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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水不溶性パターンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/34 20060101AFI20220104BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20220104BHJP
   B41M 3/16 20060101ALI20220104BHJP
   B42D 15/00 20060101ALI20220104BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20220104BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 9/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B05D1/34
B41M3/14
B41M3/16
B42D15/00 301Z
B42D25/30
B05D1/36 Z
B32B9/00 A
B32B9/06
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019513939
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017072877
(87)【国際公開番号】W WO2018050630
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】16188664.3
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボールストレーム,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137711(JP,A)
【文献】特開2003-182203(JP,A)
【文献】特開2014-182966(JP,A)
【文献】実開昭61-035893(JP,U)
【文献】特開平05-202328(JP,A)
【文献】特表2005-512766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00-43/00
B41M 1/00- 3/18
5/00
5/50- 9/04
B42D15/02
25/00-25/485
C09D11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上及び/又は基材中に水不溶性パターンを製造する方法であって、
a) 基材を用意する工程、
b) 潮解性塩を含む処理組成物Aを用意する工程、
c) 酸又はその塩を含む処理組成物Bを用意する工程、
ここで、前記処理組成物Aの前記潮解性塩及び前記処理組成物Bの前記酸又は前記その塩が、前記潮解性塩のカチオンと前記酸又は前記その塩のアニオンとが水性媒体中に水不溶性塩を形成することができるように選択され、
d) 前記処理組成物A及び前記処理組成物Bを前記基材の少なくとも1つの表面領域上に堆積させて、基材上及び/又は基材中に少なくとも1つの水不溶性パターンを形成する工程であって、前記処理組成物Aと前記処理組成物Bとが少なくとも部分的に接触し、且つ同時に又は任意の順番で連続的に堆積される、工程
を含
前記処理組成物Bが、塩化アルミニウム、塩化鉄及び炭酸亜鉛の群から選択される金属塩又は遷移金属塩をさらに含む、
方法。
【請求項2】
処理組成物A又は処理組成物Bが、液体形態で用意される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理組成物A及び処理組成物Bが、液体形態で用意される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基材が、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、並びに
前記処理組成物A及び前記処理組成物Bが、前記基材の前記第1の面上に堆積される、又は
前記処理組成物A及び前記処理組成物Bが、前記基材の前記逆側の面上に堆積される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材が、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、並びに
前記処理組成物Aが、前記基材の前記第1の面上に堆積され、且つ処理組成物Bが、前記基材の前記逆側の面上に堆積される、又は
前記処理組成物Bが、前記基材の前記第1の面上に堆積され、且つ処理組成物Aが、前記基材の前記逆側の面上に堆積される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)が、
i) 前記処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、前記処理組成物Bを堆積させる工程であって、前記処理組成物Aが前記処理組成物Bと少なくとも部分的に接触する工程
を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程d)が、
i) 前記処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、前記処理組成物Aを堆積させる工程であって、前記処理組成物Bが前記処理組成物Aと少なくとも部分的に接触する工程
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基材が、工程i)及び/又は工程ii)の後に乾燥される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
組成物Aの前記潮解性塩が、塩素酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
組成物Aの前記潮解性塩が、塩素酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記処理組成物Aが、前記処理組成物の総重量に対して0.1~100重量%の量の前記潮解性塩を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記処理組成物Aが、前記処理組成物の総重量に対して1~80重量%の量の前記潮解性塩を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記酸又は前記その塩が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、それらの塩、重炭酸塩、炭酸塩及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記酸又は前記その塩が、リン酸、シュウ酸、酒石酸及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記処理組成物Bが、前記処理組成物の総重量に対して0.1~100重量%の量の前記酸又は前記その塩を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記処理組成物Bが、前記処理組成物の総重量に対して1~80重量%の量の前記酸又は前記その塩を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記基材が、紙、厚紙、段ボール原紙、プラスチック、セロファン、テキスタイル、木、金属、ガラス、マイカ板、セルロース、ニトロセルロース、綿、大理石、カルサイト、天然石、貼り合わせ石、レンガ、コンクリート、錠剤、キャンバス、人間又は動物由来の天然材料及びそれらのラミネート若しくは複合材料を含む群から選択される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記基材が、紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチックから選択される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記処理組成物A及び/又は前記処理組成物Bが、デジタルシリンジによる分注、スプレーコーティング、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、プロッティング、コンタクトスタンピング、輪転グラビア印刷、粉末コーティング、スピンコーティング、反転グラビアコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、スライドベッドコーティング、フィルムプレス、計量フィルムプレス、ブレードコーティング、はけ塗り及び/又はペンシルによって堆積される、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記処理組成物A及び/又は前記処理組成物Bが、インクジェット印刷又はスプレーコーティングによって堆積される、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記水不溶性パターンが、チャネル、バリア、アレイ、一次元的バーコード、二次元バーコード、三次元的バーコード、セキュリティマーク、数、文字、英数字符号、文章、ロゴ、画像、形状、点字マーキング又は意匠である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる水不溶性パターンを含む、基材。
【請求項23】
前記水不溶性パターンが、潜像パターン、すなわち前記基材の表面に対して第1の角度で見たときに視認できず、前記基材の表面に対して第2の角度で見たときに視認できるパターンである、請求項22に記載の基材。
【請求項24】
前記水不溶性パターンが、触知可能なパターンである、請求項22又は23に記載の基材。
【請求項25】
前記水不溶性パターンが、点字マーキングである、請求項22又は23に記載の基材。
【請求項26】
請求項22~25に記載の基材を含む製品であって、前記製品が、バイオアッセイ用の道具、マイクロ流体デバイス、ラボオンチップデバイス、紙を主体とした分析用及び/若しくは診断用の道具、分離プラットフォーム、印刷媒体、包装材、データストレージ、機密文書、非機密文書、装飾用基材、薬剤、タバコ製品、ボトル、衣服、容器、スポーツ用品、おもちゃ、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、工具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債権、チケット、郵便切手、納税印紙、銀行券、証明書、ブランド認証タグ、名刺、挨拶状、点字文書、触知可能な文書又は壁紙である、製品。
【請求項27】
請求項22~26に記載の水不溶性パターンを含む基材の使用であって、触覚的用途、点字用途、印刷用途、分析用途、診断用途、バイオアッセイ、化学的用途、電気的用途、セキュリティデバイス、オバート若しくはコバートセキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾、芸術若しくは視覚的用途又は包装用途における、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性パターンを基材上及び/又は基材中に製造する方法、前記方法によって得ることができる基材、前記基材を含む製品、並びに、異なる用途における基材の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マーキング、スタンプ又は識別用画像は、ラベリング、識別又は偽造防止を目的として、視認できる又は潜像形態で多種多様な製品に装着される。
【0003】
近年、利用しやすさも入手しやすさも増してきている現代の印刷及びコーティング技術を用いて、より洗練されたパターン又は画像を生成する可能性により、商業的用途、広告及びブランド化のための個性的で珍しいパターンに対する需要が高まってきた。しかしながら、印刷及びコーティング技術の迅速な開発は、ブランド、製品及び紙幣等がより容易に偽造又は複製される可能性の下地にもなってきた。
【0004】
さらに、近年、マイクロテクノロジー及びナノテクノロジーの進歩により、マイクロ流体デバイス又はラボオンチップデバイス等、化学的に定義されたパターニング済みの特注基材には、新たな応用分野が生み出された。この目的のために、インクジェット印刷、スクリーン印刷又はフレキソ印刷等の印刷技術及びフォトリソグラフィ、プラズマ又はレーザー処理等の微細加工技術を含む種々の技法が使用されている。しかしながら、これらの方法は、使用することができる基材が限定され、又は大規模な技術設備を必要とすることが多い。
【0005】
EP2949813A1は、塩形成可能なアルカリ又はアルカリ土類化合物を含むコーティング層を少なくとも1つの面上に含む基材を、酸を含む液体状組成物によって処理して、コーティング層上に少なくとも1つの表面改質された領域を形成する、表面改質された材料を製造する方法に関する。
【0006】
EP2626388A1は、ハリネズミのような粒子、少なくとも1種のバインダー、並びに、基材組成物の濡れ性を制御するために使用することができる少なくとも1種の疎水化剤及び/又は少なくとも1種の親水化剤を含む、組成物に関する。
【0007】
US2005/0031838A1は、蛍光性染料業者又はリン光体等のタガントの組込みを含む、紙製品のためのタガント式セキュリティシステムを記述している。しかしながら、このようなタガントの組入れは、リパルプ等の製紙中に問題を起こす可能性がある。
【0008】
WO2008/024542A1は、反射作用のあるフィーチャーが、金属粒子を含むインクを使用する直接書込み式の印刷法によって形成される、方法を記述している。
【0009】
US2014/0151996A1は、見る角度を変更したときにセキュリティ要素の外観を変化させることができる光学的構造を有する、セキュリティ要素に関する。しかしながら、これらのセキュリティ要素は、特定の条件下において肉眼で視認できるものであり、したがって、潜在的な偽造者によって容易に認識することができる。
【0010】
この点に関して、出願人は、出願人名義の出願番号が15159107.0である、潜像パターンを作製する方法に関する未公開欧州特許出願と、出願人名義の出願番号が15159109.6である、インクジェット印刷方法に関する未公開欧州特許出願と、出願人名義の出願番号が15196085.3である、基材にタグ付けする方法に関する未公開欧州特許出願と、出願人名義の出願番号が15196143.0である、印刷されたすかしに関する未公開欧州特許出願とにも言及しておきたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第2949813号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2626388号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0031838号明細書
