(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水生有害生物制御のための組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/90 20060101AFI20220104BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20220104BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20220104BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220104BHJP
A01P 9/00 20060101ALI20220104BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A01N43/90 101
A01N25/04 102
A01N25/08
A01P7/04
A01P9/00
A61P5/00
(21)【出願番号】P 2018532712
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2016082538
(87)【国際公開番号】W WO2017109162
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-20
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガンテンベイン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ディアズ キジャノ,キャロリナ
(72)【発明者】
【氏名】ショエルコプフ,ホアキム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック エー.シー.
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501295(JP,A)
【文献】特表2015-509499(JP,A)
【文献】特表2012-504577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物であって、
前記水生駆除剤が、ロテノンを含み、
前記表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH
3O
+イオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が、H
3O
+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給され、
1.2~2.5g/cm
3の密度を有する、
組成物。
【請求項2】
前記水生駆除剤が、20℃で10g/l未満の絶対水溶解度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水生駆除剤が、20℃で1g/l未満の絶対水溶解度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水生駆除剤および前記表面反応炭酸カルシウムが、0.1:1~20:1の重量比で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記水生駆除剤および前記表面反応炭酸カルシウムが、1:1~15:1の重量比で存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記水生駆除剤が、ロテノン、ロテノン含有植物抽出物、ロテノンを含む配合剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記水生駆除剤が、ロテノン、クーベ樹脂(cube resin)、デリス樹脂、CFT Legumine
(登録商標)3.3%、すなわち41%ロテノンを含有する8.05重量%のクーベ樹脂、59.95重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、10.0重量%の環状トリエチロールプロパン、20.0重量%のトール油エステル、および2.0重量%のアルキルベンゼンスルホン酸カルシウムを含むもの(ここでの重量%は、CFT Legumine3.3%の総重量に基づく)、TIFA Chem Fish
(登録商標)Regular
、すなわち配合剤の総重量に基づき、5重量%のロテノンおよび5重量%の他のクーベ抽出物を有効成分として含むもの、TIFA Chem Fish(登録商標)Synergized、すなわち配合剤の総重量に基づき、2.5重量%のロテノン、2.5重量%の他のクーベ抽出物、および2.5重量%のピペロニルブトキシドを有効成分として含むもの、Prentox Prenfish
(登録商標)、
すなわち5重量%のロテノン、10重量%の他のクーベ樹脂、9.9重量%のナフタレン、1.7重量%の1,2,4-トリメチルベンゼン、アセトン、および乳化剤を含むもの(ここでの重量%は、配合剤の総重量に基づく)、
ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記表面反応炭酸カルシウムが、1~75μmの体積中央粒子径d
50を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記表面反応炭酸カルシウムが、2~50μmの体積中央粒子径d
50を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記表面反応炭酸カルシウムが、
(a)天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムの懸濁物を提供するステップと、
(b)20℃で0以下のpK
a値を有する、または20℃で0~2.5のpK
a値を有する少なくとも1種の酸を、ステップ(a)の懸濁物に添加するステップと、
(c)ステップ(b)の前、ステップ(b)の間、またはステップ(b)の後にステップ(a)の懸濁物を二酸化炭素で処理するステップと
を含む工程により得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記表面反応炭酸カルシウムが、
(A)天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムを提供するステップと、
(B)少なくとも1種の水溶性酸を提供するステップと、
(C)二酸化炭素気体を提供するステップと、
(D)ステップ(A)の前記天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムをステップ(B)の少なくとも1種の酸およびステップ(C)の二酸化炭素と接触させるステップと
を含み、
(i)ステップ(B)の少なくとも1種の酸が、その第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で2.5より大きく7以下のpK
aを有し、対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成することが可能なこの第一の利用可能な水素の損失により形成されること、および
(ii)前記少なくとも1種の酸を天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと接触させた後、水素含有塩の場合に前記第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で7より大きなpK
aを有する少なくとも1種の水溶性塩と、水不溶性カルシウム塩を形成することが可能な前記塩のアニオンとが、追加的に提供されること
を特徴とする工程により得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記天然粉砕炭酸カルシウムが、大理石、白亜、石灰石、およびそれらの混合物からなる群から選択される、または
前記沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイト結晶、バテライト結晶またはカルサイト結晶の形態、およびそれらの混合物を有する沈降炭酸カルシウムからなる群から選択される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
水性懸濁液の形態である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
水性懸濁液の形態であり、前記水性懸濁液の総重量に基づき、1~85重量%の固形分を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物を調製するための方法であって、以下のステップ:
(I)ロテノンを含む水生駆除剤の溶液を提供するステップと、
(II)表面反応炭酸カルシウムを乾燥固体の形態で提供し、前記表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH
3O
+イオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が、H
3O
+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給されるステップと、
(III)ステップ(I)の溶液およびステップ(II)の表面反応炭酸カルシウムを混合するステップと
を含む、方法。
【請求項16】
水生有害生物を制御するための組成物の使用であって、
前記組成物が、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含み、1.2~2.5g/cm
3の密度を有し、
前記表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH
3O
+イオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が、H
3O
+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、
使用。
【請求項17】
前記水生有害生物が、水生植物、甲殻類、侵略的種、昆虫、線虫、軟体動物、魚、寄生虫および/または病原体である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記水生有害生物が、魚および/または寄生虫である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記有害生物が、前記有害生物の宿主を制御することにより制御される、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記有害生物が、前記有害生物の宿主を制御することにより制御され、前記宿主が、魚である、請求項16~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物を、水生系の少なくとも一部に適用するステップを含む、水生有害生物を制御する方法であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH
3O
+イオンドナーとの反応生成物であり、前記二酸化炭素が、H
3O
+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給され、
前記組成物が、1.2~2.5g/cm
3の密度を有する、方法。
【請求項22】
