(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】光母材用の炉のための可変直径の封止
(51)【国際特許分類】
C03B 37/029 20060101AFI20220104BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C03B37/029
F27D7/06 B
(21)【出願番号】P 2020533576
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 US2018066740
(87)【国際公開番号】W WO2019126461
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カール ダブリュー. ポネイダー
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-148923(JP,A)
【文献】国際公開第2012/033158(WO,A1)
【文献】特開平02-051440(JP,A)
【文献】特開2004-142976(JP,A)
【文献】特開平11-349342(JP,A)
【文献】特開2004-142988(JP,A)
【文献】特開平04-210166(JP,A)
【文献】特開2006-342030(JP,A)
【文献】特開平04-231338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00- 5/44
8/00- 8/04
19/12-20/00
23/00-40/04
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周及び直径を有する加熱される目的物(3p)、ならびに前記目的物が高温炉(6p)に出入りする前記炉の加熱要素(4p)の両方を汚染物質から保護する可変封止(100)であって、
第1の支持リング(110)と、
距離によって前記第1の支持リングから分離される第2の支持リング(112)と、
前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の距離を制御する1つ以上の構成要素と、
中心を有し、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングに取り付けられ、前記目的物が前記炉に出入りする所に配置され、前記目的物の少なくとも一部を取り囲む、
耐熱性に優れたファブリック円筒体(140)と、
前記ファブリック円筒体のほぼ中心に係合して、前記1つ以上の構成要素が前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の前記距離を減少させる際、前記ファブリック円筒体を閉じ、前記1つ以上の構成要素が前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の距離を増加させる際、前記ファブリック円筒体を開き、前記ファブリック円筒体が、前記目的物の前記直径に関係なく、前記目的物の前記円周と連続的に接触する機構と、
を備える、前記可変封止。
【請求項2】
請求項1に記載の可変封止(100)を使用して、円周及び直径を有するガラス体(20)からガラス母材(3p)を作製するシステム(200)であって、該システムは、前記ガラス体を収容する第1開口部、前記ガラス母材が出る第2開口部(8p)、及び前記ガラス体を加熱する加熱要素(4p)を有する加熱ゾーンを画定する装置(10)を含み、前記可変封止は、前記ガラス体と、前記第1開口部、前記第2開口部、または両方の開口部に近接する前記加熱要素との両方を汚染物質から保護する、システム。
【請求項3】
前記構成要素が、
前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングを接続する少なくとも1つのエアシリンダ(114)であって、前記少なくとも1つのエアシリンダが、第1端及び第2端を備え、前記第2の支持リングに接続する本体と、前記第1の支持リングに接続して、前記本体に摺動可能に配置されて、前記本体から延在し、前記本体の中に収縮する延長棒(115)と、を有する、前記少なくとも1つのエアシリンダ(114)と、
圧縮空気を受けると、第1の圧縮空気マニホールド(120)が、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングを近づけて、前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の前記距離を減少させるように、前記少なくとも1つのエアシリンダの前記本体の前記第1端に接続される、前記第1の圧縮空気マニホールド(120)と、
圧縮空気を受けると、第2の圧縮空気マニホールド(130)が、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングを離れさせて、前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の前記距離を増加させるように、前記少なくとも1つのエアシリンダの前記本体の前記第2端に接続される、前記第2の圧縮空気マニホールド(130)と、
を含む、請求項1に記載の可変封止(100)または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記機構が、前記ファブリック円筒体に巻かれて、前記ファブリック円筒体を閉じるために付勢されるコイルばね(150)を含む、請求項1もしくは3に記載の可変封止または請求項2もしくは3に記載のシステム。
【請求項5】
前記機構が、
前記ファブリック円筒体の周囲に巻かれるケーブル(160)であって、前記ケーブルが、定力リトラクタ(162)に対して取り付けた一端及びクランプ(172)に対して取り付けた他端を有する、前記ケーブル(160)を含み、
前記定力リトラクタが前記ケーブルを内向きに引っ張り、前記ファブリック円筒体の周囲の前記ケーブルをきつく締める、または、前記ケーブルを解放し、前記
ファブリック円筒体の周囲の前記ケーブルをゆるめることができる、請求項1
もしくは3に記載の可変封止または請求項2
もしくは3に記載のシステム。
【請求項6】
前記定力リトラクタ及び前記クランプが、前記ファブリック円筒体の両側の互いの真向かいに位置し、
前記機構が、前記定力リトラクタが摺動する第1の支持棒(164)及び前記クランプが摺動する第2の支持棒(174)を更に含み、
前記
第1の支持リングと前記
第2の支持リングとの間の前記距離が変化する際、前記定力リトラクタ及び前記クランプが前記ファブリック円筒体の前記中心の動きに続くのを可能にする、請求項5に記載の可変封止または請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記可変封止によって保護される前記ガラス母材のような前記目的物の直径が、約50~210mmの間である
、請求項
2に記載のシステム。
【請求項8】
前記ファブリック円筒体の前記ほぼ中心に位置する、バンド(142)、ベルト(144)もしくはリング(146)のうちの1つ、または任意の組み合わせを更に含み、
前記ガラス母材のような前記目的物と前記ファブリック円筒体との間の封止を改善するか、前記機構による摩耗から前記ファブリック円筒体を保護する、またはその両方である
、請求項2
または7に記載のシステム。
【請求項9】
第1のクランプリング(126)及び第2のクランプリング(128)を更に含み、
前記第1のクランプリングが、前記ファブリック円筒体を前記第1の支持リングに取り付け、前記第2のクランプリングが、前記ファブリック円筒体を前記第2の支持リングに取り付ける、請求項1、3-
6のいずれか1項に記載の可変封止または請求項2-8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ファブリック円筒体が、織布シリカ、カーボンファイバまたはアルミノケイ酸塩で作製されている、請求項1、3-
6、9のいずれか1項に記載の可変封止または請求項2-9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の支持リングに取り付けら
れ、前記ファブリック円筒体を取り囲み、前記第1
の支持リングが
当該筐体の中で移動するのを可能にし、及び大気より高い気圧のガスを受ける
筐体(180)を更に含む、請求項1、3-
6、9-10のいずれか1項に記載の可変封止または請求項2-10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の支持リングと前記第2の支持リングとの間の前記距離を制御する1つ以上の構成要素を指揮するコントローラ(88)を更に含む、請求項1、3-
6、9-11のいずれか1項に記載の可変封止または請求項2-11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
円周及び直径を有する加熱される目的物、ならびに前記目的物が高温炉に出入りする前記炉の加熱要素の両方を汚染物質から保護するプロセスであって、
可変封止を提供することであって、
第1の支持リングと、
距離によって前記第1の支持リングから分離される第2の支持リングと、
中心を有し、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングに取り付けられている
耐熱性に優れたファブリック円筒体と、
