(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】動的衛星ビーム割り当て
(51)【国際特許分類】
H04B 7/19 20060101AFI20220104BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H04B7/19
H04B7/06 956
(21)【出願番号】P 2019547100
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 US2018020461
(87)【国際公開番号】W WO2018160842
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180451
【氏名又は名称】ヴィアサット,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViaSat,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ペトラノビッチ,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,レンベルト
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0323800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0022120(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00998060(EP,A2)
【文献】英国特許出願公開第02318947(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/19
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止衛星通信ネットワークにおける動的ビーム割り当てのための方法であって、
静止衛星の複数のスポットビームによって照射される複数のカバレッジ領域内の複数の位置において信号品質を示すリンク測定データを受信することと、
前記リンク測定データに従って、前記静止衛星の前記複数のスポットビームのうちの1つのスポットビームによって照射される前記複数のカバレッジ領域のうちの1つのカバレッジ領域の現在のドリフトを示すビームドリフトトリガを検出することと、
前記現在のドリフトから信号品質低下を受けているとして地上端末のセットを識別することと、
前記ビームドリフトトリガを検出することに応じて地上処理ノードにおいて、現在割り当てられているそれぞれのスポットビームから前記複数のスポットビームのうちの再割り当てされるそれぞれのスポットビームへ前記地上端末のセットのそれぞれを再割り当てすることによって、前記信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消すビーム割り当てマップに対する更新を計算することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記識別することは、更に、前記ビーム割り当てマップに従って前記複数のスポットビームのうちの前記スポットビームに現在割り当てられているとして前記地上端末のセットを識別することを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記識別することは、更に、前記地上端末のセットのそれぞれに関連付けられる地理位置情報データに従って前記地上端末のセットを識別することを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
前記受信することは、第1の時間において第1のリンク測定データを受信することと、前記第1の時間の後の第2の時間において第2のリンク測定データを受信することとを含み、
前記検出することは、前記第1のリンク測定データに従って前記第1の時間に前記カバレッジ領域の第1の位置を計算することと、前記第2のリンク測定データに従って前記第2の時間に前記カバレッジ領域の第2の位置を計算することと、前記第1の位置と前記第2の位置との間のドリフトの閾量を少なくとも計算することとを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
前記受信することは、
少なくとも前記カバレッジ領域にわたって地理的に分散する複数の地上端末から第1の時間に第1のリンク測定データを受信することと、
前記第1の時間の後の第2の時間に前記複数の地上端末から第2のリンク測定データを受信することを含み、
前記検出することは、前記第2のリンク測定データを前記第1のリンク測定データと比較して、前記複数の地上端末の少なくとも幾つかのためのサービス品質の変化の大きさを特定することによって、前記カバレッジ領域のドリフトをモデル化することを含み、
前記識別することは、前記特定されたサービス品質の変化の大きさがサービス品質の少なくとも所定の閾低下を示す前記複数の地上端末の少なくともいくつかを備えるよう前記地上端末のセットを識別することを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
前記計算することは、前記地上端末のセットのそれぞれについて、前記再割り当てされたそれぞれのスポットビームが前記受信したリンク測定データに従って前記現在割り当てられているそれぞれのスポットビームよりも高いスペクトル効率を提供するよう特定されるように、前記再割り当てされたそれぞれのスポットビームに前記地上端末を割り当てることを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
前記計算することは、ビームロードバランシング方式に関して前記スポットビームのセットの現在のローディングを特定することを含み、
前記計算することは、現在のローディングに従って前記ビームロードバランシング方式に従って更に前記ビーム割り当てマップを更新する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、更に、
前記静止衛星を介して、前記更新されたビーム割り当てマップに従ってそれらの通信設定を更新するよう前記地上端末のセットに指示する再割り当てメッセージを通信すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記再割り当てメッセージを通信することは、前記再割り当てメッセージを少なくとも前記地上端末のセットにマルチキャストすることを含み、前記再割り当てメッセージは、前記地上端末のセットのそれぞれについ
て、搬送波周波数、偏波方向、又は前記静止衛星と通信するために前記地上端末によって用いられるビームグループ識別子の少なくとも1つに対するそれぞれの更新を示すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記再割り当てメッセージは、前記静止衛星とのステートフル接続性を維持しながら、前記更新されたビーム割り当てマップに従ってそれらの通信設定を更新するように前記地上端末のセットに指示することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記地上端末のセットのそれぞれは、ビーム非依存型であるネットワーク識別子に関連付けられ、前記静止衛星とのステートフル接続性を維持することが、その通信設定が更新される場合、そのネットワーク識別子との前記地上端末のセットのそれぞれの関連付けを維持することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、
前記ビームドリフトトリガは、前記静止衛星の複数の反射器の1つに関連する現在のドリフトを示し、前記複数の反射器のそれぞれは、前記静止衛星の前記複数のスポットビームのそれぞれの部分に焦点を合わせる、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記地上端末のセットは少なくとも1つのユーザ端末を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記地上端末のセットは少なくとも1つのゲートウェイ端末を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
静止衛星通信ネットワークにおける動的ビーム割り当てのためのシステムであって、
それに格納されるビーム割り当てマップを有するデータストアと、
ビーム追跡構造であって、
リンク測定データ入力と、
前記リンク測定データ入力が静止衛星の複数のスポットビームのうちの1つのスポットビームによって照射されるカバレッジ領域の現在のドリフトを示す場合、ビームドリフトトリガを備えるトリガ信号出力と、を有するビーム追跡構造と、
端末割り当て構造であって、
前記トリガ信号出力に結合されるトリガ信号入力と、
前記現在のドリフトに起因する識別された地上端末のセットの信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消すよう、前記トリガ信号入力に応じて、計算された前記ビーム割り当てマップに対する更新に従って、複数のビーム割り当て変更メッセージを備える割り当て信号出力であって、前記ビーム割り当て変更メッセージは、現在割り当てられたそれぞれのスポットビームから前記複数のスポットビームの再割り当てされたそれぞれのスポットビームへの前記地上端末のセットのそれぞれのビーム再割り当てを示す割り当て信号出力と、を有する端末割り当て構造と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、更に、
前記ビーム追跡構造及び前記端末割り当て構造と結合され、地上ネットワークを介して前記静止衛星と通信可能に結合可能なネットワークデータ入力及びネットワークデータ出力を有する通信インターフェース構造を備え、
