(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】コネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20220104BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2018027124
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120628
【氏名又は名称】岩田 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100088834
【氏名又は名称】早川 明
(72)【発明者】
【氏名】正田 進也
(72)【発明者】
【氏名】勝本 早紀
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-7389(JP,A)
【文献】特開平11-67316(JP,A)
【文献】特開2004-288443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/64
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コンタクトを内部に受容するための、断面外形状が少なくとも一部分において上下または左右非対称形状のボックス部
と、挿入方向後部に設けられ、断面形状が前記ボックス部の断面形状よりも小さな移行部とを有する端子と、
前記ボックス部を収容するためのボックス部収容路と、前記ボックス部収容路の延在方向に対して直交して形成されたスロットと、を有するハウジングと、
前記スロットに挿入され、前記スロット内の予め定められた位置にある場合
に前記ボックス部の挿通を可能とするボックス部用開口
と、前記スロットへの挿入方向に直交する方向の大きさが前記ボックス部用開口の大きさよりも小さい、前記ボックス部用開口に連通する移行部用開口とを有するリテーナと、を備え、
前記ボックス部用開口が、前記端子を前記リテーナの前記ボックス部用開口から前記ハウジングの前記ボックス部収容路に挿通しようとした際に、前記端子が適正な位置から前記端子の挿入軸を中心として回転した状態のときに当該挿通を阻止する形状となって
おり、
前記リテーナが前記スロット内において、前記ボックス部用開口が前記ボックス部収容路と一直線上にある前記予め定められた位置にあり、かつ前記端子が挿入軸を中心として適正な姿勢にあるとき、前記端子を前記ボックス部用開口を経て前記ボックス部収容路に挿入可能であり、
前記リテーナが前記予め定められた位置から本係止位置に移動させられると、前記端子の前記移行部が前記移行部用開口に収容され、前記ボックス部が抜去できない状態とされるコネクタ組立体。
【請求項2】
前記リテーナの前記ボックス部用開口が、前記上下または左右非対称形状のボックス部の断面外形状に対応した形状であり、前記端子を前記リテーナの前記ボックス部用開口から前記ハウジングの前記ボックス部収容路に挿通しようとした際に、前記端子が適正な位置から前記端子の挿入軸を中心として回転した状態のときには、前記端子の前記ボックス部の断面外形状と前記ボックス部用開口の形状の不一致により、当該挿通が阻止される請求項1記載のコネクタ組立体。
【請求項3】
前記ボックス部を構成する一つの面に外側に向けて突出する突起が設けられるのに対し、当該突起が設けられた面に対向する面は平坦な形状とされ、
前記リテーナの前記ボックス部用開口は、当該ボックス部用開口の一方の側が前記突起を受容する凹形状であり、前記一方の側に対向する側は平坦面とされる請求項1または2に記載のコネクタ組立体。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記ボックス部収容路が前記リテーナの挿入方向に複数配設されており、
前記リテーナには、前記挿入方向に向かって、前記ボックス部用開口と前記移行部用開口が、前記ハウジングに形成された前記リテーナの挿入方向における前記ボックス部収容路の数と同数形成され、それぞれのボックス部用開口が、隣接する他の端子の移行部を受入れるための移行部用開口と連通している請求項
1から3いずれか1項に記載のコネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ組立体、特に、コネクタ組立体のハウジングに装着される端子の不正確な接続を防ぐための、あるいは回避するためのリテーナを備えたコネクタ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導線が接続された端子をコネクタハウジングに装着する場合に、端子がコネクタハウジングに正しく装着していることを確証するとともに装着後にコネクタハウジングから脱落するのを防止することを目的として、リテーナをコネクタハウジングに組み込んだものが知られている。リテーナがコネクタハウジングに組み込まれ、仮係止位置にあるとき、コネクタハウジングに端子を挿入することが可能であり、端子がコネクタハウジングに完全に装着されたときに限り、リテーナは本係止位置に移動可能となる。そして、リテーナが本係止位置にあるとき、端子はコネクタハウジングから抜去することはできない構成となっている。
【0003】
下記特許文献1には、コネクタハウジングに装着されるリテーナに、端子金具の被係止部に係止する係止突起を設け、係止突起の後方の根元側を切り立った垂直面とし、先端側をテーパ面としたコネクタが開示されている。このコネクタによれば、リテーナが仮係止位置にあって端子金具が正規に挿入される場合、端子金具の姿勢が振れていても、テーパ面に沿わせることで正しい姿勢に誘導されつつ挿入される。一方、リテーナが本係止位置に誤って押し込まれた状態で端子金具が挿入された場合には、垂直面が端子金具の前面や被係止部に当接するため、それ以上の押し込みが規制され、これにより端子金具の変形などが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のコネクタにおいては、端子金具が正規の姿勢から上下逆さまに挿入されたり、あるいは挿入軸を中心に90度回転した状態で挿入されたりした場合の端子金具の誤挿入を防止することについては開示されていない。
【0006】
したがって、本発明は、端子が適正な位置から挿入軸を中心として回転した状態で誤挿入されることを防止することが可能なコネクタ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
相手方コンタクトを内部に受容するための、断面外形状が少なくとも一部分において上下または左右非対称形状のボックス部と、挿入方向後部に設けられ、断面形状が前記ボックス部の断面形状よりも小さな移行部とを有する端子と、
前記ボックス部を収容するためのボックス部収容路と、前記ボックス部収容路の延在方向に対して直交して形成されたスロットと、を有するハウジングと、
前記スロットに挿入され、前記スロット内の予め定められた位置にある場合に前記ボックス部の挿通を可能とするボックス部用開口と、前記スロットへの挿入方向に直交する方向の大きさが前記ボックス部用開口の大きさよりも小さい、前記ボックス部用開口に連通する移行部用開口とを有するリテーナと、を備え、
