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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】合成糸を冷却する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D02J 13/00 20060101AFI20220104BHJP
   D02G 1/04 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
D02J13/00 S
D02G1/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019538312
(86)(22)【出願日】2017-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017053246
(87)【国際公開番号】W WO2018059743
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-11-19
(31)【優先権主張番号】102016011740.0
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ユングベッカー
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ミュンスターマン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭58-025774(JP,B2)
【文献】特開昭58-065023(JP,A)
【文献】特開平09-316742(JP,A)
【文献】特公昭61-039417(JP,B2)
【文献】特公平08-016293(JP,B2)
【文献】特許第3139132(JP,B2)
【文献】特開平05-331728(JP,A)
【文献】米国特許第06026636(US,A)
【文献】特開平09-157973(JP,A)
【文献】特開昭58-191230(JP,A)
【文献】特開平06-025927(JP,A)
【文献】特開平08-035136(JP,A)
【文献】国際公開第01/038620(WO,A1)
【文献】特表2003-519728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャリング加工機のテクスチャリング加工ゾーン内において合成糸を冷却する方法であって、冷却液を冷却体の冷却溝内に導入し、前記冷却液を前記冷却溝の溝底部において分配し、加熱された前記糸を、前記冷却溝を通して接触状態で案内する、方法において、
前記冷却液の量が糸重量の5~15%の範囲となるように、前記冷却液を、前記冷却溝の前記溝底部における調量開口を通して、0.05ml/分~5ml/分の範囲における搬送量で供給し、
前記糸を、前記冷却溝の上流側および下流側に配置されている複数の糸ガイドによって案内し、前記冷却溝は、前記糸ガイドの間に、糸走行方向において湾曲した溝底部を有している、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記糸を、前記冷却溝の前記溝底部における冷却区間において、100mm~300mmの範囲の区間長さで案内する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷却液を、前記冷却溝内において、前記溝底部において互いに相前後して位置する複数の溝ポケットを介して分配し、前記糸を、前記溝ポケットの間に形成された複数のウェブを介して接触状態で案内する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
湿潤された前記糸から発生する蒸気を、前記冷却溝において捕集し、かつ吸い出す、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施する冷却装置であって、冷却体(10)を備えており、該冷却体(10)は、糸(3)を案内するための縦長の冷却溝(11)を有しており、前記冷却溝(11)は、溝底部(17)における調量開口(12)を介して、冷却液を供給する調量装置(13)に接続されている、冷却装置において、
前記調量装置(13)は、前記冷却液の量が糸重量の5~15%の範囲となるように0.05ml/分~5ml/分の範囲の前記冷却液の搬送量を生ぜしめるための制御可能な調量手段(14)を有し
前記冷却溝(11)の上流側に少なくとも1つの糸ガイド(8)が配置されており、前記冷却溝(11)の下流側に1つの糸ガイド(9)が配置されており、かつ前記冷却溝(11)は、糸走行方向において湾曲した溝底部(17)を有している、ことを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