前記水生系が、排水ます、池、飼育槽、湖、湾、湿地、沼地、低湿地、潮泊きょ、潟、雨水調整池、小湾、クリーク、小川、川、海、溝、スウェール、下水処理システム、くぼみ、樹洞、岩穴、貯水池、川、運河、または下水道である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害生物制御製品の分野、特に水生有害生物を制御するための組成物、その使用およびそれを生成する方法に加え、有害生物を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロテノンは、複数の熱帯植物により産生される天然毒素であり、選択的な魚毒として数世紀にわたり使用されてきた。それは、魚および他の水生生命に高い毒性があるが、鳥および哺乳動物には低毒性を有する。ロテノンは、環境において非持続性であり、光および熱により急速に分解する。それは、動物の体内に蓄積されず、即座に代謝および排泄される。ロテノンは現在、一般に用いられる魚毒(殺魚剤または魚駆除剤(ichthyocides))のうち最も環境に優しいものと認識されており、有害種を除去する魚類生息地の化学的再建のため、そして研究的採取のために、依然として極めて有用である(Nicholas Ling,“Rotenone - a review of its toxicity and use for fisheries management”,Science for Conservation,2002,211,p6参照)。
【0003】
さらにロテノンは、川および水産養殖における魚の寄生虫、例えば侵入性外部寄生虫グロダクチルス・サラリスを処理するのに用いられた。該外部寄生虫は、1975年にノルウェーに出現し、天然大西洋サケのサルモ・サラルの最大の脅威の1つと見なされており、ノルウェーの48の川において、幼魚密度および回帰する成魚の86~87%を低下させる伝染病を引き起こしている。宿主の除去を通して寄生虫を可能な限り根絶し、根絶が可能でなければ、数を減少させることが試みられた。この30年間の根絶の努力により、ノウハウの連続的作成に基づくより良好な方策、より良好な設備、または魚毒素ロテノンを含有する化学配合剤の改善など、広範囲の改善された方法論の開発が導かれた。
【0004】
しかし、川の地下水に関連する重要な難題がある。小さな幼若のサケは多くの場合、川底に沿って、そしてせせらぎおよび小さな泉の砂利の間にとどまっており、そこには地下水の多くの出口が見つかることが多い。地下水は、ロテノンを含有せず、それゆえ、石と砂利の間の地下水の湧昇により、これらの小さなサケはこの処理から逃がれ、後に処理された川の再感染をまねく場合がある。
【0005】
水界生態系のさらなる世界的問題は、侵略的外来種の意図的または公認の導入、および非公認の導入である。これらの化学種の多くは、生物多様性の低下などの経済学的および環境的問題を引き起こしている。地球全体で、侵略的外来種は、国際自然保護連合(IUCN)により、生息地喪失後の生物多様性への二番目に大きな脅威として認識されている。EU規制1143/2014には、侵略的外来種の根絶など急速な行動が推奨されている。
【0006】
US5,674,518Aには、毒をドープした経口釣り餌ペレットを形成させるために魚餌および標的種誘引剤と混和された殺魚剤が記載されている。
【0007】
US3,761,238Aは、表面が内因性または外因性のイオン交換特性を有する不活性微粒子担体と、該表面でのイオン形態に可逆的に吸収された通常は水溶性の毒素と、を含む、水環境での適用のための微粒子組成物に関する。
【0008】
US2012/0295790A1は、駆除性有効成分と、適切な担体と、を含むマイクロカプセルを含む駆除性組成物に関し、そして有害生物が存在する場所、または存在すると予測される場所におけるそのような駆除性組成物の有効量の適用を含む、有害生物を制御する方法に関する。該マイクロカプセルは、持続放出性を呈する。同様にWO2010/037753A1は、制御放出性活性剤担体が開示されている。該担体は、表面反応の天然または合成の炭酸カルシウムおよび1種または複数の活性剤を含む。
【0009】
しかし、水生有害生物を制御するための配合剤が、当該技術分野で依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US5,674,518A
【文献】US3,761,238A
【文献】US2012/0295790A1
【文献】WO2010/037753A1
【非特許文献】
【0011】
【文献】Nicholas Ling,“Rotenone - a review of its toxicity and use for fisheries management”,Science for Conservation,2002,211,p6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、水生有害生物、特に有害魚(pest fish)または魚の寄生虫を制御することが可能な組成物を提供することである。改善された取り扱い性および効率を有する組成物を提供することが、望ましい。該組成物が、環境に存続しないこともまた、望ましい。さらに、該組成物が、疎水性または水不溶性活性剤または駆除剤の使用も可能にすることが、望ましい。
【0013】
本発明のさらなる目的は、特異的に標的とされる方法で適用され得、適用エリアに残存し、その作用現場でより良好な制御を可能にする、組成物の提供である。該組成物が、より少ない頻度で適用され得る、および/または適用時の作業量を減少することも、望ましい。それが、先行技術の組成物に比較して、適用が容易であり良好な効率または改善された効率を提供することもまた、望ましい。
【0014】
前述および他の目的は、本明細書の独立クレームに定義された内容により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物であって、
該水生駆除剤が、ロテノンを含み、
該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、組成物が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、以下のステップ:
(I)ロテノンを含む水生駆除剤の溶液を提供するステップと、
(II)表面反応炭酸カルシウムを提供し、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給されるステップと、
(III)ステップ(I)の溶液およびステップ(II)の微粒子材料を混合するステップと、
を含む、本発明による組成物を調製するための方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、水生有害生物を制御するための組成物の使用であって、
該組成物が、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含み、
該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、
使用が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物を、水生系の少なくとも一部に提供するステップを含む、水生有害生物を制御する方法であって、
該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、
方法が提供される。
【0019】
本発明の有利な実施形態は、対応するサブクレームにおいて定義される。
【0020】
一実施形態によれば、該水生駆除剤は、20℃で10g/l未満、好ましくは1g/l未満、より好ましくは0.1g/l未満、最も好ましくは0.01g/l未満の絶対水溶解度(absolute water solubility)を有する。別の実施形態によれば、該水生駆除剤および該表面反応炭酸カルシウムは、0.1:1~20:1、好ましくは1:1~15:1、より好ましくは1.5:1~10:1、最も好ましく2:1~5:1の重量比で存在する。さらに別の実施形態によれば、該水生駆除剤は、ロテノン、ロテノン含有植物抽出物、ロテノンを含む配合剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは該水生駆除剤は、ロテノン、クーベ樹脂(cube resin)、デリス樹脂、CFT Legumine、TIFA Chem Fish、Prentox Prenfish、Cuberol、Fish Tox、Noxfire、Rotacide、Sinid、Tox-R、Curex Flea Duster、Derrin、Cenol Garden Dust、Chem-Mite、Cibe Extract、Green Cross Warble Powder、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
一実施形態によれば、該表面反応炭酸カルシウムは、1~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましく4~15μmの体積中央粒子径(volume median particle size)d50を有する。別の実施形態によれば、該表面反応炭酸カルシウムは、(a)天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムの懸濁物を提供するステップと、(b)20℃で0以下のpKa値を有する、または20℃で0~2.5のpKa値を有する少なくとも1種の酸を、ステップ(a)の懸濁物に添加するステップと、(c)ステップ(b)の前、ステップ(b)の間、またはステップ(b)の後にステップ(a)の懸濁物を二酸化炭素で処理するステップと、を含む工程により得られる。さらに別の実施形態によれば、該表面反応炭酸カルシウムは、(A)天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムを提供するステップと、(B)少なくとも1種の水溶性酸を提供するステップと、(C)二酸化炭素気体を提供するステップと、(D)ステップ(A)の該天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムをステップ(B)の少なくとも1種の酸およびステップ(C)の二酸化炭素と接触させるステップと、を含み、(i)ステップ(B)の少なくとも1種の酸が、その第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で2.5より大きく7以下のpKaを有し、対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成することが可能なこの第一の利用可能な水素の損失により形成されること、および(ii)該少なくとも1種の酸を天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと接触させた後、水素含有塩の場合に該第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で7より大きなpKaを有する少なくとも1種の水溶性塩と、水不溶性カルシウム塩を形成することが可能な該塩のアニオンとが、追加的に提供されること、を特徴とする工程により得られる。
【0022】
一実施形態によれば、該天然粉砕炭酸カルシウムは、大理石、白亜、石灰石、およびそれらの混合物からなる群から選択され、または該沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト結晶、バテライト結晶またはカルサイト結晶の形態、およびそれらの混合物を有する沈降炭酸カルシウムからなる群から選択される。別の実施形態によれば、該組成物は、水性懸濁液の形態であり、好ましくは水性懸濁液の総重量に基づき、1~85重量%、より好ましくは5~50重量%、最も好ましくは10~25重量%の固形分を有する。
【0023】
