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特許6991196グルカゴン様ペプチドを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】グルカゴン様ペプチドを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/605 20060101AFI20220127BHJP
   C07K 1/30 20060101ALI20220127BHJP
   A61K 38/26 20060101ALN20220127BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20220127BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
C07K14/605 ZNA
C07K1/30
A61K38/26
A61P1/00
A61P3/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019501748
(86)(22)【出願日】2017-03-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2017056664
(87)【国際公開番号】W WO2017162650
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】16162031.5
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518337832
【氏名又は名称】バッヘン・ホールディング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ロードル
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ノイハウス
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・オー・シェーンレーバー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュテーデルマイヤー
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/028966(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/199397(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/154031(WO,A1)
【文献】特表2013-525387(JP,A)
【文献】特表2009-525997(JP,A)
【文献】特表2013-500278(JP,A)
【文献】国際公開第2016/005960(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラグルチドペプチドまたはその塩を製造するための方法であって:
(i)式I:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B1-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly
(式中、B1はLys(パルミトイル-Glu-OH)またはLys(H-Glu-OH)である)
のペプチドを含む溶液Sを準備する工程と;
(ii)溶液Sを100%(v/v)のジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルの混合物Mを含む逆溶媒と混合することによって、工程(i)のペプチドを沈殿させる工程であり、当該混合物Mにおける体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(5:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、好ましくは濾過および/または遠心分離によって、単離する工程
とを含む前記方法。
【請求項2】
工程(i)は:
(i-a)固相:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B2-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
(式中、B2はLys(パルミトイル-Glu-OR1)またはB2はLys(R2-Glu-OR1)であり、R1はカルボン酸保護基であり、R2はアミノ保護基であり;少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を保有する)
にコンジュゲートされた前駆体ペプチドを準備する工程と;
(i-b)前駆体ペプチドを樹脂から切断する工程
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i-a)は、適切に保護されたアミノ酸誘導体またはジペプチド誘導体を使用するFmocベースの固相ペプチド合成を含み、前記保護されたアミノ酸誘導体またはジペプチド誘導体は、
(A) (ベンゾトリアゾリル)テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)/ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA);
(B) ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)/シアノ-ヒドロキシイミノ-酢酸エチルエステル;
(C) 3-(ジエトキシ-ホスホリルオキシ)-3H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアジン-4-オン(DEPBT)/DIPEA;および
(D) DIC/ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)
からなる群から各工程について独立して選択される1種またはそれ以上のカップリング試薬/添加剤混合物によって活性化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種またはそれ以上の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのGly4~Thr5、Phe6~Thr7、Thr7~Ser8、Val10~Ser11またはSer11~Ser12からなる群から選択される位置に導入され、好ましくは、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Val-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、およびFmoc-Ser(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHからなる群から選択される1種またはそれ以上の擬プロリンジペプチド誘導体が使用される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
N末端ヒスチジン部分は、Boc-His(Boc)-OH、Boc-His(1-Trt)-OH、およびFmoc-His(1-Trt)-OHからなる群から選択されるアミノ酸誘導体ならびにカップリング試薬/添加剤混合物であるDEPBT/DIPEAを使用して、固相にコンジュゲートされた前駆体ペプチドに導入される、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Fmoc保護基は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中5~50%(v/v)のピペリジンまたは4-メチルピペリジン、N-メチルピロリドン(NMP)中5~50%(v/v)のピペリジンまたは4-メチルピペリジン、DMF中1~5%(v/v)のジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、およびDMF中50%(v/v)のモルホリンから選択される混合物を使用して、固相にコンジュゲートされた成長ペプチド鎖から切断される、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
パルミチン酸の活性化エステル、好ましくはN-スクシンイミジルパルミテートを、式IのペプチドのLys(H-Glu-OH)部分と、または工程(i-a)で準備した前駆体ペプチドからアミノ保護基R2を切断することによって得ることができるLys(H-Glu-OR1)部分と反応させる工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)から得られた溶液Sは、トリフルオロ酢酸(TFA)および1種またはそれ以上の捕捉剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
捕捉剤は、チオール捕捉剤および/またはシラン捕捉剤から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)は:
(ii-a)ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを予め混合した後、それを工程(i)から得られた溶液Sと混合する工程;または
(ii-b)ジイソプロピルエーテルを工程(i)から得られた溶液Sと最初に混合し、次に、アセトニトリルを、溶液Sおよびジイソプロピルエーテルを含む混合物と混合する工程;または
(ii-c)アセトニトリルを工程(i)から得られた溶液Sと最初に混合し、次に、ジイソプロピルエーテルを、溶液Sおよびアセトニトリルを含む混合物と混合する工程
によって、逆溶媒を工程(i)から得られた溶液Sと混合することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)は、-5℃から10℃、好ましくは0℃から10℃の範囲の温度で行われ、および/または、工程(ii)は、古典的な沈殿プロトコルまたは逆沈殿プロトコルを使用して行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
350マイクロメートルを超える平均粒子径および少なくとも55%の純度により特徴付けられる、リラグルチドペプチド沈殿物。
【請求項13】
トランケートされたリラグルチド変異体を含有する、請求項12に記載のリラグルチドペプチド沈殿物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、工業的規模または実験室規模でのペプチド合成の分野に関する。グルカゴン様ペプチドの製造のための、特に、リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチド1類似体の製造のための改良法を開示する。本発明は、リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチドを有効に製造する方法、および合成後に粗製ペプチドを単離する方法を対象とする。
【0002】
好ましい実施形態では、本発明は、リラグルチドペプチドを製造するための方法であって、ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを含む逆溶媒と混合することによって、リラグルチドペプチドまたは前駆体ペプチドを沈殿させることを含む方法に言及する。さらに、本発明は、固相にコンジュゲートするリラグルチドペプチド前駆体、および本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトGCG遺伝子(HGNC:4191)は、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)およびグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)を含む複数の関連するペプチドをコードする。これらは、かなりの配列相同性を共有し(図1を参照のこと)、血糖のホメオスタシス、腸の細胞増殖、および満腹を制御することに関わる。生物学的に活性であることが知られているGLP-1、GLP-1(7-37)およびGLP-1(7-36)アミドの形態は、GLP-1受容体の活性を介してそれらの効果を発揮する。他の生理学的機能の中で、GLP-1は、強力なグルコース依存性インスリン分泌刺激ホルモン(glucose-dependent insulin tropic hormone)であり、グルカゴン分泌を強く阻害し、膵島のベータ細胞において保護および増殖作用を有し、かつ胃腸管の分泌および運動を阻害する。GLP-1機能の異常は、肥満、食後の反応性低血糖、および2型糖尿病に関連付けられてきた。よって、GLP-1類似体は、薬剤研究において非常に興味深い。
【0004】
アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)に見られるペプチドホルモンエクセンディン-4の変異体および誘導体ならびにGLP-1ペプチド自体の変異体および誘導体は、広範囲にわたって研究されている。
【0005】
市販されている薬物化合物は、エクセナチドおよびリキシセナチドを含み、いずれもエクセンディン-4ペプチド、およびGLP-1由来のリラグルチドから導出される。
NN2211としても知られている、リラグルチドである(N-ε-(γ-Glu(N-α-ヘキサデカノイル)))-Lys26Arg34-GLP-1(7-37)は、2型糖尿病の処置に対してと、関連する共存症を有する成人の肥満の処置に対して承認されている。この化合物は、半合成技術によって工業的規模で生成されている。EP-B 0
944 648には、組換えにより発現されたペプチドをNα-ヘキサデカノイル-Glu(ONSu)-OtBuと反応させて、リラグルチドを得ることが記載されている(その実施例35を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP-B 0 944 648
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチドの大規模製造、全化学合成のためのよりよい方法が提供されることが望ましい。
【0008】
