(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】圧縮空気システムのためのノイズダンパ、およびノイズダンパを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 17/00 20060101AFI20220104BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B60T17/00 B
G10K11/16 100
(21)【出願番号】P 2020537852
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2018075138
(87)【国際公開番号】W WO2019063350
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】102017122215.4
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サボルチ ショーヴァーゴー
(72)【発明者】
【氏名】ミクローシュ タンツォシュ
(72)【発明者】
【氏名】マールトン フェケテ
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエル ブイドショー
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00093842(EP,A1)
【文献】米国特許第04424883(US,A)
【文献】独国特許出願公開第02910209(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00379160(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第04040278(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T15/00-17/22
G10K11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車のブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのためのノイズダンパであって、
圧縮空気流のための流入通路(6)と消音材料(2’)を収容するための室(2)とを備えたハウジング(3,4)が設けられており、
前記流入通路(6)と前記室(2)とは、前記圧縮空気流に対して垂直に、仕切りプレート(8)によって仕切られており、該仕切りプレート(8)は、中央領域において閉鎖されていて、かつ前記圧縮空気流の外周領域において、前記圧縮空気を前記室(2)内に直接導入するための複数の開口(9)を有して
おり、
前記仕切りプレート(8)における前記複数の開口(9)は、それぞれ、前記室(2)内へ向かう前記圧縮空気流に対して、拡大する横断面を有しており、かつ
前記ハウジング(3,4)は、前記室(2)の高さに肩部領域(11)を有しており、これによって前記室(2)は、前記圧縮空気流に対して、前記流入通路(6)よりも大きな横断面を有している、
ノイズダンパ。
【請求項2】
前記消音材料(2’)は、前記仕切りプレート(8)に直接接触していて、かつ予荷重を受けて前記室(2)内に存在しており、これによって前記圧縮空気流は、前記開口(9)の通過後に前記消音材料(2’)内に直接到達し、かつ作動時に前記消音材料(2’)と前記仕切りプレート(8)との間において空隙が回避される、
請求項
1記載のノイズダンパ。
【請求項3】
前記消音材料(2’)は、
前記室(2)の容積よりも10%大きい状態から弾性的
に圧縮されて、前記室(2)内に配置されている、
請求項
2記載のノイズダンパ。
【請求項4】
前記ハウジング(3,4)は、前記圧縮空気流の方向で前記仕切りプレート(8)に向かい合って位置するように、前記圧縮空気流のための複数の流出開口(7)を備えた底プレート(14)を有しており、前記流出開口(7)は
、ハニカム形状のパターンでもって前記底プレート(14)に形成されている、
請求項1から
3までのいずれか1項記載のノイズダンパ。
【請求項5】
前記底プレート(14)は、前記室(2)内へ向けて凹部を形成している、
請求項
4記載のノイズダンパ。
【請求項6】
前記ハウジング(3,4)は、第1のハウジング部分(3)と第2のハウジング部分(4)とを有しており、前記第1のハウジング部分(3)および第2のハウジング部分(4)は、前記第1のハウジング部分(3)と前記第2のハウジング部分(4)とを互いに不動に結合するために結合手段を有している、
請求項1から
5までのいずれか1項記載のノイズダンパ。
【請求項7】
前記結合手段は、下記の構成、すなわち、
-バヨネット継手
-係止結合部
-溝結合部
-接着結合部
