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▶ スミス アンド ネフュー ピーエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】創傷被覆材および治療法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20220104BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220104BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61F13/00 301Z
A61F13/02 310M
A61F13/02 310H
A61F13/00 301J
A61F13/02 310Z
A61F13/02 390
A61F13/00 T
A61F13/02 310A
A61M27/00
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019124616
(22)【出願日】2019-07-03
(62)【分割の表示】P 2017170977の分割
【原出願日】2012-07-12
(65)【公開番号】P2019193855
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2019-07-04
(31)【優先権主張番号】1112084.7
(32)【優先日】2011-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1211171.2
(32)【優先日】2012-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391018787
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 5,Croxley Park,Hatters Lane,Watford,Hertfordshire WD18 8YE,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エラ・リン・マンビー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・アン・レコンテ
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0004172(US,A1)
【文献】特開昭60-222054(JP,A)
【文献】特開2008-119497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0185163(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0135174(US,A1)
【文献】特表2011-504126(JP,A)
【文献】特表2011-516167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/02
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位を保護するための創傷被覆材であって、
創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、
前記吸収剤層の上方でかつ前記創傷被覆材の創傷に面する側から吸収剤層よりも遠くに設けられる遮蔽層と、
を備え、
前記遮蔽層は、前記創傷被覆材に加えられた圧力が伝達される面積を最初に圧力が加えられたときの面積の25%以上分増大させる、編みスペーサ布または織りスペーサ布、或いは、不織布であり、
前記遮蔽層は、使用時に前記吸収剤層によって吸収される創傷滲出液の少なくとも一部を見えなくするための不透明要素として構成されることを特徴とする創傷被覆材。
【請求項2】
前記遮蔽層は、前記吸収剤層の真上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項3】
前記遮蔽層は2つ以上の副層を備え、第1の副層は貫通穴を備え、さらなる副層は貫通穴を備え、前記第1の副層の前記貫通穴は前記さらなる副層の前記貫通穴からずれていることを特徴とする請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項4】
前記遮蔽層の上方に設けられた、気体および蒸気を透過させるための透過性カバー層をさらに備え、前記透過性カバー層の貫通穴は、前記遮蔽層の貫通穴からずれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項5】
前記遮蔽層は、前記創傷被覆材に加えられた圧力が伝達される面積を50%以上分増大させ、場合によっては100%以上分増大させ、場合によっては200%以上分増大させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項6】
創傷接触層、発泡体層、および臭気抑制要素のうちの少なくとも1つをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項7】
前記創傷被覆材の外周に沿って延在する境界領域を備え、被覆層としての頂部膜と、前記創傷被覆材の前記境界領域において共に接着される穿孔された創傷接触層と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の創傷被覆材。
【請求項8】
前記頂部膜は、液体不透過性で水蒸気透過性の膜であることを特徴とする請求項7に記載の創傷被覆材。
【請求項9】
前記遮蔽層及び前記吸収剤層は、前記創傷接触層及び前記頂部膜との間に収容されることとを特徴とする請求項7または8に記載の創傷被覆材。
【請求項10】
前記創傷接触層は、取外し時の皮膚の外傷を最小限にするように構成された有孔創傷側接着剤を備えることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項11】
前記遮蔽層は一部が半透明であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項12】
前記不透明要素内に位置するかあるいは前記不透明要素に隣接して位置し、前記吸収剤層を見えるようにする領域をさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項13】
前記遮蔽層は、前記創傷被覆材を交換する必要があることを示すためのインジケータを備えることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
【請求項14】
創傷に陰圧創傷療法を施すためのシステムであって、
請求項1から13のいずれか一項に記載の創傷被覆材と、
陰圧源と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
前記陰圧源は携帯電池式ポンプであることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記創傷被覆材および前記陰圧源と連通する収集キャニスタをさらに備えることを特徴とする請求項14または15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示のいくつかの実施形態は、創傷被覆材および治療法に関する。特に、本開示は、創傷部位を保護し、創傷滲出液を吸収し、ユーザとその周囲の人との両方に周知の技法に勝るいくつかの利点をもたらすための装置および方法に関するが、それに限定されるわけではない。
【背景技術】
【0002】
患者は、慢性または急性の創傷に数日から数年の範囲の期間にわたって耐える必要がある。患者の生活の質が影響を受けることは避けられず、選択される被覆材によって患者の日常の活動に対する創傷の影響を最小限に抑えることができない場合には影響がさらに深刻になる。
【0003】
患者は、被覆材から漏れが生じること、創傷からの臭気が患者の身内に迷惑をかけること、または被覆材が使用するにつれて見苦しくなることの不安を訴えることが多い。患者が動くと、被覆材は、皮膚の伸びおよび/または曲げあるいは衣服またはベッドのシーツおよび枕カバーによる擦れの影響を受けることがある。現代の被覆材はある程度伸びるように設計されているが、日常活動の間に被覆材境界が持ち上がり、漏れおよび臭気に関する不安が増す。汚れおよび清潔さに関する対応する不安によって、患者の総合的な治癒にとって不利になるように患者の活動が制限されることがある。
【0004】
さらに、患者が動けるとき、強い痛みを伴ってぶつかることによって創傷をさらに傷つけることの不安も存在する。
【0005】
創傷を有する患者の日常生活は、危険と利益の兼ね合いを図ることとみなされることがある。患者によって下される決定は、臨床医によって推奨される既定の治療または行動に反することもある。被覆材を装着している間の被覆材の状態に関する患者の不安のいくつかに対処すると、患者の決定を臨床医の推奨と一致させるのを助けることができる。
【0006】
要約すれば、上述の問題はこれまで以下のように対処されている。
【0007】
漏れの防止:創傷被覆材の構成に高吸収性吸収剤を使用して被覆材パッドからの創傷滲出液の漏れを制限することが試みられている。特許文献1は、発泡体層と発泡体に密に接触する吸収材料層を組み合わせ、発泡体を排水させることのできる創傷被覆材について説明している。特許文献2は、そのような物品を製造する方法について説明している。
【0008】
臭気:活性炭層(Carboflex(登録商標)、Askina Carbosorb(登録商標)、Sorbsan plus carbon(登録商標)、Carbonet(登録商標)、Lyofoam C(登録商標))または親水コロイドに埋め込まれたシクロデキシトリン(ExuDerm Odorshield(登録商標)、Avery Dennison)を含むいくつかの臭気抑制被覆材が存在する。活性炭が使用される場合、活性炭はバリア層の後方に配置されることが多く、その目的は、活性炭をできるだけ乾燥した状態に維持して活性炭が臭気を閉じ込めるのを可能にすることである。特許文献3は、パッドの創傷側とパッドの臭気層との間にバリア層を含む臭気抑制吸収剤被覆材について説明している。特許文献4は、活性炭を使用して創傷の臭気を抑制することについて説明している。特許文献5は、非付着創傷被覆材に組み込まれたシクロデキシトリンを使用することについて説明している。現在、臭気を抑制する手段も含む付着吸収剤被覆材は市販されていない。
【0009】
形状適合性および動き:標準的な方形よりも身体に対する形状適合性が高くなるように設計された被覆材もある。これは、特に踵領域用または仙骨領域用の被覆材設計の例に当てはまる。特許文献6は、優先的な折畳み線を有する仙骨被覆材について説明している。そのような被覆材では、被覆材の境界とパッドの両方を目標とする身体の特定の領域に関連付けて形作ることができる。特許文献7は、パッドの刻み目を蜂の巣パターンとした被覆材について説明している。さらなる関連特許出願は、刻み目の他の有利な形態について説明している。Coloplast社によって製造されている既存の製品Comfeel Plus(登録商標)は、付着性および形状適合性が向上すると主張されている成形された境界を有する。さらに、特許文献8は、貼付け後に永久的に変形する形状適合性を有する被覆材について説明している。
【0010】
外観および清潔さは、既存の製品では対処されておらず、また、公開された文献では患者にとっての問題とみなされていないように思われる。
【0011】
衝撃からの保護および圧力除去:この問題は、当業界では、褥瘡が生じるかまたは悪化するのを防止する見地から対処されているように思われる。気泡またはゲル部を含む構造が、被覆材を圧縮する際に加えられるエネルギーの一部を、加えられる力によって被覆材が圧搾されて薄くなるまで吸収し得ることが一般に認められている。したがって、発泡体被覆材は臨床環境における圧力除去プロトコルの一部として使用されているが、他の方法と一緒に使用されている。
【0012】
特許文献9は、第1の部分が創傷の周囲の壁として形成され、第2のより平坦な部分が壁の上に配置される複合被覆材について説明している。圧迫包帯の下のような壁によって画定される領域よりも広い領域に加えられた圧力は、大部分がシールド構造によって吸収される。
【0013】
特許文献10および特許文献11は、材料層に穴を設ける同様の概念について説明している。特許文献12は、この概念に基づいており、圧力除去構造が被覆材の吸収剤部を囲み、かつ皮膚に接触する。
【0014】
特許文献13パンフレットは、被覆材内に3次元ニットを使用することについて説明している。
【0015】
本発明者は、上述の患者の要件のうちの複数を満たす構造を見つけてはいない。しかし、特定の治療を受けている患者を満足させ、したがって、そのような患者を治療に従わせることができるかどうかは、いくつかの臨床要因および社会要因によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許第1156838号
【文献】欧州特許第0758219号
【文献】米国特許第6348423号
【文献】英国特許第2420286号
【文献】国際公開第0209782号パンフレット
【文献】国際公開第2008/149107号パンフレット
【文献】国際公開第2004/047695号パンフレット
【文献】欧州特許第0902672号
【文献】国際公開第2007/075379号パンフレット
【文献】国際公開第2006/091735号パンフレット
【文献】米国特許出願第2009/0069737号
【文献】欧州特許第1164995号
【文献】国際公開第2011/144888号パンフレット
【文献】国際公開第91/01706号パンフレット
【文献】国際公開第93/04101号パンフレット
【文献】米国特許出願第2011/0282309号
【文献】英国特許第1280631号
【文献】英国特許出願第2070631号
【文献】米国特許第7524315号
【文献】米国特許第7708724号
【文献】米国特許第7909805号
【文献】米国特許出願公開第2005/0261642号
【文献】米国特許出願公開第2007/0167926号
【文献】米国特許出願公開第2009/0012483号
【文献】米国特許出願公開第2009/0254054号
【文献】米国特許出願公開第2010/0160879号
【文献】米国特許出願公開第2010/0160880号
【文献】米国特許出願公開第2010/0174251号
【文献】米国特許出願公開第2010/0274207号
【文献】米国特許出願公開第2010/0298793号
【文献】米国特許出願公開第2011/0009838号
【文献】米国特許出公開願第2011/0028918号
【文献】米国特許出願公開第2011/0054421号
【文献】米国特許出願公開第2011/0054423号
【文献】米国特許出願第12/941390号
【文献】米国特許出願第29/389782号
【文献】米国特許出願第29/389783号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の第1の態様によれば、創傷部位を保護するための創傷被覆材であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、使用時に吸収剤層によって吸収される創傷滲出液の少なくとも一部を見えなくする不透明要素とを備える創傷被覆材が提供される。
【0018】
本開示の第2の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層を設けることと、使用時に吸収剤層によって吸収される創傷滲出液の少なくとも一部を見えなくするための不透明要素を設けることとを含む方法が提供される。
【0019】
本開示の第3の態様によれば、創傷部位を保護するための創傷被覆材であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、吸収剤層の上方でかつ創傷被覆材の創傷に面する側から吸収剤層よりも遠くに設けられる遮蔽層とを備える創傷被覆材が提供される。
【0020】
本開示の第4の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層を設けることと、吸収剤層の上方でかつ創傷被覆材の創傷に面する側から吸収剤層よりも遠くに設けられる遮蔽層を設けることとを含む方法が提供される。
【0021】
本開示の第5の態様によれば、創傷部位を保護するための創傷被覆材であって、圧力が加えられる領域よりも広い領域にわたって創傷被覆材に加えられた圧力を拡散させるための遮蔽層と、創傷被覆材の創傷に面しない側において遮蔽層に隣接しかつ遮蔽層の上方に設けられるカバー層とを備える創傷被覆材が提供される。
【0022】
本開示の第6の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、圧力が加えられる領域よりも広い領域にわたって創傷被覆材に加えられた圧力を拡散させるための遮蔽層を設けることと、創傷被覆材の創傷に面しない側において遮蔽層に隣接しかつ遮蔽層の上方に設けられるカバー層を設けることとを含む方法が提供される。
【0023】
本開示の第7の態様によれば、創傷被覆材であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、流体透過層と、流体透過層と吸収剤層との間または流体透過層および吸収剤層内に位置する臭気抑制要素とを備える創傷被覆材が提供される。
【0024】
本開示の第8の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層を設けることと、流体透過層を設けることと、流体透過層と吸収剤層との間または流体透過層および吸収剤層内に位置する臭気抑制要素を設けることとを含む方法が提供される。
【0025】
本開示の第9の態様によれば、臭気抑制材料と発泡体、吸収剤層、および遮蔽層のうちの少なくとも1つとを備え、臭気抑制材料が少なくとも1つの他の材料に組み込まれる創傷被覆材が提供される。
【0026】
本開示の第10の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、臭気抑制材料と発泡体、吸収剤層、および遮蔽層のうちの少なくとも1つとを設けることを含み、臭気抑制材料が少なくとも1つの他の材料に組み込まれる方法が提供される。
【0027】
本開示の第11の態様によれば、創傷被覆材であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層を備え、被覆材が部分領域を含むように形作られ、被覆材が回転対称性を有し、各部分領域が、互いに対して異なる方向に形成可能な被覆材の領域を画定する創傷被覆材が提供される。
【0028】
本開示の第12の態様によれば、創傷被覆材を製造する方法であって、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層を設けることと、被覆材を部分領域を含むように形作ることとを含み、被覆材が回転対称性を有し、各部分領域が、互いに対して異なる方向に形成可能な被覆材の領域を画定する方法が提供される。
【0029】
本開示のある実施形態は、(周知の被覆材と比較して)ユーザに対する見た目の悪影響を低減させ、それにもかかわらず臨床医が創傷部位を調べ、かつ血液の存在、感染副産物、および/または被覆材における滲出液拡散範囲の評価のような目視による評価を行うのを可能にする創傷被覆材が提供される利点をもたらす。
【0030】
本開示のある実施形態は、創傷被覆材が取り付けられる患者の領域、特に平坦/平面状ではない領域についての形状適合性が向上した創傷被覆材が提供される利点をもたらす。
【0031】
本開示のある実施形態は、ユーザを衝撃または圧力から保護することに関して性能が向上した創傷被覆材が提供される利点をもたらす。
【0032】
本開示のある実施形態は、創傷からの臭気が抑制される利点をもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態は、創傷被覆材を使用して、陰圧療法プロセス時に生じる滲出液を収集することができる利点をもたらす。創傷被覆材から遠くに位置するポンプまたは創傷被覆材によって支持されるポンプを創傷被覆材に連結して再使用してよく(あるいは使い捨てにしてもよく)、一方、創傷被覆材自体を使用して創傷滲出液を収集し、次いで、使用後に処分してよい。ポンプまたは他の陰圧源は、可撓性のチューブまたは導管を通して創傷被覆材に連結されてよい。この構成では、陰圧によって、創傷滲出液およびその他の流体または分泌物を創傷部位から引き離すことができる。
【0034】
本明細書において開示される実施形態はいずれも陰圧創傷治療システムと一緒に使用するのに適しており、したがって、陰圧創傷治療システムと一緒に使用して創傷を閉鎖し治癒させるのを助けることができ、治療時に創傷部位から吸い出される創傷滲出液は創傷被覆材および/または収集キャニスタに収集され格納される。
【0035】
本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態の目的は、創傷滲出液を吸収する能力を向上させ、被覆材を交換しなければならない頻度を少なくすることである。本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態のさらなる目的は、被覆材の寿命を短くする詰まりが生じるのを回避するように被覆材内の創傷滲出液の移動を管理することである。
【0036】
本開示のある創傷被覆材の実施形態の一目的は、創傷被覆材に加えられた圧縮力を吸収するための容量が増大された創傷被覆材を提供することである。
【0037】
本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態の一目的は、創傷被覆材の外面からのせん断力が創傷部位における対応するせん断力に変換されるのを妨げるための容量が増大された創傷被覆材を提供することである。
【0038】
本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態の一目的は、被覆材が陰圧を受けるときでも創傷部位表面に垂直な方向および平行な方向に「たわむ」ことのできる創傷被覆材を提供することである。
【0039】
本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態の目的は、固形物質が蓄積することによって生じる詰まりによる妨害を受けずに治療を継続できるように開放流路を維持する助けになる、陰圧創傷閉鎖療法で使用できる創傷被覆材を提供することである。
【0040】
本明細書において開示されるある創傷被覆材の実施形態の目的は、創傷被覆材の流路領域の詰まりを防止することにより陰圧創傷閉鎖療法によって創傷を治療するための方法および装置を提供することである。
【0041】
本明細書において開示されるいくつかの実施形態は、陰圧創傷療法によって創傷を治療することに関する。特に、本明細書において開示される被覆材の実施形態はいずれも、ポンプ、たとえば小形ポンプに連動して創傷滲出液を吸収し格納するのに使用されてよい。本明細書において開示される創傷被覆材の実施形態はいずれも、創傷被覆材に配設された吸収剤層に創傷滲出液を透過させるように構成された透過層をさらに備えてよい。さらに、本明細書において開示される創傷被覆材の実施形態はいずれも、創傷被覆材に陰圧を伝達する間、創傷被覆材内に創傷滲出液を保持するように構成されたポートまたは他の流体コネクタを備えるように構成されてよいが、そのような特徴は必須ではない。
【0042】
