上記光散乱部がグラデーションのある色味やドット柄等の模様を有することにより、意匠性をより高めることができる。
【0119】
上記着色部、上記遮光部及び上記光散乱部の可視光線透過率、ヘイズ、紫外線透過率及び色味を調整する方法は特に限定されず、例えば、染料又は顔料を含有させる方法が挙げられる。上記染料又は顔料は特に限定されず、顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等が挙げられる。また、染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料等が挙げられる。これらの染料又は顔料は単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記染料又は顔料の含有量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。
【0120】
本発明の充填接合材が上記着色部、上記遮光部又は光散乱部を有する場合、本発明の充填接合材を製造する方法としては、異なる材料を用いて二色射出成形する方法等が挙げられる。また、遮光部又は光散乱部を有するブロックと、遮光部又は光散乱部を有さないブロックとをそれぞれ別々に成形した後、最終的に接合させる方法が挙げられる。
【0121】
図6は、本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す断面図である。
図6(a)において、本発明の充填接合材1は、平面形状であるタッチパネルモジュール2と、湾曲した表面保護パネル3とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填している。なお、本発明の充填接合材1は、タッチパネルモジュール2の周縁部に設けられている筐体21の段差に追従するように、その形状が加工されている。
図6(b)において、本発明の充填接合材1は、周縁部に遮光部11を有している。このような遮光部11により、表面保護パネル3の裏側に印刷部を設けなくとも、タッチパネルモジュール2の筐体21をマスキングすることが可能となる。
【0122】
図7は、遮光部を有する本発明の充填接合材の例を模式的に示す斜視図である。
図7(a)及び(c)に示す本発明の充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凸型曲面とを有する形状(凸型のレンズ形状)であり、周縁部に遮光部11を有している。
図7(b)に示す本発明の充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凸型曲面とを有する形状(凸型のレンズ形状)であり、周縁部だけでなく中央部にも遮光部11を有している。
図7(d)及び(e)に示す本発明の充填接合材1は、半球(楕円体)であり、周縁部に遮光部11を有している。
【0123】
本発明の充填接合材と、本発明の充填接合材を覆う保護シートとを有する保護シート付き充填接合材もまた、本発明の1つである。このような構成とすることで、製造時から使用時までに異物が混入することを防ぐことができる。
【0124】
上記保護シートは特に限定されないが、本発明の充填接合材が上記ポリビニルアセタールを含有する場合、上記保護シートの材料として、例えば、ポリオレフィン樹脂を用いることができる。
本発明の保護シート付き充填接合材においては、本発明の充填接合材と、上記保護シートとの25℃における180°ピール強度が3N/25mm以下であることが好ましく、1N/25mm以下であることがより好ましい。
本発明の保護シート付き充填接合材を製造する方法として、例えば、異なる材料を用いて二色射出成形する方法等が挙げられる。
【0125】
図8は、本発明の保護シート付き充填接合材の一例を模式的に示す斜視図である。
図8に示すように、本発明の保護シート付き充填接合材6は、本発明の充填接合材1と、本発明の充填接合材1を覆う保護シート5とを有する。
【0126】
一対の被接合部材(被着体)と、本発明の充填接合材とを有し、上記一対の被接合部材間が本発明の充填接合材で充填されている積層体もまた、本発明の1つである。
上記被接合部材は、曲面を有するものであってもよく、本発明の充填接合材は、上記被接合部材の表面形状に沿った偏肉形状とすることが好ましい。このように構成することで、平面形状の被接合部材に応力を加えて接合する場合に比べて、被接合部材にかかる応力が軽減されるため、歪みによる光学品質の劣化を抑制できる。
【0127】
本発明の積層体を有し、一対の被接合部材は、少なくとも一方が透明部材であり、上記透明部材と本発明の充填接合材との屈折率差が0.03以下である光学デバイスもまた、本発明の1つである。
上記透明部材として、例えば、上述したような表面保護パネル等が挙げられる。