のうちの少なくとも1つの構成を含んでいる、
請求項
6記載のノイズダンパ。
【請求項8】
補強要素(12,13,15,16)が、前記ハウジング(3,4)における下記の位置、すなわち、
-前記肩部領域(11)と前記流入通路(6)との間の結合領域、
-前記室(2)の円筒形の外周部に沿うリング形状の領域、
-前記流出開口(7)、
のうちの少なくとも1つの位置に形成されており、
前記補強要素が前記流出開口(7)に設けられている場合には、前記補強要素(15,16)は
、半径方向に延在するリブ(15)と同心的に延在するリブ(16)とを含んでいて、両リブ(15,16)の間に前記流出開口(7)が形成されている、
請求項
4または請求項4を引用する請求項5から
7までのいずれか1項記載のノイズダンパ。
【請求項9】
前記結合手段は、前記第1のハウジング部分(3)と前記第2のハウジング部分(4)との間における不所望の空気流出を回避するために、前記第1のハウジング部分(3)と前記第2のハウジング部分(4)との間に密な結合部を提供している、
請求項
6、7、または請求項6を引用する請求項8のいずれか1項記載のノイズダンパ。
【請求項10】
前記底プレート(14)における前記流出開口(7)および/または前記補強要素は、前記圧縮空気流が部分的に側方へ半径方向に流出するように形成されている、
請求項
8または請求項8を引用する請求項9記載のノイズダンパ。
【請求項11】
前記ハウジング(3,4)は、前記流出開口(7)が、前記仕切りプレート(8)と前記底プレート(14)との間の間隔よりも、前記仕切りプレート(8)の前記開口(9)から離れるように形成されている、
請求項
8、請求項8を引用する請求項9または請求項10のいずれか1項記載のノイズダンパ。
【請求項12】
排気装置を備えた商用車のための空気力式のブレーキシステムであって、
請求項1から
11までのいずれか1項記載のノイズダンパが設けられていて、該ノイズダンパの圧縮空気流入部
である流入通路(6)が、前記排気装置に接続されている
ことを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項13】
商用車のブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのためのノイズダンパを製造するための方法であって、ハウジング(3,4)の形成を含む方法において、
-圧縮空気流のための流入通路(6)を形成し、
-消音材料(2’)を収容するための室(2)を形成し、
-前記圧縮空気流に対して垂直に前記流入通路(6)と前記室(2)とを分離する仕切りプレート(8)を形成し、かつ
-圧縮空気を前記室(2)内に導入するために、前記圧縮空気流の外周領域において
前記仕切りプレート(8)に複数の開口(9)を形成
し、
前記仕切りプレート(8)における前記複数の開口(9)は、それぞれ、前記室(2)内へ向かう前記圧縮空気流に対して、拡大する横断面を有しており、かつ
前記ハウジング(3,4)は、前記室(2)の高さに肩部領域(11)を有しており、これによって前記室(2)は、前記圧縮空気流に対して、前記流入通路(6)よりも大きな横断面を有している、
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記室(2)を、
前記室(2)の容積と同じ体積を有する前記消音材料(2’)によって完全に満たすか、または
前記室(2)の容積よりも大きな体積を有する前記消音材料(2’)によって過剰に満たす、
請求項
13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気システムのためのノイズダンパ、圧縮空気システム、およびノイズダンパを製造するための方法に関する。
【0002】
圧縮空気システムは、しばしば極めて短い時間内に大量の圧縮された空気を周囲に流出させる。この弛緩プロセスは、大きなノイズを生ぜしめることがある。ノイズ発生を許容レベルに保つためには、圧縮空気システムのためのノイズダンパがしばしば必要である。
【0003】
このようなノイズダンパのハウジングは、空気力式の弁に直接、例えばバヨネット継手を介して接続されることができる。公知のシステムは、例えば欧州特許第0708007号明細書に開示されている。この公知のシステムでは、弁体が流出通路を有していて、この流出通路が、部分的にノイズダンパユニットの流入通路内に組み込まれている。別の可能性としては、通路形状の中間コンポーネントを設けることがあり、この中間コンポーネントは、例えばノイズダンパのハウジングの一部として、弁の流出通路への接続部を提供し、かつノイズダンパユニットを空気力式の弁に固定する。ノイズ減衰のために、圧縮空気システムのために適したノイズダンパは、典型的にノイズ減衰領域を含んでおり、このノイズ減衰領域は、消音材料によって満たされていて、かつハウジングの内部において収容されている。このようなシステムは、独国特許第19701361号明細書に開示されている。
