IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マティナス バイオファーマ ナノテクノロジーズ,インコーポレーテッドの特許一覧

特許6991592中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療
<>
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図1
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図2
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図3
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図4
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図5
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図6
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図7
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図8
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図9
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図10
  • 特許-中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】中枢神経系送達のためのコクリエート化抗真菌化合物及びクリプトコッカス感染症の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20220104BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K31/7048
A61K31/505
A61K31/4196
A61K31/496
A61K31/427
A61K31/517
A61P31/10
A61P43/00 121
A61K47/24
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019500624
(86)(22)【出願日】2017-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2017041750
(87)【国際公開番号】W WO2018013711
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】62/513,800
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/361,351
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516026321
【氏名又は名称】マティナス バイオファーマ ナノテクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンニーノ ラファエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルー ルーイン
(72)【発明者】
【氏名】クリング ダグ エフ.
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513135(JP,A)
【文献】特表2015-528021(JP,A)
【文献】特表2003-529557(JP,A)
【文献】特表2002-535267(JP,A)
【文献】国際公開第2010/091090(WO,A1)
【文献】特表2005-529086(JP,A)
【文献】特表2006-514103(JP,A)
【文献】Clinical Infectious Diseases,2010年,Vol.50, No.3,pp.291-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるクリプトコッカス属の一種による中枢神経系を冒す感染症を治療又は予防するための経口用配合物であって、
前記経口用配合物は、
(a)1つ以上のコクリエートと治療有効量の第1の抗真菌化合物とを含むコクリエート組成物、ここで前記第1の抗真菌化合物はアムホテリシンBであり及び
(b)治療有効量の第2の抗真菌化合物、ここで前記第2の抗真菌化合物は5-フルシトシン、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及びボリコナゾールからなる群から選択され、
を含み、
前記経口用配合物における抗真菌化合物は、前記第1及び第2の抗真菌化合物の二つのみである、
経口用配合物。
【請求項2】
前記経口用配合物は、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも28日間、毎日投与される、請求項に記載の経口用配合物。
【請求項3】
前記第2の抗真菌化合物が5-フルシトシンである、請求項又はに記載の経口用配合物。
【請求項4】
前記感染症がクリプトコッカス髄膜脳炎である、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項5】
前記感染症がクリプトコッカス髄膜炎である、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項6】
前記クリプトコッカス属の一種がクリプトコッカス・ネオフォルマンスである、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項7】
前記クリプトコッカス属の一種がクリプトコッカス・ガッティである、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項8】
被験体がヒトである、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項9】
被験体がHIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有しているか、又は臓器移植を受けている、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項10】
前記抗真菌化合物が脳に送達される、請求項のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項11】
クリプトコッカス属の一種による感染症の予防が感染症の再発の予防を含む、請求項10のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項12】
クリプトコッカス属の一種による感染症の予防が哺乳動物又はヒトの処置を含み、前記哺乳動物又はヒトがクリプトコッカス種抗原に対して陽性である、請求項11のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項13】
前記第2の抗真菌化合物がコクリエート化されており、前記アムホテリシンB及び第2の抗真菌化合物が同じコクリエート内に配合されている、請求項12のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項14】
前記第2の抗真菌化合物が5-フルシトシン又はフルコナゾールであり、該5-フルシトシン又はフルコナゾールが非コクリエート化されている、請求項1、2、4~12のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項15】
前記第2の抗真菌化合物がフルコナゾールである、請求項1、2、4~12のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項16】
前記コクリエートの1つ以上がジオデートコクリエートである、請求項1~15のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項17】
前記コクリエートの1つ以上が脂質成分を含み、該脂質成分が約30重量%~70重量%の範囲の量でダイズホスファチジルセリンを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項18】
前記第2の抗真菌化合物が5-フルシトシンであり、該5-フルシトシンが非コクリエート化されている、請求項1~12、14、16及び17のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【請求項19】
前記コクリエート組成物が、前記第2の抗真菌化合物と別に投与されるように配合されている、請求項1~12、14~18のいずれか一項に記載の経口用配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年7月12日付で出願された米国仮特許出願第62/361,351号及び2017年6月1日付で出願された米国仮特許出願第62/513,800号の利益を主張し、その出願日に依拠し、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本出願は概して、抗真菌剤を含むコクリエート組成物、及び真菌感染症、特にクリプトコッカス属の一種により引き起こされる真菌感染症を治療するために該コクリエート組成物を投与する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クリプトコッカス症は、ヒト免疫不全ウイルスを有する患者の内、中枢神経系(CNS)疾患により世界で年間推定100万の症例及び625000人の死亡を引き起こす日和見真菌感染症である。この症例の大部分は、より地理的制限のあるクリプトコッカス・ガッティ(Cryptococcus gattii)ではなく、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)により世界中で引き起こされている。クリプトコッカス症は、多くの人口密集地、特により発展した国々にて、殆どの場合HIV感染に伴って起こるが、症例の大部分は、移植受容者を含む非HIV感染者;糖質コルチコステロイド等の免疫抑制剤、細胞毒性化学療法、TNF-α阻害剤、及び他の疾患修飾剤を受けている患者;並びに臓器不全症候群、先天的な免疫学的問題、分類不能型免疫不全症、及び血液障害等の基礎障害を有する様々な患者集団内で起こる。さらに、多くの人口密集地において、クリプトコッカス症の最大20%の症例が表現型の上では「正常」又はそれ以外でも臨床的に免疫不全のない患者にて起こる。
