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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】脂質を製造及び分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/64 20220101AFI20220104BHJP
   C12P 19/50 20060101ALI20220104BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C12P7/64
C12P19/50
C12M1/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019520503
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 GB2017051205
(87)【国際公開番号】W WO2017220957
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-01-28
(31)【優先権主張番号】1610932.4
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518452319
【氏名又は名称】ホリフェルム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ウィンターバーン ジェームズ ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ドルマン ベン マイケル
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514432(JP,A)
【文献】国際公開第2008/120644(WO,A1)
【文献】米国特許第05837152(US,A)
【文献】特開2014-140383(JP,A)
【文献】米国特許第05879913(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103555308(CN,A)
【文献】OLOF PALME,SOPHOROLIPIDS FROM CANDIDA BOMBICOLA: CELL SEPARATION BY ULTRASONIC PARTICLE MANIPULATION,EUROPEAN JOURNAL OF LIPID SCIENCE AND TECHNOLOGY,ドイツ,2010年05月11日,Vol. 112, No. 6,p. 663 - 673,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/ejlt.200900163?purchase_referrer=onlinelibrary.wiley.com&tracking_action=preview_click&r3_referer=wol&show_checkout=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/00
C12P 19/00
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を製造する方法であって
a.発酵槽内で発酵を実施して、脂質生成物を含むブロスを製造すること;
b.脂質生成物を含むブロスを前記発酵槽から重力セパレーターに移すこと;
c.前記重力セパレーター内で脂質生成物を含む脂質相を前記ブロスの他の構成成分から重力によって分離させること;
d.脂質生成物が分離されたブロスを前記重力セパレーターから前記発酵槽に戻すこと;及び
e.脂質生成物を前記重力セパレーターから移すこと
を含み、
前記重力セパレーターが、前記工程c)における方法内で用いられる唯一のセパレーターである、方法。
【請求項2】
炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群選択される脂質を製造することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂質生成物は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及びマンノシルエリスリトール脂質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ブロスを前記発酵槽と重力セパレーターとの間で循環させることを含み、
前記発酵槽内の前記ブロスが前記発酵槽及び重力セパレーター内の前記ブロスの合計の少なくとも80重量%を構成するように、ブロスを前記発酵槽から移し、ブロスを前記発酵槽に戻すことを含み、
前記発酵の継続期間にわたり、前記発酵槽に基質を加えることを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵槽内の前記ブロス中の脂質の濃度を80gL-1未満に維持することを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発酵槽内での相分離を防ぐために、前記ブロスが激しく撹拌される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記重力セパレーターは、分離チャンバーを含み、使用時に水平に対して10度から60度であるようになされている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(c)は、セパレーター内の重力によるブロスの分離を可能にして、脂質生成物を含む脂質相及びブロスの他の構成成分を含むバルクブロスを与えることを含み、前記重力セパレーター内のバルクブロスは、基質及び/又は細胞を含み、
前記方法は、実質的に全く細胞を含まない脂質相を分離することを含み、
前記脂質相は、脂質生成物および、少なくとも80重量%の濃度で含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ソホロ脂質は、発酵条件を調整することによって発生し、そのpHは、2~5であり、前記糖は、少なくとも0.5gl-1-1の速度で供給され、植物油は、0.5gl-1-1の速度で供給され、前記発酵槽内のブロスの溶存酸素濃度が20%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
脂質を含むブロスの他の構成成分から脂質相を分離するようになされている重力セパレーターであって、
(I)脂質生成物を含む脂質相が前記ブロスの他の構成成分から分離するように、使用時に、前記ブロスをある期間滞留させることが可能である分離チャンバー;ここで、選択的に、前記分離チャンバーは、使用時に、チャンバーの縦軸が、水平に対して10度~60度であるようになされている;
(II)使用時に、脂質生成物を含むブロスを前記分離チャンバー内に移すための前記分離チャンバーへのブロス入口;並びに
(III)(i)使用時に、脂質生成物が分離されたブロスを前記分離チャンバーから移すため;及び(ii)使用時に、脂質生成物を前記分離チャンバーから移すための前記分離チャンバーからの出口
を含む重力セパレーター。
【請求項11】
3つの出口(III):
(IIIa)前記分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いて位置している第1の出口;
(IIIb)前記分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いて位置している第2の出口;及び
(IIIc)前記分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いて位置している第3の出口
を含む、請求項10に記載の重力セパレーター。
【請求項12】
出口(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)が、以下:
(1)(IIIa)圧力放出のために使用される;
(IIIb)脂質生成物を前記分離チャンバーから移すため;
(IIIc)脂質生成物が除去されたブロスを前記分離チャンバーから移すため;又は
(2)(IIIa)脂質生成物を前記分離チャンバーから移すため;
(IIIb)脂質生成物が除去されたブロスを前記分離チャンバーから移すため;
(IIIc)使用されない
の通り選択的に使用されるように構成されている、請求項11に記載の重力セパレーター。
【請求項13】
(I)使用時に、脂質生成物を含む脂質相が前記ブロスの他の構成成分から分離するように、前記ブロスをある期間滞留させることが可能である分離チャンバー;
(II)使用時に、脂質生成物を含むブロスを前記分離チャンバー内に移すための、前記分離チャンバーの第1の末端に向いて位置しているブロス入口;
(IIIA)前記分離チャンバーの第2の末端に向いて位置している第1の出口;及び(IIIB)前記分離チャンバーの第2の末端に向いて位置している第2の出口;
を含み、
前記ブロス入口(II)が、前記分離チャンバーの縦軸上にある、前記分離チャンバーの、使用時に下方である末端で、前記分離チャンバーへの開口部を含み;
前記第1の出口(IIIA)が、前記分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた前記側壁の領域で、前記分離チャンバーの側壁にある、前記分離チャンバーへの開口部を含み、前記分離チャンバーへの前記開口部が、使用時に、前記分離チャンバーの縦軸より下にあり;且つ
前記第2の出口(IIIB)が、前記分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた前記側壁の領域で、前記分離チャンバーの側壁にある、前記分離チャンバーへの開口部を含み、前記分離チャンバーへの前記開口部が、使用時に、前記分離チャンバーの縦軸より上にある、請求項10に記載の重力セパレーター。
【請求項14】
脂質を製造するための装置であって、発酵チャンバーを有する発酵槽及び請求項1013のいずれか一項に記載の重力セパレーターを含み、前記発酵チャンバー及び前記重力セパレーターの分離チャンバーが、使用時に、脂質生成物を含むブロスを前記発酵チャンバーから前記分離チャンバーに移すことができ、脂質生成物が分離されたブロスを前記分離チャンバーから前記発酵チャンバーに移すことができるように流体連通にある装置;ここで、選択的に、前記分離チャンバーは、使用時に、チャンバーの縦軸が、水平に対して10度~60度であるようになされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質の製造に関し、排他的ではないが詳細には、ソホロ脂質の製造及び前記製造に使用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質及び特にソホロ脂質などの糖脂質の微生物による産生は公知である。ソホロ脂質は、16~18個の炭素原子の典型的な鎖長を有する疎水性脂肪酸に結合した親水性ソホロース二糖からなる。脂肪酸は、エステル結合により第2のグルコースモノマーに結合してラクトン型ソホロ脂質を与えることも、1つのグルコースモノマーのみに結合して結合していない脂肪酸のために酸性のソホロ脂質を与えることもある。脂肪酸鎖のこれらの違い及び他の違い並びにソホロース分子のアセチル化により、様々な異なる構造及び性質がもたらされる。
【0003】
いくつかの酵母株はソホロ脂質を合成することができるが、ほとんどの工業的使用は、カンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)ATCC 22214に集中している。およそ2gl-1-1の生産性で300gl-1を超えるソホロ脂質濃度が、植物油及びグルコースを基質として使用して、浸漬C.ボンビコラ(C.bombicola)発酵において達成可能である。
