(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】FGF21模倣抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220127BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220127BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220127BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220127BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220127BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220127BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220127BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220127BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220127BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220127BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220127BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220127BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220127BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220127BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/00
A61P9/10 101
A61K9/08
A61K9/10
(21)【出願番号】P 2019563705
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2018050740
(87)【国際公開番号】W WO2018146594
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】セベ,レジス
(72)【発明者】
【氏名】ヨウィ,デビッド ランドン
(72)【発明者】
【氏名】オランド,ステファン
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/148708(WO,A1)
【文献】特表2014-518640(JP,A)
【文献】特表2013-512689(JP,A)
【文献】国際公開第2015/112886(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/099165(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
CAplus/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-クロトーに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、及び
配列番号26又は32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体は、配列番号17のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項5】
体重を減少させる方法
に使用するための医薬組成物であって、請求項
1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を
含み、
前記方法は、必要とする対象に
前記医薬組成物の有効な量を投与することを含む
医薬組成物。
【請求項6】
食欲又は食物摂取量を減少させる方法
に使用するための医薬組成物であって、請求項
1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を
含み、
前記方法は、必要とする対象に
前記医薬組成物の有効な量を投与することを含む
医薬組成物。
【請求項7】
配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項
2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項
7に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を低下させる方法
に使用するための医薬組成物であって、請求項
1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を
含み、
前記方法は、必要とする対象に
前記医薬組成物の有効な量を投与することを含む
医薬組成物。
【請求項12】
代謝障害を処置する方法
に使用するための医薬組成物であって、請求項
1に記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を
含み、
前記方法は、代謝障害を患う対象に
前記医薬組成物の有効な量を投与することを含む
医薬組成物。
【請求項13】
前記対象は、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、
急性心筋梗塞、高血圧、循環器疾患、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、神経障害、胃不全麻痺、インスリンレセプター中における重度の不活性化突然変異と関連する障害のうちの1つ又は複数を患う、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象は、急性心筋梗塞、高血圧、循環器疾患、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患のうちの1つ又は複数を患う、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象は、肥満を患う、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象は、脂質異常症を患う、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記脂質異常症は、高トリグリセリド血症である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象は、糖尿病を患う、請求項13~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記糖尿病は、2型糖尿病である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象は、インスリン抵抗性を患う、請求項13~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記対象は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を患う、請求項13~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記対象は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患う、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
心血管障害を処置する方法
に使用するための医薬組成物であって、請求項
1に記載の抗体又はフラグメントを含む医薬組成物の有効な量を
含み、
前記方法は、心血管障害を患う対象に
前記医薬組成物の有効な量を投与することを含む
医薬組成物。
【請求項24】
前記対象は、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、及び冠動脈心疾患のうちの1つ又は複数を患う、請求項
23に記載の
医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~3または7~8のいずれか一項に記載の、β-クロトーに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項
25に記載の
ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項27】
請求項
26に記載のベクター
または請求項25に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項28】
β-クロトーに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、前記抗体又はその
抗原結合フラグメントの発現に適した条件下で、請求項
27に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年2月8日出願の米国仮特許出願第62/456,609号の利益を主張し、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、これは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。前記ASCIIコピー(2018年1月19日作成)は、PAT057578-WO-PCT_SL.txtと命名され、80,531バイトのサイズである。
【0003】
分野
本開示は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)模倣抗体に関する。同様に開示されているのは、FGF21関連障害を処置する方法であり、例えば、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、及び他の代謝障害を処置する方法と、重症患者の死亡率及び罹患率を低下させる方法とである。
【背景技術】
【0004】
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリは22種の遺伝的に異なる相同リガンドを特徴とし、これらの相同リガンドは7種のサブファミリに分類される。公開されている文献によれば、このFGFファミリは現在、少なくとも23種のメンバーFGF-1~FGF-23からなる(Reuss et al.(2003)Cell Tissue Res.313:139-157)。
【0005】
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)はマウス胚から単離されており、FGF19及びFGF23に最も近い。このFGFサブファミリは、古典的なFGFには珍しく多様な生理学的プロセス(即ち、エネルギー及び胆汁酸の恒常性、グルコース及び脂質の代謝、並びにリン酸塩、並びにビタミンDの恒常性)を調節する。さらに、古典的なFGFとは異なり、このサブファミリは内分泌的に作用する(Moore,D.D.(2007)Science 316,1436-8)。FGF21は、肝臓中で優先的に発現されることが報告されており(Nishimura et al.(2000)Biochimica et Biophysica Acta,1492:203-206;特許公報国際公開第01/36640号パンフレット;及び特許公報国際公開第01/18172号パンフレット)、且つ虚血性血管疾患、創傷治癒、及び肺、気管支又は肺胞細胞の機能の喪失と関連する疾患、及び多数の他の障害の処置として説明されている。
【0006】
FGF21は、強力な代謝調節因子として特定されている。食餌誘発性肥満又は遺伝性肥満及び糖尿病を有する齧歯動物及びアカゲザルへのFGF21の全身投与により、強力な血糖降下作用及びトリグリセリド低下作用が発揮され、体重が減少する(Coskun,T,et al.(2008)Endocrinology 149:6018-6027;Kharitonenkov,A.et al.(2005)Journal of Clinical Investigation 115:1627-1635;Kharitonenkov,A.,et al.(2007)Endocrinology 148:774-781;Xu,J,et al.(2009)Diabetes 58:250-259)。FGF21は、28個のアミノ酸のリーダー配列を含む209個のアミノ酸ポリペプチドである。ヒトFGF21は、マウスFGF21に対して約79%のアミノ酸同一性を有し、且つラットFGF21に対して約80%のアミノ酸同一性を有する。
【0007】
哺乳動物では、FGFは、複数のスプライスバリアントにおいて順に発現される4種のFGFレセプターFGFR1~4のセットを介してこのFGFの作用を媒介する。各FGFレセプターは、リガンド結合時に活性化される細胞内チロシンキナーゼドメインを含み、MAPK(Erk1/2)、RAF1、AKT1及びSTATを含む下流のシグナル伝達経路へとつながっている(Kharitonenkov,A.et al.(2008)BioDrugs 22:37-44)。いくつかの報告は、FGFR1~3の「c」レポータースプライスバリアントがβ-クロトー(β-klotho)に対して特異的親和性を示し、且つFGF21の内在性レセプターとして作用する可能性があることを示唆した(Kurosu et al.,2007 J.Biol.Chem.282:26687-26695);Ogawa et al.,2007 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:7432-7437;Kharitonenkov et al.,2008 J.Cell Physiol.215,1-7)。3T3-L1細胞及び白色脂肪組織では、FGFR1は圧倒的に最も豊富なレセプターであり、従って、この組織におけるFGF21の主な機能的レセプターはβ-クロトー-FGFR1c複合体である可能性が最も高い。
【0008】
FGF21は、FGFレセプター、並びに下流のシグナル伝達分子(例えば、FRS2a、及び細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK))を活性化するが、FGFRとFGF21との直接的な相互作用は検出されていない。さらに、様々な非脂肪細胞は、たとえ複数のFGFRアイソフォームを発現してもFGF21には応答しない。これらのデータは全て、補因子が、FGFRを介したFGF21シグナル伝達を媒介しなければならないことを示唆する。研究により、FGF21に対する細胞応答の決定因子として、肝臓、脂肪細胞、及び膵臓で高度に発現されるベータ-クロトー(β-クロトー)が特定されている(Kurosu,H.et al.(2007)J Biol Chem 282,26687-95)。FGFR単独ではなくβ-クロトー-FGFR複合体が、インビトロでFGF21に結合する(Kharitonenkov,A.,et al.(2008)J Cell Physiol 215,1-7)。FGF21は、FGFR1c、2c、又は3cとの複合体でβ-クロトーに結合するが、FGFR4との複合体ではβ-クロトーに結合しない(Owen et al.,2015 Trends in Endocrinology 26:22-29)。同様のメカニズムが、FGF23-クロトー-FGFRシステムで確認されている(Urakawa,I.et al.(2006)Nature 444,770-4)。
【0009】
FGF21の生物活性は、マウス3T3-L1脂肪細胞グルコース取込みアッセイで初めて特定された(Kharitonenkov,A.et al.(2005)J Clin Invest 115,1627-35)。その後、FGF21は、インスリン非依存性のグルコース取込み及びGLUT1発現を誘導することが分かった。FGF21は、様々な糖尿病齧歯動物モデルで高血糖を改善することも分かっている。加えて、FGF21を過剰発現する遺伝子導入マウスは、食餌誘発性の代謝異常(例えば、体重及び脂肪量の減少、インスリン感受性の増強)に耐性を示すことが見出された(Badman,M.K.et al.(2007)Cell Metab 5,426-37)。糖尿病非ヒト霊長類(NHP)へのFGF21の投与により、空腹時での血漿中のグルコース、トリグリセリド、インスリン、及びグルカゴンのレベルの低下が生じ、リポタンパク質プロファイルが顕著に改善された(例えば、HDLコレステロールのほぼ80%の増加)(Kharitonenkov,A. et al.(2007)Endocrinology 148,774-81)。重要なことに、このNHP研究中のいかなる時点でも、低血糖を観測しなかった。他の研究では、FGF21は、絶食状態への適応を制御するのに役立つ重要な内分泌ホルモンとして特定された。これにより、PPARαの下流に、これまで失われていたリンクが提供され、これにより、肝臓は、エネルギー恒常性の生体の調節において身体の他の部分と通信する。FGF21が脂肪(脂肪分解)、肝臓(脂肪酸酸化及びケトン体生成)、並びに脳(無気力)を調節するという複合観察により、FGF21は、空腹への応答の主要な内分泌調節因子として確立される(Kharitonenkov,A.& Shanafelt,A.B.(2008)BioDrugs 22,37-44)。
【発明の概要】
【0010】
生物治療薬(biotherapeutic)としてFGF21を直接使用することの問題は、FGF21の半減期が非常に短いということである。マウスでは、ヒトFGF21の半減期は0.5~1時間であり、カニクイザルでは、この半減期は2~3時間である。さらに、野生型FGF21を医薬製剤又は医薬調製物で使用する場合には、野生型FGF21の安定性は、防腐剤(例えばm-クレゾール)の悪影響を受ける。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、FGF21模倣抗体(即ち、ベータ-クロトー(β-クロトー)に結合し、且つヒト線維芽細胞増殖因子21(以降、「FGF21」と称することがある)レセプター複合体及びFGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター依存性シグナル伝達)を活性化するモノクローナル抗体)、その抗原結合フラグメント、並びにそれを含む医薬組成物及び処置方法に関する。
【0012】
具体的な態様において、本開示の(FGF21模倣のβ-クロトー結合抗体の)抗原結合フラグメントは、FGF21様活性及び選択性を有するが治療上望ましい特性(例えば、タンパク質安定性、低免疫原性、製造の容易さ、及び望ましいインビボでの半減期)が追加された分子であり得る。
【0013】
本開示のモノクローナルFGF21模倣抗体、その抗原結合フラグメント、及びそれを含む医薬組成物は、FGF21関連障害の処置に有用であり、例えば、肥満、2型糖尿病、1型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、高血圧、循環器疾患、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、神経障害、胃不全麻痺、及び他の代謝障害の処置に有用であり、且つ重症患者の死亡率及び罹患率の低下で有用である。
【0014】
特定の態様において、本明細書で説明された単離FGF21模倣抗体又は抗原結合フラグメントは、例えばBIACORE(商標)結合アッセイにより決定した場合に、500pM又は400pM以下の平衡解離定数(KD)でβ-クロトーに結合し、且つ例えば細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化(pERK又はホスホ-ERK)細胞アッセイにより測定した場合に、50nM以下のEC50でカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体も活性化し得る。特定の態様において、本明細書で説明された単離FGF21模倣抗体又は抗原結合フラグメントは、例えばBIACORE(商標)結合アッセイにより決定した場合に、300pM又は400pM以下の平衡解離定数(KD)でβ-クロトーに結合し、且つ例えばpERK細胞アッセイにより測定した場合に、50nM以下のEC50でカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体も活性化し得る。
【0015】
特定の態様において、本明細書で説明された単離FGF21模倣抗体又は抗原結合フラグメントは、100pM又は50pM以下の平衡解離定数(KD)でβ-クロトーに結合する。例えば、本明細書で説明された単離抗体又は抗原結合フラグメントは、100pM以下の、50pM以下の、45pM以下の、40pM以下の、35pM以下の、25pM以下の、又は15pM以下のKDでヒトβ-クロトーに結合し得る。より具体的には、本明細書で説明された単離抗体又は抗原結合フラグメントは、BIACORE(商標)結合アッセイ又は溶液平衡滴定アッセイ(solution equilibrium titration assay)(SET)により測定した場合に、10pM以下のKDでヒトβ-クロトーにも結合し得、且つ例えばpERK細胞アッセイにより測定した場合に、50nM以下のEC50でカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体も活性化し得る。
【0016】
本開示は、ヒトβ-クロトー及びカニクイザルβ-クロトーに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。本開示はまた、β-クロトーに結合し、且つFGF21レセプター複合体及びFGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター依存性シグナル伝達)を活性化する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにも関する。特定の態様において、本明細書で説明された単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトFGFR2c_β-クロトーレセプター複合体、ヒトFGFR3c_β-クロトーレセプター複合体、又はヒトFGFR4_β-クロトーレセプター複合体を活性化しない。
【0017】
本開示はまた、β-クロトーに結合し、且つ表1で説明された抗体(例えば、抗体NOV005又はNOV006)と結合に関してさらに競合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにも関する。本開示はまた、さらに、表1で説明された抗体(例えば、抗体NOV005又はNOV006)と同一のエピトープに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントにも関する。
【0018】
本明細書で説明されている場合、抗体及び/又はその抗原結合フラグメントの間の「競合」は、(例えば、当業者に公知の方法のいずれかにより、競合結合アッセイにより決定した場合に)両方の抗体(又はその結合フラグメント)が同一のβ-クロトーエピトープに結合することを示す。抗体又はその抗原結合フラグメントはまた、前記競合する抗体又はその抗原結合フラグメントが、本開示の抗体又は抗原結合フラグメントと同一のβ-クロトーエピトープ又は重複するβ-クロトーエピトープに結合する場合には、本開示のβ-クロトー抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、NOV005又はNOV006)とも「競合」する。本明細書で使用される場合、競合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、(i)本開示の抗体若しくは抗原結合フラグメントがその標的に結合することを立体的にブロックするもの(例えば、前記競合する抗体が近くの非重複β-クロトー及び/若しくはβ-クロトーエピトープに結合し、本開示の抗体若しくは抗原結合フラグメントがその標的に結合することを物理的に妨げる場合)、並びに/又は(ii)異なる非重複β-クロトーエピトープに結合してβ-クロトータンパク質に立体構造変化を誘発し、その結果、前記タンパク質には、前記立体構造変化がない場合には起こるであろう形では本開示のβ-クロトー抗体若しくは抗原結合フラグメントがもはや結合し得ないものも含み得る。
【0019】
本明細書で説明された単離抗体及び抗原結合フラグメントの結合親和性は、溶液平衡滴定(SET)により決定され得る。SETの方法は当技術分野で既知であり、下記でさらに詳細に説明する。あるいは、本明細書で説明された単離抗体又はフラグメントの結合親和性を、Biacoreアッセイにより決定し得る。Biacore速度論的アッセイ(Biacore kinetic assay)の方法は当技術分野で既知であり、下記でさらに詳細に説明する。
【0020】
本単離FGF21模倣抗体又はその抗原結合フラグメントを、FGF21レセプター複合体の活性化を増加させ、それによりFGF21シグナル伝達経路を増加させるために使用し得る。特定の態様において、単離FGF21模倣抗体又はその抗原結合フラグメントを、FGF21レセプター複合体の活性化、及びそれによるFGF21シグナル伝達経路を、少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%増加させるために使用し得る。
【0021】
本明細書で説明された単離FGF21模倣抗体又はその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、ヒト抗体若しくはヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、Fvフラグメント、F(ab’)2フラグメント、又はscFvフラグメント、及び/又はIgGアイソタイプ(例えば、IgG1,IgG2、若しくはIgG4)であり得る。
【0022】
本明細書で説明された単離FGF21模倣抗体又はその抗原結合フラグメントはまた、アミノ酸がそれぞれのヒトVH生殖系列配列又はヒトVL生殖系列配列からの抗体フレームワークへと置換されているフレームワークも含み得る。
【0023】
本開示の別の態様は、表1で説明されたFab(例えば、抗体NOV005又はNOV006)の完全な重鎖配列及び軽鎖配列を有する単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。より具体的には、この単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fab NOV005又はNOV006の重鎖配列及び軽鎖配列を有し得る。
【0024】
本開示のさらなる態様は、表1で説明されたFab(例えば、抗体NOV005又はNOV006)の重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。より具体的には、この単離抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fab NOV005又はNOV006の重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0025】
本開示はまた、本明細書で説明された単離抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、NOV005又はNOV006)を含む組成物(例えば医薬組成物)と、薬学的に許容可能な担体と組み合わされた抗体組成物とにも関する。具体的には、本開示は、表1の抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、抗体NOV005又はNOV006等)を含む医薬組成物をさらに含む。本開示はまた、表1の単離抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、抗体NOV005又はNOV006)のうちの2つ以上の組み合わせを含む医薬組成物にも関する。
【0026】
本開示はまた、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離核酸分子にも関する。特定の態様において、この核酸分子は、配列番号16、36、又は38からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。本開示のさらなる態様において、本明細書で提供される核酸分子は、配列番号16、36、又は38の核酸配列を含む。
【0027】
本開示はまた、配列番号26又は32のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む単離核酸分子にも関する。特定の態様において、この核酸分子は、配列番号27、54、33、又は40の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む。本開示のさらなる態様において、本明細書で提供される核酸分子は、配列番号27、54、33、又は40の核酸配列を含む。
【0028】
本開示はまた、本明細書で説明された核酸分子のうちの1つ又は複数を含むベクターにも関する。具体的な態様において、第1のベクターは、本明細書で提供される抗体(例えば、NOV005又はNOV006)の重鎖可変領域又は重鎖をコードし、第2のベクターは、本明細書で提供される抗体(例えば、NOV005又はNOV006)の軽鎖可変領域又は重鎖をコードする。この第1のベクター及び第2のベクターは、共発現のために宿主細胞に形質導入され、そのような重鎖及びそのような軽鎖を含む抗体が形成される。
【0029】
本開示はまた、上記で説明された抗体の重鎖をコードする組換えDNA配列と、上記で説明された抗体の軽鎖をコードする別の組換えDNA配列とを含む単離宿主細胞にも関し、前記DNA配列はプロモータに作動可能に連結されており、この宿主細胞中で発現され得る。この抗体はヒトモノクローナル抗体であり得ることが企図されている。この宿主細胞は非ヒト哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞又はHEK293細胞)であることも企図されている。
【0030】
本開示はまた、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)レセプターの活性化、及びそれによるFGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター依存性シグナル伝達)の活性化にも関し、この方法は、細胞と、本明細書で説明された単離抗体又はその抗原結合フラグメントを含む組成物の有効な量とを接触させる工程を含む。
【0031】
特定の一態様において、この宿主細胞はヒト細胞であることが企図されている。この細胞は対象中に存在することがさらに企図されている。一実施形態において、この細胞は脂肪細胞であることが企図されている。別の実施形態において、この細胞は、肝細胞、膵細胞、内皮細胞、筋肉、又は腎細胞のうちの1つ又は複数であり得る。具体的な態様において、この対象はヒトであることがさらに企図されている。
【0032】
本開示はまた、対象のFGF21関連障害を処置する、管理する、改善する、又は予防する方法であって、本明細書で説明された抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、NOV005又はNOV006)を含む組成物の有効な量を対象に投与する工程を含む方法にも関する。一態様において、このFGF21関連障害は肥満である。一態様において、このFG21関連障害は2型糖尿病である。この対象はヒトであることが企図されている。
【0033】
上述の単離抗体又はその抗原結合フラグメントはいずれも、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであり得る。
【0034】
本開示の非限定的な実施形態を、下記の態様で説明する:
1.β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
配列番号6、9、10、又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号19、31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0035】
2.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
配列番号6、9、10又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0036】
3.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
配列番号6、9、10、又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号19、31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0037】
4.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3;
又は
(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0038】
5.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3;
又は
(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0039】
6.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ鎖配列を含むHCDR3、配列番号19又は31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0040】
7.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ鎖配列を含むHCDR3、配列番号19又は31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0041】
8.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ鎖配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0042】
9.前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ鎖配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、態様1に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0043】
10.前記抗体又はフラグメントはβ-クロトー及びFGFR1cの活性を増加させる、態様1~9のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0044】
11.BIACORE(商標)結合アッセイにより測定した場合に、450pM以下のKDでヒトβ-クロトータンパク質に結合する態様1~9のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0045】
12.前記エピトープは、(i)β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの1個若しくは複数個のアミノ酸、又は(ii)β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のストレッチのそれぞれからの1個、2個、3個、4個、5個、若しくはより多くのアミノ酸残基を含むか、又はから本質的になる、態様1~9のいずれか一つに記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0046】
13.前記エピトープは、(i)β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のうちの1個又は複数個のアミノ酸、又は(ii)β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のストレッチのそれぞれからの1個、2個、3個、4個、5個、若しくはより多くのアミノ酸残基を含むか、又はから本質的になる、態様1~9のいずれか一つに記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0047】
14.pERK細胞アッセイにより測定した場合に、50nM以下のEC50でカニクイザルFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る態様1~13のいずれか一つに記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0048】
15.前記抗体又はフラグメントは、ヒトβ-クロトー(配列番号52)の残基701(Tyr)又は703(Arg)と接触しない、態様1~14のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0049】
16.前記抗体又はフラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);及び配列番号26若しくは32のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、態様1~15のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0050】
17.前記抗体又はフラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHを含む、態様1~16のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0051】
18.前記抗体又はフラグメントは、配列番号26又は32に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む、態様1~17のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0052】
19.前記抗体又はフラグメントは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL、又は(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVLを含む、態様17に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0053】
20.前記抗体は、(i)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、態様1~19のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0054】
21.単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントは、態様1~20のいずれか一つに記載の単離抗体又はフラグメントと同一のエピトープに結合し、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR;並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0055】
22.単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントは、態様1~20のいずれか一つに記載の単離抗体又はフラグメントと、β-クロトーへの結合に関して競合し、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR;並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0056】
23.前記抗体又はフラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR;並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、態様1~20のいずれか一つに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
【0057】
24.上記の態様のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【0058】
25.代謝障害を処置する方法であって、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、代謝障害を患う対象に投与することを含む方法。
【0059】
26.前記対象は、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、高トリグリセリド血症、及びメタボリックシンドロームのうちの1つ又は複数を患う、態様25に記載の方法。
【0060】
27.前記対象は、肥満、糖尿病、及び脂質異常症のうちの1つ又は複数を患う、態様25に記載の方法。
【0061】
28.心血管障害を処置する方法であって、上述の態様のいずれか一つに記載の抗体又はフラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、心血管障害を患う対象に投与することを含む、方法。
【0062】
29.前記対象は、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、及び冠動脈心疾患のうちの1つ又は複数を患う、態様28に記載の方法。
【0063】
30.医薬としての使用のための、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0064】
31.体重を減少させる方法であって、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
【0065】
32.食欲又は食物摂取量を減少させる方法であって、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
【0066】
33.対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を低下させる方法であって、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
【0067】
34.前記対象は代謝障害を患う、態様31、32、又は33に記載の方法。
【0068】
35.前記対象は、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、並びにメタボリックシンドロームのうちの1つ又は複数を患う、態様34に記載の方法。
【0069】
36.上述の態様のいずれか一つに記載の抗体のうちの1つ若しくは複数、又は前記抗体のうちのいずれか1つのVL及び/若しくはVHをコードする核酸。
【0070】
37.表1に記載された配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む核酸。
【0071】
38.表1に記載された配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む核酸。
【0072】
39.表1に記載された配列を含む核酸。
【0073】
40.態様36、37、38、又は39に記載の核酸を含むベクター。
【0074】
41.態様40のベクターを含む宿主細胞。
【0075】
