(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のヘッドランプ装置
(51)【国際特許分類】
B62J 6/025 20200101AFI20220104BHJP
【FI】
B62J6/025
(21)【出願番号】P 2017183647
(22)【出願日】2017-09-25
【審査請求日】2020-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 薫
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174754(JP,A)
【文献】特開2010-202077(JP,A)
【文献】特開2003-022704(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0044826(KR,A)
【文献】米国特許第02138076(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/025
B62J 6/02
B60Q 1/068
F21S 41/675
F21S 41/63
F21V 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置であって、
内部空間を有するハウジングと、
発光する光源装置、及び、前記光源装置からの光を前記ハウジングから前方に向けて出射させる光出射装置を有し、前記ハウジングに対して傾動可能な状態で前記ハウジング
の前記内部空間に収容され
、前記ハウジングに対して前後方向と前記前後方向に垂直な方向とにクリアランスが設けられた内部ユニットと、を備え、
前記内部ユニットは、前記ハウジングに傾動自在に支持される支点部を有し、
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置されて、かつ、前記光出射装置に重なる、鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項2】
前記支点部は、前記光出射装置の面積中心又はその近傍に配置されている、請求項1に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項3】
前記ハウジングのうち前記内部ユニットの後方に配置された後壁部には、正面視において、前記光源装置又は前記面積中心を包含する領域に前記光源装置を支持する壁面が連続的に形成されており、
前記後壁部には、前記内部ユニットの前記支点部に結合される支点部材が設けられている、請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項4】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの上下方向中心又はその近傍に配置され、
前記支点部は、左右方向の軸線周りに傾動可能に支持されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項5】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの長手方向中心又はその近傍に配置され、
前記支点部は、前記長手方向に直交する方向に傾動可能に支持されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項6】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの左右方向中心又はその近傍に配置され、
前記支点部は、上下方向の軸線周りに傾動可能に支持されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項7】
前記支点部を支点として前記内部ユニットを前記ハウジングに対して前後方向に垂直な第1方向に傾動させる第1操作部材と、
前記支点部を支点として前記内部ユニットを前記ハウジングに対して前後方向に垂直な第2方向に傾動させる第2操作部材と、を更に備え、
前記支点部は、正面視において、前記第1操作部材及び前記第2操作部材の両方よりも前記内部ユニットの面積中心寄りに配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項8】
正面視において、前記内部ユニットの面積中心から前記支点部までの距離は、前記内部ユニットの前記面積中心から前記第1操作部材までの距離の半分よりも短く、かつ、前記内部ユニットの前記面積中心から前記第2操作部材までの距離の半分よりも短い、請求項7に記載の鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【請求項9】
光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置であって、
内部空間を有するハウジングと、
発光する光源装置、及び、前記光源装置からの光を前記ハウジングから前方に向けて出射させる光出射装置を有し、前記ハウジングに対して傾動可能な状態で前記ハウジング
