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特許6991436流体中の検体を検出するための多孔質光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】流体中の検体を検出するための多孔質光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20220104BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N33/483 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019563287
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018062441
(87)【国際公開番号】W WO2018210784
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】PA201770345
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ストランゲ,クレスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ケアー,トーマス
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0059469(US,A1)
【文献】特表平11-508475(JP,A)
【文献】特開平03-114441(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02270276(CA,A1)
【文献】特開2003-149125(JP,A)
【文献】米国特許第05250095(US,A)
【文献】特開昭56-100046(JP,A)
【文献】特表平06-510455(JP,A)
【文献】特表2008-547030(JP,A)
【文献】特表2017-503639(JP,A)
【文献】特開平06-300685(JP,A)
【文献】特表2005-533644(JP,A)
【文献】特表2015-507763(JP,A)
【文献】特表2007-526477(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0102804(KR,A)
【文献】特表2005-527812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/74
G01N 33/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光プロービングにより流体中の検体を検出するための多孔質光ファイバであって、前記光ファイバは、長手方向において見たときの、第1の端部と、前記第1の端部と反対側の第2の端部と、前記長手方向に垂直な半径方向において前記光ファイバを画定する周面とを有し、前記光ファイバは、
前記長手方向に伝搬する少なくとも1つの光学モードを支持するように適合されたコアであって、前記コアを前記半径方向に画定する周方向界面を有する、コアと、
前記周面の開口部から前記周方向界面を通って前記光ファイバの前記コアに貫入する細孔であって、前記開口部の断面寸法は、前記検体が前記細孔に侵入するのを可能にする一方で、前記流体の粒子状分画が前記細孔に侵入するのを防止するように寸法付けされた、細孔と、
を含み、
前記多孔質光ファイバは、前記周面上に反射性コーティングを更に含む、多孔質光ファイバ。
【請求項2】
前記反射性コーティングは金属でできている、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記金属は、白金、パラジウム、主成分として白金若しくはパラジウムを含む合金、銀、又は、アルミニウムである、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記細孔は、デッドエンド細孔である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記細孔は、長手方向において長さLの活性部分にわたって分布している、請求項1~4のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記コアは直径を有し、前記コアへの前記細孔の貫入深さが、前記コアの直径の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも40%である、請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記細孔の前記開口部の断面寸法は、μm以下、800nm以下、500nm以下、又は400nm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記細孔の前記開口部の断面寸法は、少なくとも200nmである、請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記細孔に沿った軸方向における前記細孔の長さは、100μm未満、50μm未満、好ましくは30μm未満である、請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記細孔に沿った軸方向における前記細孔の長さは、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記細孔は直線状である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項12】
前記細孔は、前記光ファイバを方向性イオン衝撃に暴露させた後、化学エッチングすることによって形成されたトラックエッチング細孔である、請求項1~11のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項13】
前記細孔の内壁面は、親水性コーティングでコーティングされている、請求項1~12のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項14】
前記光ファイバは、ポリマー光ファイバである、請求項1~13のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項15】
前記光ファイバは、前記長手方向に伝搬する複数のモードを支持するコアを有するマルチモード光ファイバである、請求項1~14のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項16】
前記コアは、5μm~500μmの範囲、又は、100μm~200μmの範囲の直径を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項17】
前記活性部分の前記周面における開口部は、前記多孔質光ファイバの外層に形成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項18】
光プロービングによる流体中の検体を検出するためのセンサシステムであって、前記センサは、
請求項1~17のいずれか一項に記載の多孔質光ファイバと、前記光ファイバ内に入力光を入射させるために前記第1の端部に結合された光源と、
前記入射された入力光による照明に応じて細孔から放出された出力光を受け取るように配置された検出器と、
を備える、センサシステム。
【請求項19】
前記検出器は、前記光ファイバの前記第2の端部において前方散乱構成でインラインに配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記検出器は、前記光ファイバの前記第1の端部において後方散乱構成でインラインに配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記検出器は、外方散乱構成で軸外に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
分析対象の流体サンプルを受け取るサンプルチャンバを更に備え、前記サンプルチャンバは前記多孔質光ファイバの前記活性部分を囲んでいる、請求項18~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記光ファイバは、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートの類似体、又は、ポリカーボネートで作製されている、請求項14に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一観点では、光プロービングにより流体中の検体を検出するための多孔質光ファイバに関する。別の観点では、本発明は、多孔質光ファイバを含む、流体中の検体を検出するためのシステムに関する。特定の観点では、流体は全血などの体液である。別の特定の観点では、多孔質光ファイバと多孔質光ファイバを含むシステムは、特に全血サンプル中の溶血の検出を目的とする。
