(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ヒートインシュレータの組立装置及び組立方法
(51)【国際特許分類】
F02B 77/11 20060101AFI20220104BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20220104BHJP
F01N 1/10 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
F02B77/11 D
F01N13/14
F01N1/10 E
(21)【出願番号】P 2018019464
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(73)【特許権者】
【識別番号】507204785
【氏名又は名称】三刀屋金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸田 浩康
(72)【発明者】
【氏名】藤山 修
(72)【発明者】
【氏名】星野 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 治久
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-267355(JP,A)
【文献】特開2000-145473(JP,A)
【文献】特開2014-31751(JP,A)
【文献】特表2016-516949(JP,A)
【文献】特開2017-31835(JP,A)
【文献】実開平1-158513(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/18
F01N 1/10
F01N 13/14
F02B 77/11
F16L 59/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔を有する熱源側遮熱板と、該熱源側遮熱板に対応した形状を有し、該熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、該熱源側遮熱板と該外側遮熱板と積層の間に配置され、シート状をなす吸音材とを有するヒートインシュレータの組立装置であって、
上記熱源側遮熱板がセットされる治具と、
上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされかつ上記熱源側遮熱板上に上記吸音材がセットされた状態で、該吸音材を、上記複数の孔を介して上記熱源側遮熱板に向かって吸引する吸引装置と備え、
上記吸引装置は、少なくとも、上記熱源側遮熱板上に上記吸音材がセットされてから上記外側遮熱板が上記熱源側遮熱板上にセットされるまで、上記吸音材を吸引するように構成されていることを特徴とするヒートインシュレータの組立装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートインシュレータの組立装置において、
上記複数の孔は、上記熱源側遮熱板における上記吸音材がセットされる領域にのみ設けられ、
上記吸引装置は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板に向かって開口する吸引口を有しており、
上記吸引口は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板における上記複数の孔が設けられた領域を覆うように形成されていることを特徴とするヒートインシュレータの組立装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヒートインシュレータの組立装置において、
上記治具は、上記熱源側遮熱板を案内するガイドピンを有し、
上記熱源側遮熱板には、上記ガイドピンが係合する、上記複数の孔とは別の係合孔を有し、
上記ガイドピンが上記係合孔と係合したときに、上記複数の孔が設けられた領域が上記吸引口の位置に位置するように構成されていることを特徴とするヒートインシュレータの組立装置。
【請求項4】
複数の孔を有する熱源側遮熱板と、該熱源側遮熱板に対応した形状を有し、該熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、該熱源側遮熱板と該外側遮熱板と積層の間に配置され、シート状をなす吸音材とを有するヒートインシュレータの組立方法であって、
治具に上記熱源側遮熱板をセットする熱源側遮熱板セット工程と、
上記熱源側遮熱板セット工程の後、上記複数の孔を介して上記熱源側遮熱板に向かう吸引力を発生させる吸引工程と、
上記熱源側遮熱板に向かう吸引力が発生した状態で、上記熱源側遮熱板上に上記吸音材をセットする吸音材セット工程と、
上記吸音材セット工程の後、上記熱源側遮熱板に向かう吸引力が発生した状態で、上記熱源側遮熱板と協働して上記吸音材を挟むように上記外側遮熱板をセットする外側遮熱板セット工程と、