の前記内部空間に収容され
、前記ハウジングに対して前後方向と前記前後方向に垂直な方向とにクリアランスが設けられた内部ユニットと、を備え、
前記内部ユニットは、前記ハウジングに傾動自在に支持される支点部を有し、
前記支点部は、正面視において、前記光源装置と重なる対向位置に配置されている、鞍乗型車両のヘッドランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に搭載される光軸調整機能を有するヘッドランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両のヘッドランプ装置において、光軸調整機構を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。光軸調整機構は、ライトユニットを回動自在に支持する支点部材と、その支点部材を支点としてライトユニットを傾動させる複数のスクリューとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光軸調整機構を有するヘッドランプ装置では、光軸調整時にライトユニットが傾動する空間を確保する必要があるため、その空間の分だけハウジングが大きくなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置においてハウジングの小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鞍乗型車両のヘッドランプ装置は、光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置であって、ハウジングと、発光する光源装置、及び、前記光源装置からの光を前記ハウジングから前方に向けて出射させる光出射装置を有し、前記ハウジングに対して傾動可能な状態で前記ハウジングに収容された内部ユニットと、を備え、前記内部ユニットは、前記ハウジングに傾動自在に支持される支点部を有し、前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置されている。
【0007】
前記構成によれば、内部ユニットの傾動支点となる支点部は、正面視における内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置されるので、支点部から内部ユニットの外縁までの距離が短くなる。そうすると、支点部を支点として内部ユニットを傾動させる際に、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の最大移動量が低減される。よって、光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置においてハウジングの小型化を図ることができる。
【0008】
前記光源装置は、発光ダイオードを有するものとしてもよい。
【0009】
前記構成によれば、フィラメント型の光源を用いる場合に比べて寿命が長いため、ハウジングの光源交換用の開口を設ける必要がなく、フィラメント型の場合に開口を形成していた領域に支点部を配置でき、支点部を正面視で内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置する構造を簡易に形成できる。
【0010】
前記ハウジングのうち前記内部ユニットの後方に配置された後壁部には、正面視において、前記光源装置又は前記面積中心を包含する領域に前記光源装置を支持する壁面が連続的に形成されており、前記後壁部には、前記内部ユニットの前記支点部に結合される支点部材が設けられてもよい。
【0011】
前記構成によれば、ハウジングの後壁に光源装置及び面積中心を包含する開口が形成されていないので、支点部を正面視で内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置する構造を簡易に形成できる。
【0012】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの上下方向中心又はその近傍に配置され、前記支点部は、左右方向に延びる軸線周りに傾動可能に支持されてもよい。
【0013】
前記構成によれば、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の上下方向の最大移動量を好適に低減でき、ハウジングの上下方向の寸法を小型化できる。
【0014】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの長手方向中心又はその近傍に配置され、前記支点部は、前記長手方向に直交する方向に傾動可能に支持されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の長手方向に直交する方向の最大移動量を好適に低減でき、ハウジングの当該方向の寸法を小型化できる。
【0016】
