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特許6991384ジルコニア系多孔質体、及び、ジルコニア系多孔質体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ジルコニア系多孔質体、及び、ジルコニア系多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20220104BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20220104BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J21/06
B01J35/10 301H
B01J35/10 301F
B01J35/10 301J
B01J37/08
B01J37/04 102
B01J37/10
B01J23/10 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021131514
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2021-09-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208662
【氏名又は名称】第一稀元素化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020104(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/049525(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/195973(WO,A1)
【文献】特開2017-109880(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145787(WO,A1)
【文献】特開2009-249275(JP,A)
【文献】特開2005-139029(JP,A)
【文献】特開2004-2148(JP,A)
【文献】特開2002-160922(JP,A)
【文献】特開2002-220228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
B01J 21/00-38/74
C01G 49/10-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素の酸化物を含み、
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Aとし、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Bとしたときに、
前記細孔容積Aが、0.10ml/g以上0.40ml/g以下であり、
下記式(1)で表される細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率Xが、25%以上95%以下であることを特徴とするジルコニア系多孔質体。
<細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率X>
[(細孔容積A)/(細孔容積B)]×100 式(1)
【請求項2】
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Cとし、加熱する前の細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Dとしたときに、
前記細孔容積Cが、0.40ml/g以上1.50ml/g以下であり、
下記式(2)で表される細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Yが、30%以上95%以下であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア系多孔質体。
<細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Y>
[(細孔容積C)/(細孔容積D)]×100 式(2)
【請求項3】
細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が、50nm以上150nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項4】
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積が10m/g以上40m/g以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項5】
前記希土類元素の酸化物として酸化セリウムを含み、
前記酸化セリウムの含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超50質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項6】
前記希土類元素の酸化物として酸化セリウム以外の希土類酸化物を含み、
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物の含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して1質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項7】
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、及び、酸化イットリウムからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項6に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項8】
その他の元素の酸化物を含み、
前記その他の元素の酸化物が、(A)希土類元素を除く遷移金属元素の酸化物、(B)アルカリ土類金属元素の酸化物、及び、(C)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選ばれる1以上の酸化物、からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項9】
前記その他の元素の酸化物の含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下であることを特徴とする請求項8に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項10】
前記その他の元素の酸化物が、酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載のジルコニア系多孔質体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1に記載のジルコニア系多孔質体の製造方法であって、
ジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤溶液を100℃以上で添加することにより塩基性硫酸ジルコニウムを生成させる工程A、
前記工程Aで得られた塩基性硫酸ジルコニウムを80℃以下に冷却する工程B、
前記工程Bの後、前記塩基性硫酸ジルコニウムを前記工程Aよりも高温で60分以上熟成する工程C、
前記工程Cで得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウムを含む反応液にアルカリを添加することにより、ジルコニウム含有水酸化物を得る工程D、及び、
前記工程Dで得られたジルコニウム含有水酸化物を熱処理することにより、ジルコニア系多孔質体を得る工程Eを有することを特徴とするジルコニア系多孔質体の製造方法。
【請求項12】
前記工程A~前記工程Cのいずれかにおいて、(a)希土類元素の塩、(b)希土類元素を除く遷移金属元素の塩、(c)アルカリ土類金属元素の塩、及び、(d)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩、からなる群から選ばれる1種以上の塩を添加する工程Xを有することを特徴とする請求項11に記載のジルコニア系多孔質体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア系多孔質体、及び、ジルコニア系多孔質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関やボイラー等の燃焼機関から排出される排気ガス中には、大気汚染等の原因となる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)といった有害物質が含まれている。これらの有害物質を効率良く浄化させることは、環境汚染防止等の観点から重要な課題であり、上記三成分の有害物質を同時に浄化することが可能な排気ガス浄化技術の研究も盛んに行われている。
【0003】
特許文献1には、BJH法に基づく細孔分布において、8~20nm及び30~100nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体や、BJH法に基づく細孔分布において、20~110nmの気孔径にピークを有し、かつ、全気孔容量が0.4cc/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0004】
特許文献2には、1000℃で3時間熱処理後の全細孔容積が少なくとも0.75ml/gであり、且つ、1000℃で3時間熱処理後の10~100nmの直径を有する細孔の細孔容積が全細孔容積の少なくとも30%であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0005】
特許文献3には、(1)BJH法に基づく細孔分布において、20~100nmの細孔径にピークを有し、測定した細孔分布曲線から求められるピークの半価幅をWとし、ピークの高さをPとしたときのP/W比が0.05以上であり、全細孔容量が0.5cm/g以上であり、(2)1000℃で12時間の熱処理後において、20~100nmの細孔径にピークを有し、前記P/W比が0.03以上であり、少なくとも40m/gの比表面積を有し、全細孔容量が0.3cm/g以上であるジルコニア系多孔質体が開示されている(特に請求項1参照)。
