(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】画像データ処理方法、デバイス及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
A61B8/14 ZDM
(21)【出願番号】P 2020547288
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2018081954
(87)【国際公開番号】W WO2019110295
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-01-13
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ハイスベルス ゲラルドゥス ヘンリクス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジャン‐ルック フランソワ‐マリエ
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-531352(JP,A)
【文献】特開2018-110615(JP,A)
【文献】特表2018-518226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの画像データセットを空間的にレジストレーションするための画像データ処理方法であって、前記方法は、
2つの異なる4次元画像データセットを取得するステップであって、各4次元画像データセットは、共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、ステップと、
前記4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定するステップであって、前記3次元動きベクトルは、前記4次元画像データセット内に含まれる前記3次元画像フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部の経過を通しての最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、ステップと、
それぞれの前記3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、前記4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行するステップと、
前記2つの画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記3次元動きベクトルを特定することは、前記4次元画像データセットのうちの少なくとも1つの画像データセットに関して、当該画像データセットを処理して、対応する低減解像度画像データセットを導出することと、前記低減解像度画像データセット内で、前記4次元画像データセットによって表される3次元画像フレームの系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す前記3次元サブ領域を特定することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低減解像度データセット内で特定された前記3次元サブ領域に対応する、元の画像データセット内の3次元サブ領域を特定することを更に含み、前記3次元動きベクトルを特定することは、前記元の画像データセット内の対応する領域の動きを示すベクトルを特定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの前記4次元画像データセットを処理して、それぞれが異なるそれぞれの解像度を有する複数の低減解像度画像データセットを導出することと、最も低い解像度を有する低減解像度画像データセット内で最大空間変位を示す3次元サブ領域を特定することとを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記元の画像データセット内の対応するサブ領域を特定することは、最も解像度が低いデータセットから始めて、前記低減解像度画像データセット間で次々に最大空間変位の特定されたサブ領域を順次にマッピングし、その後に、前記元の画像データセットに進むことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の低減解像度画像データセットはそれぞれ、全体サイズが縮小された3D画像フレームのそれぞれの時系列を表し、1つの低減解像度画像データセットから別の低減解像度画像データセットへのマッピングは、2つの低減解像度画像データセットの3D画像フレームの相対的なサイズの差に比例して、最大変位の特定された前記サブ領域のサイズを拡大することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記画像レジストレーション手順は、各画像データセットによって含まれる1つ又は複数のフレーム間で求められる類似度尺度を最大化することに基づく、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記更なる変換は並進を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記2つの4次元画像データセットは、解剖学的領域の異なる空間的視点を表す画像データを含む、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
2つの前記空間的視点に対応する視認方向は、少なくとも25度の角度だけ離れている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記低減解像度画像データセットを生成することは、ローパス空間フィルタを用いて、前記4次元画像データセットを処理することを含む、請求項2
、4又は6に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は超音波画像データ処理方法であり、任意選択で前記2つの4次元画像データセットによって表される共通の解剖学的領域は、心臓の心尖部四腔断層像によって包含される領域に対応する、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
2つの異なる4次元画像データセットを取得することであって、各前記4次元画像データセットは共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、取得することと、
前記4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定することであって、前記3次元動きベクトルは、前記4次元画像データセット内に含まれる前記3次元画像フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部の経過を通しての最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、特定することと、
前記それぞれの3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、前記4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行することと、
