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特許6991203水蒸気改質システムおよび水蒸気改質プロセス
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  • 特許-水蒸気改質システムおよび水蒸気改質プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水蒸気改質システムおよび水蒸気改質プロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20220104BHJP
   C01B 3/50 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019515459
(86)(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2017055180
(87)【国際公開番号】W WO2018051204
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】16189376.3
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヴィリゲンブルク,ヨリス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-103488(JP,A)
【文献】特開昭61-106523(JP,A)
【文献】特開昭59-030702(JP,A)
【文献】米国特許第04235675(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気分解装置と水蒸気改質装置とを含む水蒸気改質システムであって、
前記水蒸気分解装置は、
i)水蒸気分解供給材料ストリームを水蒸気分解して、水素、メタン、およびC2+炭化水素類を含む水蒸気分解生成物ストリームを作り出す水蒸気分解ユニット、
ii)前記水蒸気分解生成物ストリームを冷却して冷却水蒸気分解生成物ストリームを提供する熱交換器、
iii)前記冷却水蒸気分解生成物ストリームを水素およびメタンを含む第一気体ストリームと、メタンおよびC2+炭化水素類を含む液体状態の二ストリームと、へ分離する分離ユニット、ならびに、
iv)少なくとも前記第二ストリームが供給されて、メタンを含む第三ストリームとC2+炭化水素類を含む第四ストリームとを提供する脱メタン装置であって、前記第三ストリーム中のメタンの量は少なくとも95%である脱メタン装置、を備え、
前記水蒸気改質装置は、
v)前記第三ストリームおよび水蒸気が供給されて予熱ストリームを提供する供給材料予熱装置、ならびに、
vi)前記予熱ストリームを少なくとも800℃まで加熱して当該加熱ストリームを水蒸気改質して水素とCOとを含む水蒸気改質生成物ストリームを得るように構成された水蒸気改質ユニット、を備える水蒸気改質システム。
【請求項2】
前記第三ストリームは、C2+炭化水素類を、3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第四ストリーム中のC2+炭化水素類の量は、少なくとも99重量%である請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記水蒸気分解装置は、さらに、前記第一ストリームを、水素を含む第五気体ストリームとメタンを含む第六液体ストリームとに分離する極低温分離ユニットを有し、前記脱メタン装置は、さらに、前記第六ストリームを供給されるように構成されている請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第五ストリーム中の水素の量は、少なくとも88体積%である、および/または、前記第六ストリーム中のメタンの量は少なくとも95重量%である請求項に記載のシステム。
【請求項6】
請求項1または2に記載のシステムを使用する水蒸気改質プロセスであって、
a)前記水蒸気分解ユニットによって供給材料ストリームを水蒸気分解して前記水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、
b)前記水蒸気分解生成物ストリームを前記熱交換器によって冷却して前記冷却水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、
c)前記冷却水蒸気分解生成物ストリームを前記分離ユニットによって前記第一ストリームと前記第二ストリームとに分離する工程、
d)前記脱メタン装置に少なくとも前記第二ストリームを供給して前記第三ストリームと前記第四ストリームとを作る工程、
e)前記第三ストリームと水蒸気とを前記供給材料予熱装置に供給して前記予熱ストリームを提供する工程、および、
