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特許6991227最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化して耐食性を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化して耐食性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/38 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
C25D11/38 303
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019543217
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2018053391
(87)【国際公開番号】W WO2018146292
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】17155862.0
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルケム エズカヤ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヴァハター
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ プフィルマン
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235456(JP,A)
【文献】国際公開第2010/035819(WO,A1)
【文献】特開2010-209456(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026916(WO,A1)
【文献】特表2013-526656(JP,A)
【文献】特表2010-529300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/00-11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化してその耐食性を高める方法であって、
(i)前記最外クロム層または最外クロム合金層を含む基板を供給する工程、
(ii)水性の酸性不動態化溶液を供給または製造する工程であって、該溶液は、
- 三価クロムイオン、
- リン酸イオン、
- 1種以上の有機酸残基アニオン
を含む工程、
(iii)前記基板を前記不動態化溶液と接触させ、前記不動態化溶液中でカソードとしての前記基板とアノードとの間に電流を流し、不動態化層を最外層上に堆積させる工程を含み、
前記不動態化溶液中で、前記三価クロムイオンは、リン酸の存在下で、過酸化水素および有機還元剤からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤により六価クロムを化学的に還元することにより得られ、ただし、三価クロムイオンが2種以上の還元剤を介して得られる場合、過酸化水素が主要な還元剤であり、化学的還元がリン酸の存在下で実施かつ開始され、および1種以上の有機酸残基アニオンの不在下で開始され、
ただし、前記1種以上の有機酸残基アニオンが、化学的還元の開始後に初めて前記不動態化溶液に存在する、方法。
【請求項2】
工程(i)において、最外層が、
(a)工程(i)で定義された基板を形成するために、直接、ベース基板の表面上にあるか、または
(b)積層の一層であり、該積層は、ベース基板の表面上にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
最外層が、500nm以下の最大層厚さを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(i)において、最外層が、電解堆積された三価クロムイオンから得られる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(i)において、最外クロム合金層が、最外クロム合金層中の原子の総量を基準として、総量で45原子%以上のクロムを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
水性の酸性不動態化溶液中の前記1種以上の有機酸残基アニオンが、1つのカルボン酸部分を有する有機酸残基アニオン、2つのカルボン酸部分を有するカルボン酸残基アニオン、および3つのカルボン酸部分を有するカルボン酸残基アニオンからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
水性の酸性不動態化溶液が、ホウ酸を含まない、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
水性の酸性不動態化溶液が、チオシアネートを含まない、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記三価クロムイオンが、三酸化クロムを化学的に還元することにより得られる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上の有機酸残基アニオンが、対応する有機酸から得られる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
水性の酸性不動態化溶液が、シュウ酸アニオンを含み、かつ
化学的還元が、リン酸の存在下で実施かつ開始され、かつシュウ酸アニオンの非存在下で開始され、シュウ酸アニオンは、化学的還元の開始後に初めて存在する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)において、電流のカソード電流密度が、0.1~8A/dmの範囲である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最外クロム層または最外クロム合金層、特に電解堆積された三価クロムから得られる最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化して、それらの耐食性を高める方法に関する。
【0002】
金属基板またはプラスチック基板上に電解堆積されたニッケルおよびクロム層は、装飾的および機能的な目的でよく知られている。また、このような基板は、特に最外層が六価クロムから得られる場合、良好で許容可能な耐食性を示すことも知られている。
【0003】
しかしながら、六価クロム、特にクロム酸は、非常に有毒で、発がん物質であり、かつ環境に有害である。特に排水処理は非常に費用がかかり、多大な労力が必要である。したがって、六価クロムの使用を最小限に抑えることが望ましい。その結果、一般的に非常に優れた耐食性を示し、かつ確立された手順で製造される六価クロムから得られる最外クロム(その合金を含む)層は、三価クロムから得られる最外クロム層によってますます置き換えられている。それ以来、六価クロムから得られるクロム層と少なくとも同等の特性に到達するために、例えば耐食性の観点から、かかるクロム層を最適化する努力が続けられている。
【0004】
三価クロムから得られる最外クロム層の耐食性を最適化するために、通常、浸漬処理および/または電解不動態化などの表面処理が適用される。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0252487号明細書(US 2015/0252487 A1)は、Cr+3めっき浴によりクロムでめっきされたクロムめっき基板に対して改善された腐食保護を付与する方法に関し、基板を処理する方法であって、前記基板は三価クロム電解質から堆積したクロムを含むめっき層を含み、