【0004】
ノイズダンパのパフォーマンスを高めるために、例えば消音材料内における圧縮空気の通路を増大させることが可能である。そのためには例えば、ノイズ抑制材料のために比較的大きなハウジングを使用することができる。しかしながらこのことは、しばしば困難を伴ってしか達成可能でない。それというのは、しばしば十分なスペースを使用することができないからである。商用車では、使用することができるスペースは益々制限されていて、大型のノイズダンパはほとんど収容することができない。同様にまた圧縮空気流を、ノイズ抑制材料を通して複数回変向させかつ反転させることによって、ノイズ抑制材料内における圧縮空気のための流路を比較的長くすることも可能である。このようなシステムは、例えば国際公開第2009/152884号に開示されている。しかしながらこのシステムには欠点がある。それというのは、このシステムは圧縮空気に対して比較的大きな流れ抵抗を有しているからである。さらに方向変化は、ノイズ抑制材料の内部における閉塞または凍結の発生を惹起することがある。つまり通常圧縮空気は、汚れおよび/または高い湿分を有しており、この結果突然の圧力降下は、急激な冷却を惹起し、かつ汚れもしくは湿分は、様々な箇所において容易に付着することがあり、もしくは凝固してしまう。
【0005】
別の公知のノイズダンパ(独国特許出願公開第4040278号明細書)では、圧縮空気はまず大容積の自由空間内に流入し、この自由空間は、内部にノイズ抑制材料が位置している領域に接続されている。そのために両方の領域の間には、圧縮空気流をノイズ抑制材料内に導入する孔付きプレートが設けられている。しかしながらまたこのノイズダンパにおいても、圧縮空気流は複数回反転され、このことは最適ではなく、上に述べた凝固/堆積を惹起するおそれがある。
【0006】
独国特許出願公開第102013013281号明細書では圧縮空気流は、流入領域とノイズ抑制材料を備えた領域との間における屈曲された表面によって合目的的に導かれ、そのために1つの中央の開口と複数の縁部貫通路とが設けられている。さらにノイズ抑制材料の上には、縁部貫通路に接続されている弛緩領域が設けられている。しかしながら、この圧縮空気案内形態も十分なノイズ抑制を達成しないということが示されている。
【0007】
増加する環境条例が、圧縮空気システムのためのノイズ抑制に関する要求を益々多くするので、公知のシステムは、必要な高いノイズ抑制を達成するために、かつ同時に閉塞および凍結に対するリスクを十分に排除するために、もしくはスペースを節減して収容するために、もはや十分に効果的ではない。
【0008】
ゆえに特にブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのための効果的なノイズ減衰作用を提供する、別のシステムに対する需要がある。
【0009】
上に述べた問題の少なくとも一部は、請求項1記載のノイズダンパ、請求項13記載の空気力式のブレーキ圧システム、および請求項14記載のノイズダンパを製造するための方法によって解決される。従属請求項は、さらなる好適な実施形態を定義している。
【0010】
本発明は、特に商用車のブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのためのノイズダンパに関する。ノイズダンパは、圧縮空気流のための流入通路と消音材料を収容するための室とを備えたハウジングを含んでいる。流入通路と室とは、圧縮空気流に対して垂直に仕切りプレートによって仕切られており、該仕切りプレートは、中央領域において閉鎖されていて、かつ圧縮空気流または流入通路の外周領域において、圧縮空気を室内に直接導入するための複数の開口を有している。圧縮空気は、特に開口の通過後に、追加的に設けられた消音材料内に直接導入されることになり、つまり迂回させられることなしに、かつ中間室または空隙を通過する必要なしに、直接導入されることになる。
【0011】
消音材料は、室内に設けられていてよいが、しかしながら室内に設けられていなくてもよい。本発明は、消音材料が圧縮空気流の音または連続する音波を減衰するのに適している限り、特定の消音材料に制限されるものではない。消音材料は例えば、ハニカム構造、編物構造、またはメッシュ構造の糸材料を有していても、しかしながらまた顆粒構造を有していてもよく、このとき形状、サイズ、強度、多孔性などは、一方では圧縮空気流をほとんど阻止せず、かつ他方では音を効果的に減衰するように選択されており、このとき圧縮空気流は、流入通路からハウジングにおける流出開口に向かって流れる。
【0012】