上記外側遮熱板セット工程の後、上記熱源側遮熱板と上記外側遮熱板とを連結する遮熱板連結工程とを含むことを特徴とするヒートインシュレータの組立方法。
【請求項5】
請求項4に記載のヒートインシュレータの組立方法において、
上記複数の孔は、上記熱源側遮熱板における上記吸音材がセットされる領域にのみ設けられ、
上記吸引工程は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板に向かって開口する吸引口を有する吸引装置によって実行され、
上記熱源側遮熱板セット工程では、上記熱源側遮熱板は、上記熱源側遮熱板における上記複数の孔が設けられた領域が、上記吸引口の位置に位置するようにセットされることを特徴とするヒートインシュレータの組立方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のヒートインシュレータの組立方法において、
上記吸音材は、第1繊維シートと、該第1繊維シートよりも目が細かい第2繊維シートとを含み、
上記吸音材セット工程では、上記第1繊維シートを上記熱源側遮熱板上にセットした後に、該第1繊維シート上に上記第2繊維シートがセットされることを特徴とするヒートインシュレータの組立方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つに記載のヒートインシュレータの組立方法において、
上記熱源側遮熱板及び上記外側遮熱板の少なくとも一方には、外周縁部から外側に向かって突出したフランジが複数設けられており、
上記遮熱板連結工程では、上記複数のフランジをそれぞれ折り曲げることで、上記熱源側遮熱板と上記外側遮熱板とを連結することを特徴とするヒートインシュレータの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートインシュレータの組立装置及び組立方法に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱源側遮熱板と、該熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、該熱源側遮熱板と該外側遮熱板と積層の間に配置される吸音材とを有するヒートインシュレータが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなヒートインシュレータを組み立てる際には、特許文献1のように、熱源側遮熱板の上の所定の位置に吸音材を配置して、その上から外側遮熱板を置いて、熱源側遮熱板と外側遮熱板とを溶接する組立方法がとられる。
【0004】
特許文献1では、熱源側遮熱板又は外側遮熱板のいずれかに吸音材の端部位置を確認するための確認孔を設けて、溶接工程における外力によって吸音材がずれることを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱源側遮熱板及び外側遮熱板の形状は、ヒートインシュレータが配設される位置や熱源の形状によって適宜変更されるため、熱源側遮熱板及び外側遮熱板は一般に3次元的な形状をなしている。一方で、吸音材は一般に不織布などのシート材で構成される。このため、ヒートインシュレータを組み立てる際に、吸音材がずれないようにすることが困難であるという問題が生じる。
【0007】
これに対して、特許文献1のようなものでは、確認孔によって吸音材の位置がずれることは確認できるが、ずれを逐次修正する必要があり効率が悪い。
【0008】
吸音材の位置ずれを防止するために、接着剤等で吸音材を熱源側遮熱板に貼り付ける方法も考えられる。しかしながら、例えば、吸音材がグラスウールからなる場合、接着剤を設けたことによって、グラスウール内の空気層が遮断されて吸音効果が低下してしまうおそれがある。また、接着剤の耐熱性も考慮しなければならなくなり面倒である。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吸音材の吸音効果の低下を抑制しつつ、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明では、複数の孔を有する熱源側遮熱板と、該熱源側遮熱板に対応した形状を有し、該熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、該熱源側遮熱板と該外側遮熱板と積層の間に配置され、シート状をなす吸音材とを有するヒートインシュレータの組立装置を対象として、上記熱源側遮熱板がセットされる治具と、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされかつ上記熱源側遮熱板上に上記吸音材がセットされた状態で、該吸音材を、上記複数の孔を介して上記熱源側遮熱板に向かって吸引する吸引装置と備え、上記吸引装置