(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】前面板、光学積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20220104BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220104BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220104BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220104BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220104BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220104BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220104BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220104BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220104BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B5/30
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
G09F9/00 313
G09F9/00 302
B32B7/023
B32B27/30 A
B32B27/36 102
G06F3/041 490
G06F3/041 640
(21)【出願番号】P 2021032614
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020042482
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】淵田 岳仁
(72)【発明者】
【氏名】趙 洪賛
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-47621(JP,A)
【文献】特開2019-94485(JP,A)
【文献】特開2013-171250(JP,A)
【文献】特開2009-3351(JP,A)
【文献】特開2004-345333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0317353(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0002148(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/14
G02B 5/30
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/02
G09F 9/00
B32B 7/023
B32B 27/30
B32B 27/36
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え、
前記保護樹脂層の屈折率と、前記ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下であ
り、
前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下であることを特徴とする、前面板。
【請求項2】
前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂であることを特徴とする、請求項
1に記載の前面板。
【請求項3】
さらに、基板と、粘着層とを備え、
前記基板と、前記粘着層と、前記保護樹脂層と、前記ハードコート層とが、厚み方向に順に配置され、
前記基板が、薄ガラス板を含むことを特徴とする、請求項1
または2に記載の前面板。
【請求項4】
偏光フィルムと、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の前面板とを
視認側に向かって順に備えることを特徴とする、光学積層体。
【請求項5】
画像表示部材と、
請求項
4に記載の光学積層体とを
視認側に向かって順に備えることを特徴とする、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面板、光学積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前面板として、例えば、アクリル樹脂からなるハードコート層と、ポリイミド樹脂からなる樹脂フィルムとを備える前面板が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、より一層高品位の前面板が要求されている。
【0005】
本発明は、高品位の前面板、光学積層体および画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、保護樹脂層と、ハードコート層とを厚み方向に向かって順に備え、前記保護樹脂層の屈折率と、前記ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下である、前面板を含む。
【0007】
この前面板では、保護樹脂層の屈折率と、ハードコート層の屈折率との差が、0.04以下と小さいので、前面板は、屈折率差に起因するムラの問題が生じることなく、高品位である。
【0008】
本発明(2)は、前記保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が、5.0モル%以下である、(1)に記載の前面板を含む。
【0009】
この前面板では、保護樹脂層の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が5.0モル%以下と低いので、前面板の高品位をより一層確実に確保できる。
【0010】
本発明(3)は、前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂である、(1)または(2)に記載の前面板を含む。
【0011】
この前面板では、前記保護樹脂層の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、前記ハードコート層の材料が、アクリル樹脂であるので、保護樹脂層の屈折率と、ハードコート層の屈折率とが、近似しており、保護樹脂層の屈折率と、ハードコート層の屈折率との差を確実に小さくして、高品位を確実に維持できる。
【0012】
本発明(4)は、さらに、基板と、粘着層とを備え、前記基板と、前記粘着層と、前記保護樹脂層と、前記ハードコート層とが、厚み方向に順に配置され、前記基板が、薄ガラス板を含む、(1)~(3)のいずれか一項に記載の前面板を含む。
【0013】
この前面板では、さらに、基板と、粘着層とを備え、基板と、粘着層と、保護樹脂層と、ハードコート層とが、厚み方向に順に配置され、基板が、薄ガラス板を含むので、屈曲後の跡残り(皺残りなど)の発生を抑制して、高品位を維持できる。
【0014】
本発明(5)は、偏光フィルムと、(1)~(4)のいずれか一項に記載の前面板とを視認側に向かって順に備える、光学積層体を含む。
【0015】
この光学積層体は、上記した前面板を備えるので、高品位である。
【0016】
本発明(6)は、画像表示部材と、(5)に記載の光学積層体とを視認側に向かって順に備える、画像表示装置を含む。
【0017】
