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特許6991252誤使用を検出し及び傷害を防止するための散乱X線検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】誤使用を検出し及び傷害を防止するための散乱X線検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20220104BHJP
   A61B 6/06 20060101ALI20220104BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220104BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20220104BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61B6/10 302
A61B6/06 331
A61B6/00 300S
G01T1/00 D
G01T7/00 A
G01T7/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019571694
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067053
(87)【国際公開番号】W WO2019002257
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】17178015.8
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバルティ ビスワループ
(72)【発明者】
【氏名】ラゴタム ヴェンカット プラサド
(72)【発明者】
【氏名】バト ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】フォークトマイヤー ゲレオン
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136021(JP,A)
【文献】特開2012-146081(JP,A)
【文献】特開2002-219118(JP,A)
【文献】特開2006-325909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0079232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査室内でのX線撮像を支援する装置であって、
第1の物体を撮像するためのX線イメージャの動作の間において、一次X線撮像ビームのボリューム外に配置される少なくとも1つのX線センサにより取得されるX線散乱の測定値を受信するための入力インターフェースと、
前記測定値に基づいて、
i)第1の物体以外の第2の物体であって、前記検査室内に撮像されるべきでない人である前記第2の物体が存在する;又は
ii)前記第1の物体の十分なX線露出が存在する;
予測する予測器要素と、
前記予測の結果を示す予測器信号を出力するための出力インターフェースと、
を有する、装置。
【請求項2】
前記予測器信号に応答して、i)聴覚的及びii)光学的の何れか一方又は組合せである、警報信号を発するトランスジューサを更に有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
表示ユニット上に前記予測器信号に関するメッセージを表示するレンダラを有する、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
通信ネットワークを介して前記予測器信号に関するメッセージを受信側に伝送する通信要素を有する、請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記予測器信号に基づいて、少なくとも前記第1の物体において受入されるX線の線量に影響を与える動作を生じさせる安全実行部を有する、請求項1から4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記X線イメージャが前記第1の物体を撮像するためのX線検出器を有し、前記少なくとも1つのセンサが前記X線検出器とは異なる、請求項1から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記X線イメージャがX線検出器を有し、前記少なくとも1つのセンサが該X線検出器の一部である、請求項1から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記予測器要素の動作がX線散乱の測定値の1以上のサンプルにより訓練される機械学習アルゴリズムに基づくものである、請求項1から7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記予測器要素が前記測定値を1以上の予め定められたX線散乱閾値と比較する、請求項1から8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の装置;
前記X線イメージャ;及び
前記少なくとも1つのX線センサ;
を有する、撮像システム。
【請求項11】
前記X線イメージャが部屋内に位置し、前記少なくとも1つのX線センサが該部屋の壁、床又は天井に配置される、請求項10に記載の撮像システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのX線センサが前記X線イメージャ上に配置される、請求項10に記載の撮像システム。
【請求項13】
検査室内でのX線撮像を支援する方法であって、
撮像のために第1の物体をX線に暴露するためのX線イメージャのX線源の動作の間において、一次X線撮像ビームのボリューム外に配置される少なくとも1つのX線センサにより取得されるX線散乱の測定値を受信するステップと、
前記測定値に基づいて、
i)第1の物体以外の第2の物体であって、前記検査室内に撮像されるべきでない人である前記第2の物体が存在する;又は
ii)前記第1の物体の十分なX線露出が存在する;
予測するステップと、
前記予測の結果を示す予測器信号を出力するステップと、
を有する、方法。
【請求項14】
少なくとも1つの処理ユニットにより実行された場合に請求項13に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶した、コンピュータ読取可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮像を支援する装置、撮像システム、格子構造、X線撮像を支援する方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
DXR(診断X線)システムによれば、特に、高スループット施設及び資格の劣る要員により管理される施設においては、当該システムが危険な近傍内に許可されない者が居る状態で動作された場合、患者以外の人がX線照射に暴露され得るような危険な状況が生じ得る。このような状況は、ユーザの認識不足から、混雑した病院におけるストレスの多い状況から又は許可されない/無配慮な使用により生じ得る。これらの施設では、X線システムの他の誤った使用も観察され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、X線撮像システムの使用安全性を改善する解決策に対する必要性が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記目的は独立請求項の主題により解決され、更なる実施態様は従属請求項に含まれる。本発明の以下に記載される態様は、撮像処理システム、格子構造、X線撮像を支援する方法、並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ読取可能な媒体にも等しく当てはまることに注意すべきである。
【0005】
本発明の第1態様によれば、X線撮像を支援する装置が提供され、該装置は、
第1の物体を撮像するためのX線イメージャの動作の間において少なくとも1つのX線センサにより取得されるX線散乱の測定値を受信するための入力インターフェースと、
前記測定値に基づいて、
i)前記少なくとも1つのX線センサから離れて位置する撮像されない第2の物体が存在するか否か;又は
ii)前記第1の物体の十分なX線露出(暴露)が存在するか否か;
を予測するように構成された予測器要素と、
前記予測の結果を示す予測器信号を出力するための出力インターフェースと、