前記ファブリック円筒体のほぼ中心に係合している機構と、
を有する、前記可変封止を提供することと、
前記可変封止が前記目的物の少なくとも一部を取り囲むように、前記目的物が前記炉に出入りする場所に前記可変封止を配置することと、
前記第1の支持リングと前記第2の支持リングの間の前記距離を制御することと、
前記ファブリック円筒体が、前記目的物の前記直径に関係なく、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングを一緒に移動させることにより、前記目的物の前記円周と連続的に接触して、前記機構が、前記ファブリック円筒体をしっかり締めて、前記第1の支持リング及び前記第2の支持リングを移動させて離れるのを可能にし、前記機構が、前記ファブリック円筒体をゆるめるのを可能にするのを確実にすることと、
を含む、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概ね、封止を備える装置に関し、更に具体的には、本出願は、加熱炉用の封止に関し、最も具体的には、ガラス母材を加熱して、光ファイバを線引きするために使用する装置のための封止に関する。
【背景技術】
【0002】
封止を形成する装置に関して、いろいろな技術がある。周知の装置は、ガラス円筒体が高温オーブンに入るまたは出る際に、ガラス円筒体の周囲への封止も提供する。このような装置の一部は、光ファイバ母材を作製するために、炉で処理されているガラス円筒体の周囲に封止を形成する。
【0003】
光ファイバは、以下の工程によって作製される。最初に、石英ガラスまたは別の材料から作製した光ファイバ母材を、線引き装置内に入れる。光ファイバ母材の1つの端を、線引き炉で加熱し軟化させる。軟化した端は、直径を低減するために線引きされる。線引き炉は管及びヒーターを備え、多くの場合カーボンから作製されている。この場合、これらの部材は、炉の大気ガスとして不活性ガスを使用することにより、酸化から保護されなければならない。更に、光学ファイバ母材の表面は、線引きした光ファイバの長手方向の均一性を確保するために、線引き処理の間、清浄に保たれなければならない。これらの2つの要求を満たすために、線引き炉は、光ファイバ母材と接触しないように構築されて、万一保護されない場合、管及びヒーターの酸化をできるだけ抑えるように、管と光ファイバ母材との間の隙間を不活性ガスで満たす。封止は、不活性雰囲気を維持する。
【0004】
いくつかの封止は、特定の一定の直径の円筒体のためにだけ作動する(例えば、独国特許第4006839号及び米国特許第2002/0078714号)。更なる封止は、短い範囲の直径だけを有する円筒体で使用できる(例えば、日本特許第H08253337号、日本特許第H10167751号及び米国特許第6257628号)。更に他の封止は、多くの部品からなる構成要素を有する。例えば、このような複合型封止は、欧州特許第1426343A2号(封止が、絞り方式シャッターである)、米国特許第2006/0280578号(封止リングが、複数のグラファイト部から作製される内部リング及びセラミック部から製造される外部リングを含み、封止リングがコイルばねによってファイバ母材に押圧される)、及び米国特許第9676503号(封止が、1つまたは多層に配置される複数の封止要素を使用する)に開示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の封止に固有の問題を解決するために、可変直径の封止を提供する。封止の第1の目的は、一定しないまたは変化する直径を有する円筒体の周囲に密封を提供することである。光ファイバ母材を作成するために処理され得る、多くのガラス円筒体は一定の断面形状を有しない。第2の目的は、著しく異なる直径の円筒体に適合することである。第3の目的は、封止とガラス円筒体の表面との間の過剰な接触力によって生じ得る損傷なしで、封止するガラス円筒体の形状に効率的に適合することである。第4の目的は、比較的単純な構造を備える、最高品質かつ効率的な封止を達成することである。第5の目的は、封止と、封止で包含されるガラス円筒体との間の離間距離または隙間を最小限にすることである。
【0006】
更なる目的は、炉で加熱される母材の直径の変化に関係なく、加熱炉に不活性ガス雰囲気を封入することである。更なる他の目的は、母材の汚染を回避しつつ、炉もしくは加熱ゾーンの母材または他のガラス円筒体を加熱することである。炉または加熱ゾーンが外部環境に対して不十分に封止される場合、炉または加熱ゾーン内へ及び煙突効果を介して封止と円筒体との間に外気が流れ込み、粒子によって及び大気気体(例えば、酸素及び窒素)によっての両方で(集合的に、汚染物質)円筒体は汚染の危険にさらされる。したがって、別の更なる目的は、封止される円筒体と大気ガスの接触を防ぐことである。
【0007】
別の目的は、炉または加熱ゾーン自体の劣化を防ぐことである。関連する目的は、効率を改善すること、及び炉または加熱ゾーンの稼働年数を増加させることである。更に別の目的は、外部環境から、特に装置の加熱要素(例えば、炉)内部の汚染物質から、その境界が保護されるように、母材アセンブリを完全に密封する、本質的な清浄工程を提供することである。他の関連する目的は、製造工程中に母材への側方または横方向の力を防ぐこと、及び母材の湾曲を最小限に抑える、またはそれを除去することである。追加の目的は、ほぼ100%の完成母材の収率を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、加熱される目的物及び高温炉の加熱要素の両方を汚染物質から保護するための、可変封止が提供されている。封止は、距離で区別される、第1の支持リング及び第2の支持リングを備える。1つ以上の構成要素は、2つの支持リングの間の距離を制御する。耐熱性に優れたファブリック円筒体は、支持リングに取り付けられて、目的物が炉に出入りする所に配置されて、目的物の少なくとも一部を取り囲む。機構はファブリック円筒体のほぼ中心に係合して、1つ以上の構成要素が2つの支持リングの間の距離を減少させる際、ファブリック円筒体を閉じ、1つ以上の構成要素が2つの支持リングの間の距離を増加させる際、ファブリック円筒体を開き、それによって、ファブリック円筒体は、目的物の直径に関係なく、目的物の円周と連続的に接触する。
【0009】
円周及び直径を有するガラス体からガラス母材を作製するシステムを、更に提供する。システムは、ガラス体を収容する第1の開口部、ガラス母材が出る第2の開口部、及びガラス体を加熱する加熱要素を有する加熱ゾーン、を画定する装置を含む。システムは、汚染物質からガラス体及び加熱要素の両方を保護するための可変封止も含む。封止は、距離で区別される、第1の支持リング及び第2の支持リングを備える。1つ以上の構成要素は、2つの支持リングの間の距離を制御する。耐熱性に優れたファブリック円筒体は、支持リングに取り付けられて、装置の第1開口部、第2開口部または両方の開口部に近接して配置されて、ガラス体の少なくとも一部を取り囲む。機構はファブリック円筒体のほぼ中心を結合させて、1つ以上の構成要素が2つの支持リングの間の距離を減少させる際、ファブリック円筒体を閉じ、1つ以上の構成要素が2つの支持リングの間の距離を増加させる際、ファブリック円筒体を開き、それによって、ファブリック円筒体は、ガラス体の直径に関係なく、ガラス体の円周と連続的に接触する。
【0010】
また更に、円周及び直径を有する加熱される目的物、ならびに目的物が炉に出入りする高温炉の加熱要素の両方を汚染物質から保護する処理も提供される。処理は、以下の工程、(a)第1の支持リングと、距離によって第1の支持リングから分離される第2の支持リングと、中心を有し、第1の支持リング及び第2の支持リングに取り付けられている耐熱性に優れたファブリック円筒体と、ファブリック円筒体のほぼ中心に係合している機構と、を有する可変封止を提供することと、(b)可変封止が目的物の少なくとも一部を取り囲むように、目的物が炉に出入りする場所に可変封止を配置することと、(c)第1の支持リングと第2の支持リングの間の距離を制御することと、ならびに(d)ファブリック円筒体が、目的物の直径に関係なく、第1の支持リング及び第2の支持リングを一緒に移動させることにより、目的物の円周と連続的に接触して、機構が、ファブリック円筒体をしっかり締めて、第1の支持リング及び第2の支持リングを移動させて離れるのを可能にし、機構が、ファブリック円筒体をゆるめるのを可能にするのを確実にすることと、を含む。
【0011】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも例示であり、本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0012】
本発明は、添付の図面と共に読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。一般的な慣行に従い、図面の種々の特徴は縮尺どおりではないことを強調する。反対に、様々な特徴の寸法を、明確化のために場合により拡大または縮小している。図面には、以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ガラスの細長い構成要素を形成する上向き圧潰工程で使用される、装置の主要な構成要素を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、光学要素を製造するために使用されるガラス体の斜視側面図である。