前記冷却体(10)における前記冷却溝(11)は、100mm~300mmの範囲の長さ(L)を有している、
請求項記載の冷却装置。
【請求項7】
前記冷却溝(11)は前記溝底部(17)に、凹設された複数の溝ポケット(18)を有しており、該溝ポケット(18)はそれぞれ、前記溝底部(17)におけるガイドウェブ(19)によって互いに隔てられている、
請求項または記載の冷却装置。
【請求項8】
前記ガイドウェブ(19)は、前記溝底部(17)における前記溝ポケット(18)の間において、等しい大きさのウェブ幅および/または異なった大きさのウェブ幅を備えて構成されている、
請求項記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷却体(10)には前記冷却溝(11)において、蒸気を捕集および排出するためのサクション装置(21)が対応配置されている、
請求項からまでのいずれか1項記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載された、合成糸を冷却する方法、および請求項6の上位概念部に記載された、方法を実施する冷却装置に関する。
【0002】
紡糸された合成糸を修飾処理(Veredlung)するために、数十年にわたって、マルチフィラメント糸を巻縮する方法が使用されており、このような方法は、業界において、いわゆる仮撚りテクスチャリング加工としても公知である。そのために、予め溶融紡糸プロセスにおいて生ぜしめられた部分延伸糸が、テクスチャリング加工機のテクスチャリング加工ゾーン内において巻縮される。このとき糸においては機械的に仮撚りが加えられ、この仮撚りは、糸走行方向とは逆向きに成長する。この撚られた状態において糸は、200℃の範囲における温度に加熱される。このときに得られた、糸材料の塑性状態によって、糸の個々のフィラメントにおいて撚りが加えられる(einpraegen)。この糸構造を固定するために、糸は次いで直ぐに約80℃の温度に冷却される。これによって糸における巻縮が維持され、所望の修飾処理を生ぜしめる。このとき糸の冷却は、好ましくは、空気冷却式の冷却レールによって実施され、この冷却レールの表面において糸は接触状態で案内される。しかしながらこのような冷却レールは、基本的に、糸の十分な冷却を達成するために、比較的長い冷却区間が必要であるという欠点を有している。したがって従来技術において、可能な限り短い冷却区間を実現できるようにするために、糸の冷却を、冷却液を用いて実施する方法および装置が公知である。
【0003】
冒頭に述べた形式の方法および冒頭に述べた形式の装置は、例えば欧州特許出願公開第0403098号明細書(EP 0 403 098 A2)に基づいて公知である。合成糸を冷却する公知の方法および公知の装置では、冷却溝を備えた冷却体が設けられており、この冷却体は、冷却溝の溝底部内に、凹設された複数の溝ポケットを有している。冷却溝は、毛管を介して冷却液リザーバに連結されているので、冷却液は連続的に冷却溝内に導入される。加熱された糸は、接触状態で冷却溝を通して案内され、かつ冷却液によって冷却される。次いで糸は、後続の冷却レールを介して案内される。
【0004】
公知の方法および公知の装置では、冷却体は、比較的短い冷却区間を形成しており、このとき余剰冷却液は、冷却体の終端部において捕集され、かつタンクに戻される。汎用のテクスチャリング加工機においては数百のテクスチャリング加工ゾーンが互いに並行に稼働されるということを考慮すると、冷却液の回収によって、大幅な追加コストが生じることになる。
【0005】
糸の冷却時における冷却液の余剰を最小にするために、国際公開第0138620号(WO 0138620 A1)に基づいて公知の、テクスチャリング加工ゾーンにおいて合成糸を冷却する方法では、冷却液が調量ポンプを用いて糸に供給され、このとき調量ポンプは、糸において監視された液体塗布状態に関連して調整される。このとき糸における液体塗布状態は、冷却後の1つの糸部分における電気抵抗によって測定される。これによって確かに、比較的多量の冷却液余剰量を回避することができるが、しかしながら公知の方法には、少なすぎる冷却液による糸の不十分な冷却を伴う状態が発生し得るという欠点がある。このような状態は、巻縮均一性の劣化を直接的に生ぜしめる。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、テクスチャリング加工機のテクスチャリング加工ゾーン内において合成糸を冷却する、冒頭に述べた形式の方法および冒頭に述べた形式の冷却装置を改良して、多量の冷却液余剰量を発生させることなしに糸の均一な冷却を実施することができる方法および冷却装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、合成糸を冷却する、冒頭に述べた形式の方法および冒頭に述べた形式の冷却装置を、特に多数の糸が並行に等しい条件下で冷却可能であるように改良することである。
