(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ブレーキの必要な接触変数を決定する方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/172 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
(21)【出願番号】P 2020529581
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2018082730
(87)【国際公開番号】W WO2019105946
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】102017011148.0
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80,D-80809 Muenchen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラーゼル
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012219984(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つのブレーキ(26
)の必要な接触変数(CSet,FCIpSet)を決定する方法であって、
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の減速変数(Frb,Mrb)の少なくとも2つの目下の値を決定し、
前記減速変数(Frb,Mrb)の前記少なくとも2つの目下の値を、可変フィルタ(21)によって、前記ブレーキ(26)の平均減速変数(Frbmean)に処理し、
前記平均減速変数(Frbmean)と目下の接触変数(C,FCIp)とから前記少なくとも1つのブレーキ(26)の状態変数(MUEB)を決定し、
必要な減速変数(FrbSet)と前記状態変数(MUEB)とから、前記少なくとも1つのブレーキ(26)の必要な接触変数(CSet,FCIpSet)を決定
し、
前記可変フィルタ(21)を、前記ブレーキ(26)の回転数(ndisc)に関連して変える、
方法。
【請求項2】
前記減速変数(Frb,Mrb)の前記少なくとも2つの目下の値をさまざまな時点で決定する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の前記平均減速変数(Frbmean)を、前記ブレーキ(26)のブレーキディスク(28)の整数倍の回転にわたって決定する、
請求項1
または2記載の方法。
【請求項4】
前記状態変数(MUEB)を、前記平均減速変数(Frbmean)と前記目下の接触変数(C,FCIp)との商として計算し、
前記商は、
平均減速変数(Frbmean)/目下の接触変数(C,FCIp)、または
目下の接触変数(C,FCIp)/平均減速変数(Frbmean)
であるように設計されている、
請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記目下の接触変数(C,FCIp)を、
・センサ(24)によって決定する、かつ/または
・前記センサ(24)の複数の値から平均化する、かつ/または
・前記少なくとも1つのブレーキ(26)の幾何学的な境界条件および物理的な境界条件を表すパラメータ(P0,K_FP)による前記センサ(24)の少なくとも1つの値の処理から決定する、
請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの所望の減速変数(FbrSet)から、前記車両の前記少なくとも1つのブレーキ(26)の少なくとも1つの必要な減速変数(FrbSet)を決定する、
請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の前記平均減速変数(Frbmean)と、
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の前記必要な減速変数(FrbSet)と、
から、付加的な接触変数(Ckorr)を決定し、前記付加的な接触変数(Ckorr)ぶん前記必要な接触変数(CSet,FCIpSet)を修正する、
請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の前記必要な接触変数(CSet,FCIpSet)を、前記目下の接触変数(C,FCIp)によって、前記接触変数の調整偏差(dC)に処理する、
請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記車両は、鉄道車両である、
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキ(26)は摩擦ブレーキである、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
車両内に設置されるように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施する装置(18)であって、前記装置(18)は、
ステップを実行するための少なくとも1つの処理ユニット(18)と、
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の少なくとも1つの減速変数(Frb,Mrb)を受け取るように構成されている少なくとも1つのインターフェースと、
