(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】レジャービークル
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20220104BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20220104BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20220104BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20220104BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220104BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220104BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220104BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220104BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20220104BHJP
B60W 20/17 20160101ALI20220104BHJP
B62M 23/02 20100101ALI20220104BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/46
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60L7/14
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
B60W10/08
B60W10/08 900
B60W20/17
B62M23/02 110
(21)【出願番号】P 2020504555
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2018008782
(87)【国際公開番号】W WO2019171496
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 義基
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031837(JP,A)
【文献】特開平11-075302(JP,A)
【文献】特開2007-055324(JP,A)
【文献】特開2009-153281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/06
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/46
B60W 20/17
B60K 6/547
B62M 23/02
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/12
B60L 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及びエンジンが搭載され
、駆動輪を備えたハイブリッド式のレジャービークルにおいて、
ユーザーが操作するアクセル操作子の操作量を検出するアクセルセンサと、
プロセッサ及びメモリを有し、前記アクセルセンサの検出信号に応じて前記電動モータ及び前記エンジンを制御するコントローラと、
前記コントローラに接続され、ユーザーが操作する選択入力装置と、を備え、
前記メモリには、車両条件に応じた前記電動モータ
の駆動及び停止の状態と、前記車両条件に応じた前記エンジンの
ON及びOFFの状態の変化が決められた複数種類のモードプログラムが記憶されており、
前記プロセッサは、ユーザーによる前記選択入力装置への入力に応じて、前記複数種類のモードプログラムから1つのモードプログラムを選択し、当該選択されたモードプログラムに従って前記電動モータ及び前記エンジンを制御する、レジャービークル。
【請求項2】
前記エンジンは、
前記駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、
前記複数種類のモードプログラムは、
所定の第1走行条件が成立したときに前記エンジンを停止して前記電動モータが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ、所定の第2走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させる燃費優先モードプログラムと、
前記第1走行条件及び前記第2走行条件の何れが成立したときも前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させるエンジン優先モードプログラムと、を含む、請求項1に記載のレジャービークル。
【請求項3】
前記エンジンは、
前記駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、
前記複数種類のモードプログラムは、
所定の第3走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータを停止するエンジン駆動モードプログラムと、
前記第3走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記エンジンが発生する動力により前記電動モータに回生させる発電優先モードプログラムと、を含む、請求項1又は2に記載のレジャービークル。
【請求項4】
前記エンジンは、