を有する。
【0006】
提案された該装置は、散乱放射線における情報をX線撮像の運転上の安全性を増加させるために使用する。散乱されたX線(通常は、妨害と考えられる)は、該提案されたシステムにより安全性を向上させるために利用される。間違った使用の危険性が低減され、資格の劣った要員でさえX線撮像を実行することが許され得る。全ての多忙な医療施設において大抵は長時間働くことを必要とされる熟練の要員でさえ、該提案された安全性フィーチャの利益を受けることができる。フィーチャi)の実施態様において、散乱の測定値は前記予測器要素により処理されて、第2の物体が前記センサの1以上に接近する際に前記予測器信号を導出する。
【0007】
一実施態様によれば、当該装置は、前記予測器信号に応答して、i)聴覚的及びii)光学的の何れ一方又は組合せである、警報信号を発するように構成されたトランスジューサを更に有する。この実施態様は、ユーザ及び他の者に、当該X線イメージャが誤って使用されていることを即座に警告することを可能にする。
【0008】
一実施態様によれば、当該装置は、表示ユニット上に前記予測器信号に関するメッセージを表示することを実行するように構成されたレンダラを有する。
【0009】
一実施態様によれば、当該装置は、通信ネットワークを介して前記予測器信号に関するメッセージを、経験のある要員のモバイル装置、遠隔コンピュータ等の受信側に伝送するように構成された通信要素を有する。
【0010】
両実施態様におけるメッセージは、当該イメージャのログファイル、撮像プロトコルの詳細及び他の文書を含むことができる。上記表示ユニット上に表示されるメッセージは、当該誤った使用の性質に関する情報及び/又は安全な状態に戻すために実施されるべきことに関する案内情報を含むことができる。
【0011】
一実施態様によれば、当該装置は、前記予測器信号に基づいて、少なくとも前記第1の物体において受入されるX線の量に影響を与える動作を生じさせるように構成された安全実行部を有する。ここで想定される動作は、当該イメージャを遮断し若しくは少なくとも該イメージャのX線源を不能にすること、一次ビームを意図される関心領域までコリメートすること、及び/又は放射線の強度を撮像プロトコルにより依然として許される量まで減少させることを含む。
【0012】
一実施態様によれば、当該X線撮像装置(X線イメージャ)は前記第1の物体を撮像するためのX線検出器を有し、前記少なくとも1つのセンサは前記X線検出器とは異なる。この構成は、散乱放射線の強度変化を高信頼度で捕捉するために前記センサ(各々が好ましくは前記検出器より小さな視野を有する)を多数の空間的配置で設けることを可能にする。
【0013】
代わりに一実施態様によれば、前記少なくとも1つのセンサは前記X線検出器の一部である。更に詳細には、前記1以上のセンサは前記X線検出器の1以上のピクセルを有する。この実施態様は、後に更に詳細に説明されるように、格子(グレーティング)構造体により実現することができる。この実施態様は、前記センサの取り付けが不要となり得るので、部品数の低減及び容易な配備を可能にする。
【0014】
一実施態様によれば、前記予測器要素の動作は、X線散乱の測定値の1以上のサンプルにより訓練される機械学習アルゴリズムに基づくものである。当該予測の信頼性及びロバストさを向上させるために、ニューラルネットワーク又は他の機械学習技術を用いることができる。
【0015】
他の例として、前記予測器要素は、前記1以上の測定値を1以上の予め定められたX線散乱閾値と比較するように構成される。複数のセンサが使用される場合、閾値の集合が、予測される散乱プロファイルの空間分布、即ち、許可された線量に対する局部的に定められた最大値を伴う位置依存的強度マップ、を形成する。
【0016】
何れの実施態様においても、前記サンプルを取得するために試験/較正物体(“(撮像)ファントム”)を用いることができる。
【0017】
本発明の第2態様によれば、撮像システムが提供され、該システムは、上述した実施態様の何れか1つの装置、前記X線イメージャ及び前記少なくとも1つのX線センサを有する。
【0018】
前述したように、散乱測定のための前記少なくとも1つのX線センサは、前記第2の物体から遠くに又は離れて配置され、特に、該第2の物体には装着されない。即ち、一実施態様によれば、当該X線イメージャは部屋内に、前記少なくとも1つのセンサが該部屋の壁又は床上に配置されて位置する。加えて又は代わりに、該少なくとも1つのセンサは、X線管ハウジング、ガントリ、検査テーブル上等の当該X線イメージャ上に、又は他の家具若しくは設備上に配置される。
【0019】
本発明の第3態様によれば、X線検出器に取り付け可能なX線撮像のための格子構造体が提供され、この格子構造体は、該構造体の外部の第1位置に焦点を合わされた第1の複数の壁部及び当該構造体の外部であって前記第1位置とは異なる第2位置に焦点を合わされた第2の複数の壁部を有する。
【0020】
この格子エレメントは、前述したセンサとして、当該イメージャ自体の検出器ピクセルの部分組を使用することを可能にする。前記第1位置は、好ましくは、前記X線源の焦点の位置である一方、前記第2位置(好ましくは、2以上存在する)は散乱放射線検出に適した空間内の何れかの他の位置である。
【0021】
本発明の第4態様によれば、撮像システムが提供され、該撮像システムは、
前述した実施態様の何れか1つの装置と;
前記格子構造体がX線検出器に取り付けられた前記X線イメージャと;
を有し、前記少なくとも1つのX線センサが前記X線検出器の1以上のピクセルから形成される。
【0022】
本発明の第5態様によれば、X線撮像を支援する方法が提供され、該方法は、
撮像のために第1の物体をX線に暴露するためのX線イメージャのX線源の動作の間において少なくとも1つのX線センサにより取得されるX線散乱の測定値を受信するステップと;
前記測定値に基づいて、
i)前記少なくとも1つのX線センサから離れて位置する撮像されない第2の物体が存在するか否か;又は
ii)前記第1の物体の十分なX線露出が存在するか否か;
を予測するステップと;
前記予測の結果を示す予測器信号を出力するステップと;
を有する。
【0023】
一実施態様によれば、当該方法は、前記予測器信号に応答して、i)聴覚的及びii)光学的の何れか一方又は組合せである、トランスジューサによる警報信号を発するステップを更に有する。
【0024】
一実施態様によれば、当該方法は、表示ユニット上に前記予測器信号に関するメッセージを表示するステップを更に有する。
【0025】
一実施態様によれば、当該方法は、通信ネットワークを介して前記予測器信号に関するメッセージを受信側に伝送するステップを更に有する。
【0026】
一実施態様によれば、当該方法は、前記予測器信号に基づいて、少なくとも前記第1の物体において受入されるX線の量に影響を与える動作を生じさせるステップを更に有する。前記動作は、前記イメージャ(特に、該イメージャのX線源)を遮断又はロックすること、再コリメートすること、前記イメージャのX線源の電圧を低減することの何れか1つ又は組み合わせを含むことができる。他の又は追加の動作は、X線源の電流量を変更すること、及び/又は露出時間及び/又はモード(例えば、パルス状又は連続的)を変更することを含むことができる。前記動作は、安全性が回復されるまで、次から次へと予め定められた順序で又は“縦続”的に実行することができる。特に、全ての動作を順番に実行することは必要でないであろう。
【0027】
本発明の第6態様によれば、コンピュータプログラム要素が提供され、該コンピュータプログラム要素は、少なくとも1つの処理ユニットにより実行された場合に前記方法を実行するように構成される。
【0028】
本発明の第7態様によれば、前記コンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ読取可能な媒体が提供される。
【0029】
“X線露出(暴露)”とは、X線が患者に当たることが許可される態様に関するものである。該露出(暴露)は、患者により受けられる又は受けることが可能な線量に関係するもので、特に、X線源設定値(電圧、電流量及び/又は時間)の関数である。
【0030】
“露出の十分さ”は、承認された画像品質及び患者の身体質量(体重)の関数である。画像品質(例えば、コントラスト)、従って露出の十分さは、SNR(信号対雑音比)及びその他のものを含む複数の異なる尺度により定量化することができる。線量は、(予め設定された)画像品質を依然として達成する限り低くなければならない。
【0031】
