(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】経腸接続機能を有するシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61M5/31 502
(21)【出願番号】P 2019518380
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 US2017055023
(87)【国際公開番号】W WO2018067629
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディ ウバルディ
(72)【発明者】
【氏名】サンバス クマル ラジャゴパル
(72)【発明者】
【氏名】ティルムルガン ナグ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール ボンツィンスキ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0279032(US,A1)
【文献】特表2014-514051(JP,A)
【文献】特表2018-524109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178-5/34
A61M 39/10
A61J 1/14 -1/22
A61J 7/00
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端、開口近位端、当該遠位端と当該開口近位端との間に延びる側壁であってチャンバを画定する側壁、およびシリンジバレルの遠位端に隣接する経腸カラー係合特徴部を有するシリンジバレル、
非ルアー先端部であって、当該非ルアー先端部は、
ルアーコネクタを有する静脈内装置に接続できないように寸法決めされ、前記チャンバと流体連通する流体経路を画定する非ルアー先端部、および
遠位端と近位端とを有する経腸カラーであって、当該近位端は
前記経腸カラー係合特徴部と相補的で係合し得るシリンジ係合特徴部を有し、前記シリンジ係合特徴部が前記経腸カラー係合特徴部に係合されたとき、前記経腸カラーは前記非ルアー先端部を囲
む経腸カラー、
を備え
、
前記非ルアー先端部は、前記シリンジバレルの遠位端に存し、
前記経腸カラー係合特徴部が、前記シリンジバレルの前記開口近位端と前記遠位端との間に位置されており、
前記経腸カラーの前記遠位端は、経腸装置へのねじ接続を可能にしてルアーコネクタを有する装置への接続を防止するような大きさであることを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記経
腸カラーは、前記流体経路の外側にあり、前記チャンバと流体連通していない、ことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記経腸カラー係合特徴部および前記シリンジ係合特徴部は、戻り止め、タブ、フィンガー、スロット、スナップ嵌合、くぼみおよびねじ山から選択される相補的嵌合特徴部を備えることを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記
シリンジ係合特徴部は、前記シリンジバレルの前記遠位端に隣接するシリンジねじ山と係合可能なカラーねじ山を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項5】
前記シリンジ係合特徴部および前記経腸カラー係合特徴部は、スナップ嵌合を介して係合することを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項6】
前記シリンジ係合特徴部と前記経腸カラー係合特徴部との係合後は、前記経腸カラーは前記シリンジから取り外すことができないことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記シリンジ係合特徴部と前記経腸カラー係合特徴部との係合後は、前記経腸カラーは前記シリンジに対して回転できないことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記シリンジバレルの遠位端は、前記経腸カラー係合特徴部を含む延長壁を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記延長壁は、内側表面と外側表面とを含み、前記経腸カラー係合特徴部が前記内側表面に配置されていることを特徴とする請求項
8に記載のシリンジ。
【請求項10】