前記駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、
前記複数種類のモードプログラムは、
所定の加速条件が成立したとき、前記エンジンから前記駆動輪に与えるトルクを増加させ且つ前記電動モータを回生状態から走行駆動力を与える走行支援状態に切り替える急加速可能モードプログラムと、
前記加速条件が成立したとき、前記急加速可能モードプログラムとは異なる動作を行う他のモードと、を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレジャービークル。
【請求項5】
前記急加速可能モードプログラムは、前記加速条件が成立したとき、前記エンジンを加速して発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータを回生状態から駆動状態に切り替えて前記電動モータで発生する動力を前記駆動輪に伝達させ、
前記他のモードは、前記加速条件が成立したとき、前記電動モータの状態を維持又は停止し且つ前記エンジンから前記駆動輪に与えるトルクを増加させる、請求項4に記載のレジャービークル。
【請求項6】
前記エンジンは、バッテリを充電する発電機も駆動可能に設けられ、
前記複数種類のモードプログラムは、
前記車両の停車中に前記バッテリの残量が所定の閾値未満になると、前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達経路を切断した状態で前記エンジンを始動させて前記発電機を駆動する充電優先モードプログラムと、
前記車両の停車中に前記バッテリの残量が前記閾値未満になっても、前記バッテリの残量が前記閾値未満になる前の状態と同じ状態に維持する騒音防止モードプログラムと、を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレジャービークル。
【請求項7】
前記エンジンは、
前記駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、
前記複数種類のモードプログラムは、
所定の第4走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータが発生する動力を前記駆動輪に第1パターンにて伝達する第1パラレル駆動モードプログラムと、
前記第4走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータの動作を第1パターンとは異なる第2パターンにする第2パラレル駆動モードプログラムと、を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のレジャービークル。
【請求項8】
前記
車両条件は、要求トルクと、前記電動モータ及びエンジンの回転数とを含む、請求項7に記載のレジャービークル。
【請求項9】
前記エンジンは、前記電動モータに供給される電力を発生する発電機を駆動可能に設けられた発電エンジンであり、
前記複数種類のモードプログラムは、
前記アクセルセンサで検出された操作量が所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加したとき、前記エンジンの出力を増加させる発電優先モードプログラムと、
前記アクセルセンサで検出された操作量が前記所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加しても、前記エンジンの出力を前記操作量が前記所定量を超える前の状態と同じ状態に維持する静音優先モードプログラムと、を含む、請求項1に記載のレジャービークル。
【請求項10】
前記発電機は、バッテリを充電可能に設けられ、
前記複数種類のモードプログラムは、
前記車両の停車中に前記バッテリの残量が所定の閾値未満になると、前記エンジンを始動させる充電優先モードプログラムと、
前記車両の停車中に前記バッテリの残量が前記閾値未満になっても、前記バッテリの残量が前記閾値未満になる前の状態と同じ状態に維持する騒音防止モードプログラムと、を含む、請求項9に記載のレジャービークル。
【請求項11】
前記複数種類のモードプログラムは、
前記電動モータの駆動、回生及び停止の少なくとも2つの間での切替と、前記エンジンのON及びOFFの間での切替と、を第1車両条件に応じて設定した第1モードプログラムと、
前記電動モータの駆動、回生及び停止の少なくとも2つの間での切替と、前記エンジンのON及びOFFの間での切替と、を第2車両条件に応じて設定した第2モードプログラムと、を含み、
前記第1車両条件は、前記第2車両条件とは異なる条件を含む、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレジャービークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータ及びエンジンが搭載されたハイブリッド式のレジャービークルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関であるエンジンと、バッテリからの電力で駆動する電動モータとを備えたハイブリット式の二輪車が知られている(例えば、特許文献1参照)。ハイブリッド方式には、電動モータ及びエンジンの発生動力を走行動力として駆動輪に伝達可能に構成されたパラレルハイブリッド方式と、電動モータの発生動力を走行動力として駆動輪に伝達すると共にエンジンはバッテリを充電する発電機を駆動するように構成されたシリーズハイブリッド方式とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド式の自動二輪車は、エンジンを停止して電動モータを駆動した状態、電動モータを停止してエンジンを駆動した状態、及び、電動モータ及びエンジンの両方を駆動した状態の3つの状態を採ることができる。ハイブリッド車両のコントローラは、これらの状態のうちから車両条件(例えば、アクセル要求やバッテリ残量等)に応じて適切な1つの状態を選択するように予めプログラムされている。