一実施形態によれば、該水生有害生物は、水生植物、甲殻類、侵略的種、昆虫、線虫、軟体動物、魚、寄生虫および/または病原体、好ましくは魚および/または寄生虫、より好ましくは魚の寄生虫、さらにより好ましくはギロダクチルス・サラリス、イクチオフチリウム・ムルチフィリイス、クリプトカリオン、ベルベット病、ブルックリネラ・ホスチリス、グルゲア、セラトミクサ・シャスタ、クドア・シルシテス、テトラカプスロイデス・ブリオサルモナエ(Tetracapsuloides bryosalmonae)、キモトア・エクシグア、吸虫、チョウ、サケジラミ、およびそれらの混合物からなる群から選択される魚の寄生虫、最も好ましくはギロダクチルス・サラリスである。別の実施形態によれば、該有害生物は、有害生物の宿主を制御することにより制御され、該宿主は、好ましくは魚である。さらに別の実施形態によれば、該水生系は、排水ます、池、飼育槽、湖、湾、湿地、沼地、低湿地、潮泊きょ、潟、雨水調整池、小湾、クリーク、小川、川、海、溝、スウェール、下水処理システム、くぼみ、樹洞、岩穴、貯水池、川、運河、または下水道である。
【0024】
本発明の目的では、以下の用語が以下の意味を有することが、理解されなければならない。
【0025】
本明細書で用いられる表現「有害生物を制御する」または「有害生物を制御すること」は、有害生物を予防、処理、減少、排除もしくは根絶すること、有害生物の攻撃の速度もしくは範囲を阻害すること、または有害生物の攻撃の開始を遅延させること、を含む。
【0026】
本発明の目的では、用語「水生有害生物」は、水環境または水界生態系における動物および/または植物を損傷する植物、動物または病原体の任意の種、系統または生物型を指す。水生有害生物の例は、昆虫、線虫、寄生虫、腹足類、魚、侵略的種、水生植物、甲殻類、または病原体、例えば真菌、ウイルスもしくは細菌である。
【0027】
本出願の意味における用語「微粒子」は、複数の粒子で構成された材料を指す。該複数の粒子は、例えば粒度分布により、定義され得る。表現「微粒子材料」は、顆粒、粉末、粒、錠剤、またはクランブルを含み得る。
【0028】
用語「固体」は、材料の物理的状態を指す。他に断りがなければ、この物理的状態は、20℃の温度で観察されなければならない。
【0029】
本出願の目的では、「水不溶性」材料は、脱イオン水100mlと混合されて20℃で濾過され、濾液を回収した時、該濾液の100gを95~100℃で蒸発させた後に、0.1g以下の回収された固体材料を提供するそれらのものと定義される。「水溶性」材料は、該濾液の100gを95~100℃で蒸発させた後に、0.1gより多くの固体材料の回収をもたらす材料と定義される。材料が本発明の意味における不溶性材料であるか、または可溶性材料であるかを評定するために、試料サイズは、0.1gより大きく、好ましくは0.5g以上である。
【0030】
本発明の意味における「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰石、大理石、または白亜などの天然供給源から得られて、例えばサイクロンまたは分級装置により、粉砕、ふるい、および/または分画などの湿式および/または乾式処理を通して処理された炭酸カルシウムである。
【0031】
本発明の意味における「沈殿炭酸カルシウム」(PCC)は、水性半乾燥もしくは湿潤環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈殿により、または水中でのカルシウムおよび炭酸イオン供給源の沈殿により、得られた合成材料である。PCCは、バテライト結晶、カルサイト結晶またはアラゴナイト結晶の形態であり得る。PCCは、例えばEP2447213A1、EP2524898A1、EP2371766A1、EP1712597A1、EP1712523A1、またはWO2013/142473A1に記載されている。
【0032】
本出願の意味における用語「表面反応」は、水環境における酸性処理(例えば、水溶性遊離酸および/または酸性塩の使用により)と、その後のさらなる結晶化添加剤の非存在下または存在下で起こり得る結晶化工程により、材料が部分的溶解を含む工程に供されたことを示すために用いられる。本明細書で用いられる用語「酸」は、ブレンステッドおよびローリーによる定義の意味における酸(例えば、H2SO4、HSO4
-)を指し、用語「遊離酸」は、完全にプロトン化された形態のそれらの酸(例えば、H2SO4)のみを指す。
【0033】
本明細書の表面反応炭酸カルシウム以外の微粒子材料の「粒子径」は、粒子径dxの分布により記載される。ここで値dxは、粒子のx重量%がdx未満の径を有する場合のその径を表す。これは、例えばd20値が、全ての粒子の20重量%がより小さくなるようなその粒子径であることを意味する。したがってd50値は、重量中央粒子径であり、即ち全ての粒子の50重量%がこの粒子径よりも小さい。本発明の目的では、粒子径は、他に断りがなければ、重量中央粒子径d50と指定される。粒子径は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100装置を用いて決定された。該方法および装置は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒子径を計測するために一般に用いられる。測定は、0.1重量%Na4P2O7の水溶液中で実施した。
【0034】
本明細書の表面反応炭酸カルシウムの「粒子径」は、体積に基づく粒度分布として記載される。表面反応炭酸カルシウムの体積に基づく粒度分布、例えば体積に基づく中央粒子径(d50)または体積に基づくトップカット粒子径(d98)を計測するために、定義された屈折率(RI)1.57および仮想の屈折率(iRI)0.005を用いたMalvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction SystemおよびMalvern Application Software 5.60を用いた。測定は、水性分散液を用いて実施した。この目的で、高速スターラーを用いて試料を分散させた。全ての粒子の密度が等しければ、重量で計測された粒度分布は、体積で計測された粒子径に対応し得る。
【0035】
本文書全体で用いられる材料の「比表面積(m2/gで表す)」は、吸着ガスとしての窒素を含むブルナウアー・エメット・テラー(BET)法およびMicromeriticsのGemini V装置の使用により計測され得る。該方法は、当業者に周知であり、ISO 9277:1995に定義される。測定前に、試料を250℃で30分間コンディショニングする。該材料の総表面積(m2)は、材料の比表面積(m2)と質量(g)の積により得ることができる。
【0036】
本発明の状況において、用語「細孔」は、粒子間および/または粒子内に見出される空間、即ち粉末もしくはコンパクトなどの隣と最も近い接触の下で一緒に充填された粒子により形成された空間(粒子間細孔)、ならびに/または液体により飽和されると圧力下で液体の通過を可能にし、および/もしくは表面湿潤液の吸収を支持する、多孔質粒子内の空隙(粒子内細孔)空間を記載することと理解されなければならない。
【0037】
本発明の目的では、液体組成物の「固形分」は、溶媒または水の全てが蒸発された後に残留する材料の量の尺度である。必要に応じて、本発明の意味において重量%で与えられた懸濁液の「固形分」は、Mettler-ToledoのMoisture Analyzer HR73(T=120℃、自動スイッチオフ3、標準乾燥)を用いて、5~20gの試料サイズで計測され得る。
【0038】
他に断りがなければ、用語「乾燥」は、120℃で得られた「乾燥された」材料の一定重量に達するように、水の少なくとも一部が材料から除去されて乾燥される工程を指す。その上、「乾燥された」または「乾燥」材料は、他に断りがなければ、乾燥された材料の総重量に基づき1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、最も好ましくは0.03~0.07重量%の間である、総水分量により定義され得る。
【0039】
本発明の目的では、用語「粘度」または「ブルックフィールド粘度」は、ブルックフィールド粘度を指す。ブルックフィールド粘度は、この目的で、Brookfield RVスピンドルセットの適当なスピンドルを用い25℃±1℃、100rpmのBrookfield DV-II+Pro粘度計により測定され、mPa・sで表される。この技術的知識に基づいて、当業者は、測定される粘度範囲に適したBrookfield RV-スピンドルセットからスピンドルを選択することになる。例えば、200~800mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号3が用いられ得、400~1600mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号4が用いられ得、800~3200mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号5が用いられ得、1000~2000000mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号6が用いられ得、4000~8000000mPa・sの間の粘度範囲では、スピンドル番号7が用いられ得る。
【0040】
本発明の意味における「懸濁物」または「スラリー」は、未溶解の固体および水と、場合によりさらなる添加剤を含み、通常は多量の固体を含有し、したがって形成された液体よりも粘性があり、高密度になり得る。
【0041】
不定冠詞または定冠詞が用いられ、単数の名詞、例えば「a」、「an」または「the」を参照する場合には、これは、他の事柄が具体的に言及されない限り、複数のその名詞を包含する。
【0042】
用語「含んでいる」が、本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、それは、他の要素を除外しない。本発明の目的では、用語「~からなる」は、用語「含んでいる」の好ましい実施形態であると見なされる。本明細書の以後で、ある群が、少なくとも特定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる、群を開示するものと理解されなければならない。
【0043】
「得ることができる」または「定義し得る」および「得られた」または「定義された」のような用語は、互換的に用いられる。これは、例えば、文脈で他に明確に示されない限り、用語「得られた」が例えばある実施形態が用語「得られた」の後のステップの連続により得られなければならないことを示すという意味ではなく、そのような限定された理解は常に、好ましい実施形態としての用語「得られた」または「定義された」に含まれることを意味する。
【0044】
用語「包含している」が用いられるか、または「有している」が用いられるかにかかわらず、これらの用語は、本明細書の先に定義される「含んでいる」と均等であることを意味する。
【0045】
本発明によれば、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物が、提供される。該水生駆除剤は、ロテノンを含み、該表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素は、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される。
【0046】
以下に、本発明の組成物の好ましい実施形態を、より詳細に示す。これらの実施形態および詳細が、本発明の方法および使用にも適用されることが理解されなければならない。
【0047】
<表面反応炭酸カルシウム>
本発明の組成物は、表面反応炭酸カルシウムを含み、該表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素は、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される。
【0048】
