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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】オキサミド官能性シロキサンの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/26 20060101AFI20220104BHJP
   C08G 77/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08G77/26
C08G77/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020548668
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2018070598
(87)【国際公開番号】W WO2020025100
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュットル,カーチャ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516515(JP,A)
【文献】特表2013-516514(JP,A)
【文献】特表2013-516517(JP,A)
【文献】特表2010-530873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00 - 77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ-オキソ-アセテート-官能性オルガノシロキサンを調製する方法であって、
(A) 一般式(I)のシランを
【化1】
(B) 以下から選択されるシロキサン
(B1) 以下の一般式の直鎖状シロキサン
HO[SiRO]H(II)
及び
(B2) 以下の一般式の環状化合物
(SiR O)(III)
[式中、
Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、又はヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、ヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
Yは、同一でも異なっていてもよく、酸素原子によって割り込まれ得る二価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、Si結合したハロゲン原子、Si結合したヒドロキシ基、又はヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を示し、
nは、0、1又は2であり、
sは、3~10の整数であり、
tは、1を超える整数である。]
と(C)触媒の存在下で反応させることによってアミノ-オキソ-アセテート-官能性オルガノシロキサンを調製する方法。
【請求項2】
成分(B)が直鎖状シロキサン(B1)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(B)が、成分(A)の1重量部に基づいて、10~200重量部の量で使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒(C)が、リン含有触媒であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒(C)が、成分(A)及び(B)の総量に基づいて、10~10000重量ppmの量で使用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
保護ガス下で行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
0~250℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
10hPa~2000hPaの間の圧力で行われることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
調製したシロキサンが1000g/mol~200000g/molの平均分子量(数平均M)を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキサミド官能性シロキサンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサミド官能性ポリシロキサンは、多くの適用分野で使用可能であるが、特に例えばEP-A1963404号に記載されているように、熱可塑性シロキサンのブロックコポリマーの製造のために使用可能である。このようなオキサミド官能性シロキサンの調製は概ね知られており、US-A2007/0149745号に記載されている。この場合、使用される出発生成物は、種々の方法によって調製することができるビスアミノアルキル官能性シロキサンである。これらのビスアミノアルキル官能性シロキサンは、好ましくは、過剰に存在するシュウ酸ジアルキルと反応させて、所望の置換アミノ-オキソ-アセテート-官能性シロキサン(以下、より簡単には、オキサミド官能性シロキサンと呼ぶ)を得る。これらの生成物のさらなる反応のために、反応混合物中に存在する過剰のシュウ酸ジアルキルも一般に除去しなければならず、これはここでは主に不連続真空蒸留によって行われる。しかし、記載された方法にはいくつかの欠点がある。例えば、オキサミド官能性シロキサンの官能化の程度は、主に、原料として使用されるビスアミノアルキルシロキサンの官能化の程度に依存するが、99%を超える官能性で調製することができるのは比較的大きな労力をかけたときだけである。