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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ねじり履歴ダンパ
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220104BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220104BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
E04H9/02 351
F16F15/02 E
F16F7/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018564191
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 TR2017050253
(87)【国際公開番号】W WO2018056933
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】2016/07751
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】511196560
【氏名又は名称】ディクレリ ムラート
【氏名又は名称原語表記】DICLELI, Murat
【住所又は居所原語表記】Orta Dogu Teknik Universitesi, Muhendislik Bilimleri Bolumu, 06531 ANKARA Republic of Turkey
(73)【特許権者】
【識別番号】518430971
【氏名又は名称】ミラニ,アリ サレム
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディクレリ,ムラト
(72)【発明者】
【氏名】ミラニ,アリ サレム
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506597(JP,A)
【文献】特開2009-280963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/02
F16F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレース架構のためのねじり履歴ダンパであって、
延伸している先端部を備える少なくとも一つの筒状のエネルギー消散器(1)と、
ヘッダープレート(14)を用いて前記エネルギー消散器(1)の一端部に連結されている少なくとも1つのねじりアーム(2)と、
前記エネルギー消散器を屈曲から保護し、且つベースプレート(8)に溶接されている、支持プレート(3)と、
筒状の前記エネルギー消散器(1)の他端部に連結されて、前記他端部で前記エネルギー消散器(1)のねじり動作を制限し、且つベースプレート(8)に連結されている、ねじり抑制プレート(4)と、
二つのプレートで構成されており、連結プレート(9)に連結されている少なくとも一つのレール(5)と、
二つの側に摺動パッド(15)を有している少なくとも一つの摺動ブロックであって、取付けシャフト(7)およびベアリング(18)によって前記ねじりアーム(2)に結合されている少なくとも1つの摺動ブロックと、
筒状の取付けシャフト(7)と、
架構の棒状部材に連結されているベースプレート(8)と、
ガイドストリップ(11)によって横方向に移動可能な連結プレート(9)と、
前記ベースプレート(8)に連結されているカバープレート(10)と、
前記連結プレート(9)を水平方向に移動可能とするように、前記カバープレート(10)及び前記ねじり抑制プレート(4)の内側の面にねじで固定されている前記ガイドストリップ(11)と、
前記連結プレート(9)の二つの側にある成形されたステンレス鋼プレート(12)と、
ねじで前記レール(5)のそれぞれのプレートに連結された薄いステンレス鋼プレート(13)と、
前記摺動ブロック(6)の一部である摺動パッド(15)と、
前記ガイドストリップ(11)の部品である、ねじで留められている摺動バンド(16)と、
前記エネルギー消散器(1)がねじりを行うために、前記エネルギー消散器(1)と前記支持プレート(3)の連結点に配置されている、ベアリング(17)と、
前記摺動ブロック(6)を結合している、ベアリング(18)と、
