(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】熱によって起動される機械的なスイッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
H01H37/76 B
(21)【出願番号】P 2019550664
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2018055276
(87)【国際公開番号】W WO2018166825
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】102017105436.7
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507059923
【氏名又は名称】デーン エスエー プルス ツェオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒールル、シュテファン
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/196609(US,A1)
【文献】実開昭57-138245(JP,U)
【文献】特開昭50-060774(JP,A)
【文献】特開昭50-140868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱手段および機械力貯蔵手段からなり、これらの手段を収容するハウジングを備えており、前記感熱手段は、スイッチング部品の移動経路を阻止または解放し、さらに前記スイッチング部品は、前記機械力貯蔵手段によって付勢されている、熱によって起動される機械的なスイッチング装置であって、
前記ハウジングは、プランジャ(3)を内部に受け入れるカートリッジ状のシェル(1)として設計され、前記プランジャは、前記ハウジングの第1端側の開口部(7)を貫いて移動可能な様相で取り付けられ、予張力下で可融成形部(4)に当接して支持され、前記可融成形部(4)は、前記可融成形部(4)の溶融温度に達したときに前記可融成形部が前記プランジャ(3)によって押し退けられて前記プランジャ(3)が変化後位置をとるようなやり方で、前記第1端面の開口部とは反対側に位置する第2の開口部(9)を塞ぐように配置されている、ことを特徴とする、熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項2】
前記プランジャ(3)は、カラー(5)またはフランジを備え、前記力貯蔵手段としてのコイルばね(2)が、前記カラー(5)または前記フランジに当接して支持される、ことを特徴とする、請求項1に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項3】
前記シェル(1)は、前記第1の開口部(7)の方向に小さな直径を有する先細り部分(6)を有している、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項4】
前記力貯蔵手段は、前記シェル(1)の内部において前記先細り部分(6)に当接して支持される、ことを特徴とする、請求項3に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項5】
前記プランジャ(3)は、前記可融成形部(4)を押し退けた後に、一方のプランジャ端部において前記第2の開口部(9)を貫いて移動可能である、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項6】
前記可融成形部(4)は、前記第2の開口部(9)に対する栓として設計され、前記栓は、前記シェルの内側に位置し、前記開口部を閉じるように設計されている、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項7】
前記第1および/または前記第2の開口部(7、9)に対する前記プランジャ(3)の位置に関する前記プランジャ(3)の移動により、スイッチング機構を起動することができる、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項8】
前記プランジャ(3)は、電気スイッチまたはスイッチング状態インジケータを起動する、ことを特徴とする、請求項7に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項9】
前記シェル(1)は、熱伝導性材料で作られ、本装置の応答の挙動は、前記シェル(1)の熱容量および前記可融成形部(4)の材料によって設定可能または調整可能である、ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【請求項10】
前記可融成形部(4)は、導電性のはんだ材料で作られ、押し退けられたはんだ材料が、電気スイッチング機構を生じさせる、ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱手段および機械力貯蔵手段からなり、これらの手段を収容するハウジングを備えており、感熱手段は、スイッチング部品の移動経路を阻止または解放し、さらにスイッチング部品は、機械力貯蔵手段によって付勢されている、請求項1に記載の熱によって起動される機械的なスイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DE1753DAZから、感熱部材を起動要素として有する電気自動スイッチが知られている。上述のスイッチにおいて、機械力貯蔵手段の影響下にあるスイッチ部品が、摩擦接続を介してスイッチ位置に固定される。
【0003】
感熱部材は、縦方向に凹んだバイメタル管の形態で具体化され、互いに摩擦接続された2つの部品のうちの一方を呈する。
【0004】
