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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】接地短絡器具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220104BHJP
   H01R 11/14 20060101ALI20220104BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H02G1/02
H01R11/14
H01R4/64 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018022263
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019140800
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】山本 一
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 宏文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】志茂 洋二
(72)【発明者】
【氏名】原田 健治
(72)【発明者】
【氏名】武田 勲児
(72)【発明者】
【氏名】持本 義美
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-091741(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H01R 11/14
H01R 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な絶縁棒と、前記絶縁棒の先端に設けられたアースフックと、リード線を介してアースフックに接続されている接地金具とを備え、架空電線の接地短絡を行う接地短絡器具であって、
前記接地金具に取付けられ、前記接地金具が接地箇所に接続されると前記接地金具から取外し可能となるインターロックキーと、
前記インターロックキーと前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックのうちのいずれか1つとを連結する連結ロープと、
を備え、
前記接地金具は、前記インターロックキーが取付けられた状態においてのみ、接地箇所に対する接続及び取外し操作を行うことが可能に構成され、
前記連結ロープは、作業者が伸長した状態の前記絶縁棒の把持部を把持しているときに、前記インターロックキーに前記作業者の手が届かないように長さ及び連結位置が設定されていることを特徴とする接地短絡器具。
【請求項2】
さらに、前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックのうちのいずれか1つに固定され前記連結ロープを取付可能な固定具を備え、
前記連結ロープは、前記固定具を介して前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックに取付可能なことを特徴とする請求項1に記載の接地短絡器具。
【請求項3】
前記連結ロープは、交換可能に、前記インターロックキー及び前記固定具に対し着脱自在であることを特徴とする請求項に記載の接地短絡器具。
【請求項4】
前記連結ロープは、伸縮部を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の接地短絡器具。
【請求項5】
前記インターロックキーは、前記アースフックに一時的に固定可能な仮固定手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の接地短絡器具。
【請求項6】
さらに、前記連結ロープに取付けられ前記接地金具、前記インターロックキー、前記連結ロープのうちの少なくとも1つを前記絶縁棒及び/又は前記アースフックに固定可能な固定手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の接地短絡器具。
【請求項7】
さらに、前記リード線に取付けられ、前記接地金具を接地箇所に接続した後に前記リード線の一部を接地箇所又は周囲の構造物に固定可能なリード線固定手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の接地短絡器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線の接地短絡を行う接地短絡器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特別高圧架空送電線路において停電作業を行う場合には、電流の流入を防止するために作業箇所に乙種アースを接続し、接地状態で作業を行う必要がある。乙種アースは、基本的に、鉄塔等の接地箇所に接続する接地金具、接地対象となる架空電線に取付けるアースフック付き絶縁棒、及び接地金具とアースフックとを電気的に接続するリード線を備える。
