(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】貨物輸送車及び保冷設備
(51)【国際特許分類】
B62D 33/04 20060101AFI20220104BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220104BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220104BHJP
E04B 1/78 20060101ALI20220104BHJP
F16L 59/07 20060101ALI20220104BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20220104BHJP
F25D 23/08 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B62D33/04 B
E04H1/12 A
E04B1/76 100D
E04B1/76 500J
E04B1/78 Z
F16L59/07
F25D23/06 X
F25D23/06 T
F25D23/06 302C
F25D23/06 302D
F25D23/08 C
(21)【出願番号】P 2017232252
(22)【出願日】2017-12-04
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516077725
【氏名又は名称】久永 洋一
(73)【特許権者】
【識別番号】591208814
【氏名又は名称】株式会社佐武
(74)【代理人】
【識別番号】100171963
【氏名又は名称】砂川 惠一
(72)【発明者】
【氏名】久永 洋一
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241166(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204450(JP,U)
【文献】実開平07-027980(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105813930(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0129068(US,A1)
【文献】特開2007-182719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/04
E04B 1/66- 1/99
E04H 1/12
F16L 59/00-59/22
F25D 23/02
F25D 23/06-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、
両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段と、
前記外装部と前記遮熱手段との間に設けられた静止空気層と、
を有する貨物室の空間区画構造を備え、
前記貨物室の室外側の底部にスノコ部材が載置され、
前記スノコ部材は静止空気層を備え、
前記スノコ部材上部に両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段が設けられた貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とすることを特徴とする貨物輸送車。
【請求項2】
貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、
前記外装部より室内側に配置された内装部と、
両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段とからなり、
前記外装部と前記遮熱手段との間に静止空気層が設けられ、
前記遮熱手段と前記内装部との間に空洞構造を備えた樹脂部材からなる熱伝導抑止層を有する貨物室の空間区画構造を備え、
前記貨物室の室外側の底部にスノコ部材が載置され、
前記スノコ部材は静止空気層を備え、
前記スノコ部材上部に両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段が設けられた貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とすることを特徴とする貨物輸送車。
【請求項3】
貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、
前記外装部より室内側に配置された内装部と、
両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段とからなり、
前記外装部と前記遮熱手段との間に静止空気層が設けられ、
前記遮熱手段と前記内装部との間に静止空気層が設けられた貨物室の空間区画構造を備え、
前記貨物室の室外側の底部にスノコ部材が載置され、
前記スノコ部材は静止空気層を備え、
前記スノコ部材上部に両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段が設けられた貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とする貨物輸送車。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された空間区画構造を備えることを特徴とする保冷設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内を一定温度に保持する必要がある貨物輸送車、及び、庫内を一定温度に保持する必要がある保冷設備に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物輸送車は、野菜・果実や鮮魚・精肉等を運搬する場合は、低温または冷凍で品質を保持する必要がある。この際、庫内の温度が変化すると、商品の品質にも変化が生じ、商品価値が下り或いは無となってしまうこともある。
しかし、貨物輸送車は屋外で使用されるので、貨物室内温度を安定化するためには、貨物室外からの熱の侵入をできるだけ防ぐことが重要となる。
【0003】
また、保冷設備においても、野菜や果物等は低温または冷凍で保存されるものが多く、独立した建物であれ、建物内に設けられた施設であれ、保冷設備室内温度を安定化するためには、保冷設備室外からの熱の侵入をできるだけ防ぐことが重要となる。
【0004】
