(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ショットキーバリアダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20220104BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20220104BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220104BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220104BHJP
H01L 29/24 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01L29/86 301M
H01L29/48 M
H01L29/48 D
H01L29/48 F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/86 301P
H01L29/86 301E
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/24
(21)【出願番号】P 2017132565
(22)【出願日】2017-07-06
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
(72)【発明者】
【氏名】脇本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小石川 結樹
(72)【発明者】
【氏名】ティユ クァン トゥ
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特許第5874946(JP,B2)
【文献】特開2017-112127(JP,A)
【文献】〇佐々木 公平,脇本 大樹,ティユ クァン トゥ,小石川 結樹,倉又 朗人,東脇 正高,山腰 茂伸,トレンチMOS構造を設けたGa<SB>2</SB>O<SB>3</SB>ショットキーバリアダイオード,2017年<第64回>応用物理学会春季学術講演会[講演予稿集] The 64th JSAP Spring Meeting, 2017 [Extended Abstracts] ,公益社団法人応用物理学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/47
H01L 21/329
H01L 29/06
H01L 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ga
2O
3系単結晶からなる半導体層と、
前記半導体層とショットキー接合を形成し、前記半導体層と接触する部分がMo又はWからなるアノード電極と、
カソード電極と、
を備え、
立ち上がり電圧が0.3V以上かつ0.5V以下である、
ショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
Ga
2O
3系単結晶からなり、一方の面に開口するトレンチを有する第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の前記トレンチが開口していない面に積層された、Ga
2O
3系単結晶からなる第2の半導体層と、
前記トレンチの内面を覆う絶縁膜と、
前記トレンチ内に前記絶縁膜に覆われるように埋め込まれたトレンチMOSバリアと、
前記第1の半導体層とショットキー接合を形成し、前記第1の半導体層と接触する部分がMo又はWからなり、前記トレンチMOSバリアに接触するアノード電極と、
前記第2の半導体層に接続されたカソード電極と、
を備
え、
立ち上がり電圧が0.4V以上かつ0.6V以下である、
ショットキーバリアダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Ga2O3単結晶にPtからなるショットキー電極が接続されたショットキーバリアダイオードが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載されたショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧(順方向電圧)は1.23Vである。
【0003】
また、従来、Ga2O3単結晶上にNi/Au積層構造を有するショットキー電極が接続されたショットキーバリアダイオードが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、従来、Au、Pd、Pt、Ni、Mo、W、Ta、Nb、Cr、Ag、In、及びAlの群から選択された1つを含むショットキー電極を有するショットキーダイオードが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、Siを半導体層に用いたトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード、及びSiCを半導体層に用いたトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードが知られている(例えば、非特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kohei Sasaki et al., “Ga2O3 Schottky Barrier Diodes Fabricated by Using Single-Crystal β-Ga2O3 (010) Substrates”, IEEE Electron Device Letters, April 2013, Vol. 34, No. 4, pp. 493-495.
【文献】Toshiyuki Oishi et al., “Conduction mechanism in highly doped β-Ga2O3 (-201) single crystals grown by edge-defined film-fed growth method and their Schottky barrier diodes”, Japanese Journal of Applied Physics, 2016, 55, 030305.
【文献】T. Shimizu et al., Proceedings of 2001 International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs, Osaka, pp.243-246 (2001).
