(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】搬送器具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20220104BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01L21/68 U
B65D85/30 500
H01L21/68 V
(21)【出願番号】P 2018018870
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】中井 英嗣
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-287957(JP,A)
【文献】特開平11-316463(JP,A)
【文献】特開2001-48175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を載置又は収納した状態で液体に浸漬される搬送器具であって、
板状又は棒状の錘を収容する上面開口の錘収容溝と、
前記錘収容溝の両内側面間を連絡し、前記錘収容溝を長手方向で複数に分割する区画壁と、を備える搬送器具。
【請求項2】
前記錘収容溝は、前記搬送器具の平面形状の1対の対向辺に配置されて平行に延びると共に、それら両錘収容溝の前記区画壁同士が同一平面内に配置され、
前記区画壁と同一面内に配置されて、両前記錘収容溝の側壁の間を連絡する連絡リブを備える請求項1に記載の搬送器具。
【請求項3】
前記錘収容溝の内面から突出して上下方向に延び、前記錘に当接する寄せリブを備える請求項1又は2に記載の搬送器具。
【請求項4】
前記寄せリブは、前記錘収容溝内の上寄り位置に配置され、
前記錘収容溝の上下方向の途中位置から下側に亘って切欠部が形成されている請求項3に記載の搬送器具。
【請求項5】
前記錘収容溝に、金属製の複数の錘が収容されている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の搬送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を載置又は収納した状態で搬送される搬送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送器具として、荷物を載置した状態で液体に浸漬されるトレーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-67078号公報(
図6,
図7、段落[0014],[0015])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の搬送器具は、浸漬処理の液体中で簡単に動いてしまい、浸漬処理を安定して行うことができなという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、浸漬処理を安定して行うことが可能な搬送器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、荷物を載置又は収納した状態で液体に浸漬される搬送器具であって、板状又は棒状の錘を収容する上面開口の錘収容溝と、前記錘収容溝の両内側面間を連絡し、前記錘収容溝を長手方向で複数に分割する区画壁と、を備える搬送器具である。
【0007】
請求項2の発明は、前記錘収容溝は、前記搬送器具の平面形状の1対の対向辺に配置されて平行に延びると共に、それら両錘収容溝の前記区画壁同士が同一平面内に配置され、前記区画壁と同一面内に配置されて、両前記錘収容溝の側壁の間を連絡する連絡リブを備える請求項1に記載の搬送器具である。
【0008】
請求項3の発明は、前記錘収容溝の内面から突出して上下方向に延び、前記錘に当接する寄せリブを備える請求項1又は2に記載の搬送器具である。
【0009】
請求項4の発明は、前記寄せリブは、前記錘収容溝内の上寄り位置に配置され、前記錘収容溝の上下方向の途中位置から下側に亘って切欠部が形成されている請求項3に記載の搬送器具である。
【0010】
請求項5の発明は、前記錘収容溝に、金属製の複数の錘が収容されている請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の搬送器具である。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1及び5の発明]