上記透明部材と本発明の充填接合材との屈折率差が上記範囲内であることにより、屈折率差を有する界面での光損失や、像のずれ等を抑えることができ、湾曲形状を有する部材を用いてもデバイスの光学品質を満たすことができる。上記屈折率差は0.02以下であることがより好ましい。
なお、透明部材と充填接合材との屈折率差は、アッベ屈折率計(例えばユニバーサルアッベ屈折率計ER-7MW、エルマ販売株式会社)を用いて、測定波長589nm(ナトリウムD線)、測定温度20℃の条件で求めることができる。
【0128】
本発明の充填接合材は、光学デバイス用保護パネルに用いることができる。
上記光学デバイス用保護パネルは、第1パネルと、第2パネルと、本発明の充填接合材とを有し、少なくとも上記第1パネル又は上記第2パネルのいずれかが曲面を有し、上記第1パネルと上記第2パネルとが、本発明の充填接合材により直接接合されている光学デバイス用保護パネルであってもよい。このような光学デバイス用保護パネルもまた、本発明の1つである。
このような光学デバイス用保護パネルを用いることにより、従来の平面形状のディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールを用いて、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイスを製造することができる。また、このような光学デバイス用保護パネルを用いることにより、例えば湾曲した大型のガラスからなる表面保護パネルを用いる場合と比較して、取扱い及び貼り合わせが容易となる。
【0129】
上記第1パネル及び上記第2パネルは、少なくともいずれかが曲面を有する。曲面を有するパネルとして、例えば、湾曲したパネル等が挙げられる。上記第1パネル及び上記第2パネルは、一方が曲面を有し、他方が平面を有することが好ましい。このように構成することで、通常平面形状である従来のディスプレイモジュールやタッチパネルモジュールを用いた場合でも、最表面が曲面形状である光学デバイスを簡易に得ることができる。例えば、上記第1パネル及び上記第2パネルのうちの平面を有するパネルの平面部分を、平面形状を有する被着体(ディスプレイモジュールやタッチパネルモジュール)に対して従来の粘着剤等を用いて貼り合わせることができる。上記第1パネル及び上記第2パネルは、両方が曲面を有していてもよい。
【0130】
上記第1パネル及び上記第2パネルの材質は特に限定されず、上記第1パネルと上記第2パネルとが同じ材質であっても異なる材質であってもよい。具体的には、例えば、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル板等の、光学デバイス又は表示デバイス等に表面保護パネルとして通常使用されるものを用いることができる。また、これらの表面保護パネルにタッチパネルモジュールが貼り合わせられていてもよい。なかでも、少なくとも上記第1パネル又は上記第2パネルのいずれかがガラス板であることが好ましい。上記第1パネル及び上記第2パネルの両方がガラス板であってもよい。
【0131】
本発明の光学デバイス用保護パネルにおいては、上記第1パネル又は上記第2パネルのうちの曲面を有するパネルと、本発明の充填接合材との屈折率差が0.1以下であることが好ましい。
上記屈折率差が上記範囲内であることにより、屈折率差を有する界面での光損失や、像のずれ等を抑えることができ、曲面を有するパネルを用いてもデバイスの光学品質を満たすことができる。上記屈折率差は0.05以下であることがより好ましい。
なお、屈折率は、アッベ屈折率計(例えばユニバーサルアッベ屈折率計ER-7MW、エルマ販売株式会社)を用いて、測定波長589nm(ナトリウムD線)、測定温度20℃の条件で求めることができる。
【0132】
本発明の光学デバイス用保護パネルにおいて、本発明の充填接合材は、リワーク性の観点からは、23℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であることが好ましい。上記23℃における貯蔵弾性率が上記範囲内であることにより、充填接合材は、光学デバイス用保護パネルをリワークするときに破壊されにくくなる。上記23℃における貯蔵弾性率は、10MPa以上がより好ましく、20MPa以上が更に好ましい。
【0133】
本発明の光学デバイス用保護パネルにおいて、本発明の充填接合材は、引張破断強度が1MPa以上であることが好ましい。
上記引張破断強度が上記範囲内であることにより、充填接合材は、光学デバイス用保護パネルをリワークするときに破壊されにくくなる。上記引張破断強度は、5MPa以上がより好ましく、10MPa以上が更に好ましい。
【0134】
なお、引張破断強度は、例えば、オリエンテック社製のテンシロン万能試験機を用い、23℃、50%RHにおいて、ダンベル状試験片(3号)を速度100mm/minの条件にて測定することで求めることができる。
【0135】