【0004】
ソホロ脂質製造などの公知の脂質製造は、発酵槽内での流加発酵を利用する。ソホロ脂質を製造する発酵は細胞成長期で始まり、それは、典型的には培地中の窒素が枯渇するまで継続し、親水性及び疎水性の両方の炭素源が存在する場合、その時点でソホロ脂質製造速度は著しく上昇する。ソホロ脂質製造期はおよそ200時間継続するが、その時点で発酵槽内の溶存酸素濃度は、酸素物質移動限界のため維持され得ない。これは、産生されるソホロ脂質の非常に粘性の高い性質により起こり、発酵を停止してソホロ脂質を回収しなければならないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の製造方法では、発酵槽内の別のソホロ脂質相の存在は、空気/液体界面を越える物質移動に対する抵抗を与えること、及び培地の粘度を増加させることの両方により、酸素物質移動計数、kLaを著しく低下させ、それは、酸素の限界、撹拌力の要件の増大、及び発酵槽内の不均一性をもたらす。
【0006】
したがって、本発明は、本明細書中又は別に議論される従来技術に関連する少なくとも1つの欠点を扱うことを目指している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によると、
(a)発酵槽内で発酵を実施して、脂質生成物を含むブロスを製造すること;
(b)脂質生成物を含むブロスを発酵槽からセパレーターに移すこと;
(c)脂質生成物を含む脂質相を、セパレーター内でブロスの他の構成成分から分離させること;
(d)脂質生成物が分離されたブロスをセパレーターから発酵槽に戻すこと;及び
(e)脂質生成物をセパレーターから移すこと
を含む脂質を製造する方法が提供される。
【0008】
好適には、方法は、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、糖脂質、及び水に不溶性又は両親媒性であり、全般的に非極性溶媒に可溶性である、生物により産生された分子を含む他の化合物からなる群から選択される脂質を製造することを含む。
【0009】
好適には、方法は、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を製造することを含む。
【0010】
好適には、方法は、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を製造することを含む。
【0011】
好適には、方法は、テルペノイドを製造する方法を含む。好適には、脂質生成物はテルペノイドを含む。脂質生成物はテルペノイドからなることがある。
【0012】
好適には、工程(d)は、テルペノイドを含む脂質相が分離されたブロスをセパレーターから発酵槽に戻すことを含む。好適には、工程(e)は、テルペノイドを含む脂質相をセパレーターから移すことを含む。好適には、工程(e)は、テルペノイドを含む脂質生成物相をセパレーターから移すことを含む。
【0013】
好適には、方法は、糖脂質を製造する方法を含む。好適には、脂質生成物は糖脂質を含む。脂質生成物は糖脂質からなることがある。
【0014】
好適には、工程(d)は、糖脂質を含む脂質相が分離されたブロスをセパレーターから発酵槽に戻すことを含む。好適には、工程(e)は、糖脂質を含む脂質相をセパレーターから移すことを含む。好適には、工程(e)は、糖脂質を含む脂質生成物相をセパレーターから移すことを含む。
【0015】
好適には、
(a)発酵槽内で発酵を実施して、糖脂質を含むブロスを製造すること;
(b)糖脂質を含むブロスを発酵槽からセパレーターに移すこと;
(c)糖脂質を含む脂質相を、セパレーター内でブロスの他の構成成分から分離させること;
(d)糖脂質が分離されたブロスをセパレーターから発酵槽に戻すこと;及び
(e)糖脂質をセパレーターから移すこと
を含む脂質を製造する方法が提供される。
【0016】
好適には、方法は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及びマンノシルエリスリトール脂質から選択される脂質を製造する方法を含む。好適には、脂質生成物は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及びマンノシルエリスリトール脂質から選択される1種以上の脂質を含む。脂質生成物は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及びマンノシルエリスリトール脂質から選択される1種以上の脂質からなることがある。
【0017】
好適には、工程(d)は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及び/又はマンノシルエリスリトール脂質を含む脂質相が分離されたブロスを、セパレーターから発酵槽に戻すことを含む。好適には、工程(e)は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、及び/又はマンノシルエリスリトール脂質を含む脂質相をセパレーターから移すことを含む。好適には、工程(e)は、ソホロ脂質、ラムノ脂質及び/又はマンノシルエリスリトール脂質を含む脂質生成物相をセパレーターから移すことを含む。
【0018】
好適には、方法は、ソホロ脂質を製造する方法を含む。好適には、脂質生成物はソホロ脂質を含む。脂質生成物はソホロ脂質からなることがある。
【0019】
好適には、工程(d)は、ソホロ脂質を含む脂質相が分離されたブロスを、セパレーターから発酵槽に戻すことを含む。好適には、工程(e)は、ソホロ脂質を含む脂質相をセパレーターから移すことを含む。好適には、工程(e)は、ソホロ脂質を含む脂質生成物相をセパレーターから移すことを含む。
【0020】
好適には、
(a)発酵槽内で発酵を実施して、ソホロ脂質を含むブロスを製造すること;
(b)ソホロ脂質を含むブロスを発酵槽からセパレーターに移すこと;
(c)ソホロ脂質を含む脂質相を、セパレーター内でブロスの他の構成成分から分離させること;
(d)ソホロ脂質が分離されたブロスを、セパレーターから発酵槽に戻すこと;及び
(e)ソホロ脂質をセパレーターから移すこと
を含む脂質を製造する方法が提供される。
【0021】
好適には、工程(c)、(d)及び(e)は、工程(b)と並行して実施される。好適には、工程(b)は、工程(a)と並行して実施される。好適には、工程(b)、(c)、(d)及び(e)は、工程(a)と並行して実施される。
【0022】
工程(c)、(d)、及び(e)は、連続的な工程として実施され得る。工程(b)、(c)、(d)、及び(e)は、連続的な工程として実施され得る。工程(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)は、連続的な工程として実施され得る。
【0023】
工程(c)、(d)及び(e)は、間欠的に実施され得るが、好適には、それらが運転されている期間の間、連続的な工程として実施され得る。工程(b)、(c)、(d)及び(e)は、間欠的に実施され得るが、好適には、それらが運転されている期間の間、連続的な工程として実施され得る。
【0024】
好適には、方法は、多重通過分離(multiple pass separation)を実施することを含み、好適には、工程(b)、(c)、及び(d)を連続サイクルで実施することを含む。
【0025】
好適には、方法は、発酵槽内での発酵を実施している期間、発酵槽からセパレーターに通し、再び発酵槽にブロスを連続的に循環させることによる分離を実施することを含む。好適には、前記期間は少なくとも30分である。好適には、方法は、発酵の継続期間の間の複数の期間、前記期間の間に休止を挟みながら、発酵槽からセパレーターに通し、再び発酵槽にブロスを連続的に循環させることによる分離を実施することを含む。或いは、方法は、発酵の間に全く休止を挟まずに、発酵槽からセパレーターに通し、再び発酵槽にブロスを連続的に循環させることによる分離を実施することを含み得る。
【0026】
好適には、方法は、カンジダ・ボンビコラ(Candida bombicola)ATCC 22214を利用してソホロ脂質を製造することを含む。
【0027】
好適には、方法は、発酵の継続期間にわたり、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。好適には、方法は、発酵の継続期間にわたり間隔をおいて、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。好適には、方法は、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で連続的に循環させることを含む。
【0028】
好適には、方法は、少なくとも1時間の期間にわたり、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。好適には、方法は、少なくとも10時間、例えば少なくとも20時間の期間にわたり、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。好適には、方法は、少なくとも50時間、例えば少なくとも100時間の期間にわたり、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。好適には、方法は、少なくとも150時間、例えば少なくとも200時間の期間にわたり、ブロスを発酵槽とセパレーターとの間で循環させることを含む。
【0029】
好適には、方法は、発酵の継続期間にわたり、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から連続的に移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、基質脂質を発酵槽に戻すことを含む。方法は、セパレーター内での分離が不完全なことがあり、ブロスから脂質生成物の全てではなく一部を分離することがあり、それがその後に発酵槽に戻されるかもしれないので、脂質生成物を発酵槽に戻すことを含んでいてもよい。
【0030】
好適には、方法は、少なくとも1時間の期間にわたり、発酵槽内で発酵を実施すること、及び脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。移動、分離、及び戻しは、連続的にも、間欠的にも実施できる。好適には、間欠的に実施される場合、移動、分離、及び戻しは、発酵中の複数の機会に実施され、好適には、前記運転の機会の間で、発酵槽とセパレーターとの間の連続的な再循環と共に実施される。
【0031】
好適には、方法は、連続的に又は少なくとも10時間、例えば少なくとも20時間の期間にわたり複数の機会に、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、連続的に又は少なくとも50時間、例えば少なくとも100時間の期間にわたり複数の機会に、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、連続的に又は少なくとも150時間、例えば少なくとも200時間の期間にわたり複数の機会に、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。
【0032】
好適には、方法は、少なくとも10時間継続する発酵の期間にわたり、複数の機会に、例えば少なくとも3回の機会に、再循環分離プロセスを運転することを含み、前記分離プロセスは、脂質生成物を含むブロスを発酵槽から移すこと、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離すること、及び脂質生成物が分離されたブロスを発酵槽に戻すことを含む。