【0006】
特許文献4には、大気中1100℃の温度条件で5時間加熱する耐久試験後の細孔容積(d)の該耐久試験前の細孔容積(c)に対する比(d/c)が、0.20≦d/c≦1.00であるCZ系複合酸化物が開示されている(特に請求項2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-036576号公報
【文献】特開2008-081392号公報
【文献】特開2015-189655号公報
【文献】国際公開第2014/196100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車等より排出されるCO、HC、NOx量を削減するため、排ガス浄化触媒の性能向上が強く求められている。効率的に排ガスを浄化するには、触媒である貴金属と排ガスが十分に接触することが必要である。そのためには、貴金属の担体として使用される材料が十分にガスを拡散する必要がある。また、高SV(Space velocity,空間速度)条件下では担体のガス拡散性がさらに重要となる。
【0009】
しかしながら、従来の材料(例えば、特許文献1~4に開示されているジルコニア系多孔質体等)では高温に長時間晒されると、細孔が閉塞し、ガスの拡散性が低下するという問題がある。また、近年、従来以上の高温条件下での触媒性能の向上が求められており、触媒性能の向上のため、担体材料の耐熱性の向上が求められている。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温に晒された後も、高いガス拡散性を維持することが可能なジルコニア系多孔質体を提供することにある。また、当該ジルコニア系多孔質体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ジルコニウム複合酸化物について鋭意研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
(1)30nm以下の小さい細孔は、比表面積の向上には有効であるが、高温に晒されると、焼結により消失してしまう。
(2)200nm以上の大きな細孔は、粒子状物質を捕集するフィルター(例えば、ハニカム構造体)にコーティングする際の湿式粉砕によって失われることが多く、ガス拡散性の向上への寄与は小さい。
【0012】
そして、下記構成を採用することにより、上記課題を解決することができることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係るジルコニア系多孔質体は、
希土類元素の酸化物を含み、
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Aとし、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Bとしたときに、
前記細孔容積Aが、0.10ml/g以上0.40ml/g以下であり、
下記式(1)で表される細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率Xが、25%以上95%以下であることを特徴とするジルコニア系多孔質体。
<細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率X>
[(細孔容積A)/(細孔容積B)]×100 式(1)
【0014】
前記構成によれば、前記細孔容積Aが0.10ml/g以上であるため、高温に晒された後も、高いガス拡散性を有するといえる。
また、前記維持率Xが25%以上であるため、高温に晒される前後において、高いガス拡散性を有するといえる。
また、高温に晒される前後において、細孔容積の変化が大きい場合、担体としてのジルコニア系多孔質体の収縮に伴い、触媒として担持されている貴金属が焼結する可能性がある。しかしながら、前記構成によれば、維持率Xが25%以上であるため、細孔容積の変化が少ないといえる。従って、触媒として担持されている貴金属が焼結することを抑制することができる。その結果、高い触媒性能を維持することが可能となる。
また、ジルコニア系多孔質体でも、希土類元素を含まない場合、耐熱性が低く、触媒性能も低いものとなる。一方、前記構成によれば、希土類元素の酸化物を含むため、ジルコニア系多孔質体の耐熱性及び触媒性能をより向上させることができる。
【0015】
前記構成においては、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Cとし、加熱する前の細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Dとしたときに、
前記細孔容積Cが、0.40ml/g以上1.50ml/g以下であり、
下記式(2)で表される細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Yが、30%以上95%以下であることが好ましい。
<細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Y>
[(細孔容積C)/(細孔容積D)]×100 式(2)
【0016】
高温に晒された後も、高いガス拡散性を有するためには、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率が高いことが好ましい。上述したように、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率が高いと、高温に晒された後も、高いガス拡散性を有することになるが、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率だけではなく、さらに、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率も高ければ、より高いガス拡散性を有するといえる。
前記構成によれば、前記細孔容積Cが、0.40ml/g以上であるため、高温に晒された後も、より高いガス拡散性を有するといえる。
また、前記維持率Yが、30%以上であるため、高温に晒される前後において、より高いガス拡散性を有するといえる。
【0017】
前記構成においては、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が、50nm以上150nm以下であることが好ましい。
【0018】
細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が50nm以上150nm以下であると、細孔容積B(1150℃で12時間加熱する前の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積)の減少を抑制し、細孔容積A(1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積)をより高くすることができる。
【0019】
前記構成においては、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積が10m/g以上40m/g以下であることが好ましい。
【0020】
触媒の担体が焼結すると、担体の比表面積低下を招く。担体の比表面積低下は、担持している貴金属(触媒)の焼結を招く。貴金属が焼結すると触媒活性が低下し、触媒の排ガス浄化性能が低下する。
そこで、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積が10m/g以上であると、熱処理後において高い比表面積を有するといえる。従って、高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
【0021】
前記構成においては、前記希土類元素の酸化物として酸化セリウムを含み、
前記酸化セリウムの含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超45質量%以下であることが好ましい。
【0022】
酸化セリウムをジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超含むと、焼結をより抑制することができる。
【0023】
前記構成においては、前記希土類元素の酸化物として酸化セリウム以外の希土類酸化物を含み、
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物の含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0024】
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物をジルコニア系多孔質体全体に対して1質量%以上含むと、焼結をさらに抑制することができる。
【0025】
前記構成においては、前記酸化セリウム以外の希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、及び、酸化イットリウムからなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。
【0026】
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物が、酸化ランタン、酸化ネオジム、及び、酸化プラセオジムからなる群から選ばれる1種以上の酸化物であると、さらに高い焼結抑制効果が得られる。
【0027】
前記構成においては、その他の元素の酸化物を含み、
前記その他の元素の酸化物が、(A)希土類元素を除く遷移金属元素の酸化物、(B)アルカリ土類金属元素の酸化物、及び、(C)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選ばれる1以上の酸化物、からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0028】
その他の元素の酸化物を含み、前記その他の元素の酸化物が、(A)希土類元素を除く遷移金属元素の酸化物、(B)アルカリ土類金属元素の酸化物、及び、(C)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選ばれる1以上の酸化物、からなる群から選ばれる1種以上であると、さらに高い焼結抑制効果が得られる。
【0029】
前記構成においては、前記その他の元素の酸化物の含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下であることが好ましい。