42.代謝障害の処置での使用のための、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物
【0076】
43.β-クロトーに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、前記抗体又はそのフラグメントの発現に適した条件下で、態様41に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【0077】
44.前記代謝障害は、肥満、糖尿病、高トリグリセリド血症、又は脂質異常症である、態様42に記載の医薬組成物。
【0078】
45.心血管障害の処置での使用のための、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0079】
46.体重を減少させる方法での使用のための、食欲又は食物摂取量を減少させる方法での使用のための、対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を低下させる方法での使用のための、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
【0080】
47.対象の、代謝障害を処置するための医薬の調製での、心血管障害を処置するための医薬の調製での、体重を減少させるための医薬の調製での、食欲又は食物摂取量を減少させるための医薬の調製での、血漿TG濃度又は血漿TC濃度を低下させるための医薬の調製での、態様1~23のいずれか一つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】NOV004、NOV005、及びNOV006による、ヒトFGFR1c_β-クロトー_HEK293細胞のpERK活性化(
図1A)、及びカニクイザルFGFR1c_β-クロトー_HEK293細胞のpERK活性化(
図1B)を示す図。このpERK活性化データは、(i)NOV004が、それぞれ約3nM及び20nMのEC
50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体及びカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し、(ii)NOV005が、それぞれ約3nM及び16nMのEC
50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体及びカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し、(iii)NOV006が、それぞれ約4nM及び18nMのEC
50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体及びカニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化したことを示す。
【
図2-1】
図2:ヒトFGFR2c_β-クロトーHEK293細胞(
図2A)、ヒトFGFR3c_β-クロトーHEK293細胞(
図2B)、及びヒトFGFR4_β-クロトーHEK293細胞(
図2c)のpERK活性化に関するNOV004、NOV005、及びNOV006のプロファイリングを示す図である。FGF21を、FGFR2c_β-クロトー又はFGFR3c_β-クロトーの活性化に関する陽性対照として使用した。FGF19を、FGFR4_β-クロトーの活性化に関する陽性対照として使用した。
【
図3】α-クロトー、Egr1-ルシフェラーゼ、及びレニラ(Renilla)ルシフェラーゼを遺伝子導入したHEK293細胞を使用した、FGF23活性に関するNOV004、NOV005、及びNOV006のプロファイリングを示す図である。FGF23を陽性対照として使用した。
【
図4】ヒトβ-クロトーに関する、NOV004に対するNOV005及びNOV006の競合的結合活性を示す図である。Forte Bio(登録商標)Biosensorシステムを使用して、ヒトβ-クロトーへの競合的結合活性を決定した。工程1では、組換えヒトβ-クロトーをセンサー上にロードし、続いて工程2において飽和するまでNOV004をロードした。次いで、NOV005又はNOV006をロードし、NOV004に対する競合的結合活性を検出した。第2の結合シグナルが存在しないことは、これらの抗体がヒトβ-クロトーへの結合に関して競合することを示す。無関係の抗体を陰性対照として使用し、NOV004を自己競合の陽性対照として使用した。
【
図5-1】
図5:ラットでのIV注射後のNOV004、NOV005、及びNOV006の濃度-時間プロファイルを示す図である。動物は、NOV004(
図5A)、NOV005(
図5B)、又はNOV006(
図5C)のIV投与後1時間で約200μg/mLの平均C
maxを示し、3種全ての抗体が同等のPKプロファイルを示した。
【
図6-1】
図6:NOV005(n=5の動物)又はビヒクル(n=3の動物)の2種の皮下の1mg/kgの用量を、1週間間隔(投与日を矢印で示す)で、雄の血糖正常の肥満カニクイザルに投与した。標準固形飼料の摂餌量データを、群平均±SEMでベースラインのパーセントとして正規化した。サルは、研究全体を通して、おやつとして果物、野菜、及びピーナッツを摂取した。NOV005(n=5の動物)又はビヒクル(n=3の動物)の2種の皮下の1mg/kgの用量を、1週間間隔(投与日を矢印で示す)で、雄の血糖正常の肥満カニクイザルに投与した。NOV005及びビヒクルで処理した動物のベースライン体重は、それぞれ11.3+1.2及び11.4+1.3kgであった。体重データを、(A)群平均±SEM及び(B)示した個々の動物データでベースラインのパーセントとして正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示は、β-クロトーに特異的に結合し、且つFGFレセプター(例えばFGFR1c)の活性化及びFGF21媒介シグナル伝達(例えばFGF21-レセプター依存性シグナル伝達)の活性化をもたらす抗体分子の発見に部分的に基づく。本開示は、完全なIgG形式の抗体及びその抗原結合フラグメント(例えばFabフラグメント)の両方(例えば、抗体NOV005又はNOV006)に関する。
【0083】
従って、本開示は、β-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体、医薬組成物、製造方法、並びにそのような抗体及び組成物の使用方法を提供する。
【0084】
用語法
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「FGF21」は、線維芽細胞増殖因子(FGF)タンパク質ファミリのメンバーを指す。FGF21の典型的なアミノ酸配列は配列番号1(GenBank受託番号NP_061986.1)に記載されており、この対応するポリヌクレオチド配列は配列番号2(NCBI参照配列番号NM_019113.2)に記載されている。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「FGF21レセプター」は、FGF21に関するレセプターを指す(Kharitonenkov,A,et al.(2008)Journal of Cellular Physiology 215:1-7;Kurosu,H,et al.(2007)JBC 282:26687-26695;Ogawa,Y,et al.(2007)PNAS 104:7432-7437)。
【0087】
用語「FGF21ポリペプチド」は、ヒト中で発現される、天然に存在するポリペプチドを指す。本開示の目的のために、用語「FGF21ポリペプチド」は、209個のアミノ酸残基からなり且つ配列番号2のヌクレオチド配列によりコードされるあらゆる完全長FGF21ポリペプチド(例えば配列番号1);181個のアミノ酸残基からなり且つ完全長FGF21ポリペプチドのアミノ末端の28個のアミノ酸残基(即ち、シグナルペプチドを構成するアミノ酸残基)が除去されているポリペプチドのあらゆる成熟型、並びにそれらのバリアンを指すために互換的に使用され得る。
【0088】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、全抗体、及びその任意の抗原結合フラグメント(即ち、「抗原結合部分」)又は一本鎖を意味する。全抗体は、ジスルフィド結合により相互に接続された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中でVHと省略した)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中でVLと省略した)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域及びVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に再分割され得、より保存されている、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域が散在する。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置される3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、宿主の組織又は因子への結合を媒介し得る(免疫系の種々の細胞(例えばエフェクタ細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)が挙げられる)。抗体は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科動物の抗体、又はキメラ抗体であってよい。
【0089】
抗体の用語「抗原結合部分」又は「抗原結合フラグメント」は、本明細書で使用される場合、所与の抗原(例えばβ-クロトー)に特異的に結合する能力を保持する無傷の抗体の1個又は複数個のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体のフラグメントにより実施され得る。抗体の用語抗原結合部分又は抗原結合フラグメントに包含される結合フラグメントの例として、下記が挙げられる:Fabフラグメント(VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価のフラグメント);F(ab)2フラグメント(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含む二価のフラグメント);VHドメイン及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFvフラグメント;単一ドメイン抗体(dAb)フラグメント(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546)(VHドメイン又はVLドメインからなる);並びに単離された相補性決定領域(CDR)。
【0090】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を用いて、人工ペプチドリンカーによって結合され得、これは、2つのドメインを、VL領域及びVH領域が対形成して、一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として製造することを可能にする(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883,1988参照)。そのような単鎖抗体は、1つ又は複数の抗原結合部分又は抗体のフラグメントを含む。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を用いて得られ、そして当該フラグメントは、無傷の抗体であるのと同じ様式で、実用性の有無に関してスクリーニングされる。
【0091】
抗原結合フラグメントはまた、単一のドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びビス-scFv中に組み込まれてもよい(例えば、Hollinger and Hudson,2005,Nature Biotechnology 23,9,1126-1136参照)。抗体の抗原結合部分は、ポリペプチドに基づくスカフォールド、例えばフィブロネクチンIII型(Fn3)中に融合(grafted)されてよい(米国特許第6,703,199号明細書(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載)参照)。
【0092】
抗原結合フラグメントは、一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子中に組み込まれてよく、これは、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって、一対の抗原結合領域を形成する(Zapata et al.(1995)Protein Eng.8:1057-1062;及び米国特許第5,641,870号明細書)。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「親和性」は、単一の抗原部位での抗体と抗原との間の相互作用の強さを指す。各抗原部位内で、抗体の「アーム」の可変領域は、多数の部位で抗原と弱い非共有結合力を介して相互作用し、相互作用が大きいほど親和性はより強い。本明細書で使用される場合、抗体又はその抗原結合フラグメント(例えばFabフラグメント)に対する用語「高親和性」は概して、10-9M以下のKDを有する抗体又は抗原結合フラグメントを指す。
【0094】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸、及び合成アミノ酸、並びにアミノ酸類似体、及び天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸模擬物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝的コードによってコードされるアミノ酸、並びに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したアルファ-炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模擬物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。
【0095】
用語「結合親和性」は、本明細書で使用される場合、個々の抗体結合部位が1つの抗原決定基のみと反応する能力を指す。
【0096】
抗体(例えばβ-クロトー結合抗体)に語句「特異的に(又は選択的に)結合する」は、タンパク質及び他の生物製剤の不均一な集団中における同族抗原(例えば、ヒトβ-クロトー又はカニクイザルβ-クロトー)の存在を決定する結合反応を指す。語句「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では、用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0097】
用語「FGF21媒介」又は類似のものは、本開示のFGF21レセプター及び/又は抗体が、β-クロトーへの結合時に細胞応答及びFGF21シグナル伝達経路を媒介し、それにより、血漿トリグリセリド、血漿インスリン、血漿グルコース、食物摂取量、及び体重のうちの1つ又は複数の減少が挙げられるがこれらに限定されない様々な生理作用をもたらすという事実を指す。
【0098】
「FGF関連障害」、「FGF21関連状態」、「FGF21と関連する疾患若しくは状態」又は類似の用語は、本明細書で使用される場合、FGFシグナル伝達経路の活性化による(例えば、FGF21レセプターシグナル伝達の活性化による)予防、診断、及び/又は処置が探索されている様々な状態又は疾患を指す。これらとして、異常なFGF21シグナル伝達(例えば、FGF21媒介シグナル伝達及び/又はFGF21レセプターシグナル伝達の異常な活性化)を特徴とする状態、疾患、又は障害が挙げられ得る。これらの状態として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:代謝障害、内分泌障害、及び心血管障害、例えば、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリックシンドローム、急性心筋梗塞、高血圧、循環器疾患、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、神経障害、胃不全麻痺、インスリンレセプター中における重度の不活性化突然変異と関連する障害、並びに他の代謝障害、並びに重症患者の死亡率及び罹患率の低下。
【0099】
「2型糖尿病」とは、インスリンが利用可能であるにもかかわらず過剰なグルコース産生を特徴とする状態のことであり、不十分なグルコースクリアランスの結果として、循環グルコースレベルは過剰に高いままである。
【0100】
「1型糖尿病」とは、インスリンの完全な欠如により引き起こされる高い血糖値を特徴とする状態のことである。このことは、身体の免疫系が、膵臓中のインスリン産生ベータ細胞を攻撃して破壊した場合に起こる。次いで、膵臓はインスリンをほとんど産生しないか、又は全く産生しない。
【0101】
「膵炎」とは、膵臓の炎症のことである。
【0102】
「脂質異常症」とは、リポタンパク質代謝の障害(例えば、リポタンパク質の過剰発現又は欠乏)のことである。脂質異常症は、総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、及びトリグリセリドの濃度の上昇、並びに血液中における高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の低下を呈する場合がある。
【0103】
「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」とは、アルコール消費とは関連しない肝疾患のことであり、肝細胞の脂肪変化を特徴とし、小葉内の炎症及び線維症を伴う。
【0104】
「耐糖能障害(Glucose intolerance)」又は耐糖能障害(Impaired Glucose Tolerance)(IGT)とは、心血管病理のリスクの増加と関連する高血糖(dysglycemia)の前糖尿病状態のことである。前糖尿病状態は、対象が、グルコースを効率的に細胞中に移動させて効率的な燃料源として利用することを妨げ、血液中のグルコースレベルの上昇及びある程度のインスリン抵抗性をもたらす。
【0105】
「高血糖」は、血液中における過剰な糖(グルコース)として定義される。
【0106】
低血糖(low blood sugar)とも呼ばれる「低血糖(Hypoglycemia)」は、血糖値が低下して身体の活動に十分なエネルギーが供給されない場合に生じる。
【0107】
「高インスリン血症」は、血液中におけるインスリンの通常よりも高いレベルと定義される。
【0108】
「インスリン抵抗性」は、インスリンの正常量が亜正常の生物学的反応を生じる状態として定義される。
【0109】
ヒト対象に関する「肥満」は、所与の集団の理想体重を20パーセント超える体重として定義され得る(R.H.Williams,Textbook of Endocrinology,1974,p.904-916)。また、30以上のBody Mass Index(BMI、メートル単位の身長の二乗で除算したキログラム単位の体重(kg/m2)として定義される)としても定義され得る。
【0110】
「メタボリックシンドローム」は、下記の兆候のうちの少なくとも3つのクラスターとして定義され得る:腹部脂肪-ほとんどの男性では、40インチ以上のウエスト、高血糖-断食後に1デシリットル当たり少なくとも110ミリグラム(mg/dl);高トリグリセリド-血流中に少なくとも150mg/dL;低HDL-40mg/dl未満;及び130/85mmHg以上の血圧。
【0111】
「高血圧(Hypertension)」又は高血圧(high blood pressure)とは、心血管損傷又は他の有害な結果を誘発する可能性があるレベルまでの、全身動脈血圧の一時的な又は継続的な上昇のことである。高血圧は、140mmHgを超える収縮期血圧、又は90mmHgを超える拡張期血圧として任意に定義されている。
【0112】
「循環器疾患」とは、心臓又は血管に関連する疾患のことである。
【0113】
「末梢動脈疾患」は、頭、臓器、及び手足へと血液を運ぶ動脈中でプラークが蓄積される場合に生じる。時間と共に、プラークは動脈を硬化させて狭める可能性があり、臓器及び身体の他の部分への酸素リッチな血液の流れが制限される。
【0114】
「粥状動脈硬化」は、大サイズの及び中サイズの動脈の内膜中における不規則に分布した脂質沈着を特徴とする血管疾患であり、動脈内腔の狭窄を引き起こし、最終的には線維症及び石灰化へと進行する。病変は通常、限局性であり、緩やかに且つ断続的に進行する。血流の制限はほとんどの臨床症状を説明し、この臨床症状は、病変の分布及び重症度により異なる。
【0115】
「脳卒中」とは、24時間を超えて持続するあらゆる急性臨床事象(脳循環の障害に関連する)のことである。脳卒中には不可逆な脳損傷が含まれ、症状の種類及び重症度は、循環が損なわれている脳組織の位置及び範囲に依存する。
【0116】
うっ血性心不全とも呼ばれる「心不全」とは、心臓が身体の残りの部分へと十分な血液をもはや送り込むことができない状態のことである。
【0117】
冠動脈疾患とも呼ばれる「冠動脈心疾患」とは、心臓に血液及び酸素を供給する小さい血管の狭窄のことである。
【0118】
「腎疾患」又は腎症とは、腎臓のあらゆる疾患のことである。糖尿病性腎症は、1型糖尿病又は2型糖尿病を有する人々において罹患率及び死亡率の主な原因である。
【0119】
「糖尿病合併症」とは、他の身体機能(例えば、腎臓、神経(神経障害)、足(足の潰瘍及び循環不良)、並びに眼(例えば網膜症))に関連する問題(高血糖値により引き起こされる)のことである。糖尿病はまた、心臓病並びに骨及び関節の障害のリスクも高める。糖尿病の他の長期合併症として、皮膚の問題、消化の問題、性機能障害、並びに歯及び歯茎の問題が挙げられる。
【0120】
「神経障害」とは、脳神経、又は末梢神経系若しくは自律神経系に関するあらゆる疾患のことである。
【0121】
「胃不全麻痺」とは胃の蠕動の衰弱のことであり、これにより腸の排出が遅延する。
【0122】
本開示に包含される重症患者は概して、不安定な代謝亢進状態を経験する。この不安定な代謝状態は基礎代謝の変化に起因し、一部の栄養素の相対的な欠乏につながる場合がある。一般に、脂肪及び筋肉の両方の酸化が増加している。
【0123】
さらに、重症患者は好ましくは、全身性炎症反応症候群又は呼吸困難を経験している患者である。罹患率の低下は、重症患者が、さらなる病気、状態、若しくは症状を発症する可能性を低下させることを意味するか、又はさらなる病気、状態、若しくは症状の重症度を軽減することを意味する。例えば、罹患率の低下は、菌血症若しくは敗血症、又は多臓器不全と関連する合併症の発生率の低下に対応し得る。
【0124】
用語「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸配列及び核酸配列の双方に用いられる。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同じ、若しくは本質的に同じアミノ酸配列をコードする核酸を、又は、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同じ配列を指す。遺伝的コードの縮重によって、多数の機能的に同じ核酸が、所定のいずれかのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。ゆえに、コドンによってアラニンが特定される全ての位置にて、コドンは、記載される対応するコドンのいずれかに変更され得、コードされるポリペプチドを変更することはない。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、これは、保存的に修飾された変異の一種である。また、ポリペプチドをコードする本明細書中の全ての核酸配列が、核酸の全ての可能なサイレント変異を記載する。当業者であれば、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGG以外)が、機能的に同じ分子を産するように修飾され得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が、記載される各配列内に潜在する。
【0125】
ポリペプチド配列について、「保存的に修飾された変異体」は、化学的に類似するアミノ酸でアミノ酸を置換する、ポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失、又は付加を含む。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換の表が、当該技術において周知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本開示の多型の変異体、異種間相同体、及び対立遺伝子にも加えられ、これらを排除しない。以下の8つの群が、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)参照)。一部の実施形態において、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に大きく影響を及ぼさない、又はこれを大きく変更しないアミノ酸修飾を指すのに用いられる。
【0126】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合し得るタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グループで構成されており、通常は特定の三次元構造特性と特定の電荷特性とを有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下において前者への結合が失われているが後者への結合は失われていないという点で区別される。
【0127】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。さらに、この抗体が定常領域を含む場合には、この定常領域はまた、そのようなヒト配列(例えば、ヒト生殖系列配列、又はヒト生殖系列配列の突然変異バージョン)に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムな若しくは部位特異的な突然変異誘発により導入される突然変異、又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。
【0128】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態において、このヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス)から得られるB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0129】
「ヒト化」抗体とは、ヒト中では免疫原性が低いが、非ヒト抗体の反応性を保持する抗体のことである。このことは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、且つこの抗体の残りの部をそのヒトカウンターパート(即ち、定常領域、及び可変領域のフレームワーク部分)に置き換えることにより達成され得る。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855,1984;Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65-92,1988;Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536,1988;Padlan,Molec.Immun.,28:489-498,1991;及びPadlan,Molec.Immun.,31:169-217,1994を参照されたい。ヒト操作技術の他の例として、米国特許第5,766,886号明細書で開示されているXoma技術が挙げられるがこれに限定されない。
【0130】
2つ以上の核酸配列又はポリペプチド配列の文脈における用語「同じ」又はパーセント「同一性」は、2つ以上の配列又はサブ配列が同じであることを指す。2つの配列は、比較ウィンドウ、又は指定された領域上で、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は手動のアラインメント及び視覚による検査によって測定されて、最大一致について比較且つアラインされた場合に、アミノ酸残基又はヌクレオチドの特定のパーセンテージが同じである(すなわち、特定の領域にわたって、又は、特定されない場合には、配列全体にわたって、60%の同一性、場合によっては65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性)ならば、「実質的に同じである」。場合によっては、同一性は、長さが少なくとも約50ヌクレオチド(又は10アミノ酸)である領域、より好ましくは長さが100~500ヌクレオチド又は1000ヌクレオチド以上(又は20、50、200アミノ酸以上)である領域にわたって存在する。
【0131】
配列比較について、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いて、試験配列及び参照配列がコンピュータに入力されて、必要に応じて、サブ配列座標(subsequence coordinate)が指定されて、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータが用いられてもよいし、代替パラメータが指定されてもよい。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0132】
本明細書中で用いられる「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適にアラインされた後に、配列が、同じ数の隣接位置の参照配列と比較され得る、20~600、通常約50~約200、さらに通常約100~約150からなる群から選択される隣接位置の数のいずれか1つのセグメントへの言及を含む。比較のための配列アラインメント方法が、当該技術において周知である。比較のための最適な配列アラインメントが、例えば、Smith and Waterman,(1970)Adv.Appl.Math.2:482cの局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444,1988の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化されたインプリメンテーション(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおける、GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は手動アラインメント及び視覚による検査(例えば、Brent et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(Ringbou ed.,2003参照)によって行われ得る。
【0133】
パーセント配列同一性及び配列類似性を判定するのに適したアルゴリズムの2つの例として、BLASTアルゴリズム及びBLAST2.0アルゴリズムがあり、これらはそれぞれ、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402,1977;及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410,1990に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアが、National Center for Biotechnology Informationから一般に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、高いスコアリング配列対(HSP)を、クエリ配列中の長さWのショートワードを特定することによって特定することを包含し、これは、データベース配列において同じ長さのワードとアラインされた場合に、一部の正の値の閾値スコアTにマッチし、又はこれを満たすものである。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,前掲)。これらの最初の近隣ワードヒットは、これを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始させるシードとして機能する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増大し得る限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアが、ヌクレオチド配列について、パラメータM(一対のマッチング残基についての報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列について、スコアリングマトリックスが、累積スコアを算出するのに用いられる。各方向におけるワードヒットの延長は、次の場合に停止する:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量X落ちた場合;累積スコアが、1つ以上の負の値のスコアリング残基アラインメントの蓄積に起因して、ゼロ以下になった場合;又はいずれかの配列の端部に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を判定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の予想(E)、M=5、N=-4、及び双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、及び10の予想(E)、並びにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915,1989参照)は、50のアラインメント(B)、10の予想(E)、M=5、N=-4、及び双方の鎖の比較を用いる。
【0134】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的分析を実行する(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787,1993参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一尺度が、最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列又はアミノ酸配列間のマッチが偶然によって起こるであろう確率の指標を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であれば、参照配列に類似すると考える。
【0135】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、E.Meyers and W.Miller(Comput.Appl.Biosci.4:11-17,1988)のアルゴリズムを用いて(これは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている)、PAM120加重残留表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いて判定され得る。加えて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Needleman and Wunsch(J.Mol.Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムを用いて(これは、GCGソフトウェアパッケージ(ワールドワイドウェブgcg.comにて入手可能)において、GAPプログラムに組み込まれている)、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックス、並びに16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ加重及び1、2、3、4、5、又は6の長さ加重を用いて判定され得る。
【0136】
先で注目された配列同一性のパーセンテージ以外の、2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同じであることの別の指標として、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、下記のように、免疫学的に、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して高められた抗体と交差反応性であることがある。ゆえに、ポリペプチドは典型的に、第2のポリペプチドと、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、実質的に同じである。2つの核酸配列が実質的に同じであることの別の指標として、下記のように、2つの分子又はそれらの相補体が、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることがある。2つの核酸配列が実質的に同じであることのさらに別の指
標として、配列を増幅させるのに同じプライマーが用いられ得ることがある。
【0137】
用語「単離抗体」は、抗原特異性が異なる他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、β-クロトーに特異的に結合する単離抗体は、β-クロトー以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、β-クロトーに特異的に結合する単離抗体は、他の抗原に対する交差反応性を有する場合がある。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0138】
用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりもたらされる抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG、例えばIgG1又はIgG4)を指す。アイソタイプには、これらのクラスのうちの1つの改変バージョンも含まれ、改変は、例えば、エフェクター機能又はFcレセプターへの結合を増強するために又は低減するために、Fc機能を変更すべく行なわれている。
【0139】
用語「kassoc」又は「ka」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことが意図されており、用語「kdis」又は「kd」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図されている。用語「KD」は、本明細書で使用される場合、解離定数を指すことが意図されており、この解離定数は、kaに対するkdの比(即ち、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。当技術分野で十分に確立された方法を使用して、抗体のKD値を決定し得る。抗体のKDを決定する方法として、Biacore(登録商標)システム等のバイオセンサーシステムを使用した表面プラズモン共鳴の測定、又は溶液平衡滴定(SET)による溶液中の親和性の測定が挙げられる。
【0140】
用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用される場合、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0141】
用語「核酸」は、本明細書中で、用語「ポリヌクレオチド」と互換的に用いられ、一本鎖の形態又は二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、及びそれらのポリマーを指す。当該用語は、知られているヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基若しくは結合を含有する核酸を包含し、これらは、合成核酸、天然に存在する核酸、及び天然に存在しない核酸であり、参照核酸と類似の結合特性を有し、そして参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される。そのような類似体の例として、限定されないが、ホスホロチオアート、ホスホロアミダート、メチルホスホナート、キラルメチルホスホナート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0142】
特に明記されない限り、特定の核酸配列はまた、暗に、その保存的に修飾された変異体(例えば縮重コドン置換)及び相補配列、並びに明示的に示される配列を包含する。具体的には、以下で詳述されるように、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を生じさせることによって、達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081,1991;Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608,1985;及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98,1994)。
【0143】
用語「作動可能に結合される」は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えばDNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的に用語は、転写調節配列の、転写される配列との機能的関係を指す。例えば、プロモータ又はエンハンサ配列は、適切な宿主細胞又は他の発現系において、コード配列の転写を刺激又は調節するならば、コード配列に作動可能に結合されている。通常、転写される配列に作動可能に結合されるプロモータ転写調節配列は、転写される配列に物理的に隣接している、すなわちシス作用性である。しかしながら、一部の転写調節配列、例えばエンハンサは、転写を増強するコード配列に物理的に隣接する必要もないし、それに近接して位置決めされる必要もない。
【0144】
本明細書で使用される場合、用途「最適化された」は、産生細胞又は産生生物(一般的には真核細胞、例えばピキア(Pichia)の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はヒト細胞)において好ましいコドンを使用して、アミノ酸配列をコードするようにヌクレオチド配列が変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても既知である開始ヌクレオチド配列により元々コードされているアミノ酸配列を完全に又は可能な限り保持するように操作されている。最適化された配列は、本明細書では、哺乳動物細胞で好ましいコドンを有するように操作されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞でのこの配列の最適化された発現も本明細書で想定される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列も、最適化されたと称される。