【0003】
乙種アースによる接地は、必ず、接地箇所への接地金具の接続を架空電線へのアースフック付き絶縁棒の取付け前に行わなければならない。また接地を解除するときには、必ず、架空電線からアースフック付き絶縁棒を取外した後に、接地金具を接地箇所から取外さなければならない。上記の作業順番を間違えると感電災害が発生する恐れがある。
【0004】
従来から使用されている乙種アースは、上記の作業順番を間違えたとしても作業自体を行うことが可能であり、このため感電災害が発生する恐れがある。これを防止すべく、間違った順番では接地短絡作業を行うことができないように構成されたインターロック式の乙種アース(接地用具)が提案されている(特許文献1参照)
【0005】
特許文献1に記載の接地用具は、伸縮式の絶縁棒の伸縮動作を制限するインターロック機構を備え、接地金具を鉄塔等の接地箇所に接続しないと絶縁棒を伸縮することができず、アースフックが架空電線に届かないように構成されており、これによって、間違った順番で接地短絡作業を行うことができないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-77593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の接地用具によれば、間違った順番で接地短絡作業を行うことができず、感電災害を未然に防止することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の接地用具の構成は、既存のアースフック付き絶縁棒、特に、伸縮式ではないアースフック付き絶縁棒に適用することができない。このため特許文献1に記載の接地用具は、既存のアースフック付き絶縁棒と置き換える必要があり、導入コストが高い。
【0008】
本発明の目的は、低コストで製造可能な、接地短絡作業における間違った作業順番を確実に防止可能な接地短絡器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長尺な絶縁棒と、前記絶縁棒の先端に設けられたアースフックと、リード線を介してアースフックに接続されている接地金具とを備え、架空電線の接地短絡を行う接地短絡器具であって、前記接地金具に取付けられ、前記接地金具が接地箇所に接続されると前記接地金具から取外し可能となるインターロックキーと、前記インターロックキーと前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックのうちのいずれか1つとを連結する連結ロープと、を備え、前記接地金具は、前記インターロックキーが取付けられた状態においてのみ、接地箇所に対する接続及び取外し操作を行うことが可能に構成され、前記連結ロープは、作業者が伸長した状態の前記絶縁棒の把持部を把持しているときに、前記インターロックキーに前記作業者の手が届かないように長さ及び連結位置が設定されていることを特徴とする接地短絡器具である。
【0011】
また本発明の接地短絡器具は、さらに、前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックのうちのいずれか1つに固定され前記連結ロープを取付可能な固定具を備え、前記連結ロープは、前記固定具を介して前記リード線、前記絶縁棒、又は前記アースフックに取付可能なことを特徴とする。
【0012】
また本発明の接地短絡器具において、前記連結ロープは、交換可能に、前記インターロックキー及び前記固定具に対し着脱自在であることを特徴とする。
【0013】
また本発明の接地短絡器具において、前記連結ロープは、伸縮部を有することを特徴とする。
【0014】
また本発明の接地短絡器具において、前記インターロックキーは、前記アースフックに一時的に固定可能な仮固定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また本発明の接地短絡器具は、さらに、前記連結ロープに取付けられ前記接地金具、前記インターロックキー、前記連結ロープのうちの少なくとも1つを前記絶縁棒及び/又は前記アースフックに固定可能な固定手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また本発明の接地短絡器具は、さらに、前記リード線に取付けられ、前記接地金具を接地箇所に接続した後に前記リード線の一部を接地箇所又は周囲の構造物に固定可能なリード線固定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接地短絡器具によれば、アースフックを架空電線の接地対象箇所に掛止した後に接地金具を接地箇所に接続することができず、またアースフックを架空電線の接地対象箇所から取外す前に接地金具を接地箇所から取外すことができないので、接地短絡作業における間違った作業順番を確実に防止可能である。また既存の接地短絡器具(アースフック付き絶縁棒)に対しても後付けによって、簡単に本発明の接地短絡器具を得ることができる。このため低コストでありながら、架空電線の接地短絡作業における間違った作業順番を確実に防止可能な接地短絡器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の接地短絡器具1の構成を示す側面図である。