【
図4】例えば
図1または
図2の装置と組み合わせて使用され得る、可変封止の一実施形態を示す。
【
図5】例えば
図1または
図2の装置と組み合わせて使用され得る、可変封止の別の実施形態を示す。
【
図5A】高温生地の細片を組み込んだ、例えば
図1または
図2の装置と組み合わせて使用され得る、可変封止の更に別の実施形態を示す。
【
図6】更に完全な封止を形成するために筐体を組み込んだ、例えば
図1または
図2の装置と組み合わせて使用され得る、可変封止の更なる実施形態を示す。
【
図7】
図2に示す装置と組み合わせた、
図4に示す可変封止の概略図であり、比較的大きなカラーの封止を示す。
【
図8】
図2に示す装置と組み合わせた、
図4に示す可変封止の概略図であり、小さな直径の母材の封止を示す。
【
図9】
図2に示す装置と組み合わせて使用するとき、装置の劣化を回避する際の
図4に示す可変封止の有効性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
光ファイバの設計及び用途に関する応用科学及び工学技術の分野は、ファイバオプティックスとして公知である。光ファイバは、ガラス(シリカ)をヒトの毛髪よりもわずかに太い直径まで線引きすることにより作製された可撓性のある透明なファイバである。光ファイバはほとんどの場合、ファイバの2つの端の間に光を伝送させるために使用され、光ファイバ通信で広く使用され、より長い距離にわたる、かつワイヤケーブルよりも高い帯域幅(データ速度)の伝送を可能にする。ファイバは、信号が損失を低減した高容量のファイバに沿って進むために、金属ワイヤの代わりに使用される。さらにファイバは、金属ワイヤを悩ます問題である電磁界干渉の影響も受けない。ファイバは、照明にも使用され、ファイバスコープの場合のように、画像を伝達するために使用されて、そうして閉鎖空間で見ることを可能にするように、束でまとめられている。特別に設計されたファイバは、様々な他の用途(例えば、光ファイバセンサ及びファイバレーザー)でも使用される。
【0015】
光ファイバは通常、屈折率がより低い透明クラッド材料に取り囲まれた透明コアを含む。光は、ファイバを導波路として機能させる内部全反射の現象によって、コアに保持される。多くの伝播路または横モードを支援するファイバは多モードファイバと呼ばれており、単一モードを支援するものは単一モードファイバと呼ばれている。
【0016】
光ファイバは、通常、2つの別個の工程で作製される。最初にコアロッドが作成され、次に母材が、ロッドインチューブ(RIT)工程もしくは気相堆積ロッドインシリンダ(RIC)工程により、または別のオーバークラッド工程(例えば、外付気相堆積法(OVD)工程)により作製される。次に作製された母材は、炉の内部で加熱され、光ファイバに線引きされる。光ファイバ母材を製造するための従来の工程及び装置は、2つの工程のうちの最初の工程を完了し、光ファイバRITオーバークラッド装置の提供を含む場合がある。
【0017】
オーバークラッド装置は、立て旋盤、立て旋盤の各端に取り付けられるチャック、立て旋盤の両端の間を垂直に移動するための立て旋盤の往復台、往復台に取り付けられる酸素水素バーナー、往復台に取り付けられる炉、立て旋盤の端に提供される真空ポンプ、立て旋盤の端まで真空ポンプを接続するためのカプラ、ならびに往復台の垂直運動、酸素水素バーナーの流量及びチャックの回転を制御するための立て旋盤の外側のコントローラを含む。炉は、ガラス管でコアロッドをオーバークラッドするために、ガラス管を予熱または加熱する。
【0018】
実際に、母材の外径は、従来のRITオーバークラッド装置では90mm以下に制限される。その制限は、酸水素バーナーでの非効率的な加熱により課される。更にハンドルは、最上端からコアロッドの重量に対し別個の支持を提供するために、(RITオーバークラッドチューブと同じ長さの)シングルコアロッドに溶接されなければならない。これにより、2つの欠点(1)短いコアロッド材料を有効に使用することができないことによる、コアロッド材料の無駄、及び(2)特に酸水素トーチでの、ハンドルのコアロッドへの溶接によりもたらされ、エッチングされない場合(工程に対する更なる費用)、水酸化物の吸収に起因する特に1,383nmでのファイバ減衰を増加させる可能性のある、コアロッドの表面上での表面水酸化物(OH)の取り込み、がもたらされる。
【0019】
更に最近では、石英ガラス管、ロッドまたは圧潰したオフラインロッドインシリンダ(ORIC)の母材は、下端がストランドを軟化させて形成し始めるように、垂直配向の加熱ゾーンを含む装置(例えば、炉)に石英ガラス要素(例えば、円筒体、インゴットまたは非コラプスRIC)を入れることにより製造されている。そうしてストランドは、1セット以上の牽引ホイールを含む牽引装置に置かれる。ストランドの線引き速度は牽引ホイールの速度により制御され、それは形成ゾーンの温度もしくは粘性及びホイールにより支持されるストランドの重量に応じて、下向き力または上向き力を適用できる。形成は、成形型を使用せずに行われる。したがってストランドの寸法は、石英ガラス要素の供給速度、加熱ゾーンの温度及び牽引ホイールの速度により制御される。
【0020】
従来のORIC工程で、合成高純度ガラス製の円筒体(通常、長さ3m、外径約200mm)は、高純度のガラスコアロッド上に圧潰させて、境界の間隙にて熱及び真空で光ファイバ母材を形成する。母材は通常、円筒体の元の直径よりも極めて小さい直径で、連続的に下向きに線引きされる。十分な真空は、境界の圧潰を容易にしかつ軟化したガラスを介してコアロッドの重量を支持するために、円筒体及びコアロッドの間の間隙に適用されなければならない。円筒体に対するコアロッドの移動を防ぐためには、真空が不可欠である。そうしないと、得られた母材のクラッド-コア比が歪むことになり、それから線引きされたファイバが必要な導波路仕様(例えば、カットオフ波長)を満たさなくなる。複雑で高価な母材の外径測定及びフィードバック制御は、下向き圧潰、延伸及び線引き工程でも必要とされ、このような制御でさえ、正確な母材形状(低い母材湾曲または歪み及び直径の変動を含む)、及びクラッド-コアの歪みのない導波路特性を達成することが困難である。下向き線引き工程でのこの固有の導波路の歪みの影響は、大部分は、溶融ガラス及び炉内の非付着コアロッドに作用する重力及び真空力に起因しており、外側クラッドガラスは、内部コアロッドガラスよりも高温で速く下向きに流れる。
【0021】
図1は、米国特許第9,676,503号に開示されている、従来の下向き線引き装置1pを示す。装置は、中心開口部の周囲に一般的にリング構成に配置される、複数の封止要素2pを有する。細長い円筒状のガラス母材3pは、中心の開口内に突き出る。ガラス母材3pは、炉6pの垂直な中心孔5pの周囲に配置される、加熱要素4pによって加熱される。ガラス母材3pを加熱するためのこのような炉6pで、光ファイバ7pがガラス母材3pの下端から線引きされ得るまで、ガラス母材3pは加熱される。
【0022】
光ファイバ7pの特性を強化するために、炉6pの内部が、光ファイバ7pの線引きの間、環境から密封されるのを確実にすることが必要である。炉6pの下部開口部8pは、不活性ガス11pを使用して封止されている。不活性ガス11pは、装置1p周囲の種々の位置に配置されるガス注入口10pを介して、炉6p内に供給される。封止要素2pは、導入した不活性ガス11pの大部分を下向きに流れるように誘導し、その結果、不活性ガス11pがこの下部開口部8pを介して炉6pから流れ出るので、例えば、炉6pの周囲を取り囲む空気が、下部開口部8pを介して炉6pの中に流入するのを防ぐ。あるいは、それは、炉6pの中心孔5pを通って上向きの流れを有することもできる。その場合、1つの代替例は、
図1に示すものよりかなり低い位置で不活性ガス11pを中心孔5pに導入することになり、炉6pの上部のガス注入口10pは必要とは限らない。
【0023】
封止要素2pは、チャンバ13p内に突出する部位12pを備える、細長いプレートとして成形される。少なくとも封止要素2pの封止面15pは、例えば、ガラスまたはグラファイトから製造され得る。実施態様に応じて、各封止要素2pは、それ自体のチャンバ13pを有することができる、または、1つ以上の封止要素2pの部位12pは、1つのチャンバ13p内に突出できる。流体は、注入口14pを介してチャンバ13p(複数可)内に導入される。1つの代替例は、炉6pの内部に他の注入口10pを介して、導入したのと同じ不活性ガス11pを使用することである。いずれの場合でも、チャンバ13p(複数可)内に導入される流体は、チャンバ13p(複数可)の超過圧力を生じさせる。したがって、チャンバ13pの封止要素2pの部位12pに作用する圧力は、封止要素2pが配置される中心孔5pの圧力より高い。したがって、超過圧力は、中心孔5pの方へ封止要素2pを押圧して移動させ、その結果、
図1の例で、各封止要素2pの封止面15pがガラス母材3pと接触するようになる。
【0024】
各封止要素2pが、他の封止要素2pとは別に正確に最適な位置に移動できるので、別個に移動できる複数の封止要素2pを使用することで、ガラス母材3pの周囲に効率的な封止を得ることができる。したがって、効率的な封止は、ガラス母材3pのすべての外側表面に沿って達成される。何らかの理由で、例えば、ガラス母材3pが完全な円形の断面を有しない場合でも、これは封止の有効性に影響しない。更に、起こり得る直径の変化は、封止要素2pが互いに独立して最適な位置へ移動するのが許容されるとき、小さいまたは大きい直径を有するガラス母材3pの場合のように補正されることもできる。流体圧の調節は、チャンバ13pの超過圧力を増減するために使用することができ、その結果、封止要素2pの封止面15pがガラス母材3pの外側表面に対して押圧される力は、調節され得る。このような調節によって、封止要素2pとガラス母材3pの間に適切な接触力を得ることができ、それにより、ガラス母材3pの表面が封止要素2pによって損傷を受けないことが確実になる。