【0005】
しかし、車体をバンクさせて走行する自動二輪車や不整地を走行するユーティリティビークル等のレジャービークルでは、運転者の意図しないトルク変化、例えばエンジンの始動/停止によるトルク変化の運転フィーリングに与える影響が大きくなる。そのため、エンジン及び電動モータの状態の切り替えを完全に車両条件に任せてしまうと適切でない場合が生じ得る。また、ユーザーの使用環境によっては、車両条件がエンジンを駆動する条件を満たしても、静音のためにエンジンを駆動させたくない場合がある。また、ユーザーの好みによっては、電動モータによる走行中にエンジンが始動して走行フィーリングが変化することを嫌って、多少燃費が悪くなってもエンジンを常時駆動状態にしたい場合もある。そのため、従来のハイブリッド式のレジャービークルでは、ユーザーの使用環境や好みに応じた要求に答えることができない。
【0006】
また、仮に前記3つの状態の切り替えをユーザーの選択に任せてしまうと、ユーザーが使用環境や好みに応じて電動モータ及びエンジンの駆動/非駆動の状態を変更できるものの、車両にとって不適切な状態選択が行われてしまう可能性がある。よって、車両にとって適切な状態選択を担保しながらユーザーの使用環境や好みに応じた状態変更を可能にしようと思えば、異なる特性(セッティング)を有する複数の車両を所有しなければならなくなる。
【0007】
そこで本発明は、ハイブリッド式レジャービークルの適切な状態選択を担保しながらも、ユーザーが自身の好みや使用環境に応じてビークル特性を自由に変更することが可能となる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るレジャービークルは、電動モータ及びエンジンが搭載されたハイブリッド式のレジャービークルにおいて、ユーザーが操作するアクセル操作子の操作量を検出するアクセルセンサと、プロセッサ及びメモリを有し、前記アクセルセンサの検出信号に応じて前記電動モータ及び前記エンジンを制御するコントローラと、前記コントローラに接続され、ユーザーが操作する選択入力装置と、を備え、前記メモリには、車両条件に応じた前記電動モータ及び前記エンジンの状態の変化が決められた複数種類のモードプログラムが記憶されており、前記プロセッサは、ユーザーによる前記選択入力装置への入力に応じて、前記複数種類のモードプログラムから1つのモードプログラムを選択し、当該選択されたモードプログラムに従って前記電動モータ及び前記エンジンを制御する。
【0009】
前記構成によれば、車両条件(例えば、要求トルク及び回転数)に応じて、電動モータの状態(例えば、駆動/回生/停止)の変化及びエンジンの状態(例えば、ON/OFF)の変化を決めたプログラムが複数種類用意されているため、車両条件に応じた電動モータ及びエンジンの状態の変化パターンにバリエーションを設けながらも各プログラムにおいてハイブリッド式レジャービークルの適切な状態選択を担保することができる。そして、その複数種類のプログラムからユーザーが1つのプログラムを任意に選択することで、ユーザーが自身の好みや使用環境に応じてビークル特性を自由に変更できる。
【0010】
前記エンジンは、駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、前記複数種類のモードプログラムは、所定の第1走行条件が成立したときに前記エンジンを停止して前記電動モータが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ、所定の第2走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させる燃費優先モードプログラムと、前記第1走行条件及び前記第2走行条件の何れが成立したときも前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させるエンジン優先モードプログラムと、を含む構成としてもよい。
【0011】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、燃費優先モードプログラムにおいては、エンジンを使用せずに電動モータでの走行を優先するので、使用環境に応じてエンジン音を発生させずに走行することをユーザーによる選択で実現できる。
【0012】
前記エンジンは、駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、前記複数種類のモードプログラムは、所定の第3走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータを停止するエンジン駆動モードプログラムと、前記第3走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記エンジンが発生する動力により前記電動モータに回生させる発電優先モードプログラムと、を含む構成としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、発電優先モードプログラムにおいては、発電機の負トルク分だけ多くエンジンで正トルクを発生させるので、エンジンを高効率領域で動作させることができる。
【0014】