ペプチドの化学合成は、当技術分野において一般的に周知である(小冊子「Solid Phase Peptide Synthesis Bachem - Pioneering Partner for Peptides」、Global Marketingにより出版、Bachem group、2014年6月を参照のこと)。合成の間、第1のアミノ酸のアルファアミノ基と第2のアミノ酸のアルファカルボキシル基の間のペプチド結合の形成が、意図しない副反応よりも好まれるはずである。これは、通常、「持続性の」および「一時的な」保護基の使用によって達成される。前者は、例えば、成長ペプチド鎖の反応性アミノ酸側鎖およびC末端カルボキシル基をブロックするために使用され、合成全体の終わりに除去されるだけである。後者は、カップリング工程の間、例えば、第2のアミノ酸のアルファアミノ基をブロックし、それによって、例えば、第2のアミノ酸の複数の複製の間のペプチド結合の形成を回避するために使用される。ペプチドの化学合成への2つの標準手法は区別することができ、すなわち液相ペプチド合成(LPPS)および固相ペプチド合成(SPPS)である。
【0009】
溶液ペプチド合成とも称されるLPPSは、均質な反応媒体中で行う。連続的なカップリングにより、所望のペプチドが得られる。事実上、標準プロトコルは存在せず、様々な、可能な保護基の組合せ、カップリング方法、および溶媒から選択する、注意深い計画が必要とされる。LPPSは、普通、各カップリング後の中間体の単離、特徴付け、および、所望の場合、精製に関する。より長いペプチドは、通常、収束的な手法によって合成され、ここで、いくつかの断片が並行してアセンブルされ、最終的に組み合わさって、最終生成物が得られる。
【0010】
標準のSPPSでは、不溶性ポリマー樹脂に、そのC末端によって固定されたペプチドは、その配列を構成する保護されたアミノ酸の連続的付加によってアセンブルされ、すなわち、合成は、ペプチドのC末端からN末端へと進行する。アミノ酸付加の連続サイクルが起こり、それぞれ、a)樹脂結合ペプチドからのNα保護基の切断、b)洗浄工程、c)保護されたアミノ酸のカップリング、およびd)洗浄工程からなる。成長する鎖は不溶性支持体に結合しているため、過剰な試薬および可溶性副生成物は簡単な濾過によって除去することができる。適当な溶媒を用いる洗浄工程により:脱保護工程a)の後の切断剤の完全な除去、ならびに過剰な試薬およびカップリング工程c)から得られた可溶性副生成物の排除が保証される。合成の終わりに、ペプチドが樹脂から切断され、保護基が除去される(小冊子「Solid Phase Peptide Synthesis Bachem - Pioneering Partner for Peptides」、Global Marketingにより出版、Bachem group、2014年6月を参照のこと)。いわゆるFmoc SPPSは一時的なアミノ保護基としての9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)の使用に依拠し、SPPSの最もポピュラーな形態である。LPPSとは逆に、ペプチドの精製は、樹脂からの切断後の、合成の終わりにのみ実施されうる。これは、特に、脱保護の間に、または分解によって形成された副生成物に加えて、種々の樹脂結合副生成物が蓄積する可能性のある、大きなペプチドの合成に対して不利である。結果として、最終生成物の精製は、非常に困難である場合がある。工業的製造のためのSPPSプロセスを開発する際には、したがって、粗製ペプチド生成物の精製を最適化することが不可避である。
【0011】
LPPSおよびSPPSに加えて、断片を、上記の技術の1つによって最初に合成し、次いで、他の手法を使用して一緒に接合する混成の手法を利用することができる。この戦略は、典型的に、非常に困難な配列を有する大きなペプチドに対して用いられる。上記手法は、通常、最終のおよび/または中間体のペプチド生成物が、溶液から取り出される必要がある。選択される合成戦略によって、前記ペプチド溶液のさらなる構成成分は様々であり、TFAおよび捕捉剤を含有する切断組成物を含むことが多い。
【0012】
TFAによる切断の後のペプチドの単離のための標準法は、いわゆる冷却エーテルによるワークアップである:ペプチド溶液を逆溶媒としての冷却エーテルと混合し、ペプチドを沈殿させ、沈殿物を濾過および/または遠心分離によって回収する。
【0013】
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、またはメチルtertブチルエーテル(MTBE)は、日常的に、この目的のために使用される。逆溶媒がペプチド溶液に添加される場合、これは、「古典的な」沈殿プロトコルと称される;ペプチド溶液を逆溶媒に添加する場合、これを「逆」沈殿プロトコルと称す。沈殿物の性質は、粗製のペプチドの品質とさらなるプロセスに影響を与えるため、典型的に、実験室のおよび工業的製造においていくらかの影響を有する:理想的には、沈殿はほぼ完全であるが、関連する不純物が減少し、かつTFA含量が低い。さらに、効率的な濾過には、フィルターの詰まり、または容器に固着する物質の損失を避けるために適切な稠度と粒径の沈殿物が必要とされる。
【0014】
沈殿スキームが粗製ペプチドの純度および取り扱いを改善する場合があるが(US 2005/0165216)、驚くべきことに、この工程の詳細にはほとんど注目されていなかった。
【0015】
文献CN-A 103275209、CN-A 103275208、CN-A 104045706、CN-A 104045705、CN-A 103145828、CN-A 103980358、およびEP-A 2 757 107には、リラグルチドの合成のためのSPPSまたは混成の手法が開示されている。それぞれの場合には、粗製のリラグルチドは、逆溶媒として冷却ジエチルエーテルを使用する、TFAおよび捕捉剤を含む溶液から沈殿する。
【0016】
WO 2014/199397およびWO 2016/005960には、リラグルチドの合成に対するSPPSおよび/または混成の手法が開示されている。粗製のリラグルチドは、逆溶媒として冷却MTBEまたはジイソプロピルエーテルを使用する、TFAおよび捕捉剤を含む溶液から沈殿する。
【0017】
EP-B 1 987 052は、グルカゴン様ペプチドの合成のためのSPPS手法について開示しており、ここで、粗製のペプチドは、冷却MTBEを使用する、TFAおよび捕捉剤を含む溶液から沈殿する。
【0018】
US-A 2005/0165216は、ペプチドの沈殿のための3つまたはそれ以上の炭素原子を有するアルコールの使用について教示している。
【0019】
WO 2012/171984、WO 2012/171982、およびWO 2012/171987は、LPPSによって製造されるペプチドの沈殿の間に直面する問題について論じている。
LPPSにおいて使用される、極性の、非プロトン性溶媒からの直接の沈殿により、粘着性の、ガム様沈殿物を生じることが教示される。これは、最初に、目的のペプチドを、2-メチルテトラヒドロフランまたはトルエンに抽出し、続いて、この相からペプチドを沈殿させることによって回避することができる。アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、n-ヘプタンおよびトルエンは、抽出物からペプチドの沈殿を誘導するために適切な逆溶媒として示されている。
【0020】
アセトニトリルとジイソプロピルエーテルの混合物を用いる沈殿は、短鎖ペプチドの製造のための稀な事例に記載されている。US 2010/0280221は、LPPSによるオクタペプチド(長さ:8アミノ酸)の製造について記載している。手順は、周囲温度における、アセトニトリル/ジイソプロピルエーテルによる酢酸/ジオキサンからのペプチド沈殿に関する。WO 2015/154031には、アセトニトリルとジイソプロピルエーテルの混合物によって、7つのD-アミノ酸およびジスルフィド結合した単一のL-Cysからなる、極性の高い、人工のペプチド化合物である、AMG614を沈殿させる方法が記載されている。
【0021】
先行技術を考慮して、グルカゴン様ペプチド、例えば、リラグルチドのようなサイズの大きいペプチドの製造方法を改良するための必要性が依然として存在する。特に、粗製ペプチド生成物の合成および精製は、純度が改善され、巨視的特性の改善された粗製ペプチド生成物を得るために最適化される必要があった。本発明者らは、工業的規模で使用することができる、粗製リラグルチドペプチドの合成および沈殿のための改善された方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、グルカゴン様ペプチド、例えば、リラグルチドのようなサイズの大きいペプチドは、ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを含む逆溶媒によって、特に、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(10:1)で使用される場合に、特に良好に沈殿されうることが見出された。
【0023】
一般的観点では、したがって、本発明の態様は、グルカゴン様ペプチドまたはその塩を製造するための方法であって:
(i)粗製グルカゴン様ペプチドを含む溶液Sを準備する工程と
(ii)工程(i)のペプチドをジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを含む逆溶媒と混合することによって沈殿させる工程であり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(10:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、濾過および/または遠心分離によって単離する工程
とを含む方法に関する。
【0024】
本発明は、一態様では、グルカゴン様ペプチドを製造するための方法であって:
(i)グルカゴン様ペプチドを含む溶液を得る工程と;
(ii)(3:1)v/vから(10:1)v/vの範囲から選択される比で、ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを含む逆溶媒を使用して、グルカゴン様ペプチドを沈殿させる工程と;
(iii)沈殿物を分離する工程
とを含む方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態は、リラグルチドまたはその塩を製造するための方法であって:
(i)式I:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OH)またはLys(H-Glu-OH)である)
のペプチドを含む溶液Sを準備する工程と;
(ii)溶液Sをジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを含む逆溶媒と混合することによって、工程(i)のペプチドを沈殿させる工程であり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(10:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、好ましくは濾過および/または遠心分離によって、単離する工程
とを含む方法を指す。
【0026】
当業者であれば、式Iは、上記で示されたポリペプチド鎖の塩も包含することに気付くであろう。本明細書で使用する場合、ペプチドは、当技術分野で公知の任意の対イオン、例えば、陰イオンまたは陽イオン、例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、切断溶液の任意のイオン(例えば、TFAイオン、臭素イオン、過塩素酸イオン、アンモニウムイオン)および/または保護基の残基の陽イオンもしくは陰イオンなどを、場合により保有することが、当業者によって理解されるであろう。さらに、ペプチドは、場合により、微量の1種またはそれ以上の捕捉剤、例えば、トリイソプロピルシラン(TIPS)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリオール(DTE)、アニソール、チオアニソールまたは1,2-エタンジチオールに、共有結合または非共有結合により会合している。
【0027】
本発明の方法は、特に大規模製造方法に対して、粗製グルカゴン様ペプチド、特にリラグルチドの取り扱い、収率、および/または純度を改良するために有利に使用されうる。グルカゴン様ペプチドの前駆体のSPPS、前記前駆体を樹脂から切断して切断組成物中で粗製グルカゴン様ペプチドを得る工程と、切断された粗製グルカゴン様ペプチドを切断組成物から分離する工程を含む方法が、特に有益である。
【0028】
概して、いくつかの略語および定義が、本発明全体を通して使用される:
略語:
Boc tertブチルオキシカルボニル
CLEAR 架橋したエトキシレートアクリレート
DBU ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DEPBT 3-(ジエトキシ-ホスホリルオキシ)-3H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアジン-4-オン
DIC ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
Dmb 2,4-ジメトキシベンジル
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DTE 1,4-ジチオエリトリオール
DTT 1,4-ジチオトレイトール
EDT 1,2-エタンジチオール
Fmoc 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
Hmb 2-ヒドロキシ-4-メトキシベンジル
HOBt ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
本明細書で使用する用語HPLCは、UHPLCを含む。
IPE ジイソプロピルエーテル
LPPS 液相ペプチド合成
MALDI-MS マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法
MTBE メチルtertブチルエーテル
MTT 4-メチルトリチル
NMP N-メチルピロリドン
OMpe 3-メチルペンタ-3-イルエステル
OtBu tertブチルエステル
ONSu=OSu N-ヒドロキシスクシンイミド
OxymaPure(登録商標) シアノ-ヒドロキシイミノ-酢酸エチルエステル
PEG ポリエチレングリコール
PEGA アクリルアミド-PEGコポリマー
Pbf 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
RT 室温
SPPS 固相ペプチド合成
tBu tertブチル
TBTU (ベンゾトリアゾリル)テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートTES トリエチルシラン
THF テトラヒドロフラン
TIPS トリイソプロピルシラン
Trt トリチル