【0025】
従来の下向き線引きシステム及び工程では、元の円筒体またはクラッドサイズに近い外径を有する、最大の母材を製造するには大きな問題がある。かなりの量の良好な母材ガラスが工程の開始時及び終了時で無駄になってしまい、母材の形状及び導波性は、形状、クラッド対コア比、コア偏心率及び湾曲などのパラメータに関して要求される仕様から大きく離れる。したがって、従来の母材システム及び工程には明確な欠点がある。
【0026】
本発明の実施形態によると、導波路(クラッド-コア)の歪みがほとんどなくかつ無駄及び費用を大幅に低減した、存在することが知られている最大外径及び長さを備える(すなわち、外径約200mm(従来の外径は、約150mmに制限される)、長さ約3m、または元の円筒体もしくはクラッドとほぼ同じサイズ)の母材を生じる、装置及び上向き圧潰工程が提供される。従来の光ファイバ母材は、外径が90~150mmである。新式の上向き圧潰工程では、ORICクラッド内の積み重ねられたコアロッドが下方から支持されており(それで、コアロッドが圧潰工程でクラッドに対して移動しない)、ORICアセンブリ全体は、母材が、
図2に示されかつ以下に記載されるように、炉に対して上に移動して、連続的に圧潰されて上向きに線引きされる。装置及び上向き圧潰工程は、(1)既知の最大オーバークラッド円筒体を用いた圧潰のみの工程で作製することができるので、既知の最大母材を製造し、(2)ほぼ100%のオーバークラッド及び完成した(先端加工した)母材収率(無駄がほぼない)、ならびに統合したオンライン母材先端加工工程(加工時間及び加熱工程の節減)を含む、新式で簡略化した(例えば、オンライン測定またはフィードバック制御)工程のために、費用が低減され、(3)可変かつ任意の長さに固定され、積み重ねられ、支持されたコアロッドによる本質的に低い導波路(クラッド-コア)の歪みのために、導波路の品質を改善し、(4)反応性ガス(例えば、SF
6)が、境界の改善及びコアロッドD/d比の低下(導波路コアに近い境界面)ために、最大約1大気圧(すなわち、真空を必要としない)で境界面に適用されるのを可能にする。
【0027】
コアロッドのD/d比は、(光が伝搬する)導波路コアの直径に対するコアロッドの外径の比であり、「D」はコアロッドの外径であり、「d」は導波路コアの直径である。比は、コア容量の拡大を画定する際、RITまたはRIC母材を使用して、光ファイバを製造する者にとって非常に重要である。コアロッドのD/d比が減少すると、境界は導波路コアに近づき、これは、コアロッドに必要なガラスの相対量が減少する(一方、クラッド内のガラスの量を増加させる必要がある)ことを意味する。同様に、これは、同じコアロッド製造設備では、コアロッドを製造する能力(または、光ファイバコアに対する等価容量)は、おおよそD/dの2乗に比例する(例えば、D/dを3.3から2.3に低減させることにより、コア容量が倍増する)ことも意味する。しかし、コアロッドD/dを低減させることは、そこで指数関数的に増加する光パワー伝播のために、オーバークラッド材料の純度及び境界の品質に対し重大な問題を提示する。したがって、(例えば、SF6を用いた)境界での、より強力なガスエッチング、清浄及び乾燥工程が、低いコアロッドD/dで必要とされるだろう。要するに、より低いD/d比(すなわち、境界がコアに近い)は、母材の製造者が(a)高額な投資なしにコア容量を容易に拡大すること、及び(b)コアに近い屈折率を有するより複雑で進歩した光ファイバ設計を実現すること、を可能にする。
【0028】
図2を参照すると、光ファイバ母材を製造する装置10が示されている。装置10は、垂直に配置されたフレーム12を含む。底部から頂部に、フレーム12は、下部開口端、予熱または下部絶縁ゾーン14、加熱ゾーン16、加熱後または上部絶縁ゾーン17、加熱後冷却、アニール及びオーブンガスパージゾーン18、ならびに下部開口端に対向する上部開口端を有する。加熱ゾーン16は、加熱要素(通常、オーブンまたは炉)によって、好ましくは500℃~2,300℃、及び更に好ましくは1,000℃~2,300℃、及び更に最も好ましくは1,500℃~2,300℃の温度まで加熱されることができる。更に具体的には、加熱要素は環状の形状であることが好ましい。加熱要素は、フレーム12の加熱ゾーン16を形成するために、フレーム12内またはその周囲に配置されることが好ましい。不活性ガスは、加熱要素の酸化を防ぐために、高温で加熱要素内に注入される。
【0029】
図3を参照すると、ガラス体20は、光ファイバ母材を製造するために使用される。ガラス体20は、円筒状または管状の形状である。ガラス体20は、第1または上端部22から、対向する第2または下端部24まで延在する、長さLを有する。長手方向軸Xは、対向する第1の端部22及び第2の端部24の間に延在する。好ましくは、ガラス体20の第1の端部22及び第2の端部24の両方は、直角切断端である。
【0030】
ガラス体20は、導波性光ファイバコアを含むガラスコアまたはコアロッド30、及びコアロッド30を取り囲むガラスクラッド32からなることが好ましい。更に具体的には、コアロッド30は、ガラス体20の形状の中心に形成され、ガラス体20の長さLに沿って延在することが好ましい。クラッド32は、ガラス体20の長さLに沿ってコアロッド30を放射状に囲むように、コアロッド30上に形成されることが好ましい。クラッド32は、共通の中心線に沿って位置合わせした同軸配置で、コアロッド30を取り囲んでいる。間隙31は、最初はコアロッド30とクラッド32の間に存在する。クラッド32は、外径「OD」を有する。
【0031】
クラッド32は、純粋な石英ガラスでもドープした石英ガラスでもよい。しかし、クラッド32は、高純度の非ドープまたはドープした石英ガラスであることが好ましい。コアロッド30は、適切な屈折率プロファイルを得るために、ドープ領域及び非ドープ領域を有するほぼ高純度な石英ガラスであることが好ましい。クラッド32及びコアロッド30はそれぞれ、任意の好適な方法(例えば、溶融石英、または内部蒸着、外部蒸着及び軸蒸着を含む、1つ以上の種類の化学蒸着(CVD))によって形成されることができる。コアロッド30の中心のコア材料は通常、母材から線引きされたファイバを通過する光信号の内部反射を可能にするために、周囲のクラッド32内の材料の屈折率よりも大きい屈折率を有し、その結果、効率的な導波路がもたらされる。
【0032】
図2に戻ると、第1のまたは頂部カラー40は、クラッド32の頂部に固定されている。頂部カラー40をクラッド32に固定する他の機構を使用することができるが、頂部溶接部42が好適である。頂部カラー40の外径は、クラッド32の外径とほぼ同じ、またはそれよりも小さい。第2のまたは底部カラー44は、クラッド32の底部に固定されている。底部カラー44をクラッド32に固定する他の機構を使用することができるが、底部溶接部46が好適である。底部カラー44の外径は、クラッド32の外径よりも小さい、またはほぼ同じのいずれかである。頂部カラー40及び底部カラー44は両方とも、中空の環状要素である。
【0033】
積み重ねられたコアロッド30は、クラッド32の内部に配置され、次に、長いスペーサー50の頂部に載置される短いスペーサー48の頂部に載置される。上向き圧潰工程の後に長いスペーサー50が母材に溶接されていないことを確実にするために、短いスペーサー48は、長いスペーサー50の頂部に提供されており、そうして、底部カラー44から容易に取り出すことができる。長いスペーサー50は、長いスペーサー50の下方に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニット52により支持される。底部カラーホルダー及び真空ユニット52は更に、底部カラー44を、その名称が示すように保持しかつ支持している。母材アセンブリ(クラッド32に固定された頂部カラー40及び底部カラー44と共に、ガラス体20の積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32を含む)ならびに底部カラーホルダー及び真空ユニット52は最初に、オーブンガスパージゾーン18の上方に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニット54に入れられる(底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、装置10が、装置10のいずれかの端で、装置10からガスを除去するか(すなわち、真空を作るか)、またはそれにガスを導入するかのいずれかを可能にする。頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、頂部カラー40を、その名称が示すように保持しかつ支持している)。次に、ガラス体20は、加熱ゾーン16に対し、更に具体的には加熱ゾーン16の加熱要素に対して位置決めされ、加熱要素を通って上向きに移動する。底部カラーホルダー及び真空ユニット52は、加熱ゾーン16の下方に把持され、支持される。頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、加熱ゾーン16の上方に把持され、支持される。加熱工程を開始する前に、頂部溶接部42(したがって、クラッド32の頂部)は、最初に頂部溶接部42への熱衝撃を回避するために、加熱要素の中心より所定の距離だけ下方に置かれる(「所定の」とは事前に決定されることを意味し、その結果、所定の特性は、何らかの事象の前に決定され(すなわち、選択され、または少なくとも知られ)なければならない)。例えば、この距離は約350mmであり得る。
