(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】土質改良材
(51)【国際特許分類】
C09K 17/42 20060101AFI20220104BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20220104BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220104BHJP
B01J 20/16 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09K17/42 H
C09K17/48 H
B01J20/26 D
B01J20/16
(21)【出願番号】P 2017102445
(22)【出願日】2017-05-24
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2016169524
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】390006758
【氏名又は名称】株式会社立花マテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】足立 達彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 正文
(72)【発明者】
【氏名】長岡 廉浩
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-104998(JP,A)
【文献】特開2004-002681(JP,A)
【文献】特開平11-209760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00- 17/52
B01J 20/00- 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性高分子と、液性限界が50%~350%の範囲にある吸水性粘土とを含
み、
前記吸水性粘土が、H型モンモリロナイトを含む酸性白土、及びNa型及びCa型モンモリロナイトを含むベントナイトから選択される少なくとも一つである土質改良材。
【請求項2】
前記吸水性高分子及び前記吸水性粘土の合計質量を100質量%とした場合に、前記吸水性高分子の割合が7.5~50質量%であり、前記吸水性粘土の割合が50~92.5質量%であることを特徴とする請求項1記載の土質改良材。
【請求項3】
前記吸水性高分子の割合が15~50質量%であり、前記吸水性粘土の割合が50~85質量%であることを特徴とする請求項2記載の土質改良材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質の除染作業によって発生した除去土壌は、最終処分するまでの間、中間貯蔵施設で保管、管理される。
【0003】
除去土壌を保管する前に、減容化や土壌に含まれる有機物(草木等)の腐敗による影響を防止することを目的として、有機物を篩により分別する作業が行われる。分別した土は中間貯蔵施設に収容し、篩に残った有機物は焼却を行って処分する。
【0004】
ところで、水田や畑等の除染作業により発生した除去土壌は、粘性が高く、そのままでは篩による分別作業が困難な場合も多い。
【0005】
このような土壌に対しては、土質改良材を添加し、土壌に含まれる水分を除去してサラサラの状態(篩によって土と有機物とを分別できる粘性が低い状態)にする。
【0006】
土質改良材としては、石膏を主成分とするものが存在する。しかし、このような土質改良材は、有機物とともに還元状態となることで硫化水素ガスを発生する可能性があるため、使用できる土質や場所が限定される。
【0007】
一方、硫化水素ガスが発生することのない土質改良材として、生石灰、セメント、及びマグネシウム系の土質改良材等が存在する。或いは、除去土壌に対し、特許文献1に記載された、吸水性高分子と高膨潤性粘土と水溶性高分子とを含む土壌改良材料を適用することで土壌をサラサラの状態にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の土質改良材が添加された土壌はアルカリ性を示すため、中間貯蔵後の浸出水の管理が必要となり煩雑である。また、アルカリ性の土壌に対しては吸水性高分子の吸水能力が低下するため、特許文献1に記載された土質改良材では十分な吸水効果が得られない場合もありうる。
【0010】
また、篩によって分別された土壌は、中間貯蔵施設内に積層して保管する。更には、積層した土壌の上を再掘削用の重機等が走行する可能性もある。従って、篩によって分別された土壌は、それらの作業に支障がないような所定の土質強度が求められる。
【0011】
本発明は、土壌を中性に保ちつつ、低粘性に改質し、且つ土壌に所定の土質強度を与える土質改良材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、吸水性高分子と、液性限界が50~350%の範囲にある吸水性粘土とを含む土質改良材である。
また、本発明の土質改良材は、前記吸水性高分子及び前記吸水性粘土の合計質量を100質量%とした場合に、前記吸水性高分子の割合が7.5~50質量%であり、前記吸水性粘土の割合が50~92.5質量%であることが好ましい。