本発明の状況におけるH3O+イオンドナーは、ブレンステッド酸および/または酸塩、即ち酸性水素を含有する塩である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、該表面反応炭酸カルシウムは、(a)天然または沈降炭酸カルシウムの懸濁物を提供するステップと、(b)20℃で0以下のpKa値を有する、または20℃で0~2.5のpKa値を有する少なくとも1種の酸を、ステップ(a)の懸濁物に添加するステップと、(c)ステップ(b)の前、ステップ(b)の間、またはステップ(b)の後にステップ(a)の懸濁物を二酸化炭素で処理するステップと、を含む工程により得られる。さらに別の実施形態によれば、該表面反応炭酸カルシウムは、(A)天然または沈降炭酸カルシウムを提供するステップと、(B)少なくとも1種の水溶性酸を提供するステップと、(C)CO2気体を提供するステップと、(D)ステップ(A)の天然または沈降炭酸カルシウムをステップ(B)の少なくとも1種の酸およびステップ(C)のCO2と接触させるステップと、を含み、(i)ステップ(B)の少なくとも1種の酸が、その第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で2.5より大きく7以下のpKaを有し、対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成することが可能なこの第一の利用可能な水素の損失により形成されること、および(ii)該少なくとも1種の酸を天然または沈降炭酸カルシウムと接触させた後、水素含有塩の場合に該第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で7より大きなpKaを有する少なくとも1種の水溶性塩と、水不溶性カルシウム塩を形成することが可能な該塩のアニオンとが、追加的に提供されること、を特徴とする工程により得られる。
【0050】
「天然粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、好ましくは大理石、白亜、石灰石、およびそれらの混合物からなる群から選択される鉱物を含有する炭酸カルシウムから選択される。天然炭酸カルシウムは、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などの天然由来成分をさらに含み得る。
【0051】
一般に、該天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式または湿式粉砕ステップであり得、例えば、任意の従来の粉砕デバイスで、第二の物体との衝突から粉砕が主に生じるような条件下、即ちボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心インパクトミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、パルベライザー、シュレッダー、デクランパー(declumper)、ナイフカッター、または当業者に公知の他のそのような設備のうちの1つまたは複数で実施され得る。鉱物材料を含有する炭酸カルシウムが、鉱物材料を含有する湿式粉砕された炭酸カルシウムを含む場合、粉砕ステップは、自生粉砕が起こるような条件下で、および/または水平ボールミリングにより、および/または当業者に公知の他のそのような工程により、実施され得る。このように得られた鉱物材料を含有する湿式処理で粉砕された炭酸カルシウムは、周知の工程により、例えば乾燥の前の凝集、濾過、または強制蒸発により、洗浄および排水され得る。次の乾燥ステップ(必要に応じて)は、噴霧乾燥などの単一ステップで、または少なくとも2つのステップで実施され得る。そのような鉱物材料が選鉱ステップ(浮上分離、漂白、または磁気分離ステップ)を受けて不純物を除去するのも、一般的である。
【0052】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム(PCC)」は、一般には水環境における二酸化炭素と水酸化カルシウムとの反応後の沈降により、または溶液からのカルシウムおよび炭酸イオン、例えばCaCl2およびNa2CO3、
の沈降により、得られる合成材料である。PCC生成のさらなる可能な方法は、石灰ソーダ法、またはPCCがアンモニア生成の副産物となるソルベー法である。沈降した炭酸カルシウムは、3種の主な結晶形態:カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトで存在し、これらの結晶形態それぞれには多くの異なる多形(結晶状態)が存在する。カルサイトは、偏三角面体(S-PCC)、菱面体(R-PCC)、六角柱、二面体、コロイド(C-PCC)、立方体、および角柱(P-PCC)などの典型的な結晶状態の三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、2組の六角柱結晶の典型的な結晶状態を有する斜方晶構造に加え、薄くて長い角柱、湾曲した刃身状、険しいピラミッド状、タガネ形状の結晶、分枝のある樹状、およびサンゴまたは蠕虫形の多様な形態の集まりでもある。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械で排水および乾燥され得る。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、該沈降炭酸カルシウムは、好ましくはアラゴナイト、バテライトまたはカルサイトの鉱物学的結晶形態、またはそれらの混合形態を含む沈降炭酸カルシウムである。
【0054】
沈降炭酸カルシウムは、先に記載された天然炭酸カルシウムを粉砕するのに用いられるものと同じ手段により二酸化炭素および少なくとも1種のH3O+イオンドナーでの処理の前に粉砕され得る。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、該天然または沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、特に0.7μmの重量中央粒子径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、該天然または沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、特に4μmのトップカット粒子径d98を有する粒子の形態である。
【0056】
該天然および/または沈降炭酸カルシウムは、乾燥で用いられ得るか、または水中に懸濁され得る。好ましくは対応するスラリーは、スラリーの重量に基づき、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然または沈降炭酸カルシウムの含量を有する。
【0057】
表面反応炭酸カルシウムの調製に用いられる1種または複数のH3O+イオンドナーは、調製条件下でH3O+イオンを発生する任意の強酸、中~強酸もしくは弱酸、またはそれらの混合物であり得る。本発明によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、調製条件下でH3O+イオンを発生する酸性塩でもあり得る。
【0058】
一実施形態によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、20℃で0以下のpKaを有する強酸である。
【0059】
別の実施形態によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、20℃で0~2.5のpKa値を有する中~強酸である。20℃でのpKaが、0以下であれば、該酸は、好ましくは硫酸、塩酸、またはその混合物から選択される。20℃でのpKaが、0~2.5であれば、該H3O+イオンドナーは、好ましくはH2SO3、H3PO4、シュウ酸、またはその混合物から選択される。該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、酸性塩、例えばLi+、Na+もしくはK+などの対応するカチオンにより少なくとも部分的に中和されるHSO4
-もしくはH2PO4
-、またはLi+、Na+、K+、Mg2+もしくはCa2+などの対応するカチオンにより少なくとも部分的に中和されるHPO
4
2-
である。該少なくとも1種のH3O+イオンドナーはまた、1種または複数の酸と、1種または複数の酸性塩との混合物であり得る。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、第一の利用可能な水素のイオン化に関連して20℃で測定すると2.5より大きく7以下のpKa値を有し、水溶性カルシウム塩を形成することが可能な対応するアニオンを有する、弱酸である。次に、水素含有塩の場合には第一の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定すると7より大きなpKaを有する少なくとも1種の水溶性塩と、水不溶性カルシウム塩を形成することが可能な塩アニオンと、が、追加的に提供される。好ましい実施形態によれば、該弱酸は、20℃で2.5より大きく5までのpKa値を有し、より好ましくは該弱酸は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。該水溶性塩の代表的カチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、該カチオンは、ナトリウムまたはカリウムである。該水溶性塩の代表的アニオンは、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、シュウ酸イオン、ケイ酸イオン、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、該アニオンは、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、該アニオンは、リン酸二水素イオン、リン酸一水素イオン、それらの混合物および水和物からなる群から選択される。水溶性塩添加は、滴加で、または一段階で実施され得る。滴加での添加の場合、この添加は、好ましくは10分の期間内で実施される。該塩を一段階で添加することが、より好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、H2PO4
-(Li+、Na+またはK+などの対応するカチオンにより少なくとも部分的に中和されている)、HPO4
2-(Li+、Na+、K+、Mg2+またはCa2+などの対応するカチオンにより少なくとも部分的に中和されている)、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは該少なくとも1種の酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸またはそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、リン酸である。
【0062】
該1種または複数のH3O+イオンドナーは、濃縮溶液またはより希釈された溶液として懸濁液に添加され得る。好ましくは該H3O+イオンドナーと該天然または沈降炭酸カルシウムのモル比は、0.01~4、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
【0063】
別法として、該天然または沈降炭酸カルシウムが懸濁される前に、H3O+イオンドナーを水に添加することも可能である。
【0064】
次のステップにおいて、該天然または沈降炭酸カルシウムは、二酸化炭素で処理される。硫酸または塩酸などの強酸が、天然または沈降炭酸カルシウムのH3O+イオンドナー処理に用いられる場合、該二酸化炭素は、自動で形成される。代わりまたは追加として、該二酸化炭素は、外部供給源から供給され得る。
【0065】
