(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水中航走体の管制方法及び水中航走体の管制システム
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20220104BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B63C11/00 A
B63C11/00 B
B63C11/48 D
(21)【出願番号】P 2017071896
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】金 岡秀
(72)【発明者】
【氏名】大和 裕幸
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-308766(JP,A)
【文献】特開2009-227086(JP,A)
【文献】特開平10-081297(JP,A)
【文献】特開2016-144956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0144836(US,A1)
【文献】国際公開第2016/038453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63C 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面の近傍を移動可能な移動手段を有した水上管制手段により、水の中を航走する複数の水中航走体を管制するにあたり、前記水上管制手段に設けた音響測位手段を利用して、前記水上管制手段が複数の前記水中航走体を測位できる管制領域に複数の前記水中航走体が位置するように、前記移動手段により前記水上管制手段を移動制御する
とともに、前記水上管制手段を移動するに当り、前記水中航走体が前記管制領域を外れたことを検出してから、所定時間を待機した後、前記水上管制手段を移動開始することを特徴とする水中航走体の管制方法。
【請求項2】
前記水上管制手段と複数の前記水中航走体にそれぞれ設けた通信手段を利用して、前記移動手段により前記水上管制手段を移動制御することを特徴とする請求項1に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項3】
複数の前記水中航走体の全てを管制できる位置に、前記水上管制手段を移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項4】
複数の前記水中航走体の最大数を管制できる位置に、前記水上管制手段を移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項5】
前記最大数は、複数の前記水中航走体の数から前記管制領域を逸脱した前記水中航走体、故障した前記水中航走体、緊急浮上した前記水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を減じた数であることを特徴とする請求項4に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項6】
前記水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での前記管制領域の中に位置する複数の前記水中航走体の数が減じない範囲で移動することを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項7】
前記水上管制手段における複数の前記水中航走体の航走の記録に基づいて、前記水上管制手段を移動することを特徴とする請求項1から請求項
6のうちの1項に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項8】
水面の近傍を移動可能な移動手段を有した水上管制手段により、水の中を航走する複数の水中航走体を管制するにあたり、前記水上管制手段に設けた音響測位手段を利用して、前記水上管制手段が複数の前記水中航走体を測位できる管制領域に複数の前記水中航走体が位置するように、前記移動手段により前記水上管制手段を移動制御するとともに、前記水上管制手段における複数の前記水中航走体の航走の記録に基づいて、前記水上管制手段を移動し、複数の前記水中航走体のうちの前記管制領域を外れた前記水中航走体の前記航走の記録に基づいて、前記管制領域を外れた前記水中航走体が存在すると推定される方向に前記水上管制手段を移動することを特徴とす
る水中航走体の管制方法。
【請求項9】
前記管制領域から外れたことを前記水中航走体が検出した場合に、前記水中航走体は、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又は前記水中における深度を大きくする方向に航走することを特徴とする請求項1から請求項
8のうちの1項に記載の水中航走体の管制方法。
【請求項10】
水面の近傍を航走可能な移動手段を有した水上管制手段と、水の中を航走する複数の水中航走体と、前記水上管制手段に設けた音響測位手段とを備え、前記水上管制手段が複数の前記水中航走体を前記音響測位手段により測位できる管制領域に複数の前記水中航走体が位置するように、前記移動手段により前記水上管制手段を移動制御する移動制御手段を前記水上管制手段に備え
、前記移動制御手段は、前記水中航走体が前記管制領域を外れたことを検出してから、所定時間を待機した後、前記水上管制手段を移動開始するように指示する待機制御部を有することを特徴とする水中航走体の管制システム。
【請求項11】
前記水上管制手段と複数の前記水中航走体にそれぞれ通信手段をさらに備え、前記移動制御手段が複数の前記水中航走体と前記通信手段が通信できる
前記管制領域に複数の前記水中航走体が位置するように移動制御することを特徴とする請求項
10に記載の水中航走体の管制システム。
【請求項12】
前記移動制御手段は、複数の前記水中航走体の数を管理する数管理部を有することを特徴とする請求項