【0145】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに、本明細書中で互換的に用いられる。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模擬物であるアミノ酸ポリマーに、そして天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに用いられる。特に明記されない限り、特定のポリペプチド配列はまた、暗に、その保存的に修飾された変異体を包含する。
【0146】
用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、組換え手段により調製され、発現され、作製され、又は単離された全てのヒト抗体を含み、この抗体として下記が挙げられる:ヒト免疫グロブリン遺伝子又はそれから調製されるハイブリドーマに対してトランスジェニック又はトランスクロモソーマル(transchromosomal)である動物(例えばマウス)から単離された抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ(transfectoma))から単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全て又は一部のスプライシングを含む任意の他の手段により調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロでの突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物を使用する場合には、インビボでの体細胞突然変異誘発)に供され得、そのため、この組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列及びVL配列に由来し且つ関連している一方で、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0147】
用語「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されていることを理解すべきである。突然変異又は環境の影響のいずれかに起因して、後継の世代では特定の改変が起こる場合があることから、そのような子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲には依然として含まれる。
【0148】
用語「対象」は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物及び非哺乳動物)を含み、例えば、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を含む。注記した場合以外では、用語「患者」又は「対象」は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、用語「cyno」又は「カニクイザル(cynomolgus)」は、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(Macaca fascicularis))を指す。
【0149】
本明細書中で用いられる用語、いずれかの疾患又は障害(例えば、
図21に関連する障害)を「処置すること」、又はその「処置」は、一実施形態において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患の進行、又はその臨床病徴の少なくとも1つを遅らせ、抑制し、又は軽減すること)を指す。別の実施形態において、「処置すること」、又は「処置」は、患者によって識別され得ないものを含む少なくとも1つの物理的パラメータを軽減又は改善することを指す。さらに別の実施形態において、「処置すること」、又は「処置」は、物理的に(例えば、識別できる病徴の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は両方で、疾患又は障害を調節することを指す。さらに別の実施形態において、「処置すること」、又は「処置」は、疾患又は障害の発症又は進行を予防し、又は遅延させることを指す。
【0150】
「予防」は、本明細書で説明された適応症(例えば、FGF21関連障害)に関する場合、FGF21関連疾患のパラメータの悪化のリスクのある患者において、下記で説明するように、例えば、前記悪化を予防するか、又は遅延させるあらゆる作用を意味する。
【0151】
用語「ベクター」は、このベクターが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送し得るポリヌクレオチド分子を指すことが意図されている。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、このプラスミドは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状の二本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプはウイルスベクター(例えばアデノ随伴ウイルスベクター(AAV又はAAV2))であり、このウイルスゲノム中に追加のDNAセグメントがライゲートされ得る。特定のベクターは、このベクターが導入される宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時にこの宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、このベクターが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指示し得る。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」と称される。
【0152】
一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミドの形態であることが多い。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であることから互換的に使用され得る。しかしながら、本開示は、同等の機能を果たす発現ベクター(例えばウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス))のそのような他の形態を含むことが意図されている。
【0153】
「FGF21活性の調節」は、本明細書で使用される場合、例えば、薬剤とFGF21ポリヌクレオチド若しくはFGF21ポリペプチドとの相互作用の結果、FGF21シグナル伝達経路の活性化の結果、及び/又はFGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター依存性シグナル伝達)の活性化の結果、及び同類の結果であり得るFGF21活性の増加又は減少を指す。例えば、生物活性の調節は、生物活性の増加又は減少を指す。対象の血中のグルコース、インスリン、トリグリセリド、若しくはコレステロールのレベルをアッセイすることが挙げられるがこれに限定されない手段により;ベータ-クロトー及び/若しくはFGFレセプター(例えばFGFR-1c)のポリペプチドレベルを評価することにより;又は、FGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター依存性シグナル伝達)の活性化を評価することにより、FGF21活性を評価し得る。
【0154】
例えば、FGF21下流バイオマーカーのレベルを測定し、且つFGF21シグナル伝達の増加を測定することによっても、FGF21活性の比較を達成し得る。下記の測定によっても活性を評価し得る:細胞シグナル伝達;キナーゼ活性;脂肪細胞中へのグルコースの取込み;血中のインスリン、トリグリセリド、又はコレステロールのレベルの変動;肝臓脂質又は肝臓トリグリセリドのレベルの変化;FGF21及び/若しくはベータ-クロトーとFGF21レセプターとの間の相互作用;又はFGF21レセプターのリン酸化。一部の実施形態において、FGF21レセプターのリン酸化はチロシンリン酸化であり得る。一部の実施形態において、FGF21活性の調節は、FGF21関連表現型の調節を生じ得る。
【0155】
「FGF21下流バイオマーカー」は、本明細書で使用される場合、遺伝子若しくは遺伝子産物、又は遺伝子若しくは遺伝子産物の測定可能な指標である。一部の実施形態において、FGF21の下流マーカーである遺伝子又は活性は、発現のレベルの変化を示すか、又は血管組織中でのレベルの変化を示す。一部の実施形態において、下流マーカーの活性は、FGF21モジュレータの存在下で変化する。一部の実施形態において、FGF21が本開示のFGF21モジュレータにより撹乱されると、下流マーカーは発現レベルの変化を示す。FGF21下流マーカーとして、グルコース又は2-デオキシ-グルコースの取込み、pERK及び他のリン酸化タンパク質若しくはアセチル化タンパク質、又はNADのレベルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「上方調節する」は、活性又は量の増加、活性化、又は刺激を指す。例えば、本開示の文脈において、FGF21モジュレータは、ベータ-クロトー及び/又はFGF21レセプターの活性を増加させ得る。一実施形態において、FGFR-1cは、FGF21モジュレータに応答して上方調節され得る。上方調節はまた、FGF21関連活性も指し得、例えば、血中のグルコース、インスリン、トリグリセリド、若しくはコレステロールのレベルを低下させる能力;肝臓の脂質若しくはトリグリセリドのレベルを減少させる能力;体重を減少させる能力;耐糖能、エネルギー消費、若しくはインスリン感受性を改善させる能力;又はFGF21レセプターのリン酸化を引き起こす能力;又はFGF21下流マーカーを増加させる能力も指し得る。FGF21レセプターは、β-クロトー及びFGFR-1cであり得る。上方調節は、コントロールと比較して、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも400%、又は少なくとも500%であり得る。
【0157】
本明細書で使用される場合、用語「モジュレータ」は、FGF21関連障害と関連する1種又は複数種の生理学的な又は生化学的な事象(例えば、1型糖尿病若しくは2型糖尿病、又は肥満のような代謝状態)を調節する組成物を指す。前記事象として、血中のグルコース、インスリン、トリグリセリド、又はコレステロールのレベルを低下させる能力;肝臓脂質又は肝臓トリグリセリドのレベルを低下させる能力;体重を減少させる能力;及び耐糖能、エネルギー消費、又はインスリン感受性を改善させる能力が挙げられるがこれらに限定されない。
【0158】
FGF21タンパク質
本開示は、本明細書で定義されているように、FGF21媒介シグナル伝達(例えば、FGF21-レセプター媒介シグナル伝達)を誘発し得るFGF21模倣抗体(例えば、ベータ-クロトー(β-クロトー)に結合するモノクローナル抗体)を提供する。インビボでは、FGF21の成熟型は、この分子の活性型である。例示的なヒトFGF21野生型配列は、NCBI参照配列番号NP_061986.1を有し、例えば、下記に記載されているように、米国特許第6,716,626B1号明細書等の発行された特許中に見出され得る(配列番号1)。
【化1】
【0159】
完全長FGF21ポリペプチドをコードする、対応するmRNA配列(NCBI参照配列番号NM_019113.2)を下記に示す(配列番号2)
【化2】
【0160】
成熟FGF21配列はリーダー配列を欠いており、且つ他のポリペプチド改変も含み得、この他のポリペプチド改変として、アミノ末端(リーダー配列を有するか、若しくは有しない)及び/又はカルボキシル末端のタンパク質分解プロセシング、より大きな前駆体からのより小さいポリペプチドの開裂、N-結合グリコシル化及び/又はO-結合グリコシル化、並びに当業者により理解される他の翻訳後改変が挙げられる。成熟FGF21配列の代表例は、下記の配列(配列番号53、完全長FGF21タンパク質配列(NCBI参照配列番号NP_061986.1)のアミノ酸位置29~209を表す)を有する。
【化3】
【0161】
成熟FGF21ポリペプチド(配列番号53)をコードする、対応するcDNA配列を下記に示す(配列番号63)。
【化4】
【0162】
FGF21模倣抗体&抗原結合フラグメント
本開示は、β-クロトー(例えば、ヒトβ-クロトー)に特異的に結合する抗体を提供する。一部の実施形態において、本開示は、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトーに特異的に結合する抗体を提供する。本開示の抗体として、実施例で説明するように単離された、ヒトモノクローナル抗体及びFabが挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
β-クロトー野生型配列はNCBI参照配列番号NP_783864.1を有し、且つXu,et al.(2007)J Biol Chem.282(40):29069-72及びLin,et al.(2007)J Biol Chem.282(37):27277-84等の文献中に見出され得る。ヒトβ-クロトーをコードする完全長cDNAは、GenBank受託番号NM_175737)を有する。このタンパク質配列は下記のとおりである(配列番号52)。
【化5】
【0164】
本開示は、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及び/又はカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体及びその抗原結合フラグメントであって、この抗体は表1で説明されている(例えば、NOV005又はNOV006)、抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。具体的な態様において、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及び/又はカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る、本明細書で提供される抗体及びその抗原結合フラグメントは、表2で説明された抗体(例えば、NOV001、NOV002、NOV003、又はNOV004)ではない。表2で説明された抗体は、2016年8月2日に出願されたPCT国際特許出願第PCT/IB2016/054660号で説明されており、この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
本開示は、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及び/又はカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体であって、配列番号15のアミノ酸配列を有するVHドメインを含む抗体を提供する。本開示はまた、β-クロトータンパク質に特異的に結合する抗体であって、下記の表1で列挙されたVH CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む抗体も提供する。具体的には、本開示は、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体であって、下記の表1で列挙されたVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する1個、2個、3個、又はより多くのVH CDRを含む(あるいは、からなる)抗体を提供する。
【0166】
本開示は、β-クロトータンパク質に特異的に結合する抗体であって、配列番号26又は32のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む前記抗体を提供する。本開示はまた、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体であって、下記の表1で列挙されたVL CDRのうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む抗体も提供する。具体的には、本開示は、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体であって、下記の表1で列挙されたVL CDRのうちのいずれかのアミノ酸配列を有する1個、2個、3個、又はより多くのVL CDRを含む(あるいは、からなる)抗体を提供する。
【0167】
本開示の他の抗体は、アミノ酸であって、突然変異しているが、表1で説明された配列中に示されるCDR領域と、CDR領域中において少なくとも60、70、80、85、90、又は95パーセントの同一性を依然として有するアミノ酸を含む。一部の実施形態において、本開示の他の抗体は、表1で説明された配列中に示されるCDR領域と比較した場合に、CDR領域中において1個、2個、3個、4個、又は5個以下のアミノ酸が突然変異している突然変異アミノ酸配列を含む。
【0168】
本開示はまた、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する抗体のVH、VL、完全長重鎖、及び完全長軽鎖をコードする核酸配列を含む核酸分子又はポリヌクレオチドも提供する。そのような核酸配列を、哺乳動物細胞中での発現に最適化し得る(例えば、表1は、本開示の抗体の重鎖及び軽鎖に最適化された核酸配列を示す)。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
本開示の他の抗体として、アミノ酸又はこのアミノ酸をコードする核酸が突然変異しているが、表1で説明された配列に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、又は95パーセントの同一性を依然として有する抗体が挙げられる。一部の実施形態は、実質的に同一の抗原結合活性を保持しつつ、表1で説明された配列中に示された可変領域と比較した場合に、可変領域中で1個、2個、3個、4個、又は5個を超えるアミノ酸が突然変異している突然変異アミノ鎖配列を含む。
【0182】
本開示の他の抗体として、アミノ酸又はこのアミノ酸をコードする核酸が突然変異しているが、表1で説明された配列に対して少なくとも60、65、70、75、80、85、90、又は95パーセントの同一性を依然として有する抗体が挙げられる。一部の実施形態は、実質的に同一の抗原結合活性を保持しつつ、表1で説明された配列中に示された可変領域と比較した場合に、可変領域中で1個、2個、3個、4個、又は5個を超えるアミノ酸が突然変異している突然変異アミノ鎖配列を含む。
【0183】
これらの抗体はそれぞれβ-クロトーに結合し得ることから、VH配列、VL配列、完全長軽鎖配列、及び完全長重鎖配列(アミノ酸配列、及びこのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列)を「混合且つマッチ(mixed and matched)」させて、本開示の他のβ-クロトー結合抗体を作製し得る。そのような「混合且つマッチ」されたβ-クロトー結合抗体を、当技術分野で既知の結合アッセイ(例えば、ELISA、及び実施例の項で説明される他のアッセイ)を使用して試験し得る。これらの鎖が混合且つマッチされている場合には、特定のVH/VLの対合由来のVH配列は、構造的に類似するVH配列に置き換えられているべきである。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖の対合由来の完全長重鎖配列は、構造的に類似する完全長重鎖配列に置き換えられているべきである。同様に、特定のVH/VLの対合由来のVL配列は、構造的に類似するVL配列に置き換えられているべきである。同様に、特定の完全長重鎖/完全長軽鎖の対合由来の完全長軽鎖配列は、構造的に類似する完全長軽鎖配列に置き換えられているべきである。
【0184】
従って、一多様において、本開示は、単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合領域であって、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号26又は32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを有し、この抗体はβ-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合する、単離抗体又はその抗原結合領域を提供する。
【0185】
別の態様において、本開示は、(i)単離抗体であって、配列番号17のアミノ酸配列(哺乳動物細胞中での発現に最適化されている)を含む完全長重鎖と、配列番号28若しくは34のアミノ酸配列(哺乳動物細胞中での発現に最適化されている)を含む完全長軽鎖とを有する単離抗体、又は(ii)その抗原結合部分を含む機能的タンパク質を提供する。より具体的には、特定の態様において、本開示は、重鎖及び軽鎖を含む単離抗体又はその抗原結合領域であって、この重鎖及び軽鎖はそれぞれ、配列番号17及び28、又は配列番号17及び34から選択されるアミノ酸配列を含む、単離抗体又はその抗原結合領域を提供する。
【0186】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はフラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号26若しくは32のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0187】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はフラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHを含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0188】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はフラグメントは、配列番号26又は32のアミノ酸配列を含むVLを含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0189】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はフラグメントは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL、又は(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVLを含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0190】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体は、(i)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0191】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又は抗原結合フラグメントは、表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR又はKabat CDRを含まない、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0192】
用語「相補性決定領域」及び「CDR」は、本明細書で使用される場合、抗原特異性及び結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、各重鎖可変領域中に3個のCDRが存在し(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、且つ各軽鎖可変領域中に3個のCDRが存在する(LCDR1、LCDR2、LCDR3)。
【0193】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列の境界を、多くの公知のスキームのいずれかを使用して容易に決定し得、このスキームとして、下記で説明されているものが挙げられる:Kabat et al.(1991),”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム)、及びImMunoGenTics(IMGT)ナンバリング(Lefranc,M.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999);Lefranc,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)(「IMGT」ナンバリングスキーム)。例えば、古典的フォーマットの場合、Kabat下では、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基には、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)の番号が付され、軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基には、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)の番号が付される。Chothia下では、VH中のCDRアミノ酸には、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)の番号が付され、VL中のアミノ酸残基には、26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、及び91~96(LCDR3)の番号が付される。Kabat及びChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVH中のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)と、ヒトVL中のアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)とからなる。IMGT下では、VH中のCDRアミノ酸残基には、約26~35(CDR1)、51~57(CDR2)、及び93~102(CDR3)の番号が付され、VL中のCDRアミノ酸残基には、約27~32(CDR1)、50~52(CDR2)、及び89~97(CDR3)の番号が付される(「Kabat」に従うナンバリング)。IMGT下では、抗体のCDR領域は、プログラムIMGT/DomainGap Alignを使用して決定され得る。Kabat及びChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、「組合せ」CDRは、ヒトVH中のアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び99~108(HCDR3)と、ヒトVL中のアミノ酸残基24~39(LCDR1)、55~61(LCDR2)、及び94~102(LCDR3)とからなり得る。
【0194】
別の態様において、本開示は、表1で説明された重鎖及び軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、又はそれらの組合せを含むβ-クロトー結合抗体を提供する。具体的な態様において、これらのCDRはKabatシステムを使用して描写される。別の具体的な態様において、これらのCDRは組合せシステムを使用して描写される。
【0195】
これらの抗体のそれぞれがβ-クロトーに結合し得、且つ抗原結合特異性が、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域により主に付与されることを考慮すると、VH CDR1、2、及び3の配列、並びにVL CDR1、2、及び3の配列は「混合且つマッチ」され得る(即ち、異なる抗体からのCDRが混合且つマッチされ得るが、各抗体は、本開示の他のβ-クロトー結合分子を作製するために、VH CDR1、2、及び3、並びにVL CDR1、2、及び3を好ましくは含む)。そのような「混合且つマッチ」されたβ-クロトー結合抗体を、当技術分野で既知の結合アッセイ及び実施例で説明されているもの(例えば、ELISA、SET、Biacore(登録商標)結合アッセイ)を使用して試験し得る。VH CDR配列が混合且つマッチされている場合には、特定のVH配列からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3の配列は、構造的に類似するCDR配列に置き換えられているべきである。同様に、VL CDR配列が混合且つマッチされている場合には、特定のVL配列からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3の配列は、構造的に類似するCDR配列に置き換えられているべきである。1個又は複数個のVH CDR領域及び/又はVL CDR領域の配列を、本開示のモノクローナル抗体に関して本明細書で示されたCDR配列からの構造的に類似する配列に置き換えることにより、新規のVH及びVLの配列を作製し得ることが、当業者に容易に明らかであるだろう。上述に加えて、一実施形態において、本明細書で説明された抗体の抗原結合フラグメントは、VH CDR1、2、及び3、又はVL CDR1、2、及び3を含み得、このフラグメントは、単一可変ドメインとしてβ-クロトーに結合する。
【0196】
本開示の特定の実施形態において、本抗体又はその抗原結合フラグメントは、表1で説明されたFabの重鎖及び軽鎖の配列を有し得る。より具体的には、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fab NOV005又はNOV006の重鎖及び軽鎖の配列を有し得る。
【0197】
本開示の特定の実施形態において、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、表1に記載されているように、Fab NOV005又はNOV006の重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3と、Fab NOV005又はNOV006の軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3とを含む。
【0198】
本開示の他の実施形態において、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、Kabatにより定義され且つ表1で説明された重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、及び軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態において、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、Chothiaにより定義され且つ表1で説明された重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、及び軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態において、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、Kabat及びChothiaの組合せにより定義され且つ表1で説明された重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、及び軽鎖可変領域CDR3を含む。本開示のさらに他の実施形態において、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、IMGTにより定義され且つ表1で説明された重鎖可変領域CDR1、重鎖可変領域CDR2、重鎖可変領域CDR3、軽鎖可変領域CDR1、軽鎖可変領域CDR2、及び軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0199】
特定の実施形態において、本開示は、表1で説明された、β-クロトーに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメント(例えば、抗体NOV005又はNOV006)を含む。好ましい実施形態において、β-クロトーに結合し且つFGF21レセプター複合体を活性化する抗体又は抗原結合フラグメントは、Fab NOV005又はNOV006である。
【0200】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6、9、10又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
(ii)配列番号7、11又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
(iii)配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
(iv)配列番号19、31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
(v)配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
(vi)配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0201】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6、9、10又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
(ii)配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
(iii)配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
(iv)配列番号31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
(v)配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
(vi)配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0202】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6、9、10、又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
(ii)配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
(iii)配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
(iv)配列番号19、31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
(v)配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
(vi)配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0203】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号7のアミノ鎖配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号31のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号20のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0204】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号9のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号31のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号20のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0205】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号22のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号23のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号24のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0206】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号14のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号23のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0207】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
(i)HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号19のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号20のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含むか、又は
(ii)HCDR1は配列番号9のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号19のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号20のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0208】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号22のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号23のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号24のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0209】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、
HCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号14のアミノ酸配列を含み、LCDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号23のアミノ酸配列を含み、且つLCDR3は配列番号21のアミノ酸配列を含む、
単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0210】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、CDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、CDR LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19又は31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0211】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、CDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVHと、CDR LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLとを含み、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19又は31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0212】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントはβ-クロトー及び/-又はFGFR1cの活性を増加させる、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、前記抗体又はそのフラグメントは、例えばホスホ-ERK活性により決定した場合に、β-クロトー及び/又はFGFR1cの活性を少なくとも約10%又は20%増加させる。具体的な態様において、前記抗体又はそのフラグメントは、例えばホスホ-ERK活性により決定した場合に、β-クロトー及び/又はFGFR1cの活性を少なくとも約30%又は40%増加させる。具体的な態様において、前記抗体又はそのフラグメントは、例えばホスホ-ERK活性により決定した場合に、β-クロトー及び/又はFGFR1cの活性を少なくとも約50%又は60%増加させる。具体的な態様において、前記抗体又はそのフラグメントは、例えばホスホ-ERK活性により決定した場合に、β-クロトー及び/又はFGFR1cの活性を少なくとも約70%又は80%増加させる。具体的な態様において、前記抗体又はそのフラグメントは、例えばホスホ-ERK活性により決定した場合に、β-クロトー及び/又はFGFR1cの活性を少なくとも約90%又は95%増加させる。
