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  • 特許-ラッピング基材の製造方法及び製造装置 図1
  • 特許-ラッピング基材の製造方法及び製造装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ラッピング基材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/04 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B29C63/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017250644
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019115993
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】709002521
【氏名又は名称】庄内機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184767
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098556
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 紘造
(74)【代理人】
【識別番号】100137501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 百合子
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝実
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007829(JP,A)
【文献】特開2010-023245(JP,A)
【文献】実開昭60-075022(JP,U)
【文献】特開平04-088030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材の、上面、両木口及び両側面をラッピングシートでラッピングする方法であって、
ラッピングシートは基材の上面より、長尺方向は両木口の縦方向の長さ分、短尺方向も同様の長さ分長いものを用いて、木口と側面を覆いつつ、
接着剤が塗布された、伸長性のある素材からなるラッピングシートの4隅を引っ張って、木口と側面の間の縦稜線に沿うようにシート縁を伸ばし、基材の形状に沿うように伸長させ、
上面、両木口、両側面を一体的にラッピングする工程を含む、ラッピング基材の製造方法。
【請求項2】
伸長性のある素材が、オレフィン系又塩化ビニルである、請求項1のラッピング基材の製造方法。
【請求項3】
板状の基材の、上面、両木口及び両側面をラッピングシートでラッピングする装置であって、
ラッピングシートに接着剤を塗布する手段と、ラッピングシートは基材の上面より、長尺方向は両木口の縦方向の長さ分、短尺方向も同様の長さ分長いものを用いて、木口と側面を覆いつつ、伸長性のある素材からなるラッピングシートの4隅を引っ張って、木口と側面の間の縦稜線に沿うようにシート縁を伸ばし、基材の形状に沿うように伸長させる手段を有し、
上面、両木口、両側面を一体的にラッピングする、ラッピング基材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピング基材の製造方法及び製造装置に関する。さらに詳しくは、ラッピングシートの縁を伸ばすことで、基材の上面、両口、両側面を一体的にラッピングするラッピング基材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合板、PB(Particle Board)及びMDF(Midium Dencity Fiber Board)などの板状の基材に樹脂製の化粧シート等をラッピングしたラッピング基材が、クローゼットや棚、造作材等に、デザインや価格等の観点から、多用されている。このラッピング基材は、通常、上面及び4側面の併せて5面がラ
ッピングされている。
【0003】
このようなラッピング基材を製造する方法として、長尺の基材と基材の幅よりも両側面を覆う分だけ幅広のラッピングシートを貼り合わせ、両側のはみ出し部分を側面に折り込んで接着して上面と両側面の3面をラッピングし、続いて基材の長さに合わせてラッピングシートを切断し、その後に、後加工で木口にシートを張りつけたり、塗装する方法がある。さらには、木口も含めて一体的にラッピングする方法として、ラッピングシートの4隅をあらかじめ直角に打ち抜いておき、両木口や両側面にラッピングシートを折り曲げたときに、重なる部分をあらかじめ除いておく方法がある。加えて、4隅を特殊形状に打ち抜き、側面、木口だけでなく、側面と木口が向き合う縦稜線部も含めてラッピングする方法もある(特許文献1 特開2008-87160)。そして、ラッピングシートを側面と木口に沿って、折り曲げて両者が向き合う縦稜線部で接着ししたのち、余剰部分を切断する方法もある(特許文献2 特開2015-20305)。