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の目下の接触変数(C,FCIp)を受け取るように構成されている少なくとも1つのインターフェースと、
必要な接触変数(CSet,FCIpSet)または前記接触変数(C,FCIp)の調整偏差(dC)を、さらなる処理のために前記車両に提供するように構成されている少なくとも1つのインターフェースと、
を有している装置(18)。
【請求項12】
前記装置(18)は、前記少なくとも1つのブレーキ(26)の回転数(ndisc)を受け取るように構成されている少なくとも1つのインターフェースを有している、
請求項11記載の装置(18)。
【請求項13】
前記装置(18)は、前記車両の必要な減速変数(FbrSet)を受け取るように構成されている少なくとも1つのインターフェースを有している、
請求項11または12記載の装置(18)。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するシステムであって、前記システムは、
前記少なくとも1つのブレーキ(26)の少なくとも1つの減速変数(Frb,Mrb)を決定するように構成されている少なくとも1つのセンサ(22)と、
請求項11から13までのいずれか1項記載の装置(18)と、
を有しており、
前記少なくとも1つのセンサ(22)は、前記インターフェースを介して前記減速変数(Frb,Mrb)の目下の値を前記装置(18)に伝送するように構成されている、
システム。
【請求項15】
前記システムは、前記少なくとも1つのブレーキ(26)の回転数(ndisc)を特定する少なくとも1つのセンサ(20)を有しており、
前記少なくとも1つのセンサ(20)は、前記インターフェースを介して前記回転数(ndisc)の目下の値を前記装置(18)に伝送するように構成されている、
請求項14記載のシステム。
【請求項16】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施する車
両であって、前記車両は、
請求項11から13までのいずれか1項記載の装置(18)または
請求項14または15記載のシステム
を有している車両。
【請求項17】
機械可読担体上に格納されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実施するプログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキの必要な接触変数を決定する方法ならびにこの方法を実施する装置、システムおよび鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
動いている相手方部品に摩擦ライニングを押し付けることによってブレーキ作用を引き起こすブレーキ、特に摩擦ブレーキの動作を改善するため、もしくはその摩耗を低減するために、必要な接触力を、ブレーキの動作状態に関連して次のように調節することが合理的である。すなわち一方では、設定される接触力が、ブレーキにおける摩耗を低減するために可能な限り低くなり、他方では、設定される接触力が、ブレーキ作用を最適化するためにブレーキの動作状態に合わせて調節されるように調節することが合理的である。このような考察はさらに、そのようなブレーキを有する車両、特に鉄道車両の動作に対する安全性および経済性の点で利点をもたらす。
【0003】
国際公開第2014/067786号から、摩擦ブレーキの減速変数、すなわち、摩擦ライニングと相手方部品との間、すなわちブレーキライニングとブレーキディスクとの間の摩擦力または摩擦トルクが特定される方法が知られている。さらに、ブレーキディスクへのブレーキライニングの接触変数、すなわち、例えば、接触力または接触面圧が特定される。これらは続いて、ブレーキの動作状態を特徴付ける変数に再計算される。この場合には、例えば、ブレーキライニングとブレーキディスクとの間の支配している摩擦値が計算される。
【0004】
このような摩擦値を用いてここで、ブレーキの所望の減速変数から、そのために必要な接触変数を特定することができ、ここで摩擦値を取り入れることによって、ブレーキにおいて目下支配している動作状態が考慮される。
【0005】
この方法の欠点は、瞬間的な測定値である減速変数が強い変動を受けやすいということである。さらに、ブレーキの減速変数の特定は、さまざまな動作状態に関連し、許容誤差と摩耗とに基づいて、ブレーキディスクの1回転にわたって摩擦値の差異が発生し得ることが考慮されない。これによって、この特定はエラーを伴い、それほどロバストに行われなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術に基づいて、それぞれ上述の問題を解決し、必要な接触変数をロバストに特定することを可能にする方法、装置、システム、鉄道車両およびコンピュータプログラム製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、独立請求項によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項の対象である。
【0008】
本発明では、少なくとも1つのブレーキ、特に摩擦ブレーキの必要な接触変数を決定するために用いられる方法が提供され、ここではブレーキの減速変数の少なくとも2つの目下の値が、有利にはその1回転毎に決定され、ここで減速変数の少なくとも2つの目下の値は、可変フィルタによって、ブレーキの平均減速変数に処理される。この平均減速変数と目下の接触変数とから、次に、ブレーキの状態変数が特定され、ここでこの状態変数から、次に、ブレーキの必要な減速変数によって、ブレーキの必要な接触変数が決定される。