【0034】
装置10を使用して母材を製造する上向き圧潰工程を、
図2を参照して説明する。ガラス体20はフレーム12を通過し、光学要素(例えば、光ファイバ母材)を形成するために加熱され、軟化され、引き延ばされる。更に具体的には、ガラス体20の下端部24は好ましくは、工程の開始時にフレーム12に安定的な方法で配置され、それからガラス体20は、フレーム12を通って上向き(すなわち、従来の下向きとは反対の)方向に進む。フレーム12で、ガラス体20は、加熱ゾーン16にてゾーンごとの方法で加熱される。装置10の底部に位置する底部カラーホルダー及び真空ユニット52は、速度V1で移動し、装置10の頂部に位置する頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、速度V2で移動する。母材は、オーバークラッド間隙31を圧潰して、コアロッド30をオーバークラッド円筒体またはクラッド32に融着させる、溶融による変形により、連続的に作製される(及び所望により、母材は、工程中に、頂部カラーホルダー及び真空ユニット54ならびに底部カラーホルダー及び真空ユニット52により印加される引っ張り力または圧縮力のいずれかにより、延伸させる/引き延ばすまたは縮める/圧縮することができる)。
【0035】
一実施形態で、ガラス体20は、2つの別個のガラス要素(積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32)の同軸アセンブリである。更に具体的には、コアロッド30は中実の円筒体ロッドの形態であり、クラッド32は、積み重ねられたコアロッド30を取り囲む中空のオーバークラッド円筒体(すなわち、ロッドイン円筒体アセンブリ)の形態である。同軸アセンブリにて、ガラスアセンブリが加熱ゾーン16に入る前に、積み重ねられたコアロッド30及びクラッド32は一緒に融着されない。
【0036】
ガラス体20のこの実施形態の同軸アセンブリが、フレーム12を通って上向きに進む際、コアロッド30及びクラッド32は、2つのガラス要素が軟化して融着するのに十分な所定の温度及び時間で加熱されて、一体化かつ固化したガラス体20を形成する(「一体化」とは、追加の部分なしにそれ自体で完全なものである、単一部品または単一の一体化部を意味し、すなわち、部品は、別の部品と一体として形成された1つの一体型部品である)。更に具体的には、2つの部分からなるガラス体20の連続する部分は、加熱ゾーン16に接近し、加熱ゾーン16で加熱され、クラッド32及びコアロッド30は、軟化し、軟化したクラッド32は、コアロッド30上に圧潰し、それと融着する。次に、少なくとも1つの、より好ましくは複数の「すぐに線引きできる」母材は、得られた一体型構造のガラス体20からファイバに直接線引きされ得る。
【0037】
好ましくは、ガラス体20のこの実施形態の同軸配置は、500℃~2,300℃、更に好ましくは1,000℃~2,300℃、最も好ましくは1,500℃~2,300℃の温度に加熱されることができる。クラッド32のコアロッド30への軟化及び圧潰は、より好ましくは1,000℃~2,200℃、より好ましくは1,300℃~2,000℃、最も好ましくは1,600℃~1,800℃の温度で起きる。軟化して圧潰したクラッド32の、軟化したコアロッド30との融着は、好ましくは1,000℃~2,200℃、より好ましくは1,300℃~2,200℃、最も好ましくは1,600℃~2,200℃の温度で起きる。しかし、他の因子(例えば、ガラス材料の組成及びスループット)は、クラッド32がコアロッド30上に圧潰し、それらと融着する温度にも影響を及ぼすことを、当業者らは理解するであろう。
【0038】
コアロッド30とクラッド32との間の融着境界面は、装置10のいくつかの構成要素により清浄であることが保証される。例えば、両方ともに密閉された底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は、上向き圧潰工程が真空で動作するのを可能にする。底部カラーホルダー及び真空ユニット52ならびに頂部カラーホルダー及び真空ユニット54は更に、母材アセンブリ(特に、境界面)を、加熱要素(例えば、炉)内の潜在的な汚染物質及び外部環境から隔離する。炉及び外部環境は、従来の工程の、特に汚染物の境界面への侵入を避けることが困難な真空開始工程中の、代表的な汚染源である。そのうえ反応性境界面処理ガスは、境界面を、エッチングし、清浄し、乾燥させるために使用することができる。
【0039】
頂部溶接部42が加熱ゾーン16の中心の上方にあるとき、底部カラーホルダー及び真空ユニット52の真空ポンプを作動させる(すなわち、オンにする)。このような起動は、矢印56の方向に真空を引き、頂部カラー40内の圧力を減少させ始める。頂部カラー40内の圧力が減少し終えるとき、クラッド32の頂部は圧潰して、間隙31は閉じて、クラッド32は封止される、またはコアロッド30と融着する。この段階で、真空は、底部カラーホルダー及び真空ユニット52で送り込みを続ける一方、圧力が約1気圧に到達するまで、頂部カラー40にガス(例えば、窒素ガスN2)を裏で充填する。次に、頂部カラー40を大気に接続する。
【0040】
頂部カラーホルダー及び真空ユニット54の真空ポンプを作動させて(すなわち、オンにして)、矢印58の方向に真空を引くことができる。同様に、加熱ゾーン16の加熱要素で使用されるガス(通常は不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウムまたは最も一般的には窒素))のパージは、矢印60の方向で加熱要素にガスを導入することにより達成され得る。ガスパージは、ガラス体20の外側表面のすすの発生及び加熱要素の酸化を防ぐために、ガラス体20の外側表面と加熱要素の表面の間で起こる。加熱要素の頂部でのガスパージは通常、工程の開始時から行われている。工程中または工程の後に、すすまたは他の堆積物が母材の表面に形成されないように、適切なパージ速度(例えば、9m3/時間)を特定することが重要である。
【0041】
上向き圧潰工程は、コアロッド30の重量を支持する真空を必要としないので、コアロッド30とクラッド32の間の間隙31の分圧(最大は大気圧まで、またはもう少し高い、通常、約1,100mbar)も可能にする。したがって、反応性境界面処理ガス(例えば、六フッ化硫黄(SF6、室温で取り扱いが安全である))は、任意の潜在的な境界面汚染(例えば、金属粒子または表面水酸化物(OH))をエッチングするために、境界面処理ガスの矢印62の方向に高温圧潰の間に自由に適用することができる。六フッ化硫黄に加えて、他の好適な反応性境界面処理ガスとしては、酸素(O2)、安全上の懸念が生じるであろうが塩素(Cl2)、フッ素(F2)、三フッ化窒素(NF3)、四フッ化ケイ素(SiF4)、四フッ化炭素(CF4)、及びフルオロホルム(CHF3)が挙げられる。母材境界面をエッチングし、清浄し、及び乾燥させるための反応性境界面処理ガスの使用は、境界面の改善、光ファイバ品質の改良(ファイバ破断、気泡、損失、またはエアラインの低減)、及びコアロッドのD/d比の低下を生じさせる。
【0042】
再度
図2に戻ると、装置10は、所望によりフレーム12に取り付けられた把持システム80を含んでもよい。好適な把持システム80は、本出願の譲受人Heraeus Tenevo LLC&Heraeus Quarzglas GmbH&Co.KGによる2015年1月22日出願の「Formation Of Elongated Glass Components With Low Bow Using A Gripper Device」という名称の国際特許出願第PCT/米国2015/012471号に、より完全に記載されている。一実施形態で、把持システム10をフレーム12に取り付けることにより、把持システム80は装置10に含まれる。
【0043】
図2に示すように、装置10は、デカルト座標系に沿って位置合わせされる。デカルト座標系(X、Y、Z)とは、3つのデカルト数値座標により3次元空間で独自に各位置を特定する座標系であり、それは、同じ長さの単位で測定されて3つの固定した互いに直交する線から位置までの符号付き距離である。各基準線は、系の座標軸または単に軸と称され、それらが交差する位置はその原点、通常3つの組(0、0、0)である。座標は、3つの軸上の点の正射影の位置としても定義され得て、原点からの符号付き距離として表される。
【0044】
把持システム80は、クランプ要素82、及びクランプ要素82を把持システム80に取り付ける固定要素84を含む。把持システム80は、フレーム12の長さに平行して、垂直に移動することがある(Z方向として
