(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】長時間作用型アドレノメデュリン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20220207BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20220207BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220207BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220207BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20220207BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220207BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220207BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/46
A61P9/00
A61P29/00
A61K47/60
A61K38/16
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2017540025
(86)(22)【出願日】2016-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2016077543
(87)【国際公開番号】W WO2017047788
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2015184685
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 和雄
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 基生
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532682(JP,A)
【文献】特表2013-533217(JP,A)
【文献】国際公開第2005/044846(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141819(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/051383(WO,A1)
【文献】特表平09-506116(JP,A)
【文献】特表2005-525302(JP,A)
【文献】国際公開第2009/044918(WO,A1)
【文献】特表2004-525097(JP,A)
【文献】Peptides,2014年,Vol.57,p.118-121
【文献】Advanced Drug Delivery Reviews,2002年,Vol.54,p.459-476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/46
A61K 47/60
A61K 38/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
A-CH
2-B (I)
[式中、
Aは、
以下の式(V-1-1)、(VI-1-1)、(VII-1-1)、(VII-1-2)、(VII-2-1)、又は(VIII-1-1):
【化1】
[式中、
nは、1以上の整数であり、
n
'
は、nに関する前記定義と同様の意味を有し、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される、1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基であり、
Bは、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分であり、
但し、ペプチド部分Bは、そのN末端のαアミノ基の窒素原子がメチレン基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されており、
前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体は、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(g)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、前記ジスルフィド結合が、エチレン基によって置換されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(h)(a)~(g)のいずれかのペプチドにおいて、1~5個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物。
【請求項2】
-(CH
2CH
2O)
n-基若しくは-(CH
2CH
2O)
n
'-基が、合計で1~100 kDaの範囲の重量平均分子量を有する、請求項
1に記載の化合物
若しくはその塩、又はそれらの水和物。
【請求項3】
前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体が、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(i)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、請求項
1又は2に記載の化合物
若しくはその塩、又はそれらの水和物。
【請求項4】
前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体が、下記:
(h
')(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(h
')のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(h
')のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、請求項
1又は2に記載の化合物
若しくはその塩、又はそれらの水和物。
【請求項5】
アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体と、式(I-1):
A-CHO (I-1)
で表される1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基Aの前駆体アルデヒドとを還元剤存在下で反応させて、式(I)で表される化合物を得る、連結工程を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する医薬。
【請求項7】
循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療に使用するための、請求項
6に記載の医薬。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間作用型アドレノメデュリン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
アドレノメデュリン(adrenomedullin、以下、「AM」とも記載する)は、1993年に褐色細胞組織より単離及び同定された生理活性ペプチドである(非特許文献1)。発見当初、AMは、強力な血管拡張性の降圧作用を発揮することが判明した。例えば、特許文献1は、ヒトAMのアミノ酸配列を含む血圧降下作用を有するペプチドを記載する。
【0003】
その後の研究により、AMは、心血管保護作用、抗炎症作用、血管新生作用及び組織修復促進作用等の、多彩な薬理作用を発揮することが明らかになった。また、AMの薬理作用を、疾患治療に応用することを目指して、種々の疾患患者に対するAMの投与研究が行われてきた。なかでも、炎症性腸疾患、肺高血圧症、末梢血管疾患又は急性心筋梗塞の治療薬としてのAMの有用性が期待されている。
【0004】
例えば、特許文献2は、アドレノメデュリン若しくはその誘導体であって、非細菌性の炎症を抑制する活性を有するもの、又はそれらの塩であって非細菌性の炎症を抑制する活性を有するものを有効成分として含有する非細菌性の炎症性腸疾患の予防又は治療剤を記載する。
【0005】
特許文献3は、ステロイド製剤、免疫抑制剤又は生物学的製剤の使用が困難又は効果不十分な炎症性腸疾患の予防又は治療を必要とする患者における前記炎症性腸疾患の予防又は治療方法であって、有効量のアドレノメデュリン、その修飾体であって炎症を抑制する活性を有するもの、又は前記アドレノメデュリン若しくは前記修飾体の塩であって炎症を抑制する活性を有するものを前記患者に投与することを含む前記予防又は治療方法を記載する。
【0006】
また、AMの構造活性相関研究から、AMの生物活性に寄与し得る必須配列の特定が進められた(非特許文献2~9)。
【0007】
一般に、ペプチドは、生体内(例えば血中)における代謝反応に起因して、生体内における半減期が短いことが知られている。このため、ペプチドを医薬の有効成分として使用する場合、該ペプチドに他の基を連結したペプチド誘導体の形態とすることにより、生体内における半減期を延長して薬物動態を改善できる場合がある。
【0008】
例えば、特許文献4は、1.5時間を超える血清半減期を有することを特徴とする生物学的に活性なインテルメジンペプチド又はアドレノメデュリンペプチドを記載する。当該文献は、アルキル基とペプチド部分とをアミド結合を介して連結することを記載する。
【0009】
特許文献5は、AMのTyr1のフェノール性水酸基を介してポリエチレングリコール(以下、「PEG」とも記載する)基と連結したAM誘導体を記載する。
【0010】
特許文献6は、PEG-アルデヒドとペプチドの遊離アミノ基とを反応させて、ペプチドの遊離アミノ基にPEG基が連結されたペプチド誘導体を製造する方法を記載する。当該文献は、ペプチドとしてAMを記載する。
【0011】
非特許文献10は、AMのN末端のαアミノ基にPEG基をアミド結合を介して連結したAM誘導体を記載する。当該文献は、PEG基を連結したAM誘導体は血中半減期が延長されたことを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第2774769号公報
【文献】特許第4830093号公報
【文献】国際公開第2012/096411号
【文献】国際公開第2012/138867号
【文献】国際公開第2013/064508号
【文献】米国特許出願公開第2009/0252703号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】Kitamura K, Kangawa K, Kawamoto M, Ichiki Y, Nakamura S, Matsuo H, Eto T. Adrenomedullin: a novel hypotensive peptide isolated from human pheochromocytoma. Biochem Biophys Res Commun, 1993年4月30日, 第192(2)巻, pp. 553-560.
【文献】Belloni, A.S. ら, Structure-activity relationships of adrenomedullin in the adrenal gland. Endocr Res, 1998年, 第24(3-4)巻, p. 729-30.
【文献】Champion, H.C. ら, Catecholamine release mediates pressor effects of adrenomedullin-(15-22) in the rat. Hypertension, 1996年, 第28(6)巻, p. 1041-6.
【文献】Champion, H.C., G.G. Nussdorfer, 及びP.J. Kadowitz, Structure-activity relationships of adrenomedullin in the circulation and adrenal gland. Regul Pept, 1999年, 第85(1)巻, p. 1-8.
【文献】Eguchi, S. ら, Structure-activity relationship of adrenomedullin, a novel vasodilatory peptide, in cultured rat vascular smooth muscle cells. Endocrinology, 1994年, 第135(6)巻, p. 2454-8.
【文献】Garcia, M.A. ら, Synthesis, biological evaluation, and three-dimensional quantitative structure-activity relationship study of small-molecule positive modulators of adrenomedullin. J Med Chem, 2005年, 第48(12)巻, p. 4068-75.
【文献】Mitsuda, Y. ら, Large-scale production of functional human adrenomedullin: expression, cleavage, amidation, and purification. Protein Expr Purif, 2002年, 第25(3)巻, p. 448-55.
【文献】Roldos, V. ら, Small-molecule negative modulators of adrenomedullin: design, synthesis, and 3D-QSAR study. ChemMedChem, 2008年, 第3(9) 巻, p. 1345-55.
【文献】Watanabe, T.X. ら, Vasopressor activities of N-terminal fragments of adrenomedullin in anesthetized rat. Biochem Biophys Res Commun, 1996年, 第219(1)巻, p. 59-63.
【文献】Kubo, Kら, Biological properties of adrenomedullin conjugated with polyethylene glycol. Peptides, 2014年, 第57巻, p. 118-21
【文献】Kato, J., Kitamura, K.. Bench-to-bedside pharmacology of adrenomedullin. European Journal of Pharmacology, 2015年, 第764巻, p. 140-148.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記のように、生体内における持続性向上の観点からAMの薬物動態を改善するために、AMにPEG基のような他の基を連結したAM誘導体が知られている。しかしながら、公知のAM誘導体には改良の余地が存在した。例えば、AMのような比較的小さいペプチドにPEG基のような比較的大きな基を連結する場合、PEG基の分子量に依存して結果として得られるAM誘導体の様々な性質が大きく変動する可能性がある。また、特許文献4及び5、並びに非特許文献10に記載のように、ペプチド部分と他の基とが、アミド結合又はエステル結合のような生体反応によって切断され得る結合によって連結されている場合、投与後、比較的短時間で該結合が切断される可能性がある。さらに、特許文献5に記載のAM誘導体のように、AMのアミノ酸残基の側鎖に他の基を連結する場合、AM部分の立体構造が変化して、AMを認識するAM受容体との親和性が低下する可能性がある。このような場合、結果として得られるAM誘導体は、AMとしての薬理作用が低下する可能性がある。
【0015】
AMは、心血管保護作用、抗炎症作用、血管新生作用及び組織修復促進作用等の薬理作用に加えて、強力な血管拡張作用を有する。このため、AM又はAM誘導体を対象に投与する場合、強力な血管拡張作用に起因して過度の血圧低下のような望ましくない副反応を引き起こす可能性がある。このような副反応の発生は、特に血管拡張作用以外の薬理作用を発現することを期待してAM又はAM誘導体を使用する場合に問題となり得る。
【0016】
それ故、本発明は、アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ、望ましくない副反応を実質的に抑制し得る、長期間持続的な新規アドレノメデュリン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、アドレノメデュリンのN末端のαアミノ基と特定の分子量を有するPEG基とをメチレン基又はウレタン基を介して連結することにより、アドレノメデュリンと同程度の生物活性を保持しつつ、アドレノメデュリンと比較して血中半減期を延長し得ることを見出した。また、前記特徴を有する新規アドレノメデュリン誘導体は、過度の血圧低下のような望ましくない副反応を実質的に抑制し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 式(I):
A-CH
2-B (I)
[式中、
Aは、1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基であり、
Bは、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分であり、
但し、ペプチド部分Bは、そのN末端のαアミノ基の窒素原子がメチレン基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されている。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物。
(2) Aが、以下の式(II):
【化1】
[式中、
aは、1以上の整数であり、
mは、1以上の整数であり、
L
1は、m+1価の直鎖状又は分岐鎖状の連結基であり、但し、L
1が複数の場合、該複数のL
1は互いに同一又は異なっていてもよく、
L
2及びL
2’は、互いに独立して、結合又は2価の連結基であり、但し、L
2’が複数の場合、該複数のL
2’は互いに同一又は異なっていてもよく、
M
1は、式(III):
#-(CH
2CH
2O)
n-
** (III)
[式中、
nは、1以上の整数であり、
**は、L
1との結合位置であり、
#は、O又はL
2’との結合位置である。]
で表されるポリエチレングリコール基であり、但し、M
1が複数の場合、該複数のM
1は互いに同一又は異なっていてもよく、
M
2は、結合又は式(III)で表されるポリエチレングリコール基であり、但し、M
2が複数の場合、該複数のM
2は互いに同一又は異なっていてもよく、
R
1は、水素、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニル、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリール、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される修飾基である、前記実施形態(1)に記載の化合物。
(3) Aが、以下の式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII):
【化2】
[式中、
aは、1以上の整数であり、
M
3、M
3’、M
3’’、M
3’’’及びM
3’’’’は、互いに独立して、結合又は式(III):
#-(CH
2CH
2O)
n-
** (III)
[式中、
nは、1以上の整数であり、
**は、R
3、R
3’又はCHとの結合位置であり、
#は、Oとの結合位置である。]
で表されるポリエチレングリコール基であり、但し、M
3、M
3’、M
3’’、M
3’’’及びM
3’’’’が複数の場合、該複数のM
3、M
3’、M
3’’、M
3’’’及びM
3’’’’は互いに同一又は異なっていてもよく、且つM
3、M
3’、M
3’’、M
3’’’及びM
3’’’’のうち少なくとも1個は式(III)で表されるポリエチレングリコール基であり、
R
1、R
1’、R
1’’及びR
1’’’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニル、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリール、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R
2は、結合、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニレン、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリーレン、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、若しくは置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキレン(前記の基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい)、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であり、
R
3、R
3’及びR
3’’は、互いに独立して、結合、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニレン、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリーレン、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、若しくは置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキレン(前記の基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい)、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であり、但し、R
3、R
3’及びR
3’’が複数の場合、該複数のR
3、R
3’及びR
3’’は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される修飾基である、前記実施形態(1)又は(2)に記載の化合物。
(4) 式(III)で表されるポリエチレングリコール基が、合計で1~100 kDaの範囲の重量平均分子量を有する、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物。
(5) 前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体が、下記:
(i)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなり、且つ該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しているペプチド、
(iii)(ii)のペプチドにおいて、前記ジスルフィド結合が、エチレン基によって置換されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(iv)(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、1~15個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(v)(i)~(iv)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(i)~(iv)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の化合物。
(6) 前記アドレノメデュリン又はその修飾体が、下記:
(i)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなり、且つ該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しているペプチド、
(v)(i)又は(ii)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(i)又は(ii)ペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(5)に記載の化合物。
(7) 前記アドレノメデュリン又はその修飾体が、下記:
(iv’)(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(v)(iv’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(iv’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(5)に記載の化合物。
(8) 前記アドレノメデュリン又はその修飾体が、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(g)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、前記ジスルフィド結合が、エチレン基によって置換されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(h)(a)~(g)のいずれかのペプチドにおいて、1~15個のアミノ酸残基が欠失、置換若しくは付加されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物。
(9) 前記アドレノメデュリン又はその修飾体が、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(i)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(8)に記載の化合物。
(10) 前記アドレノメデュリン又はその修飾体が、下記:
(h’)(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~13位、1~8位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(h’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(h’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、前記実施形態(8)に記載の化合物。
(11) アドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体と、式(I-1):
A-CHO (I-1)
で表される1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基Aの前駆体アルデヒドとを還元剤存在下で反応させて、式(I)で表される化合物を得る、連結工程を含む、前記実施形態(1)~(10)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物の製造方法。
(12) 式(X):
A’-CO-B (X)
[式中、
A’は、1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基であり、
Bは、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分であり、
但し、ペプチド部分Bは、そのN末端のαアミノ基の窒素原子がカルボニル基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されており、
A’が、以下の式(XI)、(XI’)又は(XII):
R
1-O-M
1-* (XI)
【化3】
[式中、
aは、1以上の整数であり、
M
1は、式(III):
#-(CH
2CH
2O)
n-
** (III)
[式中、
nは、1以上の整数であり、
**は、*との結合位置であり、
#は、Oとの結合位置である。]
で表されるポリエチレングリコール基であり、
M
3、M
3’及びM
3’’は、互いに独立して、結合又は式(III):
#-(CH
2CH
2O)
n-
** (III)
[式中、
nは、1以上の整数であり、
**は、R
3、R
3’又はCHとの結合位置であり、
#は、Oとの結合位置である。]
で表されるポリエチレングリコール基であり、但し、M
3、M
3’及びM
3’’が複数の場合、該複数のM
3、M
3’及びM
3’’は互いに同一又は異なっていてもよく、且つM
3、M
3’及びM
3’’のうち少なくとも1個は式(III)で表されるポリエチレングリコール基であり、
R
1及びR
1’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニル、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニル、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキル、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリール、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R
2は、結合、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニレン、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリーレン、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、若しくは置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキレン(前記の基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい)、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であり、
R
3、R
3’及びR
3’’は、互いに独立して、結合、置換若しくは非置換のC
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルケニレン、置換若しくは非置換のC
2~C
20アルキニレン、置換若しくは非置換のC
3~C
20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC
7~C
20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C
1~C
20アルキレン、置換若しくは非置換のC
4~C
20アリーレン、置換若しくは非置換のC
5~C
20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、若しくは置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C
1~C
20アルキレン(前記の基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい)、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であり、但し、R
3、R
3’及びR
3’’が複数の場合、該複数のR
3、R
3’及びR
3’’は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される修飾基である。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物。
(13) 前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する医薬。
(14) 循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(13)に記載の医薬。
(15)前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療剤。
(16) 前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物と、1種以上の薬学的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物。
(17) 循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(16)に記載の医薬組成物。
(18) 症状、疾患及び/若しくは障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を投与することを含む、前記症状、疾患及び/若しくは障害の予防又は治療方法。
(19) 前記症状、疾患及び/若しくは障害が、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患である、前記実施形態(18)に記載の方法。
(20) 症状、疾患及び/若しくは障害の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物。
(21) 前記症状、疾患及び/若しくは障害が、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患である、前記実施形態(20)に記載の化合物。
(22) 症状、疾患及び/若しくは障害の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、前記実施形態(1)~(10)及び(12)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物の使用。
(23) 前記症状、疾患及び/若しくは障害が、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患である、前記実施形態(22)に記載の使用。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ、望ましくない副反応を実質的に抑制し得る、長期間持続的な新規アドレノメデュリン誘導体を提供することが可能となる。
【0020】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願第2015-184685号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、切断ペプチドの逆相HPLC(RP-HPLC)クロマトグラムを示す図である。A:h.AM(1-52)ペプチド由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラム;B:化合物(2)由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラム。
【
図2】
図2は、化合物(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)及び(12)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した結果を示す図である。図中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(3)を、レーン2は化合物(4)を、レーン3は化合物(5)を、レーン4は化合物(6)を、レーン5は化合物(7)を、レーン6は化合物(8)を、レーン7は化合物(9)を、レーン8は化合物(10)を、レーン9は化合物(11)を、レーン10は化合物(12)を、それぞれ示す。
【
図3】
図3は、化合物(1)、(2)、(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した結果を示す図である。図中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(1)を、レーン2は化合物(2)を、レーン3は化合物(13)を、レーン4は化合物(14)を、レーン5は化合物(15)を、レーン6は化合物(16)を、レーン7は化合物(17)を、それぞれ示す。
【
図4】
図4は、化合物(25)、(26)、(27)、(28)、(29)、(30)、(31)、(32)、(33)、(34)、(35)、(36)及び(37)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した結果を示す図である。図中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(25)を、レーン2は化合物(26)を、レーン3は化合物(27)を、レーン4は化合物(28)を、レーン5は化合物(29)を、レーン6は化合物(30)を、レーン7は化合物(31)を、レーン8は化合物(32)を、レーン9は化合物(33)を、レーン10は化合物(34)を、レーン11は化合物(35)を、レーン12は化合物(36)を、レーン13は化合物(37)を、それぞれ示す。
【
図5】
図5は、化合物(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した結果を示す図である。図中、レーン0及び1は分子量標準物質を、レーン2は化合物(18)を、レーン3は化合物(19)を、レーン4は化合物(20)を、レーン5は化合物(21)を、レーン6は化合物(22)を、レーン7は化合物(23)を、レーン8は化合物(24)を、それぞれ示す。
【
図6】
図6は、化合物(2)、化合物(4)、化合物(8)又はh.AM(1-52)の投与開始時からの経過時間と平均血圧との関係を示す図である。A:化合物(2)、化合物(4)及びh.AM(1-52)の結果;B:化合物(8)及びh.AM(1-52)の結果。
【
図7】
図7は、化合物(8)の投与開始時からの経過時間と血漿中AM濃度との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、化合物(6)又はh.AM(1-52)の投与開始時からの経過時間と血漿中AM濃度との関係を示す図である。
【
図9】
図9は、化合物(8)又は生理食塩水の投与2日前及び投与9日後の高血圧自然発症ラットの血圧値を示す図である。
【
図10】
図10は、化合物(37)又は生理食塩水の投与4日後及び投与9日後の、投与前日の平均収縮血圧に対する血圧変化値を示す図である。
【
図11】
図11は、化合物(8)投与群及び対照群におけるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデル作製時からの経過時間とスコアの合計値との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、化合物(8)投与群及び対照群における2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発大腸炎モデル作製時からの経過時間と体重との関係を示す図である。a:化合物(8)又は生理食塩水を皮下投与して絶食を開始した日;b:TNBSを投与した日。
【
図13】
図13は、化合物(8)投与群及び対照群における大腸の重量を示す図である。
【
図14】
図14は、化合物(8)投与群及び対照群における大腸の腸管長を示す図である。
【
図15】
図15は、化合物(8)投与群及び対照群における右室重量/左室重量比を示す図である。
【
図16】
図16は、化合物(8)投与群及び対照群における創傷モデル作製時からの経過時間と創傷面積との関係を示す図である。
【
図17】
図17は、化合物(8)投与群及び対照群における血管閉塞モデル作製時からの経過時間と、隠されたプラットフォームテストにおける逃避潜時との関係を示す図である。
【
図18】
図18は、血管閉塞モデルラットに対する化合物(8)投与群及び対照群における、プローブテストにおける滞在率を示す図である。
【
図19】
図19は、化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した足容積との関係を示す図である。
【
図20】
図20は、化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した浮腫率との関係を示す図である。
【
図21】
図21は、化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した炎症スコアとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<1. アドレノメデュリン誘導体>
本発明の一態様は、式(I):
A-CH2-B (I)
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物に関する。本明細書において、式(I)で表される化合物を、「アドレノメデュリン誘導体」と記載する場合がある。
【0023】
本発明において、アドレノメデュリン(AM)は、ヒト褐色細胞組織より単離及び同定されたヒト由来のペプチド(配列番号1、非特許文献1)だけでなく、例えばブタ(配列番号3)、イヌ(配列番号5)、ウシ(配列番号7)、ラット(配列番号9)又はマウス(配列番号11)等の他の非ヒト哺乳動物(例えば温血動物)由来のペプチド(オーソログ)であってもよい。生体内において、これらのペプチドは、そのアミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しており、且つC末端がアミド化されている。本明細書において、前記ペプチドであってジスルフィド結合及びC末端アミド基を有するものを、「天然型アドレノメデュリン」又は単に「アドレノメデュリン」と記載する場合がある。本発明は、前記のいずれのペプチドに対しても適用することができる。
【0024】
本明細書において、「C末端のアミド化」は、生体内におけるペプチドの翻訳後修飾の一態様を意味し、具体的には、ペプチドのC末端アミノ酸残基の主鎖カルボキシル基がアミド基の形態へ変換される反応を意味する。また、本明細書において、「システイン残基のジスルフィド結合の形成」又は「システイン残基のジスルフィド化」は、生体内におけるペプチドの翻訳後修飾の一態様を意味し、具体的には、ペプチドのアミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合(-S-S-)を形成する反応を意味する。生体内で産生される多くの生理活性ペプチドは、はじめ分子量のより大きな前駆体タンパク質として生合成され、これが細胞内移行の過程で、C末端アミド化及び/又はシステイン残基のジスルフィド化のような翻訳後修飾反応を受けて、成熟した生理活性ペプチドとなる。C末端のアミド化は、通常は、前駆体タンパク質に対し、C末端アミド化酵素が作用することによって進行する。C末端アミド基を有する生理活性ペプチドの場合、その前駆体タンパク質においては、アミド化されるC末端カルボキシル基にGly残基が結合しており、該Gly残基がC末端アミド化酵素によってC末端アミド基に変換される。また、前駆体タンパク質のC末端側プロペプチドには、例えばLys-Arg又はArg-Arg等の塩基性アミノ酸残基の組合せの繰返し配列が存在する(水野、生化学第61巻、第12号、1435~1461頁(1989))。システイン残基のジスルフィド化は、酸化的条件下で進行し得る。生体内においては、システイン残基のジスルフィド化は、通常は、前駆体タンパク質に対し、タンパク質ジスルフィド異性化酵素が作用することによって進行する。
【0025】
公知の生理活性物質であるアドレノメデュリンは、ペプチドである。このため、アドレノメデュリンを有効成分として含有する医薬は、対象(例えばヒト患者)の生体内において有効に作用し得る時間が極めて短時間となる可能性がある。そこで、アドレノメデュリンにポリエチレングリコール(PEG)等の他の基を連結したアドレノメデュリン誘導体の形態とすることにより、生体内における半減期を延長して薬物動態を改善する試みが行われてきた(特許文献4~6及び非特許文献10)。しかしながら、アドレノメデュリンのような比較的小さいペプチドにPEG基のような比較的大きな基を連結する場合、PEG基の分子量に依存して結果として得られるアドレノメデュリン誘導体の様々な性質が大きく変動する可能性がある。また、アドレノメデュリンと他の基とが、アミド結合又はエステル結合のような生体反応によって切断され得る結合によって連結されている場合、投与後、比較的短時間で該結合が切断される可能性がある。さらに、アドレノメデュリンのアミノ酸残基の側鎖に他の基を連結する場合、アドレノメデュリン部分の立体構造が変化して、アドレノメデュリンを認識するアドレノメデュリン受容体との親和性が低下する可能性がある。このような場合、結果として得られるアドレノメデュリン誘導体は、アドレノメデュリンとしての薬理作用が低下する可能性がある。
【0026】
アドレノメデュリンは、強力な血管拡張作用を有する。このため、治療上有効な量のアドレノメデュリン又はその誘導体を単回投与する場合、強力な血管拡張作用に起因して、望ましくない副反応(例えば、過度の血圧低下、反射性の交感神経活性上昇に伴う頻脈、及び/又はレニン活性の上昇等)を引き起こす可能性がある。このような副反応の発生は、特に血管拡張作用以外の薬理作用を発現することを期待してアドレノメデュリン又はその誘導体を使用する場合に問題となり得る。前記のような問題が生じることを回避するために、アドレノメデュリン又はその誘導体を有効成分として含有する医薬は、持続静注によって対象に投与される必要があった。このような投与方法は、対象に負担を強いる可能性がある。
【0027】
本発明者らは、アドレノメデュリンのN末端のαアミノ基と特定の分子量を有するPEG基とをメチレン基又はウレタン基を介して連結することにより、アドレノメデュリンの生物活性を保持しつつ、アドレノメデュリンと比較して血中半減期を延長し得ることを見出した。また、前記特徴を有する新規アドレノメデュリン誘導体は、過度の血圧低下のような望ましくない副反応を実質的に抑制し得ることを見出した。したがって、本発明の式(I)で表される化合物を、アドレノメデュリンによって予防又は治療し得る症状、疾患及び/又は障害に対して適用することにより、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、該症状、疾患及び/又は障害を持続的に予防又は治療することができる。
【0028】
式(I)において、Bは、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分であることが必要である。本発明において、「アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分」は、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から1個の水素原子(通常は、アミノ基の1個の水素原子、典型的にはN末端のαアミノ基の1個の水素原子)を取り除いた構造を有する1価の遊離基を意味する。本発明において、「アドレノメデュリンの修飾体」は、前記で説明した天然型アドレノメデュリンが化学修飾されたペプチドを意味する。また、本発明において、「アドレノメデュリン活性」は、アドレノメデュリンの有する生物活性を意味する。アドレノメデュリン活性としては、下記のものを挙げることができる。
【0029】
(1)心血管系:血管拡張作用、血圧降下作用、血圧上昇抑制作用、心拍出量増加・心不全改善作用、肺高血圧症改善作用、血管新生作用、リンパ管新生作用、血管内皮機能改善作用、抗動脈硬化作用、心筋保護作用(例えば、虚血再灌流障害又は炎症における心筋保護作用)、心筋梗塞後のリモデリング抑制作用、心肥大抑制作用、及びアンジオテンシン変換酵素抑制作用。
(2)腎臓・水電解質系:利尿作用、ナトリウム利尿作用、抗利尿ホルモン抑制作用、アルドステロン低下作用、腎保護作用(例えば、高血圧又は虚血再灌流障害における腎保護作用)、飲水行動抑制作用、及び食塩要求抑制作用。
(3)脳・神経系:神経保護・脳障害抑制作用、抗炎症作用、アポトーシス抑制作用(例えば、虚血再灌流障害又は炎症におけるアポトーシス抑制作用)、自動調節能維持作用、酸化ストレス抑制作用、認知症改善作用、及び交感神経抑制作用。
(4)泌尿生殖器:勃起改善作用、血流改善作用、及び着床促進作用。
(5)消化器系:抗潰瘍作用、組織修復作用、粘膜新生作用、血流改善作用、抗炎症作用、及び肝機能改善作用。
(6)整形外科系:骨芽細胞刺激作用、及び関節炎改善作用。
(7)内分泌代謝系:脂肪細胞分化作用、脂肪分解制御作用、インスリン感受性改善作用、インスリン分泌制御作用、抗利尿ホルモン分泌抑制作用、及びアルドステロン分泌抑制作用。
(8)その他:循環改善作用、抗炎症作用、サイトカイン制御作用、臓器保護作用、酸化ストレス抑制作用、組織修復作用(例えば、抗褥瘡作用)、敗血症性ショックの改善作用、多臓器不全の抑制作用、自己免疫疾患の抑制作用、抗菌作用、育毛作用、及び養毛作用。
【0030】
前記血圧降下作用は、血管拡張性の降圧作用であることが好ましい。前記消化器系における抗炎症作用は、ステロイド抵抗性又はステロイド依存性の炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病又は腸管ベーチェット病)のような炎症性腸疾患の予防又は治療作用であることが好ましい。前記のアドレノメデュリン活性は、細胞内cAMPの濃度上昇を介して発現する。このため、細胞内cAMPの濃度上昇を、アドレノメデュリン活性の指標とすることができる。前記のような生物活性を有するアドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bを含むことにより、本発明の式(I)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等の生物活性(すなわち、アドレノメデュリン活性)を発現することができる。
【0031】
前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体は、下記:
(i)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなり、且つ該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しているペプチド、
(iii)(ii)のペプチドにおいて、前記ジスルフィド結合が、エチレン基によって置換されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(iv)(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、1~15個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(v)(i)~(iv)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(i)~(iv)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドであることが好ましい。
【0032】
一実施形態において、前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体は、下記:
(i)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなり、且つ該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しているペプチド、
(v)(i)又は(ii)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(i)又は(ii)ペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドであることがより好ましい。
【0033】
別の実施形態において、前記アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体は、下記:
(iv’)(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド、
(v)(iv’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド、並びに
(vi)(iv’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド
からなる群より選択されるペプチドであることがより好ましい。
【0034】