(a)アノードと、カソードとしての基板とを、(i)三価クロム塩;および(ii)錯化剤を含む電解質中に供給する工程;
(b)前記アノードと前記カソードとの間に電流を流して、不動態化膜を基板上に堆積する工程
を含む、方法を特許請求している。
【0006】
特開2009-235456号公報(JP 2009-235456 A)は、(i)三価クロムめっき液から形成されたクロムめっき膜用電解処理溶液、ならびに(ii)三価クロムめっき液から形成されたクロムめっき膜の電解処理方法であって、溶液は水溶性三価クロム化合物、例えば硫酸クロム、塩基性硫酸クロム、硝酸クロム、酢酸クロム、塩化クロムおよびリン酸クロムを含む、方法に関する。さらに、物品がカソードとして電解処理されることが開示されている。
【0007】
特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)は、クロムめっき膜の錆を防止するための浸漬処理溶液、および処理溶液が使用されるクロムめっき膜の錆を防止する処理を行う方法(防錆処理方法)であって、六価クロムめっき膜または三価クロムめっき膜に適用され得る、方法に関する。
【0008】
国際公開第2008/151829号(WO 2008/151829 A1)は、防食コーティング層を作り出す方法であって、処理される表面が、クロム(III)イオンおよび少なくとも1種のリン酸塩化合物を含む水性処理溶液と接触し、クロム(III)イオンの物質量の濃度と少なくとも1種のリン酸塩化合物の濃度との比(オルトリン酸塩に関して計算)が、1:1.5~1:3の間である、方法に関する。この方法により、転化層を備えた金属表面、特に亜鉛を含む金属表面の防食性が向上する。クロム(III)イオンは、無機クロム(III)塩によって、または適切な六価クロム化合物を還元することによって供給される。
【0009】
国際公開第2011/147447号(WO 2011/147447 A1)は、亜鉛、アルミニウムまたはマグネシウム、およびこれらの金属の合金の表面に、本質的にクロム(VI)を含まない防食層を生成する方法に関する。処理される表面は、クロム(III)イオン、処理される基板表面の金属イオン、および少なくとも1種の錯化剤を含む2つの水性処理溶液と直接連続して接触される。最初の処理溶液のpHは、1.0~4.0の範囲である一方、第2の処理溶液のpHは、3.0~12.0の範囲である。請求項12には、工程1の不動態化処理が、基板を不動態化溶液中でカソードとして接続することによって促進されることが開示されている。
【0010】
米国特許出願公開第6,004,448号明細書(US 6,004,448 A)は、三価クロム化合物を含む浴から金属基板上に酸化クロムコーティングを電解析出するための可溶性組成物および方法に関する。
【0011】
現在、Cr-III系電解質から堆積した最外クロム層または最外クロム合金層を含む基板は、場合により、一般的に標準化された中性塩水噴霧試験(NSS試験)で理想的には約300時間の耐食性を提供する。
【0012】
しかしながら、上記の最外クロム層を含む、さらにより優れた腐食保護基板を得るために、耐食性の要件は継続的に高まっている。上記の努力にもかかわらず、上記のような当技術分野で知られている方法によって得られる耐食性をさらに向上させることが継続的に求められている。特に一般的に標準化された中性塩水噴霧試験で480時間を容易に超える、好ましくは600時間を超える、さらには800時間を超える耐食性を得ることが望まれ、要求されている。
【0013】
したがって、本発明の主な課題は、上記の先行技術に基づき、最外クロム層または最外クロム合金層を含む基板の耐食性をさらに向上させると同時に、例えば、装飾的用途のために、上記の最外層の、光沢があり特に均質な光学的外観を維持することであった。特に、耐食性は、一般的に標準化された中性塩水噴霧試験において少なくとも480時間を超えるべきであり、好ましくは600時間を超えるべきであり、最も好ましくは800時間をも超えるべきである。
【0014】
上記の課題は、最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化してその耐食性を高める方法であって、
(i)前記最外クロム層または最外クロム合金層を含む基板を供給する工程、
(ii)水性の酸性不動態化溶液を供給または製造する工程であって、該溶液は、
- 三価クロムイオン、
- リン酸イオン、
- 1種以上の有機酸残基アニオン
を含む工程、
(iii)前記基板を前記不動態化溶液と接触させ、前記不動態化溶液中でカソードとしての前記基板とアノードとの間に電流を流し、不動態化層を最外層上に堆積させる工程を含み、
前記不動態化溶液中で、前記三価クロムイオンは、リン酸の存在下で、過酸化水素および有機還元剤からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤により六価クロムを化学的に還元することにより得られ、
ただし、前記1種以上の有機酸残基アニオンが、化学的還元中または化学的還元後に初めて前記不動態化溶液に存在する、
方法によって解決される。
【0015】
本発明者らの実験により、上記の三価クロムイオンの供給方法が上記の耐食性の程度と品質に大きく影響することが示されている。不動態化のために本発明の方法の工程(iii)で使用される不動態化溶液は、通常、これ以上六価クロムを含まず、したがって、不動態化層を堆積させる目的で六価クロムを含む不動態化溶液に典型的に引き起こされるまたは関連する毒性および有害性を示さない。したがって、六価クロムを単に出発物質として使用する場合、健康および環境の観点から運転条件を改善することが可能である。
【0016】
当該技術分野では、三価クロムイオンを含む水性溶液を提供するための複数の方法が知られている。上記の引用文献のいくつかに示されているように、かかるイオンは、それぞれの三価クロム塩を溶解すること、すなわち三価クロムイオンの供給源として三価クロム塩を使用することにより容易に得られる(上記の、例えば特開2009-235456号公報(JP 2009-235456 A)および特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)を参照のこと)。
【0017】
三価クロムイオンを得るために六価クロムを還元することも知られている。例えば、欧州特許出願公開第2322482号明細書(EP 2 322 482 A1)は、クロムめっきまたは三価クロムの化学変換処理などの金属表面処理に有用な水性のクロム(III)含有溶液、およびその製造方法に関する。しかしながら、EP'482には、最外クロム層の耐食性を高めるために、最外クロム層を電解不動態化することは開示されていない。
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化するために、このような三価クロムイオンを水性の酸性不動態化溶液に使用すると、上記の最外層の耐食性が、溶解した三価クロム塩から得られる三価クロムイオンを含む以外は同一の構成を有する水性の酸性不動態化溶液に起因する耐食性と比較して、劇的に向上することを見出した(例えば、特開2009-235456号公報(JP 2009-235456 A)および特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)に開示されている通り)。実験では、一般的に標準化された中性塩水噴霧試験において、約300時間から、最大700時間以上にまで耐食性が向上することが示されている(下記の例を参照のこと)。