H3O+イオンドナー処理および二酸化炭素での処理を、同時に実施することができ、それは強酸または中~強酸が用いられる場合にあてはまる。H3O+イオンドナー処理を最初に、例えば20℃で0~2.5の範囲内のpKaを有する中、強酸で、実施することもでき、その場合、二酸化炭素は、原位置で形成され、したがって該二酸化炭素処理は、H3O+イオンドナー処理と同時に自動で実施され、その後、外部供給源から供給された二酸化炭素で追加的に処理される。
【0066】
好ましくは懸濁液中の二酸化炭素気体の濃度は、容量に関して、(懸濁液の容量):(CO2気体の体積)の比が1:0.05~1:20、さらにより好ましくは1:0.05~1:5になるようにする。
【0067】
好ましい実施形態において、該H3O+イオンドナー処理ステップおよび/または該二酸化炭素処理ステップを、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返す。一実施形態によれば、該少なくとも1種のH3O+イオンドナーは、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10~約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、場合により約1時間以上の期間をかけて添加される。
【0068】
H3O+イオンドナー処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定された水性懸濁液のpHが、自然に6.0よりも大きな、好ましくは6.5よりも大きな、より好ましくは7.0よりも大きな、さらにより好ましくは7.5よりも大きな値に達し、それにより表面反応の天然または沈降炭酸カルシウムを、6.0よりも大きな、好ましくは6.5よりも大きな、より好ましくは7.0よりも大きな、さらにより好ましくは7.5よりも大きなpHを有する水性懸濁液として調製する。
【0069】
表面反応炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は、WO00/39222A1、WO2004/083316A1、WO2005/121257A2、WO2009/074492A1、EP2264108A1、EP2264109A1およびUS2004/0020410A1に開示されており、これらの参考資料の内容は本出願に含まれる。
【0070】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。WO2009/074492A1から詳細に理解される通り、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをH3O+イオンと、水性媒体中に可溶化されていて水性媒体中で水不溶性カルシウム塩を形成することが可能なアニオンとに接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成させることにより得られ、該表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面に形成される該アニオンの不溶性で少なくとも部分的に結晶のカルシウム塩を含む。
【0071】
該可溶化されたカルシウムイオンは、H3O+イオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解の際に自然に発生する可溶化されたカルシウムイオンに対して過剰の可溶化されたカルシウムイオンに対応し、該H3O+イオンは、アニオンの対イオンの形態で、即ち酸または非カルシウム酸性塩の形態のアニオンの添加を介して、そして任意のさらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン発生供給源の非存在下で、単独で提供される。
【0072】
該過剰な可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性中性もしくは酸カルシウム塩の添加により、または可溶性中性もしくは酸カルシウム塩を原位置で発生させる酸もしくは中性もしくは酸非カルシウム塩の添加により、提供される。
【0073】
該H3O+イオンは、該アニオンの酸もしくは酸性塩の添加により、または該過剰な可溶化カルシウムイオンの全てもしくは一部を提供するように同時に働く酸もしくは酸性塩の添加により、提供され得る。
【0074】
表面反応天然または沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい実施形態において、該天然または沈降炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類アルミン酸塩、例えばアルミン酸ナトリウムもしくはカリウム、酸化マグネシウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下で酸および/または二酸化炭素と反応させる。好ましくは該少なくとも1種のケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を添加する前に、天然または沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加され得る。
【0075】
あるいは、天然または沈降炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応を既に開始させながら、該ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分(複数可)を、天然または沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1種のケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩成分(複数可)の存在下での表面反応天然または沈降炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は、WO2004/083316A1に開示され、この参考資料の内容は本出願に含まれる。
【0076】
表面反応炭酸カルシウムは、懸濁状態を保持され得、場合により分散剤によりさらに安定化される。当業者に公知の従来の分散剤が、用いられ得る。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸および/またはカルボキシメチルセルロースで構成される。
【0077】
あるいは、上記の該水性懸濁液は、乾燥され、それにより固体の(即ち、乾燥した、またはほとんど水を含まず流体形態でない)表面反応天然または沈降炭酸カルシウムを顆粒または粉末形態で得ることができる。
【0078】
該表面反応炭酸カルシウムは、異なる粒子形状、例えばバラ、ゴルフボールおよび/または脳の形状を有し得る。
【0079】
好ましい実施形態において、該表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を用いた測定で、15m2/g~200m2/g、好ましくは27m2/g~180m2/g、より好ましくは30m2/g~160m2/g、さらにより好ましくは45m2/g~150m2/g、最も好ましくは48m2/g~140m2/gの比表面積を有する。例えば、該表面反応炭酸カルシウムは、窒素およびBET法を用いた測定で、75m2/g~100m2/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の質量で割った粒子の表面積として定義される。本明細書で用いられる比表面積は、BETの等温線(ISO 9277:1995)を用いた吸着により測定され、m2/gで表される。
【0080】
さらに、該表面反応炭酸カルシウム粒子が1~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましく4~15μmの体積中央粒径d50(vol)を有することが、好ましい。
【0081】
さらに、該表面反応炭酸カルシウム粒子が2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましく10~30μmの粒径d98(vol)を有することが、好ましくなり得る。
【0082】
値dxは、粒子のx%がdx未満の径を有する場合のその径を表す。これは、d98値が、全ての粒子の98%がより小さくなる粒子径であることを意味する。d98値は、「トップカット」とも称される。dx値は、体積または重量%で与えられ得る。したがってd50(wt)値は、重量中央粒子径であり、即ち全ての粒の50重量%がこの粒子径よりも小さく、d50(vol)値は、体積中央粒子径であり、即ち全ての粒の50体積%がこの粒子径よりも小さい。
【0083】
体積中央粒径d50は、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを用いて評価した。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを用いて測定されたd50またはd98値は、それぞれ粒子の50体積%または98体積%が、この値より小さい径を有するようなある径の値を示す。測定により得られた生データは、ミー理論を粒子屈折率1.57および吸収率0.005と共に用いて分析される。
【0084】
重量中央粒径は、重力測定分野における堆積挙動の分析である堆積法により計測される。該測定は、粒子径は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100または5120を用いて行われる。該方法および装置は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を計測するために一般に用いられる。測定は、0.1重量%Na4P2O7の水溶液中で実施される。試料は、高速スターラーを用いて分散され、音波処理される。
【0085】
該工程および装置は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒径を計測するために一般に用いられる。
【0086】
比細孔容積は、ラプラスのスロート径0.004μm(~nm)と等しい最大使用水銀圧414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを用いて、水銀圧入ポロシメトリー測定を利用して測定される。各圧力ステップで用いられる平衡化時間は、20秒である。試料の材料を、分析用の5cm3チャンバーの粉末貫入試験機に密封する。Pore-Compソフトウエア(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p.1753-1764)を用いて、データを水銀の圧縮、貫入試験機の拡張および試料材料の圧縮について修正する。
【0087】
累積圧入データで認められた総細孔容積は、214μmから約1~4μmに至る圧入データで2つの領域に分離され、大きく寄与する任意の集塊構造の間に試料が粗く充填されていることが示される。これらの径より小さな、粒子そのものの微細な粒子間充填が存在する。それらが、粒子内細孔も有する場合、この領域は、二峰性であり、峰転換点よりも微細な、即ち二峰性変曲点よりも微細な細孔の中に水銀により圧入される比細孔容積を採用することにより、比粒子内細孔容積が定義される。これらの3つの領域の総和は、粉末の全体的細孔容積の合計を与えるが、粗い細孔の分布の端における粉末の本来の試料の圧密化/沈殿に大きく依存する。
【0088】
累積圧入曲線の一次関数を採用することにより、必然的に細孔防護を含む、同等のラプラス径に基づく孔径分布が明らかとなる。示差曲線により、もし存在するならば、粗い集塊細孔構造領域、粒子間細孔領域および粒子内細孔領域が明確に示される。粒子内細孔径範囲が分かれば、残りの粒子間細孔容積および集塊間細孔容積を総細孔容積から差し引いて、単位重量あたりの細孔容積(比細孔容積)に関する内部細孔のみの所望の細孔容積を得ることができる。もちろん同じ減算の原理が、該当する他の孔径領域のいずれかを分離するために適用される。