前記2つの4次元画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する前記4次元画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行することとを行うプロセッサを備える、画像処理デバイス。
【請求項14】
1つ又は複数の超音波トランスデューサユニットと、
請求項13に記載の画像処理デバイスとを備える、超音波撮像システムであって、
前記画像処理デバイスの前記プロセッサは、前記超音波撮像システムのプロセッサアセンブリに含まれ、
前記プロセッサは更に、前記1つ又は複数の超音波トランスデューサユニットから受信された信号データを処理して、前記2つの異なる4次元画像データセットを取得する、超音波撮像システム。
【請求項15】
前記超音波撮像システムは2つの超音波トランスデューサユニットを備え、前記2つの異なる4次元画像データセットは、前記2つの超音波トランスデューサユニットの異なるユニットから受信される信号データを用いて取得されるか、又は、
前記超音波撮像システムは単一の超音波トランスデューサユニットを備え、前記2つの異なる4次元画像データセットは、異なるそれぞれの期間にわたって前記単一のトランスデューサユニットによって取り込まれた信号データを用いて取得される、請求項14に記載の超音波撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像データ処理方法及びデバイスに関し、詳細には、2つの4次元画像データセットを空間的にレジストレーションするための画像データ処理方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、超音波撮像の分野における多視点医療用撮像は、頻繁に適用される撮像手法である。その手法は、対象者の人体の同じ共通の解剖学的領域を2つの異なる視点から撮像することに基づく。これにより、撮像される領域に関して、より詳細に細部を取得できるようになる。それに加えて、更に別の視点から取得された付加的な画像情報に起因して、一方の視点から見ることができない領域の部分(例えば、障害物に起因して)を、それでも最終画像において表現できるようになる。
【0003】
各視点において取得された画像データセットから単一の最終画像を取得するために、画像レジストレーションのプロセスを実行する必要がある。レジストレーションは、各データセットにおいて取り込まれた共通の視覚的特徴が、互いに位置合わせされるように(例えば、それらが互いに重なり合うように)、各データセットにおいて取得された画像データを位置合わせすることにある。その後、2つを結合又は融合することができる。
【0004】
このプロセスが特に適用可能である1つの分野が、超音波撮像の分野である。
【0005】
2つのリアルタイム3D超音波ボリューム(4Dボリューム又は4D画像データセットとしても知られている)のレジストレーション又はフュージョンは、多視点超音波検査において、撮像される視野を拡張できるようにし、一方の取り込まれた画像データセット内の不明な情報を他方の画像データセット内の取り込まれた情報によって補足するための重要なステップである。更に、融合した超音波検査は、改善された画像品質及び手術デバイス可視性を提供する。
【0006】
4D超音波ボリュームのレジストレーションを達成するための先行技術の方法は通常、4Dボリュームの正確なアライメントを取得するために、ボリュームの選択された2Dスライスからの強度正規化済み2D画像の結合類似度スコアに基づく最適化プロセスを利用する。この最適化プロセスは、有意な解に収束する機会を増やすために、(いわゆる、スケール空間において表されるような)異なる詳細度において各4Dボリュームの表現を更に使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この既知の手法の性能は、多くの場合に4Dボリュームのアライメント不良に、それゆえ、融合した最終画像品質の低下につながるので、実際には決して満足なものではないことがわかっている。
【0008】
それゆえ、改善された結果を達成することができる、4D画像データセットをレジストレーションするための方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は特許請求の範囲によって規定される。
【0010】
本発明の一態様によれば、2つの画像データセットを空間的にレジストレーションするための画像データ処理方法が提供され、その方法は、
2つの異なる4次元画像データセットを取得するステップであって、各4次元画像データセットは、共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、ステップと、
4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定するステップであって、3次元動きベクトルは、フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、ステップと、
それぞれの3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行するステップと、
2つの画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行するステップとを有する。
【0011】
本発明は、初期の「粗アライメント」ステップを実行するという概念に基づき、そのステップでは、それぞれにおいて特定される単一の支配的な動きベクトルの方向に従って、2つの4次元画像データセットが回転及び並進によって位置合わせされる。支配的な動きベクトルは、セット内に含まれる1組の3次元画像フレームの経過にわたって、撮像された視野内で最も大きい変位を受ける、各画像データセット内で特定されるサブ領域の動きに対応する。
【0012】
視野内で生じる最も支配的な動きを表すこの単一のベクトルに従って画像データセットを最初に位置合わせすることによって、本発明者らは、最終レジストレーションのロバスト性及び精度が著しく改善されることがわかった。最も大きい動き成分は、例えば、外部からの特徴、或いはノイズアーティファクトではなく、顕著な構造的特徴の動きを表す可能性が高いので、この最も大きい動き成分を有する単一のベクトルを選択することは、(例えば、複数の点の動きに対応する複数の動きベクトルを求めることとは対照的に)回転アライメントにおける精度の確率を高める。それゆえ、各画像データセットにおいて導出される動きベクトルは、各4Dボリューム内の解剖学的構造の最も支配的な要素の動きの良好な推定を与える。
【0013】
4次元画像データセットは、3次元画像フレームの時系列(すなわち、3つの空間次元+時間)を表す画像データを意味する。これは、別の状況において、当該技術分野において4次元ボリュームとして知られている。
【0014】
画像データセットは複数の例において超音波画像データセットであるか、又は2つの異なる角度視点から解剖学的領域の3D画像フレームの系列を取得することができる異なる撮像方法又はモダリティを用いて取得された画像データセットである。
【0015】
「ベクトル」は、画像データセットによって表される画像の空間内に存在する3次元(座標)空間、すなわち、各画像(3D画像フレーム)内に取り込まれるか、又は各画像(3D画像フレーム)内に表される物理的領域又はエリアの3次元空間内のベクトルを意味する。
【0016】
「回転」は、上記で規定されたように、画像データセットの3D画像フレームによって表されるか、又は取り込まれる物理的空間内に存在する、この3D座標空間内の回転を意味する。「並進」は、同様に、この3D座標空間内の並進を意味する。