前記ネットワークデータ出力は、リンク測定データを前記リンク測定データ入力に通信する前記ネットワークデータ入力に応じて前記割り当て信号出力を備えることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、前記通信インターフェース構造は、
前記ビーム割り当て変更メッセージに従って前記ビーム再割り当てを実施する場合、前記地上端末のセットのそれぞれと前記静止衛星との間のステートフル接続性を保全するために、前記地上端末のセットのそれぞれに関連付けられるビーム非依存型ネットワーク識別子を維持するよう動作するネットワークサーバを備えることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項15に記載のシステムにおいて、前記端末割り当て構造は、更に、
格納されたビームロードバランシング方式を備え、前記ビームロードバランシング方式に関して前記スポットビームのセットの現在の負荷を維持するビームローディングモニタを備え、
前記ビーム割り当てマップは、前記現在のローディングに従って前記ビームロードバランシング方式に従って更に計算されることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記トリガ信号出力は、第1の時間におけるリンク測定データ入力に従って計算される前記カバレッジ領域の第1の位置と第2の時間におけるリンク測定データ入力に従って計算される前記カバレッジ領域の第2の位置との間の差が、前記第1の位置と前記第2の位置との間のドリフトの閾量を少なくとも示す場合、前記ビームドリフトトリガを備えることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のシステムにおいて、更に、
少なくとも前記地上端末のセットのそれぞれのための地理位置情報データをそれに格納する地上端末データストアを備えることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のシステムにおいて、更に、
前記静止衛星を備えることを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、更に、
前記静止衛星と通信する複数の衛星アクセス地上端末と、
地上ネットワークを介して前記複数の衛星アクセス地上端末に結合される地上処理ノード構造であって、前記ビーム追跡構造及び前記端末割り当て構造を備える地上処理ノード構造と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記静止衛星は複数の反射器を備え、それぞれは前記静止衛星の前記複数のスポットビームのそれぞれの部分に焦点を合わせ、
前記トリガ信号出力は、前記複数の反射器のそれぞれの独立した位置追跡に従って生成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記地上端末のセットは少なくとも1つのユーザ端末を含むことを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項15乃至18の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記地上端末のセットは少なくとも1つのゲートウェイ端末を含むことを特徴とするシステム。
【請求項26】
静止衛星通信ネットワークにおける動的ビーム割り当てのためのプロセッサであって、前記プロセッサはそれに格納されるビーム割り当てマップを有するメモリと結合され、
静止衛星の複数のスポットビームにわたる複数の位置における信号強度を特徴付けるリンク測定データを受信するための命令と、
前記リンク測定データに従ってビームドリフトトリガを検出するための命令であって、前記ビームドリフトトリガは、前記複数のスポットビームのうちの少なくとも1つのスポットビームによって照射されるカバレッジ領域の現在のドリフトを示す、命令と、
前記現在のドリフトから信号品質低下を受けているとして地上
端末のセットを識別するための命令と、
前記ビームドリフトトリガを検出することに応じて、現在割り当てられているそれぞれのスポットビームから前記複数のスポットビームのうちの再割り当てされるそれぞれのスポットビームへ前記地上端末のセットのそれぞれを再割り当てすることによって、前記信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消す前記ビーム割り当てマップに対する更新を計算するための命令と、
を備えることを特徴とするプロセッサ。
【請求項27】
内部に配設される請求項26に記載のプロセッサを有する前記静止衛星通信ネットワークの地上処理ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、一般に、静止衛星通信システムに関し、より詳細には、衛星固定スポットビームへの地上端末の動的割り当てに関する。
【背景技術】
【0002】
静止衛星通信システムにおいて、データは衛星を介して地上端末同士(例えば、衛星アクセスノードとユーザ端末)の間で通信することができる。広い地理的領域に広がる多数の地上端末に通信サービスを提供するため、領域は、通常、より小さなカバレッジ領域に分割することができる。例えば、地理的領域を六角形配列に分割し、六角形の一部又は全てをそれぞれのスポットビームで照射して、これらの六角形領域内の地上端末にサービスを提供することができる。各スポットビームは特定のカバレッジ領域を照射するよう向けることができるが、スポットビームのカバレッジ領域は、衛星反射器の歪み、衛星姿勢の変化、及び/又は他の現実世界の要因により、時間の経過と共にそれらの公称位置からドリフトする可能性がある。
【0003】
スポットビームのカバレッジ領域が縮小するにつれて(例えば、高スループット衛星に対して)、かかるドリフトは衛星通信サービスの信頼性の高い供給に対してより大きな影響を与える可能性がある。1つの理由は、より小さなスポットビームが、通常、より大きな衛星開口(例えば、より大きな反射器)を用いて生成され、衛星のそれらのより大きな物理的特徴がより歪み易い可能性があるためである。別の理由は、より小さなスポットビームカバレッジ領域により、より多くの地上端末がカバレッジ領域の縁端付近に(ビームの中心から離れて)存在する傾向があり、その結果、カバレッジ領域のドリフトがより多くの地上端末のためのサービス品質に影響を与える傾向がある可能性があるためである。幾つかの従来のアプローチは、より正確な衛星ポインティングを提供しようと試みている(例えば、アクティブ内蔵姿勢制御、地上支援オートポインティング等を用いて)。しかし、かかるアプローチは相当の燃料を消費する傾向がある可能性があり、反射器の歪み及び他の関連する懸念を説明できない。他の従来のアプローチは、所望のビームポインティングを維持するために機械的ビームステアリング、デジタルビームフォーミング、及び/又は他の技術を用いている。しかし、かかるアプローチは、衛星のコスト、複雑さ、及び重量を増加させる傾向がある可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
とりわけ、システム及び方法が、静止衛星通信ネットワークにおいて動的スポットビーム割り当てを提供するために説明されている。例えば、地上端末と通信する地上処理ノードは、スポットビームカバレッジ領域位置を監視することができ、1つ以上のカバレッジ領域の現在のドリフトを示すビームドリフトトリガを検出することができる。地上端末のセットは、ドリフトカバレッジ領域に関連付けられたスポットビームによってサービスが提供されるとして、及びドリフトから信号品質への影響を受けるとして(例えば、ビーム割り当てマップに従って)識別することができる。地上端末ノードは、それらの現在サービスを提供するスポットビームから別のスポットビームへの識別された地上端末の再割り当てを有するビーム割り当てマップに対する更新を計算することができる。更新されたビーム割り当てマップの計算は、ドリフトに関連すると識別された信号品質への影響の少なくとも幾つかに対処するよう探ることができる。幾つかの実施形態において、更新されたビーム割り当てマップの計算は、ロードバランシング、及び/又は他の要因を説明することができる。メッセージは、地上処理ノードから識別された地上端末に(例えば、衛星及び1つ以上のゲートウェイ端末を介して)通信されて、更新されたビーム割り当てマップに従って調整するよう地上端末に指示することができる。動的ビーム割り当ては、再割り当てされた地上端末と衛星との間のステートフル通信を維持する方法で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示を、添付図面と併せて説明する。
【0006】
【
図1】
図1は、様々な実施形態のための文脈として、例示的な静止衛星通信システムを示す。
【
図2】
図2は、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される例示的な地理的領域を示す。
【
図3】
図3は、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域を示す。
【
図4A】
図4Aは、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域を示す。
【
図4B】
図4Bは、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域を示す。
【
図4C】
図4Cは、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域を示す。
【
図5】
図5は、様々な実施形態による、静止衛星通信ネットワークにおける例示的な動的ビーム割り当てシステムのためのブロック図を示す。
【
図6】
図6は、様々な実施形態による、静止衛星通信ネットワークにおける動的ビーム割り当ての例示的な方法のフロー図を示す。
【0007】
