(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】インラインミキサーとハイドロサイクロンを統合したモジュールを複数用いて抗体を細胞培養液から連続的に製造する装置および当該装置を用いた抗体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220104BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220104BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220104BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20220104BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20220104BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220104BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M3/00 Z
C12P21/00 B
C07K1/18
C07K1/22
B01D15/00 K
B04C9/00
(21)【出願番号】P 2020510845
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012669
(87)【国際公開番号】W WO2019189064
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2018058853
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構「バイオ医薬品の高度製造技術の開発/バイオ医薬品連続生産等の基盤技術開発」「バイオ医薬品連続生産における各要素技術及びプラットフォーム技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】516094456
【氏名又は名称】次世代バイオ医薬品製造技術研究組合
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 忠好
(72)【発明者】
【氏名】広田 潔憲
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0193434(US,A1)
【文献】特表平07-503458(JP,A)
【文献】特表2013-542710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0177582(US,A1)
【文献】特表2000-509325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C07K 1/00-19/00
B01D 15/00-15/42
B04C 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インラインミキサーとサイクロンを結合したモジュールを複数用いて、
抗体を
CHO細胞
の培養液から連続的に製造する方法であって、
(a)第一のモジュールのインラインミキサーへ、培養槽から移送された
抗体を含有する細胞培養液と第一の貯留槽から移送された
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中の
抗体をスラリー中の
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂と結合させ、
抗体と結合した
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーを生成する工程、
(b)前記第一のモジュールのインラインミキサーによる混合工程で得た
抗体と結合した
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーを、サイクロンへ移送し、
抗体と結合した
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーと細胞培養液に分離する工程、
(c)前記第一のモジュールのサイクロンによる分離工程で得た
抗体と結合した
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーを第二のモジュールに移送し、細胞培養液を第一の貯留槽へ移送する工程、
(d)第二のモジュールのインラインミキサー中で、前記工程で得た
抗体と結合した
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーと、第二の貯留槽から移送された溶出液を混合し、溶出用スラリーを生成する工程、および
(e)前記第二のモジュールのインラインミキサーによる混合工程で得た溶出用スラリーをサイクロンへ移送し、
抗体と、
抗体と結合していない
アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含むスラリーに分離する工程を含む方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の工程bと工程cの間に、
第三のモジュールのインラインミキサー中で、抗体と結合したアフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂を含んだスラリーと、第四の貯留槽から移送された洗浄液を混合し、洗浄後の混合液をサイクロンに移送し分離することにより洗浄工程を入れることを特徴とする方法。
【請求項3】
第一のモジュールのインラインミキサーへ培養槽から
抗体を含有する細胞培養液を移送する工程において、サイクロンを介して
CHO細胞と
抗体を含有する細胞培養液とを分離し、分離した
CHO細胞は培養槽へ移送し、純化した
抗体を含有する細胞培養液を、第一のモジュールのインラインミキサーに移送することを特徴とする請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
アフィニティークロマトグラフィーに使用される樹脂が
プロテインAガンドと結合した樹脂であ
り、溶出液がpHを5以下であることを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
サイクロンがBradley型又はRietema型ハイドロサイクロンであることを特徴とする請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
2つの流体を混合したものを一つの導入口に導入される形状を持ち駆動部の無い静的混合装置であるインラインミキサーの排出口とロート状の形状をし、ロート型の上部壁面に分離を行う混合物の導入口、ロート型の上部天井部に分離され純化された物質の上部排出口、ロート型の下端部に純化された物質を除いた混合物の下部排出口があるサイクロンの導入口を連結させた構造を持つモジュールが複数連結された装置において、インラインミキサーにより細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中の抗体をスラリー中の樹脂と結合させ、抗体と結合した樹脂を含んだスラリーを生成排出させ、当該樹脂をサイクロンに導入することにより上部排出口から細胞培養液が、下部排出口から純化した抗体と結合した樹脂スラリーが分離排出される反応モジュールと反応モジュールで分離した抗体と結合した樹脂スラリーと溶出液をインラインミキサーにて混合し抗体と樹脂を分離排出させ、当該樹脂と抗体が分離したスラリーをサイクロンに導入することにより上部排出口から精製された抗体が、下部排出口から樹脂スラリーが分離排出される溶出モジュールの2種のモジュールから構成されることを特徴とする装置。
【請求項7】
反応モジュールのインラインミキサーの導入口が、導入口が培養装置と連結され、培養槽から移送される培養液を上部排出口から排出される細胞培養液と下部排出口から排出され培養槽に移送される細胞に分離させる機能を持つサイクロンの上部排出口と連結されることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