ここで使用される“撮像”は、特に、診断又は他の医療的目的で患者の少なくとも一部の画像を取得するために、該患者の少なくとも一部を当該イメージャのX線源からのX線により暴露させることを含む。このタイプの撮像又はX線暴露は、ここでは、“実際の撮像”とも称される。しかしながら、ここで使用される“撮像”なる用語は、時には“偵察撮像”と称される“準備的撮像”も含むことができ、その場合、X線暴露は、例えば患者の適切な位置決めをチェックするために、実際の撮像に対するよりも低い電圧設定値、少ない電流量及び/又は短い露出時間で実行される。偵察撮像の後、一層大きなチューブ電圧、電流量又は露出時間での実際の撮像が開始する。
【0032】
“第1/第2の物体”とは、ここでは医療的用途が主に想定されるので、特に動物若しくは人の患者、居合わせる人、又は全般的な人を指す。しかしながら、例えばX線への暴露により破壊され得るような無生物物体が関わる場合、ここでは無生物物体に関係する他の撮像アプリケーション自体が除外されるものではない。特に、ここで主に想定される医療的前後関係において、第1の物体は撮像されるべき患者であり、第2の物体は更なる(他の)人である。
【0033】
“放射線”又は“散乱”は、ここでは、X線放射線及び散乱されたX線放射線を各々参照するものと解釈されるべきである。
【0034】
“X線”は“X線放射線”の短縮形である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、撮像システムの概略ブロック図を示す。
図2図2は、図1の撮像システムにおいて使用されるモジュールの一層詳細なブロック図を示す。
図3図3は、X線検出器のための格子構造の異なるビュー及び実施態様を示す。
図4図4は、X線撮像を支援する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、例示的実施態様を、添付図面を参照して説明する。
【0037】
図1を参照すると、撮像装置IAが示されている。該装置は、X線撮像装置XI(ここでは、“X線イメージャ”とも称する)及び以下に詳細に説明される態様で該X線イメージャの安全運転を支援する安全モジュールM(ここでは、“モジュール”とも称する)を有するシステムXSYSを含む。
【0038】
ここで主に想定されるX線イメージャXIは、移動型又は可搬型のものである。移動型X線イメージャXIの斯様な一例が、図1の右下部に概略的に示されている。
【0039】
X線イメージャXIは、検査室RM等の或る場所から、特に他の検査室等の他の場所へ移動することができるという意味で移動型又は可搬型である。このことは、専用の検査室を有することが実際的でない施設において特に有効である。当該撮像は、有利にも、所与の時点でたまたま空室である何れかの部屋において実行することができる。好ましくは、当該移動型イメージャXIを他の使用位置へ移動させる場合に分解することを必要としないものとする。ここで一実施態様において想定される移動型X線イメージャIAは、ローラRを備えた台車D又は下部車台を含む。該可動下部車台上に直立されるものは、X線源XSを保持するガントリGである。
【0040】
当該X線イメージャは、好ましくはデジタル型の、特にはフラットパネル技術のX線感知性検出器XDを更に含む。前記X線管XSは、好ましくは、該X線管XSをX線検出器XDと整列させることができるようにガントリG上に移動可能に配置される。他の例として、該X線源XSは固定される一方、検出器XDは該X線源XSと整列させるために固定部上を移動可能とする。
【0041】
図1に示される移動型実施態様において、X線検出器XDと当該X線撮像装置の残部との間には何の物理的又は構造的接続は存在しない。特に、X線検出器XDは前記ガントリのアーム上には取り付けられない。もっとも、このような構成は他の代替的実施態様では依然としてそうであり得る。図1に示されたものよりも一層小型で可搬型の解決策も、例えば救急車内での使用のための代替実施態様において考えられる。これらの可搬型実施態様において、X線イメージャXIは、必ずしもローラRを含む必要は無く、当該救急車から事故現場に搬送される(恐らくは、適切な運搬ケース内で)程十分に小型且つ軽量とする。当該イメージャXIのX線源XS及び/又は検出器XDは、当該車両内に(例えば、該車両の車室壁上に)配置される適切な固定具に釈放可能に取り付けることができる。ここで想定される“車両”は、陸上車両(自動車、バン等)のみならず、航空機(ヘリコプタ、飛行機)又は船舶も含む。ここでは移動型又は可搬型撮像システムが主に想定されるが、このことは、C若しくはUアーム型X線イメージャ又はCTスキャナ等の他の伝統的な固定型設備を除外するものではない。X線イメージャXIは外部電源により電源出力に接続された電源コードを介して給電することができ、又は該イメージャXIは電池等の自立型搭載エネルギ源を有することができる。
【0042】
X線イメージャXIは、更に、ユーザが種々の撮像設定値又はパラメータを設定し及び撮像のためのX線暴露を開始する等の種々の制御機能を実行することを可能にするオペレータコンソールOCを含む。該オペレータコンソールOCは、オンボード計算ユニットPUの機能として実施化される。該計算ユニットPUが当該イメージャXIに通信的に結合された遠隔サーバシステムに外部委託されるような他の実施態様も考えられる。
【0043】
上記の設定可能な撮像設定値は、特に、前記X線源が撮像セッションの間に動作されるべき電圧を含むX線源(“チューブ”)設定値を含む。他のX線源設定値は、斯様にして生成されるkeVで指定可能なX線放射のエネルギ、露出の持続時間及び/又は該露出の頻度、並びにチューブ電流量を含む。他の撮像設定値は撮像幾何学情報を含む。該撮像幾何学情報は、線源及び検出器に対する患者PATの相対幾何学的構成に関するものである。該撮像幾何学情報は、“SID”距離(線源XSと検出器XDとの間の距離)も含む。当該撮像設定値は、オペレータコンソールOCの適切なユーザインターフェースUI(テキスト的又はグラフィック的)により設定することができる。
【0044】
ユーザは、更に、前記ユーザインターフェースUI又は別のユーザインターフェースにより、特に、撮像されるべき患者の特定の身元を確定することを可能にする性別、身長、体重、年齢、患者ID(識別情報(例えば、患者番号))等の患者の特徴を入力することができる。
【0045】
ユーザは、患者の特徴に合致する適切な且つ殆どの場合では必須の撮像設定値を規定する撮像プロトコルを選択することにより当該撮像設定値の幾つか又は全てを選択することができる。
【0046】
言い換えると、撮像プロトコルによる撮像設定値は、一般的に、i)患者の特徴及びii)患者PATに対して実行されるべき撮像タスクの関数である。上記撮像タスクは、当該撮像の目的、特に撮像されるべき臓器及び身体部分を定める。撮像プロトコルは、特定の画像品質を保証すると共に、患者の線量/暴露が可能な限り低いことを保証するよう設計される。図1の例示的実施態様は、肺又は胸部撮像手順のための設定を示す。この特定の例において患者PATは起立していることを必要とされる一方、他の撮像状況において患者PATはX線源XSと検出器XDとの間に配置される検査台上に横たわる。
【0047】
上記患者特徴及び/又は撮像設定値の幾つか若しくは全てを手動で調整する代わりに、又は上述したようにUIを介してユーザにより撮像プロトコルを手動で選択する代わりに、患者特徴、撮像設定値及び/又は撮像プロトコルは、例えば、前記計算ユニットPUを介してデータソース(例えば、電子健康記録)からネットワーク(図示略)を経て患者データを取り込み、次いで同データを医療知識データベースDBと照合して適切な撮像設定値/撮像プロトコルを見付けることにより、自動的に調整又は選択することもできる。当該撮像プロトコルは、好ましくは、XML、DICOM又はその他等のマシン読取可能なフォーマットで指定されるものとする。
【0048】
X線源XSは、一般的に、真空引きされたチューブを含む。該チューブ内には、アノード及びカソードが配置される。カソードは、通常、回転するディスクである。アノードとカソードとの間に電力が印加されると、カソードから電子が放出され、カソードからアノードに向かって加速される。カソードディスク上の焦点に電子ビームが衝突すると、X線が発生され、該X線は出射窓を介し患者PAT及びX線検出器XDに向かって当該X線源のX線ハウジングを出射する。言い換えると、患者PAT又は身体若しくは関心臓器はX線源XS(特に、その焦点)と検出器XDとの間の空間内に配置される。更に詳細には、カソードから放出された電子ビームは回転するアノードディスクに焦点で衝突し、該焦点からX線は患者PATに向かって放出される。
【0049】