【文献】国際公開第2008/024542号
【文献】米国特許出願第2014/0151996号明細書
【文献】非公開欧州特許出願第15159107.0号明細書
【文献】非公開欧州特許出願第15159109.6号明細書
【文献】非公開欧州特許出願第15196085.3号明細書
【文献】非公開欧州特許出願第15196143.0号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を鑑みると、基材上にパターンを作製する方法が依然として必要とされている。
【0013】
したがって、基材上にパターンを製造するための方法を提供することが、本発明の一目的である。規定された光学的、構造的又は化学的特性を特徴とするパターンを製造する方法を提供することも、本発明の一目的である。制御された容易な方法によって基材の表面特性を高い精度で改質するための方法を提供することもまた、一目的である。本方法は、既存の印刷施設における実施が容易であることも、望ましい。本方法が、少量の生産量と大量の生産量との両方に適していることも、望ましい。さらに、本方法は、多種多様な材料のために使用することができ、材料の特性に悪影響を及ぼさないことが望ましい。
【0014】
簡便で即時の認証を可能にするパターンを提供することも、本発明の一目的である。パターンが、潜在的な偽造者によって検出されることが容易ではなく、及び/又は挿画が困難であり、及び/又は再現が困難であることも、望ましい。パターンは、人間の眼で観察可能であり、及び/又は標準的な測定機器によって信頼性良く検出することができることも、望ましい。さらに、パターンが、当該パターンの機械読取りを可能にするさらなる機能性をパターンに備えさせることが可能であり、従来技術によるセキュリティ要素と組み合わせることができることも、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記及び他の目的は、本明細書の独立請求項に規定の主題によって解決される。
【0016】
本発明の一態様によれば、基材上及び/又は基材中に水不溶性パターンを製造する方法であって、
a) 基材を用意する工程、
b) 潮解性塩を含む処理組成物Aを用意する工程、
c) 酸又はその塩を含む処理組成物Bを用意する工程であって、
処理組成物Aの潮解性塩及び処理組成物Bの酸又はその塩が、潮解性塩のカチオンと酸又はその塩のアニオンとが水性媒体中に水不溶性塩を形成することができるように選択される、工程並びに
d) 処理組成物A及び処理組成物Bを基材の少なくとも1つの表面領域上に堆積させて、少なくとも1つの水不溶性パターンを基材上及び/又は基材中に形成する工程であって、処理組成物Aと処理組成物Bとが少なくとも部分的に接触し、且つ同時に又は任意の順番で連続的に堆積される、工程
を含む方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、本発明による方法によって得ることができる水不溶性パターンを含む基材が、提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、バイオアッセイ用の道具、マイクロ流体デバイス、ラボオンチップデバイス、紙を主体とした分析用及び/若しくは診断用の道具、分離プラットフォーム、印刷媒体、包装材、データストレージ、機密文書、非機密文書、装飾用基材、薬剤、タバコ製品、ボトル、衣服、容器、スポーツ用品、おもちゃ、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、工具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債権、チケット、郵便切手、納税印紙、銀行券、証明書、ブランド認証タグ、名刺、挨拶状、点字文書、触知可能な文書又は壁紙である、本発明による基材を含む製品が、提供される。
【0019】
本発明のなおさらなる態様によれば、触覚的用途、点字用途、印刷用途、分析用途、診断用途、バイオアッセイ、化学的用途、電気的用途、セキュリティデバイス、オバート若しくはコバートセキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾、芸術若しくは視覚的用途又は包装用途における、本発明による水不溶性パターンを含む基材の使用が、提供される。
【0020】
本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項に定義されている。
【0021】
一実施形態によれば、処理組成物A又は処理組成物Bは、液体形態で用意される、好ましくは処理組成物A及び処理組成物Bは、液体形態で用意される。
【0022】
一実施形態によれば、基材は、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、処理組成物A及び処理組成物Bが、基材の第1の面上に堆積され、又は処理組成物A及び処理組成物Bが、基材の逆側の面上に堆積される。別の実施形態によれば、基材は、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、処理組成物Aが、基材の第1の面上に堆積させ、処理組成物Bが、基材の逆側の面上に堆積され、又は処理組成物Bが、基材の第1の面上に堆積され、処理組成物Aが、基材の逆側の面上に堆積させる。
【0023】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程d)は、
i) 処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Aが処理組成物Bと少なくとも部分的に接触するように処理組成物Bを堆積させる工程
を含む。
【0024】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程d)は、
i) 処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Bが液体状処理組成物Aと少なくとも部分的に接触するように処理組成物Aを堆積させる工程
を含む。
【0025】
一実施形態によれば、基材は、工程i)及び/又は工程ii)後に乾燥される。
【0026】
一実施形態によれば、組成物Aの潮解性塩は、塩素酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択され、好ましくは塩素酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択され、最も好ましくはヨウ化亜鉛、塩化マンガン、塩素酸カルシウム、ヨウ化コバルト、塩素酸銅、硫酸マンガン、硫酸第二スズ、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、塩化銅、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化鉄、臭化銅、臭化亜鉛、臭化アルミニウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸鉄、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される。
【0027】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、処理組成物の総重量に対して0.1~100重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の潮解性塩を含む。
【0028】
一実施形態によれば、酸又はその塩は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、それらの塩、炭酸塩及びそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは酸又はその塩は、リン酸、シュウ酸、酒石酸及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0029】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、処理組成物の総重量に対して0.1~100重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の酸又はその塩を含む。
【0030】
一実施形態によれば、基材は、紙、厚紙、段ボール原紙、プラスチック、セロファン、テキスタイル、木、金属、ガラス、マイカ板、セルロース、ニトロセルロース、綿、大理石、カルサイト、天然石、貼り合わせ石、レンガ、コンクリート、錠剤、キャンバス、人間又は動物由来の天然材料及びそれらのラミネート若しくは複合材料、好ましくは紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチックを含む群から選択される。
【0031】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、デジタルシリンジによる分注、スプレーコーティング、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、プロッティング、コンタクトスタンピング、輪転グラビア印刷、粉末コーティング、スピンコーティング、反転グラビアコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、スライドベッドコーティング(slide bed coating)、フィルムプレス、計量フィルムプレス(metered film press)、ブレードコーティング、はけ塗り及び/又はペンシルによって堆積され、好ましくはインクジェット印刷又はスプレーコーティングによって堆積される。
【0032】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、チャネル、バリア、アレイ、一次元的バーコード、二次元バーコード、三次元的バーコード、セキュリティマーク、数、文字、英数字符号、文章、ロゴ、画像、形状、点字マーキング又は意匠である。
【0033】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して第1の角度で見たときに視認できず、基材の表面に対して第2の角度で見たときに視認できる、潜像パターンである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】処理組成物Aによってのみ処理された基材1の比較用SEM画像を示す、図である。
図2】処理組成物Bによってのみ処理された基材1の比較用SEM画像を示す、図である。
図3】倍率を大きくしたときの、最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1の倍率が大きいSEM画像を示す、図である。
図4】倍率を小さくしたときの、最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
図5】最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1の断面のSEM画像を示す、図である。
図6】最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
図7】最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された基材2のSEM画像を示す、図である。
図8】環境光条件下における上方視点から撮影された処理済み基材2のデジタルカメラ画像を示す、図である。
図9】基材の表面に対して20°の角度で側面光の照明によって上方視点から撮影された処理済み基材2のデジタルカメラ画像を示す、図である。
図10】環境光条件下において側面視点から撮影された処理済み基材2デジタルカメラ画像を示す、図である。
図11】蛍光を用いた、正方形1における例7の正方形1及び2の鉄のXRFマッピングを示す、図である。
図12】蛍光を用いた、正方形3における例7の正方形3及び4の亜鉛のXRFマッピングを示す、図である。
図13】最初に処理組成物Dによって処理された後で処理組成物Cによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
図14】倍率が高いときの、最初に処理組成物Dによって処理された後で処理組成物Cによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
図15】最初に処理組成物Cによって処理された後で処理組成物Dによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
図16】倍率が高いときの、最初に処理組成物Cによって処理された後で処理組成物Dによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の目的では、下記の用語は、下記の意味を有すると理解すべきである。
【0036】
本発明の意味における「水不溶性」材料は、脱イオン水と混合し、0.2μmの細孔径を有するフィルターによって20℃でろ過して、ろ液を回収した場合、95~100℃において100gの前記ろ液を蒸発させた後に、0.1g以下の固体物質が回収されることになる物質として規定されている。「水溶性」材料は、95~100℃において100gの前記ろ液を蒸発させた後に、0.1g超の固体物質が回収されることになる物質として規定されている。
【0037】
本発明の意味における「パターン」は、チャネル、バリア、一次元的バーコード、二次元バーコード、三次元的バーコード、セキュリティマーク、数、文字、英数字符号、文章、ロゴ、画像、点字マーキング又は形状等の特定の意匠として形成された、水不溶性塩を含む物質として規定されている。しかしながら、言及した例は、限定を加えるものではない。
【0038】
本明細書の文脈において、「基材」という用語は、紙、厚紙、段ボール原紙、プラスチック、セロファン、テキスタイル、木、金属、ガラス、マイカ板、セルロース、ニトロセルロース、大理石、カルサイト、天然石、貼り合わせ石、レンガ、コンクリート又は人間若しくは動物由来の天然材料、好ましくは紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチック等の印刷、コーティング又は塗装に適した表面を有する任意の材料として理解すべきである。しかしながら、言及した例は、限定を加える類のものではない。
【0039】
本発明の意味において、「基材上のパターン」という表現は、基材の表面上に配置されたパターンを指し、「基材中」という表現は、基材のバルクに吸収される又は浸透するパターンを指す。
【0040】
本明細書において使用されている「処理組成物」という用語は、本発明の基材の表面領域上に堆積させることができる、液体又は乾燥形態の組成物を指す。
【0041】
