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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】伸縮性基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
H05K1/02 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019239050
(22)【出願日】2019-12-27
(62)【分割の表示】P 2018527378の分割
【原出願日】2017-02-06
(65)【公開番号】P2020047959
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2016137323
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小椋 真悟
(72)【発明者】
【氏名】末益 龍夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅晃
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08332053(US,B1)
【文献】特開2013-187380(JP,A)
【文献】特開2011-034822(JP,A)
【文献】実開昭60-124056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する基材と、
前記基材上に設けられた導体部と、
前記導体部を覆うカバーレイと、を備え、
前記導体部は、
相互に交差していると共にその交差点で相互に接続された複数の導体線と、
平面視において、前記複数の導体線により形成された開口部と、を含
前記導体線の全体は、直線状に延在しており、
前記導体線は、前記導体部の延在方向に対して斜めに延在しており、
下記(6)式を満たす伸縮性基板。
45°≦θ ≦75° … (6)
但し、上記(6)式において、θ は、前記導体部の延在方向に沿った第2の仮想直線と前記導体線の延在方向に沿った第3の仮想直線との間のなす角度である。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性基板であって、
平面視において、前記導体部の延在方向に対して直交する方向に延在する第1の仮想直線が少なくとも2つの前記導体線と交差する伸縮性基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮性基板であって、
前記導体部は、相互に同一形状とされた複数の前記開口部を含み、
複数の前記開口部は、前記導体部の延在方向に沿って繰り返し並べられている伸縮性基板。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の伸縮性基板であって、
下記(1)式又は(2)式の少なくとも一方の式を満たし、且つ、下記(3)式を満たす伸縮性基板。
≦100μm … (1)
/W≦0.1 … (2)
2≦P/W≦10 … (3)
但し、上記(1)~(3)式において、Wは前記導体線の幅であり、Wは前記導体部の幅であり、Pは隣り合う前記導体線同士のピッチである。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の伸縮性基板であって、
下記(4)式を満たす伸縮性基板。
0.2≦H/W≦4 … (4)
但し、上記(4)式において、Hは前記導体線の高さである。
【請求項6】
請求項1~の何れか1項に記載の伸縮性基板であって、
前記導体線は、伸縮性を有する導電性材料を含み、
前記導電性材料は、導電性粒子とエラストマーとを含む伸縮性基板。
【請求項7】
請求項1~の何れか1項に記載の伸縮性基板であって、
前記導体線は、
前記基材に対向する第1の面と、
前記第1の面と反対側の第2の面と、
前記第1の面と前記第2の面との間に介在する第3の面と、を有し、
前記第1の面の面粗さは、前記第2の面の面粗さに対して相対的に大きく、
前記第1の面の面粗さは、前記第3の面の面粗さに対して相対的に大きい伸縮性基板。
【請求項8】
請求項に記載の伸縮性基板であって、
前記基材は、断面視において、直線状とされた主面を含み、
下記(7)式を満たす伸縮性基板。
90°≦θ≦120° … (7)
但し、上記(7)式において、θは前記主面に沿った第4の仮想直線と前記第3の面に沿った第5の仮想直線との間のなす角度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮性フレキシブル回路基板として、配線層が波形のジグザグパターン形状となっており、形状的に伸縮可能となっているものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-187380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の伸縮性基板では、伸張による基板の電気抵抗値の増大を十分に抑えることが難しい。このため、伸張に対する伸縮性基板の耐久性が劣る、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、伸張に対する耐久性を向上できる伸縮性基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る伸縮性基板は、伸縮性を有する基材と、前記基材上に設けられた導体部と、を備え、前記導体部は、相互に交差する複数の導体線と、平面視において、前記複数の導体線により形成された開口部と、を含む伸縮性基板である。
【0007】
[2]上記発明において、平面視において、前記導体部の延在方向に対して直交する方向に延在する第1の仮想直線が少なくとも2つの前記導体線と交差してもよい。
【0008】
[3]上記発明において、前記導体部は、相互に同一形状とされた複数の前記開口部を含み、複数の前記開口部は、前記導体部の延在方向に沿って繰り返し並べられていてもよい。
【0009】
[4]上記発明において、下記(1)式又は(2)式の少なくとも一方の式を満たし、且つ、下記(3)式を満たしてもよい。
≦100μm … (1)
/W≦0.1 … (2)
2≦P/W≦10 … (3)
但し、上記(1)~(3)式において、Wは前記導体線の幅であり、Wは前記導体部の幅であり、Pは隣り合う前記導体線同士のピッチである。
【0010】
[5]上記発明において、下記(4)式を満たしてもよい。
0.2≦H/W≦4 … (4)
但し、上記(4)式において、Hは前記導体線の高さである。
【0011】
[6]上記発明において、前記導体線は、前記導体部の延在方向に対して斜めに延在していてもよい。
【0012】
[7]上記発明において、下記(5)式を満たしていてもよい。