前記支点部は、正面視において、前記内部ユニットの左右方向中心又はその近傍に配置され、前記支点部は、上下方向の軸線周りに傾動可能に支持されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の左右方向の最大移動量を好適に低減でき、ハウジングの左右方向の寸法を小型化できる。
【0018】
前記支点部を支点として前記内部ユニットを前記ハウジングに対して前後方向に垂直な第1方向に傾動させる第1操作部材と、前記支点部を支点として前記内部ユニットを前記ハウジングに対して前記第1方向と異なる前後方向に垂直な第2方向に傾動させる第2操作部材と、を更に備え、前記支点部は、正面視において、前記第1操作部材及び前記第2操作部材の両方よりも前記内部ユニットの面積中心寄りに配置されてもよい。
【0019】
前記構成によれば、第1操作部材又は第2操作部材の何れを用いて光軸調整する場合にも、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の前後方向に垂直な方向の最大移動量を好適に低減でき、ハウジングの前後方向に垂直な方向の寸法を小型化できる。
【0020】
正面視において、前記内部ユニットの面積中心から前記支点部までの距離は、前記内部ユニットの前記面積中心から前記第1操作部材までの距離の半分よりも短く、かつ、前記内部ユニットの前記面積中心から前記第2操作部材までの距離の半分よりも短い構成としてもよい。
【0021】
前記構成によれば、第1操作部材又は第2操作部材の何れを用いて光軸調整する場合にも、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の最大移動量を十分に低減できる。
【0022】
本発明の他の態様に係る鞍乗型車両のヘッドランプ装置は、光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置であって、ハウジングと、発光する光源装置、及び、前記光源装置からの光を前記ハウジングから前方に向けて出射させる光出射装置を有し、前記ハウジングに対して傾動可能な状態で前記ハウジングに収容された内部ユニットと、を備え、前記内部ユニットは、前記ハウジングに傾動自在に支持される支点部を有し、前記支点部は、正面視において、前記光源装置と重なる対向位置又は前記対向位置に隣接する隣接位置に配置されている。
【0023】
前記構成によれば、内部ユニットの傾動支点となる支点部は、正面視における内部ユニットの面積中心又はその近傍に配置することができるので、支点部から内部ユニットの外縁までの距離が長くなるのを抑えることができる。これによって、支点部を支点として内部ユニットを傾動させる際に、所定の傾動角を得るための内部ユニットの外縁の最大移動量が低減され、結果的にハウジングの大型化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、光軸調整機構を有する鞍乗型車両のヘッドランプ装置においてハウジングの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係るヘッドランプ装置を搭載した自動二輪車の側面図である。
【
図2】
図1に示すヘッドランプ装置の上方から見た模式的な水平断面図である。
【
図3】
図2に示すヘッドランプ装置の正面から見た模式的な鉛直断面図である。
【
図4】
図2に示すヘッドランプ装置の動作図である。
【
図5】比較例のヘッドランプ装置の上方から見た模式的な水平断面図である。
【
図6】
図5に示すヘッドランプ装置の正面から見た模式的な鉛直断面図である。
【
図7】
図5に示すヘッドランプ装置の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる方向は、車体にヘッドランプ装置が搭載された状態での方向を意味する。
【0027】
図1は、実施形態に係るヘッドランプ装置10を搭載した自動二輪車1の側面図である。
図1に示すように、鞍乗型車両の一例としての自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に支持された前輪3及び後輪4とを備える。前輪3は従動輪であり、後輪4は駆動輪である。車体フレーム2は、ヘッドパイプ2aと、ヘッドパイプ2aから後方に延びるメインフレーム2bと、メインフレーム2bの後部に接続されたピボットフレーム2cとを有する。ヘッドパイプ2aは、ライダーに把持されるバー型のハンドル5に接続されたステアリング軸(図示せず)を回動自在に支持する。前輪3は、当該ステアリング軸が回動することで左右に操舵される。
【0028】
ハンドル5の後方かつメインフレーム2bの上側には、燃料タンク6が配置されている。燃料タンク6の後側には、ライダーが跨って着座するシート7が配置されている。ピボットフレーム2cには、スイングアーム8の前端部が軸支され、スイングアーム8の後端部には、後輪4が軸支されている。メインフレーム2b及びピボットフレーム2cには、原動機E(例えば、内燃機関又は電動モータ)が支持されている。ヘッドパイプ2aの前方には、車体フレーム2に支持されたヘッドランプ装置10が配置されている。ヘッドランプ装置10は、自動二輪車1の前方に向けて光を照射する。
