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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】構造物用制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220104BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220104BHJP
   F16F 15/027 20060101ALI20220104BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/04 E
F16F15/027
E04H9/02 331Z
E04H9/02 331E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017131468
(22)【出願日】2017-07-04
(65)【公開番号】P2019015310
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501253280
【氏名又は名称】倉林 浩
(73)【特許権者】
【識別番号】512030452
【氏名又は名称】株式会社三誠AIR断震システム
(73)【特許権者】
【識別番号】000149594
【氏名又は名称】株式会社大本組
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】倉林 浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 祥一
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-286088(JP,A)
【文献】特開平11-294521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象箇所に設置されるベース架台と、
前記ベース架台上に配置され空気を噴き出す空気浮上マスと、
前記ベース架台上方に配置され前記空気浮上マスからの空気の圧力により浮上する制振用マスと、
前記ベース架台のX方向両辺部に各々X方向に沿って配置した一対のガイドレール部と、
前記一対のガイドレール部に対してX方向にスライド可能に配置され、前記制振用マスのX方向各側面に連結されるとともに、制振用マスの浮上時にスライダを下降させるスライダ上下機構部を備える所要数のスライダ部と、
前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記制振用マスの振動時にこの制振用マスに減衰作用を及ぼす減衰機構と、
前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記制振用マスの振動時にこの制振用マスに復元作用を及ぼす復元機構と、
を有することを特徴とする構造物用制振装置。
【請求項2】
対象箇所に設置されるベース架台と、
前記ベース架台上に配置され空気を噴き出す空気浮上マスと、
前記ベース架台上方に配置され前記空気浮上マスからの空気の圧力により浮上するTMDマスと、
前記ベース架台のX方向両辺部に各々X方向に沿って配置した一対のガイドレール部と、
前記一対のガイドレール部に対してX方向にスライド可能に配置され、前記TMDマスのX方向各側面に連結されるとともに、TMDマスの浮上時にスライダを下降させるスライダ上下機構部を備える所要数のスライダ部と、
前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記TMDマスの振動時にこのTMDマスに減衰作用を及ぼすオイルダンパーと、
前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記TMDマスの振動時にこのTMDマスに復元作用を及ぼすコイルばねと、
を有することを特徴とする構造物用制振装置。
【請求項3】
対象箇所に四角形配置の状態で設置した4個の設置基台と、
4個の設置基台の中央位置を占める対象箇所に配置した空気を噴き出す空気浮上マスと、
前記空気浮上マスの上方に配置され前記空気浮上マスからの空気の圧力により浮上するH形枠材を枠組みし、平面視四角形状のTMDマスと、
前記4個の設置基台のうち一方の対角配置の2個の設置基台上に設置するとともに、前記TMDマスの一方の対角配置の両隅部下面に各々上部を連結した2個のクロスガイド体と、
前記4個の設置基台のうち他方の対角配置の2個の設置基台上に配置した前記TMDマスの他方の対角配置の両隅部と滑り接触する2個の滑り支承と、
