(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】髄内釘用補助器具および髄内釘
(51)【国際特許分類】
A61B 17/78 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61B17/78
(21)【出願番号】P 2020122868
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518176079
【氏名又は名称】メディカルサン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518176080
【氏名又は名称】MIKE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182198
【氏名又は名称】藤田 貴男
(72)【発明者】
【氏名】山崎 謙
(72)【発明者】
【氏名】田村 実行
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198554(JP,A)
【文献】特開平11-178836(JP,A)
【文献】寺田忠司、外3名,当院における大腿骨転子部不安定型骨折に対する髄内釘長の選択基準,中部日本整形外科災害外科学会雑誌,2016年01月01日,第59巻、第1号,第27-28ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72 - 17/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する第1の髄内釘部材と、前記第1の髄内釘部材を前記遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材と、近位骨片の内部に挿入する第2の髄内釘部材と、を補助して位置を固定する髄内釘用補助器具であって、
前記第1の髄内釘部材は、該第1の髄内釘部材の一端が前記近位骨片から出ている状態で、前記近位骨片を貫通して、該第1の髄内釘部材の他端を前記遠位骨片の内部に挿入して、前記遠位骨片用固定部材で前記遠位骨片に固定され、
前記第2の髄内釘部材は、該第2の髄内釘部材の一端が前記遠位骨片から出ている状態で、前記遠位骨片を貫通して、該第2の髄内釘部材の他端を前記近位骨片の内部に挿入して保持され、
前記第1の髄内釘部材の一端に取り付ける取付部と、
術中に前記第1の髄内釘部材に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、略90度に曲げられる曲げ部と、
前記遠位骨片の内部に挿入する挿入部と
を有し、
前記取付部と前記曲げ部と前記挿入部とが一枚の細長の略平板形状であり、
術中に、前記挿入部は、前記近位骨片を貫通して、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片の内面との間
であって 後方または前方のいずれかに配置される、
ことを特徴とする髄内釘用補助器具。
【請求項2】
大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する第1の髄内釘部材と、前記第1の髄内釘部材を前記遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材と、近位骨片の内部に挿入する第2の髄内釘部材と、を補助して位置を固定する髄内釘用補助器具であって、
前記第1の髄内釘部材は、該第1の髄内釘部材の一端が前記近位骨片から出ている状態で、前記近位骨片を貫通して、該第1の髄内釘部材の他端を前記遠位骨片の内部に挿入して、前記遠位骨片用固定部材で前記遠位骨片に固定され、
前記第2の髄内釘部材は、該第2の髄内釘部材の一端が前記遠位骨片から出ている状態で、前記遠位骨片を貫通して、該第2の髄内釘部材の他端を前記近位骨片の内部に挿入して保持され、
術中に前記第1の髄内釘部材に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、前記遠位骨片の内部に挿入する挿入部を有し、
前記挿入部は、一枚の細長の略平板形状であり、術中に前記近位骨片を貫通して、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片の内面との間
であって 後方または前方のいずれかに配置される、
ことを特徴とする髄内釘用補助器具。
【請求項3】
長さ200mmから350mmの間のいずれか、幅3mmから30mmの間のいずれか、厚さ1mmから10mmの間のいずれかである、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の髄内釘用補助器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の髄内釘用補助器具と、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片用固定部材と前記第2の髄内釘部材とを有する、ことを特徴とする髄内釘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨の骨折を治すために使用する髄内釘用補助器具および髄内釘に関する。