さらに、二次反応を避けるために、添加されたシュウ酸ジアルキルを比較的大きな過剰で使用する必要があるが、これらのシュウ酸ジアルキルは、場合によっては毒性があるため、結果として複雑で費用のかかる除去を必然的に伴う。第3の主な欠点は、例えばシュウ酸ジエチルのような市販のシュウ酸ジアルキルもまた、ビスアミノ官能性シロキサンと反応させた場合に時に非常に強く着色された生成物をもたらす不純物を含むという事実である。この生成物は、さらなる使用が光学的に透明で無色の生成物を必要とする場合には、それ以降の工程で時間と労力をかけて脱色しなければならない。さらなる欠点は、高分子量オキサミド官能性シロキサンを調製する場合、対応する高分子量アミノシリコン前駆体を使用することであり、この前駆体の高粘度のために、特に反応器の充填に長い充填時間が必要となり、それゆえ長い稼働停止時間が必要となり、これらの生成物を調製するためのコストが不必要に増加する。同様に、異なる鎖長のオキサミド官能性シロキサンの調製のためには、対応するアミノシロキサン前駆体が入手可能であることが必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第1963404号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0149745号明細書
【発明の概要】
【0004】
そこで、できるだけ単純で迅速な方法で高度の官能化を有する高純度のオキサミド官能性ポリジメチルシロキサンを得るための簡単なルートを求めた。
【0005】
驚くべきことに、アミド又はエステル基のような化学反応性基が存在するにもかかわらず、平衡反応を触媒するのに非常に少ない量の触媒のみで十分な、酸又は塩基触媒による平衡反応によって、所望のオキサミド官能性ポリジメチルシロキサンを調製することが可能であることが見出された。
【0006】
本発明は、
(A) 一般式(I)のシランを
【0007】
【化1】
(B) 以下から選択されるシロキサン
(B1) 以下の一般式の直鎖状シロキサン
HO[SiRO]H(II)
及び
(B2) 以下の一般式の環状化合物
(SiR O)(III)
[式中、
Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、又はヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、ヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
Yは、同一でも異なっていてもよく、酸素原子によって割り込まれ得る二価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよい炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、Si結合したハロゲン原子、Si結合したヒドロキシ基、又はヘテロ原子、好ましくは酸素原子によって割り込まれ得る一価の置換されていてもよいSiC結合した炭化水素基を示し、
は、同一でも異なっていてもよく、水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を示し、
nは、0、1又は2、好ましくは2であり、
sは、3~10、好ましくは4又は5の整数であり、
tは、1を超える整数、好ましくは8~150の整数である。]
と(C)触媒の存在下で反応させることによってアミノ-オキソ-アセテート-官能性オルガノシロキサンを調製する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
炭化水素基Rの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基、及び2,2,4-トリメチルペンチル基のようなイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル、1-プロペニル及び2-プロペニル基などのアルケニル基、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基などのアルカリル基、ベンジル基又はα-及びβ-フェニルエチル基などのアラルキル基が挙げられる。
【0009】
置換炭化水素基Rの例は、クロロメチル、3-クロロプロピル、3-ブロモプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル及び5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル基並びにクロロフェニル基などのハロゲン化炭化水素基、ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基、又はグリシジルオキシプロピル基などのエポキシド基である。
【0010】
言及すると、基Rは、ハロゲン原子又はヒドロキシ基によって置換されていてもよく、1~20個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、好ましくは1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、特にメチル、エチル又はプロピル基、非常に特に好ましくはメチル基を示す。
【0011】
基Rの例は基Rに対し明記された基である。
【0012】
言及すると、基Rは、ハロゲン原子又はヒドロキシ基により置換されていてもよく、1~20個の炭素原子を有するSiC結合した炭化水素基、好ましくは1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、特にメチル、エチル又はプロピル基、非常に特に好ましくはメチル基である。
【0013】
基Rの例は、基Rに対し明記された基であり、また炭素原子により結合したポリアルキレングリコール基でもある。
【0014】
基Rは、好ましくは炭化水素基、特に1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0015】