本発明の光学デバイス用保護パネルにおいて、本発明の充填接合材は、厚み200μmの充填接合材をガラスに貼り付けた際の300mm/minでの180°ピール強度が5N/25mm以上であることが好ましい。
上記180°ピール強度が上記範囲内であることにより、充填接合材は、光学デバイス用保護パネルをリワークするときに破壊されにくくなる。上記180°ピール強度は、10N/25mm以上がより好ましく、15N/25mm以上が更に好ましい。
上記180°ピール強度の上限は特に限定されないが、好ましい上限は200N/25mmである。上記180°ピール強度が200N/25mmを超えると、光学デバイス用保護パネルを廃棄する際に、強度が強すぎて上記第1パネル又は上記第2パネルと充填接合材とに分解しにくくなり、リサイクルしにくくなる。上記180°ピール強度のより好ましい上限は200N/25mmである。
【0136】
なお、180°ピール強度は、例えば、オリエンテック社製のテンシロン万能試験機を用い、23℃、50%RHにおいて、被着体に接着した厚み200μm、幅25mmのシート状の充填接合材について引張速度300mm/分の条件で測定することで求めることができる。
【0137】
図9は、本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
図9(a)(斜視図)及び(b)(断面図)に示す光学デバイス用保護パネル32は、第1パネル31aと第2パネル31bとが、充填接合材1により直接接合されたものである。充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凸型曲面とを有する形状(凸型のレンズ形状)であり、第1パネル31a(曲面を有する)と第2パネル31b(平面形状)とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填している。
【0138】
図10は、本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
図10(a)(斜視図)及び(b)(断面図)に示す光学デバイス用保護パネル32は、第1パネル31aと第2パネル31bとが、充填接合材1により直接接合されたものである。充填接合材1は、平面と、上記平面に対向する凹型曲面とを有する形状(凹型のレンズ形状)であり、第1パネル31a(曲面を有する)と第2パネル31b(平面形状)とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填している。
【0139】
図11は、本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
図11(a)(斜視図)及び(b)(断面図)に示す光学デバイス用保護パネル32は、第1パネル31aと第2パネル31bとが、充填接合材1により直接接合されたものである。充填接合材1は、曲面同士が対向した形状であり、第1パネル31a(曲面を有する)と第2パネル31b(曲面を有する)とを貼り合わせつつ、これら部材間を充填している。充填接合材1の対向するそれぞれの曲面の曲率は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0140】
図12は、本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
図12に示す光学デバイス用保護パネル32は、タッチパネルモジュール2が貼り合わせられた第1パネル31aと第2パネル31bとが、充填接合材1により直接接合されたものである。
図12に示すように、第1パネル31aには、タッチパネルモジュール2が貼り合わせられていてもよい。
【0141】
図13は、本発明の光学デバイス用保護パネルの使用形態の一例を模式的に示す図である。
図13に示す光学デバイス用保護パネル32は、タッチパネルモジュール2が貼り合わせられた第1パネル31aと第2パネル31bとが、充填接合材1により直接接合されたものである。
図13に示すように、光学デバイス用保護パネル32は、例えば、接着剤又は粘着剤8を介してディスプレイモジュール9上に貼り合わされて用いられる。光学デバイス7は、光学デバイス用保護パネル32及びディスプレイモジュール9により構成されている。なお、光学デバイス用保護パネル32とディスプレイモジュール9とは、接着剤又は粘着剤8を介さずに、嵌合やねじ止め等の機械的な方法により固定されていてもよい。
【0142】
本発明の光学デバイス用保護パネルを製造する方法として、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、予め上記第1パネル及び上記第2パネルを所望の形状とした(例えば、上記第1パネルを曲面を有するパネルと、上記第2パネルを平面形状のパネルとした)後、上記第1パネル、本発明の充填接合材、上記第2パネルを積層させ、その積層体を加熱真空ラミネータやオートクレーブで加熱処理する方法が挙げられる。