【0213】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又は抗原結合フラグメントは、例えばBIACORE(商標)結合アッセイにより決定した場合に、500pM又は450pM以下のKDでヒトβ-クロトータンパク質に結合する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又は抗原結合フラグメントは、例えばBIACORE(商標)結合アッセイにより決定した場合に、450pM又は400pM以下のKDでヒトβ-クロトータンパク質に結合する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0214】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この抗体又は抗原結合フラグメントは、例えばBIACORE(商標)結合アッセイにより決定した場合に、10pM又は20pM以下のKDでヒトβ-クロトータンパク質に結合する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0215】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記β-クロトーのエピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0216】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0217】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、水素重水素交換(HDx)により決定した場合に、ヒトβ-クロトー(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸を保護する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0218】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個を保護する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0219】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントは、ヒトβ-クロトー(配列番号52)の残基701(Tyr)又は703(Arg)と接触しない、単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0220】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、pERK細胞アッセイにより測定した場合に50nM以下のEC50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0221】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、pERK細胞アッセイにより測定した場合に100nM以下のEC50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0222】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、pERK細胞アッセイにより測定した場合に40nM又は30nM以下のEC50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0223】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、pERK細胞アッセイにより測定した場合に50nM以下のEC50で、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、FGFR2c-β-クロトーレセプター複合体、FGFR3c-β-クロトーレセプター複合体、及び/又はFGFR4-β-クロトーレセプター複合体を活性化し得ない、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0224】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、pERK細胞アッセイにより測定した場合に50nM以下のEC50で、カニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0225】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、pERK細胞アッセイにより測定した場合に40nM又は30nM以下のEC50で、カニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0226】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合し且つFGF21レセプター複合体(例えばFGFR1c-β-クロトーレセプター複合体)の活性を誘発する単離抗体(例えばモノクローナル抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、pERK細胞アッセイにより測定した場合に20nM以下のEC50で、カニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体を活性化し得る、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。本明細書で使用される場合、ヒト抗体の可変領域又は完全長鎖が、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用するシステムから得られる場合には、この抗体は、特定の生殖系列配列の「産物」であるか又はこの配列に「由来」する、重鎖若しくは軽鎖の可変領域又は完全長の重鎖若しくは軽鎖を含む。そのようなシステムは、目的の抗原により、ヒト免疫免疫グロブリン遺伝子を運ぶトランスジェニックマウスに免疫付与すること、又は目的の抗原により、ファージ上で提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか又はこの配列に「由来」するヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、このヒト抗体の配列に配列が最も近い(即ち、最大の同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そのように同定され得る。
【0227】
特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列の「産物」であるか又はこの配列に「由来」するヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞突然変異、又は部位特異的突然変異の意図的な導入に起因して、生殖系列配列と比較して異なるアミノ酸を含み得る。しかしながら、VH又はVLのフレームワーク領域において、選択されたヒト抗体は概して、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、且つ他の種の生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列(例えばマウスの生殖系列配列)と比較した場合に、このヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含む。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列が少なくとも60%、70%、80%、90%、又は少なくとも95%、又はさらに少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%同一であり得る。
【0228】
典型的には、組換えヒト抗体は、VH又はVLのフレームワーク領域中において、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とは10個以下のアミノ酸の差異を示すだろう。特定の場合において、このヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とは5個以下の、又はさらに4個、3個、2個、又は1個以下のアミノ酸の差異を示し得る。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子の例として、下記で説明される可変ドメイン生殖系列フラグメント、並びにDP47及びDPK9が挙げられるがこれらに限定されない。
【0229】
相同な抗体
さらに別の実施形態において、本開示は、表1で説明された配列に対して相同であるアミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合フラグメントを提供し、この抗体は、β-クロトータンパク質(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に結合し、且つ表1で説明されたものの所望される機能特性(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性及び/又はFGF21の1種若しくは複数種の活性の活性化又は増加)を保持する。
【0230】
例えば、本開示は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその機能的抗原結合フラグメントであって、この重鎖可変ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%同一であるか、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、この軽鎖可変ドメインは、配列番号26又は32のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%同一であるか、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、この抗体は、β-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、且つβ-クロトーの活性を誘発し、この重鎖可変ドメインは、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば、配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば、配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない、単離抗体又はその機能的抗原結合フラグメントを提供する。本開示の特定の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列は、例えば表1に記載されているように、Kabatにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列はそれぞれ、例えば表1に記載されているように、Chothiaにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列はそれぞれ、例えば表1に記載されているように、組合せにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列はそれぞれ、例えば表1に記載されているように、IMGTにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。
【0231】
例えば、本開示は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその機能的抗原結合フラグメントであって、この重鎖可変ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%同一であるか、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、この軽鎖可変ドメインは、配列番号26又は32のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%同一であるか、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、この抗体は、β-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、この重鎖可変ドメインは、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば、配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば、配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない、単離抗体又はその機能的抗原結合フラグメントを提供する。本開示の特定の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列は、例えば表1に記載されているように、Kabatにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列は、例えば表1に記載されているように、Chothiaにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列は、例えば表1に記載されているように、組合せにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。本開示の特定の他の態様において、この重鎖及び軽鎖の配列は、例えば表1に記載されているように、IMGTにより定義されたHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の配列をさらに含む。
【0232】
他の実施形態において、VH及び/又はVLのアミノ酸配列は、表1に記載された配列に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得、この重鎖可変ドメインは、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば、配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない。他の実施形態において、VH及び/又はVLのアミノ酸配列は、1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、又は5箇所以下のアミノ酸位置でのアミノ酸置換を除いて同一であり得る。表1で説明されているもののVH領域及びVL領域に対して高い(即ち80%以上の)同一性を有するVH領域及びVL領域を有する抗体を、それぞれ配列番号10、30、50、又は70、及び配列番号20、40、60、又は80をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発)、及びそれに続く、本明細書で説明された機能的アッセイを使用した、保持された機能に関する、コードされた変更抗体の試験により得ることができ、この重鎖可変ドメインは、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載されたアミノ酸配列(例えば配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない。
【0233】
他の実施形態において、完全長重鎖及び/又は完全長軽鎖のアミノ酸配列は、表1に記載された配列に対して50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない。配列番号17の完全長重鎖及び配列番号28又は34の完全長軽鎖に対して高い(即ち80%以上の)同一性を有する完全長重鎖及び完全長軽鎖を有する抗体を、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発)、及びそれに続く、本明細書で説明された機能的アッセイを使用した、保持された機能に関する、コードされた変更抗体の試験により得ることができ、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない。配列番号17の完全長重鎖及び配列番号28又は34の完全長軽鎖に対して高い(即ち80%以上の)同一性を有する完全長重鎖及び完全長軽鎖を有する抗体を、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発)、及びそれに続く、本明細書で説明された機能的アッセイを使用した、保持された機能に関する、コードされた変更抗体の試験により得ることができ、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない。
【0234】
他の実施形態において、この完全長重鎖及び/又は完全長軽鎖のヌクレオチド配列は、表1に記載された配列に対して60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない。
【0235】
他の実施形態において、重鎖の可変領域及び/又は軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列は、表1に記載された配列に対して60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であり得、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない。
【0236】
本明細書で使用される場合、2種の配列の間の同一性パーセントは、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数であり(即ち、同一性%は、同一の位置の数/位置の総数×100と等しい)、これら2種の配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある。配列の比較、及び2種の配列の間の同一性パーセントの決定を、下記の非限定的な実施例で説明されているように、数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。
【0237】
加えて、又はあるいは、本開示のタンパク質配列は、例えば関連配列を同定するために公共のデータベースに対して検索を実施すべく、「クエリ配列」としてさらに使用され得る。例えば、そのような検索を、Altschul,et al.,1990 J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施し得る。
【0238】
保存的改変を有する抗体
特定の実施形態において、本開示の抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域とを有し、これらのCDR配列のうちの1つ又は複数は、本明細書で説明された抗体又はその保存的改変に基づいて特定のアミノ酸配列を有し、この抗体は、本開示のβ-クロトー結合抗体の所望される機能的特性を保持する。
【0239】
従って、本開示は、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域とからなる、単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この重鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号6及びその保存的改変からなる群から選択され;この重鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7及びその保存的改変からなる群から選択され;この重鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8及びその保存的改変からなる群から選択され;この軽鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号19及び31並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;この軽鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号20及びその保存的改変からなる群から選択され;CDR3のアミノ酸配列の軽鎖可変領域は、配列番号21及びその保存的改変からなる群から選択され;この抗体又はその抗原結合フラグメントはβ-クロトーに特異的に結合する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0240】
従って、本開示は、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3の配列を含む軽鎖可変領域とからなる単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、この重鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号6、9、10、及び12並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;この重鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号7、11、及び13並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;この重鎖可変領域CDR3のアミノ酸配列は、配列番号8及び14並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;この軽鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号19、31、22、及び25並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;この軽鎖可変領域CDR2のアミノ酸配列は、配列番号20及び23並びにそれらの保存的改変からなる群から選択され;CDR3のアミノ酸配列の軽鎖可変領域は、配列番号21又は24及びそれらの保存的改変からなる群から選択され;この抗体又はその抗原結合フラグメントはβ-クロトーに特異的に結合する、単離抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0241】
一態様において、本開示は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、哺乳動物細胞中での発現に最適化された単離抗体であって、この重鎖可変領域は、配列番号15及びその保存的改変の群から選択されるアミノ酸を有し、且つこの完全長軽鎖は、配列番号26及び32並びにそれらの保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し;この抗体は、β-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、この重鎖可変領域は、表2に記載された重鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載された軽鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない、単離抗体を提供する。
【0242】
他の実施形態において、哺乳動物細胞中での発現に最適化された本開示の抗体は、完全長重鎖配列及び完全長軽鎖配列を有し、これらの配列のうちの1つ又は複数は、本明細書で説明された抗体又はその保存的改変に基づいて特定のアミノ酸配列を有し、この抗体は、本開示のβ-クロトー結合抗体の所望される機能特性を保持する。従って、本開示は、完全長重鎖及び完全長軽鎖からなる、哺乳動物細胞中での発現に最適化された単離抗体であって、この完全長重鎖は、配列番号17及びその保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し、且つこの完全長軽鎖は、配列番号28及び34並びにそれらの保存的改変の群から選択されるアミノ酸配列を有し;この抗体は、β-クロトー(例えば、ヒト及びカニクイザルのβ-クロトー)に特異的に結合し、この重鎖は、表2に記載された重鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号45、56、59、又は61のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖は、表2に記載された軽鎖アミノ酸配列(例えば、配列番号49、58、60、又は62のアミノ酸配列)を含まない、単離抗体を提供する。
【0243】
同一のエピトープに結合するか又は同一のエピトープへの結合を競合する抗体
本開示は、表1で説明されたβ-クロトー結合抗体(例えばNOV005又はNOV006)と同一のエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。特定の態様において、そのような抗体及び抗原結合フラグメントは、β-クロトー及びFGFR1cの活性を増加させ得る。従って、追加の抗体を、β-クロトー結合アッセイ(例えば、実施例で説明されたもの)において、本開示の他の抗体と競合する(例えば、統計的に有意な方法で結合を競合的に阻害する)能力に基づいて同定し得る。β-クロトータンパク質への本開示の抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、この試験抗体が、βクロトーへの結合に関してこの抗体と競合し得ることを示し、そのような抗体は、非限定的な理論に従って、競合する抗体と同一の又は関連する(例えば、構造的に類似の又は空間的に近位の)β-クロトータンパク質上のエピトープに結合し得る。特定の実施形態において、本開示の抗体と同一のβ-クロトー上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体を、本明細書で説明されているように調製して単離し得る。本明細書で使用される場合、等モル濃度の競合抗体の存在下において、この競合抗体が本開示の抗体又は抗原結合フラグメントのβ-クロトー結合を50%超(例えば、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%)阻害する場合には、この抗体は結合に関して「競合する」。特定の実施形態において、本開示の抗体と同一のβ-クロトー上のエピトープに結合する抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。そのようなヒト化モノクローナル抗体を、本明細書で説明されているように調製して単離し得る。
【0244】
特定の態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV005又はNOV006と同一のエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0245】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26又は32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と同一のエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0246】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と同一のエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0247】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と同一のエピトープに結合する抗体を提供する。
【0248】
特定の態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV005又はNOV006と重複するエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0249】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26又は32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と重複するエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0250】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と重複するエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0251】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体と重複するエピトープに結合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか又は増加させ得る抗体)を提供する。
【0252】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基536~550のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基834~857のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0253】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの2個以上のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの3個以上のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーのエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のストレッチのそれぞれからの少なくとも1個のアミノ酸残基を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0254】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの1個又は複数個のエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの1個又は複数個のエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基696~700のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの1個又は複数個のエピトープに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0255】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの1個又は複数個のエピトープ(例えば不連続エピトープ)に結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個、又は2個、又は3個、又は4個、又は5個、又はより多くを含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの2個以上のエピトープ(例えば不連続エピトープ)に結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの3個以上のエピトープ(例えば不連続エピトープ)に結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの3個以上のエピトープ(例えば不連続エピトープ)に結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーの3個以上のエピトープ(例えば不連続エピトープ)に結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、前記エピトープは、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基646~670、696~700、及び646~689の範囲のそれぞれからのアミノ酸残基を含む、単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0256】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、水素-重水素交換(HDx)により決定した場合に、β-クロトー(配列番号52)の下記のペプチド:アミノ酸残基245~266、246~265、343~349、344~349、421~429、488~498、509~524、536~550、568~576、646~669、646~670、696~700、773~804、834~857、及び959~986のうちの1個、2個、3個、4個、5個、又はより多くを保護する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントである。
【0257】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、水素-重水素交換(HDx)により決定した場合に、β-クロトー(配列番号52)の下記のペプチド:アミノ酸残基246~265、536~550、834~857、及び959~986を保護する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントである。
【0258】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、水素-重水素交換(HDx)により決定した場合に、β-クロトー(配列番号52)の下記のペプチド:アミノ酸残基245~266、246~265、343~349、344~349、421~429、488~498、509~524、536~550、568~576、646~669、646~670、696~700、773~804、834~857、及び959~986を保護する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントである。
【0259】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトー及びFGFR1cの活性を増加させる単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、ヒトβ-クロトー(配列番号52)の残基701(Tyr)又は703(Arg)と接触しない単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0260】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265のうちの1個又は複数個のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基536~550のうちの1個又は複数個のアミノ酸と接触する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基834~857のうちの1個又は複数個のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0261】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの1個又は複数個のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの2個以上のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のうちの3個以上のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のアミノ酸と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基246~265、536~550、834~857、及び959~986のストレッチのそれぞれからの少なくとも1個のアミノ酸残基と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0262】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670のアミノ酸のうちの1個又は複数個と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基696~700のアミノ酸のうちの1個又は複数個と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~689のアミノ酸のうちの1個又は複数個と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0263】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)の残基646~670、696~700、及び646~689のアミノ酸のうちの1個、又は2個、又は3個、又は4個、又は5個、又はより多くと接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基646~670、696~700、及び646~689のストレッチのそれぞれからのアミノ酸残基のうちの1個又は複数個と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基646~670、696~700、及び646~689のストレッチのそれぞれからのアミノ酸残基のうちの1個又は複数個と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、β-クロトーに結合する単離抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)又はその抗原結合フラグメントであって、例えば、x線結晶構造解析、水素-重水素交換アッセイ、又は突然変異誘発のスキャニングにより決定した場合に、β-クロトー配列(配列番号52)のアミノ酸残基646~670、696~700、及び646~689と接触する単離抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0264】
特定の態様において、本開示は、β-クロトーへの結合に関して抗体NOV005又はNOV006と競合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)を提供する。
【0265】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26又は32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体とβ-クロトーへの結合に関して競合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)を提供する。
【0266】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号26のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体とβ-クロトーへの結合に関して競合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)を提供する。
【0267】
特定の態様において、本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含むβ-クロトー結合抗体とβ-クロトーへの結合に関して競合する抗体(例えば、β-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を活性化し得るか若しくは増加させ得る抗体)を提供する。
【0268】
操作されて改変された抗体
本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)を、改変抗体を操作するための出発物質として本明細書で示されたVH配列及び/又はVL配列のうちの1つ又は複数を有する抗体を使用してさらに調製し得、この改変抗体は、出発抗体から変更された特性を有し得る。一方又は両方の可変領域(即ち、VH及び/又はVL)内の(例えば、1個若しくは複数個のCDR領域内の、及び/又は1個若しくは複数個のフレームワーク領域内の)1個又は複数個の残基を改変することにより、抗体を操作し得る。加えて、又はあるいは、定常領域内の残基を改変することにより抗体を操作して、例えば、この抗体のエフェクター機能を変更し得る。
【0269】
実施し得る可変領域の操作の1つのタイプは、CDR移植である。抗体は、重鎖及び軽鎖の6個の相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を主に介して、標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列と比べて個々の抗体間で態様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与していることから、特性が異なる様々な抗体に由来するフレームワーク配列上に移植された、特定の天然に存在する抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能になる(例えば、Riechmann,L.et al.,1998 Nature 332:323-327;Jones,P.et al.,1986 Nature 321:522-525;Queen,C.et al.,1989 Proc.Natl.Acad.,U.S.A.86:10029-10033;Winterに対する米国特許第5,225,539号明細書、及びQueen他に対する米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書、及び同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0270】
従って、本開示の別の実施形態は、単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、表1に記載されたHCDR1配列から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;表1に記載されたHCDR2配列から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;表1に記載されたHCDR3配列から選択されるアミノ酸配列を有するCDR3配列を含む重鎖可変領域と、表1に記載されたLCDR1配列から選択されるアミノ酸配列を有するCDR1配列;表1に記載されたLCDR2配列から選択されるアミノ酸配列を有するCDR2配列;表1に記載されたLCDR3配列から選択されるアミノ酸配列からなるCDR3配列を含む軽鎖可変領域とを含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。そのため、そのような抗体はモノクローナル抗体のVH及びVLのCDR配列を含み、さらには、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0271】
従って、本開示の別の実施形態は、単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、配列番号6及び9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列;配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR2配列;配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号19及び31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1配列;配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR2配列;及び配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR3配列を有する軽鎖可変領域とを含む単離抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。そのため、そのような抗体はモノクローナル抗体のVH及びVLのCDR配列を含み、さらには、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0272】
そのようなフレームワーク配列を、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベース又は公開された参考文献から得ることができる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列を、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseにてワールド・ワイド・ウェブ上で入手可能である)、並びにKabat,E.A.,et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242;Tomlinson,I.M.,et al.,1992 J.Mol.Biol.227:776-798;及びCox,J.P.L.et al.,1994 Eur.J Immunol.24:827-836で見出し得、これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0273】