また、本発明の土質改良材は、前記吸水性高分子の割合が15~50質量%であり、前記吸水性粘土の割合が50~85質量%であることが好ましい。
また、本発明の土質改良材における吸水性粘土は、H型モンモリロナイトを含む酸性白土、珪藻土、非晶質のアロフェンを含む粘土、Na型及びCa型モンモリロナイトを含むベントナイトの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、土壌を中性に保ちつつ、低粘性に改質し、且つ土壌に所定の土質強度を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例10、比較例7及び比較例8における吸水量測定試験の構成を示す概略図である。
【
図2】実施例10、比較例7及び比較例8の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
==土質改良材==
本実施形態に係る土質改良材は、吸水性高分子、及び吸水性粘土を含む。
【0016】
[吸水性高分子]
吸水性高分子は、土壌中に含まれる水分を吸収し、保水する物質である。吸水性高分子は、合成ポリマー系、または天然多糖類を用いることができる。合成ポリマー系は、たとえば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸系、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸塩の共重合系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系である。天然多糖類は、デンプン系、セルロース系(グラフト重合系及びカルボキシメチル系)、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系の高分子を用いることができる。
【0017】
本実施形態に係る土質改良材における吸水性高分子の割合は特に限定されるものでは無いが、吸水性高分子、及び吸水性粘土の合計質量を100質量%とした場合に、7.5~50質量%の範囲内であることがより好ましい。また、吸水性高分子の割合は、15~50質量%であることが更に好ましい。
【0018】
[吸水性粘土]
吸水性粘土は、土壌中に含まれる水を吸収する多孔質の物質である。本実施形態における吸水性粘土は、土壌中の土粒子の骨格を保つために膨潤度が高くない物質を用いる。
【0019】
上述の通り、土壌には所定の土質強度が求められる。ここで、膨潤度の高い吸水性粘土を含む土質改良材を用いると、吸水により吸水性粘土が局所的に膨潤し、その結果、土質強度が低くなる。そこで、膨潤度が高くない吸水性粘土を吸水性高分子と混ぜることで、吸水性を保ちつつ、土壌に所定の土質強度を与えることを可能としている。
【0020】
また、本実施形態に係る吸水性粘土は、液性限界が50~350%の範囲にある。液性限界とは、粘土粒子が保持できる水分量の割合である。
【0021】
液性限界がこの範囲の吸水性粘土は、吸水量は制限されるものの、吸水速度が速い。また、吸水後も土粒子の骨格が残るために土質強度の確保に寄与する。一方、液性限界が350%より大きい場合、吸水量は多くなるが、吸水後の粘性も高くなるため、土壌をサラサラの状態にすることができない。また、土壌の水分量が多くなると吸水性粘土が膨潤し、土粒子としての骨格を失うため、土質強度を確保することができない。また、吸水速度も遅くなる。或いは、液性限界が50%より小さい場合には、吸水性粘土の吸水量が少ないため、土壌をサラサラの状態にすることができない。なお、本実施形態において「サラサラな状態」とは、篩によって土と有機物とを分別できる程度に粘性が低い状態であり、具体的には、土が網目20mmの篩を83%以上通過できる状態である。
【0022】
本実施形態に係る吸水性粘土は、たとえば、H型モンモリロナイトを含む酸性白土(液性限界100~250%)、ケイ素系の鉱物である珪藻土(液性限界80~100%)、非晶質のアロフェンを含む粘土(丸中白土等。液性限界50~100%)、Na型及びCa型モンモリトナイトを含むベントナイト(中膨潤Na・Ca型ベントナイト。液性限界100~350%)である。なお、酸性白土は、モンモリロナイトを主成分としつつ、酸性を示す粘土である。また、吸水性粘土としては、酸性白土を酸処理してH型モンモリロナイトの量を増加させ、活性を高くした活性白土(酸性白土の一種。液性限界50~150%)を用いることも可能である。
【0023】
本実施形態に係る土質改良材における吸水性粘土の割合は、吸水性高分子、及び吸水性粘土の合計質量を100質量%とした場合に、50~92.5質量%の範囲内である。また、吸水性粘土の割合は、50~85質量%であることがより好ましい。
【0024】
[その他の添加物]
本実施形態に係る土質改良材は、その性能に影響を与えない範囲で各種の添加剤等を添加することができる。たとえば、土質改良材にゼオライトを添加することにより、除染土壌中の放射性物質や鉛等の重金属を吸着することができる。或いは、土質改良材に、増量材または土質改良強度の補強材として、若干量の炭酸カルシウム粉末、半水石膏、二水石膏、無水石膏、液性限界が50%以下の粘土等を添加してもよい。
【0025】