貨物輸送車や保冷設備において、従来これらの問題に対処する方法として一般的に、外装材と内装材の間に断熱材を入れ、外部からの熱を断熱する方法が採用されている。断熱材として多く使われているのは、熱伝導率の小さい硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材であるが、外部の温度と内部の温度差を保つ効果を上げようとすると、断熱材の厚みを増さなければならない。そのため、貨物輸送車においては、断熱効果を上げると、断熱材が厚くなった分だけ積載効率が悪くなり、さらに、車両の重量が増え貨物輸送車の燃費が低下するという問題が生じる。また、保冷設備においても、単位面積当たりの収納効率が低下し、さらに、保冷のためのエネルギー消費が増大するという問題が生じる。
【0005】
また、硬質ウレタンフォーム等の断熱材は、熱伝導率が小さいことが知られる。熱そのものは、設置された断熱材の表面からその厚さに至るまでの間、断熱材に蓄熱されながら当該の伝導速度で到達する。到達後、蓄えられた熱はより冷たい方へと放熱される。したがって、時間が経つと蓄熱した熱の放射が行われ、外部の熱が徐々に保冷設備室内部に伝導することになる。また、断熱材はそもそも熱伝導を抑制するものであり、電磁波として伝わる輻射熱を遮断する効果を有していない。そこで電磁波として伝わる輻射熱は、断熱材では遮られずに内部に浸透してしまう。そこで、内部の空調設備へのエネルギー供給が継続されることになり、貨物輸送車においては燃費の低下、保冷設備においてはエネルギー消費の増大という問題が生じる。さらに、浸透する断熱材からの放射熱と保冷設備室からの冷熱との温度差が生じる界面では結露を招きやすく、カビの発生や細菌の増殖の原因となり、食品を扱う環境としては不適切となるという問題も生じる。
【0006】
このような問題を解決するために、 建物の室外側に配置され、断熱層を有する外装部と、外装部より室内側に配置された内装部とを備え、内装部は内装下地材と内装下地材より室内側に配置された熱反射層とその両者の間に配設された内装下地材より体積当たりの熱容量の小さい熱伝導抑止層とを有する建物の空間区画構造(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来の空間区画構造の断熱層は所定の重量を備える上に、 やはり蓄熱層であり、外装部の断熱層から伝わった熱により熱伝導抑止層の温度が上がって、熱反射層との温度差が生じることを原因とする結露が発生するという問題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外部からの熱の伝導・対流・輻射をともに防ぎ、軽量で、かつ、内部の結露も防止することのできる空間区画構造を備えた貨物輸送車及び保冷設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的に応えるために本発明に係る貨物輸送車は、貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、 両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段と、外装部と遮熱手段との間に設けられた静止空気層と、を有する貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とする。
【0011】
このように構成することにより、まず外部の熱を静止空気層によって蓄熱せずに断熱し、さらに遮熱手段が高純度アルミ箔により電磁波を反射することで輻射熱を反射し、遮熱することができる上に、ポリエチレンシートとバブルポリエチレンシートの効果で断熱効果もあり、貨物室内への熱の侵入を高い効率で防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る貨物輸送車は、貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、 前記外装部より室内側に配置された内装部と、 両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段とからなり、前記外装部と前記遮熱手段との間に静止空気層が設けられ、前記遮熱手段と前記内装部との間に空洞構造を備えた樹脂部材からなる熱伝導抑止層を有する貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成することにより、まず外部の熱を静止空気層によって蓄熱せずに断熱し、さらに遮熱手段が高純度アルミ箔により電磁波を反射することで輻射熱を反射し、遮熱することができる上に、ポリエチレンシートとバブルポリエチレンシートの効果で断熱効果もあり、熱伝導抑止層によってさらに断熱効果を高め、貨物室内への熱の侵入を高い効率で防止することができ、更に内装部の強度も上げることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る貨物輸送車は、貨物室の室外側の上部と側面部と底部とに配置される外装部と、 前記外装部より室内側に配置された内装部と、 両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段とからなり、前記外装部と前記遮熱手段との間に静止空気層が設けられ、前記遮熱手段と前記内装部との間に静止空気層が設けられた貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とする。
【0015】
このように構成することにより、まず外部の熱を静止空気層によって蓄熱せずに断熱し、さらに遮熱手段が高純度アルミ箔により電磁波を反射することで輻射熱を反射し、遮熱することができる上に、ポリエチレンシートとバブルポリエチレンシートの効果で断熱効果もあり、遮熱手段の内側の静止空気層によってさらに蓄熱せずに断熱効果を高め、貨物室内への熱の侵入を高い効率で防止することができる。
【0016】
そして、本発明に係る貨物輸送車は、 貨物室の室外側の底部にスノコ部材が配置された貨物輸送車であって、 前記スノコ部材は静止空気層を備え、前記スノコ部材上部に両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段が設けられた貨物室の空間区画構造を備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、加熱されたエンジン排気が車体下部の排気管を通じて排出されるため熱されやすい貨物室底部に、より高い遮熱効果を備えることができる。
【0018】