本開示の実施形態によれば、本明細書において開示される被覆材の実施形態のいずれかと、ポンプと、創傷被覆材に陰圧を加えて創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための吸引ポートであって、吸引ポートをポンプに連結するためのコネクタ部、吸引ポートを創傷被覆材のカバー層に対して密封するための密封面、および液体がコネクタ部に進入するのを防止するように構成された液体不透過性気体透過性フィルタ要素を備える吸引ポートとを備える創傷被覆材を備える創傷治療装置が提供される。
【0043】
本開示の別の実施形態によれば、創傷を治療するための方法であって、本明細書において開示される被覆材の実施形態のうちのいずれかの各特徴のいずれかまたは各特徴の組合せ、ならびに/または3D編み材料または3D布材料を含む透過層、透過層を覆う、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層、および吸収剤層を覆い、オリフィスを備え、水蒸気透過性を有するカバー層を備える創傷被覆材を用意することと、被覆材を創傷部位の上方に位置付けて創傷部位の上方に密封された空洞を形成することと、創傷部位に陰圧を加えて流体を透過層を通して吸収剤層に吸い込ませることとを含む方法が提供される。
【0044】
本開示の別の実施形態によれば、創傷部位を保護するための創傷被覆材であって、本明細書において開示される被覆材の実施形態のうちのいずれかの各特徴のいずれかまたは各特徴の組合せ、ならびに/または第1の表面および弛緩動作モードにおいて第1の表面から弛緩距離だけ離して配置されるさらなる表面を備える透過層、および第1の表面とさらなる表面との間を延び、かつ押付け動作モードにおいて、第1の表面とさらなる表面を弛緩距離よりも短い圧縮距離だけ離して配置するように配置可能な複数のスペーサ要素を備える創傷被覆材が提供される。
【0045】
本開示の別の実施形態によれば、創傷部位を保護するための方法であって、本明細書において開示される創傷被覆材の実施形態のうちのいずれかの各構成要素または各特徴のいずれか、および/または透過層を備える創傷被覆材を創傷部位の上方に配置することと、 創傷被覆材に対する力に応答して、透過層の第1の表面とさらなる表面との間を延びる複数のスペーサ要素を変位させることとを含み、スペーサ要素が変位するにつれて第1の表面とさらなる表面との間の距離が短くなる方法が提供される。
【0046】
本開示の別の実施形態によれば、創傷を覆って創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための装置であって、本明細書において開示される創傷被覆材の実施形態のうちのいずれかの各構成要素または各特徴のいずれか、ならびに/または液体および気体透過性透過層と、透過層を覆う、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、吸収剤層を覆い、第1のオリフィスを備え、水蒸気透過性を有する気体不透過性カバー層とを備える創傷被覆材を備える装置が提供される。
【0047】
本開示のさらなる実施形態によれば、創傷部位にTNPを施す方法であって、本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態のカバー層のオリフィスに陰圧を加え、創傷部位の周囲領域を創傷被覆材によって密封し、それによって、空気および創傷滲出液をオリフィスの方へ吸い出すことと、創傷部位から吸い出された創傷滲出液を創傷被覆材の透過層を通して創傷被覆材の吸収剤層に収集することと、吸収剤層に収集された創傷滲出液の水成分を創傷被覆材のカバー層を通して放出させることとを含む方法が提供される。
【0048】
本開示の追加の実施形態によれば、創傷を覆って創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための装置であって、本明細書において開示される創傷被覆材の実施形態のうちのいずれかの各構成要素または各特徴のいずれか、ならびに/または、液体および気体透過性透過層と、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層と、吸収剤層および透過層を覆い、透過層に連結されたオリフィスを備える気体不透過性カバー層と、オリフィスに陰圧が加えられたときに創傷滲出液がオリフィスの方へ移動する速度を遅くするように構成された少なくとも1つの要素と、を備える創傷被覆材を備える装置が提供される。
【0049】
本開示の別の実施形態によれば、創傷部位にTNPを施す方法であって、本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを備える創傷被覆材のカバー層のオリフィスに陰圧を加え、創傷部位の周囲領域を創傷被覆材によって密封し、それによって、空気および創傷滲出液をオリフィスの方へ移動させることと、創傷滲出液を創傷部位から創傷被覆材の透過層を通して創傷被覆材の吸収剤層に収集することと、創傷滲出液がオリフィスの方へ移動する速度を遅くすることと、を含む方法が提供される。
【0050】
本開示のさらに別の実施形態によれば、創傷を覆って創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための装置において、本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれか、ならびに/または、創傷滲出液を吸収するための吸収剤層、および吸収剤層を覆う気体不透過性カバー層であって、陰圧をカバー層を通して、間隔を置いて配置された少なくとも2つの領域において伝達させるように構成された少なくとも1つのオリフィスを備える気体不透過性カバー層を備える創傷被覆材を備える装置が提供される。
【0051】
本開示の追加の実施形態によれば、創傷部位にTNPを施す方法であって、 本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを備える創傷被覆材のカバー層を創傷部位の周りで密封することと、陰圧をカバー層を通して、間隔を置いて配置された少なくとも2つの領域において伝達させるように構成された、カバー層の少なくとも1つのオリフィスに陰圧を加えることと、創傷滲出液を創傷部位から創傷被覆材の吸収剤層に収集することと、を含む方法が提供される。
【0052】
本開示の別の実施形態によれば、創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材に陰圧を加えるための吸引ポートであって、吸引ポートを陰圧源に連結するためのコネクタ部と、吸引ポートを創傷被覆材のカバー層に対して密封するための密封面と、液体がコネクタ部に進入するのを防止するように構成された液体不透過性気体透過性フィルタ要素と、を備える吸引ポートが提供される。
【0053】
本開示の追加の実施形態によれば、創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材に陰圧を伝達する方法であって、創傷被覆材のカバー層におけるオリフィスの周囲に密封された吸引ポートの連結部に陰圧を加えることと、創傷被覆材から吸い出された気体を吸引ポートの液体不透過性気体透過性フィルタ要素を通して濾過することと、を含む方法が提供される。
【0054】
本開示の別の実施形態によれば、創傷被覆材に陰圧を加えて創傷部位に陰圧創傷閉鎖を施すための吸引ポートを製造する方法であって、吸引ポートが、吸引ポートを陰圧源に連結するためのコネクタ部と、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材のカバー層に対して吸引ポートを密封するための密封面とを有し、方法が、吸引ポートの液体不透過性気体透過性フィルタ要素を液体がコネクタ部に進入するのを防止する位置に配設することを含む方法が提供される。
【0055】
本開示のさらに別の実施形態によれば、創傷部位にTNP療法を施すための装置であって、各々が第1の開放領域を有する複数の開口部を備える第1の層と、第1の層から間隔を置いて配置され、各々がさらなる開放領域を有する複数のさらなる開口部を備えるさらなる層と、第1の層およびさらなる層の上方の空気不透過性水蒸気透過性カバー層とを備え、第1の層とさらなる層との間の領域が、創傷部位から流れる空気および/または創傷滲出液用の流路の一部を備え、第1の開放領域がさらなる開放領域よりも狭い装置が提供される。
【0056】
本開示のさらに別の実施形態によれば、創傷部位にTNP療法を施す方法であって、 創傷部位の上方に配置された、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材の実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材と流体連通する真空ポンプを介して、創傷部位に陰圧を加えることと、 液体が被覆材のカバー層を通して蒸発するときに、創傷被覆材の流体流路領域の詰まりを防止することと、を含む方法が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態は、陰圧条件下にあるときでも、圧縮力が創傷を傷つけるのを抑制するようにさらに「たわむ」ことができる、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態は、被覆材に加えられるせん断力を被覆材によって覆われる創傷部位から分離することのできる、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材を提供する。その結果、創傷に対する傷害を完全にまたは少なくとも部分的に回避することができる。
【0059】
いくつかの実施形態は、同時に、創傷部位に陰圧創傷療法を施し、滲出液を収集し、被覆材に作用する力から保護することができる、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材によって創傷部位を覆うことができる利点をもたらす。
【0060】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材に作用する力を、比較的短い距離にわたって被覆材の上部層に作用する荷重を被覆材の下面上の比較的広い領域に散逸させることによって相殺することができる利点をもたらす。したがって、この力はより広い面積にわたって散逸し、力の作用を軽減させる。
【0061】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材を使用して陰圧療法プロセス中に生じる創傷滲出液を収集し、一方、創傷滲出液の水成分を放出させることによって被覆材の有効寿命を延ばすことができる利点をもたらす。創傷被覆材から遠くに位置するポンプを創傷被覆材に連結して再使用することができ、一方、創傷被覆材自体を使用して創傷滲出液を収集し、次いで使用後に処分してよい。
【0062】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材内の流路が、介護者の望む時間にわたって治療を継続できるように開放状態に維持される創傷被覆材および/または陰圧創傷閉鎖を施す方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材の流路領域に、詰まりを生じさせる恐れのある固形物質が進入するのを、そのような物質に対する抑制として働く被覆材の層を使用することによって防止する。
【0064】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材の流路領域における固形物質の蓄積を、その流路領域に進入するあらゆる固形物質が常に被覆材のより遠い領域に逃げることができるようにすることによって防止する。
【0065】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材の流路における固形物質の蓄積が、流路領域の近くの吸収剤層に液体を長期間にわたって格納させることによって回避される利点をもたらす。このことは、流路領域の環境を湿潤状態に維持するのを助け、痂皮形成を回避する助けになる。
【0066】
いくつかの実施形態は、本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかの創傷被覆材、あるいは本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態の各構成要素または各特徴のいずれかを有する創傷被覆材を使用して陰圧療法プロセス中に生じる創傷滲出液を収集し、一方、創傷滲出液の水成分を放出させることによって被覆材の有効寿命を延ばすことができる利点をもたらす。創傷被覆材から遠くに位置するポンプを創傷被覆材に連結して再使用することができ、一方、創傷被覆材自体を使用して創傷滲出液を収集し、次いで使用後に処分してよい。
【0067】
以下に、本開示の実施形態について、添付の図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本開示の創傷被覆材の実施形態の図である。
図2a図1の被覆材の平面図である。
図2b図1の被覆材の斜視図である。
図3】2つの周知の被覆材(a)および(b)ならびに本開示の被覆材の実施形態を示す図である。
図4】様々な創傷被覆材の臭気捕集能力のグラフである。
図5】従来技術の被覆材および本開示の被覆材の実施形態の写真である。
図6】従来技術の被覆材および本開示の被覆材の実施形態の経時的な写真である。
図7】患者に貼り付けられる本開示の被覆材の実施形態の写真である。
図8】被覆材の経時的な持上りを監視する試験の結果のグラフである。
図9】既知の力が各被覆材に加えられた後の様々な被覆材の圧縮率のグラフである。
図10】様々な被覆材に点圧力が加えられた後の、力が加えられた接触面積を示す図である。
図11】様々な不透明要素を示す図である。
図12a】代替被覆材構成を示す図である。
図12b】別の被覆材構成を示す図である。
図12c】さらなる被覆材構成の写真である。
図13】様々な被覆材内の圧力伝達のグラフである。
図14】様々な材料の紫外可視分光吸光度を示す図である。
図15A】創傷被覆材の実施形態を示す図である。
図15B】創傷被覆材の別の実施形態を示す図である。
図16】創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図17】バッフル要素を含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図18】バッフル要素を含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよいさらなる創傷被覆材実施形態の上面図である。
図19】一実施形態によるバッフル要素を示す図である。
図20】単一のバッフル要素を含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図21】空気流路を含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図22】2つの空気流路を含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図23】流体連通通路を介して結合されたカバー層を含む2つのオリフィスを含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態の上面図である。
図24】流体連通通路の一実施形態を示す図である。
図25】吸引ポートの上面図である。
図26】フィルタ要素を含む吸引ポートを示す図である。
図27】フィルタ要素を含むさらなる吸引ポートを示す図である。
図28A】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28B】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28C】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28D】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28E】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28F】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28G】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28H】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28I】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28J】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28K】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図28L】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材内のバッフル要素の一連の例示的な構成を示す図である。
図29】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の透過層のビアの例示的な構成を示す図である。
図30】カバー層に細長いオリフィスを含む、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の上面図である。
図31】弛緩動作モードにおける透過層を示す図である。
図32】押付け動作モードにおける透過層を示す図である。
図33】圧力オフセットを示す図である。
図34】弛緩動作モードにおける透過層およびそれを覆う吸収剤層を示す図である。
図35】圧縮力を受けている吸収剤層および透過層を示す図である。
図36】せん断力を受けている吸収剤層および透過層を示す図である。
図37】創傷被覆材の実施形態のある領域の断面図である。
図38】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態で使用される透過層の下部層を示す図である。
図39】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の実施形態で使用される透過層の上部層を示す図である。
図40】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の別の実施形態で使用される透過層の下面を示す図である。
図41】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい創傷被覆材の別の実施形態で使用される透過層の上面を示す図である。
図42】創傷治療システムの実施形態を示す図である。
図43A】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態とともに使用することができる創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。
図43B】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態とともに使用することができる創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。
図43C】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態とともに使用することができる創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。
図43D】本明細書において開示される任意の被覆材実施形態とともに使用することができる創傷治療システムの実施形態を患者に対してどのように使用し適用するかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図面において、同じ参照符号は同じ番号を示す。
【0070】
本明細書全体にわたって創傷を参照する。創傷という用語が広義に解釈され、皮膚が裂けたり切れたりするか、または皮膚に穴があくか、あるいは外傷によって挫傷が生じた開放創および閉鎖創を包含することを理解されたい。したがって、創傷は、流体が生じることも生じないこともある組織の傷ついた任意の領域として広義に定義される。そのような創傷の例には、切開、裂傷、擦過傷、挫傷、熱傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、瘻孔、手術創傷、外傷、および静脈性潰瘍などが含まれるが、それらに限らない。創傷被覆材は人間またはその他の生物に使用されてよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、創傷部位に部分的または完全に創傷充填材料を充填することが好ましい場合がある。この創傷充填材料は、必須ではないが、ある種の創傷、たとえばより深い創傷には望ましいことがある。創傷充填材料を創傷被覆材に付加して使用してよい。創傷充填材料は一般に、多孔性であり形状適合性を有する材料、たとえば、発泡体(網状発泡体を含む)、ガーゼ、またはハイドロファイバリボンを含んでよい。創傷充填材料は、創傷部位内に嵌めこまれて空間を埋めるようなサイズまたは形状を有することが好ましい。次いで、創傷部位および創傷部位を覆う創傷充填材料の上方に創傷被覆材を配置してよい。本明細書では、「滲出液」という用語は、創傷滲出液(細胞、感染副産物、細胞残屑、タンパク質など)、血液、または創傷から放出される任意のその他の物質のうちのいずれかを広義に対象とするのに使用される。
【0072】
概して、本開示は、特定の層が被覆材に個々の特性を付与し、これらの層を特定の順序で組み合わせると追加の特性が付与される吸収剤被覆材に関する。
【0073】
以下に、互いに独立にまたは組み合わせて組み込むことのできる、そのような多層被覆材のいくつかの特性について説明する。
【0074】
(a)各層が、それぞれに異なる吸収率を有する2つの層の間に臭気抑制が配置されるように構成された被覆材パッド組立体。この場合、流体が臭気抑制層に押し込まれるが、臭気抑制層が流体で飽和したままになることはなく、臭気抑制層の効率を維持することができる。
【0075】
臭気抑制は、パッドの他の層のうちのいくつかの層内に臭気抑制材料を組み込むことによって実現されてもよい。
【0076】
差分吸収は、高吸収性吸収剤層(臭気抑制層の反対側)によって(皮膚に最も近い)発泡体層から余分な流体が排水されるので、皮膚に近くで浸軟が生じる危険性を制限する助けにもなる。高吸収性吸収剤層では、流体を圧縮下において液体形態で放出することはできないが、流体は、蒸発またはより遠い層への吸上げによってのみこの層から離れることができる。高吸収性吸収剤層は、最下パッド層よりも大きいサイズに形作られ、パッドの縁部に高吸収性吸収剤ゾーンを設けることによって潜在的な漏れから適切に保護することができる。このことは、パッド組立体に高吸収性吸収剤材料を重ね合わせたリングを含めることによって実現されてもよい。
【0077】
(b)頂面の一部を見えなくする手段を含む被覆材。この効果は、被覆材の状態の臨床的判断を可能にしつつ、見苦しい滲出液の見える範囲を狭くすることである。このことは現在、たとえば、開口部を有する重ね合わせられた布が互いにわずかにずらして配設された視覚マスキング層を使用することによって実現されている。この方法は流体がこの層を通して吸い上げられて頂部膜に達するのを可能にするが、有色固形物が下方の層上に残り、したがって、有色固形物質が頂部膜からわずかに離れた位置に閉じ込められ、見た目が悪くなる。
【0078】
(c)(張力を作用させて最初の平坦な形状を回復する傾向がある純粋に発泡体の被覆材とは異なり)被覆材を貼り付けるのに使用される圧力下で塑性変形し、身体の一部の周りにおいて与えられた形状を保持することができるパッド構成要素を使用すること、
各層を結合する手段をまったく有さないかまたは各層を結合する手段を最小限にし、被覆材構成が、内部せん断に抵抗することによって動きに抵抗しないようにすること、