【0033】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスが、発酵槽及びセパレーター内のブロスの合計の少なくとも50重量%を構成するように、ブロスを発酵槽から移してブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスが、発酵槽及びセパレーター内のブロスの合計の少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%を構成するように、ブロスを発酵槽から移してブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスが、発酵槽及びセパレーター内のブロスの合計の少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を構成するように、ブロスを発酵槽から移してブロスを発酵槽に戻すことを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスが、発酵槽及びセパレーター内のブロスの合計の少なくとも95重量%、例えば少なくとも98重量%を構成するように、ブロスを発酵槽から移してブロスを発酵槽に戻すことを含む。
【0034】
好適には、方法は、発酵が開始された後に、発酵槽に基質を加えることを含む。好適には、方法は、発酵の継続期間にわたり、発酵槽に基質を加えることを含む。好適には、方法は、基質を連続的に加えることを含む。好適には、基質は脂質を含む。好適には、基質は、方法により製造される脂質生成物とは異なる脂質を含む。好適には、方法は、発酵が開始された後に、油及び/又は糖を発酵槽に加えることを含む。好適には、方法は、発酵の継続期間にわたり、油及び/又は糖を発酵槽に加えることを含む。好適には、方法は、油及び/又は糖を発酵槽に連続的に加えることを含む。
【0035】
好適には、方法は、植物油、好適にはナタネ油を発酵槽に加えることを含む。好適には、方法は、グルコースを発酵槽に加えることを含む。
【0036】
方法は、油及び/又は糖をブロスに加えることにより、時間と共に発酵槽内のブロスの量を増加させることを含み得る。
【0037】
好適には、方法は、発酵槽がその容量の60%以上、例えばその容量の70%以上である状態で発酵を終了することを含む。方法は、発酵槽がその容量の80%以上、例えば90%以上である状態で発酵を終了することを含み得る。方法は、発酵槽がその容量の95%以上である状態で発酵を終了することを含み得る。
【0038】
好適には、ブロスは、発酵槽からセパレーターに移され、脂質がブロスから分離された後に発酵槽に戻されるため、分離プロセスにより追加の容量が発酵槽内に与えられる。そのため、発酵の開始時により高い割合の発酵槽容量を利用することが可能であり得る。
【0039】
好適には、方法は、発酵槽がその容量の50%以上、例えば60%以上である状態で発酵を開始することを含む。好適には、方法は、発酵槽がその容量の70%以上である状態で発酵を開始することを含む。
【0040】
好適には、方法は、除去されるブロスのXgl-1の濃度で脂質生成物を含むブロスを、発酵槽からセパレーターに移し、戻されるブロスのYgl-1(YはX未満である)の濃度で脂質生成物を含むブロスを、セパレーターから発酵槽に戻すことを含む。
【0041】
好適には、方法は、50~250gl-1の濃度、例えば50~100gl-1の濃度で脂質生成物を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。
【0042】
好適には、方法は、少なくとも5gl-1、例えば少なくとも10gl-1の濃度で脂質生成物を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。好適には、方法は、少なくとも15gl-1、例えば少なくとも20gl-1の濃度で脂質生成物を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。好適には、方法は、少なくとも50gl-1、例えば少なくとも80gl-1の濃度で脂質生成物を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。
【0043】
好適には、方法は、少なくとも5gl-1、例えば少なくとも10gl-1の濃度でソホロ脂質を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。好適には、方法は、少なくとも15gl-1、例えば少なくとも20gl-1の濃度でソホロ脂質を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。好適には、方法は、少なくとも50gl-1、例えば少なくとも80gl-1の濃度でソホロ脂質を含むブロスをセパレーターに移すことを含む。
【0044】
好適には、方法は、80gl-1未満の濃度で脂質生成物を含むブロスを発酵槽に戻すことを含む。方法は、50gl-1未満、例えば20gl-1未満の濃度で脂質生成物を含むブロスを発酵槽に戻すことを含み得る。
【0045】
好適には、方法は、80gl-1未満の濃度でソホロ脂質を含むブロスを発酵槽に戻すことを含む。方法は、50gl-1未満、例えば20gl-1未満の濃度でソホロ脂質を含むブロスを発酵槽に戻すことを含み得る。
【0046】
好適には、方法は、ブロスが、セパレーター内で少なくとも10秒の滞留時間を有するようにさせることを含む。好適には、方法は、ブロスがセパレーター内で少なくとも30秒、例えば少なくとも60秒の滞留時間を有するようにさせることを含む。好適には、方法は、ブロスが、セパレーター内で180秒以下、例えば120秒以下の滞留時間を有するようにさせることを含む。方法は、ブロスからの脂質生成物の分離を可能にするのに必要な最低限の時間で、前記ブロスを発酵槽から除くことを含み得る。
【0047】
好適には、方法は、発酵槽内のブロス中の脂質生成物の濃度を100gl-1未満、例えば80gl-1未満に維持することを含む。
【0048】
好適には、方法は、発酵槽内のブロス中のソホロ脂質の濃度を100gl-1未満、例えば80gl-1未満に維持することを含む。
【0049】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスを激しく撹拌することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスに通気することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスを撹拌することを含む。
【0050】
好適には、方法は、発酵槽内のブロス中の脂質生成物の濃度を80gl-1未満に維持して、要求されるブロスの撹拌が低減するほど充分に低くブロスの粘度を保つことを含む。
【0051】
好適には、方法は、発酵を停止することなく、脂質生成物をブロスの他の構成成分から分離することを含む。好適には、方法は、発酵が発酵槽内で継続していると同時にセパレーター内で脂質生成物をブロスから分離すること及び脂質生成物が分離された後にブロスが発酵され続けることができるように前記ブロスをセパレーターから発酵槽に戻すことを含む。
【0052】
好適には、工程(a)は、工程(b)が開始される前の期間に実施される。好適には、工程(a)は、工程(b)が実施されている間継続される。
【0053】
方法は、セパレーター内のブロスが脂質生成物を含む脂質相とバルクブロス相に分離し始めるまで、工程(a)及び(b)を実施することを含み得る。方法は、脂質生成物を含む脂質相がセパレーター内でバルクブロス相から分離した後に、工程(a)及び(b)を継続することを含み得る。
【0054】
好適には、方法は、発酵槽内でのブロスの複数の相への分離を最低限にするか又は防ぐことを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロス中の脂質相の形成を最低限にするか、又は防ぐことを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロス中の脂質生成物の濃度を制御すること及び発酵槽内のブロスを激しく撹拌して、発酵槽内での脂質相の形成を最低限にするか、又は防ぐことを含む。
【0055】
好適には、発酵槽内のブロス中に脂質相が形成する場合、前記相(発酵槽脂質相)は脂質生成物及び他の構成成分を含む。
【0056】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスを激しく撹拌することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスを激しく撹拌して、脂質をブロスの他の構成成分と混合することを含む。方法は、ブロスを激しく撹拌して、脂質相をブロスの他の構成成分と混合することを含み得る。方法は、発酵槽脂質相をバルクブロス相と発酵槽内で混合して、混合されたブロスを形成することを含み得る。
【0057】
好適には、工程(b)は、脂質製造が工程(a)で開始された後で開始される。好適には、工程(b)は、発酵槽内のブロスが脂質相及びバルクブロス相を形成し始める前に開始される。
【0058】
好適には、脂質相が発酵槽内のブロス中で形成する場合、前記発酵槽脂質相はバルクブロス相と発酵槽内で混合されて、混合されたブロスを形成し、工程(b)は前記混合物を移すことを含む。
【0059】
好適には、工程(b)は、脂質生成物を他のブロス構成成分と共に発酵槽から移すことを含む。
【0060】
好適には、工程(c)は、工程(b)が開始されると始まる。好適には、工程(b)は、工程(c)が実施されている間継続される。好適には、工程(a)は、工程(c)が実施されている間継続される。好適には、工程(d)は、工程(b)が実施されている間実施される。
【0061】
好適には、工程(c)は、発酵槽から移されたブロスを複数の相に分離させることを含む。工程(c)は、ブロスを複数の相に分離させることを含み得る。好適には、工程(c)は、重力分離工程を含む。工程(c)は、好適には、ブロスを、軽い相と高密度な相に沈降させることを含む。
【0062】
好適には、分離は、再循環プロセスとして実施される。好適には、分離は、静的ではなく動的なプロセスとして実施され、そのため、相当な長さの時間の間、細胞を低酸素状態のままにしておくことを回避し得る。
【0063】
好適には、方法は、発酵槽内の相分離を防ぐために発酵槽内のブロスが継続して混合されるのと同時に、セパレーター内のブロス中で脂質相が沈降により形成するまで工程(c)を実施することを含む。好適には、方法は、脂質相がセパレーター内のブロス中に形成した後、工程(c)を継続することを含む。好適には、方法は、脂質相が発酵槽内のブロス中で形成する前に、工程(c)を実施することを含む。
【0064】
好適には、工程(c)は、セパレーター内のブロスの分離を可能にして、脂質生成物を含む脂質相及びブロスの他の構成成分を含むバルクブロスを与えることを含む。
【0065】
好適には、セパレーター内のブロス中の脂質相は、脂質生成物及び他の構成成分を含む。好適には、脂質相は、少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%の濃度で脂質生成物を含む。好適には、脂質相は、少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%の濃度で脂質生成物を含む。好適には、脂質相は脂質及び水を含む。
【0066】