本開示の抗体で使用されるフレームワーク配列の一例は、本開示の選択された抗体により使用されるフレームワーク配列(例えば、本開示のモノクローナル抗体により使用されるコンセンサス配列及び/又はフレームワーク配列)と構造的に類似するものである。VH CDR1、2、及び3の配列、並びにVL CDR1、2、及び3の配列をフレーム領域上に移植し得、このフレームワーク領域は、このフレームワーク領域が由来する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中で見出されるのと同一の配列を有するか、又はこれらのCDR配列を、生殖系列配列と比較して1個又は複数個の突然変異を含むフレームワーク領域上に移植し得る。例えば、特定の場合には、フレームワーク領域内の残基を突然変異させて抗体の抗原結合能力を維持するか又は増強することが有利であることが分かっている(例えば、Queen他に対する米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書、及び同第6,180,370号明細書を参照されたい)。本明細書で説明された抗体及び抗原結合フラグメントを構築する足場として利用され得るフレームワークとして、VH1A、VH1B、VH3、Vk1、Vl2、及びVk2が挙げられるがこれらに限定されない。更なるフレームワークが当技術分野で既知であり、例えば、vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/index.php?&MMN_position=1:1にてワールド・ワイド・ウェブ上のvBaseデータベース中に見出され得る。
【0274】
従って、本開示のある実施形態は、単離β-クロトー結合抗体又はその抗原結合フラグメントであって、配列番号15のアミノ酸配列又はそのような配列のフレームワーク領域中に1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、且つ配列番号26若しくは32からなる群から選択されるアミノ酸配列又はそのような配列のフレームワーク領域中に1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をさらに含み、この重鎖可変領域は、表2に記載された重鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号43又は55のアミノ酸配列)を含まず、且つこの軽鎖可変領域は、表2に記載された軽鎖可変領域のアミノ酸配列(例えば、配列番号47又は57のアミノ酸配列)を含まない、単離β-クロトー結合抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0275】
可変領域改変の別のタイプは、VH及び/又はVLのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3の領域内のアミノ酸残基を突然変異させ、それにより、「親和性成熟」として既知である、目的の抗体の1種又は複数種の結合特性(例えば親和性)を改善することである。部位特異的突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発を実施して突然変異を導入し得、抗体結合又は目的の他の機能特性に対する効果を、本明細書で説明され且つ実施例に記載されたインビトロでの又はインビボでのアッセイで評価し得る。保存的改変(上記で論じた)を導入してもよい。この突然変異は、アミノ酸の置換であってもよいし、付加であってもよいし、欠失であってもよい。さらに、CDR領域内の典型的には1個、2個、3個、4個、又は5個以下の残基を変更する。
【0276】
特定のアミノ鎖配列モチーフは、翻訳後改変(PTM)(例えば、グリコシル化(即ち、NxS/T、xはP以外)、遊離システインの酸化、脱アミド化(例えばNG)、又は異性化(例えばDG))を受けることが知られている。CDR中に存在する場合には、このモチーフは、製品の均一質性を高めるために、部位特異的変異誘発により理想的には除去される。
【0277】
親和性成熟のプロセスは当技術分野で十分に説明されている。多くのディスプレイシステムの中でも、ファージディスプレイ(Smith GP(1985)Science 228:1315-1317)及び酵母等の真核細胞によるディスプレイ(Boder ET and Wittrup KD(1997)Nature Biotechnology 15:553-557)は、抗体-抗原相互作用に関して選択するために最も一般的に適用されるシステムであると思われる。これらのディスプレイシステムの利点は、広範囲の抗原に適していること、及び選択の厳密さを容易に調整し得ることである。ファージディスプレイでは、scFvフラグメント又はFabフラグメントを提示し得、加えて酵母中では完全長IgGを提示する。これらの一般に適用された方法により、10E7を超える多様性を有するより大きなライブラリからの所望される抗体バリアントの選択が可能になる。多様性がより少ない(例えば10E3)ライブラリを、微量発現及びELISAによりスクリーニングし得る。
【0278】
非標的の又はランダムな抗体バリアントライブラリは、例えば、エラー-プローンPCR(Cadwell RC and Joyce GF(1994)Mutagenic PCR.PCR Methods Appl.3:S136-S140)により生成され得、非常にシンプルではあるが時には制限されるアプローチを提供する。別の戦略は、抗体候補のCDRにより方向付けられた多様化である。1個又は複数個のCDR中の1箇所又は複数箇所の位置を、例えば変性オリゴ(Thompson J et al.(1996)J.Mol.Biol.256:77-88)、トリヌクレオチド突然変異誘発(TRIM)(Kayushin AL et al.(1996)Nucleic Acids Res.24:3748-3755)、又は当技術分野で既知の任意の他のアプローチを使用して特異的に標的とし得る。
【0279】
従って、別の実施形態では、本開示は、単離β-クロトー結合抗体又はその抗原結合フラグメントであって、配列番号6及び9を有する群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号6及び9と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列からなるVH CDR1領域;配列番号7のアミノ酸配列、又は配列番号7と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR2領域;配列番号8のアミノ酸配列、又は配列番号8と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有するVH CDR3領域を有する重鎖可変領域と、配列番号19若しくは31からなる群から選択されるアミノ酸配列、又は配列番号19若しくは31と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR1領域;配列番号20のアミノ酸配列、又は配列番号20と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR2領域;及び配列番号21のアミノ酸配列、又は配列番号21と比較して1個、2個、3個、4個、若しくは5個のアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を有するVL CDR3領域とからなる単離β-クロトー結合抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【0280】
代替フレームワーク又は代替足場への抗原結合ドメインの移植
結果として得られるポリペプチドが、β-クロトーに特異的に結合する少なくとも1個の結合領域を含む限りは、多種多様な抗体/免疫グロブリンのフレームワーク又は足場を利用し得る。そのようなフレームワーク又は足場は、ヒト免疫グロブリン又はそのフラグメントの5種の主要なイディオタイプを含み、且つ好ましくはヒト化側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科動物で同定されたもの等の単一の重鎖抗体は、これに関して特に興味深い。新規のフレームワーク、足場、及びフラグメントが、当業者により発見され続けており、及び開発され続けている。
【0281】
一態様において、本開示は、本開示のCDRを移植し得る非免疫グロブリン足場を使用して非免疫グロブリンベースの抗体を生成することに関する。標的β-クロロータンパク質に特異的な結合領域を含む限りにおいて、既知の又は将来の非免疫グロブリンのフレームワーク及び足場を利用し得る。既知の非免疫グロブリンのフレームワーク又は足場として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:フィブロネクチン(Compound Therapeutics,Inc.,Waltham,MA)、アンキリン(Molecular Partners AG,Zurich,Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd.,Cambridge,MA、及びAblynx nv,Zwijnaarde,Belgium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG,Freising,Germany)、小モジュラー免疫医薬品(Trubion Pharmaceuticals Inc.,Seattle,WA)、マキシボディ(maxybody)(Avidia,Inc.,Mountain View,CA)、プロテインA(Affibody AG,Sweden)、並びにアフィリン(affilin)(ガンマ-クリスタリン又はユビキチン)(Scil Proteins GmbH,Halle,Germany)。
【0282】
フィブロネクチン足場は、フィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の10番目のモジュール(10Fn3ドメイン)に基づく。フィブロネクチンIII型ドメインは、2個のベータシート間に分布する7個又は8個のベータ鎖を有し、これらはそれ自体、互いにパックしてタンパク質のコアを形成し、ベータ鎖を互いに接続して溶媒に露出するループ(CDRに相同)をさらに含む。ベータシートサンドイッチの各縁には少なくとも3個のそのようなループが存在し、この縁は、ベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,818,418号明細書を参照されたい)。このフィブロネクチンベースの足場は免疫グロブリンではないが、全体の折り畳みは、ラクダ及びラマのIgG中の抗原認識ユニット全体を含む最小の機能的抗体フラグメント(重鎖の可変領域)の折り畳みに密接に関連する。この構造のために、非免疫グロブリン抗体は、抗体と性質及び親和性が類似する抗原結合特性を模倣する。この足場は、インビボでの抗体の親和性成熟のプロセスに類似するインビトロでのループランダム化及びシャフリング戦略で使用され得る。このフィブロネクチンベースの分子は、標準的なクローニング技術を使用して、この分子のループ領域を本開示のCDRに置き換え得る足場として使用され得る。
【0283】
アンキリン技術は、様々な標的への結合に使用され得る可変領域を持つための足場として、アンキリン由来の反復モジュールを有するタンパク質を使用することに基づく。アンキリン反復モジュールは、2個の逆平行のα-ヘリックス及びβ-ターンからなる33個のアミノ酸ポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを使用することによりほとんど最適化されている。
【0284】
アビマー(Avimer)は、LRP-1等の天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。このドメインは本来、タンパク質間相互作用のために使用され、ヒトでは、250個を超えるタンパク質が構造的にA-ドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して連結された多くの異なる「A-ドメイン」モノマー(2~10個)からなる。例えば、米国特許出願公開第20040175756号明細書;同第20050053973号明細書;同第20050048512号明細書;及び同第20060008844号明細書で説明された方法論を使用して、標的抗原に結合し得るアビマーを作製し得る。
【0285】
アフィボディアフィニティリガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインのうちの1つの足場に基づく3個のヘリックスの束で構成される、小さくて単純なタンパク質である。プロテインAは、細菌スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来の表面タンパク質である。この足場ドメインは58個のアミノ酸からなり、そのうちの13個はランダム化されて、多数のリガンドバリアントを有するアフィボディライブラリが生成されている(例えば、米国特許第5,831,012号明細書を参照されたい)。アフィボディ分子は抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、分子量は6kDaである。アフィボディ分子の小さいサイズにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は抗体の結合部位に類似する。
【0286】
アンチカリン(Anticalin)は、Pieris ProteoLab AG社により開発された商品である。アンチカリンはリポカリンに由来し、このリポカリンは、化学的に敏感な又は不溶性の化合物の生理的輸送又は貯蔵に通常関与する、小さくて頑強なタンパク質の幅広い群である。いくつかの天然リポカリンは、ヒトの組織中に又は体液中に存在する。このタンパク質の構造は、強固なフレームワーク上の超可変ループにより、免疫グロブリンを連想させる。しかしながら、抗体又はその組換えフラグメントとは対照的に、リポカリンは、160~180個のアミノ酸残基を有する単一のポリペプチド鎖で構成されており、単一の免疫グロブリンドメインと比べてわずかに大きい。結合ポケットを構成する4個のループのセットは顕著な構造的柔軟性を示し、様々な側鎖を許容する。そのため、結合部位は、高い親和性及び特異性にて、形状が異なる所定の標的分子を認識するために、独自のプロセスで再形成され得る。リポカリンファミリの1種のタンパク質である、オオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合タンパク質(BBP)は、4個のループのセットを突然変異誘発することによってアンチカリンを開発するために使用されている。アンチカリンを説明する特許出願の一例は、国際公開第199916873号パンフレットである。
【0287】
アフィリン分子は、タンパク質及び小分子に対する特異的な親和性のために設計されている小さい非免疫グロブリンタンパク質である。新規のアフィリン分子は、それぞれが異なるヒト由来足場タンパク質に基づいている2種のライブラリから非常に迅速に選択され得る。アフィリン分子は、免疫グロブリンタンパク質に対して構造的類似性を全く示さない。現在、2種のアフィリン足場が採用されており、そのうちの一方はガンマ結晶であり、ヒトの構造的な眼の水晶体タンパク質であり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリタンパク質である。両方のヒト足場は非常に小さく、高温安定性を示し、且つpH変化及び変性剤にほとんど耐性を示す。この高い安定性は、タンパク質の拡大されたベータシート構造に主に起因する。ガンマ結晶由来タンパク質の例が国際公開第200104144号パンフレットで説明されており、「ユビキチン様」タンパク質の例が国際公開第2004106368号パンフレットで説明されている。
【0288】
タンパク質エピトープ模倣物(PEM)は、タンパク質間の相互作用に関与する主要な二次構造であるタンパク質のベータ-ヘアピン二次構造を模倣する、中程度の大きさの環状ペプチド様分子(MW 1~2kDa)である。
【0289】
本開示は、β-クロトータンパク質に特異的に結合する完全ヒト抗体を提供する。特定の態様において、キメラ抗体又はヒト化抗体と比較して、本開示のヒトβ-クロトー結合抗体は、ヒト対象に投与された場合に抗原性がさらに低下している。
【0290】
ラクダ科動物抗体
ラマ種(アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、及びビクーニャ(Lama vicugna))等の新世界のメンバーを含むラクダ及びヒトコブラクダ(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)及びヒトコブラクダ(Calelus dromaderius))ファミリのメンバーから得られた抗体タンパク質は、サイズ、構造の複雑さ、及びヒト対象の場合の抗原性に関して特徴が明らかにされている。自然界で見られるこの哺乳動物のファミリからの特定のIgG抗体は軽鎖を欠いており、そのため、他の動物からの抗体の場合の2本の重鎖及び2本の軽鎖を有する典型的な4本鎖四次構造とは構造が異なる。第PCT/EP93/02214号(1994年3月3日に公開された国際公開第94/04678号パンフレット)を参照されたい。
【0291】
VHHとして特定される小さい単一可変ドメインであるラクダ科動物抗体の領域を、標的に対して高い親和性を有する小さいタンパク質を得るための遺伝子操作により得ることができ、結果として、「ラクダ科動物ナノボディ」として知られている低分子量の抗体由来タンパク質が得られる。1998年6月2日に発行された米国特許第5,759,808号明細書を参照し、Stijlemans,B.et al.,2004 J Biol Chem 279:1256-1261;Dumoulin,M.et al.,2003 Nature 424:783-788;Pleschberger,M.et al.2003 Bioconjugate Chem 14:440-448;Cortez-Retamozo,V.et al.2002 Int J Cancer 89:456-62;及びLauwereys,M.et al.1998 EMBO J 17:3512-3520も参照されたい。ラクダ科動物抗体及び抗体フラグメントの操作されたライブラリは、例えば、Ablynx,Ghent,Belgiumから市販されている。非ヒト起源の他の抗体と同様に、ラクダ科動物抗体のアミノ酸配列を組換えにより変更して、ヒト配列により密接に類似する配列を得ることができる(即ち、このナノボディを「ヒト化」し得る)。そのため、ヒトに対するラクダ科動物抗体の自然な低抗原性をさらに低下させ得る。
【0292】
ラクダ科動物ナノボディは、分子量がヒトIgG分子の約10分の1であり、且つタンパク質の物理的直径はわずか数ナノメートルである。小さいサイズによる1つの帰結は、より大きな抗体タンパク質には機能的に見えない抗原部位に結合する、ラクダ科動物ナノボディの能力である(即ち、ラクダ科動物ナノボディは、古典的な免疫学的技術を使用すると陰性である抗原を検出する試薬として、且つ可能な治療薬として有用である)。そのため、小さいサイズによるさらに別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが、標的タンパク質の溝又は狭い裂け目中の特定の部位への結合の結果として阻害し得ることであり、従って、古典的な抗体の機能と比べて古典的な低分子量薬物の機能により密接に類似する能力で役立ち得る。
【0293】
低分子量及びコンパクトなサイズにより、熱安定性が非常に高く、極端なpH及びタンパク質分解に対して安定であり、且つ抗原性が低いラクダ科動物ナノボディがさらに得られる。別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが循環系から組織中へと容易に移動し、血液脳関門さえも容易に通過し、神経組織に影響を及ぼす障害を処置し得ることである。ナノボディはさらに、血液脳関門を通過する薬物移動を促進し得る。2004年8月19日に公開された米国特許出願公開第20040161738号明細書を参照されたい。これらの特徴は、ヒトに対する低い抗原性と相まって、大きな治療可能性を示す。さらに、この分子は、大腸菌(E.coli)等の原核細胞中で完全に発現され得、バクテリオファージとの融合タンパク質として発現され、且つ機能する。
【0294】
従って、本開示の特徴は、β-クロトー(例えばヒトβ-クロトー)に対して特異的な親和性を有するラクダ科動物の抗体又はナノボディである。本明細書の特定の実施形態において、ラクダ科動物の抗体又はナノボディは、ラクダ科の動物中で天然に産生される(即ち、他の抗体に関して本明細書で説明された技術を使用して、β-クロトー又はそのペプチドフラグメントにより免疫を付与した後のラクダ科動物により産生される)。あるいは、このβ-クロトー結合ラクダ科動物ナノボディは操作されている(即ち、例えば、本明細書の実施例で説明されているように標的としてβ-クロトーを使用するパニング手順を使用して、適切に変異誘発されたラクダ科動物ナノボディタンパク質を提示するファージのライブラリからの選択により作製される)。操作されたナノボディは、レシピエント対象中での半減期が45分~2週間となるように、遺伝子操作によりさらにカスタマイズされ得る。具体的な実施形態において、ラクダ科動物の抗体又はナノボディは、例えばPCT/EP93/02214号で説明されているように、本開示のヒト抗体の重鎖又は軽鎖のCDR配列をナノボディ又は単一ドメイン抗体のフレームワーク配列中に移植することにより得られる。
【0295】
二重特異性分子及び多価抗体
別の態様において、本開示は、本開示のβ-クロトー結合抗体又はそのフラグメント(例えば、抗体NOV005又はNOV006)を含む二重特異性分子若しくは多重特異性分子を特徴とする。本開示の抗体又はその抗原結合領域を誘導体化するか、又は別の機能的分子に連結させて、例えば別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体又はレセプターに対するリガンド)に連結させて、少なくとも2種の異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成し得る。本開示の抗体を実際に誘導体化するか、又は複数の他の機能的分子に連結させて、2種以上の異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子を生成し得、そのような多重特異性分子はまた、本明細書で使用される場合には用語「二重特異性分子」に包含されることも意図されている。本開示の二重特異性分子を作製するために、本開示の抗体を、二重特異性分子を生じさるように、1種又は複数種の他の結合分子(例えば、別の抗体、抗体フラグメント、ペプチド又は結合模倣物)に(例えば、化学的カップリング、遺伝的融合、非共有結合的会合、又は別の方法により)機能的に連結させ得る。
【0296】
従って、本開示は、β-クロトーに対する少なくとも1種の第1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性とを含む二重特異性分子を含む。例えば、この第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるβ-クロトーの別のエピトープである。
【0297】
加えて、この二重特異性分子が多重特異性である本開示の場合、この分子は、第1の及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。
【0298】
一態様において、本開示の二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1種の抗体又はその抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又は一本鎖Fv)を含む。この抗体はまた、軽鎖若しくは重鎖の二量体又はその任意の最小フラグメント(例えばFv)であってもよいし、Ladner et al.米国特許第4,946,778号明細書で説明されている一本鎖構築物であってもよい。
【0299】
ダイアボディは、同一鎖上の2個のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより接続されている、VH及びVLのドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現される二価の二重特異性分子である。VHドメイン及びVLドメインは別の鎖の相補ドメインと対形成し、それにより2個の抗原結合部位が作製される(例えば、Holliger et al.,1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak et al.,1994 Structure 2:1121-1123を参照されたい)。ダイアボディは、同一の細胞内で、構造VHA-VLB及びVHB-VLA(VH-VL配置)又はVLA-VHB及びVLB-VHA(VL-VH配置)のいずれかを有する2本のポリペプチド鎖を発現させることにより産生され得る。これらのほとんどは、細菌中において可溶型で発現され得る。一本鎖ダイアボディ(scDb)は、約15個のアミノ酸残基のリンカーで2本のダイアボディ形成ポリペプチド鎖を接続することにより産生される(Holliger and Winter,1997 Cancer Immunol.Immunother.,45(3-4):128-30;Wu et al.,1996 Immunotechnology,2(1):21-36を参照されたい)。scDbは、細菌中において、可溶性の活性モノマー型で発現され得る(Holliger and Winter,1997 Cancer Immunol.Immunother.,45(34):128-30;Wu et al.,1996 Immunotechnology,2(1):21-36;Pluckthun and Pack,1997 Immunotechnology,3(2):83-105;Ridgway et al.,1996 Protein Eng.,9(7):617-21を参照されたい)。ダイアボディをFcと融合させて、「ジダイアボディ(di-diabody)」を作製し得る(Lu et al.,2004 J.Biol.Chem.,279(4):2856-65を参照されたい)。
【0300】
本開示の二重特異性分子で利用され得る他の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0301】
当技術分野で既知の方法を使用して、構成物の結合特異性部分を結合させることにより、二重特異性分子を調製し得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性部分を別々に生成し、次いで互いに結合させ得る。この結合特異性部分がタンパク質又はペプチドである場合には、共役結合させるために、様々なカップリング剤又は架橋剤を使用し得る。架橋剤の例として、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al.,1984 J.Exp.Med.160:1686;Liu,MA et al.,1985 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照されたい)。他の方法として、Paulus,1985 Behring Ins.Mitt.No.78,118-132;Brennan et al.,1985 Science 229:81-83)、及びGlennie et al.,1987 J.Immunol.139:2367-2375)で説明されているものが挙げられる。結合剤はSATA及びスルホ-SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能である。
【0302】
結合特異性部分が抗体である場合には、2本の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合により、それらを結合させ得る。特定の実施形態において、このヒンジ領域は、結合の前に、奇数個(例えば1個)のスルフヒドリル残基を含むように改変されている。
【0303】
あるいは、両方の結合特異性部分を同一のベクター中でコードし得、且つ同一の宿主細胞中で発現させて構築させ得る。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク質、又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の二重特異性分子は、1個の一本鎖抗体及び1個の結合決定基を含む一本鎖分子であり得るか、又は2個の結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性分子は、少なくとも2個の一本鎖分子を含み得る。二重特異性分子を調製する方法は、例えば、米国特許第5,260,203号明細書;同第5,455,030号明細書;同第4,881,175号明細書;同第5,132,405号明細書;同第5,091,513号明細書;同第5,476,786号明細書;同第5,013,653号明細書;同第5,258,498号明細書;及び同第5,482,858号明細書で説明されている。
【0304】
この二重特異性分子のその特異的標的への結合を、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば増殖阻害)、又はウェスタンブロットアッセイにより確認し得る。これらのアッセイのそれぞれは概して、目的の複合体に対して特異的な、標識された試薬(例えば抗体を)を利用することにより、特定の目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0305】
別の態様において、本開示は、β-クロトーに結合する本開示の抗体の少なくとも2個の同一の又は異なる抗原結合部分を含む多価化合物を提供する。この抗原結合部分は、タンパク質融合又は共有結合の若しくは非共有結合の連結を介して互いに連結され得る。あるいは、連結の方法は、二重特異性分子に関して説明されている。例えば、本開示の抗体の定常領域(例えばFc領域又はヒンジ領域)に結合する抗体で本開示の抗体の抗体を架橋することにより、四価化合物を得ることができる。
【0306】
三量体化ドメインは、例えばBoreanの欧州特許第1 012 280B1号明細書で説明されている。五量体化モジュールは、例えばPCT/EP97/05897号で説明されている。
【0307】
半減期が延長されている抗体
本開示は、インビボでの半減期が延長されている、β-クロトータンパク質に特異的に結合する抗体(例えばNOV005又はNOV006)を提供する。
【0308】
多くの因子が、インビボでのタンパク質の半減期に影響を及ぼし得る。例えば、腎臓ろ過、肝臓中での代謝、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)による分解、並びに免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質中和、並びにマクロファージ及び樹状細胞による取込み)。様々な戦略を使用して、本開示の抗体の半減期を延長させ得る。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合リガンド、及び炭水化物シールドへの化学的連結による;血清タンパク質(例えば、アルブミン、IgG、FcRN、及びトランスフェリン(transferring))に結合するタンパク質への遺伝子融合による;血清タンパク質(例えばナノボディ、Fab、DARPイン、アビマー、アフィボディ、及びアンチカリン)に結合する他の結合部分へのカップリング(遺伝子的又は化学的)による;rPEG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合タンパク質、及びFcへの遺伝子融合による;又は、ナノ担体、徐放製剤、若しくは医療デバイスへの組み込みによる。
【0309】
インビボでの抗体の血清中循環を延長するために、不活性のポリマー分子(例えば高分子量PEG)を、この抗体のN末端若しくはC末端へのPEGの部位特異的結合を介して、又はリシン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を介して、多官能性リンカーにより又は多官能性リンカー無しで、抗体又はそのフラグメントへと付着させ得る。抗体をペグ化するためには、1個又は複数個のポリエチレングリコール(PEG)基が、この抗体又は抗体フラグメントに付着するようになる条件下で、この抗体又はそのフラグメントを概して、PEG(例えば、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体)と反応させる。このペグ化を、反応性PEG分子(又は類似する反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応により実行し得る。本明細書で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの形態(例えば、モノ(C1~C10)アルコキシ-ポリエチレングリコール若しくはアリールオキシポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミド)のうちのいずれかを包含することが意図されている。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、脱グリコシル化抗体(aglycosylated antibody)である。結果として生物学的活性の喪失が最小である直鎖ポリマー又は分枝ポリマーの誘導体化が使用されるであろう。結合の程度を、SDS-PAGE及び質量分析により緊密にモニタリングして、抗体へのPEG分子の適切な結合を確実にし得る。未反応のPEGを、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーにより、抗体-PEG結合体から分離し得る。PEG誘導体化抗体を、当業者に公知の方法を使用して、例えば、本明細書で説明されたイムノアッセイにより、結合活性及びインビボでの有効性に関して試験し得る。タンパク質をペグ化する方法は当技術分野で既知であり、本開示の抗体に適用され得る。例えば、Nishimura他による欧州特許第0154316号明細書、及びIshikawa他による欧州特許第0401384号明細書を参照されたい。
【0310】
他の改変されたペグ化技術として、再構成化学的直交性直接操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering technology)(ReCODE PEG)が挙げられ、この技術により、tRNAシンセターゼ及びtRNAを含む再構成系を介して、化学的に特定された側鎖が生合成タンパク質へと組み込まれる。この技術は、30種を超える新規のアミノ酸の、大腸菌(E.coli)中での、酵母中での、及び哺乳動物細胞中での生合成タンパク質への組み込みを可能にする。tRNAは、非天然アミノ酸を、アンバーコドンが配置される任意の場所に組み込み、終止コドンから、化学的に特定されたアミノ酸の組み込みをシグナル伝達するコドンへとアンバーを変換する。
【0311】
組換えペグ化技術(rPEG)を、血清半減期の延長にも使用し得る。この技術は、300~600個のアミノ酸の非構造化タンパク質テイルを、既存の医薬用タンパク質へと遺伝子融合させることを含む。そのような非構造化タンパク質鎖の見かけ上の分子量は、その実際の分子量と比べて約15倍大きいことから、このタンパク質の血清半減期は大きく増大する。化学的結合及び再精製を必要とする伝統的なPEG化とは対照的に、製造工程は大きく簡略化され、且つ生成物は均質である。
【0312】
ポリシアリル化は、天然ポリマーであるポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿命を延長し且つ治療用ペプチド及び治療用タンパク質の安定性を改善する、別の技術である。PSAは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質及び治療用ペプチドの薬物送達に使用される場合、結合によりポリシアル酸は保護的微小環境をもたらす。これにより、循環中の治療用タンパク質の活性寿命が増加し、この治療用タンパク質が免疫系により認識されることが防止される。PSAポリマーは人体内で天然に見出される。PSAポリマーは特定の細菌により利用されており、この細菌は、この細菌の壁をPSAポリマーでコーティングするように数百年にわたり進化した。次いで、これらの天然にポリシアリル化した細菌は、分子的模倣により、身体の防御系を無効にすることが可能になった。天然の究極のステルス技術であるPSAを、そのような細菌から、大量に且つ所定の物理的特徴を伴って容易に産生させ得る。細菌PSAは、ヒト身体内ではPSAと化学的に同一であることから、タンパク質へとカップリングされた場合であっても、完全に非免疫原性である。
【0313】
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用を含む。HESは、ろう様のトウモロコシデンプンに由来する改変された天然ポリマーであり、身体の酵素により代謝され得る。HES溶液は通常、不足した血液量の代わりとなるために且つ血液のレオロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化により、分子の安定性を増加させることによって、及び腎クリアランスを低減することによって、循環半減期の延長が可能となり、生物学的活性が増加する。様々なパラメータ(例えば、HESの分子量)を変えることにより、広範囲なHES抗体結合体をカスタマイズし得る。
【0314】
インビボでの半減期が増加した抗体を、1個又は複数個のアミノ酸改変(即ち、置換、挿入、又は欠失)を、IgG定常ドメイン又はそのFcRn結合フラグメント(好ましくは、Fcドメインフラグメント又はヒンジFcドメインフラグメント)へ導入することによっても生成し得る。例えば、国際公開第98/23289号パンフレット;同第97/34631号パンフレット;及び米国特許第6,277,375号明細書を参照されたい。
【0315】
さらに、抗体又は抗体フラグメントをインビボでより安定させるために、又はインビボでの半減期をより長くするために、抗体をアルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)に結合させ得る。この技法は当技術分野で公知であり、例えば、国際公開第93/15199号パンフレット、同第93/15200号パンフレット、及び同第01/77137号パンフレット;並びに欧州特許第413,622号明細書を参照されたい。加えて、上記で説明した二重特異性抗体の文脈において、この抗体の特異性を、この抗体の1個の結合ドメインがFGF21に結合するが、この抗体の第2の結合ドメインが血清アルブミン(好ましくはHSA)に結合するように設計し得る。
【0316】
半減期を増加させるための戦略は、インビボでの半減期の増加が望まれるナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤、及び他の抗体又はタンパク質において、特に有用である。
【0317】
抗体結合体
本開示は、β-クロトータンパク質に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントであって、融合タンパク質を生成するために異種タンパク質若しくは異種ポリペプチド(又はそれらのフラグメント、好ましくは、少なくとも10個の、少なくとも20個の、少なくとも30個の、少なくとも40個の、少なくとも50個の、少なくとも60個の、少なくとも70個の、少なくとも80個の、少なくとも90個の、又は少なくとも100個のアミノ酸のポリペプチド)に組換えにより融合されたか、又は化学的に結合(共有結合及び非共有結合の両方を含む)した、抗体又はそのフラグメントを提供する。具体的には、本開示は、本明細書で説明された抗体(例えばNOV005又はNOV006)の抗原結合フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、VHドメイン、VH CDR、VLドメイン、又はVL CDR)と、異種タンパク質、異種ポリペプチド、又は異種ペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。抗体又は抗体フラグメントにタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを融合させる方法又は結合させる方法は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053号明細書、同第5,447,851号明細書、及び同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書、及び同第367,166号明細書;国際公開第96/04388号パンフレット、及び同第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535-10539;Zheng et al.,1995,J.Immunol.154:5590-5600;及びVil et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337-11341を参照されたい。
【0318】
遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、及び/又はコドンシャフリング(まとめて「DNAシャフリング」と称される)の技術により、さらなる融合タンパク質を生成し得る。DNAシャフリングを利用して、本開示の抗体又はそのフラグメント(例えば、親和性がより高く且つ解離速度がより低い抗体又はそのフラグメント)の活性を変更し得る。一般に、米国特許第5,605,793号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同第5,834,252号明細書、及び同第5,837,458号明細書;Patten et al.,1997,Curr.Opinion Biotechnol.8:724-33;Harayama,1998,Trends Biotechnol.16(2):76-82;Hansson, et al.,1999,J.Mol.Biol.287:265-76;及びLorenzo and Blasco,1998,Biotechniques 24(2):308-313を参照されたい(これらの特許及び刊行物のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。抗体若しくはそのフラグメント、又はコードされた抗体若しくはそのフラグメントを、組換えの前に、エラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入、又は他の方法に供することにより変更し得る。β-クロトータンパク質に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを、1種又は複数種の異種分子の1種又は複数種の構成要素、モチーフ、区間、部分、ドメイン、フラグメント等で組み換え得る。
【0319】
