(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】水栓器具
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E03C1/042 B
(21)【出願番号】P 2017135945
(22)【出願日】2017-07-12
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓行
(72)【発明者】
【氏名】原田 俊輔
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1090943(JP,S)
【文献】特開2002-088836(JP,A)
【文献】意匠登録第0987734(JP,S)
【文献】特開2002-106006(JP,A)
【文献】特開2009-167635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
A47K 3/28
意匠分類 M2-550
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の流水路を有する水栓本体と、
前記水栓本体の外部を覆い、水を吐出する吐水口を備えたケースと、
前記ケースに設けた開口に対して押込位置と突出位置との間で変位する操作体と、
前記水栓本体に設けられ、前記操作体によって前記複数の流水路の使用状態を切り替える切替機構と、を備え、
前記操作体の出退方向をX方向とし、前記X方向に垂直で前記吐水口の軸芯の延出方向に最も近い方向をZ方向とし、前記X方向および前記Z方向に垂直な方向をY方向とするとき、
前記押込位置にある前記操作体をZ方向から見たとき、前記操作体のうち、
前記Y方向における中央位置での前記X方向に沿った前記操作体の輪郭と前記開口の縁部との距離(中央距離)が、
前記Y方向における両端位置での前記X方向に沿った前記操作体の輪郭と前記開口の縁部との距離(端部距離)よりも長く構成されて
おり、
前記ケースが、第1ケースと前記吐水口を有する第2ケースとを備えており、前記第1ケースと前記第2ケースとの境界線が前記開口の縁部と交差するように構成してある水栓器具。
【請求項2】
前記ケースを前記吐水口とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、
前記開口の縁部のうちY方向に沿った両端に、
前記開口の縁部のうちY方向に沿った中央部に対して前記操作体の突出側に位置する張出部が設けられている請求項1に記載の水栓器具。
【請求項3】
前記ケースを前記吐水口とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、前記開口の縁部のうち前記操作体の手前に見える上縁部が直線状となるよう構成されている請求項1または2に記載の水栓器具。
【請求項4】
前記X方向視において、前記第1ケースに形成される前記開口の縁部と前記操作体との隙間の形状が、前記操作体の中央を通るZ方向の軸を挟んで対称であり、
前記隙間が、Z方向に沿って高さの異なる部位を備えている請求項1から3の何れか一項に記載の水栓器具。
【請求項5】
前記隙間が、X方向視において、Z方向に沿う領域を少なくとも一対備えている請求項4に記載の水栓器具。
【請求項6】
前記操作体において、Z方向に沿って前記第1ケースの側に向く上面と、X方向に向く操作面との境界に稜線が設けられ、
X方向視において、
前記稜線が、Y方向に沿った中央位置で前記第1ケースの側に最も突出した円弧状に形成されるとともに、前記境界線を前記操作体に重ねて延長することで仮想される前記第1ケースと前記第2ケースとの仮想境界線に対して前記第1ケースの側に形成されている請求項4または5に記載の水栓器具。
【請求項7】
前記水栓本体が水道栓に固定され、前記吐水口の軸線が
鉛直方向に対して予め設定された角度となった状態において、前記操作体の前記押込位置が前記突出位置に対して
鉛直方向に沿って低くなるよう、前記操作体のX方向が水平方向に対して傾斜する状態に設定されている請求項1から6の何れか一項に記載の水栓器具。
【請求項8】
前記操作体が、前記切替機構に押し込み力を伝える入力部と、前記ケースの内部に延出する突出部とを備え、
前記操作体が押し込み操作された際に前記突出部に当接して前記突出部の移動方向を規定する案内部が、前記水栓本体あるいは前記ケースに設けられている請求項1から7の何れか一項に記載の水栓器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出する流水の種類を例えば原水と浄水など複数に切り替える水栓器具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような水栓器具としては、例えば特開2012-55880号公報(特許文献1)に示す技術がある。
【0003】
特許文献1に記された水栓器具は、吐出する流水の種類を浄水と原水とに切り替える押し込み方式の操作体を備えたものである。水栓本体には、ノック式ボールペンなどに使用されるスラストロック機構が備えられ、操作体が同機構の操作軸を押し操作するように構成されている。これにより、操作体は押込位置と突出位置との間で姿勢変化する。