30°≦θ<90° … (5)
但し、上記(5)式において、θは、前記導体部の延在方向に沿った第2の仮想直線と前記導体線の延在方向に沿った第3の仮想直線との間のなす角度である。
【0013】
[8]上記発明において、下記(6)式を満たしていてもよい。
45°≦θ≦75° … (6)
【0014】
[9]上記発明において、前記導体線は、伸縮性を有する導電性材料を含み、
前記導電性材料は、導電性粒子とエラストマーとを含んでもよい。
【0015】
[10]上記発明において、前記導体線は、前記基材と対向する第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に介在する第3の面と、を有し、前記第1の面の面粗さは、前記第2の面の面粗さに対して相対的に大きく、前記第1の面の面粗さは、前記第3の面の面粗さに対して相対的に大きくてもよい。
【0016】
[11]上記発明において、前記基材は、断面視において、直線状とされた主面を含み、下記(7)式を満たしてもよい。
90°≦θ≦120° … (7)
但し、上記(7)式において、θは前記主面に沿った第4の仮想直線と前記第3の面に沿った第5の仮想直線との間のなす角度である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の導体線により形成された開口部が伸張により変形可能となっている。これにより、伸張に対する伸縮性基板の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る外部回路同士を接続する伸縮性基板を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板を示す平面図である。
図3図3は、図2のIII部の部分拡大図である。
図4図4は、本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の第1変形例を示す平面図である。
図5図5は、本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の第2変形例を示す平面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7(A)~図7(E)は、本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の製造方法を示す断面図である。
図8図8は、本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の作用を説明するための平面図である。
図9図9は、本発明の他の形態に係る伸縮性基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態に係る外部回路同士を接続する伸縮性基板を示す斜視図、図2は本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板を示す平面図、図3図2のIII部の部分拡大図、図4は本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の第1変形例を示す平面図、図5は本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の第2変形例を示す平面図、図6図3のVI-VI線に沿った断面図である。
【0021】
本実施形態における伸縮性基板10は、例えば、図1に示すように、リジッド基板やフレキシブルプリント配線板(FPC)等の外部回路100同士を電気的に接続する配線基板である。このような伸縮性基板10は、特に限定しないが、例えば、産業用ロボットなどの可動部・屈曲部といった、特に、伸縮が必要な箇所に適用される。
【0022】
この伸縮性基板10は、図2図3、及び図6に示すように、基材20と、基材20上に設けられた接着部30と、接着部30上に設けられた導体部40とを備えている。
【0023】
基材20は、矩形状に形成された板状の部材である。基材20の主面21(基材20の主面のうち基材20と接する主面と反対側の主面21)は、断面視において、直線状とされた略平坦な面となっている。この基材20は、伸縮性を有する材料により構成されている。基材20を構成する材料のヤング率としては、0.1MPa~100MPaであることが好ましい。このような基材20としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等をシート状にした弾性体シートや、ナイロン、ポリエステル、アクリル、又はポリアミド等の樹脂材料を繊維状又は織物状にしたものを用いることができる。
【0024】
基材20の厚さは、伸縮性基板10の伸縮性の向上を図る観点から、比較的に小さく設定することが好ましい。伸縮性基板10が適用される箇所にもよるが、この基材20の厚さとしては、具体的には、1mm未満であることが好ましく、0.3mm未満であることがより好ましく、0.1mm未満であることがさらにより好ましい。
【0025】
接着部30は、基材20上に直接設けられている。接着部30は、基材20と導体部40とを相互に接着している。また、接着部30は、導体部40が分離しないように一体に保持している。
【0026】
本実施形態の接着部30は、図6に示すように、平坦部31と、突出部32とを含んでいる。平坦部31は、接着部30において層状に形成される部分である。この平坦部31の上面311は、断面視において、直線状とされた略平坦な面となっている。平坦部31の厚さとしては、5μm~100μmであることが好ましい。
【0027】
突出部32は、平坦部31と一体的に形成されている。この突出部32は、導体部40に対応して設けられている。突出部32は、平坦部31から基材20から離れる方向に向かって突出している。
【0028】
突出部32のうち導体部40と接触する接着部接触面321は、導体部40の導体線411(後述)の幅方向に沿った断面を視た場合に、導体部40の凹凸形状に対して相補的となる凹凸形状とされている。また、この接着部接触面321は、導体線411の延在方向に沿った断面を視た場合も、導体部40の凹凸形状に対して相補的となる凹凸形状とされている。なお、図6では、本実施形態の伸縮性基板10を分かり易く説明するため、接着部接触面321及び導体部接触面412の凹凸形状を誇張して図示している。
【0029】
このような接着部30としては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等をシート状にした弾性体シートや、ナイロン、ポリエステル、アクリル、又はポリアミド等の樹脂材料を用いることができる。
【0030】
導体部40は、接着部30上に直接設けられている。本実施形態では、図2に示すように、13個の導体部40が図中X方向に延在しており、図中Y方向に並列されている。隣り合う導体部40同士が互いに電気的に絶縁されていれば、隣り合う導体部40同士のピッチは、特に限定されない。