前記(i)~(vi)及び(iv’)のペプチドにおいて、(v)に包含される、アドレノメデュリンのアミノ酸配列からなり、C末端がアミド化されており、且つ該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成しているペプチドは、成熟した天然型アドレノメデュリンに相当する。(i)のアドレノメデュリンのアミノ酸配列からなるペプチドは、C末端アミド化及びシステイン残基のジスルフィド化の翻訳後修飾を受ける前の(すなわち未成熟な)形態の天然型アドレノメデュリンに相当する。前記(i)~(vi)及び(iv’)のペプチドにおいて、前記で説明したペプチドを除く他のペプチドは、アドレノメデュリンの修飾体に相当する。
【0035】
前記(ii)のペプチドは、前記(i)のペプチドの2個のシステイン残基のチオール基を空気酸化するか、又は適切な酸化剤を用いて酸化してジスルフィド結合に変換することにより、形成させることができる。前記(ii)のペプチドを用いることにより、ペプチド部分Bの立体構造を、天然型アドレノメデュリンの立体構造に類似させることができる。これにより、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。
【0036】
前記(iii)のペプチドは、前記(ii)のペプチドのジスルフィド結合をエチレン基に変換することにより、形成させることができる。ジスルフィド結合からエチレン基への置換は、当該技術分野で周知の方法により、行うことができる(O. Kellerら, Helv. Chim. Acta, 1974年, 第57巻, p. 1253)。前記(iii)のペプチドを用いることにより、ペプチド部分Bの立体構造を安定化させることができる。これにより、式(I)で表される化合物は、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0037】
前記(iv)のペプチドにおいて、欠失、置換若しくは付加されているアミノ酸残基は、1~15個の範囲であることが好ましく、1~10個の範囲であることがより好ましく、1~8個の範囲であることがさらに好ましく、1~5個の範囲であることが特に好ましく、1~3個の範囲であることがもっとも好ましい。好適な(iv)のペプチドは、(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~12位、1~10位、1~8位、1~5位又は1~3位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチドであり、より好適な(iv)のペプチドは、(i)~(iii)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド((iv’)のペプチド)である。前記好適なペプチドにおいて、1又は複数個(例えば、1~5個、1~3個、又は1若しくは2個)のアミノ酸残基がさらに欠失、置換若しくは付加されていてもよい。前記(iv)又は(iv’)のペプチドを用いることにより、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、前記(iv)又は(iv’)のペプチドを用いることにより、式(I)で表される化合物は、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0038】
前記(vi)又は(iv’)のペプチドは、C末端アミド化酵素の作用によってC末端のグリシン残基がC末端アミド基に変換されて、前記(v)のペプチドに変換されることができる。それ故、前記(vi)又は(iv’)のペプチドを対象に投与することにより、該対象の生体内において、一定時間経過後に、C末端アミド化されたペプチドを形成させることができる。これにより、式(I)で表される化合物は、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0039】
前記アドレノメデュリン又はその修飾体は、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(g)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、前記ジスルフィド結合が、エチレン基によって置換されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(h)(a)~(g)のいずれかのペプチドにおいて、1~15個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(h)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドであることがより好ましい。
【0040】
一実施形態において、前記アドレノメデュリン又はその修飾体は、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(i)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドであることがさらに好ましい。
【0041】
別の実施形態において、前記アドレノメデュリン又はその修飾体は、下記:
(h’)(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~13位、1~8位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(h’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(h’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドであることがさらに好ましい。
【0042】
前記(h)のペプチドにおいて、欠失、置換若しくは付加されているアミノ酸残基は、1~12個の範囲であることが好ましく、1~10個の範囲であることがより好ましく、1~8個の範囲であることがさらに好ましく、1~5個の範囲であることが特に好ましく、1~3個の範囲であることがもっとも好ましい。好適な(h)のペプチドは、(a)~(g)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~12位、1~10位、1~8位、1~5位又は1~3位のアミノ酸が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチドであり、より好適な(h)のペプチドは、(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~13位、1~8位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド((h’)のペプチド)である。前記好適なペプチドにおいて、1又は複数個(例えば、1~5個、1~3個、又は1若しくは2個)のアミノ酸がさらに欠失、置換若しくは付加されていてもよい。前記(h)又は(h’)のペプチドを用いることにより、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、前記(h)又は(h’)のペプチドを用いることにより、式(I)で表される化合物は、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0043】
式(I)において、Aは、1個以上のPEG基を含む修飾基であることが必要である。修飾基Aにおいて、1個以上のPEG基を含む態様は特に限定されない。例えば、1個以上のPEG基が修飾基Aの末端部に配置されていてもよく、修飾基Aの内部に配置されていてもよい。また、修飾基Aは、PEG基を含む直鎖状又は分岐鎖状の基として当該技術分野で公知の各種の基であってもよい。修飾基Aとして使用し得る公知の基としては、限定するものではないが、例えば、WO1995/11924、WO2006/084089、WO98/41562、WO2005/079838、WO2002/060978、WO2001/048052、WO1998/055500、WO1996/021469、WO2003/040211、及び特開平04-108827等に開示される基を挙げることができる。1個以上のPEG基を含む基を修飾基Aとして使用することにより、式(I)で表される化合物は、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0044】
Aは、以下の式(II):
【化4】
で表される修飾基であることが好ましい。
【0045】
式(II)において、
aは、1以上の整数であり、
mは、1以上の整数であり、
L1は、m+1価の直鎖状又は分岐鎖状の連結基であり、但し、L1が複数の場合、該複数のL1は互いに同一又は異なっていてもよく、
L2及びL2’は、互いに独立して、結合又は2価の連結基であり、但し、L2’が複数の場合、該複数のL2’は互いに同一又は異なっていてもよく、
M1は、PEG基であり、但し、M1が複数の場合、該複数のM1は互いに同一又は異なっていてもよく、
M2は、結合又はPEG基であり、但し、M2が複数の場合、該複数のM2は互いに同一又は異なっていてもよく、
R1は、水素又は1価の基であり、
*は、残部分との結合位置である。
【0046】
mは、連結基L1の分岐数である。例えば、mが1の場合、L1は2価の連結基であり、末端方向に対して非分岐、すなわち直鎖状の基である。mが2以上の場合、L1は3価以上の連結基であり、末端方向に対して2分岐以上の基である。mは、通常は、1以上の整数であり、5以下の整数であり、1~5の範囲であることが好ましく、1~4の範囲であることがより好ましく、1~3の範囲であることがより好ましい。連結基L1の分岐数mが前記範囲の場合、PEG基を含む修飾基Aは直鎖状又は分岐鎖状の構造を有することができる。
【0047】
aは、PEG基M1及びM2、並びに連結基L1及びL2’の単位の繰り返し数である。例えば、aが1の場合、前記単位は繰り返し構造を有さない。aが2以上であって、且つmが1の場合、前記単位は直鎖状の繰り返し構造を有する。aが2以上であって、且つmが2以上の場合、前記単位は樹状分岐鎖状の繰り返し構造を有する。aは、通常は、1以上の整数であり、5以下の整数であり、1~5の範囲であることが好ましく、1~2の範囲であることがより好ましい。PEG基M1及びM2、並びに連結基L1及びL2’の単位の繰り返し数aが前記範囲の場合、PEG基を含む修飾基Aは直鎖状又は分岐鎖状の構造を有することができる。
【0048】
M1及びM2において、PEG基は、通常は、式(III):
#-(CH2CH2O)n-** (III)
で表される基である。式(III)において、**は、L1との結合位置であり、#は、O又はL2’との結合位置である。式(III)で表されるPEG基の重量平均分子量は、修飾基Aにおける合計として、通常は1 kDa以上、好ましくは5 kDa以上、より好ましくは10 kDa以上、さらに好ましくは20 kDa以上であり、通常は2000 kDa以下、好ましくは1000 kDa以下、より好ましくは100 kDa以下、さらに好ましくは80 kDa以下であり、特に好ましくは60 kDa以下である。式(III)で表されるPEG基は、修飾基Aにおける合計として、通常は1~2000 kDaの範囲、例えば1~1000 kDaの範囲の重量平均分子量を有し、1~100 kDaの範囲の重量平均分子量を有することが好ましく、5~80 kDaの範囲の重量平均分子量を有することがより好ましく、10~60 kDaの範囲の重量平均分子量を有することがさらに好ましく、20~60 kDaの範囲の重量平均分子量を有することが特に好ましい。修飾基Aにおける式(III)で表されるPEG基の合計の重量平均分子量が前記範囲の場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0049】
式(III)において、nは、前記重量平均分子量に基づいて定義されるエチレンオキシド単位の繰り返し数である。nは、前記重量平均分子量の好ましい範囲に基づき定義すると、通常は約20以上、好ましくは約110以上、より好ましくは約230以上、さらに好ましくは約460以上の整数であり、通常は約45000以下、好ましくは約22000以下、より好ましくは約2200以下、さらに好ましくは約1820以下、特に好ましくは約1360以下の整数である。nは、前記重量平均分子量の好ましい範囲に基づき定義すると、通常は約20~45000の範囲、例えば約20~22000の範囲であり、約1~2200の範囲であることが好ましく、約110~1820の範囲であることがより好ましく、約230~1360の範囲であることがさらに好ましく、約460~1360の範囲であることが特に好ましい。繰り返し数nが前記範囲の場合、式(II)で表される修飾基に含まれるPEG基の合計の重量平均分子量が前記の範囲となる。それ故、繰り返し数nが前記範囲の場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0050】
R1は、水素、置換若しくは非置換のC1~C20アルキル、置換若しくは非置換のC2~C20アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C20アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C20シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C20アルキル、置換若しくは非置換のC4~C20アリール、置換若しくは非置換のC5~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C20アルキル、又は置換若しくは非置換のアシルであることが好ましく、水素、置換若しくは非置換のC1~C20アルキル、置換若しくは非置換のC2~C20アルケニル、又は置換若しくは非置換のC2~C20アルキニルであることがより好ましく、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであることがさらに好ましく、メチルであることが特に好ましい。前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換のアミノ、及び置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、非置換のC1~C5アルキル、非置換のC2~C5アルケニル、非置換のC2~C5アルキニル、非置換のC3~C6シクロアルキル、非置換のC3~C6シクロアルケニル、非置換のC3~C6シクロアルキニル、非置換のアミノ、及び非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることがより好ましい。R1が前記基である場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0051】
L1は、m+1価の直鎖状又は分岐鎖状の連結基である。L1は、置換又は非置換のm+1価の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基であることが好ましい。前記の基は、1個以上の複素原子、脂環式基、芳香族基、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい。前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、及び置換若しくは非置換の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基からなる群より選択される1価基であることが好ましい。
【0052】
L2及びL2’は、互いに独立して、結合又は2価の連結基である。L2及びL2’が2価の連結基の場合、L2及びL2’は、互いに独立して、置換若しくは非置換の2価の炭化水素基、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることが好ましく、置換若しくは非置換のC1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルケニレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルキニレン、置換若しくは非置換のC3~C20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20アリーレン、置換若しくは非置換のC5~C20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C20アルキレン、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることがより好ましい。前記の基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい。前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、及び置換若しくは非置換の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基からなる群より選択される1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、非置換のC1~C5アルキル、非置換のC2~C5アルケニル、非置換のC2~C5アルキニル、非置換のC3~C6シクロアルキル、非置換のC3~C6シクロアルケニル、非置換のC3~C6シクロアルキニル、非置換のアミノ、及び非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることがより好ましい。
【0053】
L1、L2及びL2’が前記基である場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0054】
好適な修飾基Aは、以下の式(V)、(VI)、(VII)又は(VIII):
【化5】
で表される修飾基である。
【0055】
式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)において、
aは、1以上の整数であり、
M3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’は、互いに独立して、結合又はPEG基であり、但し、M3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’が複数の場合、該複数のM3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’は互いに同一又は異なっていてもよく、且つM3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’のうち少なくとも1個はPEG基であり、
R1、R1’、R1’’及びR1’’’は、互いに独立して、水素又は1価の基であり、
R2は、結合又は2価の基であり、
R3、R3’及びR3’’は、互いに独立して、結合又は2価の基であり、但し、R3、R3’及びR3’’が複数の場合、該複数のR3、R3’及びR3’’は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は、残部分との結合位置である。
【0056】
aは、PEG基M3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’を含む単位の繰り返し数である。例えば、aが1の場合、前記単位は繰り返し構造を有さない。式(V)において、aが2以上の場合、前記単位は直鎖状の繰り返し構造を有する。式(VI)、(VII)及び(VIII)において、aが2以上の場合、前記単位は樹状分岐鎖状の繰り返し構造を有する。aは、通常は、1以上の整数であり、5以下の整数であり、1~5の範囲であることが好ましく、1~2の範囲であることがより好ましい。PEG基M3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’を含む単位の繰り返し数aが前記範囲の場合、PEG基を含む修飾基Aは直鎖状又は分岐鎖状の構造を有することができる。
【0057】
M3、M3’、M3’’、M3’’’及びM3’’’’がPEG基の場合、該PEG基は、通常は、式(III)で表される基である。式(III)で表されるPEG基は、前記と同様の意味を有する。この場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0058】
R1は、前記と同様の意味を有する。また、R1’、R1’’及びR1’’’は、前記R1と同様の意味を有する。この場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0059】
R2は、結合、置換若しくは非置換の2価の炭化水素基、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることが好ましく、結合、置換若しくは非置換のC1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルケニレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルキニレン、置換若しくは非置換のC3~C20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20アリーレン、置換若しくは非置換のC5~C20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C20アルキレン、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることがより好ましい。前記2価の炭化水素基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい。前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換のアミノ、及び置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、非置換のC1~C5アルキル、非置換のC2~C5アルケニル、非置換のC2~C5アルキニル、非置換のC3~C6シクロアルキル、非置換のC3~C6シクロアルケニル、非置換のC3~C6シクロアルキニル、非置換のアミノ、及び非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることがより好ましい。R2は、好ましくは結合又は置換若しくは非置換のC1~C10アルキレン基であり、より好ましくは結合、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンであり、さらに好ましくは結合又はエチレンである。
【0060】
R3、R3’及びR3’’は、互いに独立して、結合、置換若しくは非置換の2価の炭化水素基、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることが好ましく、結合、置換若しくは非置換のC1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルケニレン、置換若しくは非置換のC2~C20アルキニレン、置換若しくは非置換のC3~C20シクロアルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルケニレン、置換若しくは非置換のC4~C20シクロアルキニレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキレン、置換若しくは非置換のC7~C20シクロアルキルアルキレン、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C20アルキレン、置換若しくは非置換のC4~C20アリーレン、置換若しくは非置換のC5~C20アリールアルキレン、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリーレン、又は置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C20アルキレン、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)であることがより好ましい。前記2価の炭化水素基は、1個以上の複素原子、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、又はウレタン基(-O-CO-NH-)を含んでもよい。前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、置換若しくは非置換のC1~C5アルキル、置換若しくは非置換のC2~C5アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C5アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換のアミノ、及び置換若しくは非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、非置換のC1~C5アルキル、非置換のC2~C5アルケニル、非置換のC2~C5アルキニル、非置換のC3~C6シクロアルキル、非置換のC3~C6シクロアルケニル、非置換のC3~C6シクロアルキニル、非置換のアミノ、及び非置換のC1~C5アルコキシからなる群より選択される1価基であることがより好ましい。R3、R3’及びR3’’は、好ましくは互いに独立して、結合、置換若しくは非置換のC1~C10アルキレン基、アミド基を含む置換若しくは非置換のC1~C10アルキレン基又はアミド基(-CO-NH-)であり、より好ましくは互いに独立して、結合、メチレン、エチレン、-CO-NH-(CH2)4-、-CH2-O-CO-NH-(CH2)3-又は-CO-NH-である。
【0061】
R2、R3、R3’及びR3’’が前記基である場合、式(I)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。また、式(I)で表される化合物は、望ましくない副反応を実質的に抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0062】
特に好適な修飾基Aは、以下の式(V-1-1)、(VI-1-1)、(VII-1-1)、(VII-1-2)、(VII-2-1)、又は(VIII-1-1):
【化6】
[式中、
nは、前記定義と同様の意味を有し、
n’は、nに関する前記定義と同様の意味を有し、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される修飾基である。
