IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6991347車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子
<>
  • 特許-車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子 図1
  • 特許-車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子 図2
  • 特許-車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子 図3
  • 特許-車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子 図4
  • 特許-車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】車両オンボードネットワーク用のバッテリー端子
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220104BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220104BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20220104BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20220104BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220104BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220104BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20220104BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 302C
H02J9/06 110
H02J7/00 S
H01M10/48 301
B60L1/00 L
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020542963
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019051008
(87)【国際公開番号】W WO2019166148
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】102018202987.3
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ティホフスキー,スラバ
(72)【発明者】
【氏名】オバーフェルト,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】モッツ,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シル,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】シェノイ,バスティ・アニル
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ボイテ,ギタ
(72)【発明者】
【氏名】ドレーセ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ザブカ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ロートシュパイヒ,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】クローネンベルク,ブリッタ
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077158(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012024738(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00987146(EP,A2)
【文献】国際公開第2017/208751(WO,A1)
【文献】米国特許第05488283(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02272722(EP,A2)
【文献】米国特許第05751073(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106255623(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
H02J 9/06
B60L 1/00
B60L 3/00
B60L 50/60
B60L 58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分オンボードネットワーク(30,202,302,402)および第2の部分オンボードネットワーク(40,204,304,404)を備えたオンボードネットワーク(2)であって、