【0004】
この水栓器具は、先端部に一体式のケースを備えている。ケースには開口が形成されており、操作体がこの開口に沿って出退する。操作体を押し操作する操作面とケースの外面とは調和して形成されており、操作体が押込位置にある状態では、操作体の略全体がケースの内部に進入して操作面はケースの外面と略一体の曲面を構成する。一方、操作体がケースの突出位置にある場合には、操作体が明らかにケースの外面に対して突出するから、操作体が何れの位置にあるかを視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された水栓器具では、押込位置にある操作体の操作面とケースの外面とが略同じ面となる。このため、操作体を押込位置で固定しようとすると、スラストロック機構の特性上、操作体はこの押込位置よりも少し奥まで押し込む必要がある。このとき、操作体の操作面はケースに形成した開口の縁部よりも奥に入り込むから、操作体を押す指が開口の縁部に触れることが多い。その結果、操作者は、縁部からの抵抗を感じながらさらに操作体を押し込む必要があり、操作の度に違和感が生じる可能性がある。
【0007】
また、操作体が押込位置にある場合でも、操作体が僅かにケースの外面から突出している場合がある。一方、スラストロック機構の構成上、操作体が突出位置にある場合でも、操作体の操作面がケースの外面から十分に突出していない場合もある。よって、特許文献1の操作体では、操作体が何れの位置にある場合もケースから突出していることになり、操作体の位置を認識するのにケースの外面に対する操作体の突出量を正確に判断する必要があった。
【0008】
このように、従来の水栓器具では、操作体の操作性や切替状態の視認性に改良すべき点があり、これらの問題を解決した合理的な水栓器具の提供が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具の特徴構成は、
内部に複数の流水路を有する水栓本体と、
前記水栓本体の外部を覆い、水を吐出する吐水口を備えたケースと、
前記ケースに設けた開口に対して押込位置と突出位置との間で変位する操作体と、
前記水栓本体に設けられ、前記操作体によって前記複数の流水路の使用状態を切り替える切替機構と、を備え、
前記操作体の出退方向をX方向とし、前記X方向に垂直で前記吐水口の軸芯の延出方向に最も近い方向をZ方向とし、前記X方向および前記Z方向に垂直な方向をY方向とするとき、
前記押込位置にある前記操作体をZ方向から見たとき、前記操作体のうち、
前記Y方向における中央位置での前記X方向に沿った前記操作体の輪郭と前記開口の縁部との距離(中央距離)が、
前記Y方向における両端位置での前記X方向に沿った前記操作体の輪郭と前記開口の縁部との距離(端部距離)よりも長く構成されており、
前記ケースが、第1ケースと前記吐水口を有する第2ケースとを備えており、前記第1ケースと前記第2ケースとの境界線が前記開口の縁部と交差するように構成された点にある。
【0010】
(効果)
このように操作体の輪郭と開口の縁部との距離が広く構成されていると、操作体を押込位置に押し込む際に操作する指がケースに接触する機会が少なくなる。例えば、切替機構が押し込み操作を繰り返して押込位置と突出位置とを切り替えるスラストロック機構である場合には、操作体を押込位置に固定する場合でも操作体を一旦さらに奥まで押し込む必要がある。その際に、本構成の水栓器具であれば指がケースに触れ難いから、押し込み操作を違和感なく確実に行うことができる。
また、ケースが、第1ケースと吐水口を有する第2ケースとを備えており、第1ケースと第2ケースとの境界線が開口の縁部と交差するように構成してある。この境界線は操作体の近傍にあるため、操作体の切替状態が視覚的に捉え易くなる。
【0011】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具において、前記ケースを前記吐水口とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、前記開口の縁部のうちY方向に沿った両端に、前記開口の縁部のうちY方向に沿った中央部に対して前記操作体の突出側に位置する張出部が設けられていると好都合である。
【0012】
(効果)
水栓器具のヘッドの位置は一般に操作者の腰から胸の辺りに位置することが多い。よって、操作体を押し込むとき操作者の親指はY方向に寝た姿勢になる。その場合、操作体を最も奥に押し込んだとき操作体の操作面から外れた指の腹が開口の縁部の両端にある張出部に触れ易くなる。この場合でも、親指を少し曲げることで操作体をさらに奥に押し込むことは容易である。
【0013】
このように張出部を設けることで、操作体を押し込む際に押込位置を指の感触で知ることができるため、押し込み終了位置で過度に操作体に力を加えることが無くなり、押し込み操作を楽に行うことができる。