【背景技術】
【0002】
連続分画及び不連続分画を含む複合流体における検体の検出は困難であるが、測定時に頻繁に遭遇する問題である。典型的には、測定は、例えば、濾過、沈降、及び/又は遠心分離による分離を含むサンプル調製工程と、当該検体に反応する化学的表示反応及び/又は物理的相互作用を利用する後続の検出測定工程と、を含む。大抵の場合、こうした状況における厄介な課題は、特に、利用可能なサンプルの体積が小さい場合や分析対象の流体が非常に複雑である場合、測定に支障をきたすことなく検出に適したサンプルを調製し提供することである。加えて、こうした状況では、複数のパラメータが同じサンプル上で判定されることになり、検体を検出するための所与の測定と他のパラメータの測定とを組み合わせる追加の制約が非常に頻繁に生じる。
【0003】
したがって、複合流体中で検体を選択的に検出可能な高感度だが簡易かつ高速な手法が必要とされ、この手法は更に、同じサンプルの複数パラメータを判定する他の測定手法と組み合わせ易いように適合される。所望の手法は、検出測定用の検体を穏やかに、即ち、分析対象流体の残りの分画を損なわずに、分離、抽出、及び/又は隔離することが更に要求される。
【0004】
このような検出手法は、食品産業から廃水処理、医薬用途及び医療装置に至る様々な産業に関連しており、既知の手法は大きな体積のサンプルを要すると共に、時間のかかる分析手順を含む場合が多い。
【0005】
上記の測定手法の適用例は、患者の血液サンプル中の検体検出である。検体は、光、例えば分光測光法によって検出可能な血液分析用の研究所試験パラメータのいずれであってもよい。干渉源の1つとして、溶血は、血液パラメータ分析器で判定されるいくつかの血液パラメータの測定に影響を及ぼし得る。血液サンプル中の遊離ヘモグロビンレベルを無視すると、ヘモグロビンレベルを意識しない人の判断を誤らせる結果、影響を受けた血液パラメータ値に基づく誤診断につながる場合がある。しかしながら、血液サンプル全体の血漿分画中に存在する遊離ヘモグロビンレベルを確実に判定するには、これまでは、細胞成分からの血漿分画の分離と、分離された血漿分画の分析とを含む複雑なプロセスが必要であった。こうした手順は、時間がかかるうえ、乳幼児の血液パラメータの継続的モニタリングを伴う新生児ケアなどの場合のように、ごく小量のサンプルしか入手できない場合には利用できない。全血中の血漿分画中の成分を測定する他のアプローチでは、マイクロ流体デバイスでの専用測定において血漿分画を分析する前に、例えばマイクロ流体装置内の精密濾過手法を用いて細胞成分から血漿分画を分離する。例えば、Archibongらによる「Sensing and Bio-Sensing Research3(2015)」の1~6頁に公開された最近の科学論文は、全血サンプルから分離された血漿分画を光学的に分析する小型測定チャンバを開示している。この種のデバイスでは、小型マイクロ流体チャンバが光ファイバの界面に取り付けられる。マイクロ流体チャンバの底部は、流体及び化学化合物をデバイス内に流れ込ませると共に、望ましくない粒子を濾過する多孔質膜から成る。濾液を受け入れるマイクロ流体チャンバの内側は、垂直入射反射形状の単一光ファイバを通じて光学的にプローブすることができる。
【0006】
別の例、即ち、酪農業などの食品産業における用途では、従来の大半の濾過及び検出方法は、残留物の目視検査、分光測定、又はバクテリア集計のための濾紙、篩を含み、これらの方法は、比較的大きな体積のサンプルを必要とし、サンプルに有害である時間のかかる測定手順を含み、同じサンプルで実施される統合されたマルチパラメータ測定と両立し得ないなどの欠点を有する。同様の問題は、廃水の分析及び処理などの環境技術分野でも発生し、従来の大半の濾過及び検出方法は、残留物の分光測定及びバクテリア集計のための濾紙、篩などを含む。
【0007】
しかしながら、このような濾過ベースのアプローチは、例えば全血サンプルの分析に使用される場合にいくつかの欠点を有する。濾過デバイスは本質的に、サンプル供給からフィルタの細孔を通り、濾液分析/測定チャンバへと流れる少なくとも濾液の流体流に依存する。貫流形状では、保持液(ここでは赤血球)が濾過孔を徐々に詰まらせる。直交流形状では、保持液が濾過膜の表面に沿って導かれるため、詰まりの問題を軽減するが、特にシステムが反復使用(10~100個のサンプル)を意図している場合には問題の排除には至らない。また、直交流形状は、保持液と濾過デバイスの表面との間の摩擦及び剪断相互作用も誘発する。開示されているデバイスは、測定後のサンプルの完全な洗浄が困難である、又は少なくとも非常に時間がかかり、不確実であって相互汚染の更なるリスクが考えられることから、継続的かつ反復使用デバイスではなく使い捨てデバイスとして非常に有用である。この種のデバイスでは、濾過膜の圧力による変形の結果、濾液をプローブする光路に変化が生じるため、光プロービングから量的結果を取得する課題も更に生じ得る。
【0008】
したがって、迅速かつ信頼性の高い反応で流体中の検体を検出し、一体化が容易である改良された装置及び方法が必要とされている。より一般的には、高速かつ信頼性の高い反応で全血サンプルなどの複合流体の分画中の物質を検出でき、流体分析システム、特に、同じ流体サンプルでのマルチパラメータ測定用分析システムに一体化されるように適合された改良装置及び方法が必要とされている。
【0009】
本発明の目的は、複合流体の連続分画中の検体を特定して検出する、例えば、全血サンプルの血漿分画中の検体を検出する既知の装置、センサ、システム及び/又は方法の欠点のうちの少なくともいくつかを克服するように改良された検出を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、添付の特許請求の範囲に定義される多孔質ファイバ及びセンサシステム、並びにその実施形態によって達成される。
【0011】
本発明の第1の観点は、光プロービングにより流体中の検体を検出するための多孔質光ファイバに関する。光ファイバは、長手方向において見たときの、第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部と、長手方向に垂直な半径方向に光ファイバを画定する周面とを有する。光ファイバは、長手方向に伝搬する少なくとも1つの光学モードを支持するように適合されたコアであって、半径方向にコアを画定する周方向界面を有するコアと、周面の開口部から周方向界面を通って光ファイバのコア内に貫入する細孔であって、開口部の断面寸法が、検体が前記細孔に侵入するのを可能にする一方で、流体の粒子状分画が細孔に侵入するのを防止するように寸法付けされた細孔と、を含む。
【0012】
多孔質光ファイバの周面は、分析対象の流体と接触させるためのものである。活性領域では、光ファイバは細孔を備えている。細孔はそれぞれ開口部を有し、開口部を介して、開口部を備えた周面の外側に隣接する流体空間と連通することができる。これにより、光ファイバのコアに位置する深さの細孔と、光ファイバの周面の外側に隣接する流体空間との間の流体連通が可能になる。細孔は、周面の各自の開口部からコア内へと延在する。細孔は光ファイバ内で周面の開口部と一体的に形成され、分析対象流体と流体連通する。コアの他に、光ファイバは、光ファイバに沿って伝搬する光をコアに閉じ込めるように適合されたクラッド層又は反射層などの、コアを囲む1つ以上の層を更に含んでもよい。コアは、上記外側層から周方向界面によって区切られる。重要な点として、細孔は、光ファイバの周面から、もしあれば外層を通って、更には周方向界面を越えて光ファイバのコアに貫入する。コアへの細孔の貫入は、コアの半径方向境界を画定する周方向界面から、コア材への細孔の内方の貫入深さとして判定される。
【0013】
細孔の開口部は、検体が別の分画、例えば連続分画から細孔を通って光ファイバのコア内に入ることを可能にする一方で、分析対象流体の微粒子分画が細孔の外側に保持されるように寸法付けされ、コアを通って伝播した光学モードが検体と相互作用することによって、光プロービングにより検体を検出することができる。
【0014】