前記第1の部分オンボードネットワーク(30,202,302,402)は第1のバッテリー端子(10,330,430)を含み、前記第2の部分オンボードネットワーク(40,204,304,404)は第2のバッテリー端子(12,332,432)を含み、
前記第1のバッテリー端子(10,330,430)は多数のスイッチング素子を含んでおり、前記スイッチング素子のうち、それぞれ少なくとも幾つかが中性点形に相互に接続され、前記中性点形に相互に接続されたスイッチング素子が互いに接続されたところに、第1の電圧源(110,210,310,410)のプラス極が接続され、
前記第2のバッテリー端子(12,332,432)は多数のスイッチング素子を含んでおり、前記スイッチング素子のうち、それぞれ少なくとも幾つかが中性点形に相互に接続され、前記中性点形に相互に接続されたスイッチング素子が互いに接続されたところに、第2の電圧源(120,220,320,420)のプラス極が接続され、
前記第1の電圧源(110,210,310,410)のプラス極と前記第2の電圧源(120,220,320,420)のプラス極は、前記第1のバッテリー端子(10,330,430)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子と、保護されたネットワーク接続(360,460)と、前記第2の部分オンボードネットワーク(40,204,304,404)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子を介して互い接続され、
前記第1の電圧源(110,210,310,410)のプラス極と前記第2の電圧源(120,220,320,420)のプラス極との接続は、前記第1のバッテリー端子(10,330,430)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子と、保護されたネットワーク接続(360,460)と、前記第2の部分オンボードネットワーク(40,204,304,404)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子を介した接続以外に存在しない、
ことを特徴とするオンボードネットワーク(2)
【請求項2】
前記第1のバッテリー端子(10,330,430)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子と、前記第2のバッテリー端子(12,332,432)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子との、少なくともいずれか一方は、スイッチング素子として、
第1のMOSFET(340350440450)、第2のMOSFET(342352442452)、第3のMOSFET(344354444454)、および第4のMOSFET(346355446456)を含み、
前記第1のMOSFET(340350440450)と前記第2のMOSFET(342352442452)が互いに対して並列に、および前記第3のMOSFET(344354444454)と前記第4のMOSFET(346355446456)が互いに対して直列に接続されており、
前記第1のMOSFET(340350440450)と、前記第2のMOSFET(342352442452)と、前記第3のMOSFET(344354444454)または前記第4のMOSFET(346355446456)とが、中性点形に相互に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のオンボードネットワーク(2)
【請求項3】
前記第3のMOSFET(344354444454)と前記第4のMOSFET(346355446456)が互いに対して逆向きで直列に接続されている、請求項2に記載のオンボードネットワーク(2)
【請求項4】
前記第3のMOSFET(344354444454)と前記第4のMOSFET(346355446456)が互いに対して同じ向きで直列に接続されている、請求項2に記載のオンボードネットワーク(2)。
【請求項5】
ッテリーマネージメントシステムが設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のオンボードネットワーク(2)
【請求項6】
前記第1の電圧源(110,210,310,410)のプラス極と、第1の消費機器(314,316,414,416)は、前記第1のバッテリー端子(10,330,430)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子を介して接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のオンボードネットワーク(2)
【請求項7】
前記第2の電圧源(120,220,320,420)のプラス極と、第2の消費機器(324,326,424,426)は、前記第2のバッテリー端子(12,332,432)の中性点形に相互に接続されたスイッチング素子を介して接続されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のオンボードネットワーク(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンボードネットワーク用の、とりわけフォールトトレラントなオンボードネットワーク用のとりわけインテリジェントバッテリー端子と、このようなバッテリー端子を備えたオンボードネットワークと、このようなオンボードネットワークの動作方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