前記エンジンは、駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、前記複数種類のモードプログラムは、所定の加速条件が成立したとき、前記エンジンから前記駆動輪に与えるトルクを増加させ且つ前記電動モータを回生状態から走行駆動力を与える走行支援状態に切り替える急加速可能モードプログラムと、前記加速条件が成立したとき、前記急加速可能モードプログラムとは異なる動作を行う他のモードと、を含む構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、急加速可能モードプログラムにおいては、電動モータを負トルク状態(回生状態)から正トルク(駆動状態)に切り替えることで電動モータのトルクの正負変化を利用した急加速を実現することができる。
【0016】
前記急加速可能モードプログラムは、前記加速条件が成立したとき、前記エンジンを加速して発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータを回生状態から駆動状態に切り替えて前記電動モータで発生する動力を前記駆動輪に伝達させ、前記他のモードは、前記加速条件が成立したとき、前記電動モータの状態を維持又は停止し且つ前記エンジンから前記駆動輪に与えるトルクを増加させる構成としてもよい。
【0017】
前記エンジンは、バッテリを充電する発電機も駆動可能に設けられ、前記複数種類のモードプログラムは、前記車両の停車中に前記バッテリの残量が所定の閾値未満になると、前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達経路を切断した状態で前記エンジンを始動させて前記発電機を駆動する充電優先モードプログラムと、前記車両の停車中に前記バッテリの残量が前記閾値未満になっても、前記バッテリの残量が前記閾値未満になる前の状態と同じ状態に維持する騒音防止モードプログラムと、を含む構成としてもよい。
【0018】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、騒音防止モードプログラムにおいては、車両停止中にバッテリ残量が低下することに起因して発電用エンジンが急加速する音を発生せず、車両停止中の急な騒音の発生を防止できる。
【0019】
前記エンジンは、駆動輪に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、前記複数種類のモードプログラムは、所定の第4走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータが発生する動力を前記駆動輪に第1パターンにて伝達する第1パラレル駆動モードプログラムと、前記第4走行条件が成立したときに前記エンジンが発生する動力を前記駆動輪に伝達させ且つ前記電動モータの動作を第1パターンとは異なる第2パターンにする第2パラレル駆動モードプログラムと、を含む構成としてもよい。
【0020】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。
【0021】
前記第2パターンは、前記第1パターンに比べ、前記電動モータが発生する動力を前記駆動輪に間欠的に伝達するように構成されている、請求項7に記載のハイブリッド車両。
【0022】
前記構成によれば、走行フィーリングの選択肢を増やすことができる。
【0023】
前記エンジンは、前記電動モータに供給される電力を発生する発電機を駆動可能に設けられた発電エンジンであり、前記複数種類のモードプログラムは、前記アクセルセンサで検出された操作量が所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加したとき、前記エンジンの出力を増加させる発電優先モードプログラムと、前記アクセルセンサで検出された操作量が前記所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加しても、前記エンジンの出力を前記操作量が前記所定量を超える前の状態と同じ状態に維持する静音優先モードプログラムと、を含む構成としてもよい。なお、当該発電機は、前記電動モータであってもよいし前記電動モータとは異なる発電機であってもよい。
【0024】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、静音優先モードプログラムにおいて、ユーザーが加速指令を行っても、発電用エンジンが加速する音を発生せず騒音を防止できる。
【0025】
前記複数種類のモードプログラムは、前記車両の停車中に前記バッテリの残量が所定の閾値未満になると、前記エンジンを始動させる充電優先モードプログラムと、前記車両の停車中に前記バッテリの残量が前記閾値未満になっても、前記バッテリの残量が前記閾値未満になる前の状態と同じ状態に維持する騒音防止モードプログラムと、を含む構成としてもよい。
【0026】
前記構成によれば、ビークル特性に関するユーザーの選択肢が増え、利便性を高めることができる。特に、騒音防止モードプログラムにおいては、車両停止中にバッテリ残量が低下することに起因して発電用エンジンが急加速する音を発生せず、車両停止中の急な騒音を防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ハイブリッド式のレジャービークルの適切な状態選択を担保しながらも、ユーザーが自身の好みや使用環境に応じてビークル特性を自由に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係るパラレルハイブリッド式の自動二輪車のブロック図である。
【
図2】
図1に示す自動二輪車の制御系統のブロック図である。
【
図3】(A)~(C)は
図1に示す自動二輪車の各モードでの動力伝達状態を説明する図面である。
【
図4】
図1に示す自動二輪車の各モードを説明する図面である。
【
図5】
図4に示すモード1の要求トルクとエンジン回転数との間の関係を示すマップである。
【
図6】
図4に示すモード2の要求トルクとエンジン回転数との間の関係を示すマップである。