TFA トリフルオロ酢酸
UHPLC 超高速液体クロマトグラフィー
【0029】
他に示されていなければ、液体混合物は、体積百分率および体積比で定義される。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は互換的に理解されうる。
【0031】
他に示されていなければ、ペプチド配列は、本明細書において、N末端(左)から始まってC末端(右)で終わるように示される。表1は、同等であり、この文書全体で互換的に使用される異なる表記を例示する。
【0032】
アミノ酸は、その正式名称(例示:アラニン)、WIPO標準ST.25による3文字コード(例えば、Ala)、または1文字コード(例えば、A)によって互換的に言及される。エナンチオマー型が明示的に特定されていなければ、一般的にL-アミノ酸に言及している。
【0033】
しかし、本発明は、同様に、D-アミノ酸および他の立体異性体を使用して実践されうる。
【0034】
【表1】
【0035】
以下、アミノ酸誘導体について、広く受け入れられた表記を使用する:アルファアミノ基における置換(Nα)は、アミノ酸記号の左に示され、ハイフンによって分離されており、アルファカルボキシ基における置換は、アミノ酸記号の右に示され、ハイフンによって分離されており、側鎖における置換は、アミノ酸記号の直ぐ右の括弧内に示されている。修飾されていないアルファアミノ酸では、アルファアミノ基(Nα)における置換はプロトン(H-)であり、アルファカルボキシ基における置換はヒドロキシ(-OH)である。
【0036】
分枝状ジペプチドでは、この表記は、入れ子形式でつながっている。例えば、Fmoc-Lys(Boc-Glu-OtBu)-OHは、Fmocで保護されたアルファアミノ基と遊離のアルファカルボキシル基を有するLys誘導体であって、その側鎖がBocで保護されたアルファアミノ基とOtBuで保護されたカルボキシル基を有するグルタミル部分で置換されているLys誘導体を指す。グルタミル部分は、そのガンマカルボキシル基を介してLys側鎖にアミド結合を形成する。
【0037】
ペプチドの一部である置換されたアミノ酸に対して、類似の表記が使用される。例えば、Aaa1-Aaa2-Lys(Boc-Glu-OtBu)-Aaa4-Aaa5は、分枝状のペンタペプチドを指し、ここで、3位のLys側鎖は、Boc保護されたアルファアミノ基とOtBu保護されたカルボキシル基を有する、アミド結合したグルタミル部分で置換されている。よって、前記アミド結合は、Lysのイプシロンアミノ基とGluのガンマカルボキシル基の間にある。
【0038】
ペプチドの一部である置換アミノ酸のさらなる例として、Lys(パルミトイル-Glu-OH)という表現は、ペプチドに組み込まれており、そのイプシロンアミノ基(Nε)、すなわち、側鎖であるパルミトイル-Glu部分が、ガンマカルボキシル基(Cγ)を介して結合し、それによって、LysのNεとGluのCγの間にアミド結合を形成するLys部分を指す。パルミトイル-Glu部分では、パルミトイル残基が、Gluのアルファアミノ基(Nα)に結合している。Lys(パルミトイル-Glu-OH)という部分は、Lys(ヘキサデカノイル-Glu-OH)、Lys(N-ε-(γ-Glu-(Nα-ヘキサデカノイル)))またはLys(Nε-(γ-グルタミル-(Nα-ヘキサデカノイル)))として示されている。
【0039】
また別の実施例として、Lys(H-Glu-OH)という部分は、ペプチド配列の文脈では、そのイプシロンアミノ基(Nε)に、保護されていないGlu部分が、そのガンマカルボキシル基(Cγ)を介して結合しており、それによって、LysのNεとGluのCγの間にアミド結合を形成するLys部分を指す。Glu部分では、アルファアミノ基(Nα)は遊離している。Lys(H-Glu-OH)という部分は、Lys(N-ε-(γ-Glu(H)-OH)、Lys(N-ε-(γ-Glu-OH)またはLys(Nε-(γ-グルタミル-OH)として示されている。
【0040】
当業者であれば、式Iのペプチドが、1文字コード:
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVRGRG (配列番号4)(式中、アミノ酸配列の20位のリシル部分(Lys20、K20)が修飾されている)で書かれた、簡単なリラグルチドのポリペプチド鎖の誘導体を指すことに直ぐに気付く。より詳細には、Lys20のイプシロンアミノ基が、アミド結合を介して、グルタミル部分のガンマカルボキシル基(γ-Glu、γ-E)のガンマカルボキシル基にコンジュゲートしている。グルタミル部分は、そのアミノ基を介して、パルミチン酸=ヘキサデカン酸部分にコンジュゲートしているか、または遊離NH(アルファアミノ基、Nα)を保有する。
【0041】
好ましくは、式Iのペプチドは、いずれの保護基も(本質的に)有さず、Lys20
部分を除いて、アミノ酸側鎖で他の修飾を有さない。したがって、式Iのペプチドは、好ましくは、十分に保護されていないペプチドであり、好ましくはさらに修飾されない。
【0042】
あるいは、式IのペプチドのN末端は修飾(例えばアシル化(例えば、アセチル化))される。あるいはまたはさらに、C末端は修飾(例えば、アミド化)される。
【0043】
あるいはまたはさらに、1つまたはそれ以上のアミノ酸部分の側鎖は、フルオロフォアを用いてコンジュゲートされる。場合により、式Iのペプチドは、放射線により(例えば、H、32P、35S、14C、99mTcまたはランタニド(例えば、64Gd))標識され、またはスピン標識、例えば、1種またはそれ以上の重同位元素、例えば、核磁気共鳴(NMR)で検出可能な13Cを用いて標識される。
【0044】
工程(i)の溶液中に含まれるグルカゴン様ペプチドは、典型的に、天然のL-アミノ酸からなる。しかし、あるいは、ペプチドは、1種またはそれ以上の非天然アミノ酸、例えば、D-アミノ酸、ベータアミノ酸、メチル化アミノ酸(例えば、N-メチル化アミノ酸)を含み、またはそのようなものからなる場合さえある。
【0045】
当業者であれば、極性の環境において、特に水性の環境において、式Iのペプチドまたは任意の他のグルカゴン様ペプチドのペプチド鎖が、例えば、プロトンもしくは他の陽イオンおよび/または陰イオンを結合することによって塩を形成し、アミノ酸側鎖の末端および/または一部において、プロトンもしくは他の陽イオンおよび/または陰イオンを放出する場合があることに気付くであろう。
【0046】
用語「グルカゴン様ペプチド」またはGLPは、本明細書で使用する場合、前述の任意の誘導体だけでなく、GCG遺伝子(HGNC:4191)、エクセンディンおよびその類似体から導出される同族のペプチドを指す。図1は、プロトタイプのグルカゴン様ペプチドの配列アラインメントを示す。
【0047】
用語「グルカゴン様ペプチド1類似体」および「GLP-1類似体」は、本明細書で使用する場合、互換的に使用される。本明細書で使用する場合、これらは、GLP-1受容体に結合することができるペプチドに関する。GLP-1(7-37)の誘導体および類似体ならびにエクセンディン-4(1-39)の誘導体および類似体、例えば、エクセナチド、リキシセナチド、およびリラグルチドは、好ましいGLP-1類似体である。例示的に、GLP-1類似体は、配列番号4に対して少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド鎖、より好ましくは、配列番号4に対して少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド鎖、特に、配列番号4に対して少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド鎖を含み、場合により、配列番号4のLys20に対する相同体であるリシン部分における修飾も含む。相同性は、本明細書で使用する場合、好ましくは、配列番号4の全長にわたって決定される配列相同性である。
【0048】
本明細書で使用する場合、配列相同性は、当技術分野で公知の配列相同性の任意の定義を指す。特に、配列相同性は、本出願の出願日のバージョンの国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)によって決定された配列相同性として理解される。
【0049】
用語「類似体(複数可)」は、本明細書で使用する場合、その配列が、第1のペプチド配列の50%までのアミノ酸部分の置き換えによって、および/もしくは10%までのアミノ酸部分の欠失によって、ならびに/または10アミノ酸部分までの付加によって、前記第1のペプチド配列から導出されるペプチドを指す。好ましい類似体は、第1のペプチド配列の20%までのアミノ酸部分の置き換えによって、および/もしくは10%までのアミノ酸部分の欠失によって、ならびに/または10アミノ酸までの付加によって、前記第1のペプチド配列から導出される。
【0050】
用語「誘導体(複数可)」は、本明細書で使用する場合、化学反応によって、第1の化合物から得ることのできる化合物を指す。結果として、誘導体は、置換基の存在または非存在によって、第1の化合物と異なる。例えば、SPPSにおいて使用するためのアミノ酸誘導体は、普通、少なくともアミノ酸保護基の存在によって、導出されるアミノ酸と異なる。
【0051】
用語「式Iのペプチドを含む溶液Sを準備する」は、式Iのペプチドを含有する任意の液体組成物を得ることとして最も広い意味で理解される。式Iのペプチドは、当技術分野で公知の任意の手段によって準備される。例示的に、式Iのペプチドは、固相ペプチド合成(SPPS)もしくは液相ペプチド合成(LPPS)またはその組合せから得ることができる。あるいは、簡単なポリペプチド鎖は、バイオテクノロジーによる方法から得ることもでき、得られたポリペプチド鎖は、次に、化学/合成手段によって修飾される。
好ましくは、式Iのペプチドは、SPPS、LPPSまたはその組合せから得られる。より好ましくは、式Iのペプチドは、SPPSを含むか、SPPSからなる方法から得られる。
【0052】
典型的に、ペプチド合成(SPPSおよびLPPSに基づく)は、種々の保護基および活性化エステルの使用に関与する。したがって、式Iのペプチドの合成の間、種々の保護基および活性化エステルを使用する。
【0053】
用語「保護基」は、本明細書で使用する場合、官能基の化学的修飾によって分子に導入され、次のプロセス工程において、前記基を反応からブロックする、例えば、アミノ酸側鎖の副反応を妨害する基として、最も広い意味で理解される。アミノ保護基の例は、BocおよびFmoc基であり、カルボン酸保護基の例は、メチルエステル、ベンジルエステル、またはtertブチルエステルのような未反応性エステルである。
【0054】
本発明の文脈では、用語「活性化エステル」は、アミノ基と自発的に反応するのに適するエステルとして最も広い意味で理解される。活性化エステルの例は、p-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニルおよびスクシンイミドエステルである。
【0055】
式Iのペプチドを得るための他の手段、特に他の合成方法は、本発明の範囲によっても包含されているが、式Iのペプチドは、好ましくは、固相ペプチド合成(SPPS)によって得られる。一方、本明細書で開示されているSPPSの方法は、様々なペプチド単離スキームと組み合わせて、リラグルチドの精製のために使用される。
【0056】
SPPSでは、式Iのペプチドの前駆体ペプチドは、樹脂上、すなわち「固相」、最も典型的に、濾過によって液相から容易に分離することのできるビーズ様構造上で合成される(本明細書において、工程(i-a))。樹脂に結合したペプチドの合成の次に、ペプチドは樹脂から放出され、保護基は除去される。
したがって、本発明の工程(i)は、以下の工程を含む
(i-a)グルカゴン様ペプチドにコンジュゲートされた固相を準備する工程であって、少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を有する、工程、
(i-b)樹脂からペプチドを切断し、場合により保護基を除去する、工程。
【0057】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法の工程(i)は:
(i-a)式:H-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OR)またはBはLys(R-Glu-OR)であり、Rはカルボン酸保護基であり、Rはアミノ保護基であり;少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を有する)の固相がコンジュゲートされたグルカゴン様ペプチドを準備する工程と;
(i-b)前駆体ペプチドを樹脂から切断する工程
とを含む。
【0058】
好ましい実施形態では、BはLys(パルミトイル-Glu-OtBu)またはLys(Boc-Glu-OtBu)である。Lys(パルミトイル-Glu-OtBu)という部分は、Lys(ヘキサデカノイル-Glu-OtBu)として設計される。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「樹脂」および「[樹脂]」は、SPPSのために使用可能なビーズ様構造として最も広い意味で理解される。用語「樹脂」、「固体相」および「支持体」は本明細書中で交換可能に使用される。
【0060】
SPPSは、通常、固相支持体よりもゲル相で行われる。適切な樹脂は、ポリスチレン、ポリスチレン-PEG複合物、PEG、PEGA、架橋したエトキシレートアクリレート(CLEAR)、ポリアミド、ポリヂメチルアクリルアミド、または所望の物理的および化学的特性を有する任意の他の支持体をベースとする。1%のジビニルベンゼンでビーズ化されたポリスチレンをベースとする樹脂は、典型的に、200~400メッシュまたは100~200メッシュのサイズ分布を有する、日常に使用される支持体の中のものである。ポリスチレンをベースとする4-アルコキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、ジフェニルジアゾメタン(PDDM)樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシメチル-ポリスチレン(Rink)樹脂、2-メトキシ-4-アルコキシベンジルアルコール(Sasrin)樹脂、および特に、2-クロロトリチルクロリド(CTC)樹脂は、本発明の方法で使用するのに特に適しており、Sigma-Aldrich、BachemおよびEMD Milliporeのような供給業者から市販されている。しかし、SPPSに適する任意の他の樹脂を使用することができる。
【0061】
C末端カルボキシル基を介する固定化に対する代替案として、ペプチドは、アミノ酸の側鎖(好ましくは末端)を介して樹脂にコンジュゲートされる。