本明細書において使用されている「潮解性塩」という用語は、水分に対する高い親和性を有し、物質が溶解するまで大気から気体状の水分子を収集して、固体状の塩と液体状の水との混合物又は塩の水溶液を形成することができる、塩を指す(IUPAC、Compendium of Chemical Terminology Goldbook、バージョン2.3.3、2014の「deliquescence」に関する規定を参照されたい)。「潮解性塩」の非限定的な例は、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、塩化銅、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化鉄、臭化銅、臭化亜鉛、臭化アルミニウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸鉄、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸鉄、酢酸銅、酢酸亜鉛又は酢酸アルミニウムである。
【0042】
一実施形態によれば、本明細書において使用されている「潮解性塩」という用語は、塩1mol当たり少なくとも16gのHOを吸収して、即ち、14g/mの含水量を有する雰囲気下において20℃で24時間貯蔵されたときに、大気の水から塩1mol当たり1molのHOを吸収して、固体状の塩と液体状の水との混合物又は塩の水溶液を形成する、塩を指す。
【0043】
本発明の目的では、「酸」は、ブレンステッド-ローリーの酸として規定されており、即ち、Hイオン供給物質である。本発明によれば、pKは、所与の酸に含まれる所与のイオン化できる水素に関連付けられた酸解離定数を表す符号であり、所与の温度の水中で平衡状態のときに前述の酸から前述の水素が自然に解離する度合いを示している。このようなpK値は、Harris,D.C.「Quantitative Chemical Analysis:3rd Edition」、1991、W.H.Freeman&Co.(USA)、ISBN 0-7167-2170-8等の参考用の教本の中に見つけることができる。
【0044】
本発明の意味における「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性の固体及び水を含み、任意選択的に、さらなる添加剤を含んでもよく、通常、大量の固体を含有し、したがって、スラリー又は懸濁液が形成する出所となった液体より粘稠であり、密度もより高いものであり得る。
【0045】
本明細書において使用されているとき、「μl」という略語は、単位「マイクロリットル」を指し、「nl」という略語は、単位「ナノリットル」を指し、「pl」という略語は、単位「ピコリットル」を指し、「fl」という略語は、単位「フェムトリットル」を指す。当業者に公知のように、1マイクロリットルは、10-6リットルに等しく、1ナノリットルは10-9リットルに等しく、1ピコリットルは10-12リットルに等しく、1フェムトリットルは10-15リットルに等しい。
【0046】
「含む」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている場合、他の要素を排除するものではない。本発明の目的では、「からなる」という用語は、「構成する」という用語の好ましい一実施形態であると考えられる。以下、ある群が、特定の数の実施形態を少なくとも含むと定義されている場合、この定義も同様に、これらの実施形態のみからなることが好ましい群を開示していると理解すべきである。
【0047】
「含んでいる」又は「有する」という用語が使用されているときはいつでも、これらの用語は、上記に規定の「含む」に等価であることを意味する。
【0048】
単数名詞に言及するときに不定冠詞又は定冠詞が使用されている場合、例えば、「一(a)」、「ある(an)」又は「当該(the)」は、そうではないことが明示的に記載されていない限り、この名詞の複数形を含む。
【0049】
「得ることができる」又は「規定することができる」及び「得られた」又は「規定された」といった用語は、相互に置きかえできるように使用されている。このことが意味する事柄は例えば、そうではないことが文脈により明確に記載されていない限り、「得られた」という用語に、例えばある実施形態が、例えば「得られた」という用語に後続する一連の工程によって達成されなければならないことを表すことを意味しないということであるが、このような限定的な理解は、好ましい一実施形態として「得られた」又は「規定された」という用語に常に包含される。
【0050】
本発明の一態様によれば、a) 基材を用意する工程、b) 潮解性塩を含む処理組成物Aを用意する工程、c) 酸又はその塩を含む処理組成物Bを用意する工程であって、処理組成物Aの潮解性塩及び処理組成物Bの酸又はその塩が、潮解性塩のカチオンと酸又はその塩のアニオンとが水性媒体中に水不溶性塩を形成することができるように選択される、工程並びにd)基材の少なくとも1つの表面領域上に処理組成物A及び処理組成物Bを堆積させて、基材上及び/又は基材中に少なくとも1つの水不溶性パターンを形成する工程であって、処理組成物Aと処理組成物Bとが少なくとも部分的に接触し、且つ同時に又は任意の順番で連続的に堆積される、工程を含む、基材上及び/又は基材中に水不溶性パターンを製造する方法が、提供される。
【0051】
下記において、本発明の方法の詳細及び好ましい実施形態をより詳細に記載する。これらの技術的な詳細及び実施形態は、本発明によるパターニングされた基材及び当該基材の使用、並びに、このような基材を含む製品にも当てはまると理解すべきである。
【0052】
<方法工程a)>
本発明の方法の工程a)によれば、基材が用意される。
【0053】
基材は、水不溶性パターンのための基礎として働き、多孔性であってもよいし、又は非多孔性であってもよい。好ましい実施形態によれば、基材は、多孔性である。この場合、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、基材によって少なくとも部分的に吸収されることが可能であり、これにより、基材上及び/又は基材中への形成された水不溶性パターンの付着を増進することができる。
【0054】
一実施形態によれば、基材は、紙、厚紙、段ボール原紙、プラスチック、セロファン、テキスタイル、木、金属、ガラス、マイカ板、セルロース、ニトロセルロース、綿、大理石、カルサイト、天然石、貼り合わせ石、レンガ、コンクリート、錠剤、キャンバス、人間又は動物由来の天然材料及びそれらのラミネート若しくは複合材料からなる群より選択される。好ましい実施形態によれば、基材は、紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチックからなる群より選択され、より好ましくは、基材は、紙である。紙の非限定的な例は、ユーカリ繊維による紙又は綿繊維による紙である。別の実施形態によれば、基材は、紙、プラスチック及び/又は金属のラミネートであり、好ましくはプラスチック及び/又は金属は、例えばTetra PAK(R)において使用されているような、薄い箔の形態である。しかしながら、印刷、コーティング又は塗装に適した表面を有する任意の他の材料は、基材として使用することもできる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、基材は、紙、厚紙又は段ボール原紙である。厚紙は、カートン用板紙若しくは箱用板紙、段ボール用厚紙、又は、クロモボード(chromoboard)若しくは図面入りの厚紙等の非包装用の厚紙を含んでもよい。段ボール原紙は、ライナーボード及び/又は中芯原紙を包含してもよい。ライナーボードと中芯原紙との両方が、段ボール紙を製造するために使用される。紙、厚紙又は段ボール原紙用の基材は、10~1000g/m、20~800g/m、30~700g/m又は50~600g/mの坪量を有し得る。一実施形態によれば、基材は、好ましくは10~400g/m、20~300g/m、30~200g/m、40~100g/m、50~90g/m、60~80g/m又は約70g/mの坪量を有する、紙である。
【0056】
別の実施形態によれば、基材は、プラスチック基材である。適切なプラスチック材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂又はフッ素含有樹脂、好ましくはポリプロピレンである。適切なポリエステルの例は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)又はポリ(エステルジアセテート)である。フッ素含有樹脂の例は、ポリ(テトラフルオロエチレン)である。
【0057】
基材は、上記材料からできた1つの層のみからなってもよいし、又は、同じ材料又は異なる材料からできたいくつかの副層を有する層構造を含んでもよい。一実施形態によれば、基材は、1つの層によって構築されている。別の実施形態によれば、基材は、少なくとも2つの副層、好ましくは3つ、5つ又は7つの副層によって構築されており、副層は、平坦な構造又は平坦ではない構造、例えば、波形の構造を有し得る。好ましくは、基材の副層は、紙、厚紙、段ボール原紙及び/又はプラスチックから製造されている。
【0058】
本発明の意味における「人間又は動物由来の天然材料」は、生きている人間若しくは死亡した人間の身体又は生きている動物若しくは死亡した動物の身体に由来した、任意の物質である。前記用語は、卵殻又は真珠等、動物によって製造された製品も含む。本明細書において使用されている「動物」という用語は、ほ乳類、魚類、鳥類、は虫類、両生類、昆虫又は軟体動物等の真核生物を指す。天然材料は、は虫類の卵殻、鳥類の卵殻、単孔類の卵殻、歯、骨、牙、象牙、真珠、真珠層、軟体動物の殻、イカの甲、軟甲、サンゴ石、甲殻類の外骨格、石灰化した化石からなる群より選択することができる。一実施形態によれば、天然材料は、鳥類の卵殻、歯、骨、牙、象牙、真珠、真珠層又は石灰化した化石からなる群より選択される。好ましい実施形態によれば、天然材料は、鳥類の卵殻、好ましくはウズラの卵殻、ニワトリの卵殻、カモの卵殻、ガンの卵殻又はダチョウの卵殻である。卵殻は、別に用意されてもよいし、又は、卵殻を含む卵の形態で用意されてもよい。
【0059】
基材は、金属から製造することができる。本発明の目的では、「金属」という用語は、純粋な金属及び合金を指す。適切な金属の例は、鉄、鋼、アルミニウム、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、亜鉛、真ちゅう、青銅、パラジウム、ロジウム、白金、銀又は金である。
【0060】
本明細書において使用されているとき、「テキスタイル」という用語は、積層、編み組み、組み、結び、織る、編み、かぎ針による編み又は縁取り等の方法によって製造された製品を指す。本発明の目的では、「織物」という用語は、織りによって製造されたテキスタイル物品を指し、「不織布」という用語は、繊維、フィラメント又はフィルム状のフィラメント状構造からできたインターロック型の層若しくは網目構造によって製造された、平坦で柔軟な多孔性シート構造を指す。一実施形態によれば、テキスタイルは、ウール、シルク、綿、亜麻、ジュート、麻、アセテート、リヨセル、モダール、ポリエステル、ポリアミド、アラミド、ナイロン、スパンデックス、ルレックス、サイザル麻、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維又はそれらの混合物を含む。
【0061】
基材は、溶媒、水又はそれらの混合物が透過できるものであってもよいし、又は透過できないものであってもよい。一実施形態によれば、基材は、水、溶媒又はそれらの混合物が透過できないものである。好ましい実施形態によれば、基材は、水、溶媒又はそれらの混合物が透過できるものである。溶媒の例は、4~14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテル及びジエーテル、グリコール、アルコキシ化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシ化芳香族アルコール、芳香族アルコール、それらの混合物又はそれらの水との混合物である。
【0062】
一実施形態によれば、基材は平面状の基材であり、第1の面及び逆側の面を含む。本発明の意味における「平面状の基材」という用語は、二次元的な形質を有する平坦な基材を指し、即ち、基材は、第1の面及び逆側の面を有する。平面状の基材の例は、シート、マット、フィルム、パネル又はタイルの形態の基材である。
【0063】
基材が紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチックである場合、基材は、1種以上の添加剤を含んでもよい。
【0064】
一実施形態によれば、基材は、基材の総重量に対して少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも1.2重量%の量の添加剤として蛍光増白剤を含む。別の実施形態によれば、蛍光増白剤は、基材の総重量に対して0.001~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、さらにより好ましくは1~6重量%、最も好ましくは1.2~4重量%の量で存在する。この点に関して、「蛍光増白剤」という用語は、一般的に340~370nmの間の電磁スペクトルの紫外線及び紫色領域の光を吸収し、一般的に420~470nmの間の青色領域の光を再放出し、これにより、当該化合物が組み込まれた基材を白色化する効果を及ぼす、化合物を指す。
【0065】
最も一般的に使用されている種類の蛍光増白剤化合物は、4,4’-ジアミノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸等のスチルベンの誘導体である。これらの蛍光増白剤は、350~360nmの範囲の紫外光を吸収し、430nmのときが最大波長であるように400~500nmにおいて青色光を再放出する。スルホン酸基は、蛍光増白剤の水溶性に寄与し、したがって、セルロースに対する蛍光増白剤の親和性は、スルホン酸基の数の変更によって操作することができる。ジスルホン酸型の又は二価の蛍光増白剤は2個のスルホン酸基から構成され、酸性pHにおいて、ナイロン、シルク及びウールに関する用途のような疎水性繊維に特に適している。テトラスルホン酸型の又は四価の蛍光増白剤は4個のスルホン酸基から構成され、良好な水溶性を有し、中性又はアルカリ性pHにおいて、セルロース繊維及び紙に関する用途に特に適している。ヘキサスルホン酸型の又は六価の蛍光増白剤は6個のスルホン酸基から構成され、印画紙のような表面コーティング用途に関して非常に良好な可溶性を有する。他の種類の蛍光増白剤には、ピラゾリン、クマリン、ベンゾオキサゾール、ナフタルイミド及びピレンの誘導体が挙げられる。
【0066】