好適には、セパレーター内のブロスの他の構成成分から分離する脂質相は、脂質生成物を含む脂質生成物相である。好適には、脂質生成物相は、脂質生成物及び10重量%未満の他の脂質を含む。
【0067】
好適には、方法は、セパレーター内のブロスを、脂質生成物を含む脂質生成物相とバルクブロス相に分離することを含む。好適には、バルクブロス相は、基質脂質を含む。好適には、脂質生成物相は、脂質生成物及び10重量%未満の基質脂質を含む。好適には、脂質生成物相は糖脂質相である。好適には、脂質生成物相はソホロ脂質相である。
【0068】
好適には、脂質生成物相は、少なくとも80重量%の濃度の脂質生成物及び水を含む。好適には、脂質生成物相は、少なくとも90重量%、例えば95重量%の濃度の水及び脂質生成物を含む。
【0069】
好適には、セパレーター内のバルクブロスは、基質及び/又は細胞を含む。バルクブロスは脂質生成物を含み得る。好適には、バルクブロスは、20重量%以下、例えば15重量%以下の濃度の脂質生成物を含む。好適には、バルクブロスは、10重量%以下、例えば5重量%以下の濃度の脂質生成物を含む。
【0070】
脂質相は、発酵槽内の条件及び/又はブロスの構成成分によって、バルクブロスより軽いことも密なこともある。好適には、方法は、セパレーター脂質相がバルクブロスより高密度であるか低密度であるかにかかわらず、前記セパレーター脂質相がセパレーターから移され得るようになされたセパレーターを使用することを含む。好適には、方法は、脂質相がブロスより高密度であるか低密度であるかにかかわらず、前記脂質相が分離された前記ブロス(バルクブロス)が発酵槽に戻され得るようになされたセパレーターを使用することを含む。
【0071】
好適には、方法は、工程(b)が開始されるとブロスをセパレーターから発酵槽に戻すことを含む。そのため、方法は、脂質相の分離を可能にするのに充分な時間工程(c)が進行するまで、脂質相が分離されなかったブロスを発酵槽に戻すことを含み得る。
【0072】
好適には、工程(d)は、工程(c)が開始されるのと実質的に同時に開始される。好適には、工程(d)は、工程(b)が開始されるのと実質的に同時に開始される。好適には、工程(c)は、工程(d)が実施されている間継続される。好適には、工程(b)は、工程(d)が実施されている間継続される。好適には、工程(a)は、工程(d)が実施されている間継続される。
【0073】
好適には、工程(e)は、脂質相が工程(c)でブロスの他の構成成分から最初に分離したある期間の後に、開始される。好適には、工程(c)は、工程(e)が実施されている間継続される。好適には、工程(b)は、工程(e)が実施されている間継続される。好適には、工程(a)は、工程(e)が実施されている間継続される。
【0074】
工程(d)は、工程(e)に先だって開始され得る。好適には、工程(d)は、工程(e)が実施されている間継続される。
【0075】
好適には、方法は、セパレーター内でブロスから重力分離により分離され得る脂質相を与える製造条件を維持することを含む。好適には、方法は、定着カラム(settling column)を含むセパレーターを使用して分離を実施することを含む。
【0076】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスのpHをpH2~pH5に、例えばpH2.5~pH4.5に維持することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスのpHを、pH3.0~pH4.0に、例えばpH3.5に維持することを含む。
【0077】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスの溶存酸素濃度を、20%以上、例えば25%以上に維持することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスの溶存酸素濃度を、20%~40%、例えば25%~35%に維持することを含む。好適には、方法は、発酵槽内のブロスの溶存酸素濃度を30%に維持することを含む。
【0078】
好適には、方法は、糖、好適にはグルコースを供給することを含む。好適には、方法は、糖、好適にはグルコースを、少なくとも0.5gl-1-1の速度で供給することを含む。方法は、糖、好適にはグルコースを、1.0gl-1-1~2.0gl-1-1、例えば1.5gl-1”1の速度で供給することを含み得る。
【0079】
方法は、植物油、好適にはナタネ油を供給することを含み得る。或いは、又はさらに、方法は、植物油エステル又はオレイン酸を供給することを含み得る。好適には、方法は、植物油、好適にはナタネ油を、少なくとも0.5gl-1-1の速度で供給することを含む。方法は、植物油、好適にはナタネ油を、1.2gl-1-1~2.2gl-1-1、例えば1.7gl-1-1の速度で供給することを含み得る。
【0080】
好適には、方法は、少なくとも300gl-1のソホロ脂質、例えば少なくとも400gl-1のソホロ脂質を含むソホロ脂質相を分離することを含む。好適には、方法は、少なくとも500gl-1のソホロ脂質、例えば550gl-1のソホロ脂質を含むソホロ脂質相を分離することを含む。
【0081】
好適には、方法は、ブロス中の細胞の濃度の10%以下の濃度で細胞を含むソホロ脂質相を分離することを含む。好適には、方法は、1gl-1以下の細胞を含むソホロ脂質相を分離することを含む。好適には、方法は、0.1gl-1以下の細胞を含むソホロ脂質相を分離することを含む。好適には、方法は、実質的に全く細胞を含まないソホロ脂質相を分離することを含む。
【0082】
好適には、方法は、80gl-1未満のソホロ脂質を含むブロスを発酵槽に戻すことを含む。方法は、50gl-1未満のソホロ脂質、例えば30gl-1未満のソホロ脂質を含むブロスを発酵槽に戻すことを含み得る。
【0083】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスが、100gl-1未満のソホロ脂質、例えば80gl-1未満のソホロ脂質のレベルで維持されるように、セパレーター内でソホロ脂質を除去することを含む。方法は、発酵槽内のブロスが、50gl-1未満のソホロ脂質のレベルで維持されるように、セパレーター内でソホロ脂質を除去することを含み得る。
【0084】
好適には、方法は、発酵槽内のブロスの粘度が、ソホロ脂質相が除去されない場合よりも低い粘度で維持されるように、粘性のあるソホロ脂質相を除去することを含む。好適には、方法は、所望の酸素レベルを維持するために要求されるスターラー速度がそうでない場合よりも低くなるように、粘性のあるソホロ脂質相を除去することを含む。
【0085】
好適には、方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、発酵槽の容積要件を減少させることを含む。好適には、方法は、発酵槽容積要件を、5%以上、例えば10%以上減少させることを含む。好適には、方法は、発酵槽容積要件を、20%以上、例えば30%以上減少させることを含む。方法は、発酵槽容積要件を、最大40%減少させることを含み得る。
【0086】
方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、発酵の生産性を増加させることを含み得る。方法は、発酵槽の利用可能な容積を増加させることにより、発酵の生産性を増加させることを含み得る。方法は、生産性を、5%以上、例えば10%以上増加させることを含み得る。方法は、生産性を、20%以上、例えば30%以上増加させることを含み得る。
【0087】
方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、発酵槽内のブロスの改善された混合を容易にすることを含み得る。
【0088】
方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、発酵槽内のブロス中の溶存酸素の均一な分布を容易にすることを含み得る。
【0089】
方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、撹拌要件を減少させ、そのためエネルギーコストを減少させることを含み得る。方法は、撹拌のためのエネルギー要件を、20%以上、例えば30%以上、例えば40%減少させることを含み得る。
【0090】
方法は、ソホロ脂質相を除去することにより、そうでない場合よりも長い期間の間発酵の実施を可能にすることを含み得る。
【0091】
好適には、方法は、重力セパレーターを使用することを含む。好適には、方法は、定着カラムを含むセパレーターを使用することを含む。
【0092】
好適には、方法は、本発明の第2の態様によるセパレーターを使用することを含む。
【0093】
好適には、方法は、本発明の第3の態様による装置を使用することを含む。
【0094】
本発明の第2の態様によると、脂質を含むブロスの他の構成成分から脂質相を分離するようになされているセパレーターであって、
(I)脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分から分離するように、使用時に、前記ブロスがある期間滞留することが可能である分離チャンバー;
(II)使用時に、脂質生成物を含むブロスを分離チャンバー内に移すための分離チャンバーへのブロス入口;並びに
(III)(i)使用時に、脂質生成物が分離されたブロスを分離チャンバーから移すため;及び(ii)使用時に、脂質生成物を分離チャンバーから移すため
の分離チャンバーからの出口
を含むセパレーターが提供される。
【0095】
好適には、セパレーターは、2つの出口(III)を含む。好適には、セパレーターは3つの出口(III)を含む。好適には、セパレーターは、3つの出口(III)を含み、少なくとも1つの出口(III)が以下の通り選択的に使用できるように構成されている:
(i)脂質生成物が分離されたブロスを分離チャンバーから移すため;
(ii)脂質生成物を分離チャンバーから移すため;及び
(iii)使用されないか、又は圧力放出のために使用される。
【0096】
好適には、セパレーターは、第1の出口(IIIa)及び第2の出口(IIIb)を含む。好適には、セパレーターは、第1の出口(IIIa)、第2の出口(IIIb)及び第3の出口(IIIc)を含む。好適には、セパレーターは、分離チャンバーからの3つの出口を含み、使用時に、1つの出口が分離の間に選択的に使用されないように構成されている。
【0097】
好適には、セパレーターは、以下の通り選択的に使用されるように構成されている出口(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc)を含む:
1.(IIIa)使用されないか、又は圧力放出のために使用される;
(IIIb)脂質生成物を分離チャンバーから移すため;
(IIIc)脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから移すため;又は
2.(IIIa)脂質生成物を分離チャンバーから移すため;
(IIIb)脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから移すため;
(IIIc)使用されないか、又は圧力放出のために使用される。
【0098】
好適には、セパレーターは、以下の通り選択的に使用されるように構成されている出口(IIIa)、(IIIb)、及び(IIIc)を含む:
1.(IIIa)圧力放出のために使用される;
(IIIb)脂質生成物を分離チャンバーから移すため;
(IIIc)脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから移すため;又は