を有することを特徴とする構造物用制振装置。
【請求項4】
前記TMDマスの下面外周部内側全体にわたって設けた前記TMDマスの浮上時にTMDマスの下面から外方への空気漏れを防止する空気漏れ防止機構部を備えることを特徴とする請求項2記載の構造物用制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物用制振装置に関し、詳しくは、建築・土木・機械構造物等の制振(又は免震)を行うものであり、当該構造物の上部や床に単独或いは複数個設置し、当該構造物に外部から地震や台風、設備機械等からの振動外力が加わった時に、構造物が水平方向に大きく揺れるのを防止する振動制御装置として機能する構造物用制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、台風、地震、交通振動等のような振動源により励起される構造物の強制加振や共振現象による振動に対して、安全性や居住性等の確保には制振・免震装置(TMD或いはAMD)・制震ブレース・炭素繊維等による本体補強により対処している。
【0003】
しかし、上述した従来技術においては、装置の摩擦の影響により性能に問題が有り、また、応答変位が大きくなるのでシステム構成が大規模になり、また装置価格も高額なものとなる。
【0004】
また、上述した従来技術においては、強風,地震,交通振動、超長周期地震動、渦励振等の振動入力を対象とするとき、構造物は大変形を起こし安全性や居住性に問題が生じる。
【0005】
更に、上述した従来技術においては、減衰が小さく低い卓越振動数を持つ構造物は基本的にはアスペクト比が大きく変形時に曲げ・せん断変形する。
【0006】
特許文献1には、上面を平坦な面に形成した基礎の上に、下面を平坦な面に形成した上部構造物を、基礎の上面と上部構造物の下面とが面接触するように載置するとともに、面接触する基礎の上面と上部構造物の下面の外周部の接触面間を外周封止部材によって封止し、地震時に基礎の上面と上部構造物の下面の間に圧力気体を導入することにかしよって上部構造物を浮上させるようにして、面接触する基礎の上面と上部構造物の下面の接触面間の中間部を区画、封止する中間封止部材を、上部構造物の外周側から装着するように構成した浮上式の免震装置が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1の浮上式の免震装置の場合、大重量の上部構造物に対してその下面に圧力気体を導入してこの上部構造物を浮上させる構造を採用するものであり、やはり装置構成が大規模になり、また装置価格も高額なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-202769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の事情に鑑み開発されたものであり、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る構造物用制振装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る構造物用制振装置は、対象箇所に設置されるベース架台と、前記ベース架台上に配置され空気を噴き出す空気浮上マスと、前記ベース架台上方に配置され前記空気浮上マスからの空気の圧力により浮上する制振用マスと、前記ベース架台のX方向両辺部に各々X方向に沿って配置した一対のガイドレール部と、前記一対のガイドレール部に対してX方向にスライド可能に配置され、前記制振用マスのX方向各側面に連結されるとともに、制振用マスの浮上時にスライダを下降させるスライダ上下機構部を備える所要数のスライダ部と、前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記制振用マスの振動時にこの制振用マスに減衰作用を及ぼす減衰機構と、前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記制振用マスの振動時にこの制振用マスに復元作用を及ぼす復元機構と、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、制振用マスを振動発生時に的確に空気浮上させガイドレール部により摺動させる構成として、制振用マスの制振動作時の摺動抵抗が小さく、低騒音状態でしかも回転防止を図りつつ制振動作を実行させることが可能となり、また、減衰機構による減衰作用、復元機構による復元作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る1軸(X方向)制振型の構造物用制振装置を実現し提供することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、TMDマスを振動発生時に的確に空気浮上させガイドレール部により摺動させる構成として、TMDマスの制振動作時の摺動抵抗が小さく、低騒音状態でしかも回転防止を図りつつ制振動作を実行させることが可能となり、また、オイルダンパーによる減衰作用、コイルばねによる復元作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る1軸制振型の構造物用制振装置を実現し提供することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、TMDマスを振動発生時に的確に空気浮上させクロスガイド体により2軸方向に摺動させる構成として、TMDマスの制振動作時の摺動抵抗が小さく、低騒音状態でしかも回転防止を図りつつ制振動作を実行させることが可能となり、また、滑り支承による減衰作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る2軸制振型の構造物用制振装置を実現し提供することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、前記請求項2記載の発明において、前記TMDマスの下面外周部内側全体にわたって設けた前記TMDマスの浮上時にTMDマスの下面から外方への空気漏れを防止する空気漏れ防止機構部を備えることから、振動発生時におけるTMDマスを安定した状態で空気浮上させ制振動作を行わせることができる構造物用制振装置を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施例1に係る構造物用制振装置の概略平面図である。
図2図2は本実施例1に係る構造物用制振装置の概略正面図である。
図3図3は本実施例1に係る構造物用制振装置の一部を断面として示す部分切欠概略側面図である。
図4図4は本実施例1に係る構造物用制振装置におけるガイドレール部、スライダ部の構造及び動作の説明図である
図5図5は本実施例1に係る構造物用制振装置における空気漏れ防止機構部の動作説明図である。
図6図6は本発明の実施例2に係る構造物用制振装置の概略平面図である。
図7図7は本実施例2に係る構造物用制振装置の概略正面図である。
図8図8は本実施例2に係る構造物用制振装置の概略側面図である。
図9図9は本実施例2に係る構造物用制振装置におけるガイドレール部の概略構造図である。
図10図10は本発明の実施例3に係る構造物用制振装置の概略斜視図である。
図11図11は本発明の実施例4に係る構造物用制振装置の概略平面図である。
図12図12は本実施例4に係る構造物用制振装置の概略正面図である。
図13図13は本実施例4に係る構造物用制振装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る構造物用制振装置を提供するという目的を、対象箇所に設置されるベース架台と、前記ベース架台上に配置され空気を噴き出す空気浮上マスと、前記ベース架台上方に配置され前記空気浮上マスからの空気の圧力により浮上するTMDマスと、前記ベース架台のX方向両辺部に各々X方向に沿って配置した一対のガイドレール部と、前記一対のガイドレール部に対してX方向にスライド可能に配置され、前記TMDマスのX方向各側面に連結されるとともに、TMDマスの浮上時にスライダを下降させるスライダ上下機構部を備える所要数のスライダ部と、前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記TMDマスの振動時にこのTMDマスに減衰作用を及ぼすオイルダンパーと、前記ベース架台に対してX方向配置に取り付けた前記TMDマスの振動時にこのTMDマスに復元作用を及ぼすコイルばねと、を有する構成により実現した。
【実施例
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る構造物用制振装置について詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る構造物用制振装置1は、1軸方向(X方向)の制振を行うように構成した浮上式のものである。
【0022】