【0017】
4D画像データセット内で最大空間変位のサブ領域が特定される。これは、4D画像データを構成する3D画像フレームの系列の少なくとも一部の経過を通して、最も大きい空間変位を受けることがわかる3次元(すなわち、空間)領域が特定されることを意味する。
【0018】
サブ領域は、その領域内に存在するか、その領域内に位置するか、又はその領域によって包含される特定の画像特徴によって特徴付けられる。それゆえ、その領域の変位は、それらの画像特徴の変位によって実効的に特徴付けられるか、又はそれらの画像特徴の変位の中に現れ、それらの画像特徴によって特徴付けられる領域も動くことがわかる。
【0019】
それゆえ、方法のこのステップは、フレームの系列の全経過を通してのそれらの特徴の変位によって、最大量だけ、すなわち、3D画像フレーム内に表されるか、又は取り込まれる(物理的)空間内に存在する3D座標空間内の最大空間変位だけ自ら変位することがわかる、1つ又は複数のグラフィカルな、又は視覚的な特徴によって特徴付けられる、4D画像データセットのフレーム内の3次元サブ領域を特定することを有する。
【0020】
「変換」は数学的な意味において使用され、例えば、並進、回転及び反転の線形変換を含む。変換は、上記で論じられたように、画像データセットの画像(3D画像フレーム)によって規定される3次元座標空間内で再び実行される。
【0021】
動きベクトルを位置合わせさせることは、複数の例において、それぞれの導出された動きベクトルを平行にし(又は実質的に平行にし)、かつ互いに一致させる(又は実質的に一致させる)ように、画像データセットの一方又は両方を回転及び並進させる(すなわち、画像データセットを相対的に回転及び相対的に並進させる)ことを意味する。
【0022】
空間的にレジストレーションさせることは、例えば、各画像データセットの画像(3D画像フレーム)内に取り込まれた共通の画像特徴に関して、すなわち、共通の特徴を互いに位置合わせさせるために、又は、例えば、2つの画像データセットの強度パターンに関して、2つの画像データセットを互いに、より完全に、又はより正確に(空間的に)位置合わせさせることを含む。
【0023】
空間的にレジストレーションさせることは、例えば、画像データセットによって表される3D画像フレームの視覚的な、又はグラフィカルな特徴の空間的な位置決めに関して、2つの画像データセットを互いに(例えば、完全に、又はより正確に)空間的に一致させることを含む。
【0024】
空間的にレジストレーションさせることは、例えば、2つの画像データセットのフレーム内に存在する共通の視覚的な特徴又は強度値に関して、画像データセットを互いに重ね合わせる変換を実行することを含む。
【0025】
更なる変換は、画像レジストレーション手順に基づく。画像レジストレーションは、本発明の技術分野において十分に理解された概念であり、いくつかの異なるアルゴリズム手法を含む。画像レジストレーション手順は、例えば、画像マッチング手順、例えば、画像マッチングアルゴリズムに基づく。画像マッチングアルゴリズムは、特定の例において、強度マッチングアルゴリズム又は特徴マッチングアルゴリズムである。強度マッチングでは、2つの画像データセットの3Dフレームの強度特性、例えば、強度分布が、変換を通して互いに照合され、それにより、画像をレジストレーションさせる。
【0026】
任意の例における更なる変換は線形変換であるか、又は、例えば、弾性若しくは非剛体変換である。
【0027】
4次元画像データセットの取得は、特定の例において、例えば、リモートコンピュータ、例えば、サーバから、通信チャネルを介して画像データセットを受信することを含む。更なる例において、4次元画像データセットを取得することは、例えば、1つ又は複数の撮像プローブのような1つ又は複数の画像取得デバイスから、画像データセットを受信することを含む。これらは、例えば、複数の例において、1つ又は複数の超音波撮像プローブである。
【0028】
1つの撮像プローブのみが使用される場合、2つの画像データセットは異なる時点において取得される。2つ以上の撮像プローブが使用される場合、画像データセットは同時に取得される。
【0029】
1つ又は複数の例によれば、3次元動きベクトルを特定することは、画像データセットのうちの少なくとも1つに関して、画像データセットを処理して、対応する低減解像度画像データセットを導出することと、低減解像度画像データセット内で、画像データセットによって表されるフレームの系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す3次元サブ領域を特定することとを含む。
【0030】
元の4次元画像データセット(元の4次元ボリューム)の低減解像度バージョンの処理又は解析を通して、最大空間変位のサブ領域を検出することによって、ノイズアーティファクトに対する改善されたロバスト性が達成される。ノイズは、ごく一般には、画像データセット内に取り込まれる3Dボリューム及び4Dボリュームの両方を劣化させる(これは、画像の見た目の粗さとして現れる)。画像フレームの解像度が低いほど、通常、含まれるノイズアーティファクトは少ない。それゆえ、低減解像度画像データセット内の最大変位のサブ領域を特定することによって、例えば、実際には単なるノイズアーティファクトの現れである見かけ上の大きい局所的動きに起因して、サブ領域を誤って特定する可能性が小さくなる。それゆえ、アライメントのロバスト性が改善される。
【0031】
「対応する」画像データセットは、3次元画像フレームの同じ系列を表す(すなわち、同じビジュアルコンテンツを表す)画像データセットを意味するが、各フレームは、元の取得された画像データセットより低い解像度を有する。
【0032】
誤解を避けるために、「解像度」は画像解像度を指している。これは、デジタル撮像及び画像処理の分野において、十分に理解された技術用語である。それは、例えば、ピクセル解像度(例えば、各画像データセットによって表される3D画像フレーム内のピクセルの密度)を指しているか、空間解像度を指しているか、又は画像解像度の任意の他の尺度若しくは指標を指している。
【0033】
「低減解像度」は、元の取得された4次元画像データセットに対して低減されることを意味する。更に、低減解像度画像データセットは、3D画像フレームの時系列を含む画像データセットを意味し、含まれる3D画像フレームは、元の4D画像データセットによって含まれる3D画像フレームに比べて低減された解像度を有する。
【0034】
特定の例によれば、その方法は、低減解像度データセット内で特定されたサブ領域に対応する、元の画像データセット内のサブ領域を特定することを更に含み、3次元動きベクトルを特定することは、元の画像データセット内の対応する領域の動きを示すベクトルを特定することを含む。
【0035】
誤解を避けるために、「元の画像データセット」は、その方法によって当初に取得された4次元画像データセット、すなわち、本出願の請求項1において参照される4次元画像データセットを意味する。
【0036】
この1組の例において、低減解像度画像データセット(すなわち、低減解像度画像データセットの3Dフレーム)内で特定される3Dサブ領域は、元の画像データセットに(すなわち、元の4D画像データセットの3Dフレームに)実効的にマッピングされる。その後、元の4D画像データセットの3D画像フレームの経過を通して検出される、対応する領域の動きに基づいて、この領域の動きを表す3D動きベクトルが求められる。
【0037】