10又は請求項
11に記載の水中航走体の管制システム。
【請求項13】
前記数管理部は、複数の前記水中航走体の数から前記管制領域を逸脱した前記水中航走体、故障した前記水中航走体、緊急浮上した前記水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を考慮して前記水中航走体の数を管理することを特徴とする請求項
12に記載の水中航走体の管制システム。
【請求項14】
前記移動制御手段は、前記水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での前記管制領域の中に位置する複数の前記水中航走体の数が減じない範囲で移動するように制御することを特徴とする請求項
12又は請求項
13に記載の水中航走体の管制システム。
【請求項15】
前記移動制御手段は、複数の前記水中航走体の航走を記録する航走記録部を有することを特徴とする請求項
10から請求項
14のうちの1項に記載の水中航走体の管制システム。
【請求項16】
水面の近傍を航走可能な移動手段を有した水上管制手段と、水の中を航走する複数の水中航走体と、前記水上管制手段に設けた音響測位手段とを備え、前記水上管制手段が複数の前記水中航走体を前記音響測位手段により測位できる管制領域に複数の前記水中航走体が位置するように、前記移動手段により前記水上管制手段を移動制御する移動制御手段を前記水上管制手段に備え、前記移動制御手段は、複数の前記水中航走体の航走を記録する航走記録部を有し、前記航走記録部における複数の前記水中航走体
の航走の記録に基づいて、前記移動制御手段が、前記管制領域を外れた前記水中航走体が存在すると推定される方向に前記水上管制手段を移動するように制御することを特徴とす
る水中航走体の管制システム。
【請求項17】
前記水中航走体に航走制御手段と自機測位手段を有し、前記航走制御手段は、前記水中航走体が前記管制領域から外れたことを検出した場合に、前記自機測位手段により自機の位置を推定し、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又
は水中における深度を大きくする方向に前記水中航走体の航走させることを特徴とする請求項
10から請求項
16のうちの1項に記載の水中航走体の管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底探査等の調査作業等を行う水中航走体の管制方法及び管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や湖沼等において、調査水域に水中航走体を投入して水底探査等の調査作業等を行う場合、水上に位置する船舶や水中に配置された装置が水中航走体に対する制御を行っている。
例えば特許文献1には、母船とケーブル接続された水中ステーションを海中に配設し、音響トランスポンダを探査地点近くの海底に配置し、複数の無索式無人潜水艇を水中ステーション及び音響トランスポンダと超音波信号を用いて通信させすることで誘導し、必要に応じて無索式無人潜水艇を水中ステーションにドッキングさせて充電又は電池交換と探査データの吸い上げを行う技術が開示されている。
また、特許文献2には、第1トランスポンダ、第1受波器及び第2受波器を備えた水中ステーションを母船から海中に吊り下げ、海底に第2トランスポンダを設置し、探査用の自律型無人航走体に第3トランスポンダ及び第3受波器を設け、水中ステーションは第2トランスポンダの信号を第1受波器で受信することによって定点保持を図り、自律型無人航走体は、探査中は第2トランスポンダの信号を第3受波器で受信することによって自航し、動力が減少すると第1トランスポンダの信号を第3受波器で受信することによって水中ステーションに向かって航走し、水中ステーションは第3トランスポンダの信号を第2受波器で受信することによって自律型無人航走を収容するための姿勢制御を行う技術が開示されている。
また、特許文献3には、水上に位置する母船に送波器を設け、探査用の無人潜水機に受波器を設け、母船から無人潜水機に制御信号を送る水中音響通信において、画素信号のハフ変換を利用して伝送誤りを補正する技術が開示されている。
また、特許文献4には、母船と水中航走体との間における通信を中継する自走中継器を観察領域の水面近傍に配置し、自走中継器と母船との間の通信は電波通信で行い、自走中継器と水中航走体との間の通信は音響通信で行うことによって、水平方向の通信可能距離を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-266794号公報
【文献】特開2003-26090号公報
【文献】特開平5-147583号公報
【文献】特開2001-308766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中航走体は速度が遅いため1台だけでは広い水域を調査するのに時間がかかるが、エネルギー消費の面などから水中航走体の速度を上げるのには限界がある。そこで、広い水域を効率よく調査するために複数台の水中航走体を投入することが考えられる。しかし、水中航走体を複数台投入した場合、水中航走体をしっかりと管制しなければ、水中航走体が行方不明となったり、水中航走体同士の衝突や水中航走体が険しい水底地形等へ衝突する等のおそれがある。
特許文献1記載の発明は、無索式無人潜水艇を誘導する音響トランスポンダが海底に固定されていたり、水中ステーションが母船とケーブルで接続されていたりするため、複数の無索式無人潜水艇の位置に応じて音響トランスポンダ及び水中ステーションを自由に移動させて管制領域を変更することが困難である。従って、誘導可能な領域から無索式無人潜水艇が外れた場合、そのまま見失ってしまう可能性が高い。
特許文献2記載の発明は、第2トランスポンダが海底に固定され、水中ステーションが母船から吊り下げられているため、自律型無人航走体の位置に応じて第2トランスポンダ及び水中ステーションを自由に移動させて管制領域を変更することが困難である。従って、誘導可能な領域から自律型無人航走体が外れた場合、そのまま見失ってしまう可能性が高い。