粒子保持を強化するためのより大きい境界、および皮膚の動きに追従することのできる弾性伸縮領域、
パッドの部分領域が、被覆材の全体的な位置または完全性を損なわずに互いに独立に移動できるように被覆材を形作ること、
様々な寸法のパッド構成要素を使用して被覆材縁部の取付け角を最小限にし、布帛の擦れに対する抵抗を低下させることによって身体の動きに対する適合性を向上させた被覆材設計。
【0079】
上記の要素は、個別に使用されてもあるいは任意の数を組み合わせて使用されてもよいが、効果は、1つの実施形態にすべてのオプションを使用することによって最大になる。
【0080】
(d)外部からの機械的な力(衝撃、衝突、せん断)と内部からの機械的な力(骨突起から創傷への圧力)の両方に対する保護を強化した被覆材パッド設計。
【0081】
直接的な圧力の悪影響に対する保護は、点圧力をより広い表面積にわたって比例的に低くなる圧力として拡散させる手段を被覆材の構造に組み込むことによって実現されてよい。
【0082】
特に、スペーサ布などの3次元ニットを使用して所望の効果を実現してよい。2つの横編み層を縦糸で結合すると、最初に、被覆材構造が潰れるのに抵抗し、かつ加えられた点力の面積よりも広い面積にわたって圧力が拡散するのを助けることができる。したがって、被覆材が完全に潰れる降伏点は、従来の発泡体被覆材が耐えることのできる力よりも高い力が加えられたときに観測することができる。
【0083】
圧力分布図も、そのような3-D構造が、点力を同じ厚さの発泡体層が拡散できるよりも広い面積にわたって拡散し得ることを示すことができる。
【0084】
せん断に対する保護は、被覆材の各構成要素自体が互いに対してせん断力を加え得るようにすることによって実現されてよい。これによって、皮膚または創傷にせん断力を伝達するものを低減させることができる。
【0085】
(e)以下の特性が所与の材料層によって付与され、これらの層のそれぞれの位置が個々の層の特性の他にさらなる特性を付与する被覆材パッド組立体。以下の説明では、創傷に最も近い側(i)から創傷から最も遠い側(v)までのパッド構成について説明する。
【0086】
i. 創傷接触層を通し柔らかい親水性ポリウレタン発泡体層(浸軟が生じる可能性の低減、心地よさ、湿潤な創傷治癒環境の維持)を介した被覆材パッドへの初期流体取込み量
【0087】
ii. 湿潤状態で働く(臭気抑制)活性炭布の層を介して取り込まれる流体の臭気抑制
【0088】
iii. 流体をこの臭気抑制層を通過させ、流体を液体形態で逆戻りさせることのない吸収剤層に送ること(浸軟が生じる可能性の低減、湿潤な創傷治癒環境の維持)
【0089】
iv. 創傷への圧力伝達に抵抗する3次元編み布による衝撃およびせん断に対する保護(衝撃および衝突に対する保護)
【0090】
v. 半透明構成要素によるパッドの最上面の部分マスキング(装着時の外観の向上、臨床的判断の許容)
【0091】
(ii)と(iii)を組み合わせると、臭気抑制層の流体飽和度を低減させかつ臭気抑制層の効果を最大にする助けになるので、臭気抑制機能が向上する。
【0092】
(iii)、(iv)、および(v)を組み合わせると、流体が確実に水蒸気透過性頂部膜を通して被覆材の高吸収性吸収剤層から蒸発する。
【0093】
(a)~(e)において説明したすべての被覆材パッドについて、パッドは創傷接触層と頂部膜との間に収容される。
【0094】
創傷接触層は、シリコーン接着剤であってよい有孔創傷側接着剤、または取外し時の皮膚の外傷を最小限に抑えるための低粘着性接着剤を備えてよい。創傷接触層は、メッシュ、ネット、または有孔膜であってよい支持材料を含む。創傷接触層は、創傷接触層をパッドの最も低い部分と密に接触させ、したがって流体を貯留せずに創傷から効率的に取り込ませる構造用接着剤をパッド側に備えてもよい。
【0095】
頂部膜は、水分を被覆材から蒸発させるのを可能にする液体不透過性で水蒸気透過性の通気膜である。
【0096】
図1図2a、および図2bはそれぞれ、本開示の実施形態による創傷被覆材の概略断面図、平面図、および斜視図を示す。創傷被覆材100は、概ね積層状に構成され比較的平面状の形態を有する被覆材を形成するいくつかの層を含む。創傷被覆材100は、被覆材の外周に沿って延びる境界領域110と、(平面図において)被覆材の中央に位置する隆起した中央領域112とを含む。境界領域および中央領域の厳密な寸法は、特定の創傷または特定の創傷タイプに形状が適合するように事前に定められてよい。境界領域は不要であってもよい。ここで、境界領域は、創傷部位を囲む患者の皮膚に密封係合するための面積を提供して創傷部位の上方に密封された空洞を形成する一般的な機能を有する。中央領域は、創傷被覆材のさらなる機能要素の位置である。
【0097】
被覆材100は、有孔創傷接触層(101)と頂部膜(102)とを含む。
【0098】
創傷被覆材100のさらなる構成要素には、選択される特定の被覆材サイズに対応する創傷の推奨される寸法を覆うのに適したサイズのポリウレタンハイドロセルラ発泡体層(103)と、(103)と同様の寸法または(103)よりもわずかに小さい寸法を有し、創傷部位の見た目に対する影響を制限しつつ臭気抑制を可能にする活性炭布層(104)と、セルロース繊維と高吸収性吸収剤ポリアクリル酸微粒子とを含み、漏れ防止として働く高吸収性吸収剤材料を重ね合わせるのを可能にするように(103)よりもわずかに大きい寸法を有する高吸収性吸収剤エアレイド材料(105)と、圧力から保護し、一方、有色滲出液が残る高吸収性吸収剤の頂面の部分マスキングを可能にする3次元編みスペーサ布(106)と、を含む。この実施形態では、3次元編みスペーサ布(106)は、臨床医が被覆材を交換する必要があるかどうかを評価するのに使用することができる吸収剤層の縁部が見えるように(平面図において)層(105)よりも小さい寸法を有する。
【0099】
この実施形態では、創傷接触層101は、感圧アクリル接着剤またはシリコーン接着剤(図示せず)のような皮膚に適合する接着剤で被覆された有孔ポリウレタン膜である。代替として、創傷接触層は、任意の適切なポリマー、たとえば、シリコーン、エチル酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエステル、あるいはそれらの組合せから形成されてよい。皮膚に適合する接着剤は、層101の下側、すなわち、患者に接触する側に被覆されてよい。適切な形態において、接着剤は層101の下側に連続層として被覆されてよい。場合によっては、接着剤は、碁盤目パターン、水玉模様パターン、矢筈パターン、メッシュパターン、または他の適切なパターンのようなパターンなどの半連続層として被覆されてよい。代替として、接着剤は、被覆材の境界領域110の周りのみに被覆され、(平面図を上から見たときの)被覆材の中央領域112には被覆されなくてよく、そうすることで、接着剤が創傷自体ではなく創傷の周りの皮膚に接着するようにできる。穿孔は、創傷接触層が液体および気体を透過させるのを可能にする。穿孔は、創傷接触層の上面から下面まで延び流体が創傷接触層を通過するのを可能にする貫通穴である。穿孔は、組織が成長して創傷被覆材に入り込むのを防止し、それにもかかわらず流体が流れるのを可能にするのを助けるのに十分な程度に小さい。穿孔は、たとえば0.025mm~1.2mmのサイズ範囲を有するスリットまたは穴であってよい。層101の上面は、場合によっては、被覆材の組立てを助けるために接着剤で被覆されてよい。適切な形態において、接着剤は感圧接着剤であってよく、かつ適切な形態では、層101の下面で使用されるのと同じ接着剤であってよい。
【0100】
ポリウレタンハイドロセルラ発泡体の吸収剤層103は、創傷接触層101の上方に配置され、創傷接触層の中央領域112の上方を延びる。
【0101】
ハイドロセルラという用語は、吸収性で親水性の重合体である発泡体を指す用語である。発泡体は、30ミクロン~700ミクロンの特定の範囲の気泡サイズを有する。
【0102】
発泡体は、この場合ポリウレタンであり、親水性、形状適合性、弾力性、および多孔性を有し、滲出液などの流体が創傷部位から吸い出されさらに被覆材に吸い込まれるのを可能にする。しかし、発泡体はまた、創傷が乾燥しないように十分に湿潤な創傷治癒環境を維持し、被覆材の下方に釣り合いのとれた湿潤雰囲気を保持する。最適な創傷治癒環境では一般に、創傷の領域があるレベルの水分を有し、しかも過度の流体を含まないことが必要である。
【0103】
被覆材の吸収剤層において使用される吸収剤は任意の適切なポリマー発泡体であってよい。発泡体は、適切な形態において、形状適合性の高い親水性発泡体であり、適切な形態では連続気泡発泡体であり、より適切な形態では、連続気泡と独立気泡の混合物である。
【0104】
本開示の被覆材において使用される吸収剤層は、創傷滲出液を吸収することができる。発泡体層は創傷滲出液を急速に吸収することが望ましい。そのような急速な吸収は、被覆材と創傷との間の滲出液の望ましくない貯留を防止する。
【0105】
ポリマー発泡体層が流体を吸収し保持する能力は、発泡体気泡のサイズ、発泡体の多孔度、および発泡体層の厚さにある程度依存する。本開示の被覆材実施形態の適切な連続気泡発泡体は、気泡サイズが30ミクロン~700ミクロンであり、適切な形態において気泡サイズは50ミクロン~500ミクロンである。本開示の被覆材の適切な連続気泡親水性発泡体は、気泡の総膜面積の20%~70%、好ましくは30%~60%を膜開口部として有する。そのような連続気泡発泡体は、流体および細胞残屑を発泡体内に移送するのを可能にする。
【0106】
適切な発泡体は、ポリウレタン、カルボキシル化ブタジエンスチレンゴム、ポリアクリル酸塩、または同様の発泡体であってよい。そのような発泡体は、基本的に親水性材料から作られてよく、あるいはたとえば界面活性剤によって親水性にするように処理されてよい。滲出液が急速に凝固する可能性が低いことが判明しているのでそれ自体親水性を有するポリマーで作られた発泡体を使用することが好ましい。好ましい親水性ポリマー発泡体は、親水性ポリウレタン、特に架橋親水性ポリウレタンで作られた発泡体である。好ましい発泡体は、親水性イソシアネートを末端に有するポリエーテルプレポリマーを水に反応させることによって作られてよい。この種の適切な親水性ポリウレタン発泡体には、Hypol(商標)発泡体が含まれる。Hypol(商標)発泡体は、W. R. Grace and Coによって市販されているHypol親水性プレポリマーから作られてよく、連続気泡と独立気泡の混合物を有する親水性気泡発泡体である。Hypol(商標)ベースの発泡体がDow Chemicalsからも市販されている。他の適切な発泡体が、参照により本明細書に組み込まれている特許文献14において前述の吸収剤層に関連して記載されており、かつ同じく参照により本明細書に組み込まれている特許文献15に記載されている。
【0107】
本開示の被覆材の吸収剤パッドにそのような親水性ポリマー発泡体を使用すると、生じた滲出液が吸収され創傷表面から除去されたときでも創傷を湿潤状態に維持するのを可能にすることができる。
【0108】
発泡体層のさらなる機能は、連続気泡を介して創傷領域から余分な流体を吸い出すことである。PU発泡体自体が液体を吸収することができ、ポリマー全体が膨張することを留意されたい。
【0109】
活性炭布の臭気除去層104は、発泡体層103の上方に設けられる。この実施形態では、活性炭層は、発泡体層とほぼ同じ長さおよび深さを有し、したがって、発泡体層の上方に位置してほぼ同じ面積を覆う。活性炭層は、たとえばChemviron Carbonから市販されているZorflex(登録商標)布で作られてよい。適切な代替材料がC-TeX(登録商標)という商標の下でMASTによって製造されている。
【0110】
臭気除去層の機能は、創傷から生じた臭気が被覆材から漏れ出すのを防止または軽減する助けになることである。
【0111】
この例では、臭気除去層が、隣接する層に結合されない非結合層として設けられ、代替として、各層が接着剤または縫製等によって結合されてもよいことに留意されたい。
【0112】
吸収剤材料層105は臭気除去層104の上方に設けられる。吸収剤層105は、層104全体の上方を延びるとともに、臭気除去層104と発泡体層103の両方の側部の上方を延びる。吸収剤材料は、発泡体、または織布、不織布、もしくは編生地の天然材料もしくは合成材料であってよく、場合によっては、高吸収性吸収剤材料であるか、高吸収性吸収剤材料を含んでよい。適切な材料は、セルロース繊維と、高吸収性吸収剤ポリアクリル酸微粒子または繊維、たとえばNovathinから市販されている高吸収性吸収剤コアとを含むエアレイド材料であってよい。代替として、吸収剤層105は、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg 114-224-4、Chem-Posite(商標)11C-450、CMC(たとえば、Medline Maxsorb with Alginate)、アルギン酸塩(たとえばAdvanced Medical Solutionsによって市販されているActivHeal Alginate)および/またはポリアクリル酸繊維(たとえば、Technical Absorbent Ltdによって市販されているSAFTM)から製造されてよい。
【0113】
層105は、創傷部位から除去された流体、特に液体用の容器を形成し、そのような流体をカバー層102の方へ吸い出す。吸収剤層の材料も、創傷被覆材に収集された液体が被覆材構造内に流入した後で自由に流れるのを防止する。吸収剤層105は、ウィッキング動作を介して吸収剤層全体にわたって流体を分散させる助けにもなり、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収剤層全体にわたって貯留され、すなわち、液体中を移動し拘束される。これによって吸収剤層の各領域における凝集が防止される。吸収剤材料の容量は、創傷が急性であるかそれとも慢性であるかにかかわらず、被覆材の所定の寿命の間創傷の滲出液流量を管理するのに十分であるべきである。この場合も、適切な形態では、層105を発泡体層と組み合わせて、創傷を完全に乾燥させないようにすべきである。完全な乾燥は、たとえば、高吸収性吸収剤材料が発泡体層を乾燥させ、その後創傷領域を乾燥させる場合に起こり得る。
【0114】
適切な形態において、吸収剤層は、層全体に分散される乾燥した粒子の形をした高吸収性吸収剤材料を有する不織セルロース繊維層である。セルロース繊維を使用すると、高速ウィッキング要素が導入され、被覆材によって取り込まれた液体を迅速にかつ均等に分散させる助けになる。複数の撚り糸状繊維を並置すると、繊維状パッドに強力な毛管作用が働き、液体を分散させる助けになる。このようにして、高吸収性吸収剤材料に液体が効率的に供給される。さらに、吸収剤層のすべての領域に液体が供給される。
【0115】
吸収剤層105は、適切な形態において、層が圧縮下にあるとき(たとえば、被覆材領域が押されているかまたはもたれかかられている場合)でも層から液体が放出されるのを防止するような高浸透ポテンシャルを有する。しかし、液体は、蒸発または場合によっては吸上げによる拡散によって吸収剤層から出てより遠い層に移ることができる。
【0116】
吸収剤材料層105は、任意の適切な寸法を有してよい。適切な形態において、吸収剤層が吸収剤層自体と創傷接触層との間の各層よりも大きいサイズに形作られる場合、吸収剤層を任意の中間層の縁部上に折り畳んで、被覆材に流入するあらゆる流体が頂部膜または接着剤創傷接触層に到達する前に吸収剤層に到達するようにエンクロージャとして働かせてよい。このことは被覆材から流体の漏れが生じるのを防止する助けになる。代替として、吸収剤材料のリング状(環状またはドーナツ状)部分またはその他の適切な境界状部分を、下方の層を囲み、かつ吸収剤層の上部の縁部と同じ機能を実現するように、吸収剤層とは別個に被覆材に付加してよい。
【0117】
場合によっては、本開示のある実施形態によれば、吸収剤層は、合成短繊維および/または複合短繊維および/または天然短繊維および/または高吸収性吸収剤繊維を含んでよい。
吸収剤層中の繊維同士は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技法の組合せまたはその他の固定機構によって互いに固定されてよい。適切な形態において、吸収剤層は、高吸収性吸収剤粒子を吸収剤層内に拘束するように働く繊維によって形成される。これによって、高吸収性吸収剤粒子が吸収剤層の外部および下方の創傷床の方へ移動することはなくなる。
【0118】
適切な形態において、繊維は撚り糸状であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどから作られる。適切な形態において、乾燥した吸収剤粒子は、使用できるように吸収剤層全体にわたって分散される。適切な形態において、吸収剤層は、セルロース繊維および複数の高吸収性吸収剤粒子のパッドを備える。適切な形態において、吸収剤層は、無作為に向きを定められたセルロース繊維の不織層である。
【0119】
高吸収性吸収剤粒子/繊維は、たとえばポリアクリル酸ナトリウムまたはカルボメトキシセルロース材料など、あるいは材料自体の重量の数倍分の液体を吸収することのできる任意の材料であってよい。適切な形態において、材料は、材料自体の重量の5倍よりも多くの0.9% W/W生理的食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、材料は、材料自体の重量の15倍よりも多い0.9% W/W生理的食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、材料は、材料自体の重量の20倍よりも多い0.9% W/W生理的食塩水などを吸収することができる。適切な形態において、材料は、材料自体の重量の30倍よりも多い0.9% W/W生理的食塩水などを吸収することができる。
【0120】
適切な形態において、高吸収性吸収剤の粒子は、親水性が高く、流体が吸収剤層に流入するときに流体を取り込み、接触時に膨張する。被覆材コア内に均衡が確立され、それによって、水分が高吸収性吸収剤から頂部膜に移動し、流体蒸気が発散し始める。被覆材内に水分勾配を確立して創傷床から流体を連続的に除去してよい。
【0121】
遮蔽層106は、連続気泡発泡体(たとえば、Smith & Nephewによって市販されているAlleyvn(商標)、Coloplastによって市販されているBiatain発泡体またはAdvanced Medical DevicesのActivHeal発泡体)、編みスペーサ布または織りスペーサ布(たとえば、Baltex 7970横編みポリエステルまたはBaltex XDスペーサ布またはSurgical MeshのPolyesterフェルトもしくはPolyesterメッシュ)、あるいは不織布(たとえば、FiberwebのS-texまたはSecuron)を含んでよい3次元構造を有する層である。代替として、遮蔽層は、たとえば切り窓または穿孔を有する完全に不透明なポリマー膜であってよい(たとえば、SNEFのH514またはH518ブルーネット)。ここで、層106は、肌目84/144ポリエステルである頂部層(すなわち、使用時に創傷から離れた位置に配置される層)と、100デニールの平坦なポリエステルである底部層(すなわち、使用時に創傷に近接する層)と、編みポリエステルビスコース、セルロース、または同様の単繊維によって画定される領域である、上記の2つの層に挟まれた第3の層とを含むポリエステルで作られる。もちろん、多重撚り糸代替例を含む他の材料および他の線密度の繊維を使用してよい。遮蔽層106は、特許文献16において透過層に関連して記載された(図23図27)材料に類似しているかまたはこの材料と同一であってよい。
【0122】
層106は、任意の気体または蒸気を頂部膜102に透過させるのを可能にし、したがって透過層とみなされてよい。
【0123】
適切な形態において、層106は、部分的なマスキング層として作用することおよび力分散(衝撃保護)層として作用することを含む1つまたは複数のさらなる機能を実行する。
【0124】
図11(b)に示すように互いにある程度ずらして配設された重ね合わされた有孔布によって、創傷滲出液、血液、または創傷から放出されたその他の物質の部分マスキングを実現することができる。(b)に示すように、遮蔽層自体は、上述の3-D編み材料のような3つの副層から形成される。有孔頂部層および有孔底部層は、蒸気および気体の移送を可能にし、中央編み層内の気体経路からずれている。したがって、蒸気および気体は遮蔽層を通過することができるが、有色滲出液は見えず、また遮蔽層を通過することもできない。
【0125】
代替として、図11(a)に示すように、有孔カバー層1102が有孔遮蔽層1106の上方に設けられ、それによって、水蒸気および気体が被覆材から透過して出ていくことが可能になり、しかも滲出液に対して訓練された臨床医にしか見えないように十分なマスキングが施される。
【0126】
より詳細には、膜が通気性である(蒸気を透過させることができる)とき、色が透過する可能性が高いことが知られている。通気性膜が下部層をマスキングする有色顔料を含む場合でも、滲出液流体が膜に接触するときに、滲出液中の有色要素を膜に接触させ、膜からの色知覚を変化させ、ユーザに見えるようにすることができる。これによって、流体を層を透過させて頂部膜の方へ送ることが可能になり、一方、有色固形物または有色液体は下方の吸収剤層に拘束されたままになる。滲出液の色は主として、大きい分子である傾向がある組織または血液細胞からのタンパク質および生物学的分解産物によるものである。
【0127】
遮蔽層106の別の機能は、圧力分散および衝撃保護のための機能であってよい。たとえば、患者が誤って創傷領域をぶつけるか、創傷領域にもたれかかる、あるいは別の原因によって創傷を覆う被覆材に圧力が加えられた場合。適切な形態において、遮蔽層は、被覆材の他の層よりも、圧力が加えられている場所のより近くに設けられる。
【0128】
遮蔽層106は圧力拡散構成要素として働き、一方の側で圧力を受け(場合によっては点力)、その圧力をより広い面積にわたって拡散させ、したがって、遮蔽層の他方の側で受け取られる相対圧力を低減させる。したがって、患者によって創傷部位で感じられる圧力のレベルが低下する。
【0129】
良好な圧力分散要素であることが分かっている遮蔽層の形態は、整列されていない繊維または撚り糸、すなわち、互いに対してそれぞれに異なる角度に配置された繊維を有する層、たとえばBaltex 7970の編みスペーサ布である。
【0130】
吸収剤層105は、圧力拡散構成要素として働くこともできる。遮蔽層106と吸収剤層105の組合せは、特に適切な圧力分散特性をもたらすことが分かっている。しかし、1つの圧力拡散構成要素だけで十分である場合がある。
【0131】
概して、比較的変形不能な材料は、点圧力を拡散させるのにより適している。しかし、このことは、被覆材が非平面状の身体部分に付着するための変形能力に関する要件と兼ね合わせを図るべきである。
【0132】
突起骨からの圧力のような患者の身体内部からの圧力が生じると、遮蔽層は、被覆材の遠位部の方に位置する場合、その圧力を拡散させるには多少非効率的であることがある。しかし、(たとえば、患者が地面または硬い椅子のような何か硬い物の上に横になっている場合)患者の皮膚の方へ作用する任意の等しくかつ逆の反力が、遮蔽層106および吸収剤層105によって拡散される。この圧力拡散応答は、患者および被覆材が押し付けられている表面がもしあればその表面の硬さにある程度依存する。
【0133】
これらの層の圧力拡散能力は、より低速で一定の圧力ならびに急速な点力に対して有用であることもある。
【0134】
頂部膜102は、被覆材の下部層を覆い、創傷接触層と頂部膜との間の各層を密封する助けになるカバー層である。頂部膜102は、この場合、BASFによって製造されているポリウレタン、Elastollan(商標)SP9109の層である。頂部膜は、任意の適切な接着剤によって被覆されてよい。適切な形態において、接着剤は感圧接着剤、たとえばアクリル接着剤またはシリコーン接着剤である。
