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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】シリコーン材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20220104BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220104BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20220104BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20220104BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220104BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L83/08
C08K5/09
C08K3/013
C08G77/26
C09D183/08
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020545719
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2019054893
(87)【国際公開番号】W WO2019166507
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】1851779
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(73)【特許権者】
【識別番号】520328442
【氏名又は名称】アンスティチュ・ナシオナル・デ・シアンス・サプリケ・リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】507237956
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・ガナショー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ポルチーニャ・ド・アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ・フルーリー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・デュオー
(72)【発明者】
【氏名】アイメリク・ジュネスト
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・プージェ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表平02-502285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04-83/08
C08K 5/09
C08K 3/013
C08G 77/26
C09D 183/08
C09D 7/61
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・モル質量が70000g/mol未満、好ましくは50000g/mol未満であり、シロキシ単位(I.1)及び(I.2):
【化1】
[式中、
a=1または2であり、
b=0、1、または2であり、
a+b=1、2、または3であり、
c=0、1、2、または3であり、
記号Yは、同一または相違して、式(I.3):
-E-(NH-G)h-(NH2)i (I.3)
{式中、
h=0または1であり、
i=0または1であり、
h+i=1または2であり、
Eは、1~30の炭素原子を有する脂肪族、脂環族、または芳香族の二価の炭化水素基、好ましくは1~10の炭素原子を有する脂肪族基であり、
存在する場合、Gは、1~10の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、i=0である場合には一価であり、i=1である場合には二価である}の官能基を表し、
Z1は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子またはヒドロキシル基を含む一価の炭化水素基であり、好ましくは、Z1は、1~8の炭素原子を有するアルキル基、2~6の炭素原子を有するアルケニル基、及び6~12の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択され、任意に1以上のフッ素原子を含む一価の炭化水素基であり、さらに好ましくは、Z1は、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基、キシリル基、トリル基、及びフェニル基を含む群から選択され、
Z2は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、または-OR1(式中R1は、直鎖状または分枝状のC1-C10炭化水素基である)を含む一価の炭化水素基であり、好ましくは、Z2は、1~8の炭素原子を有するアルキル基、2~6の炭素原子を有するアルケニル基、及び6~12の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択され、任意に1以上のフッ素原子、または-OR1基(式中R1は、直鎖状または分枝状のC1-C10炭化水素基である)を含む一価の炭化水素基であり、さらに好ましくは、Z2は、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基、エトキシル基、メトキシル基、キシリル基、トリル基、及びフェニル基を含む群から選択される]