特許文献3記載の発明は、水中音響通信が水面や海底の反射音の影響を受けやすいことを考慮し、伝送誤りを含んでいても正しい制御信号を推定することで無人潜水機が無制御状態に陥ることを防止しようとするものである。しかし、無人潜水機が母船を頂点とした略円錐状の水中音響通信可能領域を超えた場合には通信が途絶してしまう。また、複数の無人潜水機を投入した場合の制御等について開示するものではない。
特許文献4記載の発明は、自走中継器が自己の現在位置情報と水中航走体の現在位置情報とに基づいて水平移動の要否を判断し、水中航走体との通信状態を維持することが記載されている。また、水中航走体を複数投入することができる旨の記載がある。しかし、水中航走体を複数投入した場合に、自走中継器の移動をどのように制御し、それにより複数の水中航走体に対する管制を維持するのかについては何ら記載されていない。また、自走中継器は水中航走体と通信状態を維持するものであり、測位に基づいて移動するものではない。
【0005】
そこで本発明は、複数の水中航走体を水中に展開・運用して水底探査等の調査作業等を安全かつ効率的に行うことができる水中航走体の管制方法及び水中航走体の管制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応した水中航走体の管制方法においては、水面の近傍を移動可能な移動手段を有した水上管制手段により、水の中を航走する複数の水中航走体を管制するにあたり、水上管制手段に設けた音響測位手段を利用して、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように、移動手段により水上管制手段を移動制御するとともに、水上管制手段を移動するに当り、水中航走体が管制領域を外れたことを検出してから、所定時間を待機した後、水上管制手段を移動開始することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。また、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内に戻すことができる。これにより、複数の水中航走体を展開・運用して水底探査等の調査作業等を安全かつ効率的に行うことができる。また、管制領域を外れた水中航走体が自ら管制領域内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域内に位置する水中航走体が一時的な測位・通信障害により管制領域を外れたと検出された可能性があるため、所定時間待機させることで、水上管制手段が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段のエネルギーの浪費や、管制領域内に位置する水中航走体が管制領域から外れることを防止できる。
なお、調査作業等とは、調査作業そのものに加え、採取作業、救助作業、運搬作業等およそ水底において水中航走体が行なう作業の全体を含む。
【0007】
請求項2記載の本発明は、水上管制手段と複数の水中航走体にそれぞれ設けた通信手段を利用して、移動手段により水上管制手段を移動制御することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、水上管制手段を複数の水中航走体との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0008】
請求項3記載の本発明は、複数の水中航走体の全てを管制できる位置に、水上管制手段を移動することを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、全ての水中航走体が水上管制手段の管制下におかれるため、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0009】
請求項4記載の本発明は、複数の水中航走体の最大数を管制できる位置に、水上管制手段を移動することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、管制領域から外れる水中航走体の数を最小にすることができる。
【0010】
請求項5記載の本発明は、最大数は、複数の水中航走体の数から管制領域を逸脱した水中航走体、故障した水中航走体、緊急浮上した水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を減じた数であることを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、調査可能な複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。
【0011】
請求項6記載の本発明は、水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での管制領域の中に位置する複数の水中航走体の数が減じない範囲で移動することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、管制領域内に位置する水中航走体の数が減少することを防止できる。
【0012】
請求項7記載の本発明は、水上管制手段における複数の水中航走体の航走の記録に基づいて、水上管制手段を移動することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、水上管制手段の管制精度や移動効率を向上させることができる。
【0013】