前記ボックス部用開口が、前記端子を前記リテーナの前記ボックス部用開口から前記ハウジングの前記ボックス部収容路に挿通しようとした際に、前記端子が適正な位置から前記端子の挿入軸を中心として回転した状態のときに当該挿通を阻止する形状となっており、
前記リテーナが前記スロット内において、前記ボックス部用開口が前記ボックス部収容路と一直線上にある前記予め定められた位置にあり、かつ前記端子が挿入軸を中心として適正な姿勢にあるとき、前記端子を前記ボックス部用開口を経て前記ボックス部収容路に挿入可能であり、
前記リテーナが前記予め定められた位置から本係止位置に移動させられると、前記端子の前記移行部が前記移行部用開口に収容され、前記ボックス部が抜去できない状態とされるコネクタ組立体である。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、本発明の上記態様において、前記リテーナの前記ボックス部用開口が、前記上下または左右非対称形状のボックス部の断面外形状に対応した形状であり、前記端子を前記リテーナの前記ボックス部用開口から前記ハウジングの前記ボックス部収容路に挿通しようとした際に、前記端子が適正な位置から前記端子の挿入軸を中心として回転した状態のときには、前記端子の前記ボックス部の断面外形状と前記ボックス部用開口の形状の不一致により、当該挿通が阻止されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の態様は、本発明の上記態様において、前記ボックス部を構成する一つの面に外側に向けて突出する突起が設けられるのに対し、当該突起が設けられた面に対向する面は平坦な形状とされ、前記リテーナの前記ボックス部用開口は、当該ボックス部用開口の一方の側が前記突起を受容する凹形状であり、前記一方の側に対向する側は平坦面とされることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第5の態様は、本発明の上記態様において、前記ハウジングには、前記ボックス部収容路が前記リテーナの挿入方向に複数配設されており、前記リテーナには、前記挿入方向に向かって、前記ボックス部用開口と前記移行部用開口が、前記ハウジングに形成された前記リテーナの挿入方向における前記ボックス部収容路の数と同数形成され、それぞれのボックス部用開口が、隣接する他の端子の移行部を受入れるための移行部用開口と連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の第1の態様によれば、端子が挿入軸を中心として適正な位置から回転した状態でリテーナのボックス部用開口からハウジングのボックス部収容路へ挿入しようとする場合に、リテーナのボックス部用開口によってボックス部の挿通が阻止され、端子が挿入軸を中心として適正な位置から回転した状態での誤挿入を防止することが可能となる。また、端子のボックス部がハウジングのボックス部用開口に挿入され、リテーナが予め定められた位置(仮係止位置)から本係止位置に移動させられた場合に、端子のボックス部がリテーナの移行部用開口周囲の壁面に阻まれることによりボックス部を抜去できないようにすることが可能となる。
【0013】
上記本発明の第2の態様によれば、端子が挿入軸を中心として適正な位置から回転した状態でリテーナのボックス部用開口からハウジングのボックス部収容路へ挿入しようとする場合に、リテーナのボックス部用開口の形状が端子のボックス部の形状と一致せず、ボックス部の挿通が阻止され、端子が挿入軸を中心として適正な位置から回転した状態での誤挿入を防止することが可能となる。
【0014】
上記本発明の第3の態様によれば、端子が適正な向きから挿入軸を中心にして約180度逆さまにボックス部収容路に挿入される際に、ボックス部の突起と対向した平坦面部分がリテーナのボックス部用開口の凹形状の両側部分に当接し、端子のボックス部収容路への挿入が阻止される。
【0016】
また、本発明の第5の態様によれば、ハウジング内に、リテーナ挿入方向に複数の端子を配列して収容することができるとともに、それぞれの端子が挿入軸を中心として適正な位置から回転した状態での誤挿入することを防止できる。また、誤挿入防止の構造をハウジングに形成する場合はハウジング形成のための金型が複雑になるが、リテーナに誤挿入防止のための構造を形成する場合は、ハウジングに同種の効果をもつ構造を形成する場合に比べて形成が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のコネクタ組立体10の分解斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の端子100の斜視図、
図2(B)は
図2(A)の端子100の上面図、
図2(B)は
図2(A)の端子100の上面図、
図2(C)は
図2(A)の端子100を左側からみた場合の左側面図、
図2(D)は
図2(A)の端子100の底面図、
図2(E)は
図2(A)の端子100の正面図、
図2(F)は、
図2(E)におけるF-F線断面図である。
【
図3】
図3(A)は、本実施形態のコネクタ組立体10のハウジング200の斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)のハウジング200をX-Z平面において切断した場合の断面図であり、
図3(C)は、
図3(A)のハウジング200をX-Y平面において切断した場合の断面図である。
【
図4】
図4(A)は、本実施形態のコネクタ組立体10のリテーナ300の斜視図、
図4(B)は、
図4(A)のリテーナ300の正面図、
図4(C)は、
図4(A)のリテーナ300の後面図である。
図4(D)は、
図4(B)のD部分の拡大図、
図4(E)は、
図4(B)のE部分の拡大図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のコネクタ組立体10の防水シール400の斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にある場合の、
図3(A)におけるY-Z平面で切断した断面図であり、
図6(B)は、
図6(A)におけるB部分の部分拡大図であり、
図6(C)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にある場合の、正面図である。
【
図7】
図7(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100を装着した際の、
図3(A)におけるX-Z平面で切断した場合の断面図であり、
図7(B)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100を装着した際の、
図3(A)におけるX-Y平面で切断した場合の断面図である。
【
図8】
図8(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100が上下逆さまに挿入された場合の、
図3(A)におけるY-Z平面で切断した断面図であり、
図8(B)は、
図8(A)におけるB部分の部分拡大図である。
【
図9】
図9(A)は、リテーナ300が本係止位置にあるときのコネクタ組立体10の、
図3(A)のX-Z平面における断面図であり、
図9(B)は、リテーナ300が本係止位置にあるときのコネクタ組立体10の、