【0030】
前記その他の元素の酸化物を、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下の範囲で含むと、焼結をさらに抑制することができる。
【0031】
前記構成においては、前記その他の元素の酸化物が、酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下であることが好ましい。
【0032】
前記その他の元素の酸化物が、酸化アルミニウムであり、前記酸化アルミニウムの含有量が、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超40質量%以下であると、焼結抑制効果により優れる。
【0033】
また、本発明に係るジルコニア系多孔質体の製造方法は、
ジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤溶液を100℃以上で添加することにより塩基性硫酸ジルコニウムを生成させる工程A、
前記工程Aで得られた塩基性硫酸ジルコニウムを80℃以下に冷却する工程B、
前記工程Bの後、前記塩基性硫酸ジルコニウムを前記工程Aよりも高温で60分以上熟成する工程C、
前記工程Cで得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウムを含む反応液にアルカリを添加することにより、ジルコニウム含有水酸化物を得る工程D、及び、
前記工程Dで得られたジルコニウム含有水酸化物を熱処理することにより、ジルコニア系多孔質体を得る工程Eを有することを特徴とする。
【0034】
前記構成によれば、ジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤溶液を100℃以上で添加することにより塩基性硫酸ジルコニウムを生成させ(工程A)、得られた塩基性硫酸ジルコニウムをいったん80℃以下に冷却し(工程B)、その後、前記塩基性硫酸ジルコニウムを前記工程Aよりも高温で60分以上熟成する(工程C)。
このような工程を採用することにより、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積Aが、0.10ml/g以上0.40ml/g以下であり、大気圧下、1150℃で12時間加熱する前後での、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率が、25%以上95%以下であるジルコニア系多孔質体を得ることが可能となる。
その理由として本発明者は、以下のように推察している。
工程Aで一次粒子、一次粒子が凝集した二次粒子を形成する。この二次粒子内にはミクロ孔を有する。工程Cでは一次粒子の更なる凝集が起き、メソ、マクロ孔を形成する。
【0035】
前記構成においては、前記工程A~前記工程Cのいずれかにおいて、(a)希土類元素の塩、(b)希土類元素を除く遷移金属元素の塩、(c)アルカリ土類金属元素の塩、及び、(d)Al,In,Si,Sn及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩、からなる群から選ばれる1種以上の塩を添加する工程Xを有することが好ましい。
【0036】
前記工程A~前記工程Cのいずれかにおいて、(a)希土類元素の塩、(b)希土類元素を除く遷移金属元素の塩、(c)アルカリ土類金属元素の塩、及び、(d)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩、からなる群から選ばれる1種以上の塩を添加する工程Xを有すると、最終的に得られるジルコニア系多孔質体により高い焼結抑制効果が付与することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高温に晒された後も、高いガス拡散性を維持することが可能なジルコニア系多孔質体を提供することができる。また、当該ジルコニア系多孔質体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、ジルコニアとは一般的なものであり、ハフニアを含めた10質量%以下の不純物金属化合物を含むものである。
【0039】
[ジルコニア系多孔質体]
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体は、詳しくは後述するが、ジルコニアと希土類元素の酸化物とを必須成分とする複合酸化物である。本実施形態に係るジルコニア系多孔質体の用途は、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒担体として有用である。排ガス浄化用触媒担体として使用する場合、担持し得る触媒としては、貴金属触媒などが挙げられる。
【0040】
<細孔容積>
[1.大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積(細孔容積A)]
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Aとしたとき、前記細孔容積Aが0.10ml/g以上0.40ml/g以下である。
【0041】
前記細孔容積Aは、好ましくは0.12ml/g以上、より好ましくは0.14ml/g以上、さらに好ましくは0.16ml/g以上、特に好ましくは0.17ml/g以上である。
前記細孔容積Aは、大きいほど好ましいが、例えば、0.35ml/g以下、0.30ml/g以下、0.25ml/g以下等である。
【0042】
[2.大気圧下、1150℃で12時間加熱する前後での、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率(維持率X)]
前記ジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Aとし、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Bとしたときに、下記式(1)で表される細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率Xが、25%以上95%以下である。
<細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率X>
[(細孔容積A)/(細孔容積B)]×100 式(1)
【0043】
前記維持率Xは、好ましくは27%以上、より好ましくは28%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは33%以上である。
前記維持率Xは、大きいほど好ましいが、例えば、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、45%以下等である。
【0044】
前記細孔容積Aが0.10ml/g以上であるため、高温に晒された後も、高いガス拡散性を有するといえる。
また、前記維持率Xが25%以上であるため、高温に晒される前後において、高いガス拡散性を有するといえる。
また、高温に晒される前後において、細孔容積の変化が大きい場合、担体としてのジルコニア系多孔質体の収縮に伴い、触媒として担持されている貴金属が焼結する可能性がある。しかしながら、前記ジルコニア系多孔質体によれば、維持率Xが25%以上であるため、細孔容積の変化が少ないといえる。従って、触媒として担持されている貴金属が焼結することを抑制することができる。その結果、高い触媒性能を維持することが可能となる。
【0045】
[3.初期(加熱する前)の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積(細孔容積B)]
前記ジルコニア系多孔質体は、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Bとしたときに、前記細孔容積Bが0.30ml/g以上であることが好ましい。
【0046】
前記細孔容積Bは、好ましくは0.40ml/g以上、より好ましくは0.45ml/g以上、さらに好ましくは0.50ml/g以上、特に好ましくは0.53ml/gである。
前記細孔容積Bは、大きいほど好ましいが、例えば、1.0ml/g以下、0.9ml/g以下、0.8ml/g以下、0.7ml/g以下、0.6ml/g等である。
【0047】
前記細孔容積Bが0.30ml/g以上であると、高温に曝される前の状態において細孔分布30nm以上200nm以下の範囲の細孔容積が比較的大きいといえる。高温に曝される前の状態において細孔分布30nm以上200nm以下の範囲の細孔容積が比較的大きいため、高温に晒された後の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲の細孔容積(細孔容積A)をより高めることができる。
【0048】
[4.大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積(細孔容積C)]
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Cとしたとき、前記細孔容積Cが0.40ml/g以上1.50ml/g以下であることが好ましい。
【0049】
前記細孔容積Cは、好ましくは0.45ml/g以上、より好ましくは0.48ml/g以上、さらに好ましくは0.51ml/g以上である。
前記細孔容積Cは、大きいほど好ましいが、例えば、1.20ml/g以下、1.00ml/g以下、0.90ml/g以下、0.83ml/g以下等である。
【0050】
[5.大気圧下、1150℃で12時間加熱する前後での、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率(維持率Y)]
前記ジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Cとし、加熱する前の細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Dとしたときに、下記式(2)で表される細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Yが30%以上95%以下であることが好ましい。
<細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Y>
[(細孔容積C)/(細孔容積D)]×100 式(2)
【0051】