を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAであって、
1分子当たりに、
・式(I.3)の少なくとも1つの官能基を担持する少なくとも1つのシロキシル基(I.1)、
・式中Z2が-OR1基である2単位の(I.2)、及び
・シロキシル単位Y3SiO1/2、YZ1 2SiO1/2、Y2Z1SiO1/2、及びZ2 3SiO1/2を含む群より選択される少なくとも2つの末端単位M、
を含む前記オルガノポリシロキサンAと、
・少なくとも2つのカルボン酸基を担持し、不飽和をもたない、少なくとも1つの有機化合物B
との間の反応により得られるシリコーン材料。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンAが、式Z2 3SiO1/2の末端単位(M)を2つ含み、その各々のZ2の1つのみが-OR1基である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
本発明のオルガノポリシロキサンAが、各々が少なくとも1つの基(I.3)を担持し、好ましくは各々が単一の単位(I.3)を担持する、少なくとも2つの単位(I.1)を含む、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
化合物Bの酸官能のモル数とオルガノポリシロキサンAのアミン官能のモル数との間の比を表す比J:
【数1】
が、0.5~1.5、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.85~1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
化合物Bが、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプス酸(thapsic acid)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジピコリン酸、トリメシン酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、トリカルバリル酸、ホモクエン酸、ヒドロキシクエン酸、及びパモ酸から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
オルガノポリシロキサンAが、1g当たりのmolで表される、1.10-5~10.10-2mol/g、好ましくは5.10-5~5.10-2mol/g、より好ましくは1.10-4~5.10-3mol/gのNH結合の量を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
石英、シリカ、特に沈殿シリカまたは焼成シリカ、及び炭酸カルシウムから、単独または混合物として特に選択される充填剤をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の材料。
【請求項8】
オルガノポリシロキサンAの質量に対して0.5~60質量%の充填剤を含む、請求項7に記載の材料。
【請求項9】
反応が、有機溶媒Sの存在下で実施され、有機溶媒Sの量が混合物A+B+Sの合計質量に対して30質量%未満、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10質量%未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の材料。
【請求項10】
a)オルガノポリシロキサンAを容器に入れる工程、
b)化合物Bが固体形態の場合、これを有機溶媒Sに溶解させる工程、
c)化合物AとB、または、AとBとSとを混合する工程、
d)得られる混合物を、好ましくは30~200℃の温度、好ましくは50~150℃、好ましくは40~100℃、さらに好ましくは50~70℃に加熱する工程、
を含む、請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の調製方法。
【請求項11】
オルガノポリシロキサンAが、溶媒中に溶解されない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
本発明の方法で使用される溶媒Sの量が、混合物A+B+Sの合計質量に対して30質量%未満、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10質量%未満である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
可撓性の基材、特に、織物、紙、及びポリマーフィルムをコーティングするための、特に、エアバッグ、コンベヤベルト、殺生物コーティング、被覆材の製造のための、請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用。
【請求項14】
3D印刷における、請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用。
【請求項15】
防湿性木材、コンクリート、または石材のための、請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用。
【請求項16】