図3(B)のX-Y平面における断面図である。
【
図10】
図10(A)は、ボックス部の形状およびリテーナのボックス部用開口の他の一例を示す図であり、
図10(B)は、
図10(A)のボックス部を上下逆さまに挿入した場合の図である。
図10(C)は、ボックス部の形状およびリテーナのボックス部用開口の他の一例を示す図であり、
図10(D)は、
図10(B)のボックス部を左右逆さまに挿入した場合の図である。
図10(E)は、ボックス部の形状およびリテーナのボックス部用開口のさらに他の一例を示す図であり、
図10(F)は、
図10(E)のボックス部を左右逆さまに挿入した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態のコネクタ組立体10を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明のコネクタ組立体10の一例を説明するものであって、本発明をこのコネクタ組立体に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された他の形態のコネクタ組立体にも等しく適用されるべきものである。
【0019】
図1は、コネクタ組立体10の分解斜視図である。
図1に示すように、コネクタ組立体10は、端子100、ハウジング200、リテーナ300、防水シール400を備える。なお、以下の説明において、端子100が延在する方向、つまり、端子100をハウジング200に挿入する方向を長さ方向Xと呼び、長さ方向Xに直交し、
図1において紙面奥に向かう方向を幅方向Yと呼び、長さ方向Xおよび幅方向Yの両方に直交する方向を高さ方向Zと呼んで説明することとする。また、以下の説明においては、長さ方向Xの、端子100をハウジング200に挿入する向きと反対側から、つまりこのコネクタ組立体10と接続される相手方コネクタの挿入方向から見た場合に(
図1において紙面右側から見た場合に)、上側を上方向、下側を下方向、左側を左方向(
図1の紙面手前方向)、右側(
図1の紙面奥方向)を右方向とみなして説明する。
【0020】
まず、端子100について、
図2を参照して説明する。なお、
図2(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の端子100の斜視図、
図2(B)は
図2(A)の端子100の上面図、
図2(C)は
図2(A)の端子100を左側からみた場合の左側面図、
図2(D)は
図2(A)の端子100の底面図、
図2(E)は
図2(A)の端子100の正面図、
図2(F)は、
図2(E)におけるF-F線断面図である。
【0021】
端子100は、一枚の金属平板を打ち抜いた後に折り曲げて形成される。端子100は、相手方コネクタのコンタクト(図示せず)を内部に受容するための、断面外形状が少なくとも一部分において上下または左右非対称形状のボックス部110と、導線180を把持する圧着部120と、ボックス部110と圧着部120とを接続し、断面形状がボックス部110の断面形状よりも小さな移行部130と、を有する。なお、これら圧着部120および移行部130は、端子100のボックス部110の挿入方向後部に形成される。
【0022】
ボックス部110は、上板111、底板112、左側板113、右側板114を含み、これら上板111、底板112、左側板113、右側板114が、内部に相手方コネクタのコンタクトを収容するためのコンタクト挿入孔115を形成する筒状かつ箱型の形状をなしている。このボックス部110の、長さ方向X(または相手方コネクタのコンタクトをコンタクト挿入孔115に挿入する方向)に直交する平面における断面形状は、高さをHboxとする略長方形である。さらに、ボックス部110を構成する一つの面に外側に向けて突出する突起が設けられる。なお、本実施形態においては、上板111の上面に上方に向けて突出する突起116が形成されている。対照的に、突起116が設けられた面に対向する面、本実施形態においては底板112の下面112aは平坦な形状とされる。したがって、ボックス部110は、少なくとも突起116が形成された部位における断面外形状が、上下非対称形状となっている。ここで、底板112の下面112aから突起116の先端までの高さをHprotrusionとする。なお、突起を底板112に形成して上板111の上面を平坦形状としてもよいし、突起を左側板113か右側板114のいずれか一方に形成し、対向するもう一方の側板の外側の面を平坦形状としてもよい。
【0023】
底板112の上面112bには、コンタクト挿入孔115内部において、後方かつ上方に向けて延びた接触片117が形成される。この接触片117は、相手方コネクタのコンタクトがコンタクト挿入孔115内に挿入された際に、相手方コネクタのコンタクトの下面に接触し、電気的な接続が可能となる。
【0024】
圧着部120は、導線180の被覆部を把持する被覆把持部121と、導線180の導体部分を把持する導体把持部122を有する。なお、本実施形態においては、導線180の被覆の周囲には導線用防水シール190が取り付けられており、被覆把持部121はこの導線用防水シール190の周囲を包囲するように圧着されている。導体把持部122は、底板122aと、そこから左右両側において上方に延びた把持片122b、122cを備える。導線180の導体部分は、把持片122b、122cを底板122aに向けてかしめることにより、把持片122b、122cと底板122aとの間に圧着され、電気的な接続が形成される。
【0025】
移行部130は、ボックス部110と圧着部120とを接続する。移行部130は、底板112(ボックス部110の底板112と一続きになっている)、底板112の左側から上方に立設した左側面132、底板112の右側から立設した右側面133を備える。移行部130の底板112は、さらに圧着部120の導体把持部122の底板122aと一続きとなっている。また、移行部130の左側面132はボックス部110の左側板113と一続きであり、移行部130の右側面133はボックス部110の右側板114と一続きである。なお、移行部130の左側面132および右側面133の高さは、ボックス部110の左側板113および右側板114の高さよりも低い、Htransitionとなるように形成される。これにより、移行部130の断面形状は、ボックス部110の断面形状よりも小さなもの(本実施形態においては、低背状)となる。また、ボックス部110の左側板113の、移行部130の左側面132と接続されていない後端部分、ボックス部110の右側板114の、移行部130の右側面133と接続されていない後端部分、およびボックス部110の上板111の後端部分は、後端面118を構成する。
【0026】
次にハウジング200について、
図3を参照して説明する。
図3(A)は、本実施形態のコネクタ組立体10のハウジング200の斜視図であり、
図3(B)は、
図3(A)のハウジング200をX-Z平面において切断した場合の断面図であり、
図3(C)は、
図3(A)のハウジング200をX-Y平面において切断した場合の断面図である。
図3(A)~