f)前記予熱ストリームを少なくとも800℃の温度へと加熱し前記水蒸気改質ユニットによって前記加熱ストリームを改質して前記水蒸気改質生成物ストリームを得る工程を有する水蒸気改質プロセス。
【請求項7】
請求項に記載のシステムを使用する水蒸気改質プロセスであって、
a)前記水蒸気分解ユニットによって供給材料ストリームを水蒸気分解して前記水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、
b)前記水蒸気分解生成物ストリームを前記熱交換器によって冷却して前記冷却水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、
c)前記冷却水蒸気分解生成物ストリームを前記分離ユニットによって前記第一ストリームと前記第二ストリームとに分離する工程、
d)前記脱メタン装置に少なくとも前記第二ストリームを供給して前記第三ストリームと前記第四ストリームとを作る工程、
e)前記第三ストリームと水蒸気とを前記供給材料予熱装置に供給して前記予熱ストリームを提供する工程、および、
f)前記予熱ストリームを少なくとも800℃の温度へと加熱し前記水蒸気改質ユニットによって前記加熱ストリームを改質して前記水蒸気改質生成物ストリームを得る工程、を有し、
前記水蒸気分解装置は、さらに、前記第一ストリームを、水素を含む第五気体ストリームと、メタンを含む第六液体ストリームとに分離するための極低温分離ユニットを有し、
前記脱メタン装置は、さらに、前記第六ストリームが供給されるように構成され、そして、
工程d)は、前記第二ストリームと前記第六ストリームとを前記脱メタン装置に供給して前記第三ストリームと前記第四ストリームとを作るものである水蒸気改質プロセス。
【請求項8】
前記第五ストリーム中の水素の量は、少なくとも88体積%である、および/または、前記第六ストリーム中のメタンの量は少なくとも95重量%である請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するために、前記脱メタン装置から前記熱交換器に前記第三ストリームを戻し供給する工程を有する請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するために、前記極低温分離ユニットから前記熱交換器に前記第五ストリームを戻し供給する工程を有する請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、ここにその全体を参考文献として合体させる、2016年9月19日出願のヨーロッパ特許出願第一6189376.3号の優先権を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、水蒸気改質システムに関する。本発明は、さらに、水蒸気改質プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
天然ガスの水蒸気改質によって水素を生産することは十分に確立された技術である。水蒸気改質装置の一例がウルマン(Ullmann)のEncyclopedia of Industrial Chemistry, in chapter “Hydrogen, 2. Production”(非特許文献1)に記載されている。この本の266ページ図10に図示されている水蒸気改質装置は、炉の対流部分に、改質装置炉用の高温煙道ガスからの対流的熱伝達から利用可能な熱によって供給材料を予熱する供給材料予熱装置を含んでいる。この工程の後、供給材料は、触媒で充填された改質チューブ内で800℃を十分超える温度にまで加熱されて水素を作り出す。
【0004】
米国特許第4297204号明細書(特許文献1)は、炭化水素類を熱分解してオレフィン類を作るためのプロセスにおいて、熱分解ステージから200℃以上で沸騰する炭化水素を回収し、好ましくは、そこからポリマー成分を除去し、得られる炭化水素を約200℃以上で触媒水素化し、そして、得られた水素化炭化水素を熱分解ステージにリサイクルする改良を記載している(要約書を参照)。
【0005】