導入口が反応モジュールの下部排出口と連結され、抗体と結合したスラリーと洗浄液を
混合し、混合液を排出するインラインミキサーと、当該樹脂をサイクロンに導入することにより上部排出口から廃液が、下部排出口から洗浄された抗体と結合した樹脂スラリーが分離排出される洗浄モジュールを、装着することを特徴とする請求項6または7記載の装置。
【請求項9】
Bradley型またはRietema型ハイドロサイクロンを用いることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載された装置。
【請求項10】
インラインミキサーが可動部の無いスタティックミキサーまたは流動床型のミキサーであることを特徴とする請求項6~9のいずれか1項に記載された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養技術により生産された抗体等タンパク質を分離精製するための、インラインミキサーとハイドロサイクロンを組み合わせたモジュールから構成される装置および当該装置を用いた抗体等タンパク質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品として最近用いられているタンパク質や糖タンパク質或いはペプチドや核酸などは従来血液やその他の体液或いは生体組織のホモジネートなどから沈殿操作やろ過、遠心分離或いはクロマトグラフィー分離操作などにより分離精製して用いられてきた。また最近では大腸菌(Escherichia coli、略号:E. coli)などの微生物の遺伝子組み換え操作によりタンパク質やペプチドなどが発現されて菌体内に封入体顆粒(インクルージョンボディー)として生産され、変性可溶化とそれに続くリフォールディングにより再生された目的物を遠心分離やろ過、クロマトグラフィー操作などにより精製されてきた。特に最近ではモノクローナル抗体を初めとした糖タンパク質医薬品に在っては遺伝子組み換えを行ったChinese Hamster Ovary (CHO)細胞の培養による製造が行われた後、連続遠心分離やデプスフィルター及びメンブレンフィルターを加えた細胞除去及び澄明化を行った後アフィニティークロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなど各種分離剤をクロマトグラフィー用筒状筐体(カラム)に細密充填し、それらに清澄化した糖タンパク質やタンパク質を含む溶液を流してクロマトグラフィー分離操作や膜分離操作を組み合わせて精製されてきた。
【0003】
しかしこれまで行われてきたクロマトグラフィー分離操作は時間が掛かることに加え分離剤を筒状筐体に充填した、限られた大きさのカラムを用いるために精製することが出来る目的物の量は限られる。そのため複数のカラムを順番に操作する装置を用いて最初のカラムに試料を添加した後分離操作を行っている間に次のカラムに試料を添加し、さらに2番目のカラムで分離操作をしている間に1番目のカラムは再生洗浄を行うと同時に3番目のカラムに試料を添加するという操作を繰り返すことで連続的に試料を処理するいわゆる疑似移動床(SMB:Simulated Moving Bed)型分離精製法或いは複数のカラムに処理すべき試料と再生洗浄液を順次切り替えて流すことで効率的に連続な精製処理を可能にしている例が見られる(非特許文献1)。
【0004】
但し、これら従来の分離精製操作では何れもカラム筐体に分離剤を細密充填したクロマトグラフィーカラムやハウジング或いはカートリッジ容器に充填したフィルターを用いることから細胞や細胞破片、或いは何らかの凝集体、沈殿などが有る場合には目詰まり(Fouling)を生じるためタンパク質や糖タンパク質、ペプチド、核酸などを含む溶液或いは懸濁液を流すことが出来なくなり作業を中断せざるを得なくなり連続した操作は困難になる。
【0005】
このため近年ではカラムを用いないタンパク質の精製方法が着目されている(非特許文献2)。樹脂を充填したカラムを用いることを避けるタンパク質の精製装置として、「標的物質を液体供給源から精製するためのシステムであって、 液体供給源をクロマトグラフィー樹脂と接触させるための容器と、 クロマトグラフィー樹脂を濾過して、前記標的物質を前記クロマトグラフィー樹脂から回収するためのクロスフローフィルター(CFF或いはタンジェンシャルフィルター:TFFとも言う。)と、 前記容器と前記クロスフローフィルターを相互に接続し、フロー回路を通って前記クロマトグラフィー樹脂を含有する液体を流すためのフロー回路と、 前記フロー回路、前記容器、および前記クロスフローフィルターにおけるクロマトグラフィー樹脂と、 前記容器に送り出すようにつながれた、前記液体供給源と、 前記フロー回路を通って液体とクロマトグラフィー樹脂を循環させるための手段とを備える、システム(特許文献1)。」が知られているが、クロスフローフィルターの目詰まりのためメンテナンスが煩雑である。また、連続的にミキサーによりクロマトグラフィー樹脂スラリーと未精製標品を混合し、フィルターにより混合液の濃縮、分離する逆流クロスフロークロマトグラフィーのモジュール(特許文献2)が知られているが、このモジュールもフィルターの目詰まりやメンテナンスの煩雑さを回避することができない。
【0006】
流れの遠心力を利用して二相流液から質量の大きい物質を分離するサイクロン式分離機は古くから用いられているが、化学物質を含むスラリーと洗浄用のメタノールを分離するシステムに用いられることは知られているが(特許文献3)、ハイドロサイクロンを用いてスラリー中の標的物質を捕集する目的には使用されておらず、また抗体等タンパク質の精製には使用されていない。更にハイドロサイクロンで分離したスラリーをインラインミキサーで混合する方法は知られているが、インラインミキサーをハイドロサイクロンと結合し、インラインミキサーで混合、反応させたスラリーをハイドロサイクロンで分離する装置は知られていない。
【0007】
本発明は細胞やその破片などを含む培養液を直接、或いは懸濁液中の固形成分をハイドロサイクロンを用いて沈殿除去(ただし完全に除去する必要はない。)した後アフィニティークロマトグラフィー分離剤やイオン交換クロマトグラフィー分離剤などのスラリーとインラインミキサー内で吸着反応を行った後に未吸着成分と目的タンパク質成分を結合した分離剤をハイドロサイクロンにより分離する。さらに分離排出されたタンパク質結合分離剤は次のインラインミキサーとハイドロサイクロンを結合した装置(モジュール)に導かれ洗浄された後、目的タンパク質と樹脂の結合を阻害する溶液、或いは解離させることが出来る溶液と共に3番目のインラインミキサーとハイドロサイクロンからなる装置に導かれて目的タンパク質と吸着分離剤とが分離され目的タンパク質はハイドロサイクロンの上部からオーバーフローして回収される。一方タンパク質と解離した分離剤は次のインラインミキサーとハイドロサイクロンからなる装置に導かれ洗浄再生溶液で再生された後最初のインラインミキサーに導入され連続的に導入される細胞培養液などの目的タンパク質を含む懸濁液との反応に供される。
【0008】
このように本発明は細胞や細胞破片、或いは何らかの凝集体や沈殿などが存在する懸濁液であっても目詰まり(Fouling)を生じることなくタンパク質や糖タンパク質、ペプチド、核酸などを含む溶液から目的タンパク質を含む成分を連続的に分離することが出来る方法であり、またそのような連続した分離精製法に用いることが可能な装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2003-512594号公報
【文献】US2010/0193434A
【文献】特開平5-140044号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】杉山征輝、吉本則子、山本修一、「カラムスイッチングによる連続クロマトグラフィー分離操作」、食品工学誌、2017年、第18巻、2号、A9頁~A12頁
【文献】Petra Gronemeyer, Reinhard Ditz and Jochen Strub, “Trends in Upstream and Downstream Process Development for Antibody Manufacturing”, Bioengineering,(2014), Vol1, 188-212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