【0014】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具にあっては、前記ケースを前記吐水口とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、前記開口の縁部のうち前記操作体の手前に見える上縁部が直線状となるよう構成されていると好都合である。
【0015】
(効果)
操作体は操作者から見て下方位置にあるから、操作体を押し込む際には操作者の指は操作体のうち上部を押すことが多くなる。その場合、操作体には操作面が上向きに姿勢変化するような回転モーメントが与えられ、操作体は開口の上縁部に押し付けられることとなる。
【0016】
操作体の回転は、水栓本体に対する操作体の支持部などを支点にして生じる。そこで、本構成の如く開口の縁部と操作体の上面とが直線状に接触するように構成することで、これら接触部位の全体が仮想の回転軸から略等距離となり、操作体と縁部との当接力が当接部の何れの個所においてもほぼ一定となる。当接力が均等になれば押し込み時に操作体がX方向の軸を中心に回転することがなくなり、操作体の押し込み操作を安定的に行うことができる。
【0017】
さらに、操作体の局部に強い当接力が作用することがなく、操作体の表面にメッキや塗装などの表面処理がされている場合でも表面処理の剥がれ等が防止される。
【0018】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具にあっては、前記X方向視において、前記第1ケースに形成される前記開口の縁部と前記操作体との隙間の形状が、前記操作体の中央を通るZ方向の軸を挟んで対称であり、前記隙間が、Z方向に沿って高さの異なる部位を備えていると好都合である。
【0019】
(効果)
第1ケースの開口の縁部と操作体との隙間がZ方向に沿って高さの異なる部位を備える構成としては、例えば、隙間がY方向に沿った中央部でZ方向の上方にカーブしているものや、逆に下方にカーブしているもの、あるいは、隙間がZ方向に波打っているものなどが含まれる。
【0020】
本構成であれば、押し込まれた操作体が第1ケースの開口の縁部に当接するとき、操作体が第1ケースに対してY方向に位置ずれし難くなる。よって、操作体の押し込み操作が安定的なものとなる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具にあっては、前記隙間が、X方向視において、Z方向に沿う領域を少なくとも一対備えていると好都合である。
【0022】
(効果)
本構成のように、開口の縁部と操作体との隙間の一部領域がZ方向に向くことで、操作体の押し操作時に操作体がY方向に移動しようとしても、この移動方向に対して直角な当該縁部が操作体に当接する。よって、操作体のY方向への動きが確実に規制されて操作体の操作感覚が向上する。
【0023】
また、Z方向に沿う隙間を形成する縁部が第1ケースに設けられることで操作体のY方向への移動を阻止する機能が第1ケースのみで発揮される。仮に、操作体がZ方向に押し付けられる縁部が第1ケースに設けられ、操作体のY方向への移動を阻止する縁部が第2ケースに設けられている場合には、第1ケースと第2ケースとの組付不良等によって操作体の位置決め機能が不十分なものとなる。しかし、本構成であれば第1ケースに操作体のZ方向およびY方向の規制部が形成されるから極めて正確な位置決め機能が発揮される。
【0024】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具は、前記操作体において、Z方向に沿って前記第1ケースの側に向く上面とX方向に向く操作面との境界に稜線が設けられ、X方向視において、前記稜線が、Y方向に沿った中央位置で前記第1ケースの側に最も突出した円弧状に形成されるとともに、前記境界線を前記操作体に重ねて延長することで仮想される前記第1ケースと前記第2ケースとの仮想境界線に対して前記第1ケースの側に形成されると好都合である。
【0025】
(効果)
一般に水栓器具は操作者の目線の位置よりも下方にある。よって、操作者は多くの場合、操作体を斜め上方から見下ろすこととなる。その場合に、操作体の上面と操作面との稜線がX方向視において第1ケースと第2ケースとの仮想境界線よりも上方にあることで、押し込まれた操作体を斜め上方から見たとき操作体の稜線が仮想境界線に対してさらに奥に押し込まれた位置に見える。よって、操作体の押込み状態が視覚的に捉え易くなる。
【0026】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具にあっては、前記水栓本体が水道栓に固定され、前記吐水口の軸線が鉛直方向に対して予め設定された角度となった状態において、前記操作体の前記押込位置が前記突出位置に対して鉛直方向に沿って低くなるよう前記操作体のX方向が水平方向に対して傾斜する状態に設定されていると好都合である。
【0027】
(効果)
操作者は操作体を見降ろしながら操作するから、通常は操作体の上部位置に指を触れつつ水平方向に押し力を付与することが多いと推測される。本構成では、操作体のX方向すなわち押し込み方向を奥側ほど下がるように設定してあるから、操作体の比較的上方の位置に水平方向の操作力が加われば操作体は上向きに姿勢変化しようとする。この結果、操作体の上面が第1ケースの開口の縁部に当接して操作体の姿勢が安定化する。