一実施形態によれば、蛍光増白剤は、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、クマリン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ナフタルイミド誘導体、ピレン誘導体及びそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、蛍光増白剤は、ジアミノスチルベンジスルホン酸の誘導体、ジアミノスチルベンテトラスルホン酸の誘導体、ジアミノスチルベンヘキサスルホン酸の誘導体、4,4’-ジアミノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸、4,4’-ビス(ベンゾオキサゾリル)-cis-スチルベン、2,5-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン、5-[(4-アニリノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]-2-[(E)-2-[4-[(4-アニリノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]-2-スルホナトフェニル]エテニル]ベンゼンスルホネート(leucophor PC)及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0067】
一実施形態によれば、基材は、生物活性分子、例えば、酵素、pH又は温度の変化に影響されやすい色度指示薬、蛍光性物質、分散剤、ミーリング助剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、潤滑剤、消泡剤、染料、保存料、pH調整剤又はそれらの混合物等の添加剤を含む。
【0068】
一実施形態によれば、基材は、添加剤として、カオリン、シリカ、タルク、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム又はそれらの混合物等の鉱物充填剤材料を含む。
【0069】
本発明の意味における「重質炭酸カルシウム」(GCC)は、石灰岩、大理石又は白亜等の天然の供給源から得て、粉砕、スクリーニング及び/又は分別等の湿式処理及び/又は乾式処理による加工、例えばサイクロン又は分級機による加工を施された、炭酸カルシウムである。本発明の意味における「改質炭酸カルシウム」(MCC)は、内部構造が改質された天然重質若しくは沈降炭酸カルシウム又は表面反応生成物、即ち、「表面反応炭酸カルシウム」を特徴としてもよい。「表面反応炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムと、表面上にあり、水不溶性であり、好ましくは少なくとも部分的に結晶性である、酸のアニオンのカルシウム塩を含む、物質である。好ましくは、不溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面の少なくとも一部の表面から延在する。前記少なくとも部分的に結晶性である前記アニオンのカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、出発した炭酸カルシウム材料に大部分が由来する。MCCは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2264109A1、WO00/39222A1又はEP2264108A1において記述されている。本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境、半乾燥環境若しくは湿潤環境下における二酸化炭素と石灰との反応後の沈殿によって得られる、又は、沈水中におけるカルシウムと炭酸イオン供給源との沈殿によって得られる、合成物質である。PCCは、バテライト型、カルサイト型又はアラゴナイト型結晶形であってよい。PCCは、例えば、EP2447213A1、EP2524898A1、EP2371766A1、EP1712597A1、EP1712523A1又はWO2013/142473A1において記述されている。
【0070】
一実施形態によれば、基材は、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリオキサゾリン、ポリビニルアセトアミド、部分加水分解ポリビニルアセテート/ビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、スルホン酸化又はリン酸化ポリエステル及びポリスチレン、カゼイン、ゼイン、アルブミン、キチン、キトサン、デキストラン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジアン(collodian)、寒天、クズウコン、グアルゴム、カラギーナン、デンプン、トラガカントゴム、キサンタン、ラムザンガム、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、n-ブチルアクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー及びビニルアセテートとn-ブチルアクリレートとのコポリマー並びにそれらの混合物、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、イタコン酸並びに酸エステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、無置換又は置換ビニルクロリド、ビニルアセテート、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド及びアクリロニトリルのホモポリマー又はコポリマー、シリコーン樹脂、水によって希釈できるアルキド樹脂、アクリル酸樹脂とアルキド樹脂との組合せ、亜麻仁油等の天然油、並びに、それらの混合物等の添加剤としてポリマーを含む、繊維を主体とした基材である。繊維を主体とした基材の非限定的な例は、紙、厚紙、段ボール原紙、テキスタイル、セルロース又はニトロセルロースである。
【0071】
基材は、コーティング層を含むこともできる。本発明の目的では、「コーティング層」という用語は、主に基材の1つの面上に残留したコーティング配合物から形成、作製、調製等が行われた層、被覆材、フィルム、皮膜等を指す。コーティング層は、基材の表面と直接接触していてもよいし、又は基材が1種以上のプレコーティング層及び/又はバリア層を含む場合、最上部にあるプレコーティング層又はバリア層のそれぞれと直接接触していてもよい。
【0072】
一実施形態によれば、基材は、基材の総重量に対して少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも1.2重量%の量の添加剤として蛍光増白剤を含むコーティング層を含む。別の実施形態によれば、蛍光増白剤は、基材の総重量に対して0.001~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、さらにより好ましくは1~6重量%、最も好ましくは1.2~4重量%の量で存在する。
【0073】
一実施形態によれば、基材は、生物活性分子、例えば、酵素、pH又は温度の変化に影響されやすい色度指示薬、蛍光性物質、分散剤、ミーリング助剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、潤滑剤、消泡剤、染料、保存料、pH調整剤又はそれらの混合物等の添加剤を含むコーティング層を含む。
【0074】
一実施形態によれば、基材は、添加剤としてカオリン、シリカ、タルク、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム又はそれらの混合物等の鉱物充填剤材料を含むコーティング層を含む。
【0075】
一実施形態によれば、基材は、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリオキサゾリン、ポリビニルアセトアミド、部分加水分解ポリビニルアセテート/ビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、スルホン酸化又はリン酸化ポリエステル及びポリスチレン、カゼイン、ゼイン、アルブミン、キチン、キトサン、デキストラン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジアン、寒天、クズウコン、グアルゴム、カラギーナン、デンプン、トラガカントゴム、キサンタン、ラムザンガム、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、n-ブチルアクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー及びビニルアセテートとn-ブチルアクリレートとのコポリマー並びにそれらの混合物、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、イタコン酸並びに酸エステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、無置換又は置換ビニルクロリド、ビニルアセテート、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド及びアクリロニトリルのホモポリマー又はコポリマー、シリコーン樹脂、水によって希釈できるアルキド樹脂、アクリル酸樹脂とアルキド樹脂との組合せ、亜麻仁油等の天然油、並びに、それらの混合物等の添加剤としてポリマーを含むコーティング層を含む。
【0076】
一実施形態によれば、基材は、塩形成可能なアルカリ又はアルカリ土類化合物を含有しない。本発明の意味における「塩形成可能な」化合物は、酸と反応して、塩を形成することができる、化合物として規定されている。塩形成可能な化合物の例は、アルカリ又はアルカリ土類酸化物、水酸化物、アルコキシド、メチルカーボネート、ヒドロキシカーボネート、重炭酸塩又は炭酸塩である。
【0077】
一実施形態によれば、基材は、アルカリ若しくはアルカリ土類酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類水酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類アルコキシド、アルカリ若しくはアルカリ土類メチルカーボネート、アルカリ若しくはアルカリ土類ヒドロキシカーボネート、アルカリ若しくはアルカリ土類重炭酸塩、アルカリ若しくはアルカリ土類炭酸塩又はそれらの混合物を含有しない。別の実施形態によれば、基材は、炭酸カルシウム含有材料を含有しない。
【0078】
<方法工程b)及びc)>
本発明の方法の工程b)によれば、潮解性塩を含む処理組成物Aが用意される。本明細書において使用されている「潮解性塩」という用語は、水分に対する高い親和性を有し、物質が溶解するまで大気から気体状の水分子を収集して、固体状の塩と液体状の水との混合物又は塩の水溶液を形成することができる、塩を指す(IUPAC、Compendium of Chemical Terminology Goldbook、バージョン2.3.3、2014の「deliquescence」に関する規定を参照されたい)。
【0079】
一実施形態によれば、本明細書において使用されている「潮解性塩」という用語は、塩1mol当たり少なくとも16gのHOを吸収して、即ち、14g/mの含水量を有する雰囲気下において20℃で24時間貯蔵されたときに、大気の水から塩1mol当たり1molのHOを吸収して、固体状の塩と液体状の水との混合物又は塩の水溶液を形成する、塩を指す。
【0080】
一実施形態によれば、潮解性塩は、塩素酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される。好ましい実施形態によれば、組成物Aの潮解性塩は、塩素酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及びそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される。最も好ましい実施形態によれば、潮解性塩は、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、塩素酸カルシウム、ヨウ化コバルト、塩素酸銅、硫酸マンガン、硫酸第二スズ、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄、塩化銅、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化鉄、臭化銅、臭化亜鉛、臭化アルミニウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸鉄、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム並びにそれらの混合物及び水和物からなる群より選択される。
【0081】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、1種の潮解性塩のみを含む。別の実施形態によれば、処理組成物Aは、2種以上の潮解性塩を含む。さらに別の実施形態によれば、処理組成物Aは、2種又は3種の潮解性塩を含む。
【0082】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、アルカリ若しくはアルカリ土類酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類水酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類アルコキシド、アルカリ若しくはアルカリ土類メチルカーボネート、アルカリ若しくはアルカリ土類ヒドロキシカーボネート、アルカリ若しくはアルカリ土類重炭酸塩、アルカリ若しくはアルカリ土類炭酸塩又はそれらの混合物を含有しない。
【0083】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、乾燥形態で用意される。好ましい実施形態によれば、処理組成物Aは、液体形態で用意される。例えば、処理組成物Aは、水性懸濁液又は水溶液の形態、好ましくは水溶液の形態で用意することができる。本発明の別の実施形態によれば、処理組成物Aは、潮解性塩、水及び溶媒を含む水溶液として液体形態で用意される。適切な溶媒は当技術分野において公知であり、例えば、4~14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテル及びジエーテル、グリコール、アルコキシ化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシ化芳香族アルコール、芳香族アルコール、それらの混合物又はそれらの水との混合物である。一実施形態によれば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール又はそれらの混合物、好ましくはエタノールである。
【0084】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、処理組成物Aの総重量に対して0.1~100重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の潮解性塩を含む。