2.(IIIa)脂質生成物を分離チャンバーから移すため;
(IIIb)脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから移すため;
(IIIc)使用されない。
【0099】
好適には、セパレーターは、脂質生成物出口として使用できる2つの出口を含み、使用時に、前記出口のうち1つが脂質生成物を分離チャンバーから移すために選択的に使用されるようになされている。
【0100】
好適には、セパレーターは、ブロス出口として使用できる2つの出口を含み、使用時に、前記出口のうち1つがブロスを分離チャンバーから移すために選択的に使用されるようになされている。
【0101】
好適には、セパレーターは、分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いて位置している脂質生成物出口として使用できる1つの出口を含む。好適には、セパレーターは、分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いて位置している脂質生成物出口として使用できる1つの出口を含む。
【0102】
好適には、脂質を含むブロスの他の構成成分から脂質相を分離するようになされているセパレーターであって、
(I)脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分から分離するように、使用時に、前記ブロスがある期間滞留することが可能である分離チャンバー;
(II)脂質生成物を含むブロスを、使用時に分離チャンバーに移すためのブロス入口;
(IIIa)分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いて位置している第1の出口;
(IIIb)分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いて位置している第2の出口;及び
(IIIc)分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いて位置している第3の出口
を含むセパレーターが提供される。
【0103】
好適には、前記第1及び第2の出口(IIIa)、(IIIb)は、使用時に、脂質生成物を含む脂質相の密度に応じて、脂質生成物を分離チャンバーから移すために選択的に使用できる。
【0104】
好適には、前記第2及び第3の出口(IIIb)、(IIIc)は、使用時に、脂質相の密度に応じて、脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから移すために選択的に使用できる。
【0105】
好適には、分離チャンバー(I)は細長いチャンバーを含む。
【0106】
好適には、分離チャンバーは定着カラムを含む。
【0107】
好適には、分離チャンバーは、使用時に、チャンバーの縦軸が、水平に対して10度~60度、例えば水平に対して20度~40度であるようになされている。好適には、分離チャンバーは、使用時に、チャンバーの縦軸が、水平に対して25度~30度、例えば水平に対して30度であるようになされている。
【0108】
好適には、分離チャンバーは、円柱状断面を含む。好適には、分離チャンバーは、その長さの少なくとも90%で円柱状断面を含む。
【0109】
分離チャンバー(I)は、その直径の少なくとも3倍、例えば少なくとも4倍の長さを有し得る。分離チャンバーは、その直径の少なくとも5倍、例えば少なくとも6倍の長さを有し得る。
【0110】
好適には、分離チャンバーは、円錐台状(frustoconical)の第1の、使用時に上方である末端を有する。好適には、分離チャンバーは、その第2の、使用時に下方である末端に平らな底部を有する。
【0111】
好適には、ブロス入口(II)及び出口(IIIb)、(IIIc)は、分離チャンバーの相対する末端に、又は分離チャンバーの相対する末端に向いて位置している。好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの第1の、使用時に上方である末端に、又はそれに向いて位置しており、出口(IIIb)、(IIIc)は、分離チャンバーの第2の、使用時に下方である末端に、又はそれに向いて位置している。
【0112】
好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスが、ブロス入口(II)を通ってチャンバーに入ってから出口(IIIb)、(IIIc)を通って出る前に、分離チャンバー内で少なくとも30秒の滞留時間を有するように構成されている。好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスがその中で少なくとも60秒の滞留時間を有するように構成されている。好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスがその中で少なくとも90秒の滞留時間を有するように構成されている。
【0113】
好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスが、ブロス入口(II)を通ってチャンバーに入ってから出口(IIIb)、(IIIc)を通って出る前に、分離チャンバー内で180秒以下の滞留時間を有するように構成されている。好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスがその中で150秒以下の滞留時間を有するように構成されている。好適には、セパレーターは、使用時に、ブロスがその中で120秒以下の滞留時間を有するように構成されている。
【0114】
好適には、ブロス入口(II)は、脂質生成物を含むブロスを、発酵槽からセパレーターチャンバーに移すように構成されている。ブロス入口(II)は弁を含み得る。ブロス入口(II)は、発酵槽に接続するための導管を含み得る。ブロス入口(II)は、ブロスを発酵槽からセパレーターチャンバー内に送るためのポンプを含み得る。
【0115】
好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの、使用時に上方である末端で、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0116】
好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの、使用時に上方である端壁(end wall)に、好適には前記端壁の中央領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、ブロス入口(II)は、前記分離チャンバーの縦軸上にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0117】
好適には、第1の出口(IIIa)は、脂質相がブロスの他の構成成分より低い密度を有し、分離チャンバーの上部に向かって浮く場合、使用時に、脂質生成物を含む前記脂質相を分離チャンバーから移すように構成されている。
【0118】
第1の出口(IIIa)は弁を含み得る。第1の出口(IIIa)は、収集容器又は処理装置に接続するための導管を含み得る。第1の出口(IIIa)は、脂質生成物を分離チャンバーから送るためのポンプを含み得る。
【0119】
好適には、第1の出口(IIIa)は、分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIa)は、分離チャンバーの縦方向の長さの、使用時に上方である10%に、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0120】
好適には、第1の出口(IIIa)は、分離チャンバーの側壁に、好適にはチャンバーの使用時に上方である末端に向いた前記側壁の領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIa)は、分離チャンバーの縦軸から中心が外れている、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIa)は、使用時に分離チャンバーの縦軸より上にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0121】
第2の出口(IIIb)は、脂質相がブロスの他の構成成分より高い密度を有し、分離チャンバーの底に向かって沈む場合に、使用時に、脂質生成物を含む前記脂質相を分離チャンバーから移すように構成され得る。
【0122】
第2の出口(IIIb)は、脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分より低い密度を有し、分離チャンバーの上部に向かって浮く場合に、使用時に、前記脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから発酵槽に移すように構成され得る。
【0123】
第2の出口(IIIb)弁を含み得る。第2の出口(IIIb)は、収集容器又は処理装置又は発酵槽に接続するための導管を含み得る。第2の出口(IIIb)は、脂質生成物又は脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから送るためのポンプを含み得る。
【0124】
好適には、第2の出口(IIIb)は、分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いた、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIb)は、分離チャンバーの縦方向の長さの、使用時に下方である10%に、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0125】
好適には、第2の出口(IIIb)は、分離チャンバーの側壁に、好適には分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いた前記側壁の領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIb)は、分離チャンバーの縦軸から中心が外れている、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIb)は、分離チャンバーの縦軸より下にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0126】
第3の出口(IIIc)は、使用時に、脂質が除去されたブロスをセパレーターチャンバーから発酵槽に移すように構成され得る。
【0127】
第3の出口(IIIc)は、脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分より高い密度を有し、分離チャンバーの底に向かって沈む場合に、使用時に、前記脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから発酵槽に移すように構成され得る。
【0128】
第3の出口(IIIc)は弁を含み得る。第3の出口(IIIc)は、発酵槽に接続するための導管を含み得る。第3の出口(IIIc)は、脂質生成物が除去されたブロスをセパレーターから発酵槽に送るためのポンプを含み得る。
【0129】
好適には、第3の出口(IIIc)は、分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いた、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第3の出口(IIIc)は、分離チャンバーの縦方向の長さの、使用時に下方である10%に、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0130】