追加的に、仕切りプレートにおける複数の開口は、室内への圧縮空気流に対して、拡大する横断面を有している。さらにハウジングは、室の高さに肩部領域を有していてよく、これによって室は、圧縮空気流に対して、流入通路よりも大きな横断面を有している。これによってそれぞれの個々の開口の横断面は、空気流方向において広がっており、かつ分配通路において終端していてよい。これにより消音材料が最適に利用される。例えばこれらの開口は、仕切りプレートの外周領域にだけ均一に設けられていてよい。
【0013】
追加的に、消音材料は、仕切りプレートに直接接触していて、かつ予荷重を受けて室内に存在しており、これによって圧縮空気流は、開口の通過後に消音材料内に直接到達し、かつ作動時にも消音材料と仕切りプレートとの間において空隙が回避される。空隙は、消音材料が存在していないあらゆる形状の間隙または隙間である。実施例によれば室内には、作動中にではなく大きな圧力変動が発生する場合でも、このような間隙はまったく存在していない。このことを達成するために、追加的に消音材料は、弾性的に10%まで圧縮されて、室内に配置されていてよい。
【0014】
追加的に、ハウジングは、圧縮空気流の方向で仕切りプレートに向かい合って位置するように、圧縮空気流のための複数の流出開口を備えた底プレート(流出プレート)を含んでおり、このとき流出開口は、特にハニカム形状のパターンでもって底プレートに形成されている。このとき例えばハニカム形状の構造体は、極めて良好な重量特性と相俟って、極めて良好な機械的な安定性を提供する。同様に、ハウジングを、流出開口が、仕切りプレートと底プレートとの間の間隔よりも仕切りプレートの開口から離れるように形成することが可能である。
【0015】
追加的に、底プレートは、室内へ向けて凹部を形成している。ハウジング外側から見てこのような凹面状の形状(またはハウジング内側から見た場合には、凸面状の形状)によって、底プレートの強度は高められる。これによって、ノイズ抑制材料をハウジングの組立て時に流入通路に向かって押圧することがさらに可能になる。これによって間隙の形成が阻止される。
【0016】
追加的に、ハウジングは、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを含んでおり、このとき第1のハウジング部分および第2のハウジング部分は、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを互いに不動にかつ密に結合するために結合手段を有している。結合手段は、例えば下記の構成、すなわち、
-バヨネット継手
-係止結合部
-溝結合部
-接着結合部
のうちの少なくとも1つの構成を含んでいてよい。
【0017】
2つのハウジング部分の間に間隙が形成されると、開口が形成されるおそれが、つまりR<Lでかつ流出が望まれていない領域において、開口が形成されるおそれがある。
【0018】
これらの結合部は、組み合わされてもよい。このようにして同様に、両ハウジング部分を溝の内部において互いに接着すること、またはシーリングすることが可能であり、これによって十分なシールを保証することができる。
【0019】
結合手段は、特に第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間における密な結合部を提供し、これによって第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間における不所望の空気流出を阻止することができる。そのために相応のシール部材が設けられていてよく、または接触面は、相応に平らに形成されており、この結果所望のシール性を適宜な圧着圧によって達成することができる。
【0020】
追加的に、ノイズダンパは、補強要素を含んでおり、該補強要素は、ハウジングにおける下記の位置、すなわち、
-肩部領域と流入通路との間の結合領域、
-室の円筒形の外周部に沿うリング形状の領域、
-流出開口、
のうちの少なくとも1つの位置に形成されており、
補強要素が流出開口に設けられている場合には、補強要素は、特に半径方向に延在するリブと同心的に延在するリブとを含んでいて、両リブの間に流出開口が形成されている。
【0021】
ハウジングの材料は、例えばプラスチックであるか、またはプラスチックを含んでいてよいので、これらの補強要素はハウジングの強度を高め、かつこれによりノイズ減衰を著しく改善する(例えば振動が阻止される)。
【0022】
追加的に、底プレートにおける流出開口および/または補強要素は、何らかの理由から軸方向における流出が阻止される場合でも、圧縮空気流が部分的に側方へ半径方向に流出するように(ノイズダンパの軸方向軸線に関して)形成されている。
【0023】
本発明はまた、商用車の空気力式のブレーキシステムにも、または排気装置(例えば排気弁)を備えた商用車自体にも関し、空気力式のブレーキシステムは、既に記載したようなノイズダンパを有しており、該ノイズダンパの圧縮空気流入部が、排気装置に接続されている。ノイズダンパは、例えばねじ結合部または係止結合部を介して、弁の流出部(排気部)に接続されることができる。