図3(C)に示すように、ハウジング200は、長さ方向Xに所定長さを有し、高さ方向Zおよび幅方向Yが比較的大きな直方体形状のベース210と、このベース210から長さ方向X前方に延びるコア220と、ベース210の外縁部分から長さ方向X前方に向かって、コア220の周囲を包囲するように延びる外殻230とを有する。外殻230は、外殻上面231、外殻底面232、外殻左側面233、外殻右側面234を含み、これらはベース210に直接接続されているのに対して、外殻230とコア220は、直接は接続されておらず、ベース210を介して接続されている。また、外殻230とコア220の間には、コア220を包囲するように、相手方コネクタ(図示せず)のハウジングを受け入れる相手方コネクタ挿入スロット240がベース210に達するまで形成され、外殻230とコア220を隔てている。
【0027】
ハウジング200のベース210、およびベース210に接続しているコア220の長さ方向Xにおける後部には、端子100の圧着部120を収容するための圧着部収容路211が長さ方向Xに延在するように、後述するリテーナの挿入方向に複数形成される。この圧着部収容路211は、後述するボックス部収容路と同一直線状に形成される。なお、
図3(A)~
図3(C)においては、幅方向Yに3つ、高さ方向Zに2つ、合計6つの圧着部収容路211が形成されている。なお、これら圧着部収容路211の幅方向Yの数、高さ方向Zの数は、この例に限定されず、他の数であってもよい。それぞれの圧着部収容部211のY-Z平面に平行な面における断面形状は、端子100の圧着部120およびここに取り付けられた導体用防水シール190を受容可能な形状および大きさであり、本実施形態においては導体用防水シール190の外径よりもわずかに小さな円形である。ベース210のX方向後面は後端面212をなしており、圧着部収容路211が後端面212に達する部位は、端子100を圧着部収容路211に挿入するための端子挿入開口213となっている。
【0028】
コア220には、X方向における前部分において、圧着部収容路211と同一直線上に、端子100のボックス部110を収容するための複数のボックス部収容路221が形成される。それぞれのボックス部収容路221のY-Z平面に平行な面における断面形状は、端子100のボックス部110を収容可能な形状であれば何れの形状であってもよいが、本実施形態においては、高さ方向Zの大きさが幅方向Yの大きさよりもわずかに大きい略長方形となっている。コア220の長さ方向Xの前面は前端面222となっている。ボックス部収容路221は、前端面222に達し、オス端子挿入開口223を形成する。このオス端子挿入開口223は、端子100のボックス部110の、上板111、底板112、左側板113、右側板114によって囲まれる内部空間の大きさに略同一の大きさまた形状である。さらに、それぞれのボックス部収容路221には、ボックス部収容路221を形成する上板から当該ボックス部収容路221内前方に向けて突出した係止片229が設けられる。この係止片229は、端子100のボックス部110がボックス部収容路221に完全に挿入された際に、ボックス部110の突起116に係止される。
【0029】
リテーナ挿入スロット250は、ハウジング200の外殻230の外殻左側面233の長さ方向Xの略中央部分に、高さ方向Zに長尺に形成される。リテーナ挿入スロット250は、圧着部収容路211およびボックス部収容路221の延在方向に対して垂直な方向、すなわち、本実施形態においては幅方向Yに向かって延び、外殻左側側面233側の相手側コネクタ挿入スロット240を貫通し、コア左面226、コア220内部の圧着部収容路211およびボックス部収容路221、およびコア右面227を貫通し、外殻右側側面234側の相手側コネクタ挿入スロット240に達し、上述のボックス部収容路221と圧着部収容路211とを隔てるように、ボックス部収容路221および圧着部収容路211の延在方向に対して直交するように形成されている。なお、
図3(B)、
図3(C)に示されるように、コア220のコア左面226とコア右面227はリテーナ挿入スロット250によって貫通されるのに対し、コア220のコア上面224とコア下面225はリテーナ挿入スロット250によって貫通されずベース210に達するまで一続きとなっている。なお、コア220において、内部の圧着部収容路211およびボックス部収容路221がリテーナ挿入スロット250によって貫通された部分は、後述するリテーナ300の本体部を収容する本体受容部228を形成している。
【0030】
さらに、コア上面224には、第1係止溝224a、第2係止溝224bが形成される。同様に、コア下面225には、第1係止溝225a、第2係止溝225bが形成される。第1係止溝224a、225aは、本実施形態においては、リテーナ挿入スロット250が形成されている外殻左側側面233に近い側、つまりコア左面226に近い側に形成され、第2係止溝224b、225bは、外殻左側側面233から遠い側、つまりコア右面227に近い側に形成される。
【0031】
次に、
図4を参照してリテーナ300について説明する。
図4(A)は、本実施形態のコネクタ組立体10のリテーナ300の斜視図、
図4(B)は、
図4(A)のリテーナ300の正面図、
図4(C)は、
図4(A)のリテーナ300の後面図である。
図4(D)は、
図4(B)のD部分の拡大図、
図4(E)は、
図4(B)のE部分の拡大図である。
【0032】
リテーナ300は、上述のリテーナ挿入スロット250に挿入されて、後述する仮係止位置と本係止位置とをとる。リテーナ300は、幅方向Yに長尺な本体部310、本体部310の幅方向Yの左側端部311の上端から上方に延び次いで幅方向Y(右方向)に向けて延びる上部アーム320、および本体部310の幅方向Yの左側端部311の下端から下方に延び、次いで幅方向Y(右方向)に向けて延びる下部アーム330を備える。上部アーム320はリテーナ300がハウジング200のリテーナ挿入スロット250に挿入され、本体部310がコア220の本体受容部228に挿入された際に、コア220のコア上面224と外殻230の外殻上面231の下面231aとの間に位置する。また、下部アーム330は、リテーナ300がリテーナ挿入スロット250に挿入され、本体部310がコア220の本体受容部228に挿入された際に、コア220のコア下面225と外殻230の外殻底面232の上面232aとの間に位置する。
【0033】
リテーナ300の上部アーム320の上部アーム下面321には高さ方向Zの下方に向けて突出する上部係止突起322が設けられる。また、下部アーム330の下部アーム上面331には高さ方向Zの上方に向けて突出する下部係止突起332が設けられる。上部係止突起322は、コア上面224の第1係止溝224aまたは第2係止溝224bのいずれかに係止される。一方、下部係止突起332は、コア下面225の第1係止溝225aまたは第2係止溝225bのいずれかに係止される。
【0034】
本体部310の幅方向Yの長さ(幅)は、本体部310がリテーナ挿入スロット250からハウジング200のコア220の本体受容部228に挿入され、上部アーム320の上部係止突起322がコア上面224の第1係止溝224aに係止され、下部アーム330の下部係止突起332がコア下面225の第1係止溝225aに係止された「仮係止位置」のときに、本体部310の右側端部312とコア右面227とが略同一平面上に揃う長さとなるように形成される(
図7(B)参照)。
【0035】
本体部310の高さ方向Zの高さH