本発明の搬送器具では、錘収容溝に収容される板状又は棒状の錘により、その錘収容溝が延びている広範囲が押えられて安定し、液体中であっても従来のように簡単に動くことがなくなる。これにより、浸漬処理を安定して行うことができる。また、錘収容溝は、上面が開口しているので錘の挿抜を簡単に行うことができる。しかも、錘収容溝を長手方向で複数に分割する区画壁を備えているので、錘収容溝の対向面間が接近又は離間するような変形が抑えられる。
【0012】
[請求項2の発明]
請求項2の搬送器具では、その平面形状の1対の対向辺の広範囲が、錘収容溝に収容される錘によって押さえられる。また、それら両錘収容溝の区画壁同士が同一平面内に配置され、さらに区画壁の同一平面内に両錘収容溝の側壁の間を連絡する連絡リブが配置されているので、区画壁と連絡リブとが一体になって搬送器具全体の補強が図られる。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の搬送器具では、寄せリブにより錘収容溝内における錘のガタが抑えられ、搬送器具が安定する。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の搬送器具では、錘収容溝内に入り込んだ液体や異物が切欠部から排出される。また、寄せリブは錘収容溝内の上寄りに配置されているので、錘の錘収容溝からの飛び出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(A)第2側壁の断面形状を示す一部破断の斜視図,(B)第1側壁の断面形状を示す一部破断の斜視図
【
図5】錘収容溝内を示す搬送器具の一部破断の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図8に基づいて説明する。本実施形態の搬送器具10は、荷物を載置して搬送するトレーであって、上下方向に偏平で下面が開口した、所謂、台箱構造をなしている。具体的には、搬送器具10は、樹脂の射出成形品であって、第1水平方向H1で対向する1対の第1側壁11,11と、第1水平方向H1と直交する第2水平方向H2で対向する1対の第2側壁12,12とからなる枠壁13を備える。また、第2側壁12は第1側壁11より長くなっていて、枠壁13の平面形状は第1水平方向H1に長い長方形になっている。
【0017】
枠壁13の内側上部には、荷物が載置される載置壁14が備えられている。載置壁14には、長方形の板状をなし、複数の貫通孔15が縦横に並べて形成されて全体がメッシュ構造になっている。なお、貫通孔15の断面形状は、正方形になって、その正方形の縦横の辺が第1水平方向H1と第2水平方向H2とに平行になっている。
【0018】
載置壁14の上面は第1側壁11及び第2側壁12の上面より僅かに下方に位置している。詳細には、
図2(A)に示すように、各第2側壁12には、上端寄り位置より上側部分を、内側に段付き状に肉厚にして厚肉部20が形成されている。そして、厚肉部20の下端部に載置壁14の長辺部分が接続され、厚肉部20の下面と載置壁14の下面とが面一になっている。また、厚肉部20を含む第2側壁12の上面12Bには、外縁部より内縁部を段付き状に高くして上面突条12Cが形成されている。
【0019】
図1に示すように、各第1側壁11の横方向の両端部を除く全体から外側に持ち手片16が直角曲げされている。持ち手片16は、第1側壁11の横方向(第2水平方向H2)に延びる帯板状をなし、この持ち手片16にも、載置壁14と同様の複数の貫通孔15が形成されている。また、
図4に示すように、持ち手片16の外縁全体から補強リブ16Lが垂下している。さらに、持ち手片16の横方向の両端部の下方には、第1側壁11の外面から突出して上下方向に延びるリブ17,17の備えられている。そして、各リブ17の上端部が、補強リブ16Lに連続している。
【0020】
図1に示すように、各第1側壁11の横方向の両端部から内側にコーナー上面壁21,21が直角曲げされている。また、コーナー上面壁21を含む第1側壁11の上面11Bには、外縁部より内縁部を段付き状に高くして上面突部11Cが形成されている。そして、上面突部11Cの上面と前述の上面突条12Cの上面とが面一になっていると共に、それらを除いた第1側壁11及び第2側壁12の上面11B,12Bの外縁部同士も面一になっている。また、持ち手片16の上面も第1側壁11の上面11Bと面一になっている。さらには、コーナー上面壁21には、載置壁14と同様の複数の貫通孔15が形成されている。
【0021】
各第1側壁11の両コーナー上面壁21,21の間には、溝側壁24が差し渡されて第1側壁11と対向している。
図2(A)に示すように、溝側壁24の上端面は、上面突部11Cの上面と面一に配置され、溝側壁24のうち枠壁13の内側を向いた内側面は、コーナー上面壁21の内側面と面一になっている。また、