減衰力を横方向に伝達する、前記連結プレート(9)に結合された水平方向プレート(19)と、
を備えていることを特徴とするねじり履歴ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、ブレース架構(筋交い付き骨組)のために設計された、ねじり履歴ダンパに関する。ねじり履歴ダンパの目的は、構造物に影響を与える地震エネルギーを減衰する(消散させる、dissipate)ことにより、構造物の要素の変位及び関連する損傷を低減することにある。
【背景技術】
【0002】
ダンパは、ダンパ上に加えられた運動エネルギーを減衰する(消散させる)。エネルギーではなく、力および変位の観点から説明が必要な場合、以下のことが言える。すなわち、ダンパの2つの取付け位置の間で、ダンパによって構造物に加えられた力が、装置の2つの取付け位置の間の相対変位に抗し、その結果、ダンパが取り付けられた構造物における変位の低減および損傷の低減をもたらす。この力はダンパの反力と呼ばれる。履歴ダンパの減衰は、降伏し、塑性歪みを生じさせ、履歴(ヒステリシス)エネルギー消散要素として動作する金属を使用することにより得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
建築物の骨組におけるエネルギー消散装置の導入は、よく知られている慣例である。これらの装置は、粘性ダンパ、履歴ダンパ、摩擦式エネルギー消散器、および座屈拘束ブレース(BRB)を含んでいる。ブレース架構に使用するために開発された鋼鉄製ダンパのなかで最もよく知られているのが、減衰および剛性付加(ADAS)要素とその変形物である減衰および剛性付加三角プレート(TADAS)である。ADASは、ボルト連結により頂部と底部で締結(clamp)および固定された、連続するX型プレートで構成されている。実寸大の実験は、基本構成部材における損傷の低減、小型および中型地震での階の間の変形の低減、およびブレースシステムの安定的なヒステリシス挙動に関して、ADASダンパの組み込みで生じる有利な点を示している。E字型要素およびC字型要素は、山形形状のブレースシステムのための他の種類の板曲げ(plate-bending)金属製ダンパである。この種の消散要素には、丸穴ダンパ、および二重X型ダンパも属している。これら2つのダンパもまた平面曲げタイプである。別の種類の板曲げ型のダンパはスチールスリットダンパ(鋼鉄製の細穴付きダンパ、Steel Slit Damper)であり、腹板(web)からの複数の切れ目を備えた標準的で構造的な幅広フランジ部分で組み立てられている。座屈拘束ブレース(BRB)は、ブレース架構に使用される別の種類のエネルギー消散要素である。BRBにおいて、ブレースはモルタルが充填された鋼鉄製のチューブのなかに包み込まれ、一方でブレースは「接着はがし(un-bonding)」剤を使用してモルタルから取り外される。組立体全体が、内部の鋼鉄製の芯部が外側部分から軸方向に独立して自由に摺動(slide)しその結果自由に変形する、一つの要素である。一方で、屈曲時、これらの曲げ抵抗が追加され、屈曲時への断面剛性を生成するため、座屈に対して強度がある。本発明の主題であるねじり履歴ダンパは、構造的に地震動を通じて加えられたエネルギーを消散するために、延性鋼で製造された筒状のエネルギー消散器(ED)のねじり降伏を利用するように設計された機械装置である。ねじり履歴ダンパは、ねじりで降伏し(yield in torsion)エネルギーを消散させるように設計されたエネルギー消散器で、ダンパに対してその2つの連結点で与えられた並進運動(translational motion、平行な動き)をねじれ(twisting)に変換する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願の発明は、ブレース架構(筋交い付き骨組)のために設計された、ねじり履歴ダンパに関する。このねじり履歴ダンパ装置の目的は、ねじれた状態の鋼鉄製の筒状エネルギー消散器によって、この装置の取付け位置における並進運動を筒状のエネルギー消散器のねじれに変換することにより、エネルギー消散を実現させることである。並進運動がねじれに変換されている間、筒状エネルギー消散器が円滑に降伏するために、エネルギー消散器は屈曲してはならない。エネルギー消散器が屈曲しないように、横方向(水平方向)の支持体が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
以下は図面の説明である。