【0135】
したがって、頂部膜102は、被覆材が通気性を維持し、すなわち、被覆材に吸収された流体の一部を被覆材の外径面を介して蒸発させる助けになる。このようにして、滲出液のある水分含有量を被覆材から放出し、残りの滲出液の体積を低減させ、被覆材が満杯になるまでの時間を延ばすことができる。さらに、創傷接触層101および頂部カバー102は、被覆材の境界領域110が通気性を維持し、すなわち、患者の通常の皮膚発汗を被覆材を通して蒸発させるのを助け、それによって皮膚浸軟を防止するかまたは最低限に抑える助けになる。
【0136】
本開示の被覆材の外側層が存在するとき、外側層は形状適合性を有する連続的な膜であってよい。水蒸気を透過させ形状適合性を有する連続的な膜からなる被覆材の外側層を使用して、被覆材の下方の創傷領域から水分が失われるのを規制し、かつ被覆材の外面上の細菌が創傷領域まで貫通できないように細菌に対するバリア作用を働かせることもできる。形状適合性を有する連続的な膜として適切な膜は、相対湿度差が100%~10%で37.5℃のときに水蒸気透過率が少なくとも300グラム/平方メートル/24時であり、適切な形態では300グラム/平方メートル/24時~5000グラム/平方メートル/24時であり、好ましくは500グラム/平方メートル/24時~2000グラム/平方メートル/24時である。連続的な膜のそのような水蒸気透過率において、被覆材の下方の創傷は、創傷の周囲の皮膚に浸軟を生じさせずに湿潤条件の下で治癒することができる。頂部膜102上に接着剤を使用しても水蒸気透過率を低下させないようにするには、親水性水分散性接着剤、たとえば親水性アクリル接着剤を使用すればよいが、他の適切な接着剤を使用してもよい。適切な形態では、膜の表面に、膜の面積の一部に接着剤が含まれないようなパターンの形に接着剤を塗布してもよい。たとえば、点領域に接着剤が存在せず、膜の面積の5%~95%、適切な形態では10%~80%、より適切な形態では30%~70%、より適切な形態では40%~70%、より適切な形態では40%~60%、より適切な形態では40%~50%に接着剤が含まれない水玉模様が使用される。当業者には、任意の適切なパターンの接着剤層を使用して、接着剤によって全体が被覆されるわけではなく、したがって最高の水蒸気透過率を実現する頂部膜102を形成し得ることが明らかであろう。カバー層の他の適切な材料が形状適合性を有する水蒸気透過外側層に関連して特許文献14に記載されている。
【0137】
さらに、頂部膜は、創傷被覆材から放出されるあらゆる残りの臭気に対するさらなるバリアとして働くことができる。その理由は、頂部膜が、所定の最大サイズの分子を通過させる貫通穴を含んでよいからである。
【0138】
図2aおよび図2bは、各層がパッド縁部の取付け角を小さくし、かつ被覆材のある程度独立に動く小区分を形成するように形作られる、身体の動きに対する適合性を向上させるのに有用な被覆材の可能な形状を示す。創傷接触層(101)および頂部膜(102)を含む被覆材境界は、必要に応じて境界同士を重ね合わせるのを可能にすることによって貼付け時の形状適合性をさらに向上させるように設けられるスリットを備えてもよい。
【0139】
図1を再び参照すると、被覆材の断面が、概ね積層状の構造を形成するように互いに隣接させて積み重ねられた様々な層を含むことが分かる。被覆材は水蒸気透過性を有することが好ましい。図1に示す各層は、様々な幅および寸法を有する。ただし、他の構成も可能である。
【0140】
境界領域110において、頂部膜102は創傷接触層101に当接する。層101と層102の間の境界領域110には、その領域内の各層を結合するように水蒸気透過性接着剤層が設けられる(図示せず)。水蒸気透過性を有する適切な接着剤には、たとえば特許文献17に記載されたような様々なアクリル酸エステルコポリマーおよびポリビニルエーテル感圧接着剤が含まれる。適切な形態において、接着剤は、たとえば特許文献18に記載されたようなアクリル酸を含むアクリル酸エステルのコポリマーであってよい。
【0141】
各構成要素の寸法は、被覆材縁部の取付け角を最小限に抑えるように構成される。このことは、被覆材の厚さ全体における被覆材の外形の変化を低減させることによって、布帛に対する被覆材の擦れを軽減するとともに、布帛に対する被覆材の絡まりを軽減する助けになる。
【0142】
使用時には、上述のような創傷被覆材を創傷接触層101の表面が創傷部位に面するように患者の創傷部位に貼り付ける。あらゆる創傷滲出液、血液、またはその他の創傷流体が、創傷接触層および創傷接触層の上方の連続層を介して被覆材に流入する。流体は発泡体層および活性炭層を透過し、次いで吸収剤層に到達し、好ましくはその点で、この液体はそれ以上動かなくなり、吸収剤層によって保持される。一方、気体および水蒸気は、遮蔽層および/または頂部膜を介してさらに透過することができる。
【0143】
図3は、創傷モデルで使用された後の、既存の被覆材の外観と本開示の被覆材の外観との差を示す。写真(a)および写真(b)は周知の被覆材である。写真(c)は本開示による創傷被覆材である。参照符号114によって識別されている領域は、遮蔽層106によって覆われていない中央領域112の領域である。したがって、吸収剤層105はこの領域では頂部膜102のすぐ隣に位置する。遮蔽層106は部分マスキング層として働くので、領域114は、被覆材全体にわたる創傷滲出液の拡散を評価するために臨床医または訓練を受けたその他のユーザによって使用されてよい。この評価を補助することとして、滲出液がより中央に近い領域(たとえば、遮蔽層106によって覆われる領域)に達した後に半径方向外側領域114に到達するように、被覆材が創傷の上方の概ね中央に配置される。適切な形態において、臨床医は、たとえば、領域114のうちで滲出液で覆われている領域が50%未満である場合は被覆材を交換する必要がなく、領域114のうちの約50%が覆われている状態は、被覆材の交換を検討する時期を示し、領域114のうちの50%よりも多くが滲出液で覆われている場合は被覆材を交換する必要があることを指示する指針として領域114を使用して創傷滲出液の拡散を評価するように訓練されてよい。もちろん、それに加えてまたはその代わりに、部分マスキング層として働く遮蔽層106で覆われた中央領域112の領域が、訓練された臨床医によって滲出液の拡散を評価するのに使用されてもよい。さらに、被覆材は、たとえば、滲出液の拡散の評価とは無関係に、被覆材の推奨される使用期限、たとえば7日を含む、使用のための様々な他の指示を有してよい。
【0144】
図4は、既存の被覆材と比較した、湿潤時の本開示(設計A)の臭気抑制性能を示す。この測定として、臭気化合物の溶液を含む被覆材サンプルをバイアル内において37℃で24時間にわたって培養した。その後、バイアルのヘッドスペースに残っている臭気化合物の濃度をヘッドスペースガスクロマトグラフィによって測定した。臭気低減効率を培養した臭気化合物のみの正の対照と比較した残留化合物率として測定した。4つの異なる化合物における性能を図4に示す単一の評価基準で照合した。(図1の構成を有する)本開示による被覆材の臭気除去性能が非常に高く、ヘッドスペースに残る臭気は5%未満であることが分かる。これに対して、発泡体被覆材は性能がかなり不十分であり、より多くの臭気が残る。
【0145】
図5は、チューブ上に配置された様々な形状の被覆材の性能の比較を示す。右側に示されている(図1の構成を有する)本開示による被覆材は、2.5時間後もチューブに付着したままであり、一方、左側に示されている従来の被覆材は同じく2.5時間後にチューブから持ち上がったことが分かる。
【0146】
本開示の創傷被覆材は任意の適切な形状または形態またはサイズを有してよい。被覆材の全体寸法は、たとえば直径が160mmであってよい。ただし、任意の全体サイズを使用してよく、サイズは特定の創傷サイズと一致するように決定されてよい。
【0147】
さらに、非平面状の(身体の)形状による被覆材の改善された形状適合性が、発泡体によって加えられる力よりも強い力によってのみ最初の形状に戻すことのできる材料と発泡体を組み合わせることによって部分的に実現され得ることに留意されたい。この第2の材料の役割は、被覆材の貼付け時に変形した後弛緩しようとする発泡体材料によって加えられる力にもかかわらず、被覆材の貼付け時に付与された形状のままでいることである。たとえば、最初に加えられた力によって繊維が破壊または変位されたエアレイド材料または不織材料は、ハイドロセルラ発泡体層(2mm~4mm)の圧力に対して十分に抵抗することができる。
【0148】
本発明者は、発泡体のみから形成された被覆材がその自然な位置(上述の発泡体層の場合は平面状の位置または平坦な位置)に戻る傾向があることを認識した。発泡体は、どのように切断され製造されたかについての「記憶」を有する。したがって、発泡体被覆材を接着剤によって平坦ではない身体部分に貼り付けるとき、接着剤は、発泡体がその元の形状に戻る力に対抗するのに十分な強度を有さなければならない。
【0149】
図6に示すように、発泡体層と変形可能層、たとえば吸収剤層105と同様の層とを含む形成された形状(サンプル6b)の保持に関する被覆材の性能が、発泡体のみから形成された被覆材(サンプル6a)と比較してかなり向上したことが示されている。
【0150】
すなわち、サンプル6aは、「創傷に面する」側に接着剤を有する創傷接触層と、(層103などの)発泡体層と、(頂部膜102などの)カバー層とを含んでいた。サンプル6bは、「創傷に面する」側に接着剤を有する創傷接触層と、(層103などの)発泡体層と、(層105などの)吸収剤層と、(層106などの)遮蔽層と、(頂部膜102などの)カバー層とを含んでいた。
【0151】
図6に示す2つのサンプルの最初の形状は平面状である。各サンプルを(時間0に示されているように)顕著に変形した形状になるように圧縮したときに、各サンプルの形状を経時的に監視し、創傷接触側の接着剤の力に打ち勝つサンプルによるあらゆる反応的な動きを調べた。5分後に、サンプル6aはその最初の平面形状に戻った。サンプル6bは、5分後にその最初の形状に向かってある程度、すなわち、最初の変形形状と平面形態との間で約50%戻った。24時間後、サンプル6bは非平面状のままであった。
【0152】
吸収剤層または遮蔽層のような本開示の被覆材の各構成要素は、層内の構成要素がある程度変位または破壊されることによって、形状記憶なしに塑性変形することができると考えられる。たとえば、遮蔽層内の繊維のいくつかは(被覆材に全体的な損傷を与えずに)破壊され得る。この変位または破壊は長期的または永久的である。したがって、被覆材の発泡体層がその元の形状に戻る力は、他の層内の変位または破壊される構成要素による反作用を受ける。したがって、発泡体層の力が他の層を平面状位置に戻す力よりも弱いかぎり、被覆材はその形成された(非平面)形状を保持する。
【0153】
図7は、部分領域701~701が互いに対してそれぞれに異なる角度に貼り付けられ、かつ互いに独立に動くことができる、人間の患者に貼り付けられた被覆材の例を示す。図示のように、被覆材は患者の首の付け根および肩の領域に貼り付けられている。この領域では、各ローブまたは部分領域を互いに異なる角度に貼り付ける必要がある。ここでは部分領域同士の間に(ミシン目またはその他の折り目のような)特定の境界線がないことに留意されたい。
【0154】
被覆材の材料の形状適合性だけでなく被覆材の個別の部分領域も患者の平坦でない表面に被覆材を付着した状態に維持する助けになることが分かる。
【0155】
図8は、部分領域を有する創傷被覆材を、方形の外形を有する比較例の周知の被覆材と比較した試験を示す。被覆材の持上り、すなわち、元の平坦な平面形状に戻る動きに関して、25人の健常な志願者を7日間にわたって監視した。すなわち、25人の志願者は、本開示による1つの創傷被覆材および1つの矩形被覆材を装着した。各被覆材は各志願者の大腿部に貼り付けられた。各志願者について、被覆材を装着してから1日後、3日後、および7日後に、志願者の皮膚から引き離された被覆材境界の持上りが存在するかどうかを判定した。グラフは、何らかの持上りを示した被覆材の総数の割合を示す。
【0156】
図8を見ると、(図2aおよび図2bのような)4つのローブまたは部分領域を含む形状を有する被覆材は、方形の被覆材よりも良好な性能を示したことが分かる。志願者の皮膚から持ち上がった何らかの徴候を示した部分領域を有する被覆材の割合は、装着してから7日後に平均で全被覆材の50%を上回る程度であった。方形被覆材の場合、志願者の皮膚から持ち上がった徴候を示した被覆材の割合は、装着してから7日後に平均で全被覆材の70%であった。
【0157】
被覆材の形状は、(平面図において)被覆材の中心点に対して回転対称性を有する。この例では、被覆材は4つのローブを有する。中央領域112の形状は境界領域110の形状と一致し、したがって、境界領域の幅は被覆材の全周でほぼ等しい。適切な形態において、境界は、約12.5mmから約29mmの間であってよい。より適切な形態では、境界は約25mmである。もちろん、境界サイズは被覆材の全寸法によって決まる。3つ、5つ、6つ、7つ、8つなどのような他の数のローブを使用してよい。被覆材形状が等方性を有することは、ユーザが被覆材を創傷に貼り付ける前に被覆材を特定の向きに定める必要がないという利点をもたらす。この形状は、被覆材を身体の様々な部分に適合可能にするのも可能にする。
【0158】
適切な形態において、4つの部分領域(ローブ)を有する被覆材形状は、境界領域に対する最大のパッド面積を実現し、しかも方形被覆材と比較して可撓性を向上させる。
【0159】
本発明者はまた、被覆材に加えられる力の散逸に関して様々な被覆材に試験を実施した。図9は、異なる力が加えられた被覆材の圧縮の程度(割合)を示す。加えられたほとんどすべての力について(測定値が目立った差を示さない0kgf~3kgf(重量キログラム)および40kgf以上のスケールの極値を除く)、被覆材の圧縮度は、層103に関して説明した発泡体材料のような、厚さが4mmの発泡体のみから形成された被覆材(曲線a)の方が、厚さが2mmであり層105に関して説明した材料などの繊維状不織材料を含む発泡体層を含む被覆材(曲線b)および厚さが2mmであり層105に関して説明した材料のような繊維状不織材料を含む発泡体層と層106に関して説明した材料などの3D編み材料の層とを含む被覆材(曲線c)よりも高いことが分かる。図9のグラフを見ると分かるように、3D編み材料の層を含む被覆材(曲線c)は、3kgから40kgの間の力の範囲にわたって被覆材の圧縮度が最低であった。
【0160】
このことから、繊維状不織材料および3D編み材料は、力を散逸させ被覆材の圧縮を防止することによって加えられる力に対抗する助けになると結論付けることができる。
【0161】
図10は、0.8cmプローブの点圧力から被覆材に圧力が加えられたときに様々な被覆材によって圧力が伝達される面積を示す。圧力が伝達される面積を圧力読取りマットを使用して測定した。この機器は、Tekscanから市販されており、かなり薄い2枚のプラスチックシートの間に配置された薄い圧力センサのアレイを含む。得られるマットは、形状適合性を有し、圧力読取り値をアレイから1つのハードウェア(I-スキャンハンドル)を通して、I-スキャンソフトウェアを備えるコンピュータに送る。得られる測定値は、たとえば等高線図、値表、マットの特定の領域に関する最大圧力読取り値、全試験領域にわたって読み取られた平均圧力、またはマットによって圧力が検知された接触面積として表されてよい。3D編み材料の層を含む被覆材(図9の曲線cに対応する使用された被覆材と同一)(コラム1)、不織材料で作られた被覆材(図9の曲線bに対応する使用された被覆材と同一)(コラム2)、および発泡体被覆材(図9の曲線aに対応する使用された被覆材と同一)(コラム3)に関して圧力伝達を測定した。
【0162】
図13は、上記で図1に関して説明したような被覆材(コラムA)を含む4つの異なる創傷被覆材に対して本発明者によって実施された試験を示す。コラムB、コラムC、およびコラムDは、他の発泡体被覆材に関する結果を示す。グラフは、被覆材の上面(非創傷接触側)に、735mmHgの圧力が加えられるまでプローブによって3m/分の速度で衝撃を与えたときに被覆材の下方で測定された(上述のようにTekscan圧力読取りマットおよびソフトウェアによって測定された)平均圧力を示す。直径が6.5mmのゴムボールが取り付けられた直径が10mmの円筒形プローブを、圧力を加える領域とした。ゴムボールが被覆材の頂部に接触した面積はゴム球の総面積の3%、すなわち4cmであると推定される。これを直径が2.25cmの円筒形プローブと比較することができる。伝達される圧力および圧力が伝達された面積のまとめを以下のTable 1(表1)に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
試験すべき被覆材領域は、直径が10mmの円筒形プローブを使用するときには、プローブサイズが試験サンプル以下であり、かつ圧力がサンプル内で効率的に再分散されるように、20cm以上であることが好ましい。
【0165】
適切な形態において、圧力拡散層は、圧力が伝達される面積を、最初に圧力を加える面積の少なくとも25%分増大させ、より適切な形態では、最初に圧力を加える面積の少なくとも50%分増大させる。
【0166】
本発明者は、各材料の組合せが、複合材料として、圧力が伝達される面積を、最初に圧力を加える面積の少なくとも50%分増大させ、適切な形態では少なくとも100%分増大させ、より適切な形態では、最初に圧力を加える面積の少なくとも200%分増大させ得ることを見出した。圧力が伝達される面積は200%増大する。
【0167】
個々の構成要素は、736mmHgの圧力が様々な材料に静的に加えられる静止試験によって圧力再分散に関して評価されてもよい。得られる値を以下の表に示す。
【0168】
【表2】
【0169】
圧力散逸に関する上述の試験は、3Dスペーサ層などの遮蔽層と場合によっては吸収剤層とを含む被覆材が、加えられた圧力の拡散に関する性能が向上しており、したがって、周知の被覆材と比較して、たとえば、誤って創傷部位をぶつけた場合に優れた性能を発揮するはずであることを示している。
【0170】
本発明者は、被覆材のマスキング特性に関して様々な被覆材に試験を実施した。マスクの色の能力は、たとえば、特定の波長における光放射の吸収率の低下を測定することによって算出されてよい。図14は、3つの異なるサンプルの様々な異なる波長での吸収率を示す。この試験では、積分球を有し、走査範囲が340nm~800nmであり、帯域幅が5nmで走査速度が1000nm/秒のUV-Vis分光光度計Jascoを利用した。黒色背景と示されているデータは、滲出液の色の極値(滲出液が有し得る最大の色)、すなわち、最高放射吸収レベルとサンプルから反射された放射の最小量とを示す。白色背景についてのデータは、全マスキングの上限、一般には最低放射吸収レベルと最高放射レベルとを示す。サンプル1は、黒色背景の上方に配置された着色ポリマー膜であり、(創傷滲出液を示す)黒色背景を十分に満足いくようにマスキングしないと判定された。サンプル2は、黒色背景の上方に配置された3次元スペーサ布(Baltex 3D)のシートであり、黒色背景を適切にマスキングすると判定された。サンプル3は、黒色背景の上方に配置された緑色に染められた不織材料のシートであり、黒色背景を完全にマスキングした。
【0171】
本発明者は、あらゆる創傷滲出液が濃い黄色、赤色、および/または茶色を有し得ることに留意した。したがって、これらの色を適切にマスキングするには、マスキング層が600nmよりも低い光波長を遮蔽する必要がある。
【0172】
特定の波長における光放射の吸収率の低下の測定は、以下の計算によって行われてよい。
低下率=(Abachground-Asample placed on background)/(Abackground)x100
上式において、Aは特定の波長における光放射の吸収率である。
【0173】
この数式を使用し、波長が460nmの光を使用して、吸収率低下率を以下のTable 3(表3)に示すように算出した。
【0174】
【表3】
【0175】
光吸収率を約50%以上低下させる材料が創傷滲出液の部分的なマスキングまたは完全なマスキングを十分に実現する(本発明者の判定による)ことが判明した。もちろん、完全なマスキング要素には、臨床医がマスキング要素、たとえば被覆材全体を完全に覆うわけではないマスキング要素の下方の被覆材中の創傷滲出液の拡散状態を判定するための手段が必要であることが好ましい。代替として、部分的マスキング要素では、臨床医は追加の手段なしに下方の被覆材中の滲出液の拡散状態を判定することが可能であってよい。
【0176】
親水性材料は発色団保有種をより容易に透過させるので、マスキング材料が(たとえば滲出液で)濡れることもマスキング要素の性能に影響を与えることが理解されよう。したがって、吸収率低下率は濡れた材料についても試験すべきである。
【0177】
本発明者は、CIE L*a*b*値(色空間を表すための周知の3次元モデル)を測定することによって、上述のサンプル1、サンプル2、またはサンプル3をマスキング特性についても試験した。分析では、波長範囲には380nm~780nm、stard2(度)が観測され、光源にはD65、調色にはJIS Z8701-1999を使用してJascoソフトウェアを使用した。
【0178】
以下のTable 4(表4)は、サンプル1、サンプル2、およびサンプル3を黒色背景の上方にそれぞれ配置したときに見られたL*a*b値を示す。黒色背景のみおよび白色背景についての結果も示されている。
【0179】
【表4】
【0180】
概して、L*値を増大させるサンプルは、暗い色をマスキングする大きな要因である、基準面よりも明るい色調を有する。上記の値から、適切な部分マスキング材料ではL*値が50を超え、あるいはより適切な形態では70を超える。
【0181】
しかし、たとえば着色ポリマー膜のような完全に不透明なマスキング層は、マスキングすべき領域をより暗い色調で完全に覆うことができ、その場合、L*の測定値は無関係である。
【0182】
この場合も、上述の理由で濡れた材料に関してもこれらの値を検討すべきである。
【0183】
さらに、本開示の被覆材は、層同士の間のせん断応力が被覆材に損傷を与えるのを防止するように構成されてよい。これは、各層が概して、頂部膜102および創傷接触層101が境界領域110において付着するのを除いて互いに付着していないからである。したがって、摩擦またはせん断運動による他のエネルギーが生じた場合、そのエネルギーは患者に達する前に各層によって散逸させられる。
【0184】
創傷被覆材の創傷に面する表面は、剥離プロテクタ(図示せず)、たとえばシリコン被覆紙を備えてよい。このプロテクタは、患者に貼り付けられる前に被覆材の創傷接触側を覆い、使用時に剥離されてよい。
【0185】
上述のような詳細構成の様々な修正形態が可能である。たとえば、本開示による被覆材は、上記に図1に関して説明したような特定の各層を必要としない。被覆材に含まれる層は1つだけであってもあるいは上述の各層の組合せであってもよい。その代わりにまたはそれに加えて、上述の各層の材料は、単一の層によって各層の機能を実行するように単一の層または材料のシートとして組み合わされてもよい。
【0186】
上記に指摘したように、上述の各層は、創傷被覆材に1つまたは複数の機能を付与するのに使用されてよい。したがって、各々の層の材料は、各材料が所与の機能を実現するように別個に使用されてもあるいは任意の組合せで使用されてもよい。
【0187】
上述の創傷接触層は任意の層である。創傷接触層は、使用される場合、ポリエチレン(もしくは上述のようなポリウレタン)またはその他の適切なポリマーのような任意の適切な材料であってよく、流体を透過させるようにたとえばホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセス、または他の何らかの方法によって創傷接触層に穿孔を設けてよい。