【0009】
ここで有利には、ブレーキライニングの締め付け力、または加えられたブレーキ圧または制動時のブレーキディスクへのブレーキライニングの押し付けに対する尺度を表す別の適切な変数を接触変数と見なすことができる。
【0010】
ここで有利には、ブレーキディスクとブレーキライニングとの間の摩擦力または摩擦トルク、またはブレーキ、特にブレーキディスクの減速に対する尺度を表す別の適切な変数を減速変数と見なすことができる。ブレーキディスクの減速に対する摩擦力もしくは摩擦トルクの正比例によって、ブレーキディスクの減速、すなわち、例えば、その角加速度または時間の経過に伴う回転数変化も減速変数と見なすことができる。
【0011】
有利には、減速変数の2つの目下の値は次のように決定される。すなわちこれらが、実質的に、ブレーキの目下の動作を表し、かつ古くならないように、すなわち遅れが0.数秒以内、特に0.5秒以内であるように決定される。有利には、減速変数の2つの目下の値は、0.1秒未満で決定される。
【0012】
有利には減速変数の目下の値は、ブレーキ、特にブレーキライニングに対するブレーキディスクの種々の位置で、目下の値が2つの場合には、有利にはそれぞれ180°の回転で、特に有利には、値が2つより多い場合には、ブレーキディスクにわたった均等な分布で特定されるので、減速変数の値を、できるだけブレーキディスクの全領域にわたって特定することができる。
【0013】
有利には、ブレーキの減速変数の目下の値をさらに処理するために、これらの値は、可変フィルタによって、ブレーキの平均減速変数に処理される。
【0014】
有利には、平均減速変数はここで、減速変数の目下の値の平均値を表す。
【0015】
有利には、可変フィルタにおける処理は、例えば、ブレーキディスクの製造公差および/または摩耗および/または変形および/または加熱等から生じ得る特定の周波数をさらなる処理から除外するために、ハイパスフィルタリングまたはローパスフィルタリングまたは別の適切な方法で行われる。
【0016】
有利にはこのような可変フィルタは、ブレーキの動作状態にわたって可変であるように設計され、その結果、平均減速変数を、ブレーキの動作条件に関連して特定することができる。
【0017】
ここで、有利には、ブレーキディスクとブレーキライニングとの間の平均摩擦力または平均摩擦トルクまたはブレーキ、特にブレーキディスクの減速に対する尺度を表す別の適切な平均変数を平均減速変数と見なすことができる。ブレーキディスクの平均減速に対する平均摩擦力もしくは平均摩擦トルクの正比例によって、ブレーキディスクの平均減速、すなわち、例えば、その平均角加速度またはその平均的な、時間の経過に伴う回転数変化も、平均減速変数と見なすことができる。
【0018】
有利には次に、平均減速変数と、同様に特定されたまたは呼び出された目下の接触変数とからブレーキの状態変数が決定される。
【0019】
状態変数は、ここで有利には、これが、目下の接触変数を平均減速変数にするブレーキの変換能力を表すように設計されている。この変換能力は、例えば、ブレーキライニングの摩耗、ブレーキライニングまたはブレーキディスクの過熱によって、またはブレーキライニングまたはブレーキディスク上の水分または汚れ、例えば油の付着によって大幅に変化する可能性があり、これはこのような状態変数によって検出される。
【0020】
有利にはブレーキの必要な減速変数とブレーキの状態変数とから、このために必要な接触変数が決定され、これによって、必要な減速変数をブレーキの動作状態に関連して変換するために、ブレーキライニングの押し付けもしくは締め付けが明確に決定される。
【0021】
これは、接触変数が設定されるだけでなく、ブレーキの動作状態を考慮して特徴付けられるという利点を有している。
【0022】
ブレーキの減速変数の目下の値の特定は、有利には、制動過程のさまざまな時点で行われる。したがって、ブレーキもしくはブレーキディスクの位置を特定することができない場合でも、ブレーキの減速変数の目下の値が、ブレーキ、特にブレーキディスクのさまざまな位置、すなわち角度位置でも特定されることを保証することができる。制動中にブレーキディスクの回転速度が変化するので、ブレーキの減速変数が、例えば同じ時間間隔を伴う特定時点で、常に、ブレーキディスクの種々の位置で検出される。
【0023】
有利には、減速変数の少なくとも2つの値がブレーキディスクの1回転内で特定されるように、これらのさまざまな時点が選択されていることが保証されている。これは、例えば、ブレーキディスクの可能な最大回転速度を特定し、そこから減速変数を特定するために必要な時間間隔が導出されることによって保証可能である。これによって、最大回転速度のもとで、2つの時点の間で、ブレーキディスクが有利には360°未満、特に有利には最大で180°回転したことが保証される。
【0024】
有利には可変フィルタは、ブレーキ、特にブレーキディスクの回転数に関連して適合される。有利にはこれは、回転数に関連するコーナー周波数を備えた、調整技術の伝達要素、例えばPT1要素であり、これによって、減速変数の値における変動を低減させる、または特に有利には除去することが可能になる。
【0025】
別の有利な実施形態では、可変フィルタは、例えば、さらなる分析のために特定の周波数帯域を規定し、それを低すぎるもしくは高すぎる周波数から区別するために、複数の、有利には2つの、回転数に関連する境界周波数を有している。これによって、減速変数の目下の値のさらなる処理から高周波の変動を除外するだけでなく、さらに、例えば内燃機関を低い回転数で励起することによる、低周波の変動も除外することができる。