請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用を含む、特に、エアバッグ、コンベヤベルト、殺生物コーティング、被覆材の製造のための、可撓性の基材、特に、織物、紙、及びポリマーフィルムのコーティング方法。
【請求項17】
請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用を含む、3D印刷方法。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか一項に規定の材料の使用を含む、木材、コンクリート、または石材の防湿加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン材料、その調製方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの経路が、イオン相互作用に基づく超分子シリコーン材料の形成について記載されている。第1の経路では、不飽和酸化合物と共にアミノ基を有するポリオルガノシロキサンが使用される(国際公開第2016/102498号)。得られる材料は、優れた弾性特性を有するが、低い降伏強度を有する。第2の経路(Feng et al. Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 2017, 55, 903-911)は、アミノ基を有するポリオルガノシロキサンを多官能酸と接触させる。得られる材料は、硬いが脆く、弾性特性も機械的特性も持たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/102498号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Feng et al. Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 2017, 55, 903-911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、優れた機械的特性及び弾性特性の両方を有するシリコーン材料を提供することが有利であろう。前記材料は、様々な用途に使用しうる。また、自己治癒性であり、単純かつ低コストの方法で再生可能材料を提供することも有利であろう。
【0006】
したがって、本発明の一つの課題は、優れた弾性及び機械的特性を有するシリコーン材料を提供することである。
本発明の別の課題は、治癒特性を有する前記材料を提供することである。
本発明の別の課題は、単純かつ低コストの方法で再生可能な前記材料を提供することである。
本発明の別の課題はまた、前記材料を調製するための方法を提供することである。
他の課題は、以下の発明を読むことで明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、
・モル質量が70000g/mol未満、好ましくは50000g/mol未満であり、シロキシ単位(I.1)及び(I.2):
【化1】
[式中、
a=1または2であり、
b=0、1、または2であり、
a+b=1、2、または3であり、
c=0、1、2、または3であり、
記号Yは、同一または相違して、式(I.3):
-E-(NH-G)h-(NH2)i (I.3)
{式中、
h=0または1であり、
i=0または1であり、
h+i=1または2であり、
Eは、1~30の炭素原子を有する脂肪族、脂環族、または芳香族の二価の炭化水素基、好ましくは1~10の炭素原子を有する脂肪族基であり、
存在する場合、Gは、1~10の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、i=0である場合には一価であり、i=1である場合には二価である}の官能基を表し、
Z1は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子またはヒドロキシル基を含む一価の炭化水素基であり、好ましくは、Z1は、1~8の炭素原子を有するアルキル基、2~6の炭素原子を有するアルケニル基、及び6~12の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択され、任意に1以上のフッ素原子を含む一価の炭化水素基であり、さらに好ましくは、Z1は、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基、キシリル基、トリル基、及びフェニル基を含む群から選択され、
Z2は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有し、任意に1以上の不飽和及び/または1以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、または-OR1(式中R1は、直鎖状または分枝状のC1-C10炭化水素基である)を含む一価の炭化水素基であり、好ましくは、Z2は、1~8の炭素原子を有するアルキル基、2~6の炭素原子を有するアルケニル基、及び6~12の炭素原子を有するアリール基を含む群から選択され、任意に1以上のフッ素原子、または-OR1(式中R1は、直鎖状または分枝状のC1-C10炭化水素基である)を含む一価の炭化水素基であり、さらに好ましくは、Z2は、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ビニル基、エトキシル基、メトキシル基、キシリル基、トリル基、及びフェニル基を含む群から選択される]
を含む、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAであって、
1分子当たりに、