図2図1の接地短絡器具1の携帯時の状態を示す側面図である。
図3】本発明の第1実施形態の接地短絡器具1のインターロックキー50が取付けられた状態の接地金具30の側面図である。
図4図3の接地金具30が接地箇所に接続された状態を示す側面図である。
図5図3の接地金具30の平面図である。
図6図3の接地金具30の正面図である。
図7】本発明の第1実施形態の接地短絡器具1のインターロックキー50の平面図である。
図8】本発明の第1実施形態の接地短絡器具1によって架空電線102の接地短絡を行っている状態を示す模式図である。
図9】本発明の第1実施形態の接地短絡器具1の製造方法を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態の接地短絡器具2の構成を示す側面図である。
図11】本発明の第3実施形態の接地短絡器具3の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態の接地短絡器具1の伸長前の側面図、図2は、図1の接地短絡器具1の携帯時の状態を示す側面図である。図3は、本発明の第1実施形態の接地短絡器具1のインターロックキー50が取付けられた状態の接地金具30の側面図、図4は、図3の接地金具30が接地箇所に接続された状態を示す側面図、図5は、図3の接地金具30の平面図、図6は、図3の接地金具30の正面図である。図7は、本発明の第1実施形態の接地短絡器具1のインターロックキー50の平面図である。図8は、本発明の第1実施形態の接地短絡器具1によって架空電線102の接地短絡を行っている状態を示す模式図である。図9は、本発明の第1実施形態の接地短絡器具1の製造方法を示すフローチャートである。なお図8において符号を一部省略している。
【0021】
第1実施形態の接地短絡器具1は、伸縮式の長尺な絶縁棒10と、絶縁棒10の先端に設けられたアースフック20と、鉄塔等の接地箇所101に接続される接地金具30と、アースフック20と接地金具30とを電気的に接続するリード線40と、を備え、接地金具30を鉄塔等の接地箇所101に接続した状態で絶縁棒10を操作してアースフック20を架空電線102の接地対象箇所に電気的に接続することで架空電線102の接地を行う。なおここまでの構成は、公知のアースフック付き絶縁棒と同様である。
【0022】
接地短絡器具1はさらに、接地金具30に取付けられ、接地金具30が接地箇所101に接続されるまで取外すことができないインターロックキー50と、インターロックキー50とリード線40の中間部とを連結し、その間の長さを規定する連結ロープ60と、連結ロープ60をリード線40の中間部に取付けるための固定具70と、を備える。
【0023】
また本実施形態の接地短絡器具1の接地金具30は、インターロックキー50が取付けられた状態においてのみ、接地箇所101に対する接続及び取外し操作を行うことができるように後述するインターロック機構を備えている。
【0024】
さらに接地短絡器具1は、絶縁棒10及び/又はアースフック20に巻付けて接地金具30、インターロックキー50、連結ロープ60のうちの少なくとも1つを固定可能な固定手段であるバンド80と、接地金具30を接地箇所101に接続した後にリード線40の一部を接地箇所101、又は接地箇所101の周囲の構造物、例えば、鉄塔のフレーム103等に固定するリード線固定手段であるリード線固定ロープ85と、を備える。
【0025】
絶縁棒10は、絶縁性を有する伸縮式の長尺な棒体であり、先端にアースフック20が設けられ、基端に把持部11を有している。絶縁棒10は、通常、約1.5~4mの範囲で伸縮するが、これに限定されるものではない。また絶縁棒10は、必ずしも伸縮式でなくてもよい。
【0026】
アースフック20は、絶縁棒10の先端に設けられ、架空電線102の接地対象箇所に掛止することで架空電線102の接地対象箇所と電気的に接続されるように構成されている。アースフック20には、リード線40の一端が電気的に接続されている。またアースフック20は、例えば、絶縁棒10を長軸周りに回転させることで開閉するように構成されている。
【0027】