図2で画定)。固定要素84は、クランプ要素82のX方向及びY方向(すなわち、X-Y面内の任意の位置)への並進運動を可能にする(必要でも好ましくもないが、特に炉ではなくトーチが加熱要素である場合、回転を可能にするチャックシステムも使用され得る)。一実施形態で、固定要素84は、アームの移動を制御するために、リニア軸受またはリニアレール、及びモータ(例えば、手動またはサーボモータ駆動)上に載置された一対のアームを含む、X-Yテーブルである。固定要素84は更に低摩擦装置であり、その結果、外部の物体によりクランプ要素82に印加される力は、クランプ要素82が外部の物体に抵抗力を印加する代わりに、クランプ要素82が固定要素84に沿って歪められることをもたらす。
【0045】
母材が形成されると、把持システム80は、クランプ要素82を移動させて、底部カラー44または(
図2に示すような)底部カラーホルダー及び真空ユニット52に接触させることにより、取り付けられ得る。クランプ要素82は、好ましくは母材に接触すべきではない。底部カラー44を損傷させることなく、クランプ要素82が下部カラー44の周りにしっかりと適合するように、クランプ要素82は、底部カラー44の逆の形状を有する凸領域を有するようにサイズ設定されてもよい。クランプ要素82は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の外側表面のすべてまたは(
図2に示されるような)一部のみに接触する場合がある。代表的な実施形態で、クランプ要素82は、高温圧縮性材料(例えば、ケイ酸カルシウム、アスベスト、圧縮ガラスまたはセラミックファイバ(例えば、ロックウール))、または高温ゴム(例えば、シリコーンまたはフルオロポリマーエラストマー)で作製され得る。
【0046】
底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心を決定して、次にクランプ要素82を移動させて、X方向の中心に位置合わせすることにより、クランプ要素82は最初に、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に位置合わせされる。いくつかの実施形態で、クランプ要素82は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の推定中心、例えば、所望の移動経路に基づく予想される中心に位置合わせされてもよい。他の実施形態で、クランプ要素82を底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52により正確に位置合わせするために、装置10は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に位置することができる検知要素、ならびに検知要素の出力から中心を決定するためのコンピュータを更に含んでもよい。検知要素は、1つ以上のレーザー装置、カメラ/ビジョンシステム、または機械的接触(ダイヤルインジケータ)システムを含んでもよい。代表的な実施形態で、検知要素は、把持システム80に取り付けられてもよい、または把持システム80の外部に、例えばフレーム12に取り付けられてもよい。別の実施形態で、検知要素、例えばカメラは、把持システム80及びフレーム12の両方の外部にあってもよい。把持システム80は、位置ずれを防止するための更なる構成要素を含むので、把持システム80が、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心と完全に位置合わせする必要はない。
【0047】
クランプ要素82が位置合わせされると、クランプ要素82は、X方向の固定要素84の移動により、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52と接触する。固定要素84は、任意の好適な機構、例えばX-Yテーブルの一対のアームを制御するために使用されるモータにより移動してもよい。固定要素84が低摩擦装置なので、クランプ要素82が、中心に正しく位置合わせされていない状態で、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けようと試みられる場合、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52のクランプ要素82を押す力は、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52を移動させる代わりに、クランプ要素82を位置合わせした位置に移動させる。固定要素84は、クランプ要素82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けられると、クランプ要素82の動きを防止するために係合及び取り外しされ得る係止機構を更に含んでもよい。クランプ要素82が位置に移動する間、係止機構は解かれているので、クランプ要素82は、クランプ要素82に印加される任意の更なる力で依然として位置がずれているが、モータで移動してもよい。クランプ要素84が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に接触すると、係止機構が係合されて、X-Y面のクランプ要素82の更なる移動を防ぐ。
【0048】
位置ずれを検出するために、一実施形態で、クランプ要素82を底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付ける工程中に生じる反力を感知して反力を測定するために、把持システム80は、ロードセル68などの力検知装置を更に含む。ロードセルは、クランプ要素82、各ロードセルの歪みゲージ(図示せず)に印加された力を、電気信号に変換する変換器である。次に、電気信号は測定され、それは歪みゲージに印加される力に相関する。代表的なロードセルとしては、油圧ロードセル、空気圧ロードセル、及び歪みゲージロードセルが挙げられる。クランプ要素82が、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の中心に適切に位置合わせされないならば、反力は、クランプ要素82が適切に位置合わせされる場合より大きいだろう。力検知装置を用いて反力を測定することにより、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52の移動をもたらすのに十分な力を、クランプ要素82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に印加する前に、位置ずれは検出及び補正され得る。一実施形態では、力検知装置は、低摩擦の固定要素84と共に使用されてもよく、クランプ要素82が固定要素84上を位置合わせされた位置まで移動するのを可能にするために、クランプ要素82が底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に取り付けられる速度が、予想よりも大きい反力に応答して遅い。代表的な実施形態で、クランプ要素82は、約50mm/分~約100mm/分の範囲の速度で、底部カラー44または底部カラーホルダー及び真空ユニット52に向かって移動し得る一方で、いかなる位置ずれも力検知装置で検出されないが、速度は、位置ずれが検出される場合、約10mm/分~約25mm/分に低減した。他の用途で、クランプ速度は、これらの範囲を超えてもよい。
【0049】
要約すれば、把持システム80は、母材アセンブリ重量(約350kg以上であり得る)を支持するのに役立ち、従来の完全接触プーラーホイールシステムに取って代わる。把持システム80は、正確な位置合わせ及び母材の形状の制御ならびに母材先端加工工程のための、水平(X-Y)面で母材を作製するために使用されたガラス体20の浮動位置決め、及び垂直(Z)方向の正確な直線移動を可能にする。特に、把持システム80が組み込まれるとき、装置10は、母材の側方または横方向の力を回避し、それにより母材の湾曲を最小限に抑え、あるいはそれを除去する。ロードセルを使用して加熱中のガラスの挙動を監視することができ、物理学(質量の保存)を使用して、寸法を正確に制御することを可能にする(従来のオンライン測定及びフィードバック制御の費用を削減する)。
【0050】
コントローラは、2つの構成要素の間のデータの流れを管理または指示する(すなわち、通信を容易にする)ハードウェア装置またはソフトウェアプログラムである。装置10は、コントローラ88を含む。コントローラ88は、例えば、ロードセル68、把持システム80、頂部カラーホルダー及び底部カラーホルダーならびに真空ユニット52、54、ならびに真空及び処理ガスシステムからのデータを取得する能力、ならびに装置10の他の構成要素及び関連する上向き圧潰工程を制御するそのデータを使用する能力を提供する。コントローラ88は、当業者に周知の方法で、最適な加熱及び移動処理工程を効率的に保証するために、予め設定された制御プログラムまたはルーチンをプログラムしている。更に具体的には、コントローラ88は、例えば、速度V1及びV2、ガスの流速、ならびに真空ポンプの圧力を画定することができる。コントローラ88は、製造のための堅固で再現可能な「ワンボタン」の自動化工程を保証するのに役立つ。
【0051】
本発明の別の実施形態で、可変封止100は、ガラス円筒体が高温炉に入るまたはそれから出る、ガラス円筒体の周囲に提供される。可変封止100は、ガラス円筒体の直径の比較的大きな変化に適応することができ、このような適応は、他の装置で実現するのが困難である。他の装置は、約10ミリメートルの直径の違いに適応できるだけである。可変封止100は、150ミリメートル以上の直径の違いに適応できる。他の装置が、直径の限定されたセットの周囲をしっかり封止するだけであるのに対して、可変封止100は、その範囲のいかなる直径の周囲にもぴったりした遮蔽を得る。