すなわち、本実施例1に係る構造物用制振装置1は、図1乃至図3に示すように、床面4上(又は構造物上)に設置される平面視長方形状(又は平面視正方形状でも良い)のベース架台2と、前記ベース架台2上に固定配置した鋼板、樹脂板の2層構造からなる設置基材3と、前記設置基材3上に配置され空気を噴き出し後述するTMDマス7を浮上させる空気浮上マス6と、設置基材3上方に配置され直方体状で重量が大きい制振用マスであるTMDマス7と、スタッドボルト8によりTMDマス7に固定される上向きコの字形でY方向に沿って添設した中央連結具9と、前記ベース架台2のX方向両辺部に各々X方向に沿って1個ずつ固定配置した一対のガイドレール部10、10と、前記一対のガイドレール部10、10に対してX方向にスライド可能に配置されるとともに、前記空気浮上マス6のX方向各側面に連結されたスライダ上下機構部11Aを備える所要数のスライダ部11と、前記空気浮上マス6の下面外周部内側全体にわたって設けた空気漏れ防止機構部12と、前記ベース架台2の各隅部に各々片側2個ずつ対向配置に設けた合計4個の隅部支柱部13と、片側2個ずつの隅部支柱部13間に、各々Y方向配置で架設した一対の取付具14と、前記一対の取付具14のうちの一方の取付具14と前記中央連結具9のY方向に沿った一片との間、一対の取付具14のうちの他方の取付具14と前記中央連結具9のY方向に沿った他片との間に、各々Y方向中央位置でX方向配置に取り付けた減衰機構である一対のオイルダンパー15と、前記一方の取付具14と前記中央連結具9のY方向に沿った一片との間、及び前記他方の取付具14と前記中央連結具9のY方向に沿った他片との間で、かつ、一対のオイルダンパー15のY方向両外側の位置に各々X方向配置で連結した復元機構である合計8個のコイルばね16と、前記ベース架台2上で、かつ、前記4個の隅部支柱部13よりもY方向中央寄りの位置に各々設けた合計4個の弾性緩衝具取付支柱17と、各弾性緩衝具取付支柱17に各々取り付けるとともに、前記TMDマス7のY方向側面に各々対峙させた片側2個ずつ対向配置のゴム材等からなりTMDマス7の過振動を抑制し安全性を高める合計4個の弾性緩衝具18と、を有している。
【0023】
次に、図1図2図4を参照して前記ガイドレール部10、前記スライダ上下機構部11Aを備えるスライダ部11について説明する。
【0024】
前記ガイドレール部10は、図4に示すように、前記ベース架台2のX方向両辺部に各々X方向に沿ってレール基台10aを溶接により固定し、このレール基台10aの上面にガイドレール10bをX方向に配置することにより構成している。
【0025】
前記スライダ上下機構部11Aを備えるスライダ部11は、図1図2図4に示すように、前記空気浮上マス6のX方向側面にボルト21により取り付けた一対の固定板22、22により支持した連結片23を備え、前記連結片23の下側にスライダ保持体24を配置し、このスライダ保持体24の下面に前記ガイドレール10bに摺接させるスライダ25を溶接により固設している。
【0026】
また、前記連結片23の下面と、前記スライダ保持体24の上面とに皿バネ25aを介在させるとともに、前記連結片23の内部から前記スライダ保持体24の内部にわたって前記皿バネ25aと同心配置にノックピン26を配置し、図4左欄に示す通常時(例えば地震動が無い状態)では、スライダ保持体24を皿バネ25aを圧縮した状態としつつ上面を前記連結片23の下面に近接させた位置となるように位置規制し、前記スライダ25を前記ガイドレール10bに摺接させるように構成している。
【0027】
更に、制振時((例えば地震動が生じ前記TMDマス7を上方に浮上させる状態)では、前記ノックピン26を作動させ、前記皿バネ25aに対する位置規制を解除し皿バネ25aの弾性力により前記スライダ保持体24及びスライダ25を所定寸法下降させて、図4右欄に示すように、前記スライダ25を前記ガイドレール10bに摺接させるように構成している。
【0028】
すなわち、前記スライダ保持体24、皿バネ25a、ノックピン26により前記スライダ上下機構部11Aを構成し、制振時において浮上状態となった前記TMDマス7によるX方向の制振動作を的確に実行し得るように構成している。
【0029】
次に、前記空気漏れ防止機構部12について、図5を参照して説明する。
前記空気漏れ防止機構部12は、図5に示すように、前記空気浮上マス6の下面外周部内側全体にわたって設けた凹溝部27と、前記凹溝部27全体に埋め込んだ例えばゴム材或いは弾性合成樹脂材等からなる弾性を有する自動膨出管28と、を具備している。
【0030】
そして、通常時(例えば地震動が無い状態)においては図5左欄に示すように前記空気浮上マス6の凹溝部27内に自動膨出管28を押し潰した状態で収納しておき、制振時((例えば地震動が生じ前記TMDマス7を上方に浮上させる状態)では図5右欄に示すように前記凹溝部27内の自動膨出管28の下方全体を自動的に膨出させてその下端側を前記設置基材3に密接させ前記空気浮上マス6の下部から外部への空気漏れを防止し、TMDマス7の浮上動作を的確に行うように構成している。
【0031】