好適には、第3の出口(IIIc)は、分離チャンバーの側壁に、好適には分離チャンバーの、使用時に下方である末端に向いた前記側壁の領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第3の出口(IIIc)は、分離チャンバーの縦軸から中心が外れている、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第3の出口(IIIc)は、使用時に分離チャンバーの縦軸より上にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0131】
好適には、ブロス入口(II)及び第3の出口(III)は、同じ発酵槽と流体連通にあるように構成されている。
【0132】
好適には、セパレーターは、ブロスから、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、糖脂質、及び水に不溶性又は両親媒性であり、全般的に非極性溶媒に可溶性である生物により産生された分子を含む他の化合物からなる群から選択される脂質を分離するようになされている。
【0133】
好適には、セパレーターは、ブロスから、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を分離するようになされている。
【0134】
好適には、セパレーターは、ブロスから、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を分離するようになされている。
【0135】
好適には、セパレーターは、ブロスからテルペノイドを分離するためのセパレーターを含む。
【0136】
好適には、セパレーターは、ブロスから糖脂質を分離するためのセパレーターを含む。好適には、セパレーターは、ブロスからソホロ脂質を分離するためのセパレーターを含む。
【0137】
好適には、セパレーターは、第1の態様による方法における使用のために構成されている。
【0138】
好適には、セパレーターは2つの出口(III)を含む。好適には、セパレーターは、2つの出口(III)を含み、各出口(III)が以下の通り選択的に使用できるように構成されている:
(i)脂質生成物が分離されたブロスを分離チャンバーから移すため;及び
(ii)脂質生成物を分離チャンバーから移すため。
【0139】
好適には、脂質を含むブロスの他の構成成分から脂質相を分離するようになされているセパレーターであって、
(I)脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分から分離するように、使用時に、前記ブロスが、ある期間滞留することが可能である分離チャンバー;
(II)使用時に、分離チャンバーの第1の末端に向いて位置している、脂質生成物を含むブロスを分離チャンバーに移すためのブロス入口;
(IIIA)分離チャンバーの第2の末端に向いて位置している第1の出口;及び
(IIIB)分離チャンバーの第2の末端に向いて位置している第2の出口
を含むセパレーターが提供される。
【0140】
好適には、ブロス入口(II)及び出口(IIIA)、(IIIB)は、分離チャンバーの相対する末端に、又は分離チャンバーの相対する末端に向いて位置している。好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの第1の、使用時に下方である末端に、又はそれに向いて位置しており、出口(IIIA)、(IIIB)は、分離チャンバーの第2の、使用時に上方である末端に、又はそれに向いて位置している。
【0141】
好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの、使用時に下方である末端で、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの、使用時に下方である端壁に、好適には前記端壁の中央領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、ブロス入口(II)は、分離チャンバーの縦軸にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0142】
第1の出口(IIIA)は、脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分より低い密度を有し、分離チャンバーの上部に向かって浮く場合に、使用時に、前記脂質生成物が除去されたブロスを分離チャンバーから発酵槽に移すように構成され得る。
【0143】
好適には、第1の出口(IIIA)は、分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIA)は、分離チャンバーの縦方向の長さの、使用時に上方である10%に、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0144】
好適には、第1の出口(IIIA)は、分離チャンバーの側壁に、好適には分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた前記側壁の領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIA)は、分離チャンバーの縦軸から中心が外れている、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第1の出口(IIIA)は、使用時に、分離チャンバーの縦軸より下にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0145】
第2の出口(IIIB)は、脂質生成物を含む脂質相がブロスの他の構成成分より低い密度を有し、分離チャンバーの上部に向かって浮く場合に、使用時に、前記脂質生成物を収集のために移すように構成され得る。
【0146】
好適には、第2の出口(IIIB)は、分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIB)は、分離チャンバーの縦方向の長さの、使用時に上方である10%に、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0147】
好適には、第2の出口(IIIB)は、分離チャンバーの側壁に、好適には分離チャンバーの、使用時に上方である末端に向いた前記側壁の領域にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIB)は、分離チャンバーの縦軸から中心が外れている、前記分離チャンバーへの開口部を含む。好適には、第2の出口(IIIB)は、使用時に分離チャンバーの縦軸より上にある、前記分離チャンバーへの開口部を含む。
【0148】
本発明の第3の態様によると、発酵チャンバーを有する発酵槽及び分離チャンバーを有するセパレーターを含む脂質を製造する装置であって、使用時に、脂質生成物を含むブロスを発酵チャンバーから分離チャンバーに移すことができ、脂質生成物が分離されたブロスを分離チャンバーから発酵チャンバーに移すことができるように、前記発酵チャンバー及び分離チャンバーが流体連通にある装置が提供される。
【0149】
好適には、セパレーターは重力セパレーターを含む。好適には、装置は、重力セパレーターを唯一のセパレーターとして含む。
【0150】
好適には、装置は、第2の態様によるセパレーターを含む。好適には、装置は、第2の態様によるセパレーターを唯一のセパレーターとして含む。
【0151】
好適には、発酵槽はアジテーターを含む。好適には、発酵槽はスターラーを含む。
【0152】
好適には、発酵槽はスパージャーを含む。
【0153】
好適には、脂質をブロス中で発酵により製造できる発酵チャンバーを有する発酵槽及び分離チャンバーを有するセパレーターを含む脂質を製造する装置であって、前記発酵チャンバーが、分離チャンバーの入口と流体連通にある出口及び分離チャンバーの出口と流体連通にある入口を含んでいる装置であって、使用時に分離チャンバーが脂質生成物を含むブロスを発酵槽から受け入れ、脂質生成物を含む脂質相をブロスから分離し、脂質生成物が除去されたブロスを発酵チャンバーに戻すようになされている装置が提供される。
【0154】
好適には、発酵槽は、発酵中に、基質を発酵槽内のブロス内に供給できる供給口をさらに含む。好適には、発酵槽は、糖、好適にはグルコース及び植物油、好適にはナタネ油の供給口を含む。
【0155】
好適には、セパレーターは、脂質生成物をセパレーターから移すための出口であって、収集容器と流体連通にあり得る出口をさらに含む。
【0156】
好適には、装置は、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、糖脂質、及び水に不溶性又は両親媒性であり、全般的に非極性溶媒に可溶性である生物により産生された分子を含む他の化合物からなる群から選択される脂質を製造するようになされている。
【0157】
好適には、装置は、炭化水素、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を製造するようになされている。
【0158】
好適には、装置は、テルペノイド、脂、油、脂肪酸、及び糖脂質からなる群から選択される脂質を製造するようになされている。
【0159】
好適には、装置は、テルペノイドを製造する装置を含む。
【0160】
好適には、装置は、糖脂質を製造する装置を含む。好適には、装置は、ソホロ脂質を製造する装置を含む。
【0161】
好適には、装置は、第1の態様による方法に使用するように構成されている。
【0162】
本発明は、ここで、以下の添付図面を参照してほんの一例として説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0163】
図1】セパレーターを示す;
図2】発酵槽及びセパレーターを含む装置を示す;
図3】別な構成にある図2の装置を示す;
図4】発酵のための基質の供給を示すグラフである;
図5】発酵のための基質の供給を示すグラフである;
図6】スターラー速度及び溶存酸素を示すグラフである;
図7】セパレーターの別な実施形態を示す;
図8】発酵の濃度及び脂質製造を示すグラフである;
図9図8の発酵のための基質供給を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0164】
例の脂質産生は、ソホロ脂質(脂質生成物)を含むブロスを製造し、ソホロ脂質相をブロスから分離する発酵槽及びセパレーターを使用して実施した(実施例1及び2)。比較のため、ソホロ脂質の製造を、セパレーターを使用せずに実施した(比較例1C)。さらなる例の脂質製造を、発酵槽及び別のセパレーターを使用して実施した(実施例3)。
【0165】
装置
実施例1及び2並びに比較例1Cのそれぞれで、使用した発酵槽は、2Iの最大作業容積、H:Dが2、初期作業容積が1IであるElectrolab Fermac 320発酵システム(Electrolab、UK)であった。
【0166】
実施例1及び2では、使用したセパレーターは、図1に示される敷地内に建築された(in house built)定着カラムであった。
【0167】
セパレーター100は、分離チャンバー110を含む。セパレーター100の第1の、使用時に上方である末端120で、分離チャンバー110は、円錐台状断面111を有する。分離チャンバー110は、50mmの直径及び150mmの長さを有する円柱状断面112をさらに含む。円柱状断面の底部113は、セパレーターの、使用時に下方である末端130を形成している。