【0188】
上述の被覆材は境界領域と中央領域とを有するように記載されているが、このことは必須ではない。被覆材には、患者の皮膚への取付けを可能にする接着剤層を設けなくてもよい。その代わりに、接着テープまたは包帯のような、創傷の上方の正しい位置への被覆材の配置を可能にする別の手段を設けてよい。
【0189】
様々な層の相対的な幅はすべて、図示のような幅と同じであっても異なっていてもよい。
【0190】
被覆材パッド組立体では、場合によっては、それぞれに異なる吸収率を有する2つの層の間で臭気が抑制されるように各層が構成されてもよい。臭気抑制層は、チャコール布(編布、織布、フェルト布、不織布)または臭気抑制材料が含浸された任意の他の布帛、発泡体、ゲル、ネット、もしくはメッシュであってよい。そのような臭気抑制材料はシクロデキストリン、ゼオライト、イオン交換樹脂、酸化剤、または活性炭粉末であってよい。臭気抑制材料を個別の層としてではなく、パッド組立体の任意の層に分散させて使用することも可能である。
【0191】
被覆材は、場合によっては頂面の一部を見えなくする手段を含んでよい。このことは、吸収剤構造から流体を蒸発させるのが可能であるかぎり、開口部を有さない布帛(編布帛、織布帛、または不織布帛)層を使用して実現されてもよい。これは、それぞれ適切なインクまたは有色パッド構成要素(ヤーン、糸、被覆)を使用して頂部膜または最上部パッド構成要素の頂面にマスキングパターンを印刷することによって実現されてもよい。このことを実現する別の方法は、(たとえば、窓を通して)被覆材の状態を検査するために臨床医によって一時的に開き、創傷の環境を損なうことなく再び閉じることのできる完全に不透明な頂面を有することである。
【0192】
被覆材は、場合によっては身体の動きに対する適合性が向上するように構成されてよい。このことは、ダイアモンド形、三角形、または被覆材の全面積にわたってモザイク状に配置された複数のそのような形状のような異なる形状を各部分領域に使用することによって実現されてよい。代替として、被覆材材料の厚さ内に好ましい折り目を設けてよく、したがって、この折り目が動きに適応するための互いに独立した部分領域を形成してよい。代替として、各層同士のせん断を許容するが各層が分離したりパッドに沿ってずれたりするのを妨げる粘弾性接着剤などの弾性材料を使用して各層を結合してよい。
【0193】
被覆材は、場合によっては機械力に対する保護が向上するように構成されてもよい。このことを実現する他の方法には、
発泡体層内のような被覆材の他の層内に圧力除去構成要素を組み込むこと(たとえば、負荷を拡散させることのできる3D構造の周りに発泡体を成形すること)と、
圧力吸収構成要素を被覆材の他の層内に組み込む(たとえば、粘弾性材料のビードを高吸収性吸収剤層に組み込む)ことが含まれる。
【0194】
場合によっては、所与の材料層によって流動特性が実現され、かつこれらの層のそれぞれの位置が個々の層による特性に加えてさらなる特性を実現する被覆材組立体が構成されてよい。上述の層構成の代替層構成によっても、求められる特性のうちのいくつかを実現することができる。
【0195】
たとえば、遮蔽層(106)を高吸収性吸収剤層(105)の下方に配置しても、点圧力からの保護が可能になるが、この層のマスキング能力が失われ、場合によっては発泡体層(103)と高吸収性吸収剤層(105)との間の流体の透過に影響が及ぶ。
【0196】
別の例として、臭気抑制層または臭気抑制構成要素を創傷から離れた位置に配置する。このことは、ある種の臭気抑制は濡れているかそれとも乾いているかに応じて作用が異なるので有利であるとみなすことができる。無色臭気抑制構成要素を被覆材の頂部の近く((105)の上方の任意の位置)に配置すると、黒いチャコール布層が有する見苦しさなしに臭気抑制特性を実現することができる。
【0197】
いくつかの特性を1つの層内で組み合わせること、たとえば高吸収性吸収剤および臭気抑制構成要素を発泡体構造に組み込むことを構想してもよい。この場合に実現すべき唯一の残りの任意の特性は保護およびマスキングであり、必要に応じてそのような変性発泡体のすぐ上に層(106)を配置することによって実現することができる。
【0198】
興味深いこととして、高吸収性吸収機能が被覆材パッドの最下部分内に配置される実施形態の流体処理特性は、各機能が別個の層に保持され、かつ流体が層から層へと送られる実施形態の流体処理特性ほど有利ではない場合がある。
【0199】
別の実施形態では、遮蔽層106は105と同じ寸法を有し、滲出液の拡散に関する臨床的判断は、マスキング層内の滲出液の拡散を観測することによって行われてよい。この実施形態は、見苦しい滲出液を高吸収性吸収剤層から完全にマスキングする利点を有する。
【0200】
上記の代わりにまたは上記に加えて、遮蔽層は全マスキング機能と、遮蔽層の個別の点に設けられ、そのような層の下方の滲出液の拡散についての判定を可能にする窓とを備えてよい。そのような窓の例を図12aおよび図12bに示す。図12aに示す被覆材1200は、マスキング層1202と、マスキング層に設けられマスキング層を貫通して延びマスキング層の下方の被覆材を見るのを可能にする三日月形窓1204とを含む。図12bの被覆材1210は、マスキング層1212と、マスキング層1212を貫通し、マスキング層1212の下方の被覆材の状態を見るための窓として働くいくつかの穴1214とを含む。図12cは、窓1224を有するマスキング層1222を含む別の被覆材1200を示す。被覆材1200、1210、1220では、被覆材の上方および被覆材の縁部の近くにおける滲出液の拡散の進行を監視することができる。他の代替例では、滲出液が、被覆材縁部から5mmまたは被覆材縁部から7mmなどのような被覆材の縁部から所定の距離に達したときに被覆材を交換する指示が与えられてよい。代替として、電子インジケータが被覆材中の滲出液の拡散状態を示す緑色ライト、黄色ライト、または赤色ライトを示す「交通信号」システムが実施されてよい。その代わりにまたはそれに加えて、被覆材の上方の滲出液の拡散状態を示す別の適切なインジケータが使用されてよい。
【0201】
別の実施形態では、別個の層によって臭気抑制が行われることはなく(すなわち、層104は存在しない)、その代わりに、臭気抑制材料(活性炭、シクロデキストリン、イオン交換樹脂など)が別の層全体にわたって分散される。これは、発泡体(103)または高吸収性吸収剤構造(105)内に設けられても、あるいはマスキング層(106)上に被覆として設けられてもよい。
【0202】
それに加えてまたはその代わりに、不透明層をサイズ排除特性を有する材料で被覆するかまたはそのような材料から形成して滲出液を見えないようにマスキングするのを助けてもよい。たとえば、そのような層は、あるサイズまたは分子量を超える種、たとえば分子量が100g/molを超える種を固定化する機能を有する、ゼオライトまたはベントナイトもしくはセピオライトなどの粘土(表面が荷電されるとタンパク質もしくは発色団を含むタンパク質誘導体を吸引する傾向がある)、その他の無機粉末または分子篩(たとえば、アンバーライト)、タンパク質(アルブミン、分子量が15KDa~70KDaのヘモグロビン成分)、ヘムなどのイオン錯体(分子量600g/mol~850g/mol)のような材料で最下方側(創傷により近い側)が被覆されてよい。
【0203】
遮蔽層は、水分を被覆材の表面の方へ吸い上げるのを助け、被覆材の通気性を補助するように、親水性化合物(たとえば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、多糖類など)で被覆されるかまたは親水性化合物で形成されてよい。
【0204】
遮蔽層は、不透明にあるいは暗く着色された頂部層などのカバー層と組み合わされてよい。
【0205】
(マスキング層として働く)遮蔽層は、たとえば、不織材料またはエアレイド材料の繊維にたとえば紺青色顔料で着色された吸収剤層を設けることによって、吸収剤層と組み合わされてよい。
【0206】
(圧力除去層として働く)遮蔽層は吸収剤層と組み合わされてよい。たとえば、繊維状高吸収性吸収剤層が、点圧力を拡散させるように高密度の繊維を備えてよい。その代わりに、たとえばエラストマ材料のピラーまたはアレイの圧力再拡散構造の周りに親水性発泡体が形成されてよい。
【0207】
臭気抑制機能は、反応時に活性炭または他の臭気捕集材料の粒子を親水性発泡体に分散させるか、あるいは活性炭または他の臭気捕集材料を粉末としてエアレイド材料全体に分散させるか、あるいはエアレイドにおいて使用される繊維を製造するのに使用される吸収剤ポリマーのマスターバッチに活性炭または他の臭気捕集材料を導入することによって吸収性と組み合わされてもよい。
【0208】
したがって、臭気抑制機能、吸収性、および圧力再分散機能を単一の層に含めてよく、この材料を着色した場合、マスキングを実現することもできる。
【0209】
本明細書において説明する各層は、互いにすぐ隣に位置するように設けられても、あるいは層同士の間にさらなる層が設けられてもよい。
【0210】
創傷被覆材は、吸収剤材料の層と不透明材料の層を接合することによって形成されてよい。
【0211】
代替として、創傷被覆材は、吸収剤材料の層と保護材料の層を接合することによって形成されてよい。
【0212】
代替として、創傷被覆材は、吸収剤材料の層とカバー層を接合することによって形成されてよい。
【0213】
代替として、創傷被覆材は、吸収剤材料の層と流体透過層を、間に活性炭材料の層を挟んで接合することによって形成されてよい。
【0214】
上記の方法はいずれも、層の一部または全体の上方に接着剤を位置させて各層を接合することを含んでよい。この方法は、積層プロセスであってよい。
【0215】
代替として、創傷被覆材は、各層を連続積層状に、図1に関して説明したように接合し、頂部膜を境界領域において創傷接触層に付着させることによって形成されてよい。
【0216】
代替として、創傷被覆材は、発泡体、臭気捕集材料、吸収剤材料、およびマスキングまたは圧力拡散用の遮蔽材料のうちの少なくとも1つを備える、創傷滲出液を吸収するための材料のシートを形成することによって形成されてよい。
【0217】
本開示の被覆材は、連続生産技法によって製造されてよい。たとえば、適切な材料のシートをローラを通過させて層同士を付着させるのを可能にしてよい。代替として、接着膜またはネット構成要素の一方のウェブ上に、事前に切断されたパッド構成要素形状を、別の接着膜またはネット構成要素によって密封する前に配置しておいてよい。次いで、材料を所望の形状に切断することによって被覆材を打ち抜き、パッケージ化してよい。
【0218】
使用時には、本開示の創傷被覆材を、被覆材の創傷接触側の表面が創傷部位に面するように患者の創傷部位に貼り付ける。次いで、創傷被覆材を所定の期間にわたって監視し、被覆材に存在する滲出液の範囲を評価する。被覆材は、本明細書において説明する例および実施形態のいずれかであってよい。
【0219】
被覆材を所定の間隔で監視してもあるいは1日の所定の時間に監視してもよい。たとえば、被覆材をたとえば、6時間おきに監視してもまたは朝昼晩にそれぞれ一度ずつ監視してもよく、あるいは特定の患者の必要に応じて監視してもよい。
【0220】
創傷被覆材に創傷滲出液が飽和しているかどうかを判定する方法は、
創傷被覆材を所定の間隔で調べて創傷被覆材に存在する滲出液の範囲を評価することを含む。
【0221】
被覆材は、本明細書において説明する被覆材のいずれかであってよい。
【0222】
上述の構成によって、周知の被覆材に勝る1つまたは複数の利点を実現することができる。
【0223】
前述の開示は、現在既存の装置によって実現されていない特性の組合せをもたらす要素を含む。
【0224】
特に、吸収力が異なる2つの吸収剤層の間に有効な臭気抑制層を保持する組合せは、バリア層がなくても臭気を効率的に抑制する吸収剤構造を形成する。
【0225】
臭気除去層は隣接する層に結合されない。このため、臭気層の有効な孔の利用可能な表面積が狭くなることはない。すなわち、活性炭の臭気抵抗層を含む周知の被覆材では、材料が炭化されて炭素が層の表面の孔に挿入される。層は次いで、隣接する層に付着させられ、したがって、多孔性表面の面積の一部が接着剤で被覆され、総表面多孔度が低下する。
【0226】
標準的な方形の場合に見られるよりも高い独立性を有する被覆材の部分ユニットとして働く形作られたパッドと被覆材の境界を備える本開示は、標準的な形状よりも高い動きに対する適合性を有する。被覆材は、皮膚に対する形状適合性を維持しかつ装着時の心地よさを維持し、患者が被覆材を装着しながら、かつ創傷の周囲の皮膚に対して、創傷の治癒を遅延させる恐れがある有害な牽引を生じさせずに動くのを可能にする。
【0227】
本開示のいくつかの実施形態は、被覆材表面の部分マスキングを施す材料を使用することによって、使用時の被覆材の外観の見苦しさを軽減する助けにもなる。マスキングは、臨床医が、被覆材表面全体にわたる滲出液の拡散を観測することによって、必要とする情報を得るのを可能にするように、好ましくは一部のみであるべきである。この特性は、治療中の患者の生活を向上させるのを助けるうえで非常に重要であり、吸収性および通気性を有する被覆材については現在まで実現されていない。不透明層の部分マスキング特性は、熟練した臨床医が被覆材内の滲出液、血液、副産物などによって生じる異なる色を認識するのを可能にし、それによって被覆材への滲出液の拡散範囲を視覚的に評価し監視することができる。しかし、清浄な状態から滲出液を含む状態への被覆材の色の変化はわずかな変化に過ぎないので、患者が見た目の違いに気付く可能性は低い。創傷滲出液の視覚インジケータを少なくするかまたは患者から除去すると、患者の健康状態にとって好ましい効果があり、たとえばストレスが軽減される。さらに、本開示のいくつかの実施形態は、皮膚に接触する必要のない通気性せん断抵抗層を導入することによって、創傷領域に加えられることがある点圧力を除去する手段を実現する。この構成は、吸収剤領域の一部を圧力除去領域で置き換えることを避けることによって被覆材の吸収能力を最大にする。また、皮膚に接触する別の構造を使用することによって通気性創傷接触層、パッドの下部、および膜が損なわれることがないので、皮膚に接触する被覆材の部分において最高の通気性が実現される。
【0228】
臭気抑制層を発泡体と吸収剤層との間に設けることによって、余分な流体のみを吸収剤層の方へ送り、一方、発泡体層を湿潤創傷治癒環境を形成するのに十分な程度に湿潤状態に維持するのを助けることができる。これは、臭気層が、吸収剤層が発泡体層から流体を吸い出すのと同じ速度で流体を吸い出すことはないからである。したがって、発泡体層から吸収剤層への流体の移送は(発泡体層を吸収剤層のすぐ隣に位置させる場合と比べて)低速になる。したがって、余分な流体のみが臭気層に取り込まれ、それによって、発泡体層がある程度の水分を維持し乾燥するのを回避する助けになる。
【0229】
すなわち、適切な形態では、外側層の吸収率を(創傷により近い)下部層の吸収率よりも高くすべきである。
【0230】
本明細書において開示される実施形態の発明よりも以前は、一般に、活性炭を濡らすと臭気捕集を実現する材料の機能が損なわれると考えられていた。したがって、活性炭層は、バリア層によって液体から保護される外側層として使用されている。しかし、本発明者は、活性炭層が液体に浸漬されないかぎり、活性炭は臭気除去層として十分にうまく作用し得ることを見出した。
【0231】
吸収剤材料の層が他のすべての下部層の縁部上に折り畳まれると、吸収剤層は、流体が被覆材縁部領域において被覆材から圧搾され、それによって漏れが生じるのを防ぐ助けになる。様々な周知の被覆材では従来、流体が、被覆材の縁部の方へ圧搾され、層同士の間を送られ、場合によっては被覆材の縁部から漏れることによって層間剥離が生じる恐れがあった。これは、たとえば、創傷接触層がカバー層に当接する境界領域で生じる可能性があり、被覆材のあらゆる中間層がその境界領域に隣接している。適切な形態において、高吸収性吸収剤材料を含む吸収剤層は、特に境界領域または被覆材の縁部の方向への、任意の液体の放出を防止するうえで有用である。
【0232】
吸収剤層に代替材料、たとえば、
繊維状変性セルロース、繊維状変性キトサン、繊維状親水性ポリエステル、繊維状セルロース、繊維状キトサン、繊維状多糖類で作られてよい吸収剤不織材料または高吸収性吸収剤不織材料、
高吸収性吸収剤粒子もしくは高吸収性吸収剤繊維を含むブロー成形された親水性ポリウレタン発泡体であってよい吸収剤発泡体もしくは高吸収性吸収剤発泡体、または親水性ポリ酢酸ビニルの発泡体、あるいは
さらに高吸収性吸収剤粒子または高吸収性吸収剤繊維を含む親水性ポリマー構造であってよい吸収剤または高吸収性吸収剤のゲルまたは固形物を使用して流体拘束および漏れ防止特性を実現することができる。
【0233】
さらに、本明細書において開示される被覆材実施形態はいずれも、ポンプなどの陰圧源と一緒に使用されてよい。本明細書において開示される被覆材実施形態はいずれも、ポンプ、ならびにポンプが流体または廃棄物を創傷から収集キャニスタに吸い込むようにポンプおよび被覆材と流体連通させることのできる流体または廃棄物収集キャニスタと一緒に使用することもできる。
【0234】
さらに、いずれの実施形態でも、ポンプは圧電ポンプ、ダイアフラムポンプ、ボイスコイル作動ポンプ、定張力ばね作動ポンプ、手動作動ポンプもしくは手動操作ポンプ、電池式ポンプ、DCモータ作動ポンプもしくはACモータ作動ポンプ、上記のポンプのうちのいずれかの組合せ、または任意の他の適切なポンプであってよい。
【0235】
図15A図15Bは、本開示の実施形態による創傷被覆材2100の断面図を示す。創傷被覆材2100の上から見た平面図が図16に示されており、線A-Aは、図15Aおよび図15Bに示す断面の位置を示す。図15A図15Bが、装置2100の概略図を示すことが理解されよう。本開示の各実施形態がTNP療法システムでの使用に一般的に適用可能であることが理解されよう。簡単に言えば、陰圧創傷閉鎖療法は、組織の浮腫を抑制し、血流を促進し、肉芽組織の形成を刺激し、余分な滲出液を除去することによって、多くの形態の「治癒するのが困難な」創傷の閉鎖および治癒を助け、細菌負荷を低減させ(したがって、感染リスクを低減させる)ことができる。さらに、この治療は、創傷がくずれるのを抑制するのを可能にし、創傷をより早く治癒させる。TNP療法システムは、流体を除去し、並置された閉鎖位置における組織を安定化させるのを助けることによって、外科的に閉鎖された創傷が治癒するのを助けることもできる。TNP療法のさらなる有効な用途としては、余分な流体を除去することが重要であり、かつ組織の生存能力を確保するうえで植皮を組織の極めて近くに配置する必要がある植弁および皮弁がある。
【0236】
創傷被覆材2100は、代替的に、制限なしに創傷被覆材100を含む本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態であってよく、あるいは本明細書において開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の各特徴の任意の組合せを有してよく、治療すべき創傷部位の上方に配置され得る。被覆材2100は、創傷部位の上方に密封された空洞を形成する。本明細書全体にわたって創傷が参照されることが理解されよう。この意味において、「創傷」という用語は広義に解釈されるべきであり、皮膚が避けるか、皮膚が切れるか、または皮膚に穴が開くか、あるいは外傷によって挫傷が生じる、開放され閉鎖される創傷を包含することを理解されたい。したがって、創傷は、流体が生じることも生じないこともある組織の傷ついた任意の領域として広義に定義される。そのような創傷の例には、切開、裂傷、磨耗傷、挫傷、火傷、糖尿病性潰瘍、じょく瘡、瘻孔、外科的創傷、外傷、および静脈性潰瘍などが含まれるが、それらに限定されない。
【0237】
いくつかの実施形態では、創傷部位に創傷充填材料を部分的にまたは完全に充填することが好ましい場合がある。この創傷充填材料は任意であるが、ある種の創傷、たとえばより深い創傷において望ましいことがある。創傷充填材料を創傷被覆材2100とともに使用してもよい。創傷充填材料には概して、多孔性であり適合性の高い材料、たとえば発泡体(網状発泡体を含む)およびガーゼが含まれてもよい。創傷充填材料は、あらゆる空の空間を充填するように創傷部位に適合するようなサイズまたは形状を有することが好ましい。次に、創傷被覆材2100を創傷部位および創傷部位を覆う創傷充填材料の上方に配置してもよい。創傷充填材料を使用すると、創傷被覆材2100によって創傷部位を密閉した後、TNPがポンプから創傷被覆材2100を通過し、創傷充填材料を通過して創傷部位まで送られる。この陰圧によって創傷滲出液および他の流体または分泌液が創傷部位から吸い出される。
【0238】
本開示を具現化する装置の陰圧範囲は約-20mmHgから-200mmHgの間であってもよいと考えられる(これらの圧力が標準周囲大気圧に対する圧力であり、したがって、-200mmHgは実際的には約560mmHgであることに留意されたい)。一実施形態において、力範囲は約-40mmHgから-150mmHgの間であってもよい。代替として、-75mmHg以下、-80mmHg以下、または-80mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。また、他の実施形態において、-75mmHgよりも低い圧力範囲を使用してもよい。代替として、-100mmHgを超えるかまたは-150mmHgを超える圧力範囲を使用してもよい。
【0239】
本開示のある実施形態によれば、ある期間にわたって事前に定められた1つまたは複数の所望の圧力プロファイルに従って発生する圧力を変調してもよいことが理解されよう。たとえば、そのようなプロファイルは、陰圧を2つの所定の陰圧P1とP2との間で変調し、圧力を所定の期間T1にわたってP1に実質的に一定に保持し、次いでポンプ動作を変化させることまたは流体の流れを制限することなどのような適切な手段によって、さらなる所定の期間T2にわたって実質的に一定に保持することのできる新しい所定の圧力P2に調整することを含んでもよい。場合によっては、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの所定の圧力値およびそれぞれの期間を利用してもよい。他の実施形態において、正弦波、歯痛、心臓収縮-拡張に関する波形などのような圧力流プロファイルのより複雑な振幅/周波数波形を生成してもよい。
【0240】
図15A図15Bに示すように、創傷被覆材2100の下面2101は、この場合も、制限なしに創傷被覆材100を含む本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態であってよく、あるいは本明細書において開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の各特徴の任意の組合せを有してよく、任意の創傷接触層2102によって形成され得る。創傷接触層2102は、たとえば、ホットピンプロセス、レーザアブレーションプロセス、超音波プロセス、もしくは他の何らかの方法で穿孔されるか、または液体および気体を透過するようにされたポリウレタン層、ポリエチレン層、または他の可撓性の層であってもよい。創傷接触層は下面2101と上面2103とを有する。穿孔2104は、流体が創傷接触層を通過するのを可能にする創傷接触層の貫通穴である。創傷接触層は、創傷被覆材の他の材料に組織内部成長するのを妨げるのを助ける。穿孔は、この要件を満たし、それにもかかわらず流体を通過させるのに十分な小さいサイズを有する。たとえば、サイズ範囲が0.025mmから1.2mmであるスリットまたは穴として形成される穿孔は、創傷被覆材に組織内部成長するのを妨げるのを助け、一方、創傷滲出液が被覆材に流入するのを可能にするのに十分な小さいサイズを有するとみなされる。創傷接触層は、創傷被覆材全体を保持するのを助け、吸収剤パッドの周り気密シールを形成して創傷の所に陰圧を維持するのを助ける。創傷接触層は、任意の下部接着層および上部接触層(図示せず)用の担体としても働く。たとえば、創傷被覆材の下側面2101上に下部感圧接着剤を設けてもよく、一方、創傷被覆材の上側面2103上に上部感圧接着剤を設けてもよい。感圧接着剤は、シリコーン、ホットメルト、親水コロイド、もしくはアクリル系の接着剤またはそのような他の接着剤であってもよく、創傷接触層の両側に形成しても、あるいは任意に選択された一方の側に形成してもよく、あるいはどちらの側にも形成しなくてもよい。下部感圧接着剤を利用すると、創傷被覆材を創傷部位の周りの皮膚に付着させる助けになる。