なお上記のような絶縁棒10及びアースフック20の構成は、公知であるため、詳細な説明を省略する。またアースフック20は、異なる形式のアースフック(図示省略)を使用してもよい。さらにアースフック20は、図において、絶縁棒10と一体であるが、例えば、いわゆるツイストロック機構(図示省略)等を介して絶縁棒10に対し着脱自在な形式のものであってもよい。
【0028】
接地金具30は、図3から図6に示すように、C字形状の本体31と、締付ボルト32と、締付ボルト32と螺合した角ナット33と、締付ボルト32及び角ナット33が本体31から外れないように支持する支持部材34とを備え、リード線40が接続され、これを介してアースフック20と電気的に接続されたCクランプ金具であり、接地短絡作業時には、締付ボルト32によって鉄塔等の接地箇所101に締付けて固定される。
【0029】
締付ボルト32は、締付ボルト32に対して長軸周りに回転自在な角ナット33と螺合された状態で、本体31及び支持部材34に通され、角ナット33が本体31と支持部材34との間に挟まれることによって本体31から外れないように取付けられている。締付ボルト32を締める、又は緩めるには、後述するインターロックキー50の切欠51によって角ナット33を本体31(締付ボルト32)に対して固定する必要がある。
【0030】
また接地金具30は、接地金具30を接地箇所101に接続するまで、つまり、接地箇所101に対して接地金具30が動かないように締付ボルト32によって接地金具30を締付けるまで、予め取付けられたインターロックキー50を取外せないようにするインターロック機構を備える。
【0031】
インターロック機構は、図3図4に示すように、2つのピン部材である第1ピン部材91及び第2ピン部材92と、第1ピン部材91と第2ピン部材92とを連結する平板部材93と、平板部材93を付勢する圧縮バネ94とを備え、接地金具30の本体31に組み込まれている。
【0032】
第1ピン部材91は、インターロックキー50を接地金具30に取付けたときに、後述するインターロックキー50の第1孔52に嵌り、インターロックキー50の取外しを阻止する。第2ピン部材92は、接地金具30が接地箇所101に接続されたときに押込まれるように、締付ボルト32と同軸上に配置される。
【0033】
平板部材93は、第1ピン部材91の下端と第2ピン部材92の中間部とに固定され、第1ピン部材91と第2ピン部材92とを連結するとともに、図3図4における下面が圧縮バネ94の受圧面となる。圧縮バネ94は、第1ピン部材91がインターロックキー50の第1孔52から抜けないように、インターロック機構全体を締付ボルト32側に付勢すべく、平板部材93の下側において第2ピン部材92に取付けられている。
【0034】
また締付ボルト32の先端部には、円板状の締付部材37が長軸周りに回転自在に取付けられており、締付部材37によって第2ピン部材92が押込まれないように、締付部材37には、第2ピン部材92が嵌り込む凹部38が設けられている。
【0035】
このように構成される接地金具30によれば、接地金具30を鉄塔等の接地箇所101に接続するまで、圧縮バネ94の作用によって第1ピン部材91が突出してインターロックキー50の第1孔52に嵌り、インターロックキー50の取外しが阻止される。接地金具30を接地箇所101に接続すると、締付ボルト32の締付力によって接地箇所101の部材を介して第2ピン部材92が押込まれ、これに連動して第1ピン部材91がインターロックキー50の第1孔52から外れ、インターロックキー50の取外しが可能となる。
【0036】
なおインターロック機構は、上記の構成に限定されるものではなく、接地金具30を接地箇所101に接続するまで、つまり、接地箇所101に対して接地金具30が動かないように締付ボルト32によって接地金具30を締付けるまでインターロックキー50を取外せないように構成されていればよい。例えば、第1ピン部材91、第2ピン部材92、及び平板部材93は、一体的に形成されていてもよい。
【0037】
リード線40は、アースフック20と接地金具30とを連結し電気的に接続する。これによって架空電線102の接地時には、架空電線102を流れる電流が、アースフック20、リード線40、接地金具30、接地金具30が接続された鉄塔等の接地箇所101を通って地絡する。
【0038】
インターロックキー50は、切欠51、第1孔52及び第2孔53が形成された平板部材である。インターロックキー50は、切欠51に角ナット33が嵌るとともに、第1孔52が接地金具30のインターロック機構の第1ピン部材91に嵌るように、切欠51が設けられた先端部を接地金具30の本体31と支持部材34との間に挿入して接地金具30に取付けられる。
【0039】
切欠51は、インターロックキー50を接地金具30に取付けたときに、角ナット33を固定する(回転を阻止する)ように角ナット33の外形に合致する形状で設けられている。なお切欠51及び角ナット33は、平面視において矩形である必要はなく、それぞれ、切欠51によって角ナット33を固定可能な形状であればよい。