このようにして発生されたX線はX線ハウジングを一次ビームXBの形で出射し、該一次ビームはコリメータCOLにより適切にコリメート(平行化)することができる。コリメートされたX線ビームは、通常、使用される撮像技術に依存して、円錐状、角錐状又は扇状のものである。上記コリメータは一次X線ビームの幅を調整することを可能にする。特に、コリメータはビームXBの断面積を減少させることができる。コリメータの設定値は、オペレータコンソールOCを介してユーザにより調整可能であり、及び/又は前記撮像プロトコルに規定される更なる撮像設定値を形成することができる。
【0050】
一次X線ビームXBは光子の流れから形成され、該一次X線ビームにより満たされる体積は光子が理想的に進行することができる全軌道に対応する。当該ビーム内に患者PATが居ない場合、これらの軌道は前記焦点から検出器XDの異なるピクセル位置へ延びる真っ直ぐな幾何学的ラインとなる。しかしながら、患者PATがX線源XSと検出器XDとの間に居る場合、光子は組織を介して進行する。この場合、斯かる光子は、一般的に異なるタイプ及び密度の患者組織(骨、脂肪、筋肉等)と作用し合う。この相互作用は特に減衰を含む。言い換えると、患者から遠い側において検出器XDの放射線感知性ピクセルPXにより記録される光子の強度は、該光子が当該組織に衝突する前に有した強度と比較して減少される。当該検出器において検出される強度変化は、少なくとも部分的に、構造的特徴、特に当該組織の密度と相関する。言い換えると、構造的密度変化が強度変化に変調され、これが画像コントラストを付与する。検出された強度変化は、次いで、当該患者の内部身体構造のデジタル画像を形成するために使用することができる。特に、患者を経て進行した後に検出器表面に衝突する光子は、これら光子の強度に従い、各ピクセルにおいて電気信号を生じる。これらの電気信号(“生データ”)は、次いで、適切なAD変換ユニットによりデジタル画像信号へと一緒に処理される。これらデジタル画像信号は有線又は無線接続通信ネットワークを介して前記処理ユニットPUに送信され、該処理ユニットにおいては撮像処理ソフトウェアが実行されて、画像が生成される。これら画像は、次いで、表示ユニットDU上に表示することができる。該表示ユニットDUは好ましくは当該X線イメージャXIの一部とするが、このことは全ての実施態様において必ずしも必要なものではない。当該画像の表示はリアルタイムで実行することができる。当該画像を表示することに代えて又は加えて、これら画像は更なる処理又は後の検討のために、有線又は無線通信ネットワークを介して記憶部に伝送することができる。
【0051】
X線放射の強度減衰の物理的過程に戻ると、この物理的効果は2重的である。第1に、当該強度減衰は光子が組織において少なくとも部分的に吸収される結果である。しかしながら、減衰が存在する他の理由は、光子の幾らかが散乱されることである。散乱されたX線が図1では破線矢印により示されている。介在する物体/組織により妨害されない場合、光子は当該焦点から患者を経て特定の目標ピクセル上までの直線である理想的な軌道に沿って進行するであろう。しかしながら、特に患者PATが該光子の軌道に位置する場合、幾つかの光子は患者組織との相互作用の後に散乱される。言い換えると、光子は理想的な直線軌道から、一次ビームXBの主方向を横切るものを含む複数の異なる方向の他の軌道へと変わる。患者組織PATにより吸収される代わりに又は検出器ピクセル上に衝突する代わりに、該散乱された光子は検査室RM内の他の物体と、特に患者PATのX線暴露の間に該部屋内にたまたま居る1以上の人Pと作用し合う。
【0052】
X線放射はX線撮像のために有用であるのと共に、悪い副作用も有し、重大な健康上の危険性を生じ得る。X線放射に対する人又は動物の不必要な暴露(特に、散乱X線放射による)は、防止されるべきである。ここでは、システムXSYSを設けることにより、X線イメージャXIの安全な運転を助けることが提案される。該システムは、散乱放射線を処理して、一実施態様では、撮像の間に検査室内に他の人Pが居るか否かを確定するデータ処理安全モジュールM(ここでは“モジュール”と称する)を含む。
【0053】
モジュールMの動作原理は、検査室内に(X線源XSに対し十分に近くに)少なくとも一人の更なる人Pが居る場合、この更なる(撮像されない)人P自体が、患者PATから散乱された放射線が該更なる人Pと作用し合う場合に散乱放射線を生じるであろう。この付加的な散乱は図1では点線矢印により示されている。提案される安全支援システムXSYSは、当該検査室内に患者PAT以外の更なる人Pが居ない場合に予測されるべき通常の散乱(破線参照)を超える該付加的散乱を検出することを可能にするような1以上のセンサXSiを含む。
【0054】
この散乱による人の存在検出に加えて又は代えて、該安全モジュールMは患者PATが実際に正しい線量のX線暴露を受けたかを予測するよう動作することもできる。“正しい線量”とは、特に、了承された画像品質を提供しながら当該患者に対する低い(可能な限り最低の)線量を保証するようなX線源設定値を意味する。この場合においても、この目的のために前記散乱放射線に含まれる情報が用いられる。更に詳細には、既知の質量(体重)を持つ患者PATは既知の量の散乱を生じるであろう(破線で示された)。十分な散乱が発生されない場合、このことは、当該チューブが現在動作されている電圧若しくはエネルギkeVが十分でないか、又は当該患者の露出時間が十分に長くなかったことを示し得る。
【0055】
当該安全モジュールM及び支援センサXSiに関する種々の実施態様が考えられる。斯様な一実施態様が図1に示され、該実施態様においては、6個の専用のX線感知性センサXS1~XS6が検査室RM内に適切に分散されている。この又は同様の構成において、当該センサの幾つかXS1~XS3は床上に配置されるか若しくは検査室RMの床に組み込まれ、及び/又は1以上の他のセンサXS4~XS6は検査室RMの天井CLに組み込まれ若しくは取り付けられる。
【0056】
特に、1以上のセンサXSiは一次X線ビームXBのボリューム外に配置される。例えば、壁W、天井CL若しくは床FLに取り付けられるセンサ配置に代えて又は加えて、センサXSiの1以上をガントリG上に、例えばX線ハウジングの出射窓の外側のX線ハウジングXS上又は当該イメージャXI自体の何れかの他の部分上に配置することもできる。図1は6個の斯様なセンサを示しているが、これは例示的な実施態様であり、原理的に一層少ない又は一層多いセンサ[ここでは、“XSi”(整数i≧1のインデックスiによる)のようにインデックス表記で集合的に示される]を用いることができる。幾つかの用途では、単一の斯様なセンサXS1で十分であり得る。しかしながら、複数の斯様なセンサXSiを、散乱X線を一層良好に捕捉するように当該ビームXBのボリューム外ではあるがX線源XSの周囲に対称な態様で配置することが有利であろう。
【0057】
散乱センサXSiの基となる技術は、一次X線検出器XDのものと同一であり得る。言い換えると、全ての既存の直接及び間接変換技術を用いることができる。しかしながら、ここでは、これらセンサが撮像検出器XDよりも安価であると共に大幅に小さな視野を有することが想定される。即ち、これらセンサの各々又は幾つかは、単一ピクセル検出器として構成することができる。このような構成で、散乱信号を捕捉するのに十分であり得るからである。例えば2~3センチメートル直径等のおおよそコイン又は同様のもの等のセンサXSiの寸法で、数ピクセルのグループ(例えば、5x5ピクセル又は10x10ピクセル等)の視野も考えられる。これらのセンサの視野は、長方形(例えば、正方形)又は円形等の如何なる好適な形状のものとすることもできる。
【0058】
センサXSiをX線検出器XDから物理的に離れ且つ別個となるように分散された態様で(図1に示されるように)配置することは好ましい実施態様であるが、散乱放射の測定のために使用されるものが検出器XD自体であるような代替実施態様も考えられる(この代替実施態様は後に図3において更に詳細に説明される)。
【0059】
ここで最初に安全モジュールMの動作を更に詳細に参照すると、これが図2にブロック図として示されている。当該モジュールMは入力ポートIN及び出力ポートOUTを有している。該モジュールは予測器要素PCを含む。散乱された放射は、1以上のセンサSXiにおいて、又は他の実施態様では検出器XD自体により測定される。これら測定値は入力ポートINにおいて受信される。これら測定信号は、次いで、上記予測器要素により処理されて、撮像の間に当該検査室内に(少なくとも1人の)更なる人Pが居るか否か、又は患者PATが十分なX線暴露を受けたかを示す信号(“予測器情報信号”)を出力ポートOUTに生成する。更に詳細には、一実施態様によれば、予測器PCは、使用されるX線管の設定が当該患者の所与の体質量(体重)及び所与の画像品質にとり最適であるかを予測するように構成することができる。体重は考慮されるべき主たる要素の1つであるが、質量分布も考慮のための要素であり得ることに注意すべきである。例えば、高体重の患者でも特定の関心領域では正常な割合を有している場合があり得、その場合、斯かる関心領域を撮像する場合には必ずしも高チューブ電圧を用いる必要はない。