【0143】
また、本発明の光学デバイス用保護パネルを製造する方法として、上記第1パネルと上記第2パネルとを本発明の充填接合材で直接接合する際に、上記第1パネル又は上記第2パネルのいずれかを湾曲させる方法も挙げられる。
図14は、本発明の光学デバイス用保護パネルの製造方法の一例を模式的に示す図である。
図14に示すように、第1パネル31a(平面形状)と第2パネル31b(平面形状)とを充填接合材1で直接接合する際に、第1パネル31aを湾曲させてもよい。
具体的には例えば、第1パネル31a(平面形状)としての厚み200μmのガラスを、充填接合材1に沿わせてローラーで加圧することにより曲げて充填接合材1に密着させることで、上記第1パネルと上記第2パネルとを本発明の充填接合材で直接接合しつつ上記第1パネルを湾曲させることができる。
【0144】
本発明の光学デバイス用保護パネルの用途は特に限定されないが、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイスに好適に用いられる。
上記光学デバイスとして、例えば、携帯情報端末(例えば、スマートフォン、タブレット)、LCD、EL、PDP等の画像表示パネルを用いた表示デバイス(例えば、電子ペーパー、PDA、TV、ゲーム機)、発光デバイス(例えば、照明等)、受光デバイス(例えば、太陽電池、イメージセンサ等)等が挙げられる。
本発明の光学デバイス用保護パネルは、例えば、接着剤又は粘着剤を介してディスプレイモジュールやタッチパネルモジュール上に貼り合わされて用いられる。
【0145】
上記タッチパネルモジュールは特に限定されず、例えば、ITO膜等の複数の層を有するタッチパネル等の表示デバイス等に通常使用されるものを用いることができる。上記タッチパネルモジュールの構成は特に限定されず、例えば、アウトセル型、インセル型、オンセル型、カバーガラス一体型、カバーシート一体型等が挙げられる。上記タッチパネルモジュールの方式も特に限定されず、例えば、抵抗膜式、静電容量式、光学式、超音波式等が挙げられる。
【0146】
図15及び
図16は、本発明の光学デバイスの一例を模式的に示す図である。
図15及び
図16に示すように、本発明の光学デバイス7として、平面に限られない多様な形状(曲面形状等)を有する車載パネル等が挙げられる。
【発明の効果】
【0147】
本発明によれば、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができる充填接合材を提供することができる。また、本発明によれば、該充填接合材を含む保護シート付き充填接合材、積層体、光学デバイス及び光学デバイス用保護パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【
図1】本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の充填接合材の例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】本発明の充填接合材の一例を模式的に示す斜視図及び断面図である。
【
図5】本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の充填接合材の一例及びその使用形態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】遮光部を有する本発明の充填接合材の例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明の保護シート付き充填接合材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図9】本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
【
図12】本発明の光学デバイス用保護パネルの一例を模式的に示す図である。
【
図13】本発明の光学デバイス用保護パネルの使用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図14】本発明の光学デバイス用保護パネルの製造方法の一例を模式的に示す図である。
【
図15】本発明の充填接合材を有する光学デバイスの一例を模式的に示す図である。
【
図16】本発明の充填接合材を有する光学デバイスの一例を模式的に示す図である。
【
図17】曲面の弧長及び弦長について説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0149】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0150】
(ポリビニルブチラール1(PVB1)の調製)