は、少なくとも、上記熱源側遮熱板上に上記吸音材がセットされてから上記外側遮熱板が上記熱源側遮熱板上にセットされるまで、上記吸音材を吸引するように構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記複数の孔は、上記熱源側遮熱板における上記吸音材がセットされる領域にのみ設けられ、上記吸引装置は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板に向かって開口する吸引口を有しており、上記吸引口は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板における上記複数の孔が設けられた領域を覆うように形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明の発明において、上記治具は、上記熱源側遮熱板を案内するガイドピンを有し、上記熱源側遮熱板には、上記ガイドピンが係合する、上記複数の孔とは別の係合孔を有し、上記ガイドピンが上記係合孔と係合したときに、上記複数の孔が設けられた領域が上記吸引口の位置に位置するように構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、ヒートインシュレータの組立方法の発明であり、具体的には、複数の孔を有する熱源側遮熱板と、該熱源側遮熱板に対応した形状を有し、該熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、該熱源側遮熱板と該外側遮熱板と積層の間に配置され、シート状をなす吸音材とを有するヒートインシュレータの組立方法を対象にして、治具に上記熱源側遮熱板をセットする熱源側遮熱板セット工程と、上記熱源側遮熱板セット工程の後、上記複数の孔を介して上記熱源側遮熱板に向かう吸引力を発生させる吸引工程と、上記熱源側遮熱板に向かう吸引力が発生した状態で、上記熱源側遮熱板上に上記吸音材をセットする吸音材セット工程と、上記吸音材セット工程の後、上記熱源側遮熱板に向かう吸引力が発生した状態で、上記熱源側遮熱板と協働して上記吸音材を挟むように上記外側遮熱板をセットする外側遮熱板セット工程と、上記外側遮熱板セット工程の後、上記熱源側遮熱板と上記外側遮熱板とを連結する遮熱板連結工程とを含む、ことを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、上記複数の孔は、上記熱源側遮熱板における上記吸音材がセットされる領域にのみ設けられ、上記吸引工程は、上記熱源側遮熱板が上記治具にセットされた状態で、上記熱源側遮熱板に向かって開口する吸引口を有する吸引装置によって実行され、上記熱源側遮熱板セット工程では、上記熱源側遮熱板は、上記熱源側遮熱板における上記複数の孔が設けられた領域が、上記吸引口の位置に位置するようにセットされる、ことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、第4又は第5の発明において、上記吸音材は、第1繊維シートと、該第1繊維シートよりも目が細かい第2繊維シートとを含み、上記吸音材セット工程では、上記第1繊維シートを上記熱源側遮熱板上にセットした後に、該第1繊維シート上に上記第2繊維シートがセットされる、ことを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、第4~第6の発明のいずれか1つにおいて、上記熱源側遮熱板及び上記外側遮熱板の少なくとも一方には、外周縁部から外側に向かって突出したフランジが複数設けられており、上記遮熱板連結工程では、上記複数のフランジをそれぞれ折り曲げることで、上記熱源側遮熱板と上記外側遮熱板とを連結する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1及び第4の発明によると、吸音材は、熱源側遮熱板に向かう吸引力を受けるため、熱源側遮熱板上にセットされたときには、熱源側遮熱板上の所望の位置に略密着された状態となる。また、上記吸引力によって吸音材が上記所望の位置からずれることが抑制される。さらに、少なくとも、熱源側遮熱板上に吸音材がセットされてから外側遮熱板が熱源側遮熱板上にセットされるまで、吸音材は熱源側遮熱板に向かって吸引されるため、熱源側遮熱板と外側遮熱板とによって挟持されるまでは、吸音材は上記所望の位置からずれにくくなる。そして、吸音材が熱源側遮熱板と外側遮熱板とによって挟持された後は、熱源側遮熱板及び外側遮熱板からの挟持力によって、吸音材の位置ずれが抑制される。したがって、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることが抑制される。
【0018】
また、接着剤等を用いることなく吸音材を上記所望の位置に配置することができるため、吸音材の吸音効果の低下を抑制することもできる。
【0019】
