IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岩田工機株式会社の特許一覧

特許6991602両頭フライス加工機、及び部材の製造方法
<>
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図1
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図2
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図3
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図4
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図5
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図6
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図7
  • 特許-両頭フライス加工機、及び部材の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】両頭フライス加工機、及び部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 1/04 20060101AFI20220104BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20220104BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B23C1/04
B23Q3/06 303E
B23Q7/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092441
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021186910
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2020-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505049593
【氏名又は名称】岩田工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野中 雅則
(72)【発明者】
【氏名】田上 宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210254416(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0135213(KR,A)
【文献】実開昭60-039442(JP,U)
【文献】中国実用新案第206966727(CN,U)
【文献】特開昭49-004877(JP,A)
【文献】中国実用新案第205888179(CN,U)
【文献】特開2001-038566(JP,A)
【文献】実公昭42-17684(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/04
B23Q 3/06
B23Q 7/00 - 7/18
B65G 47/22 - 47/32
B65G 47/90 - 47/92
F16B 2/00 - 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを切削加工する両頭フライス加工機であって、
予め定められた加工位置にて、前記ワークを上下方向に広がるように固定する固定部と、
前記加工位置に位置する前記ワークの両側で前記ワークの各面に対面するように設けられる第1及び第2フライスカッターとを備え、
前記第1及び第2フライスカッターは、前記加工位置に位置する前記ワークに接近した後、前記上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成されており、
前記固定部は、前記ワークの縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具であるワーク取付具により、前記ワークを固定し、
前記ワーク取付具は、矩形状に形成されており、
前記ワーク取付具は、内側に配置された前記ワークを固定するための押圧部を有し、
前記押圧部は、ねじ状の部材として構成されており、前記ワーク取付具における隣接する2つの辺を構成する部分に設けられ、前記ワークの縁部を押圧することで、該ワークを前記ワーク取付具に固定し、
前記加工位置に位置する前記ワークを固定するときの前記ワーク取付具における上側に位置する部分を、上枠部とし、前記ワーク取付具における前記上枠部以外の部分を、本体部とし、
前記上枠部は、前記本体部に対して着脱可能に構成されており、
前記上枠部は、前記本体部における前記上下方向に延びる部分に比べ、前記ワーク取付具に固定される前記ワークの厚さ方向の長さが短い
両頭フライス加工機。