この画像表示装置は、上記した光学積層体を備えるので、屈折率差に起因するムラの問題が生じることなく、高品位である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の前面板、光学積層体および画像表示装置は、屈折率差に起因するムラの問題が生じることなく、高品位である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の画像表示装置の一実施形態の有機EL表示装置の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の光学積層体の一実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の前面板の一実施形態の断面図である。
【
図4】
図4は、屈曲試験における前面板の屈曲状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[有機EL表示装置]
本発明の画像表示装置の一実施形態である有機エレクトロルミネセンス表示装置を
図1を参照して説明する。以下、有機エレクトロルミネセンス表示装置を、有機EL表示装置と略称する。
【0021】
有機EL表示装置1は、例えば、平板形状を有しており、好ましくは、面方向(表裏方向に直交する方向)に間隔を隔てて対向する2つの辺27の間に位置する屈曲部25を中心にして折り曲げ可能(bendable)に構成され、より好ましくは、折り畳み可能(foldable)に構成されている。以降で説明する各部材は、いずれも、好ましくは、折り曲げ可能(bendable)に構成され、より好ましくは、折り畳み可能(foldable)に構成されている。
【0022】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、画像表示部材3と、光学積層体2とを、視認側に向かって順に備える。つまり、この有機EL表示装置1では、光学積層体2と、画像表示部材3とが、ユーザが視認する側である視認側の反対側に向かって順に配置されている。なお、有機EL表示装置1において、視認側は表側に相当し、視認側の反対側は、裏側に相当する。
【0023】
[光学積層体]
光学積層体2は、前面板4と、偏光フィルム5とを、裏側に向かって順に備える。
【0024】
[前面板]
前面板4は、カバーウインドウまたはウインドウフィルムと称呼されることもある。前面板4は、保護部材6と、基板7とを裏側に向かって順に備える。
【0025】
[粘着層および層構成]
また、この有機EL表示装置1は、表裏方向に隣り合う部材間に位置する粘着層8を備える。粘着層8は、粘着層の一例としての第1粘着層9と、第2粘着層10と、第3粘着層11とを、裏側に向かって順に含む。従って、この有機EL表示装置1では、保護部材6と、第1粘着層9と、基板7と、第2粘着層10と、偏光フィルム5と、第3粘着層11と、画像表示部材3とが、裏側に向かって順に配置される。
【0026】
[保護部材]
保護部材6は、基板7を表側から保護する。保護部材6は、面方向に延びる平板形状を有する。保護部材6は、保護樹脂層12と、ハードコート層13とを、表側に向かって順に含む。
【0027】
[保護樹脂層]
保護樹脂層12は、保護部材6の裏面を形成する。保護樹脂層12は、面方向に延びる。保護樹脂層12の材料は、後述する面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)を満足できる樹脂であれば、特に限定されない。
【0028】
保護樹脂層12の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、例えば、10モル%以下、好ましくは、5.0モル%以下、より好ましくは、3.0モル%以下、さらに好ましくは、2.0モル%以下であり、最も好ましくは、0.0モル%である。保護樹脂層12の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が上記した上限以下であれば、前面板4における高品位をより一層確実に維持できる。
【0029】
保護樹脂層12の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、例えば、次のように測定される。保護樹脂層12を、公知の分解法により、構造単位に分解する。例えば、アルコール溶媒(例えば、メタノール)に浸漬して、可溶分を分解物として得る。その後、分解物(可溶分)を公知の分析法(例えば、ガスクロマトグラフ-質量分析装置(GC-MS))によって、構造単位を特定する。
【0030】
別途、保護樹脂層12を1H-NMR測定する。具体的には、保樹脂層12を1H-NMR用溶媒に溶解して、保護樹脂層12の主成分を含有する溶液を調製する。その後、溶液を1H-NMR測定に供する。次いで、上記の分析法で特定した構造単位に基づいて、芳香環に直結するプロトンの積分比と、それ以外のプロトンの積分比とから、芳香族化合物に由来する構造単位のモル比と、非芳香族化合物に由来する構造単位のモル比とをそれぞれ求める。芳香族化合物は、芳香環を少なくとも1つ有する化合物である。非芳香族化合物は、芳香環を有さない化合物である。そして、保護樹脂層12の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル数の割合を百分率で求める。
【0031】
保護樹脂層12の材料として、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂が挙げられる。保護樹脂層12の材料として、好ましくは、面内方向位相差Re(550)、および、厚み方向位相差Rth(550)を低くする観点から、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられ、より好ましくは、屈曲部25における屈曲前後の面内方向位相差Re(550)の変動および厚み方向位相差Rth(550)の変動を抑制する観点から、アクリル樹脂が挙げられる。また、上記した樹脂は、好ましくは、芳香族化合物に由来する構造単位を有さない。
【0032】
アクリル樹脂は、例えば、グルタルイミド単位および不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を有する。また、アクリル樹脂は、好ましくは、芳香族化合物に由来する構造単位を有さない。アクリル樹脂は、具体的には、下記式(1)で表されるグルタルイミド単位、および、下記式(2)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の構造単位を有する。
【0033】
【0034】
(式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1以上8以下のアルキル基を示す。R3は、炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、または、炭素数6以上10以下のアリール基を示す。)
【0035】
【0036】
(式(2)中、R4およびR5は、水素原子または炭素数1以上6以下のアルキル基を示す。)
【0037】
式(1)中、R1およびR2で示される炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。
【0038】
R1としては、好ましくは、メチルが挙げられる。
【0039】
R2としては、好ましくは、水素原子が挙げられる。
【0040】
R3で示される炭素数1以上18以下のアルキル基としては、炭素数1以上8以下のアルキル基で例示したものの他に、ノニル、デシル、ドデシル、ウンデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルなどが挙げられる。炭素数3以上12以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルなどが挙げられる。炭素数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。R3として、好ましくは、アルキル基、より好ましくは、メチルが挙げられる。