多孔質光ファイバは、光源と、細孔の含有物を光学的にプローブするように配置された検出器と、を必要とし、流体中の検体含有物を表す対応する信号出力を生成するように構成されている。プロービング光学フィールドは典型的には、光ファイバの一方の端部、例えば第1の端部からコア内に入射され、光学的反応は検出器によって収集される。検出器は、以下に更に詳述するように、入射された入力光による照明に応じて細孔から放出された出力光を受け取るように配置される。
【0015】
細孔が、具体的には拡散/拡散輸送によって流体の第1の分画から検体を選択的に受け取るためのバイアル/キュベットを形成する一方、微粒子分画は細孔に侵入することを効果的に防止される。これらのバイアル/キュベットは、検体とプロービング光の効率的な相互作用を得るため、コア内に、即ち、コアに沿って伝播する光の経路に配置される。光ファイバを使用することによって、プロービング光は、細孔の含有物を光学的にプローブする感知領域に容易に結合及び送達される。更に、細孔は、信号対雑音比を向上させるため、コア内のプロービング光と細孔によって形成されたバイアル/キュベット内の検体との間に光学的相互作用を蓄積させるように、光ファイバの所望長にわたって分散されてもよい。
【0016】
この具体的な構造により、小さいが代表的な検体分画が複合流体から穏やかに抽出され、高い重複度でプロービングフィールドに効率的に暴露される。これが非常に簡易かつ迅速な方法で達成されるのは、細孔が周面の開口部で光ファイバの横断方向に、開口部からプロービング位置まで比較的短い距離で配置されることで、サンプルの極めて迅速な拡散交換が容易になるからである。
【0017】
細孔の典型的な断面寸法は、約100nmまでのミクロン及びサブミクロンの範囲である。細孔内外への検体輸送は、拡散によって達成される。効率的動作のために、細孔はプライミング流体で充填され、プライミング流体は、例えば、第1の検出測定を実行する前にプライミング工程で細孔に充填される。プライミング流体は、分析対象流体に影響を与えてはならない。よって、プライミング流体は、分析対象流体と両立できなければならない。有益なことに、プライミング流体は、水性緩衝液などのすすぎ流体であってもよく、このすすぎ流体は、分析対象流体のサンプルを交換するための充填、排出、再充填手順においてサンプルチャンバをすすぐために使用することができる。すすぎ流体は基準流体又は校正流体であってもよい。
【0018】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、細孔は液体で充填される。既知の液体で細孔をプライミングすることにより、分析対象流体中の関連成分を表すサブサンプルを、拡散によってのみ抽出することができる。これにより、検体は、細孔を介して迅速かつ効率的に十分な制御下で、光プロービング領域内外で交換することができる。有益なことに、いくつかの実施形態によると、液体は水溶液である。このことは、水溶性検体の検出に特に有用である。あるいは、例えば分析対象流体が非水性液体である場合も、非水性液体で細孔を充填することが考えられ、これは特に有用である。
【0019】
多孔質光ファイバは、連続分画及び不連続分画を含む複合流体を分析するため、具体的には複合流体の連続分画中の検体を選択的に検出するために特に有用である。分析対象流体は、検体を含む少なくとも連続分画を含むことができる。分析対象流体は、不連続分画、即ち、粒子分画を更に含むことができる。粒子状分画は、例えば、固体粒子、壊死組織片、及びその他の汚染物質、生物細胞(赤血球など)、又は微生物、液滴、気泡、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
分析対象流体は、全血サンプル、全血の血漿分画、脊髄液、尿、肋膜、腹水、廃液、任意の種類の注入用に予め調製された流体、分光法などの光プロービングによって検出可能な成分を含む流体、又は空気、二酸化炭素含有ガス、一酸化炭素含有ガスなどのガスであってもよい。
【0021】
検体は、分析対象流体の連続相中に存在し得る分子のサブセットなど、光プロービングによって検出可能な任意の物質であってもよい。例えば、全血サンプルを分析する際、検体は特定の薬物であってもよく、測定は、例えば薬物の摂取量を決定し、薬物の投与量を適宜調整するために、血漿相中の薬物含有量を決定する目的であってもよい。全血サンプルを分析する別の例では、検体は、溶血の程度を決定するためにビリルビンであってもよい。全血サンプルを分析する更に別の例では、検体は、二酸化炭素であってもよい。
【0022】
用語「全血」は、血漿及び細胞成分からなる血液を指す。血漿は、体積の約50%~60%を占め、細胞成分は体積の約40%~50%を占める。細胞成分は、赤血球(赤血球)、白血球(白血球)、及び血小板(血小板)である。好ましくは、用語「全血」は、ヒト被験者の全血を指すが、動物の全血を指す場合もある。赤血球は、全血球の総数の約90%~99%を構成する。赤血球は、非変形状態で、直径約7μmの直径及び約2μmの厚さを有する両凹円板状に成形される。赤血球は可撓性が高いため、非常に狭い毛細管を通過して、直径を約1.5μmまで低減させることができる。赤血球の基本成分の1つは、組織への輸送のために酸素に結合した後、酸素を放出し、二酸化炭素を廃棄物として肺に送達するヘモグロビンである。ヘモグロビンは赤血球、したがって血液全体の赤色に寄与する。白血球は、全血球の総数の約1%未満を占める。白血球は、約6~約20μmの直径を有する。白血球は、例えば、細菌又はウイルス侵入に対抗する身体の免疫系に関与する。血小板は、約2~約4μmの長さ及び約0.9~約1.3μmの厚さを有する最小血球である。血小板は、凝固にとって重要な酵素及び他の物質を含有する細胞断片である。具体的には、血小板は、血管の破断を封止するのに役立つ一時的な血小板栓を形成する。
【0023】
用語「血漿」は、血液及びリンパ液の液体部分を指し、血液の体積の約半分(例えば、約50~60体積%)を占める。血漿は細胞を含まない。血漿は、全ての凝固因子、特に、フィブリノーゲンを含有し、約90%~95%(体積で)の水を含む。血漿成分としては、電解質、脂質代謝物質、例えば感染症又は腫瘍マーカー、酵素、基質、タンパク質、及び別の分子成分が挙げられる。
【0024】
用語「廃水」は、洗浄、フラッシング、又は製造プロセスのために使用された水を指し、したがって廃棄物及び/又は粒子を含有し、飲用及び食品調製に適していない水を指す。
【0025】
用語「光学的」及び「光」並びに関連用語は概して、可視、赤外、及び紫外スペクトル範囲の電磁放射線を指す。用語「可視」は典型的には、400nm~700nmの範囲の波長を有する電磁放射線を指す。用語「赤外」は概して、700nm~1mmの波長域、典型的には約700nm~3μmの近赤外、3μm~50μmの「中赤外」、及び50μm~1mmの「遠赤外」の部分波長域を有する電磁放射線を指す。用語「紫外」又は「UV」は概して、10nm~400nmの波長域、典型的には300nm~400nmの「近紫外」、200nm~300nmの「中紫外」、及び122nm~200nmの「遠紫外」の部分波長域を有する電磁放射線を指す。当業者であれば、所与の光ファイバについて言及されたスペクトル範囲の有用性、特に、所与のコア材料の有用性は、これらの材料を通じて入力光及び出力光を伝搬するためのスペクトル範囲及び材料の適合性に依存することを理解するであろう。
【0026】
動作中、多孔質光ファイバの周面は、分析対象流体、例えば、全血サンプルと接触させる。光ファイバ内の細孔は、周面の開口部を通じて全血サンプル又は流体と連通している。細孔開口部は、全血サンプルの血漿相のサブサンプルを選択的に抽出する、即ち、検体を含む流体のサブサンプルを抽出するように寸法決めされる。赤血球は、光ファイバの周面の開口部を通って細孔に入ることができない。細孔の直径より大きいものは、流体に含まれる壊死組織片などを排除する細孔に侵入することができない。
【0027】
サブサンプル体積は、細孔の総内容積に相当する。測定中、細孔含有層を通り共通の濾液受容体や濾液出口への濾液の濾過及び正味質量の輸送は発生しない。次いで、光学的検出は、細孔に収容されたサブサンプルのみに実行される。光ファイバのコアへの入力光の閉じ込めは、全血サンプル又は流体を含む流体空間から、多孔質光ファイバの活性部分内の光プロービング領域を光学的に分離する。プロービング領域を流体空間から光学的に分離することにより、全血サンプル中の無傷赤血球又は流体中の壊死組織片がプロービング信号に及ぼす寄与を効果的に抑制することができる。したがって、測定値は、流体中の検体の含有量にとって固有である。
【0028】