【0052】
可変封止100の一実施形態を
図4に示す。図示するように、可変封止100は、少なくとも1つのエアシリンダ114によって、好ましくは複数のエアシリンダ114によって接続される、上部支持リング110及び下部支持リング112を備える。金属が好ましいが、任意の好適な材料も、上部支持リング110及び下部支持リング112を作製するために使用できる。更に、任意の好適な数のエアシリンダ114で十分であり得るが、3つのエアシリンダ114を示す。また更に、様々なエアシリンダ114で十分であるが、複動式エアシリンダ114はうまく機能する。
【0053】
上部支持リング110と下部支持リング112との間の距離は、各エアシリンダ114と関連するエアシリンダ延長棒115を、対応するエアシリンダ114の本体に出し入れすることによって変えることができる。エアシリンダ114の本体は、下部支持リング112に接続している。エアシリンダ延長棒115は、下部支持リング112の穴116を通って延在して、通常(しかし、必ずしも必要ではない)締結具118を使用して、上部支持リング110に取り付けられる。
【0054】
可変封止100は、上部圧縮空気マニホールド120及び下部圧縮空気マニホールド130を備える。エアシリンダ延長棒115の動きは、圧縮空気を上部圧縮空気マニホールド120または下部圧縮空気マニホールド130に入れることによって制御される。上部圧縮空気マニホールド120は、上部マニホールド接続部122を介してエアシリンダ114の本体の上端に接続しており、下部圧縮空気マニホールド130は、下部マニホールド接続部132を介してエアシリンダ114の本体の下端に接続している。空気(または、別の適切な流体)は、上部ポート124を通して上部圧縮空気マニホールド120に送られ、空気(または、別の適切な流体)は、下部ポート134を通して下部圧縮空気マニホールド130に送られる。上部圧縮空気マニホールド120に圧縮空気を送達することによって、上部支持リング110及び下部支持リング112を近づかせる。下部圧縮空気マニホールド130に圧縮空気を送達することによって、上部支持リング110及び下部支持リング112を離れさせる。
【0055】
耐熱性に優れたファブリック円筒体140は、上部支持リング110及び下部支持リング112に取り付けられる。任意の好適な接着機構で十分であるが、取り付けは、(a)上側クランプリング126と上部支持リング110の間、及び(b)下部クランプリング128と下部支持リング112との間、の両方とファブリック円筒体140を留めることによりなされ得る。ファブリック円筒体140は、ファブリックの円筒からなる。多くの異なるファブリックを、円筒を形成するために使用できる。光ファイバ母材または光ファイバを製造する工程(高温炉を使用する)で、使用するファブリックは、これらの温度に耐えることができなければならない。織布シリカファブリックまたはカーボンファイバのファブリックが、これらの条件の下で使用できる。更により高温での露出のために、アルミノケイ酸ファブリックを使用することも可能である。
【0056】
ファブリック円筒体140を閉じる傾向がある(付勢する)コイルばね150は、ファブリック円筒体140のほぼ中心の周辺で延伸する。ばね150の伸びた長さは、ファブリック円筒体140のほぼ円周として予め設定される。ばね150の伸ばされていない長さは、可変封止100が封止しようとするガラス円筒体の最小円周にほぼ等しいと予め設定される。ばね150の張力は通常、例えば約9ニュートン(2ポンド)と18ニュートン(4ポンド)の間である。上部支持リング110及び下部支持リング112が互いに向かって移動するとき、ばね150はファブリック円筒体140を閉じる傾向がある。上部支持リング110及び下部支持リング112が互いから離れるとき、ファブリック円筒体140は開いて、ばね150を引っ張る。
【0057】
図5に示す、可変封止100の別の実施形態にて、ばね150は、定力リトラクタ162に取り付けられる一端及びポストまたはクランプ172に固定される他端を備える、ファブリック円筒体140に巻かれるケーブル160を含むシステムによって置き換えられる。定力リトラクタ162は、第1の支持棒164を上下に摺動させることができる。第1の支持棒164は第1の拡張プレート166上に載置され、それにより、下部支持リング112の外周に近接して、下部支持リング112に締結具168によって固定される(だが、通常、必ずしも必要ではない)。
【0058】
同様に、クランプ172は、第2の支持棒174を上下に摺動させることができる。第2の支持棒174は第2の拡張プレート176上に載置され、下部支持リング112の外周に近接して、下部支持リング112に締結具178によって固定される(だが、通常、必ずしも必要ではない)。好ましくは、定力リトラクタ162及びクランプ172は、ファブリック円筒体140の両側の互いの真向かい(180度離れている)に位置する。第1及び第2の拡張プレート166、176は、下部支持リング112と実質的に同じ水平面にある(それは、
図2に示す座標系のX-Y面に延在する)。第1及び第2の支持棒164、174の垂直または長手方向軸は、下部支持リング112の垂直または長手方向軸と平行であり、それからずれている(これらの長手方向軸は、
図2に示す座標系のZ方向に延在する)。
【0059】
定力リトラクタ162のリニア軸受は、定力リトラクタ162が第1の支持棒164を上下に摺動させるのを更に容易にする。同様に、クランプ172のリニア軸受は、クランプ172が第2の支持棒174を上下に摺動させるのを更に容易にする。したがって、上下の支持リング110、112の間の距離が変化する際、リニア軸受は、閉鎖システムがファブリック円筒体140の中心の動きに続くのを更に容易にする。
【0060】
定力リトラクタ162が作動するとき、定力リトラクタ162は、定力リトラクタ162の方にケーブル160を引っ張り、それにより、ファブリック円筒体140の周囲にケーブル160をぴんと張らせる。定力リトラクタ162の好適な張力は、約4.5ニュートン(1ポンド)~22ニュートン(5ポンド)である。最も好適な張力は、約9ニュートン(2ポンド)~13ニュートン(3ポンド)である。定力リトラクタ162がケーブル160を解くとき、ケーブル160はファブリック円筒体140の周囲でゆるむ。
【0061】
図5Aに示す、可変封止100の別の実施形態で、高温生地142のバンド142は、ファブリック円筒体140の外側に取り付けられ、その結果、バンド142の中心線は、ばね150がファブリック円筒体140を取り囲むファブリック円筒体140の中心線と一致する。バンド142は、生地で作製されてもよい。更に具体的には、バンド142は、50~70mmの幅広の編まれた高温テープでもよい。バンド142の目的は、ばね150による摩耗からファブリック円筒体140を保護することである。バンド142が摩耗の徴候を示すとき、バンド142を交換できる。
【0062】
図5Aで更に示すように、ばね150がファブリック円筒体140を囲む所でベルト144の中心線がファブリック円筒体140の中心線と一致するように、ベルト144はファブリック円筒体140の内部に取り付けられる。ベルト144は、生地で作製されてもよい。更に具体的には、ベルト144は編まれた高温テープでもよい。ベルト144は、その上端で取り付けられるだけである。使用中、ベルト144は、ファブリック円筒体140とファブリック円筒体140を通過するガラス円筒体の間に入り込むことはできず、折り畳まれる、またはこの境界の周囲の下に押し込まれる。ベルト144の目的は、ファブリック円筒体140とガラス円筒体の間の封止を改善して、更にガス流を制限することである。
【0063】
また更に
図5Aに示すように、石英ガラスウールのリング146は、おおよそばね150の位置で、ファブリック円筒体140の内部に取り付けられる。リング146の断面直径は約50mmであり、リング146は、ファブリック円筒体140の内部円周の周囲に非常にゆるく、ほんの数箇所で取り付けられる。また、リング146の目的は、封止を改善することである。使用中、リング146は、ファブリック円筒体140とファブリック円筒体140を通過するガラス円筒体の間で圧縮されて、封止を改善するのを助ける。
【0064】
バンド142、ベルト144及びリング146の3つすべては、
図5Aに示すように一緒に使用できる。あるいは、バンド142、ベルト144及びリング146は別個に使用され得る。他の変形例は、3つの構成要素のうちの2つの異なる組み合わせを使用する。
【0065】
図4に示す可変封止100の実施形態、及び
図5Aに示す可変封止100の実施形態は、付勢ばね150を含む。
図5に示す代替的実施形態は、ケーブル160、定力リトラクタ162及びクランプ172を含む。両方の実施形態は、アコーディオンのように互いの方にそしてそれから離れる方に移動する上部及び下部支持リング110、112で、ファブリック円筒体140を締めたりゆるめたりする。他のシステムは、ファブリック円筒体140を締めたりゆるめたりするために使用できる。そのうえ、
図4、
図5及び
図5Aに示す実施形態は、図示するように独立して、または互いにもしくは他の締めつけ及びゆるめシステムと組み合わせて使用できる。
【0066】
可変封止100の主な目的は、装置1p、10の開口端からのガス流を最小限に抑えることである。多くの場合、上述の可変封止100は、その目的を達成するのに十分である。しかし、更に完全な封止が要求される場合、ファブリック円筒体140、及び可変封止100の関連要素(例えば、上部及び下部支持リング110、112)は、