【0062】
さらなる代替案として、ペプチドは、N末端を介して樹脂にコンジュゲートされ、N末端からC末端へ合成される(ペプチドの逆向き合成)。
【0063】
当業者は、多種類のSPPS方法を認識している。概して、本発明の文脈では、任意の種類のSPPSを使用してもよい。種々の種類の機器をSPPSに対して使用することができる。バッチ式の、または連続フローのSPPSのための、手動、半自動化および自動化された合成機を利用できる。任意の所与の機器に対して、機器によって課された機械的要件に合致するように、樹脂を適当に選択してもよい。
【0064】
当業者は、樹脂の負荷が、SPPS、特に工業的SPPSの効率に影響を及ぼす場合があることを十分に認識している。これは、グルカゴン様ペプチドのような長い、凝集傾向のあるペプチド配列を扱う際に、特に影響を有する場合がある:一方では、樹脂の負荷が増加するに従って、プロセスの効率が増大する。他方では、樹脂の負荷を低減させることによって、樹脂上での沈殿を低減させることが必要である。したがって、微妙なバランスがとられ、最適な樹脂の負荷を、任意の所与のSPPSプロトコルについて、通常の実験によって確立することができる。樹脂の負荷は、様々な置換度で市販されている樹脂を使用することによって、またはモル数の不足する第2のアミノ酸を第1のアミノ酸に対してカップリングさせ、次にアセチル化させ、すなわち、未反応の第1のアミノ酸をブロックすることによって変化しうる。同様に、第1のアミノ酸は、モル数の不足する樹脂にカップリングされ、続いて、ブロッキング工程を行う。本発明の好ましい実施形態では、約0.2mmol/gから約0.9mmol/gの範囲、例えば、約0.2mmol/g、0.3mmol/g、0.4mmol/g、0.5mol/g、0.6mmol/g、0.7mmol/g、0.8mmol/g、または0.9mmol/gの樹脂の負荷が使用される。この文脈では、SPPSの間、使用される種々の溶媒中の樹脂の膨潤および収縮によって、樹脂体積、したがって、樹脂上のペプチド濃度にかなりの変動をもたらしうることに留意されたい。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、グルカゴン様ペプチドはFmoc-SPPSによって製造される。適切な、保護されたアミノ酸誘導体(すなわち、1つまたはそれ以上の保護基にコンジュゲートされたアミノ酸部分)、例えば、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asn(Mtt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Asp(OMpe)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Cys(Mmt)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Gln(Mtt)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-His(1-Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、およびFmoc-Val-OHは、種々の供給源から市販されている。同様に、グルカゴン様ペプチドの合成において、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Nle(ノルロイシン)、またはOrn(オルニチン)のような非天然アミノ酸誘導体の使用が、本発明の方法によって包含されていることに留意されたい。好ましい実施形態では、アミノ酸誘導体Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Asp(OMpe)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Boc-His(Boc)-OH、Fmoc-His(1-Trt)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、およびFmoc-Val-OHが使用される。Fmoc-Trp(Boc)-OHをFmoc-Arg(Pbf)-OHと一緒に使用することにより、樹脂からのペプチドの切断の間に、陽イオン種によるトリプトファン部分のスルホニル修飾を抑制することが可能となる。しかし、樹脂からのTFAによる切断は、カルバメートのような副生成物を形成させる場合があるので、粗製ペプチドを脱炭酸反応に供することが有利である場合がある。例示的には、これは、粗製ペプチドを高pH処理、例えば、少なくとも7.2、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5、少なくとも10、少なくとも10.5、少なくとも11、または少なくとも11.5のpHなどに供することによって達成することができる。あるいはまたはさらに、脱炭酸反応は、穏やかな酸性条件下、例えば、6.0から7.0のpH、5.5.から6.5のpH、または5.0から6.0のpHで実施される。場合により、前記処理は、例えば、30~70℃の温度での、例えば、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、または70℃での熱処理を伴う場合がある。
【0066】
当業者は、Fmoc合成プロトコルに基づくSPPS法を十分に認識している。樹脂へのアミノ酸付加の各サイクルは、典型的に、Fmoc切断、すなわち、樹脂に結合したペプチド鎖からのFmoc保護基の除去により開始する。これは、ペプチド樹脂を、樹脂を膨潤させて試薬を溶解することのできる溶媒中の塩基とインキュベートすることによって達成される。この目的のための一般的な塩基は、例えば、ピペリジンや4-メチルピペリジンのような第二級アミンを含む。適切な溶媒は、例えば、DMF、NMP、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルオール、およびこれらの混合物を含む。反応は、通常、周囲温度で、例えば、15~30℃の温度範囲内で行われる。通常、塩基性不安定かつ酸性安定のFmocは、DMF中5~50%、好ましくは20%のピペリジン(v/v)を用いる短時間の処理(2から15分、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15分)によってスプリットされる。
【0067】
必要であれば、この処理が繰り返され、および/または若干延長される(7から30分、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分)。伸長部分を切断することが困難な大きいペプチドの合成のために、Fmoc切断の期間および反復数が徐々に増加される。例えば、切断時間は、15~75分、例えば、15、30、45、60、または75分であり、切断は、8回まで、例えば、2、3、4、5、6、7、または8回繰り返される。さらに、温度は、例えば、30℃と45℃の間の温度まで上昇される。これらの条件下で、多くの場合、完全なデブロックが達成される。さらにまたはあるいは、Fmoc切断に使用される試薬は様々である。
【0068】
試薬の僅かな変化でさえ、切断をかなり加速させる場合がある(例えば、45℃における、DMF中1から5%のDBU、DMF中20%のピペリジンおよび1~5%のDBU、NMP中20%のピペリジン、またはDMF中20%のピペリジンの使用)ことが見出された。さらに、切断反応の加速は、マイクロ波処理によって達成される。一方、ペプチドの性質は、より穏やかな処理の使用が有利とされる場合がある。特に穏やかな切断条件は、例えば、DMF中0.1MのHOBtと20%のピペリジン、DMF中50%のモルホリン、NMP中の50%のDMSO中2%のHOBtと2%のヘキサメチルエネイミンと25%のN-メチルピロリジンである。当業者は、日常的に、合成の各工程でFmoc切断条件を最適化し制御する。
【0069】
好ましい実施形態では、Fmoc保護基は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中5~50%(v/v)のピペリジンまたは4-メチルピペリジン、N-メチルピロリドン(NMP)中5~50%(v/v)のピペリジンまたは4-メチルピペリジン、DMF中1~5%(v/v)のジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、およびDMF中50%(v/v)のモルホリンから選択される混合物を使用して、固相にコンジュゲートされた成長ペプチド鎖から切断される。
【0070】
典型的に、切断試薬は、Fmoc除去後に注意深く洗浄される。DMFおよび場合によりIPAを使用して、中性のpHまで洗浄する。完全な塩基の除去を確保するために、後の洗浄サイクルで、少量のHOBtを添加することが有利である場合がある。
【0071】
アミノ酸のペプチド樹脂へのカップリング、すなわち、伸長工程は、SPPSサイクルの中心的工程の1つである。
【0072】
反応の速度および収率は、溶媒の選択、立体阻害、および活性化されたカルボン酸の反応性などの種々のパラメータによって影響を受ける場合がある。溶媒は、前駆体ペプチド樹脂の膨潤を決定するに過ぎず、したがって、反応部位の接触性に影響を及ぼす場合があり;これは、カップリング反応の動態にも直接影響を及ぼす場合がある。適切な溶媒は、樹脂を膨潤させ、試薬を溶解することができ、例えば、DMF、NMP、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルオール、およびこれらの混合物を含む。立体阻害は、アミノ酸側鎖およびその保護基の性質によって決定される。活性化されたカルボン酸の反応性によって、アシル化の速度、およびラセミ化のような副反応の程度が決定される。選択される合成戦略に応じて、擬プロリンジペプチド誘導体、ジペプチド誘導体もしくはトリペプチド誘導体、または分枝状ジペプチド誘導体のようなペプチド誘導体が、単一のアミノ酸誘導体の代わりに使用される。
【0073】
本発明のある特定の実施形態では、アミノ酸の活性化は、溶媒としてのDMF中で行われ、すなわち、アミノ酸またはペプチド誘導体、カップリング試薬および場合により添加剤がDMF中に溶解され、混合される。DICを、添加剤としてのOxymaPure(登録商標)またはHOBtと組み合わせて使用される。代替案では、TBTUまたはDEPBTを使用して、塩基、好ましくはDIPEAの存在下で、Fmocアミノ酸を活性OBtまたはODhbtエステルに変換される。選択したアミノ酸誘導体は、樹脂に付加する前に、上記試薬を用いて、1~30分間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、・・・、28、29、または30分間インキュベーションすることによって予め活性化される。カップリング反応は、1から74時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、・・・、71、72、73、または74時間、進行される。アミノ酸誘導体は、樹脂に結合したアミン基の量に対して、0.4~3モルの比で、例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0の比で使用される。完全なカップリングを達成するために、いくらかの時間の後、例えば、10、20、30、40、または60分後に、反応混合物に、活性剤または塩基の第2の部分を添加することが有利である場合がある。予め活性化する工程およびカップリング工程は、通常、室温で行われるが、他の温度で実施してもよい。アミノ基の完全な変換に近づくために、1回またはそれ以上の再カップリング工程を実施することが有利である場合がある。
【0074】
本発明の他の実施形態では、アミノ酸の活性化は、場合によりDMFと共に、NMP、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルオール、およびこれらの混合物からなる溶媒中で行われる。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明の工程(i-a)は、適切に保護されたアミノ酸誘導体またはジペプチド誘導体を使用するFmocベースの固相ペプチド合成(SPPS)を含み、前記保護されたアミノ酸誘導体またはジペプチド誘導体は、
(A) TBTU/DIPEA;
(B) DIC/OximaPure(登録商標)(シアノ-ヒドロキシイミノ-酢酸エチルエステル);
(C) DEPBT/DIPEA;および
(D) DIC/HOBt
からなる群から各工程について独立して選択される1種またはそれ以上のカップリング試薬/添加剤混合物によって活性化される。
【0076】
His誘導体のカップリングは、好ましくは、ラセミ化を回避するために行われる。この副反応は、3つの異なる手法:1)イミダゾール環のN3のブロッキング、2)BocまたはTosのような電子求引基によるイミダゾール環のN1のブロッキング、および3)Fmoc-His(1-Trit)-OHを使用する場合のカップリング条件の最適化によって低減されうる。したがって、N末端Hisを導入するために、Fmoc-His(1-Trit)-OH、Boc-His(1-Trt)-OH、またはBoc-His(Boc)-OH、最も好ましくは、Boc-His(Boc)-OHを、DEPBT/DIPEAと組み合わせて使用することが推奨される。
【0077】
したがって、好ましい実施形態では、N末端ヒスチジン部分は、Boc-His(Boc)-OH、Boc-His(1-Trt)-OH、およびFmoc-His(1-Trt)-OHからなる群から選択されるアミノ酸誘導体ならびにカップリング試薬/添加剤混合物であるDEPBT/DIPEAを使用して、固相にコンジュゲートされた前駆体ペプチドに導入される。
【0078】
キャッピングは、次の合成の工程におけるペプチド結合の形成から未反応のアミンをブロックするため、すなわち、合成される配列の欠失体の形成を回避するために実施される。これは、場合により、OxymaPure(登録商標)またはHOBtのような添加剤の存在下で、ペプチド樹脂と、大過剰の高い反応性を阻害しない酸誘導体、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、無水酢酸または塩化ベンゾイル、および塩基、例えば、ピリジン、コリジン、またはDIPEAとの短時間の処理によって達成することができる。典型的に、キャッピングによって、トランケート配列(truncated sequence)が得られ、これは、一般的に、最終ペプチドとかなり異なり、容易に分離することができる。好ましくは、計画的な二重カップリングの後にキャッピングされる。キャッピング工程の終わりに、典型的に、試薬が濾去され、樹脂が、例えばDMFと場合によりIPAを用いて注意深く洗浄された後、次の脱保護工程に進む。