【0004】
クリプトコッカス症の症例は、環境からの真菌細胞の吸入から始まると考えられる。クリプトコッカス属の一種は、免疫抑制患者では肺内にて肺炎を引き起こすことがあるが、免疫応答性宿主では、この真菌細胞は通例、免疫系により排除されるか、又は無症候性の潜伏感染を確立する。続く免疫抑制の際に、この潜伏感染が他の組織、最も顕著には中枢神経系(CNS)に広がる可能性がある。CNSにて感染が確立すると、クリプトコッカス症が髄膜及び脳組織の激しい感染を引き起こし、これは頭蓋内圧の上昇を伴うことが多い。迅速かつ効果的な治療をしなければ、CNS感染は常に致命的なものとなる。
【0005】
クリプトコッカス髄膜脳炎の治療の基本は、1950年代に開発されたアムホテリシンBデオキシコール酸塩(AmBd)であり、これは細胞膜における孔の発生及び酸化的損傷による細胞死の誘導の両方により殺真菌効果を発揮する。AmBdを5-フルシトシン(5-FC)と組み合わせることで、AmBdを単独で使用する治療に比べて患者の10週生存を改善することができる併用療法が施されることもある。この組合せにより、推奨される「黄金律」誘導治療が保持されるが、AmBdが顕著な毒性を有し、またそのIV配合物は精密な電解質の監視、及び静脈内カテーテルを必要とし、このことが資源の乏しい環境でのこの薬剤の使用を妨げていることから、この組合せにはかなりの課題がある。
【0006】
AmBdと5-FCとの併用療法に関連する課題を回避するために、フルコナゾールと5-FCとの組合せが検討されている。フルコナゾールは、良好な経口バイオアベイラビリティーを有し、脳脊髄液に浸透することができることから、初期治療後の維持療法の良好な候補にもなっている。しかしながら、フルコナゾールは、(殺真菌化合物ではなく)静真菌化合物であり、そのため病原体排除にはあまり効果がないことから、初期療法には推奨されない。結果として、経口で利用可能であり、効果的で、かつ低コストで提供することができるクリプトコッカス症治療が依然として明らかに必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに経口で利用可能であり、毒性の低いコクリエート化アムホテリシンB(本明細書ではAmBとも称される)を、経口投与される5-フルシトシンと組み合わせることが、マウスにてクリプトコッカス属の一種を排除するのに、全身投与されるアムホテリシンBデオキシコール酸塩及び経口投与される5-フルシトシンの場合と同程度有効であることを発見した。
【0008】
さらに、本発明者らは、コクリエート化アムホテリシンBが、最も重篤なクリプトコッカス属の一種の感染が起こる脳へと送達されることを示した。そのため、従来的に経口投与することができる本組成物は、発展途上国の広い範囲に、クリプトコッカス症の治療に対するアムホテリシンに基づいた治療法の強力な殺真菌活性への門戸を開く可能性を秘めている。本抗真菌コクリエートのこれらの及び他の利点が本明細書にて更に記載されている。
【0009】
本開示は、1つ以上のコクリエートと、例えば、アムホテリシンB、5-フルシトシン(本明細書では5-FC及びフルシトシンとも称される)、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及び/又はボリコナゾールから選択される治療有効量の少なくとも2つの抗真菌化合物とを含むコクリエート組成物に関する。幾つかの実施の形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物は、アムホテリシンB及び5-フルシトシンである。更なる抗真菌化合物が本明細書にて記載されている。
【0010】
幾つかの実施の形態では、コクリエートは、粘膜投与、例えば経口投与又は鼻内投与に合わせて配合されている。他の実施の態様では、コクリエートは、静脈内投与に合わせて配合されている。幾つかの実施の態様では、コクリエートは、脊髄内投与に合わせて配合されている。
【0011】
幾つかの実施の形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物の1つだけがコクリエートとして配合されている。他の実施の態様では、少なくとも2つの抗真菌化合物がコクリエートとして配合されている。幾つかの実施の態様では、少なくとも2つの抗真菌化合物が同じコクリエート内に配合されている。他の実施の態様では、少なくとも2つの抗真菌化合物がそれぞれ異なるコクリエートに配合されている。
【0012】
幾つかの実施の形態では、本明細書に記載の1つ以上のコクリエートは、本明細書にも記載されているジオデートコクリエートである。
【0013】
幾つかの実施の形態では、本明細書に記載の1つ以上のコクリエートは、脂質成分を含み、該脂質成分が、約30重量%~70重量%、より典型的には40重量%~70重量%、より典型的には40重量%~60重量%、より典型的には45重量%~55重量%、より典型的には45重量%~60重量%、最も典型的には45重量%~約55重量%の範囲の量でダイズホスホチジルセリンを含む。
【0014】
本開示はまた、クリプトコッカス属の一種による感染症を治療又は予防する方法であって、該方法が、コクリエートを含む配合物を、それを必要とする被験体に経口投与することを含み、該コクリエートがアムホテリシンBを含む、方法に関する。幾つかの実施の形態では、配合物を、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも28日間、毎日投与する。幾つかの実施の形態では、本方法は、5-フルシトシンを被験体に投与することを更に含む。幾つかの実施の形態では、5-フルシトシンを経口投与する。幾つかの実施の形態では、5-フルシトシンを、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも28日間、毎日投与する。
【0015】
本開示はまた、クリプトコッカス属の一種による感染症を治療又は予防する方法であって、該方法が、コクリエート組成物を含む配合物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、該コクリエート組成物が少なくとも2つの抗真菌化合物を含み、該少なくとも2つの抗真菌化合物が、アムホテリシンB、5-フルシトシン、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及び/又はボリコナゾールから選択され、該少なくとも2つの抗真菌化合物の少なくとも1つがコクリエートとして配合されている、方法に関する。幾つかの実施の形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物は、アムホテリシンB及び5-フルシトシンである。更なる抗真菌化合物が本明細書にて記載されている。幾つかの実施の形態では、抗真菌化合物が脳へと送達される。
【0016】
幾つかの実施の形態では、感染症が皮膚、肺、前立腺及び/又は中枢神経系を冒すものである。幾つかの実施の形態では、感染症がクリプトコッカス髄膜脳炎である。幾つかの実施の形態では、感染症がクリプトコッカス髄膜炎である。
【0017】
幾つかの実施の形態では、クリプトコッカス属の一種がクリプトコッカス・ネオフォルマンスである。幾つかの実施の形態では、クリプトコッカス属の一種がクリプトコッカス・ガッティである。
【0018】
幾つかの実施の形態では、投与が経口投与、鼻内投与、髄腔内投与又は静脈内投与である。幾つかの実施の形態では、コクリエート配合物を経口投与し、抗真菌化合物が脳へと送達される。
【0019】
幾つかの実施の形態では、被験体がヒトである。幾つかの実施の形態では、被験体がHIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有しているか、又は臓器移植を受けている。
【0020】
クリプトコッカス属の一種による感染症を治療又は予防する方法であって、該方法が、コクリエートを含む配合物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、該コクリエートが抗真菌化合物を含み、該抗真菌化合物が、5-フルシトシン、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及び/又はボリコナゾールの少なくとも1つから選択される、方法もまた本明細書にて提供される。更なる抗真菌化合物が本明細書にて記載されている。
【0021】
幾つかの実施の形態では、クリプトコッカス属の一種による感染症の予防が感染症の再発の予防を含む。幾つかの実施の形態では、クリプトコッカス属の一種による感染症の予防が哺乳動物又はヒトの処置を含み、哺乳動物又はヒトがクリプトコッカス種抗原に対して陽性である(例えばIMMY Inc.社(オクラホマ州ノーマン)のクリプトコッカス抗原試験を用いる)。
【0022】
本明細書に組み込まれるとともに本明細書の一部をなす添付の図面は、或る特定の実施形態を解説し、本明細書と共に本明細書に開示される組成物及び方法の或る特定の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】コクリエートの概略図である。挿入図には、リン脂質二重層(円及び尾部)と、多価カチオン(陰影のない円)と、コクリエート内で保護された例示的なカーゴ部(斜線の入った円)とを含有するコクリエートの脂質積層(strata)が示されている。