動物細胞の培養や微生物の培養などにより発現された目的タンパク質などはこれまで遠心分離や多段階のフィルターろ過操作により固形物を除去した清澄溶液とした後クロマトグラフィー分離剤をカラム筐体に細密充填したクロマトグラフィー充填カラムやカートリッジ又はハウジングと呼ばれる容器に充填されたフィルターなどを多段階用いて精製されてきた。しかし、密閉容器に細密充填したカラムやフィルターは目詰まりを生ずるため連続した操作が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
更に、本発明は、
図1および
図2にその一態様が示されたように、
〔1〕インラインミキサーとサイクロンを結合したモジュールを用いて、タンパク質を細胞培養液から連続的に精製する装置であって、
(a) 第一のモジュール(A:反応モジュール)のインラインミキサー(6)の導入口に、培養槽(1)または細胞分離装置(D)と第一のモジュールとを結ぶ配管(3)と、第第一の貯留槽(2)と第一のモジュールとを結ぶ配管(4)が分岐バルブ(5)を介して接続され、前記インラインミキサー(6)の排出口はハイドロサイクロン(7)の導入口に接続され、ハイドロサイクロン(7)の下部排出口には、第一の反応モジュールと第二のモジュールを結ぶ配管(8)が結合し、ハイドロサイクロン(7)の上部排出口には配管(9)が結合している第一のモジュールと、
(b) 第二のモジュール(B:溶出モジュール)のインラインミキサー(13)の導入口には、第一のモジュールと第二のモジュールを結ぶ配管(8)と、第二の貯留槽(10)と第二のモジュールを結ぶ配管(11)が分岐バルプ(12)を介して接続され、前記インラインミキサー(13)の排出口とハイドロサイクロン(14)の導入口は接続され、ハイドロサイクロン下部の排出口には第二のモジュールと他のモジュールとを結ぶ配管(15)が結合し、ハイドロサイクロン(14)上部排出口には、配管(16)が結合している第二のモジュールから構成される装置に関する。
【0013】
本発明は、また
図3にその一態様が示されたように、
〔2〕他のモジュールが、第三のモジュール(C:再生モジュール)として、インラインミキサー(20)の導入口に、第二のモジュール(B)と第三のモジュールを結ぶ配管(15)と、第三の貯留槽(17)と第三のモジュールを結ぶ配管(18)とが分岐バルプ(19)を介して接続され、前記インラインミキサー(20)の排出口とハイドロサイクロン(21)の導入口は接続され、ハイドロサイクロン(21)の下部排出口には第三のモジュールと第一の貯留槽(2)とを結ぶ配管(23)が結合し、ハイドロサイクロン(21)の上部排出口には配管(22)が結合している第三のモジュールである〔1〕に記載の装置に関する。
【0014】
更に、本発明は
図4にその一態様が示されているように、
〔3〕 細胞分離装置(D)が、培養槽(1)と細胞分離装置とを結ぶ配管(24)がハイドロサイクロン(25)の導入口と結合し、当該ハイドロサイクロン(25)の下部排出口は細胞分離装置と培養槽(1)とを結ぶ配管(26)と結合し、上部排出口は細胞培養装置と第一のモジュールとを結ぶ配管(3)から構成される細胞分離ユニットであることを特徴とする〔1〕または〔2〕記載の装置に関する。
【0015】
本発明はまた、
図5に一態様が示されているように、
〔4〕〔1〕記載の第一のモジュール(A)と第二のモジュール(B)を結ぶ配管(8)の間に洗浄用の第四のモジュール(E:洗浄モジュール)を1または2個挿入することを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の装置、および
〔5〕第四のモジュールが、第四のモジュール(E)のインラインミキサー(30)の導入口には、第一のモジュールと第四のモジュールを結ぶ配管(8)と、第四の貯留槽(27)と第四のモジュールを結ぶ配管(28)が分岐バルプ(29)を介して接続され、前記インラインミキサー(30)の排出口とハイドロサイクロン(31)の導入口は接続され、ハイドロサイクロン下部の排出口には第二のモジュールまたは新たな洗浄用モジュールへ接続する配管(8)が結合し、ハイドロサイクロン(31)上部排出口には、洗浄液を排出口へ移送する配管(32)が結合している請求項4に記載の装置に関する。
【0016】
更に本発明は、
〔6〕インラインミキサーとサイクロンを結合したモジュールを複数用いて、タンパク質を細胞培養液から連続的に製造する方法であって、
(a)第一のモジュールのインラインミキサーへ、培養槽から移送されたタンパク質を含有する細胞培養液と第一の貯留槽から移送された樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中のタンパク質をスラリー中の樹脂と結合させ、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを生成する工程、
(b)前記第一のモジュールのインラインミキサーによる混合工程で得たタンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを、サイクロンへ移送し、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーと細胞培養液に分離する工程、
(c)前記第一のモジュールのサイクロンによる分離工程で得たタンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを第二のモジュールに移送し、細胞培養液を第一の貯留槽へ移送する工程、
(d)第二のモジュールのインラインミキサー中で、前記工程で得たタンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーと、第二の貯留槽から移送された溶出液を混合し、溶出用スラリーを生成する工程、および
(e)前記第二のモジュールのインラインミキサーによる混合工程で得た溶出用スラリーをサイクロンへ移送し、タンパク質と、タンパク質と結合していない樹脂を含むスラリーに分離する工程を含む方法、
〔7〕〔6〕に記載の工程bと工程cの間に、第三のモジュールを用いた洗浄工程を入れることを特徴とする方法、
〔8〕〔7〕に記載の洗浄方法が、第三のモジュールのインラインミキサー中で、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーと、第四の貯留槽から移送された洗浄液を混合し、洗浄後の混合液をサイクロンに移送し分離する工程であることを特徴とする方法。
〔9〕第一のモジュールのインラインミキサーへ培養槽からタンパク質を含有する細胞培養液を移送する工程において、サイクロンを介して細胞とタンパク質を含有する細胞培養液とを分離し、分離した細胞は培養槽へ移送し、純化したタンパク質を含有する細胞培養液を、第一のモジュールのインラインミキサーに移送することを特徴とする〔6〕~〔8〕のいずれかひとつに記載の方法および
〔10〕樹脂がアフィニティ樹脂であることを特徴とする〔6〕~〔9〕のいずれかひとつに記載の方法に関する。
本発明はまた、
〔11〕インラインミキサーとサイクロンを結合したモジュールを複数用いて、タンパク質を細胞培養液から連続的に精製する装置、
〔12〕〔1〕記載の装置が、インラインミキサーにより細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中のタンパク質をスラリー中の樹脂と結合させ、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを生成させ、サイクロンにより樹脂を含んだスラリーと樹脂を含まない細胞培養液に分離する機能を持つ反応モジュールと、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと溶出液をインラインミキサーにて混合し、ハイドロサイクロンによりタンパク質と樹脂スラリーに分離する溶出モジュールから構成される装置、
〔13〕培養槽から流出するタンパク質を含む細胞培養液中に存在する細胞をハイドロサイクロンにより分離し、採取された細胞を培養槽へ移送し、当該細胞を除いたタンパク質を含む細胞培養液を、次の精製手段に移送する細胞分離装置を装着した〔11〕または〔12〕に記載の装置、