オンボードネットワークとは、とりわけ自動車に使用する場合は、自動車内のすべての電気コンポーネントの全体のことである。したがってそれには電気消費機器も、供給源、例えば発電機または電気貯蔵器、例えばバッテリーも含まれている。自動車で注意を払うべきは、自動車がいつでも始動でき、かつ動作中は十分な電流供給が保証されているように、電気エネルギーが提供されることである。しかし停止状態でも適切な期間は、後の始動が妨害されることなく電気消費機器がまだ動作可能であるべきである。
【0003】
アセンブリーのますます高まる電化および新たな運転機能の導入に基づき、自動車における電気エネルギー供給の信頼性およびフォールトトレランスへの要求が絶えず高まっていることに注意を払うべきである。さらに、将来的には高度自動運転時に運転以外の行為が制限範囲内で許容され得ることを考慮すべきである。この場合には、センサー技術の、調節技術の、機械的な、およびエネルギーに関する、運転者によるフォールバックレベルはもはや限定的にしか存在していない。したがって高度自動運転または全自動運転もしくは自律運転では、電気供給が、これまで自動車では知られていなかったほど安全性にとっての重要性を有する。よってオンボード電気ネットワークにおける欠陥は、確実かつできるだけ完全に認識および隔離されなければならない。
【0004】
自動運転とは、または高度自動運転も、運転者が支援システムによってサポートされている支援された運転と、車両が自ら運転者の影響を受けずに運転する自律運転との中間ステップのことである。高度自動運転では、車両が自分の知能を備えており、この知能は、見通しを立てて運転課題を少なくともたいていの運転状況で担い得る。したがって高度自動運転では、電気供給が安全性にとって大きな重要性をもっている。したがってエネルギー供給および消費機器は冗長的に実施され得る。これに関する一例は、冗長なブレーキアクチュエータのエネルギー供給であり、この場合、横滑り防止装置(ESP:Electronic Stability Program)が第1の(部分)オンボードネットワークによって、および電動ブレーキブースター(EBB:Electromechanical Brake Booster)が第2の(部分)オンボードネットワークによって供給される。したがって、2つの冗長なエネルギー源からの供給が得策であり得る。
【発明の概要】
【0005】
それゆえ、安全性にとって重要な電気的な(部分)オンボードネットワークを結合するための結合素子であって、自動運転時に、私有車、商用車、またはトラック内に設けられている安全性にとって重要な消費機器の、供給におけるフォールトトレランスへの要求を満たすために、欠陥のある電気消費機器もしくは電気消費機器群またはサブネットワークを自ら認識して、それらを残りの(部分)オンボードネットワークから反作用なく確実に分離できる結合素子が必要である。
【0006】
これを踏まえて、請求項1に基づくインテリジェントバッテリー端子(IBAT:Intelligent Battery Terminal)および請求項8に基づく少なくとも2つのこのようなインテリジェントバッテリー端子を備えたフォールトトレラントなオンボードネットワークを紹介する。さらに、請求項10に基づくこのようなオンボードネットワークの動作方法を紹介する。実施形態は、従属請求項および明細書から明らかである。
【0007】
ここではとりわけ、スイッチをベースとする結合または分離素子を使用して、自動車の多チャネルオンボードネットワークにおける電気エネルギー供給のフォールトトレランスを高めるための手順またはやり方を提案する。
【0008】
したがって、結合または分離素子と、多チャネル電子ヒューズとの機能を兼ね備え、これに加えてバッテリー状態認識またはバッテリーマネージメントのようなさらなる機能を備え得るインテリジェントバッテリー端子(IBAT)を紹介する。このインテリジェントバッテリー端子は、オンボードネットワーク内で用いることができ、かつここでは結合/分離素子、電子ヒューズ、または電子式電流分配器とも呼ばれる。
【0009】
これに関し2つのインテリジェントバッテリー端子は、安全性にとって重要な2つの(部分)オンボードネットワークを結合するために設けられた、分離機能のより高い信頼性が要求されている集中型の結合/分離素子の、その不利な相互作用特性の漸進的な除去に伴う置換えの結果である。
【0010】
結合/分離素子が、安全性にとって重要な2つ以上の(部分)オンボードネットワークを結合している箇所では、および結合された状態では(部分)オンボードネットワークの1つにおける欠陥が、このネットワークに結合されている安全性にとって重要なそのほかの(部分)オンボードネットワークでの同時の妨害を引き起こし得る箇所ではどこでも、分離機能の高い信頼性が必要とされている。
【0011】
これに関しインテリジェントバッテリー端子は、結合/分離素子の特に有利な一形態であり、または帰属の端子、センサー、評価および制御回路を備えたスイッチング素子、とりわけパワーエレクトロニクスコンポーネントの特異な構成であり、このインテリジェントバッテリー端子は、接続された消費機器および導線における欠陥を自動的に検出し、かつその欠陥を残りの(部分)オンボードネットワークから反作用なく確実に隔離することができ、ならびにこのインテリジェントバッテリー端子は、電圧源のプラス極における最適な設置に基づき、つまりプラス極に直接的にまたは短い導線を介して接続することに基づき、任意選択の追加的な機能により、例えばバッテリー状態認識(BSD:Battery State Detection)、バッテリーマネージメントシステム(BMS:Battery Management System)、データロギングなどにより、機能拡張され得ることが有利である。