bodyは、コア下面225の上面225cからコア上面224の本体受容部228における下面224cまで間の距離H
core(
図3(B)参照)よりも、端子100の移行部130の高さH
transition(
図2(F)参照)分だけ小さな高さとされる。つまり、H
core≧H
body+H
transitionとなる。
【0036】
本体部310には、リテーナ300がリテーナ挿入スロット250内の予め定められた位置(仮係止位置)にある場合に、端子100のボックス部110の挿通を可能とするボックス部用開口313と、ボックス部用開口313に幅方向に連通した移行部用開口314がそれぞれ複数形成される。本実施形態においては、リテーナ300の本体部310には、リテーナの挿入方向(幅方向Y)に向かって、ボックス部用開口313と移行部用開口314が、上述したハウジング200のベース210およびコア220に形成された、リテーナの挿入方向(幅方向Y)におけるボックス部収容路221および圧着部収容路211の数と同数形成されており、それぞれのボックス部用開口313は隣接する他の端子100の移行部130を受け入れるための移行部用開口と連通している。具体的には、コネクタ組立体10に組み込まれる端子100の、幅方向Yの数と同数、つまり3つのボックス部用開口313(313a、313b、313c)と3つの移行部用開口314(314a、313b、313c)が幅方向Yに沿って同一直線上に形成される。なお、それぞれのボックス部用開口313は、リテーナ300の本体部310がリテーナ挿入スロット250からコア220の本体受容部228に挿入され、リテーナ300が仮係止位置にあるとき、コア220のボックス部収容路221と長さ方向Xにおいて同一直線状となる位置に形成される。
【0037】
一つの端子100を受け入れるボックス部用開口313および移行部用開口部314は、幅方向Yに隣接する別の端子100を受入れるボックス部用開口313および移行部用開口314に連通している。したがって、本実施形態においては、ボックス部用開口313aは、この開口が受け入れるのと同じ端子のための移行部用開口314aと連通しており、移行部用開口314aは、隣接する別の端子100を受入れるボックス部用開口313bに連通しており、ボックス部用開口313bはこれと同じ端子100を受け入れる移行部用開口314bに連通し、この移行部用開口314bは、隣接するさらに別の端子100を受入れるボックス部用開口313cに連通しており、このボックス部用開口313cはこれと同じ端子100を受け入れる移行部用開口314cに連通している。
【0038】
それぞれのボックス部用開口313は、端子100をリテーナ300のボックス部用開口313からハウジング200のボックス部収容路221に挿通しようとした際に、端子100が適正な位置から端子100の挿入軸(長さ方向X)を中心として回転した状態のときに当該挿通を阻止する形状となっている。例えば、ボックス部用開口313の形状は、上下非対称形状のボックス部110の断面外形状に対応した形状(または左右非対称形状のボックスの断面外形状に対応した形状)となっている。すなわち本実施形態においては、ボックス部用開口313の高さは、端子100のボックス部110の高さHboxと同じかわずかに大きい高さHopeningである略長方形であって、その底辺313Lが平坦形状であるのに対し、上辺313Tがその中央部に上方に向かって凹んだくぼみ313Xを有する形状となっている。底辺313Lから上辺のくぼみ313Xまでの高さHmaxは、端子100のボックス部110の、突起116が形成されている部位の高さHprotrusionと略同じかわずかに大きい高さとされる。
【0039】
また、それぞれの移行部用開口314の、リテーナ300の挿入方向(幅方向Y)に直交する方向の大きさ(高さ方向Zの大きさ)が、ボックス部用開口313の大きさよりも小さく形成されている。具体的には、移行部用開口314の高さHminは、端子100のボックス部110の高さHboxよりも小さく、端子100の移行部130の高さHtransitionより大きな高さとされる。
【0040】
さらに、リテーナ300の本体部310の下面316には、上述したボックス部用開口313a~313cと、幅方向Yにおいて同一位置となる位置に、ボックス部用凹部317a~317c(以下、まとめてボックス部用凹部317という)が形成される。それぞれのボックス部用凹部317は、上述したボックス部用開口313の上側部分と略同一の形状であり、ボックス部用開口313の上辺313Tに対応した上辺317Tと、その上辺317Tがその中央部において上方に向かって凹んだくぼみ317Xを有する形状となっている。
【0041】
ここで、リテーナ300の本体部310がリテーナ挿入スロット250からコア220の本体受容部228に挿入され、リテーナ300が仮係止位置にあるとき、リテーナの下部アーム330はコア220のコア下面225と外殻230の外殻底面232の上面232aとの間に位置しているため、本体部310の下面316は、コア下面225の上面225cに対向した状態となる。このとき、コア下面225の上面225cからボックス部用凹部317の上辺317Tまでの高さは、上述したボックス部用開口313の高さH
openingと略等しく、また、コア下面225の上面225cからボックス部用凹部317のくぼみ317Xまでの高さは、上述したボックス部用開口313の底辺313Lからくぼみ313Xまでの高さH
maxと略等しくなる。また、上記仮係止位置において、コア下面225の上面225cからリテーナ300の本体部310の下面316までの高さは上述した移行部用開口314の高さH
minと略等しくなる。なお、本実施形態においては、コア下面225の上面225cには、端子100のボックス部110の下部(つまり、左側板113の下部、右側板114の下部、および底板112)を受け入れる溝(
図6、7参照)が形成されていてもよい。
【0042】
次に、
図5を参照して、防水シール400について説明する。なお、
図5は、本実施形態のコネクタ組立体10の防水シール400の斜視図である。防水シール400は、外形がハウジング200の外殻230を構成する外殻上面231、外殻底面232、外殻左側面233、外殻右側面234の内壁に接触し防水可能となる形状をしており、内部にハウジング200のコア220が挿通される開口405を有する。防水シール400は、弾性を有する材料で形成される。さらに、防水シール400の外面410には、長さ方向Xと直交する方向(つまり幅方向Yおよび高さ方向Z)に沿って複数の凸状部411が形成される。また、防水シール400の内面420には、長さ方向Xと直交する方向(つまり幅方向Yおよび高さ方向Z)に沿って複数の溝状部421が形成される。防水シール400は、コネクタ組立体10の組立時にハウジング200の相手方挿入スロット240のスロット最奥部241に挿入される。
【0043】
次に、コネクタ組立体10の組み立て方法について説明する。
図1に示すように、まず、防水シール400を、相手方コネクタ挿入スロット240に、長さ方向Xと反対の向きに挿入し、防水シール400をスロット最奥部241に配置する。このとき、防水シール400の内面420に形成された複数の溝状部421により、防水シール400はコア220の周囲に密着する。次いで、リテーナ300を、ハウジング200のリテーナ挿入スロット250に挿入し、端子100をハウジング200に装着する。