さらに、この抗体又はそのフラグメントを、精製を容易にするために、ペプチド等のマーカー配列に融合させ得る。好ましい実施形態において、このマーカーアミノ酸配列は、その多くが市販されているが、その中でも、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,CA,91311)で提供されるタグ等のヘキサヒスチジンペプチド(配列番号64)である。Gentz et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824で説明されているように、例えば、ヘキサヒスチジン(配列番号64)により、融合タンパク質の簡便な精製がもたらされる。精製に有用な他のペプチドタグとして、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマグルチニン(「HA」)タグ(Wilson et al.,1984,Cell 37:767)、及び「フラッグ」タグが挙げられるがこれらに限定されない。
【0320】
他の実施形態において、本開示の抗体又はそのフラグメントは、診断薬又は検出可能薬に結合している。そのような抗体は、臨床検査手順の一部として、疾患又は障害の発生、発達、進行、及び/又は重症度をモニタリングするか又は予後診断する(例えば、特定の治療の有効性を決定する)のに有用であり得る。そのような診断及び検出を、この抗体を検出可能な物質にカップリングさせることにより達成し得、この検出可能な物質として、下記が挙げられるがこれらに限定されない:様々な酵素、例えば、限定されないが西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子族、例えば、限定されないがストレプトアビジン/ビオチン(streptavidinlbiotin)、及びアビジン/ビオチン;蛍光材料、例えば、限定されないがウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリン;発光材料、例えば、限定されないがルミノール;生物発光材料、例えば、限定されないがルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリン;放射性材料、例えば限定されないがヨウ素(131I、125I、123I、及び121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113I、112In、及び111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、及び117Tin;並びに様々なポジトロン放出断層撮影を使用するポジトロン放出金属、及び非放射性の常磁性金属イオン。
【0321】
本開示は、治療用部分に結合した抗体又はそのフラグメントの使用をさらに包含する。抗体又はそのフラグメントを、治療用部分(例えば、細胞毒素(例えば細胞分裂阻害剤若しくは殺細胞剤)、治療薬、又は放射性金属イオン(例えばアルファ放射体))に結合させ得る。細胞毒素又は細胞傷害性薬は、細胞に有害なあらゆる薬剤を含む。
【0322】
さらに、抗体又はそのフラグメントを、所与の生物学的応答を改変する治療用部分又は薬物部分に結合させ得る。治療用部分又は薬物部分は、古典的な化学的治療薬に限定されると解釈されないものとする。例えば、この薬物部分は、所望される生物学的活性を有するタンパク質、ペプチド、又はポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質として、例えば下記が挙げられ得る:毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス(pseudomonas)外毒素、コレラ毒素、又はジフテリア毒素;タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化剤、アポトーシス剤、抗血管新生剤;又は生物学的応答改変剤、例えばリンホカイン。
【0323】
さらに、抗体を、治療用部分(例えば、放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体、例えば213Bi)、又はポリペプチドに放射性金属イオン(例えば、限定されないが131In、131LU、131Y、131Ho、131Sm)を結合させるのに有用な大環状キレート化剤に結合させ得る。特定の実施形態において、この大環状キレート化剤は、リンカー分子を介して抗体に付着され得る1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。そのようなリンカー分子は当技術分野で一般に知られており、Denardo et al.,1998,Clin Cancer Res.4(10):2483-90;Peterson et al.,1999,Bioconjug.Chem.10(4):553-7;及びZimmerman et al.,1999,Nucl.Med.Biol.26(8):943-50(それぞれはその全体が参照に組み込まれる)で説明されている。
【0324】
抗体に治療用部分を結合させるための技術は公知であり、例えば下記を参照されたい:Arnon et al.,”Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,”Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,”Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”, in Monoclonal Antibodies 84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);”Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985)、及びThorpe et al.,1982,Immunol.Rev.62:119-58。
【0325】
抗体を固体支持体にも付着させ得、この固体支持体は、イムノアッセイ又は標的抗原の精製に特に有用である。そのような固体支持体として、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0326】
抗体を製造する方法
抗体をコードする核酸
本開示は、上記で説明されたβ-クロトー結合抗体鎖のセグメント又はドメインを含むポリペプチドをコードする、実質的に精製された核酸分子を提供する。本開示の核酸のうちのいくつかは、配列番号15に示された重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び/又は配列番号26若しくは32に示された軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。具体的な態様において、本明細書で提供される核酸分子は、表1で特定されたものであり、例えば、VHをコードする配列番号16、36、若しくは38の配列を含む核酸分子、又はVLをコードする配列番号27、54、33、若しくは40の配列を含む核酸分子である。本開示のいくつかの他の核酸分子は、表1で特定されたもののヌクレオチド配列と実質的に(例えば、少なくとも65、80%、95%、又は99%)同一であるヌクレオチド配列を含み、例えば、VHをコードする配列番号16、36、若しくは38の配列を含む核酸分子又はVLをコードする配列番号27、54、33、若しくは40の配列を含む核酸分子と実質的に(例えば、少なくとも65、80%、95%、又は99%)同一であるヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターから発現された場合には、これらのポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドは、FGF21抗原結合能を示し得る。
【0327】
本開示で同様に提供されるのは、本明細書に記載されたβ-クロトー結合抗体(例えば、表1に記載されたもの)の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域配列の全て又は実質的に全てをコードするポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV005のVH及び/又はVLの全て又は実質的に全てをコードするポリヌクレオチドを提供する。具体的な態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV005の重鎖及び/又は軽鎖の全て又は実質的に全てをコードするポリヌクレオチドを提供する。具体的な態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV006のVH及び/又はVLの全て又は実質的に全てをコードするポリヌクレオチドを提供する。具体的な態様において、本開示は、β-クロトー結合抗体NOV006の重鎖及び/又は軽鎖の全て又は実質的に全てをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0328】
コードの縮重のために、様々な核酸配列が、免疫グロブリンアミノ酸配列のそれぞれをコードするだろう。例えば、配列番号16及び36は、NOV005のVHをコードする2種の核酸配列であり、配列番号27及び54は、NOV005のVLをコードする2種の核酸配列である。
【0329】
本開示の核酸分子は、本抗体の可変領域及び定常領域の両方をコードし得る。本開示の核酸配列のうちのいくつかは、配列番号17に記載された重鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、又は99%)同一である重鎖配列をコードするヌクレオチドを含む。配列番号28又は34に記載された軽鎖配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%、又は99%)同一である軽鎖配列をコードするヌクレオチドを含む、いくつかの他の核酸配列。具体的な態様において、本明細書で提供される核酸分子は、表1で特定されたものであり、例えば、重鎖をコードする配列番号18、37、30、若しくは39の配列を含む核酸分子、又は軽鎖をコードする配列番号29、51、35、若しくは41の配列を含む核酸分子である。
【0330】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VHをコードする配列番号16の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VHをコードする配列番号36の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VHをコードする配列番号38の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VLをコードする配列番号27の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VLをコードする配列番号54の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VLをコードする配列番号29の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、VLをコードする配列番号51の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。
【0331】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、重鎖をコードする配列番号18の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、重鎖をコードする配列番号37の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、重鎖をコードする配列番号30の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、重鎖をコードする配列番号39の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。
【0332】
具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、軽鎖をコードする配列番号29の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、軽鎖をコードする配列番号51の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、軽鎖をコードする配列番号35の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。具体的な態様において、本明細書で提供されるのは、軽鎖をコードする配列番号41の核酸配列を含むポリヌクレオチドである。
【0333】
ポリヌクレオチド配列は、β-クロトー結合抗体又はその結合フラグメントをコードする既存の配列(例えば、以下の実施例に記載される配列)のデノボ固相DNA合成によって、又はPCR突然変異誘発によって生成され得る。核酸の直接的化学合成が、当該技術において知られている方法によって達成され得、例えば、Narang et al.,Meth.Enzymol.68:90,1979のホスホトリエステル法;Brown et al.,1979,Meth.Enzymol.68:109のホスホジエステル法;Beaucage et al.,Tetra.Lett.,22:1859,1981のジエチルホスホロアミダイト法;及び米国特許第4,458,066号明細書の固体支持法がある。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異の導入は、例えば、PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich(Ed.),Freeman Press,NY,NY,1992;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.(Ed.),Academic Press,San Diego,CA,1990;Mattila et al.,Nucleic Acids Res.19:967,1991;及びEckert et al.,PCR Methods and Applications 1:17,1991に記載されるようにして実行され得る。
【0334】
また、本開示において提供されるのが、本明細書に記載のβ-クロトー結合抗体、例えばNOV005又はNOV006を生成するための発現ベクター及び宿主細胞である。種々の発現ベクターを使用して、β-クロトー結合抗体鎖又は結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスベースの発現ベクター及び非ウイルス発現ベクターの双方が、哺乳類宿主細胞において抗体を生成するのに用いられ得る。非ウイルスベクター及び非ウイルス系として、プラスミド又はエピソームベクター(典型的には、タンパク質又はRNAを発現するための発現カセットを有する)及びヒト人工染色体が挙げられる(例えば、Harrington et al.,Nat Genet.15:345,1997参照)。例えば、哺乳類(例えばヒト)細胞におけるFGF21結合ポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベクターとして、pThioHis A,B & C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A,B & C(Invitrogen,San Diego,CA)、MPSVベクター、及び他のタンパク質を発現させるための当該技術において知られている多数の他のベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40、パピローマウイルス、HBPエプスタインバールウイルスに基づくベクター、ワクシニアウイルスベクター、及びセムリキ森林ウイルス(SFV)が挙げられる。Brent et al.、前掲;Smith,Annu.Rev.Microbiol.49:807,1995;及びRosenfeld et al.,Cell 68:143,1992参照。
【0335】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現されることとなる意図される宿主細胞に依存する。典型例として、発現ベクターは、β-クロトー結合抗体鎖又はフラグメントをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合されているプロモータ及び他の調節配列(例えばエンハンサ)を含有する。一部の実施形態において、誘導プロモータを使用して、挿入された配列の発現を、誘導条件下以外では防止する。誘導プロモータとして、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモータ、又はヒートショックプロモータが挙げられる。形質転換された生物の培養体は、非誘導条件下で、集団を、発現産物が宿主細胞によってより良好に許容されるコード配列について偏らせることなく、増殖し得る。また、プロモータに加えて、他の調節要素が、β-クロトー結合抗体鎖又はフラグメントの効率的な発現に必要とされてよく、又は所望されてよい。当該要素として、典型的に、ATG開始コドン及び隣接するリボソーム結合部位又は他の配列が挙げられる。加えて、発現の効率が、使用される細胞系に適したエンハンサの包含によって増強され得る(例えば、Scharf et al.,Results Probl.Cell Differ.20:125,1994;及びBittner et al.,Meth.Enzymol.,153:516,1987参照)。例えば、SV40エンハンサ又はCMVエンハンサを用いて、哺乳類宿主細胞における発現を増大させることができる。
【0336】
発現ベクターはまた、挿入されたFGF21結合抗体配列によってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列位置を提供し得る。多くの場合、挿入されるβ-クロトー結合抗体配列は、ベクター内に含まれる前に、シグナル配列に結合される。また、β-クロトー結合抗体の軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコードする配列を受け入れるのに用いられることとなるベクターは時折、定常領域又はその部分をコードする。そのようなベクターは、定常領域との融合タンパク質として可変領域を発現することによって、無傷の抗体又はそのフラグメントを生成し得る。典型的に、定常領域はヒトである。
【0337】
β-クロトー結合抗体鎖を保有且つ発現させるための宿主細胞は、原核生物であっても真核生物であってもよい。大腸菌(E.coli)は、本開示のポリヌクレオチドをクローニングして発現させるのに有用な一原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主として、桿菌、例えば枯草菌(Bacillus subtilis)、並びに他の腸内細菌科(enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ(Salmonella)属、セラチア(Serratia)属、及び種々のシュードモナス(Pseudomonas)属の種が挙げられる。これらの原核生物宿主において、当業者であれば発現ベクターを構築することもでき、これは典型的に、宿主細胞と適合する発現制御配列(例えば複製起点)を含有する。加えて、任意の数の種々の周知のプロモータが存在することとなり、例えば、ラクトースプロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、ベータ-ラクタマーゼプロモータ系、又はファージラムダ由来のプロモータ系がある。プロモータは典型的に、場合によってはオペレータ配列と共に、発現を制御し、そしてリボソーム結合部位配列等を有しており、転写及び翻訳を開始して完了させる。また、他の微生物、例えば酵母を使用して、本開示のFGF21結合ポリペプチドを発現させることもできる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞を用いることもできる。
【0338】
一部の好ましい実施形態において、哺乳類宿主細胞を用いて、本開示のβ-クロトー結合ポリペプチドを発現させて生成することができる。例えば、哺乳類宿主細胞は、内因性の免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株(例えば、実施例に記載されている1D6.C9骨髄腫ハイブリドーマクローン)であってもよいし、外因性の発現ベクターを保有する哺乳類の細胞株(例えば、以下で例示されるSP2/0骨髄腫細胞)であってもよい。これらとして、死に至る標準的な、又は不死の標準的若しくは異常な、あらゆる動物細胞又はヒト細胞が挙げられる。例えば、無傷の免疫グロブリンを分泌することができる適切ないくつかの宿主細胞株が開発されており、CHO細胞株、種々のCOS細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換されたB細胞、及びハイブリドーマが挙げられる。ポリペプチドを発現させるための哺乳類組織細胞培養の使用が、概して、例えば、Winnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.,1987において考察されている。哺乳類宿主細胞用の発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製起点、プロモータ、及びエンハンサ(例えば、Queen et al.,Immunol.Rev.89:49-68,1986参照)、並びに必須のプロセシング情報部位、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネータ配列を含み得る。これらの発現ベクターは、通常、哺乳類の遺伝子に、又は哺乳類のウイルスに由来するプロモータを含有する。適切なプロモータは、構成的であり得、細胞型特異的であり得、ステージ特異的であり得、且つ/又は調整可能若しくは調節可能であり得る。有用なプロモータとして、以下に限定されないが、メタロチオネインプロモータ、構成的アデノウイルス主要後期プロモータ、デキサメタゾン誘導MMTVプロモータ、SV40プロモータ、MRP polIIIプロモータ、構成的MPSVプロモータ、テトラサイクリン誘導CMVプロモータ(例えばヒト即初期CMVプロモータ)、構成的CMVプロモータ、及び当該技術において知られているプロモータ-エンハンサの組合せが挙げられる。
【0339】
対象となるポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の型に応じて変わる。例えば、塩化カルシウム形質移入が、原核細胞に一般的に利用されるが、リン酸カルシウム処理又は電気穿孔法が、他の細胞宿主に用いられ得る(概して、Sambrook et al.、前掲参照)。他の方法として、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介形質転換、注射及びマイクロインジェクション、バリスティック法、ウイロゾーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸結合体、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(Elliot and O’Hare,Cell 88:223,1997)、剤によるDNA吸収増強(agent-enhanced uptake of DNA)、並びにイクスビボ形質導入が挙げられる。多くの場合、組換えタンパク質の長期的多収産生のために、安定した発現が所望されることとなる。例えば、β-クロトー結合抗体鎖又は結合フラグメントを安定して発現する細胞株が、ウイルスの複製起点又は内因性の発現要素を含有する本開示の発現ベクター及び選択マーカー遺伝子を用いて、調製され得る。ベクターの導入後、細胞を、富化培地中で1~2日間増殖させてから、選択培地にスイッチすることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、そしてその存在により、選択培地において、導入された配列を首尾よく発現する細胞の成長が可能となる。耐性を示す、安定して形質移入された細胞が、細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖され得る。
【0340】
モノクローナル抗体の生成
様々な技術(例えば、従来のモノクローナル抗体方法論、例えば、Kohler and Milstein,1975 Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダーション技術)により、モノクローナル抗体(mAb)を製造し得る。モノクローナル抗体を製造するための多くの技術(例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換又は発癌性形質転換)を利用し得る。
【0341】
ハイブリドーマを調製するための動物系として、マウス系、ラット系、及びウサギ系が挙げられる。マウス中でのハイブリドーマ産生は、十分に確立された手順である。免疫付与プロトコル、及び融合のための免疫付与された脾細胞の単離のための技術は当技術分野で既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も既知である。
【0342】
本開示のキメラ抗体又はヒト化抗体を、上記で説明されたように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製し得る。重鎖免疫グロブリン及び軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、目的のマウスハイブリドーマから得ることができ、標準的な分子生物学的技術を使用して、非マウス(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当技術分野で既知の方法(例えば、Cabilly他に対する米国特許第4,816,567号明細書)を使用して、マウス可変領域をヒト定常領域に連結させ得る。ヒト化抗体を作製するために、当技術分野で既知の方法を使用して、マウスCDR領域をヒトフレームワーク中に挿入し得る。例えば、Winterに対する米国特許第5225539号明細書、及びQueen他に対する米国特許第5530101号明細書;同第5585089号明細書;同第5693762号明細書、及び同第6180370号明細書を参照されたい。
【0343】
特定の実施形態において、本開示の抗体はヒトモノクローナル抗体である。β-クロトーに対するそのようなヒトモノクローナル抗体を、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックマウス又はトランスクロモソミック(transchromosomic)マウスを使用して生成し得る。これらのトランスジェニックマウス又はトランスクロモソミックマウスはそれぞれ、本明細書ではHuMAbマウス及びKMマウスと称されるマウスを含み、本明細書ではまとめて「ヒトIgマウス」と称される。
【0344】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座であって、再配列されていないヒト重(μ及びγ)鎖免疫グロブリン配列並びにκ軽鎖免疫グロブリン配列を、内因性μ鎖遺伝子座及びκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒にコードするミニ遺伝子座を含む(例えば、Lonberg,et al.,1994 Nature 368(6474):856-859を参照されたい)。従って、このマウスは、マウスIgM又はマウスIgκの発現の減少を示し、免疫付与に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子は、クラススイッチング及び体細胞突然変異を受けて、抗親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg,N.et al.,1994 supra;reviewed in Lonberg,N.,1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101;Lonberg,N.and Huszar,D.,1995 Intern.Rev.Immunol.13:65-93、及びHarding,F.and Lonberg,N.,1995 Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536-546)。HuMAbマウスの調製及び使用、並びにそのようなマウスにより保有されるゲノム改変は、下記でさらに説明されている:Taylor,L.et al.,1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen,J.et at.,1993 International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al.,1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:3720-3724;Choi et al.,1993 Nature Genetics 4:117-123;Chen,J.et al.,1993 EMBO J.12:821-830;Tuaillon et al.,1994 J.Immunol.152:2912-2920;Taylor,L.et al.,1994 International Immunology 579-591;及びFishwild,D.et al.,1996 Nature Biotechnology 14:845-851(これらの全ての内容は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。さらに、米国特許第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;同第5,789,650号明細書;同第5,877,397号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,814,318号明細書;同第5,874,299号明細書;及び同第5,770,429号明細書(全てはLonberg及びKayに対する);Surani他に対する米国特許第5,545,807号明細書;国際公開第92103918号パンフレット、同第93/12227号パンフレット、同第94/25585号パンフレット、同第97113852号パンフレット、同第98/24884号パンフレット、及び同第99/45962号パンフレット(全てはLonberg及びKayに対する);並びにKorman他に対する国際公開第01/14424号パンフレットを参照されたい。
【0345】
別の実施形態において、導入遺伝子上に及び導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入染色体を保有するマウス)を使用して、本開示のヒト抗体を生じさせ得る。そのようなマウス(本明細書では「KMマウス」と称される)は、Ishida他に対する国際公開第02/43478号パンフレットで詳細に説明されている。
【0346】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスジェニック動物系が当技術分野で利用可能であり、本開示のβ-クロトー結合抗体を生じさせるために使用され得る。例えば、Xenomouse(Abgenix,Inc.)と称される代替のトランスジェニック系も使用し得る。そのようなマウスは、例えば、Kucherlapati他に対する米国特許第5,939,598号明細書;同第6,075,181号明細書;同第6,114,598号明細書;同第6,150,584号明細書、及び同第6,162,963号明細書で説明されている。
【0347】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替のトランスクロモソミック動物系が当技術分野で利用可能であり、本開示のβ-クロトー結合抗体を生じさせるために使用され得る。例えば、ヒト重鎖導入染色体及びヒト軽鎖導入染色体の両方を保有するマウス(「TCマウス」と称される)を使用し得、そのようなマウスは、Tomizuka et al.,2000 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722-727で説明されている。さらに、ヒト重鎖導入染色体及びヒト軽鎖導入染色体を保有するウシも当技術分野で説明されており(Kuroiwa et al.,2002 Nature Biotechnology 20:889-894)、本開示のFGF21結合抗体を生じさせるために使用され得る。
【0348】
ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を使用しても、本開示のヒトモノクローナル抗体を調製し得る。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は当技術分野で確立されているか、又は下記の実施例で説明されている。例えば、Ladner他に対する米国特許第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;及び同第5,571,698号明細書;Dower他に対する米国特許第5,427,908号明細書、及び同第5,580,717号明細書;McCafferty他に対する米国特許第5,969,108号明細書、及び同第6,172,197号明細書;並びにGriffiths他に対する米国特許第5,885,793号明細書;同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書、及び同第6,593,081号明細書を参照されたい。
【0349】
免疫付与時にヒト抗体応答が生じるようにヒト免疫細胞が再構築されているSCIDマウスを使用しても、本開示のヒトモノクローナル抗体を調製し得る。そのようなマウスは、例えば、Wilson他に対する米国特許第5,476,996号明細書、及び同第5,698,767号明細書で説明されている。
【0350】
フレームワーク又はFcの操作
本開示の操作された抗体として、例えばこの抗体の特性を改善するために、VH内の及び/又はVL内のフレームワーク残基に改変を行なっている抗体が挙げられる。典型的には、そのようなフレームワーク改変を、この抗体の免疫原性を低下させるために行なう。例えば、1つのアプローチは、1個又は複数個のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰突然変異させる」ことである。より具体的には、体細胞突然変異を受けている抗体は、この抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基を、抗体フレームワーク配列と、この抗体が由来する生殖系列配列とを比較することにより特定し得る。フレームワーク領域配列をその生殖系列配置に戻すために、例えば、部位特異的突然変異誘発により、体細胞突然変異を、生殖系列配列へと「復帰突然変異させ」得る。そのような「復帰突然変異した」抗体も本開示に包含されることが意図されている。
【0351】
フレームワーク改変の別のタイプは、フレームワーク領域内の又はさらには1個若しくは複数個のCDR領域内の1個又は複数個の残基を突然変異させてT細胞-エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチはまた、「脱免疫付与」とも称されており、Carr他により米国特許出願公開第20030153043号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0352】
フレームワーク内又はCDR領域内で行なわれた改変に加えて、又はこの改変の代替として、本開示の抗体を、Fc領域内の改変を含むように操作し得、典型的には、この抗体の1種又は複数種の機能的特性(例えば、血清半減期、補体結合、Fcレセプター結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害)を変更するように操作し得る。さらに、本開示の抗体を化学的に改変し(例えば、この抗体に、1個又は複数個の化学的部分を付着し得る)てもよいし、又はそのグリコシル化を変更して、この抗体の1種又は複数種の機能的特性を再び変更してもよい。これらの実施形態のそれぞれを、下記でさらに詳細に説明する。Fc領域中の残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスのものである。
【0353】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域中のシステイン残基数が変更される(例えば、増加するか又は減少する)ように、このヒンジ領域を改変する。このアプローチは、Bodmer他により米国特許第5,677,425号明細書でさらに説明されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を変更して、例えば、軽鎖及び重鎖の構築を容易にするか、又は抗体の安定性を増加させるか若しくは低下させる。
【0354】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させて、この抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、この抗体はブドウ球菌(Staphylococcyl)のプロテインA(SpA)結合が天然のFcヒンジドメインSpA結合と比べて損なわれているように、このFcヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン界面領域中に1個又は複数個のアミノ酸突然変異を導入する。このアプローチは、Ward他により米国特許第6,165,745号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0355】
別の実施形態において、この抗体は、その生物学的半減期を増加させるように改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardに対する米国特許第6,277,375号明細書で説明されているように、下記の突然変異のうちの1つ又は複数を導入し得る:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、この抗体を、Presta他により米国特許第5,869,046号明細書及び同第6,121,022号明細書で説明されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2個のループから得られたサルベージレセプター結合エピトープを含むように、CH1領域内で又はCL領域内で変更し得る。
【0356】
さらに他の実施形態において、少なくとも1個のアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基に置き換えてFc領域を変更して、抗体のエフェクター機能を変更する。例えば、この抗体が、エフェクターリガンドに対する親和性が変更されているが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1個又は複数個のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置き換え得る。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fcレセプター又は補体のC1成分であり得る。このアプローチは、Winter他により米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0357】
別の実施形態において、この抗体が、C1q結合が変更されており、及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を減少させるか若しくは消失させるように、アミノ酸残基から選択される1個又は複数個のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置き換え得る。このアプローチは、Idusogie他により米国特許第6,194,551号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0358】
別の実施形態において、1個の又は複数個のアミノ酸残基を変更し、それにより、抗体の、補体に結合する能力を変更する。このアプローチは、Bodmer他により国際公開第94/29351号パンフレットでさらに説明されている。
【0359】
さらに別の実施形態において、1個又は複数個のアミノ酸を改変することにより、抗体の、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力を増大させるように、及び/又はFcγレセプターに対する抗体の親和性を増加させるように、Fc領域を改変する。このアプローチは、Prestaにより国際公開第00/42072号パンフレットでさらに説明されている。さらに、FcγRl、FcγRII、FcγRIII、及びFcRnに対する、ヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、結合が改善されているバリアントも説明されている(Shields,R.L.et al.,2001 J.Biol.Chen.276:6591-6604を参照されたい)。
【0360】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化を改変する。例えば、脱グリコシル化抗体を作製し得る(即ち、この抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を、例えば「抗原」に対するこの抗体の親和性を増加させるように変更し得る。そのような炭水化物改変は、例えば、抗体配列内の1個又は複数個のグリコシル化部位を変更することにより達成され得る。例えば、結果として1個又は複数個の可変領域フレームワークグリコシル化部位が消失し、それにより、この部位でのグリコシル化が消失する1個又は複数個のアミノ酸置換を行ない得る。そのような脱グリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が増加し得る。そのようなアプローチは、Co他により米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書でさらに詳細に説明されている。
【0361】
加えて、又はあるいは、グリコシル化のタイプが変更されている抗体(例えば、フコシル残基の量が減少している低フコシル化抗体、又は2分枝GlcNac構造(bisecting GlcNac structure)が増加している抗体)を作製し得る。そのようなグリコシルパターンの変更は、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。そのような炭水化物改変は、例えば、グリコシル化機構が変更されている宿主細胞中で抗体を発現させることにより達成され得る。グリコシル化機構が変更されている細胞は当技術分野で説明されており、本開示の組換え抗体を発現させ、それによりグリコシル化が変更されている抗体を産生するために、宿主細胞として使用され得る。例えば、Hang他による欧州特許第1,176,195号明細書では、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊されている細胞株が説明されており、結果として、そのような細胞株内で発現された抗体は低フコシル化を示す。Prestaによる国際公開第03/035835号パンフレットでは、フコースを、Asn(297)が連結された炭水化物へと付着させる能力が低下し、結果として、この宿主細胞中で発現された抗体が低フコシル化される、バリアントCHO細胞株Lecl3細胞が説明されている(Shields,R.L.et al.,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。Umana他による国際公開第99/54342号パンフレットでは、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)を発現するように操作された細胞株が説明されており、その結果、操作された細胞株で発現された抗体は、結果として抗体のADCC活性を増加させる2分枝GlcNac構造の増加を示す(Umana et al.,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照されたい)。