添付図面において、類似のコンポーネント及び/又は機能は同じ参照ラベルを有する可能性がある。更に、同じ種類の様々なコンポーネントは、参照表示の後に、同様のコンポーネントを区別する第2の表示によって区別することができる。第1の参照表示のみを明細書において用いる場合、説明は、第2の参照表示に関係なく、同じ第1の参照表示を有する類似のコンポーネントのいずれか1つに適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、多数の具体的な詳細を本発明の完全な理解を提供するよう説明する。しかし、当業者は、本発明をこれらの具体的な詳細なしで実施できることを認識するべきである。場合によっては、回路、構造、及び技術は本発明を曖昧にすることを避けるために詳細に示されていない。
【0009】
図1は、様々な実施形態のための文脈として、例示的な静止衛星通信システム100を示している。図示のように、静止衛星105は多数の地上端末110と通信している。地上端末110は、ユーザ端末及びゲートウェイ端末を含むことができる。幾つかの実施形態において、地上端末110は静止している。幾つかの実施形態において、衛星105はベントパイプ型衛星である。幾つかの実施形態において、衛星105及び地上端末110はハブアンドスポーク式通信アーキテクチャを実装することができ、それにより、ユーザ端末はゲートウェイ端末を介して互いに及び他の通信ネットワークと通信する。例えば、フォワード通信はゲートウェイ端末から衛星105を介してユーザ端末へのものであり、リターン通信はユーザ端末から衛星105を介してゲートウェイ端末へのものであり、また、ユーザ端末は衛星105を介して他のユーザ端末と直接通信しない。他の実施形態において、衛星通信システム100は、メッシュネットワーク、ピアツーピアネットワークとして、又はその他の適切なアーキテクチャに従って設計することができる。
【0010】
衛星105は、ビームカバレッジ領域120をスポットビーム130で照射することによって地上端末110と通信することができる。例えば、広い地理的領域に広がる多数の地上端末110に通信サービスを提供するため、地理的領域は、通常、より小さいカバレッジ領域120に分割することができ、それらのカバレッジ領域120はスポットビーム130によってサービスを提供することができる。スポットビーム130は、地球の限定された地理的領域に焦点を合わせた衛星ビームである。衛星フィードはスポットビーム130を生成するために用いることができ、スポットビーム130によって照射される地理的領域内に配設される地上端末110はそれらのフィードを介して衛星105と通信することができる。本明細書中で用いられるように、特定のスポットビーム130のためのカバレッジ領域120は、概して、地上端末がスポットビーム130を介して少なくとも所定の最低レベルの信号品質を提供することができる地球の限定された地理的領域を指す。例えば、スポットビーム130のためのカバレッジ領域120は、そのカバレッジ領域120内の地上端末が、スポットビーム130にわたるピーク信号強度の3dB内である信号強度を認識するよう予期されるように、スポットビーム130のアンテナパターンの3dB(又は他の適切な値)断面に従って画成され得る。別の例として、スポットビーム130のためのカバレッジ領域120は、カバレッジ領域120内のピークより下の所定量である搬送波対干渉波(C/I)比(例えば、スポットビーム130の中心における最大C/I)に従って画成され得る。
【0011】
地上端末110は、様々なスポットビーム130を介して衛星105との通信を可能にする機器を含むことができ、少なくとも1つのスポットビーム130のカバレッジ領域120内に位置することができる。各地上端末110は、特定のスポットビーム130を割り当てられることができ、その割り当てられたスポットビーム130を介する通信のために構成され得る機器(例えば、アンテナ、トランシーバ、等)を含むことができる。各地上端末110の機器は、また、再割り当てメッセージに応じて、以前に割り当てられたスポットビーム130とは異なるビーム特性(例えば、搬送波周波数、偏波、等)を有することができる新規に割り当てられるスポットビーム130との通信のために自動的に再構成することもできる。地上端末110の機器を構成及び再構成することは、割り当てられたスポットビーム130を介して変調データを送信し、受信するために、機器の1つ以上の通信設定を更新することを含むことができる。通信設定は、例えば、特定の搬送波周波数、特定の偏波配向、特定のパケット情報(例えば、プリアンブル、ポストアンブル、ミッドアンブル、又はその他の適切な方法で実装)、特定の変調、及び/又はコード体系、等のうちの1つ以上であってもよい。通常、衛星105は多数のスポットビーム130を用いて地球の広い地理的領域を照射することができ、衛星105は、静止軌道を維持することによって地球に対して一貫した位置(例えば、軌道スロット)を維持することができる。衛星105の位置が厳密に維持され得るとしても、スポットビーム130指向誤差は、衛星の姿勢、反射器の歪み、温度勾配、スラスタ発射、及び他の衛星操縦等の要因における僅かな変動に起因する可能性がある。
【0012】
より高い指向性及びより大きな開口を有する衛星アンテナは、より小さいそれぞれのカバレッジ領域120を照射するより狭いスポットビーム130を生成するために用いることができる。より狭いスポットビーム130は、スポットビーム130毎のより高いゲインを提供することができ、これはユーザ端末におけるより良好な信号対雑音(SNR)比を生じることができ、衛星105と地上端末110との間のより高いデータ転送速度を可能にすることができる。また、より狭いスポットビーム130は、より大きな周波数再利用を可能にすることができ、これは衛星通信システム100のデータスループットの更に大きな向上を提供することができる。しかし、スポットビーム130のカバレッジ領域120は、時間の経過と共にそれらの公称位置からドリフトする可能性があり、ドリフトは、より狭いスポットビーム130の文脈においてより大きなサービス影響を及ぼす可能性がある。
【0013】
例えば、図示のように、衛星105は、フィード構造140及び反射器構造150等のスポットビーム130を生成するために用いられる様々な物理的特徴を含むことができる。ほんの数千分の1度内の衛星105及び/又はこれらの特徴の動き(例えば、反射器150の歪み、衛星105姿勢の変化、等による)は、スポットビーム130によってカバーされる地理的領域における顕著なドリフトを引き起こす可能性がある。単一の衛星反射器150は、多くの場合、その単一の反射器150の僅かな偏向が多くのカバレッジ領域120を同時にドリフトさせる可能性があるように、多数のスポットビーム130を生成するために用いられる。更に、複数の反射器150を有する衛星105は、各反射器150に対して異なる歪みを受ける可能性があり、地上の隣接するカバレッジ領域120でさえ、異なる方向及び/又は異なる量でドリフトする原因となる。より狭いスポットビーム130は、通常、より大きな反射器150を用いて生成され、より大きな反射器150はより歪み易い傾向がある。更に、より小さなスポットビームカバレッジ領域120により、より多くの地上端末110がカバレッジ領域120の縁部付近に(スポットビーム130の中心から離れて)ある傾向があり、その結果、ドリフトするカバレッジ領域120はより多くの地上端末110に対するサービスを低下させる可能性が高い。
【0014】
幾つかの従来のアプローチは、より正確な衛星105のポインティングを提供しようと試みている。しかし、かかるアプローチは相当量の燃料を消費する傾向がある可能性があり、反射器150の歪み等を説明できない。他の従来のアプローチは、所望のスポットビーム130ポインティングを維持するために機械的ビームステアリング、デジタルビームフォーミング、及び/又は他の技術を用いている。しかし、かかるアプローチは、衛星105のコスト、複雑さ、及び重量を増加させる傾向がある可能性がある。
【0015】
本明細書中で説明する実施形態は、かかるドリフトに起因する信号品質の劣化を検出し、劣化を打ち消す方法でスポットビーム130に地上端末を動的に再割り当てすることによって、カバレッジ領域120ドリフトの文脈において地上端末へのサービス品質を維持することに対する新規性のあるアプローチを含んでいる。静止衛星通信システム100は、1つ以上の地上処理ノード(
図1において図示せず)を含むことができる。幾つかの実施形態において、地上処理ノードは、1つ以上のコアノード、ネットワークオペレーションセンター(NOC)、等内で共同設置又は統合されるような地上端末110(例えば、ゲートウェイ端末)の幾つかと通信する地上ネットワーク内にあってもよい。幾つかの実施形態において、地上処理ノードは1つ以上のゲートウェイ端末内に共同設置又は統合され得る。以下で詳細に説明するように、地上処理ノードは、1つ以上のスポットビーム130の1つ以上のカバレッジ領域120の現在のドリフトを示すビームドリフトトリガを検出するためにスポットビーム130によって照射されるカバレッジ領域120内の位置における信号品質(例えば、信号強度、信号対雑音比、搬送波対干渉波比、搬送波対干渉波プラス雑音比、パケットエラー、及び/又は損失データ、等)を示すリンク測定データを用いることができる。本明細書中で用いるように、リンク測定データとは、概して、地上端末の位置における信号品質を示す、衛星とそれらの地上端末との間のスポットビームを介して通信される1つ以上の信号の測定データの集合を指す。地上端末のセットは、ドリフトスポットビームに現在割り当てられているものとして、及び、現在のドリフトから信号品質の低下が発生しているものとして識別され得る。地上処理ノードは、ビームドリフトトリガに応答して、地上端末の各セットをそれらのそれぞれに現在割り当てられているスポットビーム130から他のスポットビーム130に再割り当てすることによって、信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消す更新されたビーム割り当てマップを計算することができる。