【0024】
本発明はまた、特に商用車のブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのためのノイズダンパを製造するための方法にも関する。この方法は、下記のステップ、すなわち、
-圧縮空気流のための流入通路を形成するステップ、
-消音材料を収容するための室を形成するステップ、
-圧縮空気流に対して垂直に流入通路と室とを分離する仕切りプレートを形成するステップ、および
-圧縮空気を室内に導入するために、圧縮空気流の外周領域において複数の開口を形成するステップ
によるハウジングの形成を含んでいる。
【0025】
もちろん、方法ステップのリストは、方法ステップの実施時における確定された順序を示唆するものではない。方法ステップをこの順序で実施すること、または別の順序で実施することができる。さらにノイズダンパのすべての特徴を、さらなる追加的な方法ステップによって形成することができる。特に方法は、消音材料の挿入および異なったハウジング部分の組立てを含むことができる。さらに方法を、消音材料が予荷重の作用下で室内に存在するように実施することが可能である。
【0026】
実施例は、室がノイズ抑制材料(消音材料)によって満たされていて、かつノイズ抑制が実施され、このとき圧縮空気が周囲における開口を介して導入される場合に、上に述べた問題のうちの少なくとも一部をノイズダンパによって解決する。同時に、圧縮空気流が広がる流れ方向が最適化されており、かつ例としての空気力式の弁の排気中に高い内部圧力変化が生じる場合でも、例としてのプラスチックハウジングの許容可能な小さな変形しか発生しない。
【0027】
さらに実施例は、ハウジング部分の間における間隙(または隙間)の形成を回避する。公知の消音器では、ハウジングの内部における急激な圧力上昇に基づいて、このような間隙が、上側のハウジング部分においても下側のハウジング部分においても発生する、もしくはそこに明確に設けられている。これらの間隙は、ノイズ抑制を非効率的にする。それというのは、追加的な圧縮空気流が発生するからである。実施例は間隙を確実に回避するので、公知の消音器における不都合な作用も発生しない。
【0028】
本発明の実施例は、種々様々な実施例の以下における詳細な説明および添付の図面によってより良好に理解されるが、しかしながらこれらの実施例は、これらの実施例が開示を特殊な実施形態に制限するというように理解されるべきではなく、単に説明および理解のために役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本発明の1実施例によるノイズダンパを示す図である。
【
図1B】本発明の1実施例によるノイズダンパを示す図である。
【
図2】別の実施例による開口を拡大して示す図である。
【
図4A】別の実施例による流出開口を備えた底プレートの可能な構成をさらに示す図である。
【
図4B】別の実施例による流出開口を備えた底プレートの可能な構成をさらに示す図である。
【
図4C】別の実施例による流出開口を備えた底プレートの可能な構成をさらに示す図である。
【
図5】別の実施例による第1のハウジング部分と第2のハウジング部分との間における、例としての結合部を示す図である。
【0030】
図1Aは、本発明の1実施例によるノイズダンパの一部を断面して示す側面図である。ノイズダンパは、特に商用車のブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムのために適しており、かつ圧縮空気流用の流入通路6と消音材料2’を収容するための室2とを備えたハウジング3,4を含んでいる。流入通路6と室2とは、圧縮空気流に対して垂直に仕切りプレート8によって互いに分離されており、この仕切りプレート8は、圧縮空気流または流入通路6の外周領域に複数の開口9を有しており、これによって圧縮空気を室2内に導入することができる。特に、開口9は外周領域においてだけ規則的に形成されていてよいので、仕切りプレート8は、その中央領域(例えば流入通路6に関して)に開口を有していない。
【0031】
ノイズダンパのハウジング3,4は、2つの部分または区分に、すなわち接続部分5を備えた上側の第1のハウジング部分3と、下側の第2のハウジング部分4とに分割されている。接続部分5は、流入通路6を含んでいて、かつ低ノイズに消音することが望ましい圧縮空気の発生源、例としての弁体またはその他の源に、ノイズダンパを接続するために働く。さらに接続部分5は、室2よりも小さな横断面積(圧縮空気流に対して垂直に)を有している。したがって接続部分5への移行部における上側のハウジング部分3は、肩部領域11を形成しており、この肩部領域11は、補強要素12を介して接続部分5に支持される。下側のハウジング部分4は、底プレート14(流出プレート)を含んでおり、この底プレート14は、内部に形成された流出開口7を備えていて、これによって圧縮空気を消音して周囲に放出することができる。