【請求項2】
請求項に記載された両頭フライス加工機であって、
前記ワーク取付具が固定されるよう構成されており、前記ワーク取付具に固定された前記ワークを、開始位置から前記加工位置へと搬送する搬送装置を有し、
前記開始位置とは、前記ワークが横になった状態で配置される位置である
両頭フライス加工機。
【請求項3】
請求項に記載された両頭フライス加工機であって、
前記加工位置に位置する前記ワークが水平面に沿って延びる方向を、前後方向とし、
前記ワークが、前記前後方向に沿って延び、且つ、前記上下方向に広がるように配置される位置を、中間位置とし、
前記搬送装置は、前記開始位置に位置する前記ワークを固定する前記ワーク取付具を回転変位させることで、該ワークを前記中間位置に配置し、前記中間位置に位置する該ワークを固定する前記ワーク取付具を前記前後方向に沿って変位させることで、該ワークを前記加工位置に配置する
両頭フライス加工機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載された両頭フライス加工機であって、
前記加工位置に位置する前記ワークを固定するときの前記ワーク取付具の上部における縁部には、穴部が設けられており、
前記加工位置に位置する前記ワークを固定するときの前記ワーク取付具の前記穴部に収容されることで、該ワーク取付具を固定する上部固定部をさらに備える
両頭フライス加工機。
【請求項5】
両面が切削加工された部材の製造方法であって、
両頭フライス加工機により、予め定められた加工位置にて、板状のワークを上下方向に広がるように固定し、
前記両頭フライス加工機により前記ワークの両面を切削加工することで、前記部材を製造し、
前記両頭フライス加工機は、
前記加工位置にて、前記ワークを前記上下方向に広がるように固定する固定部と、
前記加工位置に位置する前記ワークの両側で前記ワークの各面に対面するように設けられる第1及び第2フライスカッターと、を備え、
前記第1及び第2フライスカッターは、前記加工位置に位置する前記ワークに接近した後、前記上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成されており、
前記固定部は、前記ワークの縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具であるワーク取付具により、前記ワークを固定し、
前記ワーク取付具は、矩形状に形成されており、
前記ワーク取付具は、内側に配置された前記ワークを固定するための押圧部を有し、
前記押圧部は、ねじ状の部材として構成されており、前記ワーク取付具における隣接する2つの辺を構成する部分に設けられ、前記ワークの縁部を押圧することで、該ワークを前記ワーク取付具に固定し、
前記加工位置に位置する前記ワークを固定するときの前記ワーク取付具における上側に位置する部分を、上枠部とし、前記ワーク取付具における前記上枠部以外の部分を、本体部とし、
前記上枠部は、前記本体部に対して着脱可能に構成されており、
前記上枠部は、前記本体部における前記上下方向に延びる部分に比べ、前記ワーク取付具に固定される前記ワークの厚さ方向の長さが短い
部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、板状のワークの両面を同時に切削加工する両頭フライス加工機と、両頭フライス加工機を用いた部材の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、2つのフライスカッターにより、ワーク保持治具により保持される板状のワークの両面を同時に切削加工する両頭フライス盤が知られている。該ワーク保持治具は、ワークを上下方向及び左右方向に挟持することで、ワークを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6462229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術では、両頭フライス盤の位置を固定し、ワーク保持治具を左右方向に変位することで、ワークの各面の全体が切削加工される。このため、ワーク保持治具におけるワーク等の位置を調整するためのネジやガイドにおけるバックラッシ等の影響で、ビビリ振動や微小振動が生じる恐れがある。そして、これらが生じると、切削加工の精度が低下する恐れがある。
【0005】
本開示の一態様においては、切削加工の精度の低下を抑制するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、板状のワークを切削加工する両頭フライス加工機であって、固定部と、第1及び第2フライスカッターとを備える。固定部は、予め定められた加工位置にて、前記ワークを上下方向に広がるように固定する。第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークの両側でワークの各面に対面するように設けられる。そして、第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークに接近した後、上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成される。