米国特許第4740290号明細書(特許文献2)は、水蒸気の存在下で、単数または複数の熱分解チューブまたはダクト内での非揮発性高分子炭化水素を含有する重油の、熱分解のプロセスを記載しており、このプロセスは、水蒸気と重油とを含む流体を熱分解チューブに、下記の条件において熱分解が行われるように流通させることを特徴とする。すなわち、(a)熱分解チューブ内での流体の温度:800℃~1100℃、(b)熱分解チューブ内での流体の圧力:5~50kg/cmG、(c)熱分解チューブを通過する流体の流速:10~100m/秒、そして(d)熱分解チューブ内での流体の滞留時間:少なくとも0.2秒間。米国特許公開第2006/0127305号(特許文献3)は、炭化水素供給材料を処理するプロセスを開示し、これは、少なくとも1つの反応チャンバを含む、炭化水素の水素化変換のための第一上流側プロセスであって、単数または複数の反応がチャンバ内で行われ、これは少なくとも1つの固相と、少なくとも1つの液相と、少なくとも1つの気相とを使用する第一上流側プロセスと、少なくとも1つの反応チャンバを含む第二の下流側水蒸気改質プロセスとのシリーズ(一連)を含み、その特徴は、上流側プロセスが「スラリ」内で行われる、および/または、沸騰床モード、で行われること、下流側プロセスが、メタンより重い炭化水素類をメタンへ少なくとも部分的に変換する、前改質工程と称する第一工程を含むこと、および、下流側改質プロセスのチャンバ内で行われる単数または複数の反応によって、上流側プロセスにおける反応のための必要な反応基質、すなわち水素の製造が可能となること、にある。
【0006】
米国特許第3862899号明細書(特許文献4)は、流体触媒式分解と触媒式水蒸気改質との統合による合成ガスとクリーン燃料との製造を記載しており、より具体的には、その開示は、重質炭化水素オイルが重油触媒分解ユニット内で分解されて分解オーバーヘッド流出物を作り、これを水素化して合成ガスを作り出す、プロセス段階の組み合わせに関する。特許文献4は、また、代替天然ガスの製造と、そこに開示されている原油の多段階プロセスによって代替天然ガスと低硫黄燃料との製造にも関する。
【0007】
国際公開第01/25142号(特許文献5)は、供給材料の第一触媒処理によって、メタンおよび/または約2~約12の炭素原子を有する高級炭化水素類を含有する供給材料から、合成ガス、すなわち水素(dihydrogen)と炭素酸化物類(oxides of carbon)とを含む混合物、を製造して、2以上の炭素原子を有する化合物類が実質的に含まれないメタン含有ガス状混合物を提供するプロセスを開示し、ガス状混合物を、変換のマイルドな条件下においては顕著に活性で不活性化しにくいニッケル含有触媒材料を使用して昇温下で改質し、ここで、プロセスは、基本的には、高級炭化水素化合物類を変換して、その第一変換ゾーンにおいて温度を、約500℃から約300℃の下流側の温度の範囲に制御しながら、触媒を含む第一変換ゾーンにおいて2以上の炭素原子を有する化合物類を実質的に含まないメタン含有ガス状混合物を形成する工程と、その後の触媒を含むゾーンにおいて、昇温および合成ガスを形成するのに十分な圧力で、水蒸気および/または二酸化炭素によって、メタン含有ガス状混合物を改質する工程と、を有する。
【0008】
水蒸気改質による水素の製造はエネルギ集約的である。改質装置炉は、必要な反応熱と、さらに、反応温度が供給材料予熱後の温度から反応温度に達するための熱を提供する。炉によって必要な燃焼燃料の量を決定する重要な要因の1つは予熱後の供給材料の温度である。
【0009】
炭化水素類は、水蒸気改質ではなく、高温で熱分解を開始することが一般的に知られている。熱分解の公知の望ましくない影響は、対流バンクでの供給材料予熱チューブ上のコークス形成である。したがって、供給材料予熱チューブの温度は、供給材料が大きな分解が起こる温度未満に維持しなければならない。この熱分解が起こるためには、軽質炭化水素類は重質炭化水素類よりも高い温度を必要とする。メタンが分解しない温度において、供給材料中のエタンやより重質の成分等の他の成分は分解可能である。
【0010】
さらに、改質装置中の触媒は、硫黄含有成分に対して非常に敏感であり、水蒸気改質装置には通常、供給材料からこれらの成分を除去するための装置が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4297204号明細書
【文献】米国特許第4740290号明細書
【文献】米国特許公開第2006/0127305号
【文献】米国特許第3862899号明細書
【文献】国際公開第01/25142号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Encyclopedia of Industrial Chemistry, in chapter “Hydrogen, 2. Production”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、上述のおよび/またはその他の問題を解決するための水蒸気改質システムおよび水蒸気改質プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、水蒸気分解装置(100)と水蒸気改質装置(200)とを含む水蒸気改質システムを提供し、ここで、
水蒸気分解装置(100)は、
i)水蒸気分解供給材料ストリーム(1)を水蒸気分解して、水素、メタン、およびC2+炭化水素類を含む水蒸気分解生成物ストリーム(2)を作り出す水蒸気分解ユニット(110)、