【0241】
多孔性材料の層2105を創傷接触層の上方に配置することができる。この多孔性層または透過層2105は、液体および気体を含む流体を創傷部位から創傷被覆材の上部層に透過させるのを可能にする。特に、透過層2105は、吸収剤層が実質的な量の滲出液を吸収したときでも創傷領域の上方に陰圧を伝達するように開放された空気流路を維持できるようにする。透過層は、上述のように陰圧創傷閉鎖療法を実施するときに加えられる通常の圧力の下で開放されたままになるべきであり、それによって創傷部位全体が等しい陰圧を受ける。層2105は、三次元構造を有する材料で形成されている。たとえば、編みスペーサ布または織りスペーサ布(たとえばBaltex 7970横編みポリエステル)あるいは不織布を使用してよい。もちろん、他の材料を利用してもよく、そのような材料の例について以下に図37図41に関して説明する。
【0242】
いくつかの実施形態において、透過層は、84/144加工ポリエステルである頂部層(すなわち、使用時に創床に対して遠位に位置する層)、100デニールフラットポリエステルである底部層(すなわち、使用時に創床に対して近位に位置する層)と、編みポリエステルビスコース、セルロースなどのモノフィラメント繊維によって定義された領域である、この2つの層の間に挟まれた第3の層とを含む3Dポリエステルスペーサ布層を備える。もちろん、他の材料および他の線質量密度の繊維を使用してもよい。
【0243】
本開示の全体にわたってモノフィラメント繊維を参照するが、もちろん、代わりに多重撚り線繊維を使用してもよいことが理解されよう。
【0244】
したがって、頂部スペーサ布は、それを形成するのに使用される糸に、底部スペーサ布層を形成するのに使用される糸を構成するフィラメントの数よりも多くのフィラメントを有する。
【0245】
間隔を置いて配置された層同士のフィラメント数のこの差は、透過層を横切る水分の流れを制御するのを助ける。特に、頂部層よりもフィラメント数を多くすることによって、底部層において使用される糸よりも多くのフィラメントを有する糸から頂部層が形成され、底部層よりも多くの液体が頂部層に沿って移動する傾向がある。使用時には、この差によって、液体が創床から創傷被覆材の中央領域に吸い込まれ、吸収剤層が液体を保持するか、または液体層自体が液体をカバー層の方へ外側に移動させ、カバー層において液体を蒸散させることができる。
【0246】
好ましくは、透過層を横切る(すなわち、頂部スペーサ層と底部スペーサ層との間に形成された流路領域に垂直な)液体流を改善するために、3D布が、透過層の親水機能に干渉することがある、従来使用されている鉱物油、脂肪、および/またはろうのようなあらゆる工業製品を除去するのを助けるように乾燥洗浄剤(ペルクロロエチレンなどであるがそれに限定されない)によって処理される。いくつかの実施形態では、その後、3Dスペーサ布が親水化剤(Rudolph Groupから市販されているFeran Ice 30g/lなどであるがそれに限定されない)で洗浄される追加の製造ステップを実施してもよい。このプロセスは、各物質上の表面張力が、水などの液体が3Dニット生地に接触した直後に布に進入することができるほど低くなるようにするのを助ける。このことは、滲出液の液体障害成分の流れを制御するのも助ける。
【0247】
透過層2105の上方に吸収材料層2110が設けられている。吸収材料は、発泡体または不織天然材料もしくは不織合成材料であってもよく、任意に高吸収性吸収剤材料を含むか、高吸収性吸収剤材料であってもよく、創傷部位から除去された流体、特に液体を形成し、このような液体をカバー層2140の方へ吸い込む。図15Aおよび図15Bを参照すると分かるように、マスキング層または不透明層2107がカバー層2140の下方に位置付けられてよい。いくつかの実施形態では、マスキング層2107は、任意の視認窓または視認穴を有することを含むがそれに限定されない、本明細書において開示されるマスキング層の他の実施形態のいずれかの同じ特徴、材料、またはその他の詳細のいずれかを有してよい。さらに、マスキング層2107は、カバー層に隣接して位置付けられてよく、あるいは任意の他の所望の被覆材層に隣接して位置付けられてもよい。いくつかの実施形態では、マスキング層2107をカバー層に付着させてよくあるいはカバー層と一体に形成してもよい。いくつかの実施形態では、マスキング層2107は場合によっては、マスキング層2107を通過する空気流を改善するようにポート2150のすぐ隣に位置する穴(図示せず)を含んでよい。
【0248】
吸収剤層の材料は、創傷被覆材内に収集された液体が流れる際に跳ね回るのも妨げる。吸収剤層2110は、ウィッキング動作を介して層全体にわたって流体を分散させ、それによって、流体は創傷部位から吸い出され、吸収剤層全体にわたって格納される。これは吸収剤層の領域における凝集を防止するのを助ける。吸収材料の容量は、陰圧が加えられるときに創傷の滲出液流量を管理するのに十分な容量でなければならない。使用時には、吸収剤層が陰圧を受けるので、吸収剤層の材料としては、そのような状況の下で液体を吸収する吸収材料の層が選択される。陰圧下で液体を吸収することのできるいくつかの材料、たとえば高吸収性吸収体材料が存在する。吸収剤層2110は通常、ALLEVYN(商標)発泡体、Freudenberg114-224-4、および/またはChem-Posite(商標)11C-450から製造されてもよい。
【0249】
いくつかの実施形態において、吸収剤層は、繊維全体にわたって分散された乾燥粒子の形をした高吸収性吸収剤材料を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維を使用すると、被覆材によって取り込まれた液体を高速にかつ均等に分散させるのを助ける高速ウィッキング要素が導入される。複数の撚り糸状繊維を並置すると繊維状パッド内で強力な毛管作用が生じ、液体を分散させる助けになる。このように、高吸収性吸収剤材料に液体が効率的に供給される。また、吸収剤層のすべての領域に液体が供給される。
【0250】
ウィッキング作用は液体を上部カバー層に接触させるのを助け、被覆材の蒸散率を高めるのも助ける。
【0251】
ウィッキング作用は、滲出が減速または休止したときに液体を下方に創床の方へ送出するのも助ける。この送出プロセスは、透過層および下部創床領域を湿潤状態に維持するのを助け、被覆材内の痂皮形成(閉塞を生じさせる恐れがある)を妨げるのを助け、かつ環境を創傷の治癒に最適な状態に維持するのを助ける。
【0252】
いくつかの実施形態において、吸収剤層は風成材料である。熱可溶繊維を任意に使用してパッドの構造を保持するのを助けてもよい。本開示のある実施形態によれば、高吸収性粒子を使用する代わりにまたはそのような使用に加えて、高吸収性繊維を利用してもよいことが諒解されよう。適切な材料の例には、米国のEmerging Technologies Inc(ETi)から市販されているProduct Chem-Posite(商標)11Cがある。
【0253】
場合によっては、本開示のいくつかの実施形態によれば、吸収剤層は、合成安定繊維および/または二成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または高吸収性吸収剤繊維を含んでもよい。吸収剤層中の繊維は、ラテックス結合または熱結合または水素結合または任意の結合技術もしくは他の固定機構の組合せによって固定されてもよい。いくつかの実施形態において、吸収剤層は、高吸収性吸収剤粒子を吸収剤層内にロックするように働く繊維によって形成される。このことは、高吸収性吸収剤粒子が吸収剤層の外部の、下層の創床の方へ移動しなくなるようにするのを助ける。これは、陰圧が加えられたときに吸収剤パッドが下向きに潰れる傾向があり、この作用によって、高吸収性吸収剤粒子物質が吸収剤層の繊維状構造によって保持されない場合に高吸収性吸収剤粒子物質が創床の方へ押されるので特に有用である。
【0254】
吸収剤層は複数の繊維からなる層を備えてもよい。好ましくは、繊維は、撚り糸状の繊維であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどで作られる。好ましくは、乾燥した吸収剤粒子が、使用する準備の整った吸収剤層全体にわたって分散される。いくつかの実施形態において、吸収剤層は、セルロース繊維のパッドと複数の高吸収性吸収剤粒子とを備える。追加の実施形態において、吸収剤層は、無作為の向きを有するセルロース繊維の不織層である。
【0255】
高吸収性吸収剤粒子/繊維は、たとえばナトリウム材料、ポリアクリレート材料、またはカルボメトキシセルロース材料など、または材料自体の重量の何倍もの重量を有する液体を吸収することができる任意の材料であってもよい。いくつかの実施形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の5倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。いくつかの実施形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の15倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。いくつかの実施形態において、この材料は、重量が材料自体の重量の20倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。好ましくは、この材料は、重量が材料自体の重量の30倍よりも重い0.9%W/W生理食塩水などを吸収することができる。
【0256】
好ましくは、高吸収体の粒子は、非常に親水性が高く、流体が被覆材に進入するときに流体を把持し、接触時に膨張する。被覆材コア内に均衡状態が確立され、それによって、水分が高吸収体からより乾燥した周囲領域に移り、水分が頂部の膜に衝突すると、膜が切り替わり、流体蒸気が蒸散を開始する。被覆材内に水分傾斜が確立され、創床から流体が連続的に除去され、被覆材が滲出液で重くなることはない。
【0257】
好ましくは、吸収剤層は、吸入ポートの下に位置するように配置された少なくとも1つの貫通穴を含む。図15A図15Bに示すように、単一の貫通穴を使用して、ポート2150の下に位置する開口部を形成してもよい。代替として、複数の開口部を利用してもよいことが諒解されよう。さらに、本開示のある実施形態によって複数のポートを利用する場合、高吸収性吸収剤層にそれぞれの各ポートに位置合わせして1つまたは複数の開口部を形成してもよい。本開示のある実施形態に必須ではないが、高吸収性吸収剤層に貫通穴を使用すると、特に抑制されない流体流路が構成され、このことはある状況において有用である。
【0258】
吸収剤層に開口部を設けると、この層の厚さ自体が、透過層2105の上面(すなわち、使用時に創傷から外方に向く表面)から、上方に位置する任意の層を分離するスタンドオフとして働く。この利点は、ポートのフィルタがこのように透過層の材料から分離されることである。このことは、フィルタが濡れ、したがってさらなる動作を妨害する可能性を低減させるのを助ける。
【0259】
吸収層に1つまたは複数の貫通穴を使用することは、使用時に、吸収剤層が高吸収性吸収剤などのゲル形成材料を含む場合、その材料が、膨張して液体を吸収するときに、さらなる液体の移動および流体の移動を概して不可能にするバリアを形成することがなくなるという利点も有する。このようにして、吸収剤層の各開口部は、透過層から直接、創傷に面するフィルタの表面に至り、次いで外側に延びてポート内に入る流体経路を構成する。
【0260】
気体を透過させないが、水蒸気を透過させるカバー層2140は、制限なしに被覆材実施形態100を含む本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態であってよく、あるいは本明細書において開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の各特徴の任意の組合せを有してよい、創傷被覆材の幅を横切って延びることができる。カバー層は、たとえば一方の側に感圧接着剤を有するポリウレタン膜(たとえば、Elastollan SP9109)であってもよく、気体を透過させず、したがって、この層は創傷を覆い、上方に創傷被覆材が配置された創腔を密封する。このようにして、陰圧が確立され得るカバー層と創傷部位との間に実際上のチャンバが形成される。カバー層2140は、たとえば接着技術または溶接技術を介して、被覆材の周囲の境界領域2200内に創傷接触層2102に対して密封され、境界領域に空気が吸い込まれないようにする。カバー層2140は、外部細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷滲出液からの液体がこの層を通過して膜の外面から蒸発するのを可能にする。カバー層2140は通常、2つの層、すなわちポリウレタン膜とこの膜上に広げられた接着剤パターンとを備える。ポリウレタン膜は、水蒸気透過性であり、濡れたときに透水率が高くなる材料から製造されてもよい。
【0261】
吸収剤層2110は、透過層2105よりも広い面積を有してもよく、したがって、吸収剤層は透過層2105の縁部と重なり合い、それによって、透過層がカバー層2140に接触することはなくなる。これによって、創傷接触層2102と直接接触する吸収剤層2110の外側流路2115が構成され、滲出液をより高速に吸収剤層に吸収する助けになる。さらに、この外側流路2115により、場合によっては被覆材の周縁のシールから滲み出して漏出物を形成する可能性のある液体が、創腔の周囲に溜まることはできなくなる。
【0262】
創腔に真空を加えたときに空気流路が開放されたままになるように、透過層2105は圧力差による力に抵抗するのに十分な強度および非柔軟性を有さなければならない。しかし、この層は、比較的繊細なカバー層2140に接触した場合、空気が創腔内に漏れるのを可能にするピンホール開口部をカバー層2140に形成する恐れがある。これは、濡れると強度が低くなる切替え可能なポリウレタン膜を使用するときに特に問題になることがある。吸収剤層2110は概して、透過層2105の材料と比較して比較的柔らかく摩擦を生じない材料で形成されており、したがって、カバー層にピンホール開口部を形成しない。したがって、透過層2105よりも広い面積を有し、透過層2105の縁部と重なり合う吸収剤層2110を設けることによって、透過層とカバー層との接触が妨げられ、カバー層2140にピンホール開口部が形成されるのが回避される。
【0263】
吸収剤層2110は、カバー層2140と流体接触するように位置している。吸収剤層が創傷滲出液を吸収すると、滲出液がカバー層2140の方へ吸い込まれ、滲出液の水成分が水蒸気透過性カバー層と接触する。この水成分はカバー層自体の内部に吸い込まれ、次いで、被覆材の頂面から蒸発する。このようにして、創傷滲出液の含水量を被覆材から蒸散させることができ、吸収剤層2110によって吸収すべき残りの創傷滲出液の体積が減り、被覆材が満杯になり交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。この蒸散プロセスは、創腔に陰圧を加えられたときにも生じ、創腔に陰圧が加えられたときのカバー層の両端間の圧力差が、カバー層の両端間の水蒸気透過率に与える影響が無視できるものであることが分かっている。
【0264】
被覆材2100に陰圧を加えることを可能にするカバー膜2140がオリフィス2145に設けられている。吸引ポート2150が、オリフィス2145の上方でカバー膜2140の頂部に対して密封されており、オリフィス2145を通して陰圧を伝達する。ある長さのチューブ2220の第1の端部を吸引ポート2150に結合し、第2の端部をポンプユニット(図示せず)に結合して流体を被覆材から汲み出すのを可能にしてもよい。このポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化可能な接着剤、またはホットメルト接着剤のような接着剤を使用してカバー膜2140に接着されカバー膜2140に対して密封されている。ポート2150は、硬度がショアAスケールで30~90である柔らかいポリマー、たとえばポリエチレン、塩化ポリビニル、シリコーン、またはポリウレタンから形成されてもよい。
【0265】
オリフィスが直接透過層2105に連結されるようにオリフィス2145の下方の吸収剤層2110に開口または貫通穴2146が設けられている。これによって、ポート2150に加えられた陰圧を吸収剤層2110を通過せずに透過層2105に伝達することができる。これによって、創傷部位に加えられた陰圧が、吸収剤層が創傷滲出液を吸収するときに吸収剤層によって抑制されることがなくなる。他の実施形態では、吸収剤層2110に開口をまったく設けなくてもよく、あるいはオリフィス2145の下方の複数の開口を設けてもよい。
【0266】
図15Aに示すように、創傷被覆材2100の一実施形態は、ポート2150の下方に位置する吸収剤層2100に開口2146を備える。使用時には、たとえば、被覆材2100に陰圧を加えたときに、創傷に面するポート2150の部分が透過層2105に接触することができ、したがって、吸収剤層2110に創傷流体が充填されたときでも創傷部位に陰圧を伝達するのを助けることができる。いくつかの実施形態は、カバー層2140を透過層2105に少なくとも部分的に接着させてもよい。いくつかの実施形態では、開口2146はポート2150またはオリフィス2145の創傷に面する部分の直径よりも少なくとも1mm~2mm大きくてもよい。
【0267】
液体を透過させないが気体を透過させるフィルタ要素2130が、液体バリアとして働き、かつ創傷被覆材から漏れることのできる液体をなくすように設けられている。このフィルタ要素は、細菌バリアとして働いてもよい。通常、細孔径は0.2μmである。フィルタ要素2130のフィルタ材料の適切な材料には、MMTレンジの0.2ミクロンGore(商標) expanded PTFE、PALL Versapore(商標)200R、およびDonaldson(商標)TX6628が含まれる。これよりも大きい細孔径を使用してもよいが、その場合、バイオバーデンを完全に抑制するために二次フィルタ層が必要になり得る。創傷流体が脂質を含むときは、疎油性フィルタ膜、たとえば0.2ミクロンMMT-323よりも前の1.0ミクロンMMT-332を使用することが好ましいが、必須ではない。これによって、脂質が疎水性フィルタに詰まるのが妨げられる。フィルタ要素は、オリフィス2145の上方でポートおよび/またはカバー膜2140に取り付けられるかまたはポートおよび/またはカバー膜2140に対して密封されてもよい。たとえば、フィルタ要素2130は、ポート2150内に成形されても、あるいは限定されないがUV硬化接着剤などの接着剤を使用してカバー層2140の頂部とポート2150の底部の両方に取り付けられてもよい。
【0268】
フィルタ要素2130に他の種類の材料を使用してもよいことが理解されよう。より一般的には、高分子材料の薄く平坦なシートである微孔膜を使用してもよく、この膜は数十億個の微孔を含む。選択される膜に応じて、これらの孔のサイズは0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲であってもよい。親水性(水濾過)形態の微孔膜と疎水性(撥水)形態の微孔膜のどちらも利用可能である。本開示のいくつかの実施形態において、フィルタ要素2130は、支持層と、支持層上に形成されたアクリルコポリマー膜とを備える。好ましくは、本開示のある実施形態における創傷被覆材2100は、微孔性疎水性膜(MHM)を使用する。MHMを形成するのに多数のポリマーを使用してもよい。たとえば、PTFE、ポリプロピレン、PVDF、およびアクリルコポリマーを使用してもよい。これらの任意のポリマーはすべて、疎水性と疎油性の両方を有してもよい特定の表面特性が得られるように処理されてもよい。したがって、これらのポリマーは、複合ビタミン注射、脂質、界面活性剤、油、および有機溶剤のように、低い表面張力によって脂質をはじく。
【0269】
MHMは、脂質を遮断し、一方、空気が膜を通過するのを可能にする。これらのMHMは、場合によっては潜在的に伝染性のエアロゾルおよび粒子を除去する非常に効率的なエアフィルタでもある。単一のMHMが、機械的な弁または排出口に置き換わるオプションとして周知である。したがって、MHMを組み込むと組立て費を削減することができ、患者の利益費用便益比が改善される。
【0270】
フィルタ要素2130は、臭吸収剤材料、たとえば活性炭、炭素繊維布、またはVitec Carbotec-RT Q2003073発泡体などを含んでもよい。たとえば、臭吸収剤材料は、フィルタ要素2130の層を形成してもよく、あるいはフィルタ要素内の微孔性疎水性膜同士の間に挟まれてもよい。
【0271】
したがって、フィルタ要素2130は、気体をオリフィス2145を通して排出するのを可能にする。ただし、脂質、微粒子、および病原体は被覆材に収容される。
【0272】
図15Bには、ポート2150およびフィルタ2130と合わせてスペーサ要素2152、2153を備える創傷被覆材2100の実施形態が示されている。そのようなスペーサ2152、2153を付加すると、ポート2150およびフィルタ2130を吸収剤層2110および/または透過層2105と直接接触しないように支持することができる。吸収剤層2110は、追加のスペーサ要素として働きフィルタ2130が透過層2105と接触するのを防止することもできる。したがって、そのような構成では、使用時のフィルタ2130と透過層2105および創傷流体との接触を最低限に抑えることができる。図15Aに示す実施形態とは対照的に、吸収剤層2110を貫通する開口2146は必ずしもポート2150以上の大きさを有さなくてよく、したがって、吸収剤層2110に創傷流体が飽和したときにポートから透過層2105への空気経路を維持できるようにするのに十分な大きさを有するだけでよい。
【0273】
特に、単一のポート2150および貫通穴を有する実施形態の場合、図15A図15Bおよび図16に示すようにポート2150および貫通穴を偏心位置に配置することが好ましい場合がある。そのような配置は、ポート2150が被覆材2100の残りの部分に対して隆起するように被覆材2100を患者上に位置させるのを可能にすることができる。そのように位置させると、ポート2150およびフィルタ2130が、フィルタ2130を早い時期に閉塞させて創傷部位への陰圧の伝達を阻害する恐れがある創傷流体に接触する可能性が低くなる。
【0274】
図25は、本開示のいくつかの実施形態による吸引ポート2150の平面図を示す。この吸引ポートは、ポート自体を創傷被覆材に対して密封するための密封面2152と、吸引ポート2150を陰圧源に連結するためのコネクタ部2154と、密封面2152とコネクタ部2154との間に配置された半球体部2156とを備える。密封面2152は、実質的に平坦な領域を構成し、ポート2150がカバー層2140に対して密封されるときに良好なシールを実現するフランジを備える。コネクタ部2154は、ある長さのチューブ2220を介して外部陰圧源に結合されるように配置されている。
【0275】