【
図7】
図4に示すモード4の要求トルクとエンジン回転数との間の関係を示すマップである。
【
図8】
図4に示すモード5の要求トルクとエンジン回転数との間の関係を示すマップである。
【
図9】(A)は
図4に示すモード2及び5の急加速要求時におけるタイミングチャートであり、(B)は
図4に示すモード3及び6の急加速要求時におけるタイミングチャートである。
【
図10】(A)は第1パラレル駆動モードのタイミングチャート、(B)は第2パラレル駆動モードのタイミングチャートである。
【
図11】第2実施形態に係るシリーズハイブリッド式の自動二輪車のブロック図である。
【
図12】(A)は
図11に示す自動二輪車の発電優先モードにおける定常走行から加速走行への移行時におけるタイミングチャートであり、(B)は静音優先モードにおける定常走行から加速走行への移行時におけるタイミングチャートである。
【
図13】(A)は
図11に示す自動二輪車の充電優先モードにおける停車状態での電力消費増加時におけるタイミングチャートであり、(B)(C)は騒音防止モードにおける停車状態での電力消費量増加時におけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るパラレルハイブリッド式の自動二輪車1のブロック図である。本実施形態では、レジャービークルの一例として自動二輪車について説明するが、ユーティリティビークル等の車両であってもよい。
図1に示すように、自動二輪車1は、走行用駆動源及び発電用駆動源としてのエンジンE(内燃機関)と、走行用駆動源及び発電機としての電動モータMとを備える。即ち、エンジンEは駆動輪2に伝達される走行動力を発生する走行駆動エンジンであり、自動二輪車1はパラレルハイブリッド方式である。
【0031】
自動二輪車1には、エンジンE及び電動モータMからの動力を変速して駆動輪2に伝達する変速機3が設けられている。変速機3は、例えばドッグクラッチ式の変速機であり、入力軸4及び出力軸5を有する。入力軸4には、エンジンE及び電動モータMから動力が入力される。出力軸5は、出力伝達機構7(例えば、チェーン又はベルト)を介して駆動輪2に動力を伝達する。入力軸4は、減速比の異なる複数組のギヤ列6を介して出力軸5に動力伝達可能に結合されている。
【0032】
変速機3では、入力軸4及び出力軸5に平行に設けられた支軸7にシフトフォーク8~10がスライド自在に支持されている。シフトフォーク8の一端部が入力軸4のドッグギヤ6aに接続され、別のシフトフォーク9,10の一端部が出力軸5のドッグギヤ6b,6cに接続されている。シフトフォーク8~10の他端部は、シフトドラム11の案内溝Gに嵌合している。
【0033】
ユーザーによるシフト操作子(図示せず)の操作に連動してシフトドラム11が回転すると、案内溝Gに案内されたシフトフォーク8~10が対応するドッグギヤ6a~cを出力軸5に沿ってスライドさせ、ギヤ列6のうち所望の減速比の1組が動力伝達状態となり、所望の変速段の動力伝達経路が選択されることになる。なお、前記シフト操作子は、例えば、ユーザーの足で操作されるシフトペダルである。変速機3は、ニュートラル段の位置にシフトドラム11が回動されると、入力軸4と出力軸5との間の動力伝達が切断されたニュートラル状態になる。
【0034】
電動モータMは、バッテリ12からインバータ13を介して供給される電力で動力を発生し、また、変速機3の入力軸4から伝達される動力で発電してバッテリ12を充電可能である。電動モータMは、動力伝達機構(例えば、ギヤ又はベルト等)を介して変速機3の入力軸4に接続されている。即ち、電動モータMは、エンジンEとは異なる動力伝達経路で入力軸4に接続されている。
【0035】
エンジンEのクランク軸Eaは、メインクラッチ14(例えば、多板クラッチ)を介して変速機3の入力軸4に動力伝達可能に接続されている。メインクラッチ14は入力軸4の一端部に設けられ、入力軸4の他端部には油圧シリンダ15が設けられている。油圧シリンダ15には、油圧制御ユニット16が接続されている。油圧制御ユニット16にクラッチ作動指令が入力されると、油圧制御ユニット16が油圧シリンダ15に所定値以上の油圧を供給し、油圧シリンダ15から入力軸4内を挿通するロッドを介してメインクラッチ14にクラッチ動力が付与され、メインクラッチ14が切断状態になる。油圧制御ユニット16にクラッチ解除指令が入力されると、油圧制御ユニット16は油圧シリンダ15に対する油圧を除圧し、メインクラッチ14が接続状態になる。即ち、油圧シリンダ15及び油圧制御ユニット16は、クラッチアクチュエータ17を構成している。
【0036】
図2は、
図1に示す自動二輪車1の制御系統のブロック図である。
図1及び2に示すように、自動二輪車1には、コントローラ18が設けられている。コントローラ18は、バッテリ管理ユニット20、アクセルセンサ21、車速センサ22、エンジン回転数センサ23、選択入力ボタン24(選択入力装置)等の出力信号を受信する。バッテリ管理ユニット20は、バッテリ12の残量や電圧等を検出する。アクセルセンサ21は、ユーザーが操作するアクセル操作子(図示せず)の操作量(即ち、加減速要求度)を検出する。車速センサ22は、自動二輪車1の走行速度を検出する。エンジン回転数センサ23は、エンジンEのクランク軸Eaの回転数を検出する。選択入力ボタン24は、ユーザーが操作してモード選択を入力し、その選択されたモード情報をコントローラ18に出力する。選択入力ボタン24は、自動二輪車1のバーハンドル(図示せず)に設けられており、マスターキーシリンダ(図示せず)のキー位置がONになっているときに入力が有効になる。
【0037】