次に、空気浮上マス6用の空気供給系、ノックピン26の駆動系について図2図4を参照して説明する。
【0032】
本実施例1に係る構造物用制振装置1は、上述した構成の他、地震動等の振動を検出する振動センサ31と、振動センサ31の検出信号に基づき前記空気浮上マス6用の空気駆動信号、ノックピン26用の駆動信号を生成する制御部32と、空気浮上マス6の空気供給系を構成する空気供給源33、流量制御弁34、空気供給管路35と、前記ノックピン26用の駆動信号に基づき前記ノックピン26を動作させるアクチュエーター36と、を具備している。
【0033】
そして、空気駆動信号に基づき空気供給源33を動作させ流量制御弁34、空気供給管路35を経て前記空気浮上マス6に所定の圧力空気を送り、空気浮上マス6の下面に空気を噴き出しこの空気浮上マス6、TMDマス7を浮上させるとともに、前記駆動信号に基づきノックピン26を動作させてこのノックピン26による前記皿バネ25aに対する位置規制を解除するように構成している。
【0034】
本実施例1の構造物制振装置1は、建築・土木・機械構造物等の振動制御(免震・制振(震))装置であり、当該構造物の上部や床に単独或いは複数のシステムを設置することで、当該構造物に外部から地震や台風、設備機械等からの振動外力が加わった時に、構造物が水平方向に大きく揺れるのを防止するもので、構造物の安全性・居住性を確保するために構造物の相対変位・絶対加速度を低減するものである。
【0035】
本実施例1の構造物制振装置1においては、任意に質量設定されたTMDマス7を空気浮上マス6による空気浮上構造とすることにより、水平1方向(X方向)に移動(能動的・受動的とも)可能とし、併せて回転防止機能、荷重支持機能を備えたガイドレール部10、復元力付与機構を構成するコイルばね16、減衰機構を構成するオイルダンパー15等で構成されている。
【0036】
なお、特別用途の場合には摩擦板等との併用も可能である。
【0037】
本実施例1の構造物制振装置1において、復元力付与機構は周期調整機能を持っている前記コイルバネ16の他、板バネ、積層ゴム等で構成することもできる。
【0038】
また、減衰機構は、粘性系のオイルダンパー15の他、弾塑性系、摩擦系等の減衰機構で構成することもできる。
【0039】
本実施例1の構造物制振装置1において、前記空気供給源33は、空気圧縮機を構造物用制振装置1に近接して設置し、また空気圧力、浮上高さは流量制御弁34等により自由に設定できるように構成している。
【0040】
以下、本実施例1の構造物制振装置1について更に詳述する。
【0041】
本実施例1の構造物制振装置1は、空気漏れ防止機構部12を備え、空気浮上マス6の浮上時にこの空気浮上マス6の下部からの空気漏れを防止し、空気浮上マス6の浮上機能を高めている。
【0042】
前記空気浮上マス6の周囲の空気漏れを防ぐシーリング方法には、空気を活用する方法と、機械的なシール方法等が選択可能であり、制御対象構造物等の用途により色々な選択肢を有するものである。
【0043】
また、前記空気浮上マス6は通常は着床しており、外部振動入力時に浮上するための前記振動センサ31、制御部32等のトリガー手段を備えており、このときのトリガーレベルは自由に設定可能としている。
【0044】
次に、例えば併用される前記ガイドレール部10は前記TMDマス7の全体質量の約0~30%の荷重支持の他、前記TMDマス7の回転防止機能も備えている。
【0045】
更に、摩擦板を併用することにより例えばシステムの作業性向上と振幅の減少、価格の低減化が得られる。
【0046】
本実施例1の構造物制振装置1において、復元機構は、この構造物制振装置1の用途により自由に選択可能なバネ要素を単独或いは複数または組み合わせて使用することが可能であるが、変形量の大きさ、バネ定数等の仕様は種々に選択可能である。
【0047】
前記減衰機構は、前記構造物制振装置1の使用目的により自由に選択可能であり、主に粘性ダンパー、粘弾性ダンパー、弾塑性ダンパーが単独或いは複数が組み合わせて併用される構成としている。
【0048】
本実施例1の構造物制振装置1において、前記TMDマス7の一部質量を支持するガイドレール部10に関しては、前記TMDマス7が浮上するとき上下方向に自由に移動可能な機構を併用されていることが必要であり、このため、本実施例1ではスライダ上下機構部11Aを採用するものである。
【0049】
前記ガイドレール部10は、前記TMDマス7が空気浮上するとき、前記空気浮上マス6に万一トラブルが発生した時には前記TMDマス7の全体質量を支持することができる機能を発揮するものである。
【0050】