【0060】
この予測器情報信号は次いで異なる方法で処理することができ、ここでは、これらのやり方の全てが異なる実施態様において単独で又は組み合わせで考えられる。例えば、一実施態様において、該信号は人Pの存在を示すためにフラッシュ又はスピーカ等のトランスジューサTRを駆動するために使用される。加えて又は代わりに、該トランスジューサは、当該患者の特徴(特に、体重)及び撮像プロトコルにより必要とされる所要のX線暴露を受けていないことを示すことができる。加えて又は代わりに、当該予測信号は、レンダラGIに表示ユニットDU上に代わりに使用されるべきX線エネルギkeVに関する指示情報をグラフィックに又はテキスト形態でレンダリングするよう指令するために使用することができる。言い換えると、該予測信号はユーザに正しい使用を促すために用いられる。
【0061】
一実施態様においては安全実行部SEも存在し、該安全実行部は前記予測器要素PCにより生成された情報信号を用いて当該X線イメージャの誤った使用を防止するための動作を開始する。この動作は、X線イメージャXIを遮断すること又は少なくともX線源XSをロック状態に移行させることを含むことができる。患者PATにおいて受入される放射線量に影響を与える(特には減少させる)余り干渉的でない動作も考えられる。例えば、安全実行部SEにより開始される動作は、ビーム断面積を減少させるようにコリメータCOLを動作させることを含むことができる。他の動作は、露出の間に患者PATが横たわる電動検査テーブルのアクチュエータを駆動することにより患者PATをビームXB外に移動させることを含む。一般的に、安全実行部SEは、適切な論理回路を介して、前記予測器情報信号が違反を示すかを調べるように構成され、もし違反が存在するなら、該安全実行部SEはミドルウェア要素及びインターフェースを介して適切なハードウェアコマンドを送出し、所望の動作を実行する。これらの動作は、一実施態様では、干渉度に従って縦続的態様で実行することができる。干渉度の低い動作を実行することで安全度を回復することができない場合にのみ、より高い干渉度の動作がなされる。例えば、第1段階では再コリメーションが試みられる。これが助けとならない場合、X線イメージャは遮断されるか又はロック状態に移行される。更なる人Pの存在が確認された場合、安全実行部SEにより開始される他の動作は、適用可能な撮像プロトコルで規定される範囲により画像品質が依然として許容可能であるならチューブ設定値を変更する、特にチューブ電圧(従って、keV値)及び/又は電流量を低下させることを含む。
【0062】
一実施態様において、当該システムXSYSは、適切な通信ネットワークを介してメッセージを受信器要素RCに送信するための通信要素又はインターフェースCCを含む。当該メッセージは前記予測器情報信号により通知することができる。該予測器情報信号に基づいて、上記メッセージは特に当該イメージャXIの誤った使用が生じたことの指示情報を含むことができる。特に、斯かる誤った使用は、露出の間において更なる人Pの存在が予測器要素PCにより検出されたこと、又は誤ったkeV設定による暴露が進行していることの何れかを含む。斯かる誤った使用は、経験のない又は酷使されたユーザにより発生し得る。受信器要素RCは、監視部(スーパーバイザ)主体の手持ち装置、静止型コンピュータ又はサーバ等であり得る。該スーパーバイザは熟練した健康管理専門家等の人であり得るか、又は自動化されたものであり得る。斯かるスーパーバイザが誤った使用に関して通知された場合、該スーパーバイザは適切な動作(例えば、ユーザにミーティングを要求する、又は安全実行部SEに当該X線イメージャを不能にすることを命令する)が行われることを要求することができる。他の例として、該スーパーバイザは当該使用違反が余り重大でないと判断することができる。この場合、該スーパーバイザは安全実行部SEにイメージャXIを自由にさせて、継続した使用を許可することができる。
【0063】
前記予測器要素PCの動作の更なる詳細の説明に戻ると、ここでは種々の実施態様が考察される。
【0064】
第1実施態様においては、前述したように、前記予測器要素は患者PATがX線に暴露される間において当該検査室内での更なる人Pの存在を予測するように構成される。一群の以前に取得された散乱照射線測定値(ここでは、“散乱プロファイル”サンプルとも称される)を処理するために、機械学習技術、特に教師有り学習技術を使用することができる。較正フェーズにおいては、前記センサXSiの1以上を用いて、散乱放射線プロファイルのサンプルが好ましくは一連の異なるファントムを使用して取得される。“ファントム”とは、概略でX線暴露下の人体の挙動をシミュレーションすることを可能にする水のパッケージ及び/又は他の材料を含む人工モデルである。単に便宜上、以下においては、ファントムを時には、該ファントムが何処に配置されるかに依存して、“患者ファントムPAT”又は“更なる人のファントムP”等と称する。ここでは、種々の体重範囲内の子供及び成人からなる人々を一層良好にシミュレーションするために、各々が異なる質量の一連のファントムを利用可能にすることが好ましい。1つの好適な検査範囲は、約15~20kg又はそれ以下の撮像ファントム(子供を代表する)及び80若しくは90kgまで10kgの増分で増加する追加の一層重い撮像ファントムを含む。異なる各質量を持つ該範囲のファントムは、人の患者を撮像する場合に通常経験する体重の範囲をカバーするものである。代わりに、各々が特定の質量を有するモジュール型ファントムであって、所要のファントムが複数のモジュール型ファントムを組合せファントムへと組み合わせることにより必要に応じて一層重い質量のファントムを実現することにより“構築される”ような、一群のモジュール型ファントムを用いることもできる。
【0065】
この一連のファントムは、ニューラルネットワーク又はサポートベクトルマシン(SVM)等の機械学習アルゴリズムを訓練するために使用することができる。該機械学習アルゴリズムは、ファントムからの散乱プロファイル測定に基づいて、撮像の間に検査室内に更なる人Pが居るかを区別するよう学習することにより調整される。これを行うために、当該較正手続きは2段階で進むことができる。第1段階において、基準散乱プロファイルのサンプルが、X線検出器XDとX線源との間の検査領域内に前記質量範囲からの1つのファントムを一度に1つずつ且つ入れ替えながら配置することにより取得される。この場合、X線源XSは当該ファントムを所与のチューブkeV設定及び幾何学構造における放射線に暴露するよう動作される。この暴露は散乱プロファイルを生じさせ、該散乱プロファイルは各ファントムに関し一度に1つずつ前記センサSXiにより記録される。このようにして、一群の対応する散乱の測定値が記録される。このようにして記録された散乱は、検査領域における各ファントムの暴露のみにより生じたものである。明確化のために言うと、当該較正の該フェーズにおいては、当該イメージャの周囲において検査領域内には如何なる追加のファントムも配置されない。このようにして、複数の異なる散乱放射線プロファイルが、異なる質量を持つ異なる撮像ファントムの各々に対して1つずつ、取得される。
【0066】
当該較正フェーズの第2段階においては、前記撮像ファントムが先と同様に検出器とX線源との間の検査領域に一度に1つずつ次から次へと配置されるが、今度は、検査室内に追加のファントムが配置され、この場合も、暴露が実行され、結果としての散乱プロファイルが記録される。該散乱プロファイルは、当該部屋内の上記追加のファントムの存在により増加するであろう。この場合、当該更なる人のためのファントムは、該更なる人Pのための一連のファントムにおける各ファントムに関して対応する散乱プロファイルが記録されるまで、一層重いものへと次から次に交換される。次いで、患者ファントムを前記範囲内の一層大きな質量のものと交換することにより進行し、暴露の間において異なる更なる人のファントムPの各々に関して各測定を繰り返す。
【0067】