〔14〕 タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと洗浄液をインラインミキサーにて混合し、サイクロンによりタンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと廃液に分離する洗浄モジュールを装着した〔11〕~〔13〕のいずれかひとつに記載の装置。
〔15〕 反応モジュールと溶出モジュールを組み合わせた〔12〕~〔14〕のいずれかひとつに記載の装置において、当該装置の溶出モジュールで排出する樹脂スラリーを反応モジュールまたは樹脂スラリーの貯留槽に移送して、樹脂スラリーのサイクル利用を可能にした装置、および
〔16〕〔11〕~〔15〕のいずれか1項に記載の装置を用いたタンパク質の製造方法に関する。
本発明は更に、
〔17〕 インラインミキサーとサイクロンを結合したモジュールを用いて、タンパク質を細胞培養液から連続的に精製する装置であって、 タンパク質を含有する細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合して前記タンパク質が前記樹脂に結合されたスラリーを生成する第一のモジュール(反応モジュール)と、 該第一のモジュールにより精製されたスラリーと溶出液とを混合して、前記スラリーから前記タンパク質を溶出する第二のモジュール(溶出モジュール)とを有することを特徴とするタンパク質精製装置、
〔18〕 前記第二のモジュールで前記タンパク質が分離したスラリーと再生液とを混合して樹脂を含む再生樹脂スラリーを生成する第三のモジュール(再生モジュール)とを有することを特徴とする請求項17に記載のタンパク質精製装置、
〔19〕 培養槽から供給される細胞培養液から細胞を分離して前記第一のモジュールに前記タンパク質を含有する細胞培養液を供給する細胞分離モジュールを有することを特徴とする請求項17に記載のタンパク質精製装置、
〔20〕 前記第一のモジュールと前記第二のモジュールとの間に介在されて、前記第一のモジュールにより生成されたタンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーと洗浄液を混合して、タンパク質と結合した樹脂スラリーを洗浄する第四のモジュール(洗浄モジュール)を有することを特徴とする請求項17記載のタンパク質精製装置、
〔21〕 前記第一のモジュールは、細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中のタンパク質をスラリー中の樹脂と結合させ、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを生成させる第一のインラインミキサーと、樹脂を含んだスラリーと樹脂を含まない細胞培養液に分離する第一のハイドロサイクロンとを有することを特徴とする請求項17記載のタンパク質精製装置、
〔22〕 前記第二のモジュールは、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと溶出液を混合する第二のインラインミキサーと、タンパク質と樹脂スラリーに分離する第二のハイドロサイクロンとを有することを特徴とする請求項17に記載のタンパク質精製装置、
〔23〕 前記樹脂を含むスラリーを貯留する貯留槽を備え、
前記第三のモジュールは、前記再生樹脂スラリーを前記貯留槽に移送することを特徴とする請求項18記載のタンパク質精製装置、
〔24〕 前記細胞分離モジュールは、培養槽から流出するタンパク質を含む細胞培養液中に存在する細胞を分離して、採取された細胞を培養槽へ移送し、当該細胞を除いたタンパク質を含む細胞培養液を前記第一のモジュールに移送するハイドロサイクロンを有することを特徴とする請求項19記載の装置、および
〔25〕 前記第四のモジュールは、前記タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと前記洗浄液を混合する第四のインラインミキサーと、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと廃液に分離する第四のハイドロサイクロンとを有することを特徴とする請求項20に記載の装置。
【0017】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-058853号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は少量の細胞や細胞破片或いは宿主微生物などが含まれる懸濁状態の試料であってもその中から目的タンパク質を連続的に短時間で回収、精製することが出来る方法とその装置を提供する。少量の固形物を含み試料から直接目的タンパク質などを連続的に回収、精製することが出来ることにより小規模培養設備でも設備稼働時間によって比較的容易に大量の生産物を得られることが可能になり、生産性が高く、連続的生産により製造コストを抑制した効率的な製造が可能になる。
(1)本発明により動物細胞の培養液から細胞や細胞破片或いは沈殿物などを高度に分離除去すること無く抗体分子など目的タンパク質を連続的に分離することが出来る。
(2)本発明により従来用いられてきた分離材を充填したクロマトグラフィーカラムを用いること無く連続的にタンパク質の分離を行うことが出来る。
(3)本発明によりホローファイバーや連続遠心機などを用いること無く動物細胞の灌流培養が可能になり、抜き出した培養液からろ過フィルターやクロマトグラフィーカラムを用いず目的タンパク質を連続的に分離することが出来る。
(4)本発明の装置を用いることで大型の膜分離装置やクロマトグラフィー装置、大型クロマトグラフィーカラムなどの設備を用いること無く連続でタンパク質の分離が出来る。
(5)本発明の装置を用いることで装置の流路内で吸着分離剤の再生洗浄を行い循環させることが出来ることから少量の吸着分離剤で連続したタンパク質などの分離を繰り返すことが出来る。
(6)本発明は吸着分離剤をカラムに充填することが無く装置の流路内でスラリー状の吸着分離剤と反応させて不純物と分離したのち短時間の内に目的タンパク質を解離させることで目的タンパク質などの吸着による構造的変性を抑制することが出来る。
(7)本発明は吸着分離剤をカラムなどの容器に充填すること無く、スラリー状態で目的タンパク質などと反応させ、スラリー状態で洗浄を行うことが出来ることから宿主タンパク質や宿主DNA或いはRNAなど不純物との不必要な吸着を避けることで純度の高い目的タンパク質などを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は樹脂への抗体の吸着と分離を行う反応モジュールAである。
【
図2】
図2は樹脂からの抗体の分離を行う溶出モジュールBである。
【
図3】
図3は樹脂の再生を行うための再生モジュールCである。
【
図4】
図4は還流培養時の細胞の分離のための細胞分離装置Dである。
【
図5】
図5は抗体等が結合した樹脂の洗浄を行う洗浄モジュールEである。
【
図6】
図6は培養液からの抗体の連続精製装置である。
【
図8】
図8は細胞分取装置を装着した反応モジュールである。
【
図9】
図9はハイドロサイクロン評価用モジュールの模式図である。
【
図10】
図10は第一ハイドロサイクロンおよび第二ハイドロサイクロンを2第連結した場合の評価用モジュールの模式図である。
【
図11】
図11は、抗体サンプル溶液と精製用クロマト樹脂をインラインミキサーで混ぜた後、ハイドロサイクロンで樹脂を分離回収することにより抗体を回収できることを確認した試験に用いたモジュールの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明においてインラインミキサーとは、駆動部の無い静的混合装置であればどのようなものでもよいが、好ましくは細胞や樹脂へのダメージを考慮すると可動部の無いスタティックミキサー或いは流動床型のミキサーを用いることが好ましい。
【0021】
インラインミキサーは通常導入される2つの流体を液体の流れにより混合し排出するシンプルな構造のため、円筒状の形状の一方に導入口、液体の流出方向に排出口を持つが、本発明に用いるインラインミキサーは2つの流体を混合したものを一つの導入口に導入される形状を持つ。また排出口は液体の排出方向に一つの排出口を持てばよい。
【0022】