本実施形態に係る土質改良材は、吸水性高分子及び吸水性粘土が土壌中の水分を吸収することにより、土壌をサラサラな状態(低粘性の状態)とする。従って、粘性が高い土壌であっても、土質改良材を添加することにより低粘性となり、土が篩の目を通過できる。すなわち、この土壌が有機物を含む場合であっても、篩にかけることにより、有機物と土とを分別することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態に係る土質改良材は、土壌のpHに影響を与えない成分で構成されている。従って、土質改良材により改質された土壌は中性(pH7前後)の状態を保つことができる。よって、中間貯蔵後の浸出水の管理が不要となる。
【0027】
また、本実施形態に係る土改質材により改質された土壌は、所定の土質強度が確保されている。従って、中間貯蔵時や再掘削時の取り扱いが簡便になる。なお、本実施形態に係る所定の土質強度は、コーン指数で200kN/m2以上が好ましく、400kN/m2以上がより好ましい。
【0028】
更に、吸水性高分子は一般に高価であるため使用量を抑えることが望まれる。一方で、吸水性高分子の使用量が少ない場合には土壌に均一に混合することが難しく、吸水能力の点で問題が生じる。ここで、本実施形態に係る土質改良材は、吸水性高分子の割合を多くても50質量%に抑制してコストの低減化を図りつつ、安価な吸水性粘土を混合することによって、土壌をサラサラな状態にできるだけの吸水能力を保っている。
【0029】
また、本実施形態に係る土質改良材は、吸水性高分子及び吸水性粘土を混合することにより、吸水性高分子または吸水性粘土単体に比べ、高い吸水力を有する。
【0030】
==土質改良材の製造方法==
本実施形態に係る土質改良材の製造方法は、吸水性高分子と吸水性粘土を上記の割合で混合するものであれば、特に限定されるものではない。
【0031】
==土質改良材の使用方法==
本実施形態に係る土質改良材は、たとえば、除染土壌に直接添加し、短時間(たとえば1分間~数分間)の攪拌を行うことにより使用される。実際の作業現場では、除染土壌に土質改良材を添加し、重機によって攪拌することでもよい。本実施形態に係る土質改良材を用いる場合、攪拌後の養生時間が不要となるため、効率的な分別処理が可能となる。
【0032】
また、除染土壌に対する土質改良材の添加量は特に限定されるものではないが、従来の土質改良材よりも少量で効果を得ることができる。たとえば、生石灰は、土壌に対して80kg/tonの添加量で養生時間が12時間必要であった。一方、本実施形態に係る土質改良材は、土壌に対して30kg/tonの添加量で養生時間が不要である。
【0033】
本実施形態に係る土質改良材を用いる対象は、除染土壌に限られない。たとえば、河川や湖沼の底泥(泥土)、又はシールド工事や打ち杭工事等の際に発生する建設泥土等を挙げることができる。
【0034】
==実施例==
<土質改良材の効果>
実施例1~19及び比較例1~6により上記実施形態に係る土質改良材の効果を確認した。
【0035】
土質改良材を添加する土壌(試料土)について、実施例1~9及び比較例1~6は水田(広島県産)から採取した土に加水して含水比40%に調整したものを用いた。実施例10~19は、東尾久土に加水して含水比37%に調整したものを用いた。
【0036】
試験手順は、試料土3~6kgに対し、30kg/tonの各土質改良材を添加し、ホバートミキサーで30秒攪拌、数秒間の手混ぜ補助後、更にホバートミキサーで30秒攪拌した。なお、比較例1は土質改良材を添加していないため、攪拌作業は行っていない。
【0037】
その後、試料土を網目20mmの篩にかけ、篩を通過した試料土の重量を測定し、透過率を求めた。透過率は、試料土全体の重量に対する篩を通過した試料土の重量の割合である。
【0038】
また、篩を通過した処理土を常温で1時間放置させた後、土質強度及びpHの測定を行った。
【0039】
土質強度は、コーン指数として求めた。コーン指数の測定試験は、「締固めた土のコーン指数試験」(JIS A 1228,JGS 0176)に基づいて行った。pHの測定は、「土懸濁液のpH試験方法」(JGS0211)に基づいて行った。
【0040】
実施例及び比較例で用いた土質改良材は以下の通りである。なお、比較例1では、土質改良材を使用していない。
【0041】
実施例1:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、酸性白土(株式会社ホージュン製)85質量%の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
実施例2:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、活性白土(日本活性白土株式会社製)85質量%の土質改良材。活性白土の液性限界96.0%。
実施例3:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、珪藻土(石川県産)85質量%の土質改良材。珪藻土の液性限界は概ね80~100%である(たとえば、『田中政典、他3名、「破砕した珪藻の含有量が塑性図に及ぼす影響」、土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)、p.135-136』参照)。