【0089】
好ましくは該表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定からの計算で、0.1~2.3cm3/g、より好ましくは0.2~2.0cm3/g、特に好ましくは0.4~1.8cm3/g、最も好ましくは0.6~1.6cm3/gの範囲内の粒子内圧入の比細孔容積を有する。
【0090】
該表面反応炭酸カルシウムの粒子内孔径は、水銀ポロシメトリー測定による計測で、好ましくは0.004~1.6μmの範囲内、より好ましくは0.005~1.3μmの範囲内、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μm、特に0.004~0.510μmである。
【0091】
<水生駆除剤>
表面反応炭酸カルシウムに加えて、本発明の組成物は、ロテノンを含む水生駆除剤を含む。
【0092】
ロテノン((2R,6aS,12aS)-1,2,6,6a,12,12a-ヘキサヒドロ-2-イソプロペニル-8,9-ジメトキシクロメノ[3,4-b]フロ(2,3-h)クロメン-6-オン)は、広
スペクトラム殺虫剤、殺魚剤、および駆除剤として用いられる無臭、無色の結晶性ケトン系化学物質である。天然では、ヒカマつる植物などの複数の植物の種子および茎、ならびに複数のマメ科植物の根に存在する(Wikipedia contributors,“Rotenone”,Wikipedia,The Free Encyclopedia,September 24,2015参照)。ロテノンは、水に不溶性であり、以下の構造式を有する:
【化1】
【0093】
ロテノンは、ミトコンドリア内の電子伝達系と干渉することにより作用する。より正確にはそれは、複合体I内の鉄-硫黄中心からユビキノンへの電子伝達を阻害する。これは、使用可能な細胞内エネルギー(ATP)の生成の間にNADHと干渉する。複合体Iは、電子をCoQに送ることができず、電子の代替物をミトコンドリアマトリックス内で生成する。細胞内酸素は、ラジカルに還元されて、ミトコンドリアのDNAおよび他の成分を損傷し得る活性酸素種を生成する。この化合物は、日光に暴露されるとロテノロンに分解し、通常、環境において6日間活性を有する(Wikipedia contributors,“Rotenone”,Wikipedia,The Free Encyclopedia,September 24,2015参照)。
【0094】
ロテノンは、熱帯および亜熱帯植物種ロンコカルプスおよびデリスの根および茎からの抽出により生成され得る。クーベ植物またはランスポッド(lancepod)(ロンコカルプス・ウチリス(Lonchocarpus utilis))およびバルバスコ(ロンコカルプス・ウルク(Lonchocarpus urucu))からの根の抽出物は、クーベ樹脂と称される。トバ植物(デリス・エリプティカ)およびシダレトバ(デリス・インボルタ(Derris involuta))の根の抽出物は、デリス樹脂またはデリス根と称される。
【0095】
水生駆除剤は、ロテノン、ロテノン含有植物抽出物、ロテノンを有効成分として含む配合剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態によれば、該水生駆除剤は、ロテノンからなる。別の実施形態によれば、該水生駆除剤は、好ましくはクーベ樹脂および/またはデリス樹脂から選択される、ロテノン含有植物抽出物を含む。さらに別の実施形態によれば、該水生駆除剤は、ロテノンを有効成分として含む配合剤を含む。該水生駆除剤は、ロテノンと、ロテノン含有植物抽出物および/またはロテノンを有効成分として含む配合剤との組み合わせであり得る。
【0096】
ロテノンを有効成分として含む適切な駆除配合剤は、当業者に公知である。そのような配合剤は多くの場合、水生系への疎水性化合物ロテノンの適用を促進するために、有機溶媒およびさらなる添加剤を含有する。例は、CFT Legumine(登録商標)、TIFA Chem Fish(登録商標)、またはPrentox Prenfish(登録商標)である。
【0097】
CFT Legumine(登録商標)は、ロテノンを有効成分として含有する商業的配合製品である。ノルウェーのVeso Pharmacyから市販される新しい配合剤「CFT Legumine(登録商標)3.3%」は、以下の成分を含有する:
41%ロテノン(抽出された原材料)を含有する8.05重量%(3.3重量%有効成分)のクーベ樹脂、
59.95重量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル(溶媒)、
10.0重量%の環状トリエチロールプロパン(溶媒)、
20.0重量%のFennedefo 99(トール油エステル、乳化剤)、および
2.0重量%のアルキルベンゼンスルホン酸カルシウム(乳化剤)、
(ここでの重量%は、CFT Legumine3.3%の総重量に基づく)。
【0098】
TIFA Chem Fish(登録商標)は、ロテノンおよび他のクーベ樹脂を有効成分として含有する商業的配合製品であり、米国のTIFA International LLCから市販される。例えば、TIFA Chem Fish(登録商標)Regularは、配合剤の総重量に基づき、5重量%のロテノンおよび5重量%の他のクーベ抽出物を有効成分として含み得、TIFA Chem Fish(登録商標)Synergizedは、配合剤の総重量に基づき、2.5重量%のロテノン、2.5重量%の他のクーベ抽出物、および2.5重量%のピペロニルブトキシドを有効成分として含み得る。
【0099】
Prentox Prenfish(登録商標)は、ロテノンおよび他のクーベ樹脂を有効成分として含有する商業的配合製品である。該配合剤は、米国のPrentiss Inc.から市販され、以下の成分:5重量%のロテノン、10重量%の他のクーベ樹脂、9.9重量%のナフタレン、1.7重量%の1,2,4-トリメチルベンゼン、アセトン、および乳化剤を含み得る(ここでの重量%は、配合剤の総重量に基づく)。
【0100】
一実施形態によれば、該水生駆除剤は、ロテノン、ロテノン含有植物抽出物、ロテノンを含む配合剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、該水生駆除剤は、ロテノン、クーベ樹脂、デリス樹脂、CFT Legumine(登録商標)、TIFA Chem Fish(登録商標)、Prentox Prenfish(登録商標)、Cuberol(登録商標)、Fish Tox(登録商標)、Noxfire(登録商標)、Rotacide(登録商標)、Sinid(登録商標)、Tox-R(登録商標)、Curex Flea Duster(登録商標)、Derrin、Cenol Garden Dust(登録商標)、Chem-Mite(登録商標)、Cibe Extract、Green Cross Warble Powder(登録商標)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、該水生駆除剤は、CFT Legumine(登録商標)、より好ましくはCFT Legumine(登録商標)3.3%である。
【0102】
一実施形態によれば、該水生駆除剤は、20℃で10g/l未満、好ましくは1g/l未満、より好ましくは0.1g/l未満、最も好ましくは0.01g/l未満の絶対水溶解度を有する。化合物の「絶対水溶解度」は、平衡状態で20℃の単相混合物を観察し得る場合の、水中の化合物の最大濃度として理解されなければならない。絶対水溶解度は、水100gあたりの化合物のg量として与えられる。
【0103】
<本発明の組成物>
本発明の一態様によれば、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物であって、該水生駆除剤が、ロテノンを含み、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、組成物が提供される。
【0104】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、該組成物の総重量に基づき、0.001~99.999重量%、好ましくは0.01~90重量%、より好ましくは0.05~80重量%、最も好ましくは0.1~70重量%の量の該水生駆除剤を含む。
【0105】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、該組成物の総重量に基づき、0.01~99.999重量%、好ましくは0.1~90重量%、より好ましくは0.5~80重量%、最も好ましくは1~70重量%の量の該表面反応炭酸カルシウムを含む。
【0106】
一実施形態によれば、該水生駆除剤および該表面反応炭酸カルシウムは、0.05:1~20:1、好ましくは1:1~15:1、より好ましくは1.5:1~10:1、最も好ましくは2:1~1:2の重量比で存在する。
【0107】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、該組成物の総重量に基づき、0.001~99.999重量%、好ましくは0.01~90重量%、より好ましくは0.05~80重量%、最も好ましくは0.1~70重量%の量の該ロテノンを含む。
【0108】
一実施形態によれば、該ロテノンおよび該表面反応炭酸カルシウムは、0.05:1~20:1、好ましくは1:1~15:1、より好ましくは1.5:1~10:1、最も好ましくは2:1~1:2の重量比で存在する。
【0109】
代表的実施形態によれば、該組成物は、該組成物の総重量に基づき、5~15重量%、好ましくは10重量%の該水生駆除剤と、該組成物の総重量に基づき、1~10重量%、好ましくは4重量%の該表面反応炭酸カルシウムと、を含む。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、該組成物は、懸濁液の形態、好ましくは水性懸濁液の形態である。用語「水性」懸濁液は、該懸濁液の液相または溶媒が水を含む、好ましくは水からなる系を指す。しかし該用語は、該水性懸濁液がメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ケトン、例えばアセトンまたはアルデヒドなどのカルボニル基含有溶媒、イソプロピルアセタートなどのエステル、ギ酸などのカルボン酸、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、およびそれらの混合物を含む群から選択される有機溶媒を含むことを排除しない。水性懸濁液が、有機溶媒を含む場合、該水性懸濁液は、該水性懸濁液の液相の総重量に基づき、40.0重量%まで、好ましくは1.0~30.0重量%、最も好ましくは1.0~25.0重量%の量の有機溶媒を含む。例えば、該水性懸濁液の液相は、水からなる。該水性懸濁液の液相が、水からなる場合、用いられる水は、水道水および/または脱イオン水などの利用可能な任意の水であり得る。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、該組成物は、水性懸濁液の形態であり、該水性懸濁液の総重量に基づき、好ましくは0.1~85重量%、より好ましくは1~50重量%、最も好ましくは5~25重量%の固形分を有する。該水性懸濁液の固形分は、当業者に公知の方法により調整され得る。水性懸濁液の該固形分を調整するために、該水性懸濁液は、沈殿、濾過、遠心分離、または熱分離工程により部分的に排水され得る。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、該組成物は、25℃で0.1~10000mPa・s、好ましくは25℃で1~1000mPa・s、より好ましくは25℃で5~800mPa・s、最も好ましくは25℃で10~600mPa・sのブルックフィールド粘度を有する。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、該組成物は、1.0~2.7g/cm3、好ましくは1.2~2.5g/cm3、より好ましくは1.4~2.2g/cm3、最も好ましくは1.6~2.0g/cm3の密度を有する。