前記経腸カラーの前記近位端は前記シリンジ係合特徴部を含み、前記経腸カラーの前記遠位端が、ねじ付きの非ルアーコネクタと係合するためのラグを含むことを特徴とする請求項8に記載のシリンジ。
【請求項11】
前記チャンバは、5ml未満の容積と、流体が前記チャンバから排出された後に前記チャンバ内に流体を保持するデッドスペース領域とを有し、前記デッドスペース領域は、0.07ml未満の流体を包含することを特徴とする請求項10に記載のシリンジ。
【請求項12】
前記経腸カラー係合特徴部は、前記シリンジバレルの前記遠位端に隣接する周囲陥凹部に位置されていることを特徴とする請求項
1に記載のシリンジ。
【請求項13】
前記経腸カラーは、ねじ山を有する内側表面を有することを特徴とする請求項
1に記載のシリンジ。
【請求項14】
前記カラーは、前記カラーが前記経腸カラー係合特徴部に係合された後は、取り外しまたは回転可能ではないことを特徴とする請求項10に記載のシリンジ。
【請求項15】
前記チャンバは、5ml未満の容積と、流体が前記チャンバから排出された後に前記チャンバ内に流体を保持するデッドスペース領域とを有し、前記デッドスペース領域は、0.07ml未満の流体を包含することを特徴とする請求項
1に記載のシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、非経腸装置への接続を防止する経腸接続機能を有するシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
経腸栄養摂取は、胃経腸への栄養処方または薬剤の送達を含んでいる。患者への栄養素の投与は、経腸栄養素補給システム、アセンブリまたは装置を用いて達成することができる。経腸栄養素補給システムは、典型的には、患者の鼻または口に挿入されたカテーテルを利用し、それを通して栄養素が胃経腸に投与される。このカテーテルを通して栄養素を送達させるべく、シリンジまたは他の装置がカテーテルに接続される。栄養素および食物はまた、薬物の「経口シリンジ」または「経口送達」と呼ばれ、カテーテルまたは他の装置への接続を必要としないシリンジによって、患者の口に直接に投与されてもよい。静脈内カテーテルは、血管内治療を行うために患者の血管系に挿入され、それは任意の血管にアクセスすることによって、循環系または心臓血管系を通して薬物を送達させる。そのようなカテーテルは、静脈に挿入される静脈内(IV)カテーテル、および動脈に挿入される動脈内カテーテルを含んでいる。
【0003】
シリンジは、例えば、栄養素の経口送達、経腸接続へのシリンジの接続による経腸システムへの流体の貯蔵および送達、ならびに流体または薬物の静脈内送達を含む、様々な医療用途のために流体を送達するために使用される。静脈内シリンジを介して薬剤を送達することは、シリンジの遠位端をルアー接続によってカテーテルに接続することを含む。標準的な雄型のルアー先端部または標準的な雄型のコネクタは、ISO594-1:1986および594-2:1998で定義されている国際標準化機構(ISO)によって提供される、開口した遠位端から近位端に向かって増加する6%のテーパ、および硬質材料については、約0.1545インチ(3.925mm)から約0.1570インチ(3.990mm)の間、および半硬質材料については、約0.1545インチ(3.925mm)から約0.1585インチ(4.027mm)の間の寸法である先端部の遠位端における外側断面の直径を含む仕様を有している。標準的な雌型ルアーハブまたは標準的な雌型のルアーコネクタは、開口した近位端から遠位端に向かって減少する6%のテーパ、および約0.168インチ(4.270mm)から約0.170インチ(4.315mm)の間の寸法である開口した近位端における側断面の直径を有している。対応する雄型のルアーロックコネクタに接続するためのタブまたはラグを組み込んだ標準的な雌型のルアーコネクタを有する装置では、ラグを含む標準的な雌型のルアーコネクタの外側断面直径は、約0.307インチ(7.80mm)から約0.308インチ(7.83mm)までの範囲内である。対応する雄型のルアーロックコネクタに接続するためのタブまたはラグを組み込んでいない標準的な雌型のルアーコネクタを有する装置では、外側断面の直径は、ISO594-2のラグのベースにおける標準的な雌型のルアーコネクタの最大外径に基づいて、剛性のコネクタについては約0.224インチ(5.700mm)、および半剛性のコネクタについては約0.265インチ(6.730mm)であってもよい。標準的なルアー先端部および/または標準的なルアーハブの最小の長さは、ISO594-1によると、0.295インチ(7.500mm)である。本明細書で使用されるとき、語句「標準雄型のルアーコネクタ」、「標準雄型のルアー先端部」、「標準雌型のルアーハブ」および「標準雌型のルアーコネクタ」は、上記の寸法を有するコネクタを指すものとする。