攪拌装置を備えた反応機に、イオン交換水2700mL、平均重合度850、鹸化度99.0モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.2重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn-ブチルアルデヒド(n-BA)21gを添加した。その後、n-ブチルアルデヒド(n-BA)145gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラールが析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が1.8重量%になるように添加し、50℃に加熱し、50℃で2時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラールを水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール(PVB1)を得た。得られたポリビニルブチラール1(PVB1)の水酸基量は31.0モル%、アセチル基量は1.0モル%、ブチラール化度は68.0モル%であった。
【0151】
(ポリビニルブチラール2(PVB2)の調製)
攪拌装置を備えた反応機に、イオン交換水2700mL、平均重合度850、鹸化度88.0モル%のポリビニルアルコールを300g投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸を、塩酸濃度が0.6重量%となるように添加し、温度を15℃に調整した後、攪拌しながらn-ブチルアルデヒド(n-BA)14gを添加した。その後、n-ブチルアルデヒド(n-BA)186gを添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラールが析出した。析出してから15分後に、35重量%塩酸を、塩酸濃度が3.9重量%になるように添加し、45℃に加熱し、45℃で3時間熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラールを水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルブチラール2(PVB2)を得た。得られたポリビニルブチラール2(PVB2)の水酸基量は24.0モル%、アセチル基量は12.0モル%、ブチラール化度は64.0モル%であった。
【0152】
(実施例1)
(1)充填接合材の製造
可塑剤トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)20重量部と上記(1)で調製したポリビニルブチラール1(PVB1)100重量部とを混合したものを加熱プレス成形した。これにより、偏肉形状(平面と、上記平面に対向する凸型曲面とを有する形状)を有する充填接合材(主曲率が1/1000mm-1、弦長200mm、厚みの最大値(t1)5.2mm、厚みの最小値200μm、幅の最大値200mm)を得た。
【0153】
(2)充填接合材の20℃及び80℃における貯蔵弾性率の測定、並びに、Tg(tanδの極大値)の測定
動的粘弾性測定装置(TAINSTRUMENTS社製のARES-G2)により、3℃/分の昇温速度で-50℃から100℃まで温度を上昇させる条件かつ周波数1Hz及びせん断歪1%の条件にて充填接合材の粘弾性測定を行い、充填接合材の20℃及び80℃における貯蔵弾性率を求めた。その結果、それぞれ6.9×107Pa及び9.2×105Paであった。また、Tgは29.3℃であった。
【0154】
(3)可視光線透過率及びヘイズの測定
JIS K 7136:2000に準拠し、日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U4100を用いて充填接合材の光透過部の可視光線透過率及びヘイズを測定した。
【0155】
(4)平均残留位相差(Rave)の測定
充填接合材の光透過部を光軸方向から平面視して100分割し、分割された各領域における位相差(R0)を、フォトニックラティス社製PA-200を用いて波長520nmの光で測定した。各領域の位置における充填接合材の厚みの値(D)を用い、残留位相差(R1=R0/D)の平均値を算出し、Raveとした。
【0156】
(5)位相差の面内標準偏差(s)の測定
充填接合材の光透過部を光軸方向から平面視して5万点に分割し、分割された各領域における位相差を、フォトニックラティス社製PA-200を用いて波長520nmの光で測定した。ソフトウェア(PA-View2.2.4)を用いて測定結果を処理し、位相差の面内標準偏差(s)を求めた。
【0157】
(実施例2)
実施例1で得られた充填接合材を同一寸法の金型に収納し、アニール処理(60℃5時間)を施した。
【0158】
(実施例3)
可塑剤の配合量を30重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、充填接合材を得た。