【0031】
それぞれの導体部40は、図2に示すように、配線部41と、当該端子部42とを含んでいる。この配線部41と端子部42とは、一体的に形成されている。この「一体的に」とは、部材同士が分離しておらず、且つ、同一材料(同一粒径の導電性粒子、エラストマー等)により一体の構造体として形成されていることを意味する。
【0032】
それぞれの配線部41の長手方向の両端には、矩形状の端子部42が設けられている。この端子部42が、それぞれ外部回路100に電気的に接続される。なお、端子部42の形状は、外部回路100との接続構造に応じて、種々の形状を採用することができる。
【0033】
配線部41は、図3に示すように、複数の導体線411を含んでいる。複数の導体線411は、相互に交差するように配列されている。これにより、配線部41は、網目状に形成されている。
【0034】
より詳細には、導体線411aは、X方向に対して+45°に傾斜した方向(以下、単に「第1の方向」とも称する。)に沿って直線状に延在しており、複数の導体線411aは、第1の方向に対して実質的に直交する方向(以下、単に「第2の方向」とも称する。)に等ピッチP11に並べられている。これに対し、導体線411bは、第2の方向に沿って直線状に延在しており、複数の導体線411bは、第1の方向に等ピッチP12で並べられている。そして、これら導体線411a、411bが相互に直交することで、網目状の配線部41が形成されている。なお、本明細書において、ピッチとは中心間距離のことをいう。また、導体線411は、上述の導体線411a、411bを総称するものである。
【0035】
本実施形態では、平面視において、配線部41の幅方向(配線部41の延在方向に対して直交する方向)に延在する第1の仮想直線Lが少なくとも2つの導体線411と交差している。例えば、第1の仮想直線Lを、複数の導体線411同士の交点上に延在させても、第1の仮想直線Lが2つの導体線411と交差している(すなわち、第1の仮想直線Lが2つ以上の導体線411の交点と交差している。)。
【0036】
また、本実施形態では、導体線411は、配線部41の延在方向に対して斜めに延在している。より具体的には、導体線411の延在方向に沿った第3の仮想直線Lが、配線部41の延在方向に沿った第2の仮想直線Lに対して斜めに延在している。このため、導体線を配線部の延在方向に対して平行且つ垂直な方向に延在させた場合に比べて、伸縮性基板10の伸縮性の向上を図りつつ、導体部40における電気抵抗値の低減を図ることができる。
【0037】
この場合、配線部41の延在方向に沿った第2の仮想直線Lと導体線411の延在方向に沿った第3の仮想直線Lとの間のなす角度θが、下記(8)式を満たすように設定されていることが好ましく、下記(9)式を満たすように設定されていることがより好ましい。なお、角度θは、第2の仮想直線Lと導体線411aの延在方向に沿った第3の仮想直線Lとの間のなす角度θ11と、第2の仮想直線Lと導体線411bの延在方向に沿った第3の仮想直線Lとの間のなす角度θ12とを総称する角度である。
30°≦θ<90° … (8)
45°≦θ≦75° … (9)
【0038】
なお、本実施形態のように、導体線411を配線部41の延在方向に対して45°に傾斜した方向に延在させることで、配線部41の延在方向(X方向)に沿って伸縮性基板10が伸張した場合だけでなく、配線部41の幅方向(Y方向)に沿って伸縮性基板10が伸張した場合でも、伸縮性基板10の伸縮性が損なわれ難い。
【0039】
また、導体線411の幅Wは、下記(10)式を満たすように設定されていることが好ましい。なお、幅Wは、導体線411aの幅W11と、導体線411bの幅W12とを総称する幅である。
≦100μm … (10)
【0040】
また、導体線411の幅Wと、配線部41の幅Wとの関係が、下記(11)式を満たすように設定されていることが好ましく、下記(12)式を満たすように設定されていることがより好ましい。なお、本実施形態において、配線部41の側端部が導体線411により閉じられている場合、配線部41の幅Wとは、配線部41の両側の側端部のそれぞれに存在する導体線411同士の交点間の距離のことをいう(図3参照)。また、特に図示しないが、配線部の側端部が導体線により閉じられていない場合、配線部の幅とは、配線部の最外側に存在する導体線同士の交点よりも外側に突き出る導体線の先端同士の間の距離のことをいう。
/W≦0.1 … (11)
0.01≦W/W≦0.1 … (12)
【0041】
また、本実施形態の配線部41では、上記(10)式及び(11)式の少なくとも一方を満たし、且つ、導体線411の幅Wと、隣り合う導体線411同士のピッチPとの関係が、下記(13)式を満たすように設定されていることが好ましい。なお、ピッチPは、隣り合う導体線411a同士のピッチP11と、隣り合う導体線411b同士のピッチP12とを総称するピッチである。
2≦P/W≦10 … (13)
【0042】
なお、ピッチPと幅Wとの比(P/W)は、5~10であることがより好ましく(5≦P/W≦10)、おおよそ5であることがさらにより好ましい(P/W≒5)。
【0043】
なお、配線部41の構成は、特に上述に限定されない。例えば、本実施形態では、導体線411aのピッチP11と導体線411bのピッチP12とを実質的に同一としているが(P11=P12)、特にこれに限定されず、導体線411aのピッチP11と導体線411bのピッチP12とを異ならせてもよい(P11≠P12)。また、本実施形態では、導体線411aの幅W11と導体線411bの幅W12とを実質的に同一としているが(W11=W12)、特にこれに限定されず、導体線411aの幅W11と導体線411bの幅W12とを異ならせてもよい(W11≠W12)。
【0044】
配線部41は、複数の直線状の導体線411を相互に交差させることで形成された開口部415を含んでいる。本実施形態では、複数の導体線411が相互に直交することで、四角形状(菱形状)の複数の開口部415が形成されている。本実施形態では、伸縮性基板10の伸張に伴い、開口部415が変形することで、配線部41が伸縮性基板10の伸張に追随することができる。
【0045】
複数の開口部415は、相互に同一の形状を有している。この相互に同一の形状を有する複数の開口部415が、配線部41の延在方向(X方向)に沿って繰り返し並べられている。本実施形態では、配線部41の延在方向に繰り返し並べられた複数の開口部415が、配線部41の幅方向(Y方向)に2列に並列されている。この2列に並ぶ複数の開口部415は、全て同一の形状を有しており、配線部41に含まれるすべての開口部415が同一の形状となっている。なお、相互に同一の形状とされた複数の開口部415は、3列以上に並列されていてもよい。
【0046】