【0079】
好ましくは、グルカゴン様ペプチドの、例えば、リラグルチドの樹脂上での凝集は、SPPSの間、妨げられる。
【0080】
リラグルチドのようなグルカゴン様ペプチドは、本来、凝集する傾向があり、このことは、グルカゴン様ペプチドの効率的な合成にとってさらなる課題を表す。段階的に、Fmoc-SPPSは、比較的困難になり、樹脂に結合したペプチドが凝集するとすぐにできなくなる場合さえある。
【0081】
カップリング密度の制御による樹脂の負荷の制御、洗浄工程中の樹脂の収縮の制御、DMSOのような溶媒の添加、カオトロピック塩の添加、非イオン性界面活性剤およびエチレンカーボネートの添加、高温で/マイクロ波処理下でカップリング反応を実施すること、ならびにカップリング反応混合物の超音波処理を含む、このような凝集を緩和するための多くの可能な選択肢が存在する。
【0082】
さらなる可能な手段には、セリンまたはトレオニンへの少なくとも1つのO-イソアシルペプチド結合の導入、少なくとも1つの擬プロリンジペプチドの導入、または2-ヒドロキシ-4-メトキシベンジル(Hmb)もしくは2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)部分による少なくとも1つのペプチド結合のNアルキル化が含まれる。したがって、Boc-Ser(Val-Fmoc)-OHまたはBoc-Thr(Gly-Fmoc)-OHのようなO-イソアシルペプチド結合を含む少なくとも1つのジペプチド誘導体を、この目的のために使用する。あるいはまたはさらに、Fmoc-Glu(OtBu)-(Dmb)Gly-OHおよびFmoc-Ala-(Dmb)Ala-OHのようなN-アルキル化ペプチド結合を有する少なくとも1つのジペプチドを使用する。
【0083】
驚くべきことに、少なくとも1つのFmoc擬プロリンジペプチドの使用によって、ペプチドの凝集、したがって、不十分な合成に起因する副生成物の形成が有利に抑制される。好ましくは、擬プロリンジペプチドは、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser
12から選択される位置に対応するか、または同一の位置に導入される。
【0084】
したがって、擬プロリン部位の導入により、固相にコンジュゲートされたグルカゴン様ペプチド、好ましくは固相にコンジュゲートされたリラグルチドが提供され、これは、関連する不純物の割合の低減によって特徴付けられる。様々な擬プロリンジペプチド誘導体が当業者に公知である(小冊子「Pseudoproline Dipeptides Bachem-Pioneering Partner for Peptides」、Global Marketingにより出版、Bachem Group、2015年11月を参照のこと)。したがって、好ましい実施形態では、1つまたはそれ以上の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12からなる群から選択される位置に導入される。
【0085】
特に好ましい実施形態では、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Val-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、およびFmoc-Ser(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHからなる群から選択される1つまたはそれ以上の擬プロリンジペプチド誘導体が使用される。
【0086】
好ましい実施形態によれば、1つまたはそれ以上の擬プロリンジペプチドは、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、またはThr~Serからなる群から選択される位置と同一の、またはそれに対応する位置で導入される。好ましくは、単一の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのThr~Serに対応するか、または同一の位置で導入される。別の好ましい実施形態では、単一の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのPhe~Thrに対応するか、または同一の位置で導入される。特に好ましい実施形態では、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、またはFmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHからなる群から選択される1つまたはそれ以上の擬プロリンジペプチドが使用される。
【0087】
好ましい実施形態によれば、導入された唯一の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、またはThr~Serからなる群から選択される位置と同一の、またはそれに対応する位置に位置付けられている。特に好ましい実施形態では、導入された唯一の擬プロリンジペプチドが、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、またはFmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHからなる群から選択される。
【0088】
好ましい実施形態によれば、単一の擬プロリンジペプチドが、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12からなる群から選択される、好ましくは式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、およびThr~Serからなる群から選択される位置と同一の、またはそれに対応する位置で導入される。特に好ましい実施形態では、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、またはFmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHからなる群から選択される単一の擬プロリンジペプチドが使用される。
【0089】
用語「擬プロリンジペプチド」は、本明細書で使用する場合、オキサゾリジン形成によってSerおよびThrから、チアゾリジン形成によってCysから容易に得ることができる、一時的なプロリン模倣体を指す。当業者であれば、このような擬プロリンジペプチドについて十分に認識している。これらのジペプチドは、SPPSの間の樹脂上での凝集を緩和するための1つの可能な選択肢である。2,2-ジメチルオキサゾリジンは、TFAによって平滑に切断され、したがって、Fmoc-SPPSに特に適している。したがって、特に、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Val-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、およびFmoc-Ser(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHが使用される。
【0090】
用語「式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12から選択される位置に対応する位置」は、本明細書で使用する場合、グルカゴン様ペプチドの主要な配列内の位置であって、その位置が、式Iのペプチドに関する前記グルカゴン様ペプチドの配列アラインメントに基づき、式IのペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12から選択される位置と相同であるとみなされる位置を指す。典型的に、そのようなアラインメントにおいて互いの先端に示される位置は、相同である、すなわち、互いに対応するとみなされる。BLASTまたはClustalWのような典型的な配列アラインメントツールは、同業者に周知である。
【0091】
上記にレイアウトされるように、リラグルチドは、アミノ酸の20位のリシル部分(Lys20)のイプシロンアミノ基に結合したグルタミル部分にコンジュゲートされたパルミチン酸、すなわちLys(パルミトイル-Glu-OH)を含む。これは、任意の手段によって導入される。
【0092】
種々のプロトコルを、(Nε-(γ-グルタミル(Nα脂肪酸エステル)))で置換されたLys側鎖(例えば、US-B 6,451,974、EP-A 2 757 107、WO 2013/171135を参照のこと)の導入に使用することができる。本発明の文脈では、以下の式2(式中、Rはアミノ保護基であり、Rはカルボン酸保護基であり、Rはアミノ保護基または脂肪酸部位、特にパルミトイル[CH(CH14CO-]基である)の分枝状ジペプチド構築ブロックを使用して、SPPSの間に、少なくとも部分的に、前記基を導入することが好ましい。
【0093】
式2:
【化1】
【0094】
特に好ましくは、SPPSは、Fmoc-Lys(パルミトイル-Glu-OtBu)-OH構築ブロック(例えば、Iris Biotech GmbHから、またはPeptides Internationalから市販されている)またはFmoc-Lys(Boc-Glu-OtBu)-OH構築ブロック(例えば、Active Peptideから市販されている)のいずれかを使用することによって実施される。
【0095】
後者が使用される場合には、得られたペプチドは、グルタミル部分のアルファアミノ官能基でN-パルミトイル化される。パルミチン酸の種々の活性化エステル、例えば、p-ニトロフェニルエステルおよびスクシンイミドエステルをこの目的のために使用することができる。好ましい実施形態では、N-スクシンイミジルパルミテートが使用される。
【0096】
したがって、好ましい実施形態では、方法は、ペプチドを、パルミチン酸の活性化エステルと、好ましくはN-スクシンイミジルパルミテートと反応させる工程を含む。これは、典型的に、式Iのペプチドをもたらす。
【0097】
より好ましい実施形態では、方法は、パルミチン酸の活性化エステル、好ましくはN-スクシンイミジルパルミテートを、式IのペプチドのLys(H-Glu-OH)部分と、または工程(i-a)で準備した前駆体ペプチドからアミノ保護基Rを切断することによって得ることができるLys(H-Glu-OR)部分と反応させる工程を含む。
【0098】
さらにより好ましくは、方法は、パルミチン酸の活性化エステル、好ましくはN-スクシンイミジルパルミテートを、工程(i-a)で準備した前駆体ペプチドからアミノ保護基Rを切断することによって得ることができるLys(H-Glu-OR)部分と反応させる工程を含み、特に、工程(i-a)で準備した前駆体ペプチドは、Glu、AspおよびLysの側鎖において少なくとも保護基を保有する。
【0099】
場合により、SPPS反応の進行は、効率的なFmoc除去、カップリング、および/またはキャッピング工程を確保するために、プロセス制御法を使用してモニタリングされる。一方でのFmoc決定および多方での遊離アミンの決定により、相補的な情報が得られる場合がある。まとめると、これらの方法により、SPPSプロセスの各工程の効率的なモニタリングが可能となる場合がある。本発明の文脈で有用な通常のモニタリング方法の一部が以下に例示される。
【0100】
場合により、樹脂に結合したペプチドから切断されたFmocの量は、例えば、分光測定による決定によって、容易に定量化されうる。樹脂から排出されるFmoc切断試薬は回収され、その中のFmoc濃度は、例えば、301nmでの吸光度を測定することによって決定した。切断されたFmocの量に基づき、樹脂の負荷、すなわち樹脂上のFmocペプチドのもとの量が計算されうる。さらに、Fmoc除去の完全性を評価するために、おそらくFmocが脱保護された樹脂の少量のサンプルを、この処理によって除去された残留Fmocの量を決定するために、さらなる厳しいFmoc切断プロトコルに供する。代替案では、Fmoc除去の完全性を評価するために、樹脂サンプルからのペプチドの小規模の切断試験を行う。得られたペプチドは、Fmoc保護された、遊離のペプチド配列が、通常、十分に分離される、標準勾配を使用する分析RP-HPLCによって分析される。さらにまたはあるいは、ペプチドサンプルは、質量分析によって、例えば、LC-MSまたはMALDI-MSによって分析される。同様に、薄層クロマトグラフィーは、微量のFmocペプチドの検出を可能にする場合がある。
【0101】
樹脂上の遊離アミンの量は、比色分析によるKaiser(すなわち、ニンヒドリン)テスト、TNBSテスト、クロラニルテスト、およびブロモフェノールブルーテストを含む種々のアッセイによって評価される。これは、当業者に周知である。
【0102】
これらのテストは、Fmoc切断後の遊離アミノ官能基の生成、ならびに以下のFmoc保護されたアミノ酸誘導体のカップリング後および/またはキャッピング工程後のそれらの消失を評価するために有利に使用されうる。好ましくは、KaiserテストおよびTNBSテストのような少なくとも2つの比色分析によるテストが並行して行われる。Kaiserテストは、ニンヒドリンのアミンとの反応に基づく。これは、第一級アミンに対する非常に感度の高いテストであり、強烈な青色で可視化され、第二級アミンに対してはそれほど適さず、褐色がかった赤色を呈する。色は、通常、主に、ビーズにおいて発色し、上清においても部分的に発色する。未反応のアミノ基の量の分光測定による定量化が意図される場合、色は、完全に溶液に移される。色の強度は、検出されるアミノ末端の性質に依存する。どちらかといえば非特異的な濃淡が、N末端の、側鎖が保護されたAsp、Asn、Cys、Ser、およびThrで得られ、褐色がかった赤色のビーズは、N末端のProで生じる。樹脂サンプルは、典型的に加熱されるため、「隠れた」NH基が、より接触可能となり、したがって検出可能となる。
【0103】
しかし、加熱の延長および過熱は、Lys(Boc)の切断またはFmoc除去(ピリジンによる)を引き起こす場合があるので、回避されるべきである。TNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)テストは、Kaiserテストとほぼ同程度に感受性が高いが、第一級アミノ基を検出するためにのみ使用することができる。ビーズが橙赤色に変わるだけで、色の強度はN末端の性質に依存しない。ビーズのコアの若干橙色の染色は、単なる目視検査によっては検出できないので、より感度の高い読み出しを使用すること、例えば、顕微鏡下でビーズを検査することが推奨される。
【0104】