【文献】V. Khemka, et al., IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS, VOL. 21, NO. 5, MAY 2000, pp.286-288
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、ショットキーバリアダイオードは、その用途に応じて立ち上がり電圧を変更する必要がある。このため、Ga2O3系の半導体層を有するショットキーバリアダイオードについても、従来と異なる範囲の立ち上がり電圧を有するもの、特に順方向損失を低く抑えることができる低い立ち上がり電圧を有するものが求められている。
【0009】
このため、本発明の目的は、Ga2O3系半導体から構成されるショットキーバリアダイオードであって、従来のものよりも低い立ち上がり電圧を有するショットキーバリアダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]、[2]のショットキーバリアダイオードを提供する。
【0011】
[1]Ga2O3系単結晶からなる半導体層と、前記半導体層とショットキー接合を形成し、前記半導体層と接触する部分がMo又はWからなるアノード電極と、カソード電極と、を備え、立ち上がり電圧が0.3V以上かつ0.5V以下である、ショットキーバリアダイオード。
【0012】
[2]Ga2O3系単結晶からなり、一方の面に開口するトレンチを有する第1の半導体層と、前記第1の半導体層の前記トレンチが開口していない面に積層された、Ga2O3系単結晶からなる第2の半導体層と、前記トレンチの内面を覆う絶縁膜と、前記トレンチ内に前記絶縁膜に覆われるように埋め込まれたトレンチMOSバリアと、前記第1の半導体層とショットキー接合を形成し、前記第1の半導体層と接触する部分がMo又はWからなり、前記トレンチMOSバリアに接触するアノード電極と、前記第2の半導体層に接続されたカソード電極と、を備え、立ち上がり電圧が0.4V以上かつ0.6V以下である、ショットキーバリアダイオード。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Ga2O3系半導体から構成されるショットキーバリアダイオードであって、従来のものよりも低い立ち上がり電圧を有するショットキーバリアダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係るショットキーバリアダイオード1の垂直断面図である。
【
図2】
図2(a)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの垂直断面図である。
図2(b)は、トレンチMOSバリアとアノード電極が一体に形成される場合のトレンチの周辺を拡大した図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの製造工程を示す垂直断面図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの製造工程を示す垂直断面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの製造工程を示す垂直断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る、アノード電極の材料とショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7(a)、(b)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード及び比較例に係る通常のショットキーバリアダイオードの順方向特性、逆方向特性を示す。
【
図8】
図8(a)、(b)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード及び比較例に係る市販のSiCショットキーバリアダイオードの順方向特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
(ショットキーバリアダイオードの構成)
図1は、第1の実施の形態に係るショットキーバリアダイオード1の垂直断面図である。ショットキーバリアダイオード1は、縦型のショットキーバリアダイオードであり、半導体層10と、半導体層10の一方の面上に形成されたアノード電極11と、半導体層10の他方の面上に形成されたカソード電極12と、を有する。
【0017】
半導体層10は、Ga2O3系単結晶からなる平板状の部材であり、典型的にはGa2O3系基板である。半導体層10は、アンドープ(意図的にドーピングされていない)でもよいし、Si、Sn等のドーパントを含んでもよい。半導体層10のキャリア濃度は、例えば、1×1015cm-3以上かつ1×1018cm-3以下であることが好ましい。
【0018】
ここで、Ga2O3系単結晶とは、Ga2O3単結晶、又は、Al、In等の元素が添加されたGa2O3単結晶をいう。例えば、Al及びInが添加されたGa2O3単結晶である(GaxAlyIn(1-x-y))2O3(0<x≦1、0≦y<1、0<x+y≦1)単結晶であってもよい。Alを添加した場合にはバンドギャップが広がり、Inを添加した場合にはバンドギャップが狭くなる。なお、上記のGa2O3単結晶は、例えば、β型の結晶構造を有する。
【0019】