【0063】
式(V-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で5 kDa、10 kDa、20 kDa、30 kDa、40 kDa、60 kDa又は80 kDaの重量平均分子量を有する。
【0064】
式(VI-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で40 kDaの重量平均分子量を有する。
【0065】
式(VII-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で5 kDa、10 kDa、20 kDa、30 kDa、40 kDa、60 kDa又は80 kDaの重量平均分子量を有する。
【0066】
式(VII-1-2)において、PEG基は、好ましくは合計で50 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で40 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。
【0067】
式(VII-2-1)において、PEG基は、好ましくは合計で40 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で30 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。或いは、PEG基は、好ましくは合計で60 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で50 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。或いは、PEG基は、好ましくは合計で80 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で70 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。
【0068】
式(VIII-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で40 kDaの重量平均分子量を有する。
【0069】
修飾基Aとして前記の基を使用することにより、式(I)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ、望ましくない副反応を実質的に抑制し、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0070】
式(I)において、ペプチド部分Bは、そのN末端のαアミノ基の窒素原子がメチレン基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されていることが必要である。本発明において、1個以上のPEG基を含む修飾基Aとペプチド部分Bとが前記連結様式で連結されている場合、「アルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体」と記載する場合がある。アルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体は、非特許文献10に記載のアドレノメデュリン誘導体のように、アドレノメデュリンのN末端のαアミノ基の窒素原子がアミド結合を形成することによって残部分と連結されているアドレノメデュリン誘導体(以下、「アミド連結型アドレノメデュリン誘導体」とも記載する)と比較して、より高いアドレノメデュリン活性を有する。また、本発明の式(I)で表されるアルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体は、アミド連結型アドレノメデュリン誘導体と比較して、望ましくない副反応(例えば、過度の血圧低下、反射性の交感神経活性上昇に伴う頻脈、及び/又はレニン活性の上昇等)がより抑制される。それ故、本発明の式(I)で表される化合物は、公知のアドレノメデュリン誘導体と比較して、望ましくない副反応をより抑制しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0071】
特に好適な式(I)で表される化合物は、
Aが、式(V-1-1)、(VI-1-1)、(VII-1-1)、(VII-1-2)、(VII-2-1)、又は(VIII-1-1)で表される、PEG基を含む修飾基であり、
Bが、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(i)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドであるか、或いは、
下記:
(h’)(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~13位、1~8位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(h’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(h’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分である。前記特徴を有する式(I)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ且つ望ましくない副反応を実質的に抑制して、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0072】
本発明の別の態様は、(X):
A’-CO-B (X)
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物に関する。本明細書において、式(X)で表される化合物を、「ウレタン連結型アドレノメデュリン誘導体」と記載する場合がある。
【0073】
式(X)において、Bは、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分であることが必要である。ペプチド部分Bは、式(I)で表される化合物に関する前記定義と同様の意味を有する。
【0074】
A’は、1個以上のPEG基を含む修飾基であることが必要である。但し、A’は、PEG基を含む修飾基の酸素原子が、カルボニル基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されていることが必要である。修飾基A’がこのような構造を有することにより、式(X)で表される化合物は、ウレタン結合を介して修飾基A’及びペプチド部分Bが連結されている構造を有することができる。
【0075】
A’は、以下の式(XI)、(XI’)又は(XII):
R
1-O-M
1-* (XI)
【化7】
で表される修飾基であることが好ましい。
【0076】
式(XI)、(XI’)及び(XII)において、*は、残部分との結合位置である。
【0077】
式(XI)、(XI’)及び(XII)において、a、R1、R1’、R2、R3、R3’、R3’’、M1、M3、M3’及びM3’’は、式(I)で表される化合物に関する前記定義と同様の意味を有する。
【0078】
特に好適な修飾基A’は、以下の式(XI-1-1)、(XII-1-1)又は(XII-2-1):
CH
3O-(CH
2CH
2O)
n-* (XI-1-1)
【化8】
[式中、
nは、前記定義と同様の意味を有し、
n’は、nに関する前記定義と同様の意味を有し、
*は、残部分との結合位置である。]
で表される修飾基である。
【0079】
式(XI-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で5 kDa、10 kDa、20 kDa、30 kDa、40 kDa、60 kDa又は80 kDaの重量平均分子量を有する。
【0080】
式(XII-1-1)において、PEG基は、好ましくは合計で5 kDa、10 kDa、20 kDa、30 kDa、40 kDa、60 kDa又は80 kDaの重量平均分子量を有する。
【0081】
式(XII-2-1)において、PEG基は、好ましくは合計で40 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で30 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。或いは、PEG基は、好ましくは合計で60 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で50 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。或いは、PEG基は、好ましくは合計で80 kDaの重量平均分子量を有する。この場合、通常は、(CH2CH2O)nのエチレンオキシド単位は、合計で70 kDaの重量平均分子量を有し、(CH2CH2O)n’のエチレンオキシド単位は、合計で10 kDaの重量平均分子量を有する。
【0082】
修飾基A’として前記の基を使用することにより、式(X)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0083】
式(X)において、ペプチド部分Bは、そのN末端のαアミノ基の窒素原子がカルボニル基の炭素原子と共有結合することによって残部分と連結されていることが必要である。ウレタン連結型アドレノメデュリン誘導体は、非特許文献10に記載のアミド連結型アドレノメデュリン誘導体と比較して、より高いアドレノメデュリン活性を有する。それ故、本発明の式(X)で表される化合物は、公知のアドレノメデュリン誘導体と比較してより高いアドレノメデュリン活性を、生体内において持続的に発現することができる。
【0084】
特に好適な式(X)で表される化合物は、
A’が、式(XI-1-1)、(XII-1-1)又は(XII-2-1)で表される、PEG基を含む修飾基であり、
Bが、下記:
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号1のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(b)配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(c)配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号5のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(d)配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号7のアミノ酸配列からなり、且つ16位のシステイン残基と21位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(e)配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号9のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(f)配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチド、又は配列番号11のアミノ酸配列からなり、且つ14位のシステイン残基と19位のシステイン残基とがジスルフィド結合を形成しているペプチド;
(i)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(a)~(f)のいずれかのペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドであるか、或いは、
下記:
(h’)(a)~(d)のいずれかのペプチドにおいて、N末端側から1~15位、1~10位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有する、或いは、(e)又は(f)のペプチドにおいて、N末端側から1~13位、1~8位又は1~5位のアミノ酸残基が欠失されており、且つアドレノメデュリン活性を有するペプチド;
(i)(h’)のペプチドにおいて、C末端がアミド化されているペプチド;並びに
(j)(h’)のペプチドにおいて、C末端にグリシン残基が付加されているペプチド;
からなる群より選択されるペプチドである、アドレノメデュリン又はアドレノメデュリン活性を有するその修飾体から誘導されるペプチド部分である。前記特徴を有する式(X)で表される化合物は、公知のアドレノメデュリン誘導体と比較してより高いアドレノメデュリン活性を、生体内において持続的に発現することができる。
【0085】
本発明において、式(I)及び(X)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。式(I)及び(X)で表される化合物が塩の形態である場合、薬学的に許容し得る塩であることが好ましい。本発明の化合物の塩の対イオンとしては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオン、又は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、過塩素酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、乳酸イオン、マレイン酸イオン、ヒドロキシマレイン酸イオン、メチルマレイン酸イオン、フマル酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、2-アセトキシ安息香酸イオン、p-アミノ安息香酸イオン、ニコチン酸イオン、ケイ皮酸イオン、アスコルビン酸イオン、パモ酸イオン、コハク酸イオン、サリチル酸イオン、ビスメチレンサリチル酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、リンゴ酸イオン、クエン酸イオン、グルコン酸イオン、アスパラギン酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、イタコン酸イオン、グリコール酸イオン、グルタミン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、シクロヘキシルスルファミン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、イセチオン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、若しくはナフタレンスルホン酸イオンのようなアニオンが好ましい。式(I)及び(X)で表される化合物が前記の対イオンとの塩の形態である場合、該化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。
【0086】
式(I)及び(X)で表される化合物は、前記の化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。式(I)及び(X)で表される化合物又はその塩が溶媒和物の形態である場合、薬学的に許容し得る溶媒和物であることが好ましい。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いはメタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン、アセトニトリル又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。式(I)及び(X)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、該化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。
【0087】
式(I)及び(X)で表される化合物は、前記又は下記の化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数個の官能基(例えばリジン残基の側鎖アミノ基)に保護基が導入された形態を意味する。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、p-トルエンスルホニル(Tos)、ベンジル(Bzl)、4-メチルベンジル(4-MeBzl)、2-クロロベンジルオキシカルボニル(ClZ)、シクロヘキシル(cHex)、及びフェナシル(Pac);アミノ基の他の保護基として、ベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2-(p-ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、2-(3,5-ジメトキシフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、p-フェニルアゾベンジルオキシカルボニル、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、t-アミルオキシオキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2-メチルスルホニルエチルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、ベンゼンスルホニル、メシチレンスルフォニル、メトキシトリメチルフェニルスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルフェニル、4-ニトロベンゼンスルホニル、及び4-ニトロベンゼンスルフェニル;カルボキシル基の他の保護基として、メチルエステル、エチルエステル、t-ブチルエステル、p-メトキシベンジルエステル、及びp-ニトロベンジルエステル;Argの他の側鎖保護基として、2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル、及び2-メトキシベンゼンスルホニル;Tyrの他の保護基として、2,6-ジクロロベンジル、t-ブチル、及びシクロヘキシル;Cysの他の保護基として、4-メトキシベンジル、t-ブチル、トリチル、アセトアミドメチル、及び3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル;Hisの他の保護基として、ベンジルオキシメチル、p-メトキシベンジルオキシメチル、t-ブトキシメチル、トリチル、及び2,4-ジニトロフェニル;並びに、Ser及びThrの他の保護基として、t-ブチル等を挙げることができる。式(I)及び(X)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合、該化合物のアドレノメデュリン活性を、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のものとすることができる。
【0088】
また、式(I)及び(X)で表される化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のような、該化合物の立体異性体の混合物も包含する。
【0089】
前記特徴を有することにより、式(I)及び(X)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンの薬理作用を維持しつつ且つ望ましくない副反応を実質的に抑制して、生体内において、持続的にアドレノメデュリン活性を発現することができる。
【0090】
<2. アドレノメデュリン誘導体の医薬用途>
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、生体内において、親分子であるアドレノメデュリンと実質的に略同等の生物活性(すなわちアドレノメデュリン活性)を、持続的に発現することができる。それ故、本発明は、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する医薬に関する。
【0091】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の薬学的に許容し得る成分と組み合わせて使用してもよい。本発明の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本発明の医薬はまた、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物と、1種以上の薬学的に許容し得る担体とを含有する医薬組成物の形態で提供されることもできる。本発明の医薬組成物は、前記成分に加えて、薬学的に許容し得る1種以上の担体、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、油性液、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0092】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本発明の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる添加剤としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、エステル(例えば安息香酸ベンジル)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)のような溶解補助剤、ポリソルベート80又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0093】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、必要に応じて糖衣や溶解性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、タブレット、シロップ、懸濁液等を挙げることができる。錠剤又はカプセル剤等に混和することができる添加剤としては、限定するものではないが、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム及びアラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン及びアルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0094】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、生体内において、親分子であるアドレノメデュリンと実質的に略同等のアドレノメデュリン活性を、持続的に発現することができる。それ故、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本発明の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本発明の医薬をデポー製剤に適用することにより、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物のアドレノメデュリン活性を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0095】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。この場合、本発明の医薬は、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物と1種以上の他の薬剤とを含む単一の医薬の形態で提供されてもよく、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物と1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0096】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)及び(X)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。本発明の式(I)及び(X)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)及び(X)で表される化合物が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0097】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬は、アドレノメデュリンによって予防又は治療される種々の症状、疾患及び/又は障害を、同様に予防又は治療することができる。前記症状、疾患及び/又は障害としては、限定するものではないが、例えば下記のものを挙げることができる。
【0098】
(1)循環器疾患:心不全、肺高血圧症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、心筋梗塞、リンパ浮腫、川崎病、心筋炎、高血圧、高血圧による臓器障害、及び動脈硬化症。
(2)腎臓・水電解質系疾患:腎不全、及び腎炎。
(3)脳・神経疾患:脳梗塞、認知症、及び脳炎。
(4)泌尿生殖器疾患:勃起不全(ED)。
(5)消化器疾患:炎症性腸疾患、潰瘍性疾患、腸管ベーチェット、及び肝不全。
(6)整形外科疾患:関節炎。
(7)内分泌代謝疾患:糖尿病及び糖尿病による臓器障害、並びに原発性アルドステロン症。
(8)その他:敗血症性ショック、自己免疫疾患、多臓器不全、褥瘡、創傷治癒、及び脱毛症。
【0099】
前記循環器疾患は、心筋梗塞、肺高血圧症又は心不全等であることが好ましい。前記消化器疾患は、ステロイド抵抗性又はステロイド依存性の炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病又は腸管ベーチェット病)のような炎症性疾患であることが好ましい。