更に要約すると、本実施例1の構造物制振装置1においては、前記TMDマス7を浮上式としたことで、制振動作時の摺動抵抗が小さいので小さい外部入力から応答し振動を低減することが可能となる。
【0051】
このような構造物制振装置1においては、制御機器それぞれの性能を確保するため最適な減衰力を付与するがそのためには基本の減衰力は小さい方が調整がし易くなるので摺動抵抗の小さいことは大きな利点となる。同時に摩耗・発熱が小さくなる利点も有している。
【0052】
本実施例1の構造物制振装置1においては、前記TMDマス7を浮上式の構成としたことで、制振動作時の騒音は小さくなる。
【0053】
前記TMDマス7の振動変位を小さく抑えたり、配管系の変形抑制及び安全性の観点から回転防止機能や振動制御性能は重要な要素となるが、本実施例1の構造物制振装置1においては、前記ガイドレール部10によりかかる機能、性能を発揮させることができる。
【0054】
更に、本実施例1の構造物制振装置1においては、最適な復元力機構や減衰機構で製作されており、周期調整は容易で、減衰力の調整も容易である。
【0055】
以上説明したように、本実施例1の構造物制振装置1によれば、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、構造物の安全性・居住性を確保するために構造物の相対変位・絶対加速度を低減することが可能となり、更に、装置自体の小型化、低価格化をも可能となる。
【0056】
この他、制御盤・振動センサ・駆動装置等を装備することによりアクティブ化も可能となる。
【0057】
本実施例1の構造物制振装置1は、主に、例えば自然外力である長周期地震動を含む地震時、台風等の強風時及び渦励振による共振時、更には環境振動である交通振動、工事振動、設備機械振動等の外部振動に対して安全性、居住性等の維持、確保の点で極めて有益である。
【0058】
(実施例2)
次に、図6乃至図9を参照して本発明の実施例2に係る構造物用制振装置1Aについて説明する。
【0059】
本実施例2に係る構造物用制振装置1Aは、レール式で1軸方向(X方向)の制振を行うように構成したものであり、図6乃至図8に示すように、構造物上又は床面上に設置される平面視長方形状を呈するように枠組みしたベース架台41と、このベース架台41上でX方向に、かつ、所定の間隔をもって平行配置した一対のガイドレール部42、42と、一対のガイドレール部42、42の上方に設置した直方体状で重量が大きいTMDマス43と、前記ベース架台41の四隅部から各々立設した合計4個の支持支柱44と、ベース架台41上において前記TMDマス43のY方向の外側で、かつ、X方向両長辺の中央に相当する位置に各々、ボルト止めした一対の垂直枠組み支柱45、45と、前記4個の支持支柱44のうち一方の長辺側の一方の支持支柱44と、前記一対の垂直枠組み支柱45、45のうちの一方の長辺側の垂直枠組み支柱45における一方の垂直辺部との間、及び前記4個の支持支柱44のうち一方の長辺側の他方の支持支柱44と、前記一対の垂直枠組み支柱45、45のうちの一方の長辺側の垂直枠組み支柱45における他方の垂直辺部との間に、これらの中段位置及び下段位置において取り付けた合計4個のコイルばね46と、これらの上段位置に取り付けた2個のオイルダンパー47と、前記4個の支持支柱44のうち他方の長辺側の2個の支持支柱44と、前記一対の垂直枠組み支柱45、45のうちの他方の長辺側の垂直枠組み支柱45との間に上述した場合と同様に取り付けた合計4個のコイルばね46、及び2個のオイルダンパー47と、前記4個の支持支柱44のY方向内側位置に各々設けた合計4個の弾性緩衝具取付具48と、各弾性緩衝具取付具48に各々取り付けるとともに、前記TMDマス43のY方向側面に各々対峙させた片側2個ずつ対向配置のゴム材等からなる合計4個の弾性緩衝具49と、を有している。
【0060】
前記ガイドレール部42は、図9に示すように、前記ベース架台41上に溶接処理により固定した長尺のレール基台50と、前記レール基台50上にこのレール基台50と同方向に設置されキャップボルト51によりボルト止めしたレール体52と、前記TMDマス43の下面に添設されるとともに前記レール体52上をスライドするスライド体53と、により公知のリニアガイドに類似した構成としている。
【0061】
本実施例2に係る1軸型の構造物用制振装置1Aによれば、TMDマス43をガイドレール部42により摺動させる構成として、オイルダンパー47による減衰作用、コイルばね46による復元作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現することができる。
【0062】
(実施例3)
次に、図10を参照して本発明の実施例3に係る構造物用制振装置1Bについて説明する。