【0019】
本発明の方法では、化学的還元が行われた後、水性の酸性不動態化溶液にどのような種類の三価クロムイオン錯体が存在するかはまだ完全には理解されていない。クロム原子に結合した少なくとも1種のリン酸基および有機酸基を有するクロム(III)塩錯体が形成されると考えられる。さらに、このような錯体の形成は、三価クロムイオンの唯一の供給源として三価クロム塩を溶解することにより形成された錯体と比較して、より迅速かつ定量的に起こると考えられる。これは、おそらく溶液全体の電荷分布に影響する。本発明者らの実験によれば、本発明の方法で定義された水性の酸性不動態化溶液は、最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化してその耐食性を大幅に向上させる望ましい特性を示す。
【0020】
本発明の方法は、少なくとも2つの製造工程、工程(i)および工程(ii)を含み;工程(iii)は、実際の不動態化工程である。工程(iii)の後、不動態化された最外層が得られ、この最外層は、不動態化されていない最外クロム層または最外クロム合金層を備えた基板と比較して、さらには例えば、特開2009-235456号公報(JP 2009-235456 A)および特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)で定義されたように不動態化された最外クロム層または最外クロム合金層を備えた基板と比較しても、大幅に向上した耐食性を示す(実施例を参照のこと)。
【0021】
本発明の文脈では、用語「少なくとも1つ」は、用語「1つ、2つ、3つ、または3つを上回る」と交換可能である。用語「製造する」は、1つ以上の製造工程で、それぞれの結果または製品が得られることを意味する。通常、「供給する」には「製造する」が含まれる。
【0022】
本発明の方法の工程(i)では、前記最外クロム層または最外クロム合金層(本文全体を通じて「最外層」と略されることが多い)を含む基板が供給される。
【0023】
本発明の方法において、工程(i)では、最外層が、
(a)工程(i)で定義された基板を形成するために、直接、ベース基板の表面上にあるか、または
(b)積層の一層であり、該積層は、ベース基板の表面上にあり、好ましくはニッケル層、ニッケル合金層、銅層、銅合金層および貴金属シード層からなる群から選択される1つ以上の層を含むことが好ましい。
【0024】
最外層がかかる積層の一層である場合、積層は、前記ベース基板の表面上にあり、前記ベース基板および前記積層は、本発明の方法の工程(i)で定義された基板を一緒に形成する。
【0025】
場合により、積層内の1つ以上の層(好ましくはニッケルまたはニッケル合金層)が、非導電性粒子、好ましくは二酸化ケイ素粒子および/または酸化アルミニウム粒子を追加で含むことが好ましい。
【0026】
ベース基板は、好ましくは金属ベース基板または有機ベース基板である。
【0027】
好ましくは、金属ベース基板は、鉄、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、および銅、好ましくは鉄、銅、および亜鉛からなる群から選択される1種以上の金属を含む。多くの場合、前述の金属の金属合金ベース基板がより好ましい。
【0028】
最も好ましいのは、金属ベース基板が、スチール基板、亜鉛ベースのダイキャスト基板、真鍮基板、銅基板、およびアルミニウム基板からなる群から選択される本発明の方法である。亜鉛ベースのダイキャスト基板は、通常、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、および銅のうち2種以上の元素またはすべての元素を含む。かかる製品の典型的な商標は、例えばZAMACおよびSuperloyである。
【0029】
最外クロム層または最外クロム合金層を備えた真鍮基板は、特に、衛生設備の製造に使用される。スチール基板および亜鉛ベースのダイキャスト基板は、通常、非常に多様な物品に使用されており、通常、装飾目的で、前記最外クロム層または最外クロム合金層を示す。
【0030】
場合により、本発明の方法において、最外層が、直接、ベース基板の表面上にあり、ベース基板が金属ベース基板であり、より好ましくは金属ベース基板が鉄を含み、最も好ましくは、金属ベース基板がスチール基板であることが好ましい。スチール基板の表面に直接配置された最外クロム層または最外クロム合金層は、通常、非常に良好なトライボロジー特性を示す。多くの場合、好ましくは本発明の方法により、このような基板の耐食性をさらに高めることが望ましい。
【0031】
本発明の方法は、ベース基板が金属ベース基板、好ましくは金属合金ベース基板、より好ましくはそれぞれ上記で定義されたものである場合に特に有益である。かかるベース基板には、特に長期にわたる耐食性が必要である。しかしながら、本発明の方法によって得られた不動態化層は、有機ベース基板上に堆積された最外クロム層または最外クロム合金層も、腐食損傷および光学的劣化から保護する。
【0032】
好ましくは、有機ベース基板は、プラスチックからなる群から選択され、より好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、およびポリアミド(PA)からなるプラスチックの群から選択される。
【0033】
有機ベース基板は、衛生設備や自動車産業で使用される多種多様な物品の製造にも使用されており、従って金属または金属合金ベース基板に似ている。
【0034】
通常、有機ベース基板は、その後の金属被覆のためにシード層によってまず導電性にされる。かかるシード層は、通常、無電解めっきで堆積した金属層である。本発明の文脈では、かかるシード層は、上記の積層に属する。好ましくは、シード層は、銅層または貴金属シード層である。好ましい貴金属シード層は、パラジウム層および銀層からなる群から選択される。
【0035】
多くの場合、最外層は、積層の一層であり、該積層は、ベース基板の表面上にあり、最も好ましくはベース基板が有機ベース基板である場合である。
【0036】
しかしながら、ベース基板がニッケルを含む場合、または積層がニッケルおよび/またはニッケル合金層を含む場合、本発明の方法の工程(i)の最外層が、銅または銅合金層上にあることが好ましい。このことは、工程(i)の基板がたびたび人間の皮膚と接触する場合に有益である可能性がある。結果として、アレルギー性ニッケル反応が減少するか、防止され得る。好ましくは、かかる物品には、ニッケル(ニッケル層およびニッケル合金層を含む)は全く使用されない。
【0037】
多くの場合、本発明の方法において、積層が、銅または銅合金層、その上に1つ以上のニッケルまたはニッケル合金層、およびその上に本発明の方法の工程(i)で定義された上記最外層を含むことが好ましい。ベース基板は、好ましくは金属合金ベース基板であり、より好ましくは亜鉛を含むもの、または好ましくは上記のような有機ベース基板である。
【0038】
本発明の方法において、最外層が、500nm以下、好ましくは400nm以下の最大層厚さを有することが好ましい。かかる層厚さは、装飾的なクロムまたはクロム合金層に典型的である。本発明の方法では、最外層がこのような装飾層であることが好ましい。
【0039】