【背景技術】
【0002】
大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部と近位骨片の内部に髄内釘をそれぞれ挿入して、大腿骨の位置を固定する方法が知られている。特許文献1では、近位大腿骨骨折用の髄内釘に関して、髄内釘は、長手方向ボアを有する長尺本体を備え、長尺本体は、近位ロッキング部材のための斜め横方向ボアを有する近位部と、遠位ロッキング部材のための少なくとも1つの横方向ボアを有する遠位部と、を含み、斜め横方向ボアの入口端は、陥凹面を有する凹部として構成され、陥凹面は、陥凹側面部と、陥凹近位面部および陥凹遠位面部と、から構成される技術を開示している。特許文献2では、軸穴及び横孔を備えた髄内釘本体の軸穴内に配置される係合部材には横孔に対応する開口部が設けられ、開口部は、横孔の開口形状よりも軸線の方向に延長された開口形状を備えるとともに、開口部の一側の内側縁には軸線に対して傾斜した傾斜縁部が形成され、係合部材が軸線に沿って移動すると、骨ねじの挿通部位に当接する傾斜縁部の当接点が側方の逆側に相対移動し、当該挿通部位が開口部の一側の内側縁と横孔の逆側の内側縁との間で挟圧力を受けるか、或いは、傾斜縁部の傾斜に応じてその挟圧力が増大する髄内釘に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-535401号公報
【文献】特開2013-9803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2には、術後の過度の骨頭回旋を防止するための遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助する補助器具に関する記載がない。
図3に示す過度の骨頭回旋(
図3(b)、
図4(b))を防止する技術が求められている。具体的には、骨頭回旋(sagittal swing motion)が発生すると前方の接触していた皮質がずれて荷重がかかることで、近位骨片がずれて短縮するため(
図3(b)のSw)、この現象を防止する。
【0005】
本発明は、術後の過度の骨頭回旋を防止するために、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助する髄内釘用補助器具を提供することを目的とする。また、本発明は、術後の過度の骨頭回旋を防止するために、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助する髄内釘用補助器具を含む髄内釘を提供することを目的としてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一つの実施形態は、大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する第1の髄内釘部材と、前記第1の髄内釘部材を前記遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材と、近位骨片の内部に挿入する第2の髄内釘部材と、を補助して位置を固定する髄内釘用補助器具であって、前記第1の髄内釘部材は、該第1の髄内釘部材の一端が前記近位骨片から出ている状態で、前記近位骨片を貫通して、該第1の髄内釘部材の他端を前記遠位骨片の内部に挿入して、前記遠位骨片用固定部材で前記遠位骨片に固定され、前記第2の髄内釘部材は、該第2の髄内釘部材の一端が前記遠位骨片から出ている状態で、前記遠位骨片を貫通して、該第2の髄内釘部材の他端を前記近位骨片の内部に挿入して保持され、前記第1の髄内釘部材の一端に取り付ける取付部と、術中に前記第1の髄内釘部材に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、略90度に曲げられる曲げ部と、前記遠位骨片の内部に挿入する挿入部とを有し、前記取付部と前記曲げ部と前記挿入部とが一枚の細長の略平板形状であり、術中に、前記挿入部は、前記近位骨片を貫通して、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片の内面との間であって 後方または前方のいずれかに配置される、ことを特徴とする髄内釘用補助器具を提供する。また、上記課題を解決するために、本発明の一つの実施形態は、大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する第1の髄内釘部材と、前記第1の髄内釘部材を前記遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材と、近位骨片の内部に挿入する第2の髄内釘部材と、を補助して位置を固定する髄内釘用補助器具であって、前記第1の髄内釘部材は、該第1の髄内釘部材の一端が前記近位骨片から出ている状態で、前記近位骨片を貫通して、該第1の髄内釘部材の他端を前記遠位骨片の内部に挿入して、前記遠位骨片用固定部材で前記遠位骨片に固定され、前記第2の髄内釘部材は、該第2の髄内釘部材の一端が前記遠位骨片から出ている状態で、前記遠位骨片を貫通して、該第2の髄内釘部材の他端を前記近位骨片の内部に挿入して保持され、術中に前記第1の髄内釘部材に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、前記遠位骨片の内部に挿入する挿入部を有し、前記挿入部は、一枚の細長の略平板形状であり、術中に前記近位骨片を貫通して、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片の内面との間であって 後方または前方のいずれかに配置される、ことを特徴とする髄内釘用補助器具であってもよい。