半導体層10の厚さは、ショットキーバリアダイオード1の十分な耐圧特性を確保するために、100nm以上であることが好ましい。ショットキーバリアダイオード1の耐圧は、半導体層10の厚さ及びキャリア濃度によって決定される。なお、半導体層10の厚さの上限は特に限定されないが、厚さの増加に伴って厚さ方向の電気抵抗が増加するため、要求される耐圧特性が得られる範囲でなるべく薄くすることが好ましい。
【0020】
また、半導体層10は、2層以上のGa2O3系単結晶層からなる多層構造を有してもよい。この場合、例えば、半導体層10は、Ga2O3系単結晶基板と、その上にエピタキシャル成長するGa2O3系単結晶膜から構成される。Ga2O3系単結晶膜にアノード電極11が接続され、Ga2O3系単結晶基板にカソード電極12が接続される場合、例えば、Ga2O3系単結晶膜のキャリア濃度が1×1015cm-3以上かつ1×1017cm-3以下に設定され、Ga2O3系単結晶基板のキャリア濃度が1×1017cm-3以上かつ4×1019cm-3以下に設定される。
【0021】
アノード電極11は、半導体層10と接触する部分がMo(モリブデン)又はW(タングステン)からなる。すなわち、アノード電極11が単層構造を有する場合はその全体がMo又はWからなり、多層構造を有する場合は半導体層10と接触する層がMo又はWからなる。いずれの場合も、アノード電極11のMo又はWからなる部分と半導体層10の界面にショットキー障壁が形成され、アノード電極11と半導体層10との間にショットキー接合が形成される。
【0022】
アノード電極11の半導体層10と接触する部分がMoからなる場合、ショットキーバリアダイオード1の立ち上がり電圧は0.3V以上かつ0.5V以下となる。また、アノード電極11の半導体層10と接触する部分がWからなる場合、ショットキーバリアダイオード1の立ち上がり電圧が0.3V以上かつ0.5V以下となる。
【0023】
アノード電極11のMo又はWからなる部分の厚さは、10nm以上であることが好ましい。厚さが10nmに満たない場合、ピンホールが発生して良好な整流性が得られなくなるおそれがある。アノード電極11のMo又はWからなる部分の厚さが10nm以上であれば、良好な整流性が得られる。また、アノード電極11が単層構造を有する場合、電流値が立ち上がった後の微分オン抵抗が小さくなる。
【0024】
また、アノード電極11のMo又はWからなる部分の厚さの上限については、素子の性能面からの制約はない。
【0025】
アノード電極11が積層構造を有する場合、例えば、Mo又はWからなる層の上にAu層が積層される。このAu層は、電極自体の配線抵抗を低減するために用いられる。Au層の厚さは、配線抵抗を下げるためには厚いほどよいが、製造コストの点から10μm以下であることが好ましい。
【0026】
カソード電極12は、半導体層10と接触する部分がGa2O3系単結晶とオーミック接合を形成するTi等の金属からなり、半導体層10とオーミック接合を形成する。すなわち、カソード電極12が単層構造を有する場合はその全体がTi等からなり、多層構造を有する場合は半導体層10と接触する層がTi等からなる。カソード電極12の多層構造としては、例えば、Ti/Au又はTi/Alが挙げられる。
【0027】
ショットキーバリアダイオード1においては、アノード電極11とカソード電極12との間に順方向の電圧(アノード電極11側が正電位)を印加することにより、半導体層10から見たアノード電極11と半導体層10との界面のエネルギー障壁が低下し、アノード電極11からカソード電極12へ電流が流れる。一方、アノード電極11とカソード電極12との間に逆方向の電圧(アノード電極11側が負電位)を印加したときは、ショットキー障壁により、電流は流れない。
【0028】
(ショットキーバリアダイオードの製造方法)
以下に、ショットキーバリアダイオード1の製造方法の一例について説明する。
【0029】
まず、FZ(Floating Zone)法やEFG(Edge Defined Film Fed Growth)法等の融液成長法により育成したGa2O3系単結晶のバルク結晶をスライスし、表面を研磨することにより、半導体層10としてのGa2O3系基板を形成する。
【0030】
次に、半導体層10の表面と裏面に、硫酸過水(例えば、体積比が硫酸:過酸化水素:水=4:1:1)を用いた前処理を施す。また、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、バッファードフッ酸等の硫酸過水以外の処理液を用いる場合は、それらの処理液による処理の後に硫酸過水を用いた処理を行う。前処理の最後に硫酸過水を用いた処理を行わない場合、アノード電極11の材料に依存せずにショットキーバリアダイオード1の立ち上がり電圧が0.8~1.0V程度に固定されてしまうおそれがある。
【0031】
次に、真空蒸着等により、半導体層10の表面と裏面に、それぞれアノード電極11とカソード電極12を形成する。アノード電極11は、フォトエッチング等により円形等の所定の形状にパターニングされてもよい。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
(トレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの構成)
図2(a)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の垂直断面図である。トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2は、トレンチMOS領域を有する縦型のショットキーバリアダイオードである。