【0114】
本発明の別の態様によれば、以下のステップ:
(I)ロテノンを含む水生駆除剤の溶液を提供するステップと、
(II)表面反応炭酸カルシウムを乾燥固体の形態で提供し、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給されるステップと、
(III)ステップ(I)の溶液およびステップ(II)の微粒子材料を混合するステップと、
を含む、本発明による組成物を調製するための方法が提供される。
【0115】
方法ステップ(III)の混合は、当該技術分野で公知の任意の方法により実施され得、当業者は、加工設備に従って混合速度および温度などの混合条件を適合させるであろう。例えば混合は、Ploughshareミキサーを用いて実行され得る。Ploughshareミキサーは、機械で生成された流動床の原理により機能する。Ploughshareの刃は、水平円筒ドラムの内壁に接近して回転し、混合物の成分を生成物床から開口混合スペースへ運搬する。機械で生成された流動床は、大型のバッチであっても非常に短時間で力強い混合を確実に行う。チョッパーおよび/または分散機を用いて、乾燥操作における塊を分散させる。本発明の工程に用いられ得る設備は、例えばドイツのGebruder Lodige Maschinenbau GmbHから、または米国のSilversonから入手できる。さらに、例えばドイツのバルレヒテン=ドッティンゲンのYstral GmbHからの管状混合装置が、用いられ得る。本発明の工程で用いられ得る他の設備は、スイスのKinematika AGからのMEGATRON(登録商標)インラインホモジナイザーである。
【0116】
混合ステップは、振とう、撹拌(stirring)、かき混ぜ(agitating)、超音波処理、またはバッフルもしくは薄板などの手段による乱流もしくは層流の導入によっても実施され得る。一実施形態によれば、該混合ステップは、例えばスティックまたはスターラーを用いることにより、ステップ(I)の溶液およびステップ(II)の表面反応炭酸カルシウムを撹拌することにより手動で実施される。別の実施形態によれば、該混合ステップは、コンテナ、例えばフラスコにおいて、ステップ(I)の溶液およびステップ(II)の表面反応炭酸カルシウムを振とうすることにより実施される。
【0117】
本発明の範囲内では、例えば得られた組成物の所望の固形分またはブルックフィールド粘度を制御および/または維持および/または達成するために、追加の水が、ステップIII)の間に導入され得る。
【0118】
一実施形態によれば、ステップ(III)は、
a1)ステップ(I)の溶液をステップ(II)の表面反応炭酸カルシウムと混合するステップと、
a2)ステップa1)で得られた懸濁液を水と混合するステップと、
を含む。
【0119】
別の実施形態によれば、ステップ(III)は、
b1)ステップ(I)の溶液を水と混合するステップと、
b2)ステップb1)で得られた懸濁液をステップ(II)の表面反応炭酸カルシウムと混合するステップと、
を含む。
【0120】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、本発明の組成物が高い密度を有することを見出した。これは、水と混合されると、該組成物の堆積を改善することができ、該組成物を適用エリアの特定のスポットに浸漬させることができ、処理効率を上昇させることができる。詳細には、本発明の組成物が、地下水の多くの出口が見出される川のせせらぎおよび小さな泉など、接近が困難な水生系の位置に沈積し得ることを見出した。さらに、駆除剤が川の下流で採取されるリスクが、有意に低下する。したがって、本発明の組成物は、例えば水生系内の困難なスポットのより効果的な処理を可能にし得る。例えば、先行技術の配合剤は多くの場合、それらが湖の地面に確実に達するように、特定の深さで適用される必要があるが、該組成物は、湖の底部に沈積するため、湖をより容易かつ効率的に処理することが可能である。その上、本発明の組成物が、水と混合される前に、急速に沈殿しない、つまり該組成物の取り扱いを改善し得る安定した懸濁液を形成することができることが見出された。例えばそれは、ポンプおよびホースを通して水面に噴出させることができ、継続的に撹拌する必要がない。
【0121】
さらに、該表面反応炭酸カルシウムは、非毒性で、水生駆除剤の効率に否定的な影響を及ぼさない。該表面反応炭酸カルシウムは、該水生駆除剤を会合および輸送することも可能である。該会合は、好ましくは粒子の外面もしくは内面である表面反応炭酸カルシウムの表面への吸着、または多孔質により可能になる粒子内への吸収である。これは、水生駆除剤の緩徐な放出を可能にし、つまり水生駆除剤での処理をさらに改善し得る。さらに本発明者らは、該水生駆除剤がより緩徐なタイムスケールで分解することを見出した。いずれかの理論に結びつけるわけではないが、本発明者らは、本発明の組成物における水生駆除剤が、光および酸素から少なくとも部分的に防御されると考えている。
【0122】
表面反応炭酸カルシウムは、その細孔内および細孔間構造により、類似の比表面積を有する一般的材料に比較して、過去に吸着/吸収された材料を経時的に送達するのに優れた薬剤になり得る。したがって一般に、該表面反応炭酸カルシウムの粒子内および/または粒子間細孔の中への任意の薬剤装着は、微粒子材料により輸送されるのに適する。例えば医薬的活性剤、生物学的活性剤、殺菌剤、防腐剤、またはルアーを含む群から選択されるものなどの材料が、用いられ得る。一実施形態によれば、少なくとも1種の活性剤は、該表面反応炭酸カルシウムと会合される。好ましい実施形態によれば、該活性剤は、好ましくはアンチマイシンA、硫酸銅、塩素、クロラミン、アルミニウム、硫酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の追加的な水生駆除剤である。
【0123】
幾つかの実施形態において、例えば、複数の有害生物の制御が望ましい場合、本発明の組成物は、ロテノンを含む水生駆除剤と、1種または複数の天然または合成水生駆除剤との組み合わせを含有し得る。
【0124】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、アンチマイシンA、硫酸銅、塩素、クロラミン、アルミニウム、硫酸、カルバリル、リンデン、チラム、ピペロニルブトキシド、ピレトリン、カシア、およびそれらの混合物からなる群から選択される追加の駆除剤をさらに含む。本発明の組成物は、該組成物の総重量に基づいて、0.001~25重量%、好ましくは0.01~20重量%、より好ましくは0.05~15重量%、最も好ましくは0.1~10重量%の量の該追加の駆除剤を含み得る。
【0125】
<水生有害生物を制御するための使用および方法>
本発明のさらに別の態様によれば、水生有害生物を制御するための組成物の使用であって、該組成物が、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含み、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、使用が提供される。上記および下記の本発明の組成物に関係する実施形態が、本発明の使用にも適用されることが、理解されなければならない。
【0126】
制御される水生有害生物は、水生植物、甲殻類、侵略的種、昆虫、線虫、軟体動物、魚、寄生虫および/または病原体であり得る。一実施形態によれば、該水生有害生物は、魚および/または寄生虫である。本発明の状況において、用語「病原体」は、一般には病原体を指示し、より好ましくは魚の病原体、即ち魚の疾患または疾病を引き起こす増殖が可能な感染性生物体を指示する。病原体の例は、真菌、卵菌、細菌、ウイルス、ウイロイド、ウイルス様生物体、フィトプラズマまたは原虫である。
【0127】
一実施形態によれば、該制御される水生有害生物は、有害魚および/または魚の寄生虫である。
【0128】
本発明の目的では、用語「有害魚」は、エリアに本来生息せず、潜在的に負の社会的、経済的または環境的影響を有する魚種を指す。西欧の有害魚の例は、侵略的外来種の魚種シュードラスボラ・パルバおよび/またはキプリヌス・カルピオである。
【0129】
本発明の意味における「寄生虫」は、別の生物体、例えば魚との持続的な接触を有し、該宿主生物体に損傷を与える生物体である。本発明の一実施形態によれば、該寄生虫は、魚の寄生虫、好ましくはギロダクチルス・サラリス、イクチオフチリウム・ムルチフィリイス、クリプトカリオン、ベルベット病、ブルックリネラ・ホスチリス、グルゲア、セラトミクサ・シャスタ、クドア・シルシテス、テトラカプスロイデス・ブリオサルモナエ、キモトア・エクシグア、吸虫、チョウ、サケジラミ、およびそれらの混合物からなる群から選択される魚の寄生虫、最も好ましくはギロダクチルス・サラリスである。
【0130】
ギロダクチルス・サラリスは、淡水魚、特に大西洋サケの皮膚に主に生息する小さな単生外部寄生虫(約0.5mm長)である。この種は、ノルウェーのフィヨルド内の大西洋サケ集団の一部減少に関連づけられたヒル様の寄生虫である。寄生され得る他の種としては、ニジマス、アルプス岩魚、カワマス、グレーリング、レイクトラウト、およびブラウントラウトが挙げられる。寄生虫の付着は、大きな創傷を引き起こし得、摂取は、表皮を損傷して二次感染を起こす可能性がある。G.サラリスは、一匹のサケ幼魚に数千の寄生虫という非常に高い感染力で増殖し得る(Wikipedia contributors,“Gyrodactylus salaris”,Wikipedia,The Free Encyclopedia,October 1,2015参照)。
【0131】
一実施形態によれば、該有害生物は、該有害生物の宿主を制御することにより制御され、該宿主は、好ましくは魚である。言い換えれば、該有害生物は、宿主を予防、処理、減少、排除または根絶することにより制御される。
【0132】
一実施形態によれば、水生有害生物を制御するための組成物の使用であって、該組成物が、疎水性の水生駆除剤、好ましくはロテノンを含む水生駆除剤、および表面反応炭酸カルシウムを含み、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、使用が提供される。好ましくは該水生有害生物は、有害魚および/または魚の寄生虫であり、より好ましくは該水生有害生物は、シュードラスボラ・パルバ、キプリヌス・カルピオ、ギロダクチルス・サラリス、イクチオフチリウム・ムルチフィリイス、クリプトカリオン、ベルベット病、ブルックリネラ・ホスチリス、グルゲア、セラトミクサ・シャスタ、クドア・シルシテス、テトラカプスロイデス・ブリオサルモナエ、キモトア・エクシグア、吸虫、チョウ、サケジラミ、およびそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは該水生有害生物は、ギロダクチルス・サラリスである。
【0133】
本発明のさらに別の態様によれば、水生駆除剤および表面反応炭酸カルシウムを含む組成物を、水生系の少なくとも一部に適用するステップを含む、水生有害生物を制御する方法であって、該表面反応炭酸カルシウムが、天然粉砕炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素および1種または複数のH3O+イオンドナーとの反応生成物であり、該二酸化炭素が、H3O+イオンドナー処理により原位置で形成され、および/または外部供給源から供給される、方法が提供される。
【0134】