ii)水蒸気分解生成物ストリーム(2)を冷却して冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を提供する熱交換器(120)、
iii)冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を水素およびメタンを含む第一気体ストリーム(4)と、メタンおよびC2+炭化水素類を含む第二液体ストリーム(5)と、へ分離する分離ユニット(130)、ならびに、
iv)少なくとも第二ストリーム(5)が供給されて、メタンを含む第三ストリーム(6)とC2+炭化水素類を含む第四ストリーム(7)とを提供する脱メタン装置(140)であって、第三ストリーム(6)中のメタンの量は少なくとも95%である脱メタン装置(140)、を備え、
水蒸気改質装置(200)は、
v)第三ストリーム(6)および水蒸気が供給されて予熱ストリーム(10)を提供する供給材料予熱装置(210)、ならびに、
vi)予熱ストリーム(10)を少なくとも800℃まで加熱して当該加熱ストリームを水蒸気改質して水素とCOとを含む水蒸気改質生成物ストリーム(11)を得るように構成された水蒸気改質ユニット(220)、を備える。
【0015】
ここに記載される参照番号は、後述する図面に図示されている実施例に言及するものであるが、ただし、それらは説明の目的のみに使用されるものであって、本発明は、図面に図示される実施例に限定されるものではないと理解される。
【0016】
用語「C2+炭化水素類」は、ここでは、2以上の炭素原子を有する炭化水素類を意味するものと理解される。
【0017】
用語「a」または「an」は、請求項または明細書中の用語「comprising」と関連して使用される場合、「1つ」を意味しうるが、これは、「1つ以上」、「少なくとも1つ」および「1つ以上」の意味とも矛盾するものではない。
【0018】
「comprising」(および「comprise」や「comprises」などの任意の語形)、「having」(および「have」や「has」などの「having」の任意の語形)、「including」(および「includes」や「include」などのincludingの任意の語形)、または「containing」(および「contains」や「contain」などの「containing」の任意の語形)は、包合的またはオープンエンドであって、追加の記載されていない要素またはプロセス工程を除外するものではない。さらに、用語「comprising」または上述したもののようなそれに関連する語は、他の要素の存在を除外するものではないことが銘記される。ただし、あるコンポーネントを含む製造物/組成物は、これらのコンポーネントまたは工程から成る、システム、プロセス、または組成物も開示するものであると理解される。これらのコンポーネントまたは工程から成る製品、システム、または組成物は、それによって、より単純でより多くの解決が提供される点において有利でありうる。同様に、ある工程を含むプロセスに関する記載は、これらの工程から成るプロセスも開示するものであると理解される。
【0019】
本発明のシステムおよびプロセスは、本明細書を通じて開示されている特定の成分、成分、組成物などを「含む」、「から本質的になる」、または「からなる」ものとすることができる。
【0020】
あるパラメータに関する下限および上限に関して述べられる値は、その下限値およびその上限値の組み合わせによってなる範囲も同様に開示されるものであると理解される。
【0021】
本発明の関連において、次に、本発明の10の態様が記載される。本発明の第1の態様は、水蒸気改質システムを提供する。水蒸気改質は、水蒸気分解装置と水蒸気改質装置とを含み、ここで、水蒸気分解装置は、供給材料ストリームを水蒸気分解して、水素、メタンおよびC2+炭化水素類を含むストリームを作り出す水蒸気分解ユニット、水蒸気分解生成物ストリームを冷却して励起約水蒸気分解生成物ストリームを提供する熱交換器、冷却水蒸気分解生成物ストリームを水素およびメタンを含む第一気体ストリームと、メタンおよびC2+炭化水素類を含む第二液体ストリームと、へ分離する分離ユニット、ならびに、少なくとも第二ストリームが供給されて、メタンを含む第三ストリームとC2+炭化水素類を含む第四ストリームとを提供する脱メタン装置であって、第三ストリーム中のメタンの量は少なくとも95%である脱メタン装置、を備え、水蒸気改質装置は、第三ストリームおよび水蒸気が供給されて予熱ストリームを提供する供給材料予熱装置、ならびに、予熱ストリームを少なくとも800℃まで加熱して当該加熱ストリームを水蒸気改質して水素およびCOを含む水蒸気改質生成物ストリームを得るように構成された水蒸気改質ユニット、を備える。