一実施形態において、縦方向に凹んだバイメタル管は、棒状体に直接的に摩擦接続され、直接的な摩擦接続は、バイメタル管と棒体との間に作用し、2つの部品の一方が不動であるが、他方の部品は可動に配置される。この点で、縦方向に凹んだバイメタル管を、個体であり、あるいは管として形成される可動スイッチング部品上に、包囲の様相で設けることができる。加熱時に、バイメタル管が膨張して、スイッチング部品を解放し、スイッチング動作がもたらされる。既知のスイッチング装置の起動特性を調整できるようにするために、局所的に設けられる加熱コイルの断面または長さを変更する選択肢が存在する。あるいは、バイメタル管の壁の厚さを変えることができる。スイッチング装置の1つの典型的な実施形態において、スイッチングピンが共晶はんだによって固定される電話ヒューズプラグが言及されている。低温の固化した状態において、共晶はんだがプラグハウジングの内壁およびスイッチングピンに付着することにより、ピンがスイッチングばねの作用を阻止する。過電流が発生すると、共晶はんだが溶融し、付着が解放される。したがって、スイッチングピンが阻止位置から引き出され、ローカル接触フィンガが解放される。
【0005】
DE 23 49 019 A1によれば、真空スイッチング容器の操作性の欠如を検出するためのアセンブリが、技術水準である。この点で、より高い温度に反応する装置が設けられ、装置は、低い温度時定数を有する真空スイッチング容器の一部に熱伝導接続され、装置は、信号装置を制御し、さらには/あるいは保護装置の有効化を制御する。
【0006】
より高い温度を検出するために設けられた装置は、例えば、ケーシングまたは温度依存の電気部品としてのスイッチング部品のラックピンのうちの1つに取り付けられる。好都合な実施形態において、より高い温度に反応する装置は、真空スイッチング容器のスイッチング部品のラックのうちの1つのラックの穴に配置される。既知の解決策によれば、可融はんだ、および可融はんだによって保持され、ばねで付勢されたプランジャが、温度依存装置として使用され、プランジャはスイッチング接点に接続される。はんだについて適切な融点が選択されたとき、スイッチング部品が容認できないほどに高温になるとプランジャが解放される。
【0007】
既知の装置およびスイッチング装置は、多数の個別の部品からなり、その各々を所定の用途および動作の事例に対して構成しなければならないという共通点がある。
【0008】
さらに、多数の構成要素、および個別の適合および構成は、組み立ての労力を増すことになると同時に、そのようにして実現されたスイッチング装置の故障に対する脆弱性も増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DE1753DAZ
【文献】DE 23 49 019 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上記に照らし、本発明の目的は、感熱手段および機械力貯蔵手段からなり、必要な構成要素の数が最小限であり、実質的に前もって製造される構成要素として広く適用することができる先進の熱によって起動される機械的なスイッチング装置を提供することである。同時に、提供されるスイッチング装置は、温度依存のスイッチング状態を起動する必要のある電気工学または電子部品の自動化可能な生産の状況での用途に適している必要がある。スイッチング状態は、電気的な作動および機械的な状態の表示であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のこの目的に対する解決策は、請求項1に記載の特徴の組み合わせによって達成され、従属請求項は、少なくとも好都合な構成および進歩を含む。
【0012】
したがって、上述の技術水準によれば、熱によって起動される機械的なスイッチング装置が前提とされる。
【0013】
機械的なスイッチング装置は、感熱材料と、例えば、ばね付勢手段として設計された機械力貯蔵手段とを含む。
【0014】
感熱材料は、スイッチ部品の移動経路を阻止し、あるいはそのような移動経路を解放する。さらに、スイッチング部品は、機械力貯蔵手段によって付勢されている。上述のアセンブリまたは構成要素は、これらの構成要素を収容する共通のハウジングによって囲まれている。
【0015】
本発明によれば、ハウジングは、円筒形の形状のカートリッジ状のシェルとして設計される。
【0016】
カートリッジ状のシェルの内部にプランジャが設けられ、プランジャは、ハウジングの第1端側の開口部を貫いて移動可能な様相で取り付けられ、ハウジングまたはシェル内に位置する可融成形部に予張力下で当接して支持される。
【0017】
可融成形部は、可融成形部の溶融温度に達したときにこの可融成形部がプランジャによって押し退けられるようなやり方で、第1端側の開口部とは反対側に位置する第2の開口部を塞ぐように配置されている。この押し退け過程の結果として、プランジャは、変化後位置を呈し、例えば機械式の状態表示または電気スイッチング装置を起動することができる。
【0018】
シェル内のプランジャは、この目的のために、力貯蔵手段としてのコイルばねを支持するカラーによって囲まれ、あるいはフランジを有する。
【0019】
シェルは、第1の開口部の方向に小さな直径を有する先細り部分を有し、先細り部分は、一方では上述の第1の開口部へと変化し、他方では内側にコイルばね用のさらなるストッパカラーをもたらす。
【0020】
当然ながら、先細りの直径の代わりに、圧縮ばねまたはコイルばね用のストッパカラーを生み出すために、ノーズ状の突出部などを内周側に形成することも可能である。
【0021】
本発明の一構成においては、可融成形部を押し退けた後に、プランジャは、実質的に起動または解放要素として、該当のプランジャ端部が開口部から現れ、電気的または機械的な表示またはスイッチング装置を起動できるようなやり方で、第2の開口部を貫通する。
【0022】