【0028】
尚、X方向の傾斜角度がそれ程過度なものでない場合、操作体に作用する上向きの回転力はさほど大きなものとはならない。よって、操作体の上面が第1ケースに強く押し付けられることはなく、操作体の表面にメッキや塗装が施されている場合でもこれらが損傷する機会は少ない。
【0029】
(特徴構成)
本発明に係る水栓器具にあっては、前記操作体が、前記切替機構に押し込み力を伝える入力部と、前記ケースの内部に延出する突出部とを備え、前記操作体が押し込み操作された際に前記突出部に当接して前記突出部の移動方向を規定する案内部が、前記水栓本体あるいは前記ケースに設けられていると好都合である。
【0030】
(効果)
操作体と切替機構とは操作体の入力部で当接する。操作体が押し込まれるとき、操作者の指が触れる操作体の位置に応じて操作体は様々な方向に姿勢変化しようとする。その結果、操作体の組み付け精度が劣っているような操作感を得たり、姿勢変化した操作体が開口の縁部に接触して操作体の表面装飾を損ねたりする可能性がある。
【0031】
しかし、本構成のように、操作体と水栓本体等に突出部と案内部を夫々設けることで操作体の姿勢変化を抑制することができる。よって、操作体が開口の縁部に接触する機会が少なくなり、また、両者が当接した場合でも互いの当接力が軽減される。よって、操作体の押込操作が安定化して操作感が向上するとともに、操作体の表面の塗装やメッキなどの剥がれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係る水栓器具の外観を示す斜視図
【
図5】操作体の輪郭とケースの縁部との位置関係を示す説明図
【
図6】X方向視における操作体とケースとの隙間の形状を示す説明図
【
図7】X方向視における操作体とケースとの隙間の他の形状を示す説明図
【
図11】第1ケースおよび第2ケースの他の実施形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔概要〕
本発明の水栓器具Sでは、内部に複数の流水路を有する水栓本体Jの先端に設けられ、吐水の吐出状態を切替える操作体1に特徴がある。この操作体1は、原水や浄水を切り替えて吐出する際に水栓器具Sを構成するケースCの外壁に設けられた開口2に対して出退する。以下、本発明に係る水栓器具Sの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
【0034】
〔全体構成〕
本実施形態に係る水栓器具Sの外観および構成を
図1,
図2に示す。水栓本体Jの先端部にはケースCが設けられ、水栓器具Sの外壁が構成される。ケースCは水栓本体Jの殆どの部位を覆い、水栓器具Sの全体外観がシンプルに仕上げられている。これにより、ケースCの境界線PLなどに汚れが溜まるのが防止される。具体的には、上方部を第1ケースC1が覆い、下方部は吐水口3を備えた第2ケースC2が覆っている。第1ケースC1と第2ケースC2との繋ぎ目は先端部においてはかなり高い位置にあり、水が掛かるのを極力防止している。
【0035】
第1ケースC1と第2ケースC2との境界線PLには開口2が設けられ、この開口2には吐水を例えば浄水と原水とに切り替える操作体1が設けてある。
図2に示すように、操作体1は、スラストロック方式の切替機構Kの先端に接続された押ボタンであり、例えば突出位置と押込位置とに変位して原水流路と浄水流路を切り替え操作する。
【0036】
第1ケースC1の上面には、操作体1によって切り替えられた吐水の種類を示す窓部Wが形成されている。水栓本体Jには、「原水」や「浄水」等の吐水状態を示す表示面41を備えた表示体4が設けられ、「原水」等の表示が窓部Wに交互に表示される。
【0037】
一方、
図2や
図6に示すように、第2ケースC2の下方には、吐水形状をシャワー形状やストレート形状に切り替えるスクリーン部材5が嵌め込まれている。スクリーン部材5には回転操作用のレバー51が設けられ、第2ケースC2の側面には、レバー51の位置を示す目盛り6が設けられている。
【0038】
〔切替機構〕
操作体1は有底筒状であり、
図1および
図2に示すように、第1ケースC1と第2ケースC2との境界位置にあって、水栓本体Jに設けられた切替機構Kに接続される。操作体1は、切替機構Kに連結するための穴部11を備えている。この穴部11を切替機構Kの突起K1に係合させて操作体1が切替機構Kに連結保持される。
図3に示すように、この状態で、切替機構Kに設けた操作軸K2の先端が操作体1の裏面に極めて近い位置にあり、操作体1を押し込むことで、操作体1の裏面が操作軸K2を押し込む。これにより、操作体1が突出位置から押込位置に移行する。逆に、操作体1を突出位置に戻す際には、操作体1を一旦押し込み、スラストロック機構のリターンばねを効かせて操作軸K2を突出させ、操作体1を突出位置まで押し出す。
【0039】