【0026】
別の有利な実施形態では、可変フィルタは、減速変数の検出値から平均値を構成し、したがって、ブレーキの平均減速変数を決定する。この平均化は、さらなる処理に対して、不所望な変動を除外するのにも適している。
【0027】
有利にはブレーキの平均減速変数は、ブレーキディスクの整数倍の回転にわたって決定される。これは1回、2回、またはそれより多くの回転であり得る。ここでの利点は、これによって、ブレーキ内に存在する許容誤差と不正確さとが1回転にわたって除去されることである。例えば、減速変数の値がブレーキディスクの90°だけの回転にわたって特定される場合、ブレーキの平均減速変数は、同じ接触力のもとで、残りの270°で、特定された値と大幅に異なる可能性がある。1回の完全な回転もしくは複数回の完全な回転にわたって値を特定することによって、このような問題を除去することができる。
【0028】
有利には、状態変数は、ブレーキの平均減速変数と目下の接触変数との商として次のように特定される値である。
平均減速変数/目下の接触変数、または
目下の接触変数/平均減速変数
【0029】
2つの計算規則のうちのどちらを使用するのかはここで重要ではない。どちらも、平均減速変数と目下の接触変数との比率を示しており、すなわち、ブレーキがどのようにして目下の接触変数から平均減速変数を変換することができるのかの情報を返す。
【0030】
有利には、状態変数は、無次元の摩擦値であり、ここで平均摩擦力が平均減速変数として使用され、目下の接触力が目下の接触変数として使用される。
【0031】
有利には、このような商の別の設計が可能であり、これは例えば、平均減速変数としてブレーキディスクの平均摩擦トルクまたは平均減速を使用することによって、かつ目下の接触変数として目下のブレーキ圧を使用することによって行われる。このようにして生じた状態変数はここで、通常、もはや無次元ではなくなるが、このことは、このような状態変数を処理するための別の方法が構成されている場合には、重要ではない。
【0032】
有利には目下の接触変数はセンサによって決定される、かつ/またはこのようなセンサの複数の値から平均化される、かつ/またはブレーキの幾何学的な境界条件および/または物理的な境界条件を表す複数のパラメータによる少なくとも1つのセンサ値の処理から決定される。
【0033】
有利にはセンサは、ブレーキの目下のブレーキ圧、または有利にはブレーキディスクへのブレーキライニングの目下の接触力を特定する。これは、有利には、例えばブレーキに、もしくはブレーキにブレーキ圧を伝送するライン内に設けられている圧力センサによってブレーキ圧を特定する際に行われる。目下の接触力を、例えば、ロードセルまたは力測定のための別の適切な装置によって特定することができる。
【0034】
有利には目下の接触変数は、さらなる処理の前に測定のばらつき、変動等を除去するために、ブレーキの平均減速変数の特定に比肩可能な、センサ値の平均化もしくはフィルタリングから特定される。
【0035】
有利にはさらなる処理のために、センサの値は、ブレーキの幾何学的な境界条件および/または物理的な境界条件を表すパラメータによって処理される。例えば、接触力の直接的な特定が不可能な場合、ブレーキ圧、または択一的に、接触力に対して幾何学的関係にある、特定された別の力を、ブレーキのパラメータを処理することによって接触力に再計算することができる。例えば、ブレーキ圧は、それが作用する面を考慮することによって接触力に再計算可能である。さらに、有利には別の物理的な境界条件がパラメータによって考慮され、これは例えばブレーキライニングをブレーキディスクに当てるために克服されなければならないリターンスプリングの予荷重力または付着に基づいて、解放状態におけるその初期位置からブレーキライニングを動かすために克服されなければならない「引き離し力」である。
【0036】
有利にはブレーキの必要な減速変数は、その中にブレーキが設置されている車両の所望の減速変数から特定される。車両は、ここで有利には、少なくとも1つのそのようなブレーキを有している。
【0037】
有利にはブレーキの必要な減速変数はここで、車両全体の所望の減速または所望のブレーキ力から特定される。有利にはここから、すべてのブレーキの減速変数、特に有利には各ブレーキに対する個別の減速変数が特定され、ここでさらに、個々のブレーキもしくは車両の幾何学的なパラメータが特定に取り入れられる。
【0038】
本発明の別の有利な実施形態では、さらに、ブレーキの平均減速変数とこれに必要な減速変数とから、付加的な接触変数が決定され、必要な接触変数がこのぶん修正される。
【0039】
有利にはこれによって、必要な接触変数の決定においてエラーもしくは偏差が発生した場合でも、実際の接触変数の調節が保証されるように、必要な接触変数が修正されることが実現される。これによって、例えばブレーキの幾何学的な状況の記述における偏差が、必要な接触変数の特定に悪影響を与えないことが保証される。
【0040】
有利には、このような付加的な接触変数は、コントローラによって特定される。特に有利には、平均減速変数と必要な減速変数との差は、さらなる処理のための入力変数としてそのようなコントローラに用いられる。
【0041】