関連成分の代表的な含有量を有する小さなサブサンプルは、任意の好適な方法で細孔に移すことができる。光ファイバに略横断方向に配向されてコア内に直接つながる細孔は、毛細管力及び/又は拡散によって、周面の開口部を通じて全血サンプルなどの分析対象流体からの光プロービングのために、サブサンプルの非常に効率的かつ高速な抽出を可能にする。
【0029】
典型的な動作モードでは、光ファイバの周面は、分析対象の全血サンプル又は流体と周面を接触させる前に、すすぎ液と接触させられる。それにより、細孔は、全血サンプル又は流体と両立可能な液体、特に、流体が全血である場合には血漿相と両立可能な液体、例えば、血液分析器におけるすすぎ、校正、及び/又は品質管理目的で一般的に使用される水溶液の事前充填によって「プライミング」される。例えば、全血分析システムで洗浄するために使用される典型的なすすぎ液が、このような液体として使用され得る。すすぎ液は、ヒト血漿に対応する濃度のK、Na、Cl、Ca2+、O、pH、CO、及びHCOを含む水溶液である。次いで、全血サンプル又は流体を、両立可能な液体でプライミングされた周面と接触させると、全血サンプル又は流体の血漿相中の成分の代表的なサブサンプルが抽出され、事前充填された細孔内への関連成分の拡散によって非常に効率的かつ穏やかに移送される。具体的には、流体と細孔内の基準液との間の検体含有物の濃度勾配が拡散移動を駆動することによって、流体中の検体濃度を表す検体濃度のサブサンプルを細孔内に生成する。
【0030】
別の動作モードでは、乾燥センサの周面を全血サンプル又は流体サンプルと直接接触させることも考えられる。更に好ましくは、この動作モードでは、細孔の内側表面は親水性であるため、毛管力によって、光ファイバの周面における全血サンプル又は流体サンプルからサブサンプルを細孔内へ抽出する。このモードで多孔質光ファイバを操作する場合、同じバッチで製造される多孔質光ファイバは同等の感度を有すると予想されるため(同一の流体を測定するときは同等の光吸収)、バッチ校正を介して校正を行うことができる。あるいは、光ファイバの細孔は、検体とは異なる吸収特性を有する校正染料を含有してもよい。校正染料は、光プロービング信号を正規化/校正するのに有用であり、一方、検出/測定対象の血漿サンプル中の物質、例えばビリルビンとスペクトル的に区別可能である。校正染料は実際の分析対象流体に存在しないため、校正染料が測定中にセンサから外に拡散する一方、検体はセンサの細孔内に拡散する。流体の捕捉の前後に細孔を光学的にプローブすることにより、校正基準信号と流体物質信号との比較に基づき検出対象物質(例えば、ビリルビン)の量的測定値を発生させることができる。
【0031】
光ファイバ自体のコアを通じて光入力を提供することによって、コアに貫入する細孔内の含有量を簡便にプローブすることができる。光プロービングフィールドを光ファイバのコアに閉じ込めることにより、細孔を含む光プロービング領域は、多孔質光ファイバの周面に接触する流体から光学的に分離される。したがって、光プロービングは、細孔内部のサブサンプルのみに選択的に実行される。
【0032】
照明に応答して細孔から出てくる光は、細孔内のサブサンプルと相互作用し、サブサンプルに関する情報を搬送する。次いで、全血サンプル中又は流体中の検体含有量を表す値を発生させるため、出現光及び/又は出現光を表す信号をその情報に関して分析することができる。分析は、例えば、取得された信号と校正/参照サンプルで取得された信号との比較、ノイズフィルタリング、補正の適用、及びアーチファクトの排除のために、出現/検出光のスペクトル分析、及び/又は信号/データの処理を含むことができる。
【0033】
全血サンプル中の溶血を測定する特に有益な実施形態では、ビリルビンによる血漿の着色は、例えば、380nm~750nmの波長域内、例えば、400nm~520nmの波長域内、又は約455nmの波長などの所定の帯域幅にわたって、スペクトル分解された吸光度測定値を使用する、又はスペクトル積分された吸光度を測定することによって光学的にプローブされる。
【0034】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔は開放端細孔である。用語「開放端」は、光ファイバ全体に延びる細孔である。細孔は、光ファイバの周面外側に隣接する流体空間と流体連通している。即ち、分析対象流体のサブサンプルは、細孔内の光プロービングのために抽出され、測定後、周面内の孔の同じ又は他の開口部を通って再び放出される。
【0035】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔はデッドエンド細孔である。「デッドエンド」という用語は、光ファイバ内で終端する細孔を指す。デッドエンド細孔は、光ファイバ全体を、又は光ファイバ内の共通の貯蔵場若しくは受容体まで延びない。細孔は、光ファイバの周面外側に隣接する流体空間と流体連通している。即ち、分析対象流体のサブサンプルは、細孔内の光プロービングのために抽出され、測定後、周面内の孔の同じ開口部を通って再び放出される。
【0036】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔は、長手方向において長さLの活性部分にわたって分布している。
【0037】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔は、光ファイバの端面に分布している。したがって、活性部分は、光ファイバの端面であり、光ファイバの長手方向には存在しない。
【0038】
細孔が形成されている部分では、光ファイバは、光プロービングのためにコア内のサブサンプルを抽出及び提示する役割を果たすために「活性」又は「感応性」を有すると言うことができる。長さLは、例えば、流体サンプルが光ファイバの周面と接触することができる活性部分のみを提供するように、一体化されるサンプルチャンバの形状上の制約を満たすように適合され得る。活性部分の長さLは、分析対象流体と接触するための最小及び/又は最大表面の要件を満たすように適合されてもよい。更に、活性部分の所与の長さLの場合、細孔の密度は、光プロービングにとって十分大きなサンプル体積を提示する要件を満たすように適合されてもよい。しかしながら、光ファイバの活性部分の細孔の密度が過剰に高すぎると、入力光学フィールドを光ファイバのコア内に適切に/十分に閉じ込めるのに有害となり得る。
【0039】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、細孔は、活性長にわたって「まばらに」分布している。即ち、サンプルと入力光学フィールドとの間の相互作用のための良好な重複を提供するという要件と、光ファイバの長手方向に感応性/活性領域全体を通って刺激入力光学フィールドを伝播させるための光閉じ込め特性に影響を与えない又は該特性を損なわないという制約との間でバランスがとれている。
【0040】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、コアは直径を有し、コアへの細孔の貫入深さは、コアの直径の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも40%である。貫入深さが増加すると、プロービング光学フィールドとの重複が増加する。直径及び貫入深さは、半径方向、即ち、長手方向に垂直に測定される。細孔は、半径方向内側に、即ち、長手方向に垂直に、コアの中心に向ってコアを画定する周方向界面から測定して貫入深さdだけ貫入する。好ましくは、細孔は、モードパワーと、検体用バイアル/キュベットとして作用する細孔容積との間に大きな重複をもたらすように、コア材内に「深く」貫入する。
【0041】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔の開口部の断面寸法は、約1μm以下、約800nm以下、好ましくは約500nm以下、又は約400nm以下である。細孔開口部の断面寸法は好ましくは、用途に応じて、サブサンプル/検体(細孔開口部の直径より大きい)の迅速な交換とサイズ選択性(細孔開口部の直径より小さい)とのバランスをとるように適合される。所与の値は、例えば、血漿分画中の検体を有する全血などの体液の分析に特に有用である。
【0042】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔の開口部の断面寸法は、少なくとも200nmである。細孔開口部の断面寸法は好ましくは、用途に応じて、サブサンプル/検体(細孔開口部の直径より大きい)の迅速な交換に対して、サイズ選択性(細孔開口部の直径より小さい)のバランスをとるように適合される。記載した範囲の値は、例えば、血漿分画中の検体を有する全血などの体液の分析に特に有用である。