前記維持率Yは、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは41%以上、特に好ましくは44%以上、特別に好ましくは46%以上である。
前記維持率Yは、大きいほど好ましいが、例えば、80%以下、70%以下、65%以下、64%以下等である。
【0052】
高温に晒された後も、高いガス拡散性を有するためには、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率が高いことが好ましい。上述したように、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率(維持率X)が高いと、高温に晒された後も、高いガス拡散性を有することになるが、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率だけではなく、さらに、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率も高ければ、より高いガス拡散性を有するといえる。
前記細孔容積Cが0.40ml/g以上であると、高温に晒された後も、より高いガス拡散性を有するといえる。
また、前記維持率Yが、30%以上であると、高温に晒される前後において、より高いガス拡散性を有するといえる。
【0053】
[6.初期(加熱する前)の細孔分布全範囲における細孔容積(細孔容積D)]
前記ジルコニア系多孔質体は、加熱する前の細孔分布全範囲における細孔容積を細孔容積Dとしたときに、前記細孔容積Dが0.50ml/g以上であることが好ましい。
【0054】
前記細孔容積Dは、好ましくは0.70ml/g以上、より好ましくは0.80ml/g以上、さらに好ましくは0.90ml/g以上、特に好ましくは1.00ml/g以上、特別に好ましくは1.05ml/g以上である。
前記細孔容積Dは、大きいほど好ましいが、例えば、2.0ml/g以下、1.7ml/g以下、1.5ml/g以下、1.3ml/g以下等である。
【0055】
前記細孔容積Dが0.50ml/g以上であると、高温に曝される前の状態において細孔分布全範囲の細孔容積が比較的大きいといえる。高温に曝される前の状態において細孔分布全範囲の細孔容積が比較的大きいため、高温に晒された後の細孔分布全範囲の細孔容積(細孔容積C)をより高めることができる。
【0056】
<細孔モード径>
[1.初期(加熱する前)の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径]
前記ジルコニア系多孔質体は、初期(加熱する前)の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が、50nm以上150nm以下であることが好ましい。
前記細孔モード径は、好ましくは51nm以上、より好ましくは52nm以上、さらに好ましくは53nm以上、特に好ましくは55nm以上、特別に好ましくは59nm以上である。
前記細孔モード径は、好ましくは140nm以下、より好ましくは130nm以下、さらに好ましくは120nm以下、特に好ましくは112nm以下である。
細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が50nm以上150nm以下であると、細孔容積B(1150℃で12時間加熱する前の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積)の減少を抑制し、細孔容積A(1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積)をより高くすることができる。
【0057】
[2.大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径]
前記ジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径が、55nm以上180nm以下であることが好ましい。
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の細孔モード径は、好ましくは60nm以上、より好ましくは63nm以上、さらに好ましくは66nm以上、特に好ましくは74nmである。
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の細孔モード径は、好ましくは170nm以下、より好ましくは160nm以下、さらに好ましくは150nm以下、特に好ましくは140nm以下、特別に好ましくは138nm以下である。
大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の細孔モード径が55nm以上180nm以下であると、細孔容積B(1150℃で12時間加熱する前の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積)をより大きくすることが可能となる。
【0058】
前記細孔容積、前記細孔モード径の求め方の詳細は、実施例に記載の方法による。
【0059】
<比表面積>
[1.大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積]
前記ジルコニア系多孔質体は、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積が、10m/g以上40m/g以下であることが好ましい。
触媒の担体が焼結すると、担体の比表面積低下を招く。担体の比表面積低下は、担持している貴金属(触媒)の焼結を招く。貴金属が焼結すると触媒活性が低下し、触媒の排ガス浄化性能が低下する。
そこで、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積が10m/g以上であると、熱処理後において高い比表面積を有するといえる。従って、高温に晒された後も、高い触媒性能を有するといえる。
【0060】
前記大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積は、好ましくは11m/g以上、より好ましくは12m/g以上、さらに好ましくは12.5m/g以上である。
前記大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積は、大きいほど好ましいが、例えば、30m/g以下、20m/g以下、17m/g以下、16.3m/g以下等である。
【0061】
[2.初期の比表面積]
前記ジルコニア系多孔質体は、比表面積(初期の比表面積)が、25m/g以上であることが好ましい。前記比表面積が、25m/g以上であると、高温に曝される前の状態において比較的高い比表面積を有するといえる。高温に曝される前の状態において比較的高い比表面積を有するため、高温に晒された後の比表面積をより高めることができる。ここで、比表面積(初期の比表面積)とは、ジルコニア系多孔質体を製造した後の、加熱処理や粉砕処理等を行っていない状態での比表面積をいう。
【0062】
前記比表面積は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは35m/g以上、さらに好ましくは38m/g以上、特に好ましくは45m/g以上である。
前記比表面積は、大きいほど好ましいが、例えば、120m/g以下、100m/g以下、80m/g以下、70m/g以下等である。
【0063】
前記大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積、及び、前記比表面積(初期の比表面積)は、実施例に記載の方法により得られた値をいう。
【0064】
<粒子径D50
前記ジルコニア系多孔質体の粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上100μm以下である。前記粒子径D50は、より好ましくは0.5μm以上、50μm以下である。
【0065】
<組成>
前記ジルコニア系多孔質体は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を含有する。前記ジルコニアの含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体を100質量%としたとき、好ましく40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。前記ジルコニアの含有量の上限値は、特に制限されないが、前記ジルコニアの含有量は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。前記ジルコニアの含有量が40質量%以上99質量%以下であると、触媒担体として好適に使用できる。
【0066】
前記ジルコニア系多孔質体は、希土類元素の酸化物を含む。つまり、前記ジルコニア系多孔質体は、希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含む。ただし、前記ジルコニア系多孔質体は、Pmを含まないことが好ましい。つまり、前記ジルコニア系多孔質体は、Pm以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことがより好ましい。前記ジルコニア系多孔質体は、希土類元素の酸化物を含むため、ジルコニア系多孔質体の耐熱性及び触媒性能をより向上させることができる。
なお、希土類元素とは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいう。
【0067】
前記希土類元素の酸化物の含有量(希土類元素の酸化物の合計含有量)は、前記ジルコニア系多孔質体全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、特別に好ましくは25質量%以上、格別に好ましくは30質量%以上である。
前記希土類元素の酸化物の含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。
前記希土類元素の酸化物の含有量が5質量%以上60質量%以下であると、さらに高い耐熱性及び触媒性能が得られる。
【0068】
前記ジルコニア系多孔質体は、前記希土類元素の酸化物として酸化セリウムを含むことが好ましい。前記ジルコニア系多孔質体が、酸化セリウムを含む場合、前記酸化セリウムの含有量は、ジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超45質量%以下であることが好ましい。