SPPSによる前駆体ペプチドの合成が完了しても、前駆体ペプチドは依然として樹脂にコンジュゲートされている。したがって、前駆体ペプチドは固相に結合されており、少なくとも部分的に側鎖が保護されている。式Iのペプチド、例えば、リラグルチドまたは本発明の任意の他のグルカゴン様ペプチドを得るために、ペプチドは樹脂から切断される。これは、本明細書において、樹脂から前駆体ペプチドを切断する工程(i-b)によって表される。
【0105】
最も好ましくは、この工程の間に、側鎖を保護する基のほとんどまたはすべても、付随してペプチドから切断され、すなわち、ペプチドは脱保護され、それにより、式Iのペプチドが提供される。
【0106】
したがって、好ましくは、TFAおよび1種またはそれ以上の捕捉剤を含む切断組成物を用いたインキュベーションによって、樹脂からの脱保護および切断(工程(i-b))が付随して行われる。
【0107】
樹脂からペプチドを切断するために、この目的のために適する任意の組成物を使用する。好ましくは、切断および脱保護は、50%(v/v)超のTFA、より好ましくは75%(v/v)超のTFA、特に、少なくとも80%(v/v)またはさらに少なくとも90%(v/v)のTFAを含む組成物によって行われる。組成物は、水および/または1種もしくはそれ以上の捕捉剤を含む。好ましくは、組成物は、TFA、水および1種もしくはそれ以上の捕捉剤を含む。特に有利な捕捉剤は、EDTのようなチオール捕捉剤および/または、例えば、TIPSのようなシラン捕捉剤である。切断組成物は、少なくとも80%のTFA、好ましくは少なくとも90%のTFA、およびEDTを含む。切断組成物は、少なくとも80%のTFA、好ましくは少なくとも90%のTFA、水、およびEDTを含む。切断組成物は、少なくとも80%のTFA、好ましくは少なくとも90%のTFA、水、TIPSおよびEDTを含む。例示的に、本発明の文脈で使用するための組成物は、TFA/水/TIPS(90:5:5)v/v/v、TFA/水/フェノール(90:5:5)v/v/v、TFA/水/EDT/TIPS(90:5:2.5:2.5)v/v/v/v、TFA/水/EDT/TIPS(90:4:3:3)v/v/v/v、TFA/水/EDT(90:5:5)v/v/v、TFA/チオアニソール/アニソール/EDT(90:5:3:2)v/v/v/vおよびTFA/チオアニソール/水/フェノール/EDT(82.5:5:5:5:2.5)v/v/v/v/vからなる群から選択される。
【0108】
前駆体ペプチドを樹脂から切断する工程(工程(i-b))は、この目的のために適する任意の条件で行う。切断は、好ましくは、約1から4時間および/または0から32℃の温度で、洗浄された樹脂を切断組成物とインキュベートすることによって行われる(好ましくは、不活性ガス下で)。
例示的に、切断は、1時間まで、1.5時間まで、2時間まで、2.5時間まで、3時間まで、3.5時間まで、もしくは4時間まで、または4時間超、約0から4℃、4から10℃、10~15℃、15から25℃、または25から35℃の温度で、洗浄された樹脂を切断組成物とインキュベートすることによって行われる(好ましくは、不活性ガス下で)。例示的に、切断は、1時間まで、1.5時間まで、2時間まで、2.5時間まで、3時間まで、3.5時間まで、もしくは4時間まで、または4時間超、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、または32℃の温度で、洗浄された樹脂を切断組成物とインキュベートすることによって行われる(好ましくは、不活性ガス下で)。
【0109】
あるいは、別の切断組成物が使用される。例えば、保護されたペプチド断片の2-クロロトリチル樹脂からの切断は、TFE/AcOH/DCM(1:1:3)、0.5%のTFA/DCM、またはHFIP/DCMを使用して達成する。
【0110】
当業者は、日常的に、問題のペプチドのアミノ酸組成に応じて、本発明の文脈で使用するための組成物を最適化し、1種またはそれ以上の捕捉剤、例えば、とりわけ、DTE、EDT、TES、TIPS、2-メルカプトエタノール、エチルメチルスルフィド、m-クレゾールもしくはp-クレゾール、2-Me-インドール、Ac-Trp-OMe、またはトリプタミンの最適な使用を予想する。
【0111】
本出願の文脈では、用語「捕捉剤」は、SPPS後のペプチドの樹脂からの切断の間、および/または保護基の除去の間に、副反応を抑制するために反応混合物に添加される化合物を指すために使用される。切断組成物において使用される典型的な捕捉剤は、「チオール捕捉剤」(例えば、EDT、DTE、DTT、およびベータ-メルカプトエタノール)および「シラン捕捉剤」(例えば、TESおよびTIPS)である。さらに、通常使用される捕捉剤は、エチルメチルスルフィド、チオアニソール、アニソール、m-クレゾールもしくはp-クレゾール、2-Me-インドール、Ac-Trp-OMe、またはトリプタミンを含む。当業者であれば、使用可能な非常に様々な捕捉剤を十分に認識している。
【0112】
上記によれば、工程(i)から得られる溶液Sは、好ましくは、TFA(典型的に、少なくとも80%(v/v)または少なくとも90%(v/v))、ペプチドから切断された保護基の残留物、および、より好ましくはまた、水、および1種またはそれ以上の捕捉剤も含む。
【0113】
次いで、樹脂は、通常、濾過によって、工程(i)から得られた、すなわちペプチドを樹脂から切断することによって得られた溶液Sから分離される。本発明の実施形態では、工程(i)から得られた前記溶液Sは、リラグルチドペプチドおよび切断のために使用された試薬(例えば、TFA、水、捕捉剤、およびペプチドから切断された保護基の残留物)を含む。場合により、樹脂は、濾過後に、例えば、濃縮されたTFAで、または濃縮されたTFAと捕捉剤ですすがれる。
【0114】
場合により、さらなるすすぎ溶液が工程(i)から得られた溶液Sの一部も形成し、すなわち、これらは、ペプチドの樹脂からの切断後に直接得られた溶液と共にプールされる。
【0115】
したがって、好ましい実施形態では、工程(i)から得られた溶液Sは、トリフルオロ酢酸(TFA)、水および1種もしくはそれ以上の捕捉剤をさらに含む。
【0116】
より好ましい実施形態では、工程(i)から得られた溶液Sは、トリフルオロ酢酸(TFA)、水ならびにチオール捕捉剤および/またはシラン捕捉剤から選択される1種またはそれ以上の捕捉剤を含む。
【0117】
捕捉剤は、Cys、Met、Ser、Thr、Trp、およびTyrのような感受性の高いアミノ酸との望ましくない副反応を妨げる役割を果たす場合がある。いずれの理論にも拘泥されることを望むものではないが、前記副反応は、切断反応の間に生じた反応性の高いカルボカチオンの捕捉によって抑制されると考えられる。
【0118】
当業者であれば、溶液Sから式Iのペプチドを単離し、それにより粗製ペプチド(典型的に、TFA塩として存在する)を得ることが望ましいことに留意するであろう。本発明の特に好ましい実施形態では、これは、ジイソプロピルエーテル(IPE)およびアセトニトリル(ACN)を含む逆溶媒によって工程(i)のペプチドを沈殿させ(体積比(IPE:ACN)は、(3:1)から(10:1)の範囲内にある);次に、得られた沈殿物を単離することによって実施される。
【0119】
本明細書において、IPEとACNの混合物は、逆溶媒としての役割を果たす。この用語は、当業者によって十分に理解されている。本明細書で使用する場合、用語「逆溶媒」は、ペプチド溶液と混合する際に、ペプチドの沈殿を誘導する任意の試薬として、最も広い意味で理解される。例示的に、逆溶媒は、ジエチルエーテル、IPE,MTBE、およびIPEとACNの混合物を含む。本発明によれば、逆溶媒は、(3:1)v/vから(10:1)v/vの範囲から選択される比で、IPEとACNを含む。より好ましくは、逆溶媒は、IPEとACNを含み、体積比(IPE:ACN)は(3:1)から(5:1)の範囲内にある。驚くべきことに、切断組成物からの粗製ペプチドの取り出しは、IPEとACNを含む逆溶媒を(3:1)v/vから(10:1)v/vの範囲から選択される比で、好ましくは(3:1)から(5:1)v/vの比で、例えば、(3:1)、(3.5:1)、(4:1)、(4.5:1)、または(5:1)v/vの比で用いる際に特に良好であることが見出された。
【0120】
前記逆溶媒の使用によって、沈殿物の純度および物理特性が改善され、それによって、ペプチド生成物の切断組成物からの効率的な分離が可能となる。
【0121】
有利には、本発明は、そのサイズ分布が素早い濾過を可能にする、粘着性のない沈殿物の形成を可能にすることによって、粗製ペプチドの素早い取り出しが可能となる。さらに、沈殿物の純度と低含量のTFAについて有利である。
【0122】
好ましい実施形態では、工程(ii)で使用される逆溶媒は、少なくとも50%v/vのジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルからなる混合物Mを含み、好ましくは、逆溶媒は、少なくとも75%(v/v)の前記混合物Mを含み、より好ましくは、逆溶媒は、ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルの混合物から本質的になる。
【0123】
特に好ましい実施形態では、逆溶媒は、ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルの混合物から本質的になり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)は、(3:1)から(5:1)の範囲内にある。
【0124】
逆溶媒は、任意の手段によって、溶液Sと混合される。好ましい実施形態では、工程(ii)は:
(ii-a)ジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルを予め混合した後、それを工程(i)から得られた溶液Sと混合する工程;
(ii-b)ジイソプロピルエーテルを工程(i)から得られた溶液Sと最初に混合し、次に、アセトニトリルを、溶液Sおよびジイソプロピルエーテルを含む混合物と混合する工程;または
(ii-c)アセトニトリルを工程(i)から得られた溶液Sと最初に混合し、次に、ジイソプロピルエーテルを、溶液Sおよびアセトニトリルを含む混合物と混合する工程
によって、逆溶媒を工程(i)から得られた溶液Sと混合することを含む。
【0125】
言い換えれば、逆溶媒は、アセトニトリルを含有する部分とジイソプロピルエーテルを含有する部分とに分割され、次に、前記部分を、ペプチドを含む溶液と接触させる。あるいは、逆溶媒は単一の液体混合物である。
まとめると、本発明の(IPE:ACN)の体積範囲が、最終的に得られる。当業者は、アセトニトリルとジイソプロピルエーテルのアリコートが、本発明の体積範囲に合計されるまで、溶液Sと交互に混合されることを理解する。
【0126】
好ましくは、溶液Sの逆溶媒に対する体積比は、1:5から1:15の範囲内にあり、例えば、1:5、1:8、1:10、1:12、または1:15である。言い換えれば:1体積の溶液Sは、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15体積に対応する量の逆溶媒と混合される。
【0127】
式Iのペプチドを溶液Sから沈殿させる工程(工程(ii))は、この目的のために適する任意の温度および任意の時間間隔で行われる。例示的に、工程(ii)は、-5℃から25℃、例えば、約-5~0℃、0~10℃、10~20℃、または20~25℃で行われる。
【0128】
本出願の文脈で使用する場合、用語「約」は、任意の所与の数値から10%までの逸脱を示すために使用される。
【0129】
好ましい実施形態では、式Iのペプチドの沈殿(工程(ii))は、-5℃から10℃、好ましくは0℃から10℃の範囲の温度で行われる。適切な温度範囲は、-5~0℃、-2.5~2.5℃、0~5℃、2.5~7.5℃、または5~10℃である。
【0130】
例示的に、工程(ii)は、約30から360分、例えば、約30、60、90、120,150、180、210、240、270、300、330、または360分の時間間隔で行われる。
【0131】
したがって、好ましい沈殿条件は、約-5℃から25℃、例えば、約-5~0℃、0~10℃、10~20℃、または20~25℃の範囲の温度で、およそ30から360分の範囲、例えば、約30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、330、または360分の反応時間で特徴付けられる。
【0132】
特に好ましい実施形態では、リラグルチドペプチドまたはその塩を製造するための方法は:
(i)式I:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OH)またはLys(H-Glu-OH)である)
のペプチドを含む溶液Sを準備する工程であり;
前記溶液Sの準備が:
(i-a)固相:
H-His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OtBu)またはLys(Boc-Glu-OtBuであり、
Glu、AspおよびLysの少なくとも側鎖が、保護基を保有する)
にコンジュゲートされた前駆体ペプチドを準備する、工程と;
(i-b)トリフルオロ酢酸(TFA)を含む切断組成物によって、前駆体ペプチドを樹脂から切断する工程
とを含み、
工程(i)から得られた前記溶液Sが、トリフルオロ酢酸(TFA)、水ならびにチオール捕捉剤および/またはシラン捕捉剤から選択される1種またはそれ以上の捕捉剤を含み;
(ii)溶液Sをジイソプロピルエーテルおよびアセトニトリルからなる逆溶媒と混合することによって、工程(i)のペプチドを沈殿させる工程であり、体積比(ジイソプロピルエーテル:アセトニトリル)が(3:1)から(5:1)の範囲内にある、工程と;
(iii)工程(ii)から得られた沈殿物を、好ましくは濾過および/または遠心分離によって、単離する工程
とを含む。
【0133】
工程(i)から得られた溶液Sと逆溶媒は、当技術分野で公知の任意の手段によって混合される。工程(i)から得られた溶液Sと逆溶媒は、任意の順序で混合される。
【0134】
好ましい実施形態によれば、工程(ii)は、古典的な沈殿プロトコルを使用して行われ、すなわち、逆溶媒は、工程(i)から得られた溶液Sに添加される。これは、逆溶媒を一度に添加することによって、または逆溶媒を滴下添加することによって、および/もしくはスローフローによって達成される。
【0135】
別の好ましい実施形態によれば、工程(ii)は、逆沈殿プロトコルを使用して行われ、すなわち、工程(i)から得られた溶液Sが逆溶媒に添加される。これは、逆溶媒を一度に添加することによって、または逆溶媒を滴下添加することによって、および/もしくはスローフローによって達成される。当業者であれば、このような沈殿工程を行う方法を十分に認識している。
【0136】