本発明の方法の工程(i)では、「クロム層」とは、純粋なクロムの層を指す。すなわち、クロム以外の他の化学元素は、意図的に添加されないかまたは存在しない。「クロム合金層」とは、それぞれの合金を形成するために、クロム以外のさらなる化学元素が意図的に添加されるかまたは存在することを含むクロム層を指す。工程(i)では、最外クロム合金層が好ましい。好ましい合金元素は、鉄、炭素、酸素、硫黄、およびそれらの混合物からなる群から選択される。場合により、本発明の方法では、最外クロム合金層中の合金元素の総量が、最外クロム合金層中の原子の総量を基準として25原子%以下であることが好ましい。
【0040】
本発明の方法では、最外層の硫黄の総量が、最外層中の原子の総量を基準として、0~10原子%、好ましくは0~4原子%の範囲にあることが好ましい。
【0041】
場合により、本発明の方法において、最外層が、最外層中の原子の総量を基準として、鉄を、10原子%以下、好ましくは0.1原子%以下の総量で含む(鉄を全く含まない場合も含まれる)ことが好ましい。通常、かかる最外層(同時に総量で75原子%以上のクロムを有するもの)は、光沢のある明るい外観を示し、好ましくは79~86の範囲のL、-0.4~+0.4の範囲のa、および0.1~2.5の範囲のbで定義される外観を有する。
【0042】
「最外クロム層または最外クロム合金層」は、工程(i)において追加の金属または金属合金層が最外層に堆積または存在しないことを意味する。好ましくは、他の不動態化層は、上記最外層に存在しない。しかしながら、このことは、工程(iii)の前の最外クロム層または最外クロム合金層のクリーニングまたは前処理を除外するものではない。
【0043】
最外層の好ましい前処理は、特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)の段落[0015]~[0027]に開示され、段落[0015]~[0021]には、水性浸漬処理溶液が開示され、段落[0022]~[0027]には、上記水性浸漬処理溶液を使用する防錆処理方法が開示されている。かかる水性浸漬処理溶液は、好ましくはpH1~3、好ましくはpH1~1.5の範囲であり、かつ水溶性の三価クロムリン酸塩およびリン酸を含む。三価クロムイオンの総量は、水性浸漬処理溶液の総体積を基準として、1g/L~50g/L、好ましくは8g/L~12g/Lの範囲にある。任意で、水性浸漬処理溶液は、水性浸漬処理溶液の総体積を基準として、10g/L~100g/Lの量で、1種以上のpH緩衝化合物、好ましくは1種以上の水溶性脂肪族有機酸、より好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルコン酸、リンゴ酸、クエン酸、およびその水溶性塩、好ましくはナトリウムおよび/またはそのカリウム塩からなる群から選択されるものを含む。本発明の方法のいくつかの場合では、工程(i)で定義された基板は、好ましくは、工程(iii)の前に3~120秒間、好ましくは5~30秒間、かかる水性浸漬処理溶液に浸漬される。浸漬中、水性浸漬処理溶液の温度は、好ましくは20℃~50℃の範囲、より好ましくは20℃~35℃の範囲にある。前処理後、基板を脱イオン水で完全にすすぐことが好ましい。
【0044】
本発明の方法は、三価クロムイオンまたは六価クロムのいずれから得られたかに関わらず、いずれかの最外クロム層または最外クロム合金層にも適用され得る。しかしながら、本発明の方法では、工程(i)で、最外層が、電解堆積された三価クロムイオンから得られることが好ましい。本発明者らの実験によれば、本発明の方法は、電解堆積された三価クロムイオンから得られる最外層に特に有益である。六価クロム(不動態化なし)から得られた最外層の耐食性と比較して、ほぼ同じであるか、またはそれよりさらに優れた耐食性が得られた。
【0045】
好ましくは、最外クロム合金層では、クロムの総量は、最外クロム合金層中の原子の総量を基準として、少なくとも45原子%である。したがって、本発明の方法では(上記のように、好ましくは、好ましいと記載されるように)、工程(i)において、最外クロム合金層が、最外クロム合金層中の原子の総量を基準として、総量で45原子%以上、好ましくは60原子%以上、より好ましくは75原子%以上のクロムを含むことが好ましい。
【0046】
本発明の方法の工程(ii)では、水性の酸性不動態化溶液が、供給または製造される。
【0047】
水性の酸性不動態化溶液の以下のパラメーターおよび特性は、通常、本発明の方法の工程(iii)で使用するための準備ができた(すなわち、化学的還元が行われた後の)溶液の最終状態を指す。したがって、用語「供給する」は、本発明の方法の工程(iii)で使用するための準備ができた水性の酸性不動態化溶液を指す。
【0048】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液のpHが、3~5、好ましくは3~4の範囲にあることが好ましい。pHは、20℃で決定される。pHが5を大幅に上回る場合、不動態化溶液には望ましくない沈殿が認められる。pHが3を大幅に下回る場合、耐食性は、一般的に標準化された中性塩水噴霧試験では、3~5の範囲のpHを示す不動態化溶液によって得られる耐食性と比較して低下し、かつ最外層の光学的外観の望ましくない変化が認められる。好ましくは、上記のpH範囲は、水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムを添加することによって得られるかつ/または維持される。
【0049】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液中の三価クロムイオンの総量が、水性の酸性不動態化溶液の総体積を基準として、0.1g/L~50g/L、好ましくは1g/L~25g/L、より好ましくは1g/L~10g/L、さらにより好ましくは1g/L~7g/L、最も好ましくは2g/L~7g/Lの範囲であることが好ましい。上記の総量は、クロムの分子量52g/モルを基準とする。三価クロムイオンの総量が0.1g/Lを大幅に下回る場合、不動態化効果は認められない。総量が50g/Lを大幅に上回る場合、汚れやにじみなどの最外層の光学的外観に望ましくない変化が、頻繁に認められる。さらに、50g/Lを上回ると、不動態化プロセスには、通常、これ以上のコスト効果はない。
【0050】
本発明の文脈において、「三価クロム」は、酸化数+3のクロムを指す。用語「三価クロムイオン」は、遊離または錯化した形のCr3+イオンを指す。同様に、「六価クロム」は、酸化数+6のクロムを指し、「六価クロム化合物」は、特にかかる六価クロムを含む化合物を指す。
【0051】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液中のリン酸イオンの総量が、不動態化溶液の総体積を基準として1g/L~90g/L、好ましくは2g/L~50g/L、より好ましくは5g/L~40g/L、最も好ましくは8g/L~30g/Lの範囲にあることが好ましい。上記の総量は、リン酸イオン(PO 3-)の分子量95g/モルを基準としている。本発明の方法で使用される水性の酸性不動態化溶液では、リン酸イオンは、好ましくは、三価のクロムイオンと錯体を形成するか、または少なくとも水性の酸性不動態化溶液(例えば、pH3.5のHPO )の酸性pHに従ってプロトン化される。
【0052】
水性の酸性不動態化溶液は、主に錯化目的で、1種以上の有機酸残基アニオンを含む。水性の酸性不動態化溶液では、溶液のpH、それぞれの有機酸の酸解離定数、および上記の有機酸残基アニオンを含む錯体に応じて、前記1種以上の有機酸残基アニオンが、プロトン化(すなわち、それぞれの有機酸として存在)するか、または脱プロトン化(すなわち、それぞれの有機酸残基アニオンとして存在)する。有機酸残基アニオンが2つ以上のカルボキシル基を有する有機酸残基アニオンである場合、アニオンはそれぞれ部分的にプロトン化/脱プロトン化され得る。