よって、吸音材の吸音効果の低下を抑制しつつ、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることを抑制することができる。
【0020】
第2及び第5の発明によると、吸引口のサイズを出来る限り絞ることができるため、吸引装置による吸引力を出来る限り高くすることができる。これにより、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることがより適切に抑制される。
【0021】
特に、第3の発明によると、熱源側遮熱板が治具にセットされたときには、熱源側遮熱板における複数の孔が設けられた領域が吸引口の位置に位置するようになる。これにより、吸引装置による吸音材の吸引を適切に行うことができるようになって、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることがより効果的に抑制される。
【0022】
第6の発明によると、吸音材が第1繊維シートと第2繊維シートとを含んでいるため、第1繊維シートと第2繊維シートとの両方に吸引力を及ぼす必要がある。第6の発明では、相対的に目の粗い第1繊維シートが、まず熱源側遮熱板上に配置されるため、上記吸引力は第1繊維シートを通り抜けて第1繊維シートの上にまで及びやすい。このため、第1繊維シート上に相対的に目の細かい第2繊維シートを配置したときに、第2繊維シートにも吸引力が及んで、第2繊維シートも熱源側遮熱板に向かって吸引される。この結果、吸音材が複数の繊維シートで構成されていたとしても、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることを一層適切に抑制することができる。
【0023】
また、相対的に目の粗い第1繊維シート上に相対的に目の細かい第2繊維シートを配置すれば、第2繊維シートが第1繊維シートに引っ掛かりやすいため、第2繊維シートが第1繊維シートに対して相対的にずれることを抑制することができる。これにより、ヒートインシュレータの組立中に吸音材が所望の位置からずれることをより効果的に抑制することができる。
【0024】
第7の発明によると、吸音材を、熱源側遮熱板と外側遮熱板とを溶接等で連結するよりも強固に熱源側遮熱板と外側遮熱板との間に挟持させることができる。このため、熱源側遮熱板と外側遮熱板とを連結させるとき、及び、ヒートインシュレータの組立後においても吸音材が所望の位置からずれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態にかかる組立装置で組み立てられるヒートインシュレータの構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】組立装置でヒートインシュレータを組み立てる工程を示す工程図である。
【
図4】組立装置でヒートインシュレータを組み立てる途中を示す図であって、熱源側遮熱板を治具にセットした状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の状態から、熱源側遮熱板上に吸音材をセットした状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5のVI-VI線相当の部分断面図である。
【
図7】
図5の状態から、外側遮熱板をセットして、熱源側遮熱板と外側遮熱板とを連結させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0027】
〈ヒートインシュレータ〉
図1は、本実施形態に係る組立装置1によって組み立てられるヒートインシュレータ100を示す。このヒートインシュレータ100は、自動車のエンジンの排気管の周囲に配置されるインシュレータであって、排気管から上記自動車の車室内等に熱と振動(音振)が伝達することを抑制するためのインシュレータである。
【0028】
ヒートインシュレータ100は、複数の孔(後述する音抜け孔106)を有する熱源側遮熱板101と、熱源側遮熱板101に積層される外側遮熱板102と、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102と積層の間に配置される吸音材103とを有する。
【0029】
熱源側遮熱板101は、熱源となる上記排気管側に配置され、該排気管からの輻射熱等を受け止めて外部への直接的な熱輻射等を抑制する。熱源側遮熱板101は、上記排気管の形状に対応して立体的な形状をなしており、少なくとも1つの凸部又は凹部を有している。本実施形態では、熱源側遮熱板101には第1の凹部101aが形成されており、熱源側遮熱板101の長手方向の中間において第1の段差部101bが形成されている。
【0030】
熱源側遮熱板101には、外周縁部から外側に向かって突出したフランジ104が複数設けられている。詳しくは後述するが、複数のフランジ104は、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結するためのものである。