【0012】
電子ヒューズの機能性は、作動機構に対する非常に短い反応時間および正確に設定可能な閾値に起因して、保護されたケーブルの電気的および熱的な負荷を最小限に抑え、それにより断面積のより良好な利用が可能になり、したがってケーブル総重量、エネルギー消費、および空気汚染が削減される。
【0013】
紹介しているインテリジェントバッテリー端子は、とりわけ自律運転に必要な電子制御されたオンボードネットワーク結合/分離機能性と、電子制御された電流分配との機能的統合を実現する。その実行は、半導体スイッチまたはリレーを使って行われ得る。さらにここではこの機能的統合の実行方式、詳しくは、分散型の結合/分離素子と、この結合/分離素子を電圧源のプラス極に電気的に位置決めすること、つまりプラス極への直接的なまたは短い導線を介した接続とによる実行方式を紹介する。
【0014】
したがって、スイッチング式結合/分離素子の集中型の実施形態の代わりに、2つのユニットによる分散型の実装が提案され、これらのユニットは、そうでなければ不可欠の冗長なスイッチ構成のうちの半分ずつを含んでいる。この実装は、電圧源の正端子に、例えばバッテリープラス極に直接的にまたはこの極に短い導線を介して接続することができ、かつ電圧源によって供給されるべき消費機器もしくはサブネットワークまたは消費機器群の保安のための追加的なスイッチング素子を備えることができる。
【0015】
注意を払うべきは、バッテリー端子導線が、(バッテリーの)全電流によって貫流される、抵抗およびインダクタンスを有する導線区間であり、この導線区間が、バッテリーの内部インピーダンスに対して直列に接続されており、かつ電圧源としてのバッテリーの電気的特性に悪影響を及ぼすということである。この理由から、バッテリー端子導線の長さは最小限に抑えられるべきである。
【0016】
バッテリーと、接続された導線の熱保安のために取り付けられるべき過電流装置との間の導線長さの制限が必要となるさらなる態様は、導線における欠陥、例えばプラス導線の地絡の発生確率が、導線長さが増すにつれて上昇するということである。
【0017】
DIN EN ISO 10133は、なかでも、導体についての測定で、システムの各々の回路または導体において、電流源から200mmの間隔以内にヒューズが取り付けられなければならないと要求している。
【0018】
注意を払うべきは、集中型のスイッチの機能性を分割することにより、分離機能のより高い信頼性が要求されている結合/分離素子(複数の双方向分離スイッチの直列接続)を形成している冗長なスイッチングユニットを、同一に実施でき、これに加えて集中型の実施形態に比べて小さく実施でき、かつ損失電力が2つの物理的ユニットに分散されるのでより少ない冷却費用で実施できるということである。こうすることで開発費も製造費も削減され得る。
【0019】
この形態では、電圧源の正端子において、スイッチング素子の中性点形の電気接続が規定されている。これは、負荷を分離する際に生じる誘導性の電圧オーバーシュートおよびアンダーシュートが、電圧源により電圧に関してクランプされ、したがって接続された消費機器または(部分)オンボードネットワークの電圧供給品質に影響しないという利点を有する。
【0020】
電圧源によって供給されるべき消費機器もしくはサブネットワークまたは消費機器群の保安のための、追加的に組み込まれたスイッチング素子が設けられている場合、これは、消費機器自体によりまたは消費機器の導線内で、場合によっては引き起こされる例えば過負荷によるまたは車体もしくはグラウンドに対する短絡による故障電流を、同じ結合/分離素子または同じインテリジェントバッテリー端子によって検出でき、かつ残りの(部分)オンボードネットワークから分離または隔離できるという利点を有し、これは、集中型の結合/分離素子の使用では、電圧源の正端子における消費機器の中性点形の配線が実現されても不可能である。
【0021】
さらなる利点は、例えば過負荷によりまたは車体もしくはグラウンドに対する短絡により、結合されるべき(部分)オンボードネットワークの間の導線セグメント内で発生するような、場合によっては発生する故障電流が、インテリジェントバッテリー端子によって検出および分離され得ることにある。これは冗長的に行うことができ、これも、集中型の結合/分離素子の使用では不可能である。集中型の結合/分離素子は、確かに電圧低下を検出でき、かつ予め結合されたオンボードネットワークを分離できるが、ただし(部分)オンボードネットワークの1つにその分離後も負荷をかける故障電流を分離することはできない。
【0022】
一種の電子ヒューズボックスまたは電流分配器としても役立つ紹介しているインテリジェントバッテリー端子または結合素子の、自動車用バッテリーのプラス極上でのまたはプラス極における最適な位置決めにより、電力結合のための費用がさらに削減され得るだけでなく、追加的な有益な機能、例えばバッテリー状態捕捉またはバッテリーセル管理も、この提案しているインテリジェントバッテリー端子に組み込むことができる。ここで、バッテリーハウジング内への組込み可能性にも言及すべきである。インテリジェントバッテリー端子の組込み可能性は、とりわけリチウムイオンバッテリーの場合に提供されている。