なお、開口部415の形状は、特に上述に限定されない。例えば、正三角形、2等辺三角形、直角三角形等の三角形でもよいし、平行四辺形、台形等の四角形でもよい。また、開口部415の形状が、六角形、八角形、十二角形、二十角形等のn角形や、円、楕円、星形等でもよい。このように、種々の図形単位を繰り返して得られる幾何学模様を、開口部415の形状として用いることができる。
【0047】
なお、本実施形態の導体線411は、直線状とされているが、特にこれに限定されず、曲線状、馬蹄状、ジグザグ線状等であってもよい。例えば、図4では、導体線411Bは、サインカーブ状の曲線状となっている。この場合、配線部41Bは、複数の曲線状の導体線411Bが相互に交差することで、配線部41Bの側端部のそれぞれに形成され、導体線411Bの曲線部分と直線部分により形成された複数の開口部415Bと、配線部41Bの略中央に形成され、菱形状に形成された複数の開口部415Cとが含まれている。
【0048】
図4に示す形態では、相互に同一形状とされた複数の開口部415Bは、配線部41Bの延在方向に沿って繰り返し並べられている。また、相互に同一形状とされた複数の開口部415Cも、配線部41Bの延在方向に沿って繰り返し並べられている。この場合、配線部41Bの最外側において、導体線411Bの編曲点に曲率を持たせることで、配線部41Bの最外側に応力が集中するのを抑えることができる。
【0049】
また、図5に示す形態のように、配線部41Cにおいて、平面視において、複数の導体線411Cにより形成され、相互に同一形状とされた複数の略円形状の開口部415Dが、配線部41Cの延在方向に沿って繰り返し並べられていてもよい。この場合において、角度θは、上記(8)式を満たしていることが好ましく、上記(9)式を満たしていることがより好ましい。なお、本形態において、第3の仮想直線Lは、開口部415Dの輪郭及び開口部415Dの中心を通り配線部41Cの延在方向に沿った仮想直線の交点Tと、開口部415Dの輪郭及び開口部415Dの中心を通り配線部41Cの延在方向と直交する方向に沿った仮想直線の交点Tとの2点を通る仮想直線とする。
【0050】
次に、本実施形態の導体線411について、さらに詳細に説明する。
【0051】
本実施形態の導体線411は、図6に示すように、伸縮性を有する導電性材料により構成されており、導電性粒子416と、エラストマー417とを含んでいる。導電性粒子416は、エラストマー417中に分散されており、エラストマー417がバインダとして機能している。
【0052】
このような導電性粒子416としては、金、銀、白金、ルテニウム、鉛、錫、亜鉛、ビスマス等の金属又はこれらの合金からなる金属材料、若しくは、カーボン等の非金属材料を用いることができる。導電性粒子416の形状としては、片鱗状又は不定状とされた形状であることが好ましい。
【0053】
エラストマー417としては、アクリルゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を用いることができる。なお、導体線411において、導体線411の全体の重量に対する導電性粒子416の重量の比率が、75%~95%となるように設定されていることが好ましい。
【0054】
なお、導体線411は、上述した材料のほかに、老化防止剤、難燃剤、軟化剤等の添加物をさらに含有していてもよい。
【0055】
導体線411の厚さHは、5μm~400μmであることが好ましい。また、導電性を確保しつつ、導体線411の形成を容易にする観点から、導体線411の厚さHと幅Wの比(アスペクト比)が、下記(14)式を満たすように設定されていることが好ましい。
0.2≦H/W≦4 … (14)
【0056】
導体線411は、その延在方向に対して直交する方向の断面を視た場合に、導体部接触面412と、導体部頂面413と、2つの導体部側面414と有している。導体部接触面412は、接着部30を介して基材20に対向しており、接着部30と接触している面である。この導体部接触面412は、凹凸形状とされている。本実施形態では、導体部接触面412において導電性粒子416の一部がエラストマー417から突出しており、これにより、導体部接触面412が凹凸形状となっている。この導体部接触面412の凹凸形状は、導体部接触面412の面粗さに基づいている。なお、導体部接触面412の態様は、特に上述に限定されない。
【0057】
導体部頂面413は、導体線411において導体部接触面412と反対側に位置する面である。この導体部頂面413は、直線状の頂面平坦部4131を含んでいる。本実施形態では、導体部頂面413において導電性粒子416同士の間にエラストマー417が入り込んでいる。このため、導体部頂面413では、僅かに点在する導電性粒子416の露出部分と、導電性粒子416を覆うエラストマー417により直線状の頂面平坦部4131が形成されている。なお、導体部頂面413の頂面平坦部4131の態様は、特に上述に限定されない。
【0058】
頂面平坦部4131は、導体部頂面413の幅の半分以上の部分が連続して直線状となる部分である。本実施形態では、導体部頂面413の全体に、頂面平坦部4131が形成されている。この頂面平坦部4131の平面度は、0.5μm以下となっている。なお、平面度は、JIS(JIS B0621(1984))により定義することができる。
【0059】
頂面平坦部4131の平面度は、レーザ光を用いた非接触式の測定方法を用いて求める。具体的には、帯状のレーザ光を測定対象(ここでは、導体部頂面413)に照射し、その反射光を撮像素子(例えば、2次元CMOS)上に結像させて平面度を測定する。平面度の算出方法は、対象の平面において、できるだけ離れた3点を通過する平面をそれぞれ設定し、それらの偏差の最大値を平面度として算出する方法(最大ふれ式平面度)を用いる。なお、平面度の測定方法や算出方法は、特に上述に限定されない。たとえば、平面度の測定方法は、ダイヤルゲージ等を用いた接触式の測定方法であってもよい。また、平面度の算出方法は、対象となる平面を、平行な平面で挟んだときにできる隙間の値を平面度として算出する方法(最大傾斜式平面度)を用いてもよい。
【0060】
導体部側面414は、導体部接触面412と導体部頂面413との間に介在している。導体部側面414は、一方の端部4141で導体部接触面412と繋がり、他方の端部4142で導体部頂面413と繋がっている。導体部側面414と、接着部30の側面とは連続的に繋がっている。本実施形態では、一の導体線411における2つの導体部側面414,414は、基材20から離れるに従い導体線411の中心に接近するように傾斜している。この場合、導体線411は、その幅方向の断面において、基材20から離れるに従い幅狭となるテーパ形状となっている。
【0061】