図2】コクリエート及びそのカーゴを取り込むマクロファージの概略図である。挿入図には、詳細な説明に記載されているようなマクロファージ内でのコクリエートの開放及びカーゴの放出が示されている。
図3】アムホテリシンBの構造図である。
図4】アムホテリシンB-コクリエート(本明細書ではCAMBとも称される)を作製する方略の概略図である。
図5】詳細な説明に記載されているようなジオードコクリエートの例示的な調製を示す図である。
図6】実施例2に記載されるように、CAMB又はFUNGIZONE(商標)のいずれかで処理されたC.ネオフォルマンスに感染させたマウスのin vivoでの有効性の結果を示す図である。
図7】実施例2に記載されるように、CAMB、FUNGIZONE(商標)、及び/又は5-フルシトシンで処理されたC.ネオフォルマンスに感染させたマウスのin vivoでの有効性の結果を示す図である。
図8】実施例2に記載されるように、CAMB、FUNGIZONE(商標)、5-FC、及び/又はフルコナゾールで処理されたC.ネオフォルマンスに感染させたマウスのin vivoでの有効性の結果を示す図である。
図9】実施例2に記載されるように、CAMB、FUNGIZONE(商標)、5-FC、フルコナゾール、及びそれらの組合せで処理されたマウスにて観察された脳組織1グラム当たりのコロニー形成単位(CFU)数を示す図である。
図10】実施例3に記載されるように、経口投薬後にコクリエート化アムホテリシンBが脳に局在することを実証するために使用された研究設計を示す図である。
図11】実施例3に記載されるように、C.ネオフォルマンスに感染させたマウスの脳への蛍光標識したCAMB粒子の送達を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、様々な例示的な実施形態を詳細に参照し、実施形態の例を、添付の図面において図示するとともに、以下の発明を実施するための形態において論じる。以下の発明を実施するための形態は読者に本発明の幾つかの実施形態、特徴及び態様の詳細のより十分な理解をもたらすために提示され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことを理解されたい。
【0025】
クリプトコッカス属の一種及び抗真菌化合物
本開示は、1つ以上のコクリエートと、クリプトコッカス属の一種により引き起こされる感染症に効果的である少なくとも2つの抗真菌化合物とを含むコクリエート組成物に関する。本明細書中で使用される場合、「クリプトコッカス属の一種」という用語は、担子菌類に含まれる酵母であるクリプトコッカス属に属する真菌種を指す。かかる感染症は、例えば、被験体がクリプトコッカス種抗原に対して陽性であるか否かを確認することにより検出することができる。かかる試験を行うためのキットは、例えば、IMMY Inc.(オクラホマ州ノーマン)から市販されている。
【0026】
通例、本開示の抗真菌コクリエートは、クリプトコッカス・ネオフォルマンスに効果的である。C.ネオフォルマンスは当初、被膜の凝集反応に基づき血清型A、B、C、D、及びADに分類されていた。最近になって、C.ネオフォルマンスは、2つの変型:C.ネオフォルマンス変種グルビ(var. grubii)(以前のA型)及びC.ネオフォルマンス変種ネオフォルマンス(以前のD型)に分けられている。C.ネオフォルマンスは、世界の殆どの温帯地域で見られる遍在病原体であるが、腐敗性有機物、及び多くの土壌型に一般的に見られ、特に動物及び鳥類の糞に豊富に含まれている。
【0027】
幾つかの実施形態では、本開示の抗真菌コクリエートは、クリプトコッカス・ガッティ(以前のB型及びC型)に効果的である。C.ガッティは、VGI、VGII、VGIII、及びVGIVを含む4つの分子型に分けることができる。VGII型をVGIIa亜型、VGIIb亜型、及びVGIIc亜型に更に分けることができる。C.ガッティは、カナバニン-グリシン-ブロモチモール(CGB)寒天上にて単離株を平板培養することにより、C.ネオフォルマンスと容易に区別することができる。CGB寒天は、この生物の存在下にて青色に変わる。C.ガッティは昔から、熱帯地域及び亜熱帯地域で見られている。
【0028】
幾つかの実施形態では、本開示のクリプトコッカス属の一種、例えばC.ガッティ又はC.ネオフォルマンス、より典型的にはC.ガッティ、例えばVGIIa等のVGII系譜のC.ガッティは、免疫応答性被験体に感染し得る。本明細書中で使用される場合、免疫応答性被験体は、抗原に曝露した後に正常な免疫応答を生じる能力を持つ、被験体、通例、哺乳動物被験体、例えばヒト被験体である。しかしながら、より典型的には、本開示のクリプトコッカス属の一種は、免疫不全被験体に感染し得る。免疫不全被験体は、HIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有している被験体、通例、哺乳動物被験体、例えばヒト被験体を含むか、又は臓器移植受容者、糖質コルチコステロイド等の免疫抑制剤、細胞毒性化学療法、及び/又はTNF-α阻害剤を受けている被験体である。
【0029】
幾つかの実施形態では、クリプトコッカス属の一種により、被験体がクリプトコッカス肺疾患になり得る。クリプトコッカス肺疾患の症状は、無症候性の気道定着から急性呼吸窮迫症候群に及ぶ。肺クリプトコッカス症の被験体は、発熱、不快感、僅かな痰を伴う咳、及び/又は胸膜痛を含む軽度から中等度の症状を呈し得る。幾つかの実施形態では、肺クリプトコッカス症の被験体は肺炎を呈し得る。幾つかの実施形態では、肺疾患は肺外疾患の非存在下にて生じ得る。
【0030】
幾つかの実施形態では、クリプトコッカス属の一種は、肺から広がり、被験体の皮膚、前立腺、骨の髄腔、及び/又は中枢神経系(CNS)に感染し得る。通例、クリプトコッカス属の一種はCNSに感染する。幾つかの実施形態では、クリプトコッカス属の一種により、CNSクリプトコッカス症、例えば髄膜炎及び/又は髄膜脳炎が起こる。これらの感染形態は、適切な治療なしには常に致死的であり、症状が現れてから2週間から数年で死に至り得る。クリプトコッカス髄膜炎及び髄膜脳炎の最も一般的な症状は、頭痛、並びに人格変化、精神錯乱、嗜眠及び昏睡を含む精神状態の変化である。
【0031】
本開示の1つ以上のコクリエートは、1つ以上の抗真菌化合物、例えば少なくとも2つの抗真菌化合物、例えば少なくとも3つの抗真菌化合物又は例えば少なくとも4つの抗真菌化合物と結び付いているか又はこれらの抗真菌化合物で充填されている。幾つかの実施形態では、1つ以上の抗真菌化合物は、殺真菌化合物、例えばアムホテリシンB又は静真菌化合物、例えばフルコナゾール及び/又は5-フルシトシンである。本明細書中で使用される場合、「殺真菌」化合物は、真菌の生育を単に妨げるものではなく、真菌を死滅させる抗真菌化合物である。これに対して、本明細書中で使用される場合、「静真菌」化合物は、真菌の生育を妨げるが、真菌を死滅させない抗真菌化合物である。
【0032】
通例、本開示のコクリエートは、1つ以上のポリエン、アゾール、及び/又はピリミジン類似体と結び付いているか又はこれらで充填されている。通例、ポリエンはアムホテリシンBである。幾つかの実施形態では、アゾールは、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール、及び/又はボリコナゾールである。より典型的には、アゾールはフルコナゾールである。通例、ピリミジン類似体は5-フルシトシンである。
【0033】
幾つかの実施形態では、本コクリエート組成物への配合について、他の抗真菌化合物が企図される。かかる他の抗真菌化合物としては、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定マンノプロテイン等の細胞壁成分の合成を阻害することが可能なもの、例えばクリプトコッカス属の一種に対してin vitro活性を有する経口活性分子であるE1210が挙げられる。他の実施形態では、抗真菌化合物は、エルゴステロール合成阻害剤、例えばVT-1129であり、経口で利用可能であり、良好なCNS浸透を示し、クリプトコッカス属の一種の感染のマウスモデルにおいて殺真菌性である。
【0034】
他の実施形態では、抗真菌化合物は、クリプトコッカス属の一種に対してフルコナゾールと相加又は相乗活性を示すことが知られている経口で利用可能な化合物である。かかる抗真菌化合物としては、アミオダロン(心臓の抗不整脈薬)、フェノチアジン(抗精神病薬)、及びタモキシフェン(エストロゲンアンタゴニスト)が挙げられる。
【0035】
幾つかの実施形態では、本コクリエート組成物の少なくとも2つの抗真菌化合物はそれぞれ別個のコクリエートにある。他の実施形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物はそれぞれ同じコクリエートにある。しかしながら、より典型的には、少なくとも2つの抗真菌化合物の1つだけがコクリエート化している。更により典型的には、コクリエート化抗真菌化合物はポリエン、例えばアムホテリシンBであり、第2の、第3の又はそれ以降の抗真菌化合物が非コクリエート化している。
【0036】
通例の実施形態では、本コクリエート組成物には、コクリエート化アムホテリシンBと、非コクリエート化アゾール及び/又は非コクリエート化ピリミジン類似体とが含まれている。通例、非コクリエート化アゾールはフルコナゾールであり、非コクリエート化ピリミジン類似体は5-フルシトシンである。更により典型的には、本コクリエート組成物には、コクリエート化アムホテリシンBと非コクリエート化5-フルシトシンとが含まれている。
【0037】
幾つかの実施形態では、本コクリエート組成物は、粘膜投与、典型的には経口及び/又は鼻内投与、より典型的には経口投与に合わせて配合されている。しかしながら、静脈内、皮下、腹腔内及び髄腔内投与に合わせて配合されたコクリエート組成物も企図される。
【0038】
コクリエート及び該コクリエートを作製する方法