【0007】
本発明の他の実施形態は、上記のいずれかの髄内釘用補助器具であって、長さ200mmから350mmの間のいずれか、幅3mmから30mmの間のいずれか、厚さ1mmから10mmの間のいずれかである、ことを特徴とする髄内釘用補助器具であってもよい。
【0008】
本発明の他の実施形態は、上記のいずれかの髄内釘用補助器具と、前記第1の髄内釘部材と前記遠位骨片用固定部材と前記第2の髄内釘部材とを有する、ことを特徴とする髄内釘であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、術後の過度の骨頭回旋を防止するために、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】大腿骨および骨折の一例を説明する説明図である。
【
図2】大腿骨近位部用の髄内釘の使用例を説明する説明図である。
【
図3】大腿骨の術後に発生する状態(骨頭回旋)の一例を説明する説明図である。
【
図4】大腿骨の術後に発生する状態(骨頭回旋)の一例を説明するCT多断面再構成像の写真である。
【
図5】本発明の実施形態に係る大腿骨近位部用の髄内釘(髄内釘用補助器具14)の一例を説明する説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る大腿骨近位部用の髄内釘(髄内釘用補助器具14B)の一例(固定しない場合)を説明する説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る髄内釘用補助器具の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る髄内釘用補助器具(以下、「補助器具」という)および髄内釘の例を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、以後に説明する補助器具、髄内釘以外でも、大腿骨の骨折を治すために骨内部に挿入するものであれば、いずれのものにも用いることができる。なお、補助器具および髄内釘の材質、色や柄は、特に限定されない。
【0012】
下記にて、本発明を説明する。
【0013】
図1乃至
図7を用いて、本発明の実施形態に係る補助器具および髄内釘の構成を説明する。ここで、
図1(a)は、大腿骨FMの外形の一例を説明する正面図である。
図1(b)は、大腿骨の骨折BRの一例を説明する正面図である。
図2(a)は、大腿骨近位部用の髄内釘(11、12、13)の使用例を説明する説明図である。
図2(b)は、大腿骨近位部用の髄内釘(11、12、13)の使用例を説明するCT多断面再構成像の写真である。
図3(a)は、術後の大腿骨の一例を説明する説明図である。
図3(b)は、術後の大腿骨の骨頭回旋の一例を説明する説明図である。
図4(a)は、術後1日後の大腿骨の一例を説明するCT多断面再構成像の写真である。
図4(b)は、術後2週間後の大腿骨の骨頭回旋の一例を説明するCT多断面再構成像の写真である。
図5(a)は、本発明の実施形態に係る補助器具14を含む髄内釘100の使用例を説明する説明図である(大腿骨の外形は破線で示している)。
図5(b)は、本発明の実施形態に係る補助器具14を含む髄内釘100の他の使用例を説明する説明図である(大腿骨の外形は破線で示している)。
図6(a)は、本発明の実施形態に係る補助器具14Bを含む髄内釘100の使用例を説明する説明図である(大腿骨の外形は破線で示している)。
図6(b)は、本発明の実施形態に係る補助器具14Bを含む髄内釘100の他の使用例を説明する説明図である(大腿骨の外形は破線で示している)。
図7(a)は、本発明の実施形態に係る補助器具14の一例を説明する概略正面図である。
図7(b)は、本発明の実施形態に係る補助器具14の一例を説明する概略側面図である。
図7(c)は、本発明の実施形態に係る補助器具14の他の例を説明する概略側面図である。
図7(d)は、本発明の実施形態に係る補助器具14の断面形状の一例を説明する概略側面図である。
図7(e)は、本発明の実施形態に係る補助器具14の断面形状の他の例を説明する概略側面図である。なお、
図1等に示す補助器具および髄内釘の構成等は一例であり、本発明は
図1等に示す補助器具および髄内釘等に限定されるものではない。
【0014】
大腿骨転子部骨折(以下、「骨折」という)とは、大腿骨の大腿骨頭の転子部で骨折することである。具体的には、
図1(a)に示す大腿骨FMが、
図1(b)に示すように近位骨片FMnと遠位骨片FMfとに分かれて、骨折BRすることである。髄内釘(例えば
図2(a)および(b))は、大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片および近位骨片の内部に挿入して骨を支え、且つ、整復部位に適度な圧迫をかけることで骨癒合を促す医療器具である。本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘は、術後の過度の骨頭回旋(たとえば