【0040】
第1孔52は、インターロックキー50を接地金具30に取付けたときに、第1ピン部材91が、がたつくことなく嵌る位置、大きさに穿設されている。第2孔53は、後述する連結ロープ60の一端に設けられた第1取付具61を取付可能に穿設されている。
【0041】
またインターロックキー50はさらに、アースフック20に一時的に固定可能な仮固定手段である磁石55を備えている(図7参照)。インターロックキー50は、接地金具30から取外された後、作業の邪魔にならないように磁石55を介してアースフック20に一時的に固定されていることが好ましい。このとき切欠51が、アースフック20のリード線40の接続部に嵌り込むことができるように形成されていると、より安定的にインターロックキー50をアースフック20に固定可能となる。
【0042】
連結ロープ60は、インターロックキー50に着脱自在に取付可能な第1取付具61を一端に備え、他端にリード線40に取付けられた後述する固定具70に着脱自在に取付可能な第2取付具62を備え、第1取付具61及び第2取付具62を介してインターロックキー50を固定具70(リード線40の中間部)に連結する。なお第1取付具61及び第2取付具62は、連結ロープ60の両端にある必要はなく、連結ロープ60の中間部にあってもよい。
【0043】
連結ロープ60は、アースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102に掛止させた状態において、少なくともインターロックキー50が接地金具30に届かないように、より好ましくは、インターロックキー50に手が届かないように、さらに好ましくは、絶縁棒10を伸長した状態において、絶縁棒10の把持部11を把持しながらインターロックキー50に手が届かないように、長さ、並びにインターロックキー50及びリード線40に対する取付位置(第1取付具61及び第2取付具62の位置)が設定されている。
【0044】
第1取付具61及び第2取付具62を介して連結ロープ60をインターロックキー50及び固定具70に対して着脱自在にすることで、長さの異なる連結ロープ60を適宜、交換して使用することが可能になる。なお第1取付具61及び第2取付具62は、特定の構造のものに限定されるものではない。また連結ロープ60を交換する必要性が低い場合には、第1取付具61及び第2取付具62を用いることなく、直接、連結ロープ60の両端をインターロックキー50及び固定具70に取付けてもよい。
【0045】
また連結ロープ60は、弾性によってある程度、伸縮自在なコイル状の伸縮部63が中間部に設けられている。連結ロープ60は、上記のように、長さ、並びにインターロックキー50及びリード線40(固定具70)に対する取付位置が設定されており、通常、インターロックキー50とリード線40(固定具70)との間の長さが比較的短くなる。このため接地金具30を接地箇所101に接続するときに作業性が低下する場合があるが、伸縮部63を設けることによって、この問題を解決することができる。なお伸縮部63は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0046】
固定具70は、ペンチ等でかしめることによって、リード線40の中間部に後付可能な金具であり、連結ロープ60の第2取付具62を取付可能に取付孔を有し、本実施形態の接地短絡器具1では、リード線40のアースフック20の近傍に取付けられている。
【0047】
固定具70は、上記のように、少なくともアースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102に掛止させた状態でインターロックキー50が接地金具30に届かないように、連結ロープ60のリード線40に対する取付位置を規定する。なお固定具70は、特定の構造に限定されるものではなく、リード線40の中間部に後付可能であるとともに、連結ロープ60(第2取付具62)を取付可能であればよい。
【0048】
バンド80は、絶縁棒10及び/又はアースフック20に巻付けられた状態で固定可能に面ファスナー81を備え、連結ロープ60に取付けられている。バンド80は、接地金具30及び/又は連結ロープ60を絶縁棒10及び/又はアースフック20に巻付けて固定することで、接地短絡器具1の携帯時や誤って接地金具30を接地箇所101に接続する前に絶縁棒10を伸長させたときに、接地金具30が揺動することを防止する。
【0049】
またバンド80は、インターロックキー50を接地金具30から取外し、アースフック20に一時的に固定するときにインターロックキー50の脱落を防止するために、インターロックキー50及び/又は連結ロープ60を絶縁棒10及び/又はアースフック20に巻付けて固定する。
【0050】