図1図1は建築物の骨組上のねじり履歴ダンパの配置の完成予想図である。
図2図2はねじり履歴ダンパの透視図である。
図3図3はねじり履歴ダンパの側面図(YZ平面)である。
図4図4はねじり履歴ダンパの側面図(XZ平面)であり、すなわち、図3のS1-S2図である。
図5図5はねじり履歴ダンパの図3のS2-S2線断面図である。
図6図6(a)は変位していない状態のねじり履歴ダンパの概略的な正面図であり、図6(b)、(c)は変位した状態のねじり履歴ダンパの概略的な正面図である。
図7図7はねじり履歴ダンパのエネルギー消散ユニットである。
図8図8は取付けシャフトの周囲およびレール内部の摺動ブロックの摺動および回転機構である。
図9図9は増加する循環シフト(circular shift)条件の摩擦なしのねじり履歴ダンパにおける力(荷重、force)-変位曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の一側面の定義
本発明を用いて開発されたブレース架構用に設計されたねじり履歴ダンパをより分かりやすく説明するように、描かれた図面における部品にはそれぞれに番号が付けられており、それぞれの番号の参照するものが以下に説明されている。
1.エネルギー消散器(Energy dissipater)
2.アーム
3.支持プレート
4.ねじり抑制プレート(torsional restraint plate)
5.レール
6.摺動ブロック(Slider block)
7.取付けシャフト
8.ベースプレート
9.連結プレート
10.カバープレート
11.ガイドストリップ(案内用の帯状片、guide strip)
12.両側にねじ止めされた、変形および成形されたステンレス鋼プレート
13.ねじで結合されたステンレス鋼プレート
14.ヘッドプレート(先端部プレート、head plate)
15.摺動ブロックの一部である低摩擦摺動パッド
16.ねじ込みされた低摩擦摺動バンド
17.ベアリング1
18.ベアリング2
19.交差結合された水平方向プレート
【0007】
発明の詳細な説明
本出願の発明は、交差骨組(クロス架構、cross frames)のために設計された、ねじり履歴ダンパに関する。ねじり履歴ダンパは以下を備えている。
・延伸している先端部を備えた、一または複数の筒状のエネルギー消散器(ED)(1)。
・差込み型(plug-type)の連結部およびヘッダープレート(14)に連結されたねじりアーム(2)。
・エネルギー消散器を屈曲から保護する、ベースプレート(8)に溶接された支持プレート(3)。
・筒状のエネルギー消散器(1)の遠位末端(distal end)でねじれの動作を制限する、ベースプレート(8)に連結されたねじり抑制プレート(4)。
・2つのプレートで構成され、連結プレート(9)に連結されたレール(5)。
・2つの側に低摩擦摺動パッド(15)を有する摺動ブロックであり、それぞれの摺動ブロックが取付けシャフト(7)および低摩擦ベアリング(18)によってアーム(2)に結合されている摺動ブロック。
・筒状の取付けシャフト(7)。
・架構の棒状部材(frame beam)に連結されたベースプレート(8)。
・ガイドストリップ(11)によって横方向に移動可能な連結プレート(9)。
・ベースプレート(8)に連結されたカバープレート(10)。
・連結プレート(9)を水平方向に移動可能とするように、且つ平面上の支持体の傾斜を防止するように、反対側からカバープレート(10)にねじで固定されたガイドストリップ(11)と共に提供される、ねじり抑制プレート(4)。
・連結プレート(9)の二つの側にある成形されたステンレス鋼プレート(12)。
・ねじでレール(5)の各プレートに連結された薄いステンレス鋼プレート(13)。
・ねじりアーム(2)をエネルギー消散器(1)の先端に連結するヘッダープレート(header plate)(14)。
・摺動ブロック(6)の一部である低摩擦摺動パッド(15)。
・ガイドストリップ(11)の部品である、ねじで留められた低摩擦摺動バンド(16)。
・エネルギー消散器(1)が低摩擦ねじりを行うために、エネルギー消散器(1)と支持プレート(3)との連結位置に配置される、番号1が付された低摩擦ベアリング(17)。
・摺動ブロック(6)を結合する、番号2が付された低摩擦ベアリング(18)。
・減衰力を横方向に伝達する、交差結合された水平方向プレート(19)。
・連結プレート(connection plate)。
【0008】