いくつかの実施形態によれば、フィルタ要素2130は、創傷部位の上方に細菌バリアの一部を形成し、したがって、フィルタ要素の周りに良好なシールが形成され維持されることが重要である。しかし、フィルタ要素2130をカバー層2140に付着させることによって形成されたシールは信頼性が不十分であることが分かっている。このことは、水蒸気透過性カバー層を使用する際、カバー層2140から蒸散する水蒸気が接着剤に影響を与えることがあり、フィルタ要素とカバー層との間のシールが破損するときに特に問題になる。したがって、本開示のいくつかの実施形態によれば、フィルタ要素2130を密封して脂質がコネクタ部2154に進入するのを妨げるための代替構成が使用される。
【0276】
図26は、本開示のいくつかの実施形態による図25の吸引ポート2150の断面図を示し、図25の線A-Aは断面の位置を示す。図26の吸引ポートにおいて、吸引ポート2150は、吸引ポート2150の体部2156内に配置されたフィルタ要素2130をさらに備える。吸引ポート2150とフィルタ要素2130との間のシールは、フィルタ要素を吸引ポート2150の体部内に成形することによって実現される。
【0277】
図27は、本明細書において開示される任意の被覆材実施形態と一緒に使用できる本開示のいくつかの実施形態による図25の吸引ポート2150の断面図を示す。図27の吸引ポートにおいて、フィルタ要素2130は吸引ポート2150の密封面2152に対して密封されている。フィルタ要素は、接着剤を使用するかまたはフィルタ要素を密封面に溶接することによって密封面に対して密封されてもよい。
【0278】
図26および図27に示すように、フィルタ要素2130を吸引ポート2150の一部として設けることによって、フィルタ要素をカバー層2140に付着させることに伴う問題が解消され、信頼できるシールを設けることが可能になる。さらに、吸引ポート2150の一部として含まれるフィルタ要素2130を有する部分組立体を設けると、創傷被覆材2100をより簡単にかつより効率的に製造することができる。
【0279】
吸引ポート2150について図15の創傷被覆材2100の文脈で説明したが、図26および図27の実施形態が、創傷から吸い出された創傷滲出液が被覆材内に保持される、本明細書で開示されるまたはそれ以外の創傷に陰圧を加えるための任意の創傷被覆材に適用可能であることが理解されよう。本開示のいくつかの実施形態によれば、吸引ポート2150を透明な材料から製造し、ユーザが、吸引ポート2150に創傷滲出液が進入していないかを目視検査するのを可能にしてもよい。
【0280】
本明細書において説明するような創傷被覆材2100ならびにその製造方法および使用方法は、参照によりすべての特許および特許出願が本明細書に全体的に組み込まれている、
特許文献19、特許文献20、および特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、および特許文献34、ならびに2010年11月8日に出願された特許文献35、2011年4月15日に出願された特許文献36、および2011年4月15日に出願された特許文献37に記載された特徴、構成、および材料を組み込んでもよい。参照により組み込まれているこれらの特許および特許出願から、本開示に記載されている構成要素と同様の構成要素についての特徴、構成、材料、および製造方法または使用方法を本出願の実施形態に対して置換、追加、または実装してもよい。
【0281】
動作時には、創傷被覆材2100が創傷部位に対して密封され、創腔を形成する。ポンプユニット(図42に示し、以下にさらに詳しく説明する)がポート2150の連結部2154の所で陰圧を加え、この陰圧がオリフィス2145を通して透過層2105に伝達される。流体は、創傷接触層2102の下方の創傷部位から創傷被覆材を通してオリフィスの方へ吸い込まれる。流体は、透過層2105を通してオリフィスの方へ移動する。流体が透過層2105を通過するにつれて、創傷滲出液が吸収剤層2110に吸収される。
【0282】
本開示の一実施形態による創傷被覆材2100を示す図16を参照すると、被覆材の中心から透過層2105および吸収剤層2110を覆う中央隆起領域2201を囲む境界領域2200内に外側に延びるカバー層2140の上面が示されている。図2に示すように、創傷被覆材の概略図的な形状は丸い隅領域2202を含む矩形である。本開示の他の実施形態による創傷被覆材が、方形、円形、または楕円形の被覆材のように異なる形状を有してよいことが諒解されよう。
【0283】
創傷被覆材2100は、それが使用される創傷のサイズおよび種類の必要に応じたサイズを有してもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材2100は、長軸が20cmから40cmの間であり、短軸が10cmから25cmの間であってもよい。たとえば、被覆材のサイズは10×20cm、10×30cm、10×40cm、15×20cm、および15×30cmであってもよい。いくつかの実施形態では、創傷被覆材2100は、各辺が15cmから25cmの間である(たとえば、15×15cm、20×20cm、および25×25cm)方形の被覆材であってもよい。吸収剤層2110は、被覆材全体よりも狭い面積を有してよく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも被覆材2100全体の長さと幅よりも約3cm~10cm短くてもよく、より好ましくは約5cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、吸収剤層2110は、長軸が10cmから35cmの間であり、短軸が5cmから10cmの間であってもよい。たとえば、吸収剤層のサイズは、5.6×15cmまたは5×10cm(10×20cmの被覆材の場合)、5.6×25cmまたは5×20cm(10×30cmの被覆材の場合)、5.6×35cmまたは5×30cm(10×40cmの被覆材の場合)、10×15cm(15×20cmの被覆材の場合)、および10×25cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。いくつかの方形の実施形態では、吸収剤層2110は、各辺の長さが10cmから20cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は10×10cm、20×20cmの被覆材の場合は15×15cm、または25×25cmの被覆材の場合は20×20cm)であってもよい。透過層2105は、吸収剤層よりも小さいことが好ましく、いくつかの実施形態では、長さと幅がどちらも吸収剤層の長さと幅よりも約0.5cm~2cm短くてもよく、より好ましくは約1cm短くてもよい。いくつかの矩形の実施形態では、透過層は、長軸が9cmから34cmの間であり、短軸が3cmから5cmの間であってもよい。たとえば、透過層のサイズは、4.6×14cmまたは4×9cm(10×20cmの被覆材の場合)、4.6×24cmまたは4×19cm(10×30cmの被覆材の場合)、4.6×34cmまたは4×29cm(10×40cmの被覆材の場合)、9×14cm(15×20cmの被覆材の場合)、および9×24cm(15×30cmの被覆材の場合)であってもよい。いくつかの方形の実施形態では、透過層は、各辺の長さが9cmから19cmの間(たとえば、15×15cmの被覆材の場合は9×9cm、20×20cmの被覆材の場合は14×14cm、または25×25cmの被覆材の場合は19×19cm)であってもよい。
【0284】
本開示の実施形態によれば創傷接触層が任意であることが理解されよう。この層は、使用される場合、多孔性であって水を透過させ、下方の創傷部位に面する。連続気泡発泡体または編みスペーサ布または織りスペーサ布のような透過層2105を使用して、創傷のすべての領域が等しい圧力を受けるように気体および流体の除去を分散させる。カバー層は、フィルタ層と一緒に、創傷の上方に実質的に液密のシールを形成する。したがって、ポート2150に陰圧が加えられると、陰圧はカバー層の下方の創腔に伝達される。したがって、この陰圧を目標創傷部位が受ける。空気および創傷滲出液を含む流体は、創傷接触層および透過層2105を通過する。創傷被覆材の下層を通過した創傷滲出液は散逸して吸収剤層2110に吸収され、そこに収集され格納される。空気および水蒸気は、フィルタ層を通して上方に移動して創傷被覆材を通過し、吸引ポートを通して被覆材から流出する。創傷滲出液の含水量の一部は、吸収剤層を通過してカバー層2140に吸い込まれ、次いで被覆材の表面から蒸発する。
【0285】
上述のように、創傷部位の上方に密封された創傷被覆材に陰圧が加えられると、本明細書で開示されるいくつかの被覆材実施形態では、創傷滲出液を含む流体が創傷部位から吸い出され、透過層2105を通ってオリフィス2145の方へ移動する。次いで、創傷滲出液は吸収剤層2110に吸い込まれ、そこに吸収される。しかし、一部の創傷滲出液は、吸収されずにオリフィス2145に移動することもある。フィルタ要素2130は、創傷滲出液中の任意の液体が吸引ポート2150の連結部2154に進入するのを妨げるバリアを構成する。したがって、吸収されない創傷滲出液はフィルタ要素2130の下方に収集されてもよい。十分な創傷滲出液がフィルタ要素の所に収集された場合、フィルタ要素2130の表面上に液体層が形成され、液体がフィルタ要素2130を通過できなくなり、かつ液体層によって気体がフィルタ要素に到達するのを妨げられるので、フィルタ要素が閉塞される。フィルタ要素が閉塞されると、もはや陰圧を創傷部位に伝達することはできず、吸収剤層の総容量に達していないにもかかわらず、創傷被覆材を新しい被覆材と交換しなければならない。
【0286】
好ましい実施形態において、ポート2150は、その下に位置する吸収剤層2110の開口2146と一緒に、図16に示す中央長手方向軸A-Aに概ね揃う。ポート2150およびそのような任意の開口2146は、中央位置ではなく被覆材の一方の端部のより近くに位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、ポートは、この場合も制限なしに被覆材実施形態100を含む本明細書において開示される任意の被覆材実施形態であってよい被覆材2100の隅部に配置されてよい。たとえば、いくつかの矩形の実施形態において、ポート2150は、被覆材の縁部から4cmから6cmの間だけ離して配置され、開口2146は、吸収剤層の縁部から2cm~3cm離して配置されてもよい。いくつかの方形の実施形態において、ポート2150は、被覆材の縁部から5cmから8cmの間だけ離して配置され、開口2146は、吸収剤層の縁部から3cm~5cm離して配置されてもよい。
【0287】
創傷被覆材をある向きに配置すると、創傷滲出液が透過層を通過するのを重力の作用によって助けることができるので、フィルタ要素2130が上記のように閉塞される可能性が高くなることがある。したがって、創傷部位および創傷被覆材の向きによって、重力が、創傷滲出液がオリフィス2145の方へ吸い込まれる速度を速くするように働く場合、フィルタが創傷滲出液によってより急速に閉塞されることがある。したがって、創傷滲出液をより頻繁に交換し、かつ吸収剤層2110の吸収剤容量に達する前に交換することが必要になる。
【0288】
オリフィス2145の方へ吸い込まれる創傷滲出液によって創傷被覆材2100が早い時期に閉塞されるのを避けるために、本開示のいくつかの実施形態は、創傷滲出液がオリフィス2145の方へ移動する速度を遅くするように構成された少なくとも1つの要素を含む。この少なくとも1つの要素は、オリフィス2145に達する前に吸収剤層に吸収される滲出液の量を増やすこと、および/または創傷滲出液がオリフィス2145に達する前に辿る経路を長くし、それによって創傷滲出液が遮断されるまでの時間を延ばすことを実施してもよい。
【0289】
図17は、本開示の一実施形態による、創傷滲出液がオリフィスの方へ移動する速度を遅くするバッフル要素を含む創傷被覆材の平面図を示す。図17に示す創傷被覆材は、図15および図16に示す創傷被覆材と同様であるが、中央隆起領域2201を横切るように配設されたいくつかのバッフル要素2310を含む。バッフル要素2310は、オリフィスに向かう創傷滲出液の移動を拘束するバリアを被覆材の中央領域に形成している。
【0290】
本明細書において説明する創傷被覆材において使用できるバッフル要素の実施形態は、少なくとも一部が可撓性であり、創傷被覆材がたわみ、創傷部位を囲む患者の皮膚に合うのを可能にすることが好ましい。バッフル要素は、創傷被覆材にそのように存在するとき、創傷被覆材ポートまたはオリフィスおよびそれに関連するフィルタが上記のように設けられる場合に液体がポートまたはオリフィスおよびフィルタまで直接流れるのを妨げることが好ましい。したがって、バッフル要素は、液体がポートに到達するのに必要になり得る距離を延ばし、このことは、創傷被覆材の吸収剤材料または高吸収性吸収剤層材料にこれらの流体を吸収するのを助けることができる。
【0291】
本開示のいくつかの実施形態によれば、バッフル要素は、吸収剤層2110および透過層2105が存在せず、かつカバー層2140が創傷接触層2101に対して密封される密封領域を備えてもよい。したがって、バッフル要素は、創傷滲出液の動きに対するバリアを構成し、したがって、創傷滲出液は、バッフル要素を迂回する経路を辿らなければならない。したがって、創傷滲出液がオリフィスに到達するのにかかる時間が延びる。
【0292】
いくつかの実施形態において、バッフル要素は、被覆材内部に配置された、実質的に非多孔性の材料、たとえば独立気泡ポリエチレン発泡体のインサートであってもよい。場合によっては、吸収剤層2110および/または透過層2105のうちの1つまたは複数が存在しない密封領域にそのような挿入されたバッフル要素を配置することが好ましいことがある。封止材、たとえば、シリコーン封止材のような粘性を有する硬化封止材を、液体を実質的に透過させないバッフル要素を形成するように薄いストリップとして配置または射出成形してもよい。そのようなバッフル要素は、透過層2105および/または吸収剤層2110の領域に配置または射出成形され、あるいは同じく吸収剤層2110および/または透過層2105が存在しない密封領域にも配置または射出成形されてもよい。
【0293】
図20は、本開示のさらなる実施形態によるバッフル要素を含む、本明細書において開示される創傷被覆材の任意の実施形態であってよい創傷被覆材を示す。単一のバッフル要素2610が、吸収剤層2110の大部分とオリフィス2145との間にコップ状のバリアを構成している。したがって、最初にバッフル要素2610によって形成される領域内の創傷部位から吸い込まれた創傷滲出液がオリフィス2145に到達するには、コップ状のバリアの外側の周りの経路を辿らなければならない。認識されるように、バッフル要素2610は、創傷被覆材の大部分の向きについて、創傷滲出液が辿る経路の一部が重力に反する経路であるので、創傷滲出液がオリフィス2145まで移動するのにかかる時間の短縮に対する重力の作用を低下させる。
【0294】
図17および図20の実施形態について、図15に示すような構造を有する創傷被覆材に関して説明した。しかし、透過層2105が存在しない創傷被覆材にバッフル要素を同様に適用することができることが理解されよう。
【0295】
図18は、創傷被覆材の中央領域2201の幅を横切って延びるいくつかのバッフル要素2410が設けられ、さらなるバッフル要素2412がオリフィス2145の周りの半円形経路に形成された本開示の一実施形態による少なくとも1つの要素を含む創傷被覆材の平面図を示す。
【0296】
図19は、本開示のいくつかの実施形態によるバッフル要素2410の構成を示す。このバッフル要素は、透過層2105の下方に位置する吸収剤材料2510の流路を備える。吸収剤層2110内の流路は、バッフル要素2410の上方に配置されており、それによって、透過層は、バッフル要素2410の領域においてカバー層2140に接触している。したがって、透過層2105の下面に沿って移動し、したがって、吸収剤層2110に吸い込まれなかった創傷滲出液は、吸収剤材料2510の流路に接触し、この流路によって吸収される。
【0297】
上記の代わりにまたは上記に加えて、バッフル要素は、吸収剤層2110の下方に位置し吸収剤層2110に当接する透過層2105の表面に設けられた1つまたは複数の流路を備えてもよい。使用時には、創傷被覆材に陰圧を加えると、吸収剤層2110が流路に吸い込まれる。透過層内の流路は、透過層の深さに実質的に等しい深さを有しても、あるいは透過層の深さよりも浅い深さを有してもよい。流路の寸法としては、創傷被覆材に陰圧が加えられたときに流路が吸収剤層2110によって充填されるような寸法が選択されてもよい。いくつかの実施形態によれば、透過層内の流路は、透過層2105内の吸収剤材料の流路を備える。
【0298】
バッフル要素は、一連の形状およびパターンに形成されてもよく、たとえば図28A図28Lは、バッフル要素の例示的ないくつかの異なる構成を有する創傷被覆材を示す。図28Aは、ポートまたはオリフィスの方向に揃えられた垂直構成の直線状バッフル要素を示す。図28Bは、X字形バッフル要素を示す。図28C図28Eは、概ね対角方向、水平方向、または垂直方向に揃えられた複数のバッフル要素を含む創傷被覆材の実施形態を示す。
【0299】
図28Fは、6アーム星形構成に配置され、中央部分が開放されたままであるバッフル要素を示す。図28Gは、ポートまたはオリフィスに対して遠位位置における創傷被覆材上のW字形バッフル要素を示す。図28Hでは、創傷被覆材上にX字形バッフル要素の3×3アレイが設けられている。ただし、使用されるX字形バッフル要素の数がこれよりも多くてもあるいは少なくてもよいことが理解されよう。図28Iは、複数の矩形バッフル要素を有し、創傷被覆材のポートの下方に1つまたは複数のバッフル要素が配置された実施形態を示す。図28J図28Kは、より長い対角バッフル要素および水平バッフル要素を含む創傷被覆材実施形態を示す。図28Lでは、この実施形態の創傷被覆材上に矩形バッフル要素が存在しており、各バッフル要素は異なるサイズを有する。
【0300】
本開示のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの要素は、透過層2105にビアまたはトラフのアレイを備える。図29は、ダイアモンド形のビア2210が穿孔された透過層2105を示す。各ビア2210は、ビアのパターンを通るどの直線経路も、1つまたは複数のビア2210と交差しないように配置されている。
【0301】
創傷被覆材に陰圧を加えると、吸収剤層2110がビア2210に吸い込まれ、透過層2105を通過する創傷滲出液と接触する吸収剤層の面積が広くなる。代替として、透過層2105を通過する創傷滲出液を吸収するためのさらなる吸収剤材料をビア2210に充填してもよい。ビアは、透過層2105の深さにわたって延びても、あるいは透過層の一部のみを貫通してもよい。
【0302】
重力の作用で透過層2105を通過する創傷滲出液は、実質的に直線的に透過層内を落下する。したがって、そのようなあらゆる直線経路が、ある点において1つのビア2210と交差し、したがって、滲出液はビア2210内の材料と接触させられる。吸収剤材料と接触した創傷滲出液は吸収され、透過層2105を通過する創傷滲出液の流れが停止し、場合によってはオリフィスの周りに溜まることがある未吸収の創傷滲出液の量が減る。ビアはダイアモンド形に限定されず、ビアの任意のパターンを使用してもよいことが諒解されよう。ビアは、透過層2105内部のすべての直線経路が少なくとも1つのビアと交差するように配置されることが好ましい。ビアのパターンとしては、創傷滲出液がビアに到達して吸収されないうちに透過層を通過することができる距離を最小限に抑えるようなパターンが選択されてもよい。
【0303】
図21は、少なくとも1つの要素が、創傷被覆材の中央領域2201をオリフィス2145に連結する空気流路2710を備える、本開示のいくつかの実施形態による創傷被覆材を示す。図21の実施形態において、空気流路2710は、透過層2105の縁部領域から延び、透過層をオリフィス2145に連結している。
【0304】
使用時には、吸引ポート2150に陰圧を加えることによって創傷滲出液がオリフィス2145の方へ吸い込まれる。しかし、空気流路2710は、オリフィス2145に到達する前に創傷滲出液が辿るべき比較的長い蛇行状経路を構成する。この長い経路は、創傷滲出液が透過層とオリフィスとの間の距離を横切ってフィルタ要素2130を閉塞させるまでに被覆材に陰圧を加えることのできる時間を延ばし、被覆材を交換しなければならなくなるまでに使用可能な時間を延長する。
【0305】
図22は、少なくとも1つの要素が、創傷被覆材の中央領域2201をオリフィス2145に連結する空気流路2810および2812を備える、本開示の一実施形態による創傷被覆材を示す。流路2810および2812は、実質的に互いに向かい合う中央領域2201の隅部の所で透過層に結合されている。
【0306】
図22に示す創傷被覆材は、オリフィスが閉塞されるのにかかる時間に対する重力の作用を低下させる。創傷滲出液が、重力の影響下で、空気流路2810に連結された透過層の縁部領域の方へ移動する向きに、創傷被覆材が位置する場合、重力の作用によって、空気流路2812に結合された透過層の縁部領域から離れる方向へ創傷滲出液が移動し、この逆についても同様である。したがって、図22の実施形態では、透過層に陰圧を結合する代替空気流路を設け、それによって、1つの空気流路が閉塞された場合に、残りの空気流路が開放されたままになり、陰圧を透過層2105に伝達することができ、それによって、創傷被覆材にもはや陰圧を加えることができなくなり、被覆材を交換しなければならなくなるまでの時間が延びる。
【0307】
本開示のさらなる実施形態は、透過層2105をオリフィスに連結する空気流路としてより多くの空気流路を備えてもよい。
【0308】
本開示のいくつかの実施形態によれば、カバー層2140に2つ以上のオリフィスを設けて創傷被覆材に陰圧を加えてもよい。創傷被覆材が特定の向きであることに起因して1つのオリフィスが創傷滲出液によって閉塞された場合に、少なくとも1つの残りのオリフィスは閉塞されていないことが予期されるように、2つ以上のオリフィスをカバー層2140上で分散させてもよい。各オリフィスは、創傷被覆材によって形成される創傷チャンバと流体連通し、したがって、創傷部位に陰圧を伝達することができる。
【0309】
図23は、本開示のさらなる実施形態による創傷被覆材を示す。図23の創傷被覆材は、図15A図15Bの創傷被覆材と同様であるが、カバー層2140に2つのオリフィス2145および2845が設けられている。流体連通通路が2つのオリフィスを連結しており、それによって、一方のオリフィスに加えられた陰圧が流体連通通路を介して残りのオリフィスに伝達される。オリフィス2145、2845は、カバー層2140の互いに向かい合う隅部領域に配置されている。流体連通通路は、可撓性の成形品2910を使用してカバー層2140の上面上に形成されている。可撓性の成形品が、他の適切な手段、たとえばカバー層2140上のオリフィス2145とオリフィス2845の間に配置された透過層または連続気泡多孔性発泡体層のストリップおよびストリップの上方に溶接されるかまたは付着させられ、したがって、カバー層に対して密封され、発泡体を通過する通路を形成するさらなる膜から形成されてもよいことが諒解されよう。その場合、密封膜に導管を周知のように取り付けて陰圧を加えてもよい。
【0310】
使用時には、2つのオリフィスを有する創傷被覆材が創傷部位の上方に密封されて創腔を形成し、オリフィス2145、2845の一方に外部陰圧源が加えられ、陰圧が流体連通通路を介して残りのオリフィスに伝達される。したがって、陰圧は、2つのオリフィス2145、2845を介して透過層2105に伝達され、それによって創傷部位に伝達される。重力の影響下でオリフィスに創傷滲出液が収集されることに起因してオリフィス2145、2845の一方が閉塞された場合、残りのオリフィスを空けておき、陰圧が引き続き創傷部位に伝達されるようにすべきである。いくつかの実施形態によれば、透過層2105を省略してもよく、2つのオリフィスは、陰圧を吸収剤層2110を介して創傷部位に伝達する。