【0033】
トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2は、積層された第1の半導体層20と第2の半導体層21を有し、第1の半導体層20にはアノード電極23が接続され、第2の半導体層21にはカソード電極24が接続される。
【0034】
第1の半導体層20は、第2の半導体層21の反対側の面27に開口するトレンチ22を有する。トレンチ22の内面は絶縁膜25に覆われ、トレンチ22内に絶縁膜25に覆われるようにトレンチMOSバリア26が埋め込まれている。アノード電極23は、トレンチMOSバリア26に接触する。
【0035】
また、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2は、電極端部での絶縁破壊を抑制し、耐圧を向上させるためにフィールドプレート構造を有する。第1の半導体層20の面27上のアノード電極23の周りに、SiO2等の誘電体からなる誘電体膜28が設けられ、その誘電体膜28の上にアノード電極23の縁が乗り上げている。
【0036】
トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2においては、アノード電極23とカソード電極24との間に順方向電圧(アノード電極23側が正電位)を印加することにより、第1の半導体層20から見たアノード電極23と第1の半導体層20との界面のエネルギー障壁が低下し、アノード電極23からカソード電極24へ電流が流れる。
【0037】
一方、アノード電極23とカソード電極24との間に逆方向電圧(アノード電極23側が負電位)を印加したときは、ショットキー障壁により、電流は流れない。アノード電極23とカソード電極24との間に逆方向電圧を印加すると、アノード電極23と第1の半導体層20との界面及び絶縁膜25と第1の半導体層20との界面から空乏層が拡がる。
【0038】
一般的に、ショットキーバリアダイオードの逆方向リーク電流の上限は1μAとされている。本実施の形態では、1μAのリーク電流が流れるときの逆方向電圧を耐圧と定義する。
【0039】
例えば、“松波弘之、大谷昇、木本恒暢、中村孝著、「半導体SiC技術と応用」、第2版、日刊工業新聞社、2011年9月30日、p.355”に記載された、SiCを半導体層とするショットキーバリアダイオードにおける逆方向リーク電流のショットキー界面電界強度依存性のデータによれば、逆方向リーク電流の電流密度が0.0001A/cm2のときのショットキー電極直下の電界強度は、およそ0.8MV/cmである。ここで、0.0001A/cm2は、サイズが1mm×1mmであるショットキー電極に1μAの電流が流れたときのショットキー電極直下の電流密度である。
【0040】
このため、半導体材料自体の絶縁破壊電界強度が数MV/cmあったとしても、ショットキー電極直下の電界強度が0.8MV/cmを超えると、1μAを超えるリーク電流が流れることになる。
【0041】
例えば、ショットキー電極直下の電界強度を抑制するための特別な構造を有さない従来のショットキーバリアダイオードにおいて1200Vの耐圧を得るためには、ショットキー電極直下の電界強度を0.8MV/cm以下に抑えるために、半導体層のドナー濃度を1015cm-3台にまで下げ、かつ半導体層を非常に厚くする必要がある。そのため、導通損失が非常に大きくなり、高耐圧かつ低損失のショットキーバリアダイオードを作製することは困難である。
【0042】
本実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2は、トレンチMOS構造を有するため、半導体層の抵抗を増加することなく、高い耐圧を得ることができる。すなわち、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2は、高耐圧かつ低損失のショットキーバリアダイオードである。
【0043】
なお、高耐圧かつ低損失のショットキーバリアダイオードとして、ジャンクションバリアショットキー(JBS)ダイオードが知られているが、p型のGa2O3は製造が困難であるため、Ga2O3はp型領域が必要なJBSダイオードの材料に向いていない。
【0044】
第2の半導体層21は、ドナーとしてのSi、Sn等のIV族元素を含むn型のGa2O3系単結晶からなる。第2の半導体層21のドナー濃度は、例えば、1.0×1018以上かつ1.0×1020cm-3以下である。第2の半導体層21の厚さTsは、例えば、10~600μmである。第2の半導体層21は、例えば、Ga2O3系単結晶基板である。
【0045】
第1の半導体層20は、ドナーとしてのSi、Sn等のIV族元素を含むn型のGa2O3系単結晶からなる。第1の半導体層20のドナー濃度は、第2の半導体層21のドナー濃度よりも低い。第1の半導体層20は、例えば、Ga2O3系単結晶基板である第2の半導体層21上にエピタキシャル成長したエピタキシャル層である。
【0046】
なお、第1の半導体層20と第2の半導体層21との間に、高濃度のドナーを含む高ドナー濃度層を形成してもよい。すなわち、第1の半導体層20と第2の半導体層21を、高ドナー濃度層を介して積層してもよい。この高ドナー濃度層は、例えば、基板である第2の半導体層21上に第1の半導体層20をエピタキシャル成長させる場合に用いられる。第1の半導体層20の成長初期は、ドーパントの取り込み量が不安定であったり、基板である第2の半導体層21からのアクセプタ不純物の拡散があったりするため、第2の半導体層21上に第1の半導体層20を直接成長させると、第1の半導体層20の第2の半導体層21との界面に近い領域が高抵抗化する場合がある。このような問題を避けるため、高ドナー濃度層が用いられる。高ドナー濃度層の濃度は、例えば、第1の半導体層20よりも高い濃度に設定され、より好ましくは、第2の半導体層21よりも高い濃度に設定される。
