(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/06 20060101AFI20220104BHJP
D04H 1/4242 20120101ALI20220104BHJP
【FI】
C08J5/06 CER
C08J5/06 CEZ
D04H1/4242
(21)【出願番号】P 2018027501
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505072904
【氏名又は名称】有限会社文殊工学医学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518059093
【氏名又は名称】ビードローン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518059107
【氏名又は名称】株式会社星山工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】角田 敦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和夫
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-147274(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104467(WO,A1)
【文献】特開2004-11030(JP,A)
【文献】特開2002-212311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/24
B29B 11/16
B29B 15/08- 15/14
D04H 1/00- 18/04
B29C 70/00- 70/88
B29C 43/00- 43/34
D01F 9/08- 9/32
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素繊維を熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンとともに不織布化する、又は(B)湿潤化した炭素繊維不織布に熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンを添加して、熱可塑性ウレタン樹脂で接着及び被覆された炭素繊維不織布を得る工程(1)、
工程(1)で得た不織布の少なくとも1枚とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂シートの少なくとも1枚を交互に積層し、次いで加熱して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る工程(2)
を含む、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性ウレタン樹脂はガラス転移温度が、40℃以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性ウレタン樹脂は、無黄変エステル系、無黄変エステル・エーテル系、無黄変カーボネート系、又は芳香族イソシアネート系の水系ウレタン樹脂であり、かつ前記エマルジョンの粒子径が0.01~0.1μmの範囲である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(1)において、炭素繊維100質量部に対して、前記エマルジョンを固形分で5~15質量部の範囲で用いる、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程(1)において用いる炭素繊維の一部又は全部は、炭素繊維複合材料を酸化雰囲気で加熱処理し、その後陽極酸化して、炭素繊維複合材料に含まれる樹脂分から炭素繊維を分離回収することで得られる、湿潤状態の炭素繊維であり、(A)では湿潤状態の炭素繊維をそのまま不織布化に用い、(B)では湿潤状態の炭素繊維を不織布として湿潤化した炭素繊維不織布を得る、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程(1)で得られる不織布は、目付が100g~2000g/m
2の範囲である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維から繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維等の繊維強化複合材料(CFRP)は軽量化材料として注目され、航空機、自動車、風車の羽根、ロボットアーム、ドローン、スポーツ具などに広く利用されている。軽量得することにより、燃費の向上、環境負荷の低下に繋がるので、繊維強化複合材料の市場は今後も拡大していくと予想されている。その一方で、繊維強化複合材料製造工程途中の端材や使用寿命の来た廃棄複合材料(まとめて廃材と呼称)がすでに年間何万トンという規模となりつつある。そのため、CFRP廃材のリサイクル技術が極めて重要であり、いくつかの方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
引用文献1は熱硬化性樹脂(主としてエポキシ樹脂)を炭素繊維で補強した複合材料(以下CFRP)から炭素繊維を回収する技術(熱分解法)に関するものである。廃棄されたCFRPを適当なサイズに切断し、空気中約550℃で酸化処理して、残った炭素繊維を回収する方法である。この場合、酸化雰囲気中で高温処理するため炭素繊維が酸化され、強度が低下するという問題点がある。また、回収した炭素繊維が熱分解工程で絡むため、複合材料への加工が難しい。
【0004】
特許文献2は廃棄されたCFRPを20mmサイズ程度に切断し、空気中で炭素繊維の酸化反応が起こらない約450℃以下で加熱処理する。熱処理したCFRPを電解質溶液に浸漬し、CFRPを陽極にして電解処理すると熱処理で炭化した樹脂残渣が離脱し、炭素繊維を回収する方法である。この方法では、静置状態で電解処理されるので、回収した炭素繊維の配向はCFRPの状態が保持されて直線状で、湿潤状態であるので、不織布化しやすく、複合材料への加工が容易である。また、回収工程で炭素繊維の強度低下もほとんどない。