【0041】
式(2)中、R4およびR5で示される炭素数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどが挙げられ、アルキル基として、好ましくは、メチルが挙げられる。
【0042】
R4として、好ましくは、水素原子が挙げられる。
【0043】
R5として、好ましくは、メチルが挙げられる。
【0044】
アクリル樹脂におけるグルタルイミド単位の含有割合は、例えば、5モル%以上、好ましくは、15モル%以上であり、また、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下である。グルタルイミド単位の含有割合が上記した下限以上、上記した上限以下であれば、位相差を低くできる。
【0045】
また、アクリル樹脂のイミド化率は、全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合であって、例えば、2.5%以上であり、また、例えば、7.5%以下、好ましくは、5.0%以下である。アクリル樹脂のイミド化率が上記した下限以上であれば、耐熱性の低下を抑制し、透明性の低下を抑制できる。アクリル樹脂のイミド化率が上記した上限以下であれば、成形性に優れ、透明性に優れる。なお、アクリル樹脂におけるイミド化率は、アクリル樹脂のNMRスペクトル、IRスペクトルなどにより測定することできる。
【0046】
アクリル樹脂における不飽和カルボン酸アルキルエステル単位の含有割合は、グルタルイミド単位の含有割合の残部であって、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上であり、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、85モル%以下である。アクリル樹脂におけるアクリル酸エステル単位(具体的には、グルタルイミド単位、メタクリル酸単位およびアクリル酸エステル単位の総量におけるアクリル酸エステル単位)は、例えば、1質量%未満であり、好ましくは、0.5質量%未満である。アクリル酸エステル単位が上記した上限以下であれば、アクリル樹脂は、熱安定性に優れ、樹脂製造時あるいは成形加工時にアクリル樹脂の物性が低下することを抑制できる。アクリル樹脂の酸価は、例えば、0.10mmol/g以上、例えば、0.50mmol/g以下である。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、成形加工性のバランスに優れたアクリル樹脂を得ることができる。
【0047】
アクリル樹脂の酸価は、アクリル樹脂中でのカルボン酸単位、および、カルボン酸無水物単位の含有量である。酸価は、例えば、WO2005-054311に記載の滴定法や、特開2005-23272号公報に記載の滴定法などにより算出できる。
【0048】
アクリル樹脂は、上記以外の共重合可能な他のビニル系単量体単位を含有することができる。その他のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのアルケニル芳香族単量体が挙げられる。
【0049】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば、1,000以上、好ましくは、5,000以上、より好ましくは、10,000以上であり、例えば、2,000,000以下、好ましくは、1,000,000以下、より好ましくは、500,000以下である。アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPCシステム)を用いて、ポリスチレン換算により求める。
【0050】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位としては、例えば、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つの第1のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。第1のジヒドロキシ化合物は、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物を除く。さらに、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでもよい。好ましくは、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まない。この場合には、保護樹脂層12における芳香環化合物に由来する構造単位の割合を低減またはゼロにできる。そのため、保護樹脂層12の品位を高くできる。ジヒドロキシ化合物におけるイソソルビド系ジヒドロキシ化合物の割合は、例えば、40モル%以上、好ましくは、55モル%以上であり、また、例えば、90モル%以下、好ましくは、75モル%以下である。ジヒドロキシ化合物における第1のジヒドロキシ化合物の割合は、例えば、60モル%以下、好ましくは、45モル%以下であり、また、例えば、10モル%以上、好ましくは、25モル%以上である。ジヒドロキシ化合物におけるフルオレン系ジヒドロキシ化合物の割合は、例えば、25モル%以下、好ましくは、10モル%以下、より好ましくは、0モル%である。
【0051】
保護樹脂層12の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、150μm以下、好ましくは、100μm以下、より好ましくは、80μm以下である。保護樹脂層12の厚みが、上記した下限以上であれば、基板7が薄ガラス板であるときの、耐衝撃性の低下を抑制できる。保護樹脂層12の厚みが、上記した上限以下であれば、折り畳み性を向上できる。
【0052】
保護樹脂層12の全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、88%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。保護樹脂層12の全光線透過率は、JIS K 7361-1に従って求められる。他の部材の全光線透過率も上記と同様にして求められる。
【0053】
保護樹脂層12の面内方向位相差Re(550)は、例えば、10nm以下、好ましくは、5nm以下であり、とりわけ好ましくは、0nm、つまり、面内方向位相差Re(550)を有さない。保護樹脂層12の厚み方向位相差Rth(550)は、例えば、30nm以下、好ましくは、10nm以下であり、とりわけ好ましくは、0nm、つまり、厚み方向位相差Rth(550)を有さない。
【0054】
保護樹脂層12の面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)のそれぞれが上記した上限以下であれば、保護樹脂層12を含む前面板4の面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)(後述)を所望の範囲にすることができる。
【0055】
なお、「面内方向位相差Re(550)」は、波長550nmの光で測定される面内方向位相差Reを意味する。「厚み方向位相差Rth(550)」は、波長550nmの光で測定される厚み方向位相差Rthを意味する。括弧内の数字550が変動しても、位相差の定義は、上記と同様である。
【0056】
面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)は、位相差測定装置で測定される。以降の各位相差も、位相差測定装置で測定される。
【0057】
また、保護樹脂層12の屈折率は、後述するハードコート層13との屈折率差Δが所望範囲となるように、適宜調整される。具体的には、保護樹脂層12が等方性であれば、その屈折率nが、例えば、1.40以上、好ましくは、1.48以上であり、また、例えば、1.60以下、好ましくは、1.55以下、より好ましくは、1.53以下、さらに好ましくは、1.52以下である。