【0085】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、処理組成物Aの総重量に対して0.1~90重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の潮解性塩を含む液体形態、好ましくは水溶液の形態で用意される。
【0086】
一実施形態によれば、処理組成物Aは、10~90重量%の範囲、好ましくは30~60重量%の範囲の潮解性塩、15~85重量%の範囲、好ましくは25~50重量%の範囲の水及び1~50重量%の範囲、好ましくは5~25重量%の範囲の溶媒を含む水溶液として、液体形態で用意される。一実施形態によれば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール又はそれらの混合物、好ましくはエタノールである。
【0087】
本発明の工程c)によれば、酸又はその塩を含む処理組成物Bが用意される。
【0088】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、乾燥形態で用意される。好ましい実施形態によれば、処理組成物Bは、液体形態で用意される。例えば、処理組成物Bは、水性懸濁液又は水溶液の形態、好ましくは水溶液の形態で用意される。
【0089】
一実施形態によれば、酸又はその塩は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、それらの塩、重炭酸塩、炭酸塩及びそれらの混合物の群から選択される。
【0090】
別の実施形態によれば、酸又はその塩は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、それらの塩、アルカリ重炭酸塩及びアルカリ炭酸塩並びにそれらの混合物の群より選択される。
【0091】
好ましい実施形態によれば、酸又はその塩は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、それらの塩、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びそれらの混合物から選択され、最も好ましくは、リン酸、シュウ酸、酒石酸及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0092】
処理組成物は、1種以上の酸又はその塩を含んでもよい。一実施形態によれば、処理組成物Bは、1種の酸又はその塩のみを含む。別の実施形態によれば、処理組成物Bは、2種以上の酸又はその塩を含む。さらに別の実施形態によれば、処理組成物Bは、2種又は3種の酸又はその塩を含む。
【0093】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、処理組成物Bの総重量に対して0.1~100重量%の量B、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の酸又はその塩を含む。
【0094】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、処理組成物Bの総重量に対して0.1~90重量%の量、好ましくは1~80重量%の量、より好ましくは3~60重量%の量、最も好ましくは10~50重量%の量の酸又はその塩を含む液体形態、好ましくは水溶液の形態で用意される。
【0095】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、酸を含む。酸は、濃縮された形態又は希釈された形態で堆積させることができる。本発明の一実施形態によれば、処理組成物Bは、酸及び水を含む。本発明の別の実施形態によれば、処理組成物Bは、酸及び溶媒を含む。本発明の別の実施形態によれば、処理組成物Bは、酸、水及び溶媒を含む。適切な溶媒は当技術分野において公知であり、例えば、4~14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテル及びジエーテル、グリコール、アルコキシ化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシ化芳香族アルコール、芳香族アルコール、それらの混合物又はそれらの水との混合物である。一実施形態によれば、溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール又はそれらの混合物、好ましくはエタノールである。例示的な一実施形態によれば、処理組成物Bは、1:1:1の重量比でリン酸、水及びエタノールを含む。
【0096】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、20~80重量%の範囲、好ましくは30~50重量%の範囲の酸又はその塩、15~75重量%の範囲、好ましくは25~45重量%の範囲の水及び5~50重量%の範囲、好ましくは15~35重量%の範囲の溶媒を含む。一実施形態によれば、酸又はその塩は、リン酸、シュウ酸及び/若しくは酒石酸、好ましくはリン酸であり、並びに/又は溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール又はそれらの混合物、好ましくはエタノールである。
【0097】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、印刷インク、顔料入りインク、着色料、蛍光性染料、リン光性染料、紫外線吸収染料、近赤外線吸収染料、熱変色性染料、造塩発色性染料、金属塩、遷移金属塩、磁性粒子又はそれらの混合物をさらに含む。このようなさらなる化合物は、水不溶性パターンに、特定の光吸収特性、電磁放射線反射特性、蛍光特性、リン光特性、磁気特性、導電性、白色度、明るさ及び/又は光沢等のさらなる特徴を備えさせることができる。
【0098】
一実施形態によれば、処理組成物Bは、塩化アルミニウム、塩化鉄及び炭酸亜鉛の群から選択される金属塩又は遷移金属塩をさらに含む。好ましくは、金属塩又は遷移金属塩は、処理組成物Bの総重量に対して0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、最も好ましくは1~5重量%の量で存在し得る。
【0099】
さらなる実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、分散剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、潤滑剤、消泡剤、殺生物剤、保存料、pH調整剤、カオリン、シリカ、タルク等の鉱物充填剤材料又はポリマーバインダーをさらに含む。
【0100】
一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、混合物の形態で用意される。例えば、処理組成物A及び処理組成物Bは、乾燥した粉末配合品又は事前に混合された水性配合物の形態で用意することができる。組成物が事前に混合された水性配合物の形態で用意された場合、潮解性塩の量及び酸又はその塩の量は好ましくは、水不溶性塩の早すぎる形成、即ち、基材上及び/又は基材中への堆積前における水不溶性塩の形成が起きない用に選択されることは、当業者には理解されている。これは、互いに掛け合わせたときに所望の水不溶性塩の溶解度積を超えない各カチオン及びアニオンのイオン濃度又はイオン活性を選択することによって、達成することができる。
【0101】
処理組成物Aの潮解性塩及び処理組成物Bの酸又はその塩が、潮解性塩のカチオンと酸又はその塩のアニオンとが水性媒体中に水不溶性塩を形成することができるように選択されることが、本発明の要件である。
【0102】
当業者は、接触したときに水性媒体中に水不溶性塩を形成することができる適切な潮解性塩及び適切な酸又はその塩を、技術常識に従って選択する。さらに、水不溶性塩は、当技術分野において公知である。
【0103】
例えば、潮解性塩である塩化カルシウム及びリン酸は、水不溶性のリン酸カルシウムを形成し、潮解性塩硝酸銀及び塩酸は、水不溶性の塩化銀を形成し、潮解性塩である塩化カルシウム及び炭酸ナトリウムは、水不溶性の炭酸カルシウムを形成し、潮解性塩である塩化マグネシウム及び重炭酸ナトリウムは、水不溶性炭酸マグネシウムを形成し、潮解性塩及び塩化カルシウム並びにシュウ酸ナトリウムは、水不溶性シュウ酸カルシウムを形成することが、当業者に公知である。
【0104】
一実施形態によれば、処理組成物Aは塩化カルシウムを含み、処理組成物Bはリン酸を含む。別の実施形態によれば、処理組成物Aは硝酸銀を含み、処理組成物Bは塩酸を含む。さらに別の実施形態によれば、処理組成物Aは塩化カルシウムを含み、処理組成物Bは炭酸ナトリウムを含む。さらに別の実施形態によれば、処理組成物Aは塩化マグネシウムを含み、処理組成物Bは重炭酸ナトリウムを含む。さらに別の実施形態によれば、処理組成物Aは塩化カルシウムを含み、処理組成物Bはシュウ酸ナトリウムを含む。
【0105】
同様に、当業者は、水不溶性塩が形成されるように、即ち、潮解性塩のカチオンの濃度及び酸又はその塩アニオンの濃度が、掛け合わせたときの対応する水不溶性塩の溶解度積を超えるように、潮解性塩のカチオン及び酸又はその塩のアニオンの濃度を選択する。
【0106】
<方法工程d)>
本発明の方法の工程d)によれば、処理組成物A及び処理組成物Bを基材の少なくとも1つの表面領域上に堆積させて、基材上及び/又は基材中に少なくとも1つの水不溶性パターンを形成し、このとき、処理組成物Aと処理組成物Bとが、少なくとも部分的に接触し、且つ同時に又は任意の順番で連続的に堆積される。
【0107】
処理組成物A及び処理組成物Bを少なくとも部分的に接触させることによって、水不溶性塩が、潮解性塩のカチオン及び酸又はその塩のアニオンから形成され、これにより、基材上及び/又は基材中に水不溶性パターンが生じることは、当業者には理解されている。言い換えると、水不溶性パターンは、潮解性塩のカチオン及び酸又はその塩のアニオンから形成された、水不溶性塩を含む。本発明の方法において使用され得る水不溶性塩の例は、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸鉄、リン酸銅、炭酸カルシウム、炭酸鉄、炭酸亜鉛、炭酸銅、塩化銀又はシュウ酸カルシウムである。
【0108】
水不溶性パターンは、事前に選択された任意のパターンの形態であってよい。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、チャネル、バリア、アレイ、一次元的バーコード、二次元バーコード、三次元的バーコード、セキュリティマーク、数、文字、英数字符号、文章、ロゴ、画像、形状、点字マーキング又は意匠である。
【0109】
本発明による水不溶性パターンは、基材に浸透することなく、基材上に、即ち、基材の表面上に形成され得る。例えば、これは、金属等の非多孔性材料の場合に当てはまり得る。しかしながら、水不溶性パターンは、例えば堆積させた処理組成物が紙等の浸透可能な基材のバルク中に吸収された後に、基材中に形成されることも可能である。水不溶性パターンも同様に、基材中及び基材の表面上に形成され得る。
【0110】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材上に形成される。別の実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材中に形成される。好ましい実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材上及び基材中に形成される。
【0111】
処理組成物A及び処理組成物Bが、処理組成物Aと処理組成物Bとが少なくとも部分的に接触するように堆積されることが、本発明の方法の要件である。
【0112】
処理組成物Aと処理組成物Bとを少なくとも部分的に接触させるために、処理組成物Aが堆積された基材の表面領域は、処理組成物Bが堆積された表面領域と少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。好ましい実施形態によれば、処理組成物Bが堆積された基材の表面領域は、処理組成物Aが堆積された基材の表面領域中に完全に配置されている。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、処理組成物Aが堆積された表面領域と、処理組成物Bが堆積された表面領域とは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%重なり合っている。
【0114】
処理組成物A及び処理組成物Bが混合物の形態で一緒に堆積された場合、処理組成物Aが堆積された表面領域と、処理組成物Bが堆積された表面領域とが同じであり、即ち、これらの表面領域は、100%重なり合っている。
【0115】
処理組成物A及び処理組成物Bが連続的に堆積された場合、処理組成物Aが堆積された表面領域と、処理組成物Bが堆積された表面領域とは、形状が異なってもよい。例えば、処理組成物Aが堆積された表面領域は、正方形又は長方形等の満たされた領域であってよく、処理組成物Bが堆積された表面領域は、二次元バーコード又は文章であってよい。例示的な別の実施形態によれば、処理組成物Aが堆積された表面領域は、処理組成物Bが堆積された表面領域と同じ形状を有するが、第2のパターンのインクジェット印刷中に生じ得るある程度の偏差を許容するために必要以上に大きくされている。
【0116】
処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、基材の少なくとも1つの表面領域上に堆積させることができる。一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、基材の1つの表面領域上に堆積される。別の実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、基材の2つ以上の表面領域上に堆積される。
【0117】
処理組成物A及び処理組成物Bは、基材の1つの面上に堆積されてもよいし、又は基材の1つより多い面上に堆積させてもよい。基材が平面状の構造を有する場合、処理組成物A及び処理組成物Bは、基材の第1の面及び/又は基材の逆側の面上に堆積させることができる。処理組成物A及び処理組成物Bが透過することができるものである、平面状の構造を有する多孔性基材が使用される場合、基材の反対側の面上に処理組成物を堆積させることによって、水不溶性パターンを形成することもできる。
【0118】
一実施形態によれば、基材は、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、処理組成物A及び処理組成物Bが、基材の第1の面上に堆積され、又は処理組成物A及び処理組成物Bが、基材の逆側の面上に堆積される。
【0119】
別の実施形態によれば、基材は、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、処理組成物Aが、基材の第1の面上に堆積させ、処理組成物Bが、基材の逆側の面上に堆積され、又は処理組成物Bが、基材の第1の面上に堆積され、処理組成物Aが、基材の逆側の面上に堆積させる。本発明の方法によって要求されるように、当業者は、処理組成物AとBとが少なくとも部分的に接触するように処理組成物A及びBを堆積させる。