代替例では、3D動きベクトルは、低減解像度画像データセットの3Dフレームの経過を通して求められる、サブ領域の動きに関して求められ、求められた動きベクトル及び特定されたサブ領域はいずれも、その後、元の4D画像データセットにマッピングされる。
【0038】
「~に対応する」は、低減解像度画像内で特定されるサブ領域と同じ視覚的な特徴によって特徴付けられるか、又は同じ視覚的な特徴を含むか、包含するか、又は網羅する元の4D画像データセットの3D画像フレーム内の3次元サブ領域を意味する。
【0039】
1つ又は複数の例によれば、その方法は、少なくとも1つの4次元画像データセットを処理して、それぞれが異なるそれぞれの解像度を有する複数の低減解像度画像データセットを導出することと、最も低い解像度を有する低減解像度画像データセット内で最大空間変位を示す3次元サブ領域を特定することとを有する。
【0040】
異なるそれぞれの解像度は、各低減解像度画像データセットが異なる相対解像度、又は異なる絶対解像度を有することを意味する。
【0041】
より詳細には、これらの場合に、元のデータセット内の対応するサブ領域を特定することは、最も解像度が低いデータセットから始めて、低減解像度画像データセット間で次々に最大空間変位の特定されたサブ領域を順次にマッピングし、その後に、元のデータセットに進むことを含む。
【0042】
これらの例において、最大変位のサブ領域は、最も解像度が低い4D画像データセット内で特定される。解像度が低い画像ほどノイズが低減されるので、最大変位サブ領域を特定するために最も解像度が低い画像データセットを選択することによって、ノイズアーティファクトに起因する、サブ領域を特定する際の潜在的な誤りに対するロバスト性が、最大量まで高められる。
【0043】
その後、特定されたサブ領域を、異なる解像度の画像データセットを通して上方に連続してマッピング又はプロパゲーションすることによって、特定されたサブ領域の精度及びノイズロバスト性を失うことなく、(解像度が改善されることに起因して)画像データの品質が改善される。
【0044】
最も解像度が低い4D画像データセットから最大変位のサブ領域を特定し、マッピングすることに加えて、1つ又は複数の例によれば、最も解像度が低いデータセット内の特定されたサブ領域に関して、3次元動きベクトルが特定され、これも複数の異なる解像度のデータセットを通して上方にマッピングされる。
【0045】
「特定されたサブ領域を低減解像度画像データセット間で次々にマッピングすること」は、それぞれの低減解像度画像データセットにおいて、特定されたサブ領域に対応するサブ領域を単に特定することを意味する。
【0046】
詳細には、複数の例において、複数の低減解像度4D画像データセットは、解像度の低い方から順に実効的に順序付けられるか、又はスタックされ、特定されたサブ領域は、元の4D画像データセットに達するまで、順次に解像度が高くなる4Dデータセットを通して次第に「上方に」マッピングされる。
【0047】
1つ又は複数の例によれば、複数の低減解像度画像データセットはそれぞれ、全体サイズが縮小された3D画像フレームのそれぞれの時系列を表し、1つのデータセットから別のデータセットへのマッピングは、2つの画像データセットの3D画像フレームの相対的なサイズの差に比例して、最大変位の特定されたサブ領域のサイズを拡大することを含む。
【0048】
サイズは、空間サイズ、すなわち、領域の空間寸法によって特徴付けられるようなサイズを意味する。
【0049】
これらの例において、元の4D画像データセットに比べて低減された解像度を有する3D画像フレームを含むことに加えて、低減解像度画像データセットの3D画像フレームは、元の画像データセットの3D画像フレームよりサイズも小さい。
【0050】
これらの例において、特定された領域を第1の4D画像データセットから第2の4D画像データセットにマッピングすることは、第1の4D画像データセットと第2の4D画像データセットとの間のサイズ拡大の割合に合わせて、特定された領域のサイズを拡大することを単に含む。これは、例えば、画像フレーム内のそれぞれの領域の中心点を固定したまま行われる。
【0051】
これは、複雑な処理又は解析の実行を必要とすることなく、マッピングを達成する簡単で、実効的な手段を提供する。
【0052】
「縮小された全体サイズ」は、特定の例において、3D画像フレームの面積全体が小さいか、別のやり方において、寸法が小さいことを意味する。縮小されたサイズは、ピクセル寸法に関して、又は任意の他の尺度若しくは定量に関して縮小されることを意味する。
【0053】
画像レジストレーション手順は、各画像データセットによって含まれる1つ又は複数のフレーム間で求められる類似度尺度を最大化することに基づく。
【0054】
詳細には、異なる取り得る変換ごとに、2つの画像データセットのそれぞれのフレーム間で類似度スコアが求められ、その後、最も高い類似度スコアに関して、その変換が最適化される。良好な類似度スコアは、視覚的な、又はグラフィカルな特徴の良好な空間アライメントを示すので、これは、それゆえ、2つの画像データセットの3D画像フレーム間の取り得る最良のアライメント又はレジストレーションを確実にする。類似度尺度は、特定の例において、2つの画像データセットの3D画像フレームの強度分布又は強度特徴の類似度に基づく。
【0055】
1つ又は複数の例によれば、更なる変換は並進を含む。
【0056】
1つ又は複数の例によれば、2つの4次元画像データセットは、解剖学的領域の異なる空間的視点を表す画像データを含む。
【0057】
これらの例において、各4D画像データセットを構成する3D画像フレームは、共通の解剖学的領域を表すが、それぞれ異なる空間的視点(viewpoint、perspective)から「観測される」か、又は撮像されるような領域を表す。
【0058】
複数の例において、2つの4D画像データセットは、例えば、解剖学的領域に対して異なる位置又は角度に位置決めされる1つ又は複数の撮像プローブから取り込まれるか、又は取得される画像データを含む。
【0059】
1つ又は複数の例によれば、2つの空間的視点に対応する視認方向は、少なくとも25度の角度だけ離れている。
【0060】
本発明の方法は、2つの4D画像データセットが、互いに対して大きい角度変位を有する異なる視点から取り込まれた画像データを含む場合に、特に有利な適用例を有する。そのような場合に、先行技術の方法では通常、結果としてレジストレーションに誤りが生じる。
【0061】
対照的に、本発明の方法は、動きベクトルを位置合わせさせるように、2つの画像データセットを最初に回転及び並進させる新規のプレレジストレーションステップによって、著しく改善された結果を達成することができる。この回転及び並進ステップは、最終変換ステップにおいて実行される更にきめ細かいアライメント調整の前に、視点間の任意の大きい角度変位が補正されるのを確実にする。
【0062】
1つ又は複数の例によれば、1つ又は複数の低減解像度画像データセットを生成することは、ローパス空間フィルタを用いて、4次元画像データセットを処理することを含む。これは、複数の例において、ガウシアンフィルタである。
【0063】
複数の例において、その方法は、超音波画像データ処理方法である。
【0064】
より詳細な例において、その方法は、心臓超音波画像データ処理方法である。
【0065】
そのような場合に、任意選択で、2つの4次元画像データセットによって表される共通の解剖学的領域は、心臓の心尖部四腔断層像(apical four-chamber view)によって包含される領域に対応する。