【0031】
また、熱源側遮熱板101には、組立装置1の後述する治具10に設けられたガイドピン13と係合する第1の係合孔105が設けられている。
【0032】
熱源側遮熱板101に設けられた複数の孔は、上記排気管からの音振を抜けさせるための音抜け孔106である。音抜け孔106は、熱源側遮熱板101の一部、詳しくは、第1の凹部101a及び第1の段差部101bの両方を含む領域に形成されている。詳しくは後述するが、音抜け孔106は、吸音材103がセットされる領域にのみ設けられている。
【0033】
外側遮熱板102は、熱源側遮熱板101上に積層され、熱源側遮熱板101からの輻射熱等を受け止めて外部への直接的な熱輻射等を抑制する。外側遮熱板102は熱源側遮熱板101に対応した立体形状をなしている。具体的には、外側遮熱板102における、熱源側遮熱板101の第1の凹部101aに対応する位置には、第2の凹部102aが設けられている一方、外側遮熱板102における、熱源側遮熱板101の第1の段差部101bに対応する位置には、第2の段差部102bが設けられている。尚、外側遮熱板102には、熱源側遮熱板101の音抜け孔106に対応する孔は形成されていない。
【0034】
また、外側遮熱板102における、熱源側遮熱板101の第1の係合孔105に対応する位置には、第2の係合孔107が設けられている。この第2の係合孔107も、第1の係合孔105と同様に、組立装置1の後述する治具10に設けられたガイドピン13と係合する。
【0035】
熱源側遮熱板101及び外側遮熱板102は、本実施形態では、アルミニウム合金板で構成されている。熱源側遮熱板101及び外側遮熱板102は、耐熱性を有し、熱伝導率が低い材料の板材であれば、アルミニウム合金板に限定されない。
【0036】
吸音材103は、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102の積層の間に所定の配置位置で挟み込んで配置され、熱源からの音振を受け止めて減衰させ、外部に騒音が伝わるのを抑制する。
【0037】
吸音材103はシート状をなしている。具体的には、本実施形態では、吸音材103は2つの繊維シートを含む。より詳しくは、吸音材103は、ガラス繊維シート103a(第1繊維シート)と、ガラス繊維シート103aよりも目が細かい不織布103b(第2繊維シート)とを含む。吸音材103は、ガラス繊維シート103aが熱源側遮熱板101上に配置され、該ガラス繊維シート103a上に不織布103bが配置されて構成されている。
【0038】
図1に示すように、吸音材103は、熱源側遮熱板101における複数の音抜け孔106が形成された領域(以下、音抜け領域Sという)に配置される。具体的には、吸音材103は、複数の音抜け孔106の全てを覆うように音抜け領域Sに配置される。
【0039】
〈組立装置〉
次に、ヒートインシュレータ100を組み立てる組立装置1について詳細に説明する。
【0040】
組立装置1は、熱源側遮熱板101がセットされる治具10を備える。治具10は、
図2及び
図4に示すように、熱源側遮熱板101が載置される枠状の載置部11と、該載置部11を支持する筒状の台座部12とを有している。載置部11及び台座部12の上端部は、熱源側遮熱板101の外周形状に対応した立体的な形状をなしている。
【0041】
載置部11には、2つのガイドピン13が設けられている。2つのガイドピン13は、載置部11の角部にそれぞれ設けられている。2つのガイドピン13は、台座部12の筒軸に沿って見たときに、対角となる位置にそれぞれ配置されている。尚、ガイドピン13は、載置部11の各角部に1つずつ、合計4つ設けられていてもよい。
【0042】
図2に示すように、載置部11には切欠11aが形成され、台座部12の切欠11aに対応する位置には、窪み部12aが形成されている。この切欠11a及び窪み部12aは、熱源側遮熱板101の複数のフランジ104のうちの1つを受けるための受け部として構成されている。詳しくは後述するが、切欠11a及び窪み部12aが対象のフランジ104を受けたときには、熱源側遮熱板101が所定の位置にセットされるようになっている。つまり、この切欠11a及び窪み部12aも、ガイドピン13と同様に、熱源側遮熱板101を案内するガイドとして機能する。
【0043】
治具10内、すなわち、載置部11の枠内及び台座部12の筒内には、熱源側遮熱板101が治具10にセットされかつ熱源側遮熱板101上に吸音材103がセットされた状態で、吸音材103を、音抜け孔106を介して熱源側遮熱板101に向かって吸引する吸引装置20が設けられている。
【0044】
吸引装置20は、吸引力を発生させるための吸引力発生装置21(
図6参照)と、該吸引力発生装置21に連結された吸引管22とを有している。
【0045】