地上端末がユーザ端末を含む実施形態において、再割り当てメッセージは、衛星105を介して(例えば、地上処理ノードからゲートウェイ端末を介して)影響を受けるユーザ端末に通信され、計算されたビーム割り当てマップに従う更新されたスポットビーム130の割り当てを示す。ユーザ端末は、それらの機器のそれらの通信設定(例えば、搬送波周波数、偏波配向、通信タイムスロット、変調及び/又はコード体系、ビーム識別子、及び/又は他の設定)を更新して、更新されたビーム割り当てマップに従って新規に割り当てられたスポットビーム130との通信を実施することができる。地上端末がゲートウェイ端末を含む実施形態において、再割り当てメッセージは、地上ネットワークを介して及び/又は衛星105を介して影響を受けるゲートウェイ端末に通信することができる。影響を受けるゲートウェイ端末は、次いで、それらの機器のそれらの通信設定を更新して新規に割り当てられたスポットビーム130との通信を実施することができる。本明細書中で説明するように、実施形態は、再割り当てされた地上端末と衛星との間のステートフル通信を維持する方法でビーム再割り当てを実施することができる。例えば、従来のビーム割り当ては、新規インターネットプロトコル(IP)アドレスを割り当てること、ソケット接続を解体し、再度確立すること、等を必要とすることができる。本明細書中で説明するように、ビーム再割り当ては、現在閲覧中のセッション、メディアストリーミング、及び/又は他のネットワークトランザクションが中断されないような方法(例えば、モバイルIPのようなプロトコル、プロキシサーバ、及び同様の技術を用いる)で実施されてもよい。
【0016】
図2は、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される例示的な地理的領域200を示している。明確にするために、3つのカバレッジ領域及び2つの地上端末110のみが示されている。以下の検討において、
図2の2つの地上端末110はユーザ端末である。実線は第1の時間におけるカバレッジ領域の初期位置210を示すために用いられ、破線は第2の時間におけるカバレッジ領域のドリフト位置220を示すために用いられている。例えば、カバレッジ領域に関連付けられるスポットビームを生成するために用いられる衛星反射器の歪みは、第1のスポットビームの第1のカバレッジ領域がその初期位置210aからそれぞれのドリフト位置220aにドリフトする原因となる。ドリフトの方向及び量は矢印215によって示されている。
【0017】
図示するように、第1の時間において、第1のユーザ端末110aは、第1のスポットビームの第1のカバレッジ領域初期位置210aのすぐ外側で、第2のスポットビームの第2のカバレッジ領域初期位置210b内に位置する。従って、第1のユーザ端末110aは、第2のカバレッジ領域初期位置210bを照射する第2のスポットビームに現在割り当てられていてもよい。しばらくすると、第1のスポットビームの第1のカバレッジ領域はそのドリフト位置220aにドリフトし、第2のスポットビームの第2のカバレッジ領域はそのドリフト位置220bにドリフトする。ドリフト後、第1のユーザ端末110aは、第2のドリフト後カバレッジ領域220bのすぐ外側で、第1のドリフト後カバレッジ領域220a内に位置する。従って、第1のユーザ端末110aは、現在割り当てられている第2のスポットビームを介して低下したサービスを受ける可能性がある。実施形態は、ドリフト(例えば、及び/又はサービス低下)を検出することができ、第1のドリフト後カバレッジ領域220aを照射する第1のスポットビームへの第1のユーザ端末110aの再割り当てがユーザ端末110aに改善されたサービスを提供することを特定することができ、第1のユーザ端末110aに、その通信設定を調整して再割り当てされた第1のスポットビームを介して通信を開始するよう指示することができる。
【0018】
図3は、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域300を示している。上で説明したように、衛星は1つ以上の反射器を含むことができる。
図2において、図示されたカバレッジ領域は全て、同じ反射器を用いて生成されたスポットビームによって照射されていると仮定することができ、ドリフトは異なるカバレッジ領域間で比較的一貫するように示されている。
図3において、図示されたカバレッジ領域のそれぞれは、異なる反射器を用いて生成されるスポットビームによって照射される(すなわち、衛星は少なくとも3つの反射器を含む)。各反射器の歪みは、その関連するスポットビームカバレッジ領域がドリフトする原因となり、各カバレッジ領域のそれぞれのドリフトは、矢印215によって示されるような他のカバレッジ領域のドリフトとは独立し、異なる可能性がある。例えば、幾つかの実施形態は、異なる反射器を用いて、異なる偏波配向、色、等の隣接スポットビームを生成することができ、これにより干渉軽減を提供することができる。このため、隣接するカバレッジ領域は異なってドリフトしてもよい。更に、幾つかの実施形態において、多重反射器衛星の各反射器は広い地理的領域に広がるスポットビームの大きなグループを照射することができ、スポットビームの各グループのカバレッジ領域は、他のスポットビームグループの他のカバレッジ領域のドリフトとは異なる場合でも、グループ内のスポットビーム間で一貫する方法でドリフトすることができる。かかる場合、ある特定の従来のアプローチは効果的ではない可能性がある。例えば、衛星の方位角及び/又は高度を調整することは、一部のカバレッジ領域におけるドリフトを修正することを助ける一方で、他のカバレッジ領域におけるドリフトを悪化させる可能性がある。本明細書中で説明される幾つかの実施形態は、例えば、多数のスポットビームにわたってグローバルにビーム割り当てを計算することによって、スポットビーム生成のこれら及び他の特徴を対処及び/又は活用することができる。
【0019】
上で説明したように、実施形態は1つ以上のスポットビームカバレッジ領域の現在のドリフトを示すビームドリフトトリガを検出する。幾つかの実施形態は、地上端末のサブセットの位置におけるリンク測定データに基づいてドリフトを測定することができ、ドリフトに従って、どの追加地上端末がドリフトによる信号品質の低下を受ける可能性が高いかを予測することができる。他の実施形態は、地上端末のセットのそれぞれの位置におけるリンク測定データに基づいてドリフトを測定し、そのセット内のどのユーザ端末が信号品質の低下を受けているかを直接識別することができる。信号品質が地上端末の位置において測定される方法は実施形態ごとに異なる可能性がある。例えば、一実施形態によれば、地上端末は、衛星からダウンリンクメッセージ(例えば、管理メッセージ)を受信することができ、それらのメッセージの強度及び/又はそれらのメッセージに含まれる他の情報を追跡して信号品質を経時的に監視することができる。地上端末はそれらの信号品質を示す情報を1つ以上の地上処理ノードに返して(例えば、衛星を介して)通信することができ、情報はドリフトを監視するために用いられるリンク測定データを生成するよう収集することができる。別の実施例によれば、衛星は狭いスポットビーム及び1つ以上の広域ビームを照射することができる。地上端末は、スポットビームからのそれらの信号品質を監視するよう、広域ビームを介して受信したダウンリンク信号の信号強度と比較して、スポットビームを介して受信したダウンリンク信号の信号強度を測定することができる。
【0020】
図4A~4Cは、複数の重複するスポットビームカバレッジ領域によってサービスが提供される別の例示的な地理的領域400を示している。以下の検討において、
図4A~4Cの地上端末410はユーザ端末である。ユーザ端末410のグループは割り当てられた第1のスポットビームの第1のカバレッジ領域の初期位置210aに位置して示されている。明確にするために、第1のスポットビームに最初に割り当てられたユーザ端末410のみが示されている。黒く塗りつぶされた円として示されるユーザ端末410は、カバレッジ領域内で良好に位置し、良好なサービス品質を有するユーザ端末410を示している。パターンで塗りつぶされた円として示されるユーザ端末410は、カバレッジ領域の縁端に位置し、現在良好ではあるがビームドリフトによる低下を受けやすい信号品質を有するユーザ端末410を示している。白く塗りつぶされた円として(
図4Bに)示されるユーザ端末410は、それらの割り当てられたカバレッジ領域210のカバレッジ領域外に位置し、許容できない信号品質を現在有するユーザ端末410を示している。
【0021】
図4Aにおいて、初期時間において、2つの隣接するカバレッジ領域はそれらの初期位置(210a、210b)にあり、ユーザ端末410cは第1のカバレッジ領域内に良好にあり、そして、ユーザ端末410a及び410bは第1のカバレッジ領域の縁端にある。
図4Bにおいて、第2の時間において、2つの隣接するカバレッジ領域はそれぞれのドリフト位置220a及び220bにドリフトしている。ここで、ユーザ端末410bは第1のカバレッジ領域内に良好にあり、ユーザ端末410cは第1のカバレッジ領域の縁端にあり、そして、ユーザ端末410a(並びに、410d、410e、及び410f等の他のユーザ端末)は第1のカバレッジ領域の完全に外側にある。
図4Cに示すように、カバレッジ領域のドリフトに応じて、第3の時間において、影響を受けるユーザ端末410は第2のカバレッジ領域に関連する第2のスポットビームに再割り当てされ得る。明確にするために、ある特定の影響を受けるユーザ端末(410a、410d、410e、及び410f)のみが、第2スポットビームの第2カバレッジ領域へのそれらのユーザ端末410の再割り当てを示すために示されている。ここで、ユーザ端末410aはそれが再割り当てされた第2のカバレッジ領域内に良好にあり、そして、ユーザ端末410d、410e、及び410fはそれらが再割り当てされた第2のカバレッジ領域の縁端にある。
【0022】