【0032】
上側のハウジング部分3は、下側のハウジング部分4に結合されて一緒になっており、これによって追加的な消音材料2’を備えた室2を形成することができる。結合は、ほぼ真ん中において行うことができる。しかしながら同様に、ハウジング部分3,4の間における結合を肩部領域11において、または底プレート14において行うことも可能であり、この結果例えば室2の容積の90%を越える容積が、上側のハウジング部分3内に、または下側のハウジング部分4内に存在することになる。上側のハウジング部分3は、追加的に係止結合部またはバヨネット継手を介して、下側のハウジング部分4に結合されてよい。
【0033】
図1Bには、ノイズダンパの流入通路6を覗くように示された斜視図が示されている。
図1Bにおいて見えるように、仕切りプレート8の外周部に沿って、複数の開口9が互いに規則的な間隔をおいて設けられており、これによって流入通路6を介して流入する圧縮空気流を、その下に位置している室2内にさらに導くことができる。
【0034】
ハウジング3,4は、例えばプラスチック材料から製造されている。それというのは、プラスチック材料は一方では安価に製造可能であり、腐食を有せず、かつ重量が僅かだからである。しかしながらプラスチック材料は、しばしば容易に変形可能であり、このことはしばしば望ましくない。それというのは、このような変形可能性は、ノイズ減衰を制限してしまうからである。特に圧縮空気システムの突然の排気時に、突然発生する空気圧変動によって圧力波が生じることがあり、このような圧力波は、振動またはハウジング3,4の変形を惹起するおそれがある。このような変形を回避するために、ノイズダンパの様々な位置には補強要素が形成されていてよい。そのための例としては、肩部領域11における補強要素12、またはハウジング3,4の外周部に沿って形成されていてよいリブ13がある。
【0035】
図2には、例としての開口9が拡大図で示されており、この開口9は、流入通路6を該流入通路6の下に位置している室2に接続している。この開口9は、仕切りプレート8と肩部領域11との間において、接続部分5が肩部領域11に移行する箇所に形成されていて、ひいては仕切りプレート8の外縁部領域に形成されている。
【0036】
開口9は、圧縮空気流に沿って上から下に向かって広がる横断面を有しており、このとき開口角は、例えば35°である。別の実施例では、開口角は相応に可変に形成されていてよい。これによって、圧縮空気流が流入通路6から可能な限り広幅に室2内において拡散することができ、ひいては迅速な圧力消滅が達成される。例えば開口9の横断面積の総和は、流入通路6の横断面積の25%以下である。さらに開口9は、例えば可能な限り消音材料2’の近傍において終端しており、これによって、圧縮空気流が複数の方向において消音材料2’内に導入され、かつ消音材料2’によって抑制されることを保証することができる。
【0037】
図3には、ノイズダンパを圧縮空気流に沿って断面した断面図が示されており、このとき流入通路6は、上において見ることができ、かつ流入通路6の下に位置するように、消音材料2’を備えた広幅に形成された室2が配置されている。
【0038】
図3には、
図2においても記載された開口9が同様に示されている。ハウジングの幾何学形状は、例えば、開口9と流出開口7との間における最短の接続線Rが、室2が圧縮空気流の方向に沿って有している高さLよりも大きいかまたは等しくなるように形成されている。すなわち、
R≧L
という式が成り立つ。そのために例えば流出開口7は、流入通路6に向かい合って位置している側に設けられていて、しかも部分的に、側壁に隣接する領域に接してまたは側壁に隣接する領域上に設けられていてもよい。これによって、圧縮空気流が可能な限り長く、消音材料2’を備えた室2内において拡散することが保証される。このことは、効果的な音の抑制をもたらす。
【0039】
ノイズ減衰作用をさらに最適化するために、ハウジングの上側の部分(肩部領域11または仕切りプレート8)と消音材料2’の上側の部分との間には、可能な限り(空気の)間隙が形成されないことが好ましい。このことは、複数の実施例によって保証される。さらに、作動中に、排気中の圧力作用を受ける間隙または隙間が発生しないことが好ましい。このことを達成するために、例えば室2の容積を完全に、またはその少なくとも95%以上を、消音材料2’によって満たすことができる。同様に、室2を消音材料2’によって溢れるほどに満たすことも可能である。そのために圧縮されていない状態において消音材料2’の体積は、室2の容積よりも10%まで大きくてよい。そのときハウジング部分3,4の組立て時に、消音材料2’は、所定の予荷重の作用を受けて室2の内部において存在することになる。そのために消音材料2’は、ハウジングの、場合によっては生じる制限された弾性変形にもかかわらず、前記予荷重を得るために、例えばある程度の弾性を有することが好ましい。