【0047】
第1の半導体層20のドナー濃度が増加するほど、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の各部の電界強度が増加する。第1の半導体層20中のアノード電極23直下の領域中の最大電界強度、第1の半導体層20中の最大電界強度、及び絶縁膜25中の最大電界強度を低く抑えるためには、第1の半導体層20のドナー濃度がおよそ1.0×1017cm-3以下であることが好ましい。一方、ドナー濃度が小さくなるほど第1の半導体層20の抵抗が大きくなり、順方向損失が増加してしまうため、例えば1200V以下の耐圧を確保する場合には、3.0×1016cm-3以上であることが好ましい。また、より高い耐圧を得るためには、ドナー濃度を例えば1.0×1016cm-3程度まで下げてもよい。
【0048】
第1の半導体層20の厚さTeが増加するほど、第1の半導体層20中の最大電界強度及び絶縁膜25中の最大電界強度が低減する。第1の半導体層20の厚さTeをおよそ3μm以上にすることにより、第1の半導体層20中の最大電界強度及び絶縁膜25中の最大電界強度を効果的に低減することができる。これらの電界強度の低減と、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の小型化の観点から、第1の半導体層20の厚さTeはおよそ3μm以上かつ9μm以下であることが好ましい。
【0049】
トレンチ22の深さDtによってトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の各部の電界強度が変化する。第1の半導体層20中のアノード電極23直下の領域中の最大電界強度、第1の半導体層20中の最大電界強度、及び絶縁膜25中の最大電界強度を低く抑えるためには、トレンチ22の深さDtがおよそ1.5μm以上かつ6μm以下であることが好ましい。
【0050】
トレンチ22の幅Wtは、狭いほど導通損失を低減できるが、狭いほど製造難易度が上がり、それに起因して製造歩留まりが低下するため、0.3μm以上かつ5μm以下であることが好ましい。
【0051】
第1の半導体層20の隣接するトレンチ22の間のメサ形状部分の幅Wmが低減するほど、第1の半導体層20中のアノード電極23直下の領域中の最大電界強度が低減する。第1の半導体層20中のアノード電極23直下の領域中の最大電界強度を低く抑えるためには、メサ形状部分の幅Wmが5μm以下であることが好ましい。一方、メサ形状部分の幅が小さいほどトレンチ22の製造難度が上がるため、メサ形状部分の幅Wmが0.25μm以上であることが好ましい。
【0052】
絶縁膜25の誘電率が増加するほど、絶縁膜25中の最大電界強度が低減するため、絶縁膜25は誘電率が高い材料からなることが好ましい。例えば、絶縁膜25の材料としてAl2O3(比誘電率がおよそ9.3)、HfO2(比誘電率がおよそ22)を用いることができるが、誘電率の高いHfO2を用いることが特に好ましい。
【0053】
また、絶縁膜25の厚さTiが増加するほど、第1の半導体層20中の最大電界強度が低減するが、絶縁膜25中の最大電界強度およびアノード電極23直下の領域中の最大電界強度が増加する。製造容易性の観点からは、絶縁膜25の厚さは小さい方が好ましく、300nm以下であることがより好ましい。ただし、当然ながら、トレンチMOSバリア26と第1の半導体層20の間に直接電流がほとんど流れない程度の厚さは必要である。
【0054】
アノード電極23と誘電体膜28の重なり長さLFPは、フィールドプレート構造による耐圧向上の効果を十分に発揮させるため、20μm以上であることが好ましい。
【0055】
アノード電極23は、アノード電極23の第1の半導体層20と接触する部分がMo又はWからなり、第1の半導体層20とショットキー接触する。
【0056】
トレンチMOSバリア26の材料は、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、高濃度でドーピングされた多結晶Siや、Ni、Au等の金属を用いることができる。ただし、
図2(a)に示されるように、トレンチMOSバリア26とアノード電極23が一体に形成される場合は、アノード電極23の第1の半導体層20と接触する部分がMo又はWからなるため、トレンチMOSバリア26の表層もMo又はWからなる。
【0057】
図2(b)は、トレンチMOSバリア26とアノード電極23が一体に形成される場合のトレンチ22の周辺を拡大した図である。アノード電極23は第1の半導体層20と接触する第1の層23aとその上に形成される第2の層23bを有する。トレンチMOSバリア26は、絶縁膜25に接触する第1の層26aとその上に形成される第2の層26bを有する。
【0058】
アノード電極23の第1の層23aとトレンチMOSバリア26の第1の層26aは連続した一枚のMo又はWからなる膜である。また、アノード電極23の第2の層23bとトレンチMOSバリア26の第2の層26bも、連続した一枚のAu等の導体からなる膜である。
【0059】