【0007】
上記構成によれば、第1及び第2フライスカッターを固定しつつ、ワークの位置を変位させることで、ワークの両面の切削加工を同時に行う場合に比べ、ビビリ振動や微小振動が生じるのを抑制できる。したがって、切削加工の精度の低下を抑制できる。
【0008】
なお、固定部は、ワークの縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具であるワーク取付具により、ワークを固定しても良い。
上記構成によれば、ワークの固定に必要な部品点数を低減できる。このため、切削加工を行う際、より容易にワークを固定でき、切削加工の作業効率が向上し得る。
【0009】
また、ワーク取付具は、矩形状に形成されていても良い。また、ワーク取付具は、内側に配置された前記ワークを固定するための押圧部を有していても良い。そして、押圧部は、加工位置に位置するワークを固定するときのワーク取付具における、上下方向に延びる一辺を構成する部分に設けられ、該ワークを、一辺に対面する辺をなす部分に向けて押圧することで、該ワークをワーク取付具に固定しても良い。
【0010】
上記構成によれば、切削加工を行う際、押圧部によりワークを左右方向に挟持することで、ワークがワーク取付具に固定される。このため、切削加工の際に上下方向に変位する第1及び第2フライスカッターにより生じる振動を、好適に抑制できる。
【0011】
また、加工位置に位置するワークを固定するときのワーク取付具における上側に位置する部分を、上枠部とし、ワーク取付具における上枠部以外の部分を、本体部としても良い。また、上枠部は、本体部に対して着脱可能に構成されていても良い。また、上枠部は、本体部における上下方向に延びる部分に比べ、ワーク取付具に固定されるワークの厚さ方向の長さが短くても良い。
【0012】
上記構成によれば、ワーク取付具のワークへの取付が容易になる。また、上枠部の厚さ方向の長さが相対的に短いため、切削加工の際に第1及び第2フライスカッターを上下方向に変位し易くなり、好適に切削加工を行うことができる。
【0013】
また、両頭フライス加工機は、ワーク取付具が固定されるよう構成されており、ワーク取付具に固定された前記ワークを、開始位置から加工位置へと搬送する搬送装置をさらに有していても良い。また、開始位置とは、ワークが横になった状態で配置される位置であっても良い。
【0014】
上記構成によれば、開始位置にあるワークは横になった状態であるため、開始位置にてワーク取付具にワークを取り付ける作業が容易となる。
また、加工位置に位置するワークが水平面に沿って延びる方向を、前後方向としても良い。また、ワークが、前後方向に沿って延び、且つ、上下方向に広がるように配置される位置を、中間位置としても良い。そして、搬送装置は、開始位置に位置するワークを固定するワーク取付具を回転変位させることで、該ワークを中間位置に配置し、中間位置に位置する該ワークを固定するワーク取付具を前後方向に沿って変位させることで、該ワークを加工位置に配置しても良い。
【0015】
上記構成によれば、開始位置にあるワークを、好適に加工位置まで搬送できる。
また、本開示の一態様は、両頭フライス加工機により切削加工される板状のワークを固定するワーク取付具である。ワーク取付具は、ワークの縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具であり、予め定められた加工位置にて、ワークを上下方向に広がるように固定するよう構成されている。また、両頭フライス加工機は、加工位置に位置するワークの両側でワークの各面に対面するように設けられる第1及び第2フライスカッターを備える。そして、第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークに接近した後、上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成される。
【0016】
上記構成によれば、ワークの固定に必要な部品点数を低減できる。このため、両頭フライス加工機により切削加工を行う際、より容易にワークを固定でき、切削加工の作業効率が向上し得る。
【0017】
また、本開示の一態様は、両頭フライス加工機により切削加工される板状のワークを搬送する搬送装置である。搬送装置は、ワーク取付具が固定されるよう構成されており、ワーク取付具に固定されたワークを、開始位置から加工位置へと搬送するよう構成されている。ワーク取付具は、ワークの縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具であり、ワーク取付具に取り付けられたワークは、加工位置にて、上下方向に広がるように固定される。また、両頭フライス加工機は、加工位置に位置するワークの両側でワークの各面に対面するように設けられる第1及び第2フライスカッターを備える。また、第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークに接近した後、上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成されている。そして、開始位置とは、ワークが横になった状態で配置される位置である。