【0044】
図6、7を参照して、リテーナ300を、リテーナ挿入スロット250に挿入し、次いで端子100を装着する方法について説明する。なお、
図6(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にある場合の、
図3(A)におけるY-Z平面で切断した断面図であり、
図6(B)は、
図6(A)におけるB部分の部分拡大図であり、
図6(C)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にある場合の、正面図である。さらに、
図7(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100を装着した際の、
図3(A)におけるX-Z平面で切断した場合の断面図であり、
図7(B)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100を装着した際の、
図3(A)におけるX-Y平面で切断した場合の断面図である。
【0045】
図6(A)、
図6(B)に示すように、リテーナ300を、リテーナ挿入スロット250に挿入すると、リテーナ300の本体部310はコア220の本体受容部228に進入する。また、リテーナ300の上部アーム320は、ハウジング200の外殻上面231の下面231aとコア220のコア上面224との間に挿入される。さらに、リテーナ300の下部アーム330は、ハウジング200の外殻底面232の上面232aとコア220のコア下面225の間に挿入される。リテーナ300をリテーナ挿入スロット250に挿入し、幅方向Yに移動させてゆくと、リテーナ300の上部アーム320の上部係止突起322がコア220のコア上面224に形成された第1係止溝224aに係止され、リテーナ300の下部アーム330の下部係止突起332がコア220のコア下面225に形成された第1係止溝225aに係止される。このとき、リテーナ300は仮係止位置にある。
【0046】
この仮係止位置のとき、リテーナ300の本体部310に形成されたボックス部用開口313およびボックス部用凹部317は、ハウジング200の圧着部収容路211およびボックス部用収容路221と長さ方向Xにおいて一直線上に位置が揃う。この仮係止位置のときに、圧着部120に導線180を圧着接続した端子100を、ハウジング200のベース210の端子挿入用開口213から圧着部収容路211に挿入する。圧着部収容路211の形状が端子100のボックス部110の外形よりも大きい円形であるため、端子100のボックス部110は、妨げられることなく圧着部収容路211を通過し、リテーナ300の本体部310のボックス部用開口313またはボックス部用凹部317に達する。
【0047】
このとき、端子100が挿入軸(長さ方向X)を中心として適正な姿勢にあるとき、つまりボックス部100の突起116が上方にあり、底板112が下方にある向きで挿入された場合、リテーナ300の本体部310のボックス部用開口313の上辺313Tがボックス部110の上板111の上方に位置し、ボックス部用開口313のくぼみ313Xがボックス部100の突起116の上方に位置するため、リテーナ300のボックス部用開口313は、ボックス部110の長さ方向Xへの進入を許容する。次いで、端子100を長さ方向Xに移動させると、ボックス部110は、コア220のボックス部収容路221に挿入され、ボックス部110の突起116は、ボックス部収容路221内に突出した係止片229に係止される(
図7(A))。つまり、端子100は、圧着部収容路211からボックス部用開口313を経てボックス部収容路221に挿入可能となる。
【0048】
同様に、端子100が正しい向き、つまりボックス部100の突起116が上方にあり、底板112が下方にある向きで下段に位置する圧着部収容路211に挿入された場合、リテーナ300の本体部310のボックス部用凹部317の上辺317Tがボックス部110の上板111の上方に位置し、ボックス部用凹部317のくぼみ317Xがボックス部100の突起116の上方に位置するため、リテーナ300のボックス部用凹部317は、ボックス部110の長さ方向Xへの進入を許容する。次いで、端子100を長さ方向Xに移動させると、ボックス部110は、コア220のボックス部収容路221に挿入され、ボックス部110の突起116は、ボックス部収容路221内に突出した係止片229に係止される(
図7(A))。
【0049】
一方、端子100が適正な位置から挿入軸(長さ方向Xと同一方向の軸)を中心として回転した状態で誤挿入された場合について、
図8を参照して説明する。なお、
図8(A)は、本実施形態におけるコネクタ組立体10の、リテーナ300が仮係止位置にあり、端子100が上下逆さまに挿入された場合の、
図3(A)におけるY-Z平面で切断した断面図であり、
図8(B)は、
図8(A)におけるB部分の部分拡大図である。リテーナ300が仮係止位置の状態で、端子100を上下逆さまに、つまり、ボックス部100の突起116が下方にあり、底板112が上方となる向きで、ハウジング200のベース210から圧着部収容路211に挿入する。すると、圧着部収容路211の形状は、端子100のボックス部110の外形よりも大きい円形であるため、端子100のボックス部110は、妨げられることなく圧着部収容路211を通過し、リテーナ300の本体部310のボックス部用開口313またはボックス部用凹部317に達する。
【0050】
しかしながら、この状態でさらに端子100を長さ方向Xに移動させようとしても、端子100のボックス部110の形状とリテーナ300の本体部のボックス部用開口313の形状が対応していないため、上下逆さまになったボックス部110のボックス部用開口313への進入が阻止される。具体的には、端子100のボックス部110の底板112の中央部を除く両側部分、および左側板113の下部(
図8(B)では上側に位置している)、右側板114の下部(
図8(B)では上側に位置している)の進入がボックス部用開口313の上辺313Tによって妨げられる。このとき、ボックス部110の突起116は、リテーナ300のボックス部用開口313の底辺313Lの上面上に位置する。
【0051】
また、仮にボックス部110の底板112がボックス部用開口313の上辺313Tの下方の位置の高さでボックス部用開口313に挿入されようとしても、ボックス部110全体がその分だけ下方に位置しており、結果として突起116がリテーナ300の本体部310のボックス部用開口313の底辺313Lに阻まれ、ボックス部110の長さ方向Xへの進入が妨げられる。
【0052】
同様に、端子100が上下逆さまに下段に位置する圧着部収容路211に挿入され、リテーナ300のボックス部用凹部317に達した場合、ボックス部110の形状と、リテーナ300の本体部のボックス部用凹部317およびコア220のコア下面225の上面225cによって形成される形状とが対応していないため、上下逆さまになったボックス部110のボックス部用凹部317への進入が阻止される。具体的には、端子100のボックス部110の底板112の中央部を除く両側部分、および左側板113の下部、右側板114の下部のボックス部用凹部317への進入がボックス部用凹部317の上辺317Tによって妨げられる。このとき、ボックス部110の突起116は、コア220のコア下面225の上面225cの上面上に位置する。