・式(I.3)の少なくとも1つの官能基を担持する少なくとも1つのシロキシル基(I.1)、
・式中Z2が-OR1基である2単位の(I.2)、及び
・シロキシル単位Y3SiO1/2、YZ1 2SiO1/2、Y2Z1SiO1/2、及びZ2 3SiO1/2を含む群より選択される少なくとも2つの末端単位M、
を含む前記オルガノポリシロキサンAと、
・少なくとも2つのカルボン酸基を担持し、不飽和をもたない、少なくとも1つの有機化合物B
との間の反応により得られるシリコーン材料に関する本発明によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましくは、反応は、30~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは40~100℃、さらに好ましくは50~70℃の温度で行われる。反応時間及び温度は、試薬の種類及び温度に依存する。当業者であれば、温度条件及び加熱時間を調節して、優れた機械的特性及び自己治癒特性を有する材料を得ることができる。一例として、反応時間及び温度は、100℃にて数時間から70℃にて数日間の間で変化し得る。
【0009】
本発明において、化合物中の不飽和とは、2つの炭素原子間の二重結合または三重結合を意味する。しかるに、不飽和を持たない化合物、すなわち二重または三重のC-C結合を持たない化合物は、一重の炭素-炭素結合のみを含む。前記化合物は、飽和化合物とも呼称される。したがって、化合物Bは、少なくとも2つのカルボン酸官能を含む飽和有機化合物である。
【0010】
本発明において、シリコーン材料は超分子シリコーン材料であり、有利にはイオン性超分子ネットワークの形態である。オルガノポリシロキサンAのアミン官能と化合物Bのカルボン酸官能との反応は、イオン相互作用を伴う酸塩基反応である。この超分子シリコーン材料またはイオン性超分子ネットワークは、例えばエラストマーであってよい。
【0011】
本明細書においては、モル質量とは、平均モル質量(Mn)である。Mnの値は、29Si NMRまたは分子ふるい分析によって決定することができる。
【0012】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、シリコーン命名法で使用され、以下:
・M=式(R)3SiO1/2のシロキシル単位
・D=式(R)2SiO2/2のシロキシル単位
・T=式(R)SiO3/2のシロキシル単位、及び
・Q=式SiO4/2のシロキシル単位
[式中、R基は、同一または相違して、1~30の炭素原子を有する一価の炭化水素基である]に相当する単位M、D、T、Qを有する直鎖状または分枝状構造を有することができる。
【0013】
オルガノポリシロキサンが直鎖状である場合、これらは本質的に、Y2SiO2/2、YZ1SiO2/2、及びZ2 2SiO2/2シロキシル単位を含む群から特に選択されるシロキシル単位Dと、Y3SiO1/2、YZ1 2SiO1/2、Y2Z1SiO1/2、及びZ2 3SiO1/2シロキシル単位を含む群から特に選択される末端シロキシル単位Mとを含み、Y、Z1、及びZ2は以上に定義される通りである。
【0014】
特に好ましい一実施態様においては、オルガノポリシロキサンAは、シロキシ単位(I.1)及び(I.2):
【化2】
[式中、
Y及びZ1及びZ2は上記の定義を有し、
a=1または2であり、b=0、1、または2であり、a+b=2または3であり、c=2または3である]
を含む直鎖状オルガノポリシロキサンから選択される。
【0015】
特に好ましい態様においては、オルガノポリシロキサンAは、YZ1SiO2/2及びYZ1 2SiO1/2を含む群から選択される単位(I.1)及び、Z2 2SiO2/2及びZ2 3SiO1/2を含む群から選択される単位(I.2)を含み、Y、Z1、及びZ2は以上に定義される通りである、直鎖状オルガノポリシロキサンの中から選択される。
【0016】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、1分子あたりに、式(I.3)の少なくとも1つの官能基を担持する少なくとも1つのシロキシル単位(I.1)及び、そのZ2の一つのみが-OR1である2つの単位(I.2)を含む。好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、1分子あたりに、式(I.3)の少なくとも1つの官能基を担持する少なくとも1つのシロキシル単位(I.1)及び、その各々のZ2の1つのみが-OR1である2つの単位(I.2)を含むことが理解されるであろう。
【0017】
ある特定の実施態様では、オルガノポリシロキサンAは、式Z2 3SiO1/2の末端単位Mを2つ含み、その各々のZ2の1つのみが-OR1を表す。
好ましくは、本発明の式(I.1)において、a=1及びb=1または2である。
好ましくは、本発明のオルガノポリシロキサンAは、各々が少なくとも1つの基(I.3)を担持し、好ましくは各々が単一の単位(I.3)を担持する、少なくとも2つの単位(I.1)を含む。
【0018】
好ましくは、本発明のオルガノポリシロキサンAは、
・各々が少なくとも1つの基(I.3)を担持し、好ましくは各々が単一の単位(I.3)を担持する、少なくとも2つの単位(I.1)、及び
・1つのZ2が-OR1を表す、2つの単位(I.2)
を含む。
【0019】
好ましくは、本発明のオルガノポリシロキサンAは、
・各々が少なくとも1つの基(I.3)を担持し、好ましくは各々が単一の単位(I.3)を担持する、少なくとも2つの単位(I.1)、及び
・その各々のZ2の1つのみが-OR1基である、2つの単位(I.2)
を含む。
【0020】