なおバンド80の連結ロープ60における取付位置は、特定の位置に限定されるものではないが、作業性を考慮すると接地金具30に近い位置であることが好ましい。
【0051】
リード線固定ロープ85は、接地金具30を接地箇所101に接続した後にリード線40の一部を接地箇所101の周囲の構造物、例えば、鉄塔のフレーム103等に固縛可能なロープであり、リード線40に取付けられている。リード線固定ロープ85のリード線40における取付位置は、特定の位置に限定されるものではないが、作業性を考慮すると接地金具30に近い位置であることが好ましい。
【0052】
リード線固定ロープ85は、特定の材質のものに限定されるものではない。またリード線固定ロープ85は、ロープに代えて、バンド80のような面ファスナを有するバンドとしてもよい。
【0053】
次に本実施形態の接地短絡器具1の製造方法の一例を説明する。本実施形態の接地短絡器具1は、リード線40が接続されたアースフック20を先端に有する、アースフック付きの絶縁棒10に、インターロック機構を有する接地金具30、インターロックキー50、連結ロープ60、固定具70、バンド80、リード線固定ロープ85を取付けることによって製造される。
【0054】
まず、リード線40が接続されたアースフック20を先端に有する、アースフック付きの絶縁棒10を用意し(ステップS0)、リード線40のアースフック20に接続されていない方の一端にインターロック機構を有する接地金具30を接続する(ステップS1)。なお該接続は、着脱自在であってもよく、着脱不能であってもよい。また元々、接地金具を有しているアースフック付き絶縁棒に適用する場合には、元の接地金具をリード線から取外し、インターロック機構を有する接地金具30をリード線に接続すればよい。
【0055】
次にリード線40の中間部、本実施形態の接地短絡器具1ではアースフック20の近傍に、固定具70をかしめ等によって固定する(ステップS2)。作業性等を考慮すると、アースフック20の先端から約500mmの位置が好ましい。なお固定具70も、リード線40に対し着脱自在であってもよく、着脱不能であってもよい。
【0056】
次に連結ロープ60の中間部、本実施形態の接地短絡器具1では接地金具30の近傍にに、バンド80を取付ける(ステップS3)。また第1取付具62を介して連結ロープ60にインターロックキー50を取付ける(ステップS4)。なおインターロックキー50の取付けは、連結ロープ60を容易に交換可能に、着脱自在であることが好ましいが、着脱不能であってもよい。
【0057】
また連結ロープ60は、絶縁棒10の長さ、固定具70の取付位置に応じて、上記のように、アースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102に掛止させた状態において、少なくともインターロックキー50が接地金具30に届かない、より好ましくは、インターロックキー50に手が届かない、さらに好ましくは、絶縁棒10を伸長した状態において、絶縁棒10の把持部11を把持しながらインターロックキー50に手が届かない長さのものが用いられる。
【0058】
次に第2取付具62を介して、連結ロープ60を固定具70に取付ける(ステップS5)。なお連結ロープ60の固定具70への取付けは、連結ロープ60を容易に交換可能に、着脱自在であることが好ましいが、着脱不能であってもよい。
【0059】
次にリード線固定ロープ85をリード線40の中間部、本実施形態の接地短絡器具1では接地金具30の近傍に取付ける(ステップS6)。なおリード線固定ロープ85の取付けは、着脱自在であってもよく、着脱不能であってもよい。
【0060】
なおステップS1からステップS6の順番は、適宜、入替えてもよい。
【0061】
次に本実施形態の接地短絡器具1を使用する、架空電線102の接地短絡方法について説明する。接地短絡器具1を鉄塔等における接地短絡作業位置まで携帯するときには、バンド80及びリード線固定ロープ85を巻付けて接地金具30を絶縁棒10に固定し(図2参照)、例えば、絶縁棒10に取付けられた肩バンド(図示省略)を肩に掛けて持ち運ぶ。
【0062】
なおインターロックキー50は、予め、接地金具30に取付けられている。具体的には、インターロックキー50の切欠51が接地金具30の角ナット33に嵌り、インターロックキー50の第1孔52に接地金具30の第1ピン部材91が嵌るように、インターロックキー50が、接地金具30に取付けられている。
【0063】
上記のように、及び後述するように、接地短絡作業が完了し、接地金具30を接地箇所101から取外すときには必ずインターロックキー50が接地金具30に取付けられるので、接地短絡作業前には意識せずとも、インターロックキー50が、予め、接地金具30に取付けられることになる。
【0064】