実施例4:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例5:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)7.5質量%、酸性白土(株式会社ホージュン製)92.5質量%の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
実施例6:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)20質量%、酸性白土(株式会社ホージュン製)80質量%の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
実施例7:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)30質量%、酸性白土(株式会社ホージュン製)70質量%の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
実施例8:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)50質量%、酸性白土(株式会社ホージュン製)50質量%の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
実施例9:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、中膨潤Na・Ca型ベントナイト(株式会社ホージュン製)85質量%の土質改良材。中膨潤Na・Ca型ベントナイトの液性限界312%。
実施例10:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)95質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例11:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)7.5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)92.5質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例12:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)15質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例13:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)30質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)70質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例14:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)50質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)50質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例15:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)10質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例16:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)7.5質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)7.5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例17:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)5質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)10質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例18:ビストップD-4120K(キサンタンガム。天然多糖類の吸水性高分子。三栄源エフエフアイ株式会社製)15質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例19:アルギン酸ソーダ(天然多糖類の吸水性高分子。青島明月海藻集団有限公司製)15質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
比較例2:生石灰(菱光石灰工業株式会社製)。
比較例3:マグネシウム系改良材。
比較例4:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、トチクレー85質量%の土質改良材。トチクレーの液性限界31.5%。
比較例5:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)15質量%、ベントナイトTBS(高膨潤Na型ベントナイト。株式会社立花マテリアル製)85質量%の土質改良材(特許文献1に記載の土壌改良材料に相当するもの)。高膨潤Na型ベントナイトの液性限界515.6%。
比較例6:酸性白土(株式会社ホージュン製)100質量%(吸水性高分子を含まない)の土質改良材。酸性白土の液性限界221.6%。
【0042】
【0043】
実施例1~4から明らかなように、吸水性高分子を15質量%、酸性白土、活性白土、珪藻土、丸中白土のいずれか一つを85質量%含む土質改良材を用いた場合、土壌を中性(pH:7.3~7.8)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率100%)、且つ土壌に十分な土質強度(518~715kN/m2)を与えることができた。
【0044】
一方、比較例1~5から明らかなように、従来の土質改良材は、比較例1の場合を除き、土質強度は十分な土質強度(200kN/m2以上)を確保できたが、いずれの例でもpH8以上と高い値であり、処理後の土壌がアルカリ性であることを示していた。また、比較例1~3の場合、篩の透過率も低い(比較例1の試料土は篩を透過できなかった)という結果となった。比較例4及び比較例5の場合も、実施例の場合と比べると、篩の透過率が低い(比較例4:85%、比較例5:80%)という結果となった。
【0045】
更に、実施例5~8、及び比較例6から明らかなように、吸水性高分子の割合は7.5~50質量%(吸水性粘土の割合は50~92.5の場合)が好ましく、土質強度の観点からは、吸水性高分子の割合が15~50質量%(吸水性粘土の割合は50~85の場合)がより好ましいという結果となった。
【0046】
また、実施例9の結果から明らかなように、吸水性粘土として中膨潤Na・Ca型ベントナイトを用いた場合でも土壌を中性(pH:7.2)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率100%)、且つ土壌に十分な土質強度(507kN/m2)を与えることができた。一方、比較例5の結果から明らかなように、吸水性粘土として高膨潤Na型ベントナイトを用いた場合には十分な結果が得られなかった。すなわち、ベントナイトの一部については、本発明に係る土質改良材に用いることが可能である。
【0047】
更に、実施例11~14から明らかなように、吸水性高分子として天然多糖類(グアガム)を用いた土質改良材を使用した場合であっても、土壌を中性(pH:6.6~6.8)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率89%以上)、且つ土壌に十分な土質強度(420~583kN/m2)を与えることができた。
【0048】
また、実施例15~17から明らかなように、吸水性高分子として天然多糖類(グアガム)及び合成ポリマー系の双方を用いた土質改良材を使用した場合であっても、土壌を中性(pH6.8~6.9)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率95%以上)、且つ土壌に十分な土質強度(463~515kN/m2)を与えることができた。
【0049】
また、実施例18及び19から明らかなように、天然多糖類としてグアガム以外を用いた土質改良材を使用した場合であっても、土壌を中性(pH6.7~7.1)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率92%以上)、且つ土壌に十分な土質強度(346~494kN/m2)を与えることができた。
【0050】
なお、本試験結果から推測すると、吸水性高分子の割合が50質量%より高い(吸水性粘土の割合が50質量%より低い)場合でも本発明の効果が得られる可能性が高いと考えるが、以下の理由により、吸水性高分子の割合は50質量%以下(吸水性粘土の割合が50質量%以上)が妥当である。
【0051】
たとえば、吸水性高分子の割合が50質量%より高くなった場合、吸水により高分子が塊状になり、土壌全体の改質の妨げとなる。
【0052】
また、土壌中の水分は、まず吸水性粘土に保持され、残った水分が吸水性高分子に保持される。この際、吸水性高分子の割合が多いと吸水性高分子に保持される水分の割合が高くなる。従って、土壌をサラサラの状態にすることはできるが土質強度が弱くなる。一方、吸水性粘土は水分を保持しても土質強度を確保することができるため、吸水性粘土の割合が高いことが好ましい。更に、吸水性高分子は吸水性粘土に比べて高価であるため、吸水性高分子を多く使用することはコスト面からも好ましくない。
【0053】
<土質改良材の吸水量>
次に、実施例20及び比較例7、8により実施形態に係る土質改良材の吸水量を確認した。
図1は、吸水量測定試験の構成を示す概略図である。
【0054】
まず、吸水試験容器(φ110mm、底面は金網)の底面に濾紙を貼り付ける。そして、濾紙を貼り付けた吸水試験容器の質量を測定する。
【0055】
次に、濾紙の中心にφ60mmの円を描き、その円の内側に試料(土質改良材。0.3g~5.0g)を均一に分散させる。
【0056】
一方、水槽は水を蓄える容器である。水槽中には試料支持枠が設置される。また、水槽には試料支持枠の上端約1mmに水位が保たれるよう、排水孔が設けられている。
【0057】