【0040】
不所望の間隙の形成はまた、ハウジング3,4が、消音材料2’による予荷重にもかかわらず、圧縮空気流の流入に際して可能な限り変形しないことによっても、阻止することができる。ハウジング3,4の変形を阻止するために、安定化要素がハウジング3,4に設けられていてよい。さらに、両ハウジング3,4の間に結合部が形成されていてよく、これによって圧力負荷中における、消音材料2’およびハウジング部分3,4における、およびハウジング部分3,4の間における変形、および特に間隙形成を減じることができる。原理的には、相応に補強することができる3つの領域が存在している。すなわち、
1.既に述べた支持リブ12(
図1A参照)は、上側のハウジング部分3における上側の肩部領域11を接続部分5において支持することができ、その結果肩部領域11と消音材料2’との間の間隙が阻止される。
2.上側のハウジング部分3および/または下側のハウジング部分4は、円筒形に形成されていてよく、かつリブ13の形態の補強要素によって補強することができる。リブ13は例えば、上側のハウジング部分3と下側のハウジング部分4とが互いに結合される領域の近傍に設けられていてよい。これによって、両ハウジング部分の間に間隙が形成され得ることが阻止される。
3.以下に記載されるように、底プレート14における補強要素を、下側のハウジング4の一部として設けることも同様に可能であり、これによってノイズ抑制材料2’の軸方向における移動を阻止することができる。
【0041】
図4A~
図4Cには、複数の実施例による流出開口7を備えた底プレート14の例としての構成が示されている。
【0042】
まず
図4Aに示された実施例では、流出開口7は、底プレート14におけるハニカム形状のパターンを形成している。底プレート14における流出開口7、または流出開口7の数は、流れ抵抗が最小になるような大きさに選択されている。他方において好ましくは、底プレート14は、空気圧を受けたノイズ抑制材料2’の移動の結果として著しく軸方向に変形することを阻止するのに十分な剛性を有している。このことは、例えば、ノイズダンパの下側の表面における底プレート14の流出開口7の、上に述べたハニカム形状の配置形態によって達成することができる。このハニカム形状のパターンは、例えば底プレート14にわたって均一に分配されていてよく、このとき個々のハニカムの縁部は十分に厚くもしくは補強して形成することができ、これによって圧力減少時における変形を最小にすることができる。同様に、ハウジング3,4の側面に相応の流出開口を設けることも可能である(
図4Aには示されていない)。
【0043】
図4Bには、第2のハウジング部分4の別の実施例が示されており、この第2のハウジング部分4には、(第1のハウジング部分3を固定するための)固定手段20と、3つの異なった形式の補強要素13,15,16とが形成されており、これによって第2のハウジング部分4の変形を抑制することができる。例えば第2のハウジング部分4の外周部に沿ってリブ13が形成されており、このリブ13は、第2のハウジング部分4の全周に延びている、もしくは少なくとも固定要素20の間に形成されている。さらに実施例には、同心的に延在するリブ16および半径方向に延在するリブ15が示されており、これらのリブ16,15は、底プレート14の外側に形成されている。これらの半径方向のリブ15および同心的なリブ16は、軸方向に(圧縮空気流れ方向において)延びていて、かつ底プレート14の変形を阻止するために働く。さらに半径方向のリブ15および同心的なリブ16は、軸方向において異なった長さで形成されており、この結果例えば底プレート14におけるそれぞれの開口7は、空気を下方へも側方へも流出させることができる。特に、半径方向において最も外側に位置している同心的なリブ16は、切欠きを有しており、これによって同様に側方への開口を提供することができる。
【0044】
これらのリブ15,16は、別の物体がノイズダンパの底部領域付近に存在している場合であっても、圧縮空気がノイズダンパから流出できるように、特に周囲領域において形成されている。このような場合に、流出する空気はリブ15,16の間の側部領域において逃げることができる。例えば底プレート14にリブ形状の構造体15,16を、それぞれの流出開口7が、圧縮空気を軸方向にも側方にもそこから流出させることができるように形成することができる。これによって出口における閉塞のおそれが最小になり、かつノイズダンパの確実な機能が保証される。
【0045】
図4Aに示されたハニカム形状の構造体は、同様に、軸方向に延びる前記リブ15,16と組み合わせることができる。
【0046】