図2に示すように操作体1の一部には、突出部12が操作体1を押し込む方向に沿って設けられている。この突出部12は、水栓本体Jに軸支された表示体4の作用部42に当接する。表示体4は回動可能となるよう一対の軸部43が水栓本体Jに軸支されている。作用部42は、この軸部43に隣接して設けられている。軸部43の一方には、表示体4を例えば操作体1の突出位置の側に付勢する捩じりばね7が設けられている。操作体1の押し込みによって突出部12が作用部42を押し、表示体4が捩じりばね7の付勢力に抗って奥側に回転する。操作体1が突出位置に戻る際には、突出部12による作用部42への押し力が解除され、その代わりに捩じりばね7の付勢力によって表示体4が操作体1の側に反転する。
【0040】
操作体1が押し込まれるとき、操作体1のうち操作者の指が触れる位置に応じて操作体1は様々な方向に姿勢変化しようとする。その結果、操作体1の組み付け精度が劣っているような操作感を得たり、姿勢変化した操作体1が開口2の縁部21に接触して操作体1の表面装飾を損ねたりする可能性がある。そこで、
図4に示すように、水栓本体Jには、操作体1が押し込み操作された際に突出部12に当接して、突出部12の移動方向を規定する案内部Gが設けられている。ここでの案内部Gは、例えば、表示体4に設けられた作用部42と、水栓本体Jに設けられた規制部J1とを含んで構成される。
【0041】
図4(a)に示すように、突出部12が押し込まれる前の状態では、突出部12の先端が表示体4の作用部42に略当接した状態にある。同時に、突出部12の上面は、規制部J1の下面に近接した状態にある。この状態から操作体1が操作され突出部12が押し込まれると、作用部42および表示体4が回転する。その際、突出部12は、作用部42と規制部J1とによって移動方向が案内される。
【0042】
図4(b)は、操作体1の押し込みが完了した状態を示す。この状態では、作用部42の角度が突出部12の押し込み方向に対して大きく傾斜している。この状態では、捩じりばね7は最大の付勢力を発生している。よって、作用部42の傾斜角度と相まって、突出部12は上向きに逃げるように曲がる傾向がある。よって、突出部12は規制部J1の側に押し当てられた状態となる。尚、このような規制部J1は、例えば第1ケースC1に設けてあっても良い。
【0043】
このように、操作体1に突出部12を設け、水栓本体J等に案内部Gを設けることで、突出部12が表示体4の姿勢を切り替えるとともに操作体1の姿勢変化を抑制することができる。よって、水栓器具Sの操作感覚が上質なものとなる。また、操作体1が開口2の縁部21に接触する機会が少なくなり、両者が当接した場合でも互いの当接力が軽減される。本構成であれば、操作体1の押込操作が安定化して操作感が向上するとともに、操作体1の表面の塗装やメッキなどの剥がれを防止することができる。
【0044】
尚、本実施形態では、Z方向において操作体1の高さ中央位置が操作軸K2の位置に対して上方に設定してある。具体的には、
図3に示すように、1~5mmの段差Hを設けてある。こうすることで、操作体1を押し込んだとき、操作体1に対して指が当接する位置が操作軸K2よりも上に位置する機会が多くなる。この結果、操作体1が上向きに回転し、操作体1の上面13が開口2の上縁部21aに接触する他、突出部12が案内部Gに当接することにより操作体1の姿勢が安定化する。
【0045】
〔操作体1〕
以下には操作体1の構成につきさらに具体的に示す。
図5に示すように、操作体1の出退方向をX方向とし、X方向に垂直で吐水口3の軸芯の延出方向に最も近い方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に垂直な方向をY方向とする。
図5は、操作体1が突出位置にある状態でこれをZ方向から見たときの操作体1の露出部分に着目する。操作体1のうちY方向における中央位置において、X方向に沿った操作体1の輪郭と開口2の縁部21との距離を中央距離L1とする。一方、Y方向における両端位置でのX方向に沿った操作体1の輪郭と開口2の縁部21との距離を端部距離L2とする。本構成では、中央距離L1が端部距離L2よりも長くなるように構成してある。
【0046】
このうち、例えば中央距離L1は4~10mmが好ましい。4mm未満になると、操作体1の押し込み時に開口2の上縁部21aに指が干渉して操作性が低下する可能性がある。また、指の干渉を避けるために突出長さが短いまま押し込み操作量を短くすると、やはり操作性が低下し、操作体1が何れの選択位置にあるのかが把握し難くなる。これらの不都合を確実に回避するには、中央距離L1は7mm以上、特に8mm以上とするのがよい。
【0047】
一方、中央距離L1が10mmを超えると、操作体1の押し込み時に指が開口2の上縁部21aに干渉するのを防止するという操作性のさらなる向上は期待できない。むしろ、操作体1が過大となると、切替機構Kの配置スペースが縮小される他、第1ケースC1の窓部Wが小さくなり、表示体4の視認性が低下する可能性がある。これらを解消するためにはケースCの大型化が強いられる。よって、このような不都合を回避するために、中央距離L1は10mm以下、特に9mm以下とするのが好ましい。以上のことから、中央距離L1は例えば8.5mm程度に設定されると好都合である。
【0048】