【0004】
バレルおよびバレル内にプランジャを有するシリンジからの母乳または調合乳のような経腸液の送達は、バレル内の流体を加圧してシリンジの遠位先端部から流体を放出するべく、プランジャをバレル内に前進させることによって達成される。経口投与シリンジは、ニードルカニューレの直径より実質的に大きい直径を有するチャネルを画定する遠位先端部を備えるバレルを有している。典型的な経口シリンジの場合、遠位先端部は、患者の口腔内に挿入して薬物または他の流体を患者に経口的に導入することができる滑らかな外側表面を画定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脈管アクセスシステムと共に使用するために標準的なルアー先端部およびコネクタの使用を制限することは、装置製造業者および規制機関によって容認されている1つの合意である。例えば、ISO830369-3の採用は、静脈内に、経口的にそして経腸的に患者に流体を送達するための様々なシリンジのタイプをもたらすであろう。ISO830369-3規格を満たす経腸接続を有する経腸システムに接続するために使用することができ、且つまた、標準的なルアー先端部およびコネクタへの接続を防止しながら、経口シリンジとして使用されるシリンジを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、遠位端、開口近位端、当該遠位端と当該開口近位端との間に延びる側壁であってチャンバを画定する側壁、およびシリンジバレルの遠位端に隣接する経腸カラー係合特徴部を有するシリンジバレル、非ルアー先端部であって、当該非ルアー先端部は、静脈内装置に接続できないように寸法決めされ、前記チャンバと流体連通する流体経路を画定する非ルアー先端部、および遠位端と近位端とを有する経腸カラーであって、当該近位端は経腸カラー係合特徴部と相補的で係合し得るシリンジ係合特徴部を有し、前記シリンジ係合特徴部が前記経腸カラー係合特徴部に係合されたとき、前記経腸カラーは前記非ルアー先端部を囲み、そして経腸装置への接続を可能にしてルアーコネクタを有する装置への接続を防止するような大きさである経腸カラー、を備えるシリンジに関する。
【0007】
本開示の第2の態様は、遠位端と、開口近位端と、当該遠位端と当該開口近位端との間に延在する側壁とを有するシリンジバレルであって、前記側壁が、チャンバと、前記シリンジバレルの前記遠位端から延在する遠位延長壁と、当該遠位延長壁上の経腸カラー係合特徴部とを画定するシリンジバレル、非ルアー先端部であって、当該非ルアー先端部は、静脈内装置に接続できないように寸法決めされ、前記チャンバと流体連通する流体経路を画定する非ルアー先端部、および遠位端と近位端とを有する経腸カラーであって、当該近位端は、前記経腸カラー係合特徴部と相補的で係合可能であるシリンジ係合特徴部を有し、前記経腸カラーは、前記シリンジ係合特徴部が前記経腸カラー係合特徴部に係合されたとき、前記非ルアー先端部を囲み、そして前記カラーの前記遠位端は、ねじ付きの非ルアーコネクタと係合するための外向きに延在するラグと、経腸装置への接続を可能にする大きさにされた経腸カラーとを含んでいる経腸カラー、を備えるシリンジに関する。
【0008】
本開示の別の態様は、遠位端と、開口近位端と、当該遠位端と当該開口近位端との間に延在する側壁とを有し、当該側壁がチャンバを画定するシリンジバレル、非ルアー先端部であって、当該非ルアー先端部は、静脈内装置に接続できないように寸法決めされ、前記チャンバと流体連通する流体経路を画定する非ルアー先端部、前記シリンジバレルの前記遠位端と前記非ルアー先端部との間の周囲経腸カラー係合特徴部、および遠位端と近位端とを有する経腸カラーであって、当該近位端は、前記経腸カラー係合特徴部と相補的で係合可能であるシリンジ係合特徴部を有し、前記経腸カラーは、前記シリンジ係合特徴部が前記経腸カラー係合特徴部に係合されたとき、前記非ルアー先端部を囲み、そして経腸装置へのねじ接続を可能にする大きさにされ、内ねじを含んでいる経腸カラー、を備えるシリンジに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態によるシリンジおよびカラーの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたシリンジおよびカラーの側面図である。
【
図5】
図5は、カラーがシリンジに接続された状態での、
図1に示されたシリンジおよびカラーの斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態によるシリンジの斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態によるシリンジおよびカラーの斜視図である。