【0066】
心臓領域が撮像される場合、画像データセットの取り込みは、心臓周期に従って時間的に同期することが好ましい。2つの4D画像データセットの取り込みは、特定の例において、画像セットがそれぞれ同じ心拍位相において開始するように心電図同期(ECG gated)する。
【0067】
心尖部四腔断層像は技術用語であり、心臓の4つ全ての心室、心房(左右心室及び左右心房)が、結果として生じる画像データに取り込まれる視点を指している。
【0068】
本発明の更なる態様によれば、プロセッサを備える画像処理デバイスが提供され、
プロセッサは、
2つの異なる4次元画像データセットを取得することであって、各4次元画像データセットは共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、取得することと、
4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定することであって、3次元動きベクトルは、フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、特定することと、
それぞれの3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行することと、
2つの画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行することとを行うように構成される。
【0069】
本発明の更なる態様によれば、超音波撮像システムが提供され、超音波撮像システムは、
1つ又は複数の超音波トランスデューサユニットと、
プロセッサアセンブリとを備え、プロセッサアセンブリは、
1つ又は複数の超音波トランスデューサユニットから受信された信号データを処理して、2つの異なる4次元画像データセットを取得することであって、各4次元画像データセットは共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、取得することと、
4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定することであって、3次元動きベクトルは、フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、特定することと、
それぞれの3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行することと、
2つの画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行することとを行うように構成される。
【0070】
複数の例において、プロセッサアセンブリは単一のプロセッサを備えるか、又は、例えば、専用のタスクを実行する複数のプロセッサを使用する。詳細な例は、以下のセクションにおいて説明されることになる。
【0071】
1つ又は複数の例によれば、システムは2つの超音波トランスデューサユニットを備え、2つの異なる4次元画像データセットは、2つの超音波トランスデューサユニットの異なるユニットから受信される信号データを用いて取得される。好ましくは、使用時に、トランスデューサユニットは、それぞれの4次元画像データセットを収集するときに、解剖学的領域に対して異なる角度位置に位置決めされる。
【0072】
代替例では、システムは単一の超音波トランスデューサユニットを備え、2つの異なる4次元画像データセットは、異なるそれぞれの期間にわたって単一のトランスデューサユニットによって取り込まれた信号データを用いて取得される。再び、好ましい例において、使用時に、単一のトランスデューサユニットは、2つの4次元画像データセットを取り込むときに、解剖学的領域に対して異なる角度位置に位置決めされる。
【0073】
本発明(例えば、上記の処理方法)の一態様に関連して略述される例及び実施形態の特徴は、有利な実施形態において、更なる例における本発明の任意の他の態様と組み合わせられるか、又は他の態様に組み込まれる。
【0074】
ここで、本発明の特定の実施形態が、一例にすぎないが、添付の図面を参照しながら詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】本発明の1つ又は複数の実施形態による例示的な方法をブロック図の形で示す図である。
【
図2】2つの4次元画像データセットの取得の一例を示す概略図である。
【
図3】例示的な1組の異なる解像度の4D画像データセットの3Dフレームを通る2Dスライスを示す図である。
【
図4】3D画像フレームの例示的な3Dサブ領域の特定、及び連続するフレーム間のサブ領域の変位を示す図である。
【
図5】本発明の1つ又は複数の実施形態による、例示的な超音波撮像システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明は、2つの4次元画像データセットをレジストレーションするための画像データ処理方法を提供し、各4次元画像データセットは、3次元画像フレームの時系列を表す。その方法は、初期の「粗」アライメントステップを含み、そのステップでは、2つの画像データセットの画像コンテンツが、それぞれにおいて特定された支配的な動きベクトルを位置合わせさせるように相対的な回転及び並進を用いて処理され、支配的な動きベクトルは、時系列の経過にわたって最大空間変位を示す特定された3次元サブ領域の動きを示す3D動きベクトルである。
【0077】
本発明の実施形態は、少なくとも2つの画像データセットを処理して、それぞれの画像コンテンツのレジストレーションを達成するための方法を提供する。各画像データセットは、特定の解剖学的領域又はエリアを取り込む3次元画像「フレーム」の時系列を表す画像データを含む。これらの3Dフレームはそれぞれ、3Dボリュームと呼ばれる。3Dボリュームの完全な時系列は、4次元ボリューム(3つの空間次元+時間)と呼ばれる。このコンテキストにおいて、4Dボリュームは画像コンテンツそのものを指している。本開示における画像データセットの回転への参照は、4Dボリュームの回転、すなわち、それぞれの4Dボリュームの3D画像コンテンツの3次元における回転への参照であると見なされる。同じことが並進への参照にも当てはまる。これは、4Dボリュームの並進、すなわち、それぞれの4Dボリュームの3D画像コンテンツの3次元における並進を指している。
【0078】
【0079】
要するに、
図1の例示的な方法は以下のステップを含む。
【0080】
第一に、ステップ10において、2つの4D画像データセットが取得され、各4D画像データセットは3D画像フレームの時系列を含み、各4D画像データセットは共通の解剖学的領域を表す。このステップは、
図1において「2×4D」を付される。
【0081】
第二に、ステップ12において、画像データセットの複数の低減解像度バージョンを生成するために、各4D画像データセットが処理される。この複数の低減解像度バージョンは、画像データセットのスケール空間として知られている。このステップは
図1において「2×4D SS」を付される。
【0082】
第三に、ステップ14において、各データセットの4次元ボリューム内で、3Dボリュームフレームの系列にわたる最大空間変位を示す3次元サブ領域が特定される。その後、3D画像フレームの系列の経過にわたる最大変位サブ領域の動きを表す、3次元動きベクトルが特定される。このサブ領域及びベクトルは、最も解像度が低い画像データセットに関して特定され、その後、最も解像度が高いデータセット(元の4D画像データセット)に達するまで、中間の各低減解像度画像データセット間で繰り返しマッピングされる。最も解像度が低いレベルにおいて動きベクトルを求めることにより、ノイズに対するロバスト性が最大化される。複数の解像度レベルを通して上方に動きベクトルを繰り返しマッピングすることにより、解像度を下げることによって失われる精度が回復する。このステップは、