【0063】
本実施例3に係る構造物用制振装置1Bは、レール式で1軸方向(X方向)の制振を行うように構成したものであり、図10に示すように、構造物上又は床面上に設置される平面視長方形状を呈するベース架台61と、前記ベース架台61上で、かつ、このベース架台61の四隅部に設けた4個のシリンダーロッド取付体62と、前記ベース架台61上でX方向に、かつ、所定の間隔をもって平行配置した一対のガイドレール部63、63と、前記ベース架台61上で、かつ、前記一対のガイドレール部63、63よりも内側位置で所定の間隔をもってY方向に平行位置した一対のコイルばね取付体64、64と、前記一対のガイドレール部63、63の上方に配置されるとともに、下面四隅部に固定した所要数のスライド体65を各々一対のガイドレール部63、63にスライド可能に摺接させた直方体状で重量が大きいTMDマス66と、前記TMDマス66のX方向の下面中央部においてY方向に取り付けた四角棒状のコイルばね中間取付体67と、前記一対のコイルばね取付体64、64のうちの一方のコイルばね取付体64とコイルばね中間取付体67のY方向の一方の側面部との間、及び前記一対のコイルばね取付体64、64のうちの他方のコイルばね取付体64とコイルばね中間取付体67のY方向の他方の側面部との間に各々取り付けた合計12個(6列でコイルばね中間取付体67の両側に6個ずつ)のコイルばね68と、前記TMDマス66のX方向の側面部にシリンダー部69aを例えば3個の取付具72を用いて取り付け、前記シリンダー部69aからX方向両側に突出する各シリンダーロッド69bを前記各シリンダーロッド取付体62に各々取り付け支持した2個のオイルダンパー(図10には1個のみ図示)69と、前記前記ベース架台61上で、前記シリンダーロッド取付体62のY方向内側位置に各々設けた合計4個の弾性緩衝具取付具70と、前記各弾性緩衝具取付具70に各々取り付けるとともに、前記TMDマス66のY方向側面に各々対峙させた片側2個ずつ対向配置のゴム材等からなる合計4個の弾性緩衝具71と、を有している。
【0064】
本実施例3に係る1軸型の構造物用制振装置1Bによれば、TMDマス66をガイドレール部63により摺動させる構成として、オイルダンパー69による減衰作用、コイルばね68による復元作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る1軸制振型の構造物用制振装置1Bを実現することができる。
【0065】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4に係る構造物用制振装置1Cについて、図11乃至図13を参照して説明する。
【0066】
本実施例4に係る構造物用制振装置1Cは、2軸方向(X方向及びY方向)の制振を行うように構成した実施例1と同様な浮上式のものであり、図11乃至図13に示すように、床面又は構造物上に平面視四角形配置に設置される鋼板、合成樹脂板、或いはそれらの2層構造からなる4個の設置基台81と、4個の設置基台81により囲まれる領域の中央部で床面又は構造物上に設置される鋼板、合成樹脂板の2層構造とした空気浮上マス載置台82を備え、実施例1の場合と同様な構成とした空気浮上マス83と、前記4個の設置基台81の各中央部に四隅部が合致する配置でこれらの上方に配置されるとともに、H形枠材(H形鋼)84を四角形状に枠組みし、かつ、一対の中間枠84bの下面に、前記空気浮上マス83を配置した四角枠状のTMDマス86と、前記4個の設置基台81のうち一方の対角配置の2個の設置基台81、81上に設置するとともに、前記TMDマス86の一方の対角配置の両隅部下面に各々上部を連結した2個の公知のクロスガイド体87、87と、前記4個の設置基台81のうち他方の対角配置の2個の設置基台81、81上に配置した2個の滑り支承88、88と、を有している。
【0067】
前記クロスガイド体87、87は、各々下側のY方向ガイド部87a、87aの下面を前記一方の対角配置の設置基台81、81に対して各々Y方向に添設し、前記Y方向ガイド部87a、87aに対して各々直交配置した上側のX方向ガイド部87b、87bの上面を、前記TMDマス86におけるH形枠材(H形鋼)84の一方の対角配置の隅部に添着した前記設置基台81と同一形状の上基板84aの下面に各々添設することにより構成している。
【0068】
前記2個の滑り支承88、88のうち一方の滑り支承88は、前記他方の対角配置の2個の設置基台81、81のうち一方の設置基台81上に載置した摩擦抵抗の小さい滑り板89と、この滑り板89の中央部に配置され前記滑り板89上を滑動するとともに、その上面を前記TMDマス86におけるH形枠材(H形鋼)84の他方の対角配置の隅部のうち一方の隅部に添着した前記設置基台81と同一形状の上基板84aの下面に添設した円柱状の滑り体90と、を有している。