コクリエートは、ホスファチジルセリン等の負に帯電した脂質と、カルシウムイオン等の二価カチオンとの相互作用の際に自然形成される無水の安定した多層脂質結晶である(例えば、米国特許第4,078,052号、同第5,643,574号、同第5,840,707号、同第5,994,318号、同第6,153,217号、同第6,592,894号、並びに国際公開第2004/091572号、国際公開第2004/091578号、国際公開第2005/110361号、国際公開第2012/151517号、及び国際公開第2014/022414号、米国特許出願公開第2014/220108号及び米国特許出願公開第2010/0178325号を参照されたい。これらの文献はそれぞれ引用することにより完全に本明細書の一部をなす)。通例、これらは結晶コクリエートと称される。
【0039】
結晶コクリエートは、内部に水性空間を有さずに、螺旋状に又は積層シートとして巻かれた、大きく連続的で中実のリン脂質二重膜シート又は層からなる独特な多層構造を有する(図1)。この独特な構造は、「コクリエート化された」会合分子に分解からの保護を与える。コクリエート構造全体は、一続きの中実の層であるので、コクリエート構造内部にある成分は、コクリエートの外層が過酷な環境条件又は酵素に曝され得るとしても無傷のままである。血清中及び粘膜分泌液中のin vivoでの二価カチオンの濃度は、コクリエート構造が維持されるような濃度である。したがって、コクリエート会合分子の大部分は、中実の安定な不透性の構造の内側層中に存在する。しかしながら、細胞内部では、カルシウム濃度が低いことにより、コクリエート結晶の開放が引き起こされ、コクリエートに製剤化された分子が放出される(図2)。したがって、コクリエート製剤は、粘膜分泌液、血漿及び胃腸液を含む生理学的流体中では無傷のままであり、それにより、粘膜投与、例えば経口投与又は経鼻投与を含む多くの投与経路による生物学的に活性な化合物の送達が媒介される。
【0040】
典型的なコクリエート構造体には、交互二価カチオンと、少なくとも1つの負に帯電したリン脂質を含むリン脂質二重層とを含む脂質積層が含まれる。通例、抗真菌剤、例えばアムホテリシンB(図3)等のカーゴ部がコクリエートの脂質積層内に封じ込められている。
【0041】
コクリエートは既知の方法を用いて作製することができる。1つの典型的な実施態様では、米国特許出願公開第2014/220108号に記載の方法を用いて、本開示のコクリエートを作製する。この文献はその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。このプロセスの要約を図4に示す。この方法では、アムホテリシンB等の疎水性抗真菌化合物を溶媒、例えばジメチルスルホキシドに溶解し、例えば0.22μmのフィルターを通して濾過し、例えば200ミリリットルの滅菌水中で2000ミリグラムの50%ダイズホスファチジルセリン(PS)リポソームと合わせ(PSリポソームを初めに、例えば5μm、0.8μm、及び0.45μmのフィルターに通して濾過する)、AmB等の抗真菌薬を含有するリポソームが形成される。得られた混合物に、多価カチオン又は二価カチオン等のカチオンを添加することができる。多価カチオン又は二価カチオンの添加により、リポソームの崩壊及びカチオンでキレート化されたリン脂質二重層のシートの形成が起こり、このシートを巻き上げて又は積層して、AmB等の抗真菌薬を含有するコクリエートを形成する。AmB含有コクリエート等の抗真菌剤含有コクリエートを凍結乾燥にて乾燥することができる。滅菌水を乾燥粉末である抗真菌コクリエートに添加して、懸濁液を調製することができる。この懸濁液は光のない状態にて4℃で保存することができる。
【0042】
抗真菌薬を含有するコクリエートを作製する他の方法としては、トラッピング高pH法、トラッピングフィルム法及びヒドロゲル法が挙げられる。トラッピング高pH法では、脂質粉末と抗真菌化合物、例えばAmBとを、例えば10:1の脂質/抗真菌薬モル比にて、例えば滅菌ポリプロピレンチューブ内で混合する。バッファー、例えばTES[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチル-2-アミノメタンスルホン酸](pH7.4)を添加する。ボルテックスの後に多重膜リポソームが形成される。次いで例えば1N NaOHを添加することで、pHを例えば11.5に上げ、抗真菌化合物、例えばAmBを可溶化する。AmB結晶が存在しないこと及びリポソームが存在することは、位相差及び偏光光学顕微鏡検査を用いてモニタリングすることができる。多価カチオン又は塩化カルシウム等の二価カチオンを、例えば2:1の脂質/カチオンモル比にて抗真菌リポソーム懸濁液にゆっくりと添加し、コクリエートを形成する。次いで外部pHをpH7に調整することができる。
【0043】
トラッピングフィルム法では、抗真菌化合物、例えばAmBを、短時間超音波処理をしながら、溶媒、例えばメタノールに溶解し、その溶液をクロロホルム中の脂質に添加する。抗真菌薬、例えばAmBは、クロロホルム/メタノール混合物に容易に溶解可能である。次いでロータリーエバポレーターを使用して、混合物を乾燥させ、フィルムにし、減圧(1バール)下にて例えば35℃~40℃で穏やかに温めることができる。次に乾燥した脂質フィルムを脱イオン水で水和させ、超音波処理することができる。抗真菌リポソームのサイズはおよそ50ナノメートルとする。コクリエートを形成するために、多価又は二価カチオン溶液、例えば塩化カルシウム溶液をリポソーム懸濁液にゆっくりと添加し、コクリエートを形成する。
【0044】
ヒドロゲル法を用いて抗真菌コクリエートを調製するために、AmB等の抗真菌化合物をメタノールに溶解し、クロロホルム中の脂質に、例えば10:1のモル比にて添加した後、ロータリーエバポレーターを使用して、混合物を乾燥させ、薬物-脂質フィルムにする。次いで、フィルムを脱イオン水で水和することができ、抗真菌化合物を含有する小さいリポソームが得られるまで、薬物-脂質懸濁液を超音波処理する。次に、抗真菌リポソーム懸濁液を、例えば2/1(v/v)のデキストラン/リポソームの懸濁液中にて、例えば40%(w/w)のデキストラン-500000と混合することができる。それからシリンジを用いて、磁気撹拌しながら(800rpm~1000rpm)、この混合物を例えば15%(w/w)のPEG-8000に注入する。PEG連続相に分散した抗真菌リポソーム/デキストラン液滴の水性-水性エマルションが得られる。続いて、多価又は二価カチオン溶液、例えば塩化カルシウム溶液をエマルションに添加する。撹拌を続けて、サイズの小さい抗真菌コクリエートをゆっくりと形成させ、このコクリエートをデキストラン液滴内に封じ込める。そして、例えば1mM CaCl及び150mM NaClを含有する洗浄バッファーを添加することでポリマーを洗浄する。
【0045】
当業者によって認識されるように、pH、塩濃度、かき混ぜ方法及び速度、カチオンの種類、濃度、及び添加速度、脂質組成、濃度、並びに脂質と他の材料との比率等を含む多くのパラメーターがこの配合物に影響を及ぼし、特定の材料のコクリエート化を最適なものにするためにこれらのパラメーターを変更することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、5-FC等の親水性抗真菌化合物、又はフルコナゾール等の親水性ドメインを含有する抗真菌化合物をコクリエートに配合させることもできる。かかる化合物をコクリエートに組み込む方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/220108号に記載されている。いずれの特定の理論に束縛されることを望むものではないが、親水性分子又は親水性ドメインを有する巨大分子、例えば本開示の抗真菌化合物を含む対象の有効医薬成分(API)は、APIを「ラフト(raft)」のように働く脂質ドメインと結び付けることにより、改善した形でコクリエートへと配合することができ、無傷のままでコクリエート結晶マトリクス内に埋め込まれると考えられる。かかる脂質としては、当該技術分野で既知であり、本明細書に記載されているような「中性脂質」が挙げられる。
【0047】
典型的な実施態様では、リポソームを崩壊させコクリエートにするのに使用することができる、本明細書に記載の多価カチオンは、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、及びバリウムのイオン等の二価の金属カチオンである。より典型的な実施態様では、二価の金属カチオンはカルシウムイオンである。
【0048】
幾つかの実施態様では、抗真菌剤と脂質との比率(wt/wt)は、1:1~1:50の範囲であるか、又は例えば1:2、1:3、1:4、1:6、1:8、1:10、1:12、1:15、1:20、及び1:25の間の任意の範囲、通例1:1~1-1:20、例えば1:2.5~1:10、通例1:10である。
【0049】
コクリエートの形成に際して使用されるリポソームは、多重ラメラ小胞(MLV)又は小さい単ラメラ小胞(SUV)を含む単ラメラ小胞(ULV)であってもよい。これらのリポソーム溶液中の脂質の濃度は、約0.1mg/ml~500mg/mlとすることができる。典型的には、脂質の濃度は約0.5mg/ml~約50mg/ml、より典型的には約1mg/ml~約25mg/mlである。
【0050】
サイズ調整剤は、コクリエートの製造方法の間に導入することができる。本明細書で使用されるサイズ調整剤とは、コクリエートの粒子サイズを減少させる作用物質を指す。本明細書で使用される場合に、「粒子サイズ」という用語は、粒径を指すか、又は粒子が球形ではない場合には、粒子の一方向の最長範囲を指す。コクリエートの粒子サイズは、サブミクロン領域の粒子サイズ分析器のような従来の方法を使用して測定することができる。或る特定の実施形態では、サイズ調整剤は、脂質アンカー型ポリヌクレオチド、脂質アンカー型糖(糖脂質)又は脂質アンカー型ポリペプチドである。他の実施形態では、サイズ調整剤は、胆汁酸塩、例えばオキシコール酸塩、コール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩又はリトコール酸塩である。胆汁酸塩は、胆汁酸とカチオン、通常はナトリウムイオンとが化合したものである。胆汁酸は、主として哺乳動物の胆汁中に見られるステロイド酸であり、市販されている。