【0053】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液は、有機酸残基アニオン、最も好ましくはジカルボン酸有機酸残基アニオンを1種だけ含むことが好ましい。
【0054】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液中の前記1種以上の有機酸残基アニオンが、
- 1つのカルボン酸部分を有する有機酸残基アニオン、2つのカルボン酸部分を有するカルボン酸残基アニオン、および3つのカルボン酸部分を有するカルボン酸残基アニオンからなる群から選択され、
- 好ましくは、2つのカルボン酸部分を有するカルボン酸残基アニオンからなる群から選択され、
- より好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、および酒石酸からなる群から選択される有機酸由来のアニオン、
- 最も好ましくはシュウ酸アニオン
であることが好ましい。
【0055】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液中の1種以上の有機酸残基アニオンの総量が、水性の酸性不動態化溶液の総体積を基準として1g/L~30g/L、好ましくは2g/L~14g/L、より好ましくは6g/L~12g/Lの範囲であることが好ましい。総量は、完全にプロトン化された、錯化されていない、対応する有機酸の単量体の形に基づいて決定される。総量が1g/Lを大幅に下回る場合、十分な不動態化効果は認められない。総量が30g/Lを大幅に上回る場合、汚れやにじみなどの最外層の光学的外観の望ましくない変化が、場合により認められるだけでなく、不動態化効果が不十分であることも認められる。
【0056】
本発明の方法では、工程(iii)で使用される水性の酸性不動態化溶液が、六価クロム化合物を含まず、好ましくは六価クロム化合物およびアルミニウム化合物を含まず、より好ましくは六価クロム化合物、アルミニウム化合物、モリブデン化合物、バナジウム化合物、および水銀化合物を含まないことが好ましい。本発明者らの実験によれば、アルミニウム化合物、モリブデン化合物、バナジウム化合物、および水銀化合物は、六価クロムの測定および分析方法に悪影響を及ぼし得ると想定されている。さらに、場合により、不動態化溶液は、モリブデン、タングステン、および元素の周期系の第7族(例えば、マンガンなど)~第12族(例えば、亜鉛)の元素のイオンを含まないことが好ましい。場合により、不動態化溶液が、銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、および鉄イオンを含まないことが特に好ましい。このことは、このようなイオンが意図的に添加されないかまたは存在しないことを意味する。
【0057】
通常、六価クロムは、よく知られているジフェニルカルバジド法によって決定され、かつ分析される(その定量化を含む)。用語「六価クロム化合物を含まない」は、本発明の方法の工程(iii)で使用される水性の酸性不動態化溶液では、六価クロムが上記の方法によって検出できないことを意味する。本発明者らの実験によれば、水性の酸性不動態化溶液中の六価クロム化合物の総量は、水性の酸性不動態化溶液の総重量を基準として1ppmをはるかに下回ると想定されている(したがって、通常は検出限界未満である)。
【0058】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液が、三価クロム塩の溶解から得られる三価クロムイオンをさらに含まないことが好ましい。
【0059】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液が、ホウ酸を含まない、好ましくはホウ素含有化合物を含まないことが好ましい。このことは、通常、かかる化合物が、不動態化溶液に意図的に添加されないかまたは存在しないことを意味する。
【0060】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液が、チオシアネートを含まず、好ましくは+6を下回る酸化状態を有する硫黄原子を含む硫黄含有化合物を含まないことが好ましい。しかしながら、このことは、例えば、不動態化溶液が、例えば、導電性塩のアニオンとして、硫酸イオン(+6の酸化状態)を含み得ることを意味する(導電性塩については、以下の本文を参照のこと)。
【0061】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液が、1種以上の導電性塩を含むことが好ましい。好ましくは、不動態化溶液の導電率は、25℃で測定して1mS/cm~30mS/cmの範囲である。前記1種以上の導電性塩は、好ましくは、硫酸塩を含む塩、硝酸塩を含む塩、および過塩素酸塩を含む塩からなる群から選択される。最も好ましくは、前記1種以上の導電性塩のカチオンは、ナトリウムである。したがって、最も好ましくは、前記1種以上の導電性塩は、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、および過塩素酸ナトリウムからなる群から選択される。場合により、本発明の方法では、前記カチオンが、カリウム、アンモニウム、およびマグネシウムからなる群から選択されない、より好ましくはカリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムからなる群から選択されない、最も好ましくは、カリウム、アンモニウム、およびアルカリ土類金属からなる群から選択されないことが好ましい。このことは、本発明の方法における不動態化溶液が、好ましくは、カリウム、アンモニウム、およびマグネシウムからなる群から選択されるカチオンを含まず、より好ましくは、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムからなる群から選択されるカチオンを含まず、最も好ましくは、カリウム、アンモニウム、およびアルカリ土類金属からなる群から選択されるカチオンを含まないことを意味する。上記の導電率は、工程(iii)で、浴の電圧動作ウィンドウを比較的低く維持することができ、したがって、比較的小さい電圧動作ウィンドウの整流器を使用することができ、これはコスト効率が高いので好ましい。好ましくは、不動態化溶液中の導電性塩の総量は、不動態化溶液の総体積を基準として0~30g/Lの範囲、より好ましくは1~30g/Lの範囲である。
【0062】
本発明者らの実験によれば、カリウムカチオンおよびアルカリ土類金属イオンは、多くの場合、それぞれの不動態化溶液中で望ましくない沈殿を引き起こす。それぞれの不動態化溶液中のアンモニウムカチオンの実験では、工程(iii)の後、場合により、最外層の光学的外観が悪影響を受け、汚れまたはにじみが発生することが認められた。
【0063】
上記のように、本発明の方法の工程(iii)で使用される水性の酸性不動態化溶液中の三価クロム錯体の正確な組成は、まだ完全には理解されていない/知られていない。したがって、不動態化溶液は、その中の三価クロムイオンを取得する方法によってさらに詳細に説明される。
【0064】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液中の上記の三価クロムイオンは、リン酸の存在下で、過酸化水素および有機還元剤からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を介して六価クロムを化学的に還元することにより得られるが、ただし、前記1種以上の有機酸残基アニオンは、化学的還元中または化学的還元後に初めて不動態化溶液に存在する。