請求項8記載に対応した水中航走体の管制方法においては、水面の近傍を移動可能な移動手段を有した水上管制手段により、水の中を航走する複数の水中航走体を管制するにあたり、水上管制手段に設けた音響測位手段を利用して、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように、移動手段により水上管制手段を移動制御するとともに、水上管制手段における複数の水中航走体の航走の記録に基づいて、水上管制手段を移動し、複数の水中航走体のうちの管制領域を外れた水中航走体の航走の記録に基づいて、管制領域を外れた水中航走体が存在すると推定される方向に水上管制手段を移動することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、水上管制手段の移動効率を向上させ、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内により早く戻すことができる。
【0014】
請求項9記載の本発明は、管制領域から外れたことを水中航走体が検出した場合に、水中航走体は、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又は水中における深度を大きくする方向に航走することを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、水中航走体自ら管制領域内に戻ることができる。
【0015】
請求項10記載に対応した水中航走体の管制システムにおいては、水面の近傍を航走可能な移動手段を有した水上管制手段と、水の中を航走する複数の水中航走体と、水上管制手段に設けた音響測位手段とを備え、水上管制手段が複数の水中航走体を音響測位手段により測位できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように、移動手段により水上管制手段を移動制御する移動制御手段を水上管制手段に備え、移動制御手段は、水中航走体が管制領域を外れたことを検出してから、所定時間を待機した後、水上管制手段を移動開始するように指示する待機制御部を有することを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。また、管制領域から外れた水上管制手段を管制領域内に戻すことができる。これにより、複数の水中航走体を見失うことなく広い水域を安全かつ効率的に調査することができる。また、管制領域を外れた水中航走体が自ら管制領域内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域内に位置する水中航走体が一時的な測位・通信障害により管制領域を外れたと検出された可能性があるため、所定時間待機させることで、水上管制手段が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段のエネルギーの浪費や、管制領域内に位置する水中航走体が管制領域から外れることを防止できる。
【0016】
請求項11記載の本発明は、水上管制手段と複数の水中航走体にそれぞれ通信手段をさらに備え、移動制御手段が複数の水中航走体と通信手段が通信できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように移動制御することを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、水上管制手段を複数の水中航走体との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0017】
請求項12記載の本発明は、移動制御手段は、複数の水中航走体の数を管理する数管理部を有することを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、水上管制手段の移動を、水中航走体の数に基づいて制御することができる。
【0018】
請求項13記載の本発明は、数管理部は、複数の水中航走体の数から管制領域を逸脱した水中航走体、故障した水中航走体、緊急浮上した水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を考慮して水中航走体の数を管理することを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、調査可能な複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。
【0019】
請求項14記載の本発明は、移動制御手段は、水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での管制領域の中に位置する複数の水中航走体の数が減じない範囲で移動するように制御することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、管制領域内に位置する水中航走体の数が減少することを防止できる。
【0020】
請求項15記載の本発明は、移動制御手段は、複数の水中航走体の航走を記録する航走記録部を有することを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、水上管制手段の管制精度や移動効率を向上させることができる。
【0021】
請求項16記載に対応した水中航走体の管制システムにおいては、水面の近傍を航走可能な移動手段を有した水上管制手段と、水の中を航走する複数の水中航走体と、水上管制手段に設けた音響測位手段とを備え、水上管制手段が複数の水中航走体を音響測位手段により測位できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように、移動手段により水上管制手段を移動制御する移動制御手段を水上管制手段に備え、移動制御手段は、複数の水中航走体の航走を記録する航走記録部を有し、航走記録部における複数の水中航走体の航走の記録に基づいて、移動制御手段が、管制領域を外れた水中航走体が存在すると推定される方向に水上管制手段を移動するように制御することを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、水上管制手段の移動効率を向上させ、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内により早く戻すことができる。