【0005】
一般に繊維基材を樹脂で補強して構造体を製造する場合、繊維基材が厚いと生産性が良い。樹脂が熱硬化性であると、硬化前の樹脂粘度が低い間に繊維基材を構成する単糸間に樹脂を含浸して硬化・成形すればよい。
【0006】
しかし、樹脂が熱可塑性の場合、溶融粘度が高いので、繊維基材を構成する単糸間に樹脂を含浸することは困難である。成形生産性を上げるため、不織布の目付を上げるとますます樹脂含浸性が低下し、高性能の複合材料を製造することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-298993号公報
【文献】特許第6044946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
厚い炭素繊維の不織布を補強材とし、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を構成とした複合材料を量産する場合、次のような課題がある。
(1)熱可塑性樹脂の溶融粘度は一般に極めて高いので、不織布を構成する補強繊維単糸間に樹脂を含浸することが難しい。
(2)複合材料の生産性を上げるには、厚手の不織布を補強材として使用することが考えられるが、熱可塑性樹脂の含浸の困難さがさらに拡大する。
【0009】
本発明の目的は、上記2つの課題を解決するため、炭素繊維を不織布化し、さらにそれを繊維強化熱可塑性樹脂複合材料とするための、簡便で力学特性に優れた複合材料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の通りである。
[1]
(A)炭素繊維を熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンとともに不織布化する、又は(B)湿潤化した炭素繊維不織布に熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンを添加して、熱可塑性ウレタン樹脂で接着及び被覆された炭素繊維不織布を得る工程(1)、
工程(1)で得た不織布の少なくとも1枚とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂シートの少なくとも1枚を交互に積層し、次いで加熱して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る工程(2)
を含む、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法。
[2]
前記熱可塑性ウレタン樹脂はガラス転移温度が、40℃以上である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記熱可塑性ウレタン樹脂は、無黄変エステル系、無黄変エステル・エーテル系、無黄変カーボネート系、又は芳香族イソシアネート系の水系ウレタン樹脂であり、かつ前記エマルジョンの粒子径が0.01~0.1μmの範囲である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
工程(1)において、炭素繊維100質量部に対して、前記エマルジョンを固形分で5~15質量部の範囲で用いる、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
工程(1)において用いる炭素繊維の一部又は全部は、炭素繊維複合材料を酸化雰囲気で加熱処理し、その後陽極酸化して、炭素繊維複合材料に含まれる樹脂分から炭素繊維を分離回収することで得られる、湿潤状態の炭素繊維であり、(A)では湿潤状態の炭素繊維をそのまま不織布化に用い、(B)では湿潤状態の炭素繊維を不織布として湿潤化した炭素繊維不織布を得る、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
工程(1)で得られる不織布は、目付が100g~2000g/m2の範囲である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、炭素繊維不織布を基材として用いても、熱可塑性樹脂をマトリックスとした力学特性の優れた複合材料を製造することができ、この製造方法によれば、高生産性での複合材料の量産も可能である。
【0012】
例えば、特許文献2に記載の方法でCFRP廃材から回収した湿潤状態にある炭素繊維(リサイクル炭素繊維)をそのまま用いる場合、湿式法による不織布(紙)を製造することが容易である。湿潤状態にある炭素繊維の単糸は屈折や湾曲状態のないまっすぐな状態で配置され、繊維の方向が平面内でランダムな擬似等方材料を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の製造方法は以下の工程(1)及び(2)を含む。
工程(1):(A)炭素繊維を熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンとともに不織布化する、又は(B)湿潤化した炭素繊維不織布に熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンを添加して乾燥し、熱可塑性ウレタン樹脂で接着及び被覆された不織布シートを得る。
工程(2):工程(1)で得た不織布シートの少なくとも1枚とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂シートの少なくとも1枚を交互に積層し、次いで加熱して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る。
【0014】