【0311】
図24は、図23の実施形態の流体連通通路の側面図を示す。成形品2910がカバー層2140の頂面ならびにそれを覆うオリフィス2145および2845に対して密封されている。気体透過性で液体不透過性のフィルタ要素2130が各オリフィスに設けられている。成形品2910は、チューブ要素2220を介して外部陰圧源に結合されている。
【0312】
いくつかの実施形態によれば、流体連通通路および2つのオリフィスの長さの下方を延びる単一のフィルタ要素を使用してもよい。上記の例示的な実施形態については2つのオリフィスを有する実施形態として説明したが、2つよりも多くのオリフィスを使用し、流体連通通路がこれらのオリフィス同士の間で陰圧を伝達するのを可能にしてもよいことが理解されよう。
【0313】
図30は、カバー層2140に細長い単一のオリフィス2350が設けられた代替構成を示す。オリフィス2350の第1の端部2355および第2の端部2356が、互いに向かい合うカバー層2140の隅部領域に配置されている。可撓性の成形品2360が、オリフィス2350の周りに密封されており、陰圧をカバー層2140内をオリフィス2350の長さに沿って伝達するのを可能にする。可撓性の成形品2360は、上記に可撓性の成形品2910に関して説明したような任意の適切な手段によって形成されてもよい。
【0314】
使用時には、創傷被覆材が創傷部位の上方に密封されて創腔を形成し、オリフィスに外部陰圧源が加えられる。創傷被覆材の向きに起因して、創傷滲出液が重力の影響下でオリフィス2350の一方の端部2355の周りに収集された場合、端部2355に近いオリフィス2350の部分が閉塞される。しかし、残りの端部2356に近いオリフィスの部分を空けておき、創傷部位に引き続き陰圧が加えられるようにすべきである。
【0315】
さらなるオプションとして、被覆材は、創傷接触層上の抗菌剤、たとえばナノ結晶銀剤および/または吸収剤層内の硫化銀ジアジンを含んでもよい。これらは別々に使用されてもあるいはまとめて使用されてもよい。これらはそれぞれ、創傷中の微生物および吸収マトリックス中の微生物を殺す。さらなるオプションとして、他の活性成分、たとえばイブプロフェンのような鎮痛剤を含めてもよい。成長因子のような細胞活動を強化する薬剤、または組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMPS)もしくは亜鉛キレート剤のようなマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤のような酵素を阻害する薬剤を利用してもよい。さらなるオプションとして、活性炭、シクロデキストリン、ゼオライトのような臭トラッピング要素を吸収剤層に含めてもあるいはフィルタ層の上方にさらなる層として含めてもよい。
【0316】
図31は、本開示の一実施形態による透過層2105の第1の上面3700およびさらなる下面3702を示す。図31に示す実施形態では、織物層の繊維3703が第1の表面3700とさらなる表面3702との間を延びている。本開示のさらなる実施形態によれば、発泡体層を透過層2105として使用する場合、発泡体を形成する連結された撚り糸がスペーサ要素として働くことが諒解されよう。図31に示すように、弛緩動作モード、すなわち使用時には、創傷被覆材に陰圧が加えられないか、あるいは創傷被覆材に陰圧が加えられるが、創傷被覆材に外力が作用することはなく、繊維3703は上面および下面に実質的に垂直に延び、各表面が間隔を置いて配置された実質的に平行な構成に維持される。
【0317】
図32は、被覆材の外側に外力が加えられるときの透過層2105を示す。この外力は、図18に矢印Aによって示される圧縮力および/または図32に矢印Bによって示される横力であってもよい。図示のように、圧縮力または横力のいずれかが作用して繊維3703が一方の側に傾斜している。この場合、上面と下面が互いに対して横方向にずれるとともに、層の厚さが、弛緩動作モードにおける図31に示されている離隔距離rから図32に示されている圧縮距離cへと薄くなる。このように厚さを薄くすると、被覆材が陰圧を受けたときでも被覆材を効果的にある程度「たわませる」ことができる。被覆材に作用する力が被覆材の表面積全体にわたって生じる場合もあれば、1つまたは複数の特定の領域にのみ生じる場合もあることが諒解されよう。そのような状況では、被覆材のある領域が弛緩動作モードであり、他の領域が圧縮動作モードであってもよい。図32に示すように、透過層に力が加えられると、上面と下面を分離する繊維は、一方の側に傾斜し共通の傾斜角を有する傾向がある。
【0318】
本明細書全体にわたって弛緩動作モードおよび押付け動作モードを参照する。弛緩動作モードが、陰圧が加えられないときまたは陰圧が加えられるときのいずれでも材料の自然な状態に対応することを理解されたい。いずれの状況でも、たとえば患者の動きまたは衝撃によって生じる外力がないことが明らかである。これに対して、押付け動作モードは、圧縮力であるか、横力であるか、その他の力であるかを問わず外力が創傷被覆材に加わるときに生じる。そのような力は、重度の傷を生じさせるか、あるいは創傷の治癒を妨げることがある。
【0319】
図33は、本開示のある実施形態がどのように負荷力を相殺するように働くこともできるかを示す。図33に示すように、透過層2105の上面3700の接触領域3900に対して力が加えられた場合、この力は、透過層を横切り通過して、下方の創傷部位に対してより広い散逸領域3901にわたって加えられる。3Dニットを透過層として使用する場合、このような力の散逸は、比較的剛性の高いスペーサ要素が少なくともある程度の横方向剛性を透過層にもたらすために生じる。
【0320】
図34は、いくつかの実施形態の透過層2105および吸収剤層2110をより詳しく示す。本開示のある実施形態によれば、吸収剤層2110は、透過層2105の上面3700の近位に配置され、上面3700には結合されない。吸収剤層2110が上面3700に結合されないとき、吸収剤層2110は、横力またはせん断力が創傷被覆材に加えられたときに下方の透過層に対して横方向に移動することもできる。また、図35に示す圧縮力が創傷被覆材に作用するときに、吸収剤層をさらに圧縮することができる。図35に示すように、圧縮力下で、吸収剤層2110の厚さは、図34に示す非圧縮時厚さxから図35に示す圧縮時距離yへと薄くなる。この圧縮力は、上述のように透過層の上面と下面をずらす働きもし、したがって、被覆材の「たわみ」を強化する。上面4201が、創傷被覆材に横力またはせん断力が加えられた状態で吸収剤層の下面4202に対して横方向に並進できることが、図36により詳しく示されている。この横方向の動きによって、吸収剤層2110の厚さxが薄くなり、吸収剤層の上面と下面が互いに対してずれる。この作用は、それ自体が、創傷被覆材の全体または一部に加えられるせん断力が下方の創床に伝達されるのを十分に妨げることができる。透過層における対応する作用もこのような伝達を十分に妨げることができる。しかし、組合せによってこの緩衝効果が強化される。創床が植皮領域を備える場合、せん断力を低下させると特に有利であることがある。
【0321】
使用時には被覆材を「さかさまに」使用しても、斜めに使用しても、あるいは垂直に使用してもよいことに留意されたい。したがって、上部および下部の参照は説明のためのみに使用されている。
【0322】
図37は、図15A図16に示す被覆材の実施形態の一部の断面を示す。特に、図37は、下面2101と貫通穴として形成された複数の穿孔2104とを含む創傷接触層2102の拡大図を示す。創傷接触層の上面2104は透過層2105の第1の層2300に当接する。透過層2105のさらなる上部層2301は、第1の層から間隔を置いて配置される。透過層の第1の層およびさらなる層は、透過層の2つの層を分離する弾力性および可撓性を有するピラーとして働く複数のモノフィラメント繊維スペーサ2302によって間隔を置いて離れた関係に維持される。透過層の上部層2301は、たとえば、高吸収性吸収剤粒状物質と空間を置いて配置された繊維状セルロース材料のパッドとして形成された吸収剤2110の下面に隣接する。
【0323】
図38は、3D繊維透過層の下部層をより詳しく示す。3D繊維層2105は、編み構造によって持ち上げられた下部編み層および上部編み層として形成される。編目の行はステッチのコースと呼ばれることがある。編目の列はホエールと呼ばれることがある。単一のモノフィラメント繊維が3D繊維として編まれて複数の分離撚り糸が形成される。
【0324】
図38に示すように、透過層2105の下部層内の相互に連結された編目同士の間に開口または開口部が形成されている。使用時には、液体および半固形物、たとえば粘性のスラリ、生物学的残屑などの浮遊物質、および固形物質を含む創傷滲出液が、上向きに創傷接触層の穿孔2104を通過し、透過層の第1の層2300の編み構造における開口部を通過する。相互に連結された編目同士の間の開口部は、平均開口面積が約2250ミクロン~450ミクロンの範囲である。透過層の第1の層における特定の開口面積は、下部層の材料および製造方法によって求められる。図39は、第1の層の上方の(すなわち、創傷からより遠く離れた)さらなる層における開口部の開口面積に下部層の開口部よりも大きい開口面積を有する開口部をどのように含め得るかを示す。このように、半固形物および固形物質を含む創傷滲出液が創傷部位における創傷床から上向きに創傷被覆材内に移動するので、下部層の比較的小さい開口部2400を通過できるほど小さいサイズを有する任意の粒状物質は上部領域のより面積の広い開口部2501を確実に通過することができる。このことは、固形物質の形をした残屑が上部層と下部層との間のモノフィラメント繊維同士の間の間隙領域に溜まるのを回避する助けになる。図39に示すように、上部層2301は、下部層2300の開口部2400と同様の開口部2500を含んでよい。しかし、編みプロセス時に、より開口面積の広い開口部2501が上部層の表面全体にわたって散在するように上面が編まれる。図39に示すように、より開口面積の広い開口部2501はかなり広い開口範囲を有してよい(2700ミクロン~800ミクロンの間に示されている)。したがって、下部層2300は、気体および液体が自由に通過するのを可能にするが、過度に大きい固形粒状物質および半固形粒状物質が透過層2105の間隙領域に移るのを妨げる開口部2400を有する濾過層としてある程度働く。このことは、透過層に沿った流路を開放した状態に維持する助けになる。
【0325】
下部領域のあらゆる開口部よりも広い開口面積を有する開口部を透過層の上部層に設けることによって、透過層の上部層と下部層との間の間隙領域に固形粒状物質が蓄積するのが回避される。その理由は、あらゆる固形物質または半固形物質が流路に沿って流れ、最終的により大きい開口部を上向きに通過するのが可能になり、そこで材料が高吸収性吸収剤材料/吸収剤材料によって吸収されるからである。
【0326】
吸収剤層2110は、陰圧療法を施す間に収集される液体を保持する。この層を透過層の層と流体連通させ、好ましくは接触させることによって、透過層2105の領域が湿潤環境に維持される。このことは、使用時に滲出液が蓄積し痂皮を形成するのを避ける助けになる。
【0327】
図40は、創傷被覆材の透過層として利用することのできる代替材料を示す。詳細には、図40は、透過層として利用することのできる3D編み材料の下面を示す。創傷滲出液および空気が創傷から、図20に示す表面上に配置される創傷接触層を通過し開口部自体を通過するのを可能にする開口部2600が3D編み材料の下面に形成される。図41は、図40に示す材料の上面を示し、かつより大きい開口部2700が上面にどのように形成され得るかを示す。
【0328】
透過層が3D編み層、たとえばモノフィラメント層によって間隔を置いて配置された2つの層として形成される本開示のある実施形態について説明したが、本開示のある実施形態がそのような材料の使用に制限されないことが諒解されよう。いくつかの実施形態では、そのような3D編み材料の代替例として、様々な材料の1つまたは複数の層を利用してよい。各々の場合に、本開示の実施形態によれば、透過層の各層に形成される開口部は、使用時に創傷に近接して配置される被覆材の側から離れるほど広くなる。いくつかの実施形態において、透過層は連続気泡発泡体の複数の層によって形成されてよい。いくつかの実施形態において、発泡体は網状連続気泡発泡体である。発泡体は親水性であるかまたは水性の流体を吸い上げることができることが好ましい。各層の孔径としては、使用時に創傷部位に最も近接する発泡体層において孔が最小サイズを有するような孔径が選択される。さらなる発泡体層として1つの発泡体層のみを使用する場合、その発泡体層は、第1の層の孔径よりも大きい孔径を含む。このことは、固形微粒子が下部層に閉じ込められるのを回避する助けになり、したがって、下部層を、空気を被覆材全体にわたって透過させることが可能である開放構成に維持する助けになる。ある実施形態では、2つ、3つ、4つ、またはそれよりも多くの発泡体層を含めてよい。各発泡体層は、たとえば、大きい孔径を有する発泡体を選択し、孔に詰まる材料にこの発泡体を範囲を狭くしながら繰り返し浸漬させることによって一体に形成されてよく、あるいは代替として、様々な種類の発泡体を積層して層状構成にするかまたは発泡体のそのような層を所定の位置に周知の方法で固定することによって、複数の発泡体層によって形成される透過層を設けてよい。
【0329】
本開示のある実施形態によれば、透過層は、発泡体または3D編み材料の代わりに複数のメッシュ層によって形成される。たとえば、微細なガーゼメッシュを透過層の創傷に面する側に利用してよく、より大きい孔径を有するヘシアンメッシュを、使用時に創傷から離れる方に面するガーゼメッシュの遠位側に配置してよい。1つ、2つ、3つ、またはそれよりも多くのメッシュ層を縫い付けたり、付着させたりすることのような適切な方法で互いに固定してよい。得られる繊維のマットは、空気を被覆材内を透過させることのできる透過層を形成するが、被覆材内で創傷接触側から離れる方向におけるメッシュの開口部サイズを適切に選択することによって、下部層での固形粒状物質の蓄積を回避することができる。
【0330】
図42は、ポンプ2800と組み合わされた創傷被覆材2100を含むTNP創傷治療の実施形態を示す。上述のように、創傷被覆材2100は、制限なしに創傷被覆材100を含む本明細書において開示される任意の創傷被覆材実施形態であってよく、あるいは本明細書において開示される任意の数の創傷被覆材実施形態の各特徴の任意の組合せを有してよい。ここで、被覆材2100は、前述のように創傷の上方に配置されてもよく、次いで、ポート2150に導管2220が連結されてもよい。ただし、いくつかの実施形態において、被覆材2100には、少なくとも導管2220の一部がポート2150に事前に取り付けられていてもよい。被覆材2100は、すべての創傷被覆材要素(ポート2150を含む)が事前に取り付けられ、単一のユニットとして一体化された単一の物品として設けられることが好ましい。次に、創傷被覆材2100は、導管2220を介して、ポンプ2800などの陰圧源に連結されてもよい。ポンプ800を小形化し持ち運び可能とすることができるが、より大きな従来のポンプを被覆材2100と一緒に使用してもよい。いくつかの実施形態において、ポンプ2800は、被覆材2100上に取り付けられるかまたは搭載されてもあるいは被覆材2100に隣接する位置に取り付けられるかまたは搭載されてもよい。たとえば被覆材の交換時に有用である場合がある、創傷被覆材2100に至る導管2220のポンプからの切り離しを可能にするようにコネクタ2221が設けられてもよい。
【0331】
図43A図43Dは、患者の創傷部位を治療するのに使用されているTNP創傷治療システムの一実施形態の使用法を示す。図43Aは、創傷部位2190が洗浄され治療の準備が行われている状態を示す。ここで、創傷部位2190を囲む正常な皮膚を洗浄し、余分な毛を除去するかまたは剃ることが好ましい。必要に応じて、滅菌生理食塩水によって創傷部位2190を潅注してもよい。場合によっては、創傷部位2190を囲む皮膚に皮膚保護剤を塗ってもよい。必要に応じて、発泡体またはガーゼのような創傷充填材料を創傷部位2190に配置してもよい。このことは、創傷部位2190がより深い創傷である場合に好ましいことがある。
【0332】
創傷部位2190を囲む皮膚が乾燥した後、次に図43Bを参照して、創傷被覆材2100を創傷部位2190の上方に位置させ配置してもよい。創傷接触層2102が創傷部位2190の上方に位置しならびに/または創傷部位2190に接触するように創傷被覆材2100を配置することが好ましい。いくつかの実施形態では、場合によっては、創傷部位2190の上方に創傷被覆材2100を配置する前に除去すべき任意の剥離層によって保護されてもよい接着剤層が、創傷接触層2102の下面2101上に設けられる。被覆材2100は、ポート2150が被覆材2100の残りの部分に対して隆起した位置に配置されて流体がポートの周りに溜まるのを避けるように位置することが好ましい。いくつかの実施形態において、被覆材2100は、ポート2150が創傷を直接覆わず、創傷と同じ高さまたは創傷よりも高い点に配置されるように位置する。TNPが適切に密封されるのを助けるために、被覆材2100の縁部は、折り目をつけられたり折り畳まれたりしないように平滑にされることが好ましい。
【0333】
次に、図43Cを参照する。被覆材2100がポンプ2800に連結されている。ポンプ2800は、被覆材2100を介し、通常は導管を通して創傷部位に陰圧を加えるように構成されている。いくつかの実施形態では、上記に図42において説明したように、コネクタを使用して被覆材2100からの導管をポンプ2800に接合してもよい。ポンプ2800によって陰圧が加えられると、被覆材2100は、いくつかの実施形態において、部分的に潰れ、被覆材2100の下方の空気の一部またはすべてが真空排気される結果としてしわの寄った外観を呈する。いくつかの実施形態において、ポンプ2800は、被覆材2100と創傷部位2190を囲む皮膚との間の界面など被覆材2100に漏れがあるかどうかを検出するように構成されてもよい。漏れが見つかった場合、治療を続ける前にそのような漏れを解消しておくことが好ましい。
【0334】
図43Dを参照する。被覆材2100の縁部の周りに追加の固定ストリップ2195が取り付けられてもよい。そのような固定ストリップ2195は、状況によっては、創傷部位2190を囲む患者の皮膚に対して追加的な密封を実現するうえで有利である場合がある。たとえば、固定ストライプ2195は、患者の動きがより激しいときのためにさらなる密封を実現してもよい。場合によっては、特に、到達するのが困難であるかまたは起伏のある領域の上方に被覆材2100を配置する場合、ポンプ2800を作動させる前に固定ストリップ2195を使用してもよい。
【0335】
創傷部位2190の治療は、創傷が所望の治癒レベルに達するまで継続することが好ましい。いくつかの実施形態では、ある期間が経過した後、または被覆材が創傷流体で満杯になった場合に、被覆材2100を交換することが望ましいことがある。そのような交換時には、ポンプ2800を維持し、被覆材2100のみを交換してもよい。
【0336】
本開示のいくつかの実施形態では、患者による使用に関する指示の順守を改善する助けになり、患者の生活の質を改善する助けになり、さらに臨床医が患者の創傷を観察し監視する助けになる創傷被覆材が提供される。
【0337】
当業者には、上述の実施形態のうちのいずれかに関連して説明した各特徴が、様々な実施形態間で相互に交換できるように適用可能であってよいことが明らかになろう。上述の実施形態は、本発明の様々な特徴を示すための例である。
【0338】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、「comprise(備える)」および「contain(含む)」ならびにこれらの語の変形形態は、「~を含むがそれらに限定されない」を意味し、他の部分、添加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図したものではない(かつ実際に除外しない)。
【0339】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体にわたって、単数形は、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて複数形を包含する。特に、本明細書では、不定冠詞が使用されている場合、文脈に応じて複数形を除外することが必要である場合を除いて、単数形だけではなく複数形も考慮されていることを理解されたい。本開示の特定の態様、実施形態、または例に関連して説明した要素、整数、特徴、化合物、化学的部分、または化学基は、本明細書で説明した実施形態または例の他のいずれかの態様に、適合不能でないかぎり適用可能であることを理解されたい。(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示されるすべての特徴ならびに/またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて任意の組合せで組み合わされてよい。本発明は、(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)本明細書において開示される各特徴の任意の新規の特徴または任意の新規の組合せ、あるいはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスの各ステップの任意の新規のステップまたは任意の新規の組合せに拡張される。
【0340】
本出願に関連して本明細書と同時にまたは本明細書よりも前に出願され、本明細書と一緒に公開されたすべての論文および文献が読者の関心の対象となり、すべてのそのような論文および文献の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0341】
100 創傷被覆材
101 創傷接触層
102 頂部膜
103 ハイドロセルラ発泡体層
104 活性炭布層、臭気除去層
105 エアレイド材料層、吸収剤層
106 3次元編みスペーサ布、遮蔽層
110 境界領域
112 中央領域
114 領域
1102 有孔カバー層
1106 有孔遮蔽層
1200 被覆材
1202 マスキング層
1204 窓
1210 被覆材
1212 マスキング層
1214 穴
1220 被覆材
1222 マスキング層
1224 窓
2100 創傷被覆材
2101 下面
2102 創傷接触層
2103 上面
2104 穿孔
2105 透過層
2107 不透明層、マスキング層
2110 吸収剤材料層
2115 外側流路
2130 フィルタ
2140 カバー層
2145 オリフィス
2146 開口
2150 ポート
2152 スペーサ要素
2153 スペーサ要素
2154 コネクタ部
2156 半球体部
2190 創傷部位
2195 固定ストリップ
2200 境界領域
2201 中央隆起領域
2202 隅部領域
2210 ビア
2220 チューブ要素
2300 下部層
2301 上部層
2350 オリフィス
2355 第1の端部
2356 第2の端部
2400 開口部
2510 吸収剤材料流路
2600 開口部
2610 バッフル要素
2700 開口部
2710 空気流路
2800 ポンプ
2810 空気流路
2812 空気流路
2845 オリフィス
2910 成形品
3700 上面
3702 下面
3703 繊維
4201 上面
4202 下面
T1 期間
T2 期間
P1 所定の陰圧
P2 所定の陰圧
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図28D
図28E
図28F
図28G
図28H
図28I
図28J
図28K
図28L
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
図43C
図43D