有利にはコントローラ自体は、積分コントローラ(Iコントローラ)、比例積分コントローラ(PIコントローラ)として、または特に有利には比例積分微分コントローラ(PIDコントローラ)として構成されている。このようなコントローラは、関連する文献に記載されているこの種のコントローラに対して、さまざまな適用方法もしくは調節方法が存在しているので、これが容易に適用されるという利点を有している。さらに、このようなコントローラは、生じ得る調整偏差、すなわち平均減速変数と必要な減速変数との差をゼロに減らすことができるという利点を有している。
【0042】
さらに、別の実施形態では、調整偏差をゼロに減らすように構成されている別のコントローラ、例えば状態コントローラ、非線形コントローラまたはスイッチングコントローラの形態の別の調整方法が可能である。
【0043】
本発明の別の有利な実施形態では、少なくとも1つのブレーキの必要な接触変数は、目下の接触変数によって、接触変数の調整偏差に処理される。
【0044】
目下の接触変数は、この方法において、ブレーキの状態条件を特定するために処理されるので、このような調整偏差を、有利には差を形成することによって、または別の適切な方法で実行することが考えられる。このようにして特定された調整偏差を、例えば、目下のブレーキ圧の調整を実行するブレーキ圧コントローラに提供することができる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、ブレーキは、特に鉄道車両において提供される。鉄道車両には通常、このような摩擦ブレーキが多数装備されており、上述した方法の適用は、このようなブレーキに有利に作用する。
【0046】
一方では、車両減速の調節が最適化されているため、例えば通常の状況では適切であったが、ブレーキディスクが湿っている場合には小さすぎる、ブレーキにおける過度に小さい接触力に基づくブレーキ距離の延長が回避される。他方では、例えば、ブレーキにおける過度に高い接触力に基づいて生じるだろう、ブレーキの摩耗も低減される。
【0047】
したがって、このような方法は、一方では、そのような鉄道車両の動作の安全性を高め、他方では、そのような鉄道車両のブレーキの摩耗を低減するという利点を有している。これは特に、そのような鉄道車両の動作に対して、経済的な観点から有利である。
【0048】
本発明の別の有利な実施形態では、このような方法を実施する装置が提供されており、ここでこのような装置は、車両内に設置されるように構成されている。この装置は、有利には、ステップを実行するための少なくとも1つの処理ユニットを有しており、さらに少なくとも1つのブレーキの少なくとも1つの減速変数を受け取るように構成されている少なくとも1つのインターフェースと、少なくとも1つのブレーキの目下の接触変数を受け取るように構成されている別のインターフェースと、さらなる処理のために必要な接触変数を車両に提供するように構成されている別のインターフェースとを有している。
【0049】
装置は、ここで有利には、処理ユニットを含み、上述したインターフェースを有している制御機器の形態である。有利にはこれらのインターフェースは、それを介して必要な値を受信することができる、センサに対する接続もしくはデータラインとして理解される。
【0050】
本発明の別の有利な実施形態では、このような制御機器は、車両内に既に設けられており、このような方法を実施するように構成されている制御機器である。
【0051】
有利には装置は、少なくとも1つのブレーキの回転数を受け取るように構成されている少なくとも1つの別のインターフェースを有している。上述したように、これは、装置がこのようなインターフェースを介して回転数センサと接続されていることによって行われ、この回転数センサは、少なくとも1つのブレーキの回転数を装置に提供する。択一的にデータラインが設けられており、このデータラインを介して、回転数が例えば車両バスを介して提供され得る。
【0052】
本発明の別の有利な実施形態では、装置は、車両の必要な減速変数を受け取るように構成されている別のインターフェースを有している。このようなインターフェースは、有利には、車両バスに対するデータ接続の形態で存在していてよく、それを介して、装置に、相応するデータが供給される。
【0053】
本発明の別の有利な実施形態では、システムが提供されており、このシステムは、上述した方法を実施するように構成されており、少なくとも1つのブレーキの少なくとも1つの減速変数を決定するように構成されている少なくとも1つのセンサと、上述した装置とを有しており、ここでこのセンサは、減速変数の目下の値を、相応するインターフェースを介して装置に伝送する。
【0054】
本発明の別の有利な実施形態では、付加的に、少なくとも1つのブレーキの回転数を特定するセンサを有するシステムが提供されており、ここでこのセンサは、さらなる処理のために相応するインターフェースを介して回転数の目下の値を装置に伝送する。
【0055】
上述したシステムの2つの実施形態は、それらが一体型構成部分として構成されるという利点を有しており、したがって車両に省スペースに設置することができ、必要なセンサと装置との間の構築的な労力、例えばデータラインの敷設は不要である。
【0056】
本発明の別の有利な実施形態では、上述の方法を実施するように構成されている車両、特に鉄道車両が提供されており、ここでこの車両は、上述の装置に相応する装置または上述のシステムに相応するシステムを有している。
【0057】
車両は、設置された装置またはシステムによって方法を実施することができ、それによって、自身の摩擦ブレーキを最適に、もしくは摩耗を減らして動かすことができる。
【0058】