【0018】
上記構成によれば、開始位置にあるワークは横になった状態であるため、開始位置にてワーク取付具にワークを取り付ける作業が容易となる。
また、本開示の一態様は、両面が切削加工された部材の製造方法である。該製造方法では、両頭フライス加工機により、予め定められた加工位置にて、板状のワークを上下方向に広がるように固定する。そして、両頭フライス加工機によりワークの両面を切削加工することで、部材を製造する。そして、前記両頭フライス加工機は、固定部と、第1及び第2フライスカッターとを備える。固定部は、加工位置にて、ワークを上下方向に広がるように固定する。また、第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークの両側でワークの各面に対面するように設けられる。また、第1及び第2フライスカッターは、加工位置に位置するワークに接近した後、上下方向に変位することで、該ワークの各面を同時に切削加工するよう構成される。
【0019】
上記構成によれば、両面が切削加工される部材の製造工程において、ビビリ振動や微小振動が生じるのを抑制できる。したがって、切削加工の精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ワークが中間位置にある両頭フライス加工機の上面図である。
図2】両頭フライス加工機の正面図である。
図3】ワークが加工位置にある両頭フライス加工機の側面図である。
図4】搬送装置及び上側固定部の側面図である。
図5】ワーク取付具の被クランプ部及びクランプ部の正面図である。
図6】ワーク取付具の被クランプ部、及び、被クランプ部に収容されたクランプ部の断面図である。
図7】右押圧部及び左ブロックが透過的に示されたワーク取付具の上面図である。
図8】ワーク取付具、支持部、及び回転駆動部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0022】
[1.両頭フライス加工機の概要]
本実施形態の両頭フライス加工機1は、上下方向に広がるように配置された板状の金属製のワーク10の両面を、同時に切削加工するよう構成されている(図1~3参照)。本実施形態では、一例として、ワーク10は矩形となっている。しかし、ワーク10の形状は適宜定められ得る。また、ワーク10は、鉄製であっても良いし、非鉄金属製であっても良い。具体的には、ワーク10は、例えば、ステンレス製であっても良いし、アルミ製であっても良い。
【0023】
両頭フライス加工機1は、制御装置8と、ベース7と、第1、第2主軸ユニット2、3と、ワーク取付具4と、搬送装置5と、上側固定部6とを備える。以下では、両頭フライス加工機1の各構成要素について、詳しく説明する。
【0024】
[2.制御装置及びベースについて]
制御装置8は、CPU、ROM/RAM等のメモリ、及びHDD等の記憶媒体等を備えるコンピュータを有しており、メモリに記憶されているプログラムに従い動作することで、両頭フライス加工機1を統括制御する(図1参照)。
【0025】
ベース7は、切削加工がなされるワーク10、ワーク取付具4、第1、第2主軸ユニット2、3、搬送装置5、及び上側固定部6等が配置される台である。ベース7は、左右方向と、左右方向に直交する前後方向とに広がる(図1~3参照)。
【0026】
ベース7には、ワーク10が載置される載置台70が設けられている。図2に示すように、切削加工を行うために搬送されたワーク10は、まず載置台70に載置され、搬送装置5に固定されるワーク取付具4に取り付けられる(詳細は後述する)。以後、載置台70にてワーク取付具4に取り付けられたワーク10の位置を、開始位置14と記載する。開始位置14でのワーク10は、横になった状態となり、本実施形態では、一例として、該ワーク10は水平に広がる。
【0027】
また、開始位置14に位置するワーク10を回転させ、上下方向に広がるようにしたときのワーク10の位置を、中間位置15とする(図3、4参照)。中間位置15に位置するワーク10は、前後方向に広がる。
【0028】
また、切削加工が行われているワーク10の位置を、加工位置13と記載する。加工位置13は、中間位置15に位置するワーク10を、後側に所定距離変位させたときの位置である。加工位置13に位置するワーク10もまた、ベース7の上で上下方向及び前後方向に広がる。
【0029】
[3.第1及び第2主軸ユニットについて]
第1主軸ユニット2は、加工位置13に位置するワーク10の右側に位置し、第2主軸ユニット3は、該ワーク10の左側に位置する(図1~3参照)。また、第1、第2主軸ユニット2、3は、それぞれ、第1、第2フライスカッター20、30を備える。第1フライスカッター20は、加工位置13に位置するワーク10の第1面11に対面し、第2フライスカッター30は、該ワーク10の第2面12に対面する。また、第1及び第2フライスカッター20、30は、左右方向に並ぶように配置される。そして、第1、第2フライスカッター20、30は、ワーク10を切削加工するため、左右方向に延びる軸を中心に回転するよう構成される。