【0051】
或る特定の実施形態では、サイズ調整剤を沈殿コクリエートの形成前に脂質又はリポソームに添加する。例えば、一実施形態では、サイズ調整剤をリポソーム懸濁液に導入し、続いてコクリエートをそれから形成する(例えば、カチオンの添加又は透析による)。代替的には、サイズ調整剤を薬理活性物質の添加前又は添加後に脂質溶液に導入することができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、本発明のコクリエートは、1つ以上の凝集阻害剤を任意に含み得る。本明細書中で使用される場合、「凝集阻害剤」という用語は、コクリエートの凝集を阻害する作用物質を指す。凝集阻害剤は通例、少なくともコクリエートの表面に存在し、コクリエートの表面のみに存在し得る(例えば、コクリエート形成後に凝集阻害剤を導入する場合)。凝集阻害剤は、コクリエート形成の前、その後、又はその間に添加することができる。当業者であれば、通常の実験を行うだけで、所望のサイズのコクリエートを形成するのに必要な凝集阻害剤の量を決定することが容易に可能であろう。
【0053】
本開示に従って使用することができる好適な凝集阻害剤としては、下記のカゼイン、カッパ-カゼイン、ミルク、アルブミン、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミン、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、プルラン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、トラガカントゴム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシポリマー、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、カラギーナン、カルナウバ蝋、シェラック、ラテックスポリマー、ミルクタンパク質単離物、ダイズタンパク質単離物、乳清タンパク質単離物、及びそれらの混合物の少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
任意の好適な脂質をコクリエートの作製に使用することができる。一実施形態では、脂質は1つ以上の負に帯電した脂質を含む。本明細書で使用される場合、「負に帯電した脂質」という用語には、酸性、塩基性又は生理的pHの水溶液中で形式負電荷を有する頭部基を有する脂質が含まれ、双性イオン頭部基を有する脂質も含まれる。一実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質である。
【0055】
コクリエートは、負に帯電していない脂質(例えば、陽性及び/又は中性脂質)を含んでいてもよい。コクリエートは相当量の負に帯電した脂質を含むのが通例である。或る特定の実施形態では、脂質の大部分が負に帯電している。一実施形態では、脂質は、リン脂質等の、少なくとも50%の負に帯電した脂質を含む脂質の混合物である。別の実施形態では、脂質は、リン脂質等の、少なくとも75%の負に帯電した脂質を含む。他の実施形態では、脂質は、リン脂質等の、少なくとも85%、90%、95%又は98%の負に帯電した脂質を含む。更に他の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、コクリエート中の全脂質の30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%又は45%~50%を占める。或る特定の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、コクリエート中の総脂質の40%~60%又は45%~55%を占める。幾つかの実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、コクリエートの非疎水性ドメイン成分中の総リン脂質の30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%、又は45%~50%を占める。或る特定の実施形態では、負に帯電した脂質(例えば、リン脂質)は、コクリエートの非疎水性ドメイン成分中の総脂質の40%~60%又は45%~55%を占める。幾つかの実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質であり、コクリエート中の又はコクリエートの非疎水性ドメイン成分中の総リン脂質の30%~70%、35%~70%、40%~70%、45%~65%、45%~70%、40%~60%、50%~60%、45%~55%、45%~65%、又は45%~50%を占める。幾つかの実施形態では、負に帯電した脂質はリン脂質であり、コクリエート中の又はコクリエートの非疎水性ドメイン成分中の総リン脂質の40%~60%又は45%~55%を占める。
【0056】
負に帯電した脂質としては、卵ベースの脂質、ウシベースの脂質、ブタベースの脂質、植物ベースの脂質、又は合成的に生成された脂質を含む他の供給源由来の類似の脂質が挙げられ得る。負に帯電した脂質として、ホスファチジルセリン(PS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)及び/又はホスファチジルグリセロール(PG)、及び/又はこれらの脂質の1つ以上と他の脂質との混合物を挙げることができる。付加的又は代替的には、脂質として、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ジホスファチジルグリセロール(DPG)、ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)等を挙げることができる。別の実施形態では、ホスファチジルセリンは、卵由来又はウシ由来のホスファチジルセリンである。
【0057】
ダイズ脂質を含有するコクリエート
幾つかの典型的な実施形態では、本明細書の下記のジオードコクリエートを含むコクリエートを、マメ科植物ベースのリン脂質、より典型的にはダイズベースの脂質を用いて調製する。かかるダイズベースの脂質は天然又は合成のものであってもよい。更により典型的には、ダイズベースの脂質はダイズリン脂質、例えばダイズホスファチジルセリンであり、コクリエートの脂質成分の40重量%~74重量%の量である。代替的には、ダイズホスファチジルセリンは、コクリエートの脂質成分の約40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%若しくは70重量%、又はそれらの任意の増分値であり得る。全ての値、並びにこれらの値及び範囲の間の範囲は本開示に包含される意図があると理解される。典型的な実施形態では、リン脂質は45%~70%のダイズホスファチジルセリンを含む。より典型的な実施形態では、リン脂質は45%~55%のダイズホスファチジルセリンを含む。
【0058】
ダイズホスファチジルセリンは、Avanti Polar Lipids, Inc.(アラバマ州アラバスター)から市販されている。代替的には、ダイズホスファチジルセリンは、既知の標準的な精製法に従って、幾つかのダイズリン脂質の混合物であるダイズリン脂質組成物から精製することができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、中性脂質をダイズホスファチジルセリンと併用することで、本コクリエートが作製される。本明細書中で使用される場合、「中性脂質」という用語は、生理学的pHにて非帯電又は中性の両性イオン形態のいずれかで存在する多くのあらゆる脂質種を含み、このためアニオン機能を欠いた脂質群に含まれる。かかる脂質としては、例えばジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載のコクリエート組成物に使用される中性脂質の選択は概して、例えば、コクリエートのサイズ及び安定性を考慮して導かれる。様々な鎖長及び飽和度の多様なアシル鎖基を有する脂質が入手可能であるか、又はそれらの脂質を既知の技法により単離若しくは合成することができる。一群の実施形態では、C14~C22の範囲の炭素鎖長を有する飽和脂肪酸を含有する脂質を使用することができる。別の群の実施形態では、C14~C22の範囲の炭素鎖長を有するモノ又はジ不飽和脂肪酸を有する脂質を使用することができる。更に別の群の実施形態では、C~C12の範囲の炭素鎖長を有するモノ又はジ不飽和脂肪酸を有する脂質を使用することができる。さらに、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖との混合物を有する脂質を使用することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、本開示で使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、DPPC、POPC、又は任意の関連するホスファチジルコリンである。本開示に有用な中性脂質は、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、又はセリン及びイノシトール等の他の頭部基を有するリン脂質で構成されていてもよい。
【0061】
典型的な実施態様では、純度99.9%のジオレオイルホスファチジルセリン、純度99.9%のダイズホスファチジルセリン、75%のダイズホスファチジルセリン、及び50%のダイズホスファチジルセリンを用いて、コクリエートが製造される。純度99.9%のホスファチジルセリンの脂質組成は、通例、限定するものではないが、スフィンゴミエリン及び/又はホスファチジルコリンを含む中性脂質の添加により変更される。より純度が低いホスファチジルセリン(例えば、50%のダイズホスファチジルセリン)を出発材料として使用する場合、より純度が低いホスファチジルセリンを抽出工程に供し、ヌクレアーゼ等の不所望の不純物を取り除くことができる。