一方、端部距離L2は3~7mmが好ましい。3mm未満になると、開口2からの操作体1の突出長さが短くなって操作性が低下する。よって、より操作性を高めるためには端部距離L2は4mm以上、特に5mm以上とするのが良い。7mmを超えると、操作体1を操作しないときでも手が操作体1に触れ易くなり、取扱性が低下するほか操作体1に傷が生じ易くなる。よって、これらの不都合を確実に回避するには、端部距離L2は7mm以上以下、さらには6mm以下にするのが好ましく、特には、5.5mm程度に設定されると好都合である。
【0049】
中央距離L1と端部距離L2との差(L1-L2)は、1~5mmとするのが好ましい。1mm未満になると、上記の如く中央距離L1として所定の距離を確保して指の干渉を防止する利点が減少し、端部距離L2については上記の如く突出量が過大となる場合の不都合が生じ易くなる。よって、これらの不都合をより確実に回避するには(L1-L2)は2mm以上、特に3mm以上とするのが好ましい。
【0050】
一方、(L1-L2)が5mmを超えると、中央距離L1については突出量が過大となり易く、端部距離L2については突出量が過小となり易い。よって、これらの不都合を回避するには(L1-L2)は5mm以下、特に4mm以下とするのが好ましい。以上を勘案すると、(L1-L2)は3mm程度とするのが好適である。
【0051】
尚、
図5に示すように、操作体1のうちY方向における中央位置と両端位置との間の位置について、X方向に沿った操作体1の輪郭と開口2の縁部21との距離をLnとし、端部距離L2との差(Ln-L2)が1mm以上となるLnがY方向において存在する範囲の長さをP1とすると、長さP1は15~50mmとするのが好ましい。
【0052】
長さP1が15mm未満となると、操作体1の押し込み時に指が開口2の上縁部21aに干渉するのを防止する効果が発揮され難くなる。よって、長さP1はさらに20mm以上、特に30mm以上とするのが好ましい。
【0053】
一方、長さP1が50mmを超えると操作体1が大型化してしまう。よって、長さP1は、さらに40mm以下、特に35mm以下とするのが好ましい。以上のことから、長さP1は32mm程度にするのが好適である。
【0054】
また、上記差(Ln-L2)は、Y方向における中央位置から両端部に離れるに伴い漸減するように設定するのがよい。この漸減には、差(Ln-L2)が変化しない範囲がある場合も含むものとする。
【0055】
このように操作体1の中央距離L1を端部距離L2よりも長く構成しておけば、操作体1を押し込む際に、操作する指がケースCに接触する機会が少なくなる。操作体1が、スラストロック方式の切替機構Kに接続されている場合には、操作体1を押込位置に固定する際に押込位置の少し奥まで押し込む必要がある。その際に、本構成の水栓器具Sであれば指が第1ケースC1に触れ難いから、押し込み操作が違和感のないものになる。
【0056】
本実施形態の水栓器具Sにおいては、操作体1の操作性を高めるために第1ケースC1の形状にも工夫がある。
図5に示すように、第1ケースC1を吐水口3とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、開口2の縁部21のうちY方向に沿った両端部に、開口2の縁部21のうちY方向に沿った中央部に対して操作体1の突出側に位置する張出部C11を設けてある。
【0057】
この張出部C11により、操作体1の押込位置が認識され易くなる。一般に、水栓器具Sの位置は操作者の腰から胸の辺りに位置することが多い。よって、操作体1を押し込むとき、操作者は例えば親指の指先部分の長手方向をY方向に沿わせた姿勢にする。その場合、操作体1を最も奥に押し込んだとき、操作体1の操作面14から外れた指の部位が開口2の縁部21に設けた張出部C11に触れることとなる。
【0058】
指がこの張出部C11に触れる場合には、指が開口2の中央部に触れる場合に比べて特に問題は生じない。例えば、親指の腹の部分が張出部C11に触れた場合でも、親指を少し曲げることで操作体1をさらに奥に押し込むことができるから、張出部C11に触れることでその後の押し込み操作が阻害されたような違和感は生じない。このように張出部C11に触れる感触により操作者は操作体1を所定の位置まで押し込んだことを確認することができる。また、操作体1の押込位置を指の感触で知ることができるため、押し込み終了時に操作体1を過度に押すことが無くなり、押し込み操作を楽に行うことができる。
【0059】
図5に示すように、第1ケースC1を吐水口3とは反対の位置からZ方向に沿って見たとき、本実施形態の開口2の縁部21のうち操作体1の手前に見える上縁部21aが直線状に構成されている。これは、操作体1の押し込み操作を安定化し、操作体1の表面の損傷を防止しようとするものである。
【0060】
この直線状に形成される部分のY方向の長さP2は、10mm以上さらには15mm以上、特に20mm以上とするのが好ましい。なお、ケースCの大型化を抑えるために、長さP2は、40mm以下さらには35mm以下とするのが好ましい。
【0061】
通常、操作体1は操作者から見て下方位置にあるから、操作者の指は操作体1のうち上部を押すことが多い。その場合、操作体1には上向きに姿勢変化するような回転モーメントが作用し、操作体1は開口2の上縁部21aに押し付けられる。