酸化セリウムをジルコニア系多孔質体全体に対して0質量%超含むと、焼結をより抑制することができる。
【0069】
前記酸化セリウムの含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。前記酸化セリウムの含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0070】
前記ジルコニア系多孔質体は、前記希土類元素の酸化物として酸化セリウム以外の希土類酸化物を含むことが好ましい。つまり、前記ジルコニア系多孔質体は、酸化セリウム以外の希土類元素から選ばれる1種以上の酸化物を含むことが好ましい。前記ジルコニア系多孔質体が、酸化セリウム以外の希土類酸化物を含む場合、前記酸化セリウム以外の希土類酸化物の含有量(合計含有量)は、ジルコニア系多孔質体全体に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。前記酸化セリウム以外の希土類酸化物をジルコニア系多孔質体全体に対して1質量%以上含むと、焼結をさらに抑制することができる。
【0071】
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物の含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。前記酸化セリウム以外の希土類酸化物の含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量以下、特に好ましくは15質量%以下、特別に好ましくは10質量%以下である。
【0072】
前記酸化セリウム以外の希土類酸化物は、なかでも、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、及び、酸化イットリウムからなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。前記酸化物が、酸化ランタン、酸化ネオジム、及び、酸化プラセオジムからなる群から選ばれる1種以上の酸化物であると、さらに高い焼結抑制効果が得られる。
【0073】
前記ジルコニア系多孔質体は、希土類元素の酸化物以外に、
A)遷移金属酸化物(但し、希土類元素を除く)、
B)アルカリ土類金属酸化物、及び、
C)Al、In、Si、Sn及びBiからなる群から選ばれる1種以上の酸化物
からなる群から選ばれる1種以上の酸化物を含むことができる。
以下、A)~C)で示した元素を、本明細書では、「その他の元素」ということとする。前記ジルコニア系多孔質体が前記その他の元素の酸化物を含む場合、前記その他の元素の酸化物の含有量は、前記ジルコニア系多孔質体全体を100質量%としたとき、酸化物換算で0%超、好ましくは0.1質量%以上とすることができる。前記その他の元素の酸化物の含有量は、上限に制限は特にないが、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下等とすることができる。
前記遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W等が挙げられる。前記アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。前記その他の元素の酸化物の中でも、酸化アルミニウム(Al)は、焼結抑制効果の観点から、特に好ましい。
【0074】
前記ジルコニウム複合酸化物は、その他、本発明の趣旨に反しない範囲(例えば、0.5質量%以下)で、不純物が含まれていても構わない。前記不純物としては特に限定されず、原料に含まれる成分、製造工程において混入する成分、製造工程において除去しきれない成分(例えば、SO等)等が挙げられる。
【0075】
前記ジルコニア系多孔質体の好ましい組成比率としては、下記(1)~(4)に例示される合計100%を超えない組合せが挙げられる。
(1) 酸化ジルコニウム;40%以上99%以下
酸化セリウム;0%以上50%以下
酸化セリウム以外の希土類酸化物;0%以上30%以下
その他の元素の酸化物;0%以上40%以下
(2) 酸化ジルコニウム;45%以上98%以下
酸化セリウム;5%以上45%以下
酸化セリウム以外の希土類酸化物;1%以上20%以下
その他の元素の酸化物;0%以上37%以下
(3) 酸化ジルコニウム;50%以上98%以下
酸化セリウム;10%以上40%以下
酸化セリウム以外の希土類酸化物;5%以上15%以下
その他の元素の酸化物;0%以上35%以下
(4) 酸化ジルコニウム;50%以上98%以下
酸化セリウム;15%以上40%以下
酸化セリウム以外の希土類酸化物;10%以上10%以下
その他の元素の酸化物;0%以上32%以下
【0076】
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体によれば、前記細孔容積Aが0.10ml/g以上であるため、高温に晒された後も、高いガス拡散性を有するといえる。また、前記維持率Xが25%以上であるため、高温に晒される前後において、高いガス拡散性を有するといえる。また、前記維持率Xが25%以上であるため、細孔容積の変化が少ないといえる。従って、触媒として担持されている貴金属が焼結することを抑制することができる。その結果、高い触媒性能を維持することが可能となる。また、希土類元素の酸化物を含むため、ジルコニア系多孔質体の耐熱性及び触媒性能をより向上させることができる。
【0077】
[ジルコニア系多孔質体の製造方法]
以下、ジルコニア系多孔質体の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明のジルコニア系多孔質体の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0078】
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体の製造方法は、
ジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤溶液を100℃以上で添加することにより塩基性硫酸ジルコニウムを生成させる工程A、
前記工程Aで得られた塩基性硫酸ジルコニウムを80℃以下に冷却する工程B、
前記工程Bの後、前記塩基性硫酸ジルコニウムを前記工程Aよりも高温で60分以上熟成する工程C、
前記工程Cで得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウムを含む反応液にアルカリを添加することにより、ジルコニウム含有水酸化物を得る工程D、及び、
前記工程Dで得られたジルコニウム含有水酸化物を熱処理することにより、ジルコニア系多孔質体を得る工程Eを有する。
【0079】
<工程A>
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体の製造方法においては、まず、ジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤溶液を100℃以上で添加することにより塩基性硫酸ジルコニウムを生成させる(工程A)。
【0080】
ジルコニウム塩としては、ジルコニウムイオンを供給するものであればよく、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等を使用できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。この中でも、工業的規模での生産性が高い点でオキシ塩化ジルコニウムが好ましい。
【0081】
ジルコニウム塩溶液を作るための溶媒としては、ジルコニウム塩の種類に応じて選択すればよい。通常は水(純水、イオン交換水、以下同様)が好ましい。
【0082】
ジルコニウム塩溶液の濃度は特に制限されないが、一般的には溶媒1000g中に酸化ジルコニウム(ZrO)として5~250g(特に20~150g)含有されることが望ましい。
【0083】
硫酸塩化剤としては、ジルコニウムイオンと反応して硫酸塩を生成させるもの(すなわち、硫酸塩化させる試薬)であれば限定されず、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等が例示される。硫酸塩化剤は、粉末状、溶液状等のいずれの形態でもよいが、本実施形態に係る製造方法では溶液の状態で用いる。溶液の濃度は適宜設定できる。
【0084】
硫酸塩化剤は、硫酸根(SO 2-)/ZrOの重量比が0.3~0.6となるように添加することが好ましい。また、混合液のフリーの酸濃度は、0.2~2.2N(規定)とすることが好ましい。フリーの酸としては、硫酸、硝酸、塩酸等が例示される。フリーの酸の種類は限定されないが、塩酸が工業的規模での生産性が高い点で好ましい。
【0085】
硫酸塩化剤の添加は、ジルコニウム塩溶液の温度を100℃以上としてから行う。前記ジルコニウム塩溶液の温度は、110℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましい。前記ジルコニウム塩溶液の温度は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0086】
硫酸塩化剤を添加する際は、硫酸塩化剤の温度も100℃以上としてから添加することが好ましい。硫酸塩化剤を添加する際は、硫酸塩化剤の温度とジルコニウム塩溶液の温度とを同温度としてから行うことが好ましい。
【0087】
硫酸塩化の際の圧力条件は、特に限定されないが、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下が好ましく、1.5×10Pa以上5.0×10Pa以下がより好ましい。
【0088】
ジルコニウム塩溶液と硫酸塩化剤は、通常65℃以上の温度において反応し、塩基性硫酸ジルコニウムが生成する。本実施形態では、温度100℃以上のジルコニウム塩溶液に硫酸塩化剤を添加することにより、塩基性硫酸ジルコニウムを生成させる。温度を100℃以上とすることにより硫酸塩化反応を速めることができ、大きな凝集粒子が生成されることを抑制することができる。その結果、ミクロ孔を多く有する二次粒子を得ることができる。
【0089】