かかるアプローチにおいて、幾つか又は全ての地上端末の位置における信号品質はビームドリフトを検出することに関与することができる。幾つかの実施形態において、現在のビーム割り当てマップは、ビームドリフトを示すのに十分なリンク測定データを統計的に提供する可能性が高い1つ以上のカバレッジ領域にわたって地上端末のサンプルサブセットを識別するために用いることができる。他の実施形態において、地上端末は、カバレッジ領域位置に対する地上端末の地理位置情報データに基づいて関与するよう選択することができる。例えば、全地球測位衛星(GPS)データ、アカウント情報(例えば、郵便番号データ、住所データベースデータ、等)、及び/又はその他の適切なデータは地上端末の地理的位置を特定するために用いることができる。ある特定の地上端末は、次いで、例えば、カバレッジ領域の中心からのある特定の距離、等に基づいてカバレッジ領域の縁端のある特定の距離内に位置するように選択することができる。
【0023】
図5は、様々な実施形態による、静止衛星通信ネットワークにおける例示的な動的ビーム割り当てシステム500のためのブロック図を示している。複数のゲートウェイ端末560は衛星105を介して複数のユーザ端末570と通信することができる。例えば、ユーザ端末570は衛星105のスポットビームによって照射されるユーザ端末カバレッジ領域に配置され、各ユーザ端末570はスポットビームの特定の1つを介して衛星105と通信するよう任意の特定の時間に割り当てられ得る。幾つかの実施形態において、衛星105は静止衛星105であり、スポットビームは固定スポットビームである。本明細書中で用いるように、固定スポットビームは、固定地理的位置の任意の変化がビームドリフトによって引き起こされるように、名目上固定される地理的位置を照射するカバレッジ領域を有している。例えば、固定スポットビームのカバレッジ領域の固定地理的位置のかかる変化は、衛星、フィード、及び/又は反射器の再構成によるものではない(例えば、固定スポットビームは機械的又はデジタル的に操作できない)。ゲートウェイ端末560は地上ネットワーク550を介して1つ以上の地上処理ノードと通信している。例えば、地上ネットワーク550はインターネット基幹ネットワークインフラストラクチャを含むネットワーク等の任意の適切なネットワークであり得る。
【0024】
地上処理ノードの少なくとも1つは図示する地上処理ノード構造540を含むことができる。地上処理ノード構造540の実施形態は、それらに格納されるビーム割り当てマップ525を有するデータストア505を含むことができる。データストア505は、地上処理ノード構造540の他のコンポーネント内に位置するか又はそれと通信する1つ又は複数の物理的ストレージデバイスとして実装することができる。ビーム割り当てマップ525は、各(例えば、一部又は全ての)ユーザ端末570及びゲートウェイ端末560のためのビーム割り当てを示すことができる。ビーム割り当てマップ525において、ユーザ端末570及びゲートウェイ端末560は、任意の適切な方法で識別することができ、ユーザ端末570及びゲートウェイ端末560それぞれに関する任意の適切な情報を含むことができる。例えば、ユーザ端末570及びゲートウェイ端末560は、一意の識別子(例えば、シリアル番号、インデックス番号、メディアアクセス制御(MAC)アドレス、等)、位置情報(例えば、全地球測位衛星(GPS)座標、住所、等)、等に関連付けることができる。ビーム割り当てマップ525はまた、ユーザ端末570及びゲートウェイ端末へのビームの割り当てに関する任意の適切な情報を含むことができる。例えば、ビーム割り当てマップ525は、現在のビーム割り当て(例えば、現在割り当てられているビームのためのビーム識別子、現在割り当てられているビームに関連付けられたビームグループ、等)、通信設定(例えば、現在の搬送波周波数、偏波配向、変調及びコード体系、プロトコル情報、等)に関する情報、再割り当て特定を支援する情報(例えば、現在割り当てられているビームに隣接するビーム、そのユーザ端末570又はゲートウェイ端末560のための最後の再割り当てからの経過時間、等)、等を含むことができる。データストア505の幾つかの実施形態(例えば、ビーム割り当てマップ525及び/又は他の格納された情報)は、動的ビーム割り当てに関する追加情報を含むことができる。例えば、実施形態は、閾値に関する情報(例えば、ビーム再割り当てをトリガするプログラム可能な最小信号強度測定、等)、ビーム位置データ(例えば、カバレッジ領域の現在のマップ)、ビームローディング情報(例えば、ビームの現在利用可能な容量、ビームリソースの現在及び/又は予測需要、等)、ビームグループ化及び/又は依存情報(例えば、衛星105の反射器とそれらの反射器によって照射されるビームとの間のマッピング、ユーザ端末110の種類又はカテゴリによってグループ化されるビーム、変調及びコード体系によってグループ化されたビーム、地理的領域によってグループ化されたビーム、等)、等を格納することができる。
【0025】
地上処理ノード構造540の実施形態は、ビーム追跡構造530、端末割り当て構造520、及び通信インターフェース構造510を含むことができる。通信インターフェース構造510は、地上ネットワーク550及びゲートウェイ端末560を介して衛星105と通信可能に結合され得るネットワークデータ入力及びネットワークデータ出力を含むことができる。例えば、通信インターフェース構造510は、地上ネットワーク550と地上処理ノード構造540の他のコンポーネントとの間のインターフェースを提供するための任意の適切なハードウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。ビーム追跡構造530は、本明細書中で説明するリンク測定データを受信するために、通信インターフェース構造510と結合され得るリンク測定データ入力を含むことができる。ビーム追跡構造530はまた、リンク測定データ入力が衛星105のスポットビームの少なくとも1つによって照射されるカバレッジ領域の現在のドリフトを示す場合、ビームドリフトトリガ535を含む(例えば、示す)トリガ信号出力を含むことができる。
【0026】
実施形態は、リンク測定データ入力を介して受信されるリンク測定データが衛星105のスポットビームのうちの少なくとも1つによって照射されるカバレッジ領域の現在のドリフトを示す場合を特定するための様々な技術を含んでいる。幾つかの実施形態は、単一のビームカバレッジ領域のドリフト、ビームカバレッジ領域のグループ、特定の反射器に関連する全てのビームカバレッジ領域、衛星105に関連する全てのビームカバレッジ領域、等を特定する。例えば、別個のビームドリフトトリガ535は異なる反射器に関連して生成することができ、ここで衛星105上の複数の反射器は独立した歪みを受ける可能性があり、及び/又は、そうでなければ、カバレッジ領域の異なるグループに異なるドリフトを引き起こす可能性がある。
【0027】
幾つかの実施形態において、トリガ信号出力は、第1の時間におけるリンク測定データ入力に従って計算されるカバレッジ領域の第1の位置と第2の時間におけるリンク測定データ入力に従って計算されるカバレッジ領域の第2の位置との間の差が、第1の位置と第2の位置との間のドリフトの閾量(例えば、ドリフトの閾距離、特定の時間枠にわたる位置の閾パーセンテージ変化、公称外の位置を示すサンプルの閾数、等)を少なくとも示す場合、ビームドリフトトリガ535を生成する。幾つかの実施形態において、ビーム追跡構造530は、他の基準も満足する場合にのみ、ビームドリフトトリガ535を出力する。例えば、ビーム追跡構造530の実施形態は、周期的変動等のビームドリフトパターンプロファイルを監視することができ、かかるドリフトパターンプロファイルが検出される場合に、ビームドリフトトリガ535を生成しないよう特定することができる。
【0028】
一実施形態において、信号品質の表示は特定のビームに現在割り当てられている幾つか又は全てのユーザ端末570によって通信され、ビーム追跡構造530はリンク測定データ515としてデータを受信する。例えば、リンク測定データ515は、それぞれが、そのデータが受信されたユーザ端末570の位置(例えば、地図座標又はその他の適切な座標における2次元又は3次元位置)を示す関連位置を有し、そのユーザ端末570のための現在の信号品質を示す関連信号品質値(例えば、瞬時値として、時間ウィンドウにわたる統計平均として、又は他の適切な方法で測定される)を有するデータポイントのセットを含むことができる。他の実施形態において、リンク測定データ515は、幾つか又は全てのゲートウェイ端末560において、1つ以上の地上管制部において、及び/又はその他の適切な方法で行われる測定に従って受信されてもよいか、又は、代替として行われてもよい。更に、リンク測定データ515に用いられる測定は、アップリンク及び/又はダウンリンク信号品質測定、送信リンク及び/又は返信リンク信号品質測定、及び/又はその他の適切な測定を含むことができる。
【0029】