【
図9】
図9は、カラーがシリンジに接続された状態での、
図7に示されたシリンジおよびカラーの斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態によるシリンジの斜視図である。
【
図11】
図11は、1つ以上の実施形態によるシリンジへの接続に使用することができるチューブを含むラインセットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の説明に記載される構成または処理ステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、そして様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0011】
本開示では、装置の遠位端が患者に最も近い端部であり、そして装置の近位端が患者から離れて施術者に最も近い端部であるという慣例に従う。
【0012】
雄型および雌型コネクタに関して「接続不可能」という用語は、他のコネクタへの接続を妨げる形状、サイズ、寸法または構造を有するコネクタを指す。例えば、雌型のルアーコネクタは、雄型の非ルアー型コネクタとの接続を形成するのを妨げる形状、サイズ、寸法および/または構造を有し、したがって雄型の非ルアー型コネクタに対して接続可能ではない。しかしながら、そのような雌型のルアーコネクタは、雄型のルアーコネクタに対して接続可能な形状、サイズ、寸法および/または構造を有しており、したがって、雄型のルアーコネクタとの接続が可能である。別の例では、雌型の非ルアーコネクタは、雄型のルアーコネクタとの接続の形成を妨げる形状、サイズ、寸法、および/または構造を有しており、したがって、雄型のルアーコネクタに対して接続できない。そのような雌型の非ルアーコネクタは、雄型の非ルアーコネクタとの接続の形成を可能にする形状、サイズ寸法および/または構造を有しており、したがって、雄型の非ルアーコネクタに対して接続可能なコネクタである。
【0013】
本明細書で使用されるとき、用語「寸法」は、本明細書に記載される幾何学的形状または幾何学的に形状付けられた構成要素の長さ、直径または幅を含むものとする。「断面直径」という用語は、円形または非円形の断面を有する物体または構成要素の断面の縁部上の2点間の最長距離または最大距離の測定値を含むものとする。
【0014】
2つの点は、対象物の断面の縁部の内側表面または外側表面に位置されてもよい。対象物の断面の縁部の内側表面に位置される2点の断面直径は、「内側断面直径」と呼ばれ、および対象物の断面の縁部の外側表面に位置される2点の断面直径は「外側断面直径」と呼ばれるものとする。円形断面を有する物体の「断面直径」は、物体の「断面寸法」すなわち「直径」と称され得ることを認識されたい。用語「断面寸法」、「断面直径」および「直径」は、円形断面を有する物体に対して互換的に使用され得る。
【0015】
1つ以上の実施形態は、シリンジが、ISO80369-3の誤接続要件を満たすことを可能にするであろう経腸カラーを有するシリンジを提供する。1つ以上の実施形態では、シリンジは、静脈内装置への接続を妨げるカラーを受け入れるための特徴部をバレル上に有する非ルアーテーパ型の経口シリンジである。1つ以上の実施形態では、特徴部は、経腸カラーがシリンジ上に配置されロックされることを許容する、ねじ山またはスナップ/ロック用特徴部のいずれかを含んでいる。1つ以上の実施形態では、経腸カラーがシリンジに取り付けられた後、カラーは並進または回転しないが、しかし、他の実施形態では、カラーは並進または回転してもよい。1つ以上の実施形態によれば、このシリンジは、通常の経口シリンジが現在使用されているように、経口薬および液体を吸い上げ、充填し、そして投与するために利用されてもよく、そして、経腸カラーがシリンジに装着された後は、ISO80369‐3に適合し、且つ、経腸投与のために利用されるのが可能になる。1つ以上の実施形態によるシリンジは、経口薬を送達するために薬局内または患者ベッドサイドでのワークフロー(作業の流れ)の変更を必要としない。したがって、1つ以上の実施形態は、2つの機能、すなわち経口投与および経腸投与のために使用することができるシリンジを提供する。
【0016】