【0043】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔に沿った軸方向における細孔の長さは、100μm未満、50μm未満、好ましくは30μm未満である。細孔の長さは好ましくは、用途に応じて、サンプル/検体(細孔長より短い)の迅速な交換に対して、コア内の光プロービングフィールドとの相互作用のために増加させたサンプル体積(細孔長より短い)のバランスをとるように適合される。所与の値は、全血サンプルの血漿分画中の検体を有する全血などの体液の分析に特に有用である。
【0044】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔に沿った軸方向における細孔の長さは、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmである。細孔の長さは好ましくは、用途に応じて、サンプル/検体(細孔長より短い)の迅速な交換に対して、コア内の光プロービングフィールドとの相互作用のために増加させたサンプル体積(細孔長より短い)のバランスをとるように適合される。所与の値は、全血サンプルの血漿分画中の検体を有する全血などの体液の分析に特に有用である。
【0045】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔は直線状である。直線状の細孔は、細孔長にわたる有効な輸送を促進することによって、高速のサブサンプル/検体交換を達成する。
【0046】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔は、光ファイバを方向性イオン衝撃に暴露させ、続いて化学エッチングすることによって形成されたトラックエッチングされた細孔である。トラックエッチングは、例えば、上述の寸法の直線状の狭いが深い細孔を形成するのに特に適している。細孔は、例えば、一方向のイオン衝撃曝露から取得される一方向配列で形成されてもよい。あるいは、細孔は、異なる方向から複数方向のイオン衝撃曝露を行うことによって、多方向配列で形成されてもよい。したがって、周面に略垂直に延在する細孔を有する放射状配列が考えられ得る。よって、細孔の配列は、例えば、エッチング工程の実行前に1回以上の方向性イオン衝撃曝露を行うことによって生成/画定され得る。
【0047】
有益なことに、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔を含むコア材の所与の体積の多孔率は、50~5体積%、30~10体積%、又は約15体積%である。細孔は、光ファイバ(又は光ファイバの所与の領域)に多孔性をもたらし、対応する表面積の周面に細孔開口部が分布している。多孔率は、細孔によって光ファイバのコア内に形成された空隙の容積、即ち、コアに貫入する細孔の容積の観点から特徴付けられてもよく、細孔容積は、細孔が貫入した光ファイバのコア体積と称される。上記容積は、コアを画定する円周方向に垂直な半径方向に見たときの、細孔が分布している周方向界面領域と、細孔のコア内への最大貫入深さによって決定される厚さとの間の円筒形シェルの容積として定義される。
【0048】
それに加えて、多孔性は、光プロービングのために利用可能なサブサンプル容積と等しい、統合された細孔容積に関して更に特徴付けられてもよい。細孔容積は、有益なことに、等価細孔容積深さDELTAとして表されてもよく、これは、細孔開口部が分布している対応周面領域と称される細孔容積であり、活性領域とも称される。したがって、光ファイバの多孔率は、以下のように等価細孔容積深さDELTAに変換することができる。所与の活性領域A内に開口部を有する細孔は、総細孔容積Vを有する。次いで、等価細孔容積深さは所与の活性領域で除算された総細孔容積:DELTA=V/Aとして算出される。
【0049】
有益なことに、光ファイバのいくつかの実施形態によると、等価細孔容積深さDELTAは、20μm未満、あるいは10μm未満、又は好ましくは約5μm以下であり、等価細孔容積深さDELTAは、細孔の開口部が分布している周面領域Aで除算した総細孔容積Vとして定義される。これにより、関連成分の代表的濃度を有する小さなサブサンプルが取得される。小さいサブサンプル容積は、迅速なサブサンプル交換を促進することによってセンサの応答時間を短縮し、センサを使用する測定サイクル時間を短縮するために望ましい。小さいサブサンプル体積は、光ファイバの周面近傍で、流体サンプル、例えば全血サンプル中の血漿分画の境界層の放血の影響を回避するために更に望ましい。そのような放血の影響は小さな静止したままのサンプルで生じる場合があり、等価細孔容積深さが臨界値を超える場合、赤血球などの流体中の粒子状物質が、流体サンプル体積から光ファイバの周面の境界層に向かう関連成分の効率的な拡散交換を妨害することがある。
【0050】
好ましくは、等価細孔容積深さDELTAは、少なくとも1μm、あるいは少なくとも2μm、又は3μm~5μmの範囲であり、等価細孔容積深さは上記のように定義される。大きいサブサンプル容積は、光学的にプローブされる情報に寄与することにより、良好な信号対雑音レベルを達成するために望ましい。
【0051】
更にいくつかの実施形態によると、有用な折衷策として、反応時間の短縮、サイクル時間の短縮、及び/又は全血サンプルなどの小さな静止流体サンプルにおける放血作用の回避が達成される一方、1μm~20μm、好ましくは2μm~10μm、又は約4μm~5μmの範囲の等価細孔容積深さDELTAに対して、所要又は所望の信号対雑音比が見出される。
【0052】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、細孔の内壁面は親水性であり、例えば、親水性コーティングでコーティングされる。これにより、乾燥細孔に液体を充填する効率的な毛管現象が駆動される。更に、親水性コーティングは、疎水性染料、ヘモグロビン、及び他のタンパク質などの特定の疎水性物質がセンサを漸進的に汚染させるように細孔内に堆積されることを防止し、このような汚染は水溶液で洗浄することが困難である。
【0053】
光ファイバは、細孔への拡散を促進するために、例えばポリエチレングリコール(PEG)の親水性コーティングを含んでもよい。親水性コーティングは、多孔質光ファイバの用途に応じて選択することができる。一部の用途では、光ファイバの細孔は、使用中には決して乾燥しないため、効率的なプライミングのために、始動時にのみ親水性であればよい。多孔質光ファイバの他の用途では、コーティングは、光ファイバの細孔を乾燥させて多孔質光ファイバの以後の使用時に再湿潤させるときに使用可能となるように、多孔質光ファイバの所望寿命にわたって永久的に親水性を維持しなければならない。
【0054】
更にいくつかの実施形態によると、光ファイバは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET若しくはPETE)、又はPETの類似体(ポリエチレンテレフタレートポリエステル(PETP若しくはPET-P))、又はポリカーボネート(PC)の類似体である。これらの材料は、光ファイバの製造に適している。更に、これらの材料は、例えば、トラックエッチングによって直線状の狭く深い細孔を製造するのに特に好適であるという利点を有する。
【0055】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、光ファイバは、長手方向に伝搬する複数モードを支持する、コアを備えたマルチモード光ファイバである。これにより、コアに貫入する細孔の含有物をプローブするための広いスペクトル範囲の入力光を伝搬及び適用することができる。更に、マルチモードファイバは、典型的には、大きな直径のコアを有し、10μm未満の典型的なコア径を有するシングルモードの光ファイバよりも機械的に安定的かつ頑丈に構成され得る。このことは、多孔質光ファイバの活性部分の外層が薄化される、部分的に除去される、又は完全に除去されることで、最終的に分析対象流体に接触するコア材のみを残す構成に特に関連する。
【0056】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、コアは、5μm~500μm、好ましくは100μm~200μmの範囲の直径を有する。この範囲のコア径を有するマルチモード光ファイバは、広いスペクトル範囲にわたって光プロービングパワーを効率的に注入するための優れた候補であり、光ファイバをコア材まで容易に剥ぎ取り、コア材内に十分に狭くて深い細孔を提供できるほど頑丈である。
【0057】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、コアの周方向界面は周面を形成する。この「剥ぎ取られたコア」構成は、細孔開口部からプロービング光を閉じ込めたコア内への直接アクセスを提供することによって、非常に効率的かつ迅速なサンプル交換を可能にする。