【0100】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、天然の生理活性ペプチドであるアドレノメデュリンと修飾基とを連結した構造を有する。このため、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、安全で低毒性である。それ故、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬は、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本発明の医薬を投与することにより、アドレノメデュリンによって予防又は治療される種々の症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0101】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0102】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、循環器疾患、末梢血管疾患又は炎症性疾患)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の医薬は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。また、本発明は、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を有効成分として含有する、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患の予防又は治療剤に関する。本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、該症状、疾患及び/又は障害を持続的に予防又は治療することができる。
【0103】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害(例えば、循環器疾患、末梢血管疾患又は炎症性疾患)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の一実施形態は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物を投与することを含む、前記疾患若しくは症状の予防又は治療方法である。前記症状、疾患及び/又は障害は、循環器疾患、末梢血管疾患又は炎症性疾患であることが好ましい。前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を投与することにより、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0104】
本発明の他の一実施形態は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物である。本発明の別の実施形態は、前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される水和物の使用である。前記症状、疾患及び/又は障害は、循環器疾患、炎症性疾患又は末梢血管疾患であることが好ましい。本発明の医薬を前記で説明した症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、該症状、疾患及び/又は障害を持続的に予防又は治療することができる。
【0105】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な投与量及び投与回数は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量及び投与回数を最終的に決定すべきである。それ故、本発明の医薬において、有効成分である式(I)及び(X)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本発明の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である式(I)及び(X)で表される化合物の投与量は、通常は、1日に体重60 kg当り0.01~100 mgの範囲であり、典型的には、1日に体重60 kg当り0.01~10 mgの範囲である。
【0106】
本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬の投与経路及び投与回数は、特に限定されず、経口的に単回若しくは複数回投与されてもよく、非経口的に単回若しくは複数回投与されてもよい。本発明の医薬は、静脈投与、注腸投与、皮下投与、筋肉内投与又は腹腔内投与のような非経口的経路で投与されることが好ましく、静脈投与又は皮下投与されることがより好ましい。また、本発明の医薬は、単回投与されることが好ましい。本発明の医薬は、静脈又は皮下に単回投与するために使用されることが特に好ましい。本発明の式(I)及び(X)で表される化合物の親分子であるアドレノメデュリンは、強力な血管拡張作用を有する。このため、治療上有効な量のアドレノメデュリンを単回投与する場合、強力な血管拡張作用により、過度の血圧低下、反射性の交感神経活性上昇に伴う頻脈、及び/又はレニン活性の上昇のような望ましくない副反応を引き起こす可能性がある。これに対し、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物は、天然型アドレノメデュリンと実質的に略同等のアドレノメデュリン活性を保持しつつ、天然型アドレノメデュリンと比較して、血中半減期を有意に延長し得る。それ故、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物を有効成分として含有する医薬を対象の静脈に単回投与することにより、アドレノメデュリンの血管拡張作用に起因する望ましくない副反応を抑制しつつ、対象の症状、疾患及び/又は障害を持続的に予防又は治療することができる。
【0107】
<3. アドレノメデュリン誘導体の製造方法>
本発明はまた、本発明の式(I)及び(X)で表される化合物の製造方法に関する。
【0108】
[3-1.前駆体準備工程]
本発明の方法は、アドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体、1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基A又はA’の前駆体の少なくともいずれかを準備する工程を含んでもよい。
【0109】
本発明において、「アドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体」は、アドレノメデュリン又はその修飾体自体を意味するか、或いは、以下で説明する連結工程において、ペプチド部分B及び修飾基A又はA’が縮合反応によって互いに連結されるように、適宜改変又は活性化されたそれらの誘導体を意味する。ペプチド部分Bの前駆体は、アドレノメデュリン若しくはその修飾体自体、又はそれらの保護形態であることが好ましい。
【0110】
修飾基Aの前駆体は、通常は、式(I-1):
A-CHO (I-1)
で表される1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基Aの前駆体アルデヒドである。本工程において、前記の特徴を有する前駆体を準備することにより、以下で説明する連結工程における各前駆体の連結反応を実施して、式(I)で表される化合物を高収率で得ることができる。
【0111】
修飾基A’の前駆体は、通常は、式(X-1):
A’-CO-O-C6H4-p-NO2 (X-1)
で表される1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基A’の前駆体p-ニトロフェニル炭酸エステルである。或いは、修飾基A’の前駆体は、式(X-2):
A’-CO-O-C4H4NO2 (X-2)
で表される1個以上のポリエチレングリコール基を含む修飾基A’の前駆体N-ヒドロキシスクシンイミジル炭酸エステルであってもよい。本工程において、前記の特徴を有する前駆体を準備することにより、以下で説明する連結工程における各前駆体の連結反応を実施して、式(X)で表される化合物を高収率で得ることができる。
【0112】
本工程において、アドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体は、当該技術分野で通常使用される手段により形成することができる。ペプチド部分Bの前駆体が、アドレノメデュリン又はその修飾体自体である場合、例えば、固相系又は液相系のペプチド合成法を用いてもよく、アドレノメデュリンを産生し得るヒト又は非ヒト哺乳動物の組織又は細胞から、天然ペプチドを精製する方法を用いてもよい。或いは、アドレノメデュリンを産生し得るヒト又は非ヒト哺乳動物におけるアドレノメデュリンをコードするDNA(例えば、配列番号2、4、6、8、10又は12)を使用して、大腸菌又は出芽酵母等の形質転換系で組換えタンパク質を大量発現させる方法を用いてもよい。或いは、予め製造されたペプチドを購入等して用いてもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0113】
前記の手段によって形成されたペプチド部分Bの前駆体において、該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基のチオール基をジスルフィド化することにより、該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基がジスルフィド結合を形成している前駆体を得ることができる。また、前記の手段によって形成されたペプチド部分Bの前駆体において、該アミノ酸配列中の2個のシステイン残基の間で形成されたジスルフィド結合をエチレン基によって置換することにより、該ジスルフィド結合がエチレン基によって置換された前駆体を得ることができる。前記ジスルフィド化反応及びエチレン基による置換反応は、当該技術分野で通常使用される条件に基づき実施することができる。前記ジスルフィド化反応及びエチレン基による置換反応は、本工程において実施してもよく、以下で説明する連結工程において実施してもよい。いずれの場合も本発明の方法の実施形態に包含される。
【0114】
ペプチド部分Bの前駆体、及び修飾基A又はA’の前駆体の少なくともいずれかがそれらの保護形態である場合、本工程において、所望により、ペプチド部分Bの前駆体、及び修飾基A又はA’の少なくともいずれかに1種以上の保護基を導入する保護工程、並びに/又は、ペプチド部分Bの前駆体、及び修飾基A又はA’の前駆体の保護形態の少なくともいずれかの1種以上の保護基を脱保護する脱保護工程を実施してもよい。前記保護工程及び脱保護工程は、当該技術分野で通常使用される保護化反応及び脱保護化反応によって実施することができる。前記保護工程及び脱保護工程は、本工程において実施してもよく、以下で説明する連結工程において実施してもよい。いずれの場合も本発明の方法の実施形態に包含される。
【0115】
[3-2. 連結工程]
本発明の方法は、アドレノメデュリン又はその修飾体から誘導されるペプチド部分Bの前駆体と、修飾基A又はA’の前駆体とを連結させて、式(I)又は(X)で表される化合物を得る、連結工程を含むことが必要である。
【0116】
式(I)において、本工程は、通常は、ペプチド部分Bの前駆体と、式(I-1)で表される1個以上のPEG基を含む修飾基Aの前駆体アルデヒドとを還元剤存在下で反応させることによって実施される。本工程において使用される還元剤としては、限定するものではないが、例えば、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH3)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、ホウ酸ジメチルアミン、ホウ酸トリメチルアミン、ホウ酸ピリジン、ピリジンボラン、2-ピコリンボラン及び3-ピコリンボランを挙げることができる。本工程における反応温度は、-20~50℃の範囲であることが好ましく、0~15℃の範囲であることがより好ましい。また、本工程における反応時間は、5分~100時間の範囲であることが好ましい。
【0117】
式(X)において、本工程は、通常は、ペプチド部分Bの前駆体と、式(X-1)又は式(X-2)で表される1個以上のPEG基を含む修飾基A’の前駆体p-ニトロフェニル炭酸エステル又はN-ヒドロキシスクシンイミジル炭酸エステルとを塩基存在下で反応させることによって実施される。本工程において使用される塩基としては、限定するものではないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン及びジメチルアミノピリジンを挙げることができる。本工程における反応温度は、0~50℃の範囲であることが好ましい。また、本工程における反応時間は、5分~200時間の範囲であることが好ましい。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0119】
<実験I:全長アドレノメデュリン誘導体の調製>
〔実験I-1:全長アドレノメデュリン誘導体の合成〕
[実験I-1-1:CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(1))の合成]
公知文献(Kubo, Kら, “Biological properties of adrenomedullin conjugated with polyethylene glycol.”, Peptides, 2014年, 第57巻, p. 118-21)に記載の方法に基づき、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性エステル型の5 kDaのCH3O-PEG化試薬(PEG-1)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)5-CO-O-NHS)を用いて、ヒトアドレノメデュリンの1~52アミノ酸残基(配列番号1)に対応するペプチドである、H-Tyr-Arg-Gln-Ser-Met-Asn-Asn-Phe-Gln-Gly-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「h.AM(1-52)」とも記載する)のN末端アミノ基に、アミド結合を介して5 kDaの重量平均分子量のポリエチレングリコール基(以下、「PEG(5k)」とも記載する)を連結して、アミド連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(1-52)))(1)を合成した。
【0120】
[実験I-1-2:CH3O-PEG(20k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(2))の合成]
実験I-1-1と同様の方法に基づき、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性エステル型の20 kDaのCH3O-PEG化試薬(PEG-1)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)5-CO-O-NHS)を用いて、h.AM(1-52)ペプチドのN末端アミノ基に、アミド結合を介して20 kDaの重量平均分子量のポリエチレングリコール基(以下、「PEG(20k)」とも記載する)を連結して、アミド連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(1-52)))(2)を合成した。
【0121】
[実験I-1-3:CH3O-PEG(10k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(3))の合成]
2 mgのh.AM(1-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、2 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、16 mgのアルデヒド型の10 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(10k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(10k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52)))(3)、及び未反応のh.AM(1-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Superdex 200 HR 10/30 (GEヘルスケア社) カラムを接続した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、1.0 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(3)を得た。
【0122】
[実験I-1-4:CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(4))の合成]
1 mgのh.AM(1-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、1 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、32 mgのアルデヒド型の20 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52)))(4)、及び未反応のh.AM(1-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Superdex 200 HR 10/30 (GEヘルスケア社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.3 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(4)を得た。
【0123】
[実験I-1-5:CH3O-PEG(30k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(5))の合成]
2 mgのh.AM(1-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、2 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、30 mgのアルデヒド型の30 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(30k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(30k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52)))(5)、及び未反応のh.AM(1-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Superdex 200 HR 10/30 (GEヘルスケア社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 200 mM Na2SO4、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.8 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(5)を得た。
【0124】
[実験I-1-6:GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(6))の合成]
実験I-1-5において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、45 mgの式(VII-1-1’):
【化9】
で表されるアルデヒド型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(6):
【化10】
を得た。分取HPLCにより、1.0 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(6)を得た。
【0125】
[実験I-1-7:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(7))の合成]
実験I-1-5において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、80 mgの式(VII-1-1’):
【化11】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(7):
【化12】
を得た。分取HPLCにより、1.2 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(7)を得た。
【0126】
[実験I-1-8:GL-2分岐型CH
3O-PEG(60k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(8))の調製]
実験I-1-4において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、40 mgの式(VII-1-1’):
【化13】
で表されるアルデヒド型の60 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(60k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(60k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(8):
【化14】
を得た。分取HPLCにより、0.4 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(8)を得た。
【0127】
[実験I-1-9:GL-2分岐型CH
3O-PEG(80k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(9))の合成]
実験I-1-5において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、121 mgの式(VII-1-1’):
【化15】
で表されるアルデヒド型の80 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(80k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(60k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(9):
【化16】
を得た。分取HPLCにより、1.1 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(9)を得た。
【0128】
[実験I-1-10:Lys-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(10))の合成]
実験I-1-4において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、42.9 mgの式(VI-1-1’):
【化17】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-4)を用いた他は、前記と同様の手順により、リジン骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(Lys-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(10):
【化18】
を得た。分取HPLCにより、0.4 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(10)を得た。
【0129】
[実験I-1-11:GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(11))の合成]
実験I-1-3において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、93 mgの式(VII-2-1’):
【化19】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-5)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する4分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(11):
【化20】
を得た。分取HPLCにより、1.1 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(11)を得た。
【0130】
[実験I-1-12:Xyl-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(12))の合成]
実験I-1-3において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、94 mgの式(VIII-1-1’):
【化21】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-6)を用いた他は、前記と同様の手順により、キシロース骨格を有する4分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(Xyl-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(12):
【化22】
を得た。分取HPLCにより、1.0 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(12)を得た。
【0131】
[実験I-1-13:GL-3分岐型CH
3O-PEG(50k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(13))の合成]
実験I-1-3において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、94 mgの式(VII-1-2’):
【化23】
で表されるアルデヒド型の50 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-7)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する3分岐型アルキルアミン連結型PEG(50k)アドレノメデュリン誘導体(GL-3分岐型CH
3O-PEG(50k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)))(13):
【化24】
を得た。分取HPLCにより、0.9 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(13)を得た。