1つ以上の実施形態は、経腸給餌セットおよび給餌チューブに接続することができるシリンジを提供する。業界では、この接続は、ENFit(エンフィット)と呼ばれ、ISO80369-3に準拠している。1つ以上の実施形態によれば、シリンジを経腸チューブおよび給餌バッグなどの経腸装置に接続することを可能にし、静脈内ライン、尿道カテーテルおよび人工呼吸器チューブなどの非経腸装置への接続を防止するシリンジが提供される。1つ以上の実施形態は、ENFit装置およびISO80369-3に準拠したシリンジを提供し、シリンジはルアー接続に適合しないため、誤った経路による経腸栄養剤または薬物の誤投与を防止する。したがって、カラーが取り付けられるとき、それは、経腸栄養補給チューブの誤接続の危険性を低減して患者の安全性を向上させる簡単な方法を提供する独自の経腸特有のデザインを有するコネクタを有しているシリンジが提供される。さらに、カラーが接続された後、カラーは、静脈内装置などの他の臨床用途のための他のコネクタとの接続を可能にしない。1つ以上の実施形態によれば、カラーが取り付けられるとき、新しいENFit栄養補給チューブおよびISO80369-3に準拠する延長セットを介して薬剤、洗浄液、水和物、またはボーラス給餌を投与するために使用することができる経腸特異的シリンジをもたらすシリンジが提供される。1つ以上の実施形態は、ISO規格594/1および594/2に準拠する標準ルアーコネクタと接続しないカラーを有するシリンジを提供する。したがって、本開示の一実施形態は、2つが誤って機械的に連結されるのを防ぐために、標準サイズの静脈内コネクタおよびポートと適合しない寸法を有するコネクタを有するシリンジを提供する。
【0017】
本開示の態様は、他の不適合性の雌型のコネクタへの誤接続を防止する雄型のコネクタを備える経腸カラーを有するシリンジに関する。雄型のコネクタは、本明細書では、不適合性の雌型のコネクタとは異なる形状、サイズ、寸法または構造を有する雄型のコネクタとして定義されるものとする。不適合性の雌型のコネクタには、ISO594-1:1986および594-2:1998に準拠する標準の雌型のルアーコネクタが含まれている。
【0018】
1つ以上の実施形態において、雌型のコネクタを有する不適合性のカラーは、ISO594-1:1986またはISO594-2:1998に準拠しない形状、サイズ、寸法または構造を有している。
【0019】
そのような実施形態では、不適合の雌型コネクタは、上で定義されたような、またはISO594-1:1986もしくはISO594-2:1998に従った雌型ルアーコネクタとして特徴付けられまたは定義されるのを妨げる形状、サイズ、寸法または構造を有するかもしれない。1つ以上の特定の実施形態では、不適合の雌型コネクタは、上で定義され、またはISO594-1:1986またはISO594-2:1998によるような雌型のルアーコネクタとは異なる長さおよび/または断面直径を有するかもしれない。より具体的な実施形態では、不適合の雌型コネクタは、上で定義されたような、またはISO594-1:1986もしくはISO594-2:1998によるルアーコネクタとは異なるテーパを有するかもしれない。さらにより具体的な実施形態では、不適合の雌型コネクタは、上で定義され、またはISO594-1:1986またはISO594-2:1998によるような雌型のルアーコネクタよりも緩やかなテーパ(例えば、5%のテーパ)、上で定義され、またはISO594-1:1986またはISO594-2:1998による雌型のルアーコネクタよりも小さい断面直径、および/または上で定義され、またはISO594-1:1986またはISO594-2:1998による雌型のルアーコネクタよりも長い長さを有するかもしれない。
【0020】
ここで、
図1乃至5を参照するに、遠位端14、開口近位端16、遠位端14と開口近位端16との間に延在する側壁18であって、チャンバ20を画定する側壁18、を有するシリンジバレル12、およびシリンジバレル12の遠位端14に隣接する経腸カラー係合特徴部22を備えるものとしてシリンジ10の第1の実施形態が示されている。シリンジは、非ルアー先端部24が静脈内装置に接続できないように寸法決めされた非ルアー先端部24をさらに含み、非ルアー先端部24は、チャンバ20と流体連通する流体経路26を画定している。シリンジは、遠位端32および近位端34を有する経腸カラー30をさらに備えている。経腸カラー30の近位端34は、経腸カラー係合特徴部22と相補的でかつ係合可能なシリンジ係合特徴部36を有し、経腸カラー30は、シリンジ係合特徴部36が経腸カラー係合特徴部22に係合されたとき非ルアー先端部24を囲んでいる。経腸カラー30は、経腸装置への接続を可能にし、ルアーコネクタを有する装置への接続を防止するような大きさにされている。図示の実施形態では、非ルアー先端部24はシリンジバレル12の遠位端14にあり、経腸カラー係合特徴部22は開口近位端16とシリンジバレルの遠位端14との間に配置されている。