図4に示すように、溝側壁24の下端部は、載置壁14より下方に位置している。そして、溝側壁24の上端寄り位置に、載置壁14の短辺部分の両端部を除いた全体が接続されている。また、
図2(B)に示すように、両コーナー上面壁21,21の先端部の下面からは、溝側壁24と同一面内に配置された補完壁22,22が垂下されていて、それら補完壁22,22の下端部に載置壁14の短辺部分の両端部が接続されている。
【0022】
図4に示すように、溝側壁24には、載置壁14から下方に離れた途中位置から下端部までの間に、後に詳説する複数の切欠部27が形成されている。そして、切欠部27,27の間に残された溝側壁24の下端部から底壁25が直角曲げされて第1側壁11の下端寄り位置に接続されている。これにより、溝側壁24と第1側壁11とに挟まれ、下端部に底壁25を有する錘収容溝30が構成されている。また、
図3及び
図5に示すように、錘収容溝30の両端部では、各コーナー上面壁21と各コーナー上面壁21から垂下する溝端部壁26とによって溝側壁24と第1側壁11が連絡されている。さらに、錘収容溝30を長手方向の2箇所には、第1側壁11と溝側壁24との間を連絡する区画壁31,31が備えられて、それら区画壁31,31により錘収容溝30が3つの分割溝30Aに3等分されている。
【0023】
図6に示すように、切欠部27は、各分割溝30Aの長手方向の中央と両端部とに形成されている。各分割溝30Aの中央の切欠部27は、溝側壁24の一部を横長の長方形に切除すると共に、それと同じ横幅で底壁25を溝側壁24から第1側壁11まで切除してなる。また、溝側壁24における切欠部27の上側両角部は、円弧状に面取りされている。さらに、各分割溝30Aの両端部の切欠部27は、中央の切欠部27を半分にした形状をなし、隣り合う分割溝30A,30Aの間で端部の切欠部27,27同士が合わさって中央の切欠部27と略同一の形状になっている。また、溝端部壁26及び区画壁31の下面は、切欠部27の上部内面と面一になっている。なお、
図4に示すように、第1側壁11の内面には、溝側壁24における切欠部27の外形と同一形状の段差面11Dが形成され、その段差面11Dより下側が、上側より僅かに陥没している。
【0024】
図4に示すように載置壁14の下面からは、複数(例えば、4つ)の連絡リブ35が突出して第1水平方向H1に延び、溝側壁24,24の間を連絡している。それら連絡リブ35のうち2つの連絡リブ35,35は区画壁31と同一平面内に配置され、残りの連絡リブ35は、第1側壁11の横方向の両端寄り位置の底壁25,25の上方に配置されている。また、複数の連絡リブ35の下面は、区画壁31と下面と面一になっている。なお、区画壁31の上面は、第1側壁11及び第2側壁12の上面11B,12Bと面一になっている。
【0025】
図8の左側に示すように、錘収容溝30内には、分割溝30A毎に、2対の第1寄せリブ32と1対の第2寄せリブ33とがそれぞれ対向した状態に形成されている。具体的には、第1寄せリブ32は、各分割溝30Aの長手方向の両端寄り位置において、第1側壁11と溝側壁24とに形成されて分割溝30Aの幅方向でそれぞれ対向している。一方、第2寄せリブ33は、溝端部壁26と区画壁31との対向面、又は、区画壁31,31同士の対向面とに形成され、分割溝30Aの長手方向で対向している。
【0026】
図5に示すように、各第1寄せリブ32は、切欠部27の上端から第1側壁11及び溝側壁24の上端寄り位置まで延びている。また、第2寄せリブ33は、溝端部壁26及び区画壁31の下端から上端寄り位置まで延びている。さらに、第1及び第2の寄せリブ32,33は、共にそれらの上下方向の途中位置から上端に向かうに従って徐々に突出量が小さくなっている。なお、第1寄せリブ32の上端より第2寄せリブ33の上端の方が僅かに上方に位置している。
【0027】
図1には、各分割溝30A毎に収容される錘90の一例が示されている。この錘90は、長方形の金属板であって、
図8の右側に示すように、各分割溝30Aに丁度収まる。その際、錘90は、第1及び第2の寄せリブ32,33に摺接してスムーズに分割溝30Aの底まで移動する。また、
図7に示すように、錘90は、分割溝30Aの底まで挿入されると上端寄り位置を第1及び第2の寄せリブ32,33に支持された状態になるので、分割溝30Aから飛び出し難くなる。
【0028】
なお、錘90は、例えば、日本工業規格(JIS)に則った幅及び板厚を有する、例えば、鉄、ステンレス、アルミ、黄銅、タングステン等の板金を切断することで容易に製作することができる。