【0022】
請求項17記載の本発明は、水中航走体に航走制御手段と自機測位手段を有し、航走制御手段は、水中航走体が管制領域から外れたことを検出した場合に、自機測位手段により自機の位置を推定し、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又は水中における深度を大きくする方向に水中航走体の航走させることを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、水中航走体自ら管制領域内に戻ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水中航走体の管制方法によれば、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。また、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内に戻すことができる。これにより、複数の水中航走体を展開・運用して水底探査等の調査作業等を安全かつ効率的に行うことができる。また、管制領域を外れた水中航走体が自ら管制領域内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域内に位置する水中航走体が一時的な測位・通信障害により管制領域を外れたと検出された可能性があるため、所定時間待機させることで、水上管制手段が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段のエネルギーの浪費や、管制領域内に位置する水中航走体が管制領域から外れることを防止できる。
【0024】
また、水上管制手段と複数の水中航走体にそれぞれ設けた通信手段を利用して、移動手段により水上管制手段を移動制御する場合には、水上管制手段を複数の水中航走体との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0025】
また、複数の水中航走体の全てを管制できる位置に、水上管制手段を移動する場合には、全ての水中航走体が水上管制手段の管制下におかれるため、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0026】
また、複数の水中航走体の最大数を管制できる位置に、水上管制手段を移動する場合には、管制領域から外れる水中航走体の数を最小にすることができる。
【0027】
また、最大数は、複数の水中航走体の数から管制領域を逸脱した水中航走体、故障した水中航走体、緊急浮上した水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を減じた数である場合には、調査可能な複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。
【0028】
また、水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での管制領域の中に位置する複数の水中航走体の数が減じない範囲で移動する場合には、管制領域内に位置する水中航走体の数が減少することを防止できる。
【0029】
また、水上管制手段における複数の水中航走体の航走の記録に基づいて、水上管制手段を移動する場合には、水上管制手段の管制精度や移動効率を向上させることができる。
【0030】
また、複数の水中航走体のうちの管制領域を外れた水中航走体の航走の記録に基づいて、管制領域を外れた水中航走体が存在すると推定される方向に水上管制手段を移動することで、水上管制手段の移動効率を向上させ、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内により早く戻すことができる。
【0031】
また、管制領域から外れたことを水中航走体が検出した場合に、水中航走体は、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又は水中における深度を大きくする方向に航走する場合には、水中航走体自ら管制領域内に戻ることができる。
【0032】
また、本発明の水中航走体の管制システムによれば、水上管制手段が複数の水中航走体を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。また、管制領域から外れた水上管制手段を管制領域内に戻すことができる。これにより、複数の水中航走体を見失うことなく広い水域を安全かつ効率的に調査することができる。また、管制領域を外れた水中航走体が自ら管制領域内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域内に位置する水中航走体が一時的な測位・通信障害により管制領域を外れたと検出された可能性があるため、所定時間待機させることで、水上管制手段が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段のエネルギーの浪費や、管制領域内に位置する水中航走体が管制領域から外れることを防止できる。
【0033】
また、水上管制手段と複数の水中航走体にそれぞれ通信手段をさらに備え、移動制御手段が複数の水中航走体と通信手段が通信できる管制領域に複数の水中航走体が位置するように移動制御する場合には、水上管制手段を複数の水中航走体との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
【0034】
また、移動制御手段は、複数の水中航走体の数を管理する数管理部を有する場合には、水上管制手段の移動を、水中航走体の数に基づいて制御することができる。
【0035】
また、数管理部は、複数の水中航走体の数から管制領域を逸脱した水中航走体、故障した水中航走体、緊急浮上した水中航走体のいずれかを含む管制不可能数を考慮して水中航走体の数を管理する場合には、調査可能な複数の水中航走体を管制領域内に位置させて調査作業等を継続することができる。