硫酸塩化剤を添加した後、オートクレーブ中において反応液を10分以上60分以下の範囲内で保持することが好ましい。前記保持時間は、12分以上がより好ましく、14分以上がより好ましい。前記保持時間は、30分以下がより好ましく、20分以下がより好ましい。塩基性硫酸ジルコニウムとしては限定されないが、例えば、ZrOSO・ZrO、5ZrO・3SO、7ZrO・3SO等の化合物の水和物が例示される。なお、塩基性硫酸ジルコニウムは、これらの1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0090】
<工程B>
次に、前記工程Aで得られた塩基性硫酸ジルコニウムを80℃以下に冷却する。前記冷却温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。前記冷却温度の下限は特に限定されないが、反応液が凍結しない程度が好ましく、例えば、10℃以上、20℃以上等が挙げられる。前記冷却の速度は、特に制御する必要はなく、自然放冷としてよい。ただし、スケールが大きい場合には、自然冷却に時間がかかるため、熱交換器等を使用して冷却してもよい。この場合、冷却速度は、例えば、0.1℃/分以上20℃/分以下の範囲内で適宜設定すればよい。
【0091】
前記80℃以下に冷却した後、80℃以下の温度で保持する時間は、特に限定されず、80℃以下に冷却した後、直ちに、工程Cの加熱を開始してもよく、一定期間(例えば、60分以上120分以下)、80℃以下に保持した後、後述する工程Cの加熱を開始してもよい。
【0092】
<工程C>
次に、前記塩基性硫酸ジルコニウムを前記工程Aよりも高温で60分以上熟成する(工程C)。本実施形態では、100℃以上で塩基性硫酸ジルコニウムを生成し(工程A)、生成した塩基性硫酸ジルコニウムをいったん冷却し(工程B)、再度、前記工程Aよりも高温で60分以上熟成することにより、凝集状態を変化させることができる。
具体的に、本発明者は、凝集状態が以下のように変化していると推察している。
工程Cにより工程Aで形成した粒子の更なる凝集が進む。この凝集により工程Aで形成されたミクロ孔が広がる。その結果、粒内に持つメソ孔、マクロ孔を有する大きな凝集粒子が形成される。以上により、前記細孔容積Aを0.10ml/g以上0.40ml/gとすることができ、且つ、前記維持率Xを25%以上95%以下とすることができたと推察している。
【0093】
前記熟成の温度としては、前記工程Aよりも高温であればよく、工程Aよりも10℃以上高温であることが好ましく、工程Aよりも20℃以上高温であることがより好ましい。具体的に、前記熟成の温度としては、前記工程Aよりも高温である範囲内において、120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。
【0094】
前記熟成の時間としては、好ましくは270分以上、より好ましくは300分以上である。前記熟成の時間としては、生産性の観点から、好ましくは720分以下、より好ましくは660分以下である。
【0095】
その後、前記工程Cで得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウムを80℃以下に冷却する(工程C-1)。ここでの冷却条件は、前記工程Bの項で説明した条件内で適宜設定すればよい。
【0096】
<工程X>
本実施形態に係るジルコニア系多孔質体の製造方法では、前記工程A~前記工程Cのいずれかにおいて、(a)希土類元素の塩、(b)希土類元素を除く遷移金属元素の塩、(c)アルカリ土類金属元素の塩、及び、(d)Al,In,Si,Sn及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属の塩、からなる群から選ばれる1種以上の塩を添加することが好ましい(工程X)。前記塩を添加することにより、ジルコニア系多孔質体の耐熱性及び触媒性能をより向上させることができる。
【0097】
前記工程Xは、前記工程A~前記工程Cのいずれかにおいて行うことが好ましいが、中でも、前記工程Bの後、前記工程Cの前段において行うことが好ましい。つまり、生成した塩基性硫酸ジルコニウムを冷却した後(工程Bの後)、再加熱する前に前記塩を添加した上で(工程Xを行った上で)、再加熱を行う(工程Cを行う)ことが好ましい。
なお、前記工程Xは、前記工程A~前記工程Cの複数の工程にわたって複数回行ってもよい。
【0098】
<工程D>
次に、得られた熟成後の塩基性硫酸ジルコニウムを含む反応液にアルカリを添加することにより、ジルコニウム含有水酸化物(水酸化ジルコニウム)を得る(工程D)。アルカリとしては限定されず、例えば、水酸化アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。この中でも、工業的なコスト面から水酸化ナトリウムが好ましい。
【0099】
アルカリの添加量は、塩基性硫酸ジルコニウムの溶液から沈殿物として水酸化ジルコニウムを生成させることができれば特に限定されない。通常は上記溶液のpHが11以上、好ましくは12以上となるように添加する。
【0100】
アルカリの添加方法としては、(1)塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液にアルカリ溶液を添加する、(2)アルカリ溶液に塩基性硫酸ジルコニウム含有反応液を添加する、2つの方法があるが、特に限定されず、どちらの方法を用いてもよい。
【0101】
中和反応後は、水酸化ジルコニウム含有溶液を35~60℃で1時間以上保持することが好ましい。これにより、生成した沈殿が熟成されるとともに、濾別が容易となる。
【0102】
次に、水酸化ジルコニウムを固液分離法により回収する。例えば、濾過、遠心分離、デカンテーション等が利用できる。
【0103】
水酸化ジルコニウムを回収後、水酸化ジルコニウムを水洗し、付着している不純物を除去することが好ましい。
【0104】
水酸化ジルコニウムは、自然乾燥又は加熱乾燥により乾燥してもよい。
【0105】
<工程E>
次に、前記水酸化ジルコニウムを熱処理(焼成)することによりジルコニア系多孔質体を得る(工程E)。熱処理温度は特に限定されないが、400~900℃程度で1~5時間程度が好ましい。熱処理雰囲気は、大気中又は酸化性雰囲気中が好ましい。
【0106】
得られたジルコニア系多孔質体は、必要に応じてハンドリング性向上などの目的で、凝集を解す処理をしてもよい。例えば、遊星ミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を利用できる。
【0107】
以上、本実施形態に係るジルコニア系多孔質体の製造方法について説明した。
【実施例
【0108】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において得られたジルコニア系多孔質体中には、不可避不純物として酸化ハフニウムを酸化ジルコニウムに対して1.3~2.5質量%含有(下記式(X)にて算出)している。
<式(X)>
([酸化ハフニウムの質量]/([酸化ジルコニウムの質量]+[酸化ハフニウムの質量]))×100(%)
【0109】
以下の実施例で示される各成分の含有量の最大値、最小値は、他の成分の含有量に関係なく、本発明の好ましい最小値、好ましい最大値と考慮されるべきである。
また、以下の実施例で示される測定値の最大値、最小値は、各成分の含有量(組成)に関係なく、本発明の好ましい最小値、最大値であると考慮されるべきである。
【0110】
[ジルコニア系多孔質体の作製]
(実施例1)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物157g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0111】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)887gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0112】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0113】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液150g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液25g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25gを添加した。
【0114】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0115】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0116】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を900℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例1に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0117】
(実施例2)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物131g(ZrO換算:50g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0118】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)739gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0119】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0120】
次に、CeO換算で20%の硝酸セリウム溶液200g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25g、Y換算で20%の硝酸イットリウム溶液25gを添加した。
【0121】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0122】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0123】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を900℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例2に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0124】