本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のシステムであって、ここで、第三ストリームは、C2+炭化水素類を3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満含む。本発明の第3の態様は、本発明の第1または第2の態様いずれかのシステムであって、ここで、第四ストリーム中のC2+炭化水素類の量は、少なくとも99重量%である。本発明の第4の態様は、本発明の第1~3の態様いずれかのシステムであって、ここで、予熱第二ストリームは、少なくとも500℃の温度を有する。本発明の第5の態様は本発明の第1~4の態様のいずれかのシステムであって、ここで、水蒸気分解装置は、さらに、第一ストリームを、水素を含む第五気体ストリームと、メタンを含む第六液体ストリーム(9)とに分離する極低温分離ユニットを有し、ここで、脱メタン装置(140)は、さらに、第六ストリーム(9)を供給されるように構成されている。本発明の第6の態様は、本発明の第5の態様のシステムであって、ここで、第五ストリーム中の水素の量は、少なくとも88体積%である、および/または、第六ストリーム中のメタンの量は少なくとも95重量%である。
【0022】
本発明の第7の態様は、本発明の第1~6の態様のいずれかのシステムを使用する水蒸気改質プロセスを提供する。本発明の第7の態様の水蒸気改質プロセスは、水蒸気分解ユニットによって供給材料ストリームを水蒸気分解して水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、水蒸気分解生成物ストリームを熱交換器によって冷却して冷却水蒸気分解生成物ストリームを作る工程、冷却水蒸気分解生成物ストリームを分離ユニットによって第一ストリームと第二ストリームとに分離する工程、脱メタン装置に少なくとも第二ストリームを供給して第三ストリームと第四ストリームとを作る工程、第三ストリームと水蒸気とを供給材料予熱装置に供給して予熱ストリームを提供する工程、および、予熱ストリームを少なくとも800℃の温度へと加熱し水蒸気改質ユニットによって加熱ストリームを改質して水蒸気改質生成物ストリームを得る工程、を有する。本発明の第8の態様は、本発明の第5または6の態様のシステムを使用する本発明の第7の態様のプロセスであって、さらに、第一ストリームを極低温分ユニットによって第五ストリームと第六ストリームとに分離する工程を有し、ここで、少なくとも第二ストリームを脱メタン装置に供給して第三ストリームと第四ストリームとを作る工程は、第二ストリームと第六ストリームとを脱メタン装置に供給して第三ストリームと第四ストリームとを作るものである。本発明の第9の態様は、本発明の第7~8の態様のいずれかのプロセスであって、さらに、水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するために、脱メタン装置から熱交換器に第三ストリームを戻し供給する工程を含む。本発明の第10の態様は、本発明の第7~10の態様のいずれかのプロセスであって、さらに、水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するために、極低温分離ユニットから熱交換器に第五ストリームを戻し供給する工程を有する。
【0023】
なお、本発明は、ここに記載される特徴構成の全ての可能な組み合わせに関するものであって、特に好適であるのは、請求項に存在する特徴構成の組み合わせであることが銘記される。したがって、本発明によるプロセスに関連する特徴構成のすべての組み合わせ、本発明による組成物に関連する特徴構成と本発明によるプロセスに関連する特徴構成のすべての組み合わせがここに開示されているものであると理解される。本発明のその他の、課題、特徴構成および利点は、以下の図面、詳細説明および例から明らかになるであろう。ただし、これらの図面、詳細説明および例は、本発明の具体的実施例を示すものではあるが、例示で提供されているものであって、限定的であることが意図されたものではないことを銘記しなければならない。さらに、本発明の要旨および範囲内における変化および改変は、本詳細説明から当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による水蒸気改質システムを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によれば、水蒸気分解によって得られるメタンリッチ気体ストリーム(第三ストリーム)が水蒸気改質装置の供給材料予熱装置に供給される。本発明は、水蒸気分解プロセスが、副生成物として、水蒸気改質用の供給材料として高度に適した供給材料を作り出す、という認識に基づくものである。