【0058】
保護樹脂層12は、柔らかく、具体的には、その鉛筆硬度が、例えば、6B以下である。鉛筆硬度は、JIS K 5400-5-4に準じて測定される。しかし、保護樹脂層12の鉛筆硬度は、上記した上限以下であれば、前面板4も柔らかく、つまり、前面板4の鉛筆硬度も低下し易く、例えば、2B以下になり易い。しかし、この一実施形態では、前面板4が硬度に優れる薄ガラス板からなる基板7を備え、かかる薄ガラス板が前面板4を補強できるので、その結果、硬度に優れる前面板4、具体的には、鉛筆硬度が、例えば、B以上、好ましくは、H以上、より好ましくは、2H以上の前面板4とすることができる。
【0059】
保護樹脂層12における組成、物性、製造方法などは、例えば、特開2016-151696号公報に詳述される。
【0060】
[ハードコート層]
ハードコート層13は、有機EL表示装置1の表面における、摺擦に起因する損傷を抑制する保護部材である。例えば、光学積層体2をロール-トゥ-ロールで製造する場合には、光学積層体2がロールの径方向に積層されるときに、積層におけるプレスまたは摺擦に起因する損傷を抑制する。
【0061】
ハードコート層13は、保護部材6の表面を形成する。また、ハードコート層13は、保護樹脂層12の厚み方向一方側に配置されている。具体的には、ハードコート層13は、保護樹脂層12の表面(厚み方向一方面)に接触している。ハードコート層13は、面方向に延びる。
【0062】
ハードコート層13は、例えば、硬化性組成物の硬化体、熱可塑性組成物の成形体からなる。つまり、ハードコート層13の材料としては、例えば、硬化性組成物、熱可塑性組成物が挙げられる。ハードコート層13の材料としては、好ましくは、硬化性組成物、より好ましくは、活性エネルギー線硬化型組成物、さらに好ましくは、紫外線硬化型組成物が挙げられる。
【0063】
また、ハードコート層13の材料の主成分は、例えば、芳香環を有さない。主成分は、ハードコート層13のうち最も多く含まれる成分、もしくは、ハードコート層13において25%以上を占める成分である。
【0064】
具体的には、ハードコート層13は、好ましくは、硬化性組成物の硬化体(硬化樹脂)からなり、より好ましくは、硬化性アクリル組成物の硬化体(硬化アクリル樹脂)からなる。
【0065】
硬化性組成物は、紫外線硬化型の硬化性化合物を含む。硬化性化合物は、モノマー、オリゴマーおよびプレポリマーのいずれであってもよい。
【0066】
具体的には、硬化性化合物としては、例えば、紫外線重合性の官能基を複数有するアクリル系化合物(モノマーおよび/またはオリゴマー)が挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリロイル基を複数有する硬化性化合物が挙げられる。硬化性化合物における官能基((メタ)アクリロイル基)の数は、例えば、3以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、30以下、好ましくは、20以下である。
【0067】
さらに、硬化性化合物は、好ましくは、さらに、分子内に水酸基を含む。
【0068】
モノマーである硬化性化合物としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、および、これらのオリゴマーまたはプレポリマーなどが挙げられる。これらは、単独使用または複数併用できる。
【0069】
モノマーまたはオリゴマーである硬化性化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、例えば、3以上、好ましくは、4以上、より好ましくは、6以上であり、また、例えば、25以下、好ましくは、20以下である。
【0070】
ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーの重量平均分子量(または理論分子量)は、例えば3000以下、好ましくは、2500以下、より好ましくは、2000以下であり、また、例えば、500以上、好ましくは、800以上である。なお、ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーが市販品である場合には、市販品に添付されるカタログに記載の理論分子量が採用される。
【0071】
ハードコート層13を形成するには、ハードコート層13が硬化体である場合には、硬化性組成物を含むワニスを塗布し、その後、硬化性組成物を硬化させる。または、熱可塑性組成物から、熱可塑性樹脂からなるハードコート層13を直接成形する。
【0072】
25℃におけるハードコート層13の引張貯蔵弾性率E’は、例えば、3GPa以下、好ましくは、2.5GPa以下であり、また、例えば、1.5GPa以上、好ましくは、2GPa以上である。25℃におけるハードコート層13の引張貯蔵弾性率E’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件の温度分散モードで動的粘弾性を測定することにより得られる。ハードコート層13の引張貯蔵弾性率E’が上記した上限以下であれば、折り曲げ性(折り畳み性)に優れる。ハードコート層13の引張貯蔵弾性率E’が上記した下限以上であれば、保護樹脂層12における摺擦における損傷を有効に抑制できる。
【0073】
また、ハードコート層13の鉛筆硬度は、例えば、F以上であり、より好ましくは、H以上であり、さらに好ましくは、2H以上である。鉛筆硬度は、JIS K 5400-5-4に準じて測定される。ハードコート層13の鉛筆硬度が上記した下限以上であれば、保護樹脂層12における摺擦における損傷を有効に抑制できる。
【0074】
ハードコート層13の面内方向位相差Re(550)は、例えば、10nm以下、好ましくは、5nm以下である。ハードコート層13の厚み方向位相差Rth(550)は、例えば、30nm以下、好ましくは、10nm以下である。
【0075】
また、ハードコート層13の屈折率は、次に説明する保護樹脂層12との屈折率差Δが所望範囲となるように、適宜調整される。具体的には、保護樹脂層12が等方性であれば、その屈折率nが、例えば、1.40以上、好ましくは、1.48以上であり、また、例えば、1.60以下、好ましくは、1.53以下である。
【0076】
ハードコート層13の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、7μm以上であり、また、例えば、30μm以下である。
【0077】
ハードコート層13の全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0078】
ハードコート層13における組成、物性、製造方法などは、例えば、特開2016-151696号公報に詳述される。
【0079】
[保護部材の物性]
保護部材6の厚みは、例えば、15μm以上、好ましくは、35μm以上であり、また、例えば、170μm以下、好ましくは、130μm以下、より好ましくは、90μm以下である。
【0080】
保護部材6の全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0081】
保護部材6の面内方向位相差Re(550)は、例えば、10nm以下、好ましくは、5nm以下である。保護部材6の厚み方向位相差Rth(550)は、例えば、30nm以下、好ましくは、10nm以下である。
【0082】
ハードコート層13を内側にして直径4mmの状態で、保護部材6を180度に屈曲した状態で固定して、85℃85%RHの環境下に100時間投入した後に、保護部材6を開き、屈曲部25の面内方向位相差Re(550)と、屈曲試験前の屈曲部25の面内方向位相差Re(550)との差Δが、例えば、10nm以下であり、屈曲試験後の屈曲部25の厚み方向位相差Rth(550)と、屈曲試験前の屈曲部25の厚み方向位相差Rth(550)との差Δが、例えば、30nm以下である。なお、屈曲試験の詳細は、後の[一実施形態の別の特徴]で詳述する。