水槽に水を蓄えた状態で、試料を入れた吸水試験容器を試料支持枠に載せる。この際、濾紙全体が水と馴染むように置く。
【0058】
所定時間毎(5分、10分、20分、30分)に、吸水試験容器を引き揚げ、容器の周り等に付着した水を取り除いた上で、吸水試験容器の質量を測定する。
【0059】
実施例及び比較例で用いた土質改良材は以下の通りである。
実施例20:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)1.8g、酸性白土(株式会社ホージュン製)0.2gを混合した試料(試料合計2.0g)。濾紙の吸水量2.7g。
比較例7:アクアパールDSC30(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)0.3gのみからなる試料。濾紙の吸水量2.7g。
比較例8:酸性白土(株式会社ホージュン製)5.0gのみからなる試料。濾紙の吸水量2.7g。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表2は、実施例20の実験結果、表3は、比較例7の実験結果、表4は、比較例8の実験結果である。
図2は、実施例20、比較例7及び比較例8の結果をグラフ化したものである。縦軸は吸水量(g)、横軸は、経過時間(分)である。
【0064】
図2から明らかなように、吸水性高分子及び吸水性粘土を含む試料(実施例20)は、いずれか一方のみからなる試料(比較例7、比較例8)に比べ、吸水量が多くなるという結果が得られた。
【0065】
また、実施例20の試料は、比較例7の吸水性高分子と比較例8の吸水性粘土を混合したものである。しかし、
図2から明らかなように、実施例20の各時間における吸水量は、比較例7及び比較例8の吸水量を合計した値よりも多くなっている。すなわち、本実験により、吸水性高分子と吸水性粘土を混合することで、単に組み合わせたもの以上の吸水効果が得られることが明らかとなった。
【0066】
<塩を含む試料土に対する土質改良材の効果>
実施例21~32により塩を含む試料土に対して上記実施形態に係る土質改良材を使用した場合の効果を確認した。
【0067】
土質改良材を添加する土壌(試料土)は、東尾久土に加水して含水比37%に調整したものを用いた。また、実施例21、24、27、30では、試料土に対して0.25質量%の海水源を添加した。実施例22、25、28、31では、試料土に対して0.5質量%の海水源を添加した。実施例23、26、29、32では、試料土に対して1質量%の海水源を添加した。
【0068】
試験手順は、試料土3~6kgに対し、30kg/tonの各土質改良材を添加し、ホバートミキサーで30秒攪拌、数秒間の手混ぜ補助後、更にホバートミキサーで30秒攪拌した。
【0069】
その後、試料土を網目20mmの篩にかけ、篩を通過した試料土の重量を測定し、透過率を求めた。透過率は、試料土全体の重量に対する篩を通過した試料土の重量の割合である。
【0070】
また、篩を通過した処理土を常温で1時間放置させた後、土質強度(コーン指数)及びpHの測定を行った。土質強度及びpHの測定は、実施例1等と同様の方法により行った。
【0071】
実施例で用いた土質改良材は以下の通りである。
【0072】
実施例21~23:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)15質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例24~26:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)10質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例27~29:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)7.5質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)7.5質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
実施例30~32:FSD-3(グアガム。天然多糖類の吸水性高分子。Hajidossa Nutral Gum(PVT)LTd製)5質量%、サンフレッシュYH2(合成ポリマー系の吸水性高分子。三洋化成工業株式会社製)10質量%、丸中白土(丸中白土株式会社製)85質量%の土質改良材。丸中白土の液性限界71.3%。
【0073】
【0074】
実施例21~23から明らかなように、吸水性高分子として天然多糖類(グアガム)を用いた土質改良材を使用した場合、海水源を含む土壌を中性(pH:6.9~7.1)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率90%以上)、且つ土壌に十分な土質強度(574~617kN/m2)を与えることができた。
【0075】
また、実施例24~32から明らかなように、吸水性高分子として天然多糖類(グアガム)及び合成ポリマー系の双方を用いた土質改良材を使用した場合であっても、海水源を含む土壌を中性(pH7.2~7.3)に保ちつつ、低粘性に改質し(篩の透過率92%以上)、且つ土壌に十分な土質強度(417~586kN/m2)を与えることができた。