【0053】
また、仮にボックス部110の底板112がボックス部用凹部317の上辺317Tの下方の位置の高さでボックス部用開口317に挿入されようとしても、ボックス部110はその分だけ下方に位置しており、結果として突起116がコア220のコア下面225の上面225cに阻まれ、ボックス部110の長さ方向Xへの進入が妨げられる。
【0054】
なお、上記の説明においては端子100が上下逆さまに、つまり180度回転した状態で圧着部収容部211に挿入され、次いでリテーナ300のボックス部用開口313、ボックス部用凹部317に達した場合に、端子100の誤挿入を防止する場合を説明したが、本発明においては、端子100が端子100の挿入軸を中心に180度以外の角度、例えば90度回転した状態で誤挿入された場合にも、端子100のボックス部110とリテーナ300のボックス部用開口313、ボックス部用凹部317との形状の不一致が生じ、ボックス部110のボックス部用開口313、ボックス部用凹部317への挿通が阻止される。
【0055】
端子100のボックス部110が、正しい向きでリテーナ300のボックス部用開口313およびボックス部用凹部317を通過し、ボックス部収容路221に収容されると、移行部130がボックス部用開口313の下部およびボックス部用凹部317の下方部分に位置する。これにより、リテーナ300を幅方向Yにさらに移動させることが可能となる。ボックス部110がボックス部収容路221に完全に収容されていない場合、ボックス部110の左側板113がボックス部用開口313およびボックス部用凹部317内に存在しており、このときにリテーナ300を幅方向Yに移動させようとしても、ボックス部110の左側板113により幅方向Yへの移動が阻まれる。これにより、端子100の半挿入の検知、つまり、端子100が完全にボックス部収容路221に収容されていないことを検知することが可能となる。
【0056】
端子100のボックス部110をボックス部収容路221に完全に挿入すると、リテーナ300の幅方向Yへの移動が可能となる。リテーナ300を幅方向Yへさらに移動させると、リテーナ300の上部アーム320の上部係止突起322がコア220のコア上面224に形成された第1係止溝224aから外れて幅方向Yへ移動し、第2係止溝224bに係止される。同様に、リテーナ300の下部アーム330の下部係止突起332がコア220のコア下面225に形成された第1係止溝225aから外れて幅方向Yへ移動し、第2係止溝225bに係止される。このときリテーナ300は、本係止位置となる。
【0057】
リテーナ300が本係止位置にあるときのコネクタ組立体10の、
図3(A)のX-Z平面における断面図を
図9(A)に示し、
図3(B)のX-Y平面における断面図を
図9(B)に示す。
図7において説明したのと同様に、端子100のボックス部110は、コア220のボックス部収容路221に収容されている。また、端子100の圧着部120は、ベース210およびコア220の後部に形成された圧着部収容路211に収容されている。さらに、端子100の圧着部120の導体把持部122の一部と移行部130はリテーナ300の移行部用開口314、あるいはボックス部用凹部317に隣接した本体部310の下面316の下方に収容される。
【0058】
図2(F)、
図3(B)、
図4(B)、
図4(D)、
図9(A)に示すように、移行部用開口314の高さH
minは、端子100のボックス部110の高さH
boxよりも小さいため、リテーナ300の本体部310の前面319が端子100のボックス部110の後端面118と接触している。また、コア下面225の上面225cからリテーナ300の、ボックス部用凹部317に隣接した本体部310の下面316までの高さ(コア上面224の、本体受容部228における下面224cと、コア下面225の上面225cとの間の距離H
coreからリテーナ300の本体部310の高さH
bodyを引いた距離)は、端子100のボックス部110の高さH
boxよりも小さいため、リテーナ300の本体部310の前面319が端子100のボックス部110の後端面118と接触している。すなわち、リテーナ300が本係止位置にあるとき、端子100の移行部130がリテーナ300の移行部用開口314に収容されているため、この状態で端子100を長さ方向Xと反対方向に引き抜こうとしても、リテーナ300の本体部310の前面319にボックス部110の後端面118が当接することにより、ボックス部110の後方への移動が阻止され、当該ボックス部110を抜去することができない状態となる。これにより端子100のハウジング200からの脱落が防止される。
【0059】
なお、上記の実施形態においては、端子100のボックス部110の形状が、略長方形であり、上板111の上面に上方に向けて突出する突起116が設けられ、上板111に対向する底板112の下面112aが平坦な形状である場合について説明した。さらに、リテーナ300の本体部310に形成されたボックス部用開口313が、ボックス部110の形状に対応して上辺313Tがその中央部において上方に向かって凹んだくぼみ313Xを有する形状であるのに対し、その底辺313Lが平坦形状である場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記の実施形態に限定されず、ボックス部110を構成する一つの面に外側に向けて突出する突起が設けられるのに対し、当該突起が設けられた面に対向する面は平坦な形状とされ、リテーナのボックス部用開口に、当該開口の一方側が突起を受容する凹形状であり、当該一方の側に対向する側が平坦面とされるような形状であってもよい。
【0060】
さらに、端子のボックス部の断面形状が少なくとも一部分において上下または左右非対称形状であり、リテーナが、上下または左右非対称形状のボックスの断面外形状に対応した形状のボックス部用開口と、リテーナの挿入方向に直交する方向の大きさがボックス部用開口の大きさよりも小さいボックス部用開口に連通する移行部用開口とを備えていれば、いずれの形状のものであっても採用することが可能である。
【0061】
例えば、
図10は、上記実施形態とは異なる他の断面外形状のボックス部を有する端子と、それを受け入れるリテーナのボックス部用開口の例を示している。
図10(A)に示す端子のボックス部110Aの断面外形状は略長方形であり、その上面111Aの中央部分には下方に向かって凹んだくぼみ116Aが形成されている。なお、このくぼみ116Aはボックス部110Aの長さ方向X全体にわたって形成されている。このボックス部110Aの外形状に対応して、リテーナ300Aのボックス部用開口313Aには、上辺313ATの中央に下方に向かって突出した突起313AXが形成されている。
【0062】
図10(A)に示すように、端子のボックス部110Aが正しい向きでハウジング200に挿入された場合、仮挿入位置にあるリテーナ300Aのボックス部用開口313Aは、ボックス部110Aの通過を許容し、ここを通過したボックス部110Aはハウジング200のコア220に形成されたボックス部収容路221に挿入される。
【0063】
一方、