【0083】
[基板]
基板7は、前面板4の裏面を形成する。基板7は、後述する第1粘着層9を介して保護樹脂層12と粘着している。また、基板7は、例えば、可撓性を有する。
【0084】
基板7としては、例えば、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルム、例えば、薄ガラス板が挙げられる。基板7として、好ましくは、優れた折り曲げ性、さらには、優れた折り畳み性、硬度、透明性を得る観点から、薄ガラス板が挙げられる。本実施形態では、基板7は、好ましくは、薄ガラス板からなる。
【0085】
基板7は、前面板4の機械強度および靱性を担保する。基板7は、保護部材6を裏側から支持する。基板7は、面方向に延びる平板形状を有する。
【0086】
基板7の厚みは、例えば、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0087】
基板7の全光線透過率は、例えば、80%以上、好ましくは、85%以上であり、また、例えば、95%以下である。
【0088】
薄ガラス板は、好ましくは、等方性である。薄ガラス板の屈折率nは、例えば、1.45以上であり、また、例えば、1.55以下である。なお、薄ガラス板が等方性であれば、面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)を有さない。
【0089】
[偏光フィルム]
偏光フィルム5は、前面板4の裏側に配置されている。これにより、偏光フィルム5は、前面板4によって保護されている。偏光フィルム5は、後述する第2粘着層10を介して基板7と粘着している。偏光フィルム5は、面方向に延びる平板形状を有する。
【0090】
偏光フィルム5の厚みは、例えば、15μm以上、好ましくは、25μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、250μm以下である。偏光フィルム5の全光線透過率は、例えば、40%以上、好ましくは、42%以上であり、また、例えば、45%以下である。
【0091】
偏光フィルム5は、偏光子保護フィルム17と、偏光子18と、光学補償層19とを、裏側に向かって順に備える。
【0092】
[偏光子保護フィルム]
偏光子保護フィルム17は、偏光フィルム5の表面を形成する。偏光子保護フィルム17は、面方向に延びる。偏光子保護フィルム17は、次に説明する偏光子18を表側から保護する。
【0093】
偏光子保護フィルム17の材料は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、アセテート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。偏光子保護フィルム17の材料として、光学積層体2を高品位とする観点から、アクリル樹脂が挙げられ、より好ましくは、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単位およびグルタルイミド単位を有するアクリル樹脂が挙げられ、具体的には、保護樹脂層12で例示したアクリル樹脂が挙げられる。
【0094】
偏光子保護フィルム17の厚みは、例えば、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。偏光子保護フィルム17の面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)のそれぞれは、例えば、10nm以下、好ましくは、5nm以下である。偏光子保護フィルム17が等方性であれば、その屈折率nが、例えば、1.40以上、好ましくは、1.48以上であり、また、例えば、1.60以下、好ましくは、1.53以下である。
【0095】
偏光子保護フィルム17の組成、物性、製造方法などは、例えば、特開2016-151696号公報に詳述される。
【0096】
[偏光子]
偏光子18は、偏光子保護フィルム17の裏面に接触している。偏光子18は、面方向に延びる平板形状を有する。偏光子18としては、例えば、PVAフィルムなどの親水性フィルムを染色処理および延伸処理されたフィルムや、PVAフィルムを脱水処理したフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムを脱塩酸処理したフィルムなどが挙げられる。偏光子18は、単層または複層である。偏光子18の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、15μm以下、好ましくは、10μm以下である。偏光子18の材料、組成、物性(複屈折性、位相差、屈折率など)、製造方法などは、例えば、特開2016-151696号公報に詳述される。
【0097】
[光学補償層]
光学補償層19は、偏光子18の裏面に接触している。光学補償層19は、面方向に延びる平板形状を有する。光学補償層19は、位相差フィルムであって、具体的には、λ/4板として機能する。これによって、偏光子18および光学補償層19を含む偏光フィルム5が、優れた円偏光性を有する。光学補償層19の材料としては、次の光学特性を有する材料が挙げられ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。
【0098】
光学補償層19の面内方向位相差Re(550)は、例えば、100nm以上、好ましくは、135nm以上であり、また、例えば、180nm以下、好ましくは、155nm以下である。また、光学補償層19の面内方向位相差Re(550)は、面内方向位相差Re(450)より大きく、また、面内方向位相差Re(650)より小さい。具体的には、Re(450)/Re(550)は、例えば、1未満、好ましくは、0.95以下であり、また、例えば、0.8以上である。Re(550)/Re(650)は、例えば、1未満、好ましくは、0.97以下であり、また、例えば、0.8以上である。
【0099】
光学補償層19の組成、物性、製造方法などは、例えば、特開2017-102443号公報に詳述される。
【0100】
なお、偏光子保護フィルム17と、偏光子18と、光学補償層19とを有する基板7偏光フィルム5は、特開2017-102443号公報に詳述される。
【0101】
[粘着層]
粘着層8は、上記した各部材を表裏方向に粘着(感圧接着)する粘着層である。粘着層8は、上記したように、第1粘着層9と、第2粘着層10と、第3粘着層11とを含む。
第1粘着層9と第2粘着層10と第3粘着層11とのそれぞれは、面方向に延びる。第1粘着層9と第2粘着層10と第3粘着層11とのそれぞれの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下、より好ましくは、100μm以下である。
【0102】
第1粘着層9と第2粘着層10と第3粘着層11とのそれぞれの全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、88%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0103】
とりわけ、第1粘着層9の面内方向位相差Re(550)が、例えば、10nm以下であり、厚み方向位相差Rth(550)が、例えば、30nm以下である。
【0104】
なお、第1粘着層9を含む粘着層8における組成、物性、製造方法などは、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0105】
[第1粘着層]
第1粘着層9は、保護部材6と基板7とを表裏方向に粘着する。具体的には、第1粘着層9は、保護樹脂層12の裏面と、基板7の表面とに接触(粘着)する。
【0106】
[第2粘着層]
第2粘着層10は、前面板4と、偏光フィルム5とを表裏方向に粘着する。具体的には、第2粘着層10は、基板7の裏面と、偏光子保護フィルム17の表面とに接触(粘着)する。