基Rの例は、基Rに対し明記された基であり、また炭素原子により結合したポリアルキレングリコール基でもある。
【0016】
基Rは、好ましくは炭化水素基、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル基、エチル基又はプロピル基である。
【0017】
基Rの例は、基Rに対し明記された基である。
【0018】
好ましくは、基Rは、ハロゲン原子又はヒドロキシ基により置換されていてもよく、1~20個の炭素原子を有するSiC結合した炭化水素基、好ましくは1~6個の炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、特にメチル、エチル又はプロピル基、非常に特に好ましくはメチル基である。
【0019】
調製方法の結果、基Rはまた、Si結合したハロゲン原子、好ましくは塩素原子、又はSi結合したヒドロキシ基を表すことができる。調製方法の結果として、シロキサン(B2)は、好ましくは、シロキサン(B2)の総重量に基づいて、最大で500重量ppmの量でヒドロキシ基と同一の基Rを含む。
【0020】
基Yの例は、ハロゲン原子により置換されていてもよい脂肪族飽和又は不飽和の直鎖又は分枝基である。
【0021】
基Yは、置換されていてもよい、特に塩素又はフッ素によって置換されていてもよい3~6個の炭素原子を有するアルキレン基であることが好ましい。基Yは、好ましくはプロピレン又はブチレン基、特にプロピレン基である。
【0022】
基Rの例は、基Rに対し明記された基である。
【0023】
言及すると、基Rは、水素原子、又は-CN又は-ハロゲンにより置換されていてもよい炭化水素基であり、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、特に好ましくは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基であり、特に水素原子、メチル又はエチル基であり、非常に特に好ましくは水素原子である。
【0024】
本発明に従って使用されるシラン(A)の例は、Et-O-CO-CO-NH-C-SiMe-OMe、Et-O-CO-CO-NH-C-SiMe-OEt、Me-O-CO-CO-NH-C-SiMe-OEt、Me-O-CO-CO-NH-C-SiMe-OMe、Et-O-CO-CO-NH-C-SiMe-(OMe)、Et-O-CO-CO-NH-C-SiMe-(OEt)、Me-O-CO-CO-NH-C-SiMe-(OMe)、Me-O-CO-CO-NH-C-SiMe-(OEt)、Et-O-CO-CO-NH-C-Si-(OMe)、Et-O-CO-CO-NH-C-Si-(OEt)、Me-O-CO-CO-NH-C-Si-(OMe)、Me-O-CO-CO-NH-C-Si-(OEt)であり、ここでMeはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。
【0025】
本発明に従って使用されるシラン(A)は、好ましくは10~100℃の間及び1013hPaの圧力で液体であるものであり、特に好ましくは10~50℃の間及び1013hPaの圧力で液体であるものである。
【0026】
本発明に従って使用されるシラン(A)は、好ましくは100未満、特に好ましくは10未満であるAPHA色数を有する。
【0027】
本発明に従って使用されるシラン(A)は、ケイ素化学において一般的である方法によって調製することができる。
【0028】
調製方法の結果として、シラン(A)は、この場合、例えばアミノ-オキソ-アセテート官能性シラノールなどの不純物と共に混合物中に存在してもよい。本発明に従って使用されるシラン(A)は、好ましくは90重量%の純度、特に好ましくは99重量%を超える純度、特に99.5重量%を超える純度を有する。
【0029】
本発明との関連で、APHA数は、DIN ISO 6271-2に従って、好ましくはHach-Lange社のLICO500機によって決定される。ここでは、APHA測定値は、色だけでなく、さらに測定された生成物の濁度値も考慮に入れている。
【0030】
本発明に従って使用されるシロキサン(B1)の例は、(HO)MeSiO[SiMeO]45SiMe(OH)、(HO)MeViSiO[SiMeO]30SiMeVi(OH)及び(HO)MeSiO[SiMeO]15[SiMeVi]OSiMe(OH)であり、ここで、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、Viはビニル基を示す。
【0031】
本発明に従って使用される成分(B1)は、好ましくは脂肪族置換基を有する直鎖状シロキサンである。
【0032】
本発明に従って使用される成分(B1)は、いずれの場合も25℃で測定される、好ましくは5~10000mPas、特に好ましくは10~400mPas、非常に特に好ましくは15~150mPasの粘度を有する。
【0033】
ここで、粘度はDIN 53019に従って決定される。
【0034】
調製方法の結果、本発明に従って使用されるシロキサン(B1)は、好ましくは1%まで、特に好ましくは1000ppmまでのモル比率の分岐、すなわち、T及び/又はQ単位を有していてもよく、特には、それらはいかなる分岐も有さない。
【0035】
調製方法の結果、シロキサン(B1)はさらに、例えば水のような不純物と共に混合物中に存在していてもよい。本発明に従って使用されるシロキサン(B1)は、好ましくは80重量%の純度、特に好ましくは90重量%を超える純度、特に99重量%を超える純度を有する。
【0036】
有機ケイ素化合物(B1)は市販の製品であるか、又はケイ素化学で一般的な方法で調製することができる。
【0037】
本発明に従って使用されるシロキサン(B2)の例は、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン及びそれらの混合物である。