ビーム追跡構造530は、例えば、信号品質の少なくともある程度の閾値の大きさを受ける地上端末(例えば、ユーザ端末570及び/又はゲートウェイ端末560)に対応するデータ点のセットのそれらに楕円形又は他の適切な形状を適合させることによって、そのビームのための現在のカバレッジ領域を推定するためにリンク測定データ515を用いることができる。推定された現在のカバレッジ領域は、そのスポットビームのための格納されている公称カバレッジ領域と比較され(例えば、公称からの現在の偏差を特定するため)、そのスポットビームのための最後に記録されたカバレッジ領域と比較され(例えば、最後の測定からの変化を特定するため)、そのスポットビームのための記録されたカバレッジ領域の最後のシリーズと比較され(例えば、ドリフト傾向を特定するため)、等を行うことができる。形状を適合させることによって現在のカバレッジ領域を推定するのではなく、幾つかの実施形態は、ドリフトプロファイルのトリガを検出するよう地上端末のセットの差分変化を追跡することができる。例えば、カバレッジ領域の東側境界付近に位置する特定のユーザ端末570(例えば、又はユーザ端末570のグループ)が信号品質低下を受け始め、同じカバレッジ領域の西側境界のすぐ近くに位置する別の特定のユーザ端末570(例えば、又はユーザ端末110のグループ)が改善された信号品質を同時に受け始めた場合、ビーム追跡構造530は、これをカバレッジ領域(及び関連するスポットビーム)が西に向かってドリフトしていることを示すものとして特定してもよい。別の実施形態において、ビーム追跡構造530は、ビームドリフトを推定するための地理的に広いベースを展開するために複数のカバレッジ領域にわたるリンク測定データ515を用いることができる。例えば、衛星105のカバレッジ領域全体に分布するユーザ端末570の位置及び/又はゲートウェイ端末560の位置の統計的サンプリング全体の信号品質の変化は、1つ以上の反射器の歪み、衛星105全体の姿勢(例えば、方位角及び/又は高度、等)の変化、及び/又はその他の変更を示すある特定のパターンを明らかにすることができ、これはビームドリフトを推定するためにビーム追跡構造530によって用いられ得る。
【0030】
端末割り当て構造520の実施形態は、ビームトリガ出力と結合されるトリガ信号入力を含むことができる。端末割り当て構造520は、また、現在割り当てられているそれぞれのスポットビームから再割り当てされるそれぞれのスポットビームへの地上端末の識別されたセットのそれぞれのビーム再割り当てを示すビーム割り当て変更メッセージを含む割り当て信号出力も含むことができる。ビーム割り当て変更メッセージは、現在のドリフトに起因する地上端末の識別されたセットの信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消すよう(例えば、トリガ信号入力においてビームドリフトトリガ535を検出することに応じて)計算されたビーム割り当てマップ525に対する1つ以上の更新を示すことができる。例えば、再割り当ては、改善された信号強度、信号対雑音比、搬送波対干渉波比、搬送波対干渉波プラス雑音比、パケットエラー、及び/又は損失データ、スペクトル効率、より高いヘルツ当たりのビット数、及び/又は信号品質改善のためのその他の適切な基準を提供するよう特定することができる。端末割り当て構造520は、様々な方法で再割り当てするよう地上端末のセットを識別することができる。識別は、信号品質における低下の閾量を少なくとも現在受けるべきリンク測定データ515に従ってビーム追跡構造530によって特定される地上端末のセット(地上端末の「現在低下したセット」)に基づくことができる。例えば、リンク測定データ515は、各地上端末のための現在の信号品質レベルが直接測定されるか、そうでなければ直接特定され得るように、全ての地上端末から受信することができる。代替として、ビーム位置データ515は、地上端末の指定されたサブセット(例えば、所定の統計的サンプリング等)からのみ受信することができ、他の地上端末の現在の信号品質は、指定されたサブセットのものに対するそれらの近似(及び/又はその他の適切な類似性)に従って推定することができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、地上端末の現在低下しているセットは全て、再割り当て候補地上端末110として識別される。例えば、再割り当て候補地上端末のそれぞれについて、端末割り当て構造520は、1つ以上の候補再割り当てビーム(その地上端末の現在割り当てられているビームとは異なる)を識別することができ、再割り当て候補地上端末がその候補の再割り当てビームに再割り当てされた場合、信号品質の予測変化を計算することができる。各再割り当て候補地上端末は、再割り当て候補ビームの1つが改善された信号品質を提供すると予測される場合(例えば、又は、信号品質改善の所定の閾値レベルを少なくとも提供するよう予測された場合のみ)、再割り当てすることができる。端末割り当て構造520が複数の再割り当て候補ビームがサービス改善を提供すると特定した場合、1つを任意の適切な方法で選択することができる。例えば、最大の改善を提供する1つを再割り当てのために選択することができ、ビームドリフト傾向に基づいて1つを選択することができ(例えば、ビームが東にドリフトしていると判断された場合、現在割り当てられているビームの東への再割り当て候補ビームが選択のためにより重く重み付けすることができ)、ビームのグループ化に従って1つを選択することができ(例えば、地理的に近接した、又はそうでなければ同様の地上端末のセットがグループとして分析されて、どの再割り当て候補ビームが信号品質における最大の改善を全体のセットに提供するかを特定することができ)、現在のビームローディングに従って1つを選択することができ(例えば、より多くの未使用容量を現在有する候補ビームを再割り当てするよう優先することができる)、等が行われる。
【0032】
他の実施形態において、地上端末の現在低下しているセットの一部のみが、再割り当て候補地上端末として識別される。例えば、地上端末の現在低下しているセットの全ては再割り当て候補地上端末として最初に識別されてもよく、その最初に識別されたセットは1つ以上の要因に基づいて選別され得るか、又は、再割り当て候補地上端末の初期識別は1つ以上の要因を説明することができる。かかる要因の1つとして、特定の再割り当て候補地上端末について、新規ビームへの再割り当てが信号品質の十分な、又は任意の改善さえも提供しないと特定される可能性がある。かかる場合において、幾つかの実施形態は、依然として、(例えば、アルゴリズムの簡略化のために、再割り当てされてもよい地上端末及び他の地上端末とのビームグループを維持するため、又はその他の適切な理由のために)地上端末を新規ビームに再割り当てすることができる一方で、他の実施形態は地上端末を再割り当てしないことを特定することができる。別のかかる要因として、粘着性要因が、特定の地上端末を再割り当てできる頻度を制限するために適用することができる。例えば、地上端末の再割り当て時に、タイマーをトリガすることができ、その地上端末の任意の後続の再割り当てを所定の時間が経過するまで阻止することができる(例えば、又は、場合によっては、サービス低下のより高い閾値レベルが、再割り当てに用いられる一般的な閾値よりもその地上端末に対して特定される場合)。更に別のかかる要因として、幾つかの地上端末(例えば、古い端末)は、ある特定種類の再割り当てが(例えば、異なる偏波で動作するビームに対して)許可されないように、固定の偏波配向とのみ通信することができてもよい。別の要因として、再割り当ての計算は衛星通信システムの高レベルの通信方式を説明することができる。例えば、地上端末の再割り当ては、ビーム切り替え方式、衛星切り替え時分割多元接続(SS-TDMA)プロトコル等に影響を与える可能性があり、そして、端末割り当て構造520は再割り当てを計算することにおけるかかる方式を説明することができる。別の要因として、再割り当ては地上端末によるビームリソースの現在の使用を考慮することができる。例えば、再割り当ては、ユーザ端末110がストリーミングメディアの途中にあるか、適応ビットレートコンテンツと対話しているか、リアルタイムアプリケーションプロトコル(例えば、ボイスオーバインターネットプロトコル(VoIP)、オンラインゲーミング、等)を用いているかどうか等を説明することができる。また、別の要因では、再割り当ては電力制御の考慮事項を説明することができる。例えば、再割り当ての計算は、ビーム全体の電力レベルを最適化する方法でヘルツ当たりのビット数を最大化することによってスペクトル効率を改善するよう探ることができる(例えば、電力制御を望ましい非最大レベルに維持する)。
【0033】
幾つかの実施形態において、再割り当て候補地上端末は、地上端末110の現在低下しているセットに従って識別されるが、幾つか、全て、又は追加の地上端末でさえ含んでいてもよい。例えば、地上端末の現在低下しているセットは、ビームドリフトトリガ535を生成するために用いることができ、これはビーム再割り当ての端末割り当て構造520による計算をトリガすることができる。計算は、任意の適切なレベルで(例えば、衛星105全体にわたって、衛星105を含む通信システム全体にわたって、1つ以上の特定のビームにわたって、1つ以上の地上端末のグループにわたって、等)特定のネットワーク特性を最大化及び/又は最小化するように向けられた様々な種類の最適化を関与することができる。例えば、最適化計算は、地上端末のネットワーク全体にわたる平均信号品質を最大化する一方で、再割り当てされる地上端末の数を最小限に抑えるよう探ることができる。代替として、最適化計算は、例えば、インフラストラクチャリソースを現在消費しているそれらの地上端末(例えば、現在メディアをストリーミングしている、ファイルをダウンロードしている、等のユーザのユーザ端末110)を優先的に再割り当てすることによって、消費者の満足度を最大化するよう探ることができる。
【0034】