好ましい実施形態において、可融成形部は、シェルの内側に位置する第2の開口部に対する栓として設計され、この開口部が栓によって閉じられる。
【0023】
すでに説明したように、プランジャがその位置に関して第1および/または第2の開口部へと移動することで、外部のスイッチング機構を起動することができる。この限りにおいて、プランジャは、電気スイッチを直接的または間接的に起動することができ、あるいはスイッチング状態インジケータを直接的または間接的に起動することができる。
【0024】
好ましくは、シェルは熱伝導性材料で作られ、装置の応答の挙動は、シェルの熱容量および可融成形部の材料によって設定可能または調整可能である。
【0025】
好ましくは、可融成形部は、導電性のはんだ材料で作られる。
【0026】
さらに、第2の開口部から押し出されたはんだ材料が、例えば接点要素のアセンブリを橋絡させることにより、電気スイッチング機構を直接的に生じさせることができる。
【0027】
以下で、本発明を、典型的な実施形態に基づき、図面を利用して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】付勢用圧縮ばねおよび可融成形部としてのはんだ成形部と一緒にシェル内に設けられたプランジャを有する熱によって起動される機械的なスイッチング装置の縦断面図を示しており、プランジャから遠い方のシェルの端部は、第2の開口部を解放しつつはんだ成形部を固定するためのかしめが未だ行われていない。
【
図2】
図1と同様の図を示しているが、はんだ成形部およびスイッチング装置の残りの構成要素を固定するためにシェルの端部がかしめられている。
【
図3】初期状態、すなわち加熱前のカートリッジ状のシェルとして設計された本発明によるスイッチング装置の図を示している。
【
図4】
図3と同様の図であるが、可融成形部の溶融温度に到達し、融解した材料が第2の開口部からうまく押し出され、結果としてプランジャの位置が変化した後の状態を示している。
【
図5】シェル状のハウジングと、プランジャと、ばね付勢手段と、周囲の接点または表示要素とを有する本発明によるスイッチング装置の概略の縦断面図を、スイッチング装置が解放されていない状態について示している。
【
図6】
図5と同様の図であるが、可融成形部が溶け、プランジャが力方向Fに変位して、例えば状態表示またはマイクロスイッチなどの外部の表示または起動要素に接触した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
代表的な図の本発明によるスイッチング装置は、好ましくは金属の熱伝導性材料で作られるカートリッジ状のシェル1を前提とする。
【0030】
カートリッジ状のシェル1は、主に円筒形の形状を有し、その内部にプランジャ3を収容する。
【0031】
プランジャ3は、カラーまたはフランジ5を有する。
【0032】
フランジ5とシェル1の先細り部分6との間に、圧縮ばね2として形成された力貯蔵手段を設けることができる。
【0033】
プランジャ3は、第1端側の開口部7を貫通してシェル1内に配置され、移動可能である。
【0034】
ばねで付勢されたプランジャ3の移動経路は、可融成形部4によって制限されている。
【0035】
可融成形部4は、第1端側の開口部7の反対側に位置するシェル1の端部に設けられている。可融成形部4は、かしめ部8(
図2を参照)を介してシェル1の内側に固定され、かしめ部8の領域には、第1端面の開口部7の反対側に位置する第2の開口部9が残されている。
【0036】
可融成形部4の溶融温度に達すると、プランジャ3の該当の端部が、溶融した材料塊を変位させる。これにより、ばね2の付勢力の結果として、プランジャ3が
図2による図において左方に移動する。
【0037】
このようにして、可融成形部4の固定効果は、可融成形部4が加熱されて流体相へと変化したときに無効になる。
【0038】
図3の図が、可融成形部4が固体である状態を示している一方で、
図4は、温度の上昇の過程において、この場合には上述のばね2および作用するばね力によって駆動されてシェル1の内部へと引き込まれるプランジャ3によって、どのように可融成形部4の材料が端面の開口部9を通り、実際に押し出されるかを示している。
【0039】
図5および
図6の図によって、可融成形部4の状態およびこの状態からもたらされるプランジャの自由端10の位置に応じて、プランジャが例えばマイクロスイッチ11を起動でき、すなわちこのスイッチを阻止(
図5を参照)するか、あるいは解放(
図6を参照)できることが例示される。
【0040】
さらに、成形部4の溶融した材料を押し退けたプランジャ端部12が、シェル1の外へと第2の開口部9を過ぎて移動して、熱による作動の前の状態(
図5を参照)においては解放されているマイクロスイッチまたは表示ユニット13(
図6を参照)を起動する選択肢が存在する。
【0041】
シェル1は、ばねおよびプランジャを収容し、さらに可融成形部またははんだ成形部を組み込んだ後に、かしめによって閉じられる予め形成された部品であってよい。
図1に示されるように、まだ開いている状態のシェルへとはんだ成形部または可融成形部4を組み込むことにより、同時に、圧縮ばね2の荷重が生じ得る。この該当の圧縮ばねの荷重は、シェル1のかしめの結果において維持される(
図2を参照)。
【0042】
代表的な図から、加熱によって可融成形部の凝集状態が変化し、プランジャがばね力によって起動され、可融成形部の材料を押し退けることが明らかである。プランジャの位置の変化から、例えば機械的な信号を導き出すことができ、あるいは電気スイッチを起動することができる。
【0043】
図示の実施形態において、プランジャを、一方側においてシェルへと引き込むことができると同時に、上述の第2の開口部を介してシェルから押し出すことができる。
【0044】
図4に示されるように、流出する流動はんだは、例えば、回路基板などの近接して設けられた接点アセンブリへの接触を引き起こすことができる。