【0132】
[実験I-1-14:CH3O-PEG(20k)-CO-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(14))の合成]
Fmocペプチド合成法を用いて、Fmoc-Tyr-Arg-Gln-Ser-Met-Asn-Asn-Phe-Gln-Gly-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「Fmoc-αNH-(h.AM(1-52))」とも記載する)を委託合成した。18 mgのFmoc-αNH-(h.AM(1-52))ぺプチドを、1.8 mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。この溶液に、9 mgの炭酸 t-ブチルスクシンイミジル及び6 μLのジイソプロピルエチルアミンを加えた。反応溶液を、5時間撹拌した。得られた反応溶液に、酢酸水を加えた。その後、この溶液を凍結乾燥した。残渣を、2 mLのDMSOに溶解した。得られた溶液に、0.2 mLのジエチルアミンを加えた。得られた溶液を、70分間攪拌した。反応溶液に、酢酸水を加えて希釈した。得られた溶液を、逆相HPLCを用いて分取して、h.AM(1-52)ペプチドを含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、10 mgのh.AM(1-52)の4個のリジンがBoc基で保護されたペプチドを白色粉末として得た。
【0133】
前記得られたペプチド2 mgを、2 mLのDMSOに溶解した。このペプチド溶液に、氷冷下、15 mgのp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-8)(CH3O-(CH2CH2O)n-CO-O-C6H4-p-NO2)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、6.5 μLの0.1 M トリエチルアミン/DMSO溶液を添加した。反応液を、氷冷下、1時間放置した。その後、反応液を室温に戻し、24時間放置した。さらに、反応液の温度を30℃に上げて、2日間反応を継続した。反応液を凍結乾燥した。氷冷下、得られた残渣に、1 mLのトリフロオロ酢酸を添加した。混合物の温度を室温に戻して、2時間放置した。次いで、エバポレーターを用いて、混合物からトリフルオロ酢酸を減圧留去した。得られた残渣に、4 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.0を添加して溶解させた。この溶液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(1 mL)に、1 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-CO-αNH-(h.AM(1-52)))(14)、及び未反応のh.AM(1-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、250 μg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(14)を得た。
【0134】
[実験I-1-15:CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(35))の合成]
実験I-1-3において、アルデヒド型の10 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、5 mgのアルデヒド型の5 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を用いた他は、前記と同様の手順により、アルキルアミン連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52)))(35)を得た。分取HPLCにより、0.8 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(35)を得た。
【0135】
[実験I-1-16:CH3O-PEG(40k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52))(化合物(25))の合成]
実験I-1-3において、アルデヒド型の10 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、40 mgのアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を用いた他は、前記と同様の手順により、アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(40k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(1-52)))(25)を得た。分取HPLCにより、0.6 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(25)を得た。
【0136】
[実験I-1-17:GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(26))の合成]
実験I-1-14において、p-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-8)(CH
3O-(CH
2CH
2O)
n-CO-O-C
6H
4-p-NO
2)に代えて、25 mgの式(XII-1-1’):
【化25】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(26):
【化26】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(26)を得た。
【0137】
[実験I-1-18:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(27))の合成]
実験I-1-14において、p-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-8)(CH
3O-(CH
2CH
2O)
n-CO-O-C
6H
4-p-NO
2)に代えて、35 mgの式(XII-1-1’):
【化27】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(27):
【化28】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(27)を得た。
【0138】
[実験I-1-19:GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(化合物(28))の合成]
実験I-1-14において、p-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-8)(CH
3O-(CH
2CH
2O)
n-CO-O-C
6H
4-p-NO
2)に代えて、40 mgの式(XII-2-1’):
【化29】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-10)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する4分岐型ウレタン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(1-52))(28):
【化30】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(1-52)換算)の目的化合物(28)を得た。
【0139】
〔実験I-2:全長アドレノメデュリン誘導体の構造解析〕
[実験I-2-1:切断ペプチドの質量分析によるPEG基の結合位置の同定(1)]
10 μgの化合物(3)を、70%ギ酸及び600 μgの臭化シアン(BrCN)と混合して合計500 μLにした。この混合物を、室温で一晩反応させた。Sep Pak(ウォーターズ社)カラムに、クロロホルム、メタノール、及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液を各1 mLずつ順次通液して、カラムを洗浄した。その後、1 mLの超純水を通液して、Sep Pakカラムを平衡化した。一晩反応させた臭化シアン処理後の反応液(500 μL)に、4,500 μLの超純水を加えて5 mLの希釈反応液を得た。希釈反応液をカラムに通液して、切断ペプチドを吸着させた。次に、カラムに、超純水、及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有する10%アセトニトリル水溶液を各1 mLずつ順次通液して、カラムを洗浄し、未吸着物質を除去した。最後に、カラムに、1 mLの0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液を通液して、切断ペプチドをカラムから溶出した。
【0140】
前記処理で得られたSep Pakカラムからの切断ペプチド溶出画分から、アセトニトリルを減圧留去した。得られた残留物を、逆相カラム(ODS-120A TSKgel、東ソー社)を用いた逆相HPLC(RP-HPLC)により精製及び分取した。RP-HPLCにおける溶出は、60分間で100%のA液(0.1%トリフルオロ酢酸を含有する10%アセトニトリル水溶液)から100%のB液(0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液)まで変化するリニアグラジエントプログラムで行った。質量分析装置(AXIMA-confidence、島津製作所)を用いて、分取した切断ペプチドのMSスペクトルを測定した。その結果、切断ペプチドの分子量は、ヒトアドレノメデュリンの6~52アミノ酸残基に対応するペプチドの分子量と一致することが確認された((M+Na)+、計算値:m/z 5385.935;測定値:m/z 5385.9986)。ヒトアドレノメデュリンに存在する全てのリジン残基(N末端から25、36、38及び46残基)は、6~52アミノ酸残基の範囲内に存在する。それ故、前記結果から、アルキルアミン連結型PEG(10k)アドレノメデュリン誘導体(3)におけるPEG基は、N末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0141】
[実験I-2-2:切断ペプチドの質量分析によるPEG基の結合位置の同定(2)]
10~40 μgの化合物(2)を、2.5 mMエチレンジアミン四酢酸、30%N,N-ジメチルホルムアミド及び250 mM Tris-HCl(pH 8.5)を含む500 μLの溶液に溶解し、ボルテックスミキサー及び超音波処理によって攪拌及び混合した。混合物に2.5 mgの1,4-ジチオトレイトールを加えて、混合物がpH 8.0以上であることを確認した。混合物に窒素ガスを注入し、超音波処理を5分間行った。この混合物を、37℃で2時間反応させた。反応後、反応混合物に、遮光下で6.25 mgのモノヨード酢酸を加えて、25℃で30分間さらに反応させた。その後、反応混合物に、最終濃度が1 Nとなるように酢酸を加えて、反応を停止させた。Sep Pak(ウォーターズ社)カラムに、クロロホルム、メタノール、及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液を各1 mLずつ順次通液して、カラムを洗浄した。その後、1 mLの1 N酢酸を通液して、Sep Pakカラムを平衡化した。還元アルキル化後の反応液をカラムに通液して、反応ペプチドを吸着させた。次に、カラムに、1N酢酸、及び0.1%トリフルオロ酢酸を含有する10%アセトニトリル水溶液を各1 mLずつ順次通液して、カラムを洗浄し、未吸着物質を除去した。最後に、カラムに、1 mLの0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液を通液して、還元アルキル化ペプチドをカラムから溶出した。
【0142】
前記処理で得られたSep Pakカラムからの還元アルキル化ペプチド溶出画分から、アセトニトリルを減圧留去した。得られた還元アルキル化ペプチドを、リシルエンドペプチダーゼと、ペプチド: リシルエンドペプチダーゼが20:1の質量比となる割合で混合した。混合物に、1 M Tris-HCl(pH 8.5)を加えて、200 μLの体積及び50mM Tris-HClの最終濃度となるように調製した。この混合物を、37℃で一晩(16時間以上)放置した。得られた切断ペプチドを、逆相カラム(ODS-120A TSKgel、東ソー社)を用いたRP-HPLCにより精製及び分取した。RP-HPLCにおける溶出は、100%のA液(0.1%トリフルオロ酢酸)を5分間通液し、その後、60分間で100%のA液から50%のB液(0.1%トリフルオロ酢酸を含有する60%アセトニトリル水溶液)まで変化するリニアグラジエント条件で通液し、さらに100%のB液を15分間通液するプログラムで行った。対照として、化合物(2)に代えて化学合成した標品のh.AM(1-52)ペプチドを用いて前記と同様の手順で反応及び分取RP-HPLCを行った。切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムを
図1に示す。図中、Aは、h.AM(1-52)ペプチド由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムを、Bは、化合物(2)由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムを、それぞれ示す。
図1Aに示すように、h.AM(1-52)ペプチド由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムでは、保持時間28.08分(以下、「ピーク(1)」とも記載する)、36.97分(以下、「ピーク(2)」とも記載する)、54.53分(以下、「ピーク(3)」とも記載する)、及び67.52分(以下、「ピーク(4)」とも記載する)に4個の主要なピークが検出された。他方、
図1Bに示すように、化合物(2)由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムでは、保持時間28.69分(以下、「ピーク(5)」とも記載する)、36.98分(以下、「ピーク(6)」とも記載する)、54.57分(以下、「ピーク(7)」とも記載する)、及び72.30分(以下、「ピーク(8)」とも記載する)に4個の主要なピークが検出された。保持時間の比較から、ピーク(1)及び(5)、ピーク(2)及び(6)、並びにピーク(3)及び(7)は、それぞれ同一のペプチド断片に対応する。ピーク(4)及び(8)は、保持時間が異なる。ピーク(8)の化合物は、ピーク(4)のペプチド断片にPEG基が結合した化合物と推測される。
【0143】
化合物(7)、(8)及び(26)を用いて前記と同様の手順で反応及び分取RP-HPLCを行った。その結果、化合物(2)を用いた場合と同様に、ピーク(1)、(2)及び(3)に対応する保持時間を有するピークが検出された。また、ピーク(8)のように、ピーク(4)のペプチド断片にPEG基が結合した化合物に対応すると推測されるピークも検出された。
【0144】
質量分析装置(QSTAR Elit、SCIEX社)を用いて、分取した切断ペプチドのMSスペクトルを測定した。ヒトアドレノメデュリンは、4個のリジン残基(N末端側から25、36、38及び46残基)を有している。このため、リシルエンドペプチダーゼによって得られる切断ペプチドは、5個のペプチド断片、具体的には、N末側よりYRQSMNNFQGLRSFGCRFGTCTVQK(h.AM(1-25))、LAHQIYQFTAK(h.AM(26-36))、DK(h.AM(37-38))、DNVAPRSK(h.AM(39-46))、及びISPQGY(h.AM(47-52))のペプチド断片からなる。得られたMSスペクトルから、ピーク(1)及び(5)はh.AM(39-46)のペプチド断片に、ピーク(2)及び(6)はh.AM(47-52)のペプチド断片に、ピーク(3)及び(7)はh.AM(26-36)のペプチド断片に、ピーク(4)はh.AM(1-25)のペプチド断片に、それぞれ対応することが確認された。また、質量分析装置(autoflex II、ブルカーダルトニクス社)を用いて、ピーク(8)のペプチド断片のMSスペクトルを測定した結果、ピーク(8)の化合物は、h.AM(1-52)ペプチドのN末端側のペプチド断片にPEG基が結合した化合物であることが確認された。それ故、前記結果から、化合物(7)、(8)及び(26)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0145】
[実験I-2-3:アミノ酸配列分析によるPEG基の結合位置の同定]
化合物(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)及び(13)を、プロテインシーケンサー(Procise 494 HT Protein Sequencing System、アプライドバイオシステムズ社)を用いて、アミノ酸配列分析に供した。その結果、いずれの化合物ともヒトアドレノメデュリンのN末端アミノ酸残基に相当するアミノ酸は検出されなかった。前記結果から、化合物(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)及び(13)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0146】
[実験I-2-4:イオン交換HPLCによるPEG基の結合位置の同定]
イオン交換カラム(CM-2SW、東ソー社)を用いたイオン交換HPLCにより、h.AM(1-52)ペプチドとヒトアドレノメデュリンの6~52アミノ酸残基に対応するペプチドとを分離した。イオン交換HPLCにおける溶出は、0~40分間に80%のA液(100 mM 酢酸ナトリウム, pH 5.0)、及び20%のB液(1 M 硫酸ナトリウムを含有する100 mM 酢酸ナトリウム, pH 7.0)から20%のA液及び80%のB液まで変化するリニアグラジエントプログラムで行った。
【0147】
実験I-2-1で得られた化合物(3)の切断ペプチドのSep Pakカラム溶出画分からアセトニトリルを減圧留去した残留物を、前記条件のイオン交換HPLCで分析した。その結果、化合物(3)について、ヒトアドレノメデュリンの6~52アミノ酸残基に対応するペプチドと同一の溶出時間を有するピークを確認した。実験I-2-1と同様の手順で得られた化合物(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(25)、(27)、(28)及び(35)の切断ペプチドのSep Pakカラム溶出画分からアセトニトリルを減圧留去した残留物を、前記条件のイオン交換HPLCで分析した結果、化合物(3)のピークと一致することを確認した。それ故、前記結果から、化合物(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(25)、(27)、(28)及び(35)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0148】
[実験I-2-5:SDS-PAGEによる分子量分析]
実験書(実験医学別冊「タンパク質実験ハンドブック」羊土社、竹縄忠臣、伊藤俊樹/編)に基づき、実験I-1で得られた化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(25)、(26)、(27)、(28)及び(35)(各200 ng)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した。結果を
図2、3及び4に示す。
図2中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(3)を、レーン2は化合物(4)を、レーン3は化合物(5)を、レーン4は化合物(6)を、レーン5は化合物(7)を、レーン6は化合物(8)を、レーン7は化合物(9)を、レーン8は化合物(10)を、レーン9は化合物(11)を、レーン10は化合物(12)を、それぞれ示す。
図3中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(1)を、レーン2は化合物(2)を、レーン3は化合物(13)を、レーン4は化合物(14)を、レーン5は後述する化合物(15)を、レーン6は後述する化合物(16)を、レーン7は後述する化合物(17)を、それぞれ示す。
図4中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は化合物(25)を、レーン2は化合物(26)を、レーン3は化合物(27)を、レーン4は化合物(28)を、レーン5は後述する化合物(29)を、レーン6は後述する化合物(30)を、レーン7は後述する化合物(31)を、レーン8は後述する化合物(32)を、レーン9は後述する化合物(33)を、レーン10は後述する化合物(34)を、レーン11は化合物(35)を、レーン12は後述する化合物(36)を、レーン13は後述する化合物(37)を、それぞれ示す。分子量標準物質は、いずれもPrecision Plus Protein(TM) Dual Xtra Standards(バイオラッド社)を用いた。
図2、3及び4に示すように、各化合物は、所望の分子量を有することが確認された。
【0149】
[実験I-2-6:ゲル濾過HPLCによる会合の確認]
ゲル濾過カラム(Superdex 200 Increace 10/300 GL、GEヘルスケア社)を用いたゲル濾過HPLCにより、アドレノメデュリン誘導体分子の会合を確認した。実験I-1で得られた化合物(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(25)、(27)、(28)、及び(35)(各50 μg)を、カラムに添加した。溶出液(100 mM 酢酸ナトリウム及び100 mM 硫酸ナトリウム, pH 6.0)を、0.75 mL/分の流速でカラムに通液した。得られたゲル濾過クロマトグラムから、各化合物は、分子量に応じた保持時間を有する単一ピークを示した。前記結果から、各アドレノメデュリン誘導体分子は、会合しておらず、単量体として存在することが確認された。前記ゲル濾過クロマトグラムにおける各化合物の保持時間を、表1に示す。
【表1】
【0150】
<実験II:N末端欠失アドレノメデュリン誘導体の調製>
〔実験II-1:N末端欠失アドレノメデュリン誘導体の合成〕
[実験II-1-1:CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(6-52))(化合物(15))の合成]
公知文献(Kubo, Kら, “Biological properties of adrenomedullin conjugated with polyethylene glycol.”, Peptides, 2014年, 第57巻, p. 118-21)に記載の方法に基づき、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性エステル型の5 kDaのCH3O-PEG化試薬(PEG-1)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)5-CO-O-NHS)を用いて、ヒトアドレノメデュリンの6~52アミノ酸残基に対応するペプチドである、H-Asn-Asn-Phe-Gln-Gly-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「h.AM(6-52)」とも記載する)のN末端アミノ基に、アミド結合を介して5 kDaの重量平均分子量のポリエチレングリコール基(PEG(5k))を連結して、アミド連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(6-52)))(15)を合成した。
【0151】
[実験II-1-2:CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(11-52))(化合物(16))の合成] 実験II-1-1と同様の方法に基づき、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性エステル型の5 kDaのCH3O-PEG化試薬(PEG-1)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)5-CO-O-NHS)を用いて、ヒトアドレノメデュリンの11~52アミノ酸残基に対応するペプチドである、H-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「h.AM(11-52)」とも記載する)のN末端アミノ基に、アミド結合を介して5 kDaの重量平均分子量のポリエチレングリコール基(PEG(5k))を連結して、アミド連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(11-52)))(16)を合成した。
【0152】
[実験II-1-3:CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(16-52))(化合物(17))の合成] 実験II-1-1と同様の方法に基づき、N-ヒドロキシコハク酸イミド活性エステル型の5 kDaのCH3O-PEG化試薬(PEG-1)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)5-CO-O-NHS)を用いて、ヒトアドレノメデュリンの16~52アミノ酸残基に対応するペプチドである、H-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「h.AM(16-52)」とも記載する)のN末端アミノ基に、アミド結合を介して5 kDaの重量平均分子量のポリエチレングリコール基(PEG(5k))を連結して、アミド連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)5-CO-αNH-(h.AM(16-52)))(17)を合成した。
【0153】