アノード電極23の第1の半導体層20と接触する部分(第1の層23a)がMo又はWからなる場合、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の立ち上がり電圧は0.4V以上かつ0.6V以下となる。アノード電極の材料が同じであっても第1の実施の形態に係るショットキーバリアダイオード1のよりも立ち上がり電圧が少し高くなるのは、トレンチMOS構造を設けることによって、メサ形状部分にポテンシャルバリアが形成されるためである。これは、メサ形状部分の幅Wmに依存し、幅Wmが小さくなるほど立ち上がり電圧が大きくなる。
【0060】
トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2中の電界強度は、上述のように、隣接する2つのトレンチ22の間のメサ形状部分の幅、トレンチ22の深さDt、絶縁膜25の厚さTi等の影響を受けるが、トレンチ22の平面パターンにはほとんど影響を受けない。このため、第1の半導体層20のトレンチ22の平面パターンは特に限定されない。
【0061】
カソード電極24は、第2の半導体層21とオーミック接触する。カソード電極24は、Ti等の金属からなる。カソード電極24は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/Au又はTi/Al、を有してもよい。カソード電極24と第2の半導体層21を確実にオーミック接触させるため、カソード電極24の第2の半導体層21と接触する層がTiからなることが好ましい。
【0062】
(トレンチMOS型ショットキーバリアダイオードの製造方法)
以下に、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の製造方法の一例を示す。
【0063】
図3(a)~(c)、
図4(a)~(c)、
図5(a)、(b)は、第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の製造工程を示す垂直断面図である。
【0064】
まず、
図3(a)に示されるように、Ga
2O
3系単結晶基板等の第2の半導体層21上に、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法等によりGa
2O
3系単結晶をエピタキシャル成長させ、第1の半導体層20を形成する。
【0065】
次に、
図3(b)に示されるように、フォトリソグラフィとドライエッチング等により第1の半導体層20の上面にトレンチ22を形成する。
【0066】
トレンチ22の形成にドライエッチングを用いる場合の好ましい条件は、例えば、エッチングガスがBCl3(30sccm)、圧力が1.0Pa、アンテナ出力が160W、バイアス出力が17W、時間が90分である。
【0067】
また、トレンチ22の形成後、トレンチの内面の荒れやプラズマダメージを除去するため、リン酸での処理を行うことが好ましい。典型的には、130~140℃に加熱したリン酸へ5~30分浸漬することが好ましい。
【0068】
次に、
図3(c)に示されるように、ALD(Atomic Layer Deposition)法等により、トレンチ22の内面を覆うように第1の半導体層20の上面にHfO
2等からなる絶縁膜25を形成する。HfO
2の成膜条件は特に限定されないが、例えば、Hfの原料としてTDMAHを、酸化剤としてO
3を用い、TDMAHを0.25秒間、O
3を0.15秒間ずつ交互に供給して成膜する。そのときの基板温度は250℃とする。
【0069】
次に、
図4(a)に示されるように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の平坦化処理により、絶縁膜25のトレンチ22の外側の部分(トレンチ22の間のメサ形状部分上の部分)を除去する。
【0070】
次に、
図4(b)に示されるように、第1の半導体層20の面27上に誘電体膜28を形成する。例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)又はスパッタによりSiO
2膜を面27の全面に堆積させた後、フッ素系のドライエッチング、又はフッ酸若しくはバッファードフッ酸によるウェットエッチングによりSiO
2膜をパターニングすることにより、誘電体膜28を形成する。
【0071】
次に、
図4(c)に示されるように、電子ビーム蒸着等により、第2の半導体層21の底面にTi/Au積層構造等を有するカソード電極24を形成する。その後、窒素雰囲気中で450℃1分の加熱処理を行う。この加熱処理によって、カソード電極24と第2の半導体層21の間のコンタクト抵抗が減少する。
【0072】
次に、
図5(a)に示されるように、電子ビーム蒸着等により、Cu/Au/Ni積層構造等を有するトレンチMOSバリア26とアノード電極23を連続的、一体的に形成する。
【0073】
トレンチMOSバリア26とアノード電極23の蒸着の前に、CMPの研磨剤などを除去する目的で硫酸過水による処理を行う。塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、バッファードフッ酸等の硫酸過水以外の処理液を用いる場合は、立ち上がり電圧が0.8~1.0V程度で固定されることを防ぐため、それらの処理液による処理の後に硫酸過水を用いた処理を行う。
【0074】
次に、
図5(b)に示されるように、フォトリソグラフィとウェットエッチング等により、アノード電極23を円形等の所定の形状にパターニングする。