導体部側面414は、直線状の側面平坦部4143を含んでいる。本実施形態では、導体部側面414において導電性粒子416同士の間にエラストマー417が入り込んでいる。このため、導体部側面414では、僅かに点在する導電性粒子416の露出部分と、導電性粒子416を覆うエラストマー417により直線状の側面平坦部4143が形成されている。なお、導体部側面414の側面平坦部4143の態様は、特に上述に限定されない。因みに、導体部側面414において導電性粒子416がエラストマー417に覆われていることで、隣り合う配線部41同士の間における電気絶縁性が向上し、マイグレーションの発生を抑制できる。
【0062】
側面平坦部4143は、導体部側面414の幅の半分以上の部分が連続して直線状となる部分である。本実施形態では、導体部側面414の全体に、側面平坦部4143が形成されている。この側面平坦部4143の平面度は、0.5μm以上となっている。側面平坦部4143の平面度の測定は、上述の頂面平坦部4131の平面度の測定と、同様の方法により測定できる。
【0063】
本実施形態の導体部側面414は、基材20から離れるに従い導体線411の中心に接近するように傾斜する直線状の傾斜面であるが、特にこれに限定されない。例えば、導体部側面414は、外側に向かって突出する円弧形状とされた曲面であってもよい。このように、導体線411の幅が基材20から離れるに従い大きくなる場合において、導体部側面414は、その両端4141,4142を通る第5の仮想直線Lよりも導体線411の外側に存在していることが好ましい(すなわち、導体部側面414は、裾を引いた形状でないことが好ましい。)。
【0064】
本実施形態では、導体部頂面413近傍における導体線411の局所的な断線状態が発生するのを抑制する観点から、基材20の主面21に沿って延在する第4の仮想直線Lと第5の仮想直線Lの間のなす角度θが、下記(15)式を満たすように設定されていることが好ましい。
90°≦θ≦120° … (15)
【0065】
接着部30と導体部40とを強固に密着させる観点から、導体部接触面412の面粗さは、導体部頂面413の面粗さに対して相対的に大きいことが好ましい。具体的には、導体部接触面412の面粗さRaが0.1μm~3μmであるのに対して、導体部頂面413の面粗さRaが0.001μm~1.0μmとなっていることが好ましい。なお、導体部接触面412の面粗さRaは0.1μm~0.5μmであることがより好ましく、導体部頂面413の面粗さRaは、0.001μm~0.3μmであることがより好ましい。また、導体部接触面412の面粗さに対する導体部頂面413の面粗さの関係が、0.01~1未満であることが好ましく、0.1~1未満であることがより好ましい。また、導体部頂面413の面粗さは、導体線411の幅(最大幅)の1/5以下であることが好ましい。なお、このような面粗さは、JIS法(JIS B0601(2013年3月21日改正))により測定することができる。導体部接触面412の面粗さや導体部頂面413の面粗さの測定は、導体線411の幅方向に沿って行ってもよいし、導体線411の延在方向に沿って行ってもよい。
【0066】
因みに、JIS法(JIS B0601(2013年3月21日改正))に記載されるように、ここでの「面粗さRa」とは「算術平均粗さRa」のことをいう。この「算術平均粗さRa」とは、断面曲線から長波長成分(うねり成分)を遮断して求められる粗さパラメータのことをいう。断面曲線からのうねり成分の分離は、形状を求めるのに必要な測定条件(たとえば、当該対象物の寸法等)に基づいて行われる。
【0067】
また、導体部頂面413と同様、導体部接触面412の面粗さが導体部側面414の面粗さに対して相対的に大きくなっている。導体部側面414の面粗さRaとしては、導体部接触面412の面粗さRaが0.1μm~3μmであるのに対して、0.001μm~1.0μmであることが好ましく、0.001μm~0.3μmであることがより好ましい。導体部側面414の面粗さの測定は、導体線411の幅方向に沿って行ってもよいし、導体線411の延在方向に沿って行ってもよい。
【0068】
次に、本実施形態における伸縮性基板10の製造方法について、図7(A)~図7(E)を参照しながら、詳細に説明する。
【0069】
図7(A)~図7(E)は本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の製造方法を示す断面図である。
【0070】
まず、図7(A)に示すように、導体部40の形状に対応する形状の凹部201が形成された凹版200を準備する。
【0071】
凹版200を構成する材料としては、ニッケル、シリコン、二酸化珪素などガラス類、セラミック類、有機シリカ類、グラッシーカーボン、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等を例示することができる。凹部201の幅や深さは、形成する導体部40の幅や高さに応じて設定する。本実施形態において凹部201の断面形状は、底部に向かうにつれて幅狭となるテーパ形状が形成されている。凹部201の内壁面は、平坦な面となっている。
【0072】
なお、凹部201の表面には、離型性を向上するために、黒鉛系材料、シリコーン系材料、フッ素系材料、セラミック系材料、アルミニウム系材料等からなる離型層(不図示)を予め形成することが好ましい。
【0073】
上記の凹版200の凹部201に対し、導電性材料210を充填する。このような導電性材料210としては、上述の導電性粒子416、エラストマー417、水もしくは溶剤、及び各種添加剤を混合して構成する導電性ペーストを用いる。導電性ペーストに含まれる溶剤としては、α-テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、1-デカノール、ブチルセルソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラデカン等を例示することができる。
【0074】
導電性材料210を凹版200の凹部201に充填する方法としては、例えばディスペンス法、インクジェット法、スクリーン印刷法を挙げることができる。もしくはスリットコート法、バーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法での塗工の後に凹部201以外に塗工された導電性材料をふき取るもしくは掻き取る、吸い取る、貼り取る、洗い流す、吹き飛ばす方法を挙げることができる。
【0075】
次に、図7(B)に示すように、凹版200の凹部201に充填された導電性材料210を加熱することにより導体部40を形成する。導電性材料210の加熱条件は、導電性材料の組成等に応じて適宜設定することができる。この加熱処理により、導電性材料210が体積収縮する。また、当該導電性材料210のうち凹部201に面しない部分は、外部に曝された状態で加熱処理されることで、凹凸状に形成される。一方、導電性材料210のうち凹部201に面する部分は、凹部201の内壁面が転写されて、平坦な面に形成される。