好ましくは、本発明のオルガノポリシロキサンAは、
・各々が少なくとも1つの基(I.3)を担持し、好ましくは各々が単一の単位(I.3)を担持する、少なくとも2つの単位(I.1)、及び
・その各々のZ2の1つのみが-OR1基である、式Z2 3SiO1/2の末端単位M2つ
を含む。
【0021】
好ましくは、本発明のオルガノポリシロキサンAが、好ましくは末端単位Mによって担持された2つの-OR1基を含むのみであることが理解される。
【0022】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、1~60、好ましくは1~20、更に好ましくは1~10の数のシロキシル単位(I.1)を含む。
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、50~950、好ましくは50~500、更に好ましくは100~375の数のシロキシル単位(I.2.)を含む。
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、1g当たりのmolで表される、1.10-5~10.10-2mol/g、より好ましくは5.10-5~5.10-2mol/g、さらに好ましくは1.10-4~5.10-3mol/gのNH結合の量を含む。アミン官能とは、第一級アミンまたは第二級アミンを示すことを意図する。したがって、1モルの第一級アミン官能が2モルのN-H結合を含み、1モルの第二級アミン官能が1モルのN-H結合を含むことが理解される。
【0023】
本発明の化合物Aは、特に、下記の化合物:
【化3】
[式中、nまたはp=50~950、好ましくは50~500、好ましくは100~375であり、またmまたはq=1~60、好ましくは1~20、好ましくは1~10である]
から選択される。
【0024】
本発明においては、化合物Bは、以下の酸:クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプス酸(thapsic acid)、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジピコリン酸、トリメシン酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、トリカルバリル酸、ホモクエン酸、ヒドロキシクエン酸、及びパモ酸を含む群から選択することができる。
好ましくは、化合物Bは、以下の酸:クエン酸、リンゴ酸、及びコハク酸を含む群から選択される。より好ましい一実施態様では、化合物Bはクエン酸である。
【0025】
また、比Jは、化合物Bの酸官能のモル数と、オルガノポリシロキサンAのアミン官能のモル数との間の比を表すものとして定義することができる。比Jは、下記の関係式に相当する。
【数1】
【0026】
好ましくは、比Jは0.5~1.5、より好ましくは0.8~1.2、さらに好ましくは0.85~1である。
【0027】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、応力制御型レオメーター、特にTA-DHRIIを用いて25℃で測定して、30000mPa.s未満、好ましくは1~15000mPa.s、より好ましくは1~10000mPa.s、さらに好ましくは1~8000mPa.sの動粘度を有する。
【0028】
特定の一実施態様では、本発明のシリコーン材料は、機械的特性を強化するためにこうした類の化合物中に通常使用される充填剤が存在しないにも関わらず、優れた硬度を維持しつつも優れた機械的特性を有する。充填剤の非存在下では、本発明の超分子シリコーン材料は、100%を超える伸長率及び0.25MPaを超える弾性率を表示することができる。
【0029】
本発明のシリコーン材料は、充填剤、特に補強充填剤または非補強充填剤を含んでよい。補強充填剤は、有利には、本発明のシリコーン材料の機械的特性の改善を可能にする。
本発明において、充填剤は、好ましくは鉱物である。特に、これらは珪質であってよい。補強珪質充填剤は、沈降シリカまたは焼成シリカまたはこれらの混合物から選択される。これらの粉末の平均粒径は、一般的に0.1μm(マイクロメートル)未満であり、BET比表面積は30m2/gより大きく、好ましくは30~500m2/gである。準補強珪質充填剤、例えば、珪藻土または石英粉末もまた使用することができる。非珪質鉱物材料に関して、これらは準補強充填剤もしくは填材として使用することができる。単独または混合物として使用することのできるこれらの非珪質充填剤の例は、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水和アルミナ、または三水酸化アルミニウム、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、脂肪酸で任意に表面処理された炭酸カルシウム、酸化亜鉛、マイカ、タルク、酸化鉄、カオリン、硫酸バリウム、及び消石灰である。これら充填剤の粒径は、一般的に0.001~300μm(マイクロメートル)であり、BET表面積は100m2/gより小さい。実際には、以下に限定されるものではないが、使用される充填剤は、石英とシリカとの混合物であってもよい。充填剤は、任意の適切な生成物で処理することができる。
好ましくは、本発明の材料は、石英、シリカ、特に沈殿シリカまたは焼成シリカ、及び炭酸カルシウムから単独または混合物として選択される充填剤を含む。
【0030】
特に有利な態様では、特にオルガノポリシロキサンAが低粘度であるため、本発明の材料には、イオンネットワークの構造を損なうことなく、少なくとも60質量%までの充填剤を添加することが可能である。これらの充填剤の添加は、特に本発明の材料の硬度及び降伏強度に改善をもたらす。