【0029】
車体フレーム2には、ヘッドパイプ2aの前側を覆うフロントカウル9が支持されている。フロントカウル9には、ヘッドランプ装置10の後述するハウジング11の光透過部21bが嵌りこむ開口9aが形成される。フロントカウル9にハウジング11が嵌り込んだ状態で、光透過部21bと、フロントカウル9のうち光透過部21b周囲の部分は、なるべく連続的に連なるよう形成される。すなわち光透過部21bとフロントカウル9とで段差が小さくなるような形状に形成される。フロントカウル9は、空気抵抗を抑えるために前端部から後方に進むにつれて車幅方向及び上下方向に徐々に広がる流線型形状に形成される。また空気抵抗を抑えるためには、フロントカウル9は正面視から見た投影面積が小さく形成されることが好ましい。フロントカウル9に嵌り込むハウジング11を前後方向に垂直な方向に小型化することができれば、ハウジング11を覆うフロントカウル9も小型化を図りやすく、車体全体として空気抵抗の低減を図りやすくなる。またハウジング11の前後方向寸法を小さくすることで、フロントカウル9自体の前後方向を小型化できる。あるいは、フロントカウル9内に収容可能なハウジング11以外の車載スペースを大きくすることができる。
【0030】
図2は、
図1に示すヘッドランプ装置10の上方から見た模式的な水平断面図である。
図3は、
図2に示すヘッドランプ装置10の正面から見た模式的な鉛直断面図である。
図2及び3に示すように、ヘッドランプ装置10は、光軸調整機構を有するものである。ヘッドランプ装置10は、ハウジング11と、内部ユニット12と、支点部材13、第1スクリュー14(第1操作部材)及び第2スクリュー15(第2操作部材)を備える。ハウジング11は、前側部材21及び後側部材22を有する。
【0031】
前側部材21と後側部材22とが互いに着脱可能に結合されることで、内部空間を有するハウジング11が形成される。ハウジング11は、車体フレーム2に対して一体的に固定されている。前側部材21は、非透明な材料からなる非光透過部21aと、透明又は半透明等の光透過性を有する材料からなり且つ後述の内部ユニット12からの光を前方に透過させる光透過部21b(透明部)とを有する。後側部材22は、全体的に非透明な材料からなる。後側部材22は、内部ユニット12の後方に配置された後壁部22aを有する。
【0032】
内部ユニット12は、ハウジング11の内部空間に収容されている。ハウジング11は、内部ユニット12が傾動可能範囲内で傾動したときに内部ユニット12とハウジング11との干渉を防ぐための傾動許容空間を形成している。即ち、内部ユニット12は、ハウジング11に対して、前後方向にクリアランスC1が設けられると共に、前後方向に垂直な方向にもクリアランスC2が設けられている。内部ユニット12は、光源装置31及び光出射装置32を有する。光源装置31は、発光ダイオード(LED)及びその回路基板を有する。光出射装置32は、光源装置31から出射された光を前方に向けて反射し、当該光を光透過部21bから自動二輪車1の前方に向けて出射させるリフレクタボディである。光出射装置32は、前面に反射層が形成されたリフレクタ部32aと、リフレクタ部32aの中央から前方に向けて突出した光源支持部32bとを有する。光源装置31は、本実施形態では光源支持部32bに接着又はボルト固定されている。即ち、光源装置31は、光源支持部32bから工具無しでは取り外せない。光源装置31が光出射装置32に一体固定された状態で光源装置31及び光出射装置32が一体でハウジング11内を傾動することで、光学的に設計された光の出射角(幅)や光量を保ちつつ、光の向きを調整することができる。
【0033】
ハウジング11の後壁部22aには、正面視において、(ヘッドランプ装置10が自動二輪車1に搭載された状態で前方から見て)、内部ユニット12の面積中心G及び光源装置31の両方を包含する開口は形成されていない。本実施形態の発光ダイオード型の光源を用いた光源装置31は、フィラメント型の光源を用いたものに比べて長寿命である。そのため、光源交換用の構造を不要又は簡素化できる。具体的には、ハウジング11に光源交換用の開口を設ける必要がなく、後壁部22aには後方から蓋で閉鎖される開口が存在しない。
【0034】
面積中心Gは、内部ユニット12の輪郭図の図心位置、言い換えると重心位置であってもよい。また面積中心Gとして、内部ユニット12のうちで前縁部分で形成される輪郭面の図心位置であってもよい。また面積中心Gとして、内部ユニット12のうち光を導くための照射面(たとえば反射面または屈折面)の輪郭面の図心位置であってもよい。このように面積中心Gを規定する規定面積は、輪郭のほか、前縁部分の輪郭、照射面の輪郭を用いてもよい。また、面積中心Gは、第1傾道軸線X1が延びる第1方向についての前記規定面積の中心位置であってもよいし、第2傾動軸線X2が延びる第2方向についての前記規定面積の中心位置であってもよい。この場合、中心を特定する方向以外の方向について規定面積の中心位置から外れてもよい。また、面積中心Gは、第1方向及び第2方向の両方について内部ユニット12の輪郭の中心位置であることが好ましい。