【0076】
なお、導電性材料210の処理方法は加熱に限定されない。赤外線、紫外線、レーザ光等のエネルギー線を照射してもよいし、乾燥のみでもよい。また、これらの2種以上の処理方法を組合せてもよい。
【0077】
続いて、図7(C)に示すように、接着部30を形成するための接着材料220が基材20上に略均一に塗布されたものを用意する。このような接着材料220としては、上述した接着部30を構成する材料を用いる。接着材料220を基材20上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、スプレーコート法、バーコート法、ディップ法、インクジェット法等を例示することができる。
【0078】
次いで、図7(D)に示すように、接着材料220が凹版200の凹部201に入り込むよう基材20及び接着材料220を凹版200上に配置して基材20を凹版200に押し付け、接着材料220を硬化させる。接着材料220を硬化させる方法としては、紫外線、赤外線レーザ光等のエネルギー線照射、加熱、加熱冷却、乾燥等を例示することができる。これにより、接着部30が形成される。また、基材20と導体部40とが接着部30により相互に接着される。
【0079】
なお、接着部30の形成方法は特に上記に限定されない。例えば、導体部40が形成された凹版200(図7(B)に示す状態の凹版200)上に接着材料220を塗布し、当該接着材料220上に基材20を配置した後に、当該基材20を凹版200に配置して押し付けた状態で接着材料220を硬化させることにより接着部30を形成してもよい。
【0080】
続いて、図7(E)に示すように、基材20、接着部30、及び導体部40を凹版200から離型させる。これにより、伸縮性基板10を得ることができる。
【0081】
本実施形態の伸縮性基板10は、以下の効果を奏する。
【0082】
図8は本発明の一実施の形態に係る伸縮性基板の作用を説明するための平面図である。
【0083】
本実施形態の配線部41では、複数の導体線411を相互に交差させて、複数の導体線411により開口部415が形成されている。この場合、図8に示すように、配線部41の伸張に対して開口部415が変形可能であるため、配線部41にかかる応力が緩和され、配線部41の断線が生じ難くなる。このため、配線部41が伸張しても、配線部41の電気抵抗値が変化し難い。結果として、伸張に対する伸縮性基板10の耐久性の向上を図ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、平面視において、配線部41の延在方向に対して直交する方向に延在する第1の仮想直線Lが、少なくとも2つ以上の導体線411と交差している。このため、配線部41の伸張により、一部の導体線411に亀裂や隔離が生じ、さらに破断が生じたとしても、当該破断等が生じた導体線411以外の導体線411が存在していることで、配線部41全体における導通経路が失われない。また、配線部41の延在方向に複数の導体線411が存在しているため、一部の導体線411が破断等した場合でも、配線部41全体の電気抵抗値の増大が抑えられる。これにより、配線部41が伸張しても、配線部41の電気抵抗値が変化し難い。結果として、伸張に対する伸縮性基板10の耐久性の向上を図ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、配線部41が、相互に同一形状とされた複数の開口部415を含み、複数の開口部415が、配線部41の延在方向に沿って繰り返し並べられている。このため、配線部41の伸張による応力が配線部41の全体に均一に印加されるので、導体線の局所的な亀裂、剥離が生じ難い。これにより、配線部41が伸張しても、配線部41の電気抵抗値が変化し難い。結果として、伸張に対する伸縮性基板10の耐久性の向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、導体線411は、配線部41の延在方向に対して斜めに延在している。このため、配線部41の延在方向に伸縮性基板10が伸張する際に、導体線を配線部の延在方向に対して平行且つ垂直な方向に延在させた場合に比べて、配線部41の伸縮性が損なわれるのを抑えつつ、配線部41全体の電気抵抗値が増大してしまうのを抑えることができる。特に、角度θが上記(8)式を満たすように設定されている場合には、上述の作用をより顕著に得ることができ、角度θが(9)式を満たすように設定されている場合には、上述の作用をさらにより顕著に得ることができる。
【0087】
また、本実施形態では、配線部41は、上記(10)式及び(11)式の少なくとも一方を満たし、且つ、上記(13)式を満たすように設定されている。この場合、上記(10)式及び(11)式の少なくとも一方を満たしていることで、導体線411の幅Wが大きすぎて伸縮性基板10の伸縮性を損なうのを抑えつつ、導体線411の幅Wが小さすぎて導体線411に亀裂、剥離が生じ易くなるのを抑えることができる。また、上記(13)式を満たしていることで、隣り合う導体線411同士のピッチPが密になりすぎて伸縮性基板10の伸縮性を損なうのを抑えつつ、ピッチPが疎になりすぎて伸張による応力が集中して導体線411に亀裂、剥離が生じ易くなるのを抑えることができる。
【0088】
また、本実施形態では、導体線411が伸縮性を有する導電性材料を含んでいることで、導体線411が変形可能となるため、配線部41にかかる応力が緩和され、配線部41の断線が生じ難くなる。このため、配線部41が伸張しても、配線部41の電気抵抗値が変化し難い。結果として、伸張に対する伸縮性基板10の耐久性の向上を図ることができる。
【0089】
また、本実施形態では、導体線411の導体部接触面412の面粗さRaが、導体部頂面413及び導体部側面414の面粗さRaに対して相対的に大きくなるように設定されている。このため、導体部40と接着部30とが強固に接着し、導体部40が基材20から脱落するのを抑制することができる。また、伸縮性基板10が伸張した場合に、導体部40と接着部30との間の界面が剥離するのを抑えることができる。これにより、伸縮性基板10の機械的強度を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、導体線411は、上記(15)式を満たすように設定されている。このため、導体線411の導体部頂面413の幅が小さくなりすぎて、導体部頂面413近傍に導電性粒子416が存在できず、導体部頂面413近傍が配線部41の導通に寄与しなくなるのを抑制することができる。
【0091】