【0023】
複数の正確に監視される電力ネットワークチャネルまたはオンボードネットワークチャネルを備えており、各チャネル内の欠陥のある消費機器の自動的で反作用のない分離機能と、結合されたオンボードネットワークチャネルの自動的で反作用のない分離機能とを有する拡張可能でフォールトトレラントな電力ネットワークまたはオンボードネットワークは、複数のIBATを使うことで簡単に実装され得る。
【0024】
紹介しているインテリジェントバッテリー端子は、とりわけ、過電圧もしくは不足電圧または過電流の際に、消費機器またはサブネットワークを、反作用なく、つまり残りの保護されるべき(部分)オンボードネットワーク内での電圧供給を妨害せずに、スイッチオフすることを可能にする。したがって、保護されるべき(部分)オンボードネットワーク内の消費機器の動作電圧制限および欠陥のあるサブネットワーク内の導線の動作電流制限を犯すことはない。
【0025】
本発明のさらなる利点および形態は、明細書および添付の図面から明らかである。
上で挙げたおよび下でさらに解説する特徴が、それぞれ提示された組合せだけでなく、そのほかの組合せでまたは単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】2つの紹介しているインテリジェントバッテリー端子を使用した、分離機能のより高い信頼性が要求されている紹介している分散型の結合/分離素子を備えたフォールトトレラントなオンボードネットワークの一実施形態を示す図である。
図2】従来技術に基づく、分離機能のより高い信頼性が要求されている集中型の結合/分離素子(2つの双方向分離スイッチの直列接続)を使って結合されている2つの(部分)オンボードネットワークを示す図である。
図3図2を出発点とする、集中型の結合/分離素子を使って結合されている2つの(部分)オンボードネットワークを示す図であり、この場合、結合/分離素子のスイッチング機能に起因する誘導性の電圧オーバーシュートおよび電圧アンダーシュートの、結合された(部分)オンボードネットワークの消費機器への影響は、それぞれの電圧源、例えばバッテリーへの、消費機器の中性点状の接続によって最小限に抑えられた。
図4図3を出発点とする、2つの紹介しているインテリジェントバッテリー端子を使用して結合されている2つの(部分)オンボードネットワークを示す図である。分離機能のより高い信頼性への要求は、2つの分散型の双方向分離スイッチ(分散型の結合素子)の直列接続によって考慮された。これに加えて、結合/分離素子を空間的に分割することにより、両方の(部分)オンボードネットワークを接続している真ん中の導線区間内で、地絡に対するフォールトトレランスが達成された。それぞれの(部分)オンボードネットワークの電圧源(バッテリー)への、個々の消費機器または消費機器群の中性点状の接続は、スイッチング可能に実現されており、それにより個々の消費機器または消費機器群を、個々に監視でき、かつ欠陥がある場合に隔離または分離できる。中性点状の接続はこれに加え、結合または分離されるべき(部分)オンボードネットワーク内での、スイッチング素子の機能に起因する誘導性の電圧オーバーシュートおよびアンダーシュートの影響を最小限に抑える。
図5図4を出発点とする、2つの紹介しているインテリジェントバッテリー端子を使用して結合されている2つの(部分)オンボードネットワークを示す図であり、この場合、両方の(部分)オンボードネットワークを接続している真ん中の電力区間内で、地絡に対するフォールトトレランスが、分散型の結合素子内での単純な欠陥の場合にも達成された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を、実施形態に基づいて図面に概略的に示し、以下で図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、2つの結合されたフォールトトレラントな(部分)オンボードネットワーク30、40から成るフォールトトレラントなオンボードネットワーク2を示しており、この場合、(部分)オンボードネットワーク30、40のフォールトトレランスも、全体のオンボードネットワーク2のフォールトトレランスも、紹介しているインテリジェントバッテリー端子の使用によって、詳しくは第1のバッテリー端子10および第2のバッテリー端子12によって達成されている。両方のバッテリー端子10、12は、インテリジェントバッテリー端子とも呼ばれ得る。第1のバッテリー端子10は、第1のバッテリー20、ここでは例えば鉛酸バッテリーのために、および第2のバッテリー端子12は、第2のバッテリー22、ここでは例えば単セル接触またはBMSインターフェイス65を備えたリチウムイオンバッテリーのために設けられている。さらに、第1のバッテリー20は、消費機器32、34、36を備えた第1の部分オンボードネットワーク30に、および第2のバッテリー22は、消費機器42、44、46を備えた第2の部分オンボードネットワーク40に割り当てられている。両方の部分オンボードネットワーク30、40は、相互に結合されおよび互いから分離され得る。
【0028】
第1のバッテリー20を監視するため、電流計50、電圧計52、および温度センサー54が設けられている。これに相応して第2のバッテリー22を監視するため、電流計60、電圧計62(BMSインターフェイス65を介して個々のバッテリーセルの電圧捕捉が可能)、および温度センサー64が設けられている。バッテリー端子10、12内では、例えばMOSFETとして形成されている一連のスイッチング素子またはスイッチが設けられている。この構造を以下でさらに詳しく取り上げる。