【0062】
ジオードコクリエート
幾つかの実施態様では、本開示のコクリエートは、例えば、米国特許出願公開第2013/0224284号に記載されているようなジオードコクリエート、又はジオデートである。この文献の開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。ジオードコクリエートは、負に帯電したリン脂質を含む脂質単分子層を更に含み、ここで、脂質単分子層は、油等の疎水性ドメインと、疎水性ドメイン内に分散されている、本明細書に記載の抗真菌化合物等のカーゴ部とを囲んでいる。脂質単分子層は、ジオードコクリエートの脂質積層内に封じ込められている。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「疎水性ドメイン」は、周囲に脂質単分子層を形成することが可能なように本質的に十分疎水性である構造である。疎水性ドメインとしては、通例、AmB等の本開示の抗真菌化合物等のカーゴ部に結び付いた、油又は脂肪等の疎水性構造が挙げられる。或る特定の実施形態では、疎水性ドメイン(HD)と、ジオードコクリエートのリン脂質成分(PPLGD)との間の比率HD:PPLGD、又はヒマシ油ドメイン(COD)と、ジオードコクリエートのリン脂質成分(PPLGD)との間の比率COD:PPLGDは、1:20以下、1:15以下、1:10以下、1:8以下、1:6以下、1:5以下、1:4以下、1:3.5以下、1:3以下、1:2.75以下、1:2.5以下、1:2.25以下、1:2以下、1:1.75以下、1:1.5以下、1:1.25以下、1:1以下である。
【0064】
図5に、ジオードコクリエートをどのようにして作製することができるかの例示的な概略図を示す。この例示的な方法では、リン脂質(開環として表される)を油等の疎水性ドメイン(斜線の入った円)と組み合わせ、混合することで、リポソームと、疎水性ドメインを囲む脂質単分子層とを含む安定したエマルションを形成する。抗真菌化合物等のカーゴ部を疎水性ドメイン内に分散させることができる。疎水性ドメインは、その表面に埋め込まれたリン脂質を有する。いずれの理論により束縛されることを意図するものではないが、リン脂質の疎水性アシル鎖が疎水性ドメイン内にあることにより、リン脂質の頭部基のコーティングに起因して、親水性表面を有する疎水性ドメインが生じ、安定したエマルションが形成されると考えられる。ホスファチジルセリンのようにリン脂質が負に帯電している場合、カルシウムイオン等の二価カチオンを加えることで、二価カチオンとリン脂質二重層とを交互に含む結晶構造(又は脂質積層)の形成が誘導される。脂質積層は網掛けを用いて表されている。ジオードコクリエートでは、疎水性ドメインを囲む脂質単分子層は、「ジオード」と同様に、結晶マトリクス内に「覆われている(encrusted)」又は「閉じ込められている」。
【0065】
医薬組成物
本明細書に記載のコクリエート組成物は、医薬組成物として調製することができる。本明細書に開示される医薬組成物の好適な調製形態としては、例えば錠剤、カプセル、軟カプセル、顆粒、粉末、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、単位投薬形態、リング、フィルム、坐剤、溶液、クリーム、シロップ、経皮パッチ、軟膏及びゲルが挙げられる。しかしながら、通例、コクリエートは、粘膜投与、例えば経口投与又は鼻内投与、通例経口投与に合わせて調製される。
【0066】
医薬組成物は他の薬学的に許容可能な賦形剤、例えば様々なpH及びイオン強度の緩衝液(例えばトリス-HCl、酢酸、リン酸)、表面への吸収を阻止するアルブミン又はゼラチン等の添加剤、プロテアーゼ阻害剤、透過促進剤、可溶化剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリセロール)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えばカルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えばアスパルテーム、クエン酸)、保存料(例えばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、流動助剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えばフタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えばカルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)、コーティング及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル)、アジュバント、液体配合物の薬学的に許容可能な担体、例えば水性(生理食塩水及び緩衝媒体を含む水、アルコール溶液/水溶液、エマルション又は懸濁液)又は非水性(例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びオレイン酸エチル等の注射用有機エステル)溶液、懸濁液、エマルション又は油、並びに塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液及び固定油を含むが、これらに限定されない非経口ビヒクル(皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、くも膜下注射又は筋肉内注射用)を含み得る。
【0067】
或る特定の実施形態では、上記医薬組成物は、塩、例えばNaCl又は胆汁酸塩、例えばオキシコール酸塩、コール酸塩、ケノデオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、タウロケノデオキシコール酸塩、グリコケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩又はリトコール酸塩を含む。胆汁酸塩は、胆汁酸とカチオン、通常はナトリウムイオンとが化合したものである。胆汁酸は、主として哺乳動物の胆汁中に見られるステロイド酸であり、市販されている。一実施形態では、胆汁酸塩は、コール酸塩を含む。別の実施形態では、胆汁酸塩は、デオキシコール酸塩を含む。更に別の実施形態では、胆汁酸塩は、コール酸塩及びデオキシコール酸塩を含む。別の実施形態では、胆汁酸塩は、コール酸塩及びデオキシコール酸塩からなる。
【0068】
或る特定の実施形態では、NaClの濃度は、1mM~1M、1mM~0.5M、1mM~0.1M、1mM~50mM、10mM~100mM、10mM~50mM、0.1M~1M、0.1M~0.5M、又は0.5M~1Mである。或る特定の実施形態では、胆汁酸塩の濃度は、1mM~100mM、1mM~50mM、1mM~25mM、1mM~10mM、1mM~5mM、0.1mM~5mM、0.1mM~1mM、又は0.1mM~0.5mMの胆汁酸塩である。
【0069】
これらの賦形剤は例として提示され、本明細書に挙げられるものと同じ化学的特徴をもたらし得る他の又は異なる賦形剤が存在することが当業者には既知である。
【0070】
投与量及び投与
本明細書に開示されるコクリエート組成物を含む医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように配合される。投与を達成する方法は当業者に既知である。この方法としては、例えばくも膜下、静脈内、血管内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、脳室内、硬膜外(intraepidural)等の非経口経路による注射、及び経口、経鼻、眼、直腸又は局所投与が挙げられる。通例、コクリエートは、例えば、懸濁液を投与することにより鼻内投与されるか、又は例えば、懸濁液、錠剤、カプセル、ソフトゲル、若しくは他の経口剤形を投与することにより経口投与される。
【0071】
或る特定の実施形態では、抗真菌薬(例えば、コクリエート化アムホテリシンB、非コクリエート化5-FC及び/又は非コクリエート化フルコナゾール)を0.1mg/kg~20mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~15mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、10mg/kg~13mg/kg、10mg/kg~20mg/kg、5mg/kg~25mg/kg、1mg/kg~30mg/kg、又は2.5mg/kgの投与量で投与する。例えば、コクリエート化アムホテリシンBを0.1mg/kg~10mg/kgの範囲、例えば1mg/kgの量で投与することができる。代替的には、抗真菌薬を、約200mg/日~1000mg/日、400mg/日~1000mg/日、200mg/日~800mg/日、300mg/日~800mg/日、400mg/日~800mg/日、500mg/日~700mg/日、200mg/日~2000mg/日、100mg/日~4000mg/日、100mg/日~600mg/日、200mg/日~600mg/日、400mg/日~600mg/日、又は300mg/日~700mg/日の固定された投与量で投与することができ、この投与量には、限定するものではないが、約400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1500mg、2000mg、2500mg、3000mg、3500mg、又は4000mgが含まれる。例えば、コクリエート化アムホテリシンBを、2週間に亘り0.1mg/kg/日~4mg/kg/日の範囲、例えば0.2mg/kg/日、0.4mg/kg/日、0.6mg/kg/日、0.8mg/kg/日、1.0mg/kg/日、1.2mg/kg/日、1.4mg/kg/日、1.6mg/kg/日、2mg/kg/日、3mg/kg/日、4mg/kg/日の量で投与することができる。より低い毒性に起因して、コクリエート化抗真菌薬を、静脈内投与する抗真菌薬よりも高頻度で又はより長期間投与することができる。或る特定の実施形態では、コクリエート化抗真菌薬を1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回投与することができる。別の実施形態では、コクリエート配合物を週1回、週2回、週3回、又は週4回投与する。一実施形態では、コクリエート化抗真菌薬を週2回又は3回投与することができる。他の実施形態では、コクリエート配合物を、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、又は12週間、毎日投与する。別の実施形態では、コクリエート配合物を、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、又は少なくとも6ヶ月、毎日投与する。通例、コクリエート組成物を2週間投与する。