【0107】
[第3粘着層]
第3粘着層11は、光学積層体2と、画像表示部材3とを表裏方向に粘着する。具体的には、第3粘着層11は、光学補償層19の裏面と、光学積層体2の表面とに接触する。
[粘着層の材料]
第1粘着層9と第2粘着層10と第3粘着層11とのそれぞれの材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤などが挙げられる。
【0108】
とりわけ、第1粘着層9の材料として、好ましくは、前面板4の面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)を低くする観点から、アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0109】
アクリル系粘着剤は、例えば、炭素数3以上8以下のアルキル部分を含有するアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数3以上8以下のヒドロキシアルキル部分を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体を、架橋剤で架橋した架橋型粘着剤が挙げられる。
【0110】
炭素数3以上8以下のアルキル部分を含有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、好ましくは、n-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0111】
炭素数3以上8以下のヒドロキシアルキル部分を含有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート100質量部に対するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの質量部数は、例えば、0.5質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0112】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などが挙げられる。これらは、単独使用または併用できる。好ましくは、イソシアネート系架橋剤と過酸化物系架橋剤とが併用される。イソシアネート系架橋剤としては、2官能型、3官能型が挙げられ、好ましくは、3官能型が挙げられ、具体的には、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物などが挙げられる。過酸化物系架橋剤としては、例えば、アシルパーオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、ベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。架橋剤の割合は、共重合体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、また、例えば、1質量部以下である。また、イソシアネート系架橋剤と過酸化物系架橋剤とが併用される場合には、共重合体100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤の質量部数が、例えば、0.05質量部以上、0.2質量部未満であり、酸化物系架橋剤の質量部数が、例えば、0.2質量部以上、0.5質量部以下である。
【0113】
[画像表示部]
画像表示部材3は、有機EL表示装置1の裏面を形成する。画像表示部材3は、光学積層体2の裏側に第3粘着層11を介して配置されている。画像表示部材3は、面方向に延びる略平板形状を有しており、具体的には、有機EL素子が挙げられる。例えば、画像表示部材3は、図示しないが、表示基板と、2つの電極と、2つの電極に挟まれる有機EL層と、封止層とを含む。画像表示部材3の厚みは、例えば、1μm以上、例えば、100μm以下である。なお、画像表示部材3の構成、物性、製造方法などは、例えば、特開2018-28573号公報に詳述される。
【0114】
[タッチパネル型入力表示装置]
有機EL表示装置1は、
図1の仮想線が参照されるように、導電層15と、隠蔽層16とをさらに備えることができる。これによって、有機EL表示装置1は、タッチパネル型入力表示装置として機能する。
【0115】
[導電層]
導電層15は、光学積層体2に備えられており、具体的には、第3粘着層11の裏側に配置されている。導電層15は、例えば、第3粘着層11の表裏方向の中間部(厚み方向の中間部)に埋設されている。
【0116】
導電層15の材料としては、例えば、金属酸化物、導電性繊維(繊維)、金属などが挙げられる。
【0117】
金属酸化物としては、例えば、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などの複合酸化物などが挙げられる。金属酸化物からなる導電層15の全光線透過率は、例えば、85%以上.好ましくは、88%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0118】
導電性繊維としては、例えば、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0119】
金属としては、金、白金、銀、銅などが挙げられる。なお、導電層15の材料が金属である場合には、導電層15は、平面視網目形状などの金属メッシュである。網目を構成する線の幅は、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、1μm以上である。
【0120】
導電層15の詳細は、例えば、特開2017-102443号公報、特開2014-113705号公報、特開2014-219667号公報などに記載される。なお、導電層15は、面方向中央部に位置するセンサ電極部20と、センサ電極部20に周辺に位置する引出し配線部(図示せず)とを一体的に有する。
【0121】
[隠蔽層]
隠蔽層16は、前面板4に設けられており、具体的には、保護樹脂層12の裏面における周縁部に配置(具体的には、印刷)されている。隠蔽層16は、平面視において、導電層15の引出し配線部(または引回し配線)を包含するパターンを有する。隠蔽層16の材料としては、例えば、黒色成分および樹脂を含む組成物などが挙げられる。隠蔽層16の全光線透過率は、例えば、10%以下、好ましくは、5%以下である。隠蔽層16は、有機EL表示装置1において、ユーザが視認側から引出し配線部(図示せず)を視認することを避ける層である。光学積層体2は、厚み方向に投影したときに、隠蔽層16と重複する非表示領域21と、隠蔽層16と重複せず、導電層15のセンサ電極部20と重複する表示領域22とを含む。前面板4に隠蔽層16が設けられるときには、前面板4の面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)は、前面板4の表示領域22で測定された、面内方向位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)である。
【0122】
[一実施形態の顕著な特徴]
次に、この一実施形態の特徴のうち、顕著な点を説明する。
【0123】
保護樹脂層12の屈折率nと、ハードコート層13の屈折率nとの差Δは、例えば、0.04以下、好ましくは、0.03以下、より好ましくは、0.02以下である。
【0124】
<1>詳しくは、保護樹脂層12およびハードコート層13のいずれもが等方性であれば、保護樹脂層12の屈折率nと、ハードコート層13の屈折率nとの差Δが、0.04以下、好ましくは、0.03以下、より好ましくは、0.02以下である。
【0125】