【0038】
本発明に従って使用される成分(B2)は、好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサンであり、特に好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサンである。
【0039】
調製方法の結果、本発明に従って使用されるシロキサン(B2)は、好ましくは1%まで、特に好ましくは1000ppmまでのモル比率の分枝、すなわち、T及び/又はQ単位を有していてもよく、特には、それらはいかなる分枝も有さない。
【0040】
有機ケイ素化合物(B2)は市販の製品であるか、又はケイ素化学で一般的な方法で調製することができる。
【0041】
本発明による方法では、直鎖状シロキサン(B1)、環状化合物(B2)又はそれらの混合物が成分(B)として使用される。成分(B)は好ましくは直鎖状シロキサン(B1)である。
【0042】
シロキサン(B)と成分(A)との間の質量比は、本発明による方法において広い範囲内で変化し得、本発明による方法によって調製されるべき化合物の所望の分子量によって主に決定される。
【0043】
本発明による方法では、成分(B)は、いずれの場合も成分(A)1重量部に基づいて、好ましくは10~200重量部、特に好ましくは30~150重量部の量で使用される。
【0044】
使用することができる触媒(C)は、強酸又は強塩基などの、先に記載された平衡化方法において使用することができる同じ触媒である。使用される触媒(C)は、方法の条件下で固体の形態であってもよく、液体の形態であってもよい。
【0045】
触媒(C)は、好ましくは、HCl、硫酸、スルホン酸若しくは他のホスホニトリルクロリド(PNCl)又はそれらのオリゴマー若しくはポリマー類似体、又は他の強塩基、例えばNaOH、KOH、CsOH、RbOH、水酸化アンモニウム若しくは他のホスファゼン塩基、例えばt-BuP4塩基(シュベジンガー(Schwesinger)塩基)である。
【0046】
触媒(C)は、好ましくは、リン含有触媒、例えば、ホスファゼン塩基又はホスホニトリルクロリド(PNCl)である。
【0047】
触媒(C)は、いずれの場合も成分(A)及び(B)の総量に基づいて、好ましくは10~10000重量ppm、特に好ましくは10~2000重量ppmの量で使用される。
【0048】
本発明による反応の終了後、触媒(C)は、最終生成物の性質、使用量又は意図される用途に応じて、中和された形態又はさもなければ中和されていない形態のいずれかで最終生成物中に残ることができるか、又は塩基性酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は塩基性塩(例えば、炭酸塩又は炭酸水素塩)への吸着などの知られた方法によって中和することができ、任意選択的に濾別することができる。
【0049】
本発明による方法は、溶媒(D)の存在下又は非存在下で実施することができる。溶媒(D)を使用する場合、それらは好ましくは非プロトン性溶媒、特に好ましくは0.1MPaで80~160℃の沸点範囲を有する非プロトン性溶媒又は溶媒混合物である。「溶媒」という名称は、全ての反応成分がその中に溶解しなければならないことを意味するものではない。溶媒(D)の存在は、とりわけ、それらが技術的手段でより容易に運ばれるか、又はポンプで注入され得るように、所望の最終生成物の粘度を低下させるために役立つことができる。
【0050】
任意選択的に使用される非プロトン性溶媒(D)の好ましい例は、例えばヘキサン、ヘプタン又はデカンなどの脂肪族炭化水素、例えばトルエン又はキシレンなどの芳香族炭化水素、及び例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル及びメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)などのエーテルである。
【0051】
溶媒(D)が本発明による方法で使用される場合、その量は、好ましくは反応混合物の十分な均質化を保証するのに十分でなければならない。
【0052】
溶媒(D)が本発明による方法で使用される場合、関与する量は、いずれの場合も使用される全ての成分の総重量に基づいて、好ましくは20~80重量%、特に好ましくは20~50重量%である。好ましくは、本発明による方法で溶媒(D)は使用されない。
【0053】
本発明による方法において、使用される物質の総量中の成分(A)~(D)の割合は、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%である。
【0054】
本発明による方法では、成分(A)~(D)及び存在する可能性があるその任意の調製関連不純物以外に、好ましくはさらなる成分は使用されない。
【0055】
本発明による方法の好ましい一実施形態では、(A)式(I)のシラン(式中、Rはメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、Rは水素原子であり、nは2であり、Yは-C-であり、Rはエチル基である)を、式(II)の(B1)直鎖状シロキサン(Rはメチル基であり、tは25~40の整数である)と触媒(C)の存在下で反応させる。
【0056】
本発明の方法で使用される成分は、いずれの場合もこの種の成分の1種であってもよいし、さもなければ特定の成分の少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0057】
本発明による方法において、使用される反応物は、今日まで知られている任意の所望の方法で互いに混合することができる。成分(A)、(B)、(C)及び任意選択的に(D)を混合する際の順序は重要ではないが、実際には触媒(C)を他の成分の混合物に好ましくは最後に加えることが有益であることが証明されている。触媒(C)は、特に触媒(C)の正しい計量を容易にするために、溶媒(D)中又は成分(A)及び(B)のうちの1つ、好ましくは成分(B)中の予備混合物としてここに添加することもできる。