【0120】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、デジタルシリンジによる分注、スプレーコーティング、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、プロッティング、コンタクトスタンピング、輪転グラビア印刷、粉末コーティング、スピンコーティング、反転グラビアコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、スライドベッドコーティング(slide bed coating)、フィルムプレス、計量フィルムプレス(metered film press)、ブレードコーティング、はけ塗り及び/又はペンシルによって堆積され、好ましくはインクジェット印刷又はスプレーコーティングによって堆積される。
【0121】
処理組成物A及びBは、同時に又は任意の順番で連続的に堆積させることができる。
【0122】
一実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Aが処理組成物Bと少なくとも部分的に接触するように処理組成物Bを堆積させる工程
を含む。
【0123】
別の実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Bが処理組成物Aと少なくとも部分的に接触するように処理組成物Aを堆積させる工程
を含む。
【0124】
処理組成物A及び処理組成物Bを同時に堆積させる場合、これらの組成物を別々に堆積させることもできるし、又は混合物の形態で堆積させることもできる。
【0125】
一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、別々にした形態で同時に堆積される。例えば、異なる2種の堆積手段によって処理組成物A及び処理組成物Bを同時に堆積させることができる。この点について、「堆積手段」は、デジタルシリンジによる分注、スプレーコーティング、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、プロッティング、コンタクトスタンピング、輪転グラビア印刷、粉末コーティング、スピンコーティング、反転グラビアコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、スライドベッドコーティング、フィルムプレス、計量フィルムプレス、ブレードコーティング、はけ塗り及び/又はペンシルに適した任意の手段を指す。
【0126】
別の実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、混合物の形態で同時に堆積される。
【0127】
処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、乾燥形態又は液体形態で堆積させることができる。
【0128】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、乾燥形態で堆積される。
【0129】
両方の処理組成物が乾燥形態で堆積される場合、本方法が実施された周囲の大気から潮解性塩によって吸収された気体状の水分子は、水不溶性塩の形成を可能にし、この結果、水不溶性パターンの形成を可能にするために十分であり得る。別の可能性は、本方法が実施された基材の残留水分が、潮解性塩によって吸収されることが可能であり、これにより、水不溶性塩の形成を可能にし、この結果、水不溶性パターンの形成を可能にし得ることである。しかしながら、場合によっては、外部供給源から水を加えて、水不溶性塩の形成を可能にし、この結果、水不溶性パターンの形成を可能にすることが、必要なこともある。
【0130】
一実施形態によれば、方法工程d)中に、外部供給源から水が投入される。言い換えると、工程d)中に、処理組成物Aと処理組成物Bとが、水の存在下において、少なくとも部分的に接触する。これは例えば、当技術分野において公知な任意の一般的な噴霧手段を用いて基材上に水を噴霧すること、又は工程d)の最中又は後に基材を水蒸気に晒すことによって、達成することができる。
【0131】
別の実施形態によれば、基材は、工程d)の最中又は後に、1g/m~100g/m、好ましくは3g/m~80g/m、より好ましくは5g/m~60g/m、最も好ましくは10g/m~30g/mの絶対湿度の雰囲気下において、1秒~24時間、好ましくは5秒~1時間、より好ましくは30秒~30分、最も好ましくは1分~10分の期間にわたって、水蒸気に晒される。この点について、「絶対湿度」は、グラム毎立方メートルとして表された空気中の含水量として規定されている。空気の絶対湿度を測定するための湿度計は、当業者に公知である。
【0132】
さらに別の実施形態によれば、方法工程d)中に、処理組成物Aは、基材の残留水分に晒される。これは例えば、基材がセルロース繊維パルプ、予備圧縮された繊維パルプ又は紙等の他の繊維を主体とした基材である場合に当てはまり得る。抄紙機においては、ワイヤパートの後、例えば、プレスパートのとき又はドライパート中に、本発明の方法を実施することも、可能であろう。
【0133】
一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、乾燥形態で用意され、工程a)で用意された基材は、基材の総重量に対して1~90重量%の量、好ましくは基材の総重量に対して10~60重量%の量、より好ましくは基材の総重量に対して20~40重量%の量の水を含む。
【0134】
別の実施形態によれば、処理組成物A又は処理組成物Bは、液体形態で用意され、好ましくは処理組成物A及び処理組成物Bは、液体形態で用意される。
【0135】
一実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Bを堆積させる工程であって、処理組成物Aが、乾燥形態で用意され、処理組成物Bが、液体形態で用意され、処理組成物Aが、処理組成物Bと少なくとも部分的に接触する、
工程を含む。
【0136】
一実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Bを堆積させる工程であって、処理組成物Aが、液体形態で用意され、処理組成物Bが、乾燥形態で用意され、処理組成物Aが、処理組成物Bと少なくとも部分的に接触する、工程
を含む。
【0137】
好ましい実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Aを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Bを堆積させる工程であって、処理組成物A及び処理組成物Bが、液体形態で用意され、処理組成物Aが、処理組成物Bと少なくとも部分的に接触する、工程
を含む。
【0138】
別の実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Aを堆積させる工程であって、処理組成物Bが、乾燥形態で用意され、処理組成物Aが、液体形態で用意され、処理組成物Bが、液体状処理組成物Aと少なくとも部分的に接触する、工程
を含む。
【0139】
別の実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物Aを堆積させる工程であって、処理組成物Bが、液体形態で用意され、処理組成物Aが、乾燥形態で用意され、処理組成物Bが、液体状処理組成物Aと少なくとも部分的に接触する、工程
を含む。
【0140】
好ましい実施形態によれば、本発明の工程d)は、
i) 処理組成物Bを堆積させる工程及び
ii) 続いて、処理組成物A及び処理組成物Bが液体形態で用意され、処理組成物Aが処理組成物Bと少なくとも部分的に接触するように、処理組成物Aを堆積させる工程
を含む。
【0141】
一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、別々にした形態で同時に堆積され、このとき、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、液体形態で用意されている。
【0142】
別の実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、混合物の形態で同時に堆積され、このとき、処理組成物A及び処理組成物Bは、液体形態で用意されている。例えば、処理組成物A及び処理組成物Bは、事前に混合された水溶液の形態で同時に堆積される。
【0143】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、液体形態で用意され、1000μm以下の液滴間隔を用いるインクジェット印刷によって任意の順番で連続的に堆積される。一実施形態によれば、液滴間隔は、10nm~500μm、好ましくは100nm~300μm、より好ましくは1μm~200μm、最も好ましくは5μm~100μmである。別の実施形態によれば、液滴間隔は、800μm未満、より好ましくは600μm未満、さらにより好ましくは400μm未満、最も好ましくは80μm未満である。さらに別の実施形態によれば、液滴間隔は、500nm未満、より好ましくは300nm未満、さらにより好ましくは200nm未満、最も好ましくは80nm未満である。液滴間隔は、0であってもよく、これは、液滴どうしが完全に重なり合っていることを意味する。
【0144】
処理組成物A及び処理組成物Bが液体形態で用意され、インクジェット印刷によって基材上に連続的に堆積される場合、処理組成物A及び処理組成物Bの液滴間隔は、同じであってもよいし、又は異なってもよい。一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、液体形態で用意され、液滴の形態で連続的に堆積され、このとき、処理組成物A及び処理組成物Bの液滴間隔が異なる。一実施形態によれば、処理組成物A及び処理組成物Bは、液体形態で用意され、液滴の形態で連続的に堆積され、このとき、処理組成物A及び処理組成物Bの液滴間隔が異なる。
【0145】
当業者は、液滴体積の制御によって、液滴直径を制御することができ、この結果、処理組成物A及び/又は処理組成物Bによって処理される領域の直径を制御することができることを理解する。連続する2個の液滴間の距離は、液滴間隔によって決定される。したがって、液滴体積及び液滴間隔の変更によって、第1のパターン及び第2のパターンの解像度を調節することができる。
【0146】
別の実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、1~250g/m、好ましくは5~200g/m、より好ましくは15~150g/m、最も好ましくは35~65g/mの量で少なくとも1つの表面領域上に堆積させる。
【0147】
一実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、液体形態で用意され、10μl以下の体積を有する液滴の形態で堆積される。一実施形態によれば、液滴は、5nl~10μl、好ましくは10nl~5μl、より好ましくは50nl~2μl、最も好ましくは200nl~750nlの体積を有する。別の実施形態によれば、液滴は、10μl未満、好ましくは5μl未満、より好ましくは2μl未満、最も好ましくは750nl未満の体積を有する。
【0148】
別の実施形態によれば、処理組成物A及び/又は処理組成物Bは、液体形態で用意され、1000pl以下の体積を有する液滴の形態で堆積される。一実施形態によれば、液滴は、10fl~500pl、好ましくは100fl~200pl、より好ましくは500fl~100pl、最も好ましくは1pl~30plの体積を有する。別の実施形態によれば、液滴は、1000pl未満、好ましくは600pl未満、より好ましくは200pl未満、さらにより好ましくは100pl未満、最も好ましくは30pl未満の体積を有する。
【0149】
<さらなる方法工程>
本発明による方法は、乾燥、すすぎ若しくは洗浄等のさらなる方法工程、並びに/又は、保護層及び/若しくは印刷層を装着することをさらに含んでもよい。
【0150】
本発明の方法の工程d)が上記に規定の工程i)及びii)を含む場合、基材は、工程i)及び/又は工程ii)の後に乾燥させることができる。一実施形態によれば、基材は、工程i)の後に乾燥される。別の実施形態によれば、基材は、工程i)及び工程ii)の後に乾燥される。好ましい実施形態によれば、基材は、工程ii)の後に乾燥される。乾燥は、当技術分野において公知な任意の方法によって実施することができ、当業者は、工程設備に応じて、温度等の乾燥条件を適合させる。例えば、基材は、赤外線乾燥及び/又は対流乾燥によって乾燥させることができる。乾燥工程は、室温、即ち、20℃±2℃の温度で実施されてもよいし、又は他の温度で実施されてもよい。一実施形態によれば、乾燥は、25~150℃、好ましくは50~140℃、より好ましくは75~130℃の基材表面領域温度で実施される。
【0151】
水不溶性パターンが形成された後に残った量の処理組成物A及び/又は処理組成物Bを除去するために、少なくとも1つの表面領域は、水溶液、好ましくは水によって洗浄し、又はすすぐことができる。基材の表面の洗浄又はすすぎは、基材の表面の乾燥前又は乾燥後に実施することができ、好ましくは乾燥前に実施することができる。一実施形態によれば、基材の少なくとも1つの表面領域は、工程d)の後に洗浄され、又はすすがれる。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの表面領域は、工程d)の後に洗浄され、又はすすがれる。
【0152】
本発明による方法は、水不溶性パターンより上に保護層及び/又は印刷層を装着する工程e)をさらに含んでもよい。
【0153】
保護層は、望ましくない環境の影響又は機械的摩耗から当該保護層の下にある水不溶性パターンを保護するために適した、任意の材料から製造することができる。適切な材料の例は、樹脂、ワニス、シリコーン、ポリマー、金属箔又はセルロースを主体とした材料である。
【0154】
保護層は、当技術分野において公知で保護層の材料に適合する任意の方法によって、基材より上に装着することができる。適切な方法は、例えば、エアナイフコーティング、静電コーティング、メタリングサイズプレス、フィルムコーティング、スプレーコーティング、押出コーティング、巻き線ロッドコーティング(wound wire rod coating)、スロットコーティング、スライドホッパーコーティング、グラビア印刷、カーテンコーティング、高速コーティング、ラミネート加工、印刷及び接着剤による接合等である。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、保護層は、水不溶性パターン及び周囲の基材表面より上に装着される。
【0156】
一実施形態によれば、保護層は、除去可能な保護層である。
【0157】
本発明の別の実施形態によれば、本方法は、水不溶性パターンより上に印刷層を装着する工程e)をさらに含んでもよい。
【0158】