【0031】
従って、本発明の材料は、オルガノポリシロキサンAの質量に対して、0.5~70質量%の充填剤、好ましくは1~60質量%の充填剤を含んでよい。
【0032】
本発明の材料中の充填剤の量は、充填の種類の関数として変化しうる。当業者は、充填剤の量を、充填剤の種類と所望の特性との関数として適合させることができる。
したがって、本発明のシリコーン材料は、
・オルガノポリシロキサンAの質量に対して、0.5~20質量%、好ましくは1~15質量%のシリカ、特に沈降シリカまたは焼成シリカ、及び/または
・オルガノポリシロキサンAの質量に対して、0.5~60質量%、例えば3~60質量%の石英、及び/または、
・オルガノポリシロキサンAの質量に対して、0.5~50質量%、例えば3~50質量%の炭酸カルシウム
を含みうる。
【0033】
本発明のシリコーン材料は、さらに、
・非官能化オルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、及び官能化オルガノポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサンから選択される1つ以上の別の直鎖状オルガノポリシロキサン(オイル)または分枝状オルガノポリシロキサン(樹脂)であって、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アルケニル基、または出願EP1758541に記載のような立体障害ピペリジニル基を含むか担持するもの、
・架橋剤、例えば、1分子あたり3つのケイ素結合加水分解性基を有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン、
・スズ、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、またはジルコニウムの金属化合物、または有機化合物、例えば、カルベン、アミン、アミニジン、またはグアニジンから選択される重縮合触媒、
・特に、-接着促進剤または調節剤、
-濃度(consistency)を増大させるための添加剤、
-顔料、
-耐熱、耐油、防燃添加剤、
から選択される1つ以上の機能性添加剤、あるいは
・これら成分の2つ以上の混合物
を含みうる。
【0034】
特に有利には、本発明のシリコーン材料は、動的材料であり、すなわち自己治癒特性を有する。本発明の材料の自己治癒性は、この材料を50~130℃の温度に1から10時間に亘って加熱すること、例えば、この材料を70℃に48時間に亘って加熱することによって得られる。
【0035】
特に有利には、本発明の超分子シリコーン材料は再生可能でもある。本発明者らは、本発明の材料が、熱水に浸漬された場合、特に、70~100℃の温度で長時間に亘って、特に24~167時間に亘って浸漬された場合に、機械的特性を喪失することを示した。
【0036】
本発明の超分子シリコーン材料は、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAと少なくとも1つの化合物Bとの反応により得られる。この超分子シリコーン材料を調製する方法は、好ましくは、以下:
a)オルガノポリシロキサンAを容器に入れる工程、
b)化合物Bが固体形態の場合、これを有機溶媒Sに溶解させる工程、
c)化合物AとB、または、AとBとSとを混合する工程、
d)得られる混合物を、好ましくは、30~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは40~100℃、さらに好ましくは50~70℃の温度に加熱する工程、
を含む。
熱の下での反応時間は、試薬の種類及び温度に依存する。当業者であれば、温度条件及び加熱時間を調節して、優れた機械的特性及び自己治癒特性を有する材料を得ることができる。例としては、熱の下での反応時間は、100℃での数時間から70℃での数日間にまで様々に変化し得る。
【0037】
工程c)の後に、得られた組成物を様々な方法で、例えば、薄層に、型で、または直接容器中で、成形することができる。工程d)では、イオンネットワークを確立させ、本発明のシリコーン材料を生成させる。
【0038】
第1の実施態様では、有機溶媒Sは、特に極性有機溶媒から、特にアルコール、たとえばエタノール、またはエーテル、例えば酢酸エチル、あるいはこれら溶媒の混合物から、選択することができる。
使用される有機溶媒Sの量は少ない。好ましくは、本発明の方法において使用される溶媒Sの量は、混合物A+B+Sの合計質量に対して30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満である。
【0039】
本発明のシリコーン材料が充填剤を含む場合、これらはオルガノポリシロキサンAと直接混合して添加しても、あるいはオルガノポリシロキサンAと化合物Bとを混合した後に反応媒質に添加してもよい。
【0040】
本発明のオルガノポリシロキサンAは、(モル質量が700000g/mol未満であるため)純粋で、有機溶媒、例えばS中に溶解させて、あるいはエマルションとして、使用することができる。
【0041】
別の実施態様では、本発明の方法は、オルガノポリシロキサンAが水中のエマルションであるエマルション法である。この場合、このエマルションはまた、1つ以上の界面活性剤または安定化剤を含み、化合物Bは水に可溶化されている。このエマルションはまた、別の作用剤、例えば、殺生物剤、抗ゲル化添加剤、及び/または消泡剤を含むことができる。
【0042】