該水生系は、天然水界生態系または人工水生系であり得る。一実施形態によれば、該水生系は、排水ます、池、飼育槽、湖、湾、湿地、沼地、低湿地、潮泊きょ、潟、雨水調整池、小湾、クリーク、小川、川、海、溝、スウェール、下水処理システム、くぼみ、樹洞、岩穴、貯水池、川、運河、または下水道である。
【0135】
本発明の組成物は、当業者に公知の任意の適切な方法および設備により適用され得る。適切な適用法としては、散布、噴霧、注入、ポンピング、または注射が挙げられる。
【0136】
当業者は、必要に応じて、処理される水生系に従い、そして制御される有害生物に従い、効率的な濃度を調製し、そして適切な希釈を利用しながら、本発明の組成物を適用する。本発明の組成物の最適な使用は、反復適用を含み得る。しかし、該組成物が一回のみ適用されることが、好ましい。
【0137】
一実施形態によれば、本発明の組成物は、処理される水生系におけるロテノンの濃度が0.001~10mg/l、好ましくは0.005~8mg/l、より好ましくは0.01~4mg/l、最も好ましくは0.1~1mg/lになるような量で適用される。
【0138】
水生有害生物を制御する本発明の方法は、有害生物または感染された宿主の排水および/または物理的除去などの他の方法と組み合わせられ得る。排水技術の例は、ダム、水の迂回、または水切りである。物理的除去技術の例は、電気漁法、または網、仕掛けもしくは引き網による除去である。
【0139】
本発明の範囲および重要性は、以下の図面および実施例に基づけば、よりよく理解されるであろうが、それらは本発明の特定の実施形態を例示することを意図しており、非限定的である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】本発明の組成物(
図1A)および比較組成物(
図1B)の沈殿挙動を示した一連の写真である。
【
図2】適用後60分目の本発明の組成物(左)および比較組成物(右)の沈殿挙動を示す。
【
図3】本発明の組成物および比較組成物の適用後の経時的なロテノン濃度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0141】
実施例
<<1.測定法>>
以下に、実施例で実行された測定法を記載する。
【0142】
<BET比表面積(SSA)>
250℃で30分間加熱することによる試料のコンディショニング後に、窒素を用いたISO 9277によるBET工程を介して、BET比表面積を測定した。そのような測定の前に、試料を濾過し、すすぎ、オーブンにおいて110℃で少なくとも12時間乾燥させた。
【0143】
<粒度分布>
体積で計測した中央粒子径d50(vol)および体積で計測したトップカット粒子径d98(vol)を、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(Malvern Instruments Plc.,英国)を用いて評価した。d50(vol)またはd98(vol)値は、それぞれ粒子の50体積%または98体積%が、この値より小さな径を有するようなある径の値を示している。測定により得られた生データを、ミー理論と粒子屈折率1.57および吸収率0.005を利用して分析した。
【0144】
重量で計測された中央粒子径d50(wt)は、重力測定分野での堆積挙動の分析である堆積法により測定した。該測定は、米国のMicromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100または5120を用いて行った。該方法および装置は、当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒度分布を計測するために一般に用いられる。測定は、0.1重量%Na4P2O7の水溶液中で実施した。試料を、高速スターラーを用いて分散し、音波処理した。
【0145】
<粒子内圧入比細孔容積(cm3/g)>
比細孔容積は、ラプラスのスロート径0.004μm(~nm)と等しい最大使用水銀圧414MPa(60000psi)を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメーターを用いて、水銀圧入ポロシメトリーを利用して測定した。各圧力ステップで用いられる平衡化時間は、20秒であった。試料の材料を、分析用の5cm3チャンバーの粉末貫入試験機に密封した。Pore-Compソフトウエア(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,“Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations”,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p.1753-1764)を用いて、データを水銀の圧縮、貫入試験機の拡張および試料材料の圧縮について修正した。
【0146】
累積圧入データで認められた総細孔容積は、214μmから約1~4μmに至る圧入データで2つの領域に分離され、大きく寄与する任意の集塊構造の間に試料が粗く充填されていることが示される。これらの径より小さな、粒子そのものの微細な粒子間充填が存在する。それらが、粒子内細孔も有する場合、この領域は、バイモーダルであり、モーダルな転換点よりも微細な、即ちバイモーダルな変曲点よりも微細な細孔の中に水銀により圧入される比細孔容積を採用することにより、比粒子内細孔容積が定義される。これらの3つの領域の総和は、粉末の全体的細孔容積の合計を与えるが、粗い細孔の分布の端における粉末の本来の試料の圧密化/沈殿に大きく依存する。
【0147】
累積圧入曲線の一次関数を採用することにより、必然的に細孔防護を含む、同等のラプラス径に基づく孔径分布が明らかとなる。示差曲線により、もし存在するならば、粗い集塊細孔構造領域、粒子間細孔領域および粒子内細孔領域が明確に示される。粒子内細孔径範囲が分かれば、残りの粒子間細孔容積および集塊間細孔容積を総細孔容積から差し引いて、単位重量あたりの細孔容積(比細孔容積)に関する内部細孔のみの所望の細孔容積を得ることができる。もちろん同じ減算の原理が、該当する他の孔径領域のいずれかを分離するために適用される。
【0148】
<LC-MS>
試料をシリンジフィルター(0.2μm RC(再生セルロース))で濾過し、最初の2mlは廃棄し(フィルターのコンディショニング)、その後、バイアル内に入れた。濾過した試料をメタノールで1:1に希釈し(500μl試料+500μlメタノール)、LC-MSで分析した。用いられたUPLC-MSシステムは、Acquity UPLC-System(登録商標):Binary Solvent Manager、Sample Manager、Column Manager(Waters)およびXevo TQ(商標)MS System(Waters)であった。
【0149】
【0150】
【0151】
<<2.材料>>
<表面反応炭酸カルシウム(SRCC 1)>
SRCC 1は、d50(vol)=4.93μm、d98(vol)=15.0μm、SSA=37.8m2/gで、粒子内圧入比細孔容積0.530cm3/g(0.004~0.510μmの孔径範囲内)を有した。
【0152】
該表面反応炭酸カルシウムを調製するのに用いられる供給材料は、重量で計測された中央粒子径d50(wt)が8μmであり、固形分が水性懸濁液の総重量に基づき40重量%である、ノルウェーのOmya Hustadmarmorから得られた天然粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液であった。
【0153】
より微細な炭酸カルシウムを得るために、供給原料をDyno-Mill Multi-Labミル(W.Bachofen AG)により、0.7~1.4mmの径を有する水性懸濁液の形態のVerac粉砕媒体を用いて粉砕した。得られた水性懸濁液は、重量で計測された中央粒子径d50(wt)1μm、および水性懸濁液の総重量に基づく固形分18重量%を有した。
【0154】
得られた粉砕供給原料懸濁液を、混合容器に入れて、懸濁液を急速に混合しながら、リン酸を、粉砕炭酸カルシウムの乾重量に基づき9~12重量%活性リン酸の量で懸濁液に添加した。酸の添加後に、スラリーをさらに5分間撹拌した後、容器からそれを取り出し、それを機械で排水して、得られたフィルターケークを乾燥させた。酸処理の間、二酸化炭素を原位置で、水性懸濁液中で形成させた。
【0155】
得られた表面反応炭酸カルシウム含有鉱物材料SRCC 1は、乾燥粉末形態であった。
【0156】
CFT Legumine
ノルウェーのVesoから市販されるCFT Legumine 3.3%
【0157】
<<3.実施例>>
[実施例1]
CFT Legumine(Veso)中の微粒子材料SRCC 1を、予備配合剤の総重量に基づき25.5重量%含有する予備配合剤を、調製した。
【0158】
この予備配合剤を、水と12.5%(v/v)に、即ち1:8の容量比で混合した(配合剤1)。次に、配合剤1 1mlを、水1000mlに滴加した。比較テストとして、CFT Legumineおよび水を1:8の容量比で含有する配合剤(配合剤2)0.5mlを、水500mlに滴加した。両方の配合剤の挙動を、視覚的に検査し、
図1および2に表している。
【0159】
図1は、それぞれ水1リットルまたは500mlに滴加した場合の本発明の配合剤および比較配合剤の経時的な沈殿挙動の一連の写真を示している。
図1Aは、配合剤を水に滴加した後2、30および49秒目の配合剤1の写真を示し、
図1Bは、配合剤を水に滴加した後2、30および49秒目の配合剤2の写真を示している。
図2から分かる通り、60分後の本発明の配合剤1は、沈殿したが(左写真)、比較配合剤2は、沈殿しなかった(右写真)。
【0160】
これらの結果から、表面反応炭酸カルシウムおよびCFT Legumineを合わせることにより、短時間後に水環境に沈殿する配合剤が得られることが、確認される。したがって、小さな魚が隠れることができ、典型的には従来のロテノン含有配合剤での処理を逃れる川底、ならびにせせらぎおよび小さな泉の砂利の間に、本発明の組成物が沈積または沈殿することができる。
【0161】
[実施例2]
川のシミュレーションにおける時間の経過によるロテノン濃度を、LC/MSにより試験した。
【0162】
CFT Legumine(Veso)中の微粒子材料SRCC 1を予備配合剤の総重量に基づき25.5重量%含有する予備配合剤を、調製した。
【0163】
この予備配合剤を、水と10%(v/v)に、即ち1:10の容量比で混合した(配合剤3)。次に、配合剤3 150μlを、水1000mlに滴加して、ロテノンの放出を試験した。比較テストとして、CFT Legumineおよび水を1:10の容量比で含有する配合剤(配合剤4)150μlを、水1000mlに滴加した。
【0164】
0、5、15、30、60、180、360、1440および2880分目に、シリンジで処理された水量から9mlを採取して、0.2μm RCメンブランフィルターで濾過した。濾液の最初の5mlを廃棄して、さらにLC/MSによるロテノンの測定のために、4mlを用いた。LC/MS試験の結果を、
図3に示している。
【0165】
図3から分かる通り、5日後の水中のロテノン濃度は、本発明の配合剤3で処理された水量ではより高い。ロテノン濃度は、両方の配合剤で低下している。同様にこれは、水中のロテノン分解による。興味深いこととして、6日目~9日目の間の測定では、CFT Legumine単独でのロテノンの分解は、SRCCと混合されたCFT Legumineに比較してより急速であった。実際に17日目は、ロテノン濃度が、CFT LegumineのみのものよりもSRCCと混合されたCFT Legumineのビーカーで3.25倍高かった。
【0166】
LC/MS試験から、該表面反応炭酸カルシウムがCFT Legumineの貯蔵庫を提供することができ、小さな魚を地下水の出口に逃すことにより処理された川が再感染するリスクを低減することができることが示された。