図10(B)に示すように、端子のボックス部110Aが正しくない向き、例えばボックス部110Aが上下逆さまにハウジング200に挿入された場合、ボックス部110Aの底板112Aが、仮挿入位置にあるリテーナ300Aのボックス部用開口313Aに設けられた突起313AXに当接し、ボックス部110Aをそれ以上長さ方向Xに移動させることができなくなり、端子の正しくない向きでの誤挿入が阻止される。
【0064】
上記実施形態、および上記
図10(A)、
図10(B)の端子のボックス部110、110Aの形状は、上下非対称であったが、本発明の端子のボックス部の形状は、左右非対称形状であってもよい。例えば、
図10(C)に示す端子のボックス部110Cの断面形状は、
図10(A)と同様に略長方形であり、その左側板113Cの下部に外側(幅方向Yと反対方向)に向けて突出した突起116Cが形成されている。リテーナ300Cのボックス部用開口313Cの上部は、ボックス部110C上部の形状に対応した矩形状となっており、ボックス部用開口313Cの下部は隣接する移行部用開口314Cに連通している。
【0065】
図10(C)に示すように、端子のボックス部110Cが正しい向きでハウジング200に挿入された場合、仮挿入位置にあるリテーナ300Cのボックス部用開口313Cおよび移行部用開口314Cは、ボックス部110Cおよび突起116Cの通過を許容し、ここを通過したボックス部110Cはハウジング200のコア220に形成されたボックス部収容路221に挿入される。
【0066】
一方、
図10(D)に示すように、端子のボックス部110Cが正しくない向き、例えばボックス部110Cが左右逆さま(端子の挿入軸を中心に180度回転した状態)にハウジング200に挿入された場合、ボックス部110Cの左側板113Cに形成された突起116Cが、仮挿入位置にあるリテーナ300Cのボックス部用開口313Cを形成している壁面(右側壁313CL)に当接し、ボックス部110Cをそれ以上長さ方向Xに移動させることができなくなり、端子の正しくない向きでの誤挿入が阻止される。
【0067】
図10(E)に示す端子のボックス部110Eの断面形状は、
図10(C)と同様に略長方形であり、右側板114Eの中央に内側に向かって凹んだくぼみ116Eが形成されている。なお、このくぼみ116Eはボックス部110Eの長さ方向X全体にわたって形成されている。このボックス部110Eの外形状に対応して、リテーナ300Eのボックス部用開口部313Eには、ボックス部用開口313Eを形成している右側壁313ELに左方向に向けて突出した突起313EXが形成されている。
【0068】
図10(E)に示すように、端子のボックス部110Eが正しい向きでハウジング200に挿入された場合、仮挿入位置にあるリテーナ300Eのボックス部用開口313Eは、ボックス部110Eの通過を許容し、ここを通過したボックス部110Eはハウジング200のコア220に形成されたボックス部収容路221に挿入される。
【0069】
一方、
図10(F)に示すように、端子のボックス部110Eが正しくない向き、例えば、ボックス部110Eが左右逆さま(端子の挿入軸を中心に180度回転した状態)にハウジング200に挿入された場合、ボックス部110Eの左側板113Eが、仮挿入位置にあるリテーナ300Eのボックス部用開口313Eを形成している右側壁313ELの突起313EXに当接し、ボックス部110Eをそれ以上長さ方向Xに移動させることができなくなり、端子の正しくない向きでの誤挿入が阻止される。
【0070】
なお、上記の例においては、リテーナ300、300A、300C、300Eの本体部には、上側に3つのボックス部用開口(例えば313)が形成され、本体部の下面316のボックス部用凹部317が形成された例について説明した。しかしながら、本発明は上記の例に限定されず、リテーナ300の本体部に、リテーナ300の挿入方向に対して直交する方向(つまり高さ方向Z)に、上述したボックス部用開口313および移行部用開口が、ハウジング200のベース210およびコア220に形成された、リテーナ300の挿入方向に対して直交する方向(つまり高さ方向Z)における圧着部収容路211およびボックス部収容路221の数と同数形成されるようにし、リテーナ300の下面316にボックス部用凹部を備えていない構成であってもよい。
【0071】
また、上記の例においては、リテーナ300が、幅方向Yにハウジング200のリテーナ挿入スロット250に挿入される構成について説明したが、ハウジング200のリテーナ挿入スロット250をハウジング200の外殻右側面234に形成し、リテーナ300をハウジング200の右側から幅方向Yと反対方向にリテーナ挿入スロットに挿入するようにしてもよいし、リテーナ挿入スロット250をハウジング200の外殻上面231、あるいは外殻底面232のいずれかに形成し、リテーナ300をハウジング200の上方から、あるいは下方のいずれかからリテーナ挿入スロットに挿入するような構成としてもよい。
【0072】
また、上記の例においては、ハウジング200のコア220に第1係止溝224a、225aおよび第2係止溝224b、225bが形成され、これに対向してリテーナ300の上部アーム320に上部係止突起322、およびリテーナ300の下部アーム330に下部係止突起332が形成された例を説明したが、リテーナ300の上部アーム320および下部アーム330に第1係止溝および第2係止溝をそれぞれ形成し、これに対向してハウジング200のコア220または外殻230の外殻上面231および外殻底面232に係止突起を形成してもよい。そして係止突起が第1係止溝に係止された際に、リテーナ300は仮係止位置をとり、係止突起が第2係止溝に係止された際に、リテーナ300が本係止位置をとるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 コネクタ組立体
100 端子
110 ボックス部
111 上板
112 底板
113 左側板
114 右側板
115 コンタクト挿入孔
116 突起
117 接触片
118 後端面
120 圧着部
121 被覆把持部
122 導体把持部
122a 底板
122b、122c 把持片
130 移行部
132 左側面
133 右側面
180 導体
190 導体用防水シール
200 ハウジング
210 ベース
211 圧着部収容路
212 後端面
213 端子挿入開口
220 コア
221 ボックス部収容路
222 前端面
223 オス端子挿入開口
224 コア上面
224a 第1係止溝
224b 第2係止溝
224c 下面
225 コア下面
225a 第1係止溝
225b 第2係止溝
225c 上面
226 コア左面
227 コア右面
228 本体受容部
230 外殻
231 外殻上面
231a 下面
232 外殻底面
232a 上面
233 外殻左側面
234 外殻右側面
240 相手方コネクタ挿入スロット
241 スロット最奥部
250 リテーナ挿入スロット
300 リテーナ
310 本体部
311 左側端部
312 右側端部
313(313a、313b、313c) ボックス部用開口
314(314a、314b、314c) 移行部用開口
315 上面
316 下面
317(317a、317b、317c) ボックス部用凹部
319 前面
320 上部アーム
321 上部アーム下面
322 上部係止突起
330 下部アーム
400 防水シール
405 開口
410 外面
411 突状部
420 内面
421 溝状部