【0062】
操作体1の回転は、操作体1と水栓本体Jとの接続部などに形成されるY方向に沿った仮想の回転軸を中心に生じる。このとき、開口2の縁部21と操作体1の上面13とが直線状に接触することで、これら接触部位の全体が、仮想の回転軸から略等距離となる。この結果、操作体1の上面13と開口2の上縁部21aとが個々の部位において同時に当接し易くなり、操作体1の押し込み感覚に違和感が生じ難くなる。
【0063】
また、互いに当接する部位の各部に生じる圧力が略同じになるから、操作体1の表面にメッキや塗装などの表面処理がされている場合でも、操作体1の局部に強い当接力が作用することがなく、表面処理層の剥がれ等の発生が防止される。
【0064】
本実施形態の操作体1は、出退動作を行う際のY方向の位置が開口2の縁部21によって案内される。本実施形態のケースCは第1ケースC1と第2ケースC2とを備え、両者の境界線PLは開口2の縁部21と交差する位置に設けられている。このうち特に第1ケースC1をX方向から見たとき、第1ケースC1に形成される開口2の縁部21と操作体1との隙間Aの形状が、操作体1の中央を通るZ方向の軸を挟んで対称に形成されており、しかも、この隙間AがZ方向に沿って高さが異なる状態に構成されている。
【0065】
具体的には、
図6に示すように、操作体1の上面13のうちY方向の中央位置が最も上方に突出し、X方向から見たときには略円弧状に形成されている。これにより操作体1と開口2との隙間Aも必然的にY方向の中央部で最も高い位置となる。
【0066】
操作体1が押し込まれる際には操作体1が第1ケースC1の開口2の上縁部21aに当接するが、操作体1の上面13の各部位の高さを変えることで、上縁部21aが操作体1の上面13に当接する際にY方向の分力を加え、操作体1がY方向に位置ずれするのを防止することができる。よって、操作体1の操作感覚が上質な水栓器具Sを得ることができる。
【0067】
尚、本構成のように操作体1の上面13の中央を上方に膨らませると、隙間Aの形状がシンプルになり、上面13と上縁部21aとの当接長さが短くなる。よって、操作体1の表面処理層の剥がれ等もより軽微になる。
【0068】
尚、隙間Aの他の構成としては、例えば、
図7に示すようにY方向の両端部において夫々Z方向に山が形成されて操作体1の上面13の中央部が凹状に形成されているものや、Y方向に沿って波打っているものなど各種の形状をとり得る。また、X方向から隙間Aを見たとき、
図6に示したような滑らかな曲線であっても良いし、
図7に示すような角部を挟んで連続する直線で構成されていてもよい。
【0069】
本実施形態の操作体1と第1ケースC1をX方向から見たとき、
図6に波線で示すように隙間Aのうちの一部がZ方向に沿うものとし、これを少なくとも一対備えて構成するのがよい。ここでは、例えば第1ケースC1の縁部21のうち操作体1の側方に対向する波線の領域がZ方向に沿うよう形成されている。
【0070】
このように、開口2の縁部21と操作体1との隙間Aの一部領域がZ方向に向くものであれば、操作体1の押し操作時に操作体1がY方向に移動しようとしても、この移動方向に対して直角な縁部21が操作体1に当接する。よって、操作体1のY方向への動きを確実に規制して操作体1の操作感覚を向上させることができる。
【0071】
また、Z方向に沿う隙間Aが形成されるような開口2の縁部21が第1ケースC1に設けられることで、操作体1のY方向への移動を阻止する機能が第1ケースC1のみで発揮される。仮に、操作体1がZ方向に押し付けられる縁部21が第1ケースC1に設けられ、操作体1のY方向への移動を阻止する縁部21が第2ケースC2に設けられている場合には、第1ケースC1と第2ケースC2との組付不良等によって操作体1の位置決め機能が不十分なものとなる。しかし、本構成であれば、第1ケースC1のみに操作体1のZ方向およびY方向の規制部J1を形成するから、極めて正確な位置決め機能が発揮されることとなる。
【0072】
図1および
図6に示すように、本実施形態の操作体1は、Z方向に沿って第1ケースC1の側に向く上面13と、X方向に向く操作面14との境界に稜線15が設けられている。X方向視において、この稜線15は、Y方向に沿った中央位置で第1ケースC1の側に最も突出した略円弧状に形成されている。さらに、第1ケースC1と第2ケースC2との境界線PLを操作体1の操作面14に重なるように仮想的に延長し、操作体1の稜線15がこの仮想境界線PLに対して第1ケースC1の側に偏位するように構成されている。
【0073】
このように構成するのは、操作体1の押し込状態を視認し易くするためである。一般に水栓器具Sは、操作者の目線の位置よりも下方にあることが多い。よって、操作者は、多くの場合、操作体1を斜め上方から見下ろすこととなる。その場合に、操作体1の上面13と操作面14との稜線15が、X方向視において第1ケースC1と第2ケースC2との仮想境界線PLよりも上方にあることで、押し込まれた操作体1を斜め上方から見たとき、操作体1の稜線15が仮想境界線PLに対してさらに奥に押し込まれた位置に見える。よって、操作体1の押込み状態が視覚的に捉え易くなる。