[実験II-1-4:CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(6-52))(化合物(18))の合成] 0.4 mgのh.AM(6-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.5 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、2 mgのアルデヒド型の5 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(6-52)))(18)、及び未反応のh.AM(6-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.12 mg(h.AM(6-52)換算)の目的化合物(18)を得た。
【0154】
[実験II-1-5:CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(11-52))(化合物(19))の合成] 0.44 mgのh.AM(11-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.5 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、2.5 mgのアルデヒド型の5 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(11-52)))(19)、及び未反応のh.AM(11-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.1 mg(h.AM(11-52)換算)の目的化合物(19)を得た。
【0155】
[実験II-1-6:CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(16-52))(化合物(20))の合成] 0.46 mgのh.AM(16-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.5 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、3 mgのアルデヒド型の5 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(5k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(16-52)))(20)、及び未反応のh.AM(16-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.15 mg(h.AM(16-52)換算)の目的化合物(20)を得た。
【0156】
[実験II-1-7:CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(6-52))(化合物(21))の合成] 0.22 mgのh.AM(6-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.2 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、4.1 mgのアルデヒド型の20 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(6-52)))(21)、及び未反応のh.AM(6-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.1 mg(h.AM(6-52)換算)の目的化合物(21)を得た。
【0157】
[実験II-1-8:CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(11-52))(化合物(22))の合成]
0.22 mgのh.AM(11-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.2 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、4.6 mgのアルデヒド型の20 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(11-52)))(22)、及び未反応のh.AM(11-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.1 mg(h.AM(11-52)換算)の目的化合物(22)を得た。
【0158】
[実験II-1-9:CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(16-52))(化合物(23))の合成]
0.22 mgのh.AM(16-52)ペプチドを、100 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.5に溶解して、0.2 mLのペプチド溶液を得た。このペプチド溶液に、氷冷下、5.2 mgのアルデヒド型の20 kDaの重量平均分子量のCH3O-PEG化試薬(PEG-2)(CH3O-(CH2CH2O)n-(CH2)2-CHO)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、NaCNBH3を20 mMの最終濃度となるように添加した。反応液を、4℃下、24時間放置した。得られた反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いて5倍希釈した。希釈された反応液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(2 mL)に、2 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(CH3O-PEG(20k)-(CH2)2-CH2-αNH-(h.AM(16-52)))(23)、及び未反応のh.AM(16-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na2SO4を含有する20% CH3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.1 mg(h.AM(16-52)換算)の目的化合物(23)を得た。
【0159】
[実験II-1-10:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(16-52))(化合物(24))の合成]
実験II-1-6において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、20 mgの式(VII-1-1’):
【化31】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(16-52)))(24):
【化32】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(16-52)換算)の目的化合物(24)を得た。
【0160】
[実験II-1-11:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(6-52))(化合物(29))の合成]
実験II-1-7において、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、20 mgの式(VII-1-1’):
【化33】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(6-52)))(29):
【化34】
を得た。分取HPLCにより、0.15 mg(h.AM(6-52)換算)の目的化合物(29)を得た。
【0161】
[実験II-1-12:GL-2分岐型CH3O-PEG(20k)-CO-αNH-(h.AM(6-52))(化合物(30))の合成]
Fmocペプチド合成法を用いて、Fmoc-Asn-Asn-Phe-Gln-Gly-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「Fmoc-αNH-(h.AM(6-52))」とも記載する)を合成した。17 mgのFmoc-αNH-(h.AM(6-52))ぺプチドを、1.8 mLのDMSOに溶解した。この溶液に、9 mgの炭酸 t-ブチルスクシンイミジル及び6 μLのジイソプロピルエチルアミンを加えた。反応溶液を、5時間撹拌した。得られた反応溶液に、酢酸水を加えた。その後、この溶液を凍結乾燥した。残渣を、2 mLのDMSOに溶解した。得られた溶液に、0.2 mLのジエチルアミンを加えた。得られた溶液を、70分間攪拌した。反応溶液に、酢酸水を加えて希釈した。得られた溶液を、逆相HPLCを用いて分取して、h.AM(6-52)ペプチドを含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、9 mgのh.AM(6-52)の4個のリジンがBoc基で保護されたペプチドを白色粉末として得た。
【0162】
前記得られたペプチド2 mgを、2 mLのDMSOに溶解した。このペプチド溶液に、氷冷下、15 mgの式(XII-1-1’):
【化35】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のGL2分岐型CH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を添加した。さらに、このペプチド溶液に、6.5 μLの0.1 M トリエチルアミン/DMSO溶液を添加した。反応液を、氷冷下、1時間放置した。その後、反応液を室温に戻し、24時間放置した。さらに、反応液の温度を30℃に上げて、2日間反応を継続した。反応液を凍結乾燥した。氷冷下、得られた残渣に、1 mLのトリフロオロ酢酸を添加した。混合物の温度を室温に戻して、2時間放置した。次いで、エバポレーターを用いて、混合物からトリフルオロ酢酸を減圧留去した。得られた残渣に、4 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.0を添加して溶解させた。この溶液を、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.0で平衡化されたSP-Sepharose HP (GEヘルスケア社) カラム(1 mL)に、1 mL/hrの流速で通液した。2 mLの50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.0を用いてカラムを洗浄した。次いで、5 mLの1 M NaClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 5.0をカラムに通液し、溶出画分を得た。溶出画分に、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CO-
αNH-(h.AM(6-52)))(30):
【化36】
及び未反応のh.AM(6-52)ペプチドが回収された。この溶出画分を、限外濾過膜(アミコンUltra4, ミリポア社)を用いて0.2 mLに濃縮した。得られた濃縮液を、Tsk gel G2000SWxL (60 cm、東ソー社) カラムを接続したHPLCシステム (L-2000:日立ハイテクサイエンス社製) を用いて、精製及び分取した (溶出液:80 mM 酢酸ナトリウム緩衝液, pH6 + 80 mM Na
2SO
4を含有する20% CH
3CN、流速:0.5 mL/min)。前記分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(6-52)換算)の目的化合物(30)を得た。
【0163】
[実験II-1-13:GL-2分岐型CH3O-PEG(20k)-CO-αNH-(h.AM(11-52))(化合物(31))の合成]
Fmocペプチド合成法を用いて、Fmoc-Leu-Arg-Ser-Phe-Gly-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「Fmoc-αNH-(h.AM(11-52))」とも記載する)を合成した。Fmoc-αNH-(h.AM(11-52))を用いて、実験II-1-12と同様の手順により、6 mgのh.AM(11-52)の4個のリジンがBoc基で保護されたペプチドを白色粉末として得た。
【0164】
実験II-1-12において、h.AM(6-52)ペプチドを前記で得られたh.AM(11-52)ペプチドに変更し、且つ20 mgの式(XII-1-1’):
【化37】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CO-
αNH-(h.AM(11-52)))(31):
【化38】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(11-52)換算)の目的化合物(31)を得た。
【0165】
[実験II-1-14:GL-2分岐型CH3O-PEG(20k)-CO-αNH-(h.AM(16-52))(化合物(32))の合成]
Fmocペプチド合成法を用いて、Fmoc-Cys-Arg-Phe-Gly-Thr-Cys-Thr-Val-Gln-Lys-Leu-Ala-His-Gln-Ile-Tyr-Gln-Phe-Thr-Asp-Lys-Asp-Lys-Asp-Asn-Val-Ala-Pro-Arg-Ser-Lys-Ile-Ser-Pro-Gln-Gly-Tyr-NH2のアミノ酸配列を有するペプチドのCys16-Cys21ジスルフィド架橋体(以下、「Fmoc-αNH-(h.AM(16-52))」とも記載する)を合成した。Fmoc-αNH-(h.AM(16-52))を用いて、実験II-1-12と同様の手順により、6 mgのh.AM(16-52)の4個のリジンがBoc基で保護されたペプチドを白色粉末として得た。
【0166】
実験II-1-12において、h.AM(6-52)ペプチドを前記で得られたh.AM(16-52)ペプチドに変更し、且つ15 mgの式(XII-1-1’):
【化39】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(20k)-CO-
αNH-(h.AM(16-52)))(32):
【化40】
を得た。分取HPLCにより、0.2 mg(h.AM(16-52)換算)の目的化合物(32)を得た。
【0167】
[実験II-1-15:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(16-52))(化合物(33))の合成]
実験II-1-14において、p-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)に代えて、32 mgの式(XII-1-1’):
【化41】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型ウレタン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(16-52))(33)を得た。分取HPLCにより、0.15 mg(h.AM(16-52)換算)の目的化合物(33)を得た。
【0168】
[実験II-1-16:GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(6-52))(化合物(34))の合成]
実験II-1-12において、p-ニトロフェニルエステル型の20 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-9)に代えて、20 mgの式(XII-2-1’):
【化42】
で表されるp-ニトロフェニルエステル型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-10)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する4分岐型ウレタン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-4分岐型CH
3O-PEG(40k)-CO-
αNH-(h.AM(6-52))(34):
【化43】
を得た。分取HPLCにより、0.15 mg(h.AM(6-52)換算)の目的化合物(34)を得た。
【0169】
〔実験II-2:N末端欠失アドレノメデュリン誘導体の構造解析〕
[実験II-2-1:切断ペプチドの質量分析によるPEG基の結合位置の同定]
実験I-2-2と同様の手順で、化合物(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(29)、(30)、(31)、(32)、(33)及び(34)のリシルエンドペプチダーゼによる切断ペプチドを得た。得られた切断ペプチドを、実験I-2-2と同様の手順で、RP-HPLCにより精製及び分取した。その結果、全ての化合物由来の切断ペプチドのRP-HPLCクロマトグラムで、
図1に示すピーク(5)、(6)、(7)及び(8)に対応するピークが検出された。実験I-2-2の結果から、ピーク(1)及び(5)はh.AM(39-46)のペプチド断片に、ピーク(2)及び(6)はh.AM(47-52)のペプチド断片に、ピーク(3)及び(7)はh.AM(26-36)のペプチド断片に、ピーク(4)はh.AM(1-25)のペプチド断片に、ピーク(8)はh.AM(1-52)ペプチドのN末端側のペプチド断片にPEG基が結合した化合物に、それぞれ対応することが確認された。それ故、前記結果から、化合物(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(29)、(30)、(31)、(32)、(33)及び(34)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0170】
[実験II-2-2:アミノ酸配列分析によるPEG基の結合位置の同定]
化合物(18)、(21)、(22)、(23)、(24)、(31)、(33)及び(34)を、プロテインシーケンサー(Procise 494 HT Protein Sequencing System、アプライドバイオシステムズ社)を用いて、アミノ酸配列分析に供した。その結果、いずれの化合物ともヒトアドレノメデュリンのN末端アミノ酸残基に相当するアミノ酸は検出されなかった。前記結果から、化合物(18)、(21)、(22)、(23)、(24)、(31)、(33)及び(34)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0171】
[実験II-2-3:SDS-PAGEによる分子量分析]
実験書(実験医学別冊「タンパク質実験ハンドブック」羊土社、竹縄忠臣,伊藤俊樹/編)に基づき、実験II-1で得られた化合物(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、(29)、(30)、(31)、(32)、(33)及び(34)(各200 ng)を、10%~20%の濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによって分離した。結果を
図3、4及び5に示す。
図3中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は前述した化合物(1)を、レーン2は前述した化合物(2)を、レーン3は前述した化合物(13)を、レーン4は前述した化合物(14)を、レーン5は化合物(15)を、レーン6は化合物(16)を、レーン7は化合物(17)を、それぞれ示す。
図4中、レーン0は分子量標準物質を、レーン1は前述した化合物(25)を、レーン2は前述した化合物(26)を、レーン3は前述した化合物(27)を、レーン4は前述した化合物(28)を、レーン5は化合物(29)を、レーン6は化合物(30)を、レーン7は化合物(31)を、レーン8は化合物(32)を、レーン9は化合物(33)を、レーン10は化合物(34)を、レーン11は前述した化合物(35)を、レーン12は後述する化合物(36)を、レーン13は後述する化合物(37)を、それぞれ示す。
図5中、レーン0及び1は分子量標準物質を、レーン2は化合物(18)を、レーン3は化合物(19)を、レーン4は化合物(20)を、レーン5は化合物(21)を、レーン6は化合物(22)を、レーン7は化合物(23)を、レーン8は化合物(24)を、それぞれ示す。分子量標準物質は、いずれもPrecision Plus Protein(TM) Dual Xtra Standards(バイオラッド社)を用いた。
図3、4及び5に示すように、各化合物は、所望の分子量を有することが確認された。
【0172】
[実験II-2-4:ゲル濾過HPLCによる会合の確認]
ゲル濾過カラム(Superdex 200 Increace 10/300 GL、GEヘルスケア社)を用いたゲル濾過HPLCにより、アドレノメデュリン誘導体分子の会合を確認した。実験II-1で得られた化合物(18)、(21)、(22)、(23)、(24)、(29)及び(34)(各50 μg)を、カラムに添加した。溶出液(100 mM 酢酸ナトリウム及び100 mM 硫酸ナトリウム, pH 6.0)を、0.75 mL/分の流速でカラムに通液した。得られたゲル濾過クロマトグラムから、各化合物は、分子量に応じた保持時間を有する単一ピークを示した。前記結果から、各アドレノメデュリン誘導体分子は、会合しておらず、単量体として存在することが確認された。前記ゲル濾過クロマトグラムにおける各化合物の保持時間を、表2に示す。
【表2】
【0173】
<実験III:C末端グリシン付加アドレノメデュリン誘導体の調製>
〔実験III-1:C末端グリシン付加アドレノメデュリン誘導体の合成〕
[実験III-1-1:GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))-Gly(化合物(36))の合成]
実験I-1-5において、h.AM(1-52)ペプチドをh.AM(1-52)-Glyペプチドに変更し、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、80 mgの式(VII-1-1’):
【化44】
で表されるアルデヒド型の40 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(40k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(40k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)-Gly))(36):
【化45】
を得た。分取HPLCにより、0.8 mg(h.AM(1-52)-Gly換算)の目的化合物(36)を得た。
【0174】
[実験III-1-2:GL-2分岐型CH
3O-PEG(60k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52))-Gly(化合物(37))の合成]
実験I-1-5において、h.AM(1-52)ペプチドをh.AM(1-52)-Glyペプチドに変更し、CH
3O-PEG化試薬(PEG-2)に代えて、80 mgの式(VII-1-1’):
【化46】
で表されるアルデヒド型の60 kDaの重量平均分子量のCH
3O-PEG化試薬(PEG-3)を用いた他は、前記と同様の手順により、グリセロール骨格を有する2分岐型アルキルアミン連結型PEG(60k)アドレノメデュリン誘導体(GL-2分岐型CH
3O-PEG(60k)-CH
2-
αNH-(h.AM(1-52)-Gly))(37):
【化47】
を得た。分取HPLCにより、0.7 mg(h.AM(1-52)-Gly換算)の目的化合物(37)を得た。
【0175】
〔実験III-2:C末端グリシン付加アドレノメデュリン誘導体の構造解析〕
[実験III-2-1:アミノ酸配列分析によるPEG基の結合位置の同定]
化合物(36)及び(37)を、プロテインシーケンサー(Procise 494 HT Protein Sequencing System、アプライドバイオシステムズ社)を用いて、アミノ酸配列分析に供した。その結果、いずれの化合物ともヒトアドレノメデュリンのN末端アミノ酸残基に相当するアミノ酸は検出されなかった。前記結果から、化合物(36)及び(37)におけるPEG基は、いずれもN末端のαアミノ基に結合していることが確認された。
【0176】
<実験IV:アドレノメデュリン誘導体の使用例>
[実験IV-1:アドレノメデュリン誘導体による細胞内cAMP濃度上昇作用]
アドレノメデュリン(AM)の生理作用は、細胞内cAMPの濃度の上昇を介して発現することが知られている(非特許文献1参照)。そこで、AM受容体を発現させた培養細胞株(HEK293細胞株)に、実験I-1、実験II-1及び実験III-1で調製した各化合物又は全長AM、N末端欠失AM若しくはC末端グリシン付加AMを添加して、細胞内cAMPの産生量を測定した。コンフルエントのHEK293細胞に、0.5 mMのIBMXの存在下、10
-8 mol/Lの各化合物、又はh.AM(1-52)、h.AM(6-52)、h.AM(11-52)、h.AM(16-52)若しくはh.AM(1-52)-Glyを添加して、15分間インキュベートした。その後、cAMP測定用ELISAキット(GEヘルスケアー、#RPN2251)を用いて、各試験区のHEK293細胞における細胞内cAMP濃度を測定した。AM受容体発現培養細胞におけるアドレノメデュリン誘導体による細胞内cAMP濃度上昇作用を表3に示す。
【表3】
【0177】
表3に示すように、試験したアドレノメデュリン誘導体は、いずれもPEG基を連結していない対応する全長AM、N末端欠失AM又はC末端グリシン付加AMと同程度の細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。それ故、PEG基を連結したアドレノメデュリン誘導体は、親化合物である全長AM、N末端欠失AM又はC末端グリシン付加AMと同程度の生物活性を維持していると推測される。
【0178】