<2>保護樹脂層12およびハードコート層13のいずれもが複屈折性であれば、それらの遅相軸方向の屈折率nxの差Δが、0.04以下、好ましくは、0.03以下、より好ましくは、0.02以下、さらに好ましくは、0.01以下であり、進相軸方向の屈折率差Δが、0.04以下、好ましくは、0.03以下、より好ましくは、0.02以下である。
【0126】
<3>保護樹脂層12およびハードコート層13のうち、一方が等方性であり、他方が複屈折性であれば、一方の屈折率nと、他方の遅相軸方向の屈折率nxとの差Δが、0.04以下、好ましくは、0.03以下、より好ましくは、0.02以下である。
【0127】
上記した屈折率差Δが上記した上限を超えれば、高品位の前面板4、高品位の光学積層体2、および、高品位の有機EL表示装置1とすることができず、屈折率差Δに起因するムラの問題が生じる。
【0128】
[一実施形態の別の特徴]
前面板4の面内方向位相差Re(550)が、10nm以下であり、前面板4の厚み方向位相差Rth(550)が、30nm以下である。
【0129】
前面板4の面内方向位相差Re(550)が、10nmを超過したり、または、前面板4の厚み方向位相差Rth(550)が30nmを超過すれば、高品位の前面板4とすることができない場合がある。
【0130】
前面板4の面内方向位相差Re(550)が、好ましくは、5nm以下、より好ましくは、1nm以下である。前面板4の厚み方向位相差Rth(550)が、好ましくは、15nm以下、より好ましくは、10nm以下である。
【0131】
また、ハードコート層13を内側にして直径4mmの状態で、前面板4を180度に屈曲した状態で固定して、85℃85%RHの環境下に100時間投入した後に、前面板4を開き、屈曲部25の面内方向位相差Re(550)と、屈曲試験前の屈曲部25の面内方向位相差Re(550)との差Δが、例えば、10nm以下であり、屈曲試験後の屈曲部25の厚み方向位相差Rth(550)と、屈曲試験前の屈曲部25の厚み方向位相差Rth(550)との差Δが、例えば、30nm以下である。
【0132】
屈曲試験では、
図4に示すように、前面板4のハードコート層(
図4において図示せず)が内側となるように、2枚のガラス板35によって前面板4を裏側から支持しながら、前面板4を屈曲させる。その際、厚み方向に対向する前面板4の表面間の距離Lが、4mmであり、つまり、屈曲部25が半円弧形状であれば、その直径(内径)が4mmとなる。
【0133】
前面板4の23℃における光弾性係数の絶対値は、例えば、150.0×10-13cm2/dyn以下、好ましくは、100.0×10-13cm2/dyn以下、より好ましくは、50.0×10-13cm2/dyn以下、とりわけ好ましくは、30.0×10-13cm2/dyn以下、最も好ましくは、10.0×10-13cm2/dyn以下である。前面板4の光弾性係数の絶対値が上記した上限以下であれば、屈曲試験前後のRe(550)の差Δ、および、Rth(550)の差Δを、上記した上限以下に設定できる。そのため、前面板4は、折り曲げ性に優れ、さらには、折り畳み性に優れる。
【0134】
[一実施形態の作用効果]
そして、この有機EL表示装置1における前面板4では、保護樹脂層12の屈折率と、ハードコート層13の屈折率との差Δが、0.04以下と小さいので、前面板4は、屈折率差Δに起因するムラの問題が生じることなく、高品位である。
【0135】
また、この前面板4では、保護樹脂層12の材料の主成分における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合が5.0モル%以下と低ければ、前面板4の高品位をより一層確実に確保できる。
【0136】
また、この前面板4では、保護樹脂層12の材料が、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、ハードコート層13の材料が、アクリル樹脂であれば、保護樹脂層の屈折率と、ハードコート層の屈折率とが、近似しており、保護樹脂層12の屈折率と、ハードコート層13の屈折率との差Δを確実に小さくして、高品位を確実に維持できる。
【0137】
一方、材料がアクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂(とりわけ、アクリル樹脂)である保護樹脂層12は、上記したように、引張貯蔵弾性率E’が低いので、機械強度が低下し、さらには、前面板4の強度低下を招来し易い。
【0138】
しかし、この有機EL表示装置1では、基板7が薄ガラス板からなれば、保護樹脂層12を補強できるので、前面板4の強度低下を抑制できる。
【0139】
さらに、この前面板4では、薄ガラス板を含む基板7と、第1粘着層9とを備え、基板7と、第1粘着層9と、保護樹脂層12と、ハードコート層13とが、厚み方向に順に配置されるので、屈曲後の跡残り(皺残りなど)の発生を抑制して、高品位を維持できる。
【0140】
この光学積層体2および有機EL表示装置1は、上記した前面板4を備えるので、屈折率差Δに起因するムラの問題が生じることなく、高品位である。
【0141】
[変形例]
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0142】
図示しないが、導電層15の裏面は、画像表示部材3の表面に直接接触してもよい。
【0143】
一実施形態では、本発明の画像表示装置の一例として有機EL表示装置1を例示しているが、例えば、これに限定されず、例えば、液晶表示装置(LCD)なども挙げられる。
【0144】
保護部材6は、第2ハードコート層14をさらに備えてよい。第2ハードコート層14は、ハードコート層13の表面に配置されている。つまり、保護部材6は、保護樹脂層12と、ハードコート層13と、第2ハードコート層14とを、表側に向かって順に備える。第2ハードコート層14は、以下の点が異なる以外は、ハードコート層13の物性および厚み等と同様である。25℃における第2ハードコート層14の引張貯蔵弾性率E’は、例えば、第2ハードコート層14の引張貯蔵弾性率E’より低い。25℃における第2ハードコート層14の引張貯蔵弾性率E’は、例えば、2GPa未満、好ましくは、1.5GPa未満であり、また、例えば、0.5GPa以上、好ましくは、1GPa以上である。25℃における第2ハードコート層14の引張貯蔵弾性率E’は、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件の温度分散モードで動的粘弾性を測定することにより得られる。
【0145】
図2に示すように、この変形例の光学積層体2は、画像表示部材3に設けられず、有機EL表示装置1を構成しなくてもよい。詳しくは、光学積層体2は、有機EL表示装置1を作製するための一部品であり、光学積層体2にまだ粘着されていない。この場合には、第3粘着層11の裏面には、仮想線で示す剥離シート26が積層される。光学積層体2は、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0146】
また、図示しないが、前面板4は、偏光フィルム5に設けられず、光学積層体2を構成しなくてもよい。詳しくは、前面板4は、光学積層体2を作製するための一部品であり、偏光フィルム5にまだ粘着されていない。なお、前面板4には、第2粘着層10が設けられてもよい。前面板4は、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0147】
図3に示すように、変形例の前面板4は、基板7を含まず、保護部材6のみを備えることができる。具体的には、
図3の変形例で示す前面板4は、第1粘着層9および基板7を備えず、保護部材6のみからなる。
【0148】
好ましくは、前面板4は、さらに、第1粘着層9および基板7を備え、さらに、基板7が薄ガラス板を含む。この構成によれば、折り曲げ(さらには、折り畳み)後の跡残り(皺残りなど)の発生を抑制して、高品位を維持できる。
【実施例】
【0149】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0150】