図3(b)、
図4(b))を防止するために、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助(補正、調整、矯正、支持、など)することができる。
【0015】
図2(a)、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、本発明に係る髄内釘100は、大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11と、近位骨片の内部に挿入する近位骨片用髄内釘部材(第2の髄内釘部材、ラグスクリュー)12と、遠位骨片用髄内釘部材11を遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材(第1の髄内釘部材用横止めスクリュー)13と、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助(補正、調整、矯正、支持、など)する補助器具(髄内釘用補助器具)14(
図5)とを有する。ここで、遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、一端が近位骨片から出ている状態で、近位骨片を貫通して、他端を遠位骨片の内部に挿入して、遠位骨片用固定部材13で遠位骨片に固定される。近位骨片用髄内釘部材(第2の髄内釘部材)12は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、一端が遠位骨片から出ている状態で、遠位骨片を貫通して、他端を近位骨片の内部に挿入して保持または固定される。また、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、本発明に係る髄内釘100は、大腿骨の骨折を治すために、遠位骨片の内部に挿入する遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11と、近位骨片の内部に挿入する近位骨片用髄内釘部材(第2の髄内釘部材、ラグスクリュー)12と、遠位骨片用髄内釘部材11を遠位骨片に固定する遠位骨片用固定部材(第1の髄内釘部材用横止めスクリュー)13と、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助(補正、調整、矯正、支持、など)する補助器具(髄内釘用補助器具)14B(
図6)とを有する。なお、遠位骨片用髄内釘部材11、近位骨片用髄内釘部材12および遠位骨片用固定部材13の形状、大きさ、材質および取り付け方法などは、本発明において特に限定されるものではなく、公知の技術を利用することができる。
【0016】
図5(a)および(b)に示すように、本発明に係る補助器具(髄内釘用補助器具)14は、一枚の細長の略平板形状である。補助器具14は、
図5(a)および(b)に示すように、本実施形態では、遠位骨片用髄内釘部材11の一端に固定部(エンドキャップ)14Sで取り付けられる開口を備える取付部(
図7(a)の14a)と、術中に遠位骨片用髄内釘部材11に沿って曲げられる曲げ部(
図7(a)の14b)と、遠位骨片の内部に挿入する挿入部(
図7(a)の14c)とを有する。補助器具14は、
図7(a)および(b)に示すように、本実施形態では、取付部14aと曲げ部14bと挿入部14cとで一枚の細長の略平板形状であり、
図7(d)または(e)に示すように略扇形または略矩形の断面形状である。ここで、曲げ部14bは、
図5(a)および(b)に示すように、術中に、補助器具14が遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、略90度に曲げられる。具体的には、補助器具14は、遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11の一端から長手方向に沿って(近い距離を保って離れずに)、配置される。このとき、補助器具14(挿入部14c)は、近位骨片を貫通して、遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11と遠位骨片の内面との間に配置(挿入)される。なお、
図7(c)に示すように、本発明に係る補助器具14の曲げ部は、あらかじめ略90度に曲げられた状であってもよい。また、
図6(a)および(b)に示すように、本発明に係る補助器具(髄内釘用補助器具)14Bは、髄腔を占拠して固定がしっかりしている場合には、髄内釘に取り付けなくてもよい。また、補助器具の取付部を遠位骨片用髄内釘部材の一端に取り付ける方法は、本発明において特に限定されるものではなく、公知の技術を利用することができる。
【0017】
これにより、補助器具14は、術中に挿入部13cを遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)11と遠位骨片の内面との間に挿入(配置)することで、髄腔の隙間が埋まり、術後の遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助(補正、調整、矯正、支持、固定など)することができ、術後の過度の骨頭回旋(