炭素繊維は、熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンとともに不織布化する。具体的には、炭素繊維を熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンと混合し、次いで常法により不織布化する。もしくは、湿潤化した不織布化した炭素繊維に熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンを付与した後、乾燥して、熱可塑性ウレタン樹脂で接着及び被覆された不織布シートを得る。湿潤化した炭素繊維不織布は、水分率が例えば、10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。水系エマルジョンは、自己乳化型であるので、界面活性剤等の余分な成分を含まず、複合材料としたときに複合材料の物性を損なわないこと、回収炭素繊維を用いた場合でも優れた強度の複合材料を得られるということから適当である。
【0015】
特許文献2に記載の炭素繊維複合材料(CFRP廃材等の)を酸化雰囲気で加熱処理し、その後陽極酸化して、炭素繊維複合材料に含まれる樹脂分から炭素繊維を分離回収することで得られるリサイクル炭素繊維であって、陽極酸化後に分離回収された炭素繊維は湿潤状態である。回収炭素繊維の水分率は分離回収方法にもよるが、例えば、30%以上である。そのため、この湿潤状態の炭素繊維をそのまま工程(1)の(B)の方法に用いることが、製造工程の簡素化と、炭素繊維が湿潤状態にあるので、水系自己乳化型エマルジョンとの馴染みが良好で、熱可塑性ウレタン樹脂との炭素繊維間の接着及び炭素繊維の被覆が良好に行われ、最終的に得られる複合材料の強度が向上することから好ましい。
【0016】
もちろん新品のカットした炭素繊維単独又は特許文献2記載の回収炭素繊維の混合物であっても良い。新品のカットした炭素繊維を用いる場合、工程(1)の(A)の方法に用いるか、または、新品のカットした炭素繊維を常法により湿潤化した後に工程(1)の(B)の方法に用いることもできる。
【0017】
ここで用いる熱可塑性ウレタン樹脂は、乾燥した後、250℃以上の耐熱性を有する熱可塑性フィルムを形成するものであることが好ましい。水系エマルジョンの粒子径は、単糸直径が約5~10μmの炭素繊維の間に含浸できるといか観点から、例えば、0.01~0.1μmの範囲が好ましい。
【0018】
熱可塑性ウレタン樹脂は、工程(2)における加熱において、熱可塑性樹脂と共に溶融し、熱可塑性樹脂と適度に混和し、得られる複合材料の強度向上に寄与できるという観点から、ガラス転移温度が、例えば、40℃以上の範囲であることが適当であり、さらに好ましくは、80℃以上の範囲である。
【0019】
熱可塑性ウレタン樹脂は、材質には特に制限はなく、例えば、無黄変エステル系、無黄変エステル・エーテル系、無黄変カーボネート系、又は芳香族イソシアネート系の水系ウレタン樹脂を挙げることができる。上記ガラス転移温度及びエマルジョンの粒子径を有する熱可塑性ウレタン樹脂の水系自己乳化型エマルジョンは、例えば、第一工業製薬のスーパーフレックスシリーズが市販品として入手が可能である。
【0020】
エマルジョンの使用量は、炭素繊維100質量部に対して、エマルジョンを固形分で例えば、5~15質量部の範囲で用いることが、リサイクル炭素繊維を用いた場合でも、炭素繊維間の接着及び表面の被覆による熱可塑性樹脂との接着性を良好にし、優れた機械的強度を有する複合材料が得られるという観点から適当である。5質量部未満では、単糸間の空隙を樹脂で完全に埋めることが難しく、力学特性の優れた複合材料を得ることが難しくなる傾向がある。15質量部を超えても、それ以上の力学特性の優れた複合材料は得られない傾向がある。
【0021】
工程(1)で得られる不織布は、目付が100g~2000g/m2の範囲であることが好ましい。目付が100g/m2以下では複合材料の生産性が低いので本発明の経済効果が乏しくなる傾向がある。逆に、2000g/m2以上では、不織布化が技術的に難しくなる傾向があり、不織布化した後の乾燥にも時間がかかるので、経済性が低下する傾向がある。
【0022】
熱可塑性ウレタン樹脂で接着及び被覆された不織布は、工程(2)に供する前に加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥は、熱可塑性ウレタン樹脂の熱的特性を考慮し、炭素繊維が良好に接着及び被覆されることを考慮して、適宜決定することができる。例えば、100~160℃の範囲で、乾燥することができる。乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、熱板乾燥、赤外線乾燥などを挙げることができる。乾燥後、加圧して平板化することが好ましい。乾燥後の不織布は含水率が5%以下、好ましくは1%(ほぼ絶乾)であることが好ましい。
【0023】
工程(2)では、工程(1)で得た不織布の少なくとも1枚とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂シートの少なくとも1枚を交互に積層し、次いで加熱して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る。工程(2)で用いる熱可塑性樹脂シートは、複合材料のマトリックス部材を構成するものである。マトリックス部材として用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、充填用の熱可塑性ウレタン樹脂との接着力の高い熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性ウレタン樹脂の熱分解温度以下で溶融する合成樹脂が好ましい。具体的には、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン等を使用することが出来る。
【0024】