吸引力発生装置21は、例えば、真空引きをするためのタービン等を備えたものであって、吸引管22内の真空度を上昇させることで、吸引力を発生させるものである。吸引力発生装置21は、予め設定された吸引力を発生させるものであってもよいし、吸引力を調整可能なものであってもよい。尚、
図6では簡略化して描いているため、吸引力発生装置21は、吸引管22よりも小さいスケールとなっているが、実際には、吸引管22よりも大きなものであり得る。
【0046】
吸引管22は、一端が吸引力発生装置21に接続される一方、他端には吸引口23が開口されている。吸引口23は、
図4に示すように、熱源側遮熱板101が治具10(厳密には載置部11)にセットされた状態で、熱源側遮熱板101に向かって開口している。吸引口23は、その縁部が熱源側遮熱板101に密着するように、熱源側遮熱板101における対応する部分、詳しくは、音抜け領域Sの周辺部分に対応した立体形状をなしている。吸引口23の開口面積は、台座部12の筒軸に沿って見たときに、音抜け領域Sよりも僅かに大きい面積に設定されている。このため、吸引口23は、熱源側遮熱板101が治具10にセットされた状態で、熱源側遮熱板101における音抜け領域Sを覆うようになっている。尚、吸引口23の縁部と熱源側遮熱板101との密着性を向上させるために、吸引口23の縁部にゴム等の可撓性部材を設けるようにしてもよい。
【0047】
吸引管22は、吸引力発生装置21に対して取り外し可能に構成されている。これにより、熱源側遮熱板101の形状に対応した形状の吸引口23を有する他の吸引管22に適宜交換可能になっている。
【0048】
〈ヒートインシュレータの組立〉
次に、実際にヒートインシュレータ100を組み立てる方法について、
図3~
図7を参照しながら説明する。
【0049】
図3には、組立装置1でヒートインシュレータ100を組み立てる際の各工程を示す。尚、各ステップは作業者が手動で行ってもよいし、不図示のロボットによって行ってもよい。また、吸引装置20(特に吸引力発生装置21)の起動及び停止は、不図示の制御装置によって実行されてもよい。
【0050】
先ず、ステップS1において、治具10に熱源側遮熱板101をセットする(熱源側遮熱板セット工程)。
【0051】
このステップS1では、
図4に示すように、熱源側遮熱板101は、第1の係合孔105が載置部11のガイドピン13にそれぞれ係合するとともに、熱源側遮熱板101の第1の凹部101aの部分に設けられたフランジ104が、載置部11の切欠11a及び台座部12の窪み部12aに収容されるようにセットされる。また、
図4に示すように、第1の係合孔105とガイドピン13とが係合したときには、音抜け領域Sが吸引口23の位置に位置するようになっている。つまり、このステップS1では、熱源側遮熱板101は、該熱源側遮熱板101における音抜け領域Sが、吸引口23の位置に位置するようにセットされる。
【0052】
次に、ステップS2において、吸引装置20を稼働させて、吸引工程を開始する。これにより、音抜け孔106を介して熱源側遮熱板101に向かう吸引力が発生する。
【0053】
次いで、ステップS3において、熱源側遮熱板101に向かう吸引力が発生した状態で、熱源側遮熱板101上に、具体的には、音抜け領域Sの位置に、吸音材103としてのガラス繊維シート103aをセットする(吸音材セット工程)。
【0054】
このステップS3で、熱源側遮熱板101上に配置されたガラス繊維シート103aは、熱源側遮熱板101に向かって吸引されて、
図6に示すように、熱源側遮熱板101の第1の凹部101a及び第1の段差部101bの形状に沿って変形する。これにより、ガラス繊維シート103aが、熱源側遮熱板101の所望の位置、すなわち、音抜け領域S(
図1等参照)の位置に略密着した状態となる。また、吸引力によってガラス繊維シート103aが音抜け領域Sからずれることが抑制される。
【0055】
続いて、ステップS4において、熱源側遮熱板101に向かう吸引力が発生した状態で、ガラス繊維シート103a上に、吸音材103としての不織布103bをセットする(吸音材セット工程)。
【0056】
ガラス繊維シート103aは目が粗いため、吸引装置20による吸引力はガラス繊維シート103aを通り抜けて該ガラス繊維シート103aの上にまで及ぶ。このため、ステップS4において、ガラス繊維シート103a上に相対的に目の細かい不織布103bを配置したときに、不織布103bにも吸引力が及んで、不織布103bも熱源側遮熱板101に向かって吸引される。
【0057】
不織布103bが熱源側遮熱板101に向かって吸引されることで、不織布103bも、ガラス繊維シート103aと同様に、
図6に示すように、熱源側遮熱板101の第1の凹部101a及び第1の段差部101bの形状に沿って変形する。
【0058】
続いて、ステップS5において、熱源側遮熱板101に向かう吸引力が発生した状態で、熱源側遮熱板101と協働して吸音材103を挟むように外側遮熱板102をセットする(外側遮熱板セット工程)。