同一(20 kDa)の重量平均分子量のPEG基、及び同一のアミノ酸配列のペプチド部分(h.AM(1-52))を有し、PEG基とペプチド部分との連結様式のみが異なるアドレノメデュリン誘導体である化合物(2)、化合物(4)、化合物(6)及び化合物(14)を対比すると、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(4)及び化合物(6)は、アミド連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(2)と比較してより高い細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。同様に、ウレタン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(14)は、アミド連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(2)と比較してより高い細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。
【0179】
同一(5 kDa)の重量平均分子量のPEG基、及び同一のアミノ酸配列のペプチド部分(h.AM(6-52)、h.AM(11-52)又はh.AM(16-52))を有し、PEG基とペプチド部分との連結様式のみが異なるアドレノメデュリン誘導体である化合物(15)、化合物(16)及び化合物(17)、並びに化合物(18)、化合物(19)及び化合物(20)をそれぞれ対比すると、アミド連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(15)、化合物(16)及び化合物(17)は、ペプチド部分のN末端欠失の拡大につれ細胞内cAMP濃度上昇作用が顕著に減少した。一方、アルキルアミン連結型PEG(5k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(18)、化合物(19)及び化合物(20)では、ペプチド部分のN末端欠失による細胞内cAMP濃度上昇作用への影響は抑えられた。
【0180】
同一(20 kDa)の重量平均分子量のPEG基、及び同一のPEG基とペプチド部分との連結様式を有し、アミノ酸配列のペプチド部分のみが異なるアドレノメデュリン誘導体である化合物(4)、並びに化合物(21)、化合物(22)及び化合物(23)を対比すると、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(21)、化合物(22)及び化合物(23)は、ペプチド部分のN末端欠失による細胞内cAMP濃度上昇作用への影響はなく、高い細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。
【0181】
[実験IV-2:アドレノメデュリン誘導体による降圧作用]
麻酔下ラットの静脈内に、実験I-1及び実験II-1で調製した各化合物又は全長AMを1 nmol/kgの用量で単回投与して、該ラットの血圧の経過を観察した。11~14週齢の雄性ウイスターラットを、イソフルランの吸入により麻酔導入した。気管切開の後、1.5~2.5%のイソフルラン濃度及び0.6~0.8 L/分の流量にて、吸入麻酔管理を行った。前記ラットから、右頸静脈を単離し、26G相当のカテーテルチューブを挿入した。次に、前記処置後のラットから、左頸動脈を単離し、23G相当のカテーテルチューブを挿入した。右頸静脈のカテーテルチューブより、生理食塩水ヘパリン溶液(生理食塩水:100 mL;ヘパリン:1000単位)を2.4 mL/時間で補液した。同じカテーテルチューブより、1 nmol/kgの化合物(2)、化合物(4)、化合物(8)又はh.AM(1-52)を、生理食塩水に溶解した形態で投与した。頸動脈に挿入したカテーテルを、圧トランスデューサーに接続した。化合物(2)、化合物(4)又はh.AM(1-52)の投与前の血圧と投与後の血圧とを、経時的に測定した。化合物(2)、化合物(4)、化合物(8)又はh.AM(1-52)の投与開始時からの経過時間と平均血圧との関係を
図6に示す。Aは、化合物(2)、化合物(4)及びh.AM(1-52)の結果を、Bは、化合物(8)及びh.AM(1-52)の結果を、それぞれ示す。なお、図中、縦軸は、各薬剤投与時の平均血圧から、各薬剤投与前の平均血圧を差し引いた差を示す。
【0182】
図6に示すように、PEG基を連結していない全長AM(h.AM(1-52))では、投与直後に急激な血圧低下が観察された。これに対し、PEG基を連結したアドレノメデュリン誘導体(化合物(2)、化合物(4)及び化合物(8))では、h.AM(1-52)で観察された投与直後の急激な血圧低下は認められなかった。それ故、PEG基を連結したアドレノメデュリン誘導体は、親化合物である全長AMで生じ得る急激な血圧降下のような望ましくない副反応を抑制することができると推測される。
【0183】
同一(20 kDa)の重量平均分子量のPEG基、及び同一のアミノ酸配列のペプチド部分(h.AM(1-52))を有し、PEG基とペプチド部分との連結様式のみが異なるアドレノメデュリン誘導体である化合物(2)と化合物(4)及び化合物(8)とを対比すると、アルキルアミン連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(4)及び化合物(8)は、アミド連結型PEG(20k)アドレノメデュリン誘導体である化合物(2)と比較して、投与直後の血圧低下が更に抑制された。
【0184】
[実験IV-3:皮下投与時のアドレノメデュリン誘導体の経時的血中濃度測定(1)]
ラットの皮下に、実験I-1で調製した化合物(8)又は全長AMを10 nmol/kgの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血中濃度の経時変化を観察した。7~8週齢の雄性ウイスターラット(約250 g)に、生理食塩水に溶解した化合物(8)又はh.AM(1-52)を皮下投与した。投与開始時から1日後、7日後及び10日後に、50 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して、麻酔下にて尾静脈より毎回300 μL採血した。得られた血液検体に、直ちに300 μgのEDTA-2Na、及び21 μgのアプロチニンを添加して、10分、3000回転の条件で遠心分離して血漿を得た。各検体の血漿中AM濃度を、ラジオイムノアッセイ(RIA)法(Kitamura K, Ichiki Y, Tanaka Mら, Immunoreactive adrenomedullin in human plasma. FEBS Lett. 第341巻, p. 288-90, 1994年)にて測定した。化合物(8)の投与開始時からの経過時間と血漿中AM濃度との関係を
図7に示す。
【0185】
図7に示すように、化合物(8)を投与した場合には、1日後に2600 pM以上、7日後に740 pM以上、10日後でも280 pM以上の血漿中AM濃度が確認された。一方、h.AM(1-52)を投与した場合には、化合物(8)の投与1日後に6.7 pM、7日後及び10日後はいずれの測定においても血漿中AMは0 pM(検出感度以下)であった。通常、ラットの血漿中AM濃度は1 pM程度であることが知られている(Mori, Y. ら、 Long-Term Adrenomedullin Infusion Improves Survival in Malignant Hypertensive Rats. Hypertension, 2002年, 第40巻, p107-113.)。前記結果より、本発明のアルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体は、親分子であるアドレノメデュリンと比較して、顕著に長い期間に亘って、血中で高濃度で存在することが判明した。
【0186】
[実験IV-4:頸静脈単回投与時のアドレノメデュリン誘導体の経時的血中濃度測定]
麻酔下ラットの静脈内に、実験I-1で調製した化合物(6)又は全長AMを3 nmol/kgの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血中濃度の経時変化を観察した。8~9週齢の雄性ウイスターラット(約300 g)を、イソフルランの吸入により麻酔導入した。気管切開の後、1.5~2.5%のイソフルラン濃度及び0.6~0.8 L/分の流量にて、吸入麻酔管理を行った。前記ラットから、右頸静脈を単離し、26G相当のカテーテルチューブを挿入した。次に、前記処置後のラットから、左頸動脈を単離し、23G相当のカテーテルチューブを挿入した。右頸静脈のカテーテルチューブより、生理食塩水ヘパリン溶液(生理食塩水:100 mL;ヘパリン:1000単位)を2.4 mL/時間で補液した。同じカテーテルチューブより、3 nmol/kgの化合物(6)又はh.AM(1-52)を、生理食塩水に溶解した形態で投与した。頸動脈に挿入したカテーテルより、投与開始時から1時間後、2時間後及び4時間後に、300 μlの採血を経時的に行った。得られた血液検体に、直ちに300 μgのEDTA-2Na、及び21 μgのアプロチニンを添加して、10分、3000回転の条件で遠心分離して血漿を得た。各検体の血漿中AM濃度を、ラジオイムノアッセイ(RIA)法(Kitamura K, Ichiki Y, Tanaka Mら, Immunoreactive adrenomedullin in human plasma. FEBS Lett. 第341巻, p. 288-90, 1994年)にて測定した。化合物(6)又はh.AM(1-52)の投与開始時からの経過時間と血漿中AM濃度との関係を
図8に示す。
【0187】
図8に示すように、化合物(6)は、h.AM(1-52)と比較して、血中半減期が顕著に延長された。前記の結果より、本発明のアルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体は、親分子であるアドレノメデュリンと比較して、血中半減期が顕著に延長されることが判明した。
【0188】
[実験IV-5:高血圧自然発症ラット(SHRラット)における血圧上昇抑制作用(1)]
高血圧自然発症ラット(SHR)の皮下に、実験I-1で調製した化合物(8)を336 μg/100 μLの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血圧上昇抑制効果を観察した。8週齢の雄性SHR(約200 g)に対し、高塩食(8% NaCl)を与えた。高塩食投与時に、化合物(8)を生理食塩水に溶解した形態で投与した。対照群として、同じ条件の雄性SHR (約200 g)に、100 μLの生理食塩水を皮下単回投与した。化合物(8)又は生理食塩水の投与2日前及び投与9日後の血圧及び脈拍を経時的に測定した。化合物(8)又は生理食塩水の投与2日前及び投与9日後の血圧値を
図9に示す。
【0189】
図9に示すように、化合物(8)投与群は、対照群(生理食塩水投与群)と比較して、血圧の上昇が抑制された。前記結果より、本発明のアルキルアミン連結型アドレノメデュリン誘導体は、血圧上昇抑制の薬理効果を有することが判明した。
【0190】
[実験IV-6:皮下投与時のアドレノメデュリン誘導体の経時的血中濃度測定(2)]
実験IV-3と同様の手順により、ラットの皮下に、実験I-1で調製した化合物(27)を10 nmol/kgの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血中濃度の経時変化を観察した。
【0191】
化合物(27)を投与した場合には、1日後に3600 pM以上、7日後に120 pM以上の血漿中AM濃度が確認された。前記結果より、本発明のウレタン連結型アドレノメデュリン誘導体は、親分子であるアドレノメデュリンと比較して、顕著に長い期間に亘って、血中で高濃度で存在することが判明した。
【0192】
[実験IV-7:皮下投与時のアドレノメデュリン誘導体の経時的血中濃度測定(3)]
ラットの皮下に、実験III-1で調製した化合物(37)を30 nmol/kgの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血中濃度の経時変化を観察した。7~8週齢の雄性ウイスターラット(約250 g)に、生理食塩水に溶解した化合物(37)を皮下投与した。投与開始時から1日後、2日後、4日後、7日後及び9日後に、50 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して、麻酔下にて尾静脈より毎回300 μL採血した。得られた血液検体に、直ちに300 μgのEDTA-2Na、及び21 μgのアプロチニンを添加して、10分、3000回転の条件で遠心分離して血漿を得た。各検体の血漿中AM濃度を、RIA法にて測定した。
【0193】
化合物(37)を投与した場合には、1日後に34000 pM以上、7日後に1600 pM以上、9日後でも110 pM以上の血漿中AM濃度が確認された。前記結果より、本発明のアルキルアミン連結型グリシン付加アドレノメデュリン誘導体は、親分子であるアドレノメデュリンと比較して、顕著に長い期間に亘って、血中で高濃度で存在することが判明した。
【0194】
[実験IV-8:高血圧自然発症ラット(SHR)における血圧上昇抑制作用(2)]
SHRの皮下に、実験III-1で調製した化合物(37)を30 nmol/kgの用量で単回投与して、アドレノメデュリン誘導体の血圧上昇抑制効果を観察した。8週齢の雄性SHR(約200 g)に、化合物(37)を生理食塩水に溶解した形態で投与した。対照群として、同じ条件の雄性SHR (約200 g)に、100 μLの生理食塩水を皮下単回投与した。化合物(37)又は生理食塩水の投与1日前並びに投与4日後及び投与9日後の血圧を経時的に測定した。化合物(37)又は生理食塩水の投与4日後及び投与9日後の、投与前日の平均収縮血圧に対する血圧変化値を
図10に示す。
【0195】
図10に示すように、化合物(37)投与群は、対照群と比較して、血圧の上昇が抑制された。前記結果より、本発明のアルキルアミン連結型グリシン付加アドレノメデュリン誘導体は、血圧上昇抑制の薬理効果を有することが判明した。
【0196】
[実験IV-9:デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルにおける薬理作用]
DSS誘発大腸炎モデルに対する化合物(8)の皮下投与による改善作用を検討した。化合物(8)を、マウスの背部に皮下投与した。投与翌日(0日目)に、3%DSSの7日間飲水投与により、大腸炎モデルの作製を開始した。化合物(8)の投与量は、1、5及び25 nmol/kgの3種類の用量とした。媒体の対照群として、生理食塩水を投与した。DSS飲水開始日(0日目)から3、5及び7日目に、体重及び便の性状を、表4に示すスコアに基づき評価した。化合物(8)投与群及び対照群におけるDSS誘発大腸炎モデル作製時からの経過時間とスコアの合計値との関係を
図11に示す。
【表4】
【0197】
図11に示すように、化合物(8)投与群は、5及び25 nmol/kg投与群で有意なスコアの減少が確認された。スコアの減少は、大腸炎の軽減作用を示唆する。また、媒体の対照群と比較して、5 nmol/kg投与群で腸管の湿重量が軽くなる傾向が、25 nmol/kg投与群で腸管の長さが長くなる傾向が確認された。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下におけるDSS大腸炎モデルの病態に対する軽減作用が示唆された。
【0198】
[実験IV-10:2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発大腸炎モデルにおける薬理作用]
TNBS誘発大腸炎モデルに対する化合物(8)の皮下投与による改善作用を検討した。7週齢の雄性ウィスターラットを1週間馴化飼育した。その後、ラットに、化合物(8)(1 nmol/kg)又は生理食塩水を皮下投与した(0日目)。また、皮下投与と一緒に24時間絶食を行い、体内の糞便の除去を行った。下記の手順で、大腸炎モデルを作製した。TNBS(ナカライテスク社)は、30 mg/500μL(50%エタノール水溶液中)の濃度となるように調製した。50 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して、麻酔下にてゾンデを用いて肛門からゆっくりと回転させながら8 cm挿入し、500 μLの薬液を注入した(1日目)。その後、2分間逆さまの状態を維持した。体重及び下痢の性状を毎日評価した。14日後、50 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して、麻酔下にて心臓採血を行い、大腸を摘出した。摘出時に、腸管の長さ及び重量を測定して、各群の比較を行った。化合物(8)投与群及び対照群におけるTNBS誘発大腸炎モデル作製時からの経過時間と体重との関係を
図12に示す。図中、aは、化合物(8)又は生理食塩水を皮下投与して絶食を開始した日を、bは、TNBSを投与した日を、それぞれ示す。化合物(8)投与群及び対照群における大腸の重量を
図13に示す。化合物(8)投与群及び対照群における大腸の腸管長を
図14に示す。
【0199】
図12に示すように、媒体の対照群では、大腸炎発症による体重減少が確認されたが、化合物(8)投与群では、大腸炎発症による体重減少が改善された。大腸炎を発症すると、通常は、炎症部位の腫脹により、大腸の重量が増加する。
図13に示すように、化合物(8)投与群では、媒体の対照群と比較して、大腸の重量増加が明らかに抑制された。また、大腸炎に起因する炎症が進行すると、通常は、大腸の腸管長が短くなる。
図14に示すように、化合物(8)投与群では、媒体の対照群と比較して、大腸の腸管長の減少が明らかに抑制された。大腸の解剖所見からも、化合物(8)投与群では、媒体の対照群と比較して、明らかに病的変化が少ないことが確認された。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下におけるTNBS誘発大腸炎モデルの病態に対する軽減作用が示唆された。それ故、本発明のアドレノメデュリン誘導体は、大腸炎に対する治療効果を有することが判明した。
【0200】
[実験IV-11:肺高血圧モデルにおける薬理作用]
肺高血圧モデルに対する化合物(8)の皮下投与による改善作用を検討した。3週齢の雄性ウイスターラット(日本チャールス・リバー社)を購入し、1週間馴化飼育した。その後、ラットに、60 mg/kgの濃度でモノクロタリン溶液を皮下投与した。同時に、背部の別の位置に、化合物(8)(1 nmol/kg)又は生理食塩水を単回皮下投与した。肺高血圧モデルにおける効果の判定指標として、一般的な心臓の右室と左室との重量比を測定した。同モデルでは、病態が進むほど、右室の肥大に伴い、重量比が大きくなることが知られている(Miyauchi T.,Yorikane R.,Sakai S.,Sakurai T.,Okada m.,Nishikibe M.,Yano M.,Yamaguchi I.,Sugishita Y.and Goto k.: Contribution of endogenous endothelinl to the progression of cardiopulmonary alterations in rats with monocrotaline-induced pulmonary hypertension. Circ. Res., 第73巻, pp. 887-897, 1993年)。投与14日後に、50 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して、麻酔下にて下大静脈より採血した。その後、心臓を摘出して重量を測定した。摘出した心臓は、右室と左室とに分け、それぞれの重量を測定して右室重量/左室重量比を算出した。化合物(8)投与群及び対照群における右室重量/左室重量比を
図15に示す。
【0201】
図15に示すように、化合物(8)投与群は、媒体の対照群と比較して、右室・左室重量比が顕著に低かった。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下における肺高血圧モデルの病態に対する軽減作用が示唆された。
【0202】
[実験IV-12:創傷モデルにおける薬理作用]
創傷モデルに対する化合物(8)の皮下投与による薬理作用を検討した。5週齢の雄性BALB/c-nu/nuマウス(日本チャールス・リバー社)を購入し、1週間馴化飼育した。その後、マウスに、5 mgのペントバルビタールを腹腔内投与して麻酔した。消毒用エタノールを用い、皮膚を消毒した。マウスを側臥させた状態で、背部皮膚を指で引っ張り、消毒した製図用マットの上で、片側から反対側に向けて、皮膚バイオプシー用円形ナイフ(生検トレパン)で押し切るようにして、各直径6 mmの2個の欠損創を作製した。同時に、背部の別の位置に、化合物(8)(1 nmol/kg)を単回皮下投与した。媒体の対照群として、生理食塩水を投与した。創傷部位を含む背部を覆うようにドレッシング剤を塗布した。創傷面積の変化を、経時的に観察した。化合物(8)投与群及び対照群における創傷モデル作製時からの経過時間と創傷面積との関係を
図16に示す。
【0203】
図16に示すように、化合物(8)投与群は、媒体の対照群と比較して、創傷面積の縮小が早く進行した。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下における創傷の治癒促進作用が確認された。
【0204】
[実験IV-13:血管閉塞モデルにおける薬理作用]
モリスの水迷路試験を用いて、血管閉塞モデルラットにおける学習及び記憶障害に対する化合物(8)の皮下投与による薬理作用を検討した。椎骨動脈閉塞手術前に、化合物(8)を皮下投与した。化合物(8)の投与量は、1及び10 nmol/kgの2種類の用量とした。媒体の対照群として、生理食塩水を投与した。その後、麻酔下で両側椎骨動脈を永久閉塞した。翌日、縫合糸を用いて、麻酔下で両側総頸動脈を30分間閉塞した。その後、縫合糸を取り除き、血流を再開通した。両側総頸動脈閉塞日を、血管閉塞モデルの作製日、すなわち0日とした。モデル作製後9日目に、モリスの水迷路を1試行遊泳させた(水慣らし)。モデル作製後10日目より、4試行/日の間隔で5日間、隠されたプラットフォームテスト(hidden platform test)を行った。隠されたプラットフォームテストの5日目(モデル作製後14日目)の最終試行の1時間後に、プローブテスト(probe test)を行った。
【0205】
モリスの水迷路試験は、下記の実験装置を用いて行った。直径150 cm、高さ45 cm、水深30 cmの円形プールを準備した。直径12 cmの無色透明なプラットフォームを、円形プールの水面下約1 cmの位置に置いた。円形プールの水温を23±1℃に設定した。実験装置を設置した室内には、間接照明を設置し、動物の視覚的手がかりとなるもの(カレンダー、ボール、立方体及び縞模様の紙)を配置した。試験期間中、これらの配置は常に一定にした。測定には、ビデオ画像行動解析装置(Smart、Panlab社)を用いた。
【0206】
隠されたプラットフォームテストは、下記の手順で実施した。手術後9日目に、プラットフォームを設置せずに、90秒間遊泳させ、水に馴化させた(水慣らし)。測定は、手術後10日目より開始した。測定は、4試行/日の間隔で行った。スタートからプラットフォーム到達までの遊泳時間(逃避潜時)を測定した。スタート位置は、試行毎に変更した。プラットフォームの位置は、全ての試行で同じ位置に固定した。また、1試行の最長遊泳時間は90秒間とした。最長遊泳時間内にプラットフォームに到達できないラットは、遊泳後、プラットフォーム上に30秒間の滞在時間を設けた。
【0207】
プローブテストは、下記の手順で実施した。実験装置に、プラットフォームを設置せずにプールを4分割した。隠されたプラットフォームテスト時にプラットフォームが設置された分画での遊泳時間を測定した。測定された遊泳時間を用いて、下記の計算式に基づき滞在率(%)を算出した。プローブテストの遊泳時間は60秒間とした。モデル作製後14日目の最終の隠されたプラットフォームテストが終了してから1時間後に、1試行のみ実施した。
【数1】
【0208】
化合物(8)投与群及び対照群における血管閉塞モデル作製時からの経過時間と、隠されたプラットフォームテストにおける逃避潜時との関係を
図17に示す。また、血管閉塞モデルラットに対する化合物(8)投与群及び対照群における、プローブテストにおける滞在率を
図18に示す。
図17に示すように、隠されたプラットフォームテストにおいて、化合物(8)投与群は、1及び10 nmol/kg投与群で、媒体の対照群と比較して、プラットフォームへの到達時間、すなわち逃避潜時が短縮した。また、
図18に示すように、プローブテストにおいても、化合物(8)投与群は、1及び10 nmol/kg投与群で、媒体の対照群と比較して、滞在率が有意に上昇した。本試験において、両側総頸動脈閉塞手術時の死亡率には、有意な差は確認されなかった。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下の4血管閉塞モデルラットにおける学習及び記憶障害の軽減作用が確認された。
【0209】
[実験IV-14:アジュバント誘発関節炎モデルにおける薬理作用]
アジュバント誘発関節炎モデルに対する化合物(8)の皮下投与による薬理作用を検討した。化合物(8)を、ラットに皮下投与した。化合物(8)の投与翌日(1日目)に、動物の右側後肢の皮下に、アジュバント(起炎剤)を0.1 mL/匹の投与量で投与して、関節炎を誘発させた。化合物(8)の投与量は、1及び10 nmol/kgの2種類の用量とした。媒体の対照群として、生理食塩水を投与した。足容積測定装置(MK-550、室町機械株式会社)を用いて、左右足の足容積及び浮腫率を、0日目(アジュバント投与前日)、4日目、7日目、10日目及び14日目に測定した。また、表5に示すスコアに基づき、0日目(アジュバント投与前日)、4日目、7日目、10日目及び14日目の炎症スコアを評価した。化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した足容積との関係を
図19に示す。化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した浮腫率との関係を
図20に示す。また、化合物(8)投与群及び対照群における投与時からの経過時間とアジュバント投与後に発現した炎症スコアとの関係を
図21に示す。
【表5】
【0210】
図19及び20に示すように、化合物(8)投与群は、1及び10 nmol/kg投与群で、媒体の対照群と比較して、足容積及び浮腫率が有意に減少した。また、
図21に示すように、化合物(8)投与群は、1及び10 nmol/kg投与群で、媒体の対照群と比較して、関節炎スコアが有意に減少した。前記結果から、化合物(8)の皮下投与による、本試験条件下のアジュバント誘発関節炎モデルラットにおける関節炎の軽減作用が確認された。
【0211】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【配列表】