【0036】
また、移動制御手段は、水上管制手段を移動するに当り、移動開始時点での管制領域の中に位置する複数の水中航走体の数が減じない範囲で移動するように制御する場合には、管制領域内に位置する水中航走体の数が減少することを防止できる。
【0037】
また、移動制御手段は、複数の水中航走体の航走を記録する航走記録部を有する場合には、水上管制手段の管制精度や移動効率を向上させることができる。
【0038】
また、航走記録部における複数の水中航走体の航走の記録に基づいて、移動制御手段が、管制領域を外れた水中航走体が存在すると推定される方向に水上管制手段を移動するように制御することで、水上管制手段の移動効率を向上させ、管制領域から外れた水中航走体を管制領域内により早く戻すことができる。
【0039】
また、水中航走体に航走制御手段と自機測位手段を有し、航走制御手段は、水中航走体が管制領域から外れたことを検出した場合に、自機測位手段により自機の位置を推定し、今まで航走して来た経路を逆に戻る、又は水中における深度を大きくする方向に水中航走体の航走させる場合には、水中航走体自ら管制領域内に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施形態による水中航走体の管制システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態による水中航走体の管制方法及び水中航走体の管制システムについて説明する。
【0042】
図1は本実施形態による水中航走体の管制システムの概略構成図、
図2は水中航走体の外観斜視図である。
図1では、海洋や湖沼等において、調査水域に1台の水上管制手段20を進水させ、複数の水中航走体30を投入し、水底の鉱物資源やエネルギー資源等の調査作業等を行う状態を示している。水上管制手段20及び水中航走体30は、支援船10に積載して調査水域まで運搬してきたものである。
水上管制手段20及び水中航走体30は無人かつ無索で自律航走するロボットであり、水面の近傍に配置された水上管制手段20が、電波の届かない水中で調査作業等を行う複数の水中航走体30に対して音響信号を利用した管制を行っている。
【0043】
水上管制手段20には、洋上中継器(ASV:Autonomous Surface Vehicle)を用いている。水上管制手段20は、端部が半球面となった筒型の本体20aと、本体20aの上面に延設された垂直翼20bとを備える。支援船10から調査水域に進水させた水上管制手段20は、本体20aが水中に没して垂直翼20bの上部が水面上に突き出た半潜水状態で用いられる。垂直翼20bの上部には、GPS等の自己位置把握手段21と、衛星通信アンテナ及び無線LANアンテナ等の海上通信手段22が搭載されている。水上管制手段20は、自己位置把握手段21を用いてGNSS(全地球航法衛星システム)衛星1からのGNSS信号を受信することにより、自己の位置を把握できる。また、海上通信手段22を用いて支援船10との通信を行うことができる。
また、本体20aの後部には舵及びプロペラを有する移動手段23が設けられており、移動手段23によって水面の近傍を移動することができる。
また、本体20aの下面には、音響測位手段24及び通信手段25が設けられている。通信手段25は、音波を送信する送波器と音波を受信する受波器とを有する。水上管制手段20は、音響測位手段24を用いて水中航走体30の位置を測定すると共に、通信手段25を用いて水中航走体30と音響信号による双方向通信を行い、水中航走体30を管制している。水上管制手段20から水中に向けて発信される音響信号が到達し易いのは、水上管制手段20を頂点とした略円錐状の範囲であるため、この略円錐状の範囲を水上管制手段20が管制する管制領域Xとしている。
【0044】
水中航走体30には、水上管制手段20との接続にケーブルを用いずに水中を自律的に航走する無索自律無人型の航走体(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)を用いている。水上管制手段20は複数の水中航走体30を音響信号を用いて管制するため、水上管制手段20にケーブル用の設備を設ける必要が無く、また、ケーブルが絡んだり、ケーブルによって水上管制手段20の移動が制限されたりすることがない。
図1では、複数の水中航走体30を、1台の第1水中航走体30Aと、2台の第2水中航走体30Bとした場合を示している。第1水中航走体30A及び第2水中航走体30Bには、舵や推進器などの航走手段31が設けられており、この航走手段31によって水中を航走及び潜航することができる。また、水中航走体30には、自機の位置の測定に用いる自機測位手段32と、水上管制手段20との音響信号による双方向通信に用いる通信手段33と、水上管制手段20の音響測位手段24から発せられる信号に対して返答を行う音響トランスポンダ(図示無し)が設けられている。通信手段33は、音波を送信する送波器と音波を受信する受波器とを有する。水中航走体30は、水上管制手段20による測位が所定回数失敗した場合や、水上管制手段20との通信に所定回数失敗した場合などは、緊急浮上させて支援船10に回収することができる。
ホバリング型の第1水中航走体30Aは、第2水中航走体30Bよりも航走速度を遅くすることができる。また、垂直スラスタや水平スラスタを有し、第2水中航走体30Bよりも動きの自由度が高く、水流等がある場所においても位置を保持することができるため、主に水底近くでの精密な調査作業等を担う。
図2(a)は第2水中航走体30Bの上方斜視図、
図2(b)は第2水中航走体30Bの下方斜視図である。航走型の第2水中航走体30Bは、第1水中航走体30Aよりも機敏かつ高速に動くことができるため、主に水底から離れた位置でより広い範囲における調査作業等を担う。
【0045】
次に、水上管制手段20の制御について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は水上管制手段20の制御ブロック図、