上記2つの較正フェーズの結果として、X線暴露による散乱プロファイルの2つの群の“ラベル付けされた”サンプル、即ち、検査室内に患者に対して1つ及び更なる人に対して1つの2つのファントムが存在した1つの群、並びに患者ファントムPAT以外に更なるファントムPが存在しないような他の群、が取得される。
【0068】
一例示的実施態様において、前記サンプル測定値がネットワーク内に供給されるような入力ノードを定義することによりニューラルネットワークが構築される。この実施態様において、該ネットワークの出力層は、一方のノードが更なる人の存在を示し、他方のノードは他の人が存在しないことを示すような2つのノードだけを有することができる。この場合、1以上の隠れ層は2、3又はそれ以上のノードを有して定義することができる。このようにして定められたニューラルネットワークは、次いで、それ以外では既知の順/逆伝搬型最適化技術を用いて当該ネットワークの重みを調整して訓練を達成することにより最適化することができる。このようにして、該ニューラルネットワークは前記更なる人のファントムの存在又は不存在に関して散乱プロファイルの際立った識別特徴(署名)を学習する。重みが最適化されたなら、ノード構造をメモリに記憶することができ、当該提案された予測器要素PC内に配置された場合、以前に見られていない散乱プロファイル測定値を分類することができる。ここでも、このニューラルネットワークは例示的なものであり、ここではニューラルネットワーク以外の機械学習技術も考えられる。
【0069】
ここでは、機械学習アルゴリズムが使用されない一層簡単な実施態様も考えられる。例えば、一実施態様においては、一群の適切な散乱プロファイル強度閾値を定めるために、簡単な閾処理が用いられる。これらも、較正フェーズにおいて基準散乱プロファイルのサンプルから得られる。後に、使用の間において、センサXSiにおいて測定される散乱放射線プロファイルが、これらの予め定められた閾値と比較されて、患者PATの撮像の間に更なる人Pが存在するか否かを決定する。
【0070】
該閾処理実施態様のための較正フェーズにおいても、機械学習実施態様におけるのと同様に、異なる質量の一連の撮像ファントムを、これらの予め定められる強度プロファイル閾値を決定するために使用することができる。この閾処理実施態様のための較正手順は、機械学習実施態様に関して前述したものと同様に進行する。しかしながら、閾処理実施態様においては、各患者ファントムPATに対し、散乱プロファイル強度の各増分は、更なる人のファントムPが存在した場合に取得された各散乱プロファイルからの簡単な減算により計算される。このようにして得られる一群の散乱放射線強度増分は、複数の異なる方法で、各強度閾値へと処理することができる。斯かる一群の閾値は、患者ファントムの各質量に関連される。
【0071】
例えば、一実施態様においては、所与の患者ファントムに対する全ての強度増分に関して簡単な平均化が実行される。他の実施態様では、最大又は最小増分が各閾値として使用される。このようにして計算された閾値は、次いで、予測器要素PCによりアクセス可能なメモリに記憶される。好ましくは、当該予測器要素PCが使用される場合、撮像されるべき所与の患者の体重がユーザ入力により指定されるか又は、それ以外として、該予測器要素により電子健康記録等のデータベースから取り込まれる。患者PATの該体重情報は、関連付けられた期待される散乱閾値にアクセスするために使用される。該所与の患者の体重が患者用に使用された撮像ファントムとは異なる場合、関連付けられた閾値を予測器要素PCにより適切に補間することができる。臨床的使用の間において実際の患者PATに対して前記センサXSiにより“実世界”散乱強度が取得されたなら、これらは事前に記憶された又は補間された閾値と比較される。測定された強度が閾値を超える場合、当該予測器要素は撮像の間における更なる人Pの存在を示す予測器信号を送出する。測定された散乱プロファイルが閾値を超えない場合、該予測器信号は更なる人が居ないことを示す。2以上のセンサXSiが使用される場合、当該測定は単一の値に畳み込むことができる(閾値計算に関連して前述したように)。このことは、平均化すること又は最大値若しくは最小値を見付けることにより実行することができる。この場合、当該閾値に対して比較されるものは、この単一の値である。ここでは、全てのセンサXSiからの全ての測定値の全体としてのベクトル的処理も代替実施態様において想定される。これらの実施態様においては、閾値も、前述された平均化等により得られるスカラー値というより、ベクトルとして表される。mがセンサXSiの測定値データあるとして、例えば(m1,…mi)等のベクトル的処理の場合、当該閾値は(二乗)ユークリッド距離又は他の適切な尺度で表すことができる。
【0072】
上述した予測器要素PCの実施態様は、多数の異なるやり方で改良することができる。例えば、重大な事象は、更なる人Pが撮像の間に実際に検査室内に居るか否かのみならず、更なる人が当該撮像装置、従ってX線源の周囲の予め定められた“危険ゾーン”内に居るか否かでもあることが出願人により認識されている。例えば、当該検査室におけるX線源XSに対して予め定められた位置の周囲に約50cm~約1メートルの半径を定めることができる。従って、該危険ゾーンは関連する検査室の空間的一部である。当該予測器要素を構成するための前述した実施態様において、前記更なる人のファントムは該危険ゾーン内の何処かに配置され、前記閾値又は機械学習アルゴリズムは該危険ゾーン内での存在のみを考慮に入れるように訓練される。この場合、当該部屋内であるが該危険ゾーン外での存在は予測器要素PCにより非存在事象として印される。
【0073】
散乱プロファイルデータを取得するための前述した較正フェーズは、各部屋がセンサXSiの同様の空間的配置を伴って十分に類似しない限り、検査室の各々に対して別個に実行されることを要し得ることも理解される。
【0074】
検査室における1以上のセンサXSiの配置は、これらセンサXSiが一次放射線のビームXBが通過し得るボリューム外に配置される限り、複数の異なる設定で実施することができる。しかしながら、センサXSiを前記危険ゾーンの周囲に対称的に配置することが有益であり得る。この危険ゾーンの周囲での対称的又は均等な配置は、前記機械学習アルゴリズムを基となる強度変化パターンを認識するように構成することを容易にさせ得る。患者の体重の指定も機械学習アルゴリズムの助けとなり得る。何故なら、この情報は機械学習アルゴリズムが更なる人の存在に関する正しい結論に到達する助けとなり得る事前情報を構成するからである。
【0075】
上述した存在検出能力に加えて又は代えて、予測器要素PCは、前記散乱強度測定値に基づいて、所与の患者PATが十分なX線露出を受けたかを確認するように構成することもできる。患者の体重が既知であり、予め設定された画像品質が与えられた場合、当該X線管からの所要の正しい放射線エネルギkeVが事前に決定される。患者PATは一層大きい体重を有するほど、一層多くの散乱放射線を生じることも予測される。言い換えると、前記放射線サンプル測定値を、事前に設定された画像品質を達成することができながら患者PATに対する低い(例えば、可能な限り最低の)線量を保証するために、当該チューブが正しいチューブ設定で、特に所与の体重の所与の患者に対する特定の電圧で動作されるかを確定するために用いることもできる。患者PATの体重が既知である場合、センサXSiにおける過度に低い測定散乱放射線を、現在使用されているチューブXS設定(例えば、電圧/keV設定)は所要の画像品質を達成するためには低過ぎ、再調整を要することを示すために採用することができ、この事象は前記予測器要素により対応する予測器信号を送出することにより印すことができる。この露出不足を示す予測器信号は、次いで、前述したように安全実行部SEに転送されて、適切な動作を開始するか又は前記監視部主体RCに通知する。患者の体重と予測される散乱放射線レベルとの間の関係は、共に前述したようなファントムの使用により得られたサンプルの散乱の測定値に基づいて、機械学習アルゴリズムにより又は閾処理により前述したように学習することができる。ここでも、間近の患者PATの特定の体重を許容するために補間が必要とされ得る。前記実行部SEによる安全動作は、自動的に実行することができるが、好ましくは、ユーザによる承認の後に、例えば表示装置上に適切なメッセージを表示することにより確認を求めることにより実行されるものとする。斯様な承認を求めることは、好ましくは、不十分な露出が検出された場合に実行される。しかしながら、ユーザによる再確認無しでの安全動作の自動的実行は、安全を保証するために前記予測器により他の人Pの存在が予測された場合に想定される。
【0076】