一方、本発明に係る保冷設備は、上記の貨物輸送車に設けられた空間区画構造を備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、独立した建物であれ、建物内に設けられた施設であれ、保冷設備室内温度を安定化するために、保冷設備室外からの熱の侵入を高い効率で防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明に係る貨物輸送車によれば、貨物室内への外部の熱の侵入を高い効率で防止し、輸送する荷物の品質を維持することができるという優れた効果がある。また、本発明に係る保冷設備によれば、設備室内への外部の熱の侵入を高い効率で防止し、保管する荷物の品質を維持することができるという優れた効果がある。また、両面の高純度アルミ箔に3枚のボリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなリ各シート間がプラズマ溶着されたシート材を介し、外部と室内両面の温冷熱の界面がなく、温度差が生じないため結露を防止し、カビの発生や細菌の増殖も防止することができるという優れた効果がある,
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る第一の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の略図である。
【
図2】本発明に係る第二の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の略図である。
【
図3】本発明に係る第三の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の略図である。
【
図4】本発明に係る第四の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の略図である。
【
図5】本発明に係る第五の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の略図である。
【
図6】本発明に係る第三の実施の形態に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造のバリエーションの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は以上のような構成であるので、これを図面に基づきながら本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図面は本発明に係る貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造の実施の形態を示す。
図1に示す第一の実施の形態では、貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造は、外装材10と両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段11との間に、静止空気層12が設けられるように構成されている。
【0024】
このように構成することで、静止空気層12により外部からの熱伝導は断熱されるが蓄熱されにくく、さらに、遮熱手段11によって外部からの電磁波による輻射熱が遮熱されるので、貨物輸送車又は保冷設備の庫内の温度は外気の影響を受けにくくなっている。
【0025】
図2に示す第二の実施の形態では、貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造は、外装材10と両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段11との間に、静止空気層12が設けられ、遮熱手段11より室内側に内装材13が設けられるように構成されている。
【0026】
このように構成することで、熱伝導の断熱効果と輻射熱の遮熱効果が得られる上に、貨物輸送車又は保冷設備の内壁が荷物や人との衝突から保護される効果が上がるようになっている。
【0027】
図3に示す第三の実施の形態では、貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造は、外装材10と両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段11との間に、静止空気層12が設けられ、遮熱手段11より室内側に内装材13が設けられ、遮熱手段11と内装材13との間に静止空気層12が設けられるように構成されている。
【0028】
このように構成することで、外部からの熱伝導をまず静止空気層12で断熱し、外部からの輻射熱を遮熱手段11で遮熱した上に、再度熱伝導が静止空気層12により断熱されるので、外部からの熱の侵入を防止する効果がさらに上がり、結露も生じにくくなるようになっている。
【0029】
図4に示す第四の実施の形態では、貨物輸送車又は保冷設備の空間区画構造は、天井部及び側壁部が、外装材10と両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段11との間に、スペーサー23によって静止空気層12が設けられ、床部は、外装材10に接して庫内側に内装材13が設けられ、内装材上に静止空気層22を備えたスノコ20が配置され、スノコ上に両面の高純度アルミ箔に3枚のポリエチレンシートと2枚のバブルポリエチレンシートとを交互に挟んだ7層からなり各シート間がプラズマ溶着されたシート材からなる遮熱手段21を敷設するように構成されている。
【0030】
このように構成することで、貨物輸送車又は保冷設備の底部の外部からの熱伝導を断熱し、外部からの輻射熱を遮熱することで、特に貨物輸送車において、外部からの熱の侵入を防止する効果がさらに上がるようになっている。
【0031】
第四の実施形態では、
図5に示すように、遮熱手段21の縁部と側壁部の内装材13を防水テープ24で密着するように貼り合わせることにより、結露の防止効果を高めることができる。
【0032】
また、
図4及び
図5において示す遮熱手段21上には、保護シートを敷設することなどで防傷処理を行うことが望ましい。
【0033】
なお、本考案は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、各部の構成等を適宜変更し得ることはいうまでもない。
例えば、
図6に示すように、庫外側から外装材10、静止空気層12、遮熱手段11、静止空気層12、遮熱手段11、静止空気層12、内装材13が設けられるように構成することで、庫内の温度を氷点下20度以上に保たなければならない場合などの高い保冷効果を求められる用途にも対応することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 外装材
11 遮熱手段
12 静止空気層
13 内装材
20 スノコ
21 遮熱手段
22 静止空気層
23 スペーサー
24 防水テープ