【0058】
また、いくつかの実施形態によると、光ファイバは、周面に反射性コーティングを更に含む。したがって、反射性コーティングは、開口部以外の周面を覆って細孔へのアクセスをもたらすように、コア材と分析対象流体との間に配置される。反射層は、光ファイバの内側から反射層に到達する光を反射するように適合されることによって、プロービング光が光ファイバの外側の流体に到達し、流体と相互作用することを防止する。このため、反射層を備えていない多孔質光ファイバ構成よりも、細孔内のみの光プロービングの空間選択性を更に向上させることができる。反射層は、任意の外層が除去されて、細孔を含む活性部分に剥ぎ取られたコアのみを残す多孔質光ファイバにとって特に有用であり得る。これにより、光プロービングフィールドのコアへの閉じ込めの改善が、特に活性部分において達成され得る。
【0059】
有益なことに、一実施形態によると、反射層は金属製である。このような金属コーティングは、適切な反射率で、比較的費用効果が高く十分に制御された方法で塗布することができる。
【0060】
有益なことに、一実施形態によると、反射層は、白金、パラジウム、又は主成分として白金又はパラジウムを含む合金で作製される。これらの材料は、例えば吸光度プロービングによって、遊離ヘモグロビンなどの特定の物質の検出に関連する電磁スペクトルのスペクトル範囲(深い青紫~青)において良好な反射率を呈する。更に、これらの材料は生体適合性であり、例えば、人工的な溶血を導入しない。更に、これらの材料は、全血サンプル又は前述の体液のいずれかなどの生物学的流体の化学的環境において、一般的に及び特に化学的に安定である。
【0061】
あるいは、いくつかの実施形態によると、反射層は銀又はアルミニウムで作製されてもよい。更に有益なことに、いくつかの実施形態によると、サンプル体積に面する反射層の表面は、追加の保護層によって包囲され、特に反射層の材料として銀又はアルミニウムが使用されるときにデバイスの寿命を向上させる。好適な保護層は、例えば、好ましくは透明に作製され、細孔開口部を遮断しないように十分に薄くなくてはならないSiOの薄層で作製されてもよい。これらの材料はまた、関連スペクトル範囲(赤)において良好な反射率を提供することができ、生体適合性を有し、かつ化学的に安定している。
【0062】
有益なことに、一実施形態によると、使用される金属に応じて、反射層の厚さは10nm~100nmである。上記の層厚により、光ファイバの周面の細孔開口部を詰まらせずに、蒸発手法によって反射層を塗布することができる。同時に、層厚は、プロービング領域と全血サンプルなどの分析対象流体を含有するサンプル体積とを確実に光学的に分離するために、サンプル体積に伝播する光を適切に減衰させるのに十分な厚さでなければならない。好ましくは、透過光は、検出スペクトル範囲、即ち、関連成分を表す信号が発生するスペクトル範囲において、5%未満、又はは0.1%未満である。例えば、全血サンプルの血漿分画中のビリルビンを測定するために、好適なスペクトル範囲は、380nm~700nm、380nm~450nm、又は約416nmである。
【0063】
更に、光ファイバのいくつかの実施形態によると、コアの周方向界面は、分析対象流体と接触するためのものである。コア材の周方向界面は、分析対象流体に直接露出するように構成されてもよい。このような構成は、製造がより容易であり、例えば、光プロービングフィールドの閉じ込め要件が厳格ではない場合に適用可能であり得る。更に、このような構成は、軸外検出構成を使用する場合に有用であり得る。
【0064】
本発明の第2の観点は、光プロービングにより流体中の検体を検出するためのセンサシステムに関し、センサは、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つによる多孔質光ファイバと、光ファイバ内に入力光を入射させるために第1の端部に結合された光源と、入射された入力光による照明に応じて細孔から放出された出力光を受け取るように構成された検出器と、を備える。
【0065】
センサシステムは、分析対象流体のサンプルが調製され、多孔質光ファイバの活性領域と接触させるサンプルチャンバと一体化することが容易である点で有益である。センサシステムは、再使用可能なサンプルチャンバを有するシステムとの一体化に特に適しており、サンプルチャンバは、サンプルを装填し、サンプル排出後にすすぎ、第1のサンプルとは別の新たなサンプルの分析に備えることができる。分析システムとの一体化が容易な高い適合性のため、多孔質光ファイバベースのセンサは、特に、一度に小さなサンプル体積のみを使用するシステムにおいて、同じサンプル上で実行される複数の測定可能なパラメータに関する複数のパラメータ分析器との一体化にも特に適する。
【0066】
光プロービング光は、任意の好適な光プロービング配列によって実行されてもよい。入力光は、1つ以上の検体に関する光プロービングによって分析される流体の代表的サブサンプルを含む細孔に遭遇するまで、コアに閉じ込められて光ファイバの長手方向に沿って伝搬するように、光ファイバの一端で注入することができる。照明入力光はサブサンプルと相互作用し、照明に応じてサブサンプルから放出された光は、検出器によって収集される。上述したように、入力光が閉じ込められたコアに深く貫入する細孔内にサブサンプルを提供することによって、特に良好な重複、ひいては、分析されるサンプルとの光プロービングフィールドとの相互作用が達成される。その結果、多孔質光ファイバを有するセンサシステムによって、高感度の光学検体反応を達成することができる。光学構成は、プロービング光と光ファイバとの結合と、光ファイバからの出射光と検出器入力との結合を向上させる追加の光学素子を含んでもよい。
【0067】
光源は、原則として、細孔内の検体が光を吸収する、又はシステムが機能するために光学的に刺激された応答を提供する領域に光を伝送する任意の光源であってもよい。光源が劣化すると、特性を変化させる、例えば、より少ない光又はドリフトを発して、ピーク振幅に影響を及ぼす場合がある。これはフィードバック校正プロセスを使用することによって補償することができ、このプロセスでは、多孔質光ファイバの細孔が清浄である、即ち、光を吸収する細孔中に分子を含まないことが予想される状況で、検出器が多孔質光ファイバを通じて受け取った光を検出する。受け取った光の振幅が予想より小さい場合、光源へのフィードバックループは、光源の劣化を補償するために、光源への電流又は電圧の増加を制御することができる。あるいは、光源が特性を変化させた場合、測定時の実際の吸収の計算は、元の工場校正と比較して出射光の変化を調節することができる。
【0068】
有益なことに、一実施形態によると、検出器は分光光度計を含み、光プロービングデバイスは、光ファイバ内のプロービング領域からの出射光の分光光度分析用に構成される。これにより、プロービング領域内のサブサンプルからの出射光における1つ以上の関連成分のスペクトルシグネチャを分解することができる。検出器は、所与のスペクトル範囲にわたる吸収を検出することができるフォトダイオード又は分光計であってもよい。あるいは、アレイ又はダイオードが使用されてもよく、各ダイオードは異なる波長で光を放出し、フォトダイオードは検出器として使用される。ダイオードは、異なる間隔で光を放出するように多重化されてもよい。次に、特定の間隔でダイオードから発せられた光とフォトダイオードによって検出された光とを比較することにより吸収が求められる。
【0069】
多孔質ファイバは、色生成/消費アッセイ用の読取デバイスとして使用することができる。利点は、アッセイ前に血漿を生成するために分離ステップを実行する必要がないことである。例えば、以下の種類のアッセイを、多孔質光ファイバベースのセンサシステムで使用することができる。受容体リガンドが膜チャネル内に結合され得るサンドイッチアッセイ。1つの部分が細孔に結合しているアッセイ、例えば、ブロモクレゾールグリーンを使用して、特にアルブミンとの着色錯体を形成するブロモクレゾールグリーンアルブミンアッセイ。620nmで測定された色の強度は、流体中のアルブミン濃度に正比例する。アスパルテートからα-ケトグルタル酸へのアミノ基の移動でグルタメートが生成される結果、存在するAST酵素活性に比例する比色(450nm)生成物が生じる、アスパルテートアミノトランスフェレーゼ(AST)活性アッセイキットなどの酵素活性アッセイ。
【0070】