図1において「3D sub+3D Vec」を付される。
【0083】
第四に、ステップ16において、初期のプレレジストレーションアライメント手順が実行され、その手順では、それぞれの特定された支配的な3D動きベクトルを位置合わせさせるように、4D画像データセットの一方又は両方の3Dボリュームを回転及び並進させる。このステップは、
図1において「Rot」を付される。
【0084】
最後に、ステップ18において、(上記のような)選択された2D「スライス」からの正規化された2D画像の結合類似度スコアに基づいて、最適化プロセスを実行することによって、2つの画像データセットの最終レジストレーションが達成される。このステップは、
図1において「Reg」を付される。
【0085】
これらのステップが、ここで、
図2~
図4を参照しながら、以下に更に詳細に説明されることになる。
【0086】
第1のステップ10において、2つの4次元画像データセットが取得され、各4次元画像データセットは3次元画像フレームの時系列を含む。それゆえ、各画像データセットはそれぞれの4Dボリュームを表し、含まれる3Dフレームのそれぞれの視野内に共通の解剖学的領域が表されるか、又は包含される。
【0087】
2つの画像データセットは、使用時に異なる視点から共通の解剖学的領域を取り込むように配置される、例えば、撮像プローブの形をとる1組の2つの画像データ取得デバイスを用いて取得される。
【0088】
これが
図2に示されており、
図2は、一例として、患者の心臓40に対して異なる角度位置に配置される、患者34の人体上に位置決めされる一対の超音波撮像プローブ36a、36bを示す。
図2Bは、
図2Aの線A-Aに沿った、患者の胸部を通る断面図を示す。図示されるように、2つの超音波撮像プローブは、患者の心臓が各プローブの視野内にあるように位置決めされ、各プローブが心臓に対して異なる角度視点に配置される。
【0089】
有利な例では、第1の撮像プローブは、患者の心臓領域の心尖部四腔断層像を取り込むように位置決めされ、第2の撮像プローブは、胸骨傍長軸に位置合わせされるように位置決めされる。そのような1組の位置は、心臓領域を撮像するときに、撮像の細部及び特徴に関する特に有利な補完位置を達成する。いくつかの例において、2つの撮像プローブは、心臓の1つの領域、例えば、左心室又は僧帽弁のみを表す画像データを取り込むように配置される。
【0090】
2つの4D画像データセットを取り込むために、
図2の例において2つの撮像プローブが使用される。代替例では、2つの4D画像データセットを取り込むために、代替的には、単一の撮像プローブ(又は他の画像取得デバイス)が使用される。プローブは超音波撮像プローブであるか、又は異なる撮像モダリティを利用する。使用時に、撮像されている解剖学的領域に対して異なる場所に位置決めされるときに、2つの4D画像データセットを取り込むように、単一の撮像プローブが制御される。例えば、単一の撮像プローブは、
図2Bにおいてプローブ36aに関して示される位置に位置決めされるときに、第1の画像データセットを取得し、その後、撮像プローブ36bに関して示される位置に動かされ、第2の画像データセットを取り込む。
【0091】
2つの4次元画像データセットが取得されると、第2のステップ12において、画像データセットの複数の低減解像度バージョンを生成するために、各画像データセットが処理される。それぞれの場合の結果は、1組の3つ以上の4次元ボリューム(元の4Dボリュームを含む)であり、それぞれ元の4Dボリュームと同じ画像コンテンツからなるが、異なる(低減レベルの)画像解像度を有する。異なる低減解像度を有する画像データセット(4Dボリューム)のこの系列は「スケール空間」(4D SS)として知られている。
【0092】
1つの例示的な4D画像データセット(4Dボリューム)のための例示的なスケール空間が
図3に表される。そのスケール空間は、3レベルスケール空間である。
図3は、例示のために、当該の4Dボリュームの単一の3Dボリュームフレームだけのそれぞれのスケール空間レベルを示しており、3Dボリュームのそれぞれを通る特定の2Dスライスだけを用いて例示される。左端のスライスは、元の画像データセットを表す。2つの残りのスライスは、1組の2つの低減解像度画像データセットのそれぞれを表す。画像データセットは、左から右に向かって解像度が低下する。解像度が低下することに加えて、低減解像度画像データセットはそれぞれ、それぞれの解像度が高い方の画像データセットに対して、サイズも縮小される。
【0093】
低減解像度画像データセットのスケール空間は、ガウシアンフィルタのような空間フィルタを用いて、元の4D画像データセットの3Dボリュームを処理することによって生成される。
【0094】
複数の低減解像度画像データセットのスケール空間が生成されると、第3のステップ14において、4次元ボリューム内で、3Dボリュームフレームの系列にわたる最大空間変位を示す3次元サブ領域(3D sub)が特定される。その後、3D画像フレームの系列の経過にわたる最大変位サブ領域の動きを表す、3次元動きベクトル(3D Vec)が特定される。
【0095】
最大変位サブ領域及び関連付けられる3D動きベクトルの特定は、いくつかのサブステップを含む。
【0096】
最初に、最大空間変位を示す3Dサブ領域が、最も解像度が低い4D画像データセット(最も解像度が低い4Dボリューム)内で特定され、関連付けられる3D動きベクトルも特定される。これは、その後、スケール空間の異なるレベルを通して(すなわち、異なる解像度レベルの4Dボリュームを通して)上方にプロパゲーション(マッピング)される。最も低い解像度(粗い)レベルにおいて検出を開始することによって、そうでなければ通常、3D又は4Dボリュームに影響を及ぼすことになっていたノイズアーティファクト(一般に、結果として画像が粗く見えるようになる)に対して、より高いロバスト性が提供される。その後、特定された動きサブ領域及び3D動きベクトルを最も低い(粗い)解像度レベルから最も高い(細かい)解像度レベルまでプロパゲーションすることによって、改善されたノイズロバスト性を損なうことなく、引き続き精度及び鮮明度が保持される。
【0097】
この例に従って最大変位の3Dサブ領域を特定することは、以下のサブステップを含む。
【0098】
最初に、最も解像度が低い4次元画像データセットが選択され、4D画像データセットの最初の3D画像フレーム(3Dボリューム)が選択される。このフレームは、全ての候補「ピーク位置」を特定するために、立方体ウィンドウ(例えば、7ピクセル×7ピクセル×7ピクセル)を用いてスキャンされる。ピーク位置は局所的な強度ピークの位置を意味し、これはいくつかの構造的な、又は少なくともグラフィカルな特徴を表し、4D画像データセットの全経過を通してのその動きが、4Dデータセットの経過にわたる画像フレーム内の最大変位のサブ領域を特定するようになる。
【0099】
所定の強度しきい値を用いて、候補ピーク位置が特定される。この場合、ピーク位置は、その強度レベルが所定のしきい値を超える画像フレーム内の全ての点として特定される。
【0100】