図6に示すような円筒状の「容器」または筐体180によって取り囲まれて、その中に入れられることができる。
図6は、
図4に示す可変封止100の実施形態と組み合わせて使用される筐体180を示す。もちろん、筐体180は、
図5に示す可変封止100の実施形態と組み合わせても使用できる(適切な修正をしたうえで)。金属が好ましいが、任意の好適な材料を筐体180を作製するために使用できる。
【0067】
図6に示すように、上部支持リング110が筐体180の内部を上下に移動できるように、筐体180は下部支持リング112だけに取り付けられる。筐体180は、通常(だが、必ずしも必要ではない)複数の締結具182を使用して下部支持リング112に取り付けられる。ガスは、大気より高い圧力で筐体180内に供給されて、装置1p、10からのガス流を更に最小限に抑えることができる。ガスは、図示するように、1つのポート184を通して供給されることができる、または筐体180の円周の周囲の複数の位置のガスを送るマニホールドを通して供給されることができる。
【0068】
筐体180に供給されるガスは、好ましくは不活性である。不活性ガスは、酸素が装置1p、10にその開口部で入るのを防ぐ。不活性ガス流は、常に大気圧より高く、装置1p、10内部の圧力を維持する。
【0069】
上述の実施形態で、可変封止100は、上部支持リング110に対して一端で及び下部支持リング112に対してその対向端部で取り付けられた、ファブリック円筒体140を含む。ファブリック円筒体140の中心の周囲に、ファブリック円筒体140を閉じる傾向の機構がある。
図4及び
図5Aに示すように、機構は、ファブリック円筒体140の周囲で伸びるコイルばね150であり得る。ばね150の伸ばされていない長さは、封止が要求されている、ガラス円筒体の最小円周にほぼ等しいと予め設定される。機構は、クランプ172に対して一端で及び定力リトラクタ162に対して他端で取り付けられる、ケーブル160でもあり得る。
【0070】
上部支持リング110と下部支持リング112の間の距離は、1つの支持リングを他に対して動かすことにより制御され得る。いくつかの異なる構成要素は、上部支持リング110と下部支持リング112の間の距離を調節するために使用できる。上述のエアシリンダ114、エアシリンダ114の本体から延在し、その中に引っ込むシリンダ延長棒115、及び圧縮空気マニホールド120、130は、部分的には好ましい。それは、エアシリンダ114に対する高圧空気供給源が、次にコントローラ88によって指示を受ける、電磁弁及び調整器のシステムにより制御され得るからである。空気をエアシリンダ114の適切な端に適用することによって、上部支持リング110と下部支持リング112の間の距離は、制御された方法で増減され得る。エアシリンダ114の利点は、とても迅速に作動するということである。
【0071】
上部支持リング110と下部支持リング112との間に間隔を制御するために使用できる代替の構成要素は、ねじジャッキである。この変形例にて、被動ウォームねじは、上または下に平行移動して、可動プレートを運搬する、ねじ棒を動かす。可動プレートは、固定した他のプレートを備える上部支持リング110または下部支持リング112のいずれかであり得る。2つのねじジャッキが使用される場合、上部支持リング110及び下部支持リング112は、それらの協調する移動によって可動性であり得る。
【0072】
上部支持リング110と下部支持リング112との間の距離が増加する際、ファブリック円筒体140は開いて、ファブリック円筒体140の周囲のばね150は引っ張られる、またはより多くのケーブル160は定力リトラクタ162から引き出される。上部支持リング110と下部支持リング112の間の距離が減少するとき、ばね150またはケーブル160はファブリック円筒体140を引っ張って閉じさせる。動作中、ガラス円筒体がファブリック円筒体140を通過した状態で、ばね150またはケーブル160の動作は、封止を作成する、ガラス円筒体の円周に対してファブリック円筒体140を押圧する。上部支持リング110と下部支持リング112との間の距離を変化させることによって、ガラス円筒体の直径が変化するときでも、封止を維持できる。可変封止100を使用して、封止は、約50mm~210mmで変化するガラス円筒体の直径のために維持されることができる。封止の範囲は、上部支持リング110及び下部支持リング112の直径の適切な変化、ファブリック円筒体140の直径の変化、ならびにファブリック円筒体140の高さの変化により、修正され得る。
【0073】
図7及び
図8は、可変封止100の適用の可撓性、調整力及び範囲を示す。上向き圧潰工程を使用して光ファイバ母材を製造するための
図2に示す装置10と組み合わせて使用されるように、
図7及び
図8は、
図4に示す可変封止100の実施形態を特に示す。
図7は、比較的大きな頂部カラー40に対する封止を提供する、封止100を示す。
図8は、比較的小さい直径の母材(すなわち、圧潰され、引っ張られたガラス体190)に対する封止を提供する、封止100を示す。
図7及び
図8のそれぞれで、封止100及び装置10の組み合わせは、システム200を形成する。
【実施例】
【0074】
図9に関して、以下の実施例は、本発明の全体的な本質をより明確に示すために含まれる。この実施例は、本発明の例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
図9は、装置10、特に加熱ゾーン16(
図1に示す装置1pの炉6pに対応する)の劣化の可変封止100の効果を示すグラフである。上向き圧潰装置10の加熱ゾーン16を作製する加熱要素は、グラファイトで作製されている。動作中、酸素が装置10内への流入を許される場合、グラファイトは酸化して、加熱ゾーン16の、したがって装置10の寿命に負の影響を及ぼす加熱ゾーン16の壁の厚さは減少する。この劣化は、動作中、加熱ゾーン16の電圧を使用して監視することができる。電圧が一定の電力で増加する場合、これは、加熱ゾーン16が酸化していることを意味する。
【0075】
図9は、3つの異なる実行の間の加熱ゾーン16の電圧のグラフを示す。最下部のグラフに反映される1つの実行で、可変封止100は使用されなかった。この実行の一定電流の位相の間、加熱ゾーン16の電圧は安定して増加した。中間のグラフに反映される第2の実行で、可変封止100は適所にあったが、実行の途中まで完全には閉鎖していなかった。この場合の電圧は、可変封止100が完全に閉じた位置まで、安定して増加した。この時点から、電圧は一定した。一番上のグラフに反映される第3の実行で、可変封止100は適所にあって、実行の全体の間、閉じていた。加熱ゾーン16の電圧は、この実行の間、基本的に一定のままで、加熱ゾーン16のグラフ加熱要素がほとんど劣化を被らなかったことを示している。
【0076】
世界中の接続機器、クラウドサービス、5G(第5世代のモバイルネットワークまたは第5世代のワイヤレスシステム(それは、モバイル通信規格の主要段階を示す))、及びIndustry4.0(または、第4次産業革命、サイバーフィジカルシステム、モノのインターネット及びクラウドコンピューティングを含む製造技術の自動化及びデータ交換の最近の傾向)、ならびに他の進歩は、帯域幅への指数関数的に増加する需要を加速させている。したがって、光ファイバの製造業者は、それらの生産高及び生産性を上昇させなければならない。次世代の光ファイバ製造にて、高速で線引きされる非常に大きな母材が必要とされる。特に上向き圧潰装置10を含むシステム200の一部としての可変封止100の成果は、それらの要求を満たす。
【0077】
可変封止100は、大きな直径範囲にわたって基本的に無限に様々な封止直径に適合する。可変封止100は、目的物の周囲の多種多様な加熱炉の上部及び底部を封止するために使用することができる。更に具体的には、可変封止100は、光ファイバ線引きタワーの最上部、及びガラス母材を加熱して、光ファイバを線引きするために使用する他の装置を封止するために使用できる。可変封止100が母材及びハンドルで異なる直径を有するプレフォームを使用する高い自由度を可能にするので、母材の顧客は可変封止100から利益を得る。これによって、光ファイバ製造業者が顧客の工程での収率を改善する母材を生産するのが可能になる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態の前の記述は、特許請求の範囲によって定義される本発明を制限するというよりは、例示として取られるべきである。容易に理解されるように、上述の特徴の多数の変形及び組み合わせは、特許請求の範囲に記載されるような本発明を逸脱しない範囲で利用できる。そのような変形は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するとはみなされず、すべてのそのような変形は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。例えば、広くこの文書で詳述されるすべての範囲が、それらの範囲内に、より広い範囲内に属するすべてのより狭い範囲を含むことがはっきりと意図されている。当業者であれば理解するように、本プロセスに含まれる特定の工程は省略できる、特定の追加工程を加えることができる、及び工程の順序は示した順番から変えることができることも明確に意図されている。