【0168】
セパレーター100はブロス入口140を含み、セパレーター100の第1の末端120で分離チャンバー110の縦軸A-A上に位置する、分離チャンバー110への開口部を有する。
【0169】
セパレーターは、第1の出口150、第2の出口160、及び第3の出口170を含む。
【0170】
第1の出口150は、セパレーター100の第1の末端120に向いて位置しており、分離チャンバー110の側壁114を通って分離チャンバー110への開口部を有する。使用時に、セパレーター100は、第1の出口150が分離チャンバー110の縦軸A-Aより上にあるように向けられる。セパレーター100内でブロスから分離される脂質相の密度に応じて、使用時に、第1の出口150は、脂質生成物をセパレーター100から移すために使用でき、或いは圧力放出のためにも使用できる。
【0171】
第2の出口160は、セパレーター100の第2の末端130に向いて位置しており、分離チャンバー110の側壁114を通って分離チャンバー110への開口部を有する。使用時に、セパレーター100は、第2の出口160が分離チャンバー110の縦軸A-Aより下であるように向けられる。セパレーター100内でブロスから分離される脂質相の密度に応じて、使用時に、第2の出口160は、脂質生成物をセパレーター100から移すために使用でき、或いは脂質生成物が分離されたブロスをセパレーター100から移すためにも使用できる。
【0172】
第3の出口170は、セパレーター100の第2の末端130に向いて位置しており、分離チャンバー110の側壁114を通って分離チャンバー110への開口部を有する。使用時に、セパレーター100は、第2の出口170が分離チャンバー110の縦軸A-Aより上であるように向けられる。セパレーター100内でブロスから分離される脂質相の密度に応じて、使用時に、第3の出口170は、脂質生成物が分離されたブロスをセパレーター100から移すために使用でき、或いは余分にもなり得る。
【0173】
第3の出口170は、第2の出口160から180度の円筒の円周上で、分離チャンバー110の端壁113から同じ距離に位置する。第3の出口170は、第1の出口150から0度の円筒の円周上で、円柱状断面112の相対する末端に位置する。
【0174】
分離チャンバー110は、水平に対する分離チャンバー110の縦軸A-Aの角度を変えることができるスタンド(図示せず)に結合している。実施例1及び2では、利用されている角度は水平に対して30度であった。
【0175】
実施例1で利用されている通り構成された発酵槽200及びセパレーター100を含む装置10が図2に示されている。セパレーターは、ブロスより密度の低いソホロ脂質相(脂質生成物相)を分離するように構成された。
【0176】
セパレーター100は、図1によるセパレーターを含む。
【0177】
装置10は、セパレーター100が、脂質生成物を含むブロス300を発酵槽から受けいれ、ブロス300より密度が高い脂質生成物相310を前記ブロスから分離して、脂質生成物が分離されたブロス320を与えるように構成されている。装置は、脂質生成物相310がポンプ(図示せず)により移されて容器400に収集され、脂質生成物が分離されたブロス320が発酵槽200に戻されるようにさらに構成されている。
【0178】
セパレーター100は、分離チャンバー110の縦軸A-Aが水平に対して30度であるように傾けられている。第1の出口150は脂質生成物相310の出口として機能し、第2の出口160は、脂質生成物が分離されたブロス320の出口として機能し、第3の出口170は、ストッパー180で封じられて使用されない。
【0179】
発酵槽200は、ブロス300を収容する発酵チャンバー210を含む。発酵槽200は、ブロスを撹拌するためのスターラー220も含む。発酵槽は、ブロスに通気するためのエアスパージャー(図示せず)も含む。発酵槽200は、ポンプ(図示せず)によりセパレーターのブロス入口140と流体連通にあるブロス出口230をさらに含む。さらに、発酵槽は、セパレーター100の第2の出口160とポンプ(図示せず)により流体連通にあるブロス入口240を含む。
【0180】
実施例2で利用される通り構成された発酵槽200及びセパレーター100を含む装置10aが図3に示されている。セパレーターは、ブロスより密度の高いソホロ脂質相(脂質生成物相)を分離するように構成されていた。
【0181】
装置10aは、装置10と実質的に同じであり、同様な部分はそれに応じて番号づけられている。装置10aと装置10の構成の間の主な違いは、出口150、160、170の用途及びセパレーター100と発酵槽200との間の流体連通にある。
【0182】
セパレーター100は、図1によるセパレーターを含む。
【0183】
装置10aは、セパレーター100が脂質生成物を含むブロス300を発酵槽から受けいれ、ブロス300aより密度の低い脂質生成物相310aを前記ブロスから分離して、脂質生成物が分離されたブロス320aを与えるように構成されている。装置は、脂質生成物相310aがポンプ(図示せず)により移されて容器400に収集され、脂質生成物が分離されたブロス320aが発酵槽200に戻されるようにさらに構成されている。
【0184】
セパレーター100は、分離チャンバー110の縦軸A-Aが水平に対して30度であるように傾けられている。第1の出口150は、圧力放出口として使用され、エアフィルター190が備えられており、第2の出口160は、脂質生成物相310aの出口として機能し、第3の出口170は、脂質生成物が分離されたブロス320aの出口として機能する。
【0185】
発酵槽200は、ブロス300aを収容するための発酵チャンバー210を含む。発酵槽200は、ブロスを撹拌するためのスターラー220も含む。発酵槽は、ブロスに通気するためのエアスパージャー(図示せず)も含む。発酵槽200は、ポンプ(図示せず)によりセパレーターのブロス入口140と流体連通にあるブロス出口230をさらに含む。さらに、発酵槽は、ポンプ(図示せず)によりセパレーター100の第3の出口170と流体連通にあるブロス入口240を含む。
【実施例
【0186】
発酵
実施例1及び2並びに比較例1Cのそれぞれで、ソホロ脂質製造は、C.ボンビコラ(C.bombicola)ATCC 22214を使用する流加発酵であった。
【0187】
発酵に供給した基質はグルコース及びナタネ油であった。基質の供給速度は、実施例1ではセパレーターの上部に分離するソホロ脂質相を与え、実施例2ではセパレーターの底部に分離するソホロ脂質相を与えるために、実施例1と実施例2とで異なっていた。基質は、比較例1Cでは実施例1と実質的に同じ速度で供給した。図4は、実施例1及び比較例1Cの基質の供給を示し、図5は実施例2の基質の供給を示す。
【0188】
実施例1及び2並びに比較例1Cのそれぞれでは、発酵、前培養、及び寒天プレートのための増殖培地は、6gの酵母エキス及び5gのペプトンを含んでいた。全発酵、前培養、及び寒天プレート中のグルコースの初期濃度は、100gTであり、初期ナタネ油濃度は、発酵槽内では50gl-1であり、前培養中では100gl-1、寒天プレート中では0であった。
【0189】
C.ボンビコラ(C.bombicola)を、最初に、極低温の倉庫(-80℃)から寒天プレートに移し、25℃で48時間インキュベートした。次いで、これらのプレートから単一コロニーを使用して、250mlの振とうフラスコ中で50mlの培地に植え付け、それを25℃及び200rpmで30時間インキュベートした。この接種物を、600nmでの光学濃度20まで新たな培地で希釈し、発酵槽に接種するために使用した。
【0190】
発酵を25℃で実施し、スターラー速度を変えることにより溶存酸素を30%に制御すると同時に、1l分-1の一定の通気速度を維持した。発酵槽pHは、3M水酸化ナトリウムの添加により3.5の値に制御した。
【0191】
実施例1及び2では、分離は、発酵の間の複数の機会に分離を運転して、これらの運転の機会の間に休止を挟んで、製造速度に応じて実施した。分離を実施する場合、ソホロ脂質に富んだ発酵ブロスを、蠕動ポンプを使用して、1mmの肉厚で8mmの外径のケイ素配管で、発酵槽から、セパレーターに通し、発酵槽に戻して送り、連続的に循環させた。セパレーターに出入りするブロスの流量は、およそ1ml秒-1に制御して、76秒の分離チャンバー内の滞留時間を与えた。
【0192】
分離チャンバー内で、ソホロ脂質相は、相対密度の差によりブロスから分離した。実施例1では、ソホロ脂質相は分離チャンバーの上部に向かって分離し、実施例2では、底部に向かって分離した。
【0193】
実施例1及び実施例2の両方で、分離運転の間、最初にブロスを連続的に循環させ、ソホロ脂質相は分離チャンバー内に蓄積した。分離チャンバー内に蓄積したソホロ脂質相が沈降チャンバーの高さの50%に到達するのは、典型的にはおよそ3分の運転の後に起こったが、そのようになると、出口ポンプを始動して、ソホロ脂質生成物相を、沈降容器内のソホロ脂質相の蓄積又は減少に応じて、0.5~2ml分-1に制御された速度で連続的に除去した。
【0194】
分離は、実施例1及び2の両方で、周期的に運転し、利用可能なソホロ脂質相の大部分を分離して、充分なソホロ脂質相が蓄積すると再び運転した。
【0195】
説明されている実施例において、セパレーターは、利用されている規模での連続運転用に設計されており、分離は、製造速度の30~150倍の速度で起こる。この理由のため、セパレーターを間欠的に運転した。より大規模な装置(図示せず)を利用すると、ブロスを、発酵槽からセパレーターに通し、再び発酵槽に連続的に循環させることができる。
【0196】
実施例1では、分離を、111、184、及び261時間で実施し、実施例2では、71.5、281、355、及び376時間に実施して、比較例1Cではソホロ脂質相の分離を実施しなかった。
【0197】
分析技法
全ての分析で、5mlのブロスを、各試料時点で発酵槽から除いた。試料を、Sigma 6-16S遠心セパレーター(Sigma laboratory centrifuges、Germany)を使用して5000rpmで5分間遠心分離し、上清中のグルコースを、TrueResult(登録商標)血糖モニター(ニプロ株式会社、日本)を使用して定量化した。
【0198】
残存する油及びソホロ脂質の濃度を、最初にヘキサン抽出を利用して残存する油を分離し、3回の酢酸エチル抽出を利用してソホロ脂質を分離して、重量測定法により測定した。抽出物を、秤量皿中で、周囲温度で30時間、一定重量まで乾燥させた。
【0199】
細胞成長を、乾燥菌体重量及び光学濃度測定の両方で決定した。溶媒抽出後に、8mlの蒸留水を、遠心分離管中の試料の残りに加え、次いで、それを8000rpmで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、生じた細胞ペレットを8mlの蒸留水に再懸濁させた。この細胞懸濁液を乾燥トレイに移し、それを乾燥オーブン中で、90℃で一定重量まで乾燥させた。光学濃度は、接種物を希釈する場合に乾燥菌体重量の代理として、600nmの波長で利用した。
【0200】
製造されたソホロ脂質の構造を、ネガティブイオン化エレクトロスプレーイオン化を利用して、Agilent 6520 QTOF質量分析計(Agilent、United States)を使用して決定した。試料は、ソホロ脂質抽出物を酢酸エチルに溶解させ、0.2μmフィルターを使用して濾過することにより調製した。フローインジェクション分析を、0.3ml分-1で、50%アセトニトリル、0.1%ギ酸、49.9%水で、2μLの注入体積で用いた。
【0201】
結果