【0030】
また、第1、第2主軸ユニット2、3は、制御装置8により制御され、上下方向に変位可能であると共に、加工位置13に位置するワーク10に対し接近又は離間するよう、左右方向に変位可能である。
【0031】
[4.ワーク取付具について]
ワーク取付具4は、ワーク10の縁部を囲むように取り付けられる枠状の器具である(図4~8参照)。ワーク取付具4は、当該ワーク取付具4の内側に配置されたワーク10を固定するよう構成される。ワーク取付具4は、一例として、矩形状に形成されている。しかし、ワーク取付具4の形状は、矩形状に限らず、適宜定められ得る。
【0032】
また、ワーク取付具4は、横方向に平行に延びる上枠部40及び下枠部41と、縦方向に平行に延びる右枠部42及び左枠部43とを備える。上枠部40とは、加工位置13のワーク10を固定するワーク取付具4における上側に位置する部分であり、下枠部41は、該ワーク取付具4における下側に位置する部分である。なお、該ワーク取付具4において、上枠部40と下枠部41とは、上下方向に対面し、水平方向に延びる。
【0033】
また、右枠部42及び左枠部43は、加工位置13のワーク10を固定するワーク取付具4における、水平方向に対面し、上下方向に延びる2つの部分である。
そして、右枠部42は、少なくとも1つ(一例として、3つ)の右押圧部42Aを備え、左枠部43は、少なくとも1つ(一例として、3つ)の左ブロック43Aを備える。各右押圧部42Aは、右枠部42を外縁から内縁へと横方向に貫通し、内縁から突出するように設けられたボルトとして構成されている。一方、各左ブロック43Aは、左枠部43の内縁から横方向に突出する部位であり、いずれかの右押圧部42Aと横方向に並ぶ。そして、各右押圧部42Aは、ワーク取付具4の内側に配置されたワーク10の縁部を、各左ブロック43Aに向けて押圧する。これにより、該ワーク10は、各右押圧部42Aと各左ブロック43Aとにより挟持される。
【0034】
なお、加工位置13のワーク10を固定するワーク取付具4においては、右枠部42は前側に位置し、左枠部43は後側に位置する。
また、上枠部40は、少なくとも1つ(一例として、1つ)の上押圧部40Aを備え、下枠部41は、少なくとも1つ(一例として、2つ)の下ブロック41Aを備える。上押圧部40Aは、下枠部41を外縁から内縁へと縦方向に貫通し、内縁から突出するように設けられたネジとして構成されている。一方、各下ブロック41Aは、下枠部41の内縁から縦方向に突出する。そして、上押圧部40Aは、ワーク取付具4の内側に配置されたワーク10の縁部を、各下ブロック41Aに向けて押圧する。これにより、該ワーク10は、各上押圧部40Aと各下ブロック41Aとにより挟持される。
【0035】
また、上枠部40は、下枠部41、右枠部42、及び左枠部43を含む本体部に対し、着脱可能に構成される。また、ワーク取付具4において、当該ワーク取付具4の内側に固定されたワーク10の厚さ方向の長さを、厚さ距離と記載する。上枠部40及び下枠部41の厚さ距離は、右枠部42及び左枠部43の各々の厚さ距離よりも短い。
【0036】
なお、ワーク10の厚さは、右枠部42及び左枠部43の厚さ距離よりも大きくても良いし、小さくても良い。また、ワーク10の厚さは、上枠部40及び下枠部41の厚さ距離よりも大きいのが好適である。また、下枠部41を右枠部42及び左枠部43に対して着脱可能とし、ワーク10の厚さよりも小さい厚さ距離を有する上枠部40及び下枠部41を用いるようにしても良い。
【0037】
また、下枠部41の両端には、後述する搬送装置5の支持部52にワーク取付具4を固定するよう構成された下側固定部44が設けられる。下側固定部44は、一例としてボルトを有しており、該ボルトにより、下枠部41が支持部52の支持面53に固定される。
【0038】
また、左枠部43の外縁における縦方向に延びる部分の上枠部40側の端部には、ワーク取付具4を固定するための被クランプ部45が設けられる(図5、6参照)。被クランプ部45は、左枠部43の外縁から横方向に延びる穴状の部位であり、後述する上側固定部6のクランプ部62を収容するよう構成される。
【0039】
また、右枠部42及び左枠部43における上枠部40側の端部には、搬送時等にワーク取付具4を吊るすために用いられるフック46が設けられている。
[5.搬送装置について]
搬送装置5は、開始位置14に位置するワーク10を加工位置13まで搬送すると共に、加工位置13に位置するワーク10を固定するよう構成される(図1~4、8参照)。搬送装置5は、油圧シリンダ50と、ガイド部51と、支持部52と、回転駆動部55とを備える。
【0040】
油圧シリンダ50は、ベース7の上面に沿って前後方向に延びるように配置され、本体部50aとロッド部50bとを備える。油圧シリンダ50は、ロッド部50bが前後方向に変位することで、前後方向に伸縮するよう構成される。
【0041】