【0159】
(実施例4)
PVB1に代えてPVB2を用い、可塑剤の配合量を60重量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして、充填接合材を得た。
【0160】
(実施例5)
可塑剤の配合量を25重量部に変更したこと以外は実施例4と同様にして、充填接合材を得た。
【0161】
(実施例6)
コバルトブルー顔料(アサヒ化成工業社製、C.I.ピグメントブルー28)を可塑剤に添加したこと以外は実施例1と同様にして、充填接合材を得た。コバルトブルー顔料は、PVB1 100重量部に対して0.02重量部添加した。
【0162】
(実施例7)
コバルトブルー顔料(シーアイ化成社製、ナノテックコバルトブルーSlurry(15%アルコール溶液))を可塑剤に添加したこと以外は実施例1と同様にして、充填接合材を得た。コバルトブルー顔料(固形分)は、PVB1 100重量部に対して0.012重量部添加した。
(実施例8)
コバルトブルー顔料(固形分)の添加量をPVB1 100重量部に対して0.0072重量部添加したこと以外は実施例7と同様にして、充填接合材を得た。
【0163】
(実施例9)
アニール温度を40℃に変更したこと以外は実施例2と同様にして、充填接合材を得た。
【0164】
(実施例10)
可塑剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、充填接合材を得た。
【0165】
(評価)
実施例1~9で得られた充填接合材について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0166】
(1)部材間の充填接合性の評価
200mm×100mm、厚み1mmの平板ガラスを2枚を準備し、一方は平板のまま用い、もう一方は加熱成形を施して、200mmの辺方向に曲げて、曲率半径1000mmの湾曲ガラスとした。
次に、実施例で得られた充填接合材の平面と、平板ガラスとが対向するように配置し、更に、上記湾曲ガラスと、充填接合材の曲面形状とが対応するように配置して、平板ガラス、充填接合材、湾曲ガラスの順に積層させた。
その後、積層体を加熱真空ラミネータにて、70℃、200Paの条件下で3分間処理した。更に、オートクレーブで70℃、5Mpaで30分処理して、平板ガラスと充填接合材と湾曲ガラスとの積層体(平板ガラスと湾曲ガラスとが充填接合材により直接接合されている光学デバイス用保護パネル)を作製した。得られた積層体を、初期(作製直後)と48時間後に目視し、貼り合わせ不良による残存空間や発泡の有無の確認を行った。残存空間や発泡がなかった場合を○、残存空間や発泡があった場合を×と評価した。
【0167】
(2)高温信頼性の評価
上記(1)と同様にして得られた積層体(平板ガラスと湾曲ガラスとが充填接合材により直接接合されている光学デバイス用保護パネル)を85℃85%の高温高湿環境下に240時間静置し、発泡の有無を目視確認した。発泡がなかった場合を○、発泡があった場合を×と評価した。
【0168】
(3)光学品質の評価
フラットディスプレイ上に背景が黒で白抜きの文字を表示させ、偏光メガネを装着して背景の黒表示部分を観察した。次に、上記(1)と同様にして得られた積層体(平板ガラスと湾曲ガラスとが充填接合材により直接接合されている光学デバイス用保護パネル)をフラットディスプレイの表示面に配置し、白色部分(白抜け)の有無及び文字のぼやけの有無を目視観察した。
フラットディスプレイに積層体を配置する前と配置後の結果を比較し、白色部分(白抜け)の有無については、黒色表示部分について、黒色表示のまま変色が確認できなかった場合は○、白色とは認識できないが違和感があった場合は△、白色部分がはっきりと目視確認できた場合は×と評価した。同様に、文字のぼやけの有無については、文字の端部まで明瞭に認識できた場合を○、文字の端部が歪んでいると認識できた場合を△、文字の形が明らかに変形して不鮮明にぼやけた場合を×と評価した。
【0169】
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明によれば、平面に限られない多様な形状を有する光学デバイス等において、部材を貼り合わせつつ部材間を充填するために好適に用いることができる充填接合材を提供することができる。また、本発明によれば、該充填接合材を含む保護シート付き充填接合材、積層体、光学デバイス及び光学デバイス用保護パネルを提供することができる。
【符号の説明】
【0171】
1 充填接合材
11 遮光部
2 タッチパネルモジュール
21 筐体
3 表面保護パネル
31a 第1パネル
31b 第2パネル
32 光学デバイス用保護パネル
4 空洞
5 保護シート
6 保護シート付き充填接合材
7 光学デバイス
8 接着剤又は粘着剤
9 ディスプレイモジュール