【0004】
しかし、これらの方法では、ラッピング基材を覆うラッピングシートに重なりや切れ目が生じ、ラッピング基材の見た目が美しくない上に、その部分からラッピングシートが剥がれたり、切れたりしやすいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-87160号公報
【文献】特開2015-20305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の方法である、ラッピング前後で、ラッピングシートの一部を切除することで、基材の形状にラッピングシートが合うようにする方法とは異なる、ラッピング基材の製造方法及び製造装置を提供することである。本発明の他の目的は、基材を覆うラッピングシートに重なりや切れ目がない、見た目も美しいラッピング基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ラッピングシートの縁を伸ばして、基材の上面、両側面、両木口を一体的にラッピングすることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.板状の基材の、上面、両木口及び両側面をラッピングシートでラッピングする方法であって、接着剤が塗布された、伸長性のある素材からなるラッピングシートの縁部分を引っ張り基材の形状に沿うように伸ばしつつ、上面、両口、両側面を一体的にラッピングする工程を含むラッピング基材の製造方法。
2.板状の基材の、上面、両木口及び両側面をラッピングシートでラッピングする装置であって、ラッピングシートに接着剤を塗布する手段と、ラッピングシートの縁を引っ張り基材の形状に沿うように伸ばす手段を有するラッピング基材の製造装置。
3.上面、両木口及び両側面がラッピングシートで接着され被覆されたラッピング基材であって、基材を覆うラッピングシートに切れ目や重なりがない、ラッピング基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のようにラッピングシートの一部を切除するのでなく、ラッピングシートの縁を引き伸ばすことで、基材の上面、両側面、両木口を一体的にラッピングするという、従来とは全く異なるラッピング基材の製造方法及び製造装置を提供できる。また、基材を覆うラッピングシートに切れ目や重なりがない、ラッピング基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ラッピングシートの縁を伸長させ、基材をラッピングする方法を示した。
図2】ラッピングシートの縁を伸長させる方法で、連続的にラッピング基材を製造する方法を示した
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のラッピング装置で、ラッピングする基材は、通常長方形の板状で、木製、金属製、及びプラスチック製等であるが、木製であることが好ましい。木製としては、例えば、合板、PB、及びMDFが挙げられる。
ラッピングシートは伸長性のある素材であれば特に制限はないが、主に樹脂製のものを用いる。樹脂製のものとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系シート、塩化ビニルシート、ポリエチレンテレフタラートに代表されるポリエステルフィルム等が挙げられる。シートには、木目などの印刷が施されていてもよい。
【0012】
シートの形状に特に制限はないが、シートは、基材上面よりやや大きいものを用いることが好ましい。例えば、基材が長方形の板状であれば、基材の上面より、長尺方向は両木口の長さ分、短尺方向は両側面の長さ分長い長方形状のものを用いることができる。こうすれば、4隅周辺は基材の角の形状に合わせるためにシートを伸ばす必要があるが、伸ばす部分は4隅周辺に限られ、プリント柄が歪む部分を少なくすることができる。また、シートはロール状に巻かれているものを切断し、長方形状にして使用することもできる。ラッピングシートに塗布する接着剤は、従来ラッピング基材に用いられていたものを用いることができる。
【0013】
ラッピングシートを基材にラッピングする際は、シートに接着剤を塗布し、塗布面を下にして、基材上面にシートを載せる。そして、シートの縁を引っ張って、基材の形状に沿うようにシートを伸ばし、基材の両木口、両側面をシートで覆っていく。シートを伸ばす際は、シートの4隅を鰐口のようなもので掴んで引っ張ってもよいし、ローラーで伸ばしてもよいし、型を用いて型押しして伸ばしてもよい。温度はシートが伸長しやすい温度に保つのが好ましい。伸びて、基材下面からはみ出た部分はトリミングしてもよし、基材下面に折り返してもよい。