ガイド部51は、ベース7の上面に沿って前後方向に延びる2本の棒状の部位である。また、ガイド部51は、第1、第2主軸ユニット2、3の間に配置され、加工位置13に位置するワーク10に沿って延びる。
【0042】
回転駆動部55は、制御装置8により制御される伸縮が可能な油圧アクチュエータとして構成されている。回転駆動部55は、左右方向に延びるようにベース7の上に配置される。
【0043】
支持部52は、ワーク取付具4を支持するよう構成されている。具体的には、支持部52の支持面53には、下側固定部44によりワーク取付具4の下枠部41が固定される。これにより、ワーク取付具4は、支持面53から突出するように支持部52に固定され、ワーク取付具4に取り付けられているワーク10も支持部52に固定される。
【0044】
また、支持部52は、制御装置8により制御される油圧シリンダ50のロッド部50bの前端と結合されており、該油圧シリンダ50の伸縮により、ガイド部51に沿って前後方向に変位可能に構成される。具体的には、油圧シリンダ50のロッド部50bの変位により、支持部52は前後方向に変位する。そして、支持部52がガイド部51の前端に到達すると、油圧シリンダ50のロッド部50bは、ガイド部51と左右方向に並ぶように配置される。
【0045】
そして、ガイド部51の前端に到達した支持部52は、ガイド部51と共に、油圧シリンダ50により形成される前後方向に延びる回転軸を中心に回転変位可能となる。なお、該回転軸は、第1、第2主軸ユニット2、3の間に位置し、加工位置13に位置するワーク10に沿って延びる。
【0046】
具体的には、ガイド部51の前端には、下側に突出する結合部54が設けられており、結合部54の下端は、回転駆動部55の端部に結合している(図8参照)。支持部52がガイド部51の前端に到達すると、結合部54と結合しているガイド部51が回転可能となり、これにより、支持部52も回転可能となる。具体的には、結合部54に結合している回転駆動部55が伸長すると、支持部52及びガイド部51は、回転軸を中心に載置台70が位置する左側へと回転し、回転駆動部55が収縮すると、支持部52及びガイド部51は右側へと回転する。支持部52及びガイド部51は、回転駆動部55の伸縮により、一例として、90°の範囲で回転可能となっている。そして、支持部52及びガイド部51の回転によりワーク取付具4も回転し、ワーク10は、開始位置14と中間位置15との間で回転変位する。
【0047】
以後、前側に変位する支持部52がガイド部51の前端に達したときの支持部52の位置を、縦位置とする。また、縦位置の支持部52を90°左側に回転させた位置を、横位置とする。
【0048】
[6.上側固定部について]
上側固定部6は、柱部60と、アーム部61と、クランプ部62とを備える(図1、4~6参照)。
【0049】
柱部60は、第1及び第2主軸ユニット2、3の後側に位置し、上下方向に延びる柱状の部位である。
アーム部61は、柱部60の上端に設けられ、前側に向かって突出する棒状の部位である。アーム部61の先端には、クランプ部62が設けられる。
【0050】
クランプ部62は、ワーク取付具4の上部を固定するための部位である(図4~6参照)。具体的には、クランプ部62は、制御装置8により制御され、左右方向に伸縮可能に構成されている。また、収縮した状態のクランプ部62は、ワーク取付具4における左枠部43の上端に設けられた被クランプ部45に収容されるよう構成されている。そして、被クランプ部45に収容されているクランプ部62が伸長すると、クランプ部62と被クランプ部45とが締結され、左枠部43の上端が固定される。
【0051】
[7.切削加工の説明]
次に、本実施形態の両頭フライス加工機1によるワーク10に対する切削加工の手順について説明する(図1~3参照)。換言すれば、両頭フライス加工機1によりワーク10の切削加工を行うことによる、板状の部材の製造方法について説明する。
【0052】
まず、開始位置14に位置するワーク10が、下側固定部44により横位置にある支持部52に固定されたワーク取付具4に取り付けられた状態とする(図2参照)。具体的には、例えば、ワーク10を載置台70に載置した後、該ワーク10をワーク取付具4に取り付け、さらに、該ワーク取付具4を支持部52に固定しても良い。その後、各右押圧部42Aと上押圧部40Aとによりワーク10を押圧することで、ワーク10がワーク取付具4に固定される。
【0053】
この他にも、例えば、先にワーク取付具4を支持部52に固定しておき、該ワーク取付具4を載置台70に載置されたワーク10に取り付けても良い。また、例えば、既にワーク取付具4が取り付けられたワーク10を載置台70に載置した後、該ワーク取付具4を支持部52に固定しても良い。
【0054】
次に、制御装置8は、回転駆動部55を収縮させ、ワーク取付具4が固定された支持部52を、横位置から縦位置まで回転変位させる(図2参照)。なお、縦位置にある支持部52に固定されているワーク取付具4に取り付けられているワーク10の位置が、中間位置15となる。
【0055】