全ての候補ピーク位置が見つけられると、最も解像度が低い4D画像データセット内に含まれる3D画像フレームの系列の経過にわたって、その動きが追跡される。これは、それぞれの立方体ウィンドウの中心位置を追跡することによって実行され、各立方体ウィンドウは、ピーク位置のそれぞれが立方体ウィンドウ内の中心に位置し続けるように、その動きが更新される。その後、3D画像フレームの系列の経過にわたるその変位が最も大きいウィンドウが特定され、その後、このウィンドウ内に包含されるサブ領域が、最大空間変位の3Dサブ領域として特定される。
【0101】
その後、3Dフレームの系列の経過にわたるこの特定された支配的な動きサブ領域の変位(例えば、最大変位サブ領域に対応する立方体ウィンドウの中心位置の変位)に従って、3次元動きベクトルが求められる。
【0102】
動きベクトルを求めることは、最大変位サブ領域の変位に対応するベクトルを単に構成することを含む。例えば、4Dボリュームの3D座標空間(すなわち、4D画像データセットのフレームの3D座標空間)内のサブ領域の座標位置ベクトルが、フレームの系列(又は適用可能な場合、その一部)の始点及び終点ごとに特定され、2つを単に減算して、変位ベクトルが導出される。
【0103】
最も解像度が低い4D画像データセット(4Dボリューム)内の最大変位サブ領域及び対応する最大変位ベクトルがこのようにして求められると、元の4D画像データセットに達するまで、その後、このサブ領域及びベクトルは、より解像度が高い複数の画像データセットを通して上方にプロパゲーションされる。「プロパゲーションされる」は、特定されたサブ領域及び3次元動きベクトルが、その両方が最も解像度が高い4Dボリュームに、すなわち、当初に取得された4D画像データセットの3Dフレームにマッピングされるまで、最も解像度が低い4Dボリュームから次に解像度が低い4Dボリュームに、そしてその後も同様に次々にマッピングされることを意味する。
【0104】
図3の例の場合、スケール空間は3つのレベルのみを有する。それゆえ、この場合、3D最大変位サブ領域及び3D動きベクトルは、中間解像度の4Dボリュームに一度、その後、元の4Dボリュームにもう一度の、二度しかマッピングする必要がない。
【0105】
マッピングは、複数の実施形態において、サブ領域が次の4Dボリュームにマッピングされる度に、特定された最大変位サブ領域に対応する立方体ウィンドウのサイズを最初に拡大することによって達成される。サイズ拡大は、2つの4Dボリュームの3Dフレーム間のサイズ差に比例する。複数の例において、ウィンドウのサイズは、
図3の場合のような3レベルスケール空間の場合に、例えば7×7×7ピクセルから、14×14×14ピクセルに、そして28×28×28ピクセルに、毎回倍増する。
【0106】
解像度が低い画像データセットと同様に、サイズ拡大に加えて、同じピーク値を中心とするようにウィンドウの位置が調整される。このようにして、その方法は、解像度が低い方の4Dボリュームの3Dフレーム内の最大変位のサブ領域に対応するサブ領域を、解像度が高い方の4Dボリュームの3Dフレーム内で実効的に特定する。特定された3D動きベクトルも、最も解像度が高い4Dボリュームに上方にマッピングされる。
【0107】
このようにして、元の4D画像データセットによって含まれる3D画像フレームの系列内の最大変位の3Dサブ領域が、対応する3D動きベクトルとともに特定され、ノイズに対するロバスト性が改善される。
【0108】
例示のために、
図4は、心臓の心尖部四腔断層像を表す4Dボリュームに関する例示的な検出された3D動きベクトル(図示される所与の3Dフレームの例示的な2Dスライス)を示す。
【0109】
2つの取得された4D画像データセットごとに、上記で略述された手順が次々に実行され、それにより、4D画像データセットごとのそれぞれの3D動きベクトルが特定される。
【0110】
各4D画像データセット内の最大変位のサブ領域の動きに対応する3次元動きベクトルが特定されると、その方法は、第4のステップ16において、初期のプレレジストレーションアライメント手順を実行することを含み、その手順では、それぞれの特定された支配的な3D動きベクトルを位置合わせさせるように、4D画像データセットのうちの一方又は両方の3Dボリュームを回転及び並進させる(Rot)。位置合わせさせることは、それぞれの3D動きベクトルを少なくとも実質的に平行にし、かつ互いに一致させることを含む。
【0111】
このようにして、2つの4D画像データセットの3Dボリュームの「粗」アライメントが達成され、その後、より正確なレジストレーションが実行される。この初期の回転及び並進アライメントステップの実行は新規の手法であり、2つの4D画像データセットが適度に大きい角度変位だけ離れている視点に対応する場合に特に、レジストレーション結果に関して著しく改善された精度をもたらすことがわかった。
【0112】
2つの画像データセットの動きベクトルを位置合わせする回転及び並進後に、位置合わせされた3D動きベクトル軸の周りの周方向において、依然として若干の回転アライメント不良がある。
【0113】
これは、2つの画像データセットの1つ又は複数の3D画像フレームの2つの2Dスライスを用いて、正規化2D画像強度マッチング手順を実行することによって、サブステップにおいて修正され、2つのスライスは互いに垂直であり、位置合わせされた3D動きベクトルの中央位置を横切るように配置される。これらの2Dスライスの強度マッチングを実行することによって、円周(すなわち、方位角)アライメントを改善することができる。
【0114】
この時点までに実行されるアライメントステップは、3×3回転行列及び3×1並進ベクトルによって表される。これらによって具現される全体的な変換は通常、最終の正確なレジストレーション解に近く、(以下に説明される)最終ステップにおいて実行されることになる完全最適化プロセスを確実に収束させるための重要な手順を提供する。
【0115】
その方法の最終ステップ18において、選択された2D「スライス」からの正規化された2D画像の結合類似度スコアに基づいて最適化プロセスを実行することによって、2つの画像データセットの最終レジストレーション(Reg.)が達成される。
【0116】
通常、その手順は、各4D画像データセットの3D画像フレーム(3Dボリューム)ごとに3つの直交する2Dスライスを選択することを含む(2つのデータセットごとに選択されるスライスが対応する)。その後、2つの画像データセット内の対応する平面間の類似度の指標又は尺度が求められる。その後、3つの2Dスライスに関する類似度の和として、結合類似度指標が求められる。
【0117】
その方法の最終ステップは、結合類似度(コスト関数)を最大化するために、2つの4Dボリュームの相対的な向きを最適化する。
【0118】
このステップでは、その方法において早期に構成されたスケール空間も使用される。詳細には、最適化は最も解像度が低い4D画像データセットのフレームに関して実行され、その後、その結果が最も解像度が高い画像データセットに上方にプロパゲーションされる(例えば、座標アライメントが最も解像度が高い画像データセットに上方にプロパゲーションされる)。しかしながら、これは任意選択である。最適化手順は、元の取り込まれた画像データセット、すなわち、最も解像度が高い画像データセットに関して単に実行されてもよい。
【0119】
最終ステップは、2つの4Dボリュームの結合又はフュージョンを達成するために、特定の先行技術の方法において単独で使用される。しかしながら、そのアルゴリズムはそのような場合に、通常、不正確な結果をもたらすか、又は場合によってはいかなる結果も返さない。
【0120】