ねじり履歴ダンパ(1)の目的は、アーム(2)の終点での並進運動を、筒状のエネルギー消散器でねじりに変換することである。(図1-6)。筒状のエネルギー消散器(1)が、その一定の直径の領域において円滑に降伏するために、並進運動がねじりに変換されている間、エネルギー消散器は屈曲してはならない。エネルギー消散器(1)の屈曲は、水平方向の支持プレート(3)により防止されている。
【0009】
図3は、ねじり履歴ダンパの側面図(YZ平面)を示している。ねじり履歴ダンパは、19の部分で構成されており、それらの部分について以下で詳述されている。支持プレート(3)は、ベースプレート(8)に溶接されている。ベースプレート(8)は、架構の棒状部材に連結されている。したがって、支持プレート(3)は、エネルギー消散器(1)からせん断力を受け、この力をベースプレート(8)に伝達する。伝達されたせん断力は、ダンパの反力である。エネルギー消散器(1)が低摩擦ねじりを行うために、符号1が付された低摩擦ベアリング(17)は、エネルギー消散器(1)と支持プレート(3)の連結点に取り付けられている。摺動ブロック(6)が、筒状の取付けシャフト(7)によって、アーム(2)の端部に取り付けられている。摺動パッド(15)に適合する摺動ブロック(6)は鋼鉄で製造されており、前記ブロックは、低摩擦摺動パッド(15)によってレール(5)に接触している。レールは2つのプレートで形成されている。レール(5)のそれぞれのプレートは、ねじによって結合された薄いステンレス鋼プレート(13)と共に提供される。これらのプレート(13)の目的は、低摩擦のための摺動接触面を形成することである。レール(5)は、連結プレート(9)に連結される。このプレート(9)は支持体への連結を提供する。連結プレート(9)は、ガイドストリップ(11)によって、横方向に移動可能である。これにより支持体の屈曲が防止される。摺動ブロック(6)とレール(5)若しくは連結プレート(9)との間には、連結用部品を含んでいない。図6および図9に記載の摺動ブロック(6)は、この摺動ブロック(6)がガイドレール(5)と一体となった(bring together)場合、アーム(2)とレール(5)の終点との間に、ローラヒンジタイプの連結部(rolle-hinge type connection)を形成する。このような連結が要求される理由は、レール(5)と摺動ブロック(6)との間のアーム(2)の回転の結果として形成される垂直方向の運動にある。
【0010】
上記のとおり、ガイドストリップ(11)は連結プレート(9)を横方向に移動させ、面外の屈曲を防止することを可能にする。ガイドストリップ(11)は、一方の側がねじり抑制プレート(4)にねじ止めされ、且つもう一方の側がカバープレートにネジ止めされている。低摩擦摺動バンド(16)を介してガイドストリップ(11)に接触している連結プレート(9)にねじ留めされた成形ステンレス鋼プレート(12)が、連結プレートを低摩擦で摺動を可能にするために提供されている。連結プレート。図2および図3に示されているねじり抑制プレート(4)およびカバープレート(10)が、ベースプレート(8)に連結されている。ねじり抑制プレート(4)およびカバープレート(10)は、ガイドストリップ(11)上で力を受け、これらの力をベースプレート(8)に、次いで棒状部材に伝達する。アーム(2)からレール(5)に、および、レール(5)から連結プレート(9)に適用される水平方向(X方向)の力は、ダンパの減衰力と呼ばれ、この力は、交互結合された水平方向プレート(19)によって交互伝達(cross transfer)される。
【0011】
図4および図5に示されているように、ねじり履歴ダンパは、一または複数のエネルギー消散ユニットで形成されてもよい。エネルギー消散ユニットの3次元的図面が図7に示されている。各エネルギー消散ユニットは、以下の構成を備えている。
・延伸している先端部を備えた筒状のエネルギー消散器(1)、
・差込み型の連結部およびヘッダープレート(14)に連結されたねじりアーム(2)、
・低摩擦の、摺動パッド(15)、摺動ブロック(6)。
【0012】
要約すると、ねじり履歴ダンパは、回転と、筒状のエネルギー消散器(1)の降伏とを介して、取付け位置の差動運動(differential motion)によって、履歴減衰力(hysteretic damping force)を提供するように設計されている。曲げモーメントは、支持体から架構の棒状部材に伝達される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9