そして、支持部52が縦位置に到達すると、制御装置8は、支持部52をガイド部51に沿って後側に変位させる(図3参照)。そして、支持部52がガイド部51の後端に到達すると、支持部52に固定されているワーク取付具4に取り付けられているワーク10は、加工位置13に到達する。
【0056】
その後、制御装置8は、第1、第2フライスカッター20、30を回転させると共に、これらを加工位置13のワーク10の第1、第2面11、12に同時に接近させる。そして、制御装置8は、第1、第2フライスカッター20、30を上下方向に沿って同時に変位させることで、ワーク10の両面に対し同時に切削加工を行う(図3、4参照)。
【0057】
切削加工が終了すると、制御装置8は、第1、第2フライスカッター20、30を、ワーク10の第1、第2面11、12から離間させる。そして、制御装置8は、支持部52をガイド部51に沿って前端まで変位させると共に、回転駆動部55を伸長させ、支持部52を縦位置から横位置まで回転変位させる。この時、切削加工が行われたワーク10は載置台70の上(換言すれば、開始位置14)に配置された状態となり、該ワーク10はワーク取付具4から取り外される。
【0058】
[8.効果]
(1)上記実施形態によれば、ワーク10が加工位置13にて固定されると共に、第1及び第2フライスカッター20、30が上下方向に変位することで、ワーク10の第1及び第2面11、12が同時に切削加工される。このため、第1及び第2フライスカッターを固定しつつ、ワークの位置を変位させることで、ワークの両面の切削加工を同時に行う場合に比べ、ビビリ振動や微小振動が生じるのを抑制できる。したがって、切削加工の精度の低下を抑制できる。
【0059】
さらに、ワーク10の両面が同時に切削加工される。このため、ワークの各面に対し順次切削加工を行う場合に比べ、フライス加工機へのワークの配置や、バリ取りや、切紛清掃等に要する時間を大幅に低減できる。
【0060】
(2)また、ワーク10の縁部を囲むワーク取付具4により、ワーク10が固定される。このため、ワーク10の固定に必要な部品点数を低減できる。その結果、切削加工を行う際、より容易にワーク10を固定でき、切削加工の作業効率が向上し得る。
【0061】
また、ワークを固定する際、マグネットチャックが不要となる。このため、磁力の影響でワークが変形し、切削加工の精度が悪化するのを回避できる。さらに、切削加工の際、磁力の影響による切削加工の精度の悪化を回避するため、マグネットチャックの磁力を調整する必要がなくなる。このため、切削加工の作業効率が向上する。
【0062】
(3)また、切削加工を行う際、各右押圧部42Aと各左ブロック43Aとによりワーク10を左右方向に挟持することで、ワーク10がワーク取付具4に固定される。このため、切削加工の際に上下方向に変位する第1及び第2フライスカッター20、30により生じる振動を、好適に抑制できる。
【0063】
(4)また、ワーク取付具4における上枠部40は着脱可能であると共に、上枠部40は、右及び左枠部42、43よりも厚さ方向の長さが短い。このため、ワーク取付具4のワーク10への取付が容易になる。また、切削加工の際に第1及び第2フライスカッター20、30を上下方向に変位し易くなり、好適に切削加工を行うことができる。
【0064】
(5)また、開始位置14にあるワーク10は、横になった状態となり、水平方向に広がる。このため、ワーク取付具4にワーク10を取り付ける作業が容易となり、作用時間の短縮を図ることができる。
【0065】
(6)また、両頭フライス加工機1の搬送装置5は、開始位置14にあるワーク10を回転変位させて中間位置15に配置した後、中間位置15にあるワークを後側に変位させることで、ワーク10を加工位置13に配置する。このため、ワーク10を好適に加工位置まで搬送できる。
【0066】
[9.他の実施形態]
(1)上記実施形態においては、ワーク取付具4における右押圧部42Aは、ボルトとして構成されている。しかし、右押圧部42Aは、ボルトに限らず、例えば、油圧シリンダ等として構成されていても良い。また、上押圧部40Aは、ボルトとして構成されているが、例えば、油圧シリンダ等として構成されていても良い。
【0067】
(2)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0068】
[10.文言の対応関係]
ワーク取付具4、支持部52、及び上側固定部6が、固定部の一例に相当する。
【符号の説明】
【0069】
1…両頭フライス加工機、2…第1主軸ユニット、3…第2主軸ユニット、10…ワーク、11…第1面、12…第2面、13…加工位置、14…開始位置、15…中間位置、20…第1フライスカッター、30…第2フライスカッター、4…ワーク取付具、40…上枠部、40A…上押圧部、41…下枠部、42…右枠部、42A…右押圧部、43…左枠部、44…下側固定部、45…被クランプ部、46…フック、5…搬送装置、50…油圧シリンダ、51…ガイド部、52…支持部、53…支持面、54…結合部、55…回転駆動部、6…上側固定部、60…柱部、61…アーム部、62…クランプ部、7…ベース、70…載置台、8…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8