多孔質光ファイバベースのセンサシステムは、ビール醸造用の監視タスク、廃水分析、食品検査、及び染料製造などの非医療用途で使用することもできる。ビール醸造では、正確な色が望ましい。多孔質光ファイバベースのセンサシステムを使用して、液体上で測定を行い、読取値と正しい色の液体とを比較することによって、ビールが所望の色を有するか否かを判定することができる。廃水は、構成成分の有無に関して分析することができる。ミルク、ジュース、及び他のスラリーなどの液体の食品検査では、多孔質光ファイバセンサシステムを使用して、構成要素又は検体の有無を分析することができる。他の化学反応体、例えば、染料産業では、多孔質光ファイバベースのセンサシステムを使用して、液体の所望の色、含有量、又は他の化学的特性を取得することができる。
【0071】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、多孔質光ファイバベースのセンサシステム、又は多孔質光ファイバベースのセンサシステムを含む血液分析システムは、検出器によって生成された信号を所定の較正基準と比較して、流体中の検体レベルの量的測定値を発生させるように構成されたプロセッサを更に備える。
【0072】
更に有益なことに、いくつかの実施形態によると、校正基準は、タルトラジン染料を含む水溶液などの染料ベースの校正液上で取得される。好ましくは、染料ベースの水溶液は、典型的なすすぎ液にタルトラジンなどの校正染料を添加して調製される。
【0073】
本発明の別の観点によると、流体分析システムは、(a)流体を供給及び排出する入口及び出口を有する流体チャンバと、(b)流体中の検体のレベルを表す第1の信号を提供するように適合された第1の検出器と、を備える。有益なことに、いくつかの実施形態によると、流体分析システムは、(c)1つ以上の追加の検出器であって、それぞれが、流体の検体を表す各自の信号を提供するように適合された1つ以上の更なる検出器と、を更に備え、第1及び追加の検出器は、同じ流体から第1及び1つ以上の追加の信号を取得するように動作可能であり、第1の検出器は、本明細書に開示される実施形態のいずれかにより検体を光学的に検出するための多孔質光ファイバとして構成される。
【0074】
更に、センサシステムのいくつかの実施形態によると、検出器は、光ファイバの第2の端部において前方散乱構成でインラインに配置される。この構成は、入力光が入射される第1の端部と反対側の光ファイバの第2の端部からコアに沿って前方方向に伝播した光を収集するように適合される。
【0075】
更に、センサシステムのいくつかの実施形態によると、検出器は、光ファイバの第1の端部において後方散乱構成でインラインに配置される。
【0076】
この構成は、光ファイバの第1の端部からコアに沿って後方に伝播した光を収集するように適合され、即ち、光プロービング反応は、入力光が入射される端部と同じ端部から収集される。
【0077】
更に、センサシステムのいくつかの実施形態によると、検出器は、外方散乱構成で軸外に配置される。軸外という用語は、光ファイバの長手方向と有限の角度を有する方向を指す。この構成は、光ファイバによる閉じ込めから散乱した光を収集するように適合され、即ち、光学的反応は、光ファイバのコアに閉じ込められた入力光の伝搬に対して軸外方向から収集される。
【0078】
更にいくつかの実施形態によると、センサシステムは、分析対象流体サンプルを受け取るサンプルチャンバを更に備え、サンプルチャンバは、多孔質光ファイバの活性部分を囲んでいる。
【0079】
本発明の更に別の観点によると、流体中のビリルビンなどの検体の光学的検出方法が、以下に詳述されるように提供される。本方法は、検体を検出する多孔質光ファイバ又は多孔質光ファイバを含むセンサシステムのそれぞれの実施形態に関して上述した利点を少なくとも達成する。
【0080】
いくつかの実施形態によると、流体中の検体の光学的検出方法は、上述したように多孔質光ファイバを提供するステップと、多孔質光ファイバを基準液と接触させて、細孔を基準液で充填するステップと、多孔質光ファイバの周面を流体と接触させるステップと、流体中の検体を細孔内に拡散させて安定化させるために拡散時間待機するステップと、入力光を光ファイバのコアに入射するステップと、入力光をコアに沿って伝搬させて、多孔質光ファイバの活性部分の細孔と相互作用させるステップと、入力光に応答して細孔から放出された光を収集することによって、細孔内の流体を光学的にプローブするステップと、光プロービングの結果に基づき、流体の検体レベルを確定するステップと、を含む。好ましくは、基準液は、流体と両立可能な水溶液であり、特に、すすぎ、校正、及び/又は品質管理のための液体など、細孔に侵入することができる分画を有する水溶液である。いくつかの実施形態では、流体の導入前に光ファイバの周面を基準液と接触させるステップを省略することが考えられ得る。しかしながら、このステップを含むことにより、拡散のみによるサブサンプルの抽出が可能になり、これは非常に効率的であり、驚くほど迅速な検出反応と驚くほど短い測定サイクル時間が得られる。非常に有益なことに、検体は、抽出されたサブサンプル中に典型的な量存在することによる色の変化を通じて、細孔内で光学的に検出される。
【0081】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、光プロービングは、プロービング入力光に対する光学的反応として細孔から出射される光の分光光度分析を実行することを含む。
【0082】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、光プロービングは、吸光度を測定することである。これは、比較的単純だが有効な設定という利点を有する。
【0083】
有益なことに、いくつかの実施形態によると、本方法は、光学的反応を所定の校正基準と比較するステップを更に含む。これにより、流体中の検体レベルの量的測定値を発生させることができる。
【0084】
更に有益なことに、本方法のいくつかの実施形態によると、校正基準は、タルトラジン染料を含む水溶液などの染料ベースの校正液で取得される。好ましくは、染料ベースの水溶液は、典型的なすすぎ液にタルトラジンなどの校正染料を添加して調製される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明の好ましい実施形態が概略的に示されている添付の図面と共に、より詳細に説明する。
図1】第1の実施形態による多孔質部分を有する光ファイバを示す図である。
図2】第2の実施形態による多孔質部分を有する光ファイバを示す図である。
図3】様々な実施形態による、光ファイバの長手方向に沿って見た多孔質部分の端面図である。
図4】様々な実施形態による、光ファイバの長手方向に沿って見た多孔質部分の端面図である。
図5】様々な実施形態による、光ファイバの長手方向に沿って見た多孔質部分の端面図である。
図6】様々な実施形態による、光ファイバの長手方向に沿って見た多孔質部分の端面図である。
図7】多孔質光ファイバと、2つの異なる検出構成における光プロービング配列とを有するセンサを示す図である。
図8】多孔質光ファイバと、更に別の検出構成を使用する光プロービング配列とを有するセンサを示す図である。
図9】一実施形態によるサンプルチャンバ内に統合された多孔質光ファイバを示す図である。
図10】別の実施形態によるサンプルチャンバ内に統合された多孔質光ファイバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1は、光ファイバ100の長手方向において見たときの、第1の端部101と、第1の端部101と反対側の第2の端部102とを有する光ファイバ100を示す。光ファイバ100は、コア104に閉じ込められた光を長手方向に沿って伝搬させるように適合されている。光ファイバ100は、中間位置に長さLの活性部分110を含み、この活性部分では、クラッド層103などの光ファイバの外層が除去又は薄化されて周面111が露出されており、周面から孔112がコア材104に貫入すると、孔112内に存在する物質が、コア104内に伝播したプロービング光と相互作用し、対応する光プロービング反応をもたらすことができる。
【0087】
図2は、光ファイバ200の長手方向において見たときの、第1の端部201と、第1の端部201と反対側の第2の端部202とを有する光ファイバ200を示す。光ファイバ200は、コア204に閉じ込められた光を長手方向に沿って伝搬させるように適合されている。光ファイバ200は、長さLの活性部分210を含み、この活性部分では、クラッド層203などの光ファイバの外層が除去又は薄化されて周面211が露出されており、周面から孔212がコア材204に貫入すると、孔212内に存在する物質が、コア204内に伝播したプロービング光と相互作用し、対応する光プロービング反応をもたらすことができる。図1に示す実施形態とは対照的に、光ファイバ200の活性部分210は、端部位置、即ち第2の端部202に位置する。