【0362】
変更された抗体を操作する方法
上記で論じたように、本明細書で示された、VH配列及びVL配列又は完全長重鎖配列及び完全長軽鎖配列を有するβ-クロトー結合抗体を使用して、完全長重鎖配列及び/若しくは完全長軽鎖配列、VH配列及び/若しくはVL配列、又はこれらに付着した定常領域を改変することにより、新規のβ-クロトー結合抗体を作製し得る。そのため、本開示の別の態様において、本開示のβ-クロトー結合抗体の構造的特徴を使用して、本開示の抗体の少なくとも1種の機能的特性(例えば、ヒトβ-クロトーへの結合、及び同様にFGF21-レセプター複合体の1種又は複数種の機能的特性の活性化(例えば、FGF21-レセプターシグナル伝達の活性化)を保持する、構造的に関連するβ-クロトー結合抗体を作製し得る。
【0363】
例えば、上記で論じたように、本開示の抗体の1個若しくは複数個のCDR領域、又はそれらの突然変異を、組換えにより既知のフレームワーク領域及び/又は他のCDRと組み合わせて、さらなる組換えにより操作された本開示のβ-クロトー結合抗体を作製し得る。改変の他の種類として、以前の項で説明されたものが挙げられる。操作方法のための出発物質は、本明細書で提供されるVH配列及び/若しくはVL配列のうちの1つ若しくは複数、又はそれらの1個若しくは複数個のCDR領域である。操作された抗体を作製するために、本明細書で提供されるVH配列及び/若しくはVL配列のうちの1つ若しくは複数又はそれらの1個若しくは複数個のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(即ち、タンパク質として発現させる)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報を出発物質として使用して、元々の配列に由来する「第2世代」配列を作製し、次いで、「第2世代」配列を調製してタンパク質として発現させる。
【0364】
従って、別の実施形態において、本開示は、配列番号6若しくは9のCDR1配列、配列番号7のCDR2配列、及び/又は配列番号8のCDR3配列を有する重鎖可変領域抗体配列と、配列番号19若しくは31のCDR1配列、配列番号20のCDR2配列、及び/又は配列番号21のCDR3配列を有する軽鎖可変領域抗体配列とを含むβ-クトロー結合抗体(即ち、NOV005又はNOV006)を調製し、任意選択により、重鎖可変領域抗体配列内の及び/又は軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を変更して、少なくとも1種の変更された抗体配列を作製し、及びこの変更された抗体配列をタンパク質として発現させる方法を提供する。
【0365】
従って、別の実施形態において、本開示は、配列番号17の配列を含む完全長重鎖抗体配列と、配列番号28又は34の配列を含む完全長軽鎖抗体配列とからなる、哺乳動物細胞中での発現に最適化されたβ-クロトー結合抗体を調製し、任意選択により、完全長重鎖抗体配列内の及び/又は完全長軽鎖抗体配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基を変更して、少なくとも1種の変更された抗体配列を作製し、及びこの変更された抗体配列をタンパク質として発現させる方法を提供する。一実施形態において、重鎖又は軽鎖の変更は、この重鎖又は軽鎖のフレームワーク領域中である。
【0366】
この変更された抗体配列を、CDR3配列又は米国特許出願公開第2005/0255552号明細書で説明されている最小の必須結合決定基が固定されており、且つCDR1配列及びCDR2配列に対しては多様性を有する抗体ライブラリをスクリーニングすることによっても調製し得る。このスクリーニングを、抗体ライブラリから抗体をスクリーニングするのに適したあらゆるスクリーニング技術(例えばファージディスプレイ技術)に従って実施し得る。
【0367】
標準的な分子生物学的技術を使用して、この変更された抗体配列を調製して発現させ得る。この変更された抗体配列によりコードされる抗体は、本明細書で説明されたβ-クロトー結合抗体の機能特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを保持する抗体であり、この機能特性として、ヒト、カニクイザル、ラット、及び/又はマウスのβ-クロトーへの特異的結合が挙げられるがこれに限定されず、この抗体は、FGFR1c_β-クロトー_HEK293 pERK細胞アッセイにおいて、FGF21媒介シグナル伝達(例えばFGF21-レセプター依存性シグナル伝達)を活性化する。
【0368】
本開示の抗体を操作する方法の特定の実施形態において、β-クロトー結合抗体のコード配列の全て又は一部に沿って、ランダムに又は選択的に突然変異を導入し得、結果として得られる改変β-クロトー結合抗体を、本明細書で説明された結合活性及び/又は他の機能特性に関してスクリーニングし得る。突然変異法は当技術分野で説明されている。例えば、Shortによる国際公開第02/092780号パンフレットでは、飽和突然変異誘発、合成ライゲーション構築(synthetic ligation assembly)、又はこれらの組合せを使用して、抗体突然変異を作製してスクリーニングする方法が説明されている。あるいは、Lazar他による国際公開第03/074679号パンフレットでは、抗体の生理化学的特性を最適化するためにコンピュータスクリーニング法を使用する方法が説明されている。
【0369】
本開示の特定の実施形態において、抗体は、脱アミド化部位を除去するように操作されている。脱アミド化は、ペプチド中で又はタンパク質中で構造的変化及び機能的変化を引き起こすことが知られている。脱アミド化により、生物活性の減少、並びにタンパク質医薬品の薬物動態及び抗原性の変更がもたらされ得る(Anal Chem.2005 Mar 1;77(5):1432-9)。
【0370】
本開示の特定の実施形態において、本抗体は、pIを増加させ且つこの抗体の薬物様特性を改善するように操作されている。タンパク質のpIは、分子の全体的な生物物理的特性の鍵となる決定因子である。pIが低い抗体は、可溶性が低く、安定性が低く、且つ凝集しやすいことが知られている。さらに、pIが低い抗体の精製は、特に臨床的使用のためのスケールアップにおいて、困難であり且つ問題があり得る。本開示の抗β-クロトー抗体又はFabのpIを増加させることにより、それらの可溶性が改善され、この抗体をより高い濃度(>100mg/ml)で製剤化することが可能になった。高濃度(例えば>100mg/ml)でのこの抗体の製剤化により、この抗体のより高い用量を、硝子体内注射を介して患者の眼に投与することが可能となるという利点が付与され、これにより、心血管障害等の慢性疾患の処置にとって顕著な利点である投与頻度の減少が可能となり得る。より高いpIはまた、この抗体のIgGバージョンのFcRn媒介リサイクリングも増加させ得、そのため、薬物が、より長い持続時間にわたり体内に留まることが可能となり、必要とされる注射がより少なくなる。最後に、この抗体の全体的な安定性は、より長い保存可能期間及びインビボでの生物活性をもたらすより高いpIに起因して、顕著に改善されている。好ましくは、このpIは8.2以上である。
【0371】
この変更された抗体の機能特性は、例えば実施例で記載されたもの(例えばELISA)等の当技術分野で利用可能である及び/又は本明細書で説明された標準的なアッセイを使用して評価し得る。
【0372】
予防的使用及び治療的使用
本開示の抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)の有効な量を、必要とする対象に投与することにより、本明細書で説明されたβ-クロトーに結合する抗体(例えばNOV005又はNOV006)及びその抗原結合フラグメントを、異常なFGF21シグナル伝達(例えば、FGF21媒介シグナル伝達及び/又はFGF21レセプターシグナル伝達の異常な活性化)と関連する疾患又は障害の処置に治療上有用な濃度で使用し得る。本開示は、本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)の有効な量を、必要とする対象に投与することによる、FGF21に関連する代謝障害を処置する方法を提供する。本開示は、本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)の有効な量を、必要とする対象に投与することによる、FGF21に関連する心血管障害を処置する方法を提供する。
【0373】
本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)を使用して、特に、FGF21に関連する状態又は障害を予防的処置し得、予防し得、及び改善し得、この状態又は障害として下記が挙げられるがこれらに限定されず:代謝障害、内分泌障害、及び心血管障害、例えば、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、高トリグリセリド血症、メタボリックシンドローム、急性心筋梗塞、高血圧、循環器疾患、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、冠動脈心疾患、腎疾患、糖尿病合併症、神経障害、胃不全麻痺、インスリンレセプター中における重度の不活性化突然変異と関連する障害、並びに他の代謝障害、且つ重症患者の死亡率及び罹患率の低下でも使用し得る。
【0374】
本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)を使用して、特に、多くの疾患、障害、又は状態を処置し得、診断し得、寛解させ得、改善し得、又は予防し得、この疾患、障害、又は状態として下記が挙げられるがこれらに限定されず:インスリン抵抗性と関連する代謝性疾患、例えば、2型糖尿病、1型糖尿病、インスリンレセプター突然変異障害(insulin receptor mutation disorder)(INSR障害、例えばB型インスリン抵抗性)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、並びに様々な形態の部分型リポジストロフィー、例えば、家族性部分型リポジストロフィー及びHIV高活性抗レトロウイルス療法(HIV-HAART)により誘発された部分型リポジストロフィー(HIV-highly active antiretroviral therapy(HIV-HAART) induced partial lipodystrophy)、並びにインスリン産生と関連する疾患(例えば1型糖尿病)、且つ重症患者の死亡率及び罹患率の低下でも使用し得る。
【0375】
INSRの複数の不活性化突然変異が、様々な表現型で説明されている。患者は概して、思春期に高血糖へと進行する、インスリンの作用に対する重度の抵抗性を示す。現在の標準的な治療は、対象が高血糖性になった場合に非常に高い用量のインスリンで処置することであり、これは概して、高血糖の制御には不十分である。
【0376】
特定の態様において、本開示の抗体(例えばNOV005又はNOV006)を使用して、特に、1型糖尿病、脂質異常症、高血糖、低血糖、耐糖能障害、高トリグリセリド血症、又はHIV-HAARTにより誘発された部分型リポジストロフィーを処置し得るか、又は管理し得る。
【0377】
本開示の抗体を、FGF21関連障害の予防、処置、又は改善のための他の薬剤と組み合わせても使用し得る。例えば、スタチン療法を、心血管障害又は代謝障害を有する患者の処置のために、本開示のFGF21模倣抗体及びその抗原結合フラグメントと組み合わせて使用し得る。
【0378】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の体重を(例えば、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、又は少なくとも20%)減少させる方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0379】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の食欲又は食物摂取量を(例えば、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、又は少なくとも20%)減少させる方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0380】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を(例えば、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%)低下させる方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0381】
本明細書で提供される方法の具体的な態様において、この対象は代謝障害に苦しめられており、例えば、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、高トリグリセリド血症、及びメタボリックシンドロームを患う。本明細書で提供される方法の具体的な態様において、この対象は心血管障害を患う。特定の態様において、この対象はヒトである。
【0382】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の肥満を処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0383】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の2型糖尿病を処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0384】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象の1型糖尿病を処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0385】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象のリポジストロフィー(lipodystropy)(例えば、HIV-HAARTにより誘発された部分型リポジストロフィー)を処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0386】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象のNASHを処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0387】
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、対象のインスリンレセプター突然変異障害を処置する又は管理する方法であって、β-クロトーに結合し且つβ-クロトー/FGFR1cレセプター複合体の活性を増加させ得る本明細書で説明された抗体又は抗原結合フラグメント(例えばNOV005又はNOV006)を含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0388】
医薬組成物
本開示は、薬学的に許容可能な担体と一緒に製剤化されたβ-クロトー結合抗体(無傷、又は結合フラグメント)を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、例えば心血管障害の処置又は予防に適した1種又は複数種の他の治療薬をさらに含み得る。薬学的に許容される担体は、この組成物を強化するか、若しくは安定化させ、又はこの組成物の調製を容易にするために使用され得る。薬学的に許容される担体として、生理学的に適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに同類のものが挙げられる。
【0389】
本開示の医薬組成物を、当技術分野で既知の様々な方法により投与し得る。投与経路及び/又は投与様式は、所望される結果に応じて変わる。投与が硝子体内、静脈内、筋肉内、腹腔内、若しくは皮下であるか、又は標的部位に近接して投与することが好ましい。薬学的に許容可能な担体は、(例えば注射又は注入による)硝子体内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、又は表皮投与に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物(即ち、二重特異性分子及び多重特異性分子である抗体)を、この化合物を不活性化する場合がある酸及び他の天然条件の作用からこの化合物を保護する材料でコーティングし得る。具体的な態様において、本明細書で提供される方法での使用のための、本明細書で説明されたβ-クロトー結合抗体(例えば抗体NOV005又はNOV006)を含む医薬組成物を、皮下投与する。具体的な態様において、本明細書で提供される方法での使用のための、本明細書で説明されたβ-クロトー結合抗体(例えば抗体NOV005又はNOV006)を含む医薬組成物を、静脈内投与する。
【0390】
この組成物は、滅菌であり且つ流体であるべきである。例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持し得る。多くの場合には、この組成物に等張剤を含めることが好ましく、例えば、糖、多価アルコール(例えばマンニトール又はソルビトール)、及び塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長時間吸収を、この組成物に、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチン)を含めることによりもたらし得る。
【0391】
本開示の医薬組成物を、当技術分野で公知であり且つ日常的に実行される方法に従って調製し得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000;及びSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。医薬組成物を、好ましくはGMP条件下で製造する。典型的には、本開示の医薬組成物では、本β-クロトー結合抗体の治療上有効な用量又は治療上効果的な用量を利用する。当業者に既知の従来の方法により、本β-クロトー結合抗体を、薬学的に許容可能な剤形へと製剤化する。投与レジメンを、所望される最適応答(例えば治療応答)がもたらされるように調整する。例えば、単一のボーラスを投与し得、いくつかの分割された用量を経時的に投与し得、又はこの用量を、治療状況の緊急性により示されるように比例的に減少させ得るか若しくは増加させ得る。投与の容易さ及び投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。単位剤形は、本明細書で使用される場合、処置される対象のための単位投与量として適している物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる医薬担体と関連して、所望される治療効果をもたらすように算出された所定量の活性化合物を含む。
【0392】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与様式にとって所望される治療反応を、患者に有毒であることなく達成するのに有効である活性成分の量を得るように変わり得る。選択される投薬量レベルは、使用される本開示の特定の組成物、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与の時点、使用されることとなる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、及び/又は材料、処置されることとなる患者の年齢、性別、体重、症状、健康状態、及び先の病歴などの因子が挙げられる、種々の因子に依存する。
【0393】
医師又は獣医師は、本医薬組成物で利用される本開示の抗体の用量を、所望される治療効果を達成するのに必要な用量と比べて低いレベルで開始し、所望される効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させ得る。一般に、本明細書で説明された心血管障害の処置に有効な本開示の組成物の用量は多くの異なる因子に応じて変化し、この因子として下記が挙げられる:投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の医薬品、及び処置が予防的であるか治療的であるか。処置投与量を、安全性及び有効性を最適化するために滴定することが必要である。特定の実施形態において、抗体の全身投与の場合には、投与量は、宿主の体重の約0.0001~100mg/kg又は0.01~15mg/kgの範囲である。例示的な処置レジメンは、2週間当たり1回の、又は1ヶ月に1回の、又は3~6ヶ月に1回の全身投与を伴う。例示的な処置レジメンは、2週間当たり1回の、又は1ヶ月に1回の、又は3~6ヶ月に1回の、又は必要に応じた(PRN)全身投与を伴う。
【0394】
通常、抗体を複数回投与する。単回投与量の間の間隔は、毎週、毎月、又は毎年である。間隔はまた、患者におけるβ-クロトー結合抗体の血中レベルを測定することにより示されているように、不規則でもあり得る。加えて、医師により代替の投与間隔が決定され得、毎月又は効果的であるために必要に応じて投与される。全身投与のいくつかの方法において、投与量は、1~1000μg/ml(いくつかの方法では25~500μg/ml)の血漿中抗体濃度を達成するために調整されている。あるいは、抗体を徐放製剤として投与し得、この場合には、低頻度の投与が必要とされる。投与量及び頻度は、患者中での抗体の半減期に応じて変わる。一般に、ヒト化抗体は、キメラ抗体及び非ヒト抗体の半減期と比べて長い半減期を示す。投与量及び投与頻度は、処置が予防的であるか又は治療的であるかに応じて変わり得る。予防的適用では、比較的低い投与量を、比較的低頻度の間隔で長期にわたり投与する。一部の患者には、彼らの余生にわたり処置を施し続ける。治療的適用では、疾患の進行が軽減されるか又は終結するまで、及び好ましくは、患者が、疾患の症状の部分的な又は完全な寛解を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投与量が必要とされる場合がある。その後、この患者には予防的レジメンを投与し得る。
【実施例】
【0395】
下記の実施例は、本発明をさらに説明するために提示されており、本発明の範囲を限定するために提示されるものではない。本発明の他の変形は当業者に容易に明らかであり、且つ添付された特許請求の範囲に包含される。
【0396】
実施例1:抗体のスクリーニング及び産生
抗原としての使用のためのヒトFGFR1c_β-クロトー_300.19細胞の調製
ヒトFGFR1c(1~386aa)及びβ-クロトーを安定的に発現する300.19細胞を、全細胞抗原として使用するために生成した。ヒトβ-クロトーをコードする完全長cDNA(GenBank受託番号NM_175737)を、pEF1/Myc-His B(Invitrogenカタログ番号V92120)のEcoRI部位及びEcoRV部位にクローニングした。ヒトFGFR1cのアミノ酸1~386をコードするcDNA(GenBank受託番号NM_023106)を、pEF6/Myc-His B(Invitrogen、カタログ番号V96220)のBamHI部位及びNotI部位にクローニングした。両方の構築物において、Kozak配列(CACC)を開始コドンの直前に含め、且つ終止コドンをベクター中のMyc-Hisタグの前に追加した。Amaxa Nucleofectorデバイス及びNucleofectorキット(Lonza、カタログ番号VCA-1003)を使用するエレクトロポレーションにより、マウスプレ-B 300-19細胞に、β-クロトープラスミド及びFGFR1cプラスミドを共遺伝子導入した。3週間にわたり、1mg/mlのGeneticin(Invitrogen、カタログ番号10131)及び8μg/mlのBlasticidin(Invitrogen、カタログ番号46-1120)を使用して、安定したクローンを選択した。
【0397】
細胞アッセイでの使用のためのFGFR/β-クロトー発現HEK293細胞の調製
β-クロトー抗体の結合特異性、機能活性、又はオルソログ交差反応性を試験するために、ヒトFGFR1c_β-クロトー、ヒトFGFR2c_β-クロトー、ヒトFGFR3c_β-クロトー、ヒトFGFR4_β-クロトー、又はカニクイザルFGFR1c_β-クロトーを安定的に発現するHEK293細胞を、標準的なLipofectamine 2000遺伝子導入及び細胞クローン選択法を使用して生成した。
【0398】
完全長のヒトβ-クロトー(NM_175737)、ヒトFGFR1c(NM_023106)、ヒトFGFR2c(NP_001138387)、ヒトFGFR3c(NP_000133)、又はヒトFGFR4(NP_998812)のcDNAをコードする下記の哺乳類発現プラスミドを使用した:カニクイザルβ-クロトーの場合には、完全長配列を、ヒト及びアカゲザルのβ-クロトー配列に基づくプライマーによりカニクイザル脂肪組織cDNA(BioChain、カタログ番号C1534003-Cy)からPCR増幅させ、次いでクローニングした。カニクイザルFGFR1c cDNAを、ヒトFGFR1c配列(#NM_023106)に基づくプライマーを使用してカニクイザル脂肪組織cDNA(BioChain、カタログ番号C1534003-Cy)からクローニングし、ヒトFGFR1cとアミノ酸レベルで100%同一であることが分かった。従って、上記で説明したヒトFGFR1c cDNA構築物を使用して、カニクイザルβ-クロトー及びヒトFGFR1c(#NM_023106)を安定的に発現するHEK293細胞を作製し、なぜならば、ヒトFGFR1cアミノ酸配列とカニクイザルFGFR1cアミノ鎖配列とは同一だからである。
【0399】
β-クロトーに対する抗体の結合親和性の決定
抗体の結合親和性を、Biacore速度論的分析を使用して決定した。Series S Sensor Chip CM5(GE Healthcare、カタログ番号BR-1005-30)を、約30分にわたり周囲温度で平衡化させた。このシステムを、1×HBS-EP+バッファ(10倍溶液、GE Healthcare、カタログ番号BR-1006-69)でプライミングし、このチップをBiacore機器にロードした。このチップを、BIAnormalizing(GE Healthcare、カタログ番号BR-1006-51)溶液を使用して規格化し、このチップを、全ての流路で60μL/分の流速を使用して50mMのNaOHにより条件付けした。30秒間の注入を、60秒間の待機時間にて3回繰り返した。10mMの酢酸ナトリウムpH5.0を120秒にわたり60μL/分にて注入し、2回繰り返した。その後、Human Antibody Capture Kit(GE Healthcare、カタログ番号BR-1008-39)を使用して、抗ヒトIgG Fcを固定するために新たなサイクルを開始した。この抗ヒトFc Abを、固定化バッファ(10mMの酢酸ナトリウムpH5.0)で50μg/mLまで希釈した。アミンカップリング試薬を1:1(EDC及びNHS)で混合し、10μL/分にて7分にわたり注入した。次いで、抗ヒトFc Abを10μL/分にて6分にわたり注入した。最後に、エタノールアミノを、60秒間の待機時間で10μL/分にて7分にわたり注入した。これにより、結果として約8000~10000RUの固定化が生じるはずである。次いで、本発明者らは、NOV004、NOV005、及びNOV006に関して、10RU(捕捉レベル=約28RU)のRmaxの試験注入を実施した。このことを、10uL/mLの流速、及び3MのMgCl2再生バッファを使用して実行した。チップ表面の変化、IgGの親和性、IgGタンパク質の品質、及び希釈の差異に起因して、各フローセルを毎回評価した。本発明者らは、0.5ug/mLのIgG濃度で開始し、サンプル注入の結果に応じて、この濃度を増加させた(又は低下させた)。例えば、15秒で100RUを観察した場合には、本発明者らはAb溶液を0.25ug/mLまで希釈し、注入を繰り返した。各フローセル中の各抗体に関して捕捉パラメータを決定した後、様々な濃度でヒトβ-クロトーをチップに通し、Biacore速度式によりka(1/Ms)、kd(1/s)、KD(M)、及びRmax(RU)を算出した。
【0400】
異なる抗体がβ-クロトーに競合的に結合するかどうかの決定
Forte Bioを使用して、抗体がヒトβ-クロトーに競合的に結合するかどうかを決定した。全てのサンプル及び試薬を、1/10(体積/体積)比でPBSバッファを含む10倍キネティクスバッファ(kinetics buffer)(Forte Bio カタログ番号18-1092)で希釈した。ヒトβ-クロトー(R and D Systems 5889-KB-050)を、所望される濃度(5ug/ml)までキネティクスバッファで希釈した。ヒトβ-クロトーを、20秒にわたり抗hisセンサー(Forte Bio、カタログ番号18-5114)にロードし、次いで、抗体1を、飽和状態(200nM)に達するまで、このセンサーに400秒にわたりロードした。最後に、競合する抗体を、200nMの抗体1の存在下で、200nMで100秒にわたり、このセンサーにロードした。第2の結合シグナルがないことは、これらの抗体がヒトβ-クロトーへの結合に関して競合することを示す。
【0401】
pERK細胞アッセイを使用する、FGFR_β-クロトーレセプター活性化の測定
細胞培養、及びホスホ-ERK 1/2(pERK)レベルの測定に、標準的な技術を使用した。簡潔に説明すると、ヒトFGFR1c_β-クロトー、ヒトFGFR2c_β-クロトー、ヒトFGFR3c_β-クロトー、ヒトFGFR4_β-クロトー、又はカニクイザルFGFR1c_β-クロトーを安定的に発現するHEK293細胞を、5%CO2下で37℃にて、10%FBS(Hyclone、SH30071)、ブラストサイジン(Invitrogen、A1113902)、及びGeneticin(Invitrogen、10131035)を含むDMEM培地(Invitrogen、11995)中で維持した。細胞を、384ウェルのポリ-D-リシン被覆プレート(BD Biosciences、354663)中に播種し、5%CO2下で37℃にて一晩インキュベートし、続いて血清飢餓させた。
【0402】
ハイブリドーマ上清又はβ-クロトー抗体をFreestyle 293培地で希釈し、このプレートに、様々な濃度の抗体を添加した。インキュベーション後、細胞を洗浄し、次いで溶解バッファで溶解させた。細胞溶解物を384ウェルアッセイプレート(PerkinElmer、カタログ番号6008280)に移し、AlphaScreen SureFire(商標)pERK 1/2 Kit(Perkin Elmer、TGRES10K)を使用してホスホ-ERK 1/2レベルを測定した。標準的なAlphaScreen設定を使用して、プレートをEnVision 2104マルチラベルリーダー(Perkin Elmer)で読み取った。式Y=Bottom+(Top-Bottom)/(1+10^((LogEC50-X)×HillSlope))及びGraphPad Prism 5 Softwareを使用して、用量応答データを、タンパク質濃度と対比した基底に対するpERK活性の倍数(pERK activity fold over basal)としてグラフ化して、EC50値を決定した。
【0403】
モノクローナル抗体の調製
抗ヒトβ-クロトー抗体を、基本的にはDreyer他(2010)(Dreyer AM et.al.(2010)BMC Biotechnology 10:87)で説明されている全細胞免疫付与により、Balb/cマウス(Jackson Laboratory株:BALB/cJ)中で又はBcl2 22 wehiマウス(Jackson Laboratory株:C.Cg-Tg(BCL2)22Wehi/J)中で生成した。
【0404】
簡潔に説明すると、1×107個のヒトFGFR1c_β-クロトー_300.19細胞を、10~30日間の間隔で6回Balb/cマウスに注射した。最初の全細胞注射を、Freund’s Complete Adjuvant(Sigma-Aldrich F5881)で行なった。細胞及びアジュバントを、2箇所の近接するが別々の皮下部位に、混合せずに別個に注射した。これらの後に、同一細胞の腹腔内注射を、Sigma Adjuvant System(Sigma-Aldrich S6322)を伴うか、又はアジュバントと伴わずに行なった。
【0405】
Bcl2 22 wehiマウスを使用して、1×107個のヒトFGFR1c_β-クロトー_300.19細胞を、7日間の間隔で4回、この動物に注射した。最初の注射を、Freund’s Complete Adjuvant(Sigma-Aldrich F5881)で行なった。細胞及びアジュバントを、2箇所の近接するが別々の皮下部位の2つのセットに別個に注射した。後続の細胞の注射を、アジュバントを伴わずに皮下で行なった。
【0406】
免疫付与されたマウスでの免疫応答を、蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイにより測定した。1,000倍又は10,000倍に希釈された免疫付与マウス由来の血清を使用して、ヒトFGFR1c_β-クロトー_HEK細胞及びヒトFGFR1c_β-クロトー_300.19細胞を染色し、続いて、アロフィコシアニン(APC)二次抗マウスIgG検出抗体(Jackson ImmunoResearch カタログ番号115-136-071)を使用した。蛍光を、Becton Dickinson LSRIIフローサイトメーター又はForessaフローサイトメーターで読み取った。力価が最高である4匹のマウスを、電気融合のために選択した。
【0407】
ハイブリドーマのスクリーニング、サブクローニング、及び選択
2×108個の脾臓細胞及び5×107個の融合パートナーF0細胞(ATCC、CRL-1646)をCytofusion Medium(LCM-C、Cyto Pulse Sciences)で洗浄し、600ボルトのピークパルスにより、製造業者の仕様に従ってHybrimune Waveform Generator(Cyto Pulse Sciences、モデルCEEF-50B)を使用して融合させた。細胞を、1つのウェル当たり3,000個のF0細胞の算出密度で384ウェルプレート中に播種し、HAT選択培地(Sigma-Aldrich カタログ番号H0262)中で培養した。
【0408】
一次スクリーニングを、ハイスループットFACSプラットフォーム(Anderson,Paul.Automated Hybridoma Screening,Expansion,Archiving and Antibody Purification.In:3rd Annual 2014 SLAS Conference.Jan.18-22,2014,San Diego,CA)を使用して実施した。簡潔に説明すると、ハイブリドーマ上清を、ヒトFGFR1c_β-クロトーを安定的に発現する細胞株及び発現しない細胞株と共にインキュベートし、抗体の結合を、抗マウスIgG-APC二次抗体(Jackson ImmunoReseach カタログ番号115-136-071)により決定した。
【0409】
各ハイブリドーマ上清由来の抗体を、4種のバーコード付き細胞株:300.19親細胞、ヒト_FGFR1c_β-クロトー_300.19細胞、親HEK 293細胞、及びヒトFGFR1c-β-クロトー_HEK 293細胞に対する同時の結合を試験した。この一次スクリーニングで348個のヒットを選択した。一次ヒットを96ウェルプレート中で拡大させ、結合を、FACSによりヒトFGFR1c_β-クロトー_HEK 293細胞上で再び確認し、122個の確認されたヒットを得た。本明細書で説明されたホスホ-ERK 1/2アッセイを使用して、115個のFACSにより結合を再確認したヒットのHAT(ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン)培地含有上清を、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体の細胞活性化に関してプロファイリングした。
【0410】
これらの上清中のホスホ-ERK 1/2細胞の活性が最高であるハイブリドーマを拡大させ、これらの上清からIgGを精製した。実施例2で説明されたホスホ-ERK 1/2アッセイを使用して、74個のハイブリドーマ由来の精製済IgGを、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体の細胞活性化に関してプロファイリングした。実施例2で説明されたホスホ-ERK 1/2アッセイを使用して、ヒトFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体のホスホ-ERK 1/2活性化の効力が最良であるハイブリドーマ由来のIgGを、カニクイザルFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体とのオルソログ交差反応性、並びにヒトFGFR2c_β-クロトーレセプター複合体及びヒトFGFR3c_β-クロトーレセプター複合体に対する選択性に関してプロファイリングした。これらのプロファイリング結果に基づいて、数個のハイブリドーマクローン(例えば127F19)を、さらなるプロファイリングのために選択した。具体的には、効力が最高である精製済IgG(例えばクローン127F19)を交差反応性に関してプロファイリングし、カニクイザルFGFR1c_β-クロトーを活性化することが分かったが、ヒトFGFR2c_β-クロトー、FGFR3c_β-クロトー、FGFR4_β-クロトー、又はクロトー_FGFRを活性化しなかった。選択されたIgG(例えばクローン127F19)は、β-クロトー又はFGFR1c_β-クロトーを発現する細胞に結合し、FGFR1cのみを発現する細胞には結合しなかった。
【0411】
α-クロトーを発現する細胞中における127F19シグナル伝達を評価するために、HEK293細胞に、α-クロトー、Egr1-ルシフェラーゼ、及びウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼを遺伝子導入した。簡潔に説明すると、HEK293細胞をDMEM、10%FBS中で培養し、30000個の細胞/ウェルで播種し、Lipofectamine 2000を使用して、クロトー、Egr-1-luc、及びTK-Rennilaを遺伝子導入した。翌日、FGF23、FGF21、及び127F19を、0.1%FBSを補充したDMEMで、示した濃度まで希釈し、遺伝子導入された細胞に一晩添加した。ルシフェラーゼ活性を、製造業者の指示に従ってDual-Gloルシフェラーゼアッセイキット(Promega、E2920)により検出した。予想したように、シグナル伝達のためにα-クロトーの発現を必要とするFGF23は、強力なルシフェラーゼ発現を示した。しかしながら、FGF21も127F19も顕著なルシフェラーゼ発現を全く示さず、このことは、α-クロトーは、FGF21又はこれらのFGF21模倣抗体の共レセプターとして作用しないことを示唆する。
【0412】
モノクローナル抗体のヒト化及び親和性成熟
ヒト化
ヒト化のプロセスは当技術分野で十分に説明されている(Jones PT et al.(1986)Nature 321:522-525;Queen C et al.(1989)PNAS USA 86:10029-10033;Riechmann L et al.(1988)Nature 33:323-327;Verhoeyen M et al.(1988)Science 239:1534-1536)。用語ヒト化は、非ヒト抗体(例えばマウス由来抗体)の抗原結合部位の、ヒトアクセプターフレームワーク(例えばヒト生殖系列配列)への導入を説明する(Retter I et al.(2005).Nucleic Acids Res.33:D671-D674.)。
【0413】
抗体をヒト化する主な理論的根拠は、ヒトにおいて抗体に対する免疫原性応答を発生させるリスクを最小化することに見られる(Rebello PR et al.(1999)Transplantation 68: 1417-1420)。抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)(Chothia C and Lesk AM(1987)Journal of Molecular Biology 196:901-917;Kabat E et al.(1991)Anon.5th Edition ed;NIH Publication No.91:3242)と、CDR外の位置(即ち、結合に直接的に又は間接的に影響を及ぼす、可変ドメイン(VL及びVH)のフレームワーク領域中の位置)とを含む。結合に直接的に影響を及ぼし得るフレームワーク残基は、例えば、CDR2とCDR3との間に位置する、いわゆる「アウター」ループ領域中で見出され得る。結合に間接的に影響を及ぼす残基は、例えば、いわゆるバーニヤゾーン(Vernier Zone)で見出される(Foote J,Winter G.(1992)Journal of Molecular Biology 224:4 87-499)。これらは、CDRの高次構造を支持すると考えられる。CDR外のこれらの位置は、フレームワーク領域中のヒト生殖系列アクセプター配列に対する最終的なヒト化抗体の逸脱の数を最小化するのに適したアクセプターフレームワークを選択する際に考慮される。
【0414】
複数のヒト生殖系列アクセプターフレームワークを、軽鎖と重鎖との両方のヒト化に関して試験した。例えば、ヒトフレームワークVBase_VH4_4-30.1及びVBase_VH3_3-21を重鎖のヒト化に関して試験し、ヒトフレームワークVBase_VK1_O18及びVBase_VK3_L25を軽鎖のヒト化に関して試験した。
【0415】
配列最適化親和性成熟
特定のアミノ酸配列モチーフは、翻訳後改変(PTM)(例えば、グリコシル化(即ち、NxS/T、xはP以外)、遊離システインの酸化、脱アミド化(例えばNG)、又は異性化(例えばDG))を受けることが知られている。CDR中に存在する場合には、このモチーフは、製品の均一質性を高めるために、部位特異的変異誘発により理想的には除去される。
【0416】