不織布の少なくとも1枚とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂シートの少なくとも2枚を交互に積層する。好ましくは、不織布の両面を熱可塑性樹脂シートが被覆するように挟み込む。即ち、不織布n枚に対して、熱可塑性樹脂シートn+1枚を交互に積層する。熱可塑性樹脂シートの厚みは、不織布の目付に応じて、さらには、複合材料における不織布とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂との所望の質量比に応じて適宜決定することができる。不織布とマトリックス部材としての熱可塑性樹脂との質量比は、特に制限はないが、不織布100質量部に対して、マトリックス部材としての熱可塑性樹脂10~1000質量部の範囲とすることができ、好ましくは25~400質量部の範囲である。繊維と樹脂の割合は特に限定はないが、繊維の体積含有率が20~80%が好ましい。20%以下であると、複合材料としての力学特性が低く、適用する意味が少ない。80%を越えると、力学特性が逆に低下する場合がある。
【0025】
得られた積層物は加熱して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を得る。加熱の際には積層物の両面から加圧することが好ましい。加熱温度は、熱可塑性樹脂シートを構成する熱可塑性樹脂の熱可塑性(溶融温度)を考慮して適宜決定することができる。さらに加圧の圧力は、加熱温度及びその温度における熱可塑性樹脂の粘度等を考慮して適宜決定できる。平板化した不織布の最上面と不織布と熱可塑性樹脂フィルムを交互に配置し、加熱・加圧して一体化させて、繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
【0027】
実施例1-1(リサイクル炭素繊維の場合)
(1)引用文献2を参考に回収したCFRPを20mmに切断した後、空気雰囲気375℃で1時間加熱し、マトリックス樹脂の大部分を除去した。ついで、0.2規定の硫酸水溶液に浸漬し、12Vで3分間陽極酸化した。
(2)回収した塊状の炭素繊維を水洗、脱水処理し、水分率を50%の回収炭素繊維を得た。これを常法に従って繊維目付重量が360g/m2(水分率50%)の不織布を作成した。
(3)これに、第一工業製薬(株)製の無黄変型エーテル系自己乳化タイプポリウレタンエマルジョン液「スーパーフレックス130」の固形分36g/m2に相当する量を均一に付与し、金網上で120℃の熱風で2時間乾燥した。乾燥後、金網から外し、板状の厚さ0.2mmのシートを得た。
【0028】
(4)このシート7枚と0.2mmの厚さの積水成形工業(株)製のポリプロピレンシートP8134の8枚を交互に重ね、200℃に加熱した河中産業(株)製のホットプレスで5分間加熱してポリプロピレンシートを溶融させたのち、6MPaの圧力に10分間保持した。その後、圧力を保持したまま50℃に降温した。金型を解体し、サイズ30cm角で、厚さ3mmの板状複合材を得た。
(5)これをダイヤモンドカッターで切り出し、下記形状の試験片を作成し、JIS7115-1986に従って、引張試験を実施し、結果を表1に示した。
<引張試験> 1号試験片 JIS7115-19866.1.1(1)に記載
【0029】
実施例1-2
実施例1-1の(1)と同様にして回収した塊状の炭素繊維を水洗、脱水処理し、水分率を50%の回収炭素繊維を得た。これに、第一工業製薬(株)製の無黄変型エーテル系自己乳化タイプポリウレタンエマルジョン液「スーパーフレックス130」の固形分36g/m2に相当する量を添加し、これから常法に従って繊維目付重量が360g/m2(水分率50%)の不織布を作成した。次いで、金網上で120℃の熱風で2時間乾燥した。乾燥後、金網から外し、板状の厚さ0.2mmのシートを得た。このシートを実施例1-1の(4)と同様の手順で板状複合材を得た。実施例1-1の板状複合材とほぼ同等のコンポジット引張強度を得た。
【0030】
実施例2-1(通常の不織布製法)
(1)直径が7ミクロンの12000本の単糸からなる連続炭素繊維360gを長さ20mmにカットし、アニオン系界面活性剤を溶解させた水に分散させた。
(2)上記分散液を100cm角の金網に濾過し、湿潤状態の不織布(乾燥状態での繊維目付:360g/m2)を得た。金網ごとプレスし、水分率を50%とした。
【0031】
(3)これに、第一工業製薬(株)製の無黄変型エーテル系自己乳化タイプポリウレタンエマルジョン液「スーパーフレックス130」の固形分36gを均一に付与し、120℃の熱風で2時間乾燥した。乾燥後、金網から外し、熱プレスし板状の不織布(厚さ:0.2mm)を得た。
【0032】
(4)30cm角に切断した板状の不織布7枚と0.2mmの厚さの積水成形工業(株)製のポリプロピレンシート8枚を上下に金枠の中に重ね、実施例1-1の(4)と同様の手順で、サイズ30cm角で、厚さ3mmの板状複合材を得た。
(5)これをダイヤモンドカッターで切りだし、実施例1-1と同様の形状の試験片を作成し、JIS7115-1986に従って、引張試験を実施した。
【0033】
実施例2-2
実施例1-1の(1)と同様にして得た、アニオン系界面活性剤を溶解させた水に炭素繊維を分散させた分散液に、第一工業製薬(株)製の無黄変型エーテル系自己乳化タイプポリウレタンエマルジョン液「スーパーフレックス130」の固形分36gを添加し、100cm角の金網に濾過し、湿潤状態の不織布(乾燥状態での繊維目付:360g/m2)を得た。金網ごとプレスし、水分率を50%とした。これを120℃の熱風で2時間乾燥した。乾燥後、金網から外し、熱プレスし板状の不織布(厚さ:0.2mm)を得た。この不織布シートを実施例1-1の(4)と同様の手順で板状複合材を得た。実施例2-1の板状複合材とほぼ同等のコンポジット引張強度を得た。
【0034】
【0035】
上記表1より、ポリウレタン処理することにより、引張強度が向上する。特に、リサイクル炭素繊維から製造した複合材料は新品の炭素繊維とほぼ同等であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、炭素繊維複合材料から回収した炭素繊維の有効利用に有用である。