接地短絡作業位置に到着すると、バンド80及びリード線固定ロープ85を解き、接地金具30を鉄塔等の接地箇所101に接続する。架空電線102を接地する際には、まず、接地金具30を接地箇所101に接続し、次いで、アースフック20を架空電線102と電気的に接続する必要がある。接地金具30を接地箇所101に接続するときには、接地箇所101を接地金具30の締付ボルト32及び第2ピン部材92で挟み込む位置に挿入し、締付ボルト32によって締付ける。
【0065】
接地箇所101を締付ボルト32で締付けると、第2ピン部材92が接地箇所101によって押込まれ、これに連動して第1ピン部材91がインターロックキー50の第1孔51から外れ、インターロックキー50が接地金具30から取外し可能となる。
【0066】
なお接地金具30を接地箇所101に接続する前に、アースフック20を架空電線102の接地対象箇所に掛止しようとして絶縁棒10を伸長させると、接地金具30が、バンド80及び/又はリード線固定ロープ85によって絶縁棒10に固定された状態、あるいは絶縁棒10(連結ロープ60)からぶら下がった状態となる。作業者は、絶縁棒10に接地金具30がぶら下がった状態でアースフック20を架空電線102の接地対象箇所に掛止させてしまうと、後から接地金具30を接地箇所101に取付けることができないことを直ちに理解することができるので、作業順番を間違えていることに直ちに気付くことができる。
【0067】
インターロックキー50を接地金具30から取外すとともに、接地箇所101の近傍において、リード線固定ロープ85を使用してリード線40を鉄塔等のフレーム103に固縛する(図8参照)。これによって、作業者や絶縁棒10がリード線40に引掛かることが防止され、また作業者等がリード線40に引掛かった場合でも接地金具30が接地箇所101から外れることが防止される。
【0068】
次に接地金具30から取外したインターロックキー50を磁石55を介してアースフック20に固定し、さらに脱落防止のためにバンド80によって固縛する(図8参照)。その後、絶縁棒10を伸長し、アースフック20(及び操作棒10)を架空電線102の接地対象箇所に掛止させ、架空電線102を接地する(図8参照)。
【0069】
架空電線102の接地を解除する際には、まず、アースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102から取外し、次いで、接地金具30を接地箇所101から取外す必要がある。本実施形態の接地短絡器具1では、接地金具30の取外し操作に必要なインターロックキー50が、少なくとも接地箇所101に接続された接地金具30に届かない位置にあるので、アースフック20を架空電線102から取外す前に接地金具30を接地箇所101から取外すことができず、これによって、作業順番の間違いが発生する余地がない。
【0070】
アースフック20を架空電線102から取外し、絶縁棒10を収縮させ、インターロックキー50をアースフック20から取外して接地金具30に取付け、接地金具30を接地箇所101から取外し、リード線固定ロープ85によるリード線40の固縛を解除し、バンド80及びリード線固定ロープ85を巻付けて接地金具30を絶縁棒10に固定すると、接地短絡器具1が接地短絡作業前の状態に戻る。
【0071】
以上のように、本実施形態の接地短絡器具1によれば、アースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102に掛止させた状態において、少なくともインターロックキー50が接地金具30に届かない、より好ましくは、インターロックキー50に手が届かない、さらに好ましくは、絶縁棒10を伸長した状態において、絶縁棒10の把持部11を把持しながらインターロックキー50に手が届かないので、アースフック20を架空電線102の接地対象箇所に掛止した後に接地金具30を接地箇所101に接続することができない。
【0072】
また接地金具30を接地箇所101に接続する前に、アースフック20を架空電線102の接地対象箇所に掛止しようとして絶縁棒10を伸長させると、接地金具30が、バンド80及び/又はリード線固定ロープ85によって絶縁棒10に固定された状態、あるいは絶縁棒10(連結ロープ60)からぶら下がった状態となり、作業者がこれに気付くことで、作業順番を間違えていることに気付くことができる。
【0073】
これによって、接地金具30を接地箇所101に接続する前にアースフック20(絶縁棒10)を架空電線102に掛止する、間違った作業順番を確実に防止することができる。
【0074】
また本実施形態の接地短絡器具1によれば、アースフック20(及び絶縁棒10)を架空電線102に掛止させた状態において、インターロックキー50が接地金具30に届かず、また絶縁棒10を伸長した状態において、絶縁棒10の把持部11を把持しながらインターロックキー50に手が届かず、さらに接地金具30は、インターロックキー50が取付けられていないと、接地箇所101から取外すことができない。これによって、アースフック20を架空電線102の接地対象箇所から取外す前に接地金具30を接地箇所101から取外す、間違った作業順番を確実に防止することができる。