本発明によれば、最初に、各4Dボリュームにおいて支配的な動きサブ領域を検出し、3D動きベクトルに基づいて、初期の粗アライメント手順を実行することによって、最終最適化ステップは、その後に4Dボリュームの最終アライメント(レジストレーション)及びフュージョンを取得するための良好な開始点を与えられる。
【0121】
上記の例において、2つの撮像プローブから2つの画像データセットが直接取得されるが、他の例では、2つの画像データセットは、それらが記憶されるメモリ記憶装置、例えば、外部コンピュータ、メモリ又はデータ記憶装置からダウンロードされるか、又は通信チャネル若しくはリンクを介して、別のやり方で受信される。データセットは、例えば、ネットワーク接続を介して、例えば、リモートサーバから受信される。
【0122】
本発明の実施形態は、解剖学的領域の異なる空間的視点を表す画像データセット間のレジストレーションが要求される場合に特に有利に適用され、その視点は、大きい角度変位だけ離れている視認方向に対応する。例えば、その方法は、2つの空間的視点に対応する視認方向が少なくとも25度の角度だけ離れているときに特に有利である。
【0123】
これは、後に最適化手順を実行するのに先行して、新規のプレレジストレーションアライメントステップ16が実際に、これらの大きい角度変位を少なくとも部分的に補正するためである。
【0124】
上記で略述された例において、最大変位のサブ領域及び対応する動きベクトルを特定することは、1組の低減解像度画像データセットを最初に導出することに基づいて実行されるが、これは不可欠ではない。代替例では、そのサブ領域及び動きベクトルは、元の(高解像度の)画像データセット内で直接特定される。
【0125】
更に、上記の例において、複数の低減解像度画像データセットが生成されるが、更なる例では、代わりに、単一の低減解像度画像データセットが生成される。そのような例によれば、最大変位サブ領域及び最大変位ベクトルは、その低減解像度画像データセットに基づいて求められ、その後、元の4D画像データセットに直接マッピングされる。
【0126】
上記の例では、2つの4D画像データセットが取得され、レジストレーションされるが、更なる例では、その方法は、3つ以上の画像データセットのレジストレーションを達成するように拡張される。そのような場合、4D画像セットごとに、最大変位のそれぞれのサブ領域及び対応する3D動きベクトルが導出される。全てのデータセットのそれぞれの3D動きベクトルを位置合わせさせるように、全てのデータセットの全ての3Dフレームの相対的な回転及び並進が実行される。各4D画像データセットから選択されるスライス間で計算された類似度スコアを考慮に入れて、その後、最終ステップ18の最適化手順が最終的に実行される。
【0127】
本発明による更なる態様は、上記で略述された方法を実行するように構成されるプロセッサを備える画像データ処理デバイスを提供する。プロセッサは、要求される機能を実行するソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを利用する。種々の実施態様において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリのような1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ上で実行されるときに、要求される機能を実行する1つ又は複数のプログラムで符号化される。種々の記憶媒体がプロセッサ内に固定されるか、又は移送可能であり、そこに記憶される1つ又は複数のプログラムをプロセッサにロードすることができる。
【0128】
本発明の更なる態様による例は、超音波撮像システムを提供する。一例が
図5に示される。
【0129】
そのシステムはプロセッサアセンブリ50を備え、プロセッサアセンブリに、超音波撮像プローブの形をとる2つの超音波トランスデューサユニット36a、36bが動作可能に結合される。
【0130】
プロセッサアセンブリ50は、
1つ又は複数の超音波トランスデューサユニット36a、36bから受信された信号データを処理して、2つの異なる4次元画像データセットを取得することであって、各4次元画像データセットは、共通の解剖学的領域の3次元画像フレームの時系列を表す画像データを含む、取得することと、
4次元画像データセットごとに、それぞれの3次元動きベクトルを特定することであって、3次元動きベクトルは、フレームのそれぞれの時系列の少なくとも一部にわたる最大空間変位を示す、特定された3次元サブ領域の動きを示す、特定することと、
それぞれの3次元動きベクトルを位置合わせさせるように、4次元画像データセットの一方又は両方の回転及び並進を実行することと、
2つの画像データセットを空間的にレジストレーションさせるような、画像レジストレーション手順に基づいて、位置合わせされた3次元動きベクトルを有する画像データセットの一方又は両方の更なる変換を実行することとを行うように構成される。
【0131】
超音波トランスデューサユニット36a、36bはそれぞれ、超音波振動を生成するための1つ又は複数の超音波トランスデューサを含む。1つ又は複数のトランスデューサユニットはそれぞれ、超音波トランスデューサアレイを備える。トランスデューサユニットは、患者の体内に超音波信号を送信し、エコー信号を検知するように構成される。エコー信号は、信号プロセッサによって処理され、それにより、4D画像データセットが生成される。
【0132】
複数の例において、プロセッサアセンブリ50は単一のプロセッサを備えるか、又は、例えば、それぞれが専用タスクを実行するための複数のプロセッサを使用する。
【0133】
図5の例では、そのシステムは2つの超音波トランスデューサユニット36a、36bを備える。この例によれば、2つの異なる4次元画像データセットは、2つの超音波トランスデューサユニットのうちの異なる超音波トランスデューサユニットから受信された信号データを用いて取得される。2つのトランスデューサユニットは、
図2に示されるように、撮像されている解剖学的領域に対して異なる場所に位置決めされる。
【0134】
しかしながら、代替例では、そのシステムは単一の超音波トランスデューサユニットを備え、2つの異なる4次元画像データセットは、異なるそれぞれの期間にわたって単一のトランスデューサユニットによって取り込まれた信号データを用いて取得される。トランスデューサユニットは、例えば、2つの4D画像データセットを取り込む合間に、撮像されている解剖学的領域に対して異なる場所に動かされる。例えば、トランスデューサユニットは、複数の例において、第1の画像データセットを取り込むときには、
図2のプローブ36aの位置に、第2の画像データセットを取り込むときには、プローブ36bの位置に位置決めされる。
【0135】
当業者は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲を調べることから、特許請求される本発明を実施する際に、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、達成することができる。特許請求の範囲において、「備える、有する」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は、複数を除外しない。互いに異なる従属請求項において特定の指標が列挙されるという事実だけで、利益を得るためにこれらの指標の組合せを使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。