端末割り当て構造520の幾つかの実施形態は、格納されたビームロードバランシング方式を有し、ビームロードバランシング方式に関してスポットビームのセット(例えば、幾つか又は全て)の現在のローディングを維持するビームローディングモニタ522を含む。例えば、任意の特定の時間において、各ビームはある特定量のインフラストラクチャリソース(例えば、帯域幅)が割り当てられ、それらの割り当てられたリソースのある特定の割合がそのビームのカバレッジ領域内のユーザ端末110にサービスを提供するよう消費されている。ユーザ端末110にサービスを提供するために用いられているビームリソースの量(例えば、ビームのローディング)は、ビームによってサービスが提供されているユーザ端末110の数、それらのユーザ端末110からのビームリソースに対する現在及び将来の需要量、それらのユーザ端末によって用いられる通信方式(例えば、異なる通信プロトコル、変調及び/又はコード体系、及び/又は同様のものは帯域幅消費に影響を及ぼす可能性がある)、等によって影響を受ける可能性がある。現在割り当てられているビームから再割り当てされるビームへのユーザ端末110の再割り当ては、現在割り当てられている及び再割り当てされるビームの両方のローディングに影響を与える可能性がある。従って、端末割り当て構造520の幾つかの実施形態は、ビームローディングモニタ522によって示されるように、現在のローディングに応じてビームロードバランシング方式に従ってビーム割り当てマップ525を計算する。幾つかの実施形態において、再割り当て候補ユーザ端末110を識別し、候補再割り当てビームを特定した後、端末割り当て構造520は、ユーザ端末110の現在低下しているセットのうちの少なくとも幾つかのための信号品質を改善(例えば、最大化)するよう探る一方で、現在割り当てられ、候補の再割り当てビームのローディングを維持又は改善さえする最適化されたビーム再割り当てを計算することができる。幾つかのかかる実施形態において、現在低下しているセットの一部として識別されていない幾つかのユーザ端末110は、現在低下しているセットの一部である他のユーザ端末を再割り当てする文脈においてロードバランシングを改善する目的で、依然として再割り当てされてもよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、通信インターフェース構造510のネットワークデータ出力は、ビーム追跡構造530のリンク測定データ入力へリンク測定データ(例えば、ビーム位置データ515)を通信するネットワークデータ入力に応答して、又はそうでなければそれに関連して、割り当て信号出力を含む(例えば、示す)。例えば、通信インターフェース構造510はビーム位置データ515を受信することができる。ビーム追跡構造530は、受信したビーム位置データ515のある特定の変化を検出することに応じて、ビームドリフトトリガ535を通信することができる。端末割り当て構造520は、ビームドリフトトリガ535を検出することに応じて、ビーム再割り当てメッセージを計算及び通信することができる。通信インターフェース構造510は、ビーム再割り当てメッセージを、地上ネットワーク550を介してゲートウェイ560に、及び/又は、ゲートウェイ560及び衛星105を介してユーザ端末110に出力することができる。また、影響を受ける各地上端末は、ビーム割り当て変更メッセージに応じて、その新規に割り当てられたスポットビームを介して通信するようその通信設定を調整することができる。幾つかの実施形態は、新規ビームへの再割り当ての効率を高めるために様々な技術を用いることができる。例えば、マルチキャストグループの一部であるユーザ端末110を再割り当てすることは、サービスの中断、再割り当ての遅延、又は他の影響を潜在的に引き起こす可能性がある。かかる場合、幾つかの実施形態は、その通信設定を変更するようユーザ端末110に指示する前に、(例えば、キャリア識別子、マルチキャストフロー識別子、制御チャンネルアドレス、データチャンネルアドレス、等を定義する)マルチキャストグループリソースを再割り当てビームに事前割り当てし、それによって、よりスムーズな再割り当てを可能にすることができる。他の実施形態は、ユーザ端末110と衛星105との間のステートフル接続性を維持することによって同様の懸念に対処している。
【0036】
幾つかの実施形態において、通信インターフェース構造510は、1つ以上のネットワークサーバ512を含むか、又はそれと通信している。ネットワークサーバ512の幾つかの実施形態は、ビーム割り当て変更メッセージに従ってビーム再割り当てを実施する場合、ユーザ端末110のセットのそれぞれと衛星105との間のステートフル接続性を保全するために、ユーザ端末110のセットのそれぞれに関連するビーム非依存型ネットワーク識別子を維持するよう動作する。例えば、一実施形態は、現在のビーム割り当てを考慮せずに、各ユーザ端末110がホームアドレスによってネットワーク上で識別されるように、ネットワーク上でデータグラムをルーティングするための位置に依存しないインターネットプロトコル(IP)アドレス(例えば、「モバイルIP」アドレス等)を用いる。かかる実施形態は、プロキシエージェント、又は他のかかるネットワーク仲介者を介する各ユーザ端末110とネットワークとの間のステートフル接続性を効果的に維持する(例えば、伝送制御プロトコル(TCP)接続を維持する)ことができるホームアドレス及び「気付」アドレスの両方を各ユーザ端末110に割り当てることを含むことができる。別の種類の実施形態は、スプリットTCP性能向上プロキシ(PEP)等のネットワークエージェントを用いることができる。TCP分割はユーザ端末110とネットワークとの間の終端間接続を複数のサブ接続に分割することができ、各サブ接続は、所望のデータ転送特性のために個別に構成することができる(例えば、長い衛星往復時間の文脈におけるTCPウィンドウサイズの懸念に対処するため)。かかる実施形態において、サブ接続の幾つかはカスタマイズされてステートフル接続を維持することができる。
【0037】
図6は、様々な実施形態による、静止衛星通信ネットワークにおける動的ビーム割り当てのための例示的な方法600のフロー図を示している。方法600の実施形態は、
図1~5を参照して説明したシステム、又は他の適切なシステムを用いて実行することができる。方法600の実施形態は、静止衛星の複数のスポットビームの複数のカバレッジ領域内の複数の位置における信号品質を示すリンク測定データを受信することによって、ステージ604において開始する。上で説明したように、リンク測定データは、幾つか又は全てのユーザ端末から、複数のゲートウェイ端末又は他のアクセスノードから、複数の地上管制部から、等で受信することができる。
【0038】
ステージ608において、実施形態はリンク測定データに従ってビームドリフトトリガを検出することができる。ビームドリフトトリガは、衛星のスポットビームによって照射されたカバレッジ領域の現在のドリフトを示すことができる。例えば、ビームドリフトトリガは、1つ以上のビームが少なくとも閾距離だけドリフトしたこと、1つ以上のビームの現在のドリフトが近い将来の時間枠内で閾量を超えると予測されること、1つ以上のビームのドリフトが時間枠にわたってある特定の量だけ増加していること(例えば、最近の履歴データの統合に基づいて、等)、等を示すことができる。更に、物理的な衛星アーキテクチャが反射器等の独立した歪みを許可する場合、ビームドリフトトリガは、複数の反射器のそれぞれについて個別に検出することができる。幾つかの実施形態において、ステージ604における受信は、第1の時間において第1のリンク測定データを受信し、第1の時間の後の第2の時間において第2のリンク測定データを受信することを含み、ステージ608における検出は、第1のリンク測定データに従って第1の時間にカバレッジ領域の第1の位置を計算すること、第2のリンク測定データに従って第2の時間にカバレッジ領域の第2の位置を計算すること、及び第1の位置と第2の位置との間のドリフトの閾量を少なくとも計算することを含む。
【0039】
ステージ612において、実施形態は、現在のドリフトから信号品質低下を受けているとして地上端末のセットを識別することができる。上で説明したように、地上端末の識別されたセットは、かかる低下を受ける地上端末の幾つか又は全てであり得る。例えば、幾つかの実施形態において、ステージ604における受信は、少なくともカバレッジ領域にわたって地理的に分散された複数の地上端末から第1の時間に第1のリンク測定データを受信し、第1の時間の後の第2の時間に複数の地上端末から第2のリンク測定データを受信することを含み、ステージ608における検出は、第2のリンク測定データを第1のリンク測定データと比較して、複数の地上端末の少なくとも幾つかのための信号品質の変化の大きさを特定することによって、カバレッジ領域のドリフトをモデル化することを含み、ステージ612における識別は、サービスの信号品質の変化の特定された大きさが信号品質の所定の閾低下を少なくとも示す複数の地上端末のサブセットを備えるよう地上端末のセットを識別することを含む。幾つかの実施形態において、ステージ612における識別は、更に、位置データ(例えば、地理位置情報データ、等)、サービス低下の大きさ(例えば、又は現在の信号品質、等)、及び/又はその他の適切な特性を識別すること等の地上端末の特性を識別することを含むことができる。幾つかの実施形態において、地上端末のセットは、更に、同じ又は異なる特性に従って識別される。例えば、地上端末のセットは、サービス低下の閾量を受け、また、特定の地理的領域内に位置し、また、帯域幅を現在消費している端末として識別することができる。
【0040】
ステージ616において、実施形態は、ステージ608におけるビームドリフトトリガを検出することに応じて地上処理ノードにおいて、現在割り当てられているそれぞれのスポットビームから衛星の複数のスポットビームの再割り当てされるそれぞれのスポットビームへ地上端末の各セットを再割り当てすることによって、信号品質低下を少なくとも部分的に打ち消すビーム割り当てマップに対する更新を計算することができる。上で説明したように、場合によっては、地上端末の再割り当てされたセットは、現在のドリフトからサービス低下を受けているとして識別された地上端末の幾つか又は全てを含み、地上端末の再割り当てされたセットは、また、他の要因(例えば、所望のビームローディングプロファイルを維持すること、等)に基づいて再割り当てのために識別された他の地上端末も含むことができる。幾つかの実施形態において、地上端末のセットは、更に、ステージ612において、ビーム割り当てマップに従って少なくとも1つのスポットビームに現在割り当てられているものとして識別される。幾つかの実施形態において、ステージ616における計算は、地上端末の各セットについて、再割り当てされたそれぞれのスポットビームが受信したリンク測定データに従って現在割り当てられているそれぞれのスポットビームよりも高い信号品質を提供するよう特定されるように、それぞれの再割り当てビームに地上端末を割り当てることを含む。他の実施形態において、計算は、ビームロードバランシング方式に関してスポットビームのセットの現在のローディングを特定すること、及び現在のローディングに従ってビームロードバランシング方式に従って更にビーム割り当てマップを更新することを含む。