【0008】
この課題は、請求項1記載の、合成糸を冷却する方法、および請求項6記載の、方法を実施する冷却装置によって解決される。
【0009】
本発明の好適な発展形態は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組合せによって定義されている。
【0010】
本発明は、一方において所望の冷却効果を得るために、かつ他方において冷却の終了時における冷却液余剰量を最小にするためには、冷却液の量と糸の質量とは互いに特定の関係になくてはならないという認識に基づいている。このとき冷却液が糸に確実に供給されることが保証されねばならない。したがって本発明に係る方法では、冷却液を、冷却溝の溝底部における調量開口を通して、糸の糸番手に関連して、0.05ml/分~5ml/分の範囲における搬送量で供給することが提案されている。このようにすると、糸の糸番手に応じて、冷却後に比較的多量の冷却液余剰量を発生させることなしに、糸の所望の冷却を実現することができる。
【0011】
冷却液と加熱された糸との間における最初の接触時に、冷却液は比較的強く蒸発させられるので、冷却すべき糸は冷却区間内で冷却溝の溝底部において湿潤される。そのために糸は、本発明の好適な発展形態によれば、100mm~300mmの範囲における冷却区間の区間長さにわたって案内される。これによって糸の均一な湿潤および冷却が可能である。
【0012】
このとき特に、本発明に係る方法の、好適であることが判明している変化形態では、冷却液は、冷却溝内において、溝底部において互いに相前後して位置する複数の溝ポケットを介して分配され、このとき糸は、溝ポケットの間に形成された複数のウェブを介して接触状態で案内される。このようにすると、糸における冷却効果をさらに高めることができ、その結果比較的短い冷却区間を実現することができる。
【0013】
テクスチャリング加工ゾーン内において、冷却溝内における糸の確定された糸ガイドおよび均一な接触を維持するために、本発明に係る方法の、特に好適な変化形態では、糸は、冷却溝の上流および下流に配置されている複数の糸ガイドによって案内され、このとき冷却溝は、糸ガイドの間に、糸走行方向において湾曲した溝底部を有している。このようにすると、糸が冷却溝に走入する角度および冷却溝から進出する角度を、特に正確に、かつ再現可能に調節することができる。テクスチャリング加工機もしくはテクスチャリング加工ゾーン内における特別な適合は、糸ガイドに基づいて不要である。
【0014】
発生する蒸気が可能な限り周囲に拡散することを阻止するために、本発明に係る方法の発展形態では、湿潤された糸から発生する蒸気を、冷却溝において捕集し、かつ吸い出すことが提案されている。1つのテクスチャリング加工機内において多数の糸が互いに並行に処理されることを考慮すると、蒸気の捕集および排出は特に好適である。
【0015】
特に好ましくは、サクション装置のサクション接続部を、走出領域における冷却溝の最深ポイントに形成することができ、このようにすると、蒸気のみならず、使用されなかった残留冷却液をも排出することができる。
【0016】
方法を実施するために、本発明に係る冷却装置は、冷却液を供給する調量装置を有しており、このとき調量装置は、0.05ml/分~5ml/分の範囲における冷却液の搬送量を生ぜしめるための調量手段を有している。このような調量手段は、好ましくは、冷却液の連続的で均一な搬送流を生ぜしめかつ冷却溝に供給することができる、調量ポンプによって構成される。
【0017】
冷却溝内における糸への冷却液の塗布は、一定の冷却区間にわたって行われる。そのために冷却体における冷却溝は、100mm~300mmの範囲における長さをもって構成されている。
【0018】
冷却を強化するために、さらに、冷却溝は溝底部に、凹設された複数の溝ポケットを有しており、該溝ポケットはそれぞれ、溝底部におけるガイドウェブによって互いに隔てられていることが提案されている。
【0019】
このときガイドウェブは、冷却溝の溝底部における溝ポケットの間において、等しい大きさのウェブ幅および/または異なった大きさのウェブ幅を備えて構成されていてよく、これによって冷却溝内において糸の糸ガイドおよび湿潤を行うことができる。
【0020】
糸を再現可能に、均一な接触状態で冷却溝の溝底部において案内できるようにするために、本発明に係る装置の特に好適な発展形態では、冷却溝の上流および下流にそれぞれ、少なくとも1つの糸ガイドが配置されており、かつ冷却溝は、糸走行方向において湾曲した溝底部を有している。
【0021】