本発明の別の有利な実施形態では、本発明は、上述の方法を実施する、機械可読担体上に格納されているプログラムコードを備えて構成されているコンピュータプログラム製品の形態である。
【0059】
これは、プログラムコードが、車両、特に鉄道車両の制御機器等の制御装置に容易に伝送可能であり、これによってこれらの制御装置がこの方法を実施することができるという利点を有している。これによって、既存の車両の機能を改良もしくは拡張することができる。
【0060】
以降で本発明を、添付の図面を参照して、有利な実施例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】個々のステップの基本的な構造を示している。
【
図3】本発明の方法を実施するための処理構造を備える装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1~
図3は左下部分においてそれぞれ、通常は車両、特に鉄道車両内に提供されているブレーキ26の典型的な構造を概略的に示している。
【0063】
ブレーキ26はここで、相対回動不能に車両のホイール32に結合されているブレーキディスク28から成る。ブレーキディスク28に配置されて、ブレーキディスクの両側にブレーキシュー30が位置している。ブレーキシュー30はブレーキライニングを含んでおり、ここでこれらは、ブレーキシュー30の締め付け時に、ブレーキディスク28に当接する、もしくはこれに押し付けられる。これによって、ブレーキディスク28の、ひいてはホイール32の回転運動を制動する摩擦トルクが生じる。
【0064】
ブレーキシュー30は、ブレーキアタッチメント34を介してブレーキ26およびホイール32に対して固定されている。ブレーキライン38を介してブレーキシュー30にブレーキ圧を加えることができ、これによってブレーキシュー30をブレーキディスク28に当てる。
【0065】
ブレーキライン38内のブレーキ圧Cは、図示されていない蓄圧器を介して提供される。このために、ブレーキ圧コントローラ40は、電磁弁MVを介してブレーキ圧Cを調整する。この調整は、ブレーキ圧コントローラ40が、電磁弁MVを用いて、図示されていない蓄圧器の圧力Cvをブレーキライン38に印加すること、もしくはこれによってこの印加を調整することによって行われる。
【0066】
さらに、センサ20、22、24が提供されており、これらは方法を実施するために必要な値を供給する。
【0067】
回転数検出装置20、特に回転数センサが提供されており、これは、ブレーキディスク28の、またはホイール32の目下の回転数ndiscを検出するように構成されている。
【0068】
さらに、減速変数検出装置22、特に力センサまたはトルクセンサが提供されており、これは、目下の回転数 減速変数、この場合にはブレーキディスク28の摩擦トルクMrbを検出するように構成されている。図では、減速変数検出装置22は、このためにライン36と接続されている。このライン36は、ブレーキアタッチメント34と接触しており、これによって、ブレーキアタッチメント34における力が、ライン36を介して減速変数検出装置22に伝送される。これによって、ブレーキディスク28での減速変数、特に摩擦力Frbを検出することができる。なぜなら、ブレーキディスク28はブレーキアタッチメント34において支持され、これによって、減速変数が、ライン36を介して減速変数検出装置22によって検出されるからである。
【0069】
さらに、接触変数検出装置24が提供されており、これはこの図では、接触変数、この場合にはブレーキ圧Cを検出する圧力センサとして構成されている。
【0070】
図1は、個々のステップの基本的な構造を示している。
【0071】
部分10は、ブレーキ26の平均減速変数、この場合には平均摩擦力Frbmeanを特定するために提供されている。択一的に、例えば、ブレーキ26、特にブレーキディスク28の平均摩擦トルクまたは平均減速も特定することができる。
【0072】
示されている図では、部分10は2つの入力側を有しており、ここで一方の入力側を介してブレーキディスク28の減速変数、この場合には摩擦トルクMrbの少なくとも2つの目下の値が提供され、他方の入力側を介してブレーキディスクの回転数ndiscが提供される。
【0073】
ここで部分10は、このようにして得られた、ブレーキディスク28の摩擦トルクMrbの値を、ブレーキディスク28の回転数ndiscに関連して、平均摩擦力Frbmeanに処理する。ここでは、データ処理、例えばFFT分析、平均値形成、フィルタリング、妥当性チェック等からの方法が処理のために使用される。これらの方法はここで、ブレーキディスク28の回転数ndiscに関連して設計されているため、平均摩擦力Frbmeanを、回転数ndiscに関連して特定することができ、種々の回転数ndiscでの分析の不所望な動作を除外することができる。
【0074】
さらに、必要な減速変数、図では、ブレーキディスク28の摩擦力Frbの目標値FrbSetを特定する部分14が示されている。このために、部分14は、所望の減速で車両を制動するために必要とされる、ブレーキ力の目標値FbrSetを処理する。目標値FbrSetは、ここで外部から、例えば車両バスまたは車両の別の制御機器を介して得られる。
【0075】
次に、部分12は、平均摩擦力Frbmean、目標値FrbSetおよびセンサ24によって提供されるブレーキ圧Cの値から、ブレーキ圧コントローラ40の入力値として使用される調整偏差dCを決定する。
【0076】
値dCはここで特に、ブレーキ26の目下の状態もしくは接触変数、この場合にはブレーキ圧Cから、平均減速変数、この場合には平均摩擦力Frbmeanを生成するその能力を考慮して決定される。