【0075】
つまり、本実施形態に接地短絡器具1によれば、接地金具30を接地箇所101に接続する前にアースフック20(絶縁棒10)を架空電線102に掛止すること、及びアースフック20を架空電線102の接地対象箇所から取外す前に接地金具30を接地箇所101から取外すことを確実に防止可能であり、ヒューマンエラーによる災害を防ぐことができる。
【0076】
また本実施形態の接地短絡器具1及びその製造方法によれば、インターロック機構を有する接地金具30、インターロックキー50、連結ロープ60、固定具70、バンド80、及びリード線固定ロープ85を後付けすることによって、一般的な既存のアースフック付き絶縁棒に容易に適用可能なので、導入コストを大幅に削減することができる。また既存のアースフック付き絶縁棒をベースとして構成することができるので、不慣れ等による作業性の低下が生じない。
【0077】
図10は、本発明の第2実施形態の接地短絡器具2の構成を示す側面図である。図1から図9に示す第1実施形態の接地短絡器具1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態の接地短絡器具2は、第1実施形態の接地短絡器具1と基本的構成は同じであるが、固定具70が絶縁棒10の先端近傍に取付けられている。
【0078】
図11は、本発明の第3実施形態の接地短絡器具3の構成を示す側面図である。図1から図9に示す第1実施形態の接地短絡器具1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第3実施形態の接地短絡器具3は、第1実施形態の接地短絡器具1と基本的構成は同じであるが、固定具72がアースフック20に取付けられている。
【0079】
本実施形態の接地短絡器具3の固定具72は、連結ロープ60の第2取付具62を取付可能な取付孔を有する平板部材であり、アースフック20の頂部に固定されている。固定部材72の固定方法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えば、接合等、適宜最適な方法とすればよい。
【0080】
第2、第3実施形態の接地短絡器具2、3のように、固定具70(連結ロープ60の一端)は、リード線40ではなく、操作棒10、アースフック20に取付けられていてもよい。
【0081】
以上、第1から第3実施形態の接地短絡器具1、2、3を用いて、本発明の接地短絡器具及び接地短絡器具の製造方法を説明したが、本発明の接地短絡器具及び接地短絡器具の製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲で変形することができる。例えば、本発明の接地短絡器具及び接地短絡器具の製造方法において、連結ロープ60を直接、インターロックキー50と、リード線40、絶縁棒10又はアースフック20とに取付けてもよく、この場合、固定具70、連結ロープ60の第1取付具61及び第2取付具62は、不要である。
【0082】
また本発明の接地短絡器具及び接地短絡器具の製造方法において、インターロックキー50のアースフックへの仮固定手段は、磁石55に限定されるものではなく、面ファスナやフック等の掛止具、係合具、嵌合具、一時的な接着手段、その他の公知の仮固定手段を用いることができる。
【0083】
また本発明の接地短絡器具及び接地短絡器具の製造方法において、接地金具30、リード線40、連結ロープ60の固縛等が不要な場合、接地短絡器具は、必ずしもバンド80及びリード線固定ロープ85を有しなくてもよい。
【0084】
また連結ロープ60に取付けられ接地金具30、インターロックキー50及び/又は連結ロープ60を絶縁棒10及び/又はアースフック20に固定可能な固定手段は、バンド80に限定されるものではなく、例えば、ロープや係合具、嵌合具等であってもよい。さらにリード線40に取付けられ、接地金具30を接地箇所101に接続した後にリード線40の一部を周囲の構造物に固定可能なリード線固定手段についても同様に、リード線固定ロープ85に限定されるものではない。
【0085】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0086】
1、2、3 接地短絡器具
10 絶縁棒
11 把持部
20 アースフック
30 接地金具
40 リード線
50 インターロックキー
55 磁石
60 連結ロープ
63 伸縮部
70、72 固定具
80 バンド
85 リード線固定ロープ
101 接地箇所
102 架空電線
103 フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11