図4Cには、別の実施例による第2のハウジング部分4が断面図で示されており、この実施例では底プレート14は、凹面状の形状を有している(ハウジング3,4の外側から見て)。例えば、凹面状に形成された底プレート14に沿って規則的な間隔をおいて複数の開口7が形成されていてよく、これらの開口7は、軸線Sの周囲に沿って同心的に延びている。凹面状に形成された底プレート14によって、第1のハウジング部分3と第2のハウジング部分4とを組立てた時に、室2の内部の消音材料2’に対する圧力形成を達成することができ、これによって消音材料2’を、予荷重の作用下に保つことができ、この結果消音材料2’とハウジング部分との間における空隙を回避することができる。
【0047】
図5には、第1のハウジング部分3と第2のハウジング部分4との間の結合部が例示されている。このとき例えば第1のハウジング部分3または第2のハウジング部分4は、溝18を有していてよく、この溝に、それぞれ他方のハウジング部分4または3の突出部が導入可能であり、これによって第1のハウジング部分3と第2のハウジング部分4との間の結合部を形成することができる。追加的に、第1のハウジング部分3と第2のハウジング部分4との間に結合部を追加的な係止結合部またはバヨネット継手によって固定することも、同様に可能である。別の実施例では、ハウジング3,4の不動でかつ密な閉鎖を保証する接着結合部、シーリング、またはシール要素19を、溝18の内部に設けることも、同様に可能である。
【0048】
溝結合部18は、例えばハウジング部分3,4の間に間隙が形成され得ることを阻止する。このようにして溝18は、他方のハウジング部分もしくは相応の突出部が、比較的大きな距離にわたって軸方向で溝内に導入されるように、十分に深く形成されてよい。このとき場合によって生じる空隙を消滅させることができる。さらに溝18の深さを、消音材料2’の内部に十分な予荷重が発生するように、第1のハウジング部分3と第2のハウジング部分4とを互いに内外に押し込むことができるように形成することができる。
【0049】
別の実施形態では、溝18および突出部はハウジング部分3,4に沿って、溝18および突出部がそれ自体で互いに閉鎖し合う構造体を成すように形成されている。
【0050】
もちろん、すべての特徴が一緒に形成されている必要はない。別の実施例では、ノイズダンパのハウジングの機械的な安定性を保証するために、かつ比較的良好なノイズ減衰を達成するために、個々の特徴を互いに任意に組み合わせることができる。
【0051】
特に好適な態様は、下記の実施例に関する。
【0052】
特に商用車ブレーキシステムに用いられる圧縮空気システムにおける排気のためのノイズ低減ユニットは、ハウジングの内部に、ハウジング内部を2つの部分に分割する仕切りプレート8を有しており、両部分のうちの一方の部分は、接続通路6(例えば排気弁に通じる)であり、かつ他方の部分は、消音材料2’を有するノイズ減衰室2である。両室の間には、仕切りプレート8の外周部の縁部領域に(例えば均一に)分配されて設けられている開口9を介して空気流が形成される。さらに両室6,2は、空気流が中間間隙を通過することなしにノイズ抑制材料2’内に直接達するように形成されている。ハウジング3,4とノイズ抑制材料2’との間における不所望の間隙は、下記の処置によって阻止することができる(それもたとえ圧縮空気流が貫通案内される時でも)。すなわち、
(a)室は、ノイズ抑制材料2’によって溢れるほどに、つまり過剰に満たされる(この結果ノイズ抑制材料2’は予荷重の作用下にある);
(b)ハウジング3,4は、ハウジング変形を最小にするために補強要素12,13,15,16によって補強される。
【0053】
さらに、別の好適な実施形態では消音材料2’は弾性的に圧縮可能であり、この結果消音材料2’を2つのハウジング部分3,4の組立て時に予荷重の作用下に持続的に保つことができる。したがって消音材料2’は、流入開口9に直接接触しており、この結果圧縮空気は、流入開口9からの流出後に消音材料2’内に直接導入される。
【0054】
別の好適な実施例では、補強要素13は円筒形のリブとして形成されていて、これらのリブは、第1のハウジング部分3の外側に沿って、かつ/または第2のハウジング部分4の外側に沿って延びている。さらに軸方向に延びるリブ15,16が底プレート14に設けられていてよく、これらのリブ15,16は、互いに異なった軸方向長さを有しており、これによって(例えば下側が別の部材によって覆われているような場合に)側方に向かって圧縮空気の流出を可能にすることができる。
【0055】
明細書の記載、請求項、および図面に開示された本発明の特徴は、本発明を実現するために個々においてもかつ任意の組合せにおいても重要であってよい。
【符号の説明】
【0056】
2 室
2’ (追加的に設けられた)消音材料
3,4 ハウジング(部分)
6 流入通路
7 流出開口
8 仕切りプレート
9 (流入)開口
11 肩部領域
14 底プレート
12,13,15,16 補強要素
18 溝結合部
19 シール要素
S 軸方向軸線