まず、各層の物性の測定方法を以下で説明する。
【0151】
[屈折率]
波長589nmにおける各層の屈折率を、アッベ屈折率計(型番:DR-M2,アタゴ社製)によって、測定した。測定環境は、23℃であった。
【0152】
[保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合の測定]
[構造単位の特定]
保護樹脂層12をメタノールに浸漬した。メタノール可溶分(分解物)を、GC-MS測定した。これにより、保護樹脂層12の構造単位を特定した。
【0153】
[積分に基づく芳香族化合物の割合の測定]
保護樹脂層12を重水素化クロロホルムに溶解させて、溶液を調製した。これを、1H-NMR測定した。1H-NMR測定では、GC-MS測定により特定した構造単位に基づいて、芳香環に直結するプロトンの積分比と、それ以外のプロトンの積分比とから、芳香族化合物に由来する構造単位のモル比と、非芳香族化合物に由来する構造単位のモル比とをそれぞれ求めた。その後、保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル数の割合を百分率で求めた。1H-NMR測定では、NMR評価装置(AVANCEIII-600 with Cryo Probe,Bruker Biospin社製)を用いた
【0154】
[実施例1]
多官能アクリレート(アイカ工業社製、製品名「Z-850-16」)100質量部、レベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC-4100)5質量部、および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)3質量部を混合し、固形分濃度が50質量%となるように、メチルイソブチルケトンで希釈することによりコーティング剤を調製した。
【0155】
別途、日東電工社製アクリルフィルム(製品名「HX-40N」、厚み40μm)からなる保護樹脂層12を準備した。保護樹脂層12の屈折率は、1.51であった。保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、0.0モル%であった。
【0156】
準備した保護樹脂層12の片面にコーティング剤を塗布して塗布層を形成し、塗布層を保護樹脂層とともに90℃で2分間加熱した。次いで、塗布層に高圧水銀ランプを用いて紫外線を積算光量300mJ/cm
2で照射することによりハードコート層13を形成した。ハードコート層13の厚みは、10μmであった。ハードコート層13の屈折率は、1.49であった。これにより、
図3に示すように、保護樹脂層12と、ハードコート層13とを備える保護部材6を作製した。つまり、保護部材6を含む前面板4を作製した。
【0157】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、
図3に示す前面板4を作製した。但し、保護樹脂層12は、以下の方法で作製したポリカーボネートフィルムに変更した。
【0158】
イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名「POLYSORB」)81.98質量部(0.56モル部)と、トリシクロデカンジメタノール47.19質量部(0.24モル部)と、ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)175.1質量部(0.81モル部)と、触媒としての炭酸セシウム0.2質量%水溶液0.979質量部とを反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmのポリカーボネートフィルムからなる保護樹脂層12を作製した。保護樹脂層12の屈折率は1.51あった。保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、1.0モル%であった。
【0159】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で、
図3に示す前面板4を作製した。但し、保護樹脂層12は、以下の方法で作製したポリカーボネートフィルムに変更した。
【0160】
ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン38.06重量部(0.059モル部)と、イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名「POLYSORB」)53.73重量部(0.368モル部)と、1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカル社製)9.64重量部(0.067モル部)と、ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)81.28重量部(0.379モル部)と、触媒としての酢酸カルシウム1水和物3.83×10-4重量部(2.17×10-6モル部)とを反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として220℃まで30分かけて昇温し、60分間常圧にて反応した。次いで圧力を常圧から13.3kPaまで90分かけて減圧し、13.3kPaで30分間保持し発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として熱媒温度を15分かけて240℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで15分かけて減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後、窒素で常圧まで復圧して反応を停止し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてポリカーボネート樹脂ペレットを得た。次いで、得られたポリカーボネート系樹脂ペレットからポリカーボネートフィルムを作製した。得られたポリカーボネートフィルム(未延伸)の屈折率は1.53であった。得られたポリカーボネートフィルムを斜め方向に2~3倍延伸した。延伸方向はフィルムの長手方向に対して45°とした。これによってポリカーボネートフィルムからなる保護樹脂層12を作製した。保護樹脂層12の屈折率は、1.53であった。保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、6.6モル%であった。
【0161】
[ 比較例1]
実施例1と同様の方法で、
図3に示す前面板4を作製した。但し、保護樹脂層12を、三菱ケミカル社製ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名;T912E50-N)に変更した。この保護樹脂層12の屈折率は1.57であった。保護樹脂層12における芳香族化合物に由来する構造単位のモル割合は、50モル%であった。
【0162】
[評価]
実施例1~3および比較例1の前面板4について、以下の項目を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0163】
[屈折率の差]
保護樹脂層12の屈折率と、ハードコート層13の屈折率との差を計算により求めた。
【0164】
[品位]
前面板4における保護樹脂層12に、アクリル粘着剤を介して黒アクリル板を貼り合せた。次いで、三波長の蛍光管の下でハードコート層13の表面を目視で観察した。外観ムラがほぼ視認できないものを◎、外観ムラがわずかに視認できるものを〇、外観ムラがはっきりと視認できるものを×と評価した。
【0165】
【符号の説明】
【0166】
1 有機EL表示装置
2 光学積層体
3 画像表示部材
4 前面板
6 保護部材
7 基板
9 第1粘着層
12 保護樹脂層
13 ハードコート層