【0075】
(実施の形態の効果)
上記第1、2の実施の形態によれば、ショットキー電極としてのアノード電極の材料にMo又はWを用いることにより、Ga2O3系単結晶からなる半導体層を有するショットキーバリアダイオードにおいて、従来よりも低い立ち上がり電圧を得ることができる。
【実施例1】
【0076】
第1の実施の形態に係るショットキーバリアダイオード1と同様の構造を有するショットキーバリアダイオードにおいて、ショットキー電極であるアノード電極の材料を変えて立ち上がり電圧の変化を調べた。
【0077】
本実施例においては、半導体層として、ドナー濃度が1017cm-3程度、厚さが650μmのアンドープ(ドナーを意図的に添加していない)のGa2O3基板を用いた。
【0078】
また、アノード電極として、直径が200μmの円形の電極を電子ビーム蒸着により形成した。アノード電極の蒸着前には、半導体層の表面を硫酸過水で処理した。アノード電極の材料としては、Al、Ti、Mo、W、Fe、Cu、Ni、Pt、Pdを用いた。
【0079】
また、カソード電極として、厚さ50nmのTi膜と厚さ200nmのAu膜が積層されたTi/Au積層構造を有する電極を電子ビーム蒸着により半導体層の一部に形成した。
【0080】
図6は、実施例1に係る、アノード電極の材料とショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧との関係を示すグラフである。
【0081】
図6は、アノード電極の材料がAl、Ti、Mo、W、Fe、Cu、Ni、Pt、Pdのときのショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧がそれぞれおよそ0V、0.05V、0.35V、0.4V、0.55V、0.65V、0.85V、0.95V、0.95Vであることを示している。
【0082】
これらの材料のうち、Ni、PtはGa2O3系単結晶からなる半導体層に接合されるショットキー電極の材料としては公知であるので、これらを用いる場合とは異なる立ち上がり電圧が得られるMo、Wは、新しいショットキー電極の材料として有用である。
【0083】
アノード電極がMoからなる場合、ショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧はばらつきを含めて0.3V以上かつ0.5V以下となる。また、アノード電極がWからなる場合も、ショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧はばらつきを含めて0.3V以上かつ0.5V以下となる。
【0084】
なお、Mo、Wよりも立ち上がり電圧の低い材料としてAgがあるが、複数回の試験を実施した結果、立ち上がり電圧の繰り返し再現性がきわめて低く、ショットキーバリアダイオードの電極材料には適していないことが確認された。
【実施例2】
【0085】
第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2を製造し、メサ形状部分の幅Wmとデバイス特性の関係を調べ、また、トレンチが形成されていない通常のショットキーバリアダイオードとのデバイス特性の比較を行った。
【0086】
本実施例に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の構成は、以下の通りである。
【0087】
第2の半導体層21として、厚さ570μm、ドナー濃度6×1018cm-3のSnドープGa2O3基板を用いた。第1の半導体層20として、厚さ5μm、ドナー濃度6×1016cm-3のSiドープGa2O3膜を用いた。
【0088】
トレンチ22の深さDtは2.3μm、幅Wtは4μm、メサ形状部分の幅Wmは2~5μm、アノード電極23と誘電体膜28の重なり長さLFPは50μmとした。絶縁膜25として、厚さ50nmのHfO2膜を用いた。
【0089】
トレンチMOSバリア26及びアノード電極23として、厚さ30nmのMo膜と厚さ3000μmのAu膜と厚さ50nmのNi膜が積層されたMo/Au/Ni積層膜を用いた。トレンチ22内には、Mo膜とAu膜が埋め込まれた。アノード電極23となる部分は、直径400μmの円形にパターニングした。最上層のNi膜は、このパターニングで用いるフォトレジストの密着性を上げるために形成した。
【0090】
カソード電極24として、厚さ50nmのTi膜と厚さ200nmのAu膜が積層されたTi/Au積層膜を用いた。カソード電極24はSnドープGa2O3基板の裏面全面に形成し、SnドープGa2O3基板との接触抵抗を低減させるために450℃、1分間のアニール処理を施した。
【0091】
また、比較のために、トレンチが形成されていない試料(通常のショットキーバリアダイオード)も同じエピウェハ上に作製した。
【0092】
図7(a)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2及び比較例に係る通常のショットキーバリアダイオードの順方向特性を示す。
【0093】
図中の「トレンチSBD」はトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2を意味し、「SBD」は比較例としてのトレンチが形成されていない通常のショットキーバリアダイオードを意味する。また、「2μm」、「3μm」、「4μm」、「5μm」は、それぞれトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2のメサ形状部分の幅Wmを示す。