コントローラ18は、ハードウェア面において、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェースを有する。コントローラ18は、機能面において、モードプログラム記憶部31、要求トルク演算部32、モードプログラム実行部33、モータ制御部34、エンジン制御部35及びクラッチ制御部36を有する。モードプログラム記憶部31は、不揮発性メモリにより実現される。要求トルク演算部32、モードプログラム実行部33、モータ制御部34、エンジン制御部35及びクラッチ制御部36は、バッテリ管理ユニット20、アクセルセンサ21、車速センサ22、エンジン回転数センサ23、選択入力ボタン24等からの情報をI/Oインターフェースを介して受信して当該情報を参照し、不揮発性メモリに保存されたプログラムに従って揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0038】
モードプログラム記憶部31は、車両条件(例えば、要求トルク及びエンジン回転数等)に応じた電動モータM及びエンジンEの状態の変化が決められた複数種類のモードプログラムを予め記憶している。要求トルク演算部32は、アクセルセンサ21の出力信号からユーザーの加速要求値(又は減速要求値)を求めると共に車速センサ22及びエンジン回転数センサ23等の出力信号から自動二輪車1の走行状態を求め、自動二輪車1の走行状態をユーザーの加減速要求値に合わせるために必要となる駆動輪2のトルク(即ち、要求トルク)を算出する。
【0039】
モードプログラム実行部33は、ユーザーが選択入力ボタン24により選択したモードに対応するモードプログラムをモードプログラム記憶部31から読み出し、その読み出されたモードプログラムに従って、要求トルク演算部32で算出された要求トルクに応じてモータ制御部34、エンジン制御部35及びクラッチ制御部36に動作指令値を出力する。
【0040】
モータ制御部34は、モードプログラム実行部33からの指令に応じてインバータ13を制御することにより電動モータMの動作を制御する。エンジン制御部35は、モードプログラム実行部33からの指令に応じて燃料インジェクタ41、点火装置42及びスロットル装置43を制御することによりエンジンEの動作を制御する。クラッチ制御部36は、モードプログラム実行部33からの指令に応じてクラッチアクチュエータ17を制御する。なお、本実施形態ではコントローラ18を1つとしているが、複数のコントローラに機能分散した構成としてもよい。
【0041】
図3(A)~(C)は、
図1に示す自動二輪車1の各モードでの動力伝達状態を説明する図面である。
図3に示すように、自動二輪車1の動力伝達状態は、HEV状態(エンジン・モータ走行状態)、EG状態(エンジン走行状態)、及びEV状態(モータ走行状態)を有する。これらの各動力伝達状態は、モードプログラム記憶部31に記憶されたモードプログラムに従って選択される。
【0042】
図3(A)に示すように、HEV状態では、メインクラッチ14は接続状態、電動モータMは駆動状態、エンジンEは駆動状態となる。即ち、HEV状態では、エンジンE及び電動モータMの両方から走行動力が駆動輪2に伝達される。
【0043】
図3(B)に示すように、EG状態では、メインクラッチ14は接続状態、電動モータMは回生状態、エンジンEは駆動状態となる。即ち、EG状態では、エンジンEのみから走行動力が駆動輪2に伝達され、電動モータMはエンジンEからの動力が入力軸4を介して伝達されて発電を行う。なお、EG状態では、電動モータMは回生状態にせずにフリーラン状態(起電力発生による抵抗を生じないようにモータ回路をオープンにした状態)としてもよい。
【0044】
図3(C)に示すように、EV状態では、メインクラッチ14は切断状態、電動モータMは駆動状態、エンジンEは停止状態となる。即ち、EV状態では、電動モータMのみから走行動力が駆動輪2に伝達される。
【0045】
図4は、
図1に示す自動二輪車1の各モードを説明する図面である。
図5~8は、
図4に示すモード1,2,4及び5の要求トルクとエンジン回転数との間の関係を示すマップである。当該マップ中の等高線はエンジンEの熱効率を示し、符号Xが最も高効率となる位置を示している。当該マップ中の符号RLの線は、車両走行時に必要な定常トルクを意味し、ロードロード(Road load)と称する。
図5~8のマップは、モードプログラム記憶部31にモードプログラムの一部として記憶されており、当該マップにはHEV領域/EG領域/EV領域が割り当てられている。
【0046】
図4及び5に示すように、モード1では、所定の第1走行条件が成立したときにエンジンEを停止して電動モータMが発生する動力を駆動輪2に伝達させるEV状態とし、所定の第2走行条件が成立したときにエンジンE及び電動モータMが発生する動力を駆動輪2に伝達させるHEV状態とし、所定の第3走行条件が成立したときに電動モータMを停止又は回生させ、エンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させるEG状態とする。
【0047】
具体的には、要求トルク演算部32で算出された要求トルクが所定の閾値T未満の低トルク時である場合(EV領域)、エンジンEの熱効率が低いため、エンジン回転数にかかわらずEV状態とする。要求トルクが閾値T以上で且つロードロード線RLよりも低値である場合(HEV領域)、エンジン回転数が所定値より大きいときにHEV状態とする。要求トルクが閾値T以上で且つロードロード線RL以上である場合(EG領域)、エンジンEの熱効率が良いため、EG状態とする。
【0048】
即ち、モード1のプログラムは、エンジンEを使わないEV領域があるため、燃費優先モードプログラムである。燃費優先モードプログラムでは、エンジンEを使用せずに電動モータMでの走行を優先するEV領域があるため、ユーザーが使用環境に応じてモード1を選択することで、エンジン音を発生させずに走行することを実現できる。また、モード1のプログラムは、要求トルクがロードロード線RL以上であるときにEG状態とするため、エンジン駆動モードプログラムも兼ねている。