【0029】
本実施形態の搬送器具10の構成に関する説明は以上である。以下、この搬送器具10の作用効果について説明する。搬送器具10は、錘収容溝30に錘90が収容された状態で使用され、例えば、載置壁14の上に複数の工業製品が荷物としてが載置される。そして、例えば、図示しない洗浄装置の移動台の上に複数の搬送器具10が段積みされていく。このとき、下段側の搬送器具10の上面突条12C及び上面突部11Cが上段側の搬送器具10の内側に嵌合して上下の搬送器具10,10の横ずれが防がれる。
【0030】
洗浄装置の移動台は、段積みされた複数の搬送器具10と共に洗浄槽の洗浄液内へと降下していく。そして、搬送器具10の複数の貫通孔15を通して空気と洗浄液とが入れ替わり、複数の搬送器具10が洗浄液に浸漬されていく。このとき、搬送器具10は、空気の浮力を受けるが、錘90にて1対の第1側壁11,11に沿った対向辺を押さえられているので搬送器具10は安定して浸漬されていく。そして、所定時間の浸漬処理(洗浄処理)を終えたら、移動台が上昇して搬送器具10が洗浄液から取り出され、洗浄処理が完了する。このとき、錘収容溝30内の洗浄液は、切欠部27を通して排出される。洗浄処理を終えた搬送器具10は、例えば乾燥工程に搬送される。
【0031】
上記したように本実施形態の搬送器具10では、その平面形状の1対の対向辺に沿って延びる広範囲が、錘収容溝30に収容されている錘90により押えられて安定し、液体中であっても従来のように簡単に動くことがなくなる。これにより、浸漬処理を安定して行うことができる。また、錘収容溝30は、上面が開口しているので錘90の挿抜を簡単に行うことができる。これにより、例えば、錘90を再利用し、搬送器具10を新規なものに交換する作業等や、浸漬処理に使用しない搬送器具10の錘収容溝30から錘90を抜く作業等を簡単に行うことができる。その際、切欠部27を通して錘90を押し上げて錘収容溝30から抜いてもよい。
【0032】
また、錘90は、錘収容溝30に収容されると、上端寄り位置を第1及び第2の寄せリブ32,33にて支持されるので、錘収容溝30内での錘90のズレやガタ及び錘収容溝30からの錘90の飛び出しが防がれる。
【0033】
また、区画壁31により錘収容溝30の対向面間が接近又は離間するような変形が抑えられる。しかも、
図4に示すように、両錘収容溝30,30の区画壁31,31同士が同一平面内に配置され、それら区画壁31,31と同一平面内に両錘収容溝30,30の溝側壁24,24の間を連絡する連絡リブ35が配置されているので、区画壁31と連絡リブ35とが一体になって搬送器具10全体の補強が図られる。
【0034】
[他の実施形態]
前記実施形態以外にも以下に例示する構成が考えられる。
(1)本実施形態の搬送器具10は、下面が開口した箱形の台箱構造のトレーであったが、上面が開口した箱形のトレー又はコンテナ(容器)に、錘を収容する錘収容溝を設けてもよい。
【0035】
(2)前記実施形態の搬送器具10の錘収容溝30は、板状の錘90が丁度収容される構造をなしていたが、錘収容溝を丸棒形状や角棒形状の錘が収容されるのに適した構造にしてもよい。具体的には、錘収容溝を、断面略正方形としたり、半円形又はV字形の底壁の両端部から1対の側壁が立ち上がった形状にして丸棒形状や角棒形状の錘が収容されるようにしてもよい。
【0036】
(3)また、錘収容溝内に弾性係止片を設けて錘に係止させて抜け止めする構成としてもよい。具体的には、錘収容溝を包囲する壁部(例えば、前記実施形態であれば第1側壁11、溝側壁24、溝端部壁26等)にスリットを形成して壁部の一部を片持ち梁又は両持ち梁として切り離し、それら片持ち梁又は両持ち梁に直角三角形の係止突部を設けて錘に係止させて抜け止めを行ってもよい。
【0037】
(4)また、錘を錘収容溝内に接着剤で固定してもよい。
【0038】
(5)前記実施形態の錘収容溝30は、上面が開口していたが、第1側壁11の側面や下面に開口する錘収容溝を設けて上述したような弾性係止片や接着剤で錘を錘収容溝内に抜け止めしてもよい。また、錘収容溝30に区画壁31を設けなくてもよい。
【0039】
(6)前記実施形態の搬送器具10は、複数の貫通孔15を有するメッシュ構造をなしていたが、メッシュ構造としなくてもよい。また、メッシュ構造にする代わりに、例えば、第1側壁11又は第2側壁12に空気の抜き孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 搬送器具
24 溝側壁
25 底壁
27 切欠部
30 錘収容溝
31 区画壁
32 第1寄せリブ
33 第2寄せリブ
35 連絡リブ
90 錘