図3(b)および
図4(b)、sagittal swing motion)を防止することができる。本発明に係る補助器具14を挿入する位置は、
図5(a)および(b)に示すように、後方または前方のいずれであっても良い。
【0018】
本発明に係る補助器具14は、たとえば長さ200mmから350mmの間のいずれか、幅3mmから30mmの間のいずれか、厚さ1mmから10mmの間のいずれかであってもよいが、特に大きさを限定されるものではない。本発明に係る補助器具の形状、大きさおよび材質は、実験および/または設計によって決定することができ、患者の骨に適した形状、大きさおよび材質に予め決定することができる。本発明に係る補助器具の断面形状は、実験および/または設計によって決定することができ、略扇形、略矩形または患者の骨に適した形状に予め決定することができる。
【0019】
骨折を治療する場合に通常、解剖学的整復つまり元通りの形にして骨折部を固定するが、大腿骨転子部の骨折の場合には、骨癒合が完成する前から体重をかけるため骨折部に負荷がかかるので、デバイスによる固定だけでは限界があるため頚部前方の骨皮質を接触させること(ローテーション)で骨同士のサポート(支持)を可能にし、骨同士で支柱を形成する。本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、補助器具の挿入部を近位骨片の内部に挿入して近位骨片の位置を固定することによって、ローテーションの位置(骨同士のサポート、形成した骨同士の支柱)を術後も維持することができる。なお、ローテーションとは、近位前方皮質が遠位前方皮質より軽度前方に位置するようにすることである。
【0020】
以上のとおり、本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、補助器具の挿入部を近位骨片の内部に挿入して近位骨片の位置を固定し、骨同士のサポートができて支柱の働きをするので、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助することができる。また、本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、補助器具を用いて遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助することができるので、術後に過度の骨頭回旋を防止することができ、合併症を減少することができ、脚短縮も解消することができる。
【0021】
また、本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、2本のラグスクリュー(近位骨片用髄内釘部材)を用いて固定を強化する場合と比較して、補助器具の挿入部を近位骨片の内部に挿入して近位骨片の位置を固定して、骨同士の支柱の働きを維持することができるので、頚部短縮を最小限に抑えることができる。また、本発明に係る髄内釘用補助器具および髄内釘によれば、補助器具の挿入部を近位骨片の内部に挿入して近位骨片の位置を固定して、骨同士の支柱の働きを維持することができるので、
図3(b)のSwのとおり、近位骨片の股関節を動かすことで発生するsagittal swing motion(近位骨片が遠位横止めスクリューを中心に髄内釘と一緒に近位骨片が回ること)を防止することができる。
【0022】
以上のとおり、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載の内容に基づいて、様々に変形、変更又はその他任意に改変され得る。
【符号の説明】
【0023】
100 : 髄内釘
11 : 遠位骨片用髄内釘部材(第1の髄内釘部材)
12 : 近位骨片用髄内釘部材(第2の髄内釘部材、ラグスクリュー)
13 : 遠位骨片用固定部材(第1の髄内釘部材用横止めスクリュー)
14,14B : 遠位骨片用補助部材(髄内釘用補助器具)
14a: 取付部
14b: 曲げ部
14c: 挿入部
14S: 固定部(エンドキャップ)
BR : 骨折線(骨折部分)
FMa: 頸部短縮の例
FM : 大腿骨
FMn: 大腿骨の近位骨片
FMf: 大腿骨の遠位骨片
RT : 骨頭回旋の例
Sw : sagittal swing motion(近位骨片が遠位横止めスクリューを中心に髄内釘と一緒に近位骨片が回ること)の例
【要約】
【課題】術後の過度の頸部短縮を防止するために、遠位骨片の位置および近位骨片の位置並びに髄内釘の位置を補助する髄内釘用補助器具を提供する。
【解決手段】第1の髄内釘部材は、一端が前記近位骨片から出ている状態で、他端を前記遠位骨片の内部に挿入して、遠位骨片用固定部材で前記遠位骨片に固定され、第2の髄内釘部材は、一端が前記遠位骨片から出ている状態で、他端を近位骨片の内部に挿入して固定され、第1の髄内釘部材の一端に取り付ける取付部と、術中に前記第1の髄内釘部材に対して近い距離を保って離れずに配置されるように、略90度に曲げられる曲げ部と、前記遠位骨片の内部に挿入する挿入部とを有し、取付部と曲げ部と挿入部とが一枚の細長の略平板形状であり、術中に、挿入部は、近位骨片を貫通して、第1の髄内釘部材と遠位骨片の内面との間に配置される。
【選択図】
図5