提案される安全支援システムXSYSは、撮像装置AIに搭載の計算ユニットPU上の適切なインターフェースにより適切なソフトウェアモジュールとして実行することができる。代わりに、幾つか又は全ての要素は、例えば適切にプログラムされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)上に又は配線されたIC(集積回路)チップとしてハードウェアで構成することもできる。このようにして、当該システムは対応するイメージャXIに統合することができる。他の例として、提案されるシステムXSYSの1つの又は全ての機能は、“クラウド”において、即ち当該イメージャXIが通信的に結合される1以上のサーバにより実施することもできる。該システムXSYSの機能は、1以上の撮像装置XIをサポートするために1以上のサーバにより集中的に実行することもできる。1以上のセンサXSiを含む該提案されたシステムXSYSは、既存のイメージャXIにレトロフィットさせるために用いることもできる。
【0077】
1以上のセンサXSiによる散乱放射線測定値の取得及び安全モジュールMの提案された予測器要素PCによる処理は、撮像手順の間における一度限りの動作で実行することができる。しかしながら、好ましくは、測定値取得及び予測器要素PCによる処理は、合理的なサンプリング頻度でループ的に実行され、撮像の間における変化を動的に検出することができる動的システムを実施化するようにする。例えば、最初には当該部屋内に人が居らず、従って、患者PATのX線暴露が始まり得るようなことが良くあり得る。しかしながら、当該撮像の間の後の段階で、更なる人Pが当該検査室内に立ち入り、この状況が提案されたシステムにより検出されて、前述したように作用され、かくして、前述した動作のうちの何れかが、進行中の撮像手順の間に安全実行部SEにより開始されることがあり得る。言い換えると、前記予測器要素に1以上のセンサXSiにより取得される更新された散乱放射線測定値の入力ストリームを処理させることにより、当該検査室に1以上の人が立ち入ることにより散乱放射線強度の周囲場が変化する際に実質的にリアルタイムに反応する動的安全システムを実施化することができる。
【0078】
前述したように、散乱放射線センサXSiを主X線検出器とは異なる離散的且つ個別の要素として配置させるよりも、該主検出器XDのピクセルの1以上の部分が散乱放射線を検出するために使用されるような代替実施態様も考えられる。この検出器共用型実施態様を、図3を参照して更に詳細に説明する。
【0079】
イメージャXIのX線検出器XD(主に患者PATを撮像することを想定された)を使用するために、該検出器のピクセルのうちの特定のものは一次放射線XBというより散乱放射線のみを(又は、少なくとも主に)受入するようになされることが保証されねばならない。
【0080】
これを行う1つの方法が図3A)に斜視図で示されている。散乱線除去格子(ASG)と同様の格子構造GSが、検出器XD上に、即ちピクセルpxから形成される放射線感知面上に取り付けられる。言い換えると、該格子構造GSは、使用時に、X線源XSとX線検出器XDの放射線感知面との間に配置される。
【0081】
当該格子構造は、何れの2つの隣接する細条lpの間にも空間を伴って一緒に格子を形成するような複数の“壁”の細条を含む。上記間の空間は、実質的にX線透過性である材料(セルロース(紙)、プラスチック、発泡体等)により充填することができる。上記壁自体は、タングステン又は他のもの等の高密度、高吸収性材料から形成される。これら細条lpの幾つかは、傾斜される{図3A)により与えられる上面図と平行な各軸の回りで}ことにより焦点を合わされ、かくして、一次ビームXBによる一次放射線は当該格子構造GSを実質的に減衰されずに通過して、下に位置する検出器XDのピクセルpxに当たる。言い換えると、細条lpの幾つかは当該X線源XSの焦点の空間における位置l図3B)参照}に焦点を合わされる。しかしながら、壁部が全て当該焦点に斯様にして焦点を合わされる既存のASGとは異なり、提案された該格子構造は、一次放射線の代わりに散乱放射線を拾うために、壁がX線源の焦点に焦点を合わされるのではなく該焦点位置から離れるように、好ましくは異なる位置l,l図3B)参照}に向かう複数の異なる方向に特別に且つ入念に向けられた部分SAを含む点で相違する。結果として、当該格子構造の上面は2つの部分、即ち、一次放射線の通過は許可するが散乱放射線は阻止する一次放射線通過許可部分PA;及び、これに加えて、下に位置する検出器ピクセル上への散乱放射線は通過を許可するが一次放射線は阻止する散乱放射線通過許可部分SAから形成される。一実施態様による斯様な格子GSが図3B)に側面図として示される一方、図3C)は、更なる詳細を、一次ビームXBの主伝搬方向に沿って上からの、即ちX線源/焦点からの平面図で示す。当該格子構造GSの形状は、通常、検出器XDの視野の形状(この場合は、長方形)と同一である。この実施態様において、散乱放射線通過許可部分SAは、当該格子構造GSの中央の一次放射線通過許可部分PAの周囲の境界又は縁部分として形成されている。散乱放射線通過許可部分SAにおける細条lsは、当該X線源から検査室の異なる位置へ、例えば更なる人Pが該検査室へ侵入し得る該検査室Mの入口に向かって逸れるように焦点を合わされる。図3C)に平面図で示されるように、一次放射線部分PAを囲む散乱放射線通過許可部分SAが存在する。しかしながら、散乱放射線通過許可部分SAが当該格子構造GSの周囲の全体にわたっては延在しないような他の実施態様も考えられる。例えば、散乱放射線通過許可部分SAは当該格子構造の4つの辺のうちの1つ、2つ又は3つのみに配置することもできる。図3D)の実施態様において、散乱放射線通過許可部分SAは、全体の視野の1つの辺にのみ配置されている。何れの場合においても、一次放射線通過許可部分PAにおける主視野への妨害を最小限にするために、当該散乱放射線通過許可部分SAを周辺の近くに配置させることが好ましい。更に、散乱放射線の検出のために非常に僅かのピクセルしか必要とされず、これに対応して当該格子構造の散乱放射線通過許可部分SAを非常に小さく(僅か数ピクセル幅に)することができ、かくして、一次放射線通過許可部分PAに関する主視野の寸法の減少が無視可能となるようにすることが理解される。
【0082】
散乱放射線通過許可部分SAにおける前記壁エレメントlsは全て空間内の同一の位置に焦点を合わせることができるが、好ましくは、図3C)に示されるように、該散乱放射線通過許可部分SAは、対応する壁エレメントが空間内の異なる位置に向けられるような異なるセグメントを含むこともがきる。
【0083】
図3における格子構造GSは“1D”として示されているが、ここでは、“2D”格子も考えられる。1D格子において、細条は1つの方向に沿って1つの組で配置されるが、2D格子では、一方の組の細条が第1方向に沿って配置されると共に他方の組の細条が第1方向と交差する第2方向に配置され、平面図で見た場合に市松模様を形成するような2組の細条が存在する。当該格子構造GSは、焼結法、例えばDMLS(直接金属レーザ焼結法)又はSLS(選択的レーザ焼結法)等により製造することができる。
【0084】
格子構造GSによるセンサSXiのための検出器XDのピクセルの一部の使用は、1以上のセンサが検出器XDの一部ではない(例えば、部屋RM内の何処か又はイメージャXI上に取り付けられる)先に説明した実施態様と組み合わせることもできることが理解される
【0085】
ここで図4を参照すると、図1において前述したシステムの動作の基礎となる方法がフローチャートとして示されている。しかしながら、以下に説明される方法は必ずしも図1に示されたアーキテクチャに縛られるものではないと理解される。即ち、該方法は、それ自体で教示と理解することができる。
【0086】
ステップS405において、X線散乱の1以上の測定値が受信される。該1以上の測定値は、患者PATをX線に暴露するためのイメージャのX線源の動作の間において1以上のセンサにより感知されたものである。該散乱の測定値は、撮像のための実際のX線露出の間に、又は偵察スキャンの間に取得することができる。当該センサは、間接又は直接変換型のものとすることができる。これらセンサは、検査室の床、天井及び/又は壁に分散させることができる。好ましくは、これらセンサの1以上は当該部屋の入口に配置される。加えて又は代わりに、これらセンサは前記イメージャに、特にはX線源ハウジング、ガントリ、検出器の周辺に配置することができる。これらセンサは、主放射線ビームXBにより満たされ得るボリューム外に配置されるべきである。
【0087】