【0065】
通常、六価クロム(通常、溶解した六価クロム化合物の形)は、リン酸と混合されて、水性の開始溶液を形成する。好ましくは、濃リン酸が使用される。上記の化学的還元は、六価クロムの総量を三価クロムイオンに定量的に還元して不動態化溶液の前段階を形成するのに必要な総量の還元剤を添加することにより開始される。化学的還元が行われた後に、または化学的還元がまだ進行中(すなわち、化学的還元中)に、前記1種以上の有機酸残基アニオン(好ましくは、上記の1種以上の有機酸残基アニオンの1種以上の対応する有機酸)が不動態化溶液に添加される(すなわち、上記の1種以上の有機酸残基アニオンが初めて不動態化溶液中に存在する)。本発明の方法では、化学的還元が、前記1種以上の有機酸残基アニオンの存在下で開始されないことおよび/または前記1種以上の有機酸残基アニオンが、化学的還元が開始された直後に添加されないことが好ましい。
【0066】
したがって、本発明の方法では、化学的還元が、リン酸の存在下で実施かつ開始され、前記1種以上の有機酸残基アニオンの不在下で開始され、上記の1種以上の有機酸残基アニオンは、化学的還元の開始後に初めて存在し、好ましくは、化学的還元の開始時の不動態化溶液中の六価クロムの総モル量を基準として、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%の六価クロムが化学的に還元された後に初めて存在することが好ましい。
【0067】
化学的還元が完了する直前または化学的還元が完了した後に初めて前記1種以上の有機酸残基アニオンが存在することが好ましい。これにより、(a)上記の1種以上の有機酸残基アニオンの不必要な分解および(b)耐食性の程度および品質に悪影響を及ぼす恐れのあるそれぞれの分解生成物の蓄積が防止される。用語「少なくとも90%後」は、100%を含む、90%以上を意味する(同じことが95%および99%にも適用される)。
【0068】
本発明の方法では、上記の三価クロムイオンが三酸化クロム(すなわち、CrO)を化学的に還元することにより得られる方法が好ましい。水性の溶液では、三酸化クロムは、少なくとも部分的にHCrOおよびそれに対応する脱プロトン化された形を形成する。
【0069】
六価クロムの三価クロムへの化学的還元は、過酸化水素および有機還元剤からなる群から選択される少なくとも1種の還元剤を介して実施される。本発明の文脈では、過酸化水素は、無機還元剤と見なされる。
【0070】
好ましくは、少なくとも1種の有機還元剤は、前記1種以上の有機酸残基アニオン(上記の残基アニオンの対応する有機酸を含む)とは異なる。
【0071】
本発明の方法では、前記少なくとも1種の還元剤が過酸化水素であるか、または少なくとも過酸化水素を含むが、ただし、好ましくは、三価クロムイオンが2種以上の還元剤を介して得られる場合、過酸化水素が主要な還元剤である。用語「主要な還元剤」は、定量的にほとんどの六価クロムが過酸化水素によって化学的に還元されることを意味する。このような場合、過酸化水素以外の還元剤は、有機還元剤の群から選択される。好ましくは、化学的還元には1種の還元剤のみ、最も好ましくは過酸化水素が使用される。一般に、本発明の方法で使用される還元剤は、三価クロムを金属クロムに還元するのに十分ではない。しかしながら、六価クロムを三価クロムイオンに化学的に還元する還元剤は、通常、そのプロセス中に、理想的には大部分が二酸化炭素に強く分解する。
【0072】
有機還元剤は、通常、炭素原子を含む。好ましくは、化学的還元のための有機還元剤の総量は、水性の酸性不動態化溶液が、(i)上記の有機還元剤の炭素含有分解生成物および(ii)未反応有機還元剤を含有または蓄積しないように選択(および添加)される。これにより、不動態化溶液は、不要な汚染のない状態に維持される。対照的に、非常に効果的な還元剤である過酸化水素は、水素および酸素のみからなる。したがって、炭素含有分解生成物による汚染の危険性はない。したがって、過酸化水素は、好ましい還元剤である。
【0073】
本発明の方法では、上記の有機還元剤は、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、および炭水化物からなる群から選択され、好ましくはアルコール、アルデヒドおよび炭水化物からなる群から選択されることが好ましい。カルボン酸は、あまり好ましくなく;好ましくは、前記少なくとも1種の還元剤は、グリコール酸を含まない。有機還元剤の中では、アルコールおよび炭水化物が好ましく、アルコールが最も好ましい。
【0074】
好ましいアルコールは、一価アルコール、二価アルコール、および三価アルコールからなる群から選択される。
【0075】
好ましい一価アルコールは、合計1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を含み、最も好ましくは、それらはメタノールおよびプロパノールからなる群から選択される。しかしながら、本発明の方法では、場合により、少なくとも1種の還元剤がメタノールを含まないことが好ましい。
【0076】
好ましい二価アルコールは、合計2~6個の炭素原子、より好ましくは2~3個の炭素原子を含み、最も好ましくは、それらはエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される。場合により、それらのポリマーが好ましい。
【0077】
好ましい三価アルコールは、合計3~6個の炭素原子、より好ましくは3個の炭素原子を含み、最も好ましくは三価アルコールはグリセロールである。
【0078】
好ましいアルデヒドは、モノアルデヒドおよびジアルデヒドからなる群から選択され、好ましくはモノアルデヒドである。好ましいモノアルデヒドは、合計1~6個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を含み、最も好ましくは、それらはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、およびブチルアルデヒドからなる群から選択される。
【0079】
好ましい炭水化物は、単糖類、二糖類、および澱粉からなる群から選択される。
【0080】
還元剤の総量(すなわち、すべての還元剤の合計)は、六価クロムが少なくとも定量的に還元されるように選択され、好ましくは過酸化水素の総量は、六価クロムが少なくとも定量的に還元されるように選択される。
【0081】
化学的還元が完了した後、不動態化溶液中の還元剤の総量は、好ましくは、不動態化溶液の総重量を基準として1重量%未満であり、より好ましくは、不動態化溶液中の過酸化水素の総量は、不動態化溶液の総重量を基準として1重量%未満であり、さらにより好ましくは、過酸化水素の総量は、0.1重量%未満である。
【0082】
本発明の方法では、化学的還元は、リン酸の存在下で実施されるが、ただし、前記1種以上の有機酸残基アニオンは、化学的還元中または化学的還元後に初めて不動態化溶液中に存在する(上記の本文で詳細に説明)。本発明の方法では、前記1種以上の有機酸残基アニオンが対応する有機酸から得られ、好ましくはカルボン酸から得られ、より好ましくは少なくともシュウ酸を含むカルボン酸から得られることが好ましい。有機酸残基アニオンが、シュウ酸アニオンであり、対応する有機酸がシュウ酸であることが最も好ましい。
【0083】