【0072】
治療方法
本開示の一態様は、被験体において、クリプトコッカス属の一種による感染症を治療又は予防する方法であって、該方法が、コクリエート組成物を含む配合物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、該コクリエート組成物が少なくとも2つの抗真菌化合物を含み、該少なくとも2つの抗真菌化合物が、アムホテリシンB、5-フルシトシン、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及び/又はボリコナゾールから選択され、該少なくとも2つの抗真菌化合物の少なくとも1つがコクリエートとして配合されている、方法に関する。
【0073】
本方法で用いられるコクリエートは、本明細書に記載される脂質及び方法を用いて調製することができる。幾つかの実施形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物が同じコクリエート内に配合されている。他の実施形態では、少なくとも2つの抗真菌化合物が異なるコクリエート内に配合されている。通例、少なくとも2つの抗真菌化合物はアムホテリシンB及び5-フルシトシンであり、アムホテリシンBがコクリエートとして配合されている。
【0074】
幾つかの実施形態では、感染症は皮膚、肺、前立腺、骨及び/又は中枢神経系(CNS)を冒すものである。通例、感染症は髄膜等のCNSを冒すものである。幾つかの実施形態では、感染症はクリプトコッカス髄膜脳炎又はクリプトコッカス髄膜炎である。幾つかの実施形態では、クリプトコッカス属の一種により引き起こされる感染症は、クリプトコッカス・ネオフォルマンスにより引き起こされる。他の実施形態では、感染症はクリプトコッカス・ガッティにより引き起こされる。
【0075】
投与は経口投与、鼻内投与、髄腔内投与、又は静脈内投与であり得る。しかしながら、経口投与が最も典型的である。幾つかの実施形態では、コクリエート組成物を少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも28日間、毎日投与する。
【0076】
幾つかの実施形態では、コクリエート組成物の抗真菌化合物は脳へと送達される。幾つかの実施形態では、コクリエート組成物の抗真菌化合物は経口投与後に脳へと送達される。幾つかの実施形態では、本開示のコクリエート組成物には、真菌のコロニー形成単位(CFU)を、少なくとも5%、例えば少なくとも8%低減する能力がある。より好ましくは、AmBコクリエートは、脳内のCFUを、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも25%、更に好ましくは50%、75%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は100%低減することができる。これらの範囲及び値の間にある個々の値及び範囲は全て、本発明の範囲内である。コロニー形成単位の低減はin vivo又はin vitroのものであり得る。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「被験体」という用語は、限定するものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、又は任意の他の哺乳動物を含むあらゆる動物を指す。一実施形態では、被験体は霊長類である。別の実施形態では、被験体はヒトである。
【0078】
幾つかの実施形態では、被験体は免疫不全被験体である。例えば、被験体はHIV/AIDS、リンパ腫、肝硬変を有し得るか、又は被験体は臓器移植を受けている場合がある。他の実施形態では、被験体は免疫応答性個体である。
【0079】
本開示はまた、本明細書に記載のクリプトコッカス属の一種による感染症を治療又は予防する方法であって、該方法が、本明細書に記載のコクリエートを含む配合物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、該コクリエートが抗真菌化合物を含み、該抗真菌化合物が、5-フルシトシン、フルコナゾール、ケトコナゾール、ラブコナゾール、アルバコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾール、イサブコナゾール及び/又はボリコナゾールの少なくとも1つから選択される、方法を提供する。
【0080】
本方法に用いられる他の企図される抗真菌化合物としては、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)固定マンノプロテイン等の細胞壁成分の合成を阻害することが可能なもの、例えばE1210が挙げられる。他の実施形態では、該方法に用いられる抗真菌化合物は、エルゴステロール合成阻害剤、例えばVT-1129であり、経口で利用可能であり、良好なCNS浸透を示し、クリプトコッカス属の一種の感染のマウスモデルにおいて殺真菌性である。
【0081】
他の実施形態では、抗真菌化合物は、クリプトコッカス属の一種に対してフルコナゾールと相加又は相乗活性を示すことが知られている経口で利用可能な化合物である。かかる抗真菌化合物としては、アミオダロン(心臓の抗不整脈薬)、フェノチアジン(抗精神病薬)、及びタモキシフェン(エストロゲンアンタゴニスト)が挙げられる。
【0082】
本明細書中で使用される場合、クリプトコッカス属の一種に起因する感染症の「予防」は、感染症の再発の予防を含む。感染症の再発の予防についての幾つかの実施形態では、本コクリエート組成物はAmBを含有しない。幾つかの実施形態では、クリプトコッカス属の一種に起因する感染症の予防は、クリプトコッカス種抗原に対して陽性である(例えばIMMY Inc.社(オクラホマ州ノーマン)のクリプトコッカス抗原試験を用いる)、哺乳動物又はヒトの治療を含む。
【0083】
毒性
AmB等のコクリエート化抗真菌薬の経口投与は、非コクリエート化抗真菌薬の非経口投与に比べて毒性の低減を示す。AmB等の非コクリエート化非経口抗真菌薬で治療した被験体は、例えば、使用に関連する潜在腎毒性のために緻密な臨床観察下になければならない。
【0084】
コクリエート配合物の一部としてのAmB等の抗真菌剤の投与により、この抗真菌薬に関連する毒性が低減し、より高用量のAmBの投与が可能となる。AmB等のコクリエート化抗真菌薬についてのより低い毒性により、かかる抗真菌薬を改善された有効性及び低減された毒性にてより低用量で経口送達させることが可能となる。代替的には、より低い毒性に起因して、コクリエート化抗真菌薬を、より低い有害作用リスクにてより高頻度及び/又はより高用量で投与することができる。
【実施例
【0085】
実施例1.材料及び方法
抗真菌薬
コクリエート化アムホテリシンB(CAMB)の配合物(単独又は5-フルシトシン又はフルコナゾールとの組合せ)及び投与経路を評価し、FUNGIZONE(商標)と比較して、クリプトコッカス接種後の生存により測定されるように、どの処理がマウスにおいてC.ネオフォルマンスの排除に最も有効であるかを調べた。評価した配合物、投与量及び投与経路を下記表1~表3に記載する。
【0086】
CAMBは、米国特許出願公開第2014/0220108号及び図4に記載されるように適正製造基準(GMP)を用いて調製した。同様にGMPに従って製造された追加のCAMB配合物も評価し、これらの配合物には本明細書にて上記されたようにリポソーム形成後に超音波処理を施し、コクリエートのサイズを更に小さくした配合物、及びコクリエート調製中に凝集阻害剤(ウシ血清アルブミン又は脂肪分の少ない(light)クリーム及びミルク)又はサイズ選択剤(例えば、デオキシコール酸塩)を含むような変更を行った配合物が含まれた。評価した他のCAMB GMP配合物には、10:1ではなく2.5:1の脂質とアムホテリシンBとの比を用いて調製したコクリエートを含有する配合物が含まれた。表2及び表3を参照されたい。
【0087】
5-フルシトシン(5-FC)、CFNO(Sigma Aldrich, Inc.、ミズーリ州セントルイス)、及びFUNGIZONE(商標)(アムホテリシンBデオキシコール酸塩、National Institutes of Health Department of Veterinary Resources(メリーランド州ベセスダ)提供)を製造業者の使用説明書に従って再構成し、滅菌水で希釈した。FUNGIZONE(商標)は新たな再構成バイアルを用いて試験の間毎週交換し、毎回使用した後に冷蔵した。フルコナゾール(99%)(C1312O)は、Alfa Aesar, Thermo-Fisher Scientific, Inc.(マサチューセッツ州ワードヒル)から入手した。
【0088】
感染性株及び培養条件