(実施例3)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物183g(ZrO換算:70g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0125】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)1035gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0126】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0127】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液100g、La換算で20%の硝酸ランタン溶液10g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液20g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液20gを添加した。
【0128】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0129】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0130】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を700℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例3に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0131】
(実施例4)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物170g(ZrO換算:65g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0132】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)961gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0133】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0134】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液100g、La換算で20%の硝酸ランタン溶液25g、Y換算で20%の硝酸イットリウム溶液50gを添加した。
【0135】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0136】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0137】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を800℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例4に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0138】
(実施例5)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物157g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0139】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて130℃まで昇温し、圧力を3×10Paとした。130℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)887gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0140】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0141】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液150g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液25g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25gを添加した。
【0142】
次に、圧力を8×10Paとし、170℃まで昇温させ、600分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0143】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0144】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を950℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例5に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0145】
(実施例6)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物222g(ZrO換算:85g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0146】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)1256gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0147】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0148】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにLa換算で20%の硝酸ランタン溶液25g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液25g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25gを添加した。
【0149】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0150】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0151】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を900℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例6に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0152】
(実施例7)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物117g(ZrO換算:45g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0153】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)669gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0154】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0155】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液100g、La換算で20%の硝酸ランタン溶液25g、Al換算で10%の硝酸アルミニウム溶液300gを添加した。
【0156】
次に、圧力を5×10Paとし、150℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0157】
次に、室温になるまで放冷し、25%アンモニア水(中和用アルカリ)をpHが10以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0158】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を1050℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、実施例7に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0159】
(比較例1)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物157g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0160】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)1035gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た。
【0161】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た。
【0162】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液100g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液25g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25gを添加し、均一になるように混合した。
【0163】
次に、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで、60分間かけて添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た。