本発明の方法では、水性の酸性不動態化溶液はシュウ酸アニオンを含み、化学的還元は、リン酸の存在下で実施かつ開始され、かつシュウ酸アニオン(好ましくはシュウ酸)の非存在下で開始され、シュウ酸アニオンは、化学的還元の開始後、好ましくは、化学的還元の開始時の不動態化溶液中の六価クロムの総モル量を基準として少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%の六価クロムが化学的に還元された後に初めて存在することがさらに好ましい。
【0084】
場合により、本発明の方法では、工程(ii)において、化学的還元が、リン酸以外の追加の無機酸の存在下で行われず、より好ましくは塩酸、硝酸および硫酸からなる群から選択される1種以上の追加の無機酸の存在下で行われないことが好ましい。不動態化溶液の製造中に、不動態化溶液中のイオン種、特に無機酸のアニオン種が多すぎないことが好ましい。好ましくは、例えば、不動態化溶液の導電率に影響を与えるために、リン酸以外の無機酸の塩が、後の段階で不動態化溶液に添加される(導電性塩については上記の本文を参照のこと)。しかしながら、リン酸以外の少量の1種以上の無機酸は、通常、有害ではないが、あまり好ましくない。
【0085】
特定の場合、本発明の方法は、工程(ii)で水性の酸性不動態化溶液を製造することを含む。この特定の場合、最外クロム層または最外クロム合金層を電解不動態化してその耐食性を高める方法が好ましく、この方法は、
(i)好ましくは電解堆積された三価クロムイオンから得られる、最外クロム層または最外クロム合金層(好ましくは本文全体に記載されている通り)を含む基板を提供する工程、
(ii)水性の酸性不動態化溶液の製造工程であって、前記水性の酸性不動態化溶液は、
- 三価クロムイオン、
- リン酸イオン、
- 1種以上の有機酸残基アニオン
を含み、
前記製造工程は、
- 前記三価クロムイオンが得られるように、六価クロムを、リン酸の存在下で少なくとも1種の還元剤を介して化学的に還元し、前記還元剤は、過酸化水素および有機還元剤からなる群から選択されること、
- 1種以上の有機酸残基アニオン(好ましくは、前記1種以上の有機酸残基アニオンの1種以上の対応する有機酸)を、化学的還元中または化学的還元後に、不動態化溶液に添加するが、ただし、前記1種以上の有機酸残基アニオンが初めて不動態化溶液中に存在すること
を含む、製造工程、
(iii)前記基板を前記不動態化溶液と接触させ、前記不動態化溶液中でカソードとしての前記基板とアノードとの間に電流を流し、不動態化層を最外層上に堆積させる工程
を含む。
【0086】
本発明の方法に関して言及された上記および下記(その好ましい特徴および実施形態を含む)は、概して、この特定の場合も同様に当てはまる。
【0087】
本発明の方法の工程(iii)では、基板(カソードとして動作する)を、(好ましくは、基板を不動態化溶液中に浸漬することにより)不動態化溶液と接触させ、基板とアノード(アノードも、通常、不動態化溶液中に浸漬される)との間に電流を流し、不動態化層を最外層上に堆積させる。
【0088】
本発明の方法では、工程(iii)において、アノードが、混合金属酸化物で被覆されたアノード、グラファイトアノード、および鋼アノードからなる群から選択されることが好ましく、混合金属酸化物で被覆されたアノードが最も好ましい。特に、混合金属酸化物で被覆されたアノードなどの不溶性アノードが好ましい。本発明者らの実験によれば、本発明の方法では、混合金属酸化物で被覆されたアノードは、望ましくない六価クロムへの三価クロムの陽極酸化の速度が比較的低い。好ましくは、本発明の方法は、水性の酸性不動態化溶液中の六価クロムの総量が、(仮に工程(iii)で陽極形成されたとしても)本発明の方法が実施される間、検出レベルを下回ったままであるように実施される(六価クロムの検出については上記の本文を参照のこと)。このことは、上記の混合金属酸化物で被覆されたアノードを使用することで達成され得る。好ましい混合金属酸化物で被覆されたアノードは、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、および酸化白金からなる群から選択される1種以上の酸化物を含む。
【0089】
工程(iii)の電流は、好ましくは、直流であり、より好ましくは、パルスを含まない。しかしながら、この電流ならびに不動態化溶液中の三価クロムイオンの総量は、工程(iii)で金属クロムを最外層上に堆積させるのに十分ではない。このことは、不動態化層が追加の金属クロム層ではなく、三価クロムを含む化合物の層であることを意味する。
【0090】
本発明の方法では、工程(iii)において、電流のカソード電流密度が、0.1~8A/dm、好ましくは0.1~5A/dm、より好ましくは0.2~3A/dm、最も好ましくは0.3~2A/dmの範囲であることが好ましい。電流密度が0.1A/dmを大幅に下回る場合、十分な不動態化効果は得られない。電流密度が8A/dmを大幅に超える場合、汚れやにじみなどの最外層の光学的外観の望ましくない変化が、場合により認められ、不十分な不動態化効果を伴う。
【0091】
本発明の方法では、工程(iii)において、電流を10~300秒間、好ましくは10~240秒間、より好ましくは15~120秒間、最も好ましくは20~60秒間流すことが好ましい。時間の長さが10秒を大幅に下回る場合、十分な不動態化効果は得られない。時間の長さが300秒を大幅に超える場合、汚れやにじみなどの最外層の光学的外観の望ましくない変化が、場合により認められる。
【0092】
本発明の方法では、工程(iii)において、不動態化溶液の温度が、20℃~40℃、好ましくは20℃~30℃の範囲であることが好ましい。温度が40℃を大幅に超える場合、汚れやにじみなどの最外層の光学的外観の望ましくない変化が、場合により認められ、不十分な不動態化効果を伴う。
【0093】
本発明の方法では(上記のように、好ましくは、好ましいと記載されているように)、工程(iii)において、不動態化層が中断なしに単一工程で堆積されることが好ましい。
【0094】
好ましくは、工程(iii)の後に得られる不動態化層は、4nm以下、より好ましくは3nm以下、最も好ましくは2nm以下の最大層厚を有する。
【0095】
本発明者らの実験によれば、工程(iii)で堆積した不動態化層は、通常、クロム、炭素、酸素およびリンの元素を含む。したがって、不動態化層は、リン含有不動態化層、好ましくは、不動態化層中の原子の総量を基準として、40原子%以下、より好ましくは30原子%以下、さらにより好ましくは20原子%以下、最も好ましくは10原子%以下の総量でリンを含有する不動態化層である。用語「以下」は、ゼロを含まない、すなわち、それぞれの場合にリンが存在する。
【0096】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。
【0097】
実施例
すべての例で、同じサイズでその表面に積層をそれぞれ備えたABSベース基板を使用した。前記積層は、銅層、半光沢ニッケル層、光沢ニッケル層、非導電粒子含有ニッケル層(「ミクロポーラスニッケル層」)、および最外層として光沢クロム層を含む。したがって、本発明の方法の工程(i)で定義した基板を準備した。
【0098】
不動態化工程を実行した場合、同一の不溶性の混合金属酸化物で被覆されたアノードを、それぞれの例を通して使用した。
【0099】
耐食性を評価するために、各例で、中性塩水噴霧試験(NSS試験)を、ISO 9227に従ってさまざまな時間の長さで実施した。典型的な時間の長さは、例えば、240時間、480時間、および720時間である。各時間の長さにおける結果を、以下の本文の第1表にまとめる。
【0100】