従って、本発明はまた、上述されるような、シリコーン材料の全質量に対して50質量%未満の有機溶媒S、好ましくは、40質量%未満、より好ましくは30質量%未満、特に20質量%未満、さらに好ましくは10質量%未満、例えば5質量%未満の有機溶媒Sを含む、シリコーン材料に関する。
【0043】
着色されていないか、わずかに着色されているのみである、透明な材料が好ましい。
【0044】
本発明のシリコーン材料は、特に可撓性の基材をコーティングするために使用することができる。可撓性の基材とは、特に、織物、紙、及びポリマーフィルムから選択される。織物コーティングのための用途には、例えば、エアバッグ、コンベヤベルトなどの製造が含まれる。紙及びポリマーフィルムのコーティングのための用途には、非粘着性コーティングの製造が含まれる。ポリマーフィルムまたは織物のコーティングを使用する別の用途は、被覆材(dressing)の製造に関する。したがって、本発明はまた、本発明の材料の使用を含む、可撓性の基材をコーティングする方法にも関する。
【0045】
本発明のシリコーン材料は、3D印刷にも使用することができる。本発明はまた、「3Dプリンティング」方法としても既知の、シリコーンエラストマーを適用する付加製造方法で物品を調製するための、本発明のシリコーン材料の使用にも関する。ASTM F2792-12a規格:「付加製造技術のための標準用語」によれば、「3Dプリンタ」は、「3D印刷に使用される機器」と定義され、「3D印刷」は、「プリントヘッド、ノズル、または他のプリンタ技術を使用して材料を付着させることによる、対象物の製造」と定義されている。
【0046】
付加製造(AM)は、一般的には一層ずつ、除去加工方法とは対照的に材料を接合して3Dモデル・データから対象物を製造する方法として定義されている。3D印刷に関連し、3D印刷に包含される同義語には、付加製造、付加方法、付加技術、添加技術、及び添加層製造が含まれる。付加製造(AM)は、ラピッドプロトタイピング(RP)とも呼称することができる。本明細書で使用されるように、「3D印刷」は「付加製造」と互換性があり、その逆もまた然りである。
【0047】
有利には、本発明のシリコーン材料は、材料押出または材料付着を用いる3D印刷方法に使用することができる。材料押出とは、材料のフィラメントが押出され、選択的にノズルを通して分配される、付加製造方法である。押出された材料の流量は、特にノズルに加えられる圧力または温度によって、制御することができる。
【0048】
材料付着とは、材料の微細な液滴を、紙のプリンタと同様のプリントヘッドによって選択的に付着させる、付加製造方法である。この方法は、インクジェットとしても既知である。
したがって、本発明はまた、本発明の化合物の使用を含む3D印刷方法をも包含する。
【実施例
【0049】
例示のために記載される下記の実施例では、以下の定義が参照される。
【0050】
動粘度:
生成物の動粘度は、応力制御レオメーター(TA-DHRII)で測定した。測定は、直径40mmのコーンプレート構造で、フローモードにて、52μmの切捨値で行った。粘度は、25℃でのせん断速度(0.01-100s-1)の関数として記録した。
【0051】
レオロジー:
レオロジー分析は、25℃にて応力制御レオメーター(TA-DHRII)で、プレート/プレート構造(直径40mm)を使用して実施した。周波数走査は、100~0.01Hzの生成物の線形粘弾性領域で記録した。
【0052】
引張試験:
100%伸び時の係数、降伏強度、及び破断時の伸びを測定するための引張試験を、一軸引張試験機MTS 2/M(10KN)を用いて行った。ロードセルの最大荷重は100Nであった。自己締付爪(self-tightening jaw)を下部に、空気式爪(pneumatic jaw)を上部に使用した。試験片はH3型であった。伸び計を使用して伸びを測定した。初期ギャップは10mmであった。
【0053】
ショア00硬度及びショアA硬度を、厚さ6.5mmのシリコーン材料にデュロメーターを用いて測定した。
【0054】
実施例で使用され、下記の表に詳述されるオルガノポリシロキサン化合物Aは、以下の式のいずれかに合致する。
【0055】
PDMS A01(比較例)
下式(I):
【化4】
の、3-アミノプロピル-ジメチルシリルオキシ末端単位及びジメチルシリルオキシ単位Dを有する直鎖状オルガノポリシロキサン
【0056】
PDMS A11-A12-A13(比較例)
下式(II)及び(III):
【化5】
に相当する、トリメチルシロキシ末端単位、ジメチルシロキシ単位D、並びにメチル置換基及びアミノプロピル又はアミノエチル-アミノプロピルアミノ単位を含む単位Dを有する直鎖状オルガノポリシロキサン
【0057】
PDMS A21-A22-A23(本発明のオルガノポリシロキサンA)
下式(IV):
【化6】
に相当する、メトキシジメチルシロキシ末端単位、ジメチルシロキシ単位、並びにメチル置換基及びアミノエチル-アミノプロピルアミノ単位を含む単位Dを有する直鎖状オルガノポリシロキサン
【0058】
【表1】
【0059】
比較例を、さらに、PDMS A31(比較例オルガノポリシロキサンA)から調製した。
PDMS A31(比較例オルガノポリシロキサンA)
メトキシジメチルシロキシ末端単位、並びにアミノエチル-アミノプロピルアミノ単位を含むものもあるD及びT単位を含む、一般式(V):
【化7】
の分枝オルガノポリシロキサン
【0060】
このオルガノポリシロキサンは、2つ以上のアルコキシ官能を含む。
【表2】
【0061】
シリコーン材料を調製するための一般的方法
以下の実施例では、下記の通り材料を調製した。
・酸を、60%のエタノールと40%の酢酸エチルとの混合物に溶解させた。溶媒中の酸の濃度は約1.5mol/lであった。