本発明においてハイドロサイクロンとは液体サイクロンを示し、液体サイクロン静止状態の機器へ処理液を注入することにより分離・分級・濃縮を行う能力を持つ駆動部の無い機器であればどのようなものでもよいが、代表的にはMozley型やDorr-Oliver型、Bradley 型、Rietema型、Krebs型、CBV/DEMCO型など様々なタイプのハイドロサイクロンが利用されているが細胞や樹脂へのダメージを考慮するとBradley型又はRietema型ハイドロサイクロンを用いることが好ましい。
これらのハイドロサイクロンは通常ロート状の形状をしており、ロート型の上部壁面に分離を行う混合物の導入口、ロート型の上部天井部に分離され純化された物質の上部排出口、ロート型の下端部に純化された物質を除いた混合物の下部排出口がある。
【0023】
本発明の特徴は、インラインミキサーとサイクロンを結合させた複数のモジュールを用い、各モジュールが樹脂への抗体の吸着と・分離、樹脂からの抗体の分離、樹脂の再生という個別の機能を有するために、シンプルかつトラブルの少ない抗体の精製装置が提供できる点にある。
【0024】
第一に、本発明の特徴は、インラインミキサーにより細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中のタンパク質をスラリー中の樹脂と結合させ、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを生成させ、サイクロンにより樹脂を含んだスラリーと樹脂を含まない細胞培養液に分離する機能を持つ反応モジュールに関する。
【0025】
反応モジュールは単独で用いても良いが、容量を増やすために複数の反応モジュールを並列に配置した装置、効率を増加するために反応モジュールを直列に配置した装置、または複数の反応モジュールを並列および直列に配置した装置として用いることもできる。
【0026】
本発明におけるタンパク質とは抗体、エリスロポエチン等の造血タンパク質、t-PA等の酵素、G-CSF,インターフェロンβ等のサイトカイン、インシュリン、ヒト成長ホルモン等のホルモン、B型肝炎ワクチン等のワクチン、血液凝固因子等医薬品に用いられるものであればどのようなものでも良いが、とりわけ抗体を対象とすることが好ましい。抗体としてはモノクローナル抗体を用いることが好ましく、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体を対象とすることがとりわけ好ましい。細胞培養液としては前記タンパク質を生産する細胞を培養し、タンパク質を生産した状態の培養液であればどのような培養液でも良い。前記タンパク質を生産する細胞としては大腸菌等の微生物細胞、酵母、或いはSf9やSf21 等の昆虫細胞に加え、CHO細胞、BHK細胞、NSO細胞、SP2/0細胞等の動物細胞が挙げられるが、とりわけ動物細胞を用いることが好ましい。
【0027】
本発明における樹脂とはアフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂が挙げられ、前記タンパク質と結合、分離するためのリガンドが結合した樹脂が好ましい。アフィニティークロマトグラフィーのためのリガンドとしては結合するタンパク質が抗体の場合は、プロテインA、プロテインG、プロテインL及びそれらの誘導体等を用いることが好ましくとりわけプロテインA及びその誘導体を用いることが好ましい。抗体以外のタンパク質の場合、HISタグ、GSTタグ等の合成リガンド、各種タンパク質に対応した抗体、各種タンパク質の受容体、各種タンパク質とその低分子または高分子の阻害剤等をリガンドとして用いることができる。またCu2+やZn2+などの金属イオンを担持させた金属キレートアフィニティー樹脂なども用いることが出来る。樹脂としてはこれらのリガンドが結合され、流動性に優れたものならどのようなもので良いが、ハイドロサイクロンによる分離を改善するためにある程度密度の高い無機材質を基材とした樹脂または合成高分子または天然高分子など有機系高分子を基材とした樹脂および高分子有機材料に無機材質を組み合わせた樹脂を用いることが好ましい。無機材質としてはガラス、シリカ、ジルコニウム、或いはステンレスやタングステンを用いた合金などが挙げられる。一方、合成高分子としてはポリスチレン樹脂、メタクリレート樹脂等が挙げられ、天然高分子としてはアガロース、デキストラン、セルロース、キチン、キトサン、マンナンなどから構成される樹脂が挙げられる。とりわけハイドロサイクロンによる分離を考慮して比重を上げるためにステンレスなどの不活性金属やタングステン合金などを天然高分子であるアガロースや合成高分子であるビニル系高分子などと混ぜ合わせた基材で構成される樹脂が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるイオン交換クロマトグラフィーに用いられる樹脂は、陰イオン交換樹脂または陽イオン交換樹脂のどのようなものでも良いが、とりわけ強陰イオン交換樹脂あるいは強陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。陰イオン交換樹脂としてはリガンドとして、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、トリメチルアミノエチル(TAME)基、4級アミノエチル(QAE)基、および1級アミノ(-NH2)や2級(-NHR)、3級アミノ基(-NR1R2)4級アミノ(Q)基などの置換基を有する樹脂が挙げられ、陽イオン交換樹脂としてはリガンドとしてカルボキシメチル(CM)、スルホメチル(SM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P),およびスルホネート(S)基などの置換基を有する樹脂が挙げられる。イオン交換に用いられる樹脂としてはこれらのリガンドが結合され、流動性に優れたものならどのようなもので良いが、ハイドロサイクロンによる分離を改善するためにある程度密度の高い無機材質を基材とした樹脂または合成高分子または天然高分子など有機系高分子を基材とした樹脂に加え、比重を上げるためにステンレスなどの不活性金属やタングステン合金などと天然高分子や合成高分子を混ぜ合わせた基材で構成される樹脂を用いることが好ましい。無機材質としてはガラス、シリカ、ジルコニウム、或いはステンレスやタングステンを用いた合金などが挙げられる。また合成高分子としてはポリスチレン樹脂、メタクリレート樹脂等が挙げられ、天然高分子としてはアガロース、デキストラン、セルロースから構成される樹脂が挙げられる。
【0029】
前記反応モジュールは、培養槽と、必要に応じて細胞分離装置を介して、配管により結合されることが好ましい。培養槽は前記タンパク質を生産する細胞を培養し、タンパク質を生産できる装置であればどのようなものでも良く、ステンレス製の培養槽であっても、シングルユース用のプラスチックまたは樹脂等により製作された培養槽であってもよい。
【0030】
培養方法はどのようなものでも良いが、フェドバッチ法による培養法、連続培養法等を用いることが好ましく、とりわけ連続培養法に用いることが好ましい。培養槽で前記タンパク質を生産する細胞を当業者が通常用いる培養条件および培地等にて培養することによりタンパク質を生産し、当該培養により生産されたタンパク質を含んだ細胞培養液が本発明に用いられる。細胞培養液中の細胞の濃度はパックドセルボリューム(Packed cell volume)が~約20%(v/v)以下であることが好ましい。培養液を移送する配管は、細胞培養液が円滑に流れる流路として用いられるものであればどのようなものでも良いが、ステンレス管、シングルユース用のプラスチック、ゴムまたはシリカ等の天然または合成の樹脂により製作されたチューブであってもよい。
【0031】
前記反応モジュールはまた、樹脂スラリーを貯留した貯留槽と配管により連結され、樹脂スラリーと前記細胞培養液を混合することができる。樹脂スラリーは前記樹脂が目的物質である抗体やタンパク質が効率的に結合するpH、好ましくはタンパク質の変性を抑制するために中性付近のpH緩衝液により生理的条件に近い濃度に調整されたものを用いることが好ましい。
【0032】
配管は前記と同義であり、必要に応じてポンプを組み込み、移送濃度を一定にすることが好ましい。細胞培養液を移送する配管と樹脂スラリーを移送する配管は、必要により分岐バルブを介して反応モジュールのインラインミキサーと結合される。分岐バルブは、通常タンパク質の製造装置に用いられるものであればどのようなものでも良いが、三方バルブを用いることが好ましい。