各NSS試験の前後に、最外層の光学的外観を、視覚的および体系的に検査した。
【0101】
各NSS試験後、基板を水で洗浄し、乾燥させ、視覚的に検査して、光学的外観の変化を測定/定量化した(キャリバープレートによって測定された欠陥の面積として表した)。光学的外観の変化(最外層の表面全体の最大0.1%の光学的外観の変化を含む)を認めなかった場合、試験を「合格」とみなした。対照的に、最外層の表面全体の0.1%を上回る光学的外観の変化を認めた場合、試験を「不合格」とみなした。
【0102】
例1(比較):
上記で定義した基板を、上記のNSS試験に供した。例えば、本発明の方法の工程(iii)で定義した、前処理および不動態化溶液との接触は行わなかった。
【0103】
例2(比較):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
前処理は行われなかった
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
不動態化溶液(本発明に従わない):
5g/LのCr3+、28.5g/LのPO 3-、10g/Lのシュウ酸アニオン
温度:25℃、pH:3.5
電流:1A/dmで30秒間、基板をカソードとする
【0104】
不動態化溶液は、リン酸クロム(III)とシュウ酸を溶解し、続いて80℃で3時間混合し、最終的に水酸化ナトリウムでpH調整することによって調製した。
【0105】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0106】
例2は、それぞれ、特開2009-235456号公報(JP 2009-235456 A)および特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)に基づく。例2で得られた本発明者らの結果は、JP-2009およびJP-2010に開示されている結果を裏付ける。
【0107】
例3(比較):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
水性浸漬処理溶液:
10g/LのCr3+、80g/LのPO 3-、15g/Lのリンゴ酸
温度:25℃、pH:1.3
10秒間の浸漬
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
例2と同じ
【0108】
前処理された最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0109】
例3は、特開2010-209456号公報(JP 2010-209456 A)に基づいている。例3で得られた本発明者らの結果は、JP-2010、特にJP-2010の「実施形態14」に開示されている結果を裏付ける。
【0110】
例4(比較):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
前処理は行われなかった
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
不動態化溶液(本発明に従わない):
4.4g/LのCr3+、9.9g/LのPO 3-、9.7g/Lのシュウ酸アニオン
温度:25℃、pH:3.5
電流:1A/dmで30秒間、基板をカソードとする
【0111】
不動態化溶液は、リン酸クロム(III)およびシュウ酸クロム(III)を溶解し、その後、80℃で3時間混合し、最終的に水酸化ナトリウムでpHを調整することによって調製した。
【0112】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0113】
例5(比較):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
例3と同じ
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
例4と同じ
【0114】
前処理された最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0115】
例6(比較):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
例3と同じ
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
不動態化溶液(本発明に従わない):
5g/LのCr3+、13g/LのPO 3-、10g/Lのシュウ酸アニオン、13g/LのSO 2-
温度:25℃、pH:3.5
電流:0.2A/dmで30秒間、基板をカソードとする
【0116】
前処理された最外層の光学的外観は、不動態化処理によりわずかに暗くなった。
【0117】
不動態化溶液は、クロメタン(塩基性硫酸クロム)、リン酸およびシュウ酸を溶解し、その後、80℃で3時間混合し、最終的に水酸化ナトリウムでpHを調整することによって調製した。
【0118】
例7(本発明による):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
前処理は行われなかった
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
不動態化溶液(本発明による):
4.9g/LのCr3+、9.5g/LのPO 3-、7.5g/Lのシュウ酸アニオン
温度:25℃、pH:3.5
電流:1A/dmで30秒間、基板をカソードとする
【0119】
不動態化溶液(本発明の方法の工程(ii)で定義)は、リン酸の存在下でCrOをHで還元し、その後シュウ酸を添加し、最終的に水酸化ナトリウムでpHを調整することで調製した。
【0120】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0121】
例8(本発明による):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
例3と同じ
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
例7と同じ
【0122】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0123】
例9(本発明による):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
前処理は行われなかった
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
不動態化溶液(本発明による):
4.9g/LのCr3+、47g/LのPO 3-、7.5g/Lのシュウ酸アニオン
温度:25℃、pH:3.5
電流:1A/dmで30秒間、基板をカソードとする
【0124】
不動態化溶液(本発明の方法の工程(ii)で定義)は、リン酸の存在下でCrOをHで還元し、その後、シュウ酸を添加し、最終的に水酸化ナトリウムでpHを調整することにより調製した。
【0125】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0126】
例10(本発明による):
前処理(すなわち、不動態化処理の前の、電流なしでの浸漬):
例3と同じ
不動態化工程(すなわち、電流を用いる):
例9と同じ
【0127】
最外層の光学的外観は、不動態化処理により変化しなかった。
【0128】
第1表にすべての実験結果をまとめる。
【表1】
【0129】
本発明者らの実験によれば、中性塩水噴霧試験における耐食性は、既知の方法と比較して、本発明の方法を使用することで著しく向上する。