【0059】
このステップS5では、外側遮熱板102は、第2の係合孔107が載置部11のガイドピン13にそれぞれ係合するようにセットされる。このとき、熱源側遮熱板101に向かう吸引力が発生したままの状態であるため、吸音材103は、熱源側遮熱板101の音抜け領域Sの位置からずれることなく、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とで挟持される。
【0060】
次に、ステップS6において、吸引装置20を停止させて、吸引工程を終了する。
【0061】
このように、本実施形態では、吸引装置20は、少なくとも、熱源側遮熱板101上に吸音材103がセットされてから外側遮熱板102が熱源側遮熱板101上にセットされるまで、吸音材103を吸引する。
【0062】
外側遮熱板102は熱源側遮熱板101に対応する形状を有しているため、該外側遮熱板102は、吸引力によって変形した吸音材103の形状に対応した形状をなしている。吸音材103は、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とに挟持された状態では、熱源側遮熱板101の第1の凹部101a及び第1の段差部101b、並びに、外側遮熱板102の第2の凹部102a及び第2の段差部102bの形状に沿って変形したままの状態になる。このため、吸引装置20を停止させた後でも、第1の凹部101a等により吸音材103は音抜け領域Sの位置からずれにくくなる。
【0063】
次いで、ステップS7において、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結する(遮熱板連結工程)。
【0064】
このステップS7では、
図7に示すように、熱源側遮熱板101に設けられた複数のフランジ104をそれぞれ折り曲げて、外側遮熱板102における、熱源側遮熱板101とは反対側の面にそれぞれ当接させることで、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結させる。これによりヒートインシュレータ100が完成する。
【0065】
最後に、ステップS8において、完成したヒートインシュレータ100を治具10から取り外す。
【0066】
以上により、ヒートインシュレータ100の組み立てが完了する。
【0067】
したがって、本実施形態によると、吸音材103は熱源側遮熱板101に向かう吸引力を受けるため、吸音材103は、熱源側遮熱板101上にセットされたときには、熱源側遮熱板101上の所望の位置(音抜け領域S)に略密着した状態となる。また、吸引力によって吸音材103が上記所望の位置からずれることが抑制される。さらに、少なくとも、熱源側遮熱板101上に吸音材103がセットされてから外側遮熱板102が熱源側遮熱板101上にセットされるまで、吸音材103は熱源側遮熱板101に向かって吸引されるため、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とによって挟持されるまでは、吸音材103は上記所望の位置からずれにくくなる。そして、吸音材103が熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とによって挟持された後は、熱源側遮熱板101及び外側遮熱板102からの挟持力や、第1の凹部101a等の熱源側遮熱板101及び外側遮熱板102の有する形状によって、吸音材103の位置ずれが抑制される。したがって、ヒートインシュレータ100の組立中に吸音材103が所望の位置からずれることが抑制される。
【0068】
また、接着剤等を用いることなく吸音材103を上記所望の位置に配置することができるため、吸音材103の吸音効果の低下を抑制することもできる。
【0069】
よって、吸音材103の吸音効果の低下を抑制しつつ、ヒートインシュレータ100の組立中に吸音材103が所望の位置からずれることを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態によると、引口23の開口面積は、台座部12の筒軸に沿って見たときに、音抜け領域Sよりも僅かに大きい面積に設定されているため、吸引口23のサイズが出来る限り絞られている。これにより、吸引装置20による吸引力を出来る限り高くすることができる。この結果、ヒートインシュレータ100の組立中に吸音材103が所望の位置からずれることがより適切に抑制される。
【0071】
特に、熱源側遮熱板101が治具10にセットされたときには、熱源側遮熱板101におけるが音抜け領域Sが吸引口23の位置に位置するようになる。これにより、吸引装置20による吸音材103の吸引を適切に行うことができるようになって、ヒートインシュレータ100の組立中に吸音材103が所望の位置からずれることがより効果的に抑制される。