シートの縁を引っ張る際は、例えば、シートの4隅を引っ張って、4か所ある基材の木口と側面の間の稜線(以下縦稜線)に沿うようにシート縁を伸ばし、基材の形状に合うようシートを伸長させてもよい。
【0014】
このラッピング基材を製造する装置の、接着剤を塗布する手段は、通常用いられているコーティング手段、例えばロールコーター、ブレードコーター等で差支えない。ラッピングシートの縁を伸ばす手段に特に制限はなく、例えば、アームの先にシートを掴む鰐口がついているようなものでもよいし、ローラーでもよいし、型押しするための型枠でもよい。装置には基材下面からはみ出たシートを切断するためのカッターがついていてもよいし、基材下面に折り返すための手段、例えばコロがついていてもよい。
【0015】
また、連続的にラッピング基材を生産できるように、基材やラッピングシートの移動手段も加えた装置としてもよい。例えば、板状の基材をロールに巻いてあるラッピングシートを使って連続的にラッピングする装置であって、ラッピングシートに接着剤を連続的に塗布する手段と、基材の移動手段と、ラッピングシートの移動手段と、基材上面にラッピングシートを載せる手段と、ラッピングシートを進行方向に直角に切断する手段と、ラッピングシートの縁部分を引っ張りながら基材の形状に沿うように伸ばしつつ、上面、両木口、両側面を一体的にラッピングする手段と、基材からはみ出たラッピングシートをトリミングする手段とからなるラッピング基材の製造装置である。トリミングする手段は、基材下面にはみ出たシートを折り返す手段に替えることもできる。
ここで、基材やラッピングシートの移動手段に、特に制限はないが、例えば、基材は、ラインロールを使って移動させることができるし、シートを基材上面にロール(以下上面ロール)を配しこれとラインロールで挟み込むようにして、シートを移動させることができる。基材上面にラッピングシートを載せる手段は、例えば前記の上面ロールで軽く押し付けることでもよく、圧着しすぎてシートの縁が伸びるのを妨害しないようにするのが好ましい。また直角に切断する手段としては、例えば、回転歯カッターやレーザーカッターが挙げられる。
ラッピングシートの縁部分を伸ばす際は、ラッピングシートの縁を伸ばす手段を、製造ラインの速度に同期させて動かせば、基材を移動させながらシートの縁を伸ばすことができる。
【0016】
以上のような製造方法や装置を使えば、基材を覆うラッピングシートに切れ目や重なりがない、ラッピング基材を製造できる。
【0017】
以下に図面で、本発明を説明する。
【0018】
図1に、本発明の方法で、ラッピングシートを基材にラッピングする様子を示した。
【0019】
まずは、接着剤を塗布したシートを、塗布面を下にして、基材上面に載せる(a)。そして、シートの4隅を引っ張って、4か所ある基材の木口と側面の間の稜線(以下縦稜線)に沿うようにシート縁を伸ばして基材の形状に合うようシートを伸長させ、基材の両木口、両側面をシートで覆っていく(b)。この際、温度はシートが伸長しやすい温度に保つ。伸びて、基材下面からはみ出た部分はトリミングする(c)。こうしてラッピング基材が出来上がる(d)。
【0020】
図2で、連続的にラッピング基材を製造する様子を示した。
【0021】
ロール状にまかれたポリプロピレンラッピングシート1は、接着剤塗布手段であるブレードコーター2に供給され、接着面である裏面に接着剤が塗布され、上面ロール4に供給される。一方で、基材はラインロール3で運搬され、上面ロールで、ラッピングシートと軽く貼り合わされる。続いて、進行方向直角に、レーザーカッター5でラッピングシートが切断され、その四隅を鰐口付きアームでつかんで矢印方向へ伸ばし、両木口、両側面をラッピングシートで覆う。このとき鰐口付きアームは製造ラインの速度に同期して移動するようにする。仕上げに、基材の下面からはみ出たシート6をトリミングする。
このようにして、連続的にラッピング基材を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の製造方法は、従来にないラッピング基材の製造方法であり、本製造方法によれば、基材を覆うラッピングシートに切れ目や重なりのない、耐久性が高くて見た目も美しいラッピング基材を連続的に製造することができるようになるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0023】
1.ポリプロピレンシート
2.ブレードコーター
3.ラインロール
4.上面ロール
5.レーザーカッター
6.下面からはみ出たシート
図1
図2