【0041】
方法600の幾つかの実施形態は、更に、ステージ620において衛星を介して1つ以上の再割り当てメッセージを通信することを含む。幾つかの実施形態において、再割り当てメッセージは、衛星とのステートフル接続性を維持しながら、更新されたビーム割り当てマップに従ってそれらの通信設定を更新するように地上端末のセットに指示する。ステージ620における通信は、少なくとも地上端末のセットに再割り当てメッセージをマルチキャストすることを含むことができる。再割り当てメッセージは、地上端末の各セットに対して、衛星と通信するためにユーザ端末によって用いられる搬送波周波数、偏波配向、ビームグループ識別子のうちの少なくとも1つに対するそれぞれの更新を示すこと等の地上端末の再割り当てのための任意の適切な情報を示すことができる。
【0042】
本明細書中に開示する方法は、説明した方法を達成するための1つ以上の動作を含む。方法及び/又は動作は、特許請求の範囲の適用範囲から逸脱することなく交換されてもよい。言い換えれば、動作の特定の順序が明記されていなければ、特定の動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲の適用範囲から逸脱することなく、変更されてもよい。
【0043】
説明した機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの何れかの組み合わせにおいて実装されてもよい。ソフトウェアにおいて実装される場合、関数は非一時的コンピュータ読取可能媒体上の1つ以上の命令として格納されてもよい。ストレージ媒体は、コンピュータによってアクセスすることができる任意の利用可能な有形的表現媒体であってもよい。例としてであり、制限ではないかかるコンピュータ読取可能媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM、又は他の光学ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ、若しくは他の磁気ストレージデバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを担持又は格納するために用いられてもよく、コンピュータによってアクセスされてもよいその他の有形的表現媒体を含むことができる。本明細書中で用いられるようなディスク(disk及びdisc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーディスク、及びBlu-ray(登録商標)ディスクを含み、ここでディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再現する一方で、ディスク(disc)はレーザにより光学的にデータを再現する。
【0044】
コンピュータプログラム製品は、本明細書中で提示されるある特定の操作を実行することができる。例えば、かかるコンピュータプログラム製品は、本明細書中で説明される動作を実行するために1つ以上のプロセッサによって実行可能な、有形に格納(及び/又は符号化)される命令を有するコンピュータ読取可能有形媒体であってもよい。コンピュータプログラム製品は、包装材料を含むことができる。ソフトウェア又は命令は、また、伝送媒体を介して送信することもできる。例えば、ソフトウェアは、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)等の伝送媒体、又は赤外線、電波、若しくはマイクロ波等の無線技術を用いて、Webサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信することができる。
【0045】
更に、本明細書中に説明する方法及び技術を実行するためのモジュール及び/又は他の適切な手段は、適切な端末によってダウンロード及び/又は他の方法で取得されるか、及び/又はサーバ等に結合して、本明細書中で説明する方法を実行するための手段の転送を容易にすることができる。代替として、本明細書中で説明する様々な方法は、ユーザ端末及び/又は基地局がストレージ手段を装置に結合又は提供する際に様々な方法を取得できるように、ストレージ手段(例えば、RAM、ROM、CD又はフロッピーディスク等の物理的ストレージ媒体、等)を介して提供することができる。更に、本明細書中で説明される方法及び技術を装置に提供するためのその他の適切な技術が利用され得る。機能を実装する特徴は、また、機能の一部が異なる物理的位置において実装されるように分散されることを含み、様々な位置に物理的に位置することもできる。
【0046】
本発明を説明することにおいて、以下の用語が用いられる。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に規定しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、品目への参照は1つ以上の品目への参照を含む。「1つ」という用語は、1つ、2つ、又はそれ以上を指し、一般的に、数量の幾つか又は全ての選択に適用される。「複数」という用語は2つ以上の品目を指す。「約」という用語は、数量、寸法、大きさ、形成、パラメータ、形状、及び他の特性が正確である必要はないが、必要に応じて、許容される公差、変換係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者にとって公知の他の要因を反映して、近似及び/又はより大きく又はより小さくすることができることを意味する。「実質的」という用語は、列挙された特性、パラメータ、又は値を正確に達成する必要はないが、例えば、公差、測定誤差、測定精度の制限、及び当業者にとって公知の他の要因を含む偏差又は変動が、特性が提供することを意図した効果を妨げない量で発生する可能性があることを意味する。数値データは、本明細書中で範囲形式で表現又は提示することができる。かかる範囲形式は、単に便宜上と簡潔さのために用いられるため、範囲の制限として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値と下位範囲が明示的に列挙されているかのように、個々の数値又はその範囲内に含まれる下位範囲の全てを含むように解釈されるべきであることは言うまでもない。例示として、「約1~5」の数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び下位範囲も含むと解釈すべきである。従って、この数値範囲に含まれるのは、2、3、及び4等の個々の値、並びに、1~3、2~4、及び3~5等の下位範囲、等である。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲(例えば、「約1より大きい」)に適用され、説明されている範囲の広さ又は特性に関係なく適用すべきである。複数の品目は、便宜上、共通のリストに表示される可能性がある。しかし、これらのリストは、リストの各部材が別体の一意の部材として個別に識別されるように解釈すべきである。従って、かかるリストの個々の部材は、反対の指示なしに共通のグループにおけるそれらの表現にのみ基づいて、同じリストのその他の部材の事実上の同等物として解釈されるべきではない。更に、「及び」及び「又は」という用語が品目のリストと併せて用いられる場合、それらは広範に解釈されるべきであり、列挙された品目の任意の1つ以上を単独又は他の列挙された品目と組み合わせて用いることができる。「代替」という用語は、2つ以上の代替案の1つを選択することを指し、文脈が特に明記しない限り、選択をそれらの列挙された代替案のみ、又は列挙された代替案の1つのみを1度に制限することを意図していない。本明細書中で用いられるような「結合された」という用語は、コンポーネントが互いに直接接続されることを必要としない。代わりに、用語は、1つ以上の他のコンポーネントが結合されたコンポーネント間に含まれ得る間接接続の構成も含むことを意図している。例えば、かかる他のコンポーネントは、増幅器、減衰器、アイソレータ、方向性結合器、冗長スイッチ、等を含むことができる。また、特許請求の範囲内に含む本明細書中で用いるように、「のうちの少なくとも1つ」で始まる品目のリストで用いられるような「又は」は、例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」がA又はB又はC又はAB又はAC又はBC又はABC(すなわち、A及びB及びC)を意味するように、離接的列挙を示している。更に、「例示的」という用語は、説明された例が他の例よりも好ましい又は良好であることを意味しない。本明細書中で用いるように、構成要素の「セット」は、セットが1つを超えるセットを有することが明示的に必要とされるか、又はヌルセットであることを明示的に許可されている場合を除き、それらの構成要素の「1つ以上」を意味することを意図している。
【0047】
本明細書中で説明される技術に対する様々な変更、置換、及び代替を、添付特許請求の範囲によって定義されるような教示の技術から逸脱することなく、行うことができる。更に、開示及び特許請求の範囲は、上で説明したプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及び行動の特定の態様に制限されない。本明細書中に説明した対応する態様と実質的に同じ機能を実行するか又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか又は今後開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又は行動は、利用することができる。従って、添付特許請求の範囲は、それらの適用範囲内に、かかるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又は行動を含む。