本実施形態における「伸縮性基板10」が本発明における「伸縮性基板」の一例に相当し、本実施形態における「基材20」が本発明における「基材」の一例に相当し、本実施形態における「配線部41」が本発明における「導体部」の一例に相当し、本実施形態における「導体線411」が本発明の「導体線」の一例に相当し、本実施形態における「開口部415」が本発明における「開口部」の一例に相当し、本実施形態における「導電性粒子416」が本発明における「導電性粒子」の一例に相当し、本実施形態における「エラストマー417」が本発明における「エラストマー」の一例に相当し、本実施形態における「導体部接触面412」が本発明における「第1の面」の一例に相当し、本実施形態における「導体部頂面413」が本発明における「第2の面」の一例に相当し、本実施形態における「導体部側面414」が本発明における「第3の面」の一例に相当し、本実施形態における「主面21」が本発明における基材の「主面」の一例に相当し、本実施形態における「第1の仮想直線L」が本発明における「第1の仮想直線」の一例に相当し、本実施形態における「第2の仮想直線L」が本発明における「第2の仮想直線」の一例に相当し、本実施形態における「第3の仮想直線L」が本発明における「第3の仮想直線」の一例に相当し、本実施形態における「第4の仮想直線L」が本発明における「第4の仮想直線」の一例に相当し、本実施形態における「第5の仮想直線L」が本発明における「第5の仮想直線」の一例に相当する。
【0092】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0093】
例えば、上述の実施形態で説明した伸縮性基板10上に、導体部40を保護するためのカバーレイ(不図示)をさらに設けてもよい。このようなカバーレイは、導体部40の端子部42を除き、導体部40を覆うように形成される。このようなカバーレイを構成する材料としては、基材20を構成する材料と同様の材料や、エラストマー417と同様の材料を用いることができる。
【0094】
また、例えば、導体部40を、伸縮性を有さない導電性材料により構成してもよい。例えば、導体部を銅配線により構成してもよい。或いは、非伸縮性の導電性ペーストを用いてもよい。
【0095】
また、導体部40が伸縮性を有する導電性材料を含む場合、上述の実施形態のように、導電性粒子416及びエラストマー417を含むことに限定されない。例えば、ポリアセチレン等の導電性ポリマーを用いてもよい。或いは、導電性粒子に代えて、銀ナノワイヤやカーボンナノチューブ等の繊維状のものをエラストマーに含有させたものを用いてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、基材20と導体部40との間に接着部30を介在させていたが、特にこれに限定されない。図9は本発明の他の形態に係る伸縮性基板を示す断面図である。この図9に示す伸縮性基板10Cでは、基材20の主面21上に直接導体部40C(導体線411D)が形成されている。このような導体部40Cは、上述の導電性ペーストと同様の導電性ペーストをスクリーン印刷法、ディスペンス法、凹版印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法等により基材20上に印刷した後、加熱や電磁波照射等の硬化処理を経て、導電性ペーストを硬化させることで形成される。
【0097】
また、上述の実施形態では、伸縮性基板10は、外部回路100同士を電気的に接続するために用いられたが、特に上述に限定されない。例えば、特に図示しないが、同一の基材上に、ICデバイスや薄膜トランジスタ(TFT)等の電子部品と、導体部とが設けられた伸縮性基板であってもよい。この場合、導体部は、同一の基材上に実装された電気部品同士を電気的に接続するように形成されていてもよい。
【実施例
【0098】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における伸縮性基板の耐久性を確認するためのものである。
【0099】
<実施例1>
実施例1では、エラストマーと導電性粒子からなる銀ペースト(藤倉化成株式会社製、XA9424)を準備した。そして、凹版に上記の導電性ペーストを充填し、およそ150℃、60分間の条件で加熱し、導電性ペーストを硬化させて導体部を形成した。導体部は、複数の導体線を相互に交差させ、これら導体線により相互に同一形状とされた複数の開口部を含むように形成した。この導体部について、導体部の幅W、導体線の幅W及び厚さH、隣り合う導体線同士のピッチP、導体部の幅方向に延在する仮想直線と導体線との交点の数(以下、最小導通経路数とも称する。)、並びに、導体部の延在方向に沿った仮想直線と導体線の延在方向に沿った仮想直線との間のなす角度θは、表1に示す通りとした。そして、エラストマーからなる接着材料(株式会社スリーボンド製、TB3164D)を凹版上に塗布して、幅1.5mm×長さ80mm×厚み0.1mmのエラストマーからなる基材(藤倉ゴム工業製、SR1)を、接着材料が介した状態で凹版に押し付けた。この状態で、3000mJの条件で紫外線を照射し、接着材料を硬化させて、厚み10μmの接着部を形成した。その後、凹版から基材、導体部、及び接着部を離型して、試験サンプルを得た。以上の試験サンプルを用いて、以下の試験を行った。
【0100】
≪伸張耐久試験≫
上記の試験サンプルの長手方向両端を保持間隔が50mmになるように保持して、当該試験サンプルを、室温において30mm/分の速度で伸張させた。この場合、導体部の長手方向両端保持部間の電気抵抗値を測定し、当該試験サンプルの初期状態の電気抵抗値に対して2倍の電気抵抗値となったときの当該試験サンプルの伸び率を測定した。結果を、後述する比較例1での測定値との比率として表1に示す。
【0101】
<実施例2~6>
実施例2~6では、導体部の幅W、導体線の幅W及び厚さH、隣り合う導体線同士のピッチP、最小導通経路数、並びに、導体部の延在方向に沿った仮想直線と導体線の延在方向に沿った仮想直線との間のなす角度θを、表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1に係る試験サンプルと同様にして試験サンプルを作製した。
【0102】
これらの試験サンプルについても、実施例1と同様にして伸張耐久試験を行った。結果を、後述する比較例1での測定値との比率として表1に示す。
【0103】
<比較例1>
比較例1では、幅1000μm×厚み40μmのベタパターンとされた導体部を形成したこと以外は、実施例1に係る試験サンプルと同様にして試験サンプルを作製した。
【0104】
この試験サンプルについても、実施例1と同様にして伸張耐久試験を行った。この結果を基準値として表1に示す。
【0105】
また、実施例3~6及び比較例1に係る試験サンプルを用いて、以下の試験を行った。
【0106】
≪繰り返し耐久試験≫
上記の試験サンプルの長手方向両端を保持間隔が50mmになるように保持して、当該試験サンプルを、室温において30回/minの回数で、500mm/分の速度により、当該試験サンプルの全長に対して10%の繰り返し伸張を行った。この場合、導体部の長手方向両端保持部間の電気抵抗値を測定し、当該試験サンプルの初期状態の電気抵抗値に対して2倍の電気抵抗値となったときの試験サンプルの繰り返し伸張の回数を測定した。結果を、比較例1での測定値との比率として表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