・アミノオルガノポリシロキサンを容器に入れ、約-20℃に冷却した。溶媒混合物中に溶解させた酸を添加して、表に記載の官能基の比Jを得た。
・反応混合物を、プラネタリーミキサーを約2500rpmで1分間使用して均質化させた。
・均質化後、反応混合物をペトリ皿またはテフロン(登録商標)加工されたプレートに流し込み、70℃のオーブン中に6日間置いた。
・得られた超分子材料を、50~70℃で加圧下にて、4~48時間かけて厚さ1mmのフィルムに成形した。
・H3試験片を調製した。
【0062】
本発明の材料を得るために、比率J=1を有して、約93質量%のオルガノポリシロキサンA、2質量%の化合物B、及び5質量%の溶媒を含む組成物を用いた。
【0063】
J=1で得られる本発明の材料の機械的特性の結果
【表3】
【0064】
この結果から、本発明の材料は、機械的特性に優れ、硬度が高いことがわかる。また、得られた材料は、滑らかで透明である。
【0065】
アクリル酸を用いて得られる材料との比較
本発明の方法を、クエン酸(本発明の材料)及びアクリル酸(比較例の材料)を用いてJ=1で実施した。
【表4】
これらの結果は、本発明の材料(クエン酸)がアクリル酸を用いて得られた材料の2倍の降伏強度を有することを示す。
【0066】
酸がクエン酸である場合の、本発明の材料と、アルコキシ単位を含まないオルガノポリシロキサンを用いて得られた材料との比較
【表5】
これらの結果は、末端アルコキシ官能を持たない中粘度の材料は機械的特性を全く持たないことを示す。この材料は、脆い固体、あるいは粘性のゲルとして挙動する。さらに、粘度が低下した場合には、末端アルコキシ官能がなければ、この材料は粘性の液体として挙動する。
逆に、本発明の材料は、優れた機械的特性を有する。
【0067】
酸がクエン酸である場合の、本発明の材料と、2以上のアルコキシ単位を含むオルガノポリシロキサンを用いて得られた材料との比較
【表6】
2つ以上のアルコキシ基の存在により、弾性の低い材料の形成がもたらされる。
【0068】
Jの関数としての機械的特性の変化
これらの試験のために、使用したオルガノポリシロキサンAはA23であり、酸Bはクエン酸であった。
【表7】
これらの結果は、機械的特性が、様々なJの値について十分に維持されることを示す。
【0069】
機械的特性に対する酸の種類の影響
全ての試験は、J=1で実施した。
【表8】
化合物Bの構造を変更することにより、イオン性材料の機械的特性を調節することができる。
【0070】
酸がクエン酸である場合の、本発明の材料と、2以上のアルコキシ単位を含み、オルガノポリシロキサンを用いて得られた材料との比較
【表9】
2つのアルコキシ基の存在により、破断時の伸びがより少ない、弾性の低い材料の形成がもたらされる。
【0071】
充填剤添加の効果
本発明の材料に充填剤を導入することが可能である。
試験は、本発明の材料に充填剤を導入することによって行われた。様々な充填剤(シリカ、石英、炭酸カルシウム)の導入により、物理的ネットワークの構造が乱れることはない。導入後の材料は、硬度が改善されたエラストマーとなる。
さらに、イオン性ネットワークの構造を損なうことなく、オルガノポリシロキサンAに対して最大60質量%の充填剤を添加することができる。充填剤の添加は、主に硬度と降伏強度を向上させる。
【0072】
沈降シリカ:Tixosil(登録商標)365の添加
【表10】
【0073】
石英の添加
オルガノポリシロキサンA23とクエン酸との反応(比J=1)から得られた材料について、結果を以下に示す。
【表11】
【0074】
炭酸カルシウムCaCO 3 の添加
オルガノポリシロキサンA23とクエン酸との反応(比J=1)から得られた材料について、結果を以下に示す。
【表12】
充填剤を添加することにより、J=1で機械的特性が強化された材料を得ることができる。したがって、充填剤を添加することにより、多量の酸Bを使用する必要なく、優れた機械的特性を有する材料を提供することができる。
【0075】
治癒特性の評価
化合物Aと化合物Bを混合した後、生成物を、4mm厚さのテフロン(登録商標)コーティングされたスペーサーを載せたプレート上に配置し、70℃の温度に3日間晒した。試験片をパンチで切り出し、厚さを測定したところ約1mmであった。これらの試験片の有効断面積の一部分に面取り切断(bevel cut)を行い、各試験片の2つの端と端をつないで置き、この組み合わせを70℃の温度で48時間置くことによって自己治癒サイクルに処した。
自己治癒特性を、オルガノポリシロキサンA23またはA22とクエン酸とをJ=1の比率で、充填剤の存在下及び非存在下で反応させて得られる本発明の材料について試験した。
【0076】
本発明においては、温度(70℃で48時間に亘り加熱)により治癒が得られる。以下の2の実施例において、治癒後には機械的特性の大部分が復元されることが示されている。
【0077】
【表13】
【0078】
クエン酸、オルガノポリシロキサンA22、J=1、及びA22の質量に対して10質量%の石英を用いて得られた材料について、同様の試験を行った。治癒は、またしても70℃で48時間に亘る加熱下で起こった。破断が、切断部の外側で発生した。
【0079】
再生
本発明の材料は、70℃の水中に7日間浸漬されると機械的特性を失う。したがって、この実験は、この水性経路によって材料を再生可能であることを示す。
逆に、70℃で7日間おいた後の比較例6の材料(2以上のアルコキシ単位を含むオルガノポリシロキサン)は、初期形状を維持する。水が物理的及び機械的特性にかなりの損失を引き起こすことはなく、このため材料の再生が可能になることはない。