【0021】
図5に最もよく示されるように、1つ以上の実施形態では、経腸接続カラー30は流体経路26の外側にあり、チャンバ20と流体連通していない。言い換えれば、シリンジ10のチャンバ20内に収容されている流体は遠位先端部24を通って流れ、遠位先端部24を通って流れる流体はカラー30と接触していない。一実施形態では、経腸カラー係合特徴部22およびシリンジ係合特徴部36は、戻り止め、タブ、フィンガー、スロット、スナップ嵌合部、くぼみおよびねじ山から選択される相補的嵌合特徴部を含んでいる。
図3Aおよび
図4に最もよく示されているように示された実施形態においては、シリンジ係合特徴部36は、経腸カラー30の近位端34上の複数のスロットまたはくぼみ37として示されており、これらは、バレル12の遠位端14のタブの形態の経腸カラー係合特徴部22と係合する。この構成は、くぼみまたはスロットがシリンジにあり、タブがカラーにあるように、逆にされてもよい。あるいは、カラー30がシリンジ10にスナップ嵌合されるのを許容するであろう任意の種類の相補的な特徴部でもよい。そのような相補的な特徴部は、カラー30とシリンジ10との間のフィンガーもしくは戻り止めまたはねじ込み式の取り付け具を含み得る。したがって、
図3Bに示されるように、経腸カラー係合特徴部36は、シリンジバレル12の遠位端14に隣接するシリンジのねじ山(図示せず)に係合可能なカラーのねじ山39を備えてもよい。
【0022】
一実施形態では、シリンジ係合特徴部36と経腸カラー係合特徴部22との係合後は、経腸カラー30はシリンジ10から取り外しできない。一実施形態では、シリンジ係合特徴部36と経腸カラー係合特徴部22との係合後、経腸カラー30はシリンジ10に対して回転できない。
図1乃至
図5に示される実施形態では、シリンジバレル12の遠位端14は、経腸カラー係合特徴部22を含んでいる遠位延長壁15を含む。一実施形態では、
図4に最もよく示されるように、遠位延長壁15が内側表面17と外側表面19とを含み、経腸カラー係合特徴部36は内側表面17に配置されている。
【0023】
図3Aおよび
図3Bに示されるように、経腸カラー30の近位端34はシリンジ係合特徴部36を含み、経腸カラー30の遠位端32は、ねじ付きの非ルアーコネクタに係合するために、外側に延在する雄ねじまたはラグ40を含んでいる。図示の実施形態では、経腸カラー30は、ねじ付き非ルアーコネクタの雌ねじと係合することができる一対の雄ねじまたはラグ40を含んでいる。任意の数の雄ねじまたはラグ50が、経腸カラー30の遠位端32に存していてもよい。特定の実施形態では、雄ねじまたはラグ40を有する経腸カラー30は、ISO80369-3に準拠するENfit(エンフィット)接続を提供し、且つISO80369-3に準拠する雌エンフィットコネクタと接続可能な雄コネクタを提供する。
【0024】
シリンジは、通常、プランジャとチャンバの遠位端との間のチャンバ内の空間に、ある程度の量の薬剤を保持し、そして、これらの空間は、通常、シリンジの「デッドスペース(死腔)」と呼ばれている。1つ以上の実施形態では、シリンジ10のチャンバ20が5ml未満の容積と、流体がチャンバから排出された後にチャンバ内に流体を保持するデッドスペース領域とを有する場合、デッドスペース領域は0.07ml未満の流体を含む。1つ以上の実施形態では、5mlから10ml未満の範囲の容積を有するチャンバ20を備えるシリンジ10は、0.075ml以下のデッドスペース領域を有する。1つ以上の実施形態では、20ml未満かつ10mlを超える容積を有するチャンバ20を備えるシリンジ10は、0.10ml以下のデッドスペース領域を有する。
【0025】
ここで、
図6乃至
図10を参照するに、シリンジ110の第2の実施形態が示されている。第1の実施形態のシリンジと同様に、シリンジ110は、遠位端114、開口近位端116、遠位端114と開口近位端116との間に延在する側壁118を有するシリンジバレル112を含んでいる。側壁118は、チャンバ120、およびシリンジバレル112の遠位端114に隣接する経腸カラー係合特徴部122を画定している。シリンジは、非ルアー先端部124が静脈内装置に接続できないように寸法決めされた非ルアー先端部124をさらに含み、非ルアー先端部124は、チャンバ120と流体連通する流体経路126を画定する。シリンジは、遠位端132と近位端134とを有する経腸カラー130をさらに含んでいる。経腸カラー130の近位端134は、経腸カラー係合特徴部122と相補的で且つ係合可能なシリンジ係合特徴部136を有し、シリンジ係合特徴部136が経腸カラー係合特徴部122と係合しているとき、経腸カラー130は非ルアー先端部124を囲む。