【0033】
第二に、本発明の特徴は、培養槽から流出するタンパク質を含む細胞培養液中に存在する細胞をハイドロサイクロンにより分離し、採取された細胞を培養槽へ移送し、当該細胞を除いたタンパク質を含む細胞培養液を、次の精製手段に移送する細胞分離ユニットに関する。次の精製手段はイオン交換クロマトグラフィー装置、アフィニティークロマトグラフィー装置等通常のタンパク質の精製に用いる手段であればどのようなものでも良いが、前記反応モジュールを用いることがとりわけ好ましい。
【0034】
第三に本発明の特徴は、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと溶出液をインラインミキサーにて混合し、ハイドロサイクロンによりタンパク質と樹脂スラリーに分離する溶出モジュールに関する。なお、分離されたタンパク質は貯蔵されるが、分離されたスラリーは再び前記スラリー貯蔵タンクに移送され、溶出モジュールにタンパク質と結合した抗体を供給するための装置としては、攪拌装置を有するタンク等、細胞培養液と樹脂スラリーを混合させ、細胞培養液中のタンパク質と樹脂スラリー中の樹脂リガンドに結合させ得る装置であればどのようなものでも良いが、本発明の前記反応モジュールを用いることが好ましい。
【0035】
溶出モジュールは単独で用いても良いが、容量を増やすために複数の溶出モジュールを並列に配置した装置、効率を増加するために溶出モジュールを直列に配置した装置、または複数の溶出モジュールを並列および直列に配置した装置として用いることもできる。
【0036】
溶出液としては、通常タンパク質のアフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーに用いる溶出液であればどのようなものでも良いが、
プロテインA等アフィニティークロマトグラフィーに用いるリガンドと結合した樹脂の場合は、溶出液のpHを5以下、好ましくはpH4~pH2、とりわけ好ましくはpH2.5~pH2にすることが好ましい。媒体としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、或いはリン酸や塩酸等の希薄溶液を用いる。イオン交換クロマトグラフィーに用いるリガンドと結合した樹脂の場合は、溶出液の塩濃度を増加することが好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を用いて、塩濃度を1M以下、好ましくは0.1M~0.5M、とりわけ好ましくは0.1M~0.3Mにして用いる。媒体としては、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等を用いる。
【0037】
第四に本件発明の特徴は、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと洗浄液をインラインミキサーにて混合し、サイクロンによりタンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと廃液に分離する洗浄モジュールに関する。洗浄モジュールは前記反応モジュールと樹脂に結合したタンパク質を分離する装置、好ましくは前記反応モジュールの間に設置することが好ましい。洗浄液としては、pH5~8、好ましくはpH6.5~8.0の水性媒体を用いることが好ましく、媒体としてはトリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液等を用いる。前記媒体には必要により0.1~1Mの塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩を加えることができる。
【0038】
第五に本件発明は、反応モジュールと溶出モジュールを組み合わせることにより細胞培養液からのタンパク質の製造装置が、当該装置の溶出モジュールで排出する樹脂スラリーを反応モジュールまたは樹脂スラリーの貯留槽に移送して、樹脂スラリーのサイクル利用を可能にした細胞培養液からのタンパク質の製造装置に関する。本発明の特徴はこれらの製造装置に細胞分離装置を組み合わせることにより細胞循環システムを持つ細胞培養液からのタンパク質の製造装置に関する。
【0039】
更に、これらの装置の反応モジュールと溶出モジュールの間に洗浄モジュールを組み込むことにより、洗浄工程が必要なタンパク質のための製造装置が提供される。
【0040】
第六に、本発明は、インラインミキサーにより細胞培養液と樹脂を含むスラリーを混合し、細胞培養液中のタンパク質をスラリー中の樹脂と結合させ、タンパク質と結合した樹脂を含んだスラリーを生成させ、サイクロンにより樹脂を含んだスラリーと樹脂を含まない細胞培養液に分離する方法に関する。本発明におけるインラインミキサー、細胞培養液、樹脂を含むスラリー、ハイドロサイクロンの定義は前記と同義である。
【0041】
第七に、本発明は、培養槽から流出するタンパク質を含む細胞培養液中に存在する細胞をハイドロサイクロンにより分離し、採取された細胞を培養槽へ移送し、当該細胞を除いたタンパク質を含む細胞培養液を、次の精製手段に移送する方法に関する。次の精製手段はイオン交換クロマトグラフィー装置、アフィニティークロマトグラフィー装置等通常のタンパク質の精製に用いる手段であればどのようなものでも良いが、前記反応モジュールを用いることがとりわけ好ましい。
【0042】
第八に本発明は、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと溶出液をインラインミキサーにて混合し、サイクロンによりタンパク質と樹脂スラリーに分離する方法に関する。溶出液の定義は前記と同義である。本発明を第六の発明および必要により第七の発明と組み合わせることにより、細胞培養液からのタンパク質の精製方法が構築される。
【0043】
第九に本発明は、タンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと洗浄液をインラインミキサーにて混合し、サイクロンによりタンパク質と結合した樹脂を含むスラリーと廃液に分離する洗浄方法に関する。洗浄液の定義は前記と同義であり、洗浄温度は4℃~40℃である。本発明は第六の発明、第八の発明、必要により第七の発明と組み合わせて使用することにより、細胞培養液からのタンパク質の精製方法が構築される。
【0044】
以下に本発明のタンパク質の製造装置による精製の一態様を
図6に示す。
細胞分離工程
図6のタンパク質の製造装置において、培地を供給するための貯留槽(102)を備えた培養槽(101)は、当該培養槽で生産した細胞培養液を精製するため、細胞培養液を循環使用するための細胞分離機(103)と接続されている。細胞分離機においては細胞培養液から細胞のみが分離され培養槽(101)へ送られ、細胞が分離したタンパク質を含む細胞培養液はキャプチャリング工程に用いるモジュールAの インラインミキサー(105)ヘ移送される。
キャプチャリング工程
キャプチャリング工程とは複数の精製手段を用いてタンパク質の製造を行う場合に、初期の精製工程を言う。
【0045】
細胞分離機(103)がモジュールAのインラインミキサー(105)と接続され、かつモジュールAのインラインミキサー(105)はプロテインA等吸着樹脂(A)用貯留槽(104)とも接続されているため、前記細胞分離工程で細胞が分離した細胞培養液はインラインミキサー中で樹脂(A)と混合され、細胞培養液中のタンパク質と樹脂(A)が結合するため、細胞培養液とタンパク質と結合した樹脂(A)とのスラリーを形成する。モジュールAのインラインミキサー(105)の排出口はモジュールAのサイクロン(106)の導入口と結合しているため、当該サイクロン中で細胞培養液とタンパク質と結合した樹脂(A)のスラリーは分離され、細胞培養液は上部排出口から、タンパク質と結合した樹脂(A)は下部排出口から排出される。モジュールAのサイクロン(106)の下部排出口は、モジュールBのインラインミキサー(108)と接続し、当該インラインミキサーは樹脂(A)溶出液用貯留槽(104)とも接続しているため、モジュールBのインラインミキサー(108)中で、タンパク質と結合した樹脂(A)と溶出液は混合されタンパク質は樹脂(A)から離脱する。当該インラインミキサーの排出口はモジュールBのサイクロン(109)の導入口と接続されているため、モジュールBのサイクロン(109)中でタンパク質と樹脂(A)は分離され、タンパク質は当該サイクロン上部排出口から樹脂(A)は下部排出口から排出される。タンパク質は配管(110)を介して次のポリッシング工程に用いるモジュールDのインラインミキサー(111)に送られる。