【0077】
したがって、部分12は、ブレーキ26の必要な接触変数を調節するための適応フィードフォワード制御を含んでいる。
【0078】
部分12はさらに、修正値Ckorrを処理する。これは、別の部分16によって提供される。修正値Ckorrは、ブレーキディスク28の減速変数の目標値と実際値との間、この場合には目標値FrbSetと平均摩擦力Frbmeanとの間の残っている調整偏差を除去するために用いられる。部分12では、これを使用して接触変数の目標値が修正される。
【0079】
この目的のために、部分16は、ブレーキディスク28の減速変数の目標値と実際値とを、この場合には、目標値FrbSetと平均摩擦力Frbmeanとの間で処理し、ここから修正値Ckorrを特定する。
【0080】
したがって、部分16は、必要な接触変数に関するコントローラとしても理解可能である。
【0081】
図2には、
図1と基本的に同じ、方法の構造が示されている。同じ部分10、12、14、16が存在しており、ここにおいて、個々の部分10、12、14、16が、受け取った値を処理する方法の実施例が示されている。
【0082】
部分10は、上述したように、ブレーキディスク28の摩擦トルクMrbとブレーキディスク28の回転速度ndiscとを受け取る。この摩擦トルクMrbから、ブレーキシュー30とブレーキディスク28との間の摩擦半径R_RB_DISCで除算することによって、このような接触における摩擦力Frbが計算される。
【0083】
摩擦半径R_RB_DISCはここで、ブレーキライニングの当接面全体にわたってブレーキディスク28に作用する摩擦力の合計が効果的に作用する有効半径を表している。
【0084】
このようにして特定された摩擦力Frbは、次に、可変フィルタ21、ここではPT1要素によって処理される。ここで処理のために、摩擦力Frbの少なくとも2つの値が加えられる。
【0085】
可変フィルタ21は、さらに、相応するブレーキディスク28の回転数ndiscを受け取り、これによって、可変フィルタ21はその感度、この場合にはPT1要素のコーナー周波数を合わせ、これによってブレーキの振動または不所望な作用に反応することができる。
【0086】
種々の回転数ndiscに対するコーナー周波数はここで、可変フィルタ21の計算規則に含まれている。
【0087】
可変フィルタ21は、ここで少なくとも1回の完全なディスク回転にわたって回転数ndiscおよび摩擦力Frbの値を処理し、これによって、ブレーキにおける摩耗に基づく許容誤差および偏差が除去される。
【0088】
次に、ブレーキディスク28の平均摩擦力Frbmeanが、可変フィルタ21もしくは部分10から得られ、これは次に、別の部分12、16に渡される。
【0089】
部分14は、ブレーキ力の目標値FbrSetを処理し、これは、この場合、ホイール32と図示されていない、レールの走行面との間に作用するはずであり、これによって車両を制動するはずである。
【0090】
目標値FbrSetは、さらなる処理のために、ホイール半径R_RADおよびブレーキライニングとブレーキディスクとの間の摩擦半径R_RB_DISCによって、ブレーキ26の摩擦力の目標値FrbSetに再計算され、別の部分12、16に渡される。
【0091】
このような設計では、部分16は、その目標値FrbSetからの平均摩擦力Frbmeanの調整偏差dFrbを形成する。次に、このような調整偏差は、ブレーキ圧の目標値CFSetにおける偏差またはエラーを修正することを目的とした修正値Ckorrを得るために、コントローラ42、この場合にはPIDコントローラによって処理される。修正値はさらなる処理のために部分12に渡される。
【0092】
部分12では、例として、状態変数、ここではブレーキ26の平均ライニング摩擦値MUEBもしくは上述のように接触力を摩擦力に変換するその能力の計算、およびブレーキ圧の目標値の特定が示されている。
【0093】
得られたブレーキ圧Cから、部分12はシステムパラメータP0およびK_FPを介して、目下の接触変数、この場合には締め付け力FCIpを特定する。
【0094】
パラメータP0はここで、ブレーキ26の摩擦ライニングをブレーキディスク28と接触させるために形成されなければならない当接圧を表す。これは、ブレーキ内にリターンスプリングが設置されているためである。リターンスプリングによって、摩擦ライニングが押され、ブレーキディスク28から離れる。制動時には、当接圧P0によって、リターンスプリングの力に打ち勝つ必要がある。したがって、ブレーキ圧CFは、当接圧P0ぶん修正された、加わるブレーキ圧Cに相応する。
【0095】
パラメータK_FPは、ブレーキ26の幾何学的な状況ならびにその他の状況を表す。これらは、有利には、てこ比および伝動比、接触面等として理解されるべきである。このような実施形態では、パラメータK_FPはブレーキキャリパー特性曲線として設計されている、すなわち可変に設計されている。締め付け力FCIpは、パラメータK_FPにブレーキ圧CFを乗算することによって決定される。
【0096】
締め付け力FCIpは、平均摩擦力Frbmeanとともに、上述した計算規則に従って商を形成することによって、平均ライニング摩擦値MUEBに再計算される。ここでの平均ライニング摩擦値MUEBは、接触力FCIpから平均摩擦力Frbmeanを形成するブレーキ26の目下の能力を表している。
【0097】
次に、部分12は、平均ライニング摩擦値MUEB、すなわちブレーキ26のシステム特性の知識から、摩擦力Frbの目標値FrbSetを取り入れて、ブレーキシュー30の締め付け力FCIpに対する目標値FCIpSetを計算する。