水蒸気分解プロセスは、メタンとC2+炭化水素類との非常に良好な分離を提供する脱メタン装置を必要とし、したがって、水蒸気分解装置の脱メタン装置からのメタンリッチストリームは、実質的にC2+炭化水素類を含まない。水蒸気分解プロセスからのメタンリッチストリーム中のC2+炭化水素類の量が少ないことにより、メタンリッチストリームは、コークス形成のリスク無しに、供給材料予熱装置内で比較的高温へと予熱することが可能である。予熱第二ストリームは比較的高い温度を有するので、水蒸気改質ユニットが予熱ストリームを水蒸気改質のために必要な温度まで加熱するのに必要とする燃料は少なくなる。さらに、メタンリッチストリームは、非常に少量の硫黄しか含有していないので、これによって、硫黄除去のための前処理無く、水蒸気改質が可能である。第三ストリームの大部分はメタンであるが、さらに、水素を含みうる。この第三ストリーム中の水素は、適当な手段によって回収することができる。たとえば、第三ストリームは、水素を回収するために、圧力変動吸着ユニットに供給することができ、当該ユニットは、水蒸気改質装置内、または当該水蒸気改質装置の下流側に設けることができる。
【0026】
本発明は、さらに、本発明によるシステムを使用する水蒸気改質プロセスを提供し、これは、
a)水蒸気分解ユニット(110)によって水蒸気分解供給材料ストリーム(1)を水蒸気分解して水蒸気分解生成物ストリーム(2)を作る工程、
b)水蒸気分解生成物ストリーム(2)を熱交換器(120)によって冷却して冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を作る工程、
c)冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を分離ユニット(130)によって第一ストリーム(4)と第二ストリーム(5)とに分離する工程、
d)脱メタン装置(140)に少なくとも第二ストリーム(5)を供給して第三ストリーム(6)と第四ストリーム(7)とを作る工程、
e)第三ストリーム(6)と水蒸気とを供給材料予熱装置(210)に供給して予熱ストリーム(10)を提供する工程、および、
f)予熱ストリーム(10)を少なくとも800℃の温度へと加熱し水蒸気改質ユニット(220)によって加熱ストリームを改質して水蒸気改質生成物ストリーム(11)を得る工程、を有する。
【0027】
したがって、冷却水蒸気分解生成物ストリームは、分離ユニットによって分離されて、液体炭化水素類(第二ストリーム)から水素ガス(第一ストリーム)が除去される。第二ストリームは、さらに、脱メタン装置に供給され、これは、メタン(第三ストリーム)を除去してC2+炭化水素類(第四ストリーム)を作り出す。第四ストリームは、公知のプロセスで、水蒸気分解の生成物として使用することができる。
【0028】
高純度メタンストリームである第三ストリームと水蒸気とが水蒸気改質装置の供給材料予熱装置に供給されて、比較的高い温度へと加熱され、その後、この予熱ストリームが水蒸気改質を受ける。水蒸気改質は、公知のプロセス、たとえば、ウルマン(Ullmann)の非特許文献1に記載されているように行うことができる。水蒸気改質生成物ストリームは、主として、水素、水蒸気、CO、およびCOを含む。水蒸気改質生成物ストリーム中の水蒸気とCOとは、さらに、反応させて、最終ストリーム中の、水素とCOとの量が、たとえば85~95体積%となるようにすることができる。
【0029】
第三ストリーム中のメタンの量は、少なくとも95重量%である。当該第三ストリームは、昇温下での予熱装置内のチューブ上のコークス形成を防止するべく、C2+炭化水素類をほとんど、あるいは全く含まない。好ましくは、第三ストリームは、C2+炭化水素類を、3重量%未満、より好ましくは、2重量%未満、さらに好ましくは、1重量%未満、より好ましくは、0.5重量%未満の量含む。
【0030】
脱メタン装置に供給されるストリーム中のC2+炭化水素類の大半は、第四ストリーム中に含まれ、当該第四ストリームは、高純度のC2+炭化水素類を有するものでなければならない。好ましくは、第四ストリーム中のC2+炭化水素類の量は、少なくとも99重量%である。
【0031】
好ましくは、供給材料予熱装置に供給される前に、脱メタン装置からの第三ストリームは、水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するべく、熱交換機に戻し供給される。当該熱交換器の通過後、第三ストリームは、その後、供給材料予熱装置に供給することができる。
【0032】
水蒸気分解生成物ストリームは、たとえば、熱分解ガスとすることができるが、公知の水蒸気分解からの任意の生成物ストリームを好適に使用することができる。
【0033】