蒸気を捕集しかつ排出するために、本発明に係る装置の発展形態では、冷却体には冷却溝において、サクション装置が対応配置されていることが提案されている。サクション装置は、好ましくは、蒸気のみならず、走出領域において場合によっては形成される残留冷却液をも冷却溝から排出するように構成されている。これによってテクスチャリング加工機における周囲汚染を回避することができる。
【0022】
次に、テクスチャリング加工機のテクスチャリング加工ゾーンにおける合成糸を冷却する本発明に係る方法を、本発明に係る装置の幾つかの実施形態において、添付の図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】糸を冷却する本発明に係る冷却装置が組み込まれた、テクスチャリング加工機のテクスチャリング加工ゾーンを概略的に示す図である。
図2図1に示された、糸を冷却する本発明に係る冷却装置の1実施形態を概略的に示す図である。
図3図2に示された実施形態の概略的な横断面図である。
図4】本発明に係る冷却装置の別の実施形態を概略的に示す断面図である。
図5】本発明に係る冷却装置のさらに別の実施形態を概略的に示す断面図である。
【0024】
図1には、テクスチャリング加工機、特にテクスチャリング加工ゾーンの一部が概略的に示されている。テクスチャリング加工機は、そのために給糸箇所4を有しており、この給糸箇所4には、糸3を備えた給糸ボビン2が保持されている。糸3は、予め溶融紡糸法において部分延伸糸(POY)として製造されている。給糸箇所4には、第1の供給機構1.1が対応配置されている。供給機構1.1は、本実施形態では、複数回巻き掛けられたゴデットユニットによって形成されている。第1の供給機構1.1は、第2の供給機構1.2にまで延びるいわゆるテクスチャリング加工ゾーンへの糸走入部を形成している。第2の供給機構1.2も同様に、複数回巻き掛けられたゴデットユニットによって形成されている。このとき供給ユニット1.1,1.2の形式は一例である。基本的には、糸ガイドのためにいわゆるニップ式供給機構を使用することも可能であり、このようなニップ式供給機構では、糸は、駆動される軸と圧着ローラおよび/または圧着ベルトとの間におけるニップ間隙において案内されている。
【0025】
供給機構1.1,1.2の間において延びるテクスチャリング加工ゾーン内には、糸走行方向において、加熱装置5、冷却装置6および仮撚りアセンブリ7が配置されている。冷却装置6は、本発明に係る装置によって形成され、かつ図2および図3において詳細に示されている。
【0026】
本発明に係る冷却装置6の、図2および図3に示された実施形態は、図2においては縦断面図で、かつ図3においては横断面図で概略的に示されている。したがって両図のうちの一方の図を特に参照しない場合には、以下の記載は両図に対するものである。
【0027】
本発明に係る冷却装置6の実施形態は、縦長の冷却体10を有している。冷却体10の上側には冷却溝11が延びている。冷却溝11は、冷却体10の両端面部にまで延びており、このとき糸走入部24においては走入糸ガイド8が、かつ糸走出部25においては走出糸ガイド9が、冷却溝11に対応配置されている。冷却溝11は、湾曲した溝底部17を有しており、この溝底部17の曲率は、半径Rによって示されている。糸走入部24と糸走出部25との間における、溝底部17に沿って延びる冷却区間は、図2において延在長さLで示されている。
【0028】
糸走入部24の領域では調量開口12が、冷却溝11の溝底部17において開口している。調量開口12は、調量通路12.1と供給管路26とを介して調量装置13に接続されている。調量装置13は、本実施形態では調量手段14を有しており、この調量手段14は、容器20に接続されている。容器20内には、冷却液が収容されている。調量手段14は、好ましくは調量ポンプとして形成されていて、かつモータ15によって駆動される。モータ15は、ここでは図示されていない機械制御ユニットに接続されている制御装置16を用いて制御される。
【0029】
冷却溝11の、調量開口12と糸走出部25との間において延びている区分において、溝底部17は凹設された複数の溝ポケット18を有しており、これらの溝ポケット18は、溝底部17において複数のガイドウェブ19によって互いに隔てられている。
【0030】
特に図3における図示から分かるように、溝底部17における溝ポケット18は、凹部を形成しており、これらの凹部内においては冷却液の滞留部を形成することができる。糸3は、ガイドウェブ19の表面において接触状態で案内される。
【0031】
図2および図3における図示から分かるように、冷却溝11の上方にはサクション装置21が配置されている。サクション装置21は、サクションフード23を有しており、このサクションフード23は、冷却体10における冷却溝11の全長および全幅にわたって延びている。サクションフード23は、負圧源22に接続されているので、冷却液による糸の冷却時に発生する蒸気を捕集して排出することができる。ブロワとして構成されていてよい負圧源22は、好ましくは互いに隣接した複数のサクションフード23を備えて稼働することができる。