【0164】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を600℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、比較例1に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0165】
(比較例2)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物157g(ZrO換算:60g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0166】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)887gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た(工程A)。
【0167】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た(工程B)。
【0168】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液150g、Nd換算で20%の硝酸ネオジム溶液25g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25gを添加した。
【0169】
次に、圧力を2×10Paとし、110℃まで昇温させ、360分間保持し、熟成させた(工程C)。
【0170】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0171】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を900℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、比較例2に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0172】
(比較例3)
オキシ塩化ジルコニウム・8水和物131g(ZrO換算:50g)をイオン交換水に溶解し、次に35質量%塩酸及びイオン交換水により酸濃度が0.67N、ZrO濃度が4w/v%(質量体積パーセント濃度)となるように調整し、ジルコニウム塩溶液を得た。
【0173】
得られたジルコニウム塩溶液をオートクレーブに入れて120℃まで昇温し、圧力を2×10Paとした。120℃まで昇温した後、同温度で5%硫酸ナトリウム(硫酸塩化剤溶液)739gを添加し、さらに15分間保持した。以上により塩基性硫酸ジルコニウムを得た。
【0174】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウムを室温(25℃)になるまで放冷し、塩基性硫酸ジルコニウムを含有するスラリーを得た。
【0175】
次に、得られた塩基性硫酸ジルコニウム含有スラリーにCeO換算で20%の硝酸セリウム溶液200g、Pr11換算で20%の硝酸プラセオジム溶液25g、Y換算で20%の硝酸イットリウム溶液25gを添加した。
【0176】
次に、圧力を2×10Paとし、150℃まで昇温させ、10分間保持した。
【0177】
次に、室温になるまで放冷し、25%水酸化ナトリウム(中和用アルカリ)をpHが13以上になるまで添加し、水酸化ジルコニウム含有スラリーを得た。その後、水酸化ジルコニウム含有スラリーをろ過・水洗し、ジルコニウム含有水酸化物を得た(工程D)。
【0178】
次に、得られたジルコニウム含有水酸化物を900℃で5時間熱処理(焼成)した。得られた焼成物を乳鉢でほぐし、比較例3に係るジルコニア系多孔質体を得た。
【0179】
(比較例4)
ジルコニアに換算して35g分のオキシ塩化ジルコニウムを含む水溶液1Lを調製し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを15g/lとなるように添加、撹拌しながら95℃に加熱、沈殿を生じさせた後、アンモニア水を加えてpHを9とし、ろ過後2%アンモニア水1Lで3回リパルプ洗浄し、水酸化ジルコニウムを得た。
こうして得られたジルコニア換算35gの水酸化ジルコニウムに500gの純水を加え、pH10の水酸化ジルコニウムスラリーを調製して、80℃に昇温した(第1段階)。
得られた水酸化ジルコニウムスラリーを80℃に保持し、これに酸化セリウムを10g、酸化ランタンを1g、酸化プラセオジムを2g、酸化ネオジムを2g含む室温の塩酸溶液150gをチューブポンプで添加し、撹拌しながら水酸化ジルコニウムに吸着させた。添加完了時のpHは6.5であり、水酸化ジルコニウムに対するセリウムイオン、ランタンイオン、プラセオジムイオン及びネオジムイオン(これらを称して希土類イオンともいう)の吸着率は95%以上であった(第2段階)。
前記第2段階で得られたセリウムイオン等の希土類イオンを吸着した水酸化ジルコニウムスラリーにアルカリとしてアンモニア水を添加し、pHを10に調整した。その結果、第2段階で水酸化ジルコニウムに未吸着であった希土類イオンは、全量水酸化物として沈殿した(第3段階)。このことは、続く第4段階で得られるろ液中にセリウムイオン、ランタンイオン、プラセオジムイオンおよびネオジムイオン(希土類イオン)が検出されないことから確認された。
前記第3段階で得られた水酸化物スラリーをヌッチェでろ過し、得られた水酸化物を2%アンモニア水1Lで3回リパルプ洗浄し、セリウム-ジルコニウム系水酸化物ケーキを得た(第4段階)。
上記第4段階で得られた水酸化物ケーキを120℃で乾燥後、乳鉢で粉砕し、大気中700℃で3時間焼成し、CZ系複合酸化物を得た(第5段階)
【0180】
[加熱前の(初期の)細孔容積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系多孔質体について、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:細孔分布測定装置(マイクロメリティクス製オートポアIV9500)
測定範囲:0.0036~10.3μm
測定点数:120点
水銀接触角:140degrees
水銀表面張力:480dyne/cm
【0181】
得られた細孔分布を用い、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積(細孔容積B)、及び、加熱する前の細孔分布全範囲における細孔容積(細孔容積D)とを求めた。結果を表1(細孔容積「Fresh」の欄)に示す。
また、得られた細孔分布を用い、初期(加熱する前)の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径を求めた。結果を表1(細孔モード径「Fresh」の欄)に示す。
【0182】
[大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の細孔容積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系多孔質体について、大気圧(0.1013MPa)下、1250℃で10時間加熱した。大気圧下、1250℃で10時間加熱した後のジルコニア系多孔質体について、細孔分布測定装置(「オートポアIV9500」マイクロメリティクス製)を用い、水銀圧入法にて細孔分布を得た。測定条件は「加熱前の細孔容積の測定」と同様とした。
【0183】
得られた細孔分布を用い、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積(細孔容積A)、及び、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布全範囲における細孔容積(細孔容積C)とを求めた。結果を表1(細孔容積「1150℃」の欄)に示す。
また、得られた細孔分布を用い、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布1000nm以下の領域での細孔モード径を求めた。結果を表1(細孔モード径「1150℃」の欄)に示す。
【0184】
また、上記にて得られた細孔容積A、細孔容積Bを用い、下記式(1)により、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率Xを求めた。
また、上記にて得られた細孔容積C、細孔容積Dを用い、下記式(2)により、細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Yを求めた。結果を表1(細孔容積維持率の欄)に示す。
<細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率X>
[(細孔容積A)/(細孔容積B)]×100 式(1)
<細孔分布全範囲における細孔容積の維持率Y>
[(細孔容積C)/(細孔容積D)]×100 式(2)
【0185】
[加熱前の(初期の)比表面積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系多孔質体の比表面積を、比表面積計(「マックソーブ」マウンテック製)を用いてBET法にて測定した。結果を表1(比表面積「Fresh」の欄)に示す。
【0186】
[大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の比表面積の測定]
実施例、比較例のジルコニア系多孔質体について、大気圧(0.1013MPa)下、1150℃で12時間加熱した。大気圧下、1150℃で12時間加熱した後のジルコニア系多孔質体の比表面積を、「加熱処理前の比表面積の測定」と同様にして測定した。結果を表1(比表面積「1150℃」の欄)に示す。
【0187】
【表1】
【要約】
【課題】 高温に晒された後も、高いガス拡散性を維持することが可能なジルコニア系多孔質体を提供すること。
【解決手段】希土類元素の酸化物を含み、大気圧下、1150℃で12時間加熱した後の、細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Aとし、加熱する前の細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積を細孔容積Bとしたときに、細孔容積Aが0.10ml/g以上0.40ml/g以下であり、式[[(細孔容積A)/(細孔容積B)]×100]で表される細孔分布30nm以上200nm以下の範囲における細孔容積の維持率Xが25%以上95%以下であるジルコニア系多孔質体。
【選択図】 なし