印刷層は、当業者に公知な任意の適切な印刷技法によって装着することができる。例えば、印刷層は、インクジェット印刷、オフセット印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷によって作製することができる。一実施形態によれば、印刷層は、インクジェット印刷層、オフセット印刷層、輪転グラビア印刷層又はフレキソ印刷層である。オフセット印刷又は輪転グラビア印刷等の印刷技法によって塗布されるインクの量が、依然として、形成される水不溶性パターンの厚さをはるかに下回ることは、当業者には理解される。言い換えると、インクの量は、空隙を充填し、パターンを消滅させるためには少なすぎる。したがって、印刷層によって部分的に又は完全に被覆された水不溶性パターンは、依然として、基材の表面に対して第2の角度で見たときに視認できるものであり得る。
【0159】
本発明の一実施形態によれば、方法工程d)は、異なる又は同じ液体状処理組成物を使用して2回以上実施される。一実施形態によれば、基材は、第1の面及び逆側の面を有する平面状の基材であり、方法工程d)は、基材の第1の面に少なくとも1回実施され、及び/又は基材の逆側の面に少なくとも1回実施される。これにより、相異なる特性を有する相異なるパターンを作製することができる。
【0160】
<パターニングされた基材>
本発明の一態様によれば、本発明による方法によって得ることができる水不溶性パターンを含む基材が、提供される。
【0161】
本発明のさらなる態様によれば、水不溶性塩を含む少なくとも1つの水不溶性パターンを含む、水不溶性パターンを含む基材であって、水不溶性パターンが、基材上及び/又は基材中に、好ましくは基材上及び基材中に配置されている、基材が、提供される。好ましくは、水不溶性塩は、水不溶性ハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩又はそれらの混合物であり、より好ましくはアルカリ土類リン酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩又は酒石酸塩、最も好ましくはリン酸カルシウム又は炭酸カルシウムである。好ましくは、基材は、紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチックであり、より好ましくは、基材は、紙である。紙の非限定的な例は、ユーカリ繊維による紙又は綿繊維による紙である。
【0162】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の方法の使用によって、水不溶性パターンが、特定の成分若しくは充填剤又は特定のコーティング層等、基材に関する特定の表面の特徴に限定されることなく、種々の基材上に形成され得ることを発見した。さらに、本発明による方法は、多孔性基材中に水不溶性パターンを形成することを可能にし、したがって、従来の印刷及びコーティング技術のように基材の表面に限定されない。したがって、潜在的な偽造者による再現の容易さが減じた水不溶性パターンを形成することができる。
【0163】
さらに、形成されたパターンは、触知性、表面粗さ、光沢、光吸収、電磁放射線反射、蛍光、リン光、磁気特性、導電性、白色度及び/又は明るさが未処理の外面と異なり得る。これらの区別可能な特性は、パターンを視覚によって検出し、触覚によって検出し、又は代替的な条件において検出する、例えば、紫外光若しくは近赤外光下において、適切な検出器を使用して検出するために利用することが可能であり、パターンを機械読取り可能なものに変えることができる。
【0164】
本発明による方法の使用によって、特注パターンの形態で、前例がない化学的及び/又は生物学的機能性を有する基材を用意することもできる。さらに、蛍光増白剤を含む基材が用意される場合、本発明の方法は、水不溶性パターンの表面領域において、蛍光増白剤の蛍光強度を変化させることができる。したがって、水不溶性パターンは、紫外光、即ち、400~100nm未満の波長を有する電磁放射線を基材に照射することによって検出することができるが、周囲光又は可視光において、即ち、400~700nmの波長を有する電磁放射線を照射されたときに人間の裸眼又は補助を受けていない人間の眼で視認できない。したがって、本発明の方法は、周囲条件においては視認できないが、紫外光下においては容易に直ちに視認することができる、コバートマーキングを基材に備えさせることを可能にする。本発明の方法によって作製された、紫外線によって視認できるパターンは、写真複写機を使用した複製によって当該パターンを再現することができないという利点も有する。本発明の方法は、チケット又は文書の恒久的な有効化又は無効化を個別的に行うためにも使用され得る。
【0165】
一実施形態によれば、基材は、任意選択的に添加剤として蛍光増白剤を含む、紙、厚紙、段ボール原紙又はプラスチック、好ましくはユーカリ繊維紙又は綿繊維紙等の紙である。蛍光増白剤が存在する場合、好ましくは、蛍光増白剤は、基材の総重量に対して少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも1.2重量%の量の量で存在する。別の実施形態によれば、蛍光増白剤は、基材の総重量に対して0.001~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、さらにより好ましくは1~6重量%、最も好ましくは1.2~4重量%の量で存在する。
【0166】
本発明者らは、基材の色と水不溶性パターンの色とが同じである又は類似している場合、潜像パターンを形成することができることも発見した。いかなる理論にも拘束されることはないが、本発明者らは、水不溶性パターンの光散乱特性と周囲の基材の表面の光散乱特性とが異なるため、水不溶性パターンが、基材の表面に対して第1の角度で見たときに視認できないものであり得、基材の表面に対して第2の角度で見たときに視認できるものであり得ると考えている。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して80°~100°、好ましくは約90°の角度で見たときに視認できないものであり、基材の表面に対して10°~50°、好ましくは20~30°の角度で見たときに視認できる。好ましくは、水不溶性パターンは、環境光下において見られる。そこを基準にして見る角度が規定される基材の表面は、水不溶性パターンが装着された表面、即ち、基材の少なくとも1つの表面である。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、環境光下において基材の表面に対して第1の角度で見たときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できず、環境光下において基材の表面に対して第2の角度で見たときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できる。
【0167】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して80°~100°、好ましくは約90°の角度で照明されたときに視認できないものであり、基材の表面に対して10°~50°、好ましくは20~30°の角度で照明されたときに視認できる。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して第1の角度で照明されたときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できないものであり、基材の表面に対して第2の角度で照明されたときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できる。
【0168】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して第1の角度で見たときに視認できず、基材の表面に対して第2の角度で見たときに視認できる、潜像パターンである。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して80°~100°、好ましくは約90°の角度で照明されたときに視認できないものであり、基材の表面に対して10°~50°、好ましくは20~30°の角度で照明されたときに視認できる。一実施形態によれば、水不溶性パターンは、基材の表面に対して第1の角度で照明されたときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できないものであり、基材の表面に対して第2の角度で照明されたときに補助を受けていない人間の眼又は人間の裸眼に視認できる。
【0169】
本発明のさらなる利点は、水不溶性塩が基材の表面上に形成するため、水不溶性パターンがエンボス構造を有し得ることである。これは、基材上の水不溶性パターンを触覚によって検出することを可能にし得、これは、盲目の人々及び視界が部分的に制限された使用者にとっては特に有利であり得る。したがって、本発明の方法は、基材上に触知可能なパターンを作製するために使用することもできる。例えば、本発明の方法を使用して、触知可能な絵、触知可能な図形、触知可能な地図若しくは触知可能なグラフ等の触知可能な図式を作製することもできるし、又は、本発明の方法を使用して、点字文章等の点字マーキングを作製することもできる。
【0170】
一実施形態によれば、水不溶性パターンが、触知可能なパターン、好ましくは点字マーキングである、本発明による方法によって得ることができる基材が、提供される。別の実施形態によれば、本発明の工程a)~d)を含む、触知可能なパターンを作製するための方法が提供される。
【0171】
さらに、本発明は、さらなる化合物を処理組成物A及び/又は処理組成物Bに加えることによって、さらなる機能性を水不溶性パターンに備えさせることを可能にする。
【0172】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、蛍光性染料、リン光性染料、紫外線吸収染料、近赤外線吸収染料、熱変色性染料、造塩発色性染料、金属塩、遷移金属塩、磁性粒子又はそれらの混合物をさらに含む。
【0173】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、分散剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、潤滑剤、消泡剤、殺生物剤、保存料、pH調整剤、カオリン、シリカ、タルク等の鉱物充填剤材料又はポリマーバインダーをさらに含む。
【0174】
さらに別の実施形態によれば、水不溶性パターンは、水不溶性塩のみからなる。
【0175】
一実施形態によれば、水不溶性パターンは、セキュリティ用フィーチャー、装飾用フィーチャー及び/又は機能性フィーチャー、好ましくはチャネル、バリア、アレイ、一次元的バーコード、二次元バーコード、三次元的バーコード、セキュリティマーク、数、文字、英数字符号、文章、ロゴ、画像、形状、点字マーキング又は意匠を含む。本明細書の文脈において、「セキュリティ用フィーチャー」という用語は、当該フィーチャーが、認証を目的として使用されることを意味する。「装飾用フィーチャー」という用語は、当該フィーチャーが、主に認証のために用意されておらず、図式又は装飾を主な目的として用意されていることを意味する。「機能性フィーチャー」という用語は、当該フィーチャーが、主に、流体又は固体物質と接触したときに化学的又は生物学的目的に供するために用意されていることを意味する。
【0176】
一実施形態によれば、水不溶性パターンを含む基材は、水不溶性パターンより上にある保護層及び/又は印刷層によってコーティングされる。別の実施形態によれば、水不溶性パターンを含む基材は、水不溶性パターン及び周囲の基材の表面より上にある保護層及び/又は印刷層によってコーティングされる。
【0177】
一般に、本発明の水不溶性パターンを含む基材は、偽造、模造又は複製されやすい任意の製品中に利用することができる。さらに、本発明の水不溶性パターンを含む基材は、非セキュリティ製品又は装飾用製品中に利用されてもよい。本発明の水不溶性パターンを含む基材は、分析用又は診断用デバイスのために利用することもできる。
【0178】
本発明の一態様によれば、バイオアッセイ用の道具、マイクロ流体デバイス、ラボオンチップデバイス、紙を主体とした分析用及び/若しくは診断用の道具、分離プラットフォーム、印刷媒体、包装材、データストレージ、機密文書、非機密文書、装飾用基材、香水、薬剤、タバコ製品、アルコール性薬剤、ボトル、衣服、容器、スポーツ用品、おもちゃ、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、工具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債権、チケット、納税印紙、銀行券、証明書、ブランド認証タグ、名刺、挨拶状、点字文書、触知可能な文書又は壁紙である、本発明の基材を含む製品が、提供される。
【0179】
さらなる態様によれば、触覚的用途、点字用途、印刷用途、分析用途、診断用途、バイオアッセイ、化学的用途、電気的用途、セキュリティデバイス、オバート若しくはコバートセキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾、芸術若しくは視覚的用途又は包装用途における本発明による水不溶性パターンを含む基材の使用が、提供される。
【0180】
本発明の範囲及び利益は、本発明の特定の実施形態を説明するように意図された非限定的な下記の図面及び例に基づいて、より深く理解される。
【0181】
図1は、処理組成物Aによってのみ処理された基材1の比較用SEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの形成は、基材上に検出されてない。
図2は、処理組成物Bによってのみ処理された基材1の比較用SEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの形成は、基材上に検出されてない。
図3は、倍率を大きくしたときの、最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1の倍率が大きいSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、基材の繊維上及び繊維間に視認できる。
図4は、倍率を小さくしたときの、最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。基材の左側表面領域上の水不溶性パターンは、未処理の基材の右側表面領域より明るいように見える。
図5は、最初に処理組成物Bによって処理された後で処理組成物Aによって処理された基材1の断面のSEM画像を示す、図である。基材の左側表面領域上の水不溶性パターンは、未処理の右側表面領域より明るいように見える。
図6は、最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、基材の繊維上に視認できる。
図7は、最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された基材2のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、基材上及び基材中に視認できる。