第一ストリームと第二ストリームとの組成は、水蒸気分解生成物ストリームの組成と分離条件とに応じて変化しうる。第一ストリームは水素を含むが、さらに、比較的大量のメタンといくらかのC2炭化水素類、たとえばエチレンをも含みうる。好ましくは、第一ストリーム中のメタンも、水蒸気改質装置の供給材料予熱装置に供給される。したがって、本発明によるシステムは、好ましくは、第一ストリームからメタンを抽出するための、水蒸気分解装置内に設けられる極低温分離ユニットを有する。
【0034】
したがって、本発明によるシステムのいくつかの好適実施例において、水蒸気分解装置(100)は、第一ストリーム(4)を、水素を含む第五気体ストリーム(8)と、メタンを含む第六液体ストリーム(9)とに分離するための極低温分離ユニット(150)を有し、ここで、脱メタン装置(140)はさらに、第六ストリーム(9)が供給されるように構成される。
【0035】
そのようなシステムを使用するプロセスにおいて、当該プロセスは、さらに、第一ストリーム(4)を極低温分ユニット(150)によって第五ストリーム(8)と第六ストリーム(9)とに分離する工程を有し、ここで、工程d)は、第二ストリーム(5)と第六ストリーム(9)とを脱メタン装置に供給して第三ストリーム(6)と第四ストリーム(7)とを作るものである。
【0036】
したがって、第一ストリームは、極低温分離ユニットに供給されて、主として水素である第五ストリーム(気体)と、主としてメタンである第六ストリーム(液体)とに分離される。好ましくは、第五ストリーム中の水素の量は、少なくとも88体積%、好ましくは少なくとも92体積%である。好ましくは、第六ストリーム中のメタンの量は、少なくとも95重量%である。主としてメタンである第六ストリームは、第二ストリーム、とともに、脱メタン装置に供給されて残りのC2+炭化水素類を除去する。脱メタン装置は、メタンを第三ストリームとして分離して、これを、上述したように、水蒸気改質装置の供給材料予熱装置に供給することができる。
【0037】
好ましくは、水蒸気分解生成物ストリームの冷却を補助するために、極低温分離ユニットから熱交換器に第五ストリームが戻し供給される。
【0038】
好ましくは、予熱ストリームは、少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも600℃、さらに好ましくは少なくとも700℃かつ800℃未満、の温度を有する。所望の温度は、第三ストリームのC2+質量部分、および、水蒸気改質装置の運転長と燃料消費との作動最適化、に応じたものなる。
【0039】
次に、図面を参照して本発明をさらに記載するが、ここで図1は、本発明による水蒸気改質システムの実施例を図示している。
【0040】
図1を参照すると、水蒸気分解装置(100)と水蒸気改質装置(200)とを含む水蒸気改質システムが図示されている。水蒸気分解装置(100)は、水蒸気分解供給材料ストリーム(1)を水蒸気分解して、水素、メタン、およびC2+炭化水素類を含む水蒸気分解生成物ストリーム(2)を作るように構成された水蒸気分解ユニット(110)を有する。
【0041】
水蒸気分解装置(100)は、さらに、水蒸気分解生成物ストリーム(2)を冷却して冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を作り出す熱交換器(120)を有する。
【0042】
水蒸気分解装置(100)は、さらに、冷却水蒸気分解生成物ストリーム(3)を、水素、メタン、およびいくらかのC2炭化水素類を含む第一ストリーム(4)と、メタンおよびC2+炭化水素類を含む第二ストリーム(5)とに分離するように構成された分離ユニット(130)を有する。
【0043】
水蒸気分解装置(100)は、さらに、第一ストリーム(4)を、水素を含む第五ストリーム(8)と、メタンを含む第六ストリーム(9)とに分離するための極低温分離ユニット(150)を有する。この例において、第五ストリーム(8)中の水素の量は少なくとも90重量%であり、第六ストリーム(9)中のメタンの量は少なくとも95重量%である。
【0044】
水蒸気分解装置(100)は、さらに、第二ストリーム(5)と第六ストリーム(9)とを供給されて、メタンを含む第三ストリーム(6)と、C2+炭化水素類を含む第四ストリーム(7)とを作り出すように構成された脱メタン装置(140)を有する。この例において、第三ストリーム(6)中のメタンの量は少なくとも95重量%であり、第四ストリーム(7)中のC2+炭化水素類の量は少なくとも99重量%である。
【0045】
水蒸気改質装置(200)は、予熱ストリーム(10)を少なくとも800℃の温度へ加熱し、当該加熱ストリームを水蒸気改質して、主として、水素、水蒸気、COおよびCOを含む水蒸気改質生成物ストリーム(11)を得るように構成された水蒸気改質ユニット(220)を有する。COと水蒸気は、さらに、水素とCOとに反応され、ここで、COと水素とは、生成物気体の85~95%を構成する。
図1