次いで、リラグルチドペプチドを含む沈殿物が、逆溶媒中の懸濁物として形成され、前記懸濁物は、切断組成物の試薬(例えば、TFA、水、および捕捉剤)ならびにペプチドから切断された保護基の残留物を含む。次いで、リラグルチドペプチドを含む(またはそれから本質的になる)沈殿物は、当技術分野でこのような目的のために公知の任意の手段によって、粗製の懸濁物から単離されうる。
【0137】
したがって、本発明は、工程(ii)から得られた沈殿物を単離するための工程(iii)も含む。
【0138】
好ましい実施形態によれば、工程(iii)は、濾過および/または遠心分離によって成し遂げられる。
【0139】
本明細書で使用する場合、用語「単離」は、目的の生成物、例えば粗製のペプチド沈殿物をより複雑な組成物から得るための任意の手段として、最も広い意味で理解される。粗製のペプチド沈殿物は、少なくとも30%(w/w)、好ましくは少なくとも40%(w/w)、より好ましくは少なくとも50%(w/w)、より好ましくは少なくとも60%(w/w)、より好ましくは少なくとも70%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも80%(w/w)、さらにより好ましくは少なくとも90%(w/w)、特に少なくとも95%(w/w)またはさらに100%(w/w)のリラグルチドペプチドを乾燥状態で含む。典型的に、粗製のペプチド沈殿物は、40~70%(w/w)の、乾燥状態のリラグルチドペプチドを含む。
【0140】
濾過は、例えば、全量濾過またはクロスフロー濾過のような、当技術分野で公知の任意の濾過方法である。本明細書で使用する場合、用語「クロスフロー濾過(cross-flow filtration)」、「クロスフロー濾過(crossflow filtration)」、「タンジェンシャルフロー濾過(tangential flow filtration)」、「タンジェンシャル濾過(tangential filtration)」は互換的に理解される。フィルターは、例えば、プラスチック(例えば、ナイロン、ポリスチレン)、金属、合金、ガラス、セラミック、セロファン、セルロース、または複合材料のような当技術分野における濾過の文脈で公知の任意の材料のものである。フィルターは、疎水性または親水性である。フィルターの表面は、中性または正に荷電、または負に荷電している。
【0141】
遠心分離は、懸濁された沈殿物の沈降が加速される任意の手段として、最も広い意味で理解される。例示的に、100×gまで、少なくとも100×g、少なくとも1,000×g、少なくとも2,500×g、少なくとも5,000×g、少なくとも7,500×g、少なくとも10,000×g、少なくとも15,000×g、少なくとも25,000×g、または少なくとも50,000×gの遠心力を使用する。遠心分離という手段によって、粗製リラグルチドペプチドを含む(または(本質的に)からなる)ケーキが形成される。場合により、ケーキは、上記で言及された逆溶媒と同一であっても異なる逆溶媒に再懸濁される。場合により、逆溶媒中でペレットを遠心分離して再懸濁することを数回繰り返し、粗製リラグルチドペプチドの純度をさらに上昇させる。
【0142】
好ましくは、本発明の方法によって得られた粗製ペプチドは、1回またはそれ以上の製造プロセス工程によるさらなる精製に供されうる。この文脈で、場合により使用される精製および分離のための手段は、例えば、1種もしくはそれ以上の電気泳動法(例えば、ゲル電気泳動もしくはキャピラリー(CE)電気泳動)、1種もしくはそれ以上のさらなる沈殿に基づく方法(例えば、塩溶もしくは塩析)、1種もしくはそれ以上の透析法(透析)、および/または1種またはそれ以上のクロマトグラフィー法(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、フラッシュクロマトグラフィー(フラッシュ)、迅速分解能液体クロマトグラフィー(Rapid Refluid Liquid Chromatography)(RRLC)、高速分離液体クロマトグラフィー(RSLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UFLC)、逆相UFLC(RP-UFLC)、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)または逆相UPLC(RP-UPLC)を含む。好ましくは、粗製ペプチドは、最初に、三次元逆相HPLC、続いて、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、または限外濾過に供される。
【0143】
当業者であれば、本発明が、粒径および稠度が改善されたことに起因して、特に取り扱いやすい、純度の改善された粗製リラグルチドペプチドの沈殿も包含することに気付くであろう。
【0144】
したがって、本発明のさらなる態様は、本発明による方法によって得ることができる、または得られるリラグルチドペプチドの沈殿物を指す。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、280マイクロメーター超、300マイクロメーター超、350マイクロメーター超、または400マイクロメーター超の平均粒径によって特徴付けられる。
【0146】
さらに、本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%のペプチド純度によって特徴付けられる。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、N末端および/またはC末端がトランケートされたリラグルチド変異体を含有することによって特徴付けられる。一部の実施形態では、本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、N末端でアシル化、例えばアセチル化されているリラグルチド21-31-OHのトランケートされた変異体を含有することによって特徴付けられる。他の実施形態では、本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、トランケートされた変異体、リラグルチド1-30を含有することによって特徴付けられる。
【0148】
用語「トランケートされた変異体」は、本明細書で使用する場合、ペプチド配列のN末端またはC末端で1つまたはそれ以上のアミノ酸を欠く、前記ペプチドの連続する断片、すなわち、ギャップのない配列を指す。N末端でトランケートされた変異体は、アシル化、例えばアセチル化されている。
【0149】
さらなる好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、粘着性の低下もしくはさらに粘着性が欠如することによって、および/または20%(w/w)未満のTFA含量によって特徴付けられる。特定の好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、350マイクロメーター超の平均粒径および少なくとも55%の純度によって特徴付けられる。別の好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、400マイクロメーター超の平均粒径および少なくとも55%の純度によって特徴付けられる。別の好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、350マイクロメーター超の平均粒径および少なくとも60%の純度によって特徴付けられる。特に好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、350マイクロメーター超の平均粒径、少なくとも55%の純度、および非粘着性の稠度によって特徴付けられる。さらに別の好ましい実施形態では、本発明によって得ることができるリラグルチドペプチドの沈殿物は、350マイクロメーター超の平均粒径、少なくとも55%の純度、および20%(w/w)未満のTFA含量によって特徴付けられる。
【0150】
沈殿物の粒径は、当技術分野の任意の手段によって、例えば、以下に記載されている集束ビーム反射測定法(FBRM)の技術によって測定される。
【0151】
他に記載されていなければ、ペプチドの純度は、本明細書において、「HPLC純度」として、すなわち205から230nmの間の波長での、すなわちペプチド結合の吸収極大でのUV検出を用いる分析逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で実測される相対ピーク面積として示される。言い換えれば、値は、205から230nmの間の波長でのUV検出を用いる分析RP-HPLCによって得られるクロマトグラムにおいて、すべての実測されたピークの面積の合計で割った、所与のピーク面積の面積%として決定される。この尺度は、この分野での常識であり、当業者は、生成物に特異的なRP-HPLCプロトコルを日常的に考案し、米国薬局方で示される確立されたガイドラインに従った定量を実施する。ペプチドの夾雑物の検出に対するRP-HPLCプロトコルの適性は、日常的に、LC-MSによってピーク純度を決定することによって評価される。それらの類似構造に起因して、すべてのペプチドの構成成分が同じ吸収を有するという仮定のもと、質量百分率[%(w/w)]として表現された純度に対するプロキシとして、RP-HPLC純度を使用することができる。
【0152】
前記リラグルチドペプチドの沈殿物の文脈では、上記に示されたすべての定義も適用する。当業者であれば、前記沈殿物中のリラグルチドペプチドが塩、特にTFA塩の形態であることに気付くであろう。
【0153】
場合により、本発明のリラグルチドペプチドの1つまたはそれ以上のアミノ酸部分は、ペプチドを得ることに続いて、脂質付加されるか、リン酸化されるか、硫酸化されるか、環化されるか、酸化されるか、還元されるか、脱炭酸されるか、アセチル化されるか、アシル化されるか、アミド化されるか、脱アミド化されるか、ビオチン化されるか、または1つもしくはそれ以上の他の小分子および/もしくはテルペンに結合される。場合により、本発明のリラグルチドペプチドは、1種またはそれ以上の小分子色素(例えば、Cy色素(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)、Alexa色素(複数可)(例えば、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 750)、VisEn色素(例えば、VivoTag680、VivoTag750)、S色素(例えば、S0387)、DyLightフルオロフォア(例えば、DyLight 750、DyLight 800)、IRDyes(例えば、IRDye 680、IRDye 800)、フルオレセイン色素(例えば、フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC))、ローダミン色素(例えば、ローダミン、テトラメチルローダミン(TAMRA))またはHOECHST色素)または1種もしくはそれ以上の量子ドットによって標識される。
【0154】
上記に示すように、本発明による方法の好ましい実施形態によれば、リラグルチドペプチドは、樹脂上でSPPSによって製造される。
【0155】
したがって、本発明のまたさらなる態様は、樹脂:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-B-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
(式中、BはLys(パルミトイル-Glu-OR)またはBはLys(R-Glu-OR)であり、Rはカルボン酸保護基であり、Rはアミノ保護基であり、
少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を保有し、
少なくとも1つの擬プロリンジペプチドが、Gly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12からなる群
から選択される位置に存在する)
にコンジュゲートされた前駆体ペプチドに関する。
【0156】
前記前駆体ペプチドの文脈で、上記で示されたすべての定義も使用する。当業者であれば、前記前駆体ペプチドの塩も、特に薬学的に許容される塩も本発明によって包含されることに気付くであろう。好ましい実施形態では、少なくとも1つの擬プロリンジペプチドが、前駆体ペプチドのGly~Thr、Phe~Thr、またはThr~Serから選択される位置に存在する。これは、例示的に、本明細書に記載されている擬プロリン部位である。
【0157】
本明細書で使用する場合、用語「前駆体ペプチド」は、本発明の意味において、ペプチド、すなわちグルカゴン様ペプチド、特にリラグルチドに変換することができる化合物として、最も広い意味で理解される。典型的に、このような前駆体は、その側鎖において部分的に、または完全に保護されており、その樹脂にコンジュゲートされた、すなわち固相にコンジュゲートされた、SPPSの精製物である。
【0158】
さらに、本発明は、固相にコンジュゲートされたグルカゴン様ペプチド(特に、リラグルチドの前駆体ペプチド)を提供し、少なくともGlu、AspおよびLysの側鎖が保護基を有し、少なくとも1つのセリンもしくはトレオニンに結合したO-イソアシルペプチドが存在し、ならびに/または少なくとも1つの擬プロリンが、Gly~Thr、Phe~Thr、Thr~Ser、Val10~Ser11またはSer11~Ser12から選択される位置に存在し、ならびに/もしくは少なくとも1つのペプチド結合が、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンジル(Hmb)または2,4-ジメトキシベンジル(Dmb)部位によってNアルキル化されている。
【0159】
特に好ましくは、前駆体ペプチドは、例えば、Fmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Val-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、および特に、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OHから選択される少なくとも1つの擬プロリンジペプチドを含む。
【0160】
本発明は、さらに、式Iのペプチドを製造する方法に関し、前記ペプチドが、TFA含有切断組成物とのインキュベーションによって、樹脂にコンジュゲートされた上記前駆体ペプチド(すなわち、固相に結合した、側鎖が保護されたリラグルチド誘導体)から得られる。このインキュベーションは、上記のように行われる。
【0161】
本発明は、前に記載されているように、樹脂から切断された前駆体ペプチドから得ることができるリラグルチドペプチドも指す。