【0088】
図3~6は、多孔質光ファイバの活性部分における様々な構造の細孔の配置を概略的に示す。図3~6は、光ファイバの長手方向から見た、図1及び2に示されるような光ファイバの活性部分の端面図である。これらの端面図は、重ね合わされた異なる長手方向位置の細孔を示している、即ち、図示される様々な細孔は典型的には、同じ断面内に位置しない。それとは対照的に、細孔は典型的には、活性部分の特定の長手方向部分にわたって(即ち、図3~6の端面図の特定の深さにわたって)分布している。細孔は、好ましくは直線状であり、例えば、上述のようにトラックエッチングによって形成することができる。
【0089】
具体的には、図3は、外層が剥ぎ取られてコア材304のみが残されている、光ファイバ300の活性部分310の端面図である。活性領域310の周面311は、長手方向に垂直な半径方向にコア304を画定する周方向界面313によって形成され、周方向界面313と一致する。細孔312は、周面311の各開口部314から、各側からコア304の直径の約30%である、細孔の長さに等しい貫入深さまで半径方向内方に突出する。細孔312は、周方向に均等に離間して配置及び分散されているように示されているが、ランダムな間隔で分散されてもよいことに留意されたい。
【0090】
図4は、図3に示される実施形態と同様に半径方向に配置された細孔412を有する光ファイバ400の活性部分410の端面図である。しかしながら、図4の実施形態は、クラッド層403がコア404の周囲に残されている点で、図3の実施形態とは異なる。外側クラッド層403は、周面411を有し、周方向界面413によってコア404から分離されている。細孔412は、周面の開口部414から、クラッド層403を通って延在し、コア404内へ深く周方向界面413に貫入する。図4に示されるように残りの外層がコア404を囲む構成では、クラッド層403は、コア404に閉じ込められ、コア404に沿って伝播する一部の光をエバネッセント方式で搬送する一方、細孔412は、細孔412の含有物の光プロービングのための大きな空間的重複を提供するためにコア404内に貫入する。
【0091】
図5は、コア材504のみを残して外側層が剥ぎ取られている、光ファイバ500の活性部分510の端面図である。活性領域510の周面511は、長手方向に垂直な半径方向にコア504を画定する周方向界面513によって形成され、周方向界面513と一致する。細孔512は、周面の開口部514からコア504内へと延在する。図3及び図4の実施形態とは対照的に、多孔質光ファイバ500の細孔512は、互いに略平行に配置され、2つの反対方向からコア材504に貫入する。このような構成は、光ファイバ500の剥ぎ取られた部分510を、長手方向を横断する2つの異なる方向(ここでは2つの反対方向)から一方向イオン衝撃に暴露させた後、光ファイバの材料内のイオン衝撃のトラックに沿って材料を選択的に除去するように適合されたエッチング工程を適用するトラックエッチングプロセスを使用して簡便に得ることができる。
【0092】
図6も、外層が剥ぎ取られてコア材604のみが残されている、光ファイバ600の活性部分610の端面図である。活性領域610の周面611は、長手方向に垂直な半径方向にコア604を画定する周方向界面613によって形成され、周方向界面613と一致する。細孔612は、周面の開口部614からコア604内へと延在する。図6の実施形態における細孔612の配置は、図5の実施形態における細孔512の配置と同様であるが、相違点として、細孔は2つの反対方向からだけではなく、互いに約90度を成す4つの異なる横断方向から形成される。実際には、図5及び6と同様の所望の細孔配置を得るために、様々な方向及び角度の任意の組み合わせが考えられ得る。
【0093】
図7~10を参照すると、様々なセンサシステムが例として簡略的に示されており、図7及び8は異なる光プロービング構造を概略的に示し、図9及び10は多孔質光ファイバとサンプルチャンバとの統合のための異なる配置を示す。
【0094】
図7は、図1に示される光ファイバ100を示す。光ファイバ100は、第1の端部101と第2の端部102との間の長手方向の中間位置に活性部分110を有する。光源Sは、光ファイバ100の第1の端部101に結合されて入力プロービング光120を入射させ、この入力プロービング光は光ファイバのコアに沿って、プロービング対象の流体のサブサンプルを含む細孔112を備えた活性部分110に伝搬する。入力プロービング光120は、細孔の含有物に関する情報を伝える光学的反応を引き起こし、この反応は、第2の端部102において前方散乱配列で光ファイバとインラインに配置された検出器D1により前方プロービング反応121として収集することができる。これに代えて又はこれに加えて、軸外プロービング反応122は、光ファイバ100の長手方向に対して外方散乱配列で軸外に配置された検出器D2により収集されてもよい。
【0095】
図8は、図2に示される光ファイバ200を示す。光ファイバ200は、第1の端部201と反対側の第2の端部202における端部位置に活性部分210を有する。光源Sは、光ファイバ200の第1の端部201に結合されて入力プロービング光220を入射させ、この入力プロービング光は光ファイバのコアに沿って、プロービング対象の流体のサブサンプルを含む細孔212を備えた活性部分210に伝搬する。入力プロービング光220は、細孔の含有物に関する情報を伝送する光学的反応を引き起こす。光学的反応は、第1の端部201において後方散乱配列で光ファイバ200とインラインに配置された検出器D3によって後方プロービング反応221として収集することができる。光プロービングのための様々な散乱構造は、所望の光プロービングの設計に従って組み合わされ得ることに留意されたい。例えば、本明細書で説明される後方散乱構造は、図1及び7に示されるように、光ファイバ100と組み合わせても同等に有用であり得る。
【0096】
図9は、活性部分110を流体サンプル99と接触させるためのサンプルチャンバ109と、上述したような多孔質光ファイバ100を有するセンサシステムとの統合を示しており、明瞭化のため、関連する光プロービング配列は省略している。サンプルチャンバ109は、「供給、充填、及び排出」タイプのものとすることができ、流体サンプル99が入口を通じて供給されて、分析対象の流体99でサンプルチャンバを充填し、測定完了後、サンプルチャンバは出口を通じて空にされて(及びすすがれて)サンプルチャンバの再利用に備える。あるいは、サンプルチャンバは、流通タイプであってもよく、流体サンプル99がサンプルチャンバ109(例えば、図9に示されるチャネルとして形成される)を連続的に流れることによって、光ファイバ100の活性部分110を分析対象流体99に暴露させる。いずれの場合でも、活性部分110の周面111に流体サンプル99を接触させることによって、サブサンプルが細孔112内に抽出され、光ファイバ100のコア104内の光プロービングのために提示される。
【0097】
同様に、図10は、活性部分210を流体サンプル99と接触させるためのサンプルチャンバ209と、上述したような多孔質光ファイバ200を有するセンサシステムとの統合を示しており、明瞭化のため、関連する光プロービング配列は省略している。サンプルチャンバ209は、「供給、充填、及び排出」タイプのものとすることができ、流体サンプル99が入口を通じて供給されて、分析対象の流体99でサンプルチャンバを充填し、測定完了後、サンプルチャンバは出口を通じて空にされて(及びすすがれて)サンプルチャンバの再利用に備える。あるいは、サンプルチャンバは、流通タイプであってもよく、流体サンプル99がサンプルチャンバ209(例えば、図10に示されるチャネルとして形成される)を連続的に流れることによって、光ファイバ200の活性部分210を分析対象流体99に暴露させる。いずれの場合でも、活性部分210の周面211に流体サンプル99を接触させることによって、サブサンプルが細孔212内に抽出され、光ファイバ200のコア204内の光プロービングのために提示される。
【0098】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、示される実施形態の異なる特徴を組み合わせることができる。例えば、金属コーティングなどの任意の反射コーティングが、図5の参照番号515によって示されるような多孔質光ファイバの活性部分の周面に塗布されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10