図4は水上管制手段20の制御フロー図である。
水上管制手段20は、自己位置把握手段21、海上通信手段22、移動手段23、音響測位手段24、通信手段25、管制設定部26及び移動制御手段27を備える。
移動制御手段27は、数管理部27A、待機制御部27B、位置推定部27C、航走記録部27D及び管制判断部27Eを有する。
【0046】
支援船10に乗船しているオペレーターは、水上管制手段20を支援船10から調査水域に進水させる前に、管制設定部26を用いて、水上管制手段20に対して、水上管制手段20の移動範囲、管制すべき水中航走体30の数や性能などといった管制に必要な情報を入力することにより管制設定を行う(ステップ1)。
ステップ1の後、調査水域に進水した水上管制手段20は、ステップ1で設定された管制設定に従って水中航走体30の管制を開始する。まず、音響測位手段24を用いて複数の水中航走体30のそれぞれの位置を測定し、測位結果を移動制御手段27に送信する(ステップ2)。
ステップ2の後、通信手段25を用いて複数の水中航走体30のそれぞれとの通信状態を測定し、測定結果を移動制御手段27に送信する(ステップ3)。通信状態は、例えばシグナル/ノイズ比(S/N比)で把握する。
移動制御手段27は、受信したステップ2における測位結果とステップ3における測定結果に基づいて、複数の水中航走体30のそれぞれの航走経路を時刻とともに航走記録部27Dに記録する(ステップ4)。
【0047】
ステップ4の後、数管理部27Aは、ステップ1における管制設定で入力された水中航走体30の数と、ステップ4で航走経路が記録された水中航走体30の数とを比較し、管制すべき水中航走体30の全数が管制領域X内に位置するか否かを判断する(ステップ5)。
ステップ5において、管制すべき水中航走体30の数と航走経路が記録された水中航走体30の数が同じか多いと判断した場合、すなわち管制すべき水中航走体30の全数が管制領域X内に位置すると判断した場合には、その結果を管制判断部27Eに送信する。
この場合において、移動制御手段27は、航走記録部27Dに記録された航走経路等に基づいて複数の水中航走体30の行動を予測し、その予測結果に基づいて水中航走体30が管制領域Xから外れないように水上管制手段20を移動するように制御してもよい。これにより、水中航走体30が管制領域Xから外れることを未然に防ぐことができる。
なお、水上管制手段20を移動するに当り、移動開始時点での管制領域Xの中に位置する複数の水中航走体30の数が減じない範囲で移動することが好ましい。これにより、管制領域X内に位置する水中航走体30の数が減少することを防止できる。
【0048】
ステップ5において、管制すべき水中航走体30の数よりも航走経路が記録された水中航走体30の数が少ないと判断した場合、すなわち管制すべき水中航走体30の一部又は全数が管制領域Xを外れたと判断した場合には、位置推定部27Cは、航走記録部27Dに記録された水中航走体30の航走経路に基づいて、管制領域Xを外れた水中航走体30が存在する方向を推定する(ステップ6)。
ステップ6の後、待機制御部27Bは、ステップ5において水中航走体30が管制領域Xを外れたことが最初に検出されたときから所定時間経過したか否かを判断する(ステップ7)。
ステップ7において、所定時間経過していないと判断した場合には、ステップ5に戻り、管制すべき水中航走体30の全てが管制領域X内にいるか否かを再度判断する。
ステップ7において、所定時間経過したと判断した場合には、待機制御部27Bは、ステップ5の判断結果を管制判断部27Eに送信すると共に、水上管制手段20の移動を開始するように指示する(ステップ8)。これにより移動手段23が動作して水上管制手段20が移動する。
管制すべき水中航走体30の一部又は全数が管制領域Xを外れたと判断した場合であっても、管制領域Xを外れた水中航走体30が自ら管制領域X内に戻ってくる可能性や、実際には管制領域X内に位置しているものの一時的な測位・通信障害により管制領域Xを外れたと誤って検出された可能性等があるため、本実施形態のように、水上管制手段20を移動するに当り、水中航走体30が管制領域Xを外れたことを検出してから所定時間待機し、その間にステップ5の判断を所定回数繰り返すことで、水上管制手段20が無用に動くことを低減できる。これにより、水上管制手段20のエネルギーの浪費や、管制領域X内に位置する水中航走体30が管制領域Xから外れてしまうことを防止できる。
また、位置推定部27Cが、航走記録部27Dに記録された水中航走体30の航走経路に基づいて、管制領域Xを外れた水中航走体30が存在する方向を推定し、移動制御手段27がこの推定結果に基づいて移動手段23を制御することで、水上管制手段20の管制精度や移動効率を向上させ、管制領域Xから外れた水中航走体30を管制領域X内により早く戻すことができる。
【0049】
移動制御手段27は、水上管制手段20を移動させる場合、複数の水中航走体30の全てを管制できる位置に水上管制手段20が移動するように移動手段23を制御することが好ましい。これにより、全ての水中航走体30を水上管制手段20の管制下におくことができるため、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
また、複数の水中航走体30の全数を管制できない場合は、移動制御手段27は、複数の水中航走体30の最大数を管制できる位置に水上管制手段20が移動するように移動手段23を制御することが好ましい。これにより、管制領域Xから外れる水中航走体30の数を最小にすることができる。この場合、最大数は、複数の水中航走体30の数から管制領域Xを逸脱した水中航走体30、故障した水中航走体30、緊急浮上した水中航走体30のいずれかを含む管制不可能数を減じた数であることが好ましい。これにより、調査可能な複数の水中航走体30を管制領域X内に位置させて調査作業等を継続することができる。