実施例1及び2で達成された分離パラメーターを表1に示し、実施例1及び2並びに比較例1Cの重要な数値指標(key metrics)を表2に示す。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
表1からわかる通り、ソホロ脂質相が発酵ブロスより密度が低くても(実施例1)、発酵ブロスより密度が高くても(実施例2)、発酵の間にソホロ脂質の大部分を発酵ブロスから回収する能力が示された。
【0205】
分離を利用する実施例1におけるソホロ脂質回収は、最大発酵槽容積が低いため分離をしない比較例1Cにより達成されたより高い生産性をもたらした。収集されたソホロ脂質をブロスに戻して加える実施例1の効果を示す図6に示される通り、分離の利用は、所望の溶存酸素濃度を維持するためのより低い撹拌要件も与える。
【0206】
実施例1及び実施例2の両方で、ソホロ脂質の大部分は発酵ブロスから除かれた。ソホロ脂質回収は、ブロスの底部からの分離(実施例2)よりも、ブロスの表面からの分離で(実施例1)、57%に対して86%となり著しく高かったが、これは、主として、実施例2の最終分離の分離時間が短いためであり得る。
【0207】
実験室規模で実施された実施例1及び2において、定着カラムの底部/上部でのソホロ脂質の層があまりにも浅くなると分離を停止して、培地と細胞相が生成物流に同伴されるのを防がなくてはならなかった。発酵槽に戻すべき最低ソホロ脂質相深さは発酵槽容積にかかわらず類似だろうことから、より大きな規模では回収率を改善することができそうである。
【0208】
実施例2では、細胞も油もほとんど全く分離により除去されなかった。実施例1では、細胞除去はごくわずかであった。実施例1では68gの油が除去されたが、油供給速度のより良好な制御により、それを大幅に減らすか又は無くして、発酵槽内の低い油濃度を維持することが可能であり得る。
【0209】
濃縮は、異なる時点での抽出の間で、3.73~6.07で著しく変動した。これは、主として分離前に発酵槽内に存在するソホロ脂質濃度によるものと考えられるが、その理由は、抽出物中の濃度はおよそ550gl-1でほとんど変動がなかったためである。発酵槽容積を増加させると、システムがより低い初期ソホロ脂質濃度で運転でき、改善された濃縮を与えそうである。
【0210】
製造された全ソホロ脂質は、発酵槽内のソホロ脂質の質量と発酵槽から抽出されたソホロ脂質の質量を加えることにより計算した。基質供給は、容積が、発酵の多くの間に1L出発容積より高かったことを意味した。
【0211】
実施例1では、最大容積での生産量は0.69gl-1-1であり、比較例1Cでは0.62gl-1-1であり、分離を利用する場合の11%の効果的な生産量の増加を示している。これは、分離がない場合の1720mlよりも分離がある場合の1540mlという、分離が利用された場合に到達した最大容積の減少によるものであった。実施例2での0.57gl-1-1という対応する生産量は、発酵の間の供給速度の違いのために直接比較できるものではない。
【0212】
発酵の早くから連続モードで分離を利用すると、発酵容積を初期容積のおよそ1.3倍に制御することが可能になりそうである(制御なしでは、280時間後に初期容積のおよそ1.7倍に増加し得る)。これは、30%超の有効な生産性増加になり得る。
【0213】
ソホロ脂質は、実施例2において最初に71.5時間で抽出されたが、このときソホロ脂質相は2分以内に試料瓶に沈降することが観察できた。次いで、沈降は、パルスグルコース供給により起こった高い残留グルコース濃度のため、283時間まで効果的でなくなった。ソホロ脂質の沈降又は浮遊は他の因子にも依存するが、50gl-1というグルコース濃度は、沈降又は表面への浮遊の閾値を表す傾向がある。供給速度をより良好に制御していれば、ソホロ脂質を、発酵全体を通して沈降させることが可能にしたかもしれない。
【0214】
実施例1において、グルコース濃度は最初に上昇し、発酵の大部分の間50gl-1を超えたままであったが、そのため、およそ140時間後の相当な残存ナタネ油濃度と相まって、ソホロ脂質が発酵槽の表面に上昇し、油が相当な量で存在する場合、残存油との混合相を形成することにつながった。
【0215】
流体力学的及び物質移動効果
実施例1のソホロ脂質抽出物を発酵の後に貯蔵し、308.3時に12分かけて発酵槽に戻した。図6は、実施例1の最後での溶存酸素濃度及びスターラー速度を示すが、粘性のあるソホロ脂質相の添加と同時に溶存酸素が低下している。このソホロ脂質相の存在は、発酵槽内のKlaを効果的に低下させて、溶存酸素を設定点に維持するためのスターラー速度の増加をもたらした。発酵全体にわたって製造されたソホロ脂質相が加えられて撹拌出力要件が40%超増加すると、およそ75rpmの撹拌速度増加が所望の溶存酸素濃度を維持するために必要であった。
【0216】
実施例3
別なセパレーター及び発酵条件を実施例3で利用した。利用したセパレーターは、図7に表される装置内に設けられた定着カラムであった。
【0217】
セパレーター1100は分離チャンバー1110を含む。セパレーター1100の第1の、使用時に下方である末端1120で、分離チャンバー1110は円錐台状断面1111を有する。分離チャンバー1110は、50mmの直径及び150mmの長さを有する円柱状断面1112をさらに含む。円柱状断面の底部1113は、セパレーターの、使用時に上方である末端1130を形成する。
【0218】
セパレーター1100はブロス入口1140を含み、セパレーター1100の第1の末端1120で分離チャンバー1110の縦軸A-A上に位置する、分離チャンバー1110への開口部を有する。入口は、脂質生成物を含むブロス300を発酵槽200から受入れる。
【0219】
セパレーターは、図7で1160として示される第1の出口(MIA)を含み、図7で1170として示される第2の出口(IIIB)を含む。
【0220】
第1の出口1160は、セパレーター1100の第2の末端1130に向いて位置しており、分離チャンバー1110の側壁1114を通る分離チャンバー1110への開口部を有する。使用時に、セパレーター1100は、第1の出口1160が分離チャンバー1110の縦軸A-Aより下であるように傾けられる。セパレーター1100内のブロスから分離される脂質相の密度に応じて、使用時に、第1の出口1160は、脂質生成物をセパレーター1100から移すために使用でき、或いは、脂質生成物が分離されたブロスをセパレーター1100から移すために使用できる。図7に示される通り実施例3において、出口1160を、脂質生成物が分離されたブロス1320を発酵槽200に移すために使用した。
【0221】
第2の出口1170は、セパレーター1100の第2の末端1130に向いて位置しており、分離チャンバー1110の側壁1114を通る分離チャンバー1110への開口部を有する。使用時に、セパレーター1100は、第2の出口1170が分離チャンバー110の縦軸A-Aより上であるように傾けられる。セパレーター100内のブロスから分離される脂質相の密度に応じて、使用時に、第2の出口1170は、脂質生成物をセパレーター1100を移すために使用でき、或いは脂質生成物が分離されたブロスをセパレーター1100から移すために使用できる。図7に示される通り実施例3において、出口1170を、脂質生成物1310を容器400に移すために使用した。
【0222】
分離チャンバー1110は、水平に対する分離チャンバー1110の縦軸A-Aの角度を変えることができるスタンド(図示せず)に結合している。実施例3では、利用されている角度は水平に対して30度であった。
【0223】
実施例3において、18gl-1酵母エキス及び15gl-1ペプトンを含む増加した培地濃度を利用して、高い細胞密度及びより迅速な製造を達成した。これには、図9に示される通り、より高い供給速度が必要であった。撹拌速度を900rpmに固定し、発酵を、3Lの容積のApplikonバイオリアクター(発酵槽)で、1.5Lの初期容積で実施した。ブロスの表面からの脂質生成物のより良好な分離を達成するために、図7のセパレーターを実施例3で使用した。他の全パラメーターは、実施例1及び2と同じであった。
【0224】
より高い細胞密度は、はるかに速いソホロ脂質製造速度をもたらし、689.8gl-1ソホロ脂質の総製造量に達した。バイオリアクターのオーバーフロー(そうでない場合、およそ165時間及び392gl-1ソホロ脂質で起こっただろう)と、100時間以内に所望の30%設定値より低下して分離により正された酸素欠乏との両方を防ぐために、一体化分離システムが発酵の長時間の運転に必要であった。
【0225】
これは、追加の窒素源の点以外で、明らかな生産性の低下なしに、2.24gl-1の生産性が発酵全体で維持できたことを意味した。追加の窒素源はおよそ270時間で加えられ、短時間のバイオマス成長期間があり、その後に製造が続いた。これが、この技法を利用する連続的な発酵において長期間のソホロ脂質製造の間、細胞成長の期間に有用であり得ることが認識されるだろう。
【0226】
発酵の間に製造されたソホロ脂質の79.2%、すなわち合計で819gが回収された。
【0227】
図8は、バイオリアクター内の基質、すなわちグルコース(黒塗り三角で表す)及び油(星で表す)並びに乾燥菌体重量(白の四角で表す)の濃度並びにソホロ脂質の製造量(ソホロ脂質の濃度を黒塗りの丸で表し、製造された全ソホロ脂質を白丸で表わす)を表す。
【0228】
図9は、油(破線で表す)グルコース(点線で表す)及び全体(実線で表す)の基質供給速度を表す。
【0229】
図8において、点線がついている矢印は、一体化ソホロ脂質分離が実施された時間を示し、実線は、100ml水に溶解させた12gの酵母エキス及び10gのペプトンのバイオリアクターへの添加を示す。
【0230】
本発明の好ましい実施形態がソホロ脂質製造の改善された方法を提供でき、特に、改善された生産性及びより低いエネルギー要件を可能にし得ることが認識されるだろう。
【0231】
本願に関連して本明細書と同時に又はそれ以前に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧に付された全論文及び文書に注意が向けられ、そのような全論文及び文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0232】
本明細書(添付された特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の全て及び/又はそのように開示されたあらゆる方法若しくはプロセスの工程の全ては、あらゆる組み合わせで組み合わせることができるが、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせは例外である。
【0233】
本明細書(添付された特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された各特徴は、明白にそうではないと述べられていない限り、同じ、等価な、又は類似の目的にかなう別な特徴に置き換えることができる。そのため、明白にそうではないと述べられていない限り、開示される各特徴は、包括的な一連の等価又は類似な特徴の一例にすぎない。
【0234】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付された特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示されたあらゆる新規な1つの特徴若しくは特徴のあらゆる新規な組み合わせに及び、又はそのように開示されたあらゆる方法若しくはプロセスの、あらゆる新規な1つの工程若しくはそれらのあらゆる新規な組み合わせに及ぶ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9