【0049】
図4及び6に示すように、モード2は、EV領域及びHEV領域についてはモード1と同じであるが、EG領域での動作が異なる。要求トルク演算部32で算出された要求トルクが閾値T以上で且つロードロード線RL以上である場合、エンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させ且つエンジンEが発生する動力により電動モータMに回生(発電)させる。これにより、電動モータMの回生による負トルク分だけ多くエンジンEで正トルクを発生させるので、エンジンEを高い熱効率の領域で動作させることができる。即ち、モード2のプログラムは、発電優先モードプログラムである。
【0050】
図4及び7に示すように、モード4では、HEV領域及びEG領域があるものの、EV領域がない。何れの走行条件においてもエンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させることになる。具体的には、要求トルクが閾値T未満の領域でも電動モータMによる駆動は行われない。即ち、モード4は、エンジン優先モードプログラムである。
【0051】
図4及び8に示すように、モード5は、EV領域が無い点とHEV領域の動作についてはモード4と同じであるが、モード2同様にEG領域での動作が異なる。要求トルク演算部32で算出された要求トルクがロードロード線RL以上である場合、エンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させ且つエンジンEが発生する動力により電動モータMに回生(発電)させる。これにより、電動モータMの回生による負トルク分だけ多くエンジンEで正トルクを発生させるので、エンジンEを高い熱効率の領域で動作させることができる。即ち、モード5のプログラムは、発電優先モードプログラムである。
【0052】
なお、前述の各モードプログラムでは、アクセル操作量、車速及びエンジン回転数を参照して求めた要求トルクに基づいて電動モータM及びエンジンEの動作(例えば、ON/OFF)の変化が決定されていたが、その他の因子に基づいて決定されてもよい。例えば、各モードプログラムにおいて、車両条件として、自動二輪車1が走行する道路状態(例えば、道路勾配、道路形状等)や乗車人数や路面状態(例えば、オンロード、オフロード、雪面等)やIMU等の加速レートセンサ値やバッテリ残量や他の制御指令(例えば、ABS指令、オートクルーズ指令等)に基づいて電動モータM及びエンジンEの動作の変化が決定されてもよい。
【0053】
図9(A)は
図4に示すモード2及び5の急加速要求時におけるタイミングチャートであり、
図9(B)は
図4に示すモード3及び6の急加速要求時におけるタイミングチャートである。
図9(A)に示すように、モード2及び5では、エンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させ且つエンジンEが発生する動力により電動モータMに回生させている走行状態において、ユーザーがアクセル操作子を急加速操作してアクセルセンサ21が所定値以上の開度増加率を検出した所定の急加速条件が成立すると、モードプログラム実行部33は、エンジン制御部35に指令してエンジンEのトルクを増加させて加速すると共に、モータ制御部34に指令して電動モータMを回生状態から停止状態(フリーラン状態)にするか又は電動モータMを回生状態のまま維持する。なお、所定の急加速条件が成立したとき、エンジンEのトルクを維持又は減少させ、電動モータMによる駆動輪2へのトルク伝達により駆動輪2を加速する構成としてもよい。
【0054】
他方、
図9(B)に示すように、モード3及び6では、エンジンEが発生する動力を駆動輪2に伝達させ且つエンジンEが発生する動力により電動モータMに回生させている走行状態において、前記急加速条件が成立すると、エンジンEから駆動輪2に与えるトルクを増加させて加速すると共に、電動モータMを回生状態から走行駆動力を与える走行支援状態(加速駆動状態)に切り替える。このように、電動モータMを負トルク状態(回生状態)から正トルク(駆動状態)に切り替えることで電動モータMのトルクの正負変化を利用した急加速を実現することができる。即ち、モード3及び6のプログラムは、急加速可能モードプログラムである。なお、モード3は、急加速時以外の動作態様はモード1と同様であり、モード6は、急加速時以外の動作態様はモード4と同様である。
【0055】
また、モード1及び4では、前記急加速条件が成立する直前には電動モータMが回生状態にないため、前記急加速条件が成立とすると、電動モータMは加速駆動されるか又は直前の状態を維持するとよい。なお、電動モータMが回生状態で前記急加速条件が成立したときに、エンジンEから駆動輪2に与えるトルクを増加させて加速すると共に、電動モータMを回生状態から駆動状態に切り替えて駆動輪2にトルクを付加する動作は、複数種類のモードプログラムがあるハイブリッド車両に限られず、一般的なハイブリッド車両に適用されてもよい。
【0056】
図10(A)は第1パラレル駆動モードのタイミングチャート、
図10(B)は第2パラレル駆動モードのタイミングチャートである。
図10(A)に示すように、第1パラレル駆動モードでは、前後輪の回転数差が所定の閾値を超えたことが検出されるなどして駆動輪2がスリップしたと判定されると、エンジンEのトルクを減少補正してトラクションの回復を促す。スリップが解消されたと判定されると、エンジンEのトルクの減少補正をなくす。
【0057】
他方、