なお、音響信号は周波数が高いと集中し、低いと拡大する傾向にあるため、音響測位手段24や通信手段25の音響周波数を変えることにより、管制領域Xを変更することが可能である。また、音響信号の発信方向を変更し管制領域Xを変えることも可能である。
水上管制手段20が複数の水中航走体30を管制領域Xに位置するように管制するに当り、移動手段23により水上管制手段20を移動制御することに加えて、音響周波数を変更することや発信方向を変更して管制領域Xを制御することができる。また、音響周波数を連続的に変更する可変周波数制御を行い、管制領域Xを広げるとともに精度よく音響測位や通信を行なうこともできる。水中航走体30の管制領域Xからの逸脱が軽微な場合は、これらの方法で対応することも可能である。
【0050】
管制判断部27Eは、数管理部27A又は待機制御部27Bから送信された判断結果に基づいて、管制設定を変更するか否かを判断する(ステップ9)。
ステップ9では、数管理部27Aから判断結果を受信した場合であって、管制すべき水中航走体30の数と航走経路が記録された水中航走体30の数が同じ場合には、管制設定を変更せず、ステップ2となる。
また、数管理部27Aから判断結果を受信した場合であって、管制すべき水中航走体30の数よりも航走経路が記録された水中航走体30の数が多い場合には、ステップ1となり、管制設定部26は、管制領域Xに戻った水中航走体30を含めた管制設定に変更する。これにより、管制領域Xに戻った水中航走体30を含めて管制を継続することができる。
また、待機制御部27Bから判断結果を受信した場合、すなわち管制領域Xを外れた水中航走体30があるとの判断結果を受信した場合には、ステップ1となり、管制設定部26は、管制領域Xを外れた水中航走体30を除いた管制設定に変更する。これにより、管制領域Xを外れた水中航走体30を除いて管制を継続することができる。
【0051】
このように本実施形態によれば、複数の水中航走体30の数を管理する数管理部27Aを有することで、水上管制手段20の移動を、水中航走体30の数に基づいて制御することができる。
また、水上管制手段20が複数の水中航走体30を測位できる位置に移動するため、複数の水中航走体30を管制領域X内に位置させて調査作業等を継続することができる。
また、水上管制手段20を複数の水中航走体30との通信が可能な位置に移動させることで、より安全かつ効率的に調査作業等を行うことができる。
これらにより、複数の水中航走体30を見失うことなく広い水域を安全かつ効率的に調査することができる。
【0052】
次に、水中航走体30の制御について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は水中航走体30の制御ブロック図、
図6は水中航走体30の制御フロー図である。
水中航走体30は、航走手段31、自機測位手段32、通信手段33、深度計34、航走制御手段35及び航走設定部36を備える。
航走制御手段35は、深度制御部35A、緊急制御部35B、位置推定部35C、経路記録部35D、管制領域判断部35Eを有する。
【0053】
支援船10に乗船しているオペレーターは、水中航走体30を支援船10から調査水域に投入する前に、航走設定部36を用いて、水中航走体30に対して、水中航走体30の調査範囲や調査対象などといった調査に必要な情報を入力することにより航走条件設定を行う(ステップ11)。
ステップ11の後、調査水域に投入された複数の水中航走体30は、ステップ11で設定された航走条件に従って潜航及び航走を開始する(ステップ12)。
ステップ12の後、水中航走体30は、自機測位手段32を用いて自機の位置を測定し、航走制御手段35に送信する(ステップ13)。自機位置の測定は、例えば、速度センサ及びジャイロセンサを搭載し、自機の速度及び加速度を検出して算出することにより行う。
ステップ13の後、通信手段33を用いて水上管制手段20との通信状態を測定し、測定結果を航走制御手段35に送信する(ステップ14)。通信状態は、例えばシグナル/ノイズ比(S/N比)で把握する。
航走制御手段35は、受信したステップ13における測位結果とステップ14における測定結果に基づいて、自機の航走経路を時刻と共に経路記録部35Dに記録する(ステップ15)。
ステップ15の後、管制領域判断部35Eは、経路記録部35Dに記録された航走経路に基づいて、自機が管制領域X内にいるか否かを判断する(ステップ16)。
ステップ16において、自機が管制領域X内にいると判断した場合には、ステップ13に戻る。
ステップ16において、自機が管制領域X内にいないと判断した場合には、位置推定部35Cは、自機測位手段32による測位結果と、深度計34による測定結果と、経路記録部35Dに記録された航走経路に基づいて、自機の位置を推定し、管制領域Xに戻る経路を選択する(ステップ17)。
ステップ17において、記録された航走経路を逆に航走して管制領域Xに戻る経路を選択した場合には、緊急制御部35Bが、今まで航走して来た経路を逆に戻るように航走手段31の制御を行う。また、管制領域Xは傘状に広がっているため、ステップ17において、深度を大きくして管制領域Xに至る経路を選択した場合には、深度制御部35Aが、自機の深度を大きくするように航走手段31の制御を行う(ステップ18)。これにより、水中航走体30が自ら管制領域Xに戻り、水上管制手段20の管制を再び受けながら作業を継続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の水中航走体の管制方法及び水中航走体の管制システムは、複数の水中航走体を調査水域に展開・運用して水底探査等の調査作業等を安全かつ効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
20 水上管制手段
23 移動手段
24 音響測位手段
25 通信手段
27 移動制御手段
27A 数管理部
27B 待機制御部
27D 航走記録部
30 水中航走体
33 通信手段
35 航走制御手段
X 管制領域