【0069】
他方の滑り支承88も上述した場合と同様に構成している。
【0070】
前記Y方向ガイド部87aは、詳細説明は省略するがY方向レールとY方向スライダの組み合わせからなり、TMDマス86の浮上時においてもY方向レールとY方向スライダとの係合が解除されない構造とすることにより、本実施例4に係る構造物用制振装置1CにおけるY方向の制振動作に支障が生じないようにすることができる。
【0071】
同様にX方向ガイド部87bも、詳細説明は省略するがX方向レールとX方向スライダの組み合わせからなり、TMDマス86の浮上時においてもX方向レールとX方向スライダとの係合が解除されない構造とすることにより、本実施例4に係る構造物用制振装置1CにおけるX方向の制振動作に支障が生じないようにすることができる。
【0072】
なお、本実施例4に係る構造物用制振装置1Cにおいても、実施例1の場合と同様な空気漏れ防止機構部85を付加した構成とすることも可能である。
【0073】
本実施例4に係る2軸型の構造物用制振装置1Cによれば、TMDマス86を振動発生時に的確に空気浮上させクロスガイド体87により2軸方向に摺動させる構成として、TMDマス86の制振動作時の摺動抵抗が小さく、低騒音状態でしかも回転防止を図りつつ制振動作を実行させることが可能となり、また、滑り支承88による減衰作用も的確に発揮させることができ、地震動等の振動発生時における相対変位の抑制、装置固有周期調整の多様化を実現し、かつ、装置の小型化、低価格化をも実現し得る2軸制振型の構造物用制振装置1Cを実現することができる。
【0074】
なお、以上説明した本実施例1乃至4の構造物用制振装置1乃至1Cにおいて、これら構造物用制振装置1乃至1Cの空気浮上式の構成と、通常使用されている振動制御装置とを組み合わせることにより、振動制御の性能向上、安全性確保の機能向上を図ることができる。また、前記各構造物用制振装置1乃至1Cの各TMDマス7、43、66、86の振動時の摩擦力は、各々これら各装置の用途に応じて自由に調整することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、振動対策が行われる建築・土木・機械構造物、風力発電機、鉄塔、アンテナ塔、橋梁の主塔、管制塔、観光タワー等の塔状構造物やマテハンレーザー機器等の各種構造物、更には、サーバー等コンピュータ機器、制御盤、半導体機器、大型機械構造物(ロータリーコンプレッサー)、ヨーイング等の構造物に関する構造物用制振装置又は構造物用免震装置として広範に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 構造物用制振装置
1A 構造物用制振装置
1B 構造物用制振装置
1C 構造物用制振装置
2 ベース架台
3 設置基材
4 床面
5 空気浮上マス支持台
6 空気浮上マス
7 TMDマス
8 スタッドボルト
9 中央連結具
10 ガイドレール部
10a レール基台
10b ガイドレール
11 スライダ部
11A スライダ上下機構部
12 空気漏れ防止機構部
13 隅部支柱部
14 取付具
15 オイルダンパー
16 コイルばね
17 弾性緩衝具取付支柱
18 弾性緩衝具
21 ボルト
22 固定板
23 連結片
24 スライダ保持体
25 スライダ
25a 皿バネ
26 ノックピン
27 凹溝部
28 自動膨出管
31 振動センサ
32 制御部
33 空気供給源
34 流量制御弁
35 空気供給管路
36 アクチュエーター
41 ベース架台
42 ガイドレール部
43 TMDマス
44 支持支柱
45 垂直枠組み支柱
46 コイルばね
47 オイルダンパー
48 弾性緩衝具取付具
49 弾性緩衝具
50 レール基台
51 キャップボルト
52 レール体
53 スライド体
61 ベース架台
62 シリンダーロッド取付体
63 ガイドレール部
64 コイルばね取付体
65 スライド体
66 TMDマス
67 中間取付体
68 コイルばね
69 オイルダンパー
69a シリンダー部
69b シリンダーロッド
70 弾性緩衝具取付具
71 弾性緩衝具
72 取付具
81 設置基台
82 空気浮上マス載置台
83 空気浮上マス
84 H形枠材
84a 上基板
84b 中間枠
85 空気漏れ防止機構部
86 TMDマス
87 クロスガイド体
87a Y方向ガイド部
87b X方向ガイド部
88 滑り支承
89 滑り板
90 滑り体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13