一方、モジュールBのサイクロン(109)の下部排出口はモジュールCのインラインミキサー(116)と接続され、当該インラインミキサーは樹脂再生液貯留槽(117)とも接続されているため、モジュールBのサイクロン(109)下部排出口から排出された樹脂(A)はモジュールCのインラインミキサー(116)中で再生液と混合され、当該インラインミキサーと接続しているモジュールCのサイクロン(118)中で再生液と分離する。分離した樹脂AはモジュールCのサイクロン下部排出口から配管(119)を介して樹脂(A)用貯留槽(104)へ送られる。
【0046】
ポリッシング工程
ポリッシング工程とは複数の精製手段を用いてタンパク質の製造を行う場合に、中期工程以降の精製工程を言う。
ポリッシング工程1
モジュールDのインラインミキサー(111)は配管(110)により前記キャプチャリング工程のモジュールBのサイクロンおよびイオン交換樹脂等の樹脂(B)貯留槽(123)と接続しているため、キャプチャリング工程で得られたタンパク質と樹脂(B)は当該インラインミキサー中で混合され、タンパク質と結合した樹脂(B)のスラリーが形成される。モジュールDのインラインミキサー(111)排出口はモジュールDのサイクロン(112)の導入口と接続しているため、モジュールDのサイクロン(112)中でタンパク質と結合した樹脂(B)のスラリーと残余の溶液は分離され、廃液は上部排出口からタンパク質と結合した樹脂(B)のスラリーは下部排出口から排出される。モジュールDのサイクロン(112)下部排出口はモジュールEのインラインミキサー(121)に接続し、当該インラインミキサーは樹脂(B)用溶出液貯留槽(124)とも接続しているため、当該インラインミキサー中でタンパク質と結合した樹脂(B)スラリーは溶出液と混合され、タンパク質は樹脂(B)と遊離する。モジュールEのインラインミキサー(121)排出口とモジュールEのサイクロン(122)の導入口とは接続しているため、当該サイクロン中でタンパク質と樹脂(B)は分離される。タンパク質はモジュールEのサイクロン(122)の上部排出口から、樹脂(B)は下部排出口から排出される。タンパク質は配管(115)を介してポリッシング工程2を遂行するモジュールEのインラインミキサーに移送される。当該サイクロン下部排出口から排出された樹脂(B)スラリーは配管(125)を介して樹脂(B)用貯留槽に移送され再利用される。
【0047】
ポリッシング工程2
モジュールFのインラインミキサー(113)は配管(115)により前記ポリッシング工程1のモジュールEのサイクロンおよび疎水性樹脂等の樹脂(C)貯留槽(133)と接続しているため、ポリッシング工程1で得られた粗精製タンパク質と樹脂(C)は当該インラインミキサー中で混合され、タンパク質と結合した樹脂(C)のスラリーが形成される。モジュールFのインラインミキサー(113)の排出口はモジュールFのサイクロン(114)の導入口と接続しているため、モジュールFのサイクロン(114)中でタンパク質と結合した樹脂(C)のスラリーと残余の溶液は分離され、廃液は上部排出口から、タンパク質と結合した樹脂(C)のスラリーは下部排出口から排出される。モジュールFのサイクロン(114)下部排出口はモジュールGのインラインミキサー(131)に接続し、当該インラインミキサーは樹脂(C)用溶出液貯留槽(134)とも接続しているため、モジュールGのインラインミキサー中でタンパク質と結合した樹脂(C)スラリーは溶出液と混合され、タンパク質は樹脂(C)と遊離する。モジュールGのインラインミキサー(131)排出口とモジュールGのサイクロン(132)の導入口とは接続しているため、当該サイクロン中でタンパク質と樹脂(B)は分離される。得られた精製タンパク質はモジュールGのサイクロン(132)の上部排出口から配管(120)を介してウイルス濾過、UF/DF膜等の高度精製工程を経て精製タンパク質となる。モジュールGのサイクロン(132)下部排出口から排出された樹脂(C)スラリーは配管(135)を介して樹脂(C)用貯留槽に移送され再利用される。
【0048】
なお、上記態様は本発明の位置態様であり、本発明はこれに限定されるものではなく、慣用的にタンパク質の精製に用いられている樹脂とその溶出、再生方法等を加えることも可能施ある。
【0049】
本発明では、このような装置の構成を採用することにより、高価な樹脂を繰り返し、再利用することも可能である。
【実施例】
【0050】
実施例1
図7は本発明のモジュールである。インラインミキサー(201、外径8mm、内径5mm、全長145mm、製品名 スタティックミキサーN40-172-0、株式会社ノリタケカンパニーリミテッド製)の導入口に三方継手(202)を接続し、インラインミキサーで混合する2種類の流体が他の2つの継手を介して導入される。インラインミキサーの導出口は接続チューブ(203)を介してハイドロサイクロン(204、外径8mm、内径5mm、全長190mm、自作)の導入口に接続されている。サイクロン下部には分離したスラリーの排出用と洗浄液の排出用の2つの流路に接続可能な三方コック(205)が接続され、サイクロン上部の排出口には、液体の流量を調整する流量調整装置(206、エアーコントロールバスブ、シングルタイプ、アズージャパン社製)が装着されている。
【0051】
実施例2
図8は細胞分離ユニットを装着した反応モジュールである。細胞分離ユニットのハイドロサイクロン(301、外径16mm、内径13mm、全長150mm、ポリアクリル製、自作)は培養槽からの細胞培養液を注入するための導入口(302)が設けられており、下端には、細胞を再び培養槽に循環させるための導出口と廃液の導出口に切り替えられる三方継手(303)が接続されている。ハイドロサイクロン上部の導出口は接合部(304)を介して、反応モジュールへ培養上清液を移送するパイプ(305)と接続されている。反応モジュールのインラインミキサー(307、外径8mm、内径5mm、全長145mm、製品名 スタティックミキサーN40-172-0、株式会社ノリタケカンパニーリミテッド製)はその導入口に三方継手(306)を接続し、インラインミキサーで混合する細胞上清液とゲルスラリーの2種類の流体が前記三方継手(306)を介して導入される。インラインミキサーの導出口は接続チューブ(308)を介してハイドロサイクロン(309、外径8mm、内径5mm、全長190mm、自作)の導入口に接続されている。ハイドロサイクロン下部には分離したスラリーの排出用と洗浄液の排出用の2つの流路に接続可能な三方継手(310)が接続され、サイクロン上部の排出口には、液体の流量を調整する流量調整装置(311、エアーコントロールバスブ、シングルタイプ、アズージャパン社製)が装着されている。
【0052】
実施例3
本実施例では、樹脂スラリー液からハイドロサイクロンにより樹脂を濃縮分離できることを確認した。
図9はその時に用いたモジュールの模式図である。樹脂としては、平均粒径が50μmのシリカゲル(大阪ソーダ社)を用いた。その樹脂250mLと溶媒(純水)750mLとを混合することで25%スラリー液を調整した。このスラリー液をポンプ(株式会社イワキ製モデルRD-05)を用いてハイドロサイクロンの導入口に注入し、一定時間の間にハイドロサイクロンの上部導出口、下部導出口から流出してくるスラリー液を回収し、それに含まれる、樹脂、および、溶媒(純水)の体積を測定することにより、樹脂の分離の度合いを確認した。実験の状況はビデオ撮影し、実験後にそれを解析して各作業にかかった時間を求めた。ハイドロサイクロンとしては、全長75mm、および、100mmのものを用い、ポンプの強度を変えることにより流速を調整し、サイクロンのサイズや流速による分離の度合いの違いを確認した。分離の度合いはハイドロサイクロン下部排出口および上部排出口における樹脂および溶媒の流速と、樹脂の割合を指標とした。表1Aに全長75mmのハイドロサイクロンの結果を、表1Bに全長100mmのハイドロサイクロンの結果を示す。
【0053】
【0054】