【0162】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って製造されたグルカゴン様ペプチドを含むか、または本発明の固相にコンジュゲートされたグルカゴン様ペプチドからの切断によって製造されたグルカゴン様ペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0163】
したがって、本発明のさらなる態様は:
(A)本発明による方法から得ることができるリラグルチドペプチド、または固相から本発明による前駆体ペプチドを切断することから得ることができるリラグルチドペプチドと(B)薬学的に許容される担体
とを含む医薬組成物を指す。
【0164】
薬学的に許容される担体は、この目的のために知られている任意の添加剤または添加剤の組成物である。このような添加剤は、例えば、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、植物油、パラフィン油またはこれらの組合せのような、非毒性溶媒である。さらに、担体は、1種もしくはそれ以上の界面活性剤、1種もしくはそれ以上の発泡剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)/ドデシル硫酸ナトリウム(sodium doceyl sulfate)(SDS))、1種もしくはそれ以上の着色剤(例えば、TiO、着色料)、1種もしくはそれ以上のビタミン、1種もしくはそれ以上の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩)、1種もしくはそれ以上の湿潤剤(例えば、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、プロピレングリコール、ポリデキストロース)、1種もしくはそれ以上の酵素、1種もしくはそれ以上の保存剤(例えば、安息香酸、メチルパラベン)、1種もしくはそれ以上のテクスチャリング剤(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール)、1種もしくはそれ以上の乳化剤、1種もしくはそれ以上の充填剤、1種もしくはそれ以上の艶出し剤、1種もしくはそれ以上の分離剤、1種もしくはそれ以上の抗酸化剤、1種もしくはそれ以上のハーブエキスおよび植物エキス、1種もしくはそれ以上の安定剤、1種もしくはそれ以上のポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリエチレンイミン(PEI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG))、1種もしくはそれ以上の取り込みメディエーター(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、細胞透過性ペプチド(CPP)、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、抗菌ペプチドなど)、1種もしくはそれ以上の抗体、1種もしくはそれ以上の甘味剤(例えば、スクロース、サッカリンNa、ステビア)、1種もしくはそれ以上の対比染色色素(例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、Cy色素、Alexa Fluor色素、S色素、ローダミン、量子ドットなど)、1種もしくはそれ以上のホメオパシー成分、1種もしくはそれ以上の味覚物質ならびに/または1種もしくはそれ以上の芳香剤を含有する。
【0165】
行われた実験および達成された結果を含む、以下の図および実施例は、特許請求の範囲と一緒に、例示目的で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1】選択されたグルカゴン様ペプチドの配列アラインメント示す図である。GLP-1配列と同一性を共有する部分を太字で記載する。
図2】FBRM技術(以下の装置:ParticleTrack G600L、Mettler Toledo、設定:マクロV1.1.11、cube weight、正規化された、平均(cube weight))によって測定されたペプチド沈殿物の粒径分布を示すグラフである。翼弦長さは、走査速度および後方散乱光の別個のパルスの数と期間に基づいて計算された各粒子を横切る距離である。得られたパーセンテージは、検出された粒子の数に関し、1回のスキャン内に所与のサイズの粒子の最大数が100%であるように正規化される。本明細書において、実施例5の沈殿物EOP26a(逆溶媒:ジエチルエーテル 平均粒径:261μm)を実施例2の沈殿物EOP22a(逆溶媒:IPE/ACN 平均粒径:422μm)と比較する。
【発明を実施するための形態】
【0167】
〔実施例〕
実施例1:グルカゴン様ペプチドの固相ペプチド合成
段階的に、リラグルチドのFmoc-SPPSを、標準のFmocアミノ酸誘導体、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Asp(OMpe)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Boc-His(Boc)-OH、Fmoc-His(1-Trt)-OH Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、およびFmoc-Val-OH、ならびに以前に記載した構築ブロック、Fmoc-Lys(Nε-(γ-グルタミル(OtBu)-(Nα-ヘキサデカノイル)))(=Fmoc-Lys(パルミトイル-Glu-OtBu)-OH、WO 2013/171135を参照のこと)ならびにFmoc-Gly-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Phe-Thr(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、Fmoc-Val-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OH、およびFmoc-Ser(tBu)-Ser(Psi(Me,Me)pro)-OHから選択される少なくとも1つの擬プロリンジペプチドを使用して、100~200または200~400メッシュのH-Gly-2-クロロトリチル樹脂(Bachem 番号4092098または4026823)上で実施した。カップリング反応を、DIC/OxymaPure(登録商標)、TBTU/DIPEAまたはDEPBT/DIPEAのいずれかを用い、適当なカップリング時間(1.5~24.0時間)およびFmoc脱保護時間(0.5~4.0時間)で実行した。
【0168】
所望の場合、NMP中20%のピペリジンを、DMF中20%のピペリジンの代わりに使用して、脱保護速度を増大させた。カップリング工程後、場合により、無水酢酸を使用してアセチル化を実施した。アセチル化またはFmoc脱保護後の洗浄工程のために、溶媒として、DMFとIPAを使用した。典型的に、粗製のリラグルチドは、切断および約50%のU-HPLC純度での沈殿後に得た。
【0169】
あるいは、構築ブロックとしてのFmoc-Lys(Boc-Glu-OtBu)-OHの使用を含む、段階的プロトコルを行い、次に、精製したペプチドのパルミトイル化を以下のように行った。
【0170】
第一級アミノ酸配列の完全に保護されたペプチド:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys(Boc-Glu-OtBu)-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Arg-Gly-Arg-Gly-[樹脂]
の段階的Fmoc SPPSを、H-Gly-2-クロロトリチル樹脂を使用して、自動合成機で行った。カップリング反応を、反応性の標準Fmocアミノ酸誘導体、カップリング試薬としてのDIC/OxymaPure(登録商標)またはTBTU/DIPEAおよび溶媒としてのDMFを使用して行った。例外として、Boc-His(Boc)-OHのカップリングは、DMF中のDEPBT/DIPEAを使用して行った。カップリング時間は1.5時間から4時間の間で変化した。Fmoc-Lys(Boc-Glu-OtBu)-OH構築ブロックの導入を手動で行い(DIC/OxymaPure(登録商標)、4時間のカップリング時間)、一方、合成の残りは、完全に自動化したペプチド合成により行った。Fmoc脱保護は、20%のピペリジンのDMF中溶液(v/v)を使用して実施した。脱保護時間は、15から90分までの間で変化した。各カップリング後、計画的なキャッピング工程を無水酢酸を使用して実施した。
【0171】
Fmoc脱保護およびアセチル化の後に、DMFおよび/またはIPAを洗浄工程のための溶媒として使用した。ペプチドを、TFA/HO/EDT(90:5:5)v/v/vからなる切断組成物との2.5時間のインキュベーションによって、すべての側鎖保護基の除去に付随して、固相支持体から切断し、続いて沈殿させた。得られた粗製物質を、固定相としてのC8結合したシリカ、第1次元でTEAP溶出系、および第2次元でTFA溶出系を使用する2次元分取逆相HPLCに供した。精製した前駆体ペプチドは、典型的に、95%のU-HPLC純度を有し、66%のTHFを含む水溶液中のN-スクシンイミジルパルミテートと反応させた。得られた生成物を溶媒の蒸発によって沈殿させ、10%のACN/HO中の50%のAcOHを添加することにより再度溶解させて濾過した。
【0172】
実施例2:グルカゴン様ペプチドの切断組成物からの沈殿
一般的手順:
ペプチド樹脂(5g)を50mLの切断組成物に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。次いで、樹脂を濾去し、TFA(2×3.5mL)で洗浄した。切断組成物と洗浄画分をプールした。570mLのそれぞれの逆溶媒を、沈殿を開始させるために添加した。得られた懸濁液を、濾過用漏斗または標準の加圧濾過装置(「ポケットフィルター」)のいずれかを使用することによるペプチド沈殿物の分離の前に、さらに2時間撹拌した。濾過時間およびペプチド樹脂に対する総収率を決定した。沈殿物をそれぞれのエーテル(3×15mL)で洗浄し、真空下、室温で乾燥させて、粗製ペプチドを得た。
【0173】
あるいは、ペプチド樹脂(3g)を30mLの切断組成物に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。次いで、樹脂を濾去し、TFA(2×2.1mL)で洗浄した。切断組成物と洗浄画分をプールした。溶液を342mLの逆溶媒に添加し、沈殿を開始させた。得られた懸濁液を、濾過用漏斗または標準の加圧濾過装置(「ポケットフィルター」)のいずれかを使用することによるペプチド沈殿物の分離の前に、さらに2時間撹拌した。濾過時間およびペプチド樹脂に対する総収率を決定した。沈殿物をそれぞれのエーテル(3×18mL)で洗浄し、真空下、室温で乾燥させて、粗製ペプチドを得た。
【0174】
結果:
乾燥させたペプチド沈殿物を、分析逆相UHPLCによって、純度およびTFA含量について分析し、凝集物含量を、分析サイズ排除UHPLCによって決定した。沈殿物の外観/粘着性を、目視検査によって評価した。
【0175】
表2に示すように、1:3~1:10の範囲内のIPE/ACNの混合物を用いる沈殿によって、許容される収率および濾過時間が得られるだけでなく、純粋なエーテル逆溶媒と比較して、沈殿の純度が改善された(5~7行と1~3行を比較)。
逆溶媒を予め混合しなかった場合、純度を、63.1%までさらに改善することができたが、ACN部分とIPE部分に分け、次に、前記部分をペプチド溶液と接触させた(データは示さず)。種々の沈殿方法の比較をさらに容易にするために、性能スコアPを、P=P濾過時間×P純度×P収率×P外観×P凝集含量として計算した。1~3の範囲の各サブスコアとして、最大性能スコアは243であり、最小スコアは1である。このメートル法で評価する場合にも、IPE/ACNの混合物は、テストされた他の逆溶媒と比較して明らかに有利であることが分かった。
【0176】
【表2】
【0177】
実施例3:ペプチド溶液の組成
さらなる実験は、リラグルチドの製造についてEP-A2 757 107に開示されているTFA/チオアニソール/アニソール/EDT(90:5:3:2)v/v/v/vから構成される切断組成物を使用する以外は、上記実施例2におけるように行った。
性能スコアの実測値108(3×2×3×3×2)は、IPE/ACN逆溶媒の有利な効果が、1つの特定のペプチド含有溶液に制限されないことを例証する。
【0178】
実施例4:沈殿温度
沈殿のための好ましい温度範囲を分析するために、さらなる実験を上記実施例2におけるように行った。
【0179】
【表3】
【0180】
実施例5:比較実験
EP-A2 757 107に記載されているように、リラグルチドを、TFA/チオアニソール/アニソール/EDT(90:5:3:2)v/v/v/vを用いたインキュベーションにより樹脂から切断し、氷冷したジエチルエーテルを使用して沈殿させた。沈殿物を、上記実施例2におけるように分析した。
【0181】
【表4】
【0182】
実施例5から得られた代表的な懸濁液(実験番号EOP26a)、および実施例2のEOP22aを、ParticleTrack G600Lを使用する集束ビーム反射測定法(FBRM)技術によって分析した。FBRM技術によって、後方散乱レーザー光の検出に基づく沈殿後の粒径分布の決定が可能となる。
【0183】
図2に示すように、本発明の沈殿物がより大きいサイズに粒径分布をシフトされることによって特徴付けられることが見出された。EP-A2 757 107のプロトコルに従って製造された沈殿物に対する平均粒径261μmと比較して、本発明に従って製造された沈殿物に対する平均粒径は422μmであった。このことにより、本発明によって得られた、かなり高速な濾過を伴う濾過速度の有意差について説明される。したがって、本発明により得られた沈殿物は、それらの純度および巨視的特性の改善によってだけではく、それらのサイズ分布の点でも、先行技術に開示されたものと異なると結論付けられる。
【0184】
実施例6:ペプチド沈殿物の組成
上記実施例2におけるように得られた粗製リラグルチドペプチド沈殿物を、トランケートされたリラグルチド変異体について、分析逆相UHPLCおよび質量分析によって分析した。とりわけ、アシル化されたリラグルチドを含む、N末端でトランケートされたリラグルチド変異体[21~31]を検出することができた。さらに、C末端でトランケートされた変異体リラグルチド[1~30]が実測された。
図1
図2
【配列表】
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