【0035】
支点部材13は、後壁部22aから内部ユニット12の支点部32cに向けて突出している。支点部材13は、後壁部22aと一体に形成されてもよいし、後壁部22aとは別体に形成されて後壁部22aに固定されてもよい。内部ユニット12は、光源支持部32bに対応する位置にてリフレクタ部32aの背面に設けられた支点部32cを有する。支点部材13は、支点部32cに回動自在に結合することで、ハウジング11内に収容された内部ユニット12を傾動自在に支持する。
【0036】
具体的には、支点部材13は、その先端に球面凸部を有し、支点部32cは、当該球面凸部が摺動自在に嵌められる球面凹部を有する。これによって球面軸受が形成され、内部ユニット12がハウジング11に対して球中心を支点として傾動自在に支持される。即ち、支点部32cは、前後方向に直交する方向に回動可能に支持されているため、内部ユニット12は、左右方向に延びる第1傾動軸線X1周り及び上下方向に延びる第2傾動軸線X2周りの両方に傾動可能である。なお、内部ユニット12の傾動軸線X1,X2は、支点部32cを通過して、前後方向に垂直な方向に延びており、ハウジング11の内部に配置されている。
【0037】
内部ユニット12の支点部32cは、正面視において、内部ユニット12の面積中心G又はその近傍に配置されている。例えば、正面視において、内部ユニット12の支点部32cの中心と面積中心Gとの間の距離は、内部ユニット12の外縁と面積中心Gとの間の最短距離L1の0~45%であり、好ましくは0~30%であり、更に好ましくは0~15%である。ここで、0%とは、支点部32cが正面視において面積中心Gと一致することを意味する。本実施形態では、支点部32cは、正面視において、内部ユニット12の上下方向(短手方向)の中心又はその近傍に配置され、かつ、内部ユニット12の左右方向(長手方向)の中心又はその近傍に配置されている。より具体的には、支点部32cは、正面視において面積中心Gと一致する位置に設けられている。
【0038】
支点部32cの少なくとも一部は、正面視において、光源または光源装置31と重なる対向位置に配置されていてもよい。また、支点部32cの少なくとも一部は、前記対向位置に隣接する位置に配置されていてもよい。支点部32cは、ハウジング11の背面壁のうち光源装置31に前後方向に対向する部分に設けられてもよい。
【0039】
内部ユニット12は、リフレクタ部32aの背面側に設けられた第1雌ネジ部32d及び第2雌ネジ部32eを有する。第1雌ネジ部32dと支点部32cとを結ぶ直線(第1傾動軸線X1)と、第2雌ネジ部32eと支点部32cとを結ぶ直線(第2傾動軸線X2)とは、互いに交差(本実施形態では直交)する。ハウジング11の後壁部22aには、第1雌ネジ部32dに螺合する第1スクリュー14と、第2雌ネジ部32eに螺合する第2スクリュー15とが取り付けられている。第1スクリュー14及び第2スクリュー15の軸線は、前後方向に延びている。
【0040】
第1スクリュー14及び第2スクリュー15は、正面視において支点部32cよりも面積中心Gから離れて配置されている。正面視において、内部ユニット12の面積中心Gから支点部32cまでの距離は、内部ユニット12の面積中心Gから第1スクリュー14までの距離L2の半分よりも短く、かつ、内部ユニット12の面積中心Gから第2スクリュー15までの距離L3の半分よりも短い。第1雌ネジ部32d及び第2雌ネジ部32eは、正面視において、内部ユニット12の外縁の近傍に配置されている。例えば、正面視において、第1雌ネジ部32dの中心と内部ユニット12の外縁までの最短距離L4は、第1雌ネジ部32dの中心と面積中心Gとの間の距離L2の0~50%であり、好ましくは0~30%であり、更に好ましくは0~20%である。
【0041】
図4は、
図2に示すヘッドランプ装置10の動作図である。
図3及び4に示すように、第1スクリュー14を回転させると、正面視において、第1傾動軸線X1周りに内部ユニット12が第1方向(左右方向)に傾動する。第2スクリュー15を回転させると、正面視において、第2傾動軸線X2周りに内部ユニット12が第2方向(上下方向)に傾動する。このように、第1スクリュー14及び第2スクリュー15を回すことで、内部ユニット12の光軸調整が可能となる。
【0042】
内部ユニット12の傾動支点となる支点部32cが、正面視における内部ユニット12の面積中心G又はその近傍に配置され、支点部32cから内部ユニット12の外縁までの距離が短いため、光軸調整時に所定の傾動角を得るための内部ユニット12の外縁の最大移動量が少なくて済む。よって、内部ユニット12の前後方向における可動域D1及び前後方向に垂直な方向における可動域D2が低減されるため、ハウジング11と内部ユニット12との間のクリアランスC1,C2を小さく設定でき、ヘッドランプ装置10のハウジング11の小型化を図ることができる。
【0043】
図5は、比較例のヘッドランプ装置110の上方から見た模式的な水平断面図である。
図6は、