図10(B)に示すように、第2パラレル駆動モードでは、駆動輪2がスリップしたと判定されると、エンジンEのトルクを減少補正すると共に、電動モータMを間欠的(又は周期的)に動作させて駆動輪2に間欠的(又は周期的)に動力を伝達し、ストラクションの早期回復を促す。スリップが解消されたと判定されると、エンジンEのトルクの減少補正をなくし、電動モータMの間欠的な動作もやめる。このようにすれば、走行フィーリングの選択肢を増やすことができる。
【0058】
なお、第1パラレル駆動モードでの電動モータMの動作パターンと、第2パラレル駆動モードでの電動モータMの動作パターンとが、同一走行条件で互いに異なっていればよく、他の態様であってもよい。例えば、第1パラレル駆動モード又は第2パラレル駆動モードの何れか一方において、エンジンEの周期的なトルク変動のうち負トルク部分を電動モータMの正トルクで打ち消して合計のトルク変動を低減する構成としてもよいし、エンジンEの周期的なトルク変動のうち正トルク部分に電動モータMの正トルクを重畳して合計のトルク変動を大きくする構成としてもよい。
【0059】
以上に説明した構成によれば、車両条件(例えば、要求トルク及び回転数)に応じて電動モータM及びエンジンEの動作状況(例えば、ON/OFF)の変化を決めたモードプログラムが複数種類用意されているため、車両条件に応じた電動モータM及びエンジンEの動作状況の変化パターンにバリエーションを設けながらも各モードプログラムにおいてハイブリッド式自動二輪車1の適切な状態選択を担保することができる。そして、その複数種類のモードプログラムからユーザーが1つのプログラムを任意に選択することで、ユーザーが自身の好みや使用環境に応じてハイブリッド式の自動二輪車1の特性を自由に変更できる。
【0060】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るシリーズハイブリッド式の自動二輪車101のブロック図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、自動二輪車101は、発電駆動源としてのエンジンE(内燃機関)と、走行用駆動源としての電動モータMとを備える。即ち、エンジンEは、電動モータMに供給するための電力を発生してバッテリ12に充電する発電機50を駆動するための発電エンジンであり、自動二輪車101はシリーズハイブリッド方式である。
【0061】
コントローラ118には、バッテリ管理ユニット20からバッテリ12の情報が入力される。コントローラ118には、アクセルセンサ21、車速センサ22、モータ回転数センサ123及び選択入力ボタン24等から検出情報が入力される。コントローラ118は、入力された各情報に基づいて、電動モータMを制御するインバータ13を制御し、エンジンEの燃料インジェクタ41、点火装置42及びスロットル装置43を制御する。コントローラ118は、第1実施形態のコントローラ18のように、複数種類のモードプログラムを記憶する記憶部、当該記憶部から読み出されたモードプログラムを実行するモードプログラム実行部、モータ制御部及びエンジン制御部を有する。
【0062】
図12(A)は、
図11に示す自動二輪車101の発電優先モードにおける定常走行から加速走行への移行時におけるタイミングチャートであり、
図12(B)は、静音優先モードにおける定常走行から加速走行への移行時におけるタイミングチャートである。
図12(A)に示すように、発電優先モードが選択されている場合、アクセルセンサ21で検出された操作量が所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加したとき(即ち、ユーザーがアクセル操作子の所定の加速操作を行ったとき)、電動モータMのトルクが増加して消費電力が増加するため、発電用のエンジンEのトルクが増加させられてバッテリ12が充電される。
【0063】
他方、
図12(B)に示すように、静音優先モードプログラムが選択されている場合、アクセルセンサ21で検出された操作量が前記所定量よりも小さい状態から前記所定量を超えて増加しても(即ち、ユーザーがアクセル操作子の所定の加速操作を行ったとき)、エンジンEのトルクが直前の状態(即ち、前記操作量が前記所定量を超える前の状態)と同じ状態に維持される。即ち、静音優先モードプログラムにおいて、ユーザーが加速指令を行っても、発電用のエンジンEが加速する音を発生せず騒音を防止できる。
【0064】
図13(A)は、
図11に示す自動二輪車101の充電優先モードにおける停車状態での電力消費増加時におけるタイミングチャートであり、
図13(B)(C)は、騒音防止モードにおける停車状態での電力消費量増加時におけるタイミングチャートである。
図13(A)に示すように、充電優先モードプログラムが選択されている場合、自動二輪車101の停車中にバッテリ12の残量が所定の閾値未満になると、エンジンEが始動させられる。
【0065】
他方、
図13(B)(C)に示すように、騒音防止モードプログラムが選択されている場合、自動二輪車101の停車中にバッテリ12の残量が前記閾値未満になっても、バッテリ12の残量が前記閾値未満になる前の状態と同じ状態に維持される。即ち、騒音防止モードプログラムにおいては、自動二輪車101の停止中にバッテリ12の残量が低下することに起因して発電用のエンジンEが急加速する音が発生せず、車両停止中の急な騒音の発生を防止できる。なお、この充電優先モードプログラム及び騒音防止モードプログラムは、シリーズハイブリッド車両に適用する例を説明したが、パラレルハイブリッドに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,101 ハイブリッド車両
2 駆動輪
3 変速機
12 バッテリ
17 クラッチアクチュエータ
18,118 コントローラ
24 選択入力ボタン(選択入力装置)
E エンジン
M 電動モータ