図8は、環境光条件下における上方視点から撮影された処理済み基材2のデジタルカメラ画像を示す、図である。基材は、最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された。ロゴ(モザイク)の形態で基材上に形成された水不溶性パターンは、ほとんど視認できない。
図9は、基材の表面に対して20°の角度で側面光の照明によって上方視点から撮影された処理済み基材2のデジタルカメラ画像を示す、図である。基材は、最初に処理組成物Aによって処理された後で処理組成物Bによって処理された。ロゴ(モザイク)の形態で基材上に形成された水不溶性パターンは、視認できる。
図10は、環境光条件下において側面視点から撮影された処理済み基材2デジタルカメラ画像を示す、図である。基材は、正方形1~6の形態で、異なる表面領域上を処理された。正方形1~4の表面領域は、最初に処理組成物Aによって処理された後で異なる処理組成物Bによって処理された。正方形5の表面領域は、処理組成物Aによってのみ処理された。正方形6の表面領域は、処理組成物Bによってのみ処理された。正方形1~4の水不溶性パターンが、視認できる。
図11は、蛍光を用いた、正方形1における例7の正方形1及び2の鉄のXRFマッピングを示す、図である。
図12は、蛍光を用いた、正方形3における例7の正方形3及び4の亜鉛のXRFマッピングを示す、図である。
図13は、最初に処理組成物Dによって処理された後で処理組成物Cによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩顔料は、基材の繊維上及び繊維間に視認できる。
図14は、倍率が高いときの、最初に処理組成物Dによって処理された後で処理組成物Cによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩顔料は、基材の繊維上及び繊維間に視認できる。
図15は、最初に処理組成物Cによって処理された後で処理組成物Dによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩顔料は、基材の繊維上に視認できる。
図16は、倍率が高いときの、最初に処理組成物Cによって処理された後で処理組成物Dによって処理された基材1のSEM画像を示す、図である。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩顔料は、基材の繊維上に視認できる。
【実施例
【0182】
以下、例において実施した測定法について記述する。
【0183】
1.方法
<デジタル写真及び照明>
調製された試料の画像は、Canon Macroレンズ、EF-S 60mm、1:2.8USM(キャノン、日本)を装備したEOS600Dデジタルカメラを用いて記録された。
【0184】
照明のためには、RB5055HF照明装置(Kaiser Fototechnik GmbH&Co.KG、ドイツ)を使用した。調製された試料を照明装置の中央にある作業台の中心に配置し、2個のランプのうちの1個によって照明したが、このとき、基材とランプの中心との距離は約50cmだった。
【0185】
<走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真>
調製された試料は、Sigma VP電解発光走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss AG、ドイツ)及び可変圧力式二次電子検出器(VPSE)によって、約50Paのチャンバ圧力を用いて検査した。
【0186】
<X線回折(XRD)分析>
調製された試料は、Bruker D8 Advance粉末回折計を用いて、ブラッグの法則に従って分析した。この回折計は、2.2kW X線管、試料ホルダー、θ-θゴニオメータ-及びVANTEC-1検出器からなっていた。ニッケルフィルタリングされたCu Kα線が、すべての実験において利用された。プロファイルは、1分当たり0.7°の走査速度を使用して、2θとして自動的にチャート記録された(XRD GV_7600)。得られた粉末回折パターンは、DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージEVA及びSEARCHを使用して、ICDD PDF2データベース(XRD LTM_7603)の参考用パターンに基づいて、鉱物含量によって分類した。
【0187】
回折データの定量的分析、即ち、多相試料に含まれる異なる相の量の測定が、DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージTOPAS(XRD LTM_7604)を使用した実施された。これは、計算されたパターンが実験によるパターンと全く同じになるように完全な回折パターンをモデル化する(Rietveld法)ことを伴った。
【0188】
DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージEVAを用いて、大雑把な鉱物濃度を見積もるための判定量的(SQ)計算を実施した。パターンの相対的な高さ及びI/Icor値(I/Icor:最もはっきりした着目する化合物のラインと、最もはっきりしたコランダムのラインとの強度の比であり、これらのラインは両方とも、重量により50対50(等しい濃度)の混合物について実施された走査から測定されている)を考慮して、半定量的分析を実施した。
【0189】
<エネルギー分散型X線(EDS)分析>
Sigma VP電界発光走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss AG、ドイツ)によって、調製された試料を検査した。試料の化学組成の差異を視覚化するために、約50Paのチャンバ圧力を用いて、COMPOモードで後方散乱電子画像を記録した。存在する元素の原子量が重いほど、より明るい粒子が画像中に出現する。
【0190】
Oxford X-Max SDD検出器(ケイ素ドリフト検出器)50mm(Oxford Instruments PLC、イギリス)及び40~90Pa約のチャンバ圧力(表面の場合は40~60Paで、断面の場合は約90Pa)を用いて、エネルギー分散型X線画像を記録した。エネルギー分散型X線検出器(EDS)を用いて、ドットマッピング及びEDS分析を実施した。EDS検出器は、試料の化学的要素を判定し、試料中の化学的要素の示すことができる。
【0191】
<X線蛍光(XRF)>
XRF測定は、下記の設定を用いるHitachi EA6000VX機械によって実施された。
【0192】
電圧:50kV;電流:1000μA;フィルター:オフ;コリメータ:0.2×2mm;走査サイズ:27.720、13.440mm;画像サイズ:462×224ピクセル;ピクセルサイズ:60μm/ピクセル;ピクセル1個当たりの時間:10.00ms。
【0193】
2.材料
<2.1.基材>
<基材1>
60g(乾量)のパルプ(100%ユーカリ30°SR)を、10dmの水道水中に希釈した。懸濁液を30分撹拌した。続いて、(乾燥重量に基づいて)0.06%のポリアクリルアミド誘導体(Percol(R)1540、ドイツBASF社より購入可能)を保持助剤として加え、Rapid-Kothenハンドシート成形装置を使用して80g/mのシートを形成した。Rapid-Kothen乾燥機を使用して、各シートを乾燥させた。
【0194】
<基材2>
すかしを内包し、わずかに黄色がかっており、坪量が130g/mであり、少量の炭酸カルシウム充填剤を含有する、セルロースパルプを主体とした無コーティングで表面にのり付けされたセキュリティ紙。
【0195】
<2.2.処理組成物>
<処理組成物A>
48.5重量%の塩化カルシウム、9.9重量%のエタノール及び41.6重量%の水(重量%の値は、処理組成物Aの総重量に対するものである)。
【0196】
<処理組成物B>
41重量%のリン酸、23重量%のエタノール及び36重量%の水(重量%の値は、処理組成物Bの総重量に対するものである)。
【0197】
<処理組成物C>
38重量%の塩化カルシウム、9.4重量%のエタノール及び52.6重量%の水(重量%の値は、処理組成物Cの総重量に対するものである)。
【0198】
<処理組成物D>
4.9重量%の硫酸及び95.1重量%の水(重量%の値は、処理組成物Dの総重量に対するものである)。
【0199】
3.例
<3.1.例1~4>
例1~4は、接触角度ディスペンサー(Dataphysics OCA 50、DataPhysics Instruments GmbH、ドイツ)を用いて、0.5μlの液滴が部分的に重なり合いながらラインになるようにして、基材1上に実施された。塗付された液滴の中心は、約1cmの距離にわたって、約1~2mmだった。調製された試料は、SEM画像化によって検査した。
【0200】
[例1(比較用)]
基材1は、処理組成物Aによって処理された。水不溶性パターンの形成は、SEM画像化によって検出されなかった(図1を参照されたい)。
【0201】
[例2(比較用)]
基材1は、処理組成物Bによって処理された。水不溶性パターンの形成は、SEM画像化によって検出されなかった(図2を参照されたい)。
【0202】
[例3]
基材1は、最初に処理組成物Bによって処理し、続いて、約15分後に処理組成物Aによって処理した。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、SEM画像化によって基材の繊維上及び繊維間に検出された(図3を参照されたい)。塩の形成は、規定された基材の表面領域上(図4を参照されたい)及び基材中(図5を参照されたい)で起きた。図4及び図5において、白っぽい領域は、形成された水不溶性パターンに対応し、暗い領域は、未処理の基材領域に対応する。
【0203】
[例4]
基材1は、最初に処理組成物Aによって処理し、続いて、約15分後に処理組成物Bによって処理した。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、SEM画像化によって基材の繊維上に検出された(図6を参照されたい)。
【0204】
3.2.例5~7
例5~7は、25μmの液滴間隔で10plの液滴サイズを用いるインクジェットプリンター(Dimatix DMP 2831、Fujifilm Dimatix Inc.、USA)によって、基材2上に実施された。
【0205】
[例5]
基材2は、事前に規定されたパターンの形態で、処理組成物Aによってインクジェット印刷され、続いて、約15分後に処理組成物Bによってインクジェット印刷された。水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料が、SEM画像化によって基材上及び基材中に検出された(図7を参照されたい)。
【0206】
[例6]
基材2は、ロゴ(モザイク)の形態で、処理組成物Aによってインクジェット印刷され、続いて、約15分後に処理組成物Bによってインクジェット印刷された。水不溶性パターン、即ち、ロゴは、環境光条件下の基材上で、上方視点から肉眼で視認できなかった(図8を参照されたい)。しかしながら、ロゴは、基材の表面に対して20°の角度で側面光によって照明されたときに上方視点から肉眼で視認可能になった(図9を参照されたい)。後に言及した上方視点から肉眼で視認可能だった場合の水不溶性パターンの良好な視認性は、基材上と基材中とでリン酸カルシウム顔料の光散乱が異なることが理由である。
【0207】
[例7]
基材2は、別々になった6個の正方形(表面積1×1cm)の形態で、インクジェット印刷された。正方形1~4の場合、最初に処理組成物Aを堆積させ、続いて、約15分後に、対応する処理組成物Bを堆積させた。正方形1~3の場合、トレーサー(塩化鉄、塩化アルミニウム、炭酸亜鉛)が含まれていた。印刷された正方形の組成は、下記の表1に示されている。
【0208】
正方形は、下記の処理組成物の組合せによって処理された。
【0209】
正方形1は、処理組成物Aによって印刷され、続いて、処理組成物Bの総重量に対して1重量%の塩化鉄をさらに含む処理組成物Bによって印刷された。
【0210】
正方形2は、処理組成物Aによって印刷され、続いて、処理組成物Bの総重量に対して1重量%の塩化アルミニウムをさらに含む処理組成物Bによって印刷された。
【0211】
正方形3は、処理組成物Aによって印刷され、続いて、液体状組成物Bの総重量に対して5重量%の炭酸亜鉛をさらに含む処理組成物Bによって印刷された。
【0212】
正方形4は、処理組成物Aによって印刷され、続いて、処理組成物Bによって印刷された。
【0213】
正方形5は、処理組成物Aのみによって印刷した。
【0214】
正方形6は、処理組成物Bのみによって印刷した。
【0215】
【表1】
【0216】
環境光条件下において、印刷された正方形1~4は、基材上と基材中とでは水不溶性パターンのリン酸カルシウム塩顔料の光散乱が異なるため、側面視点から肉眼で視認可能だった(図10を参照されたい)。
【0217】
印刷された正方形を、やはり、XRFによって検査し、元素マッピングの結果を下記の表2にまとめている。
【0218】
【表2】
【0219】
XRF測定により、本発明によって調製された正方形1~4にリン、カルシウム及び塩素が存在することを確認した。
【0220】
さらに、XRF測定の結果により、印刷された正方形中において、鉄トレーサー及び亜鉛トレーサーを検出することができることが確認された。正方形1及び2の鉄のマップは、図11に示されている。正方形1中の鉄トレーサーは、明確に検出可能だったが(図11、左側を参照されたい)、正方形2は、鉄の存在を示していない(図12、右側を参照されたい)。正方形3及び4の亜鉛のマップは、図12に示されている。正方形3の亜鉛トレーサーは、明確に検出可能だったが(図12、左側を参照されたい)、正方形4は、亜鉛の存在を示していない(図12、右側を参照されたい)。
【0221】
3.3.例8及び9
例8及び9は、接触角度ディスペンサー(Dataphysics OCA 50、DataPhysics Instruments GmbH、ドイツ)を用いて、0.5μlの液滴が部分的に重なり合いながらラインになるようにして、基材1上に実施された。塗付された液滴の中心は、約1cmの距離にわたって、約1~2mmだった。調製された試料は、SEM画像化によって検査した。
【0222】
[例8]
基材1は、最初に処理組成物Dによって処理し、続いて、約15分後に処理組成物Cによって処理した。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩(石膏)顔料が、SEM画像化によって基材の繊維上及び繊維間に検出された(図13及び図14を参照されたい)。
【0223】
[例9]
基材1は、最初に処理組成物Cによって処理し、続いて、約15分後に処理組成物Dによって処理した。水不溶性パターンの硫酸カルシウム塩(石膏)顔料が、SEM画像化によって基材の繊維上及び繊維間に検出された(図15及び図16を参照されたい)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16