【0029】
さらに、始動装置21を柔軟な接続点70、71と、および補助的なまたは主要なエネルギー源23、例えばEマシーン、発電機、もしくはDC/DCコンバータもしくはその類似物を柔軟な供給点70、71と、または(部分)オンボードネットワーク30、40の任意の区間内で接続している導線86が設けられ得る。さらに、通信インターフェイス、例えばCAN(74、75)、LIN(72、73)などが、上位の制御機器との通信のために準備されている。さらに、制御インターフェイスまたは信号線およびBMSインターフェイス65が設けられ得る。
【0030】
紹介しているバッテリー端子10、12は、フォールトトレラントなオンボードネットワーク2内で複数の機能を果たし得る。すなわちバッテリー端子10、12は、電流分配のためにも、(部分)オンボードネットワーク30、40の結合のためにも用いられ得る。このようにして、示した(部分)オンボードネットワーク30、40およびこれら(部分)オンボードネットワークを接続している導線86が監視され得る。さらに、バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)および/またはバッテリーセル管理65と関連して、バッテリー状態認識/Battery State Detection(BZE/BSD)が行われ得る。とりわけ動作電圧制限が犯された場合に、(部分)オンボードネットワークが互いから、またはサブネットワークもしくは消費機器群が電圧源から分離され得る。このために、第1のインテリジェントバッテリー端子10内では、帰属の電圧測定部、電流測定部、および温度測定部を備えた一連のスイッチング素子90、92、93、94、および95が、ならびに第2のインテリジェントバッテリー端子12内でも、帰属の電圧測定部、電流測定部、および温度測定部を備えた一連のスイッチング素子80、82、83、84、および85が設けられている。スイッチング素子は、許容電流を大きくするために並列に、または例えば半導体スイッチによる実行の場合のように、双方向分離能力を獲得するために直列に接続され得る。
【0031】
重要なのは、様々なオンボードネットワーク形態内での、紹介しているインテリジェントバッテリー端子10、12の柔軟な使用可能性であり、例えば、図1で概略的に描かれたフォールトトレラントなオンボードネットワーク2内への、補助的なまたは主要なエネルギー源、例えばEマシーン、発電機、もしくは中央のDC/DCコンバータの接続であり、または始動装置の接続である。
【0032】
図2は、開発時の出発状況を明らかにしており、導線セグメント140を介し、従来技術に基づく集中型の結合/分離素子106を使って結合され得る第1の(部分)オンボードネットワーク102および第2の(部分)オンボードネットワーク104を示している。
【0033】
第1の(部分)オンボードネットワーク102内では、第1のバッテリー110と、第1のバッテリー状態監視112と、第1の第1の消費機器R1,1114と、第1の第nの消費機器R1,n116とが設けられている。第2の(部分)オンボードネットワーク104内では、第2のバッテリー120と、第2のバッテリー状態監視122と、第2の第1の消費機器R2,1124と、第2の第nの消費機器R2,n126とが設けられている。さらにこの図では、寄生インダクタンスに基づく間隔依存のスイッチング過電圧強さ130と、潜在的に長くて保護されていない導線セグメント140とが明らかになっている。
【0034】
図3は、導線セグメント240を介し、集中型の結合/分離素子206を使って相互に結合され得る第1の部分オンボードネットワーク202および第2の部分オンボードネットワーク204を示している。
【0035】
第1の部分オンボードネットワーク202内では、第1のバッテリー210と、第1のバッテリー状態監視212と、第1の第1の消費機器R1,1214と、第1の第nの消費機器R1,n216とが設けられている。第2の部分オンボードネットワーク204内では、第2のバッテリー220と、第2のバッテリー状態監視222と、第2の第1の消費機器R2,1224と、第2の第nの消費機器R2,n226とが設けられている。さらにこの図では、結合素子206のスイッチング機能に起因する誘導性の電圧オーバーシュートおよびアンダーシュート230が、低インピーダンスのエネルギー貯蔵器間で止められており、それにより、結合された(部分)オンボードネットワークの消費機器への影響が最小限に抑えられていることと、潜在的に長くて保護されていない導線セグメント240とが明らかになっている。さらに、結合素子206は、領域250内の故障電流に対してはいわば盲目であることに注意を払うべきである。
【0036】
図2および図3に示した結合素子106、206は、集中型のユニットとして形成されていることが分かる。
図4は、2つの紹介しているインテリジェントバッテリー端子330、332を使用し、導線セグメント360を介して結合されている2つの部分オンボードネットワーク302、304を示している。第1の部分オンボードネットワーク302内では、第1のバッテリー310と、第1のバッテリー状態監視312と、第1の第1の消費機器R1,1314と、第1の第nの消費機器R1,n316とが設けられている。第2の部分オンボードネットワーク304内では、第2のバッテリー320と、第2のバッテリー状態監視322と、第2の第1の消費機器R2,1324と、第2の第nの消費機器R2,n326とが設けられている。