【0058】
本発明による方法は、好ましくは、窒素又はアルゴンのような保護ガス下、特に好ましくは窒素下で実施される。
【0059】
本発明による方法を実施するための適切な反応器の選択は、本質的に、使用される反応物の粘度及び予想される生成物の粘度によって決定される。従来の撹拌槽の他に、高分子生成物の場合、とりわけ、方法を実施するための混練機を使用することもここでは可能である。
【0060】
本発明による方法は、好ましくは0~250℃の間、特に好ましくは40~150℃の間、非常に特に好ましくは50~120℃の間の温度で実施される。同時に、本発明による方法は、好ましくは10hPa~2000hPaの間の圧力で行われるが、特に好ましくは100hPa~1100hPaの間の圧力、特に周囲大気の圧力、すなわち900~1100hPaで行われる。
【0061】
反応が完了した後、こうして得られた生成物混合物は、それ自体が知られている方法で後処理される。例えば水又は他の環状シロキサンのような、本発明による方法で生成する可能性のある縮合生成物は、好ましくは高温及び/又は減圧で除去される。
【0062】
本発明により得られる生成物混合物中に残存する可能性のある環状シロキサン生成物の量は、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満、非常に特に好ましくは0.1重量%未満である。特に、n=3~5である一般式(III)の低分子量環状シロキサンは、先行技術で知られている温度及び圧力での下流の連続又は不連続真空蒸留によって除去することができる。
【0063】
本発明による方法は、バッチ式、半連続式又は完全連続式で実施することができる。
【0064】
本発明による方法は、官能性シロキサンを生成し、それらは、例えば、羊毛、綿又は織物のような繊維の被覆に使用されるか、又は革製品の被覆に使用されるか、又は機械工学における潤滑剤として使用され得る。さらに、本発明により調製される官能性シロキサンはまた、ポリマーの製造において、又はポリマーの改質において使用され得る。
【0065】
本発明により調製されるシロキサンは、好ましくは0~100、特に好ましくは0~20、非常に特に好ましくは0~10のAPHA色数を有する。
【0066】
本発明により調製されるシロキサンは、好ましくは1000g/mol~200000g/mol、特に好ましくは2500g/mol~50000g/mol、非常に特に好ましくは10000~45000g/molの平均分子量(数平均M)を有する。
【0067】
最終生成物の平均分子量(数平均M)は、ここでは主として本発明に従って使用される反応物の特定の比率によって決定される。
【0068】
本発明との関連で、数平均モル質量Mは、流速1.2ml/分で60℃のTHF中のポリスチレン標準物質に対してするサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、及び注入容量100μlを用いる米国Waters社製のStyragel HR3-HR4-HR5-HR5カラムセット上のRI(屈折率検出器)による検出によって決定される。
【0069】
本発明による方法は、単純な出発生成物を使用できる可能性をもって、簡便かつ迅速に実施できるという利点がある。
【0070】
本発明による方法は、アルキルオキサラトアミノアルキル官能性シロキサン(オキサミド官能性シロキサン)が、特に濁り及び黄変することなく、高純度で得られるという利点を有する。
【0071】
本発明による方法は、さらに、容易に入手可能で、好都合で、容易に処理できる反応物をここでは使用できるという利点を有する。
【実施例
【0072】
以下に述べる例では、特に断らない限り、特定された部及びパーセントは全て重量に関係している。加えて、全ての粘度データは、25℃の温度及び1s-1のずり速度に関係している。特に断らない限り、周囲大気の圧力、すなわち約1010hPa、及び室温、すなわち約20℃で又は追加の加熱又は冷却なしに室温で反応物を混合するときに確立される温度で、以下の実施例を実施する。
【0073】
保護ガスとして窒素存在下で以下の実施例を行う。
【0074】
実施例に明記されている分子量は、数平均分子量Mである。副生成物の含有量及び平均分子量MをNMR分光法で評価する。ここでは、平均鎖長、残留Si-OH含有量、環の含有量及び二量体副生成物の含有量を29Si NMRにより決定した。
【0075】
粘度は、Anton-Paar社のコーンプレート粘度計を用いて測定した。
【0076】
Meはメチル基を示す。
【0077】
以下の反応物を用いる。
【0078】
<シラン1>:
【0079】
【化2】
【0080】
<シラン2>:
【0081】
【化3】
【0082】
<シロキサン1>:
2408g/molの平均分子量M及び370ppmの含水率を有するビスヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンHO[SiMeO]32.3H。
【0083】
<シロキサン2>:
802g/molの平均分子量M及び430ppmの含水率を有するビスヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンHO[SiMeO]10.6H。
【0084】
<シロキサン3>:
10696g/molの平均分子量M及び220ppmの含水率を有するビスヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンHO[SiMeO]144.3H。
【0085】
<シロキサン4>:
オクタメチルシクロテトラシロキサン(SiMeO)、蒸留済、含水率<40ppm。
【0086】
<触媒1>:
(PNCl、100%、直鎖状ポリホスホニトリルクロリド、CAS番号:1832-07-1、製品番号1996で米国ノースカロライナ州ウィルミントンのSilar社から入手可能。
【0087】
[実施例1]
400gのシロキサン1を、10.46gのシラン1及び20mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を100℃まで加熱し、2hPaの圧力で2時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。最終工程において、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数5、粘度1340mPas、平均分子量M18760g/mol、残留Si-OH含有率75ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。
【0088】
[実施例2]
400gのシロキサン1を、20.92gのシラン1及び20mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を100℃まで加熱し、2hPaの圧力で2時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。最終工程において、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数6、粘度340mPas、平均分子量M9763g/mol、残留Si-OH含有率82ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。
【0089】
[実施例3]
400gのシロキサン1を、5.23gのシラン1及び30mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を120℃まで加熱し、2hPaの圧力で3時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。APHA数3、粘度11Pas、平均分子量M38672g/mol、残留Si-OH含有率62ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。
【0090】
[実施例4]
200gのシロキサン1及び200gのシラン4を、12.52gのシラン1及び25mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を100℃まで加熱し、500hPaの圧力で3時間撹拌した。その後すぐにこの混合物を10hPaの圧力でさらに3時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。最終工程において、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数3、粘度810mPas、平均分子量M15300g/mol、残留Si-OH含有率37ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。残りのシロキサン環の含有率は1000ppm未満であった。
【0091】
[実施例5]
500gのシロキサン1を、15.0gのシラン2及び52mgの触媒1と室温で混合した。20℃で撹拌しながら10分間空気を排出した後、その後混合物を4mbarの圧力で3時間90℃まで加熱した。3時間後、混合物をさらに30分間100℃まで加熱し、続いて22℃まで冷却し、通気した。次に、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数3、粘度680mPas、平均分子量M13720g/mol、残留Si-OH含有率74ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。
【0092】
[実施例6]
400gのシロキサン3を、10.52gのシラン1及び30mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を100℃まで加熱し、2hPaの圧力で2時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃℃まで冷却し、窒素で通気した。最終工程において、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数5、粘度1390mPas、平均分子量M19210g/mol、残留Si-OH含有率53ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。
【0093】
[実施例7]
1500gのシロキサン1を、10.02gのシラン1及び120mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を120℃まで加熱し、2hPaの圧力で3時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。APHA数6、粘度19Pas、平均分子量73200g/mol、残留Si-OH含有率76ppmの無色で透明なビスオキサミド官能性シリコーンオイルを得た。
【0094】
[実施例8]
400gのシロキサン2を、10.46gのシラン1及び20mgの触媒1と室温で混合した。第1の工程において、反応混合物を、撹拌しながら、20℃及び250hPaで10分間脱気した。その後、混合物を100℃まで加熱し、2hPaの圧力で3時間撹拌した。最後に、この混合物を22℃まで冷却し、窒素で通気した。最終工程において、1.0gの酸化マグネシウムを添加し、混合物を20分間撹拌し、酸化マグネシウムを濾別した。APHA数6、粘度1240mPas、平均分子量M16860g/mol、残留Si-OH含有率112ppmの無色で澄んだ透明なビスエチルオキサラトアミノプロピル官能性シリコーンオイルを得た。