【0094】
図7(a)は、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2において、メサ形状部分の幅W
mの縮小に伴ってオン抵抗が上昇することを示している。これは、アノード電極23下の領域における電流経路であるメサ形状部分の面積に対して非電流経路であるトレンチ22内の部分の面積が相対的に増加したためであり、合理的な結果と言える。
【0095】
一方で、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の立ち上がり電圧はメサ形状部分の幅Wmにほとんど依存せず、いずれもおよそ0.55Vであった。ばらつきを含めると、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の立ち上がり電圧は0.4V以上かつ0.6V以下となる。
【0096】
また、上述のように、Wはショットキーバリアダイオード1のアノード電極の材料としてMoと近い特性を有するため、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2においてMoの代わりにWを用いる場合も近い特性を発揮し、立ち上がり電圧はばらつきを含めて0.4V以上かつ0.6V以下となる。
【0097】
第2の実施の形態に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2のようなトレンチMOS型ショットキーバリアダイオードにおいては、立ち上がり電圧が0.4V以上であれば逆方向リークを効果的に抑えられるため、Mo又はWをアノード電極の材料に用いることにより、逆方向リークを効果的に抑えつつ、立ち上がり電圧を小さくすることができる。
【0098】
また、
図7(a)は、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の方が通常のショットキーバリアダイオードよりもオン抵抗が高いことを示している。これは、トレンチMOS構造を設けることで電流経路が狭くなったためであり、これも合理的な結果と言える。
【0099】
図7(b)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2及び比較例に係る通常のショットキーバリアダイオードの逆方向特性を示す。
【0100】
図7(b)によれば、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2のリーク電流はトレンチが形成されていない通常のショットキーバリアダイオードのリーク電流よりも数桁低く、トレンチMOS構造による耐圧上昇効果が確認された。また、メサ形状部分の幅W
mが狭いほど、逆方向リーク電流が小さくなることがわかった。
【0101】
図8(a)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2及び比較例に係る市販のSiCショットキーバリアダイオードの順方向特性を示す。なお、
図8(a)及び後述する
図8(b)に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2のメサ形状部分の幅W
mは、2μmである。
【0102】
図中の「SBD1」、「SBD2」、「SBD3」は、異なる3種の市販のSiCショットキーバリアダイオードを意味する。
【0103】
図8(a)によれば、アノード電極にMoを用いたトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の立ち上がり電圧が、市販のSiCショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧よりも低く、低損失で動作することが確認された。
【0104】
図8(b)は、実施例2に係るトレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2及び比較例に係る市販のSiCショットキーバリアダイオードの逆方向特性を示す。
【0105】
図8(b)によれば、トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード2の逆方向リーク電流は市販のSiCショットキーバリアダイオードと同等に抑えられている。
【0106】
図8(a)、(b)に示される結果は、SiCショットキーバリアダイオードの性能をGa
2O
3ショットキーバリアダイオードの性能が超えた初めての動作実証である。
【0107】
以上、本発明の実施の形態、実施例を説明したが、本発明は、上記実施の形態、実施例に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0108】
また、上記に記載した実施の形態、実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態、実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0109】
1…ショットキーバリアダイオード、 2…トレンチMOS型ショットキーバリアダイオード、 10…半導体層、 11、23…アノード電極、 12、24…カソード電極、 20…第1の半導体層、 21…第2の半導体層、 22…トレンチ、 25…絶縁膜、 26…トレンチMOSバリア、 28…誘電体膜