マウスに、下記のように調製したC.ネオフォルマンスH99株/ATCC 208821(American Type Culture Collection、メリーランド州ロックビル)を接種させた。C.ネオフォルマンス懸濁液の細胞を酵母エキスペプトンデキストロース(YPD)寒天プレートに画線培養した後、37℃で48時間インキュベートした。十分に単離されたコロニーを、クロラムフェニコールを含有する25ミリリットルのYPDブロス中で再懸濁し、振盪インキュベーター上のフラスコ内にて37℃で一晩インキュベートした。細胞を4000rpmで5分間の遠心分離により回収し、再懸濁及び遠心分離によりリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。チャレンジ(Challenge:感染)生物を血球計算法により定量し、PBSで10生物数/ミリリットルの最終濃度まで希釈した。C.ネオフォルマンス懸濁液を段階希釈して、接種物をYPD寒天プレート上に平板培養することにより、生菌数を確認した。
【0089】
C.ネオフォルマンスによる感染は、初期体重の登録後の外側尾静脈を介した0.1ミリリットルのPBS中の10個のH99細胞の注射により誘導した。全身感染が起こり、これにより14日~24日の間の非処理対照群の完全な致死が引き起こされた。雌性Hsd:ND4スイス-ウェブスター非近交系マウス(9週~10週齢、体重20グラム~29グラム)(Harlan Laboratories(現在のEnvigo, Inc.)、メリーランド州フレッドリック)を実験に亘って使用した。マウスは、感染前に1週間、施設に馴化させ、マイクロアイソレーターケージ内で維持した。
【0090】
3つの異なる処理試験を行った。第1の試験では、感染マウスを、経口強制投与(PO)により50ミリグラム毎キログラム毎日(mg/kg/日)のCAMBで、又は腹腔内(IP)注射により5mg/kg/日のFUNGIZONE(商標)で処理した(表1)。1処理群当たり5匹のマウスを使用した。作用物質の投与は感染の24時間後に開始し、体重測定後、1日1回、28日連続して続けた。5匹の感染非処理マウスの群を対照として使用した。
【0091】
第2の試験では、感染マウスをPO、IP又は皮下注射(SQ)により、10mg/kg/日、25mg/kg/日、又は50mg/kg/日のCAMBで処理した。CAMBを単独又は5-フルシトシンとの組合せのいずれかで投与した。さらに、感染マウスを5-フルシトシン単独又は5mg/kg/日のFUNGIZONE(商標)単独で、それぞれIP注射にて投与することで処理した(表2)。第1の試験同様、1処理群当たり5匹のマウスを使用し、5匹の感染非処理マウスの群を対照として使用した。指定の群については、250mgの5-フルシトシン/250ミリリットルの滅菌水を3日毎に調製し、オートクレーブにかけた無菌の水瓶に等分し、2つのマウス群のケージに入れた。作用物質の投与は感染の72時間後に開始し、体重測定後、1日1回、28日連続して続けた。
【0092】
第3の試験では、感染マウスを、PO又はIP注射により、5mg/kg/用量、25mg/kg/用量、又は50mg/kg/用量のCAMB単独、又は5-フルシトシン若しくはフルコナゾールとの組合せのいずれかで処理した。さらにマウスに、IP注射により、5-フルシトシン単独、フルコナゾール単独、又は5mg/kg/用量のFUNGIZONE(商標)単独若しくは5-フルシトシンとの組合せのいずれかを投薬した(表3)。毎日の体重測定後に表3に述べられているように1日1回又は2回、動物に投薬した。1処理群当たり5匹のマウスを使用し、5匹の感染非処理マウスの群を対照として使用した。指定の群については、250mgの5-フルシトシン/250mlの滅菌水を3日毎に調製し、オートクレーブにかけた無菌の水瓶に等分し、4つのマウス群のケージに入れた。指定のある場合、フルコナゾールは、経口強制投与により2回に分けて(in two doses)単独又は25mg/kg/日の組合せのいずれかで投薬した。作用物質の投与は感染の72時間後に開始し、1日1回、28日連続して続けた。
【0093】
3つの試験のそれぞれについての生存及び脳の研究を用いて、抗真菌効能を確認した。致死率は3つの試験のそれぞれで記録した。死亡時に動物を解剖し、脳を無菌状態で摘出し、秤量して、1ミリリットルの滅菌水中でホモジナイズした。脳組織中のC.ネオフォルマンスの濃度(1グラム当たりのCFU)により抗真菌処理に対する微生物応答を評価した。ホモジナイズした脳の滅菌PBSを用いた段階希釈物をYPD寒天プレート上にて2連反復で平板培養した。培養プレートを37℃で48時間インキュベートした後、CFUをカウントし、脳組織1グラム当たりのCFU数を算出した。この方法は10CFU/g以上の検出に感度がよい。培養陰性プレートを0CFU/gとしてカウントした。
【0094】
実施例2.結果
試験1
マウスにC.ネオフォルマンスH99株を1×10CFUで静脈内感染させ、上述のように、また図6に示されるように、その1日後から28日間毎日の治療法を開始した後、60日間経過観察を行った。図6に、指定の時点での各群についての生存パーセントを示す。図6から明らかなように、1日の感染インキュベーション期間の後に単独で使用したCAMBでは、60日目までマウスの80%が生存し、これはアムホテリシンBデオキシコール酸塩の注射(FUNGIZONE(商標))と同程度であり、20日目で100%の致死率を示した非処理の対照群よりも優れていた。
【0095】
試験2
マウスに、1×10コロニー形成単位のC.ネオフォルマンスH99株を静脈内感染させた。3日後、上述のように、また表4及び図7に示すように、28日間毎日の治療法を開始した。瀕死になった後、屠殺するまで、マウスの経過観察を行った。実験は188日目に終了し、群番号1からは1匹のマウスが生存していた。表4に、群1~群11についての生存パーセントを示す。図7は、群1、群2、及び群4~群6のみについての生存パーセントを示す図である。表4に示すように、非処理マウスの生存中央値は13日であり、これは5mg/kg/日のFUNGIZONE(商標) IPでの処理(61日間、p=0.004)、又はPO、SQ若しくはIP経路のいずれかにより投与したCAMB(33日間、50日間、84日間、p=0.004)によって延長された。しかしながら、CAMBを用いた場合の生存は、IP経路の使用(84日間、p=0.022)、又は飲み水中での経口5-FCの添加(75日間、p<0.05)のいずれかにより改善した。
【0096】
C.ネオフォルマンス関連脳死を、死亡時の頭部膨張の存在により、及びマウス屠殺体のホモジナイズした脳を培養した後、YPDプレートからコロニーを得ることによって検証した(表5を参照されたい)。培養上の群1からの1匹の生存マウスは、FUNGIZONE(商標) IPによる部分治療を示すものである、225CFUのC.ネオフォルマンスを含有していた。
【0097】
試験化合物の11群の生存率分析に基づくと、群1、群2及び群6のマウスが、処理終了時から60日超と最も長く生存した。群1(FUNGIZONE(商標) IP注射)、群2(CAMB IP注射)及び群6(飲み水中のCAMB PO+5-フルシトシン)が、他の処理群よりもC.ネオフォルマンスに対するより良好な生存率を有するマウスをもたらしたと結論付けることができる。経口処理では、5-FCの添加により、コクリエート化アムホテリシンB単独での処理に比べて生存が大きく延長し、FUNGIZONE(商標) IPとほぼ同程度であった。
【0098】
試験3
マウスに、1×10CFUのC.ネオフォルマンスH99株を静脈内感染させた。3日後、上述のように、また表6及び図8に示すように、28日間毎日の治療法を開始した。瀕死になった後、屠殺するまで、マウスの経過観察を行った。表6に、群1~群11についての生存パーセントを示す。図8は、群1、群2、群6、群8及び群9のみについての生存パーセントを示す図である。表6に示すように、非処理マウスの生存中央値は19日であり、これは5mg/kg/日のFUNGIZONE(商標) IP+5-FCでの処理(80日間、p=0.003)、又はPO若しくはIP経路のいずれかにより毎日投与したCAMB(それぞれ35日間又は49日間、p=0.003)によって延長された。1日2回の投薬では、より短い生存の傾向が見られ、これは、PO取込みの減少又はCAMB胃腸毒性を起こす反復性外傷によるものであると考えられた(35日間に対して31日間、p=統計的有意差なし(NS))。経口CAMB調製物を用いた場合の生存は、飲み水中への経口5-FCの添加(102日間、経口CAMB単独に対してp=0.002)、又は経口フルコナゾールの添加(但し、程度はあまり大きくなかった)(56日間、p=0.002)のいずれかにより改善した。
【0099】
実験は151日目に終了し、CAMB+5-FC群である群6からは1匹のマウスが生存していた。C.ネオフォルマンス関連脳死を、死亡時の頭部膨張の存在により、及びマウス屠殺体から得られたホモジナイズした脳を培養した後、YPDプレートからコロニーを得ることによって検証した。脳組織1g当たりのCFU数については表7及び図9を参照されたい。
【0100】
実施例3.経口投薬後の蛍光性コクリエートの脳局在化
CAMBが実際に脳組織に送達されるかを確認するために、3匹のマウスに、10個のC.ネオフォルマンスH99株を尾静脈から感染させ、3匹のマウスは感染させずにおいた。5日後、各群の2匹のマウスを、10mg/kg/日相当のローダミン標識CAMB(Rod-AmpB)の経口強制投与により3日間、1日1回処理した(研究設計の概要については図10を参照されたい)。マウスを7日目に屠殺し、脳材料を回収し、ホモジナイズして、微分干渉顕微鏡検査(DIC)を行い、蛍光(RFP)を観察した。
【0101】
図11は本研究の結果を示す図である。図11に示されるように、蛍光撮像により、CAMB経口調製物で処理したマウスの脳において多くの蛍光性粒子が認められた。送達の増大は、非感染マウスに対する感染マウスの脳にて明らかとなった。図11を参照されたい。黒色の矢印は、C.ネオフォルマンスに含まれる生物を示し、白色の矢印は、コクリエート蛍光を示す(バー=10ミリメートル)。したがって、本研究により、C.ネオフォルマンスに感染したマウスの脳にCAMBが送達され、このCAMBを5-FCと組み合わせて、全身FUNGIZONE(商標)+5-FCと同等の効果的な経口抗真菌剤として用いて、C.ネオフォルマンス感染症を治療することができることが実証される。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11