好ましくは、上記X線センサは当該イメージャのX線検出器とは異なるものとする。好ましくは、2以上のセンサが、当該撮像装置の周囲に分散されて使用されるようにする。代替例においては、当該X線検出器自体の1以上のピクセルをセンサとして使用することができる。この実施態様においては、格子構造GSの適切な指向性エレメントlsがX線検出器上に重ねられて、前記ピクセルが一次放射線を受けることから遮蔽すると共に該ピクセルが(実質的に)散乱放射線のみを受入するようにする。
【0088】
前記(好ましくはデジタル化された)散乱の測定値に基づき、ステップS410において、X線暴露の間において検査室内に第2の人P(患者PAT以外の)が居るか否か、特に該第2の人が当該X線イメージャに対して過度に近い近傍(“危険ゾーン”)内に居るかに関しての予測が実行される。
【0089】
当該部屋の内部又は上記危険ゾーンにおける更なる人の存在を検出することに代えて又は加えて、受入されたX線を、代わりに、当該患者PATが十分なX線露出を受けたか又は受けているかを予測するために用いることもできる。該予測ステップの第1実施態様は、当該部屋内の更なる人の存在は散乱放射線の量を増加させるとの認識に基づくものである。露出の十分さに関する第2実施態様は、所定の画像品質を保証するためには患者の体重が重いほど一層多くのX線線量が必要とされるとの認識、及び患者の体重が与えられたとして正しいエネルギのX線を使用する結果、或る最小限の量の散乱が生じ、これは散乱の測定値に基づいて確かめることができるという認識に基づくものである。
【0090】
上記予測の結果は、次いで、ステップS415において予測信号の形で出力される。該予測信号が、更なる人は居ないこと、及び/又は露出は十分であることを示す場合、撮像は開始し又は継続することができる。特に、一実施態様によれば、更なる人の不存在が予測された場合、ユーザは偵察的撮像から実際の撮像に切り換えることができる。
【0091】
代わりに、上記予測信号が、露出の間に更なる人が居ること又は現在の露出が不十分であることを示す場合、ステップS417において別の動作が行うことができる。ここで考えられる動作は、当該部屋内の上記更なる人を退出させた後に撮像セッションを再試行するようユーザを誘導するための警報信号を生成すべくトランスジューサを駆動すること、又は上記更なる人をX線源から遠ざけさせること等を含む。ステップS417における他の動作は、(更なる)間違った使用を防止するために当該X線撮像装置、特にX線源を遮断、ロック又はそれ以外で不能化することを含む。加えて又は代わりに、ステップS417において実行される動作は、X線源のX線ビームの再コリメーションを含むことができ、及び/又はスクリーン上に当該所与の患者に対して使用されるべき正しい電圧、即ち、撮像したい関心領域に関して予め設定された画像品質が維持されながら患者PATに対する線量が低く(例えば、可能な限り最低と)なる電圧を表示することを含むことができる。上記再コリメーションは線量暴露を減少させる助けとなり得る。前記予測器信号が不十分な露出であることを示す場合、時々の好適な動作は、所要の画像品質が達成され得ることを保証するために線量を実際に増加させる(例えば、チューブ電圧又は時間を増加させること等により)ことを必要とし得る。
【0092】
ステップS405,S410は、散乱の測定値のストリームを処理するために適切なサンプリング頻度でループ状に繰り返すことができる。このようにして、当該方法は、前記更なる人がその間において退出させられたかを又は当該露出が十分であることを確定することができ、その場合において、防止的動作が終了する間に撮像はステップS420において継続するか又は復帰する。
【0093】
本発明の他の例示的実施態様においては、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供され、該コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素は、上述した実施態様の1つによる方法の方法ステップを適切なシステム上で実行するように構成されることを特徴とする。
【0094】
上記コンピュータプログラム要素は、従って、本発明の一実施態様の一部とすることもできるコンピュータユニットに記憶することができる。このコンピュータユニットは、上述した方法のステップの実行を行い又は誘起するよう構成することができる。更に、該コンピュータユニットは、前述した装置の構成要素を動作させるように構成することができる。該コンピュータユニットは、自動的に動作し及び/又はユーザの指令を実行するように構成することができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードすることができる。該データプロセッサは、このように、本発明の方法を実行するように装備することができる。
【0095】
本発明の該例示的実施態様は、本発明を最初から使用するコンピュータプログラム、及び更新により既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムの両方をカバーするものである。
【0096】
更に、前記コンピュータプログラム要素は、前述した方法の例示的実施態様の手順を満たすために必要な全てのステップを提供することができる。
【0097】
本発明の他の例示的実施態様によれば、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な媒体が提供され、該コンピュータ読取可能な媒体は先の段落により説明されたコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0098】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと一緒に供給され若しくは他のハードウェアの一部として供給される固体媒体等の適切な媒体(必須ではないが、特には、非一時的媒体)により記憶及び/又は分配することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してのように、他の形態で分配することもできる。
【0099】
しかしながら、上記コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブ等のネットワークを介して提供することもでき、斯様なネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードすることもできる。本発明の他の例示的実施態様によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロードのために利用可能にする媒体も提供され、該コンピュータプログラム要素は本発明の前述した実施態様の1つによる方法を実行するように構成される。
【0100】
本発明の実施態様は異なる主題に関して説明されていることに注意されたい。特に、幾つかの実施態様は方法のタイプの請求項に関して説明されている一方、他の実施態様は装置のタイプの請求項に関して説明されている。しかしながら、当業者であれば、上記及び以下の記載から、そうでないと明示されない限り、1つのタイプの主題に属するフィーチャの如何なる組み合わせにも加えて、異なる主題に関係するフィーチャの間の如何なる組み合わせも本出願により開示されていると見なされることが分かるであろう。しかしながら、全てのフィーチャは、斯かるフィーチャの単なる寄せ集め以上の相乗効果を提供するように組み合わせることができるものである。
【0101】
以上、本発明を図面及び上記記載において詳細に図示及び説明したが、斯かる図示及び説明は解説的又は例示的なものであって、限定するものではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施態様に限定されるものではない。開示された実施態様に対する他の変形例は、当業者によれば、請求項に記載の本発明を実施するに際して図面、本開示及び従属請求項の精査から理解し、実施することができるものである。
【0102】
尚、請求項において“有する”なる文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。また、単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載された幾つかの項目の機能を満たすことができる。また、特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示すものではない。また、請求項における如何なる符号も当該範囲を限定するものと見なしてはならない。
図1
図2
図3A)】
図3B)】
図3C)】
図3D)】
図4