親和性成熟のプロセスは当技術分野で十分に説明されている。多くのディスプレイシステムの中でも、ファージディスプレイ(Smith GP,1985,Filamentous fusion phage:novel expression vectors that display cloned antigens on the virion surface.Science 228:1315-1317)及び酵母等の真核細胞によるディスプレイ(Boder ET and Wittrup KD,1997,Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries.Nature Biotechnology 15: 553-557)は、抗体-抗原相互作用に関して選択するために最も一般的に適用されるシステムであると思われる。これらのディスプレイシステムの利点は、広範囲の抗原に適していること、及び選択の厳密さを容易に調整し得ることである。ファージディスプレイでは、scFvフラグメント又はFabフラグメントを示し得、加えて酵母中では完全長IgGを示す。これらの一般に適用された方法により、10E7を超える多様性を有するより大きなライブラリからの所望される抗体バリアントの選択が可能になる。多様性がより少ない(例えば10E3)ライブラリを、微量発現及びELISAによりスクリーニングし得る。非標的の又はランダムな抗体バリアントライブラリは、例えば、エラー-プローンPCR(Cadwell RC and Joyce GF,1994,Mutagenic PCR.PCR Methods Appl.3:S136-S140)により生成され得、非常にシンプルではあるが時には制限されるアプローチを提供する。別の戦略は、抗体候補のCDRにより方向付けられた多様化である。1個又は複数個のCDR中の1箇所又は複数箇所の位置を、例えば変性オリゴ(Thompson J et al.,1996,Affinity maturation of a high-affinity human monoclonal antibody against the third hypervariable loop of human immunodeficiency virus:use of phage display to improve affinity and broaden strain reactivity.J.Mol.Biol.256: 77-88)、トリヌクレオチド突然変異誘発(TRIM)(Kayushin AL et al.,1996,A convenient approach to the synthesis of trinucleotide phosphoramidites--synthons for the generation of oligonucleotide/peptide libraries.Nucleic Acids Res.24:3748-3755)、又は当技術分野で既知の任意の他のアプローチを使用して、特異的に標的とし得る。ヒト化候補に対してアミノ酸改変を行ない、PTMを除去した。
【0417】
発現プラスミドの生成
ヒトへのコドン最適化を含む、ヒト化VLドメイン及びヒト化VHドメインをコードするDNA配列を、GeneArt(商標)(Life Technologies Inc.Regensburg,Germany)に注文した。VLドメイン及びVHドメインをコードする配列を、GeneArt由来のベクターからの切り貼りにより、哺乳動物細胞中での分泌に適した発現ベクターにサブクローニングした。重鎖及び軽鎖を、共遺伝子導入が可能となるように個別の発現ベクターにクローニングした。この発現ベクターの構成要素として下記が挙げられる:プロモータ(サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)(CMV)エンハンサ-プロモータ)、分泌を容易にするためのシグナル配列、ポリアデニル化シグナル、並びに転写ターミネータ(ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子)、エピソームの複製及び原核生物における複製を可能にする構成要素(例えば、SV40起点、及びColE1、又は当技術分野で既知の他のもの)、並びに選択を可能にするための構成要素(アンピシリン耐性遺伝子及びゼオシンマーカー)。
【0418】
ヒト化抗体候補の発現及び精製
SV40ラージT抗原を構成的に発現するヒト胎児腎臓細胞(HEK293-T ATCC11268)は、ヒト化IgGタンパク質及び/又は最適化されたIgGタンパク質の一時的な発現のために一般に使用される宿主細胞株のうちの1つである。遺伝子導入試薬としてPEI(ポリエチレンイミン、MW 25.000 直鎖状、Polysciences、USA カタログ番号23966)を使用して、遺伝子導入を実施した。
【0419】
最初の精製を、HiTrap ProtA MabSelect(登録商標)SuReカラムによる親和性により実施した。溶出液を、凝集(SEC-MALS)並びに純度(SDS-PAGE、LAL、及びMS)に関して試験した。必要に応じて、最初の精製からのプールをSPX(Hi Load 16/60 Superdex 200グレード 120mL(GE-Helthcare))にロードした。NOV004、NOV005、及びNOV006は、マウスハイブリドーマ127F19に由来するヒト化mAbである。IgG1 L234A/L235A(LALA)アイソタイプ又はIgG1κ D265A/P329A(DAPA)アイソタイプを、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を促進する抗体の能力を低下させるための予防手段として選択した(例えば、Hezareh M et al.(2001)Journal of Virology 75:12161-12168を参照されたい)。IgG1(DAPA)アイソタイプであるヒト化候補NOV004、NOV005、及びNOV006を、説明されているように発現させて精製した。
【0420】
実施例2:モノクローナル抗体のインビトロでの特徴付け
NOV004、NOV005、及びNOV006の結合特性及び細胞活性特性を示すために、インビトロでの研究を行なった。実施例1で説明されたBiacoreを使用して、ヒトβ-クロトーに対するmAbのKDを推定した。NOV004、NOV005、及びNOV006はそれぞれ、約3×E-10M、3×E-10M、及び4×E-10Mであると算出したKDを有する。
【0421】
実施例1で説明されたpERKアッセイを使用して、mAbを、FGFR_β-クロトーレセプター活性に関してプロファイリングした。NOV004は、ヒト及びカニクイザルのFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体をそれぞれ、約3nM及び20nMであると算出したEC
50で活性化した(
図1)。NOV005は、ヒト及びカニクイザルのFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体をそれぞれ、約3nM及び16nMであると算出したEC
50で活性化した(
図1)。NOV006は、ヒト及びカニクイザルのFGFR1c_β-クロトーレセプター複合体をそれぞれ、約4nM及び18nMであると算出したEC
50で活性化した(
図1)。NOV005、NOV006、及びNOV006は、ヒトFGFR2c_β-クロトーレセプター複合体、ヒトFGFR3c_β-クロトーレセプター複合体、又はヒトFGFR4_β-クロトーレセプター複合体を活性化しなかった(
図2)。これらのmAbを、実施例1で説明したFGF23活性に関してプロファイリングした。NOV005、NOV006、及びNOV004はFGF23活性を示さなかった(
図3)。Forte Bioデータは、NOV005及びNOV006が、ヒトβ-クロトーへの結合に関してNOV004と競合することを示す(
図4)。
【0422】
ヒトIgG1-LALAアイソタイプを有するNOV004のバージョンとのヒトヒトβ-クロトー細胞外ドメインの水素重水素交換によるエピトープマッピング研究は、下記のペプチドがmAb-β-クロトーECD複合体中で有意に保護されることを示し:246~265、343~349、421~429、488~498、509~524、536~550、568~576、646~669、773~804、834~857、及び959~986aa;下記の領域が最も強く保護されることを示す:246~265、536~550、834~857、及び959~986aa(データは示さない;国際公開第2017/021893号パンフレットを参照し、このパンフレットは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この研究は、結合データ、活性データ、及び競合データとの組合せで、NOV005及びNOV006もそのようなβ-クロトーECD領域を有意に保護するであろうことを示す。
【0423】
実施例3:ラットにおけるモノクローナル抗体の薬物動態プロファイリング
動物、及び維持条件
動物のケア及び飼育を、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(Institute of Laboratory Animal Resources,National Research Council)に従って施した。全ての手順を、US Department of Health and Human Servicesにより示された基準により管理し、Novartis Institutes for BioMedical Research(NIBR)Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコルに従って実施した。雄のSprague-Dawleyラット(n=3/群)を、不断に自動で給水されるラック上の底が頑丈なケージ中で飼育し、12時間の明/暗サイクル(午前6時~午後6時)で維持し、標準的な齧歯動物用食餌(Harlan-Teklad;Frederick,MD;カタログ番号8604)に自由にアクセスできるようにした。この動物施設を、湿度が30~70%の68~76°Fで維持した。
【0424】
NOV004、NOV005、又はNOV006の調製及び投与
10mMのHis/His-HCl、220mMのスクロース中のNOV004、NOV005、及びNOV006のストック溶液を、使用前に冷蔵下で解凍した。投与の朝に、3種全ての抗体をPBSで約3mg/mLで希釈し、適切な容量を投与シリンジに吸引し(3mL/kg)、投与まで室温で保持した。動物を試験管保定器(tube restrainer)に置き、尾静脈への静脈内(IV)注射(10mg/kg)により、NOV004、NOV005、又はNOV006のいずれかを投与した。
【0425】
血液サンプルの採取
血液サンプルを、-3日目(ベースライン)、投与後0日目(投与後1時間及び6時間)並びに1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、16日目、及び28日目に採取した。全ての時点を、0日目に投与した用量の投与の終了から計時した。各時点で、約70μl(70μL)の血液を、EDTAが入ったBD Microtainer採取/セパレーターチューブ(Becton,Dickinson,and Company;Franklin Lakes,NJ;カタログ番号365973)に採取した。ガーゼで圧力を加えて出血を止めた。サンプルを20,817×gで10分にわたり遠心分離し、次いで、約30μLの血漿を、0.2mL Thermo-stripチューブ(Thermo-Scientific;Pittsburg,PA;カタログ番号AB-0451)に移して80℃で凍結させた。各採取の後に、ラットをそれぞれの飼育ケージに戻した。
【0426】
血漿総NOV004濃度、血漿総NOV005濃度、又は血漿総NOV006濃度の測定
捕捉抗体としてのヤギ抗ヒトFcガンマ抗体(KPL #109-005-098)と、検出抗体としての、HRP標識を有するヤギ抗ヒトIgGとによるカスタムのサンドイッチイムノアッセイを使用して、ラット血漿中のヒトIgG(即ち、NOV004、NOV005、又はNOV006)を定量した。この捕捉抗体(PBS中に2μg/mL、30μL/ウェル)で、384ウェルの白色マイクロタイタープレート(Greiner Bio-One;Monroe,NC;カタログ番号781074)をコーティングした。このプレートを、振盪することなく室温(RT)で一晩インキュベートした。洗浄することなくコーティング溶液を吸引した後、1×Milk Diluent/Blocking溶液(KPL;Gaithersburg,MD;カタログ番号50-82-01)90μLを各ウェルに添加し、このプレートをRTで2時間にわたりインキュベートした。インキュベーションの終了時にこの溶液を吸引し、このプレートを、-80℃にて、乾燥剤と共にフォイルパウチ中で貯蔵した。
【0427】
アッセイの当日、16種のNOV004、NOV005、及びNOV006の標準濃度(0.244~4000pMの範囲)を、カゼインバッファによる段階希釈により調製した(バッファ陰性対照を含む)。全ての研究サンプルをカゼインバッファにより手動で1:50に希釈し、次いで、Biomek Fxを使用して、合計3回の希釈で5倍に連続的に希釈した。プレートをRTで2時間にわたりインキュベートし、次いで、リン酸洗浄バッファで3回洗浄した(90μL/ウェル)。各プレートに、HRPで標識されたヤギ抗ヒトIgG(カゼインバッファ中に400ng/mL、30μL/ウェル)を添加し、このプレートをRTで1時間にわたりインキュベートした。このプレートをリン酸洗浄バッファ(90μL/ウェル)で3回洗浄し、次いで、KPL LumiGLO Chemiluminescent Substrateを添加した(30μL/ウェル;カタログ番号54-61-00)。化学発光を、50ミリ秒の積分時間で、全ての波長にてSpectraMax M5プレートリーダー(Molecular Devices)で速やかに読み取った。血漿サンプル中のヒトFc濃度(pM)を、NOV004、NOV005、又はNOV006の標準曲線から内挿し、希釈係数を乗算し、nM濃度へと変換した。
【0428】
動物は、NOV004、NOV005、又はNOV006のIV投与から1時間後に、約200μg/mLの平均C
maxを示した。NOV004、NOV005、及びNOV006は、Sprague-Dawleyラットにおいて同等のPKプロファイルを示した(
図5)。
【0429】
実施例4:開発可能性(developability)、及び製剤の評価
抗体NOV004、NOV005、及びNOV006の製造プロセス及び製剤の研究を実行した。NOV004の以前の評価中に観測した高分子量種(HMW)の形成は、溶液中での高度の凝集を示唆しており、同等の機能的活性を有するがより良い製造プロファイル及び製剤プロファイルを有する(例えば、HMWの形成を全く観測しないかほとんど観測しない(例えば、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満))他のFGF21模倣抗体の開発及び評価を促した。
【0430】
ヒトへのコドン最適化を含む、抗体NOV005及びNOV006をコードするDNA配列を、GeneArt(商標)(Life Technologies Inc.Regensburg,Germany)及びATUM(Menlo Park,CA)に注文した。NOV004、NOV005、及びNOV006を発現するベクターを線形化し、CHO細胞株に遺伝子導入した。>95%の生存率に回復するまで、10nMのメトトレキサート(MTX)を使用してプールを選択した。各分子に関して1つのプールをウェーブ製造(wave production)のために選択し、適切にスケールアップした。13日後に、このウェーブ製造からの培養上清を回収してろ過した。
【0431】
NOV005及びNOV006のウェーブ回収物質を、標準抗体用の2種のカラムクロマトグラフィー精製プロセス(アフィニティクロマトグラフィー(樹脂-GE Healthcare MabSelect SuRe)を使用して捕捉し、カチオン交換クロマトグラフィー(CEC)(樹脂-Fractogel EMD SO3-)を使用してポリッシュする)を使用して処理した。捕捉した物質を、ウイルス不活性化(3.5へのpHの調整、70分にわたる室温での、このpHにおけるインキュベーション、及びその後の5.0へのpHの調整)、並びに滅菌ろ過に供した後に、CECにより処理した。CECの後、接線流ろ過を使用してこの物質を透析ろ過し、10mMのヒスチジン/ヒスチジン-HCl、pH5.0へとバッファ交換した。その後、この物質を約200mg/mLまで濃縮して製剤研究用の物質とした。例えば、抗体を製剤バッファ中で評価し、特定のパラメータ(具体的には、40℃での4週間後のHMWの形成)を決定した。下記の表3では、40℃での4週間後のNOV004、NOV005、及びNOV006のサンプル中で観測したHMWの形成を評価する例示的な実験からのデータが要約されている。
【0432】
【0433】
NOV004に対するNOV005及びNOV006の配列の差異により、貯蔵時でのHMWの形成に顕著な改善がもたらされた。NOV005及びNOV006は両方とも、4週間にわたる40℃で約1%未満のHMW形成を示したが、NOV004は、4週間にわたる40℃で約64%のHMW形成というはるかに高いHMW形成を示した。
【0434】
NOV005及びNOV004のVH及びVLの配列アラインメントを下記に記載する:
VH
同一性:79.2
類似性:88.3%
【化6】
VL
同一性:99.1%
類似性:100.0%
【化7】
【0435】
このデータは、NOV005及びNOV006が、驚くべきことに、NOV004と対比したHMWの形成により示されるように最小限の凝集傾向を示したことを示し、並びにNOV005及びNOV006が、医薬製剤に適しており且つより好ましいであろう特性を示すこと示唆する。
【0436】
実施例5:肥満のカニクイザルにおける研究
肥満のカニクイザルにおける摂餌量、体重、及び血漿バイオマーカーへのFGF21模倣mAb(例えば、NOV004、NOV005、又はNOV006)の効果を研究する。
【0437】
実験プロトコル:
5匹の雄のカニクイザルを皮下(s.c.)で2回処置し(1mg/kg用量のFGF21模倣mAb(例えば、NOV004、NOV005、又はNOV006)を隔週(研究の0日目及び7日目)で投与する)、投与後100日超にわたり、摂餌量、体重、及び血漿バイオマーカーを評価する。各投与に関して、動物を飼育ケージ内で拘束し、血液サンプルを採取し、次いで各動物に1mg/kgのFGF21模倣mAb(例えば、NOV004、NOV005、又はNOV006)を皮下投与する。摂餌量の測定を最初の投与の1週間前に開始し、この研究全体を通して継続する。研究用飼料を給餌の前に秤量し、毎日2等分する。翌朝、残っている飼料を回収して秤量する。受皿に落ちているペレット(各1g)の数を数え、残っている食物の重量に加える。供給した食物の重量から回収した食物を減算して、毎日の摂餌量を算出する。果物及び野菜の摂取量は測定しない。体重計の動的特徴を使用して、空腹時の体重を1週間当たり3回の朝(血液採取前、又は投与前)に二重に測定する。
【0438】
血漿FGF21模倣mAb濃度の測定
ELISAベースのサンドインチイムノアッセイを使用して、カニクイザル血漿中のヒトFc IgGを定量する。ヒトIgGに対するマウスモノクローナル抗体である抗ヒトIgGマウスIgG1を捕捉抗体として使用する。白色のGreiner384ウェルプレートを、2μg/mLの抗ヒトIgGマウスIgG1(30μL/ウェル)でコーティングし、室温(RT)で一晩インキュベートする。コーティング抗体を吸引し、1×ミルクブロッカー(milk blocker)(KPL #50-82-01)をRTで2時間にわたり90μL/ウェルで添加する。このブロッキング溶液を吸引し、プレートを、アッセイまで、乾燥剤と共にプレートバッグ中で-80℃にて貯蔵する。アッセイの当日、プレート及び試薬をRTにする。カスタムのカゼインサンプル希釈液で、精製されたIgGを4000~16pMに希釈し、バッファ対照を含めることにより、標準を作製する。サンプルを、標準と同一の希釈液で1:50、1:250、1:1250、及び1:6250に二重で希釈し、次いで、標準、希釈したサンプル、及び対照を、RTで2時間にわたりプレートに添加する(全ての工程に関するワーキング容量は、30μL/ウェルであった)。次いで、プレートを、リン酸塩ベースの洗浄バッファで3回洗浄する。このプレートに、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識された抗ヒトFc-ガンマ抗体をRTで1時間にわたり添加し、次いで、このプレートを、リン酸塩ベースの洗浄バッファで3回洗浄する。このプレートに化学発光基質を添加し、このプレートを発光プレートリーダーで速やかに読み取る。
【0439】
FGF21模倣mAb(例えば、NOV004、NOV005、又はNOV006)、標準を、1枚のプレート当たり三重にアッセイする。希釈した血漿サンプルを二重にアッセイする。未知のサンプルをIgG標準曲線から内挿する。サンプル濃度の曲線への当てはめ、逆算、回復%、及び内挿を、SoftMax Pro Software v5.4.1を使用して実施する。IgG標準により生じたシグナルをプロットし、4パラメータロジスティック曲線当てはめオプションを使用して当てはめた。血漿サンプル中のFc濃度(pM)をFGF21模倣mAb標準曲線から内挿し、希釈係数を乗算する。このアッセイの定量下限(LLOQ)及び定量上限(ULOQ)を決定する。LLOQ及びULOQを、100%回復±20%及びCV<20%の標準濃度の上限及び下限として定義し、次いで、希釈係数で乗算する。
【0440】
抗薬物抗体の検出
血漿サンプルを、LowCross Buffer(Boca Scientific;Boca Raton,FL;カタログ番号100 500)で1:5に希釈する。LowCrossバッファ中に0.6μg/mLのビオチンで標識されたFGF21模倣mAbと0.6μg/mLのジゴキシゲニンで標識されたFGF21模倣mAbとを含む反応混合物を調製する。希釈した血漿(80μL)を、96ウェルU底プレート(BD Falcon;Billerica,MA;カタログ番号351177)中で反応混合物160μLと組み合わせる。このプレートの縁をパラフィルムで密封し、このプレートを、2時間にわたり37℃にて振盪プラットフォーム上でインキュベートする(150rpm、光から保護する)。次いで、各混合物のアリコート(100μL)を、ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルプレート(Roche;カタログ番号11734776001)の二連のウェルに移し、最初に、0.05%(体積/体積)のTween-20(1つのウェル当たり300μL)を含む1×PBSからなる洗浄バッファで3回洗浄する。このプレートを密封し、次いで、1時間にわたり振盪プレットフォーム上でRTにてインキュベートする(300rpm、光から保護する)。プレートを、洗浄バッファ(1枚のウェル当たり300μL)で3回洗浄し、次いで、LowCrossバッファで1:2500に希釈した抗ジゴキシゲニンペルオキシダーゼ_POD Fabフラグメント(Roche;カタログ番号11633716001)100μLを各ウェルに添加する。このプレートを密封し、45分にわたり振盪プラットフォーム上でRTにてインキュベートし(300rpm、光から保護する)、次いで、洗浄バッファ(1枚のウェル当たり300μL)で3回洗浄する。各ウェルに、TMB One Component HRP Microwell Substrate(Bethyl Laboratories;Montgomery TX;カタログ番号E102;100μL/ウェル)を添加し、光から保護しつつ青色を9~10分にわたり発色させた。各ウェルに0.18N H2SO4 100μLを添加することにより、この発色反応を停止させ、このプレートを短時間にわたり振とうし、OD450で黄色を測定する。
【0441】
血漿グルコース濃度の測定
血漿グルコース濃度を、Autokit Glucoseアッセイ(Wako Chemicals;Richmond,VA;カタログ番号439-90901)を使用して測定する。検量用試料を500、200、100、50、20、及び0mg/dLの標準まで希釈することにより、標準曲線を作成する。透明な平底96ウェルプレート(Thermo Scientific;カタログ番号269620)中において、37℃まで予め温めたアッセイ試薬(300μL)を、2μLの血漿、標準、及び対象サンプルに添加する。このプレートを30秒にわたりプレートシェーカー上で混合し、次いで、5分にわたり37℃でインキュベートする。20秒間の混合の後、このプレートを、Molecular Devices SPECTRAmax PLUS 384(Sunnyvale,CA)を使用して505/600nmで読み取る。標準曲線と比較することにより、サンプル中のグルコース濃度を算出する。
【0442】
血漿インスリン濃度の測定
血漿インスリン濃度を、製造業者の指示に従ってMillipore Human Insulin Specific RIA Kit(Billerica,MA;カタログ番号HI-14K)を使用して決定する。5mL,75×12mmのPP SARSTEDTチューブ(カタログ番号55.526)中において、適切な量のアッセイバッファ、標準、又は希釈した血漿サンプルを、125I-インスリン及び抗インスリン抗体と混合する。このチューブをボルテックスし、カバーし、RTで20時間にわたりインキュベートする。このインキュベーションの後、4℃の沈殿試薬1mLを添加し、このチューブをボルテックスし、次いで4℃で30分にわたりインキュベートする。全てのチューブを30分にわたり遠心分離し(4℃で3000rpm)、上清をデカントし、ペレットを、PerkinElmer WIZARD2 Automatic Gamma Counter(モデル番号2470;PerkinElmer;Waltham,MA)でカウントする。既知のインスリン量を使用して作成した標準曲線と比較することにより、インスリン濃度を算出する。
【0443】
血漿トリグリセリド濃度の測定
血漿トリグリセリド(TG)濃度を、Triglyceride(GPO)Liquid Reagentセット(Pointe Scientific;Canton,MI;カタログ番号T7532-500)を使用して測定する。予め温めたアッセイ試薬(300μL、37℃)を、透明な平底96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific;Tewksbury,MA;カタログ番号269620)中の血漿5μLに添加する。このプレートを30秒にわたりプレートシェーカー上で混合し、次いで、5分にわたり37℃でインキュベーター中に静置する。20秒間の混合の後、SPECTRAmax PLUSプレートリーダーにより500nmで吸光度を測定する。既知のTG標準(Pointe Scientific;カタログ番号T7531-STD)量を使用して作成した検量線と比較することにより、TG濃度を算出する。
【0444】
血漿コレステロール濃度の測定:
血漿総コレステロール(TC)を、Cholesterol(Liquid)Reagent Set(Pointe Scientific;カタログ番号C7510-500)を使用して定量する。予め温めたアッセイ試薬(200μL、37℃)を、透明な平底96ウェルアッセイプレート(Thermo Fisher Scientific;カタログ番号269620)中の血漿10μLに添加する。このプレートを30秒にわたりプレートシェーカー上で混合し、次いで、5分にわたり37℃でインキュベートする。20秒間の混合の後、SPECTRAmax PLUSプレートリーダー中で500nmにて吸光度を測定する。既知のコレステロール標準(Stanbio Laboratory;Boerne,TX;カタログ番号1012-030)量を使用して作成した検量線と比較することにより、コレステロール濃度を算出する。
【0445】
血漿高密度リポタンパク質コレステロール濃度の測定
高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度を決定するために、血漿サンプル50μLを、0.5mLのマイクロ遠心チューブ中のCholesterol Precipitating Reagent(Wako Chemicals;Richmond,VA;カタログ番号431-52501)50μLと組み合わせ、短時間にわたりボルテックスする。このチューブを10分にわたり室温で静置し、次いで、4℃で10分にわたり2000×gで遠心分離する。遠心分離の後、上清(元々の血漿サンプルのHDLコレステロール部分を含む)の約半分を取り出し、10μLを、上記で説明したコレステロールアッセイに使用する。
【0446】
血漿β-ヒドロキシ酪酸濃度の測定
血漿β-ヒドロキシ酪酸(β-HB)濃度を、β-Hydroxybutyrate LiquiColor Testキット(Stanbio Laboratory;カタログ番号2440-058)を使用して測定する。アッセイ試薬R1(37℃まで予め温めた215μL)を、透明な平底96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific;カタログ番号269620)中の20μLの品質対照サンプル又は血漿サンプルに添加する。このプレートを30秒にわたりプレートシェーカー上で混合し、次いで、5分にわたり37℃でインキュベーター中に静置する。予め読み取る吸光度を、SPECTRAmax PLUSプレートリーダー中で505nmにて測定する。各ウェルにアッセイ試薬R2(37℃まで予め温めた35μL)を添加し、このプレートを、30秒にわたりプレートシェーカー上で再び混合し、次いで5分にわたり37℃にてインキュベートする。20秒間の混合の後、最終的な吸光度を505nmで測定し、この吸光度から、予め読み取った値を減算した。既知のβ-HB検量用試料(Wako Diagnostics;Richmond,VA;カタログ番号412-73791)量を使用して作成した検量線と比較することにより、β-HB濃度を算出する。
【0447】
統計解析
GraphPad Prism(Version 6.05;GraphPad Software;La Jolla,CA)を使用して統計解析を実施する。各動物に関する食物摂取量データを、ベースライン(-6日目~0日目の平均として算出する)の割合として正規化し、次いで群平均±平均の標準誤差(SEM)を算出し、Dunnの多重比較事後検定を伴うノンパラメトリックFriedmanの検定により各日を0日目と比較する。体重を、ベースライン(-7日目、-5日目、-3日目、及び0日目の平均として算出する)の割合として算出した群平均±平均の標準誤差(SEM)として表す。生の体重データ及び血漿バイオマーカーデータも、Dunnの多重比較事後検定を伴うノンパラメトリックFriedmanの検定により解析する。P<0.05を有意と考える。
【0448】
実施例6:肥満カニクイザルにおける研究
雄の血糖正常の肥満カニクイザルにおけるNOV005の効果を評価するために、2回の皮下の1mg/kgの用量のNOV005(n=5の動物)又はビヒクル(n=3の動物)を1週間間隔で投与した。中間研究の結果を下記にまとめる。
・ NOV005は、ベースラインと比較して約60%のピーク平均減少(
図6)及びNOV005処置マウスにおけるベースラインと比較して約10%の平均ピーク体重減少(
図6B)で、標準固形飼料の摂餌量を減少させた。
・ 非絶食動物からの血漿を、脂質及び炭水化物の代謝のバイオマーカーの変化を分析した。
○ 35日目のベースラインと比較して、NOV005処置マウスにおける血漿TGレベルに関して、約65%の平均減少を観察した。
○ NOV005はまた、35日目のベースラインと比較して総コレステロール及びインスリンも減少させたが、これらの変化は統計的に有意ではなかった。
○ この研究の終了時に測定される他のバイオマーカーとして、アディポネクチンプロファイル、β-ヒドロキシブチレートプロファイル、ApoCIIIプロファイル、HDL-Cプロファイル、及びリポタンパク質プロファイルが挙げられる。
【0449】
【0450】
参照による組み込み
本明細書で引用される全ての参考文献(例えば、特許、特許出願、論文、教科書、及び同類のもの)、並びにこの参考文献で引用される参考文献は、これらが既に組み込まれていない限りにおいて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、以下の態様を提供し得る。
[1]
β-クロトーに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
配列番号6、9、10、又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号19、31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
配列番号6、9、10又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号31、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、上記[1]に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[3]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
配列番号6、9、10、又は12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1);
配列番号7、11、又は13のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2);
配列番号8又は14のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3);
配列番号19、22、又は25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1);
配列番号20又は23のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2);
及び
配列番号21又は24のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)
を含む、上記[1]に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[4]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3;
又は
(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、上記[1]に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[5]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3;
又は
(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、上記[1]に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[6]
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、
(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19若しくは31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号7のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号19若しくは31のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3;
(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号11のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3;
又は
(iv)配列番号12のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号13のアミノ鎖配列を含むHCDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、上記[1]に記載の単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[7]
前記抗体又はフラグメントは、(i)配列番号15のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);及び(ii)配列番号26若しくは32のアミノ酸配列又はその少なくとも90%若しくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[8]
前記抗体又はフラグメントは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHを含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[9]
前記抗体又はフラグメントは、配列番号26又は32のアミノ酸配列を含むVLを含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[10]
前記抗体又はフラグメントは、(i)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号26のアミノ酸配列を含むVL、又は(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号32のアミノ酸配列を含むVLを含む、上記[8]に記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[11]
前記抗体は、(i)配列番号17のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖、又は(ii)配列番号17のアミノ酸を含む重鎖、及び配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[12]
β-クロトーに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントは、上記[1]~[11]のいずれかに記載の単離抗体又はフラグメントと同一のエピトープに結合し、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR、並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[13]
β-クロトーに結合する単離抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はフラグメントは、上記[1]~[11]のいずれかに記載の単離抗体又はフラグメントと、β-クロトーへの結合に関して競合し、前記抗体又は抗原結合フラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR、並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、単離抗体又はその抗原結合フラグメント。
[14]
前記抗体又はフラグメントは、(i)表2に記載された抗体NOV004の組合せCDR若しくはKabat CDR、並びに/又は(ii)配列番号43若しくは55のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号47若しくは57のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含まない、上記[1]~[11]のいずれかに記載の単離抗体又は抗原結合フラグメント。
[15]
上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
[16]
代謝障害を処置する方法であって、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、代謝障害を患う対象に投与することを含む方法。
[17]
前記対象は、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、及びメタボリックシンドロームのうちの1つ又は複数を患う、上記[16]に記載の方法。
[18]
前記対象は、肥満、糖尿病、高トリグリセリド血症、及び脂質異常症のうちの1つ又は複数を患う、上記[16]に記載の方法。
[19]
心血管障害を処置する方法であって、上記[1]~[18]のいずれかに記載の抗体又はフラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、心血管障害を患う対象に投与することを含む方法。
[20]
前記対象は、粥状動脈硬化、末梢動脈疾患、脳卒中、心不全、及び冠動脈心疾患のうちの1つ又は複数を患う、上記[19]に記載の方法。
[21]
医薬としての使用のための、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[22]
体重を減少させる方法であって、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
[23]
食欲又は食物摂取量を減少させる方法であって、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
[24]
対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を低下させる方法であって、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の有効な量を、必要とする対象に投与することを含む方法。
[25]
前記対象は代謝障害を患う、上記[22]、[23]、又は[24]に記載の方法。
[26]
前記対象は、肥満、1型糖尿病及び2型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、及びメタボリックシンドロームのうちの1つ又は複数を患う、上記[25]に記載の方法。
[27]
上記[1]~[26]のいずれかに記載の抗体のうちの1つ若しくは複数、又は前記抗体のいずれか1つのVL及び/若しくはVHをコードする核酸。
[28]
表1に記載された配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む核酸。
[29]
表1に記載された配列に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を含む核酸。
[30]
表1に記載された配列を含む核酸。
[31]
上記[27]、[28]、[29]、又は[30]に記載の核酸を含むベクター。
[32]
上記[31]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[33]
代謝障害の処置での使用のための、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
[34]
β-クロトーに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを製造する方法であって、前記抗体又はそのフラグメントの発現に適した条件下で、上記[32]に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
[35]
前記代謝障害は、肥満、糖尿病、高トリグリセリド血症、及び脂質異常症である、上記[33]に記載の医薬組成物。
[36]
心血管障害の処置での使用のための、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
[37]
体重を減少させる方法での使用のための、食欲又は食物摂取量を減少させる方法での使用のための、対象の血漿トリグリセリド(TG)濃度又は血漿総コレステロール(TC)濃度を低下させる方法での使用のための、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
[38]
対象の、代謝障害を処置するための医薬の調製での、心血管障害を処置するための医薬の調製での、体重を減少させるための医薬の調製での、食欲又は食物摂取量を減少させるための医薬の調製での、血漿TG濃度又は血漿TC濃度を低下させるための医薬の調製での、上記[1]~[14]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【配列表】