例えば、100mmのサイクロンに強度4で流した場合、1分間に下部導出口から0.7Lの樹脂と0.3Lの溶媒(純水)が流出し(樹脂の割合:70%)、上部導出口からは0.04Lの樹脂と3.32Lの溶媒(純水)が流出していた(樹脂の割合:1.2%)。このように、樹脂を分離することが可能であり、流速が早く、大きいサイクロン(100mm)の方が分離の度合いは良かった。
【0055】
実施例4
本実施例では、ハイドロサイクロンを2台連結し、上流の第1サイクロンの下部導出口から流出してくるスラリー液と、溶媒(純水)とを、エジェクター(旭有機材工業社製モデル:DAEJH18012)を介して混合し、それを下流の第2サイクロンに送り込んで、そこで樹脂の分離ができることを確認した。
図10はその時に用いたモジュールの模式図である。樹脂スラリー液としては、実施例3と同じく、シリカゲル(大阪ソーダ社)の25%スラリー液を用いた。第1サイクロンに樹脂スラリーを供給するためのポンプの強度を最大に設定し、第2サイクロンに溶媒(純水)を供給するためのポンプの強度も最大に設定して送液を行い、一定時間の間に第2サイクロンの上部導出口、下部導出口から流出してくるスラリー液を回収し、それに含まれる、樹脂、および、溶媒(純水)の体積を測定することにより、樹脂の分離の度合いを確認した。実験の状況はビデオ撮影し、実験後にそれを解析して各作業にかかった時間を求めた。第1サイクロン上部排出液、第2サイクロン下部排出液、第2サイクロン上部排出液における樹脂の流速、溶媒の流速および樹脂の割合を算出しその結果を、表2に示した。
【0056】
【0057】
表2に示すように、第2サイクロンに樹脂が供給されていて、そこで樹脂が分離されていた。すなわち、1分間に下部導出口から0.55Lの樹脂と0.6Lの溶媒(純水)が流出し(樹脂の割合:47.9%)、上部導出口からは0.02Lの樹脂と2.49Lの溶媒(純水)が流出していた(樹脂の割合:1.0%)。なお、第1サイクロンからの流出液と溶媒との連結において、通常の三方継手を用いると、樹脂が下流の第2サイクロンに供給されない場合があるので、エジェクターを介することが望ましい。
【0058】
実施例5
本実施例では、抗体サンプル溶液と精製用クロマト樹脂をインラインミキサーで混ぜた後ハイドロサイクロンで樹脂を分離回収することにより抗体を回収できることを確認した。
図11はその時に用いたモジュールの模式図である。本実施例では、抗体サンプル液としてリン酸バッファーで希釈した抗体溶液(1mg/mL)、抗体精製用のクロマト樹脂としてプロテインAを固定化したシリカゲル(平均粒径50μm、大阪ソーダ社)を用いた。抗体サンプル液(1mg/mL:1L)と樹脂スラリー液(25%樹脂:1L)は、三方継手で合流させた後、インラインミキサーに導入して十分にミキシングしてから分離用のハイドロサイクロンの導入口に流入するようにした。各溶液が定常的に流れるようになった後、ハイドロサイクロンの上部導出口、下部導出口から流出してくるスラリー液それぞれを、約16秒間回収した。下部導出口から流出してくるスラリー液に関しては、流出後直ちにフィルター濾過により迅速に樹脂と溶媒(抗体サンプル液)とを分離し、樹脂のみを回収した。回収した樹脂をリン酸バッファー100mLにより2回洗浄した後、溶出バッファー(0.1Mグリシン塩酸、pH2.5)100mLを投入して吸着していた抗体を溶出した。この操作を7回繰り返し、溶出されてくる抗体を回収し、280nmの吸光度を測定することにより抗体を定量した。実験の状況はビデオ撮影し、実験後にそれを解析して各作業にかかった時間を求めた。ただし、本実施例では、インラインミキサーとして、上部導出口を塞いだハイドロサイクロンを上下逆向きに設置したものを用いた。また、分離用ハイドロサイクロンの上部導出口にピンチコックをセットすることにより、上部導出口からの溶液の流出を抑制した。
【0059】
ハイドロサイクロン導入前のポンプによるスラリー溶液の流速、サイクロン下部排出口、上部排出口の樹脂の流速、溶液の流速、樹脂の割合を表3に示した。
【0060】
【0061】
また、抗体の回収率、吸着量、抗体送液量および処理時間を表4に示した。
【0062】
【0063】
結果は、表3および表4に示すように、分離用のハイドロサイクロンにより樹脂は分離されており、その樹脂から投入量の約66%の抗体が回収されていた。
【0064】
実施例6.
本実施例では、
図11に示したモジュールを用いて、培養上清(抗体発現細胞培養液から細胞除去した上清)から抗体を精製できることを確認した。培養上清としては抗体濃度が1.16mg/mLの培養上清を、精製用のクロマト樹脂としては実施例5と同じプロテインA固定化シリカゲルを用いた。実験は実施例5と同様に行ったが、回収した樹脂の洗浄は、リン酸バッファー200mLにより5回行い、洗浄後の溶出は溶出バッファー200mLで5回行った。ハイドロサイクロン導入前のポンプによるスラリー溶液の流速、サイクロン下部排出口、上部排出口の樹脂の流速、溶液の流速、樹脂の割合を表5に示した。
【0065】
【0066】
また、抗体の回収率、吸着量、抗体送液量および処理時間を表6に示した。
【0067】
【0068】
結果は、実施例5と同様に分離用のハイドロサイクロンにより樹脂は分離されており、その樹脂から投入量の約69.4%の抗体が回収されていた(表5、表6)。
【0069】
実施例7.
本実施例では、
図13に示したモジュールを用いて、培養液(抗体発現細胞を含む)から抗体を精製できることを確認した。培養液としては、抗体濃度が3.15g/L、細胞数が34X10
6細胞/mLの培養液を精製用のクロマト樹脂としては実施例5と同じプロテインA固定化シリカゲルを用いた。実験は実施例5と同様に行ったが、回収した樹脂の洗浄は、リン酸バッファー300mLにより12回行い、洗浄後の溶出は溶出バッファー100mLで7回行い、回収定量した。ハイドロサイクロン導入前のポンプによるスラリー溶液の流速、サイクロン下部排出口、上部排出口の樹脂の流速、溶液の流速、樹脂の割合を表7に示した。
【0070】
【0071】
また、抗体の回収率、吸着量、抗体送液量および処理時間を表8に示した。
【0072】
【0073】
結果は、実施例5と同様に分離用のハイドロサイクロンにより樹脂は分離されており、その樹脂から投入量の約78.4%の抗体が回収されていた(表7,8)。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によりタンパク質の連続製造に適し、メインテナンスフリーで、樹脂の再生効率を高めた、タンパク質とりわけバイオ医薬品製造装置に用いるモジュールが提供される。
【符号の説明】
【0075】
1.培養槽、2.貯留槽、3.配管、4.配管、5.分岐バルブ、6.インラインミキサー、7.ハイドロサイクロン、8.配管、9.配管、10.貯留槽、11.配管、12.分岐バルブ、13.インラインミキサー、14.ハイドロサイクロン、15.配管、16.配管、17.貯留槽、18.配管、19.分岐バルブ、20.インラインミキサー、21.ハイドロサイクロン、22.配管、23.配管、24.配管、25.ハイドロサイクロン、26.配管、27.貯留槽、28.配管、29.分岐バルブ、30.インラインミキサー、31.ハイドロサイクロン、32.配管、101.培養槽、102.貯留槽、103細胞分離機、104.貯留槽、105.インラインミキサー、106.ハイドロサイクロン、107.貯留槽、108.インラインミキサー、109.ハイドロサイクロン、110.配管、111.インラインミキサー、112.ハイドロサイクロン、113.インラインミキサー、114.ハイドロサイクロン、115.配管、116.インラインミキサー、117.貯留槽、118.ハイドロサイクロン、119.配管、120.配管、121.インラインミキサー、122.ハイドロサイクロン、123.貯留槽、124.貯留槽、125.配管、131.インラインミキサー、132.ハイドロサイクロン、133.貯留槽、134.貯留槽、135.配管、201.インラインミキサー、202.三方継手、203.接続チューブ、204.ハイドロサイクロン、205.三方コック、206.流量調整装置、301.ハイドロサイクロン、302.導入口、303.三方継手、304.接合部材、305.パイプ、306.三方継手、307.インラインミキサー、309.ハイドロサイクロン、310.三方継手、311.流量調整装置
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。