図5に示すヘッドランプ装置110の正面から見た模式的な鉛直断面図である。
図7は、
図5に示すヘッドランプ装置110の動作図である。
図5及び6に示すように、比較例のヘッドランプ装置110では、フィラメントを有するバルブ型の光源装置131が用いられ、ハウジング111の後壁部122aには、正面視で光源装置131を包含する光源交換用の開口122bが形成されている。開口122bは、ハウジング111に着脱可能に取り付けられる蓋140により後方から閉鎖されている。
【0044】
ハウジング111には、光源装置131及び光出射装置132を有する内部ユニット112の正面視における面積中心及びその近傍の後方に、比較的大きな開口122bが存在する。そのため、内部ユニット112の支点部132cは、正面視においてハウジング111の外縁近傍に配置されることとなる。この場合、支点部132cから内部ユニット112の外縁までの距離が長いため、スクリュー14,15を回転させて光軸調整すると、所定の傾動角を得るための内部ユニット112の外縁の最大移動量が大きくなる。よって、内部ユニット112の前後方向における可動域D3及び前後方向に垂直な方向における可動域D4が大きくなり、ハウジング111を小型化するのが難しい。
【0045】
図4と
図7との対比から明らかなように、光軸調整機構を有するヘッドランプ装置10においてハウジング11を簡易に小型化することができる。そのため、フロントカウル9の設計自由度が向上すると共に、軽量化も図ることができる(ヘッドランプ装置がハンドルと共に回動する車両の場合には、軽量化によりステアリング操作性も向上する。)。また、ハウジング11と内部ユニット12との間の隙間を低減できるため、当該隙間を隠すための部品を廃止又は小型化でき、ハウジング11の外観設計の自由度も向上する。特に、ヘッドランプ装置の外形をシャープな流線形にして空気抵抗を低減することが望まれる自動二輪車には、本構成は好適である。
【0046】
また、内部ユニット12の前縁部分または照射面の輪郭に規定される規定面積を面積中心Gの基準とすることで、ハウジング11の前縁部への突出量を抑えて小型化を図ることができる。これによってフロントカウル9とハウジング11との段差を抑えつつ、フロントカウル9の小型化を図り易く設定の自由度を高めやすい。たとえば、空気抵抗の低下、軽量化、デザイン性向上などを図りやすくすることができる。たとえば、車幅方向外側または上下方向外側となるハウジング11の移動量を減らすことで、フロントカウル9の車幅方向外側及び上下方向外側への突出を抑えることができ、空気抵抗の低下を図りやすくすることができる。
【0047】
また、前記規定面積の第1方向寸法と第2方向寸法とで、どちらか一方が大きい場合には、寸法が大きい方向となる長手方向寸法についての前記規定面積の中心位置を面積中心Gとしてもよい。これによって小型化への影響が大きい方向への小型化を図り易い。
【0048】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、ヘッドランプ装置の光出射装置は、リフレクタでなくてもよく直射型ライトのプロジェクタレンズとしてもよい。前記実施形態では、雌ネジ部32d,32eが内部ユニット12側に設けられ、雄ネジを有するスクリュー14,15がハウジング11側に設けられたが、雄ネジ/雌ネジの配置を逆にしてもよい。前記実施形態では、1つの内部ユニット12に対して2つのスクリューが設けられたが、1つの内部ユニットに対してスクリューを1つのみ設けてもよい。前記実施形態では、支点部材13に球面凸部を設けて且つ支点部32cに球面凹部を設けたが、支点部材13に球面凹部を設けて且つ支点部32cに球面凸部を設けてもよい。内部ユニット12には、リフレクタ部32aとハウジング11との間の隙間を埋めるエクステンションを含めてもよい。長寿命でメンテナンス交換が不要な光源であれば、発光ダイオード型以外の他の種類の光源(例えば、フィラメント形も可)でもよい。前記実施形態では、鞍乗型乗物として自動二輪車を例示したが、運転者がシートに跨って着座する乗物であれば他の乗物(ATV等)ものでもよい。
【0049】
また、本実施形態では、内部ユニット12に複数の光源が配置されたが、これに限らず1つの光源が内部ユニットに配置されてもよい。またハイビーム用の光源と、ロービーム用の光源とが、1つの内部ユニットに配置されてもよい。また1つの車体に対して、複数のヘッドライト装置が配置されてもよく、左右別体としてそれぞれヘッドライト装置が配置されてもよい。また1つのハウジング内に、独立して傾動可能な内部ユニットが設けられてもよい。これら場合であっても、ヘッドライト装置として小型化を図ることで、車体全体の設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ヘッドランプ装置
11 ハウジング
12 内部ユニット
14 第1スクリュー(第1操作部材)
15 第2スクリュー(第2操作部材)
22a 後壁部
31 光源装置
32 光出射装置
32c 支点部
G 面積中心
X1 第1傾動軸線
X2 第2傾動軸線