【0032】
ここで強調して述べておくと、上に述べた実施形態は、本発明に係る冷却装置の1つの構造上の実施形態である。例えばサクション装置21は、冷却溝の下に配置されていてもよく、このような実施形態では、特に残留液を糸走出部において追加的に収容しかつ排出することができる。
【0033】
図1における図示から分かるように、仮撚りアセンブリ7による糸のテクスチャリング加工のために糸には機械的に撚りが生ぜしめられ、これによって糸3のフィラメントが撚られる。この撚りは、糸走行方向とは逆向きに戻り移動し、かつ通常、テクスチャリング加工ゾーンの走入部におけるいわゆる撚り止め(Drallstopp)によって停止させられる。このようにして撚られた糸3は、加熱装置5において約200℃の温度に加熱される。加熱された糸を、巻縮固定を目的として冷却するために、糸3は走入糸ガイド8を介して冷却装置6に供給される。撚られた糸を冷却するために、調量手段13は、予め設定された搬送量の冷却液を生ぜしめ、このような冷却液は、ノズル開口12を介して冷却溝11内に連続的に導入される。このとき搬送量は、0.05ml/分~5ml/分の範囲において調節され、これによって一方では、糸の十分な冷却が達成され、かつ他方では、冷却溝11から進出した後において、冷却液の余剰量が糸においてほとんど存在しないようになっている。糸3の撚られた状態においては冷却のための液体吸収が困難であるので、冷却溝は、糸番手に関連して100mm~300mmの範囲における設定された延在長さを形成している。
【0034】
300デニールの糸番手を有するポリエステル糸を用いた実験において、糸を、225mmの冷却区間内において十分に冷却することができた。冷却液としては水が使用され、このとき必要に応じて水に、例えば1%の少量のオイルを添加することが可能である。冷却液の量は約4ml/分であった。
【0035】
撚られた糸は、糸重量の5~15%の範囲の量の冷却液によって、効果的に冷却可能であるということが確認された。これによって冷却工程の終了時における液体残留量を最小にすることができる。したがって本発明に係る方法および本発明に係る装置は、特に、冷却液の最小の使用で、テクスチャリング加工プロセスにおける糸の十分な冷却を行うことによって傑出している。残留液の面倒な捕集および再生は不要である。
【0036】
さらに冷却装置6の糸走入部24および糸走出部25における糸ガイド8,9によって、糸ガイドの予備調節が可能であるので、並行な処理箇所において同一の、かつ再現可能な糸ガイドを実施することができる。これによってテクスチャリング加工機およびテクスチャリング加工ゾーン内における面倒な調節作業を、省くことができる。
【0037】
図2に示された実施形態では、冷却体10における冷却溝11の溝底部17は、均一な溝ポケット18を備えて形成されているので、溝ポケットの間におけるガイドウェブ19は、それぞれ等しい大きさのウェブ幅を有している。しかしながらまた基本的には、溝底部17におけるガイドウェブ19のウェブ幅を、互いに異なった長さで構成することも可能である。そのために図4には、ガイドウェブ19が異なったウェブ幅を備えて構成された、本発明に係る冷却装置の1実施形態が示されている。図4に示された実施形態は、その他の点に関しては、図2に示された実施形態と同一であり、このときサクション装置21および調量装置13はここには示されていない。図4に示された実施形態においてガイドウェブ19は、走出領域において、冷却溝11のその他の領域におけるよりも著しく広幅に構成されている。冷却溝11の溝底部17における溝ポケット18を通して、糸への冷却液の供給を強化することができるので、冷却体10における比較的短い冷却区間、ひいては短い冷却溝11を実現することができる。しかしながらまた、冷却溝11を溝ポケットなしに構成することも可能である。
【0038】
図5には、溝底部17における冷却溝11が溝ポケット18を有していない、本発明に係る冷却装置の1実施形態が示されている。この実施形態においても、サクション装置21および調量装置13の図示は省かれている。この実施形態では糸3は、冷却溝11の溝底部17に中断されずに接触して案内される。調量開口12を介して冷却溝11内に導入される冷却液は、このとき冷却溝11の溝壁において均一に分配され、糸走出部25に至るまでに蒸発させられるか、または糸によって吸収されかつ連行される。
【0039】
本発明に係る装置の、図5に示された実施形態では、調量通路12.1は糸走行方向に傾斜して冷却溝11に開口している。このように構成されていると、冷却液の搬送流は既に糸走行方向に方向付けられ、冷却溝11における分配を促進する。
図1
図2
図3
図4
図5