【0098】
締め付け力FCIpのこのような目標値FCIpSetは、次に、パラメータK_FPを使用してブレーキ圧の目標値CFSetに再計算される。このような目標値CFSetは、実質的に、適応フィードフォワード制御に相応する計算構造の計算結果に相応する。これは、目標値FrbSetから目標値CFSetを計算することによって形成される。フィードフォワード制御は、平均ライニング摩擦値の目下の計算によって適応して設計されている。
【0099】
フィードフォワード制御、すなわち圧力、この場合にはブレーキ圧の目標値CFSetの設定は、目標値、この場合には摩擦力の目標値FrbSetを入力することによって直接的にこれが行われるという利点を有している。しかし、これは、例えば数学的モデリングによる、またはさまざまな動作パラメータを特性マップに格納することによる、フィードフォワード制御されたシステムの十分に正確な知識を前提としている。ブレーキ26の場合には、平均ライニング摩擦値MUEBは広範囲にわたって変動し得る。これは摩耗または湿気によって減少し、乾燥すると再び増加するため、上下に変動する。このようなシステム特性をモデリングによって把握するのは比較的困難である。ここでは、モデルベースのフィードフォワード制御に対して、平均摩擦力Frbmeanをフィードバックすることによる適応性の利点が見て取れる。
【0100】
さらなる計算ステップでは、部分12において、フィードフォワード制御からのブレーキ圧の目標値CFSet、修正値Ckorrおよび当接圧P0が結合されて、ブレーキ圧の最終目標値CSetが形成される。
【0101】
最後に、部分12は、このような目標値CSetと実際のブレーキ圧Cとから、ブレーキ圧の調整偏差dCを計算し、これをブレーキ圧コントローラ40に転送する。このブレーキ圧コントローラ40は、このような入力に基づいて、蓄圧器からの圧力Cvを用いて、ブレーキライン38においてブレーキ圧Cを調節するために電磁弁MVを駆動制御する。次に、ブレーキ26は、上述したように、ブレーキ圧Cを摩擦力Frbmeanに変換する。
【0102】
図3は、上述の方法を実施するように構成されている、本発明の装置18を示している。
【0103】
このような装置18は、例えば、上述した計算規則および特定ステップが、例えばコードの形態で格納されている制御機器によって実現される。
【0104】
したがって、装置18の内部構造は、
図2に示された方法の構造に相応する。
【0105】
図では、装置18は5つのインターフェースを有している。左側で、装置は相応するブレーキ26のブレーキ力の目標値FbrSetを受け取る。装置18が複数のブレーキ26と接触している場合、これらのインターフェースを介して、例えば、複数のブレーキ26のブレーキ力の目標値FbrSetも受け取ることができる。このような目標値は、例えば、車両のバスシステムまたは相応する目標値FbrSetを提供する別の制御機器を介して受け取られる。
【0106】
センサ20、22および24が出力する値を受け取るために、図において装置18の下側に、3つのインターフェースが提供されている。このような目的のために、これらのインターフェースは、センサ20、22、24と接続されているケーブル接続として構成されている。択一的に、これらはバス接続として構成されている。
【0107】
装置18の右側にインターフェースが提供されており、これは、1つまたは複数のブレーキ圧コントローラ40に調整差dCを提供する。このようなインターフェースは、ケーブル接続またはBUS接続として構成されている。
【0108】
本発明の図示されていない別の実施形態では、ブレーキ圧コントローラ40は装置18の一部である。したがって、装置18は、ブレーキ圧Cを調整するために制御信号を電磁弁MVに供給する。
【0109】
記載された本発明は、上述の実施形態に限定されず、むしろ、上記の個々の特徴の組み合わせによって、または容易に想到される設計によって生じる別の実施形態が考えられる。したがって、本発明の対象は、上述した実施形態を超える。
【符号の説明】
【0110】
10 平均減速変数の特定
12 必要な接触変数の特定
14 必要な減速変数の特定
16 付加的な接触変数の特定
18 装置
20 センサ(回転数検出装置)
21 可変フィルタ
22 センサ(減速変数検出装置)
24 センサ(接触変数検出装置)
26 ブレーキ
28 ブレーキディスク
30 ブレーキシュー
32 ホイール
34 ブレーキアタッチメント
36 ライン
38 ブレーキライン
40 ブレーキ圧コントローラ
C ブレーキ圧(接触変数)
Ckorr ブレーキ圧(修正値)
CF ブレーキ圧(当接圧ぶん修正されている)
CFSet ブレーキ圧(フィードフォワード制御からの目標値)
CSet ブレーキ圧(目標値)
Cv 圧力(蓄圧器から)
dC 調整偏差 ブレーキ圧
dFrb 調整偏差 摩擦力
FbrSet ブレーキ力(目標値)
FCIp 締め付け力(接触変数)
FCIpSet 締め付け力(目標値)
Frb 摩擦力(ブレーキディスク)
Frbmean 平均摩擦力(ブレーキディスク)
FrbSet 摩擦力(ブレーキディスク、目標値)
K_FP パラメータ(ブレーキキャリパー特性曲線)
Mrb 摩擦トルク(ブレーキディスク)
MUEB 平均ライニング摩擦値
ndisc 回転数(ブレーキディスク、ホイール)
P0 パラメータ(当接圧)
R_RAD パラメータ(半径)
R_RB_DISC パラメータ(摩擦半径 ブレーキライニング ブレーキディスク)