経腸カラー130は、経腸装置への接続を可能にし、そしてルアーコネクタを有する装置への接続を防止するような大きさである。図示の実施形態では、非ルアー先端部124はシリンジバレル112の遠位端114にあり、そして経腸カラー係合特徴部122は、シリンジバレルの遠位端に隣接する周囲凹部125内に配置されている。第2の実施形態では、経腸カラー係合特徴部122は、傾斜付タブ138によって形成されたチャネル137として示されている、相補的なシリンジ係合特徴部136と係合する突起またはタブ122として示されている。傾斜付タブ138はまた、突起またはタブ122が間隙135の間に配置されるように、カラー130がシリンジ110の遠位端に摺動自在に取り付けられるのを許容する間隙135も提供する。突起またはタブ122が間隙135の間に配置され、そして経腸カラー130がシリンジ130に対して回転されると、突起またはタブ122はカラー130の傾斜付タブ138に乗り上げ、チャネル137内にロックされるようになる。カラー130がシリンジ110にロックされた後、カラーは、回転可能でも取り外し可能でもない。
図10に示される別の実施形態では、シリンジ110は、経腸カラー130の近位端のねじ山(図示せず)と協働するねじ山131を含み、そして経腸カラー130とシリンジ110との間でのねじ接続が行われ得る。
図7に最もよく示されるように、第2の実施形態における経腸カラー130は、内ねじ129を備える内側表面133を有している。経腸カラー130は、流体通路126の外側にあり、チャンバ120とは流体連通していない。
【0026】
図示の実施形態では、内ねじ129を含む経腸カラー130は、雄型の非ルアーコネクタと係合することができる雌型の非ルアーコネクタを提供する。特定の実施形態では、内ねじ129を有する経腸カラー130は、ISO80369-3に準拠するエンフィット接続を提供し、そしてISO80369-3に準拠する雄型のエンフィットコネクタと接続可能な雌型のコネクタを提供する。
【0027】
1つ以上の実施形態では、本開示に記載されているシリンジは、本明細書に記載されている経腸カラーを可撓性チューブに接続することによって通常は達成される様々な経腸装置、例えば、給餌バッグおよび給餌カテーテルに接続され得る。
図11は、経腸給餌延長セット290に接続された雄型アダプタ240および雌型アダプタ210を有する290チューブの実施例を示している。雄型アダプタ240は遠位端292に配置され、そして雌型アダプタ210は近位端294に配置されてもよい。経腸給餌延長セット290は、医療グレードの可撓性チューブ296を含んでいる。チューブ296は、
図11にコイル状に示されているが、可撓性チューブは巻きが解かれてチューブ296の全長にわたって伸長されてもよいことが理解されよう。使用時には、雄型アダプタ240は、シリンジ110に結合された雌型アダプタを有する経腸カラー130に接続されてもよい。別の実施形態において、雌型アダプタ210は、雌型アダプタに係合するための雄型アダプタ、およびラグまたはねじ山40を有するシリンジ19のカラー30に接続されてもよい。経腸カラーを含んでいるシリンジの構成要素は、医療用途および健康管理用途に適した様々な材料、例えば、雌型または雄型のアダプタは、これらに限定されないが、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、およびポリ塩化ビニルなどの医療グレードの材料からで製造されてもよい。
【0028】
本明細書を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」という言及は、その実施形態に関して説明した特定の特徴、構造、材料、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の至る所での「1つ以上の実施形態では」、「ある実施形態では」、「ある実施形態では」または「一実施形態では」などの表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指していない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0029】
本明細書における開示は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本開示の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に様々な修正および変形を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正形態および変形形態を含むことを意図している。