【0074】
図8に示すように、本実施形態の操作体1は、やや下方に向けて押し込む姿勢に設定すると好都合である。水栓本体Jが水道栓J0に固定され、吐水口3の軸線がZ方向に対して予め設定された角度となった状態において、操作体1が突出位置にあるときに比べて押込位置にあるときの方がZ方向に沿って低い位置となる。つまり、操作体1のX方向を水平方向に対して傾斜する状態に設定しておく。例えば、傾斜角α1は1~10度程度に設定するのが好ましい。
【0075】
また、
図8に示すように、操作体1の操作方向であるX方向と、水栓本体Jの斜めに延在する筒部J2の延在方向とのなす角α2は40度以下にするのが好ましい。40度を超えると、操作体1の押し込み操作に際して筒部J2の基端部に過度な曲げモーメントが作用する可能性があり、筒部J2との接続部材等が損傷するおそれが生じる。また、操作体1の押し込み操作時に筒部J2が撓み易くなり、操作体1の位置が移動して操作性が損なわれる。よって、角α2はさらに35度以下、特には30度以下にするのが好ましく、25度程度とするのが好適である。
【0076】
操作者は操作体1を見降ろしながら操作するから、通常は操作体1の上部位置を水平方向に押すことが多い。しかし、本実施形態の操作体1は、X方向すなわち押し込み方向を奥側ほど下がるように設定してあるから、操作体1の比較的上方の位置に操作力が加われば、操作体1は上向きに姿勢変化しようとする。この結果、操作体1の上面13が第1ケースC1の開口2の縁部21に当接し、操作体1の押し込み姿勢が安定化する。
【0077】
尚、X方向の下向き傾斜角度が少ないほど、操作体1に作用する上向きの回転力は小さくなり、本実施形態の操作体1においても、下向き傾斜角度はそれほど大きなものではない。よって、操作体1の操作時に操作体1の上面13が第1ケースC1に過度に強く押し付けられることはなく、操作体1の表面にメッキや塗装が施されている場合でも、これらが損傷するおそれは少ない。
【0078】
〔材質〕
操作体1の材質は例えばポリアセタール樹脂(POM材)等で構成することができる。操作体1は、第1ケースC1や第2ケースC2と摺接する。また、突出部12は所定の剛性を維持する必要がある。よってこれらに用いる材料は、強度と耐摩耗性を備えていることが望ましい。
【0079】
また、製造の容易性や耐久性を確保できるものであれば適宜の材料選択が可能である。例えば、各種金属・ABS樹脂等を使用する事ができ、コスト・外観・成形性の観点でメッキグレードABS樹脂が望ましい。
【0080】
〔他の実施形態〕
図9に示すように、操作体1の上面13にはY方向に延出する凸状の土手部16が形成されていてもよい。
【0081】
このような土手部16を形成しておくことで、仮に操作者の指が操作体1の稜線15を超えて上面13に触れる場合に指が土手部16に接触し易くなる。このとき操作者は、指が土手部16から離れるように無意識に指の姿勢を変更して、指が第1ケースC1に触れることで違和感を持つ機会を減らすことができる。
【0082】
また、操作体1が押込位置にあるとき、通常、操作面14と上面13との間の稜線15が第1ケースC1と第2ケースC2との境界線である仮想境界線PLとがほぼ同位置となる。よって土手部16を設けた場合には、土手部16は必ず仮想境界線PLよりも奥側に位置する。これにより操作者は、操作体1が押込位置にあることを明確に認識することができる。
【0083】
図10に示すように、第1ケースC1のうち開口2の周辺の領域に、縁部21に向けて窪んだ凹部C4を形成することもできる。仮に、操作体1を押す指が上面13の一部に掛かっているような場合、操作体1を奥まで押し込むと第1ケースC1の上面に指が触れる可能性がある。これにより、押込み操作が阻害されるような違和感が生じる可能性がある。しかし、本構成のように凹部C4を形成しておくことで、操作体1を奥まで押し込んでも指が第1ケースC1に接触せず、違和感なく押し込み操作を終えることができる。
【0084】
図11に示すように、第1ケースC1および第2ケースC2のうち開口2の周辺の領域に、縁部21に向けて窪んだ凹部C5を形成することもできる。この場合、操作体1が押込位置にある状態では、操作体1の操作面14を、第2ケースC2のうち凹部C5を除いた他の表面が操作体1に重なる位置まで仮想的に延長された表面と重なるように構成する。こうすることで操作体1を押し込む際に指が第1ケースC1および第2ケースC2に当接せず、また、操作体1の押込位置を容易に目視確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の水栓器具は、吐水を例えば原水や浄水に切り替える押し込み式の操作体を備えた水栓器具などに適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 操作体
13 上面
14 操作面
15 稜線
2 開口
21 縁部
21a 上縁部
3 吐水口
A 隙間
C ケース
C1 第1ケース
C2 第2ケース
G 案内部
J 水栓本体
K 切替機構
L1 中央距離
L2 端部距離
S 水栓器具
PL 仮想境界線