【0037】
第1のインテリジェントバッテリー端子330は、第1の部分オンボードネットワーク302に割り当てられており、第2のインテリジェントバッテリー端子332は、第2の部分オンボードネットワーク304に割り当てられている。第1のバッテリー端子330内では、スイッチまたはスイッチング素子が、詳しくは第1のMOSFET340、第2のMOSFET342、第3のMOSFET344、および第4のMOSFET346が設けられている。第1のMOSFET340と第2のMOSFET342は互いに対して並列に配置されている。第3のMOSFET344と第4のMOSFET346は互いに対して直列に、それも逆向きで、例えば「back-to-back」またはソースを共通端子として配置されている。さらに、第1のバッテリー310のプラス極に接続しているスイッチング素子としての第1のMOSFET340と第2のMOSFET342と第3のMOSFET344との間の中性点形の接続が分かる。
【0038】
第2のバッテリー端子332内では、スイッチまたはスイッチング素子が、詳しくは第1のMOSFET350、第2のMOSFET352、第3のMOSFET354、および第4のMOSFET355が設けられている。第1のMOSFET350と第2のMOSFET352は互いに対して並列に配置されている。第3のMOSFET354と第4のMOSFET355は互いに対して直列に、それも逆向きで、例えば「back-to-back」またはソースを共通端子として配置されている。さらに、第2のバッテリー320のプラス極に接続しているスイッチング素子としての第1のMOSFET350と第2のMOSFET352と第4のMOSFET355との間の中性点形の接続が分かる。
【0039】
MOSFETの代わりに、例えば並列ダイオードを備えたリレー、バイポーラトランジスタ、またはIG-BTなども使用され得る。
この図はさらに、保護されたネットワーク接続360を示しており、かつ分離機能のより高い信頼性が要求されている分散型の結合/分離素子を結果的に形成している分散型のスイッチング素子370と、保護されたネットワーク領域380と、低インピーダンスのエネルギー貯蔵器間で止められているスイッチング過電圧330とを明らかにしている。
【0040】
図5は、2つの紹介しているインテリジェントバッテリー端子430、432を使用し、導線セグメント460を介して結合されている2つの部分オンボードネットワーク402、404を示している。第1の部分オンボードネットワーク402内では、第1のバッテリー410と、第1のバッテリー状態監視412と、第1の第1の消費機器R1,1414と、第1の第nの消費機器R1,n416とが設けられている。第2の部分オンボードネットワーク404内では、第2のバッテリー420と、第2のバッテリー状態監視422と、第2の第1の消費機器R2,1424と、第2の第nの消費機器R2,n426とが設けられている。
【0041】
第1のインテリジェントバッテリー端子430は、第1の部分オンボードネットワーク402に割り当てられており、第2のインテリジェントバッテリー端子432は、第2の部分オンボードネットワーク404に割り当てられている。第1のバッテリー端子430内では、スイッチまたはスイッチング素子が、詳しくは第1のMOSFET440、第2のMOSFET442、第3のMOSFET444、および第4のMOSFET446が設けられている。第1のMOSFET440と第2のMOSFET442は互いに対して並列に配置されている。第3のMOSFET444と第4のMOSFET446は互いに対して直列に、それも同じ向きで配置されている。さらに、第1のバッテリー410のプラス極に接続しているスイッチング素子としての第1のMOSFET440と第2のMOSFET442と第3のMOSFET444との間の中性点形の接続が分かる。
【0042】
第2のバッテリー端子432内では、スイッチまたはスイッチング素子が、詳しくは第1のMOSFET450、第2のMOSFET452、第3のMOSFET454、および第4のMOSFET456が設けられている。第1のMOSFET450と第2のMOSFET452は互いに対して並列に配置されている。第3のMOSFET454と第4のMOSFET456は互いに対して直列に、それも同じ向きで配置されている。さらに、第2のバッテリー420のプラス極に接続しているスイッチング素子としての第1のMOSFET450と第2のMOSFET452と第4のMOSFET456との間の中性点形の接続が分かる。
【0043】
この図はさらに、保護されたネットワーク接続460を示しており、かつ分離機能のより高い信頼性が要求されている分散型の結合/分離素子を結果的に形成している分散型のスイッチング素子470と、保護されたネットワーク領域480と、低インピーダンスのエネルギー貯蔵器間で止められているスイッチング過電圧490とを明らかにしている。
【0044】
考慮すべきは、分散型のスイッチング素子470を形成しているスイッチング素子(ここではMOSFET)の、特に強調されるべき同じ向きでの配置により、両方の(部分)オンボードネットワークを接続している真ん中の導線区間460内で、地絡に対する改善されたフォールトトレランスが達成され、この改善されたフォールトトレランスは、スイッチング素子470内での単純な欠陥を許容する。
図1
図2
図3
図4
図5