<実施例1~6、比較例1の評価>
表1に示すように、導体部を、複数の導体線を相互に交差させ、これら導体線により複数の開口部を含むように形成した実施例1~6においては、ベタパターンとされた導体部を形成した比較例1と比較して、高い伸び率を得られており、導体部を伸張させても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0109】
特に、幅Wと幅Wとの比(W/W)が上記(11)式を満たすように設定し、ピッチPと幅Wの比(P/W)が上記(13)式を満たすように設定し、厚さHと幅Wの比(H/W)が上記(14)式を満たすように設定することで、導体部を伸張させても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0110】
すなわち、実施例1~6の結果から、導体部を、複数の導体線を相互に交差させ、これら導体線により複数の開口部を含むように形成することで、導体部が伸張しても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難く、伸張に対する伸縮性基板の耐久性の向上を適切に実現できるものであることが確認できる。
【0111】
また、表1に示すように、導体部を、複数の導体線を相互に交差させ、これら導体線により複数の開口部を含むように形成した実施例3~6においては、ベタパターンとされた導体部を形成した比較例1と比較して、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0112】
特に、実施例4及び実施例5の結果から、導体部の延在方向に対して直交する仮想直線との交点が少なくとも2つ以上ある場合(最小導通経路数が2つ以上ある場合)に、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0113】
すなわち、実施例3~6の結果から、導体部を、複数の導体線を相互に交差させ、これら導体線により複数の開口部を含むように形成することで、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難く、繰り返し伸張に対する伸縮性基板の耐久性の向上を適切に実現できるものであることが確認できる。
【0114】
<実施例7~12>
実施例7~12では、導体部の幅W、導体線の幅W及び厚さH、隣り合う導体線同士のピッチP、最小導通経路数、並びに、角度θを、表2に示す通りとし、実施例1に係る試験サンプルと同様にして試験サンプルを作製した。
【0115】
実施例7~12に係る試験サンプルについては、上述の伸張耐久試験を行った。結果を、後述する比較例2での測定値との比率として表2に示す。なお、伸張耐久試験において、実施例に係る試験サンプルの伸び率の測定値が比較例2に係る試験サンプルの伸び率の測定値に対して6.45倍よりも大きい場合には測定限界以上のため、結果を6.45超とする。
【0116】
また、実施例7~10に係る試験サンプルについては、上述の繰り返し耐久試験も行った。結果を、後述する比較例2での測定値との比率として表2に示す。なお、繰り返し耐久試験において、実施例に係る試験サンプルの繰り返し伸張の回数の測定値が比較例2に係る試験サンプルの繰り返し伸張の回数の測定値に対して125倍よりも大きい場合には測定限界以上のため、結果を125超とする。
【0117】
<比較例2>
比較例2では、比較例1に係る試験サンプルと同様にして試験サンプルを作製した。
【0118】
この試験サンプルについても、上述の伸張耐久試験及び繰り返し耐久試験を行った。この結果を基準値として表2に示す。
【0119】
なお、実施例7~12及び比較例2係る試験サンプルについては、導電性ペーストの硬化処理の条件は互いに同じであるが、上述の実施例1~6及び比較例1に係る試験サンプルに対しては、導電性ペーストの硬化処理の条件が異なる。このため、実施例4と実施例8とは、導体部の幅W、導体線の幅W及び厚さH、隣り合う導体線同士のピッチP、最小導通経路数、並びに、角度θについては同一の値であるが、伸張耐久試験及び繰り返し耐久試験の結果が異なる値となった。
【0120】
【表2】
【0121】
<実施例7~12、比較例2の評価>
表2に示すように、角度θが上記(8)式を満たすように設定された実施例7~10においては、ベタパターンとされた導体部を形成した比較例2と比較して、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0122】
特に、実施例8~10の結果から、角度θが上記(9)式を満たすように設定されている場合、比較例2と比較して、高い伸び率が得られており、導体部を伸張させても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。また、実施例8~10の結果から、角度θが上記(9)式を満たすように設定されている場合、比較例2と比較して、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が極めて変化し難いことが確認できる。
【0123】
すなわち、実施例7~10の結果から、角度θが上記(8)式又は上記(9)式を満たすように設定されていることで、伸張に対する伸縮性基板の耐久性の向上及び繰り返し伸張に対する伸縮性基板の耐久性の向上を適切に実現できるものであることが確認できる。
【0124】
また、表2に示すように、導体部の厚さHと幅Wとの比(H/W)を上記(14)式を満たすように設定した実施例11及び12においては、比較例2と比較して、導体部が繰り返し伸張されても、当該導体部の電気抵抗値が変化し難いことが確認できる。
【0125】
すなわち、実施例11及び12の結果から、導体部の厚さHと幅Wとの比(H/W)が上記(14)式を満たすように設定されていることで、繰り返し伸張に対する伸縮性基板の耐久性の向上を適切に実現できるものであることが確認できる。
【符号の説明】
【0126】
10…伸縮性基板
20…基材
21…主面
30…接着部
31…平坦部
311…上面
32…突出部
321…接着部接触面
40…導体部
41…配線部
411…導体線
412…導体部接触面
413…導体部頂面
4131…頂面平坦部
414…導体部側面
4141,4142…端部
4143…側面平坦部
415…開口部
416…導電性粒子
417…エラストマー
42…端子部
100…外部回路
200…凹版
201…凹部
210…導電性材料
220…接着材料
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9