【0072】
さらに、本実施形態によると、相対的に目の粗いガラス繊維シート103aが、まず熱源側遮熱板101上に配置されるため、吸引装置20の吸引力がガラス繊維シート103a上に配置される不織布103bにも吸引力が及んで、吸音材103の位置ずれを一層適切に抑制することができる。また、ガラス繊維シート103a上に不織布103bを配置すれば、不織布103bがガラス繊維シート103aに引っ掛かりやすくなって、不織布103bがガラス繊維シート103aに対して相対的にずれることを抑制することができる。これにより、ヒートインシュレータ100の組立中に吸音材103が所望の位置からずれることを一層効果的に抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、熱源側遮熱板101に設けられた複数のフランジ104を折り曲げて、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結させる。これにより、吸音材103を、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを溶接等で連結するよりも強固に、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102との間に挟持させることができる。この結果、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結させるとき、及び、ヒートインシュレータ100の組立後においても吸音材103が所望の位置からずれることを抑制することができる。尚、本実施形態は、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを溶接により連結することを排除するものではない。
【0074】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0075】
例えば、上述の実施形態では、外側遮熱板102をセットした後、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結させる前に、吸引装置20を停止させていたが、これに限らず、熱源側遮熱板101と外側遮熱板102とを連結させた後に吸引装置20を停止させるようにしてもよい。
【0076】
さらに、上述の実施形態では、吸音材103は、ガラス繊維シート103aと不織布103bとで構成されていたが、これに限らず、ガラス繊維シート103a及び不織布103b以外のシートで構成されていてもよい。また、2つのシートではなく、3つ以上のシートで構成されていてもよく、1つのシートのみで構成されていてもよい。尚、吸音材103を複数のシートで構成する場合には、最も目の粗いシートを熱源側遮熱板101上にセットすることが望ましい。
【0077】
また、上述の実施形態では、熱源側遮熱板101には、凹部及び凸部のうち凹部のみが設けられていたが、これに限らず、凹部及び凸部のうち凸部のみを設けてもよいし、凹部及び凸部の両方が設けられていてもよい。さらには、凹部及び凸部の少なくとも一方が複数設けられていてもよい。尚、凹部及び凸部の両方が設けられている場合、音抜け領域Sは、全ての凹部及び凸部に跨がって形成されている必要はなく、凹部及び凸部のうちの一部に跨がっていればよい。
【0078】
さらに、上述の実施形態では、治具10は載置部11と台座部12とを有していたが、これに限らず、台座部12の代わりに載置部11に柱状の支持脚を複数(例えば、載置部の各角部に1つずつ)設けるようにしてもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、ヒートインシュレータ100は、自動車のエンジンの排気管の周囲に配置されるインシュレータであったが、これに限らず、熱と振動(音振)が外部に伝達することを抑制する必要がある熱源であれば、ヒートインシュレータ100が覆う対象は特に限定されない。例えば、エンジン自体を上から覆うようなヒートインシュレータ100であってもよい。
【0080】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、複数の孔を有する熱源側遮熱板と、熱源側遮熱板に積層される外側遮熱板と、熱源側遮熱板と外側遮熱板と積層の間に配置され、シート状をなす吸音材とを有するヒートインシュレータの組立装置として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 組立装置
10 治具
13 ガイドピン
20 吸引装置
23 吸引口
100 ヒートインシュレータ
101 熱源側遮熱板
102 外側遮熱板
103 吸音材
103a ガラス繊維シート(第1繊維シート)
103b 不織布(第2繊維シート)
104 フランジ
105 第1の係合孔
106 音抜け孔(熱源側遮熱板の複数の孔)